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1. (WO2018043125) PRESENSITIZED PLATE AND PLATE-MAKING METHOD USING SAME
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明 細 書

発明の名称 平版印刷版原版及びそれを用いる製版方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009  

課題を解決するための手段

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021  

発明の効果

0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202  

実施例

0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224  

産業上の利用可能性

0225   0226  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17  

明 細 書

発明の名称 : 平版印刷版原版及びそれを用いる製版方法

技術分野

[0001]
 本発明は、平版印刷版原版及びそれを用いる製版方法に関する。特に、デジタル信号に基づいて各種レーザーによる画像記録及び機上現像が可能な平版印刷版原版及びそれを用いる製版方法に関する。

背景技術

[0002]
 平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
 従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層、画像形成層)を有する平版印刷版原版(PS版)を用い、この平版印刷版原版にリスフィルムなどのマスクを通した画像露光を行った後、アルカリ性現像液などによる現像処理を行い、画像部に対応する画像記録層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像記録層を溶解除去して平版印刷版を得ていた。
 平版印刷版原版から平版印刷版を作製する製版工程は、簡易化が進み、画像露光に関しては、現在、平版印刷版は、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術によって得られるようになっている。すなわち、レーザーやレーザーダイオードを用いて、リスフィルムを介することなく、平版印刷版原版を直接走査露光し、現像処理して平版印刷版が得られる。
[0003]
 近年、平版印刷版原版の製版工程において、平版印刷版原版の不要部分の除去を通常の印刷工程の中で行えるような画像記録層を用い、画像露光後、印刷機上で非画像部を除去して平版印刷版を得る機上現像と呼ばれる方法が提案されている。この方法によれば、画像情報をコンピュータによって電子的に処理し、蓄積し、出力するデジタル化技術に対応して、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させ、平版印刷版原版を走査露光するなどして画像露光した後、印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくともいずれかを用いて非画像部を除去して平版印刷版を得ることができる。従って、従来の印刷業界で必須の工程であった平版印刷版の現像処理工程を省くことができ、これにより製版作業を完全にドライな(液体を使用しない)環境下で行うことができ、作業面及び環境面での負荷を大幅に低減することが可能となる。
[0004]
 機上現像に好適な平版印刷版原版は、印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくともいずれかにより非画像部が除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版(以下、機上現像型平版印刷版原版ともいう)である。
 機上現像型平版印刷版原版としては、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物を含有するラジカル重合型の画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版(例えば、特許文献1)及び赤外線吸収剤、熱可塑性ポリマー粒子を含有する熱融着型の画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版(例えば、特許文献2)が知られている。
[0005]
