明 細 書
発明の名称 : 積層体、光学フィルムおよびそれらの製造方法、偏光板、画像晶表示装置、立体画像表示システム
技術分野
[0001]
本発明は、パターン光学フィルムの支持体として有用な積層体、及びその製造方法、並びにそれを用いた光学フィルム、偏光板、及び画像表示装置、特に立体画像表示装置に関する。
背景技術
[0002]
従来、3D用画像表示装置用の光学フィルムとして、遅相軸が互いに直交した液晶ドメインにパターニングされた光学異方性層が提供されていた。このようなパターン光学異方性層が形成された光学フィルムの製造方法としては、フォトマスク等を用いて2方向から光照射することにより、異なる配向制御能を有する領域が交互に形成されるように配向処理された光配向膜を利用する方法が知られていた(特許文献1、非特許文献1参照)。
また、ラビング配向膜を利用する方法も提案されている。例えば、特許文献2には、異なる方向に配向された部分からなるパターンを有する配向層を利用して、パターン位相差層を形成する方法が開示され、マスクラビング処理することにより、異なる方向に配向された部分からなる配向層を形成する方法が開示されている。しかしながら、フォトマスクを用いた光配向膜や、マスクラビングによる配向膜の製造方法は、製造設備が高価な上、マスクのフィルムへの高精度な位置合わせが必要であり、得られる配向膜の2つの配向制御領域のパターニング精度に不満が残るものであった。さらに、マスクラビングを行う方法は、フィルム搬送方向に対するラビング方向を変える必要があるため、製造の容易さの観点からの問題が大きい。
これに対し、特許文献3では、フォトマスクを用いた光配向膜やマスクラビングによる配向膜の製造方法の代わりにフォトリソグラフィ技術を用い、感光性の垂直配向膜と水平配向膜形成材料を塗布し、露光し、一方の一部を現像処理した後で、一括してラビング処理して垂直配向膜と水平配向膜とがパターニングされた配向膜を製造する方法が開示されている。しかしながら、同文献は、液晶表示装置の液晶セルの液晶の配向を制御するためのパターニング配向膜を製造しており、得られたパターニング配向膜に対して垂直方向と水平方向に液晶の配向を制御するためにパターニング配向膜が開示されているのみであった。
[0003]
一方、印刷を用いてパターニングされた配向膜を形成する態様も知られているが、従来知られていた製法はパターニングされた配向膜の2つの領域の一方の領域のみが配向制御能を有し、他方の領域は配向制御能を有さないものの製法のみであった(例えば特許文献4参照)。そのため、パターニングされた配向膜の2つの領域の両方とも配向制御領域であり、互いの配向制御領域の配向規制能が異なっているパターニングされた配向膜を用いる方法は知られていなかった。
[0004]
一方、ラビング配向膜としては、ラビング処理した方位と同じ方位に棒状液晶分子を配向させることができる平行配向膜が一般的であるが、所定のポリマーを利用することで、棒状液晶分子をラビング方向に対して直交する方向に配向させることができる直交配向膜も知られている(特許文献5参照)。その他、ラビング配向膜の材料として、種々提案されている(特許文献6および7参照)。しかし、パターン光学異方性層の形成への利用については開示されていない。
先行技術文献
特許文献
[0005]
特許文献1 : WO2005/096041号公報
特許文献2 : 特開2003-207641号公報
特許文献3 : 特開2007-163722号公報
特許文献4 : 特開2008-287273号公報
特許文献5 : 特開2002-98836号公報
特許文献6 : 特開2005-99228号公報
特許文献7 : 特開2006-276203号公報
非特許文献
[0006]
非特許文献1 : 液晶の光配向、市村國宏、米田出版(2007年出版)
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0007]
ここで、パターン化された光学異方性層の作製において、複数の方向から配向処理する工程が必要でなくなれば、製造工程を格段に簡略化でき、連続生産において有利である。しかし、上記した通り、従来、パターン化された光学異方性層の作製には、異なる方向から光照射された光配向膜、又はマスクラビングにより異なる方向にラビング処理されたラビング配向膜等、異なる方向に配向処理が施された配向膜が必要であるというのが、一般的な考えであった。
特に、3D画像表示装置用のパターニング位相差板のように、位相差板面に平行な面内において2つの位相差領域が直交するように液晶化合物を制御できるような、2種の配向制御領域がパターニングされた配向膜は知られていなかった。
本発明の第一の目的は、透明支持体上に2種類以上の配向制御層が形成されており、配向制御面に平行な面内において液晶の長軸を互いに直交する方向に配向制御可能である積層体と、該積層体を用いた光学フィルムを提供することである。第二の目的は、かかる積層体および光学フィルムの簡易な製造方法を提供することである。第三の目的は、前記光学フィルムを用いた偏光板、低コストで視認性の高い画像表示装置及び立体画像表示システムを提供することである。
課題を解決するための手段
[0008]
本発明者らは、2種類以上の異なる組成の材料を用い、特定の積層態様でパターン化し、配向制御層を透明支持体上に形成することを試みた。その結果、良好なパターン化された光学異方性層を作製することができることができ、上記課題を解決することができる積層体および光学フィルムを提供できることを見出すに至った。
[0009]
すなわち、本発明は以下の構成である。
[1] 透明支持体と、該透明支持体上に、組成が互いに異なり、且つ互いに異なる配向制御能を示す配向制御表面を有する、第一の配向制御領域及び第二の配向制御領域を含み、それぞれの配向制御表面が交互に配置されたパターン配向制御層を有し、前記第一の配向制御領域及び前記第二の配向制御領域のそれぞれの配向制御面が、該配向制御面に平行な面内において液晶の長軸を互いに直交する方向に配向制御可能であることを特徴とする積層体。
[2] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が同じ方位に処理されていることを特徴とする[1]に記載の積層体。
[3] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、同じ方位にラビング処理されたラビング配向膜であることを特徴とする[1]に記載の積層体。
[4] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、それぞれ変性または無変性のポリビニルアルコールを主成分として含有する膜;変性または無変性のポリアクリル酸を主成分として含有する膜;下記一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)もしくは(III)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸コポリマーを主成分として含有する膜;または、下記一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される構造単位を少なくとも1種有する重合体を主成分とする膜;のいずれかであることを特徴とする[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層体。
[化1]
(一般式(I)~(III)中
:R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であり
;Mは、プロトン、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンであり;L
0は、-O-、-CO-、-NH-、-SO
2-、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり
;R
0は、炭素原子数が10乃至100の炭化水素基または炭素原子数が1乃至100のフッ素原子置換炭化水素基であり
;Cyは、脂肪族環基、芳香族基または複素環基であり
;mは、10乃至99モル%であり;そして、nは、1乃至90モル%である。)
一般式(I-TH)
[化2]
(式中、R
1は水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、P
1は酸素原子、-CO-又は-NR
12-を表し、R
12は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
1は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のへテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X
1は水素結合性基を表し、n1は1~3の整数を表す。)
一般式(II-TH)
[化3]
(式中、R
2は水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、L
21は置換もしくは無置換の、2価の芳香族基又は2価のヘテロ環基を表し、P
21は単結合又は、-O-、-NR
21-、-CO-、-S-、-SO-、-SO
2-及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる2価の連結基を表し、R
21は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
22は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のヘテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X2は水素結合性基を表し、n2は0~3の整数である。)
一般式(III-TH)
[化4]
(式中、L
31は置換もしくは無置換の、2価の芳香族基又は2価のヘテロ環基を表し、P
31は単結合又は、-O-、-NR
31-、-CO-、-S-、-SO-、-SO
2-及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、R
31は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
32は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のヘテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X
3は水素結合性基を表し、n3は0~3の整数である。)
[5] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、それぞれ異なる樹脂を主成分とする[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層体。
[6] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の少なくとも一方の領域が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする[1]~[5]のいずれか一項に記載の積層体。
[7] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、共に同じ樹脂を主成分とし、かつ、少なくとも一方の領域にピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層体。
[8] 前記ピリジニウム化合物またはイミダゾリウム化合物が、液晶性であることを特徴とする[6]又は[7]に記載の積層体。
[9] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、共に非現像性樹脂を主成分とすることを特徴とする[1]~[8]のいずれか一項に記載の積層体。
[10] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、下記(1)または(2)のいずれか1つの態様であることを特徴とする[1]~[9]のいずれか一項に記載の積層体。
態様(1):透明支持体上に第一の配向制御領域が形成され、該第一の配向制御領域の一部の領域上に第二の配向制御領域が形成されている。
態様(2):透明支持体の一部の領域上に第一の配向制御領域が形成され、前記透明支持体の第一の配向制御領域が形成されていない領域上に第二の配向制御領域が形成されている。
[11] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域との間に、ブラックマトリックスが配置されていることを特徴とする[1]~[10]のいずれか一項に記載の積層体。
[12] 前記透明支持体のRe(550)が、0~10nmであることを特徴とする[1]~[11]のいずれか一項に記載の積層体:
但し、Re(550)は波長550nmにおける正面レターデーション値(単位:nm)である。
[13] パターン光学異方性層の支持体として用いられることを特徴とする[1]~[12]のいずれか一項に記載の積層体。
[14] [1]~[13]のいずれか一項に記載の積層体と、該積層体上の前記配向制御領域上に、重合性基を有する液晶を主成分とする組成物から形成された光学異方性層を有し、
該光学異方性層は、面内遅相軸が互いに異なる第一位相差領域と第二位相差領域とが交互にパターニングされていることを特徴とする光学フィルム。
[15] 前記光学異方性層中、前記第一位相差領域と前記第二位相差領域が前記光学異方性層の一辺に平行な長辺を有する帯状に交互にパターニングされており、且つ、前記第一位相差領域の面内の遅相軸と前記第二位相差領域の面内の遅相軸が略直交していることを特徴とする[14]に記載の光学フィルム。
[16] 全体のRe(550)が100~190nmであることを特徴とする[14]又は[15]に記載の光学フィルム:ただし、前記Re(550)は波長550nmにおける正面レターデーション値(単位:nm)である。
[17] 前記重合性基を有する液晶がディスコティック液晶であり、前記光学異方性層中、ディスコティック液晶が垂直配向状態に固定されていることを特徴とする[14]~[16]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[18] 前記光学異方性層が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含有していることを特徴とする[17]に記載の光学フィルム。
[19] 前記重合性基を有する液晶が棒状液晶であり、前記光学異方性層中、棒状液晶が水平配向状態に固定されていることを特徴とする[14]~[16]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[20] 前記第一位相差領域と前記第二位相差領域との間にブラックマトリックスを有することを特徴とする[14]~[19]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[21] [14]~[20]のいずれか一項に記載の光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の前記第一位相差領域と前記第二位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方位と、偏光膜の吸収軸方位とがいずれも45°をなすことを特徴とする偏光板。
[22] 前記光学フィルムと、前記偏光膜とが粘着層を介して積層されていることを特徴とする[21]に記載の偏光板。
[23] さらに最表面に一層以上の反射防止フィルムが積層されていることを特徴とする[21]または[22]に記載の偏光板。
[24] 第一及び第二の偏光膜;
第一及び第二の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び
第一偏光膜の外側に[14]~[23]のいずれか一項に記載の光学フィルム;
を少なくとも有する画像表示装置であって、
前記第一偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第一相差領域の面内遅相軸及び第二位相差領域のそれぞれの面内遅相軸が、いずれも±45°の角度をなすことを特徴とする画像表示装置。
[25] [24]に記載の画像表示装置と、前記光学フィルムの外側に配置される第三の偏光板とを少なくとも備え、第三の偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
[26] 第一の組成物からなる第一の配向制御領域を透明支持体上に形成する第一の配向制御領域形成工程と、及び
第一の組成物と組成が異なる第二の組成物からなる第二の配向制御領域をパターン状に印刷する第二の配向制御領域形成工程を、少なくとも含むことを特徴とする[1]~[13]のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
[27] 前記第一の配向制御領域を下記(I)または(II)のいずれかの方法で透明支持体上に形成する第一の配向制御領域形成工程を特徴とする[26]に記載の積層体の製造方法。
方法(I):前記第一の配向制御領域を前記透明支持体の全面上に形成する工程。
方法(II):前記第一の配向制御領域を前記透明支持体の一部の領域上に形成する工程。
[28] 前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域を1つの方位に配向処理する工程を含むことを特徴とする[26]または[27]に記載の積層体の製造方法。
[29] 透明支持体上に、第一の配向制御領域と第二の配向制御領域とを面内に含む配向制御層を下記(I-A)、(I-B)および(II-A)のいずれか1つの印刷工程で形成する工程を含むことを特徴とする[26]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
印刷工程(I-A):透明支持体上に第一の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域の一部の領域上に第二の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域および該第二の配向制御領域を同時に1つの方位に処理する工程。
印刷工程(I-B):透明支持体上に第一の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域を1つの方位に処理した後、該第一の配向制御領域の処理面の一部の領域上に第二の配向制御領域を印刷する工程。
印刷工程(II-A):透明支持体の一部の領域上に第一の配向制御領域を印刷し、前記透明支持体の第一の配向制御領域が印刷されていない領域上に第二の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域および該第二の配向制御領域を同時に1つの方位に処理する工程。
[30] 前記1つの方位に処理する工程が、一方位へのラビング処理工程であることを特徴とする[28]または[29]に記載の方法。
[31] 前記第二の配向制御領域を、フレキソ印刷により形成することを特徴とする[26]~[30]のいずれか一項に記載の方法。
[32] 前記印刷工程(I-A)または(II-A)において、前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の組成物が、平行配向膜用組成物および直交配向膜用組成物のうちいずれか一方と第一の溶媒を含み、前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の組成物がもう一方の化合物と第二の配向溶媒を含むことを特徴とする[29]~[31]のいずれか一項に記載の方法。
[33] 前記印刷工程(I-B)において、前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の組成物が、配向膜用化合物と第一の溶媒を含み、前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の組成物が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方と第二の溶媒を含むことを特徴とする[29]~[32]のいずれか一項に記載の方法。
[34] [1]~[13]のいずれか一項に記載の積層体上に、重合性基を有する液晶を含有する組成物を配置し、光学異方性層を形成し、第一の配向制御領域上で配向制御された第一位相差領域及び第二の配向制御領域上で配向制御された第二位相差領域を含むパターン光学異方性層を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
[35] 前記積層体中の第一の配向制御領域および前記第二の配向制御領域の少なくとも一方が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含み、前記液晶がディスコティック液晶であり、前記積層体上に、前記ディスコティック液晶を含有する組成物を配置した後で加熱処理することにより、前記ディスコティック液晶の配向を制御して前記第一の位相差領域および第二の位相差領域を形成することを特徴とする[34]に記載の方法。
[36] 前記光学異方性層の形成前又は後に、前記第一位相差領域及び前記第二位相差領域との間にブラックマトリックスを形成することを含む[34]または[35]に記載の方法。
発明の効果
[0010]
本発明によれば、透明支持体上に2種類以上の配向制御層が形成されており、配向制御面に平行な面内において液晶の長軸を互いに直交する方向に配向制御可能である積層体を提供できる。本発明の積層体および光学フィルムは、高価なフォトマスクを用いずに、既存の配向膜製造設備を使用してパターン化された光学異方性層を提供でき、ラビングなどの配向処理を一方位に行うだけで製造できるため、生産コストのメリットが非常に高く、製造容易性にも優れる。さらに、本発明の光学フィルムは、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、実用性にも優れる。
本発明の積層体の製造方法および光学フィルムの製造方法によれば、本発明の積層体および光学フィルムを簡便、且つ、安価に提供することができる。
本発明によれば、本発明の光学フィルムを用いた偏光板、画像表示装置、および立体画像表示システムを、簡便、且つ、安価に提供することができる。
図面の簡単な説明
[0011]
[図1] 本発明の製造方法に用いられるフレキソ版の断面の一態様を示す概略図である。
[図2] 本発明の製造方法における印刷の一態様であるフレキソ印刷の方法を示す概略図である。
[図3] 実施例で得られた光学フィルムの光学特性の評価結果を示す概略図である。
[図4] 本発明の配向制御層を用いた光学フィルムの断面の一態様を表す概略図である。
[図5] 本発明の配向制御層を用いた光学フィルムの断面の別の一態様を表す概略図である。
発明を実施するための形態
[0012]
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm~780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
本明細書では、平行配向とは配向制御領域の処理方向に対して液晶分子の長軸が略平行に配向することを示し、直交配向とは配向制御領域の処理方向に対して液晶分子の長軸が略直交に配向することを示す。
本明細書では、組成物の「組成が互いに異なる」とは、組成物中の主成分及び/又は1以上の添加剤が互いに異なることを意味するだけではなく、成分が同一であっても、含有割合が異なることも含む意味で用いる。
本明細書では、分子の長軸方向とは、棒状液晶分子の場合は分子内で最も長い軸の方位のことを言い、ディスコティック液晶分子の場合は円盤面が並ぶ方位(円盤面の垂線の方位)のことを言う。
[0013]
[積層体]
本発明の積層体は、透明支持体と、該透明支持体上に、組成が互いに異なり、且つ互いに異なる配向制御能を示す配向制御表面を有する、第一の配向制御領域及び第二の配向制御領域を含み、それぞれの配向制御表面が交互に配置されたパターン配向制御層を有し、前記第一の配向制御領域及び前記第二の配向制御領域のそれぞれの配向制御面が、該配向制御面に平行な面内において液晶の長軸を互いに直交する方向に配向制御可能であることを特徴とする。
本発明の積層体は、制御能が互いに異なる配向制御表面が交互に配置された配向制御層を有し、その上で同一の液晶を配向させると、第一及び第二の配向制御領域上の液晶分子はそれぞれ、長軸を互いに直交にして配向する。よって、本発明の積層体を支持体として用いて液晶組成物からなる光学異方性層を形成すると、面内遅相軸方向が互いに直交している第一及び第二の位相差層が交互に配置されたパターン光学異方性層を容易に形成できる。即ち、本発明の積層体をこのような構成を有することで、高価なフォトマスクを用いずに、既存の配向膜製造設備を使用して良好なパターンが形成された光学異方性層を提供できる。
[0014]
前記第一の配向制御領域及び前記第二の配向制御領域のそれぞれの配向制御表面が、該配向制御表面に平行な面内において液晶の長軸を互いに直交する方向に配向制御可能である。一例では、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域のそれぞれの配向制御表面の配向規制能は、下記(A)を満足し、また他の例では、下記(B)を満足する。
(A)棒状液晶の長軸を互いに直交する方向に水平配向制御できる。
(B)ディスコティック液晶の円盤面を、配向制御層膜面に対して垂直方向かつ長軸を互いに直交する方向に配向制御できる。
[0015]
なお、互いに異なる配向制御能を示す配向制御表面は、同一平面上になくてもよい。例えば、第一及び第二の配向制御領域のうち、一方の配向制御領域を一様に形成し、他方の配向領域制御をその上にパターン状に形成した態様であってもよい。勿論、互いに異なる配向制御能を示す配向制御表面は同一平面上に交互に配置されていてもよく、即ち、双方の配向制御領域を同一平面上に交互に配置した態様であってもよい。他の表現によれば、本発明では、前記配向制御層の前記透明支持体とは反対側の表面を、前記透明支持体と平行な仮想平面上に正射影したときに前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が交互にパターニングされていることを意味する。
[0016]
例えば、前者の態様では、断面が図4に示す構成となる。図4中、本発明の積層体の(I)の態様で製造された場合は、透明支持体21上に、第一の配向制御領域22aが形成され、該第一の配向制御領域22aの一部の領域上に第二の配向制御領域22bが形成されている。配向膜は、ある程度の厚みがあってもその膜面に垂直な方向に積層された液晶分子の配向規制力を維持できるので、このように膜面に凹凸がある配向制御層であってもよい。このとき、該第一の配向制御領域22aおよび該第二の配向制御領域22bがともに1つの方位に処理されていても、配向制御領域22bにはラビング処理などの物理的な配向処理はなされていなくてもよい。配向制御領域22bにラビング処理などの物理的な配向処理はなされていない場合、第一の配向制御領域22aの上に第二の配向制御領域22bが積層され、下層の配向制御領域2aの配向処理方向とは異なる方向に、配向制御領域22b上に積層された液晶分子を配向させることができる。
この場合、前記配向制御層の前記透明支持体とは反対側の表面は、前記上層の第二の配向制御領域22bであるため、積層体の前記配向制御層の前記透明支持体とは反対側の表面を、前記透明支持体と平行な仮想平面上に正射影したとき、下層の第一の配向制御領域22aが表面となっている部分に由来する前記第一の配向制御領域と、上層の第二の配向制御領域22bが表面となっている部分に由来する前記第二の配向制御領域が交互にパターニングされていることとなる。
なお、本発明の積層体は、前記配向制御層が前記(I)の態様で製造された場合であるとき、配向制御領域の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがさらに好ましい。この程度の厚さであれば、膜面に凹凸があってもその膜面に垂直な方向に積層された液晶分子の配向規制力を十分に維持できる。
[0017]
後者の態様では、断面が図5に示す構成となる。図5中、透明支持体21の一部の領域上に第一の配向制御領域21aが形成され、前記透明支持体21の第一の配向制御領域22aが形成されていない領域上に第二の配向制御領域22cが形成されている。前記第一の配向制御領域22aおよび第二の配向制御領域22cがともに1つの方位に処理されていることが好ましい。
この場合、前記配向制御層の前記透明支持体とは反対側の表面は、前記第一の配向制御領域22aおよび第二の配向制御領域22cであるため、積層体の前記配向制御層の前記透明支持体とは反対側の表面を、前記透明支持体と平行な仮想平面上に正射影したとき、前記第一の配向制御領域と、前記第二の配向制御領域が交互にパターニングされていることとなる。
[0018]
本発明の積層体は、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が同じ方位に処理されていることが好ましい。また、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、同じ方位にラビング処理されたラビング配向膜であることがより好ましい。
