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1. WO2020116648 - COMPOSITION LIQUIDE, MEMBRANE ÉLECTROLYTIQUE POLYMÈRE SOLIDE, ENSEMBLE MEMBRANE-ÉLECTRODE, ET PILE À COMBUSTIBLE À POLYMÈRE SOLIDE

Document

明 細 書

発明の名称 液状組成物、固体高分子電解質膜、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095  

実施例

0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161  

産業上の利用可能性

0162  

符号の説明

0163  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 液状組成物、固体高分子電解質膜、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池

技術分野

[0001]
 本発明は、液状組成物、固体高分子電解質膜、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。

背景技術

[0002]
 固体高分子形燃料電池は、例えば、2つのセパレータの間に膜電極接合体を挟んでセルを形成し、複数のセルをスタックしたものである。膜電極接合体は、触媒層を有するアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置された固体高分子電解質膜とを備えたものである。固体高分子電解質膜は、例えば、酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーを含む液状組成物を膜状に製膜したものである。
[0003]
 固体高分子形燃料電池において発電を行う際には、カソード側に供給された酸素ガスに由来する過酸化水素又は過酸化物ラジカルが生成する。そのため、固体高分子電解質膜には、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性が求められる。
 また、固体高分子形燃料電池において発電を行う際には、アノード側に供給された水素ガスが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動しないことが求められる。そのため、固体高分子電解質膜には、水素ガスの透過性が低いこと(水素ガスバリア性)が求められる。
[0004]
 過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性に優れた固体高分子電解質膜としては、下記のものが提案されている。
 酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーと、セリウム原子とを含む固体高分子電解質膜(特許文献1~3)。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特許第3915846号公報
特許文献2 : 特許第4810868号公報
特許文献3 : 特許第5915658号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかし、従来の酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーを含む固体高分子電解質膜は、水素ガスバリア性が不充分である。
[0007]
 本発明は、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性、及び水素ガスバリア性に優れた膜を形成できる液状組成物;過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性、及び水素ガスバリア性に優れた固体高分子電解質膜;過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性、及び水素ガスバリア性に優れた固体高分子電解質膜を備えた膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供する。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明は、下記の態様を有する。
 <1>液状媒体と、
 温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下である酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマー、または下式u1で表される単位を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーと、
 セリウム原子とを含む、液状組成物。
[化1]


 ただし、R F1及びR F2は、それぞれ独立に炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基である。
 <2>前記酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーが有するスルホン酸基の総モル数に対する前記セリウム原子の総モル数の割合が、0.001~0.13である、<1>に記載の液状組成物。
 <3>前記酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーのイオン交換容量が、0.5~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂である、<1>又は<2>に記載の液状組成物。
 <4>前記式u1で表される単位を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーの温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の液状組成物。
 <5>温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下である酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマー、または式u1で表される単位を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーと、
 セリウム原子とを含む、固体高分子電解質膜。
[化2]


 ただし、R F1及びR F2は、それぞれ独立に炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基である。
 <6>前記酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーが有するスルホン酸基の総モル数に対する前記セリウム原子の総モル数の割合が、0.001~0.13である、<5>に記載の固体高分子電解質膜。
 <7>前記酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーのイオン交換容量が、0.5~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂である、<5>又は<6>に記載の固体高分子電解質膜。
 <8>前記式u1で表される単位を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーの温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下である、<5>~<7>のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
 <9>触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された、<5>~<8>のいずれかに記載の固体高分子電解質膜とを備えた、膜電極接合体。
 <10><9>に記載の膜電極接合体を備えた、固体高分子形燃料電池。

発明の効果

[0009]
 本発明の液状組成物は、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性、及び水素ガスバリア性に優れた膜を形成できる。
 本発明の固体高分子電解質膜は、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性、及び水素ガスバリア性に優れる。
 本発明の膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池は、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性、及び水素ガスバリア性に優れた固体高分子電解質膜を備える。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] 本発明の膜電極接合体の一例を示す模式断面図である。
[図2] 本発明の膜電極接合体の他の例を示す模式断面図である。

発明を実施するための形態

[0011]
 本明細書においては、式1で表される化合物を、化合物1と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
 本明細書においては、式u1で表される単位を、単位u1と記す。他の式で表される構成単位も同様に記す。
 以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
 「スルホン酸基」は、塩型のスルホン酸基(-SO 。ただし、M は金属イオン又はアンモニウムイオンである。)及び酸型のスルホン酸基(-SO )の総称である。
 「イオン交換基」は、該基に含まれる陽イオンが他の陽イオンに交換し得る基である。
 ポリマーにおける「単位」は、モノマー1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。
 「難溶性セリウム化合物」は、25℃の水に対する溶解度が、水100gに対して0.1g以下であるセリウム化合物である。
 ポリマーの「水素ガス透過係数」は、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定される値であり、ポリマーからなる膜を80℃とし、等圧法により10%加湿の水素ガス透過量を測定し、透過量を膜の厚さで割って求められる値である。
 ポリマーの「イオン交換容量」は、実施例に記載の方法によって求める。
 ポリマーの「容量流速(以下、「TQ値」とも言う。)」は、実施例に記載の方法によって求める。
 ポリマーの「ガラス転移温度(以下、「Tg」とも言う。)」は、実施例に記載の方法によって求める。
 ポリマーの「伝導度」は、実施例に記載の方法によって求める。
 図1~図2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
[0012]
<液状組成物>
 本発明の液状組成物は、液状媒体と、特定の酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマー(以下、「ポリマーH」と記す。)と、セリウム原子とを含む。
 液状組成物において、ポリマーHは、液状媒体中に分散していてもよく、液状媒体中に溶解していてもよく、両方であってもよい。
 液状組成物において、セリウム原子は、液状媒体中に難溶性セリウム化合物として分散していてもよく、液状媒体中にセリウムイオンとして溶解していてもよく、両方であってもよい。
[0013]
 (液状媒体)
 液状媒体は、水のみであってもよく、有機溶媒のみであってもよく、水と有機溶媒とを含むものであってもよく、水と有機溶媒とを含むものが好ましい。
 水は、液状媒体に対するポリマーHの分散性又は溶解性を向上させる。
 有機溶媒は、割れにくい固体高分子電解質膜を形成しやすくする。
[0014]
 有機溶媒としては、割れにくい固体高分子電解質膜を形成しやすい点から、炭素数が1~4のアルコールの1種以上が好ましい。
 炭素数が1~4のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノールが挙げられる。
[0015]
 水の割合は、水と有機溶媒との合計のうち、10~99質量%が好ましく、20~99質量%がより好ましい。
 有機溶媒の割合は、水と有機溶媒との合計のうち、1~90質量%が好ましく、1~80質量%がより好ましい。
 水及び有機溶媒の割合が前記範囲内であれば、分散媒に対するポリマーHの分散性に優れ、かつ割れにくい固体高分子電解質膜を形成しやすい。
[0016]
 (ポリマーH)
 ポリマーHは、ペルフルオロモノマー単位を有し、かつ酸型のスルホン酸基(-SO )を有するフルオロカーボンポリマーである。
 本発明におけるポリマーHは、下記のポリマーH1又はポリマーH2である。
[0017]
 (ポリマーH1)
 ポリマーH1は、温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下の酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーである。
 ポリマーH1の、温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数は、2.3×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下が好ましく、1.8×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下がより好ましい。ポリマーH1の、温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数は、ポリマーH1の伝導度を高く維持する点から、1.0×10 -12cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以上が好ましく、1.0×10 -11cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以上がより好ましい。
[0018]
 ポリマーH1のイオン交換容量は、0.5~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、1.3~2.3ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。イオン交換容量が前記範囲の下限値以上であれば、ポリマーH1の伝導度が高くなるため、固体高分子形燃料電池の固体高分子電解質膜とした際に充分な電池出力が得られる。イオン交換容量が前記範囲の上限値以下であれば、ポリマーH1が含水した際の膨潤が抑えられ、固体高分子電解質膜とした際に機械的強度が高くなる。
[0019]
 ポリマーH1の含水率は、30~300質量%が好ましく、40~200質量%がより好ましい。含水率が前記範囲の下限値以上であれば、ポリマーH1の伝導度が高くなるため、発電性能がさらに優れる膜電極接合体が得られる。含水率が前記範囲の上限値以下であれば、ポリマーH1が過度に水で膨潤しないため、固体高分子電解質膜の機械的強度を保持できる。
[0020]
 ペルフルオロモノマー単位としては、例えば、イオン交換基及びその前駆体基を有しないペルフルオロモノマー単位、イオン交換基を有するペルフルオロモノマー単位が挙げられる。
 イオン交換基及びその前駆体基を有しないペルフルオロモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」と記す。)、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、国際公開第2011/013578号に記載された5員環を有するペルフルオロモノマーが挙げられる。
 イオン交換基を有するペルフルオロモノマー単位としては、例えば、国際公開第2017/221840号、国際公開第2018/012374号等に記載された公知のイオン交換基を有するペルフルオロモノマー単位、後述する単位u1が挙げられる。
[0021]
 ポリマーH1は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、ペルフルオロモノマー以外のモノマー(以下、「他のモノマー」と記す。)に基づく単位を有してもよい。
 他のモノマーとしては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、(ペルフルオロアルキル)エチレン、(ペルフルオロアルキル)プロペンが挙げられる。
[0022]
 ポリマーH1としては、水素ガス透過係数が低いポリマーとなりやすい点から、下記の単位u1を有するものが好ましい。ポリマーH1としては、機械的特性及び化学的耐久性に優れる点から、TFE単位をさらに有するものが好ましい。
[0023]
[化3]