 一般に、平版印刷版を印刷機に取り付ける前工程として、平版印刷版に目的通りの画像記録がされているか、平版印刷版上の画像を検査、識別する作業(検版)が行われる。現像処理行程を伴う通常の平版印刷版原版は、一般に画像記録層を着色しておけば現像処理により着色画像が得られるので、印刷機に印刷版を取り付ける前に画像を確認することは容易である。
[0006]
 ところが、現像処理を行わない機上現像型の平版印刷版原版では、平版印刷版原版を印刷機に取り付ける段階で平版印刷版原版上の画像を確認することが困難であり、検版を十分行うことができない。特に、多色印刷において見当合わせの目印となるトンボ(レジスタマーク)が描きこまれていることを判別できるか否かは印刷作業にとって重要である。このため、機上現像型平版印刷版原版では、画像露光した段階で画像を確認する手段、すなわち、露光部が発色又は消色する、いわゆるプリントアウト画像が形成されることが要求されている。
[0007]
 プリントアウト画像を形成する手段として、特許文献1には赤外線または熱によりプリントアウト画像を形成し得る特定構造の化合物を含有する発色組成物が記載され、この発色組成物は画像露光後に高濃度で発色し、かつ、経時による退色が少ないと記載されている。特許文献1に記載の平版印刷版原版の画像記録層は重合開始剤および重合性化合物を含有し、ラジカル重合により画像部が形成される。しかし、上記プリントアウト画像を形成し得る特定構造の化合物は、ラジカル重合を阻害する作用があり、画像部の硬化を抑制する傾向がある。即ち、特許文献1に記載の発色組成物は視認性(検版性)に優れるものの、耐刷性の点で問題を有する。
 特許文献2には、疎水性の熱可塑性重合体粒子が熱による融合または凝集により画像部を形成する機上現像型平版印刷版原版(熱融着型)の画像形成層に用いられる、特定構造のIR染料を含有する感熱性像形成要素が記載され、この特定構造のIR染料を含有する感熱性像形成要素は、画像露光により高いコントラストのプリントアウト像を形成可能と記載されている。しかし、このような特定構造のIR染料は、高いコントラストを達成させるためには、IR染料をコーティング中に高濃度で含有させるか、または、画像露光時に露光エネルギーを高める必要が生じる。IR染料を高濃度で含有させると、未露光部が印刷機上で湿し水または印刷インキで除去される際、IR染料によって湿し水または印刷インキが汚染され、その結果、印刷物の非画像部に汚れが発生する。一方、露光エネルギーを高めると、画像形成層の表面が脱離し飛散すること(アブレーション)で、露光機内部が汚染される。即ち、特許文献2に記載の感熱性像形成要素を用いる機上現像型平版印刷版原版は、視認性は改良されるものの、湿し水や印刷インキを汚染し、印刷物の非画像部に汚れが発生する問題、または、露光機内部を汚染するという問題がある。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : WO2016/027886
特許文献2 : 日本国特表2008-544322号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 本発明の1つの目的は、視認性に優れ、かつ、レーザー露光においてアブレーションが抑制され、機上現像において湿し水や印刷インキの汚染が抑制された熱融着型の平版印刷版原版を提供することである。
 本発明の他の目的は、上記平版印刷版原版を用いる製版方法を提供することである。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明の目的は、以下の平版印刷版原版及びそれを用いる製版方法により達成される。
[0011]
(1) 支持体と画像記録層を有する平版印刷版原版であって、上記画像記録層は赤外線レーザー露光によって画像形成可能であり、上記画像記録層の未露光部は印刷機上で湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であり、上記画像記録層が、(1)赤外線レーザー露光によって生じる色相変化がΔa/Δb≧0.6である発色系、及び、(2)熱可塑性ポリマー粒子を上記画像記録層の固形分の70質量%以上含有する平版印刷版原版。
(2) 上記熱可塑性ポリマー粒子を、上記画像記録層の固形分の80質量%以上含有する(1)に記載の平版印刷版原版。
(3) 上記熱可塑性ポリマー粒子を、上記画像記録層の固形分の90質量%以上含有する(1)に記載の平版印刷版原版。
(4) 上記発色系が、赤外線吸収染料からなる(1)~(3)のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
(5) 上記赤外線吸収染料が、下記式(1)で表される化合物である(4)に記載の平版印刷版原版。
[0012]
[化1]