ここで、本明細書中、「配向膜」とは、液晶分子の配向規制能を有するように処理された膜を意味する。配向膜は、配向性を付与する方法の観点から、ラビング配向膜、光配向膜、その他電場の付与や磁場の付与により液晶配向性を付与した膜に分けることができる。本発明の積層体では、ラビング配向膜を用いることが、製造速度向上による生産性の観点から好ましい。そこで、以下、ラビング配向膜について主として説明するが、本発明は以下のラビング配向膜の態様に限定されるものではない。
[0019]
また、配向膜は平行配向膜と直交配向膜に大別することもできる。例えば、前記ラビング配向膜には液晶分子を配向規制する配向軸があり、液晶分子を含む組成物をラビング配向膜上に積層した場合、ラビング配向膜の配向軸に従って液晶分子は配向する。
ここでいう、平行配向膜、直交配向膜について概念的な説明は以下のとおりである。
[0020]
分子配向した単分子膜あるいは高分子薄膜による液晶配向の制御は、分子レベルもしくは分子骨格を形成する一部の原子団によっても決まる。ラビング配向膜は、ラビング処理による配向制御能を示し、製造方法上は、ラビング処理の方向と加熱条件に従って、配向軸が決定する性質を有する。通常、一方向にラビング処理された配向膜上で液晶を配向させると、液晶は、ラビング方向に対して、その長軸を平行にして、又は直交にして配向する。一つの例を下記に挙げる。ポリビニルアルコールをガラス基板上に塗布してから、これにラビング処理を施し、ついでそれぞれ2枚の基板で棒状液晶を挟んで液晶セルを作成すると、棒状液晶分子はその長軸をラビング方向に対して平行にして配向する。これに対してポリスチレン膜をポリビニルアルコール膜の代わりに用いると、棒状液晶分子はその長軸を、ラビング方向に対して直交にして配向する。
ラビングにより、高分子の表面に特定の深さまでの領域に加工層が生じる。そこで生じるのはラビング方向に発生する溝と屈折率の異方性である。この異方性の光軸はポリイミドではラビング方向に平行、ポリスチレンでは直交している。ラビングによる液晶分子の一方向性の配向の機構として、溝にそって棒状分子が並ぶという説と異方的分散力による説明とがある。具体的には、ラビング処理は、表面層の高分子鎖を延伸するのと同様な効果があり、両者とも高分子の主鎖はラビングした方向に並び代えが起こる。そうするとポリビニルアルコールの側鎖である水酸基はラビング方向に垂直になるし、ポリスチレン膜の場合には主鎖ではなく、側鎖のフェニル基も垂直になる。つまりラビング処理を施した高分子フィルムによる液晶分子の配向方向は、1軸配向したポリマー主鎖、及び/またはその主鎖に対して垂直方向に張り出した置換基のいずれかによっても決まると考えてよい。
実用に供されている直交配向膜であるポリイミド膜による液晶配向では、ラビング処理による非常に細かな溝が配向制御に重要な役割を果たしていることが示唆されており、ラビング方向に並んだ高分子主鎖の効果も同時に関与していると考えられている。ポリスチレン膜でも物理的な表面形状の変化、つまり細かな溝が発生していると考えられるが、結果的には側鎖のフェニル基と液晶分子の相互作用が支配的となっている。すなわち、ポリイミドでは両者は平行に協力して作用し,ポリスチレンでは異方的分散力による機構の方が優勢となり、平行配向膜と直交配向膜に分かれる。
ここで、本明細書中、「配向制御層」とは、液晶分子の配向規制能を有するように処理された膜を意味する。前記配向制御層は、単層であっても、2層以上から構成されていてもよい。前記配向制御層は、ラビング配向膜や光配向膜のような配向膜と、液晶分子のその界面における配向を規制することができる配向制御剤を主成分とする膜に大別される。
[0021]
配向膜上に積層された液晶分子がいずれの配向状態になるかは、後述する製造方法上の条件、配向膜材料、液晶分子の種類及び配向制御剤の種類等によって決定される。以下、それぞれ詳細に説明する。
(配向制御領域を構成する材料)
前記配向制御領域は配向膜であることが好ましい。前記配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。この中でもラビング配向膜としては、以下の材料を配向膜として好ましく用いることができる。
[0022]
本発明では、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、それぞれ変性または無変性のポリビニルアルコールを主成分として含有する膜;変性または無変性のポリアクリル酸を主成分として含有する膜;下記一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)もしくは(III)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸コポリマーを主成分として含有する膜;または、下記一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される構造単位を少なくとも1種有する重合体を主成分とする膜;のいずれかであることが好ましい。
[化5]
(一般式(I)~(III)中
:R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であり
;Mは、プロトン、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンであり;L
0は、-O-、-CO-、-NH-、-SO
2-、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり
;R
0は、炭素原子数が10乃至100の炭化水素基または炭素原子数が1乃至100のフッ素原子置換炭化水素基であり
;Cyは、脂肪族環基、芳香族基または複素環基であり
;mは、10乃至99モル%であり;そして、nは、1乃至90モル%である。)
一般式(I-TH)
[化6]
(式中、R
1は水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、P
1は酸素原子、-CO-又は-NR
12-を表し、R
12は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
1は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のへテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X
1は水素結合性基を表し、n1は1~3の整数を表す。)
一般式(II-TH)
[化7]
(式中、R
2は水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、L
21は置換もしくは無置換の、2価の芳香族基又は2価のヘテロ環基を表し、P
21は単結合又は、-O-、-NR
21-、-CO-、-S-、-SO-、-SO
2-及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる2価の連結基を表し、R
21は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
22は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のヘテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X2は水素結合性基を表し、n2は0~3の整数である。)
一般式(III-TH)
[化8]
(式中、L
31は置換もしくは無置換の、2価の芳香族基又は2価のヘテロ環基を表し、P
31は単結合又は、-O-、-NR
31-、-CO-、-S-、-SO-、-SO
2-及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、R
31は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
32は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のヘテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X
3は水素結合性基を表し、n3は0~3の整数である。)
[0023]
上記配向膜材料を主成分とする配向膜は、組み合わせられる液晶の種類、所定の添加剤の添加の有無等によって、直交配向膜にも平行配向膜にもなり得るので、第一及び第二の配向制御領域の条件を満足するように、組み合わせられる液晶化合物の種類に応じて、選択することができる。
[0024]
直交配向膜の例には、直交配向に必要な繰り返し単位、及び塗布液等として調製するために溶媒への溶解性に必要な繰り返し単位からなる共重合体が含まれる。直交配向に必要な繰り返し単位のモル比は、好ましくは1~90%であり、より好ましくは5~70%、特に好ましくは10~50%である。また、溶解性に必要な繰り返し単位のモル比は、好ましくは99%~1%であり、より好ましくは95%~10%であり、最も好ましくは90%~5%である。これらの数値範囲を同時に満たすことが、好ましい。但し、直交配向に必要な成分と溶解性に必要な成分が同一構造内に含まれる場合は、上記数値範囲は当てはまらない好ましい例もある。
下記表1~27に、本発明に利用可能な直交配向膜の例を示すが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
下記表1~6、9~12、14、21~27において直交配向に必要な成分は、繰り返し数がa個である成分であり、アルコール溶媒への溶解性に必要な成は繰り返し数がb個である成分である。表7、8、13において直交配向に必要な成分は、繰り返し数がa個である成分とc個である成分であり、アルコール溶媒への溶解性に必要な成分は繰り返し数がb個である成分である。表15~20の化合物番号30~42に記載の骨格は、配向必要成分と溶解性付与成分がともに繰り返し数がa個である成分であり同一である。
[0025]
[化9]
[0026]
[表1]
[0027]
[化10]
[0028]
[表2]
[0029]
[化11]
[0030]
[表3]
[0031]
[化12]
[0032]
[表4]
[0033]
[化13]
[0034]
[表5]
[0035]
[化14]
[0036]
[表6]
[0037]
[化15]
[0038]
[表7]
[0039]
[化16]
[0040]
[表8]
[0041]
[化17]
[0042]
[表9]
[0043]
[化18]
[0044]
[表10]
[0045]
[化19]
[0046]
[表11]
[0047]
[化20]
[0048]
[表12]
[0049]
[化21]
[0050]
[表13]
[0051]
[化22]
[0052]
[表14]
[0053]
[化23]
[0054]
[表15]
[0055]
[化24]
[0056]
[表16]
[0057]
[化25]
[0058]
[表17]
[0059]
[化26]
[0060]
[表18]
[0061]
[化27]
[0062]
[表19]
[0063]
[化28]
[0064]
[表20]
[0065]
[化29]
[0066]
[表21]
[0067]
[化30]
[0068]
[表22]
[0069]
[化31]
[0070]
[表23]
[0071]
[化32]
[0072]
[表24]
[0073]
[化33]
[0074]
[表25]
[0075]
[化34]
[0076]
[表26]
[0077]
[化35]
[0078]
[表27]
[0079]
上記表に示す配向膜用ポリマーは、合成により調製することができる。例えば、特開2006-276203号公報、及び特開2005-99228号公報に記載の方法に従い合成することができる。一例を下記に示す。
(上記表1に記載の化合物番号5の合成方法)
三口フラスコに溶媒としてNEP(N-エチルピロリドン)1.83gを入れた。9-ビニルカルバゾール9.62g、アクリル酸5.38g及びAIBN409mgをNEP10.08gに溶解した溶液をパイレンで濾過して、NEP2.75gで洗浄した溶液をシリンジポンプで2時間かけて滴下し、内温75℃、窒素フロー(10ml/min)で攪拌回数350rpm攪拌・重合した。さらに滴下終了後NEP3.3gでシリンジポンプ内を洗浄した。さらにAIBN163mgをNEP367mgに溶解した溶液を滴下して、内温75℃、窒素フロー(10ml/min)、攪拌回数350rpmで3時間攪拌し・重合した。内温を室温まで低下させて、THF30mlを添加した。反応液をメタノール:水(=9:1)600mlに入れ再沈殿させ、デカントして溶媒を除いた。さらにメタノール:水(=9:1)300mlを30分攪拌し、さらにデカントして溶媒を除いた。最後にメタノール:水(=1:1)400mlを30分攪拌して、固体を吸引濾過した。その後真空乾燥(40℃)した後に、白色固体を15.79g得た。
[0080]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域は、共に非現像性樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで、非現像性樹脂とは、露光、現像処理および場合によりその後の硬化工程によって、露光した部分のみを固化して残し、残りの部分を容易に取り除くことができる樹脂を意味する。具体的には、フォトリソグラフィに用いられる公知の現像性樹脂ではない樹脂を挙げることができ、例えば、感光性ポリイミド膜などの公知の現像性樹脂は非現像性樹脂に含まれない。このような現像性樹脂を用いて、露光、現像処理を行ってパターン配向膜を製造するときには露光する場所へのフォトマスクが必要となってしまうため、異なる偏光を用いて光配向膜2種を製膜する場合と同様に、位置合わせの問題が生じる。本発明では、フォトマスクを用いないで前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域を形成することを特徴の一つとするため、これらの領域が非現像性樹脂を主成分とすることが好ましい。
[0081]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域は、それぞれ異なる樹脂を主成分としてもよい。例えば、一方を、所定のポリマーを主成分とする平行配向膜とし、他方を他のポリマーを主成分とする直交配向膜として形成することができる。また、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、共に同じ樹脂を主成分としてもよい。配向製膜と添加剤との組み合わせによっては、互いに強く相互作用し、当該添加剤の存在下と非存在下とでは、液晶分子の配向挙動が異なる場合がある。この現象を利用する態様であってもよい。
[0082]
本発明において前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域中に用いられる前記添加剤としては、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物を挙げることができる。前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の少なくとも一方の領域が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含むことも、場合により好ましい。
[0083]
特に、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、共に同じ樹脂(例えば、ポリアクリル酸)を主成分とする場合は、少なくとも一方の領域にピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
[0084]
(配向制御剤:ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物)
本発明に配向制御剤として利用可能な前記ピリジニウム化合物またはイミダゾリウム化合物は、液晶性であっても、非液晶性であってもよく、いずれの場合も所定の配向膜材料と相互作用して、光学異方性層に含まれるディスコティック液晶の分子の配向方向を制御することができる。その中でも、前記ピリジニウム化合物またはイミダゾリウム化合物は液晶性であることがディスコティック液晶への配向制御能をより改善する観点から好ましく、その中でも、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。下記一般式(2a)及び(2b)で表されるピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物は、所定の配向膜材料と相互作用して、液晶分子の配向を制御して、その長軸方向を決定する作用があるとともに、特にディスコティック液晶(特に後述の一般式(I)~(IV)で表される液晶)に対しては、配向膜界面における配向を制御する作用があり、より具体的には、ディスコティック液晶の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
[0085]
[化36]
[0086]
式中、L
23及びL
24はそれぞれ二価の連結基を表す。
L
23は、単結合、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-C≡C-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-O-AL-O-、-O-AL-O-CO-、-O-AL-CO-O-、-CO-O-AL-O-、-CO-O-AL-O-CO-、-CO-O-AL-CO-O-、-O-CO-AL-O-、-O-CO-AL-O-CO-又は-O-CO-AL-CO-O-であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1~10のアルキレン基である。L
23は、単結合、-O-、-O-AL-O-、-O-AL-O-CO-、-O-AL-CO-O-、-CO-O-AL-O-、-CO-O-AL-O-CO-、-CO-O-AL-CO-O-、-O-CO-AL-O-、-O-CO-AL-O-CO-または-O-CO-AL-CO-O-が好ましく、単結合または-O-がさらに好ましく、-O-が最も好ましい。
[0087]
L
24は、単結合、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-C≡C-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-または-N=N-であるのが好ましく、-O-CO-又は-CO-O-がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL
24が交互に、-O-CO-及び-CO-O-であるのがさらに好ましい。
[0088]
R
22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1~20の置換アミノ基である。
R
22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R
23は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2~12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2~8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R
23が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
[0089]
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
[0090]
Y
22及びY
23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y
22及びY
23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y
22およびY
23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1~12のアルキル基および炭素原子数が1~12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2~12のアシル基または炭素原子数が2~12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y
22及びY
23がフェニレン基である場合は、1~4の炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基で置換されていてもよい。
[0091]
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY
23及びL
24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[0092]
Z
21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1~10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2~10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1~12のアルキル基、炭素原子数が2~20のアルキニル基、炭素原子数が1~12のアルコキシ基、炭素原子数が2~13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7~26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7~26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z
21は、シアノ、炭素原子数が1~10のアルキル基または炭素原子数が1~10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4~10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z
21は、炭素原子数が7~12のアルキル基、炭素原子数が7~12のアルコキシ基、炭素原子数が7~12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7~12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7~12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7~12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
[0093]
アシル基は-CO-R、アシルオキシ基は-O-CO-Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
[0094]
pは、1~10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。C
pH
2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。C
pH
2pは、直鎖状アルキレン基(-(CH
2)
p-)であることが好ましい。
[0095]
式(2b)中、R
30は、水素原子又は炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基である。
[0096]
前記式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記式(2a')又は(2b’)で表される化合物が好ましい。
[0097]
[化37]
[0098]
式(2a’)及び(2b’)中、式(2)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L
25はL
24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L
24及びL
25は、-O-CO-又は-CO-O-であるのが好ましく、L
24が-O-CO-で、且つL
25が-CO-O-であるのが好ましい。
[0099]
R
23、R
24及びR
25はそれぞれ、炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基である。n
23は0~4、n
24は1~4、及びn
25は0~4を表す。n
23及びn
25が0で、n
24が1~4(より好ましくは1~3)であるのが好ましい。
R
30は、炭素原子数が1~12(より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3)のアルキル基であるのが好ましい。
[0100]
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、特開2006-113500号公報明細書中[0058]~[0061]に記載の化合物が挙げられる。
[0101]
以下に、一般式(2’)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X
-)は省略した。
[0102]
[化38]
[0103]
式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。例えば、式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
前記ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物は、その添加量が、配向制御層の主成分樹脂に対して0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~2質量%程度であるのが好ましい。
[0104]
前記一般式(2a)及び(2b)で表されるピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の作用の一例は、以下の様に考えることができるが、但し、以下の通り作用する態様に限定されるものではない。
前記一般式(2a)及び(2b)で表されるピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R
22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1~20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π-π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。
[0105]
さらに、前記一般式(2a)及び(2b)で表されるピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物を併用すると、ある温度を超えて加熱することで、液晶が、その長軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進することができる。これは、加熱による熱エネルギーでポリビニルアルコールとの水素結合が切断され、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。
[0106]
(棒状液晶化合物への配向規制能)
上記した通り、本発明の積層体の一態様は、棒状液晶を、その長軸を互いに直交する方向に水平配向させ得る第一及び第二の配向制御町域を有する態様である。
本態様の一例は、前記前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の一方に、平行配向膜を用い、他方の領域に直交配向膜を用いる例である。
下記の配向膜は、棒状液晶分子の長軸を当該配向軸(一般的にはラビング軸)に対して平行にして配向させる機能を有する。平行配向膜として利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はポリイミド及びその誘導体からなる配向膜である。前記平行配向膜は、特に変性もしくは未変性のポリビニルアルコールまたは変性もしくは無変性のポリアクリル酸を主成分として含有する膜であることがより好ましい。ここで、ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。本発明では、鹸化度85~99程度のものを用いるのが好ましい。市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。ラビング配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行、特許第3907735号公報の段落番号[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールを参照することができる。前記変性もしくは未変性ポリアクリル酸とは、ポリ(メタ)アクリル酸共重合体を意味し、アクリル酸もしくはメタクリル酸を含有していればよい。アクリル酸もしくはメタクリル酸の高分子鎖中への含有率はモル比で1%~100%、好ましくは10%~100%、さらに好ましくは30%~100%である。重量平均分子量としては1000~1000000、好ましくは3000~100000、より好ましくは5000~50000を用いることができる。
