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1. (WO2018062352) HEAT DISSIPATION SHEET
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明 細 書

発明の名称 放熱シート

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026  

発明の効果

0027  

図面の簡単な説明

0028  

発明を実施するための形態

0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108  

実施例

0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 放熱シート

技術分野

[0001]
 本発明は、放熱シートに関する。詳しくは、繊維状炭素を含有して成る、熱伝導性に優れた放熱シートに関する。

背景技術

[0002]
 カーボンナノ材料、特に、平均繊維径が1μm以下である繊維状炭素は、高結晶性、高導電性、高強度、高弾性率、軽量等の優れた特性を有していることから、高性能複合材料のナノフィラーとして使用されている。その用途は、機械的強度向上を目的とした補強用ナノフィラーに留まらず、炭素材料に備わった高導電性を生かし、各種電池やキャパシタの電極への添加材料、電磁波シールド材、静電防止材用の導電性ナノフィラーとして、或いは樹脂向けの静電塗料に配合するナノフィラーとしての用途が検討されている。また、繊維状炭素としての化学的安定性、熱的安定性、微細構造の特徴を生かし、フラットディスプレー等の電界電子放出材料としての用途も期待されている。また、高い熱伝導性を生かした放熱材料としての用途が大きく期待されている。
[0003]
 特許文献1には、平均繊維径が2~20μmであるピッチ系炭素繊維フィラーと熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含む厚みが100~3000μmのシート状熱伝導性成形体が記載されている。六角網面の成長方向に由来する結晶サイズ(La)は20nm以上(実施例1は70nm)であり結晶性も優れている。
 しかしながら、このピッチ系炭素繊維フィラーは、繊維径が大きいためか、放熱シートとしての特性は十分とは言えなかった。また、このピッチ系炭素繊維フィラーは、透過型電子顕微鏡でフィラー端面の形状を観察すると、グラフェンシートが閉じた構造になっている。グラフェンシートが閉じているとは、炭素繊維を構成するグラフェンシートそのものの端部が炭素繊維端部に露出することなく、グラファイト層が略U字上に湾曲し、湾曲部分が炭素繊維端部に露出している状態である。
[0004]
 特許文献2には、炭素繊維と無機物フィラーを充填した熱伝導性シートが開示されている。炭素繊維の平均繊維長が50~250μmであり、無機物フィラーの平均粒径が1~10μmであり、熱伝導性シートの平均厚みは500μm以下であり、厚みが薄くても優れた高熱伝導性と、優れた柔軟性とを両立できることが記載されている。
 しかしながら、この熱伝導性シートを構成する炭素繊維の平均短軸径は6~15μmと太い。無機物フィラーがアルミナの場合、平均粒径は1~10μmとやや小さい。そのため、アルミナが炭素繊維中に点分散される形態になることから、熱抵抗が大きく、厚み方向の熱伝導性は十分とは言えない。また、繊維径が太いので、柔軟性が十分に優れているとは言いがたい。なお、炭素繊維は、熱伝導性シートの厚み方向(シート面に対し垂直配向)に配向しており(段落0052)、シートの押出方向(以下、面内方向という)の熱伝導性については何ら考慮されていない。すなわち、繊維径が太く(6~15μm)、繊維長が長いため(50~250μm)、シート中に含まれる炭素繊維の数(含まれる量)が少なく、シートの押出方向(面内の一方向)の熱伝導性に対しては、熱伝導パスが形成されていない。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2009-132810号公報
特許文献2 : 特開2015-029071号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明の第1の課題は、従来の放熱シートと比較して高い放熱性を有する放熱シートを提供することにある。
 本発明の第2の課題は、適度な柔軟性を有するとともに、放熱シートの面と平行方向(以下、「面内方向」ともいう)のみならず、厚み方向の熱伝導性に優れた放熱シートを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、繊維状炭素の繊維径、繊維長、及びシート内における配向性を制御することにより、高い熱伝導性を有する放熱シートが得られることを見出した。
 さらには、所定のフィラーを配合することにより、面内方向のみならず、厚み方向の熱伝導性にも優れた放熱シートが得られることを見出した。
 これらの知見により本発明を完成するに至った。
 上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
[0008]
 〔1〕 繊維状炭素と、ポリマーと、を含有して成る放熱シートであって、
 前記繊維状炭素は、平均実効繊維長が5~120μm、平均繊維径が200~900nm、平均アスペクト比が30~10000であり、
 前記繊維状炭素の含有率が、前記繊維状炭素と前記ポリマーとの合計量に対して5~85質量%であることを特徴とする放熱シート。
[0009]
 〔2〕 前記放熱シートのX線回折法により求めた繊維状炭素の配向度が、
 前記放熱シートの面と平行方向であって、最も高い配向度を示す一方向の配向度Aが55~95%である〔1〕に記載の放熱シート。
[0010]
 〔3〕 前記放熱シートの面と平行方向であって、最も高い配向度を示す一方向における熱伝導率Pが、前記放熱シートの厚み方向における熱伝導率Tの2~200倍である、〔1〕又は〔2〕に記載の放熱シート。
[0011]
 〔1〕~〔3〕に記載の発明は、所定の実効繊維長を有する極細の繊維状炭素を所定量含有して成る放熱シートである。この繊維状炭素は、放熱シートの面内方向において繊維状炭素の配向度が所定範囲にあることが好ましい。さらに、放熱シートの面内方向における熱伝導率と厚み方向における熱伝導率とが所定範囲にあることが好ましい。
[0012]
 〔4〕 平均粒子径が前記繊維状炭素の平均繊維径に対して1~150倍であるフィラー粒子を、放熱シートに対して5~45質量%さらに含有する〔1〕に記載の放熱シート。
[0013]
 〔5〕 前記フィラー粒子が、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミ(AlN)、酸化ケイ素、ケイ素(シリコン)、金属粒子、チタニア、シリカ、及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも一種の無機物である〔4〕に記載の放熱シート。
[0014]
 〔6〕 前記放熱シートの面と平行方向であって、最も高い配向度を示す一方向における熱伝導率pが、前記放熱シートの厚み方向における熱伝導率tの1.5~50倍である、〔4〕又は〔5〕に記載の放熱シート。
[0015]
 〔4〕に記載の発明は、所定の大きさのフィラー粒子をさらに含有して成る放熱シートである。フィラー粒子は〔5〕に記載の所定の物質であることが好ましい。この〔4〕又は〔5〕に記載の放熱シートは、放熱シートの面内方向における熱伝導率と厚み方向における熱伝導率とが所定範囲にあることが好ましい。
[0016]
 〔7〕 シートの厚み方向における熱伝導率が、シートの面内方向における熱伝導率の最大値の1.0~100倍である〔1〕に記載の放熱シート。
[0017]
 〔8〕 シートの厚み方向に引き揃えられた炭素繊維を含有する炭素繊維成形体を含んで成る〔7〕に記載の放熱シート。
[0018]
 〔7〕及び〔8〕に記載の発明は、シートの厚み方向に引き揃えられた炭素繊維を含んで成る炭素繊維成形体から成る放熱シートである。この炭素繊維成形体は、所定方向に引き揃えられた炭素繊維を含有して成り、該炭素繊維の軸方向に対する熱伝導性を顕著に向上させる材料である。
[0019]
 〔9〕 平均繊維長が2~120μmであり、平均繊維径が0.4~50nmであるカーボンナノチューブを、放熱シートに対して1~60質量%さらに含有する〔1〕~〔8〕の何れかに記載の放熱シート。
[0020]
 〔9〕に記載の発明は、所定の大きさのカーボンナノチューブを所定量含有して成る放熱シートである。このカーボンナノチューブは、その性質上、放熱シート内で凝集するため、放熱シートの厚み方向における熱伝導率を向上させる。
[0021]
 〔10〕 前記繊維状炭素がピッチ系炭素繊維である、〔1〕~〔8〕の何れかに記載の放熱シート。
[0022]
 〔11〕 前記繊維状炭素が、X線回折法で測定した網平面群の厚さ(Lc)が1~200nmであって、結晶子長さ(La)が20~500nmの繊維状炭素である〔1〕~〔9〕の何れかに記載の放熱シート。
[0023]
 〔10〕及び〔11〕に記載の発明は、繊維状炭素が所定の物質に限定された放熱シートである。
[0024]
 〔12〕 厚みが0.01~1mmの範囲である、〔1〕~〔10〕の何れかに記載の放熱シート。
[0025]
 〔12〕に記載の発明は、厚みが所定範囲に限定された放熱シートである。
[0026]
 〔13〕 前記ポリマーがポリアミドである、〔1〕~〔11〕の何れかに記載の放熱シート。

発明の効果

[0027]
 本発明によれば、従来技術知られていた放熱シートと比較して熱伝導性が高い放熱シートが提供される。また、放熱シートの特定の一方向における熱伝導率が特に優れた放熱シートが提供される。さらには、放熱シートの面内方向だけでなく、厚み方向における熱伝導率が優れた放熱シートが提供される。
 このような放熱シートは、極めて薄く形成できるとともに、従来品と比較して高い熱伝導率を有する。そのため、発熱量が多く、スペースに制限がある用途(例えば、スマートフォン、ヒーター、複写機ローラ、LED、自動車、CPU)に有望である。

図面の簡単な説明

[0028]
[図1] 製造例1の極細繊維状炭素の電子顕微鏡写真(2000倍)である。
[図2] 図1の電子顕微鏡写真を白黒2値で出力した参考図である。
[図3] 実施例7の放熱シート表面の電子顕微鏡写真である。
[図4] 比較例13の放熱シート表面の電子顕微鏡写真である。