[0024]
 ただし、R F1及びR F2は、それぞれ独立に炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基である。R F1及びR F2は同一であっても異なっていてもよい。
 R F1及びR F2としては、例えば、-CF -、-CF CF -、-CF(CF )-、-CF CF CF -、-CF(CF CF )-、-CF(CF )CF -、-CF CF(CF )-、-C(CF )(CF )-が挙げられる。原料がより安価であり、後述する化合物7の製造が容易であり、またポリマーH1のイオン交換容量をより高くできる点から、R F1及びR F2は、炭素数1~2のペルフルオロアルキレン基が好ましい。炭素数2の場合は、直鎖が好ましい。具体的には、-CF -、-CF CF -又は-CF(CF )-が好ましく、-CF -がより好ましい。
[0025]
 ポリマーH1を構成する全単位のうちの単位u1、TFE単位、単位u1及びTFE単位以外の単位の割合は、ポリマーH1に要求される特性や物性(水素ガス透過性、イオン交換容量、含水率、伝導度、機械的強度、弾性率、軟化温度等)に応じて適宜決定すればよい。
[0026]
 ポリマーH1は、例えば、後述するポリマーF1のフルオロスルホニル基(-SO F)を酸型のスルホン酸基(-SO )に変換して得られる。
 フルオロスルホニル基を酸型のスルホン酸基に変換する方法としては、ポリマーF1のフルオロスルホニル基を加水分解して塩型のスルホン酸基とし、塩型のスルホン酸基を酸型化して酸型のスルホン酸基に変換する方法が挙げられる。
[0027]
 加水分解は、例えば、溶媒中にてポリマーF1と塩基性化合物とを接触させて行う。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミンが挙げられる。溶媒としては、例えば、水、水と極性溶媒との混合溶媒が挙げられる。極性溶媒としては、例えば、アルコール(メタノール、エタノール等)、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
 酸型化は、例えば、塩型のスルホン酸基を有するポリマーを、塩酸、硫酸、硝酸等の水溶液に接触させて行う。加水分解及び酸型化における温度は、0~120℃が好ましい。加水分解又は酸型化の後に、ポリマーH1を水洗することが好ましい。
[0028]
 ポリマーH1に不純物として含まれる有機物を除去するために、加水分解後の塩型のまま又は酸型化の後に、ポリマーH1を過酸化水素水に浸漬する等の処理により、有機物を分解してもよい。
 過酸化水素水中の過酸化水素の濃度は、0.1~30質量%が好ましく、1質量%以上10質量%未満がより好ましい。過酸化水素水中の過酸化水素の濃度が前記範囲の下限値以上であれば、有機物を分解する効果が充分である。過酸化水素水中の過酸化水素の濃度が前記範囲の上限値以下であれば、ポリマーH1が分解しにくい。
 過酸化水素水の温度は、15~90℃が好ましく、40℃以上80℃未満がより好ましい。過酸化水素水の温度が前記範囲の下限値以上であれば、有機物を分解する効果が充分である。過酸化水素水の温度が前記範囲の上限値以下であれば、過酸化水素が分解しにくい。
 ポリマーH1を過酸化水素水に浸漬する時間は、ポリマーH1の厚さと、含まれる有機物の量にもよるが、例えば、ポリマーH1が厚さ50μmの膜の場合、0.5~100時間が好ましい。浸漬する時間が0.5時間未満では、膜内部の有機物まで分解するのが難しい。100時間を超えて浸漬しても、有機物をそれ以上分解する効果は期待できない。
 過酸化水素水に浸漬した後に、ポリマーH1を水洗することが好ましい。水洗に用いる水としては、超純水が好ましい。また、水洗前に酸型化処理を行ってもよい。
 前記の処理を終えた最終的なポリマーH1の形状は、粉末状であってもよく、ペレット状であってもよく、膜状であってもよい。
[0029]
 液状組成物中のポリマーH1の濃度は、1~50質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましい。ポリマーH1の濃度が前記範囲の下限値以上であれば、製膜時に厚みのある膜を安定して得ることができる。ポリマーH1の濃度が前記範囲の上限値以下であれば、液状組成物の粘度が過度に高くなることが抑えられる。
[0030]
 (ポリマーF1)
 ポリマーH1の前駆体であるポリマーF1は、ペルフルオロモノマー単位を有し、かつフルオロスルホニル基(-SO F)を有するフルオロカーボンポリマーである。
[0031]
 ポリマーF1のTQ値は、220℃以上が好ましく、225~360℃がより好ましく、230~350℃がさらに好ましい。TQ値が前記範囲の下限値以上であれば、ポリマーH1が充分な分子量を有し、機械的強度にも優れる。TQ値が前記範囲の上限値以下であれば、ポリマーH1の溶解性又は分散性がよくなり、液状組成物を調製しやすい。TQ値は、ポリマーF1の分子量の指標である。
[0032]
 ポリマーF1のTgは、5~70℃が好ましく、15~55℃がより好ましい。Tgが前記範囲の下限値以上であれば、ポリマーF1のタック性が抑えられ、取扱性や保存安定性がよくなる。Tgが前記範囲の上限値以下であれば、ポリマーF1のペレットや膜の脆さが抑えられる。
[0033]
 ペルフルオロモノマー単位としては、例えば、イオン交換基及びその前駆体基を有しないペルフルオロモノマー単位、イオン交換基の前駆体基を有するペルフルオロモノマー単位が挙げられる。
 イオン交換基及びその前駆体基を有しないペルフルオロモノマーとしては、ポリマーH1で説明したイオン交換基及びその前駆体基を有しないペルフルオロモノマーが挙げられる。
 イオン交換基の前駆体基を有するペルフルオロモノマー単位としては、例えば、国際公開第2017/221840号、国際公開第2018/012374号等に記載された公知のフルオロスルホニル基を有するペルフルオロモノマー単位、後述する単位u2が挙げられる。
[0034]
 ポリマーF1は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、他のモノマーに基づく単位を有してもよい。
 他のモノマーとしては、ポリマーH1で説明した他のモノマーが挙げられる。
[0035]
 ポリマーF1としては、水素ガス透過係数が低いポリマーH1を得やすい点から、単位u2を有するものが好ましい。ポリマーF1としては、機械的特性及び化学的耐久性に優れるポリマーH1が得られる点から、TFE単位をさらに有するものが好ましい。
[0036]
[化4]


[0037]
 R F1及びR F2は、単位u1で説明したR F1及びR F2と同じであり、好ましい形態も同様である。
[0038]
 ポリマーF1を構成する全単位のうちの単位u2、TFE単位、単位u2及びTFE単位以外の単位の割合は、ポリマーH1に要求される特性や物性(水素ガス透過性、イオン交換容量、含水率、伝導度、機械的強度、弾性率、軟化温度等)に応じて適宜決定すればよい。
[0039]
 ポリマーF1は、例えば、後述する化合物7、必要に応じてTFE、化合物7及びTFE以外のモノマーを含むモノマー成分を重合して製造できる。
 重合法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法が挙げられる。また、液体又は超臨界の二酸化炭素中にて重合してもよい。
 重合は、ラジカルが生起する条件で行われる。ラジカルを生起させる方法としては、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法、ラジカル開始剤を添加する方法等が挙げられる。重合温度は、10~150℃が好ましい。
[0040]
 (化合物7)
 化合物7は、ポリマーF1の製造に用いられる。
[0041]
[化5]


[0042]
 R F1及びR F2は、単位u1で説明したR F1及びR F2と同じであり、好ましい形態も同様である。
[0043]
 化合物7としては、例えば、化合物7-1が挙げられる。
[0044]
[化6]


[0045]
 化合物7は、例えば、以下のようにして製造できる。
 化合物1とスルホン化剤とを反応させて化合物2を得る。
 化合物2と塩素化剤とを反応させて化合物3を得る。
 化合物3とフッ素化剤とを反応させて化合物4を得る。
 化合物4をフッ素化処理して化合物5を得る。
 化合物5とペルフルオロアリル化剤(例えば、後述する化合物6)とを反応させて化合物7を得る。
[0046]
[化7]