[0107]
下記に挙げる配向膜は、棒状液晶分子の長軸を当該配向軸(一般的にはラビング軸)に対して直交にして配向する機能を有する。直交配向膜としては、例えば、特開2002-268068号公報、特開2002-62427号公報で報告されているポリマーや先述のポリスチレンなどを挙げることができる。さらには上記一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(II)又は(III)で表される繰り返し単位とを含むアクリル酸コポリマー又はメタクリル酸コポリマー;上記一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される繰り返し単位を少なくとも一種有する重合体も好ましく用いることができ、上記公報で挙げられているポリマーや先述のポリスチレンよりもより好ましく用いることができる。
[0108]
本態様、即ち、本発明の積層体が、前記配向制御層において、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が異なる樹脂を主成分とし、それぞれ棒状液晶に対して、平行配向膜及び直交配向膜である態様では、前記平行配向膜および前記直交配向膜が、一方位に処理されていることが好ましい。その中でも、前記平行配向膜および前記直交配向膜がラビング処理されたラビング配向膜であることが好ましい。例えば、図4において、前記第一の配向制御領域22aを平行配向膜とし、前記第二の配向制御領域22bを直交配向膜とすることで、ともに1つの方位に配向処理されていると、前記第一の配向制御領域22a上と前記第二の配向制御領域22b上に積層された液晶分子を直交する方向にそれぞれ配向させることができ、後述する本発明のパターン光学異方性が形成された光学フィルムを製造できることとなり、好ましい。
[0109]
(ディスコティック液晶化合物への配向規制能)
上記した通り、本発明の積層体の他の態様は、ディスコティック液晶を、その円盤面を垂直にして、その長軸を互いに直交する方向に配向させ得る第一及び第二の配向制御領域を有する態様である。
[0110]
本態様の一例は、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域のうち、少なくとも一方が変性または無変性のポリアクリル酸を主成分として含有する膜であることが好ましい。より具体的には、無変性のPAA(ポリアクリル酸)は、ディスコティック液晶化合物を平行垂直配向させることができる。そのため、無変性のPAAは、ディスコティック液晶化合物を平行垂直配向させる配向制御領域の材料として用いることができる。
[0111]
一方で、前記前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の少なくとも一方が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)もしくは(III)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸コポリマーを主成分として含有する膜;または、下記一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される構造単位を少なくとも1種有する重合体を主成分とする膜;であることが好ましい。この中でも、例えばPSt(ポリスチレン)-PAAは、ディスコティック液晶化合物を直交垂直配向させる配向制御領域の材料として用いることができる。
[0112]
本態様の他の例は、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の少なくとも一方の領域が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含む例である。この例では、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物も液晶分子の配向制御に寄与するので、配向膜の主成分である樹脂の組み合わせ方法は様々であり、種々採用することができる。例えば、前記変性または無変性のポリビニルアルコールを主成分として含有する膜;変性または無変性のポリアクリル酸を主成分として含有する膜;前記一般式(I)で表される繰り返し単位と、前記一般式(II)もしくは(III)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸コポリマーを主成分として含有する膜;または、前記一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される構造単位を少なくとも1種有する重合体を主成分とする膜;から選択される同一又は異なる膜から第一及び第二の配向制御領域を形成し、いずれか一方に(又は双方に添加する場合は、配向膜の主成分樹脂が互いに異なるか、添加量が異なる)、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を添加し、第一及び第二の配向制御領域を形成のいずれか一方が、ディスコティック液晶化合物を直交垂直配向させる領域であり、他方が、ディスコティック液晶化合物を平行垂直配向させる領域であるように構成すればよい。
[0113]
また、上記配向膜の中には、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物の存在下で、ディスコティック液晶に対して通常のある配向温度で垂直直交配向させる機能を示すものも含まれるが、ディスコティック液晶を配向させる際の温度条件によっては、垂直平行配向させる機能を示す配向膜に転じるものも存在する。例えば、変性及び無変性ポリビニルアルコールを主成分とする、及びPSt-PAAを主成分とする配向膜は、その様な挙動を示す例である。一方、逆に、上記配向膜の中には、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物の存在下で、ディスコティック液晶に対して通常のある配向温度で垂直平行配向させる機能を示すものも含まれるが、ディスコティック液晶を配向させる際の温度条件によっては、垂直直交配向させる機能を示す配向膜に転じるものも存在する。例えば、ポリアクリル酸を主成分とする配向膜は、その様な挙動を示す例である。これらの配向膜が垂直直交配向させる機能を示すか、あるいは垂直平行配向させる機能を示すかは、液晶を等方相未満の温度で配向させるか、あるいは液晶を一旦等方相の温度又はそれ以上に加熱した後、配向温度まで低下させるか、のいずれかの温度条件で配向させるかによって決定される場合がある。但し、液晶、配向膜材料、及び添加剤によっては、他の温度条件による配向制御で機能が切り替わる場合もあり、この温度条件による配向制御に限定されるものではない。
[0114]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の少なくとも一方の領域が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含む態様では、それぞれ同じ樹脂を主成分として含有していてもよい。前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、共に同じ樹脂を主成分とし、かつ、いずれか一方の領域のみにピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含むことが製造コストや製造適性の観点から、好ましい。上記のとおり、第一配向制御領域と第二配向制御領域の主成分として同じ樹脂を用いた場合であっても、一方の配向制御領域のみに添加剤としてピリジニウム化合物やイミダゾリウム化合物を加えて両者の組成を少し変えるだけで、得られるディスコティック液晶化合物への配向規制能を変えることができる。
[0115]
具体的な方法としては、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、それぞれ変性または無変性のポリビニルアルコールを主成分として含有する膜;変性または無変性のポリアクリル酸を主成分として含有する膜;上記一般式(I)で表される繰り返し単位と、上記一般式(II)もしくは(III)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸コポリマーを主成分として含有する膜;または、上記一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される構造単位を少なくとも1種有する重合体を主成分とする膜;のいずれかを用いることができる。
[0116]
このときのピリジニウム化合物やイミダゾリウム化合物を加えるタイミングとしては、各配向制御領域を形成するための組成物中に添加した後で各配向制御領域を形成して積層体を形成してもよく、一方の配向制御領域を形成した後からその一部の領域上に添加(例えば、塗布や印刷)して、他方の配向制御領域を形成して積層体を形成してもよい。
[0117]
<透明支持体>
本発明の積層体に用いられる透明支持体としては、特に制限なく公知の配向膜用透明支持体を用いることができる。その中でも、前記透明支持体としては、面内及び厚み方向の位相差がほとんどないフィルムを用いることも望ましい態様である。
[0118]
本発明の積層体は、前記透明支持体のRe(550)が、0~10nmであることが、支持体の光学特性の影響をほとんど受けずに、後述する本発明の光学フィルム中に含まれる全ての第1の位相差領域及び第2の位相差領域のReを好ましい範囲に調整できる観点から、好ましい。
但し、Re(550)は波長550nmにおける正面レターデーション値(単位:nm)である。
後述する透明支持体への添加剤の添加量を調整することにより、前記透明支持体の好ましいRe(550)の範囲に制御することができる。
[0119]
また、後述する光学異方性層との関係では、前記透明支持体のRthと光学異方性層(λ/4板)のRthの合計が|Rth|≦20を満たすために、透明支持体は、-150≦Rth(630)≦100を満たすことが好ましい。
なお、ここに、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
[0120]
(透明支持体の材質)
前記透明支持体を形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のRe、Rthが、上述した式(I)を満たす範囲であればどのような材料を用いてもよい。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
[0121]
また、前記透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
[0122]
また、前記透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。以下に、本発明の透明支持体の例として、主にセルロースアシレートについて詳細を説明するが、その技術的事項は、他の高分子フィルムについても同様に適用できることは明らかである。
[0123]
(セルロースアシレートフィルム)
前記セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001-1745(7頁~8頁)に記載されているが、本発明は、該記載に制限されるものではない。
[0124]
次に上述のセルロースを原料に製造される前記セルロースアシレートについて記載する。前記セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。前記セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3~22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD-817-91に準じて実施することが出来る。
[0125]
上述のように前記セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50~3.00であることがのぞましい。更には置換度が2.75~3.00であることがのぞましく、2.85~3.00であることがよりのぞましい。
[0126]
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3~22の脂肪酸のうち、炭素数2~22のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso-ブタノイル、t-ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t-ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
[0127]
本発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その置換度が2.50~3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60~3.00であり、更にのぞましくは2.65~3.00である。また、セルロースの水酸基に置換するアシル置換基がアセチル基のみからなる場合には、フィルムの光学異方性が低下できる事に加え、更に添加剤との相溶性、使用する有機溶剤への溶解性の観点で置換度が2.80~2.99であることが好ましく、2.85~2.95であることがより好ましい。
[0128]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180~700であり、セルロースアセテートにおいては、180~550がより好ましく、180~400が更に好ましく、180~350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105~120頁、1962年)により測定できる。特開平9-95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0~3.0であることが好ましく、1.0~2.0であることが更に好ましく、1.0~1.6であることが最も好ましい。
[0129]
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5~25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。前記セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5~5質量%の含水率が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートの合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001-1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁~12頁に詳細に記載されている。
[0130]
前記セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
[0131]
また、前記透明支持体の厚さは10~120μmが好ましく、20~100μmがより好ましく、30~90μmが更に好ましい。
[0132]
以下に、本発明において透明支持体として用いられるポリマーフィルムの好ましい性質について説明する。
[0133]
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)
[0134]
[数1]
[0135]
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
[0136]
式(12):Rth={(nx+ny)/2-nz}×d
式(12)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
[0137]
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して-50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx-nz)/(nx-ny)が更に算出される。
[0138]
透明支持体として用いるポリマーフィルムの好ましい一例は、Reが0~10nmであり、且つRthの絶対値が20nm以下の低位相差フィルムである。
[0139]
<積層体の用途>
本発明の積層体は、パターン光学異方性層の支持体として用いられることが好ましい。より詳しくは、液晶表示装置のフロント側偏光板のさらにフロント側に配置されるパターン光学異方性層用の配向膜に用いられることが好ましい。このような積層体を用いることで、3D画像表示装置用のパターニング位相差板を容易に製造することができる。
[0140]
(ブラックマトリックス)
本発明の積層体は、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域との間に、ブラックマトリックスが配置されていることが、本発明の積層体を3D画像表示装置のパターニング位相差板の配向膜として用いたときに、クロストークを低減させる観点から、好ましい。ここで、ブラックマトリックスが前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域との間に配置されるとは、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域を隔てるように仕切りとして配置されている態様も、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の境界線上に積層されて配置されている態様も含む。
[0141]
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、第一の組成物からなる第一の配向制御領域を透明支持体上に形成する第一の配向制御領域形成工程と、及び第一の組成物と組成が異なる第二の組成物からなる第二の配向制御領域をパターン状に印刷する第二の配向制御領域形成工程を、少なくとも含むことを特徴とする。
このような構成により、本発明の積層体を製造することができる。
以下、本発明の積層体の製造方法を、透明支持体の製膜、配向制御層の積層の順に説明する。
[0142]
<透明支持体の製膜>
前記透明支持体の製造方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
前記透明支持体(好ましくはセルロースアシレート)には、種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、微粒子、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程(セルロースアシレート溶液の作製工程)における何れでもよいが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加し調製する工程を行ってもよい。
[0143]
前記セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物を、少なくとも一種含有することも望ましい態様である。
[0144]
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。本発明者らは、鋭意検討した結果、フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、Re及びRthがゼロに近くなるようにした。このためには光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
[0145]
前記セルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制して光学的異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール-水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物が好ましい。logP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値として更に好ましい範囲は1ないし6であり、特に好ましい範囲は1.5ないし5である。
オクタノール-水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260-107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール-水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.- Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。なお本明細書に記載のlogPの値は、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めたものである。
[0146]
光学的異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また光学的異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
光学的異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25~250℃の固体であり、更に好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25~200℃の固体である。また光学的異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートに対し0.01ないし30質量%であることが好ましく、1ないし25質量%であることがより好ましく、5ないし20質量%であることが特に好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学的異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ作製工程の最後に行ってもよい。
[0147]
光学的異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80-99%である。当該化合物の存在量は、例えば、特開平8-57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面及び中心部の化合物量を測定して求めることができる。
[0148]
以下に本発明で好ましく用いられる、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物の具体例としては、たとえば特開2006-199855、[0035]から[0058]記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれら化合物に限定されない。
[0149]
本発明の積層体や後述の本発明の光学フィルムを画像表示装置に応用する場合、一般的な液晶表示装置の態様に用いる場合は偏光板よりも視認側に用いられるため、外光の影響、特に紫外線の影響を受けやすい。そのために本発明の積層体または光学フィルムを構成するいずれかの部材にUV吸収剤を含有することが望ましく、前記透明支持体中にUV吸収剤を含有させることも好ましい。
[0150]
UV吸収剤は、中でも、200~400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)-Re(700)|及び|Rth(400)-Rth(700)|の双方を低下させる化合物が好ましく、セルロースアシレート固形分に対して0.01~30質量%使用するのがよい。
[0151]
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるために、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200~400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)-Re(700)|及び|Rth(400)-Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れていることが要求される。前記セルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
[0152]
上述のような、本発明で好ましく用いられるUV吸収剤は揮散性の観点から分子量が250~1000であることが好ましい。より好ましくは260~800であり、更に好ましくは270~800であり、特に好ましくは300~800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
[0153]
UV吸収剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
[0154]
以下に本発明で好ましく用いられる、セルロースアシレートフィルムのUV吸収剤の具体例としては、たとえば特開2006-199855、[0059]から[0135]記載の化合物が挙げられる。
[0155]
前記セルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5~16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90~200g/リットル以上が好ましく、100~200g/リットル以上が更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
[0156]
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1~3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1~3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下が更に好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
[0157]
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
[0158]
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
[0159]
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、更にメインのセルロースアシレート溶液(ドープ液)と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5~30質量%が好ましく、10~25質量%が更に好ましく、15~20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤微粒子の添加量は1m
3あたり0.01~1.0gが好ましく、0.03~0.3gが更に好ましく、0.08~0.16gが最も好ましい。
[0160]
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
[0161]
前記セルロースアシレートフィルムには、光学的に異方性を低下する化合物、UV吸収剤の他に、用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001-151901号公報などに記載されている。更にまた、赤外吸収剤としては例えば特開2001-194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れの時期でもよいが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加するのがよい。更にまた、各添加剤の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001-151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001-1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁~22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
[0162]
また、可塑剤については、後述の実施例の中には、可塑剤を添加したものとしていないものがあるが、光学的に異方性を低下する化合物などが可塑剤としての効果を及ぼす化合物の場合には、可塑剤を添加する必要がないのは言うまでもない。
[0163]