発明を実施するための形態

[0029]
 以下、本発明について説明する。
[0030]
1.繊維状炭素
 1-1. 繊維状炭素の性状
 本発明における繊維状炭素は、実質的に炭素のみから構成される繊維形状をしているものであり、代表的なものとしては炭素繊維が挙げられる。ここで繊維状炭素は、例えば、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン、カーボンブラック、活性炭が融着や接着等により結合、連結して繊維状になっているものであってもよい。具体的には、この繊維状炭素は、全体として繊維状の形態を有していればよく、例えば、後述するアスペクト比の好ましい範囲未満のものが接触したり結合したりして一体的に繊維形状を持っているもの(例えば、球状炭素が数珠状に連なっているもの、極めて短い少なくとも1本または複数本の繊維が融着等によりつながっているものなど)も含む。
[0031]
 本発明における繊維状炭素は、放熱シート内に熱伝導性のネットワークを形成する効果が高く、放熱特性向上の観点から炭素繊維であることが好ましい。炭素繊維としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノリボンなどの気相成長炭素材料も含まれる。結晶性が高いことが必要であることから、PAN系炭素繊維よりもピッチ系炭素繊維が好ましい。
[0032]
 上記繊維状炭素は特に限定されるものではないが、実質的に分岐を有さない直線構造であることが好ましい。分岐とは、繊維状炭素の主軸が中途で枝分かれしていることや、繊維状炭素の主軸が枝状の副軸を有することをいう。実質的に分岐を有さない直線構造とは、繊維状炭素の分岐度が0.01個/μm以下であることを意味する。
 上記繊維状炭素の平均繊維径は、200~900nmの範囲である。該上限値は、600nmであることが好ましく、500nmであることがより好ましく、400nmであることがさらに好ましい。該下限値は、210nmであることが好ましく、220nmであることがより好ましい。
[0033]
 繊維状炭素の平均繊維径が200~900nmの範囲であると、繊維状炭素が放熱シート内の面内の一方向に主として規則的に配列しやすく、かつ当該繊維状炭素同士が適度に接触する。そのため、ある特定の一方向への放熱パスが効率的に形成される。200nm未満であると、繊維状炭素が直線構造を形成し難くなる。また、嵩密度が非常に小さいためハンドリング性が劣る上、繊維状炭素を分散させることが困難となる。また、放熱シートを形成した際に、繊維状炭素同士が過度に接触して熱伝導抵抗が増加し、熱伝導性が低下する傾向がある。900nm超である場合、放熱シート内において繊維状炭素同士の隙間が生じ易くなり、十分な熱伝導パスを形成することが困難となる場合がある。さらには、得られる熱伝導性シートの表面に凹凸が形成されやすくなり、発熱体との接触面積が減少して放熱効率が低下する傾向がある。
 ここで、本発明における繊維径や実効繊維長は、電界放射型走査電子顕微鏡によって倍率2,000倍で撮影した写真図より測定された値を意味する。
[0034]
 繊維状炭素の実効繊維長及びその平均実効繊維長は、5~120μmの範囲が好ましく、5~100μmであることがより好ましく、8~70μmであることがさらに好ましく、10~50μmであることが最も好ましい。5μm未満である場合、放熱シート内の熱伝導性が低くなるため好ましくない。120μm超の場合、繊維状炭素の分散性が損なわれることから好ましくない。即ち、繊維状炭素が長すぎる場合、繊維状炭素が放熱シートの面内方向に配向し易くなりすぎて、取扱い性や成形が困難になりやすい。
[0035]
 本発明において実効繊維長は、実際の繊維長ではなく、実効長によって定義される。なぜなら、繊維状炭素は、放熱シート内において実際の繊維長で熱伝導に寄与しているとは限らないからである。例えば、放熱シート内で繊維が折れ曲がったり丸まったりして、実際の繊維長で熱伝導に寄与していない場合がある。本発明において、繊維状炭素の実効長は、単体の繊維状炭素に両端が接する最長の線分の長さとして定義される。換言すれば、単体の繊維状炭素が熱伝導することができる最大の直線距離である。即ち、繊維状炭素が完全な直線構造を有する場合は、実効長はその繊維長と略等しい。繊維状炭素が分岐構造を有する場合や丸まっている場合は、その単体の繊維状炭素上にある2点間を結ぶ最大の線分の長さをいう。
[0036]
 上記繊維状炭素の平均実効繊維長(L)と平均繊維径(D)との比(アスペクト比、L/D)は30以上であり、40以上であることが好ましい。比(L/D)を30以上とすることにより、放熱シート中において放熱パスが効率的に形成され、熱伝導率の高い放熱シートを得ることができる。30未満の場合、放熱シート中において放熱パスの形成が不十分になり易く、放熱シート内の面内方向の熱伝導率が低くなる。アスペクト比(L/D)の上限値は特に限定されないが、一般的には10000以下であり、5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましく、200以下であることがさらに好ましく、100以下であることがさらに好ましく、80以下であることが特に好ましい。10000を超える場合、繊維状炭素の分散性が損なわれることから好ましくない。
[0037]
 上記繊維状炭素は、その結晶性が高いことが好ましい。結晶性の指標であるX線回折法で測定した結晶子長さ(La)は、20~500nmであることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、80nm以上であることがさらに好ましく、100nm以上であることがさらに好ましく、120nm以上であることがさらに好ましく、140nm以上が特に好ましい。20nm未満である場合、繊維状炭素の結晶性が低く熱伝導性が十分ではない。一方、結晶子サイズは、X線回折法によって測定を行うが、結晶が大きく発達すると測定誤差が大きくなることから、実質的には500nmが測定の限界である。
[0038]
 本発明において、X線回折法で測定した結晶子長さ(La)とは、日本工業規格JISR 7651(2007年度版)「炭素材料の格子定数及び結晶子の大きさ測定方法」により測定される値をいう。
[0039]
 上記繊維状炭素は、X線回折法で測定した結晶面間隔(d002)が0.335~0.340nmであることが好ましく、0.335~0.339nmであることがより好ましい。0.335~0.340nmの範囲であることにより、黒鉛結晶性が高く、放熱性と耐酸化性が優れる。
[0040]
 上記繊維状炭素は、グラフェン(網平面群)の網平面群の厚さ(Lc)が1.0~200nmであることが好ましい。1.0nm未満である場合、繊維状炭素の熱伝導率が著しく低下してしまうため好ましくない。Lcはより好ましくは5~130nm、さらに好ましくは10~130nmである。
[0041]
 上述のように本発明の放熱シートに用いる繊維状炭素は、高い結晶性を有することが好ましい。高い結晶性を有する繊維状炭素は、放熱シートに導電性を付与することが可能である。本発明の放熱シートに用いる繊維状炭素は、繊維状炭素の充填密度が低い状態においても高い導電性を有することが好ましい。充填密度が低い状態において高い導電性を有する繊維状炭素は、低い添加濃度で熱伝導性及び導電性を放熱シートに付与することができる。具体的には、充填密度0.4g/cm で充填した際の繊維状炭素の粉体体積抵抗率は、1Ω・cm以下であることが好ましく、0.5Ω・cm以下であることがより好ましい。1Ω・cmを超える場合、熱伝導性及び導電性を向上させるのに要する繊維状炭素の添加量が多くなり好ましくない。下限値は特に限定されないが、0.0001Ω・cm程度である。
[0042]
 1-2. 繊維状炭素の製造方法
 本発明の繊維状炭素として好ましい形態であるピッチ系炭素繊維の製造方法について以下に説明する。本発明のピッチ系炭素繊維の製造方法は、例えば次に記載する(1)~(4)の工程を経ることにより製造することができる。
 (1)熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂100質量部に対して1~150質量部のメソフェーズピッチと、からなる樹脂組成物を溶融状態で成形することにより、前記メソフェーズピッチを繊維化して樹脂複合繊維を得る繊維化工程であって、必要に応じて前記メソフェーズピッチの分子配向性を高める配向制御操作を有する繊維化工程と、
 (2)前記樹脂複合繊維を安定化し、樹脂複合安定化繊維を得る安定化工程と、
 (3)前記樹脂複合安定化繊維から前記熱可塑性樹脂を除去して安定化繊維を得る熱可塑性樹脂除去工程と、
 (4)前記安定化繊維を不活性雰囲気下で加熱して炭素化乃至黒鉛化し、極細炭素繊維を得る炭化焼成工程。
[0043]
 <熱可塑性樹脂>
 本発明のピッチ系炭素繊維の製造方法で使用する熱可塑性樹脂は、樹脂複合繊維を製造することができるとともに、熱可塑性樹脂除去工程において容易に除去される必要がある。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルカーボネート、ポリサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリ乳酸が例示される。これらの中でも、ポリオレフィンが好ましく用いられる。
[0044]
 ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-4-メチルペンテン-1、及びこれらを含む共重合体が挙げられる。熱可塑性樹脂除去工程において除去し易いという観点からは、ポリエチレンを用いることが好ましい。ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレンや気相法・溶液法・高圧法直鎖状低密度ポリエチレンなどの低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンなどの単独重合体;エチレンとα-オレフィンとの共重合体やエチレン・酢酸ビニル共重合体などのエチレンと他のビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
[0045]
 本発明で使用する熱可塑性樹脂は、JIS K 7210 (1999年度)に準拠して測定されたメルトマスフローレート(MFR)が0.1~10g/10minであることが好ましく、0.1~5g/10minであることがより好ましく、0.1~3g/10minであることが特に好ましい。MFRが上記範囲であると、熱可塑性樹脂中にメソフェーズピッチを良好にミクロ分散させることができる。また、樹脂複合繊維を成形する際に、繊維が引き延ばされることにより、得られる炭素繊維の繊維径をより小さくすることができる。本発明で使用する熱可塑性樹脂は、メソフェーズピッチと容易に溶融混練できるという点から、非晶性の場合はガラス転移温度が250℃以下、結晶性の場合は融点が300℃以下であることが好ましい。
[0046]
 <メソフェーズピッチ>
 メソフェーズピッチとは溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうるピッチである。本発明で使用するメソフェーズピッチとしては、石炭や石油の蒸留残渣を原料とするものや、ナフタレン等の芳香族炭化水素を原料とするものが挙げられる。例えば、石炭由来のメソフェーズピッチは、コールタールピッチの水素添加・熱処理を主体とする処理;水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする処理等により得られる。