[0047]
 ただし、R 及びR は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキレン基である。R 及びR は同一であっても異なっていてもよい。
 R F1及びR F2は、単位u1で説明したR F1及びR F2と同じであり、好ましい形態も同様である。
 R 及びR としては、例えば、-CH -、-CH CH -、-CH(CH )-、-CH CH CH -、-CH(CH CH )-、-CH(CH )CH -、-CH CH(CH )-、-C(CH )(CH )-が挙げられる。原料の化合物1がより安価であり、化合物7の製造が容易であり、また、ポリマーH1のイオン交換容量をより高くできる点から、R 及びR は、炭素数1~2のアルキレン基が好ましい。炭素数2の場合は、直鎖が好ましい。具体的には、-CH -、-CH CH -又は-CH(CH )-が好ましく、-CH -がより好ましい。
[0048]
 化合物1としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、イソプロピルエチルケトン、イソプロピルプロピルケトンが挙げられる。化合物1がより安価であり、化合物7の製造が容易であり、また、単位分子量当たりのポリマーH1のイオン交換容量をより高くできる点から、アセトンが好ましい。
[0049]
 スルホン化剤としては、例えば、塩化スルホン酸、フルオロスルホン酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄の錯体、発煙硫酸、濃硫酸が挙げられる。
 化合物1とスルホン化剤との反応温度は、0~100℃が好ましい。反応溶媒は、溶媒自身がスルホン化されにくい溶媒から適宜選択できる。反応溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロメタン、シクロヘキサン、ヘキサン、石油エーテル、ペンタン、ヘプタン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、炭酸ジエチルが挙げられる。反応溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。
[0050]
 塩素化剤としては、例えば、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、塩化ホスホリル、塩化スルホン酸、塩化スルフリル、塩化オキサリル、塩素が挙げられる。
 化合物2と塩素化剤との反応温度は、0~100℃が好ましい。反応温度が前記範囲の上限値以下であれば、化合物3の分解が抑えられることから化合物3の収率が向上する。反応温度が前記範囲の下限値以上であれば、反応速度が上がり生産性が向上する。
[0051]
 フッ素化剤としては、例えば、フッ化水素カリウム、フッ化水素ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化銀、第四級アンモニウムフルオリド(テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド等)、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化水素錯体(HF-ピリジン錯体、HF-トリエチルアミン等)が挙げられる。
 化合物3とフッ素化剤との反応温度は、-30~100℃が好ましい。反応溶媒は、フッ素化反応を受けにくい極性溶媒又は低極性溶媒から適宜選択できる。反応溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロメタン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、水が挙げられる。反応溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。
[0052]
 フッ素化処理は、化合物4とフッ素ガス又はフッ素化合物とを接触させて行う。
 フッ素化合物としては、例えば、フッ化水素、フッ化ハロゲン(三フッ化塩素、五フッ化ヨウ素等)、ガス状フッ化物(三フッ化ホウ素、三フッ化窒素、五フッ化リン、四フッ化ケイ素、六フッ化硫黄等)、金属フッ化物(フッ化リチウム、フッ化ニッケル(II)等)、ハイポフルオライト化合物(トリフルオロメチルハイポフルオライト、トリフルオロアセチルハイポフルオライト等)、求電子的フッ素化反応試薬(セレクトフルオル(登録商標)、N-フルオロベンゼンスルホンイミド等)が挙げられる。
 フッ素化処理としては、取り扱いが容易である点、及び化合物5に含まれる不純物を少なくする点から、化合物4とフッ素ガスとを接触させる処理が好ましい。フッ素ガスは、窒素ガス等の不活性ガスで希釈して用いてもよい。フッ素化処理の温度は、-20~350℃が好ましい。反応溶媒は、化合物4又は化合物5の溶解性が高く、また溶媒自身がフッ素化処理を受けにくい溶媒から適宜選択できる。反応溶媒としては、例えば、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロフルオロメタン、ペルフルオロトリアルキルアミン(ペルフルオロトリブチルアミン等)、ペルフルオロカーボン(ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン等)、ハイドロフルオロカーボン(1H,4H-ペルフルオロブタン、1H-ペルフルオロヘキサン等)、ハイドロクロロフルオロカーボン(3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン等)、ハイドロフルオロエーテル(CF CH OCF CF H等)が挙げられる。
 なお、化合物5は、フッ化水素(HF)の存在下では、O=C<部分にフッ化水素が付加してHO-CF<となったアルコール体と平衡状態にあるか、アルコール体となっている場合がある。本明細書においては、単に化合物5と記載した場合でも、化合物5及びアルコール体のいずれか一方又は両方を表していることがある。
[0053]
 ペルフルオロアリル化剤としては、化合物6が挙げられる。
 CF =CFCF -G   式6
 ただし、Gは、-OSO F、-OSO 、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、R は炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
[0054]
 化合物6としては、原料の入手性、ペルフルオロアリル化剤の反応性、合成の簡便さ、取扱いの容易さの点から、化合物6-1が好ましい。
 CF =CFCF OSO F   式6-1
[0055]
 化合物6-1は、例えば、三フッ化ホウ素の存在下にヘキサフルオロプロピレンと三酸化硫黄とを反応させて製造できる。三フッ化ホウ素の代わりに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体やトリメトキシボラン等のルイス酸を用いてもよい。
[0056]
 化合物5とペルフルオロアリル化剤との反応は、フッ化物塩の存在下に行うことが好ましい。フッ化物塩としては、例えば、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化銀、第四級アンモニウムフルオリド、フッ化ナトリウムが挙げられる。
 化合物5とペルフルオロアリル化剤との反応温度は、-70~40℃が好ましい。反応溶媒は、非プロトン性極性溶媒を含むことが好ましく、非プロトン性極性溶媒のみがより好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、例えば、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ニトロエタンが挙げられる。反応溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。
[0057]
 (ポリマーH2)
 ポリマーH2は、単位u1を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーである。
[0058]
[化8]


[0059]
 R F1及びR F2は、ポリマーH1の単位u1で説明したR F1及びR F2と同じであり、好ましい形態も同様である。
[0060]
 ポリマーH2の、温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数は、ポリマーH1の、温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数と同様の範囲が好ましい。
 ポリマーH2のイオン交換容量は、ポリマーH1のイオン交換容量と同様の範囲が好ましい。
 ポリマーH2の含水率は、ポリマーH1の含水率と同様の範囲が好ましい。
[0061]
 ポリマーH2は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、単位u1以外の単位を有してもよい。
 単位u1以外の単位としては、単位u1以外のペルフルオロモノマー単位、他のモノマーに基づく単位が挙げられる。
 ペルフルオロモノマー及び他のモノマーとしては、ポリマーH1で説明したペルフルオロモノマー及び他のモノマーが挙げられる。
 ポリマーH2としては、機械的特性及び化学的耐久性に優れる点から、TFE単位をさらに有するものが好ましい。
[0062]
 ポリマーH2を構成する全単位のうちの単位u1、TFE単位、単位u1及びTFE単位以外の単位の割合は、ポリマーH2に要求される特性や物性(水素ガス透過性、イオン交換容量、含水率、伝導度、機械的強度、弾性率、軟化温度等)に応じて適宜決定すればよい。
[0063]
 ポリマーH2は、例えば、後述するポリマーF2のフルオロスルホニル基(-SO F)を酸型のスルホン酸基(-SO )に変換して得られる。
 フルオロスルホニル基を酸型のスルホン酸基に変換する方法としては、ポリマーH1で説明した方法と同様の方法が挙げられ、好ましい形態も同様である。
[0064]
 ポリマーH2に不純物として含まれる有機物を除去するために、加水分解後の塩型のまま又は酸型化の後に、ポリマーH2を過酸化水素水に浸漬するなどの処理により、有機物を分解してもよい。
 ポリマーH2を処理する方法としては、ポリマーH1で説明した方法と同様の方法が挙げられ、好ましい形態も同様である。
[0065]
 (ポリマーF2)
 ポリマーH2の前駆体であるポリマーF2は、単位u2を有するポリマーである。
[0066]
[化9]