前記セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレート溶液を用いた溶液製膜法により製造するのが好ましい。セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよく更には冷却溶解法あるいは高温溶解方法、更にはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、更には溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001-1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁~25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
[0164]
前記セルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV-3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出した。
[0165]
前記セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来のセルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。前記セルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001-1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁~30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
[0166]
<配向制御層の積層>
本発明の積層体の製造方法は、前記第一の配向制御領域を下記(I)または(II)のいずれかの方法で上記の方法で製膜された透明支持体上に形成する第一の配向制御領域形成工程を含むことが好ましい。
方法(I):前記第一の配向制御領域を前記透明支持体の全面上に形成する工程。
方法(II):前記第一の配向制御領域を前記透明支持体の一部の領域上に形成する工程。
これらの方法で前記第一の配向制御領域を透明支持体上に形成することで、図4または図5に記載の本発明の積層体を得ることができる。
[0167]
(印刷)
本発明の積層体の製造方法は、透明支持体上に、第一の配向制御領域と第二の配向制御領域とを面内に含む配向制御層を下記(I-A)、(I-B)および(II-A)のいずれか1つの印刷工程で形成する工程を含むことが好ましい。
印刷工程(I-A):透明支持体上に第一の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域の一部の領域上に第二の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域および該第二の配向制御領域を同時に1つの方位に処理する工程。
印刷工程(I-B):透明支持体上に第一の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域を1つの方位に処理した後、該第一の配向制御領域の処理面の一部の領域上に第二の配向制御領域を印刷する工程。
印刷工程(II-A):透明支持体の一部の領域上に第一の配向制御領域を印刷し、前記透明支持体の第一の配向制御領域が印刷されていない領域上に第二の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域および該第二の配向制御領域を同時に1つの方位に処理する工程。
以下、これらの印刷工程について、順に説明する。
[0168]
本発明の積層体の製造方法では、前記印刷工程に用いられる印刷方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。支持体上に配向膜をパターン状に印刷する方法としては特に制限されず、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレーコート、スピンコート、コンマコート、バーコート、ナイフコート、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷などの方法を用いることができる。これらのうち、微細なパターニングを行うことができるという観点から、フレキソ印刷、インクジェット印刷が好ましい。本発明の積層体の製造方法では、特にフレキソ印刷を用いることが好ましい。
[0169]
(フレキソ印刷)
フレキソ印刷では、図1に示すような、立体画像表示システムに好ましく用いられるパターン光学異方性層のパターンに対応した幅の凹凸が形成されているフレキソ版1を用いることが好ましいが、本発明は図1の態様に限定されるものではない。
フレキソ印刷の方法を図2に示した。図2をもとに、本発明の積層体の製造方法に用いられるフレキソ印刷装置10を用いた印刷工程を示す。まず、あらかじめ透明支持体の全面上に平行配向膜(または直交配向膜)を塗布等により積層したものを準備しておく。そして、印圧ローラ12に、その平行配向膜(または直交配向膜)が表面側となるように装着する。次に、目的とするパターンが形成されているフレキソ版1を、前記印圧ローラ12に対向する位置に設けられている圧胴11に装着する。次に、パターン印刷用直交配向膜液(またはパターン印刷用平行配向膜液)をドクターブレート14に供給し、アニックスローラ13を介して、圧胴11に装着されているフレキソ版1の凸部に、パターン印刷用直交配向膜液3を転写する。フレキソ版1の凸部に転写されたパターン印刷用直交配向膜液3は、その後、印圧ローラ12に装着された平行配向膜2の一部の領域にのみ転写される。
[0170]
本発明の積層体の製造方法では、透明支持体の上に塗布液を、立体画像表示システムごとに求められる所望のパターン光学異方性層のパターンに対応させて直接印刷することができるため、従来の光配向法やフォトレジストを用いたリソグラフィー法に比較して、著しく生産性を向上させることができる。
[0171]
(1) 印刷工程(I-A)
前記印刷工程(I-A)では、透明支持体上に第一の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域の一部の領域上に第二の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域および該第二の配向制御領域を同時に1つの方位に処理することを特徴とする。
[0172]
本発明の積層体の製造方法は、前記印刷工程(I-A)を用いる場合において、棒状化合物を配向制御するための積層体を製造するときは、前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の配向制御領域用印刷液が、平行配向膜用組成物および直交配向膜用組成物のうちいずれか一方と第一の配向制御領域用溶媒を含み、前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の配向制御領域用印刷液がもう一方の化合物と第二の配向制御領域用溶媒を含むことが好ましい。
また、ディスコティック液晶化合物を配向制御するための積層体を製造するときは、前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の配向制御領域用印刷液が、平行垂直配向膜用組成物および直交垂直配向膜用組成物のうちいずれか一方と第一の配向制御領域用溶媒を含み、前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の配向制御領域用印刷液がもう一方の化合物と第二の配向制御領域用溶媒を含むことが好ましい。但し、前述のとおり、平行垂直配向と直交垂直配向は、主成分として用いる樹脂材料の他、添加剤(ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物)の有無、製造温度によっても変化する。そのため、本発明の製造方法は、これらの平行垂直配向膜用組成物および直交垂直配向膜用組成物の使い分けをする態様に限定されるものではない。
[0173]
具体的な好ましい印刷工程を含む態様としては、以下の例を挙げることができる。
まず、配向膜として一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)又は(III)で表される繰り返し単位とを含むアクリル酸コポリマー又はメタクリル酸コポリマーを主成分とする組成物もしくは一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される構造単位を少なくとも1種有する重合体を主成分とする組成物(配向膜1)を塗布液として調製して支持体の全面上に塗布し、その上に変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する組成物(配向膜2)をパターン印刷塗布して、乾燥させた後に一方向にラビング処理する。このような工程により、図4に記載の本発明の積層体を得ることができる。
[0174]
(2) 印刷工程(I-B)
印刷工程(I-B):透明支持体上に第一の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域を1つの方位に処理した後、該第一の配向制御領域の処理面の一部の領域上に第二の配向制御領域を印刷することを特徴とする。
[0175]
本発明の積層体の製造方法は、前記印刷工程(I-B)を用いる場合において、ディスコティック液晶を配向制御するための積層体を製造する場合、例えば、前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の配向制御領域用印刷液が、平行垂直配向膜用組成物と第一の配向制御領域用溶媒を含み、前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の配向制御領域用印刷液が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方と第二の配向制御領域用溶媒を含むことが好ましい。
また、前記第一の配向制御領域用印刷液が、直交垂直配向膜用組成物と第一の配向制御領域用溶媒を含み、前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の配向制御領域用印刷液が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方と第二の配向制御領域用溶媒を含むことも好ましい。
このとき、第二の配向制御領域用印刷液は、場合によりインクジェット印刷されることもパターン精度を高める観点から好ましい。本発明に好ましく用いることができるインクジェット印刷の態様としては、例えば、特開2008-26391、特開2010-150409号公報、特開2010-046822号公報に記載の態様を挙げることができる。その中でも、特開2008-26391に記載の態様を本発明では好ましく用いることができる。
これらの態様の場合、得られる本発明の積層体は、前記第二の配向制御領域は、図4のように前記第一の配向制御領域の上に印刷されて盛り上がっていてもよい。また、図5の態様のように前記第一の配向制御領域中に浸透して、本発明の積層体の膜面が平面となっていてもよい。ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物は、前記第一の配向制御領域上に設置された場合も、前記第一の配向制御領域中に浸透した場合も、浸透した部分の前記第一の配向制御領域の配向制御方向を変化させて第二の配向制御領域を形成することができる。但し、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物が前記第一の配向制御領域上に設置する場合、あらかじめ第一の配向制御領域をラビングした後で設置しても、第二の配向制御領域を設置後にラビングしてもよい。あらかじめ第一の配向制御領域をラビングする場合、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物が盛り上がるように形成されたときの第二の配向制御領域(上層)は、該化合物の浸透の度合いによっては一方位に処理されていないこととなり得るが、その場合における第二の配向制御領域の処理方向とは、第1の(下層の)配向制御領域の処理方向を表す。これは、その他の態様で上層が一方位に処理されていないときも同様である。
[0176]
一方、前記印刷工程(I-B)を用いる場合において、第二の配向制御領域用印刷液が第二の配向制御領域用の樹脂を含んでいてもよい。その場合における前記第一の配向制御領域用印刷液に含まれる配向膜用組成物中の主成分である樹脂との組合せは、本発明の積層体の説明に記載したとおりであり、両者の主成分の樹脂が異なっていても、同一であってもよい。また、ディスコティック液晶を配向制御するための積層体を製造する場合、さらに第一の配向制御領域用印刷液と第二の配向制御領域用印刷液のいずれか一方および/または両方が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物を含んでいてもよい。
[0177]
(3) 印刷工程(II-A)
印刷工程(II-A):透明支持体の一部の領域上に第一の配向制御領域を印刷し、前記透明支持体の第一の配向制御領域が印刷されていない領域上に第二の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域および該第二の配向制御領域を同時に1つの方位に処理することを特徴とする。
本発明の積層体の製造方法は、前記印刷工程(II-A)を用いる場合において、前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の配向制御領域用印刷液が、平行配向膜用組成物および直交配向膜用組成物のうちいずれか一方と第一の配向制御領域用溶媒を含み、前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の配向制御領域用印刷液がもう一方の化合物と第二の配向制御領域用溶媒を含むことが好ましい。
[0178]
より具体的に印刷工程(II-A)について説明する。配向膜として一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)又は(III)で表される繰り返し単位とを含むアクリル酸コポリマー又はメタクリル酸コポリマーを主成分とする組成物もしくは一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される構造単位を少なくとも1種有する重合体を主成分とする組成物(配向膜1)と、変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する組成物(配向膜2)を、互いに繰り返し配置されるようにパターン印刷塗布して、乾燥させた後に一方向にラビング処理する。このような工程により、図5に記載の本発明の積層体を得ることができる。
[0179]
(印刷液の溶媒)
本発明の積層体の製造方法では、前記第二の配向制御領域用溶媒が、前記第一の配向制御領域用印刷液中に含まれる化合物を実質的に溶解しないことが好ましい。
このような溶媒を用いることで、本発明の積層体の第一配向領域と、第二配向領域の境界を互いに侵すことがなく、より高精度なパターニングを得ることができる。
[0180]
<1つの方位に処理する工程>
また、本発明の積層体の製造方法は、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域を1つの方位に配向処理する工程を含むことが好ましい。前記1つの方位に処理する工程が、一方位へのラビング処理工程であることがより好ましい。このように1つの方位に配向処理することで、マスクラビングを行ったときの位置合わせの困難さに起因する位置ずれを解消することができる。
ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
[0181]
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
長尺状のポリマーフィルムからなる支持体上に連続的に配向膜を形成する態様では、製造適性の観点では、ラビング処理の方向(ラビング方向)は、ポリマーフィルムの長手方向と一致しているのが好ましい。
[0182]
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、本発明の積層体と、該積層体上の前記配向制御領域上に、重合性基を有する液晶を主成分とする組成物から形成された光学異方性層を有し、該光学異方性層は、面内遅相軸が互いに異なる第一位相差領域と第二位相差領域とが交互にパターニングされていることを特徴とする。
言い換えれば、前記第一位相差領域と前記第二位相差領域が、それぞれ前記配向制御層の表面における前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の膜面垂直方向の正射影に対応した前記光学異方性層内の領域に形成されていることを特徴とする。
このような構成の光学フィルムは、立体画像表示システムに組み込んだときに良好な立体画像を形成させることができる。
[0183]
[光学異方性層]
本発明の光学異方性層は、λ/4板即ち直線偏光を円偏光に変換する機能を有することが好ましい。λ/4板としての機能を有する光学異方性層の形成には種々の方法があるが、特に本発明では、重合性基を有する棒状液晶化合物又はディスコティック液晶を水平配向又は垂直配向させた状態で重合させ、固定化して形成することが好ましい。
[0184]
本発明の光学フィルムは、前記光学異方性層が、前記第一位相差領域と前記第二位相差領域として、平行配向領域と直交配向領域を少なくとも一つ以上有することが好ましい。ここでいう平行配向領域と直交配向領域とは、前記重合性基を有する液晶が棒状液晶であるときは、光学異方性層面内において棒状液晶化合物の長軸が層面に対して水平であって、且つ配向処理方向(例えば、ラビンク゛処理方向)に対して平行方向となる領域と、層面に対して水平であって、且つ配向処理方向に対して直交方向となる領域のことを意味する。
一方、前記重合性基を有する液晶が円盤状液晶である場合、本発明の光学フィルムは、前記重合性基を有する液晶が円盤状液晶であり、前記光学異方性層中、円盤状液晶が層面に対して円盤面を垂直にして配向した垂直配向状態であって、且つその長軸(円盤面が連なっている方向)が配向処理方向(例えば、ラビンク゛処理方向)に対して平行方向となる領域と、垂直配向状態であって、且つその長軸が配向処理方向に対して直交方向となる領域のことを意味する。
[0185]
本発明の光学フィルムは、前記光学異方性層中、前記第一位相差領域と前記第二位相差領域が前記光学異方性層の一辺に平行な長辺を有する帯状に交互にパターニングされており、且つ、前記第一位相差領域の面内の遅相軸と前記第二位相差領域の面内の遅相軸が略直交していることが好ましい。
[0186]
本発明の光学異方性層は、前記第一領域と前記第二領域が、互いの短辺の長さがほぼ等しい帯状であり、かつ交互に繰り返しパターニングされていることが、3D立体映像表示システム用に用いる観点から好ましい。
[0187]
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~5μmであるのがより好ましい。
[0188]
<重合性基を有する液晶>
(棒状液晶)
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能な重合性基を有する液晶化合物としては、重合性基を有する棒状液晶及び重合性基を有するディスコティック液晶を挙げることができ、重合性基を有するディスコティック液晶が好ましい。
前記棒状液晶としては、例えば、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1-272551号、同6-16616号、同7-110469号、同11-80081号、同11-513019号及び特願2001-64627号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。
[0189]
前記低分子棒状液晶性化合物としては、下記一般式(X)で表される化合物が好ましい。
一般式(X)
Q
1-L
1-Cy
1-L
2-(Cy
2-L
3)
n-Cy
3-L
4-Q
2
式中、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立に重合性基を表し、L
1及びL
4はそれぞれ独立に二価の連結基を表し、L
2及びL
3はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Cy
1、Cy
2及びCy
3はそれぞれ独立に二価の環状基を表し、nは0、1又は2である。
[0190]
式中、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。
[0191]
本発明の光学フィルムは、前記重合性基を有する液晶が棒状液晶であり、前記光学異方性層中、棒状液晶が水平配向状態に固定されていることが、棒状液晶を用いる場合、好ましい。後述する水平配向を促進する化合物などにより棒状液晶を水平配向状態で固定することを達成することが好ましい。
[0192]
(ディスコティック液晶)
本発明の光学フィルムの前記光学異方性層の主原料として使用可能なディスコティック液晶は、前記のとおり重合性基を有する化合物である。
前記重合性基を有するディスコティック液晶としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I): D(-L-H-Q)
n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Hは二価の芳香族環又は複素環であり、Qは重合性基であり、nは3~12の整数を表す。
[0193]
円盤状コア(D)は、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、アントラキノン環、トルキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が好ましく、ベンゼン環、トリフェニレン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が特に好ましい。
[0194]
Lは、*-O-CO-、*-CO-O-、*-CH=CH-、*-C≡C-及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基が好ましく、*-CH=CH-又は*-C≡C-のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基であることが特に好ましい。ここで、*は一般式(I)中のDに結合する位置を表す。
[0195]
Hは、芳香族環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましく、ピリジン環が特に好ましい。Hは、芳香族環が特に好ましい。
[0196]
重合性基Qの重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリレート基、エポキシ基が好ましい。
[0197]
前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶は、下記一般式(II)又は(III)で表されるディスコティック液晶であることが特に好ましい。
[0198]
[化39]
[0199]
式中、L、H、Qは、前記一般式(I)におけるL、H、Qとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
[0200]
[化40]
[0201]
式中、Y
1、Y
2、及びY
3は、後述する一般式(IV)におけるY
11、Y
12、及びY
13と同義であり、その好ましい範囲も同一である。また、L
1、L
2、L
3、H
1、H
2、H
3、R
1、R
2、及びR
3も、後述する一般式(IV)におけるL
1、L
2、L
3、H
1、H
2、H
3、R
1、R
2、R
3と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
[0202]
後述するように、一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表されるように、分子内に複数個の芳香環を有しているディスコティック液晶は、配向制御剤として用いられるピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間に分子間π-π相互作用が起こるため、垂直配向を実現できる。特に、例えば、一般式(II)において、Lが、*-CH=CH-又は*-C≡C-のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基である場合、及び、一般式(III)において、複数個の芳香環及び複素環が単結合で連結される場合は、該連結基により結合の自由回転が強く束縛されることにより分子の直線性が保持されるため、液晶性が向上すると共に、より強い分子間π-π相互作用が起こり安定な垂直配向が実現できる。
[0203]
前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
[0204]
[化41]
[0205]
式中、Y
11、Y
12及びY
13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表す。
[0206]
Y
11、Y
12およびY
13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基で置き換わってもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~12アルコキシカルボニル基、炭素数2~12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がより好ましい。
Y
11、Y
12およびY
13は、化合物の合成の容易さおよびコストの点において、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがさらに好ましい。
[0207]
L
1、L
2及びL
3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。
L
1、L
2およびL
3が二価の連結基の場合、それぞれ独立に、-O-,-S-、-C(=O)-、-NR
7-、-CH=CH-、-C≡C-、二価の環状基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R
7は炭素原子数1~7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1~4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
[0208]
L
1、L
2およびL
3における二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基(以下、環状基と呼ぶことがある)である。環状基は5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。環状基は、芳香族環および複素環がより好ましい。なお、本発明における2価の環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい(以下、同じ)。
[0209]
L
1、L
2およびL
3で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4-フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン-1,5-ジイル基およびナフタレン-2,6-ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4-シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン-2,5-ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン-2,5-ジイル基が好ましい。
[0210]
L
1、L
2およびL
3で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~16のアルキル基、炭素原子数2~16のアルケニル基、炭素原子数が2~16アルキニル基、炭素原子数1~16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数1~16のアルコキシ基、炭素原子数2~16のアシル基、炭素原子数1~16のアルキルチオ基、炭素原子数2~16のアシルオキシ基、炭素原子数2~16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2~16のアシルアミノ基が含まれる。
[0211]
L
1、L
2およびL
3としては、単結合、*-O-CO-、*-CO-O-、*-CH=CH-、*-C≡C-、*-二価の環状基-、*-O-CO-二価の環状基-、*-CO-O-二価の環状基-、*-CH=CH-二価の環状基-、*-C≡C-二価の環状基-、*-二価の環状基-O-CO-、*-二価の環状基-CO-O-、*-二価の環状基-CH=CH-および*-二価の環状基-C≡C-が好ましい。特に、単結合、*-CH=CH-、*-C≡C-、*-CH=CH-二価の環状基-および*-C≡C-二価の環状基-が好ましく、単結合が最も好ましい。ここで、*は一般式(IV)中のY