[0047]
 より具体的には、以下の方法により得ることができる。
 先ず、キノリン不溶分を除去した軟化点80℃のコールタールピッチを、Ni-Mo系触媒存在下、圧力13MPa、温度340℃で水添し、水素化コールタールピッチを得る。この水素化コールタールピッチを常圧下、480℃で熱処理した後、減圧して低沸点分を除去し、粗メソフェーズピッチを得る。この粗メソフェーズピッチを温度340℃でフィルターを用いてろ過を行って異物を取り除くことにより、精製メソフェーズピッチを得ることができる。
[0048]
 メソフェーズピッチの光学的異方性含有量(メソフェーズ率)は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
[0049]
 また、上記メソフェーズピッチは、軟化点が100~400℃であることが好ましく、150~350℃であることがより好ましい。
[0050]
 <樹脂組成物>
 本発明のピッチ系炭素繊維の製造方法において用いられる、熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとから成る樹脂組成物(以下、メソフェーズピッチ組成物ともいう)は、熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂100質量部に対して1~150質量部のメソフェーズピッチと、を含んで成ることが好ましい。メソフェーズピッチの含有量は5~100質量部であることがより好ましい。メソフェーズピッチの含有量が150質量部を超えると所望の繊維径を有する樹脂複合繊維が得られず、1質量部未満であると目的とする炭素繊維を安価に製造することができない等の問題が生じるため好ましくない。
[0051]
 繊維径が900nm以下である炭素繊維を製造するためには、熱可塑性樹脂中におけるメソフェーズピッチの分散径を0.01~50μmとすることが好ましく、0.01~30μmとすることがより好ましい。熱可塑性樹脂中におけるメソフェーズピッチの分散径が0.01~50μmの範囲を逸脱すると、所望の炭素繊維を製造することが困難となることがある。なお、メソフェーズピッチ組成物中において、メソフェーズピッチは球状又は楕円状の島相を形成するが、本発明における分散径とは、島相が球状の場合はその直径を意味し、楕円状の場合はその長軸径を意味する。
[0052]
 上記0.01~50μmの分散径は、メソフェーズピッチ組成物を300℃で3分間保持した後においても上記範囲を維持していることが好ましく、300℃で5分間保持した後においても維持していることがより好ましく、300℃で10分間保持した後においても維持していることが特に好ましい。一般に、メソフェーズピッチ組成物を溶融状態で保持しておくと、樹脂組成物中においてメソフェーズピッチが時間と共に凝集する。メソフェーズピッチが凝集してその分散径が50μmを超えると、所望の炭素繊維を製造することが困難となることがある。樹脂組成物中におけるメソフェーズピッチの凝集速度は、使用する熱可塑性樹脂及びメソフェーズピッチの種類により変動する。
[0053]
 メソフェーズピッチ組成物は、熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとを溶融状態において混練することにより製造することができる。熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとの溶融混練は公知の装置を用いて行うことができる。例えば、一軸式混練機、二軸式混練機、ミキシングロール、バンバリーミキサーからなる群より選ばれる1種類以上を用いることができる。これらの中でも、熱可塑性樹脂中にメソフェーズピッチを良好にミクロ分散させるという目的から、二軸式混練機を用いることが好ましく、特に各軸が同方向に回転する二軸式混練機を用いることが好ましい。
[0054]
 混練温度としては、熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとが溶融状態であれば特に制限されないが、100~400℃であることが好ましく、150~350℃であることが好ましい。混練温度が100℃未満であると、メソフェーズピッチが溶融状態にならず、熱可塑性樹脂中にミクロ分散させることが困難である。一方、400℃を超える場合、熱可塑性樹脂又はメソフェーズピッチの分解が進行する場合がある。また、溶融混練の時間としては、0.5~20分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましい。溶融混練の時間が0.5分間未満の場合、熱可塑性樹脂中へのメソフェーズピッチのミクロ分散が困難である。一方、20分間を超える場合、炭素繊維の生産性が著しく低下する。
[0055]
 溶融混練は、酸素ガス含有量が10体積%未満の不活性雰囲気下で行うことが好ましく、酸素ガス含有量が5体積%未満の不活性雰囲気下で行うことがより好ましく、酸素ガス含有量が1%体積未満の不活性雰囲気下で行うことが特に好ましい。本発明で使用するメソフェーズピッチは、溶融混練時に酸素と反応することにより変性して、熱可塑性樹脂中へのミクロ分散を阻害する場合がある。このため、酸素とメソフェーズピッチとの反応を抑制するために不活性雰囲気下で溶融混練を行うことが好ましい。
[0056]
 <樹脂複合繊維>
 上記のメソフェーズピッチ組成物から樹脂複合繊維を製造する方法としては、所望の炭素繊維が作製できれば限定されないが、紡糸口金を用いてメソフェーズピッチ組成物を溶融紡糸する方法、矩形口金を用いてメソフェーズピッチ組成物を溶融製膜する方法を例示することができる。
[0057]
 本発明の炭素繊維を得るためには、樹脂複合繊維を得る段階において、樹脂複合繊維に含まれるメソフェーズピッチの分子配向性を高める配向制御操作を行うことが好ましい。配向制御操作では、溶融状態のメソフェーズピッチの分子配向性を高めるために、溶融状態のメソフェーズピッチを変形させることが必要である。このような配向制御操作としては、溶融状態のメソフェーズピッチにせん断によるひずみを加える方法や伸長によるひずみを加える方法を例示することができる。これらの方法は一方のみで行っても良いし、両方を併用しても良い。特に、伸長によるひずみを加える方法は、分子配向性を高める効果が大きいため好ましい。
[0058]
 せん断によるひずみを加える方法としては、溶融状態のメソフェーズピッチ組成物の線速度を大きくする方法が挙げられる。具体的には、紡糸口金又は矩形口金の流路内において、溶融状態のメソフェーズピッチ組成物の通過速度を高くすることにより、せん断によるひずみを加えることができる。
[0059]
 伸長によるひずみを加える方法としては、溶融状態のメソフェーズピッチ組成物の線速度を、紡糸口金又は矩形口金の吐出側に向けて徐々に大きくする方法が例示される。具体的には、口金の流路の断面積を吐出側に向けて漸減させる方法(口金内部での変形)や、紡糸口金又は矩形口金の吐出孔から吐出されたメソフェーズピッチ組成物を、吐出線速度よりも大きな線速度で引き取る方法(口金外部での変形)などが挙げられる。口金内部での変形の場合、変形により分子配向性が高められたメソフェーズピッチは、熱緩和によって分子配向性が低下し易くなる。一方、口金外部での変形の場合、変形により分子配向性が高められたメソフェーズピッチが直ちに冷却されて流動性が低下することにより、メソフェーズピッチの分子配向性が保たれる。そのため、配向制御操作としては、口金外部において伸長によるひずみを加える方法が好ましい。
[0060]
 これらの方法は、せん断ひずみ速度や伸長ひずみ速度を制御することが重要である。
 せん断ひずみ速度及び伸長ひずみ速度は、それぞれ5~10000s -1であり、100から1400s -1であることが好ましい。5s -1未満である場合、メソフェーズピッチの分子配向性を十分に高めることができない。10000s -1を超える場合、メソフェーズピッチの変形が追随できず、繊維状に変形させることができなくなる。
[0061]
 上記のように制御することにより、メソフェーズピッチの分子配向性を高めることができるとともに、繊維径の変動係数が小さい炭素繊維を得ることができる。
[0062]
 メソフェーズピッチの分子配向性を高める操作の際の温度は、メソフェーズピッチの溶融温度よりも高いことが必要であり、150~400℃であることが好ましく、180~350℃であることがより好ましい。400℃を超える場合、メソフェーズピッチの変形緩和速度が大きくなり、繊維の形態を保つことが難しくなる。
[0063]
 吐出線速度と引取り速度との比率であるドラフト比は、2~100であることが好ましく、2~50であることがより好ましい。100より大きいとメソフェーズピッチの変形が追随できず、繊維状に変形させることができなくなるので好ましくない。2未満であるとメソフェーズピッチの分子配向性を高くすることができず、その結果、得られる繊維状炭素の結晶性が低くなる。
[0064]
 また、樹脂複合繊維の繊維化工程は冷却工程を有していてもよい。冷却工程としては、例えば、溶融紡糸の場合、紡糸口金の下流の雰囲気を冷却する方法が挙げられる。溶融製膜の場合、矩形口金の下流に冷却ドラムを設ける方法が挙げられる。冷却工程を設けることにより、メソフェーズピッチが伸長によって変形する領域を調整でき、ひずみの速度を調整することができる。また、冷却工程を設けることにより、紡糸又は製膜後の樹脂複合繊維を直ちに冷却固化させて安定した成形を可能とする。
[0065]
 <樹脂複合安定化繊維>
 上記のようにして得られた樹脂複合繊維は、該樹脂複合繊維に含まれるメソフェーズピッチ繊維を安定化(不融化ともいう)して樹脂複合安定化繊維が作製される。安定化は、空気、酸素、オゾン、二酸化窒素、ハロゲンなどを用いるガス気流処理、酸性水溶液などを用いる溶液処理など公知の方法で行うことができる。生産性の面からガス気流処理による不融化が好ましい。
[0066]
 使用するガス成分としては、取り扱いの容易性から空気、酸素、又はこれらを含む混合ガスであることが好ましく、コストの関係から空気を用いるのが特に好ましい。使用する酸素ガス濃度としては、全ガス組成の10~100体積%の範囲にあることが好ましい。酸素ガス濃度が全ガス組成の10体積%未満であると、樹脂複合繊維に含まれるメソフェーズピッチの安定化に多大の時間を要する。
[0067]
 安定化の反応温度は、50~350℃が好ましく、60~300℃がより好ましく、100~300℃がさらに好ましく、200~300℃が特に好ましい。安定化の処理時間は、10~1200分間が好ましく、10~600分間がより好ましく、30~300分間がさらに好ましく、60~210分間が特に好ましい。
[0068]
 上記安定化処理によりメソフェーズピッチの軟化点は著しく上昇する。所望の炭素繊維を得るという目的から、メソフェーズピッチの軟化点は400℃以上となることが好ましく、500℃以上となることがさらに好ましい。
[0069]
 <熱可塑性樹脂除去工程>
 次に、上述のようにして得られる樹脂複合安定化繊維は、その中に含まれる熱可塑性樹脂が除去されて安定化繊維が分離される。この工程では、安定化繊維の熱分解を抑制しながら、熱可塑性樹脂を分解・除去する。熱可塑性樹脂を分解・除去する方法としては、例えば、溶剤を用いて熱可塑性樹脂を除去する方法や、熱可塑性樹脂を熱分解して除去する方法が挙げられる。
[0070]