[0013]
 式(1)中、R は熱又は赤外線露光によりR -O結合が開裂する基を表し、R 及びR はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R 及びR は互いに連結して環を形成してもよく、Ar 及びAr はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表し、Y 及びY はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR -又はジアルキルメチレン基を表し、R 及びR はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R ~R はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
(6) 上記赤外線吸収染料が、下記一般式(i)で表されるシアニン色素構造を有し、分子中に少なくとも一つの溶剤可溶性基を有する化合物である(4)に記載の平版印刷版原版。
[0014]
[化2]


[0015]
 一般式(i)中、X は、水素原子、ハロゲン原子、-NPh 、X -L 又は以下に示す基を表す。ここで、X は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を表し、L は、炭素原子数1~12の炭化水素基、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。以下に示す基において、X -は下記Z -と同義であり、R は、水素原子、又はアルキル基、アリール基、置換若しくは無置換のアミノ基及びハロゲン原子から選択される置換基を表す。
[0016]
[化3]


[0017]
 R 及びR は、それぞれ独立に、炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。R とR とは互いに結合して5員環又は6員環を形成してもよい。Ar 、Ar は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、芳香族炭化水素基を表す。Y 、Y は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12以下のジアルキルメチレン基を表す。R 、R は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数20以下の炭化水素基を表す。R 、R 、R 及びR は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12以下の炭化水素基を表す。Z -は、対アニオンを表す。ただし、一般式(i)で表されるシアニン色素構造を有する化合物が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ -は必要ない。
(7) 上記画像記録層が、更に、発色助剤を含む(4)~(6)のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
(8) 上記発色助剤が、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩である(7)に記載の平版印刷版原版。
(9) 上記発色助剤が、ボレート化合物である(7)に記載の平版印刷版原版。
(10) 上記発色系が、赤外線吸収染料と発色前駆体からなる(1)~(3)のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
(11) 上記赤外線吸収染料が、下記一般式(a)で表されるシアニン色素である(10)に記載の平版印刷版原版。
[0018]
[化4]


[0019]
 一般式(a)中、X は、水素原子、ハロゲン原子、-N(R )(R 10)、-X -L または以下に示す基を表す。ここで、R 及びR 10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1~8のアルキル基又は水素原子を表し、あるいは、R とR 10とが互いに結合して環を形成してもよい。X は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を表し、L は、炭素原子数1~12の炭化水素基、またはヘテロ原子を含む炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。以下に示す基において、Xa -は下記Za -と同義であり、R は、水素原子、又はアルキル基、アリール基、置換若しくは無置換のアミノ基及びハロゲン原子から選択される置換基を表す。
[0020]
[化5]


[0021]
 R 及びR は、それぞれ独立に、炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。R 及びR とは互いに結合して、5員環または6員環を形成してもよい。Ar 、Ar は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、芳香族炭化水素基を表す。Y 、Y は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12以下のジアルキルメチレン基を表す。R 、R は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数20以下の炭化水素基を表す。R 、R 、R およびR は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12以下の炭化水素基を表す。Za -は、対アニオンを表す。ただし、一般式(a)で表されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa -は必要ない。
(12) 上記発色前駆体が、酸発色剤である(10)又は(11)に記載の平版印刷版原版。
(13) 上記発色前駆体が、熱発色剤である(10)又は(11)に記載の平版印刷版原版。
(14) 上記画像記録層が、更に、酸発生剤を含む(12)に記載の平版印刷版原版。
(15) 上記酸発生剤が、ヨードニウム塩、スルホニウム塩又はアジニウム塩である(14)に記載の平版印刷版原版。
(16) (1)~(15)のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を、赤外線レーザーにより画像露光した後、印刷機上で湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより画像記録層の未露光部分を除去する製版方法。
(17) 上記赤外線レーザーにより画像露光を、面露光強度50~150mJ/cm で行う(16)に記載の製版方法。

発明の効果

[0022]
 本発明によれば、視認性に優れ、かつ、レーザー露光においてアブレーションが抑制され、機上現像において湿し水や印刷インキの汚染が抑制された熱融着型の平版印刷版原版が得られる。また、上記平版印刷版原版を用いる製版方法が得られる。