[0067]
 R F1及びR F2は、単位u1で説明したR F1及びR F2と同じであり、好ましい形態も同様である。
[0068]
 ポリマーF2のTQ値は、220℃以上が好ましく、225~360℃がより好ましく、230~350℃がさらに好ましい。TQ値が前記範囲の下限値以上であれば、ポリマーH2が充分な分子量を有し、機械的強度にも優れる。TQ値が前記範囲の上限値以下であれば、ポリマーH2の溶解性又は分散性がよくなり、液状組成物を調製しやすい。TQ値は、ポリマーF2の分子量の指標である。
 ポリマーF2のTgは、ポリマーF1のTgと同様の範囲が好ましい。
[0069]
 ポリマーF2は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、単位u1以外の単位を有してもよい。
 他の単位としては、ポリマーH2で説明した他の単位が挙げられる。
 ポリマーF2としては、機械的特性及び化学的耐久性に優れるポリマーH2が得られる点から、TFE単位をさらに有するものが好ましい。
[0070]
 ポリマーF2を構成する全単位のうちの単位u2、TFE単位、単位u2及びTFE単位以外の単位の割合は、ポリマーH2に要求される特性や物性(水素ガス透過性、イオン交換容量、含水率、伝導度、機械的強度、弾性率、軟化温度等)に応じて適宜決定すればよい。
 ポリマーF2は、例えば、ポリマーF1と同様の方法によって製造できる。
[0071]
 (セリウム原子)
 液状組成物に含まれるセリウム原子は、セリウム金属の状態であってもよく、難溶性セリウム化合物の状態であってもよく、セリウムイオンの状態であってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。
[0072]
 液状組成物又は固体高分子電解質膜がセリウムイオンを含むことによって、ポリマーHの陽イオンの一部がセリウムイオンにイオン交換され、過酸化水素又は過酸化物ラジカルによるポリマーHの劣化が効率よく抑えられる。セリウムイオンは、+3価でもあってもよく、+4価であってもよい。
 なお、セリウム原子が液状組成物又は固体高分子電解質膜中にセリウム金属又は難溶性セリウム化合物として含まれていても、過酸化水素又は過酸化物ラジカルによるポリマーHの劣化が抑えられる。すなわち、セリウム金属及び難溶性セリウム化合物自体は、その表面で過酸化水素又は過酸化物ラジカルを分解する触媒として機能する。また、セリウム金属及び難溶性セリウム化合物は、液状組成物又は固体高分子電解質膜中にて部分的に解離又は溶解することによって、セリウムイオンを発生しうる。
[0073]
 セリウムイオンを含む液状組成物を得るためのセリウム塩としては、例えば、炭酸セリウム、酢酸セリウム、塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、硫酸四アンモニウムセリウムが挙げられ、炭酸をガスとして液状組成物から容易に除去できる点から、炭酸セリウムが好ましい。セリウム塩は、有機金属錯塩でもよい。有機金属錯塩としては、例えば、セリウムアセチルアセトナートが挙げられる。
[0074]
 難溶性セリウム化合物としては、例えば、リン酸セリウム、酸化セリウム、水酸化セリウム、フッ化セリウム、シュウ酸セリウム、タングステン酸セリウム、ヘテロポリ酸のセリウム塩が挙げられる。過酸化水素又は過酸化物ラジカルによるポリマーHの劣化を抑える効果が高い点から、リン酸セリウム、酸化セリウム、フッ化セリウム、タングステン酸セリウム及びヘテロポリ酸のセリウム塩から選ばれる1種以上が好ましい。液状組成物に添加した際の分散性に優れる点から、酸化セリウムが特に好ましい。
[0075]
 ポリマーHが有するスルホン酸基の総モル数に対するセリウム原子の総モル数の割合は、0.001~0.13が好ましく、0.003~0.066がより好ましく、0.003~0.017がさらに好ましい。スルホン酸基の数に対するセリウム原子の数の割合が前記範囲の下限値以上であれば、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する固体高分子電解質膜の耐久性がさらに優れる。スルホン酸基の数に対するセリウム原子の数の割合が前記範囲の上限値以下であれば、セリウム原子がイオン化してスルホン酸基とイオン交換した際の交換量が抑制できるため、液状組成物から作製される固体高分子電解質膜のプロトン伝導性を高く維持できる。
[0076]
 液状組成物は、液状媒体と、ポリマーHと、セリウム金属、難溶性セリウム化合物及びセリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合して得られる。
 混合方法としては、例えば、大気圧下、又はオートクレーブ等で密閉した状態下において、液状媒体中のポリマーH等に撹拌等のせん断を加える方法が挙げられる。
 撹拌時の温度は、0~250℃が好ましく、20~150℃がより好ましい。必要に応じて、超音波等のせん断を付与してもよい。
[0077]
 (作用機序)
 以上説明した本発明の液状組成物にあっては、温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下であるポリマーH1を含む、又は単位u1を有するポリマーH2を含むため、水素ガスバリア性に優れた膜を形成できる。
 また、本発明の液状組成物にあっては、セリウム原子を含むため、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性に優れた膜を形成できる。
[0078]
<固体高分子電解質膜>
 本発明の固体高分子電解質膜は、ポリマーHと、セリウム原子とを含む膜である。
 本発明の固体高分子電解質膜のポリマーHとしては、本発明の液状組成物に含まれるポリマーHと同様のものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
 本発明の固体高分子電解質膜のポリマーHのイオン交換容量は、本発明の液状組成物に含まれるポリマーHと同様の範囲が好ましい。
 セリウム原子としては、本発明の液状組成物に含まれるセリウム原子と同様のものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
 ポリマーHが有するスルホン酸基の数に対するセリウム原子の数の割合の好ましい範囲は、本発明の液状組成物における好ましい範囲と同様である。
[0079]
 固体高分子電解質膜の厚さは、5~200μmが好ましく、10~130μmがより好ましい。固体高分子電解質膜の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、膜抵抗が充分に下がる。固体高分子電解質膜の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、充分な水素ガスバリア性を確保できる。
[0080]
 固体高分子電解質膜は、補強材で補強されていてもよい。補強材としては、例えば、多孔体、繊維、織布、不織布が挙げられる。補強材の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、TFE-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、TFE-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
 固体高分子電解質膜は、乾燥を防ぐための保水剤として、シリカ、又はヘテロポリ酸(リン酸ジルコニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸等)を含んでいてもよい。
[0081]
 固体高分子電解質膜は、例えば、本発明の液状組成物を基材フィルム又は触媒層の表面に塗布し、乾燥させる方法(キャスト法)によって形成できる。固体高分子電解質膜が補強材をさらに含む場合、固体高分子電解質膜は、例えば、本発明の液状組成物を補強材に含浸し、乾燥させる方法によって形成できる。
[0082]
 固体高分子電解質膜を安定化させるために、熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は、ポリマーHの種類にもよるが、130~200℃が好ましい。熱処理の温度が130℃以上であれば、ポリマーHが過度に含水しなくなる。熱処理の温度が200℃以下であれば、スルホン酸基の熱分解が抑えられ、固体高分子電解質膜の伝導度の低下が抑えられる。
 固体高分子電解質膜は、必要に応じて過酸化水素水で処理してもよい。
[0083]
 以上説明した本発明の固体高分子電解質膜にあっては、ポリマーHを含むため、水素ガスバリア性に優れる。
 また、本発明の固体高分子電解質膜にあっては、セリウム原子を含むため、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する耐久性に優れる。
[0084]
<膜電極接合体>
 図1は、本発明の膜電極接合体の一例を示す断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11及びガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11及びガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置される固体高分子電解質膜15とを具備する。
[0085]
 触媒層11は、触媒と、イオン交換基を有するポリマーとを含む層である。
 触媒としては、例えば、カーボン担体に白金又は白金合金を担持した担持触媒が例示される。
 カーボン担体としては、カーボンブラック粉末が例示される。
 イオン交換基を有するポリマーとしては、例えば、ポリマーH、ポリマーH以外のイオン交換基を有するペルフルオロカーボンポリマーが挙げられる。触媒層11に含まれるポリマーのイオン交換基は、酸型が好ましく、酸型のスルホン酸基が好ましい。
[0086]
 ガス拡散層12は、触媒層11に均一にガスを拡散させる機能及び集電体としての機能を有する。ガス拡散層12としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。ガス拡散層12は、ポリテトラフルオロエチレン等によって撥水化処理されていることが好ましい。
[0087]
 固体高分子電解質膜15は、本発明の固体高分子電解質膜である。
[0088]
 図2に示すように、膜電極接合体10は、触媒層11とガス拡散層12との間にカーボン層16を有してもよい。
 カーボン層16を配置することによって、触媒層11の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電特性が大きく向上する。
 カーボン層16は、カーボンと非イオン性含フッ素ポリマーとを含む層である。
 カーボンとしては、例えば、カーボン粒子、カーボンファイバー等が挙げられ、繊維径1~1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。非イオン性含フッ素ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
[0089]
 膜電極接合体10がカーボン層16を有しない場合、膜電極接合体10は、例えば、下記の方法にて製造される。
 ・固体高分子電解質膜15上に触媒層11を形成して膜触媒層接合体とし、膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
 ・ガス拡散層12上に触媒層11を形成して電極(アノード13、カソード14)とし、固体高分子電解質膜15を電極で挟み込む方法。
[0090]
 膜電極接合体10がカーボン層16を有する場合、膜電極接合体10は、例えば、下記の方法にて製造される。
 ・基材フィルム上に、カーボン及び非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層16を形成し、カーボン層上に触媒層11を形成し、触媒層11と固体高分子電解質膜15とを貼り合わせ、基材フィルムを剥離して、カーボン層16を有する膜触媒層接合体とし、膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
 ・ガス拡散層上12に、カーボン及び非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層16を形成し、固体高分子電解質膜15上に触媒層11を形成した膜触媒層接合体を、カーボン層16を有するガス拡散層12で挟み込む方法。
[0091]
 触媒層11の形成方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
 ・触媒層形成用塗工液を、固体高分子電解質膜15、ガス拡散層12、又はカーボン層16上に塗布し、乾燥させる方法。
 ・触媒層形成用塗工液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させて触媒層11を形成し、触媒層11を固体高分子電解質膜15上に転写する方法。
[0092]
 触媒層形成用塗工液は、イオン交換基を有するポリマー及び触媒を分散媒に分散させた液である。触媒層形成用塗工液は、例えば、イオン交換基を有するポリマーを含む液状組成物と、触媒の分散液とを混合することによって調製できる。触媒層形成用塗工液は、触媒層11の耐久性をさらに向上させるために、セリウム及びマンガンからなる群から選ばれる1種以上の金属、金属化合物、又は金属イオンを含んでいてもよい。
[0093]
 以上説明した膜電極接合体10にあっては、固体高分子電解質膜15が、ポリマーHを含むため、固体高分子電解質膜15の水素ガスバリア性に優れる。
 また、膜電極接合体10にあっては、固体高分子電解質膜15が、セリウム原子を含むため、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する固体高分子電解質膜15の耐久性に優れる。
[0094]
<固体高分子形燃料電池>
 本発明の固体高分子形燃料電池は、本発明の膜電極接合体を備える。
 本発明の固体高分子形燃料電池は、膜電極接合体の両面に、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータを配置したものであってもよい。セパレータとしては、例えば、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
 固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給して発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、膜電極接合体を適用できる。
[0095]
 本発明の固体高分子形燃料電池にあっては、膜電極接合体の固体高分子電解質膜が、ポリマーHを含むため、固体高分子電解質膜の水素ガスバリア性に優れる。
 また、本発明の固体高分子形燃料電池にあっては、膜電極接合体の固体高分子電解質膜が、セリウム原子を含むため、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する固体高分子電解質膜の耐久性に優れる。
実施例
[0096]
 以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
 例1~7は製造例であり、例8は実施例であり、例9は比較例である。
 以下、温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)超である酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマー、又は単位u1を有しない酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーを「ポリマーH’」と記す。また、ポリマーH’の前駆体であるフルオロスルホニル基含有フルオロカーボンポリマーを「ポリマーF’」と記す。
[0097]
 ( H-NMR)
  H-NMRは、周波数:300.4MHz、化学シフト基準:テトラメチルシランの条件にて測定した。溶媒としては、特に付記のない限りCD CNを用いた。生成物の定量は、 H-NMRの分析結果及び内部標準試料(1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)の添加量から行った。
[0098]
 ( 19F-NMR)
  19F-NMRは、周波数:282.7MHz、溶媒:CD CN、化学シフト基準:CFCl の条件にて測定した。生成物の定量は、 19F-NMRの分析結果及び内部標準試料(1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)の添加量から行った。
[0099]
 ( 13C-NMR)
  13C-NMRは、周波数:75.5MHz、化学シフト基準:テトラメチルシランの条件にて測定した。溶媒は、特に付記のない限りCD CNを用いた。
[0100]
 (収率)
 収率は、反応工程の収率×精製工程の収率を意味する。反応収率は、目的物を精製する前の反応工程の収率のみの、精製工程のロスが含まれない収率を意味する。
[0101]
 (イオン交換容量)
 ポリマーF又はポリマーF’の膜を120℃で12時間真空乾燥した。乾燥後のポリマーの膜の質量を測定した後、ポリマーの膜を0.85モル/gの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:水/メタノール=10/90(質量比))に60℃で72時間以上浸漬して、フルオロスルホニル基を加水分解した。加水分解後の水酸化ナトリウム溶液を0.1モル/Lの塩酸で逆滴定することによってポリマーF又はポリマーF’のイオン交換容量を求めた。本明細書においては、ポリマーH又はポリマーH’のイオン交換容量は、前駆体であるポリマーF又はポリマーF’のイオン交換容量と同じであるとして記載した。
[0102]
 (各単位の割合)
 ポリマーF又はポリマーF’における各単位の割合は、ポリマーF又はポリマーF’のイオン交換容量から算出した。
 ポリマーH又はポリマーH’における各単位の割合は、ポリマーF又はポリマーF’における各単位の割合に対応しているため、省略する。
[0103]
 (TQ値)
 長さ1mm、内径1mmのノズルを備えたフローテスタ(島津製作所社製、CFT-500A)を用い、2.94MPa(ゲージ圧)の押出し圧力の条件で温度を変えながらポリマーF又はポリマーF’を溶融押出した。ポリマーF又はポリマーF’の押出し量が100mm /秒となる温度(TQ値)を求めた。TQ値が高いほどポリマーの分子量は大きい。
[0104]
 (動的粘弾性)
 ポリマーF又はポリマーF’の膜について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-225)を用いて試料幅:5.0mm、つかみ間長:15mm、測定周波数:1Hz、昇温速度:2℃/分、引張モードの条件にて、動的粘弾性測定を行った。損失弾性率E”と貯蔵弾性率E’との比(E”/E’)からtanδ(損失正接)を算出し、tanδ-温度曲線を作成した。tanδ-温度曲線から-100~200℃の間のピーク温度を読み取った値をポリマーF又はポリマーF’のTgとした。また、ポリマーH又はポリマーH’の膜について、同様に動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率E’-温度曲線を作成し、120℃における貯蔵弾性率を読み取った値をポリマーH又はポリマーH’の120℃弾性率とした。
[0105]
 (伝導度)
 幅5mmのポリマーH又はポリマーH’の膜に、5mm間隔で4端子電極が配置された基板を密着させ、公知の4端子法によって、温度:80℃、相対湿度:50%の恒温恒湿条件下にて交流:10kHz、電圧:1VでポリマーH又はポリマーH’の膜の抵抗を測定し、伝導度を算出した。なお、算出に用いた膜の基準寸法及び厚さは、温度23℃、相対湿度:50%RHの条件にて測定した。
[0106]
 (含水率)
 ポリマーH又はポリマーH’の膜を80℃の温水に16時間浸漬した後、水温が25℃以下になるまで冷却した。ポリマーH又はポリマーH’の膜を取り出し、膜の表面に付着した水をろ紙でふき取り、ポリマーH又はポリマーH’の膜の質量W1を測定した。ポリマーH又はポリマーH’の膜を窒素雰囲気のグローブボックス内にて48時間以上乾燥した後、グローブボックス内でポリマーH又はポリマーH’の膜の質量W2を測定した。下式Iから含水率(質量基準)を求めた。
 含水率=(W1-W2)/W2×100   式I
[0107]
 (水素ガス透過係数1)
 固体高分子電解質膜について、JIS K 7126-2:2006に準拠して水素ガス透過係数を測定した。測定装置としてはガス透過率測定装置(GTRテック社製、GTR-100XFAG)を用いた。
 有効透過面積が9.62cm の固体高分子電解質膜を80℃に保ち、第1の面に、相対湿度を10%に調湿した水素ガスを30mL/分で流し、第2の面に、相対湿度を10%に調湿したアルゴンガスを30mL/分で流した。アルゴンガスに透過してくる水素ガスをガスクロマトグラフィーで検出し、25℃、1気圧の体積に換算した水素ガス透過量を求めた。得られた水素ガス透過量を用いて、膜面積1cm 、透過ガスの圧力差1cmHgあたり、1秒間に透過するガスの透過度を求め、厚さ1cmの膜に換算した値を水素ガス透過係数とした。なお、算出に用いた膜の基準寸法及び厚さは、温度23℃、相対湿度:50%RHの条件にて測定した。
[0108]
 (水素ガス透過係数2)
 第1の面と第2の面に流す水素ガスの相対湿度を20%に調湿した以外は、水素ガス透過係数1と同様にして測定して求められる値を水素ガス透過係数2とした。
[0109]
 (初期発電特性)
 膜電極接合体を発電用セルに組み込み、膜電極接合体の温度を95℃に維持し、アノードに水素ガス(利用率70%)、カソードに酸素(利用率50%)を、それぞれ151kPa(絶対圧力)に加圧して供給する。ガスの加湿度は水素、酸素ともに相対湿度20%RHとし、電流密度が1A/cm のときのセル電圧を記録し、下記基準にて評価する。
 ◎:セル電圧が0.630V以上である。
 ○:セル電圧が0.615V以上0.630V未満である。
 △:セル電圧が0.600V以上0.615V未満である。
 ×:セル電圧が0.600V未満である。
[0110]
 (耐久性)
 膜電極接合体を発電用セルに組み込み、加速試験として開回路電圧試験を行う。試験は、常圧で電流密度0.2A/cm に相当する水素(利用率50%)及び酸素(利用率50%)をそれぞれアノード及びカソードに供給し、セル温度:120℃、水素及び酸素の相対湿度:20%RHにて開回路電圧の経時変化を記録し、下記基準にて評価する。
 ◎:500時間経過後の開回路電圧の低下が初期の開回路電圧と比較して50mV未満である。
 ○:100時間経過後の開回路電圧の低下は初期の開回路電圧と比較して50mV未満だが、500時間経過後の開回路電圧の低下は初期の開回路電圧と比較して50mV以上である。
 ×:100時間経過後の開回路電圧の低下が初期の開回路電圧と比較して50mV以上である。
[0111]
 (水素リーク量)
 膜電極接合体の電解質膜を透過してアノード側からカソード側へ透過する水素リーク量をリニアスイープボルタンメトリー法によってカソード側における水素の酸化電流値として定量する。試験は、常圧で水素(0.05mL/min)及び窒素(0.2mL/min)をそれぞれアノード及びカソードに供給し、セル温度:80℃、水素及び窒素の相対湿度:30%RHにて、アノード側を参照極としてカソード側の電位を0.05Vから0.5Vへ0.5mV/secの掃引速度で掃引する。得られる電位に対する電流密度の関係において、0.4~0.5Vの範囲の線形近似式の切片の値を水素リーク電流値とし、下記基準にて評価する。
 ◎:水素リーク電流値が1mA/cm 以下である。
 ○:水素リーク電流値が1mA/cm 超1.4mA/cm 以下である。
 ×:水素リーク電流値が1.4mA/cm 超である。
[0112]
 (略号)
 TFE:テトラフルオロエチレン、
 PSVE:CF =CFOCF CF(CF )OCF CF SO F、
 P2SVE:CF =CFOCF CF(CF OCF CF SO F)OCF CF SO F、
 sPSVE:CF =CFOCF CF SO F、
 PFtBPO:(CF COOC(CF
 tBPO:(CH COOC(CH
 AIBN:(CH C(CN)N=NC(CH (CN)、
 IPP:(CH CHOC(O)OOC(O)OCH(CH
 V-601:CH OC(O)C(CH -N=N-C(CH C(O)OCH
 HFC-52-13p:CF (CF H、
 HFE-347pc-f:CF CH OCF CF H、
 HCFC-225cb:CClF CF CHClF、
 HCFC-141b:CH CCl F。
[0113]
[例1]
 (例1-1)
 撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えた2Lの4つ口フラスコに、窒素ガスシール下、塩化スルホン酸の560gを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、内温を20℃以下に保ったまま化合物1-1の139.5gとジクロロメタンの478.7gの混合液を20分かけて滴下した。滴下時は発熱とガスの発生が見られた。滴下完了後、フラスコをオイルバスにセットし、内温を30~40℃に保ったまま7時間反応させた。反応はガスの発生を伴いながら進行し、白色の固体が析出した。反応後、フラスコ内を減圧にしてジクロロメタンを留去した。フラスコ内には黄色味を帯びた白色固体が残った。固体を H-NMRで分析したところ、化合物2-1が生成していることを確認した。
[0114]
[化10]