 熱可塑性樹脂の熱分解は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ここでいう不活性ガス雰囲気とは、二酸化炭素、窒素、アルゴン等のガス雰囲気をいい、その酸素濃度は30体積ppm以下であることが好ましく、20体積ppm以下であることがより好ましい。本工程で使用する不活性ガスとしては、コストの関係から二酸化炭素及び窒素を用いることが好ましく、窒素を用いることが特に好ましい。
[0071]
 熱可塑性樹脂の熱分解は減圧下で行うこともできる。減圧下で熱分解することにより、熱可塑性樹脂を十分に除去することができる。その結果、安定化繊維を炭素化又は黒鉛化して得られる炭素繊維又は黒鉛化繊維は、繊維間における融着を少なくすることができる。雰囲気圧力は低いほど好ましいが、50kPa以下であることが好ましく、30kPa以下であることがより好ましく、10kPa以下であることがさらに好ましく、5kPa以下であることが特に好ましい。一方、完全な真空は達成が困難であるため、圧力の下限は一般に0.01kPa以上である。
[0072]
 熱可塑性樹脂の熱分解を減圧下で行う場合、上記の雰囲気圧力が保たれれば、微量の酸素や不活性ガスが存在してもよい。特に微量の不活性ガスが存在すると、熱可塑性樹脂の熱劣化による繊維間の融着が抑制されるため好ましい。なお、ここでいう微量の酸素とは、酸素濃度が30体積ppm以下であることをいい、微量の不活性ガスとは、不活性ガス濃度が20体積ppm以下であることをいう。用いる不活性ガスの種類は、上述したとおりである。
[0073]
 熱分解の温度は、350~600℃であることが好ましく、380~550℃であることがより好ましい。熱分解の温度が350℃未満である場合、安定化繊維の熱分解は抑えられるものの、熱可塑性樹脂の熱分解を十分行うことができない場合がある。一方、600℃を超える場合、熱可塑性樹脂の熱分解は十分行うことができるものの、安定化繊維までが熱分解される場合があり、その結果、収率が低下し易い。熱分解の時間としては、0.1~10時間であることが好ましく、0.5~10時間であることがより好ましい。
[0074]
 本発明の製造方法では、安定化工程及び熱可塑性樹脂除去工程は、樹脂複合繊維又は樹脂複合安定化繊維を、支持基材上に目付け2kg/m 以下で保持して行うことが好ましい。支持基材に保持することによって、安定化処理時又は熱可塑性樹脂除去時の加熱処理に起因して生じる樹脂複合繊維又は樹脂複合安定化繊維の凝集を抑制することができ、通気性を保つことが可能となる。
[0075]
 支持基材の材質としては、溶剤や加熱によって変形や腐食を生じないことが必要である。また、支持基材の耐熱温度としては、上記の熱可塑性樹脂除去工程の熱分解温度で変形しないことが必要であることから、600℃以上の耐熱性を有していることが好ましい。このような材質としては、ステンレスなどの金属材料やアルミナ、シリカなどのセラミックス材料を挙げることができる。
[0076]
 また、支持基材の形状としては、面に対して垂直方向への通気性を有する形状であることが好ましい。このような形状としては網目構造が好ましい。網目の目開きは0.1~5mmであることが好ましい。目開きが5mmよりも大きい場合、加熱処理によって網目の線上に繊維が凝集し易くなり、メソフェーズピッチの安定化や熱可塑性樹脂の除去が不十分となる場合がある。一方、網目の目開きが0.1mm未満である場合、支持基材の開孔率の減少により、支持基材の通気性が低下する場合がある。
[0077]
 <炭化焼成工程>
 上記安定化繊維を不活性雰囲気下で炭素化及び/又は黒鉛化することにより、本発明の炭素繊維が得られる。その際に使用する容器としては、黒鉛製のルツボ状のものが好ましい。ここで、炭素化とは比較的低温(好ましくは1000℃程度)で加熱することをいい、黒鉛化とはさらに高温で加熱(3000℃程度)することにより黒鉛の結晶を成長させることをいう。
[0078]
 上記安定化繊維の炭素化及び/又は黒鉛化時に使用される不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。不活性雰囲気中の酸素濃度は、20体積ppm以下であることが好ましく、10体積ppm以下であることがより好ましい。炭素化及び/又は黒鉛化時の加熱温度は、500~3500℃が好ましく、800~3200℃がより好ましい。焼成時間は、0.1~24時間が好ましく、0.2~10時間がより好ましい。
[0079]
 なお、本発明においては、炭素化及び/又は黒鉛化の温度は、比較的低温で行っても良い。例えば1000~2400℃で炭素化及び/又は黒鉛化することにより、実効繊維長の長い炭素繊維の割合が多くすることができる。加熱温度の下限値としては、1000℃であることが好ましく、1200℃がより好ましく、1300℃がさらに好ましく、1400℃以上がさらにより好ましく、1500℃以上であることが特に好ましい。なお、2400℃以上である場合、結晶化が進み過ぎて炭素繊維が折損し易くなる場合がある。
[0080]
 <粉砕処理>
 本発明の炭素繊維の製造方法は、粉砕処理工程を有していても良い。粉砕処理は、熱可塑性樹脂除去工程後、及び/又は、炭化焼成工程後において実施するのが好ましい。粉砕方法としては、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、インペラーミル、カッターミル等の微粉砕機を適用することが好ましく、粉砕後に必要に応じて分級を行ってもよい。湿式粉砕の場合、粉砕後に分散媒体を除去するが、この際に2次凝集が顕著に生じるとその後の取り扱いが非常に困難となる。このような場合は、乾燥後、ボールミルやジェットミル等を用いて解砕操作を行うことが好ましい。
[0081]
2.ポリマー
 本発明におけるポリマーは、熱可塑性ポリマー、又は熱硬化性ポリマーのいずれであってもよい。ポリマー中に前記繊維状炭素を均一に分散することができるものであればあらゆるポリマーを用いることができる。なお、本明細書中、ポリマーをバインダーと称することがある。
[0082]
 熱可塑性ポリマーとしては、例えば、フッ素系、ポリアミド系、アクリル系、ポリウレタン系、ビニル系の各種ポリマーを挙げることができる。この中で、ポリフッ化ビ二リデン、ポリイミド、コーネックスなどは、電子部品と放熱シートとの間に起こり得る熱的な応力や外的な力に対して放熱シートを変形させない点で好ましい。
 熱硬化性ポリマーとしては、例えば、シリコン系、エポキシ系の各種ポリマーを挙げることができる。この中でも、シリコンゲルやシリコンゴムは柔軟性を有するため、電子部品と放熱シートとの間に空隙が生じることを防ぐことができる点で好ましい。
[0083]
 繊維状炭素とポリマーとの配合量としては、繊維状炭素とポリマーとの合計量に対し、繊維状炭素が5~85質量%である。繊維状炭素の配合量の下限は、8質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、15質量%であることが特に好ましい。繊維状炭素の配合量の上限は、80質量%であることが好ましく、70質量%であることがより好ましく、60質量%であることが特に好ましい。
 繊維状炭素の配合量が5質量%未満では、用途にもよるが、熱伝導性が不十分となる。また、85質量%を超えると、バインダー中に繊維状炭素を均一に分散することが困難になったり、放熱シートの成形性に影響が出る場合がある。
[0084]
3.フィラー粒子
 本発明の放熱シートはフィラー粒子を配合することができる。フィラー粒子を配合することにより、放熱シートの厚み方向への熱伝導性を向上できる。フィラー粒子の形状としては、球状、楕円形状、塊状、粒状を例示することができる。それらの平均粒径は、球状以外の形状の場合は、真球と看做して算出する。即ち、楕円状の場合は長径であり、塊状や粒状の場合は最長の長さを意味する。また、フィラー粒子は中実でもよいが、中空でもよい。
[0085]
 本発明に用いるフィラー粒子としては、無機物、有機物のいずれであってもよい。無機物としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミ(AlN)、ケイ素(シリコン)、シリカ、アルミナ、銅、銀などの金属粒子、酸化珪素、チタニアが好ましく、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中で好ましくは、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)である。
[0086]
 フィラー粒子の平均粒子径としては、上述の繊維状炭素の平均繊維径に対して1~150倍の範囲にあることが好ましい。フィラー粒子の平均粒子径の下限は、1.5倍であることが好ましく、3倍であることがより好ましく、5倍であることがさらに好ましく、10倍であることがさらに好ましく、30倍であることがさらに好ましく、50倍であることが特に好ましい。フィラー粒子の平均粒子径の上限は、120倍であることが好ましく、100倍であることがより好ましい。1倍未満の場合、フィラー粒子同士の凝集が生じて分散性が悪くなり、放熱シートの厚み方向の熱伝導率を十分上げることができない。150倍を超えると、放熱シートの成形性が悪く、発熱体との密着性が悪いため熱伝導率を十分上げることができない。
[0087]
 フィラー粒子がメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)の場合、その平均粒子径は1~50μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、5~25μmが特に好ましい。前記平均粒子径が1μm未満であると、粒子同士の凝集が生じて分散性が悪くなり、放熱シートの厚み方向の熱伝導率を十分上げることができない。50μmを超えると、前記放熱シート中に含まれるフィラー数が少なく、熱伝導パスを形成し難くなり、放熱シートの厚み方向の熱伝導率を十分上げることができない。
[0088]
 なお、フィラー粒子は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、親水化処理又はカップリング剤による表面処理を例示することができる。表面処理を施すとフィラー粒子同士の凝集が少なくなり、放熱シート内における分散性が向上して熱伝導率を向上できる場合がある。
[0089]
 フィラー粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。フィラー粒子は、本発明の放熱シート全体の質量を基準として、5質量%以上配合することが好ましく、10質量%以上配合することがより好ましく、15質量%以上配合することがさらに好ましく、20質量%以上配合することが特に好ましい。一方、フィラー粒子の配合量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが特に好ましい。
[0090]
4.その他の物質
 本発明の放熱シートは、上記の繊維状炭素及びポリマーを必須成分とし、フィラー粒子を任意成分とする。この他にも、難燃化材、着色剤等の任意の成分を配合することができる。
[0091]
 本発明の放熱シート中には、さらに放熱性を高める目的で、繊維状炭素以外の無機材料又は有機材料、例えばグラファイト(黒鉛)、窒化ホウ素、シリカ、アルミナ、窒化アルミナ、アセチレンブラックなどのカーボンブラックを、前記放熱シート全体に対し、25質量%以下の割合で含んでいてもよい。