発明を実施するための形態

[0023]
 以下、本発明について詳細に説明する。
 本明細書において、「(メタ)アクリレート」の用語は「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」を意味する。「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリル樹脂」等も同様である。
[0024]
[平版印刷版原版]
 本発明の平版印刷版原版は、支持体と画像記録層を有し、上記画像記録層は赤外線レーザー露光によって画像形成可能であり、上記画像記録層の未露光部は印刷機上で湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であり、上記画像記録層が、(1)赤外線レーザー露光によって生じる色相変化がΔa/Δb≧0.6である発色系、及び、(2)熱可塑性ポリマー粒子を上記画像記録層の固形分の70質量%以上含有する平版印刷版原版である。
 本発明の平版印刷版原版は、赤外線レーザーによる画像露光後、印刷機上で湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかを供給して画像記録層の未露光部分を除去する機上現像により平版印刷版を作製することができる。
[0025]
[画像記録層]
 本発明の平版印刷版原版における画像記録層は、赤外線レーザー露光によって画像形成可能であり、また、画像記録層の未露光部は印刷機上で湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であるとの特性を有する。更に、画像記録層は、(1)赤外線レーザー露光によって生じる色相変化がΔa/Δb≧0.6である発色系、及び、(2)熱可塑性ポリマー粒子を上記画像記録層の固形分の70質量%以上含有する。画像記録層が含有する成分について、以下に説明する。
[0026]
〔(1)赤外線レーザー露光によって生じる色相変化がΔa/Δb≧0.6である発色系〕
 本発明の平版印刷版原版の画像記録層に含まれる(1)赤外線レーザー露光によって生じる色相変化がΔa/Δb≧0.6である発色系(以下、単に、特定発色系ともいう)は、平版印刷版原版の画像露光時における赤外線レーザー露光により生じる色相の変化を、Δa/Δbデ表される色相の変化値で表した場合、0.6以上となるような発色系である。
[0027]
 本発明に係る特定発色系は、赤外線レーザー露光によって生じる色相の変化値Δa/Δbが0.6以上であることが特徴である。ここで、Δa及びΔbは、以下に示すように、CIE 1976(L*,a*,b*)色空間におけるa及びbに対応し、赤外線レーザー露光による変化値を表す。
  Δa=|(未露光部のa*)-(露光部のa*)|
  Δb=|(未露光部のb*)-(露光部のb*)|
 また、Δa/Δbは、赤と緑との間における変化と黄と青との間における変化との割合を表す。
 一般的に未露光部と露光部の色差は、以下に示すように、2色の座標のユークリッド距離ΔEで表わされる。この関係式において、ΔaとΔbが色相変化に与える影響は同じと定義される。
  ΔE=[ΔL +Δa +Δb 1/2
 ところが、本発明者が実際に様々な発色系を用いて赤外線レーザー露光による色相変化に対する視認性への影響を検証したところ、ΔaとΔbの視認性への寄与率は約10:3の関係にあり、Δaの方がΔbよりも視認性を向上させる効果が大きいことが判明した。この事実に基づいて、本発明者が更に検討した結果、赤外線レーザー露光による色相変化を視認するためには、ΔaとΔbの比率であるΔa/Δbが0.6以上であればよいことを見出した。
 本発明においては、Δa/Δbの値が1.0以上であれば、視認性向上の観点で、より好ましい。
[0028]
 赤外線レーザー露光によって生じる色相の変化値Δa/Δbは以下の方法により算出することができる。
 平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、版面露光量150mJ/cm 、解像度2400dpiの条件で露光する。露光画像としては2cm角のベタ画像を使用する。
 露光後の平版印刷版原版の未露光部及び露光部の色相を、コニカミノルタ製分光測色計CM2600dとオペレーションソフトCM-S100WS100Wとを用い、SCE(正反射光除去)方式で測定する。測定によって得られたL*a*b*値に基づいて、以下に示す数式に従って換算し、Δa及びΔbを求め、色相の変化値Δa/Δbを算出する。
  ΔL = 未露光部L*値 - 露光部L*値
  Δa = |未露光部a*値 - 露光部a*値|
  Δb = |未露光部b*値 - 露光部b*値|
  但しΔaおよびΔbは絶対値
[0029]
 本発明に係る特定発色系は、赤外線レーザー露光によって生じる色相変化がΔa/Δb≧0.6である発色系であればよい。特定発色系の具体例としては、(A)赤外線吸収染料からなる発色系(以下、発色系Aともいう)と(B)赤外線吸収染料と発色前駆体とを併用する発色系(以下、発色系Bともいう)が挙げられる。
[0030]
〔発色系A〕
 発色系Aにおいては、赤外線吸収染料として熱及び/又は赤外線露光によって発色する化合物が用いられる。
[0031]
 発色系Aにおいて用いられる赤外線吸収染料としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
[0032]
[化6]