[0115]
 化合物2-1のNMRスペクトル;
  H-NMR(溶媒:D O):4.27ppm(-CH -、4H、s)。
  13C-NMR(溶媒:D O):62.6ppm(-CH -)、195.3ppm(C=O)。
[0116]
 (例1-2)
 例1-1で得た化合物2-1は単離せずに、次の反応にそのまま用いた。例1-1のフラスコ内に塩化チオニルの2049gを加えた。フラスコを80℃に加熱して15時間還流した。反応の進行に伴い、還流温度は52℃から72℃まで上昇した。反応中はガスの発生が確認された。化合物2-1がすべて溶解し、ガスの発生が収まった点を反応終点とした。反応液を2Lのセパラブルフラスコへ移し、気相部を窒素ガスでシールしながら9時間放冷したところ、セパラブルフラスコ内に黒褐色の固体が析出した。デカンテーションで未反応の塩化チオニルを除去した。トルエンを添加して析出固体を洗浄し、再びデカンテーションでトルエンを除去した。トルエン洗浄は合計3回実施し、トルエンの使用量は合計1207gだった。析出固体を窒素ガス気流下、25℃にて71時間乾燥した。乾燥後の固体を回収し、 H-NMRで分析したところ、純度96.2%の化合物3-1の356.5gが得られたことを確認した。化合物1-1基準の収率は56.0%となった。
[0117]
[化11]