 また、本発明の放熱シート中には、平面内、あるいは厚み方向の機械的強度、電気特性を制御するために、繊維状炭素以外の無機材料または有機材料、例えば異種粒子である導電性及び絶縁性フィラーであるグラファイト(黒鉛)、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、シリカ、アルミナ、窒化アルミナ、アセチレンブラックなどのカーボンブラックなどを、前記放熱シート全体に対し、25質量%以下の割合で含んでいてもよい。
 特に、放熱シートの厚み方向における熱伝導性を補完する物質として、以下に記載するカーボンナノチューブを配合することもできる。
[0092]
 カーボンナノチューブ(CNT)としては、平均繊維長が2~120μmであり、平均繊維径が0.4~50nmであるカーボンナノチューブを例示することができる。このようなCNTは、適度に凝集するため、繊維状であるにも関わらず、放熱シートの面内方向に配向し難い。そのため、放熱シートの厚み方向への熱伝導性を向上できる。CNTの配合量は、放熱シートに対して1~60質量%であることが好ましく、2~50質量%であることがより好ましい。
[0093]
5.放熱シート
5-1. 第1態様の放熱シートの性状
 第1態様の本発明の放熱シートは、熱伝導性に優れ、特に面内の一方向(X方向(通常MD方向))の熱伝導率が良好である。製造方法にもよるが、通常は、上記繊維状炭素のアスペクト比が高いので、繊維状炭素は基本的に放熱シートの面内のMD方向(X方向)に配向し、通常TD方向(Y方向)および厚み方向(Z方向)にはあまり配向していないからである。
 本発明の放熱シートは、繊維状炭素の配向度が所定の範囲にあることが好ましい。具体的には、放熱シートの面と平行方向であって、最も高い配向度を示す一方向の配向度Aが55~95%であることが好ましく、60~95%であることがより好ましく、70~95%であることがさらに好ましく、75~95%であることが特に好ましい。この範囲にあることにより、繊維状炭素が主として一方向に並列的に配列し、かつ前後左右の隣り合った繊維状炭素同士は実質的に全部が適度に接触している。そのため、X方向に熱伝導パスが多く形成され、Y方向及びZ方向に比べて熱伝導率が高くなる。本発明の放熱シートは、放熱シートに与えられた熱を、面内の特定の一方向(X方向)に効率的に逃がすことができる。
[0094]
 放熱シートの面と平行方向であって、前述の最も高い配向度を示す一方向と直交する方向の配向度Bは、5~45%であることが好ましく、10~40%であることがより好ましい。
[0095]
 本発明の放熱シートは、放熱シートの面と平行方向であって、最も高い配向度を示す一方向における熱伝導率Pが、放熱シートの厚み方向における熱伝導率Tの2~200倍であることが好ましい。P/Tの下限は、5倍であることが好ましく、10倍であることがより好ましく、20倍であることがさらに好ましく、30倍であることがさらに好ましく、45倍であることが特に好ましい。P/Tの上限は、150倍であることが好ましく、90倍であることがより好ましく、80倍であることがさらに好ましい。このような配向特性を有する放熱シートは、シート面と平行方向であって所定の方向に熱を逃がすことができる。
[0096]
 このような放熱シートは、放熱シート内に上述の繊維状炭素を配合することにより製造できる。シート化は公知の方法かつ公知の条件で行えば良い。例えば、シート化の方法が溶液キャスト法である場合、溶液の粘度や溶液キャスト速度を適宜調整することによりP/Tの値を制御できる。
[0097]
5-2. 第2態様の放熱シートの性状
 第2態様の本発明の放熱シートは、熱伝導性に優れ、特に面内の一方向(X方向(通常MD方向))の熱伝導率が良好であるだけでなく、放熱シートの厚み方向(Z方向)の熱伝導性が優れる。放熱シートの面内方向(X方向)における熱伝導率pの最大値は、厚み方向における熱伝導率tの1.5~100倍であることが好ましい。p/tの上限は、60倍であることが好ましく、50倍であることがより好ましく、40倍であることがさらに好ましく、35倍であることがさらに好ましく、30倍であることが特に好ましい。このような配向特性を有する放熱シートは、シート面と平行方向のみならず、厚さ方向に熱を逃がすことができる。また、熱源から放熱シートへ効率的に伝熱することが可能となる。
[0098]
 このような放熱シートは、粒子径が繊維状炭素の平均繊維径に対して1~150倍のフィラー粒子を含有させることにより、製造することができる。特に、フィラー粒子の粒子径大きくするほど、また、フィラー粒子の含有量を増やすほど、厚み方向における熱伝導率を高くすることができる。即ち、p/tの値はフィラー粒子の平均粒子径及び配合量によって適宜調整できる。
[0099]
 なお、本発明において配向度とは、実施例に記載の方法で測定された値をいう。
[0100]
 本発明の第1態様及び第2態様の放熱シートの厚みとしては、0.01~1mmであることが好ましく、0.1~1mmであることがより好ましい。上記範囲を逸脱するとX、Y及びZ方向における熱伝導性の異方性が見られにくくなる。
[0101]
 シートの面内方向における熱伝導率の最大値は2~200W・m -1・K -1であることが好ましく、5~150W・m -1・K -1であることがより好ましい。
 また、シートの厚み方向における熱伝導率は3~150W・m -1・K -1であることが好ましく、5~100W・m -1・K -1であることがより好ましい。
[0102]
 本発明の放熱シートは、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを90質量%とし、繊維状炭素の割合が10質量%とした場合の、面内方向の一方向(例えばMD方向)の最大の熱伝導率を測定すると11.33W・m -1・K -1以上の熱伝導率を有する。11.33W・m -1・K -1の熱伝導率は、マトリクスとして用いているポリフッ化ビニリデンの熱伝導率と比較すると約一桁高い熱伝導率である。
[0103]
5-3. 放熱シートの製造方法
 本発明の放熱シートは、溶融成形法、溶液キャスト法、ディップ法等の従来公知のシートの製造方法により製造することができる。以下、繊維状炭素としてピッチ系炭素繊維を用い、バインダーとしてポリフッ化ビ二リデンを用いる溶液キャスト法の場合について説明する。
[0104]
 この場合、繊維状炭素とポリフッ化ビニリデンとを、ポリフッ化ビニリデンを溶解させる溶剤(例えばN-メチル-2-ピロリドン)中で混合して、ポリフッ化ビニリデンを溶解するとともに、繊維状炭素を分散させてスラリーを調製する。次に、このスラリーを、離形フィルムなどの基材上に流し、ドクターブレード等により所定の厚みになるように成形する。続いて、減圧又は加熱により溶剤を除去し、基材から剥がしてシートを得ることができる。
[0105]
 この場合、繊維状炭素とポリフッ化ビニリデンとを、ポリフッ化ビニリデンを溶解させる溶剤(例えばN-メチル-2-ピロリドン)中で混合して、ポリフッ化ビニリデンを溶解するとともに、繊維状炭素を分散させてスラリーを調製する。また必要に応じてフィラー粒子やカーボンナノチューブ等を含有させる。次に、このスラリーを、離形フィルムなどの基材上に流し、ドクターブレード等により所定の厚みになるように成形する。続いて、減圧又は加熱により溶剤を除去し、基材から剥がしてシートを得ることができる。上記スラリーは、例えば固形分濃度や溶液キャスト速度によって繊維状炭素の所望の面内配向度が得られるように変えることができるが、固形分濃度を15~55質量%の範囲内とすることで、繊維状炭素が面内の一方向に高い配向度A(55~95%)で配向させることができる。このとき、溶液キャスト速度は0.2~60cm/分の範囲が好ましい。また、繊維状炭素の平均実効繊維長が長いほど、繊維状炭素の接点が増えたり、重なりが多くなるため、配向度Aも高くなる傾向がある。
[0106]
 この際、電場や磁場によって繊維状炭素を所定方向に配向させることも好ましい。
[0107]
5-4. 第3態様の放熱シートの性状及び製造方法
 第3態様の本発明の放熱シートは、特にシートの厚み方向(Z方向)の熱伝導率が優れる。放熱シートの厚み方向(Z方向)における熱伝導率は、シートの面内方向における熱伝導率の最大値の1.0~100倍であることが好ましく、2.0~80倍であることがより好ましい。このような特性を有する放熱シートは、シート厚さ方向に効率的に熱を逃がすことができる。
[0108]
 このような放熱シートは、所定の炭素繊維成形体をスライスすることにより製造することができる。
 炭素繊維成形体としては、所定方向に引き揃えられた炭素繊維を含んで成る炭素繊維成形体を例示することができる。即ち、所定方向に引き揃えられた炭素繊維に樹脂等を含浸乃至被覆して作製される炭素繊維の棒状体が例示される。又は、上記繊維状炭素と樹脂との混合物を押し出し成形することにより、該混合物中の繊維状炭素を一方向に配向させた棒状体が例示される。これらの棒状体を棒状体の軸と直交する方向にスライスすることにより、第3態様の放熱シートを作製することができる。このような炭素繊維成形体は、炭素繊維が樹脂等によって固定化されている。そのため、これをスライスすることにより得られる放熱シートは、シートの厚み方向に熱伝導パスを形成することができ、シートの厚み方向への熱伝導性を向上できる。
実施例
[0109]
 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されない。実施例中の各種測定や分析は、それぞれ以下の方法に従って行った。
[0110]
(1)繊維状炭素等の形状確認
 卓上電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式NeoScope JCM-6000)を用いて観察及び写真撮影を行った。繊維状炭素等の平均繊維径は、得られた電子顕微鏡写真から無作為に300箇所を選択して繊維径を測定し、それらすべての測定結果(n=300)の平均値とした。平均実効繊維長についても同様に算出した。
[0111]
(2)配向度の測定
 放熱シート中の繊維状炭素の配向度は、X線回折装置のリカク社製「RINT-TTRIII」を用いて以下の測定条件により測定される。
 ・X線源:Cu-Kα (λ=1.5418Å)、50kV-300mA(15kW)、
 ・平行ビーム法:繊維試料台使用、
 ・測定:2θ固定26.3°、試料台360°回転、
 ・解析:得られたグラファイト(002)回折ピークの方位角分布曲線の半値幅の値に基づいて算出する。
[0112]
(3)繊維状炭素等のX線回折測定
 X線回折測定はリガク社製RINT-2100を用いてJIS R7651法に準拠し、格子面間隔(d002)、結晶子大きさ(La、Lc)を測定した。
[0113]
(4)粉体体積抵抗率の測定方法
 粉体体積抵抗率の測定はダイヤインスツルメンツ社製の粉体抵抗システム(MCP-PD51)を用いて0.25~2.50kNの荷重下で四探針方式の電極ユニットを用いて測定した。体積抵抗率は充填密度の変化に伴う体積抵抗率の関係から充填密度が0.4g/cm 時の体積抵抗率の値とした。
[0114]
(5)熱伝導率の測定
 放熱シートの面内方向(MD方向)及び膜厚方向の熱伝導率は、ネッチジャパン社製LFA447を用いて、インプレン法の条件により測定した。測定試料は、製膜した放熱シートを1.8φの大きさに打ち抜いて作成した。なお、以下に記載の熱伝導率は、放熱シートの面内方向(MD方向)において、最大を示す方向の値である。
[0115]
(6)せん断速度の算出
 矩形口金内部でのせん断速度は、口金内の位置によって相違し一定ではないが、下記式(1)により、みかけせん断速度として算出した。
[0116]
[数1]