11、Y
12およびY
13を含む6員環側に結合する位置を表す。
[0212]
一般式(I)中、H
1、H
2及びH
3は、それぞれ独立に一般式(IV-A)又は(IV-B)の基を表す。
[0213]
[化42]
一般式(IV-A)中、YA
1及びYA
2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(IV)におけるL
1~L
3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(IV)におけるR
1~R
3側と結合する位置を表す。
[0214]
[化43]
一般式(IV-B)中、YB
1及びYB
2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(IV)におけるL
1~L
3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(IV)におけるR
1~R
3側と結合する位置を表す。
[0215]
一般式(IV)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に下記一般式(IV-R)を表す。
[0216]
一般式(IV-R)
*-(-L
21-Q
2)
n1-L
22-L
23-Q
1
一般式(IV-R)中、*は、一般式(IV)におけるH
1~H
3側と結合する位置を表す。
L
21は単結合又は二価の連結基を表す。L
21が二価の連結基の場合、-O-、-S-、-C(=O)-、-NR
7-、-CH=CH-および-C≡C-ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R
7は炭素原子数1~7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1~4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
[0217]
L
21は単結合、***-O-CO-、***-CO-O-、***-CH=CH-および***-C≡C-(ここで、***は一般式(DI-R)中の*側を表す)のいずれかが好ましく、単結合がより好ましい。
[0218]
Q
2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す。このような環状基としては、5員環、6員環、または7員環を有する環状基が好ましく、5員環または6員環を有する環状基がより好ましく、6員環を有する環状基がさらに好ましい。上記環状基に含まれる環状構造は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
[0219]
上記Q
2のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4-フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-1,5-ジイル基、ナフタレン-1,6-ジイル基、ナフタレン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイルナフタレン-2,7-ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4-シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン-2,5-ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン-2,5-ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基および1,4-シクロへキシレン基が好ましい。
[0220]
Q
2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~16のアルキル基、炭素原子数2~16のアルケニル基、炭素原子数2~16のアルキニル基、炭素原子数1~16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1~16のアルコキシ基、炭素原子数2~16のアシル基、炭素原子数1~16のアルキルチオ基、炭素原子数2~16のアシルオキシ基、炭素原子数2~16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2~16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1~3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
[0221]
n1は、0~4の整数を表す。n1としては、1~3の整数が好ましく、1もしくは2がさらに好ましい。
[0222]
L
22は、**-O-、**-O-CO-、**-CO-O-、**-O-CO-O-、**-S-、**-NH-、**-SO
2-、**-CH
2-、**-CH=CH-または**-C≡C-を表し、**はQ
2側と結合する位置を表す。
L
22は、好ましくは、**-O-、**-O-CO-、**-CO-O-、**-O-CO-O-、**-CH
2-、**-CH=CH-、**-C≡C-であり、より好ましくは、**-O-、**-O-CO-、**-O-CO-O-、**-CH
2-である。L
22が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~6のアシル基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、炭素原子数2~6のアシルオキシ基、炭素原子数2~6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2~6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましい。
[0223]
L
23は、-O-、-S-、-C(=O)-、-SO
2-、-NH-、-CH
2-、-CH=CH-および-C≡C-ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、-NH-、-CH
2-、-CH=CH-の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~6のアシル基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、炭素原子数2~6のアシルオキシ基、炭素原子数2~6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2~6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましい。これらの置換基に置換されることにより、本発明の液晶性化合物から液晶性組成物を調製する際に、使用する溶媒に対する溶解性を向上させることができる。
[0224]
L
23は、-O-、-C(=O)-、-CH
2-、-CH=CH-および-C≡C-ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。L
23は、炭素原子を1~20個含有することが好ましく、炭素原子を2~14個を含有することがより好ましい。さらに、L
23は、-CH
2-を1~16個含有することが好ましく、-CH
2-を2~12個含有することがさらに好ましい。
[0225]
Q
1は重合性基または水素原子を表す。本発明の液晶性化合物を光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学フィルム等に用いる場合には、Q
1は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
[0226]
[化44]
[0227]
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
[0228]
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M-1)~(M-6)が挙げられる。
[0229]
[化45]
[0230]
式(M-3)、(M-4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(M-1)~(M-6)の中、(M-1)または(M-2)が好ましく、(M-1)がより好ましい。
[0231]
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
[0232]
前記式(IV)の化合物の中でも、下記一般式(IV’)で表される化合物がより好ましい。
[0233]
[化46]
[0234]
一般式(IV’)中、Y
11、Y
12およびY
13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、メチンが好ましく、メチンは無置換であるのが好ましい。
[0235]
R
11、R
12およびR
13は、それぞれ独立に下記一般式(IV’-A)、下記一般式(IV’-B)または下記一般式(IV’-C)を表す。固有複屈折の波長分散性を小さくしようとする場合、一般式(IV’-A)または一般式(IV’-C)が好ましく、一般式(IV’-A)がより好ましい。R
11、R
12およびR
13は、R
11=R
12=R
13であることが好ましい。
[0236]
[化47]
[0237]
一般式(IV’-A)中、A
11、A
12、A
13、A
14、A
15およびA
16は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A
11およびA
12は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A
13、A
14、A
15およびA
16は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。さらに、メチンは無置換であることが好ましい。
A
11、A
12、A
13、A
14、A
15またはA
16がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~16のアルキル基、炭素原子数2~16のアルケニル基、炭素原子数2~16のアルキニル基、炭素原子数1~16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1~16のアルコキシ基、炭素原子数2~16のアシル基、炭素原子数1~16のアルキルチオ基、炭素原子数2~16のアシルオキシ基、炭素原子数2~16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2~16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1~3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X
1は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
[0238]
[化48]
[0239]
一般式(IV’-B)中、A
21、A
22、A
23、A
24、A
25およびA
26は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A
21およびA
22は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A
23、A
24、A
25およびA
26は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
A
21、A
22、A
23、A
24、A
25またはA
26がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~16のアルキル基、炭素原子数2~16のアルケニル基、炭素原子数2~16のアルキニル基、炭素原子数1~16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1~16のアルコキシ基、炭素原子数2~16のアシル基、炭素原子数1~16のアルキルチオ基、炭素原子数2~16のアシルオキシ基、炭素原子数2~16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2~16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1~3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X
2は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
[0240]
[化49]
[0241]
一般式(IV’-C)中、A
31、A
32、A
33、A
34、A
35およびA
36は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A
31およびA
32は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A
33、A
34、A
35およびA
36は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
A
31、A
32、A
33、A
34、A
35またはA
36がメチンの場合、メチンは置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~16のアルキル基、炭素原子数2~16のアルケニル基、炭素原子数2~16のアルキニル基、炭素原子数1~16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1~16のアルコキシ基、炭素原子数2~16のアシル基、炭素原子数1~16のアルキルチオ基、炭素原子数2~16のアシルオキシ基、炭素原子数2~16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2~16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1~3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X
3は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
[0242]
一般式(IV’-A)中のL
11、一般式(IV’-B)中のL
21、一般式(IV’-C)中のL
31はそれぞれ独立して、-O-、-C(=O)-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-、-NH-、-SO
2-、-CH
2-、-CH=CH-または-C≡C-を表す。好ましくは、-O-、-C(=O)-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-CH
2-、-CH=CH-、-C≡C-であり、より好ましくは、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-C≡C-である。特に、小さい固有複屈折の波長分散性が期待できる、一般式(DI-A)中のL
11は、-O-、-CO-O-、-C≡C-が特に好ましく、この中でも-CO-O-が、より高温でディスコティックネマチック相を発現できるため、好ましい。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~6のアシル基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、炭素原子数2~6のアシルオキシ基、炭素原子数2~6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2~6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましい。
[0243]
一般式(IV’-A)中のL
12、一般式(IV’-B)中のL
22、一般式(IV’-C)中のL
32はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-C(=O)-、-SO
2-、-NH-、-CH
2-、-CH=CH-および-C≡C-ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、-NH-、-CH
2-、-CH=CH-の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~6のアシル基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、炭素原子数2~6のアシルオキシ基、炭素原子数2~6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2~6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2~6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、特にハロゲン原子、メチル基、エチル基が好ましい。
[0244]
L
12、L
22、L
32はそれぞれ独立して、-O-、-C(=O)-、-CH
2-、-CH=CH-および-C≡C-ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。
[0245]
L
12、L
22、L
32はそれぞれ独立して、炭素数1~20であることが好ましく、炭素数2~14であることがより好ましい。炭素数2~14が好ましく、-CH
2-を1~16個有することがより好ましく、-CH
2-を2~12個有することがさらに好ましい。
[0246]
L
12、L
22、L
32を構成する炭素数は、液晶の相転移温度と化合物の溶媒への溶解性に影響を及ぼす。一般的に炭素数は多くなるほど、ディスコティックネマチック相(N
D相)から等方性液体への転移温度が低下する傾向にある。また、溶媒への溶解性は、一般的に炭素数は多くなるほど向上する傾向にある。
[0247]
一般式(IV’-A)中のQ
11、一般式(IV’-B)中のQ
21、一般式(IV’-C)中のQ
31はそれぞれ独立して重合性基または水素原子を表す。また、Q
11、Q
21、Q
31は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例については、上記と同様であり、好ましい例も上記と同様である。
[0248]
前記一般式(IV)で表される化合物の具体例には、特開2006-76992号公報の[0052]の[化13]~[化43]に記載の例示化合物、並びに特開2007-2220号公報の[0040]の[化13]~[0063]の[化36]に記載の例示化合物が含まれる。但し、これらの化合物に限定されるものではない。
[0249]
上記化合物は、種々の方法により合成することができ、例えば、特開2007-2220号公報の[0064]~[0070]に記載の方法により合成することができる。
[0250]
前記ディスコティック液晶化合物は、液晶相として、カラムナー相およびディスコティックネマチック相(N
D相)を示すことが好ましく、これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(N
D相)が好ましい。
[0251]
前記ディスコティック液晶化合物の中でも、液晶相を20℃~300℃の範囲で発現させるものが好ましい。より好ましくは40℃~280℃であり、さらに好ましくは60℃~250℃である。ここで20℃~300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(例えば、10℃~22℃)や、300℃をまたぐ場合(例えば、298℃~310℃)も含む。40℃~280℃と60℃~250℃に関しても同様である。
[0252]
前記一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、後述する、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間に強い分子間π-π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる。特に、一般式(IV’)で表されるディスコティック液晶は、複数個の芳香環が単結合で連結されているため、分子の回転自由度が束縛された直線性の高い分子構造を有しているため、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間により強い分子間π-π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させ垂直配向状態が実現できる。
[0253]
棒状液晶化合物を利用する場合は、棒状液晶を水平配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の子長軸と層面が平行であることをいう。厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0~5度が好ましく、0~3度がより好ましく、0~2度がさらに好ましく、0~1度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の水平配向を促進する添加剤を添加してもよく、該添加剤の例には、特開2009-223001号公報の[0055]~[0063]に記載の化合物が含まれる。
[0254]
ディスコティック液晶を利用する場合は、ディスコティック液晶を垂直配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。傾斜角は85~90度が好ましく、87~90度がより好ましく、88~90度がさらに好ましく、89~90度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の垂直配向を促進する添加剤を添加していることが好ましく、該添加剤の例は、前記の通りである。
[0255]
なお、液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(液晶性化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、-40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA-21ADH及びKOBRA-WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメータAEP-100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定することができる。
[0256]
<ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物(配向膜側配向制御剤)>
本発明の光学フィルムの前記光学異方性層は、配向膜側配向制御剤として、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物を含んでいてもよい。光学異方性層中にピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物が含まれていることで、特にディスコティック液晶化合物を用いる場合、配向膜側、すなわち本発明の積層体側の界面におけるディスコティック液晶化合物の垂直配向を、本発明の積層体の膜面に対してより垂直となるように制御することができる。
本発明の光学フィルムの前記光学異方性層に用いることができるピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の好ましい範囲は、本発明の積層体に添加剤として用いる場合のピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の好ましい範囲と同様である。
前記ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1~2質量%程度であるのが好ましい。
[0257]
<フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)>
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、主に、前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
本発明の光学異方性層に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004-333852号、同2004-333861号、同2005-134884号、同2005-179636号、及び同2005-181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。特に好ましくは、特開2005-179636号、及び同2005-181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO
3H)、ホスホノキシ{-OP(=O)(OH)
2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1~1質量%程度であるのが好ましい。
[0258]
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特にディスコティック液晶のチルト角を増加させることができる。さらに、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO
3H)、ホスホノキシ{-OP(=O)(OH)
2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。
[0259]
<ブラックマトリックス>
本発明の光学フィルムは、前記第一位相差領域と前記第二位相差領域との間にブラックマトリックスを有することが、本発明の光学フィルムを3D画像表示装置のパターニング位相差板として用いたときに、クロストークを低減させる観点から、好ましい。ここで、ブラックマトリックスが前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域との間に配置されるとは、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域を隔てるように仕切りとして配置されている態様も、前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の境界線上に積層されて配置されている態様も含む。
[0260]
<光学フィルムの特性>
(Re、Rth)
本発明の光学フィルムは、全体のRe(550)が100~190nmであり、100~175nmであることが好ましく、110~165nmであることがより好ましい。
本発明の光学フィルムは、前記積層体の透明支持体のRthと、前記光学異方性層のRthの合計が|Rth|≦20nmであることが好ましい。
ただし、前記ReおよびRthは波長550nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
[0261]
(熱膨張係数)
本発明における熱膨張係数は、ISO11359-2に準じて測定することができ、サンプルを室温から80℃まで昇温させた後、60℃から50℃に降温するときのフィルムの長さの傾きから算出した。
[0262]
(湿度膨張係数)
本発明における湿度膨張係数を測定する際には、弾性率が最大となる方向を長手方向として切り出した長さ25cm(測定方向)、幅5cmのフィルム試料を用意し、該試料に20cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度10%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL
0とする)。次いで、試料を25℃、相対湿度80%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL
1とする)。これらの測定値を用いて下記式により湿度膨張係数を算出する。
湿度膨張係数[/%RH]={(L
1-L
0)/L
0}/(R
1-R
0)
本発明の光学フィルムの湿度膨張係数は、熱膨張係数との組合せにより、適宜、設定することができるが、3.0×10
-6~500×10
-6/%RHが好ましく、4.0×10
-6~100×10
-6/%RHがより好ましく、5.0×10
-6~50×10
-6/%RHが更に好ましく、5.0×10
-6~40×10
-6/%RHが最も好ましい。なお、RHは、相対湿度を意味する。
[0263]
(音速)
本発明において音速(音波伝播速度)が最大となる方向は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、配向性測定機(SST-2500:野村商事(株)製)を用いて、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向として求めた。
[0264]