[0118]
 化合物3-1のNMRスペクトル;
  H-NMR:5.20ppm(-CH -、4H、s)。
  13C-NMR:72.3ppm(-CH -)、184.6ppm(C=O)。
[0119]
 (例1-3)
 撹拌機、コンデンサー、温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、窒素ガスシール下、化合物3-1の90.0gとアセトニトリルの750mLを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、撹拌しながらフッ化水素カリウムの110.3gを加えた。添加に伴う発熱はわずかだった。氷浴を水浴に変え、内温を15~25℃に保ったまま62時間反応させた。反応に伴い、細かい白色の固体が生成した。反応液を加圧ろ過器へ移し、未反応のフッ化水素カリウムと生成物をろ別した。ろ過器にアセトニトリルを加え、ろ液が透明になるまでろ別した固体を洗浄し、洗浄液を回収した。ろ液と洗浄液をエバポレーターにかけてアセトニトリルを留去した。乾固して残った固体にトルエンの950mLを添加し、100℃に加熱して固体をトルエンに溶解させた。溶解液を自然ろ過して未溶解分を除去した。ろ液を1Lのセパラブルフラスコへ移し、気相部を窒素ガスでシールしながら14時間放冷したところ、セパラブルフラスコ内に薄茶色の針状結晶が析出した。トルエンで結晶を洗浄し、窒素ガス気流下、25℃にて30時間乾燥させた。乾燥後の固体を回収し H-NMR及び 19F-NMRで分析したところ、純度97.6%の化合物4-1の58.1gが得られたことを確認した。化合物3-1基準の収率は72.3%となった。
[0120]
[化12]


[0121]
 化合物4-1のNMRスペクトル;
  H-NMR:4.97ppm(-CH -、4H、d、J=3.1Hz)。
  19F-NMR:62.4ppm(-SO F、2F、t、J=3.1Hz)。
  13C-NMR:60.7ppm(-CH -)、184.9ppm(C=O)。
[0122]
 (例1-4)
 200mLのニッケル製オートクレーブに、化合物4-1の9.93gとアセトニトリルの89.7gを仕込んだ。オートクレーブを冷却し、内温を0~5℃に保ちながら窒素ガスを6.7L/hrの流量でフィードして、反応液を1時間バブリングした。反応液の温度を0~5℃に保ちながら、フッ素ガスと窒素ガスとの混合ガス(混合比=10.3モル%/89.7モル%)を6.7L/hrの流量で6時間かけて導入した。再び窒素ガスを6.7L/hrの流量でフィードし、反応液を1時間バブリングした。オートクレーブから反応液の103.2gを回収した。反応液を 19F-NMRで定量分析したところ、化合物5-1が8.4質量%含まれていることを確認した。化合物4-1基準の反応収率は66%となった。
[0123]
[化13]


[0124]
 化合物5-1のNMRスペクトル;
  19F-NMR:-104.1ppm(-CF -、4F、s)、45.8ppm(-SO F、2F、s)。
[0125]
 (例1-5)
 200mLのニッケル製オートクレーブに、化合物4-1の19.9gとアセトニトリルの85.6gを仕込んだ。オートクレーブを冷却し、内温を0~5℃に保ちながら窒素ガスを6.7L/hrの流量でフィードして、反応液を1時間バブリングした。反応液の温度を0~5℃に保ちながら、フッ素ガスと窒素ガスとの混合ガス(混合比=10.3モル%/89.7モル%)を16.4L/hrの流量で6.5時間かけて導入した。再び窒素ガスを6.7L/hrの流量でフィードし、反応液を1時間バブリングした。オートクレーブから化合物5-1を含む反応液の109.6gを回収した。
[0126]
 (例1-6)
 200mLのニッケル製オートクレーブに、化合物4-1の20.1gとアセトニトリルの80.1gを仕込んだ。オートクレーブを冷却し、内温を0~5℃に保ちながら窒素ガスを6.7L/hrの流量でフィードして、反応液を1時間バブリングした。反応液の温度を0~5℃に保ちながら、フッ素ガスと窒素ガスとの混合ガス(混合比=20.0モル%/80.0モル%)を8.4L/hrの流量で6時間かけて導入した。再び窒素ガスを6.7L/hrの流量でフィードし、反応液を1時間バブリングした。オートクレーブから化合物5-1を含む反応液の107.1gを回収した。
[0127]
 (例1-7)
 撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えた50mLの4つ口フラスコに、フッ化カリウムの1.65gとジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)の7.8mLを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、撹拌して内温を0~10℃に保ちながら例1-4で得た反応液の8.43gを、プラスチックシリンジを用いて滴下した。強い発熱を確認し、滴下には15分を要した。滴下完了後に氷浴を水浴に替え、15~20℃で1時間反応させた。再度氷浴にて冷却し、反応液の温度を0~10℃に保ちながら滴下ロートから化合物6-1の6.56gを滴下した。滴下完了後、氷浴を水浴に替えて20~25℃で3.5時間反応させた。吸引ろ過により反応液から副生固体を除去し、ろ液を回収した。ろ過残固体は適当量のアセトニトリルで洗浄し、洗浄液はろ液と混合した。ろ液の37.1gを 19F-NMRで定量分析したところ、化合物7-1が2.04質量%含まれていることを確認した。化合物4-1基準の反応収率は46.6%となった。
[0128]
[化14]