[0117]
(7)伸長ひずみ速度の算出
 口金内部での伸長ひずみ速度、及び口金外部での伸長ひずみ速度は、一定とはならないが、変形開始から変形終了までの範囲において一定の伸長ひずみ速度で変形すると仮定し、下記式(2)により伸長ひずみ速度を算出した。
[0118]
[数2]


[0119]
[製造例1]
<繊維状炭素の製造>
 熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー社製、ハイゼックス5000SR;350℃、600s -1における溶融粘度14Pa・s、MFR=0.37g/10min)90質量部と、メソフェーズピッチとしてメソフェーズピッチAR-MPH(三菱ガス化学株式会社製)10質量部と、を同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS、バレル温度310℃、窒素気流下)で溶融混練してメソフェーズピッチ組成物を作製した。メソフェーズピッチの熱可塑性樹脂中への分散径は0.05~2μmであった。また、このメソフェーズピッチ組成物を300℃で10分間保持したが、メソフェーズピッチの凝集は認められず、分散径は0.05~2μmであった。
[0120]
 次いで、このメソフェーズピッチ組成物を、スリット幅0.2mm、スリット長さ100mm、導入角60°の矩形口金を用いて厚み60μmの面状体に成形した。口金温度は340℃、吐出量は2.4kg/時間、せん断速度は1000s -1、吐出線速度と引取り速度との比率であるドラフト比は25、吐出口から冷却ドラムまでの距離は50mmであった。この条件での口金内部での伸長ひずみ速度は95s -1であり、口金外部での伸長ひずみ速度は208s -1であった。目開き1.46mm、線径0.35mmの金網上に、得られた面状体を短繊維の目付けが30g/m になるように不織布状に配置した。
[0121]
 この樹脂複合繊維から成る不織布を215℃の熱風乾燥機の中で3時間保持させることにより、樹脂複合安定化繊維から成る不織布を作製した。次に、この不織布を真空ガス置換炉内に入れ、炉内を窒素置換した後に1kPaまで減圧し、この状態から加熱することにより、熱可塑性樹脂を除去した。加熱条件は、昇温速度5℃/分で500℃まで昇温後、同温度で60分間保持した。
[0122]
 この熱可塑性樹脂が除去された不織布をエタノール溶媒中に加え、超音波発振器により30分間、振動を加えることによって、溶媒中に安定化繊維を分散させた。溶媒中に分散させた安定化繊維をろ過することによって、安定化繊維を分散させた不織布を作製した。
[0123]
 この安定化繊維を分散させた不織布を、真空ガス置換炉内で窒素ガス流通下、5℃/分で1000℃まで昇温して同温度で0.5時間熱処理した後、室温まで冷却した。更に、この不織布を、黒鉛ルツボに納め、超高温炉(倉田技研社製、SCC-U-80/150型、均熱部80mm(直径)×150mm(高さ))を用いて、真空中で室温から2000℃まで10℃/分で昇温した。2000℃に到達後、0.05MPa(ゲージ圧)のアルゴンガス(99.999%)雰囲気としてから、10℃/分の昇温速度で3000℃まで昇温し、3000℃で0.5時間熱処理した。得られた繊維状炭素の電子顕微鏡写真を図1に示す。
[0124]
 以上のように黒鉛化処理を経て得られた繊維状炭素の繊維径は150~600nm(平均繊維径280nm)であり、平均実効繊維長(L)と平均繊維径(D)との比(L/D)が60であり、分岐がなく(分岐度0.01個/μm以下)、非常に分散性に優れた繊維状炭素であった。また、X線回折法で測定した結果から、この極細繊維状炭素の格子面間隔(d002)は0.3370nm、結晶子長さ(La)は336.3nm、網平面群の厚さ(Lc)は66.7nmであり、結晶性の高い繊維状炭素であった。また、充填密度0.4g/cm で充填した際の粉体体積抵抗率は、0.14Ω・cmであった。
[0125]
[実施例1]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤に、バインダーの濃度が10質量%となるようにポリフッ化ビ二リデン(クレハ株式会社製)を溶解させた。次いで、この溶液に、上記繊維状炭素(製造例1)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素との合計量に対して50質量%とした。このスラリーを、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの上に流して、キャスト速度0.5cm/分の速さでドクターブレード法により、厚み0.3mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で2時間熱処理して縦200cm、横150cm、厚み0.1mmの放熱シートを得た。この放熱シートは表面がなめらかでしなやかさがあった。放熱シートの面内方向(MD方向)及び厚み方向の熱伝導率の値を表1に示す。
[0126]
[実施例2]
 上記繊維状炭素の配合量を25質量%とした以外は実施例1と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)及び厚み方向の熱伝導率の値を表1に示す。
[0127]
[実施例3]
 上記繊維状炭素の配合量を10質量%とした以外は実施例1と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)及び厚み方向の熱伝導率の値を表1に示す。
[0128]
[比較例1]
 繊維状炭素として、平均繊維径が10μm、平均繊維長が150μmのピッチ系炭素繊維(帝人株式会社製 「ラヒーマ」、アスペクト比15、La=212)を用いた以外は実施例1と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)及び厚み方向の熱伝導率の値を表1に示す。
[0129]
[比較例2]
 繊維状炭素として、平均繊維径が10μm、平均繊維長が150μmのピッチ系炭素繊維(帝人株式会社製 「ラヒーマ」、アスペクト比15、La=212)を用いた以外は実施例2と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)及び厚み方向の熱伝導率の値を表1に示す。平均繊維径とアスペクト比が小さいため、配向度が高い割に熱伝導率は低くなっている。
[0130]
[比較例3]
 繊維状炭素として、平均繊維径が160nm、平均繊維長が6μmの気相成長炭素繊維(昭和電工株式会社製、La=40nm)を用いた以外は実施例1と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表1に示す。
[0131]
[比較例4]
 繊維状炭素として、平均繊維径が160nm、平均繊維長が6μmの気相成長炭素繊維(昭和電工株式会社製、La=40nm)を用いた以外は実施例2と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表1に示す。平均繊維径が小さいため、面内に配向し難く、気相成長炭素繊維の集合体が見られた。
[0132]
[比較例5]
 繊維状炭素に代えて、平均粒子径が50nmのアセチレンブラック(電気化学株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表1に示す。
[0133]
[比較例6]
 繊維状炭素に代えて、平均粒子径が50nmのアセチレンブラック(電気化学株式会社製)を用いた以外は実施例2と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表1に示す。
[0134]
[表1]