[0033]
 式(1)中、R は熱又は赤外線露光によりR -O結合が開裂する基を表し、R 及びR はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R 及びR は互いに連結して環を形成してもよく、Ar 及びAr はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表し、Y 及びY はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR -又はジアルキルメチレン基を表し、R 及びR はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R ~R はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
[0034]
<式(1)で表される化合物>
 式(1)で表される化合物は、熱又は赤外線の露光により分解し、発色性の分解物を生じる化合物である。
 本発明において、発色とは、加熱又は露光前よりも、加熱又は露光後に強く着色又は吸収が短波長化し可視光領域に吸収を有するようになることを示す。式(1)で表される化合物は、熱又は赤外線の露光により分解し、500~600nmに極大吸収波長を有する化合物を生成する化合物であることが好ましい。
 式(1)で表される化合物の発色機構は、熱又は赤外線の露光により、R -O結合が開裂することにより、下記に示すように、開裂した上記酸素原子がカルボニル基を形成し、発色体であるメロシアニン色素が生成し、発色するものと推定される。
 また、メロシアニン色素が生成するには、熱又は赤外線露光により結合が開裂するR とシアニン色素構造とが酸素原子を介して結合していることが重要であると推定される。
[0035]
[化7]


[0036]
 R は、熱又は赤外線露光によりR -O結合が開裂する基を表す。具体的には、外部から与えられた熱エネルギー、又は、式(1)で表される化合物が赤外線を吸収し、生じた励起状態から基底状態に戻る際に発生するエネルギー若しくは励起状態から進行する化学反応により、分解又は異性化反応が進行し、R -O結合が開裂する基が挙げられる。
 R の好ましい態様については、後述する。
[0037]
 R ~R 及びR におけるアルキル基は、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
 具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び、2-ノルボルニル基を挙げられる。
 これらアルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が特に好ましい。
[0038]
 また、上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
[0039]
 R におけるアリール基としては、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。
 また、上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
 具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トリル基、p-クロロフェニル基、p-フルオロフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、p-メチルチオフェニル基、p-フェニルチオフェニル基等が挙げられる。
 これらアリール基の中で、フェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、ナフチル基が好ましい。
[0040]
 R 及びR は、連結して環を形成していることが好ましい。
 R 及びR が連結して環を形成する場合、5員環又は6員環が好ましく、5員環が特に好ましい。
[0041]
 Y 及びY はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR -又はジアルキルメチレン基を表し、-NR -又はジアルキルメチレン基が好ましく、ジアルキルメチレン基がより好ましい。
 R は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基であることが好ましい。
[0042]
 R 及びR は、同じ基であることが好ましい。
 また、R 及びR はそれぞれ独立に、直鎖アルキル基又は末端にスルホネート基を有するアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基又は末端にスルホネート基を有するブチル基であることがより好ましい。
 また、上記スルホネート基の対カチオンは、式(1)中の第四級アンモニウム基であってもよいし、アルカリ金属カチオンやアルカリ土類金属カチオンであってもよい。
 更に、式(1)で表される化合物の水溶性を向上させる観点から、R 及びR はそれぞれ独立に、アニオン構造を有するアルキル基であることが好ましく、カルボキシレート基又はスルホネート基を有するアルキル基であることがより好ましく、末端にスルホネート基を有するアルキル基であることが更に好ましい。
 また、式(1)で表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、発色性及び平版印刷版における耐刷性の観点から、R 及びR はそれぞれ独立に、芳香環を有するアルキル基であることが好ましく、末端に芳香環を有するアルキル基であることがより好ましく、2-フェニルエチル基、2-ナフタレニルエチル基、2-(9-アントラセニル)エチル基であることが特に好ましい。
[0043]
 R ~R はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、水素原子であることが好ましい。
 Ar 及びAr はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。上記ベンゼン環及びナフタレン環上には、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基であることが好ましい。
 また、式(1)で表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、発色性及び平版印刷版における耐刷性の観点から、Ar 及びAr はそれぞれ独立に、ナフタレン環、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基を置換基として有したベンゼン環を形成する基であることが好ましく、ナフタレン環、又は、アルコキシ基を置換基として有したベンゼン環を形成する基であることがより好ましく、ナフタレン環、又は、メトキシ基を置換基として有したベンゼン環を形成する基であることが特に好ましい。
[0044]
 Zaは、電荷を中和する対イオンを表し、アニオン種を表す場合は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、ヘキサフルオロホスフェートイオンが特に好ましい。カチオン種を表す場合は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンが更に好ましい。
 R ~R 、R 、Ar 、Ar 、Y 及びY は、アニオン構造やカチオン構造を有していてもよく、R ~R 、R 、Ar 、Ar 、Y 及びY の全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンであるが、例えば、R ~R 、R 、Ar 、Ar 、Y 及びY に2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
[0045]
 発色性の観点から、R は、下記式1-1~式1-7のいずれかで表される基であることが好ましく、下記式1-1~式1-3のいずれかで表される基であることがより好ましい。
[0046]
[化8]