(弾性率)
本発明における弾性率は、長さ150mm、巾10mmのフィルム試料を用意し、25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ISO527-3:1995の規格に準じ、初期試料長100mm、引張速度10mm/minにて測定し、応力-歪み曲線の初期の傾きから求めた引張り弾性率である。フィルム試料の長さ方向と幅方向の取り方によって一般に弾性率は異なるが、本発明では弾性率が最大となる方向でフィルム試料を用意して測定した値を本発明の弾性率として表記する。なお、前述で求めた音速が最大となる方向における弾性率をE1、それと直交する方向における弾性率をE2としたとき、それらの比(E1/E2)は、フィルムのしなやかさを保ちつつも寸法変化を小さくする観点から、1.1~5.0であることが好ましく、1.5~3.0であることがより好ましい。
本発明のフィルムの弾性率は特に限定されないが、1~50GPaが好ましく、5~50GPaがより好ましく、7~20GPaが更に好ましい。弾性率はポリマーの種類、添加剤の種類及び量、延伸によって制御することができる。
[0265]
(全光透過率、ヘイズ)
本発明において、サンプルを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて測定した値を全光透過率、及びヘイズとした。
本発明の光学フィルムの全光透過率は、光源からの光を効率的に使用して、パネルの消費電力を低減する観点から、高いほうが好ましく、具体的には85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることが更に好ましい。また、本発明の光学フィルムのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが更にまた好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
[0266]
(引裂き強度)
本発明において、引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)は、フィルムの遅相軸と平行な方向、及び直交する方向を長手方向として、それぞれ64mm×50mmの試料を切り出し、25℃、相対湿度60%にて2時間調湿後、軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定し、小さい方の値をフィルムの引裂き強度とした。
本発明の光学フィルムの引裂き強度は、フィルムの脆さの観点から、3~50gであることが好ましく、5~40gであることがより好ましく、10~30gであることが更に好ましい。
(膜厚)
本発明の光学フィルムの厚さは、製造コストを下げる観点から、10~1000μmであることが好ましく、40~500μmであることがより好ましく、40~200μmであることが特に好ましい。
[0267]
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法は、本発明の積層体の製造方法で製造された積層体の上に、重合性基を有する液晶を含有する組成物を配置し、光学異方性層を形成し、第一の配向制御領域上で配向制御された第一位相差領域及び第二の配向制御領域上で配向制御された第二位相差領域を含むパターン光学異方性層を形成することを特徴とする。
[0268]
<パターン化された光学異方性層の形成方法>
パターン化された光学異方性層の形成方法について述べる。
[0269]
前記光学異方性層は、前記の重合性基を有する液晶を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述するラビング配向膜の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であることが好ましい。
[0270]
(重合性基を有する液晶を含有する組成物の配置)
本発明の光学フィルムの製造方法は、重合性基を有する液晶を含有する組成物を配置する工程として、溶媒と重合性基を有する液晶とを含む塗布液を塗布する工程を含むことが好ましい。
塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
[0271]
本発明の光学フィルムの製造方法では、前記塗布液が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含むことが、ディスコティック液晶を用いる場合は本発明の積層体側の界面でのディスコティック液晶分子の垂直配向を高める観点から、好ましい。
また、本発明の光学フィルムの製造方法は、前記重合性基を有する液晶が円盤状液晶であることが好ましい。
[0272]
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
本発明の光学フィルムの製造方法は、前記溶媒と重合性基を有する液晶とを含む塗布液に含まれる溶媒が、前記第一の配向制御領域用印刷液中に含まれる化合物と、前記第一の配向制御領域用印刷液中に含まれる化合物のいずれも実質的に溶解しないことが好ましい。このような溶媒を用いて溶媒と重合性基を有する液晶とを含む塗布液を塗布することで、本発明の積層体の配向制御領域の配向規制能を乱さないようにすることができ、良好なパターン化された光学異方性層を得ることができる。
[0273]
棒状液晶化合物を利用する場合は、棒状液晶を水平配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の子長軸と層面が平行であることをいう。厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0~5度が好ましく、0~3度がより好ましく、0~2度がさらに好ましく、0~1度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の水平配向を促進する添加剤を添加してもよく、該添加剤の例には、特開2009-223001号公報の[0055]~[0063]に記載の化合物が含まれる。
[0274]
ディスコティック液晶を利用する場合は、ディスコティック液晶を垂直配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。傾斜角は85~90度が好ましく、87~90度がより好ましく、88~90度がさらに好ましく、89~90度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の垂直配向を促進する添加剤としてピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を添加していることが好ましく、該添加剤の例は、前記の通りである。
[0275]
(加熱)
パターン光学異方性層の配向制御の方法としては、前記塗布膜を加熱することで、第一の配向制御領域または第二の配向制御領域のうちいずれか一方の配向制御領域上の液晶の長軸を前記ラビング処理方向に対して直交に配向させて直交配向領域とし、もう一方の配向制御領域上の液晶の長軸を前記ラビング処理方向に対して平行に配向させて平行配向領域とする工程を含むことが好ましい。
特に、前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の組成物と、前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の組成物の少なくとも一方が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含み、前記第一の組成物と前記第二の組成物の加熱配向処理を行う工程を含むことが好ましい。上述したとおり、配向温度を制御することによりピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含む配向制御領域に対して、ディスコティック液晶化合物が配向する方向を変化させることができ、所望の配向状態を得ることができる。
[0276]
(固定化)
次に、配向させた液晶化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。本発明の製造方法は、光照射して前記塗布膜中の液晶の配向状態を固定化する工程を含むことが好ましい。
光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。
[0277]
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
[0278]
前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0~20質量%程度であるのが好ましい。
[0279]
照射する光は、X線、電子線、紫外線、可視光線または赤外線(熱線)を用いることができる。中でも、液晶化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)あるいはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)が好ましく用いられる。露光量は、50~1000mJ/cm
2程度であることが好ましく、50~200mJ/cm
2程度であることがさらに好ましい。照射波長としては250~450nmにピークを有することが好ましく、300~410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。パターン解像度を向上させるためには、室温で露光することが好ましい。また、第一位相差領域と第二位相差領域の正面レターデーション値(Re)、膜厚方向のレターデーション値(Rth)を等しくするため、露光温度を制御することが好ましい。
[0280]
前記パターン化された光学異方性層の形成には、本発明の積層体を用いる。その中でも、少なくともラビング配向膜を含む本発明の積層体を用いることが好ましい。本発明のラビング配向膜は、ラビング処理によって配向制御能を発現し、ラビング方向と加熱条件に従って、配向軸が決定する性質を有する。よって、印刷方式を用いて配向膜及び液晶組成物をパターン塗布して加熱することにより、配向軸が互いに直交するドメインを形成することができ、その上で、棒状液晶を水平配向させる、又は、ディスコティック液晶を垂直配向させることで、遅相軸が互いに直交するドメインからなる1/4波長層を形成することができる。
[0281]
印刷方法についての例を、以下に挙げる。
本発明の積層体の前記配向制御領域側の表面(好ましくはラビング処理面)に、塗布液として調製された前記ディスコティック液晶、ピリジニウム化合物、フルオロ脂肪族基含有共重合体、重合開始剤、増感剤等を含有する光学異方性層形成用組成物を塗布する。
ディスコティック液晶を用いる場合、前記組成物の塗膜を乾燥したのち加熱して、ディスコティック液晶の長軸がラビング方向とパターンに合わせて平行・直交するように垂直配向状態にする。ディスコティック液晶の分子をこの所望の配向状態とした後、重合により硬化させ、その配向状態を固定して、パターンを形成する。
一方、棒状液晶を用いる場合、前記組成物の塗膜を乾燥したのち加熱して、棒状液晶の長軸がラビング方向とパターンに合わせて平行・直交するように水平配向状態にする。棒状液晶の分子をこの所望の配向状態とした後、重合により硬化させ、その配向状態を固定して、パターンを形成する。
[0282]
<ブラックマトリックスの形成>
本発明の光学フィルムの製造方法は、前記光学異方性層の形成前又は後に、前記第一位相差領域及び前記第二位相差領域との間にブラックマトリックスを形成する工程を含んでいてもよい。
具体的な形成方法としては、特に制限はないが、例えば以下の例を挙げることができる。
本発明では、前記積層体の上に、前記第一位相差領域と前記第二位相差領域を隔てるようにブラックマトリックスを形成する工程を含み、前記棒状液晶またはディスコティック液晶を含む塗布液を前記ブラックマトッリクスの間に塗布することが好ましい。
また、本発明では、前記棒状液晶またはディスコティック液晶を含む塗布液を塗布する工程の後に、隣接する第一位相差領域と前記第二位相差領域の少なくとも境界線上にブラックマトリックスを形成する工程を含むことも好ましい。
[0283]
[偏光板]
本発明の偏光板は、少なくとも1枚の本発明の光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の前記第一位相差領域と前記第二位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方位と、偏光膜の吸収軸方位とがいずれも略45°をなすことを特徴とする。
前記偏光板は、従来公知の一般的な構成の偏光板を挙げることができ、前記偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008-262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。本発明の光学フィルムは、一般的な偏光板の一方の面上に積層させ、偏光眼鏡方式の3D立体映像表示システムに用いることができるパターニング位相差フィルムとすることができる。前記偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、帯状、すなわち、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
[0284]
<偏光板の製造方法>
本発明の偏光板の製造方法は、透明支持体であるセルロースアシレートとパターン形成された配向膜が積層されたフィルム全体をラビングする工程と、棒状液晶もしくはディスコティック液晶を主成分とする組成物を配向状態にする工程と、全面露光して第一位相差領域と第二位相差領域を形成する工程と、得られた光学異方性フィルムを透過軸が45°方向にある偏光板とをロール・トゥ・ロールで積層する工程を含むことを特徴とする。
このような態様により、本発明の偏光板の製造方法は、連続生産できる観点から、従来の製造方法よりも製造コストが低い。
[0285]
<粘着層>
本発明の偏光板は、前記光学フィルムと、前記偏光膜とが粘着層を介して積層されていることが好ましい。
本発明において、光学フィルムと偏光膜との積層のために用いられる粘着層とは、例えば、動的粘弾性測定装置で測定したG’とG”との比(tanδ=G”/G’)が0.001~1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。
[0286]
<反射防止フィルム>
本発明の偏光板は、さらに最表面に一層以上の反射防止フィルムが積層されていることが好ましい。
[0287]
(反射防止層)
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層又は透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。これは、特に3D画像を表示する場合に、外光反射によるフリッカが発生してしまうのを効果的に防ぐことができるからである。
以下にそれらの好ましい例を記載する。
[0288]
透明保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。
本発明の光散乱層にはマット粒子が分散しており、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50~2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.35~1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、1層でもよいし、複数層、例えば2層~4層で構成されていてもよい。
[0289]
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08μm~0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1μm~100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0度~5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値-2~2、b*値-3~3、380nm~780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5~0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb*値が0~3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。
また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
[0290]
本発明の反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%~50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値(比)が0.3~1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%~50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5~5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
[0291]
(低屈折率層)
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20~1.49であり、好ましくは1.30~1.44の範囲にある。更に、低屈折率層は下記数式(IX)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(IX):(mλ/4)×0.7<n1d1<(mλ/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500~550nmの範囲の値である。
[0292]
本発明の低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
本発明の低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含む。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03~0.20、水に対する接触角90°~120°、純水の滑落角が70°以下の熱又は電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
[0293]
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
[0294]
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM-2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
[0295]
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
[0296]
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N-tert-ブチルアクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
[0297]
上記のポリマーに対しては特開平10-25388号及び特開平10-147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用してもよい。
[0298]
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱及び/又は内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、及び必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。
[0299]
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生及び脆性の悪化の抑制の観点から、1μm~10μmが好ましく、1.2μm~6μmがより好ましい。
[0300]
散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
[0301]
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3-シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4-ジビニルベンゼン、4-ビニル安息香酸-2-アクリロイルエチルエステル、1,4-ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
[0302]
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4-メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4-メタクリロキシフェニル-4’-メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
[0303]
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
[0304]
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
[0305]
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
[0306]
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1μm~10μm、好ましくは1.5μm~7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO
2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
[0307]
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
[0308]
更に、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
[0309]
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10mg/m
2~1000mg/m
2、より好ましくは100mg/m
2~700mg/m
2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
[0310]
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、In
2O
3、ZnO、SnO
2、Sb
2O
3、ITOとSiO
2等が挙げられる。TiO
2及びZrO
2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10%~90%であることが好ましく、より好ましくは20%~80%であり、特に好ましくは30%~75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
[0311]
光散乱層のバインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48~2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50~1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
[0312]
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を防眩層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
[0313]
次に透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層について述べる。
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい(例えば、特開平8-122504号公報、同8-110401号公報、同10-300902号公報、特開2002-243906号公報、特開2000-111706号公報等参照)。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10-206603号公報、特開2002-243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
[0314]
(高屈折率層及び中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11-295503号公報、同11-153703号公報、特開2000-9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001-310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001-1661042001-310432号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11-153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002-2776069号公報等)等挙げられる。
[0315]
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個有する多官能性化合物含有組成物と、加水分解性基を有する有機金属化合物及びその部分縮合体を含有する組成物とから選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000-47004号公報、同2001-315242号公報、同2001-31871号公報、同2001-296401号公報等に記載の組成物が挙げられる。また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001-293818号公報等に記載されている。
[0316]
高屈折率層の屈折率は、-般に1.70~2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm~10μmであることが好ましく、10nm~1μmであることが更に好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50~1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm~10mμであることが好ましく、10nm~1μmであることが更に好ましい。
[0317]
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20~1.55である。好ましくは1.30~1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35~1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36~1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35質量%~80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9-222503号公報明細書段落番号[0018]~[0026]、同11-38202号公報明細書段落番号[0019]~[0030]、特開2001-40284号公報明細書段落番号[0027]~[0028]、特開2000-284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11-258403号公報等)等が挙げられる。
[0318]
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58-142958号公報、同58-147483号公報、同58-147484号公報、特開平9-157582号公報、同11-106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000-117902号公報、同2001-48590号公報、同2002-53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
[0319]
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1nm~150nmの低屈折率無機化合物、特開平11-3820号公報の段落番号[0020]~[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30nm~200nmであることが好ましく、50nm~150nmであることが更に好ましく、60nm~120nmであることが最も好ましい。
[0320]
(反射防止層の他の層)