[0129]
 化合物7-1のNMRスペクトル;
  19F-NMR:-191.5ppm(CF =CF-、1F、ddt、J=116、38、14Hz)、-133.8ppm(-O-CF-、1F、tt、J=21.3、6.1Hz)、-103.1ppm(-CF -SO F、4F、m)、-101.5ppm(CF =CF-、1F、ddt、J=116、49、27Hz)、-87.6ppm(CF =CF-、1F、ddt、J=49、38、7Hz)、-67.5ppm(-CF -O-、2F、m)、46.8ppm(-SO F、2F、s)。
[0130]
 (例1-8)
 撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えた500mLの4つ口フラスコに、フッ化カリウムの36.6gとアセトニトリルの125.6gを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、撹拌して内温を0~10℃に保ちながら例1-5で得た反応液の79.8gを、プラスチック製滴下ロートを用いて滴下した。強い発熱を確認し、滴下には23分を要した。滴下完了後に氷浴を水浴に替え、20~30℃で5.5時間反応させた。再度氷浴にて冷却し、反応液の温度を0~10℃に保ちながら滴下ロートから化合物6-1の146.0gを滴下した。滴下完了後、氷浴を水浴に替えて15~25℃で16時間反応させた。例1-7と同様にして吸引ろ過し、得られたろ液の412.3gを 19F-NMRで定量分析したところ、化合物7-1が3.93質量%含まれていることを確認した。化合物4-1基準の反応収率は55.9%となった。ろ液を減圧蒸留することにより、沸点97.2℃/10kPa留分として化合物7-1を単離した。ガスクロマトグラフィー純度は98.0%であった。
[0131]
 (例1-9)
 撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えた50mLの4つ口フラスコに、フッ化カリウムの3.70gとアセトニトリルの10.9gを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、撹拌して内温を0~10℃に保ちながら例1-6で得た反応液の10.2gを、プラスチックシリンジを用いて滴下した。強い発熱を確認し、滴下には8分を要した。滴下完了後に氷浴を水浴に替え、20~30℃で3時間反応させた。再度氷浴にて冷却し、反応液の温度を0~10℃に保ちながら滴下ロートから化合物6-1の14.6gを滴下した。滴下完了後、氷浴を水浴に替えて15~25℃で17時間反応させた。例1-7と同様にして吸引ろ過し、得られたろ液の55.9gを 19F-NMRで定量分析したところ、化合物7-1が4.77質量%含まれていることを確認した。化合物4-1基準の反応収率は69.6%となった。また、化合物1-1基準の反応収率(モノマー合成工程全体での反応収率)は、28.2%となった。
[0132]
[例2]
 (例2-1)
 オートクレーブ(内容積100mL、ステンレス製)に、化合物7-1の70.0gを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。オートクレーブにTFEの2.53gを導入し、内温が100℃になるまでオイルバスにて加温した。このときの圧力は0.29MPa(ゲージ圧)であった。重合開始剤であるPFtBPOの36.3mgとHFC-52-13pの2.58gとの混合液をオートクレーブ内に圧入した。さらに圧入ラインから窒素ガスを導入し、圧入ライン内の圧入液を完全に押し込んだ。この操作により気相部のTFEが希釈された結果、圧力は0.56MPa(ゲージ圧)まで増加した。圧力を0.56MPa(ゲージ圧)で維持したままTFEを連続添加し重合を行った。9.5時間でTFEの添加量が4.03gになったところでオートクレーブ内を冷却して重合を停止し、系内のガスをパージした。反応液をHFC-52-13pで希釈後、HFE-347pc-fを添加し、ポリマーを凝集してろ過した。その後、HFC-52-13p中でポリマーを撹拌して、HFE-347pc-fで再凝集する操作を2回繰り返した。120℃で真空乾燥して、TFEと化合物7-1とのコポリマーであるポリマーF-1を得た。結果を表1に示す。
[0133]
 (例2-2、例2-3)
 例2-1の各条件を表1のように変更した。ただし、例2-2及び例2-3ではTFEの初期仕込みを行わず、代わりに重合温度まで加温してから表1に記載の窒素ガス希釈前圧力までTFEを張りこんだ。例2-3では重合開始剤を初期一括で圧入する代わりに、所定の重合圧力まで窒素ガス希釈を行ったのち、化合物7-1に溶解したtBPOの0.20質量%溶液を重合開始時及び30分毎に圧入ラインから間欠添加させた(重合開始剤及び化合物7-1の合計添加量を表1に示した)。それ以外は、例2-1と同様にしてポリマーF-2及びポリマーF-3を得た。結果を表1に示す。
[0134]
[表1]


[0135]
[例3]
 (例3-1~例3-3)
 例2で得たポリマーF-1~ポリマーF-3を用い、下記の方法にてポリマーH-1~ポリマーH-3の膜を得た。
 ポリマーFを、TQ値より10℃高い温度又は260℃のうち、どちらか低い方の温度、及び4MPa(ゲージ圧)で加圧プレス成形し、ポリマーFの膜(厚さ100~250μm)を得た。表2に示すアルカリ水溶液中に、80℃にてポリマーFの膜を16時間浸漬させ、ポリマーFの-SO Fを加水分解し、-SO Kに変換した。さらにポリマーの膜を、3モル/Lの塩酸水溶液に50℃で30分間浸漬した後、80℃の超純水に30分間浸漬した。塩酸水溶液への浸漬と超純水への浸漬のサイクルを合計5回実施し、ポリマーの-SO Kを-SO Hに変換した。ポリマーの膜を浸漬している水のpHが7となるまで超純水による洗浄を繰り返した。ポリマーの膜をろ紙に挟んで風乾し、ポリマーHの膜を得た。結果を表2に示す。
[0136]
[表2]


[0137]
 表2及び表4中、水溶液Aは、水酸化カリウム/水=20/80(質量比)であり、水溶液Bは、水酸化カリウム/ジメチルスルホキシド/水=15/30/55(質量比)であり、水溶液Cは、水酸化カリウム/メタノール/水=15/20/65(質量比)である。
[0138]
[例4]
 (例4-1)
 内容積230mLのハステロイ製オートクレーブに、PSVEの123.8g、HCFC-225cbの35.2g、AIBNの63.6mgを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。70℃に昇温してTFEを系内に導入し、圧力を1.14MPa(ゲージ圧)に保持した。圧力が1.14MPa(ゲージ圧)で一定になるように、TFEを連続的に添加した。7.9時間経過後、TFEの添加量が12.4gとなったところでオートクレーブを冷却して、系内のガスをパージして反応を終了させた。ポリマー溶液をHCFC-225cbで希釈してから、HCFC-141bを添加して、凝集した。HCFC-225cb及びHCFC-141bを用いて洗浄を行った後、乾燥して、TFEとPSVEとのコポリマーであるポリマーF’-1の25.1gを得た。結果を表3に示す。
[0139]
 (例4-2~例4-4)
 例4-1の各条件を表3のように変更した以外は、例4-1と同様にしてTFEと、P2SVE又はsPSVEとを共重合し、ポリマーF’-2~F’-4を得た。結果を表3に示す。
[0140]
[表3]


[0141]
[例5]
 (例5-1~例5-4)
 例3と同様にしてポリマーF’-1~F’-4を処理し、ポリマーH’-1~H’-4の膜を得た。結果を表4に示す。
[0142]
[表4]


[0143]
[例6]
 (例6-1)
 100mLのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の容器に、細かく切断したポリマーH-1の膜の4.3g、超純水の75gを加え、200℃で24時間加温した。内容物をPTFE製バットに移し、窒素雰囲気下30℃で64時間かけて風乾させた。乾固したポリマーH-1を200mLのガラス製オートクレーブに移し、超純水/エタノールの混合溶媒(50/50(質量比))の21.4gを加えた。110℃で25時間撹拌した後、超純水の3.87gを加えて希釈した。90℃で5時間撹拌した後、放冷し、加圧ろ過機(ろ紙:アドバンテック東洋社製、PF040)を用いてろ過することによって、ポリマーH-1が混合溶媒に分散した液状組成物S-1の31.9gを得た。
 液状組成物S-1を100μmのエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)製シート上に、ダイコーターにて塗工して製膜し、これを80℃で15分乾燥し、さらに185℃で30分の熱処理を施し、ポリマーHの膜からなる固体高分子電解質膜を得た。結果を表5に示す。
[0144]
 (例6-2、例6-3)
 各成分の仕込み量を変更した以外は、例6-1と同様にして、表5に示す固形分濃度の液状組成物S-2およびS-3を得た。
 液状組成物を変更した以外は、例6-1と同様にして、ポリマーHの膜からなる固体高分子電解質膜を得た。結果を表5に示す。
[0145]
[表5]


[0146]
[例7]
 (例7-1)
 オートクレーブ(内容積200mL、ガラス製)に、細かく切断したポリマーH’-1の膜の20g、エタノール/水の混合溶媒(60/40(質量比))の56.9gを加え、撹拌しながらオートクレーブを加熱した。115℃で16時間撹拌した後に放冷し、加圧ろ過機(ろ紙:アドバンテック東洋社製、PF040)を用いてろ過することによって、ポリマーH’-1が混合溶媒に分散した液状組成物S’-1の76.5gを得た。
 液状組成物S’-1を用い、熱処理温度を160℃で30分とした以外は、例6-1と同様にしてポリマーH’-1の膜からなる固体高分子電解質膜を得た。結果を表6に示す。
[0147]
 (例7-2~例7-4)
 各成分の仕込み量を変更した以外は、例7-1と同様にして、表6に示す固形分濃度の液状組成物S’-2~S’-4を得た。
 液状組成物及び膜の厚さを変更した以外は、例7-1と同様にして、ポリマーH’の膜からなる固体高分子電解質膜を得た。結果を表6に示す。
[0148]
[表6]