[0135]
[実施例4]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤にポリフッ化ビ二リデン(クレハ株式会社製)を溶解させた。次いで、この溶液に、上記繊維状炭素(製造例1)、MCMB粒子(粒子径10~20μm、大阪ガス株式会社製)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素との合計量に対して50質量%とした。このスラリーを、PTFEフィルムの上に流してドクターブレード法により、厚み0.5mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で2時間熱処理して放熱シートを得た。繊維状炭素は放熱シートの面内方向(MD方向)に配向していた。放熱シートの質量に対する各成分の配合量は、繊維状炭素が45質量%、MCMB粒子が5質量%、ポリフッ化ビ二リデンが50質量%である。
[0136]
[実施例5]
 放熱シートの質量に対する各成分の配合量を、繊維状炭素25質量%、MCMB粒子25質量%、ポリフッ化ビ二リデン50質量%にそれぞれ変更した他は実施例4と同様して放熱シートを得た。
[0137]
[実施例6]
 放熱シートの質量に対する各成分の配合量を、繊維状炭素5質量%、MCMB粒子45質量%、ポリフッ化ビ二リデン50質量%にそれぞれ変更した他は実施例4と同様して放熱シートを得た。
[0138]
[比較例7]
 MCMBに代えてアセチレンブラック粒子(粒子径50~100nm、デンカ株式会社製)を5質量%用いた他は実施例4と同様して放熱シートを得た。
[0139]
[比較例8]
 MCMBに代えてアセチレンブラック粒子(粒子径50~100nm、デンカ株式会社製)を25質量%用いた他は実施例5と同様して放熱シートを得た。
[0140]
[比較例9]
 MCMBに代えてアセチレンブラック粒子(粒子径50~100nm、デンカ株式会社製)を45質量%用いた他は実施例6と同様して放熱シートを得た。
[0141]
[比較例10]
 MCMBに代えて窒化ホウ素粒子(粒子径150nm、シグマ・アルドリッチジャパン株式会社製)を5質量%用いた他は実施例4と同様して放熱シートを得た。
[0142]
[比較例11]
 MCMBに代えて窒化ホウ素粒子(粒子径150nm、シグマ・アルドリッチジャパン株式会社製)を25質量%用いた他は実施例5と同様して放熱シートを得た。
[0143]
[比較例12]
 MCMBに代えて窒化ホウ素粒子(粒子径150nm、シグマ・アルドリッチジャパン株式会社製)を45質量%用いた他は実施例6と同様して放熱シートを得た。
[0144]
[参考例1]
 放熱シートの質量に対する各成分の配合量を、繊維状炭素10質量%、MCMB粒子0質量%、ポリフッ化ビ二リデン90質量%にそれぞれ変更した他は実施例4と同様して放熱シートを得た。
[0145]
[参考例2]
 放熱シートの質量に対する各成分の配合量を、繊維状炭素25質量%、MCMB粒子0質量%、ポリフッ化ビ二リデン75質量%にそれぞれ変更した他は実施例4と同様して放熱シートを得た。
[0146]
[参考例3]
 放熱シートの質量に対する各成分の配合量を、繊維状炭素50質量%、MCMB粒子0質量%、ポリフッ化ビ二リデン50質量%にそれぞれ変更した他は実施例4と同様して放熱シートを得た。
[0147]
[表2]



[0148]
 本発明によれば、粒子径が該繊維状炭素の平均繊維径に対して1~150倍の大きさのフィラー粒子を含有している。そのため、炭素繊維とフィラー粒子の間で厚み方向に適度な熱伝導パスが形成されると推察される。したがって、繊維状炭素の面内方向の配向度が最も高い一方向(通常MD方向(繊維軸方向))の良好な熱伝導率を維持したまま、厚み方向の熱伝導率が向上した放熱シートが提供される。それに対し、比較例1~6のフィラーは粒子径が繊維径に比べて小さいため、繊維間に埋もれてしまい、熱伝導パスが効果的に形成されず、厚み方向の熱伝導率がほとんど増加しない状態であると推察される。
[0149]
[実施例7]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤にポリアミド(帝人株式会社製「テクノーラ」(登録商標))を溶解させた。次いで、この溶液に、上記繊維状炭素(製造例1)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素との合計量に対して30質量%とした。このスラリーを、耐熱性ガラス上に流してドクターブレード法により、厚み0.1mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で3時間熱処理して、縦200cm、横150cm、厚み0.05mmの放熱シートを得た。得られた放熱シートは表面がなめらかな平坦でしなやかさがあった。この放熱シート表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-2400)を用いて観察及び写真撮影を行った。この写真を図3に示す。この放熱シートの機械物性を表3に示す。更に、この放熱シートの面内方向における熱伝導率を表4に示す。
[0150]
[実施例8]
 上記繊維状炭素の配合量を5質量%とし、さらに平均繊維径が10μm、平均繊維長が150μmのピッチ系炭素繊維(帝人株式会社製 「ラヒーマ」、アスペクト比15、La=212)を20質量%配合し、溶剤と繊維状炭素の合計量に対し25質量%の配合量になるようにした以外は実施例7と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表4に示す。
[0151]
[実施例9]
 上記繊維状炭素の配合量を12.5質量%とし、さらに平均繊維径が10μm、平均繊維長が150μmのピッチ系炭素繊維(帝人株式会社製 「ラヒーマ」、アスペクト比15、La=212)を12.5質量%配合し、溶剤と繊維状炭素の合計量に対し25質量%の配合量になるようにした以外は実施例7と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表4に示す。
[0152]
[実施例10]
 上記繊維状炭素の配合量を20質量%とし、さらに平均繊維径が10μm、平均繊維長が150μmのピッチ系炭素繊維(帝人株式会社製 「ラヒーマ」、アスペクト比15、La=212)を5質量%配合し、溶剤と繊維状炭素の合計量に対し25質量%の配合量になるようにした以外は実施例7と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表4に示す。
[0153]
[実施例11]
 上記繊維状炭素の配合量を溶剤と炭素繊維(CNF)の合計量に対し10質量%とした以外は実施例7と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表4に示す。
[0154]
[比較例13]
 上記繊維状炭素として、平均繊維径が10μm、平均繊維長が150μmのピッチ系炭素繊維(帝人株式会社製 「ラヒーマ」(登録商標))を10質量%配合した以外は実施例7と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表4に示す。得られた放熱シートは表面全体にわたって凸凹が見られた。この放熱シート表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-2400)を用いて観察及び写真撮影を行った。この写真を図4に示す。この放熱シートの機械物性を表3に示す。更に、放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表4に示す。
[0155]
[参考例4]
 繊維状炭素として、平均繊維径が160nm、平均繊維長が6μmの気相成長炭素繊維(昭和電工株式会社製、La=40nm)を用いた以外は実施例7と同様にして放熱シートを得た。この放熱シートの機械物性を表3に示す。
[0156]
[表3]


[0157]
[表4]


[0158]
[実施例12]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤に、バインダーの濃度が6質量%となるようにポリアミド(帝人株式会社製「テクノーラ」(登録商標))を溶解させた。次いで、この溶液に、上記繊維状炭素(製造例1)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素との合計量に対して30質量%とした。このスラリーを、耐熱性ガラス上に流してドクターブレード法により、厚み0.3mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で3時間熱処理して縦200cm、横150cm、厚み0.05mmの放熱シートを得た。この放熱シートは表面がなめらかでしなやかさがあった。この放熱シートの表面近傍と内部との形態を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-2400)で観察した(3,000倍)。表面近傍は、繊維状炭素がシート面内に対して平行に配向し、内部(中央部)は繊維状炭素が3次元的にランダムに配向していた。なお、放熱シートの深さ方向における表面近傍とは、表面から厚みに対して20%の深さまでの領域をいう。
 放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表5に示す。
[0159]
[実施例13]
 放熱シートの厚みを0.12mmとした他は実施例12と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表5に示す。
[0160]
[参考例4、5]
 繊維状炭素の含有量を10質量%とした他は実施例12、13と同様にして放熱シートをそれぞれ得た(参考例4は厚み50μm、参考例5は厚み120μm)。放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表5に示す。
[0161]
[表5]


[0162]
 CNF含有量が少ない場合、薄膜である方が熱伝導率が高くなった(参考例4-5)。
[0163]
[製造例2]
 製造例1の繊維状炭素を粉砕し、繊維長の短い繊維状炭素(S-CNF)を作製した。平均実効繊維長は6.0μmであった。平均繊維径は、製造例1と同一である。
[0164]
[実施例14]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤に、バインダーの濃度が16質量%となるようにポリアミド(帝人株式会社製「コーネックス」(登録商標))を溶解させた。次いで、この溶液に、上記繊維状炭素(製造例2)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素との合計量に対して30質量%とした。このスラリーを、PTFEフィルムの上に流してドクターブレード法により、厚み0.1mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で3時間熱処理して縦200cm、横150cm、厚み0.05mmの放熱シートを得た。この放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表6に示す。
[0165]
[実施例15]
 製造例2の繊維状炭素(S-CNF)に代えて、製造例1の繊維状炭素を用いた他は実施例14と同様にして放熱シートを得た。放熱シートの面内方向及び厚み方向の熱伝導率の値を表6に示す。
[0166]
[参考例6]
 製造例2の繊維状炭素(S-CNF)に代えて、平均繊維径が10μm、平均繊維長が150μmのピッチ系炭素繊維(帝人株式会社製 「ラヒーマ」、アスペクト比15、La=212)を用いた他は実施例14と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの面内方向及び厚み方向の熱伝導率を表6に示す。
[0167]
[実施例16]
 繊維状炭素(S-CNF)の配合量を50質量%に変更した他は実施例14と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの厚み方向熱伝導率を表6に示す。
[0168]
[実施例17]
 繊維状炭素(S-CNF)の配合量を70質量%に変更した他は実施例14と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの厚み方向熱伝導率を表6に示す。
[0169]
[実施例18]
 繊維状炭素(S-CNF)の配合量を10質量%に変更し、さらに、窒化ホウ素粒子(シグマ・アルドリッチジャパン株式会社製、粒子径150nm)を30質量%加えた他は実施例14と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの厚み方向熱伝導率を表6に示す。
[0170]
[実施例19]
 繊維状炭素(S-CNF)の配合量を30質量%に変更し、さらに、窒化ホウ素粒子(シグマ・アルドリッチジャパン株式会社製、粒子径150nm)を30質量%加えた他は実施例14と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの厚み方向熱伝導率を表6に示す。
[0171]
[表6]