更に、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
[0321]
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、第一及び第二の偏光膜;第一及び第二の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び第一偏光膜の外側に本発明の光学フィルム;を少なくとも有する画像表示装置であって、前記第一偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第一相差領域の面内遅相軸及び第二位相差領域のそれぞれの面内遅相軸が、いずれも±45°の角度をなすことを特徴とする。
[0322]
本発明の液晶表示装置は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)などの様々な表示モードに好ましく用いることができる。
[0323]
[立体画像表示システム]
本発明の立体画像表示システムは、本発明の画像表示装置と、前記本発明の光学フィルムの外側に配置される第三の偏光板とを少なくとも備え、第三の偏光板を通じて立体画像を視認させることを特徴とする。
本発明は、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、前記第三の偏光板として眼鏡形状の偏光板を通して画像を認識することが好ましい。
[0324]
<偏光眼鏡>
本発明の映像表示システムは、右眼鏡と左眼鏡の遅相軸が直交する偏光眼鏡を含み、前記パターニング位相差フィルムの前記第一領域又は前記第二領域のいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、かつ、左眼鏡で遮光され、前記パターニング位相差フィルムの前記第一領域又は前記第二領域の残りの一方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、かつ、右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
当然ではあるが、前記偏光眼鏡は、本発明において詳細説明がなされている前記パターニング位相差に対応する配置の位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
[0325]
偏光眼鏡を含め、本発明の映像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、前記パターニング位相差フィルムは映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前記第一領域と前記第二領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前記第一領域と前記第二領域の位相差はともにλ/4であることが好ましく、前記第一領域と前記第二領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
[0326]
円偏光を利用する場合、前記第一領域と前記第二領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前記パターニング位相差フィルムにおいて円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は-45度)に近いほど好ましい。
[0327]
また、例えば前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸が該フロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前記液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前記パターニング位相差フィルムの奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、パターニング位相差フィルム及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004-170693号公報に開示がある。
[0328]
偏光眼鏡の例としては、特開2004-170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製、ZM-M220Wの付属品を挙げることができる。
[0329]
<その他の立体画像表示システムの構成>
前記画像表示装置が画素を表示するパネルを含み、
前記画素が、各画素の高さを揃えたライン状に繰り返し配置された画素群を形成しており、
前記光学フィルムの第一位相差領域と第二位相差領域が、前記ライン状の画素群の1ラインに対応して交互にパターニングされていることが好ましい。
実施例
[0330]
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[0331]
[参考例1]
(1)ラビング配向膜付きの透明支持体(配向膜A~C)の作製
(配向膜Aの作成)
透明ガラス支持体の表面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水/メタノール溶液(PVA-103(4.0g)を、水72g及びメタノール24gに溶解させた、粘度4.35cp、表面張力44.8dyne)を、12番バーで塗布を行い、120℃で2分間乾燥させた。なお、ガラス支持体のRe(550)は0nmであり、Rthは0nmであり、配向膜の膜厚は、0.9μmであった。その後に、1000rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付ガラス支持体を作製した(配向膜A)。本配向膜は一般に平行配向膜として作用する。
[0332]
(配向膜Bの作成)
上記と同様に透明ガラス支持体の表面に、直交配向膜(化合物番号5)の溶液(配向膜1.323gを、トリエチルアミン0.329gとメタノール38.35gに溶解させた、粘度0.84cp、表面張力22.7dyne)を12番バーで塗布を行い、120℃で2分間乾燥させた。配向膜の膜厚は、0.9μmであった。その後に、1000rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付ガラス支持体を作製した(配向膜B)。本配向膜は一般に直交配向膜として作用する。
[0333]
(配向膜Cの作成)
透明ガラス支持体の表面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水/メタノール溶液(PVA-103(4.0g)を、水72g及びメタノール24gに溶解させた、粘度4.35cp、表面張力44.8dyne)を、12番バーで塗布を行い、120℃で2分間乾燥させた。なお、ガラス支持体のRe(550)は0nmであり、Rthは0nmであり、PVA配向膜の膜厚は、0.9μmであった。この平行配向膜上に、直交配向膜(化合物番号5)の溶液(配向膜1.323gをトリエチルアミン0.329gとメタノール38.35gに溶解させた、粘度0.84cp、表面張力22.7dyne)を12番バーで塗布を行い、120℃で2分間乾燥させた。配向膜全体の膜厚は、1.8μmであった。その後に、1000rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付ガラス支持体を作製した(配向膜C)。
[0334]
(2)液晶の塗布、硬化、得られた光学フィルムの配列の確認
下記液晶組成物1を用いて配向膜付ガラス基板上に0.35mlを取り、スピンコート塗布し(2500rpm、10秒間)、90℃で加熱しながらUV照射(10秒間)して硬化させた後に、顕微鏡で配列を確認した。
[0335]
・棒状液晶組成物1
下記重合性液晶1:下記重合開始剤1:下記空気界面配向剤1(=100:3:0.3、以下比率は重量%で記載)の固形分26%メチルエチルケトン(MEK)溶液
[0336]
[化50]
[0337]
[参考例2]
参考例1において、前記液晶組成物1の代わりに、下記棒状液晶組成物2を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成し、顕微鏡で得られた光学フィルムを確認した。
[0338]
・棒状液晶組成物2
下記重合性液晶2:前記重合開始剤1:前記空気界面配向剤1(=100:3:0.3)の固形分26%メチルエチルケトン(MEK)溶液
[化51]
[0339]
[参考例3]
参考例1において、前記液晶組成物1の代わりに下記ディスコティック液晶組成物1を用い、また、ディスコティック液晶組成物1の塗布膜を140℃まで加熱した後に90℃まで降温してUV照射した以外は同様にして参考例3の光学フィルムを作成し、顕微鏡で得られた光学フィルムの配列を確認した。
[0340]
・ディスコティック液晶組成物1
下記重合性液晶3/下記重合開始剤2/下記増感剤1/下記ピリジニウム化合物1/下記空気界面配向剤2/下記空気界面配向剤3(=100:3:1:2:0.3:0.5)の固形分20%MEK溶液
[化52]
空気界面配向剤3
セルロースアシレートブチレート(イーストマンケミカル社製CAB551-0.2)
[0341]
[参考例4]
参考例1において、前記液晶組成物1の代わりに下記ディスコティック液晶組成物2を用い、また、ディスコティック液晶組成物1の塗布膜を140℃まで加熱した後に90℃まで降温してUV照射した以外は同様にして参考例4の光学フィルムを作成し、顕微鏡で得られた光学フィルムの配列を確認した。
[0342]
(ディスコティック液晶組成物2)
下記重合性液晶4/前記重合開始剤2/前記増感剤1/前記ピリジニウム化合物1/前記空気界面配向剤2/前記空気界面配向剤3(100:3:1:2:0.3:0.5)の固形分20%MEK溶液
[化53]
[0343]
参考例1~4において、顕微鏡観察によって観察された配列の結果を下記表にまとめて記載した。なお、下記表中を含め、本明細書中では、「平行配列」とは、配向膜のラビング方向と棒状液晶の長軸が略平行であることを意味する。「直交配列」とは、配向膜のラビング方向と棒状液晶の長軸が略直交することを意味する。「平行垂直配列」とは、ディスコティック液晶の円盤面が配向膜に対して略垂直に立ち上がり、かつ、配向膜のラビング方向とディスコティック液晶の円盤面が積層している方向(長軸)とが略直交することを意味する。
[表28]
上記表より、各配向膜を用いることによって、液晶の配列を制御できることがわかった。
[0344]
(実施例1)
[パターン位相差フィルムの作製]
(1)平行配向膜(第一の配向膜)の塗布
TACフィルムの表面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水/メタノール溶液(PVA-103(4.0g)を水72g及びメタノール24gに溶解させた、粘度4.35cp、表面張力44.8dyne)を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた(フィルムA)。
[0345]
(2)直交配向膜(第二の配向膜)のパターン塗布
前記直交配向膜用の化合物(化合物番号5)2.646gをトリエチルアミン0.658gとテトラフルオロプロパノール12gに溶解させ、パターン印刷用直交配向膜液1を調整した。
[0346]
フレキソ版として、図1に記載の寸法の凹凸を有する合成ゴム状フレキソ版を作成した。
[0347]
図2に記載のフレキソ印刷装置10として、フレキシプルーフ100(RK Print Coat Instruments Ltd. UK)を使用した。アニロックスローラ13はセル400線/cm(容積3cm
3/m
2)を使用した。上記フレキソ版1をフレキシプルーフ100の圧胴11に感圧テープ(図示せず)をつけて貼り合わせた。印圧ローラ12に前記フィルムAを貼り付けた後、前記パターン印刷用直交配向膜液1(図2の符号3)をドクターブレード14に入れ、印刷速度30m/min(アニロックスローラ圧40、印圧ローラ圧42、いずれも単位なし)で直交配向膜を平行配向膜の上にパターン印刷した(フィルムB)。
[0348]
(3)ラビング配向膜の形成
フィルムBを80℃で5分間乾燥させた後に、1000rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付きTACフィルムを作製した(フィルムC1)。
[0349]
(4)液晶の塗布、硬化、得られたパターン位相差フィルムの配列の確認
フィルムC1に前記棒状液晶組成物1をスピンコート塗布し(2500rpm、10秒間)、90℃で加熱しながらUV照射(10秒間)して硬化させた後に、顕微鏡で配列を確認した(パターン位相差フィルム1)。パターン位相差フィルム1は、ラビング方向に対して平行配向膜領域は遅相軸が平行になる方向に配向しており、直交配向膜領域は遅相軸が直交する方向に配向していることを確認した。
[0350]
(実施例2)
塗布する液晶組成物を棒状液晶組成物1から前記棒状液晶組成物2に代えた以外は、実施例1と同様にしてパターン位相差フィルム2を得た。パターン位相差フィルム2は、ラビング方向に対して平行配向膜領域は遅相軸が平行になる方向に配向しており、直交配向膜領域は遅相軸が直交する方向に配向していることを確認した。
[0351]
(実施例3)
塗布する液晶組成物を棒状液晶組成物1から前記ディスコティック液晶組成物1に代え、加熱時に140℃まで昇温した後に90℃まで降温してUV照射した以外は、実施例1と同様にしてパターン位相差フィルム3を得た。パターン位相差フィルム3は、ラビング方向に対して平行配向膜領域は遅相軸が平行垂直になる方向に配向しており、直交配向膜領域は遅相軸が直交垂直する方向に配向していることを確認した。
[0352]
パターン化された光学異方性層を、第一の位相差領域又は第二の位相差領域のいずれか一方の遅相軸が、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の偏光軸と平行になるように、偏光板の間に入れ、さらに、位相差530nmの鋭敏色板を、その遅相軸が偏光板の偏光軸と45°の角度をなすように、光学異方性層の上においた(図3(A))。次に、光学異方性層を+45°回転させた状態(図3(B))、及び-45°回転させた状態(図3(C))を偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)で観察した。図3(A)~(C)に示す観察結果から明らかなように、+45°回転させた場合、第1の位相差領域の遅相軸と鋭敏色板の遅相軸が平行になっているため、位相差は530nmよりも大きくなり、その色は青色(白黒図面では濃淡の濃い部分)に変化している。一方、第二の位相差領域の遅相軸は鋭敏色板の遅相軸と直交しているため、位相差は530nmよりも小さくなり、その色は黄色(白黒図面では濃淡の淡い部分)に変化する。-45°回転させた場合、逆の現象となる。
[0353]
(実施例4)
塗布する液晶組成物を棒状液晶組成物1から前記ディスコティック液晶組成物2に代え、加熱時に140℃まで昇温した後に90℃まで降温してUV照射した以外は、実施例1と同様にしてパターン位相差フィルム4を得た。パターン位相差フィルム4は、ラビング方向に対して平行配向膜領域は遅相軸が平行垂直になる方向に配向しており、直交配向膜領域は遅相軸が直交垂直する方向に配向していることを確認した。
[0354]
(実施例5)
塗布するパターン印刷用直交配向膜液をパターン印刷用直交配向膜液1から(化合物番号31)を用いたパターン印刷用直交配向膜液2に代えた以外は、実施例1と同様にしてパターン位相差フィルム5を得た。パターン位相差フィルム5は、ラビング方向に対して平行配向膜領域は遅相軸が平行になる方向に配向しており、直交配向膜領域は遅相軸が直交する方向に配向していることを確認した。
[0355]
(実施例6)
塗布するパターン印刷用直交配向膜液をパターン印刷用直交配向膜液1から(化合物番号46)を用いたパターン印刷用直交配向膜液2に代えた以外は、実施例1と同様にしてパターン位相差フィルム5を得た。パターン位相差フィルム5は、ラビング方向に対して平行配向膜領域は遅相軸が平行になる方向に配向しており、直交配向膜領域は遅相軸が直交する方向に配向していることを確認した。
[0356]
(実施例7)
〔ディスコティック液晶組成物3〕
まず、前記重合性液晶4/前記重合開始剤2/前記増感剤1/前記空気界面配向剤2/前記空気界面配向剤3(=100:3:1:0.3:0.5)の固形分20%MEK溶液を調製した。
TACフィルムの表面に、和光純薬製ポリアクリル酸の4%水/メタノール/トリエチルアミン溶液を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた(フィルムA2)。この上にポリスチレン(55質量%)-ポリアクリル酸(45質量%)共重合体(BASF社製、ジョンクリル690、Mw16500、酸価240)のアクリル酸部分を50%解離させ、プロパノールに溶解させた溶液をフレキソ印刷して乾燥してから同様にラビングし、さらに塗布する液晶組成物を前記棒状液晶組成物1から上記にて調製したディスコティック液晶組成物3に替え、110℃で加熱した以外は、実施例1と同様にしてパターン位相差フィルム7を得た。パターン位相差フィルム7は、ラビング方向に対して平行配向膜領域は遅相軸が平行垂直になる方向に配向しており、直交配向膜領域は遅相軸が直交垂直する方向に配向していることを確認した。
[0357]
(実施例8)
パターン印刷用直交配向膜液をパターン印刷用直交配向膜液1からポリアクリル酸(Mw25000、和光純薬製)を、トリエチルアミンを用いて90%解離させたプロパノール水溶液(ポリアクリル酸2.0g/水1.12g/プロパノール5.09g/3-メトキシ-1-ブタノール5.09g/トリエチルアミン2.52g)に代え、さらに塗布する液晶組成物を前記ディスコティック液晶組成物2に代えた以外は、実施例3と同様にしてパターン位相差フィルム8を得た。パターン位相差フィルム8は、ラビング方向に対してPVA103部分の上方の領域は遅相軸が平行垂直になる方向に配向しており、本来平行配向するポリアクリル酸部分の上方の領域はピリジニウム添加剤の影響で遅相軸が直交垂直する方向に配向していることを確認した。すなわち、PVA103部分の上方の領域にピリジニウム化合物を含むディスコティック液晶性化合物を塗布して一度T
Isoに到達させてから降温した場合はディスコティック液晶性化合物がラビング方向に対して平行垂直の方向に配向することがわかった。また、ポリアクリル酸部分の上方の領域にピリジニウム化合物を含むディスコティック液晶性化合物を塗布して一度T
Isoに到達させてから降温した場合はディスコティック液晶性化合物がラビング方向に対して直交垂直の方向に配向することがわかった。
[0358]
(実施例9)
(1)平行配向膜(第一の配向膜)の塗布
TACフィルムの表面に、和光純薬製ポリアクリル酸の4%水/メタノール/トリエチルアミン溶液を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた(フィルムA2)。
(2)ピリジニウム化合物を含有する配向制御領域のパターン塗布
パターン印刷用直交配向膜液として、前記ピリジニウム化合物10gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、パターン印刷用ピリジニウム溶液1を調整した。
インクジェット方式により前記ピリジニウム溶液1をフィルムA2上に印字してパターンを形成させた。本実施例においては、インクジェットヘッドを吐出部として用いた。このインクジェットヘッドには、FUJIFILM DIMATIX製 DMP2831用ヘッド DMC-11610(製品型番)を用いた。なお、このとき前記ピリジニウム溶液は、第一の配向膜上に留まったまま乾燥せず、印字した部分の真下に向けて第一の配向膜の内部まで浸透していたことが目視にて確認された。
(3)ラビング配向膜の形成
その後塗布する液晶組成物として前記ディスコティック液晶組成物1を用いて、さらに100℃以上140℃(T
iso)未満に加熱温度を変更した以外は、実施例3と同様にしてパターン位相差フィルム9を得た。パターン位相差フィルム9の光学異方性層は、ラビング方向に対してピリジニウム化合物を含まない部分の上方の配向膜領域は遅相軸が平行になる方向に配向しており、インクジェット印刷によりピリジニウム化合物を印字した部分の上方の領域はピリジニウム添加剤の影響で遅相軸が直交する方向に配向していることを確認した。すなわち、ピリジニウム化合物を含まないポリアクリル酸部分の上方の領域に、(ピリジニウム化合物を含まない)ディスコティック液晶性化合物を塗布して一度T
Isoに到達させてから降温した場合はディスコティック液晶性化合物がラビング方向に対して平行垂直の方向に配向することがわかった。また、ピリジニウム化合物を含むポリアクリル酸部分の上方の領域に、(ピリジニウム化合物を含まない)ディスコティック液晶性化合物を塗布して一度T
Isoに到達させてから降温した場合はディスコティック液晶性化合物がラビング方向に対して直交垂直の方向に配向することがわかった。
[0359]
(実施例10)
加熱時に140℃まで昇温した後に90℃まで降温する代わりに、一度も140℃(T
Iso)まで到達せずに100~120℃での加熱に代えた以外は、実施例8と同様にしてパターン位相差フィルム10を得た。パターン位相差フィルム10は、ラビング方向に対してPVA-103部分の上方の領域は遅相軸が直交垂直になる方向に配向しており、ポリアクリル酸部分の上方の領域はピリジニウム添加剤の影響で遅相軸が平行垂直する方向に配向していることを確認した。すなわち、PVA-103部分の上方の領域にピリジニウム化合物を含むディスコティック液晶性化合物を塗布して一度もT
Isoに到達させずに100~120℃に加熱した場合はディスコティック液晶性化合物がラビング方向に対して直交垂直の方向に配向することがわかった。また、ポリアクリル酸部分の上方の領域にピリジニウム化合物を含むディスコティック液晶性化合物を塗布して一度もT
Isoに到達させずに100~120℃に加熱した場合はディスコティック液晶性化合物がラビング方向に対して平行垂直の方向に配向することがわかった。
[0360]
(実施例11)
和光純薬製ポリアクリル酸の4%水/メタノール/トリエチルアミン溶液の代わりにポリスチレン(55質量%)-ポリアクリル酸(45質量%)共重合体(BASF社製、ジョンクリル690、Mw16500、酸価240)のアクリル酸部分を50%解離させ、プロパノールに溶解させた溶液を用い、加熱時に100℃以上140℃(T
Iso)未満での加熱の代わりに140℃まで昇温した後に90℃まで降温する以外は、実施例9と同様にしてパターン位相差フィルム11を得た。パターン位相差フィルム11は、ラビング方向に対してピリジニウム化合物を含まない部分の上方の配向膜領域は遅相軸が直交になる方向に配向しており、インクジェット印刷によりピリジニウム化合物を印字した部分の上方の領域はピリジニウム添加剤の影響で遅相軸が平行する方向に配向していることを確認した。すなわち、ピリジニウム化合物を含まないポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体部分の上方の領域に、(ピリジニウム化合物を含まない)ディスコティック液晶性化合物を塗布して一度もT
Isoに到達させずに100℃以上140℃未満に加熱した場合はディスコティック液晶性化合物がラビング方向に対して直交垂直の方向に配向することがわかった。また、ピリジニウム化合物を含むポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体部分の上方の領域に、(ピリジニウム化合物を含まない)ディスコティック液晶性化合物を塗布して一度もT
Isoに到達させずに100℃以上140℃未満に加熱した場合はディスコティック液晶性化合物がラビング方向に対して平行垂直の方向に配向することがわかった。
[0361]
実施例1~11で得られた積層体のReを本明細書に記載の方法で測定し、その結果を下記表にまとめた。
[表29]
[0362]
(実施例12)
実施例8で得たパターン配向膜フィルムの、印刷部分と非印刷部分の境界領域に幅30μmに渡って、黒色インキ(大日本精化社製、ハイドリックFCG)をフレキソ印刷してパターン位相差12を得た。その後に実施例8と同様に液晶を塗布してブラックマトリックスが入ったパターン位相差フィルム12を得た。
[0363]
[比較例1]
一般に公知の直交配向膜であるポリスチレン(液晶の光配向、米田出版、市村國宏著、p83)をトルエン溶媒に溶解して、実施例1に使用した直交配向膜の代わりにパターン印刷用直交配向膜液として用い、パターン印刷した。その後実施例1と同様に棒状液晶組成物1をスピンコート塗布した後、加熱し、室温で全面UV照射した。しかし直交配向を確認できず部分的に平行配向しているのみであることがわかった。これは直交配向膜のポリスチレンが棒状液晶組成物1の溶剤であるMEKに可溶であるために、パターン配向膜が溶解してしまったことに起因する。以上のことから配向膜の印刷の際には、液晶組成物の塗布溶剤が平行配向膜及び直交配向膜を侵さない必要があることがわかった。
[0364]
[比較例2]
実施例1に使用した化合物5と同様の合成法で下記組成の配向膜化合物を合成した(Mn13421、Mw31543、Mw/Mn=2.350)。
[化54]
これを実施例1と同様に、上記配向膜化合物2.646gをトリエチルアミン0.658gとテトラフルオロプロパノール12gに溶解させようとしたが全く溶解せず、溶解させるのに大量の溶媒を使用するためフレキソ印刷インクとして不適当であった。
[0365]
(比較例3)
実施例1に使用した化合物5と同様の合成法で下記組成の配向膜化合物を合成した(Mn5053、Mw24501、Mw/Mn=4.848)。
[0366]
[化55]
上記配向膜化合物2.646gをトリエチルアミン0.658gとテトラフルオロプロパノール12gに溶解させてパターン印刷用直交配向膜液とした以外は、実施例1と同様にして、前記フィルムA上にフレキソ印刷法により直交配向膜をパターン塗布した。その結果、全ての領域で平行配向を示し、直交配向部分が確認できなかった。
[0367]
またPVA103配向膜上に、該直交配向膜(比較例3)のパターン印刷用直交配向膜溶液を12番バーで塗布を行い、120℃で2分間乾燥させ、その後に1000rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付ガラス支持体を作製した。これに前記棒状液晶組成物1を、該配向膜上にスピンコート塗布した。該溶媒を蒸発させ、該液晶組成物の塗布膜を加熱し、全面UV照射して固定化した。その結果、全ての領域で平行配向を示し、直交配向部分が確認できなかった。
[0368]
(比較例4)
実施例1に使用した化合物5と同様の合成法で下記組成の配向膜化合物を合成した。
[0369]
[化56]
比較例2と同様に配向膜化合物2.646gをトリエチルアミン0.658gとテトラフルオロプロパノール12gに溶解させようとしたが全く溶解せず、溶解させるのに大量の溶媒を使用するためフレキソ印刷インクとして不適当であった。
[0370]
(比較例5)
実施例1に使用した化合物5と同様の合成法で下記組成の化合物を合成した。
[0371]
[化57]
比較例3と同様に、配向膜化合物2.646gをトリエチルアミン0.658gとテトラフルオロプロパノール12gに溶解させてパターン印刷用直交配向膜液とした以外は、実施例1と同様にフィルムA上にフレキソ印刷法により該直交配向膜をパターン塗布した。その結果全ての領域で平行配向を示し、直交配向部分が確認できなかった。
[0372]
またPVA103配向膜上に、該直交配向膜(比較例3)のパターン印刷用直交配向膜溶液を12番バーで塗布を行い、120℃で2分間乾燥させ、その後に1000rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付ガラス支持体を作製した。これに棒状液晶組成物1を、該配向膜上にスピンコート塗布した。該溶媒を蒸発させ、該液晶組成物の塗布膜を加熱し、全面UV照射して固定化した。その結果、全ての領域で平行配向を示し、直交配向部分が確認できなかった。
[0373]
[実施例101]
<反射防止膜の作製>
実施例1のパターン位相差フィルム1の上部へのハードコート層の塗布を行った。
[0374]
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
メチルエチルケトン900質量部に対して、シクロヘキサノン100質量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA-20、日本化薬(株)製)750質量部、シリカゾル(MIBK-ST、日産化学工業(株)製)200質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50質量部、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
[0375]
(中屈折率層用塗布液Aの調製)
ZrO
2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])5.1質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.05質量部、メチルエチルケトン66.6質量部、メチルイソブチルケトン7.7質量部及びシクロヘキサノン19.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。