[0149]
[例8]
 (例8-1)
 液状組成物S-1に、セリウム原子の総モル数の割合がポリマーH-1中のスルホン酸基の総モル数に対して0.0067となるように炭酸セリウム水和物(Ce (CO ・8H O)を加え、50℃で24時間撹拌し、液状組成物L-1を得る。
 液状組成物L-1を100μmのETFE製シート上に、ダイコーターにて塗工して製膜し、これを80℃で15分乾燥し、さらに185℃で30分の熱処理を施し、厚さ25μmの固体高分子電解質膜を得る。
[0150]
 ポリマーH’-1とエタノール/水の混合溶媒(60/40(質量比))とを混合し、固形分濃度が25.8質量%のポリマーH’-1分散液を得る。
 カーボン粉末に白金を46質量%担持した担持触媒(田中貴金属工業社製)の44gに水の221.76g、エタノールの174.24gを加え、超音波ホモジナイザーを用いて混合粉砕し、触媒の分散液を得る。触媒の分散液に、ポリマーH’-1分散液の80.16gとエタノールの44.4gとゼオローラ-H(日本ゼオン製)の25.32gをあらかじめ混合、混練した混合液の102.06gを加え、さらに水の26.77g、エタノールの12gを加えて超音波ホモジナイザーを用いて混合し、固形分濃度を10質量%とし、触媒層形成用塗工液を得る。該液をETFE製シート上にダイコーターで塗布し、80℃で乾燥させ、さらに160℃で30分の熱処理を施し、白金量が0.4mg/cm の触媒層を形成する。
[0151]
 気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF-H、繊維径約150nm、繊維長10~20μm)の50gにエタノール81.6g及び蒸留水154.4gを添加し、よく撹拌する。これに、酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマー(AGC社製、商品名:フレミオン、イオン交換容量:1.1meq/g、固形分濃度:28.1%)の89gを添加してよく撹拌し、さらに超音波ホモジナイザーを用いて混合、粉砕させて中間層形成用塗布液を調製する。
 ガス拡散基材(NOK社製、商品名:X0086 T10X13)の表面に中間層形成用塗布液を、固形分量が3mg/cm となるようにダイコーターを用いて塗工し、80℃で乾燥し、カーボン不織布の表面に中間層が形成された中間層付きガス拡散基材を作製する。
[0152]
 固体高分子電解質膜を2枚の触媒層付きETFE製シートで両側から挟み、プレス温度160℃、プレス時間2分、圧力3MPaの条件にて加熱プレスし、固体高分子電解質膜の両面に触媒層を接合し、触媒層からETFEフィルムを剥離して、電極面積25cm の膜触媒層接合体を得る。
 前記膜触媒層接合体に、アノード側にカーボン層付きガス拡散基材(NOK社製、商品名:X0086 IX92 CX320)、カソード側に前記中間層付きガス拡散基材をそれぞれカーボン層、中間層が触媒層側と接するように配置する。プレス温度160℃、プレス時間2分、圧力3MPaで加熱プレスして、初期発電特性評価及び水素リーク量の評価に供する膜電極接合体を作製する。結果を表7に示す。
 前記膜触媒層接合体に、アノード側に350℃、2時間で焼成したカーボン層付きガス拡散基材(NOK社製、商品名:X0086 IX92 CX320)、カソード側に350℃2時間で焼成したカーボン層付きガス拡散基材(NOK社製、商品名:H2315 T10X6 CX96改)をそれぞれカーボン層が触媒層側と接するように配置し、ガス拡散基材で膜電極接合体を挟み込むことによって耐久性の評価に供する膜電極接合体を作製する。結果を表7に示す。
[0153]
 (例8-2~例8-4、例8-8)
 炭酸セリウム水和物の仕込み量を変更する以外は、例8-1と同様にして、表7に示す液状組成物L-2~L-4、L-8を得る。
 液状組成物を変更する以外は、例8-1と同様にして、固体高分子電解質膜を得る。
 固体高分子電解質膜を変更する以外は、例8-1と同様にして、膜電極接合体を得る。結果を表7に示す。
[0154]
 (例8-5)
 液状組成物S-1にセリウム原子の総モル数の割合がポリマーH-1中のスルホン酸基の総モル数に対して0.033となるように酸化セリウムを加え、直径5mmのジルコニアビーズを加えた後、遊星ビーズミルを用いて300rpmの回転数で30分混合、分散する。53μmのステンレスメッシュを用いてろ過し、表7に示す液状組成物L-5を得る。
 液状組成物を変更する以外は、例8-1と同様にして、固体高分子電解質膜を得る。
 固体高分子電解質膜を変更する以外は、例8-1と同様にして、膜電極接合体を得る。結果を表7に示す。
[0155]
 (例8-6)
 酸化セリウムの仕込み量を変更する以外は、例8-5と同様にして、表7に示す液状組成物L-6を得る。
 液状組成物を変更する以外は、例8-1と同様にして、固体高分子電解質膜を得る。
 固体高分子電解質膜を変更する以外は、例8-1と同様にして、膜電極接合体を得る。結果を表7に示す。
[0156]
 (例8-7、例8-9)
 液状組成物S-1を液状組成物S-2またはS-3に変更し、炭酸セリウム水和物の仕込み量を変更する以外は、例8-1と同様にして、表7に示す液状組成物L-7またはL-9を得る。
 液状組成物を変更する以外は、例8-1と同様にして、固体高分子電解質膜を得る。
 固体高分子電解質膜を変更する以外は、例8-1と同様にして、膜電極接合体を得る。結果を表7に示す。
[0157]
[表7]


[0158]
[例9]
 (例9-1)
 液状組成物L-1を液状組成物S-1に変更する以外は、例8-1と同様にして、固体高分子電解質膜を得る。
 固体高分子電解質膜を変更する以外は、例8-1と同様にして、膜電極接合体を得る。結果を表8に示す。
[0159]
 (例9-2)
 液状組成物L-1を液状組成物S’-1に変更し、熱処理温度を160℃で30分とする以外は、例8-1と同様にして固体高分子電解質膜を得る。
 固体高分子電解質膜を変更する以外は、例8-1と同様にして、膜電極接合体を得る。結果を表8に示す。
[0160]
 (例9-3~例9-6)
 液状組成物S-1を液状組成物S’-1~S’-4に変更する以外は、例8-1と同様にして液状組成物L’-1~L’-4を得る。
 液状組成物を変更する以外は、例9-2と同様にして、固体高分子電解質膜を得る。
 固体高分子電解質膜を変更する以外は、例8-1と同様にして、膜電極接合体を得る。結果を表8に示す。
[0161]
[表8]


産業上の利用可能性

[0162]
 本発明の固体高分子電解質膜は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体における固体高分子電解質膜として有用である。
 なお、2018年12月07日に出願された日本特許出願2018-230215号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

符号の説明

[0163]
 10 膜電極接合体、11 触媒層、12 ガス拡散層、13 アノード、14 カソード、15 固体高分子電解質膜、16 カーボン層。

請求の範囲

[請求項1]
 液状媒体と、
 温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下である酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマー、または下式u1で表される単位を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーと、
 セリウム原子とを含む、液状組成物。
[化1]


 ただし、R F1及びR F2は、それぞれ独立に炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基である。
[請求項2]
 前記酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーが有するスルホン酸基の総モル数に対する前記セリウム原子の総モル数の割合が、0.001~0.13である、請求項1に記載の液状組成物。
[請求項3]
 前記酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーのイオン交換容量が、0.5~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂である、請求項1又は2に記載の液状組成物。
[請求項4]
 前記式u1で表される単位を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーの温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液状組成物。
[請求項5]
 温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下である酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマー、または式u1で表される単位を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーと、
 セリウム原子とを含む、固体高分子電解質膜。
[化2]


 ただし、R F1及びR F2は、それぞれ独立に炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基である。
[請求項6]
 前記酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーが有するスルホン酸基の総モル数に対する前記セリウム原子の総モル数の割合が、0.001~0.13である、請求項5に記載の固体高分子電解質膜。
[請求項7]
 前記酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーのイオン交換容量が、0.5~2.5ミリ当量/g乾燥樹脂である、請求項5又は6に記載の固体高分子電解質膜。
[請求項8]
 前記式u1で表される単位を有する酸型スルホン酸基含有フルオロカーボンポリマーの温度80℃及び相対湿度10%の条件における水素ガス透過係数が2.5×10 -9cm ・cm/(s・cm ・cmHg)以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の固体高分子電解質膜。
[請求項9]
 触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された、請求項5~8のいずれか一項に記載の固体高分子電解質膜とを備えた、膜電極接合体。
[請求項10]
 請求項9に記載の膜電極接合体を備えた、固体高分子形燃料電池。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]