[0172]
[製造例3]
 黒鉛化処理温度を1500℃とした以外は、製造例1と同様にして低温黒鉛化繊維状炭素を製造した。この低温黒鉛化炭素繊維は、繊維径は150~450nm(平均繊維径250nm)であり、平均実効繊維長が68μmであった。平均実効繊維長(L)と平均繊維径(D)との比(L/D)が272であり、分岐がなく(分岐度0.01個/μm以下)、非常に分散性に優れた炭素繊維であった。また、X線回折法で測定した結果から、この炭素繊維の格子面間隔(d002)は0.34310nm、結晶子長さ(La)は測定下限以下、網平面群の厚さ(Lc)は10nmである炭素繊維であった。
[0173]
[実施例20]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤に、バインダーの濃度が16質量%となるようにポリアミド(帝人株式会社製「コーネックス」(登録商標))を溶解させた。次いで、この溶液に、低温黒鉛化繊維状炭素(製造例3)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素との合計量に対して40質量%とした。このスラリーを、耐熱ガラス上に流してドクターブレード法により、厚み0.3mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で3時間熱処理して縦200cm、横150cm、厚み0.12mmの放熱シートを得た。この放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表7に示す。
[0174]
[実施例21]
 製造例3の低温黒鉛化繊維状炭素の配合量を60質量%に変更した他は実施例20と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの厚み方向熱伝導率を表7に示す。
[0175]
[実施例22]
 製造例3の低温黒鉛化繊維状炭素の配合量を10質量%に変更し、さらに製造例1の繊維状炭素を30質量%加えた他は実施例20と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの厚み方向熱伝導率を表7に示す。
[0176]
[実施例23]
 製造例3の低温黒鉛化繊維状炭素の配合量を30質量%に変更し、さらに製造例1の繊維状炭素を10質量%加えた他は実施例20と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの厚み方向熱伝導率を表7に示す。
[0177]
[表7]


[0178]
[実施例24]
エポキシ樹脂(市販品)と製造例1の繊維状炭素とを混合した。繊維状炭素の配合量は、エポキシ樹脂と繊維状炭素との合計量に対して30質量%とした。これを注射器に入れ押出しすることにより、棒状成形体を30本作成した。この棒状成形体の長さは100mm、直径は10mmであった。この30本の棒状成形体を束ねて更にエポキシ樹脂を加え、70℃で2時間熱処理し、1つの成形体とした。この成形体の繊維軸方向に対して垂直にスライスして表面を研磨し、厚み0.1mm、直径16mmの円盤状の炭素繊維成形体のシートを得た。得られた炭素繊維成形体のシート面内方向及び厚み方向における熱伝導率を表8に示す。
[0179]
[実施例25]
 実施例1の30本の糸状成形体を、垂直に立てた直径28mmのビン状の容器に入れた。次に、溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤にコーネックス(帝人株式会社製)16質量%を溶解させた。次いで、この溶液に、製造例1の繊維状炭素を混合してスラリーを得た。このスラリーを上記容器に流し込み、80℃1時間、150℃2時間熱処理した。続いて、容器から成形体を取り出し、その成形体の繊維軸方向に対して垂直にスライスして表面を研磨し、厚み0.1mm、18mm径の円形の放熱シートを得た。円盤状の炭素繊維成形体のシートを得た。得られた炭素繊維成形体のシート面内方向及び厚み方向における熱伝導率を表8に示す。
[0180]
[表8]


[0181]
[実施例26]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤に、バインダーの濃度が6質量%となるようにポリアミド(帝人株式会社製「テクノーラ」(登録商標))を溶解させた。次いで、この溶液に、繊維状炭素(製造例1)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素との合計量に対して30質量%とした。このスラリーを、耐熱性ガラス上に流してドクターブレード法により、厚み0.12mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で3時間熱処理して縦200cm、横150cm、厚み0.05mmの放熱シートを得た。この放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表9に示す。
[0182]
[実施例27]
 繊維状炭素の配合量を50質量%に変更した他は実施例26と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの厚み方向熱伝導率を表8に示す。
[0183]
[実施例28]
 繊維状炭素の配合量を50質量%に変更し、かつポリアミドに代えてポリイミド(ユニチカ株式会社製「Uイミド(登録商標)ワニスARタイプ」)をバインダーの濃度が18質量%となるように用いた他は実施例26と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの面方向熱伝導率を表9に示す。
[0184]
[実施例29]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤に、バインダーの濃度が16質量%となるようにポリアミド(帝人株式会社製「コーネックス」(登録商標))を溶解させた。次いで、この溶液に、繊維状炭素(製造例1)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素との合計量に対して30質量%とした。その他は実施例26と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの面方向熱伝導率を表9に示す。
[0185]
[表9]


[0186]
[実施例30]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤に、バインダーの濃度が16質量%となるようにポリアミド(帝人株式会社製「コーネックス(登録商標))を溶解させた。次いで、この溶液に、繊維状炭素(製造例1)と、フィラーとしてSiO (「トスパル120」(商品名)、東芝シリコン株式会社製、平均粒子径2μmの球状粒子)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素とフィラーとの合計量に対して20質量%とした。フィラーの配合量は、溶剤と繊維状炭素とフィラーとの合計量に対して5質量%とした。このスラリーを、PTFEフィルム上に流してドクターブレード法により、厚み0.3mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で3時間熱処理して縦200cm、横150cm、厚み0.12mmの放熱シートを得た。この放熱シートの面内方向(MD方向)の熱伝導率の値を表10に示す。
[0187]
[実施例31]
 繊維状炭素の配合量を5質量%に変更し、SiO の配合量を20質量%に変更した他は実施例30と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの熱伝導率を表10に示す。
[0188]
[実施例32]
 SiO に代えてAl 粉末(広島和光株式会社製、「試薬グレード」、平均粒子径5μm)を用いるとともに、その配合量を5質量%に変更した他は実施例30と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの熱伝導率を表10に示す。
[0189]
[実施例33]
 SiO に代えてAl 粉末を用いた他は実施例31と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの熱伝導率を表10に示す。
[0190]
[表10]


[0191]
[実施例34]
 溶剤としてN-メチル-2-ピロリドンを用い、この溶剤に、バインダーの濃度が6質量%となるようにポリアミド(帝人株式会社製「テクノーラ」(登録商標))を溶解させた。次いで、この溶液に、繊維状炭素(製造例1)と、フィラーとしてカーボンナノチューブ(CNano社製「FloTube9000」(商品名)、平均繊維径が11nmであり、平均繊維長が10μmである単繊維が凝集している集合物)を加えて混練し、スラリーを得た。繊維状炭素の配合量は、溶剤と繊維状炭素とフィラーとの合計量に対して30質量%とした。フィラーの配合量は、溶剤と繊維状炭素とフィラーとの合計量に対して10質量%とした。このスラリーを、耐熱性ガラス上に流してドクターブレード法により、厚み0.12mmに成形した。80℃で1時間熱処理後、更に150℃で3時間熱処理して縦200cm、横150cm、厚み0.05mmの放熱シートを得た。この放熱シートの面内方向及び厚み方向の熱伝導率の値を表11に示す。
[0192]
[実施例35]
 繊維状炭素の配合量を30質量%に変更し、CNTの配合量を30質量%に変更した他は実施例34と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの熱伝導率を表11に示す。
[0193]
[実施例36]
 繊維状炭素の配合量を30質量%に変更し、CNTの配合量を50質量%に変更した他は実施例34と同様して放熱シートを得た。得られた放熱シートの熱伝導率を表11に示す。
[0194]
[表11]


請求の範囲

[請求項1]
 繊維状炭素と、ポリマーと、を含有して成る放熱シートであって、
 前記繊維状炭素は、平均実効繊維長が5~120μm、平均繊維径が200~900nm、平均アスペクト比が30~10000であり、
 前記繊維状炭素の含有率が、前記繊維状炭素と前記ポリマーとの合計量に対して5~85質量%であることを特徴とする放熱シート。
[請求項2]
 前記放熱シートのX線回折法により求めた繊維状炭素の配向度が、
 前記放熱シートの面と平行方向であって、最も高い配向度を示す一方向の配向度Aが55~95%である請求項1に記載の放熱シート。
[請求項3]
 前記放熱シートの面と平行方向であって、最も高い配向度を示す一方向における熱伝導率Pが、前記放熱シートの厚み方向における熱伝導率Tの2~200倍である、請求項1又は2に記載の放熱シート。
[請求項4]
 平均粒子径が前記繊維状炭素の平均繊維径に対して1~150倍であるフィラー粒子を、放熱シートに対して5~45質量%さらに含有する請求項1に記載の放熱シート。
[請求項5]
 前記フィラー粒子が、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミ(AlN)、酸化ケイ素、ケイ素(シリコン)、金属粒子、チタニア、シリカ、及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも一種の無機物である請求項4に記載の放熱シート。
[請求項6]
 シートの面内方向における熱伝導率の最大値が、シートの厚み方向における熱伝導率の1.5~50倍である、請求項4又は5に記載の放熱シート。
[請求項7]
 シートの厚み方向における熱伝導率が、シートの面内方向における熱伝導率の最大値の1.0~100倍である、請求項1に記載の放熱シート。
[請求項8]
 シートの厚み方向に引き揃えられた炭素繊維を含有する炭素繊維成形体を含んで成る請求項7に記載の放熱シート。
[請求項9]
 平均繊維長が2~120μmであり、平均繊維径が0.4~50nmであるカーボンナノチューブを、放熱シートに対して1~60質量%さらに含有する請求項1~8の何れか1項に記載の放熱シート。
[請求項10]
 前記繊維状炭素がピッチ系炭素繊維である、請求項1~8の何れか1項に記載の放熱シート。
[請求項11]
 前記繊維状炭素が、X線回折法で測定した網平面群の厚さ(Lc)が1~200nmであって、結晶子長さ(La)が20~500nmの繊維状炭素である請求項1~8の何れか1項に記載の放熱シート。
[請求項12]
 厚みが0.01~1mmの範囲である、請求項1~10の何れか1項に記載の放熱シート。
[請求項13]
 前記ポリマーがポリアミドである、請求項1~11の何れか1項に記載の放熱シート。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]