[0047]
 式1-1~式1-7中、・は、式(1)中の酸素原子との結合部位を表し、R 10はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、-OR 14、-NR 1516又は-SR 17を表し、R 11はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R 12はアリール基、-OR 14、-NR 1516、-SR 17、-C(=O)R 18、-OC(=O)R 18又はハロゲン原子を表し、R 13はアリール基、アルケニル基、アルコキシ基又はオニウム基を表し、R 14~R 17はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R 18はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、-OR 14、-NR 1516又は-SR 17を表し、Z は電荷を中和する対イオンを表す。
[0048]
 R 10、R 11及びR 14~R 18がアルキル基である場合の好ましい態様は、R ~R 及びR におけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
 R 10及びR 13におけるアルケニル基の炭素数は、1~30であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましい。
 R 10~R 18がアリール基である場合の好ましい態様は、R におけるアリール基の好ましい態様と同様である。
[0049]
 発色性の観点から、式1-1におけるR 10は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、-OR 14、-NR 1516又は-SR 17であることが好ましく、アルキル基、-OR 14、-NR 1516又は-SR 17であることがより好ましく、アルキル基又は-OR 14であることが更に好ましく、-OR 14であることが特に好ましい。
 また、式1-1におけるR 10がアルキル基である場合、上記アルキル基は、α位にアリールチオ基又はアルキルオキシカルボニル基を有するアルキル基であることが好ましい。
 式1-1におけるR 10が-OR 14である場合、R 14は、アルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基又はt-ブチル基であることが更に好ましく、t-ブチル基であることが特に好ましい。
[0050]
 発色性の観点から、式1-2におけるR 11は、水素原子であることが好ましい。
 また、発色性の観点から、式1-2におけるR 12は、-C(=O)OR 14、-OC(=O)OR 14又はハロゲン原子であることが好ましく、-C(=O)OR 14又は-OC(=O)OR 14であることがより好ましい。式1-2におけるR 12が-C(=O)OR 14又は-OC(=O)OR 14である場合、R 14は、アルキル基であることが好ましい。
[0051]
 発色性の観点から、式1-3におけるR 11はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、また、式1-3における少なくとも1つのR 11が、アルキル基であることがより好ましい。
 また、R 11におけるアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10のアルキル基であることがより好ましい。
 更に、R 11におけるアルキル基は、分岐を有するアルキル基であることが好ましく、第二級又は第三級アルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又は、t-ブチル基であることが更に好ましい。
 また、発色性の観点から、式1-3におけるR 13は、アリール基、アルコキシ基又はオニウム基であることが好ましく、p-ジメチルアミノフェニル基又はピリジニウム基であることがより好ましく、ピリジニウム基であることが更に好ましい。
 R 13におけるオニウム基としては、ピリジニウム基、アンモニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。オニウム基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基、アリール基及びこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
 中でも、ピリジニウム基が好ましく、N-アルキル-3-ピリジニウム基、N-ベンジル-3-ピリジニウム基、N-(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)-3-ピリジニウム基、N-アルコキシカルボニルメチル-3-ピリジニウム基、N-アルキル-4-ピリジニウム基、N-ベンジル-4-ピリジニウム基、N-(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)-4-ピリジニウム基、N-アルコキシカルボニルメチル-4-ピリジニウム基、又は、N-アルキル-3,5-ジメチル-4-ピリジニウム基がより好ましく、N-アルキル-3-ピリジニウム基、又は、N-アルキル-4-ピリジニウム基が更に好ましく、N-メチル-3-ピリジニウム基、N-オクチル-3-ピリジニウム基、N-メチル-4-ピリジニウム基、又は、N-オクチル-4-ピリジニウム基が特に好ましく、N-オクチル-3-ピリジニウム基、又は、N-オクチル-4-ピリジニウム基が最も好ましい。
 また、R 13がピリジニウム基である場合、対アニオンとしては、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、p-トルエンスルホネートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。
[0052]
 発色性の観点から、式1-4におけるR 10は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、2つのR 10のうち、一方がアルキル基、他方がアリール基であることがより好ましい。
 発色性の観点から、式1-5におけるR 10は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましく、p-メチルフェニル基であることが更に好ましい。
 発色性の観点から、式1-6におけるR 10はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、メチル基又はフェニル基であることがより好ましい。
 発色性の観点から、式1-7におけるZ は、電荷を中和する対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
 Z は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンであることが好ましく、p-トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンであることがより好ましい。
[0053]
 また、上記R が、式2で表される基であることが特に好ましい。
[0054]
[化9]