[0376]
(中屈折率層用塗布液Bの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)4.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.14質量部、メチルエチルケトン66.5質量部、メチルイソブチルケトン9.5質量部及びシクロヘキサノン19.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液Bを調製した。
[0377]
屈折率1.36、膜厚90μmとなるように、中屈折率用塗布液Aと中屈折率用塗布液Bとを適量混合し、中屈折率塗布液を調製した。
[0378]
(高屈折率層用塗布液の調製)
ZrO
2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、光重合開始剤含有、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])14.4質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)0.75質量部、メチルエチルケトン62.0質量部、メチルイソブチルケトン3.4質量部、シクロヘキサノン1.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液Cを調製した。
[0379]
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
[0380]
[化58]
[0381]
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
[0382]
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm
2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm
2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N-ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった
[0383]
(中空シリカ粒子分散液Aの調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60-IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
[0384]
(低屈折率層用塗布液の調製)
各成分を下記のように混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分濃度5質量%の低屈折率層用塗布液Ln6を作製した。下記各成分の質量%は、塗布液の全固形分に対する、各成分の固形分の比率である。
[0385]
・P-1:パーフルオロオレフィン共重合体(1):15質量%
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製):7質量%
・MF1:国際公開第2003/022906号パンフレットの実施例記載の下記含フッ素不飽和化合物(重量平均分子量1600):5質量%
[0386]
[化59]
[0387]
・M-1:日本化薬(株)製KAYARAD DPHA:20質量%
・分散液A:前記中空シリカ粒子分散液A(アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾した中空シリカ粒子ゾル、固形分濃度18.2%):50質量%
・Irg127:光重合開始剤イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製):3質量%
[0388]
前記光学フィルム上に、前記組成のハードコート層用塗布液を、グラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm
2、照射量150mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層Aを形成した。
更に中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液を、グラビアコーターを用いて塗布した。中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm
2、照射量240mJ/cm
2の照射量とした。
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm
2、照射量240mJ/cm
2の照射量とした。
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm
2、照射量600mJ/cm
2の照射量とした。
[0389]
<偏光板の作製>
上記にて作製したフィルムに、下記の粘着剤塗布液及び上層塗布液Bを、透明支持体側にそれぞれ20ml/m
2塗布し、100℃で5分乾燥して粘着剤付きフィルム試料とした。
[0390]
(粘着剤塗布液)
下記水溶性ポリマー(m) 0.5g
アセトン 40ml
酢酸エチル 55ml
イソプロパノール 5ml
[0391]
(上層塗布液B)
ポリビニルアルコール
(日本合成化学工業株式会社製ゴーセノールNH-26) 0.3g
サポニン(メルク社製界面活性剤) 0.03g
純水 57ml
メタノール 40ml
メチルプロピレングリコール 3ml
[0392]
[化60]
[0393]
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ30μmの偏光膜を得た。上記の粘着剤付きフィルムに対し粘着剤を塗設した側に偏光膜がくるように貼り付け、更に偏光膜のもう一方の側に市販のセルロールアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)社製、Re(550)は3nm、|Rth(630)|は50nm)を、アルカリケン化処理を行った後、粘着剤層を塗設してから貼り合わせ、偏光板を作製した。
[0394]
<液晶表示装置への実装評価>
円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークのない鮮明な立体画像を観察することができた。
また、実施例12で作成したブラックマトリックスを第一位相差領域と第二操作領域の間に設けた以外は同様にして実装したところ、よりクロストークの少ない鮮明な立体画像を観察することができた。
[0395]
[実施例201]
<立体画像用透明フィルムの作成>
左右二系統の撮影レンズを備えたデジタルカメラ(富士フイルム(株)社製FinePix Real 3D W1)を用いて、右目用画像と左目用画像を作成した。ついで3D画像作成用ソフト(ストライパー)を用いて右目用画像と左目用画像を200μmごとに交互に入れ代えた画像を作成した。最後にOHPシート(コクヨ社製、VF-1300)に該画像データを、電子写真印刷機(富士ゼロックス社製、Docupurint C3540)を用いてプリント出力して3次元立体写真用透明画像1を得た。
<パターン偏光フィルムの作成>
実施例1のパターン位相差フィルム1の粘着剤を用いて、偏光板と貼り合わせた。さらに粘着剤を用いて上記3次元立体写真用透明画像1と貼り合わせて、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークのない鮮明な立体画像を観察することができた。
[0396]
[実施例202]
<立体画像用透明フィルムの作成>
実施例201と同様にIJ用透明フィルム(三菱製紙社製、IJ-FilmFT100)に該デジタル画像1データを、インクジェット(EPSON社製、PM-A820)を用いてプリント出力して3次元立体写真用透明画像2を得た。
<パターン偏光フィルムの作成>
実施例1のパターン位相差フィルム1の粘着剤を用いて、偏光板と貼り合わせた。さらに粘着剤を用いて上記3次元立体写真用透明画像2と貼り合わせて、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークのない鮮明な立体画像を観察することができた。
[0397]
[実施例203]
<立体画像用透明フィルムの作成>
(立体画像用印画紙の作製)
<透明色素受像層の作製>
セルロースアセテート保護フィルム表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設けた。さらに下記組成の中間層Aをバーコーターにより塗布し乾燥した後、引き続いて下記組成の受容層Aをバーコーターにより塗布し乾燥させた。バーコーター塗布は40℃で行い、乾燥は各層50℃で16時間行った。それぞれの乾燥時の塗布量が中間層A:1.0g/m
2、受容層A1:3.0g/m
2となるように塗布を行った。
[0398]
<中間層A>
ポリエステル樹脂(バイロン200、商品名、東洋紡(株)製)10質量部
蛍光増白剤 1質量部
(Uvitex OB、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
酸化チタン 30質量部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90質量部
[0399]
<受容層A>
ポリエステル樹脂 100質量部
(特開平2-265789号公報の実施例1に記載の樹脂)
アミノ変性シリコーン 5質量部
(信越化学工業(株)社製、商品名、X-22-3050C)
エポキシ変性シリコーン 5質量部
(信越化学工業(株)社製、商品名、X-22-300E)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 400質量部
[0400]
(立体画像用印画紙)
この様にして、透明立体画像用印画紙を製造した。
[0401]
(立体画像用インクシートの作製)
厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ルミラー、商品名、(株)東レ製)を基材フィルムとして用いた。そのフィルム背面側に耐熱スリップ層(厚み1μm)を形成し、かつ表面側に下記組成のイエロー、マゼンタ、シアン組成物を、それぞれ単色に塗布(乾膜時の塗布量1g/m
2)した。
イエロー組成物
染料(マクロレックスイエロー6G、商品名、バイエル社製)5.5質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(エスレックBX-1、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90質量部
マゼンタ組成物
マゼンタ染料(ディスパーズレッド60) 5.5質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(エスレックBX-1、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90質量部
シアン組成物
シアン染料(ソルベントブルー63) 5.5質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(エスレックBX-1、商品名、積水化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90質量部
[0402]
[立体画像印刷物の作製]
(右眼用及び左眼用画像形成)
前記インクシート及び前記印画紙を、日本電産コパル社製昇華型プリンターDPB1500(商品名)に装填可能なように加工し、高速プリントモードで3次元立体写真用透明画像3を得た。
[0403]
[立体画像の観察]
観察者が円偏光メガネを介して前記立体画像印刷物を観察したところ、クロストークやゴースト像のない鮮明な立体画像を観察することができた。なお、偏光メガネは、左眼用円偏光フィルタ及び右眼用円偏光フィルタから構成されており、各々の円偏光フィルタは、直線偏光フィルタと1/4λ位相差フィルムが、その偏光軸と遅相軸が45°の角度をなすように積層されており、且つ、左眼用と右眼用で、直線偏光フィルタの偏光軸が直交しているものを使用した。
[0404]
<パターン偏光フィルムの作成>
実施例1のパターン位相差フィルム1の粘着剤を用いて、偏光板と貼り合わせた。さらに粘着剤を用いて上記3次元立体写真用透明画像3と貼り合わせて、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークのない鮮明な立体画像を観察することができた。
符号の説明
[0405]
1 フレキソ版
2 平行配向膜(または直交配向膜)
3 パターン印刷用直交配向膜液(またはパターン印刷用平行配向膜液)
10 フレキソ印刷装置
11 圧胴
12 印圧ローラ
13 アニックスローラ
14 ドクターブレード
21 透明支持体
22a 第一の配向制御領域
22b、22c 第二の配向制御領域
請求の範囲
[請求項1]
透明支持体と、
該透明支持体上に、組成が互いに異なり、且つ互いに異なる配向制御能を示す配向制御表面を有する、第一の配向制御領域及び第二の配向制御領域を含み、それぞれの配向制御表面が交互に配置されたパターン配向制御層を有し、
前記第一の配向制御領域及び前記第二の配向制御領域のそれぞれの配向制御面が、該配向制御面に平行な面内において液晶の長軸を互いに直交する方向に配向制御可能であることを特徴とする積層体。
[請求項2]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が同じ方位に処理されていることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
[請求項3]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、同じ方位にラビング処理されたラビング配向膜であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
[請求項4]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、それぞれ
変性または無変性のポリビニルアルコールを主成分として含有する膜;
変性または無変性のポリアクリル酸を主成分として含有する膜;
下記一般式(I)で表される繰り返し単位と、下記一般式(II)もしくは(III)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸コポリマーを主成分として含有する膜;または、
下記一般式(I-TH)、一般式(II-TH)及び一般式(III-TH)のいずれかで表される構造単位を少なくとも1種有する重合体を主成分とする膜;
のいずれかであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
[化1]
(一般式(I)~(III)中
:R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であり
;Mは、プロトン、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンであり;L
0は、-O-、-CO-、-NH-、-SO
2-、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり
;R
0は、炭素原子数が10乃至100の炭化水素基または炭素原子数が1乃至100のフッ素原子置換炭化水素基であり
;Cyは、脂肪族環基、芳香族基または複素環基であり
;mは、10乃至99モル%であり;そして、nは、1乃至90モル%である。)
一般式(I-TH)
[化2]
(式中、R
1は水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、P
1は酸素原子、-CO-又は-NR
12-を表し、R
12は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
1は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のへテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X
1は水素結合性基を表し、n1は1~3の整数を表す。)
一般式(II-TH)
[化3]
(式中、R
2は水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、L
21は置換もしくは無置換の、2価の芳香族基又は2価のヘテロ環基を表し、P
21は単結合又は、-O-、-NR
21-、-CO-、-S-、-SO-、-SO
2-及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる2価の連結基を表し、R
21は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
22は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のヘテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X2は水素結合性基を表し、n2は0~3の整数である。)
一般式(III-TH)
[化4]
(式中、L
31は置換もしくは無置換の、2価の芳香族基又は2価のヘテロ環基を表し、P
31は単結合又は、-O-、-NR
31-、-CO-、-S-、-SO-、-SO
2-及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、R
31は水素原子又は置換もしくは無置換の炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、L
32は置換もしくは無置換の、アルキレン基、2価の環状脂肪族基、2価の芳香族基、2価のヘテロ環基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、X
3は水素結合性基を表し、n3は0~3の整数である。)
[請求項5]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、それぞれ異なる樹脂を主成分とする請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
[請求項6]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域の少なくとも一方の領域が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
[請求項7]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、共に同じ樹脂を主成分とし、
かつ、少なくとも一方の領域にピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
[請求項8]
前記ピリジニウム化合物またはイミダゾリウム化合物が、液晶性であることを特徴とする請求項6又は7に記載の積層体。
[請求項9]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、共に非現像性樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体。
[請求項10]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域が、下記(1)または(2)のいずれか1つの態様であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体。
態様(1):透明支持体上に第一の配向制御領域が形成され、該第一の配向制御領域の一部の領域上に第二の配向制御領域が形成されている。
態様(2):透明支持体の一部の領域上に第一の配向制御領域が形成され、前記透明支持体の第一の配向制御領域が形成されていない領域上に第二の配向制御領域が形成されている。
[請求項11]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域との間に、ブラックマトリックスが配置されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体。
[請求項12]
前記透明支持体のRe(550)が、0~10nmであることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の積層体:
但し、Re(550)は波長550nmにおける正面レターデーション値(単位:nm)である。
[請求項13]
パターン光学異方性層の支持体として用いられることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の積層体。
[請求項14]
請求項1~13のいずれか一項に記載の積層体と、
該積層体上の前記配向制御領域上に、重合性基を有する液晶を主成分とする組成物から形成された光学異方性層を有し、
該光学異方性層は、面内遅相軸が互いに異なる第一位相差領域と第二位相差領域とが交互にパターニングされていることを特徴とする光学フィルム。
[請求項15]
前記光学異方性層中、前記第一位相差領域と前記第二位相差領域が前記光学異方性層の一辺に平行な長辺を有する帯状に交互にパターニングされており、
且つ、前記第一位相差領域の面内の遅相軸と前記第二位相差領域の面内の遅相軸が略直交していることを特徴とする請求項14に記載の光学フィルム。
[請求項16]
全体のRe(550)が100~190nmであることを特徴とする請求項14又は15に記載の光学フィルム:ただし、前記Re(550)は波長550nmにおける正面レターデーション値(単位:nm)である。
[請求項17]
前記重合性基を有する液晶がディスコティック液晶であり、前記光学異方性層中、ディスコティック液晶が垂直配向状態に固定されていることを特徴とする請求項14~16のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[請求項18]
前記光学異方性層が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含有していることを特徴とする請求項17に記載の光学フィルム。
[請求項19]
前記重合性基を有する液晶が棒状液晶であり、前記光学異方性層中、棒状液晶が水平配向状態に固定されていることを特徴とする請求項14~16のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[請求項20]
前記第一位相差領域と前記第二位相差領域との間にブラックマトリックスを有することを特徴とする請求項14~19のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[請求項21]
請求項14~20のいずれか一項に記載の光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の前記第一位相差領域と前記第二位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方位と、偏光膜の吸収軸方位とがいずれも45°をなすことを特徴とする偏光板。
[請求項22]
前記光学フィルムと、前記偏光膜とが粘着層を介して積層されていることを特徴とする請求項21に記載の偏光板。
[請求項23]
さらに最表面に一層以上の反射防止フィルムが積層されていることを特徴とする請求項21または22に記載の偏光板。
[請求項24]
第一及び第二の偏光膜;
第一及び第二の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び
第一偏光膜の外側に請求項14~23のいずれか一項に記載の光学フィルム;
を少なくとも有する画像表示装置であって、
前記第一偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第一相差領域の面内遅相軸及び第二位相差領域のそれぞれの面内遅相軸が、いずれも±45°の角度をなすことを特徴とする画像表示装置。
[請求項25]
請求項24に記載の画像表示装置と、前記光学フィルムの外側に配置される第三の偏光板とを少なくとも備え、第三の偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
[請求項26]
第一の組成物からなる第一の配向制御領域を透明支持体上に形成する第一の配向制御領域形成工程と、及び
第一の組成物と組成が異なる第二の組成物からなる第二の配向制御領域をパターン状に印刷する第二の配向制御領域形成工程を、少なくとも含むことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
[請求項27]
前記第一の配向制御領域を下記(I)または(II)のいずれかの方法で透明支持体上に形成する第一の配向制御領域形成工程を特徴とする請求項26に記載の積層体の製造方法。
方法(I):前記第一の配向制御領域を前記透明支持体の全面上に形成する工程。
方法(II):前記第一の配向制御領域を前記透明支持体の一部の領域上に形成する工程。
[請求項28]
前記第一の配向制御領域と前記第二の配向制御領域を1つの方位に配向処理する工程を含むことを特徴とする請求項26または27に記載の積層体の製造方法。
[請求項29]
透明支持体上に、第一の配向制御領域と第二の配向制御領域とを面内に含む配向制御層を下記(I-A)、(I-B)および(II-A)のいずれか1つの印刷工程で形成する工程を含むことを特徴とする請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
印刷工程(I-A):透明支持体上に第一の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域の一部の領域上に第二の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域および該第二の配向制御領域を同時に1つの方位に処理する工程。
印刷工程(I-B):透明支持体上に第一の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域を1つの方位に処理した後、該第一の配向制御領域の処理面の一部の領域上に第二の配向制御領域を印刷する工程。
印刷工程(II-A):透明支持体の一部の領域上に第一の配向制御領域を印刷し、前記透明支持体の第一の配向制御領域が印刷されていない領域上に第二の配向制御領域を印刷し、該第一の配向制御領域および該第二の配向制御領域を同時に1つの方位に処理する工程。
[請求項30]
前記1つの方位に処理する工程が、一方位へのラビング処理工程であることを特徴とする請求項28または29に記載の方法。
[請求項31]
前記第二の配向制御領域を、フレキソ印刷により形成することを特徴とする請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
[請求項32]
前記印刷工程(I-A)または(II-A)において、
前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の組成物が、平行配向膜用組成物および直交配向膜用組成物のうちいずれか一方と第一の溶媒を含み、
前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の組成物がもう一方の化合物と第二の配向溶媒を含むことを特徴とする請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
[請求項33]
前記印刷工程(I-B)において、
前記第一の配向制御領域の印刷に用いる第一の組成物が、配向膜用化合物と第一の溶媒を含み、
前記第二の配向制御領域の印刷に用いる第二の組成物が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方と第二の溶媒を含むことを特徴とする請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
[請求項34]
請求項1~13のいずれか一項に記載の積層体上に、重合性基を有する液晶を含有する組成物を配置し、光学異方性層を形成し、第一の配向制御領域上で配向制御された第一の位相差領域及び第二の配向制御領域上で配向制御された第二位相差領域を含むパターン光学異方性層を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
[請求項35]
前記積層体中の第一の配向制御領域および前記第二の配向制御領域の少なくとも一方が、ピリジニウム化合物およびイミダゾリウム化合物の少なくとも一方を含み、
前記液晶がディスコティック液晶であり、
前記積層体上に、前記ディスコティック液晶を含有する組成物を配置した後で加熱処理することにより、前記ディスコティック液晶の配向を制御して前記第一の位相差領域および第二の位相差領域を形成することを特徴とする請求項34に記載の方法。
[請求項36]
前記光学異方性層の形成前又は後に、前記第一位相差領域及び前記第二位相差領域との間にブラックマトリックスを形成することを含む請求項34または35に記載の方法。
図面