[0055]
 式2中、・は、式(1)中の酸素原子との結合部位を表し、R 19及びR 20はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、Za’は、電荷を中和する対イオンを表す。
[0056]
 式2におけるピリジニウム環とR 20を含む炭化水素基との結合位置は、ピリジニウム環の3位又は4位であることが好ましく、ピリジニウム環の4位であることがより好ましい。
 R 19及びR 20におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
 また、上記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルコキシ基、及び、末端アルコキシポリアルキレンオキシ基が好ましく挙げられる。
 R 19は、炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12の直鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8の直鎖アルキル基であることが更に好ましく、メチル基又はn-オクチル基であることが特に好ましい。
 R 20は、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~8の分岐アルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基又はt-ブチル基であることが更に好ましく、イソプロピル基であることが特に好ましい。
 Za’は、電荷を中和する対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
 Za’は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンであることが好ましく、p-トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンであることがより好ましい。
[0057]
 以下にR の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。下記の具体例において、TsO は、トシレートアニオンを表す。
[0058]
[化10]


[0059]
[化11]


[0060]
[化12]


[0061]
[化13]


[0062]
[化14]


[0063]
[化15]


[0064]
[化16]


[0065]
[化17]


[0066]
[化18]


[0067]
 以下に式(1)で表される化合物の好ましい具体例として、特定化合物1~45を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。下記の具体例において、TsO は、トシレートアニオンを表す。
[0068]
[化19]


[0069]
[化20]


[0070]
[化21]


[0071]
[化22]


[0072]
[化23]


[0073]
[化24]


[0074]
[化25]


[0075]
[化26]


[0076]
[化27]


[0077]
[化28]


[0078]
[化29]


[0079]
[化30]


[0080]
 発色系Aにおいて用いられる赤外線吸収染料としては、下記一般式(i)で表されるシアニン色素構造を有し、分子中に少なくとも一つの溶剤可溶性基を有する化合物も好ましい。
 上記化合物おける溶剤可溶性基とは、シアニン色素の溶剤溶解性を向上させることができる有機官能基であり、好ましくは、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、エーテル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニルアミド基、カルボキシル基、スルホニル酸基、ヒドロキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アミド基などが挙げられる。より好ましい溶剤可溶性基としては、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、エーテル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基が挙げられ、特に好ましい溶剤可溶性基として、エーテル基が挙げられる。
 溶剤可溶性基は、一般式(i)で表されるシアニン色素構造のいずれの位置に導入されていてもよいが、Ar 、Ar で表される芳香族炭化水素基、両末端の窒素原子、X が-NPh を表す場合のPh(芳香環(フェニル基))などに導入されていることが好ましい。機上現像性向上の観点からは、両末端の窒素原子上に溶剤溶解性基が導入されるものが特に好ましい。導入される溶剤溶解性基の数は少なくとも1つであるが、高濃度状態で画像記録層をムラ無く塗布することができ、且つ、画像記録層中の成分に起因する機上現像時におけるカスの発生抑制や機上現像性の向上という観点からは、シアニン色素一分子中に2~6個導入されていることが好ましい。
[0081]
[化31]


[0082]
 一般式(i)中、X は、水素原子、ハロゲン原子、-NPh 、X -L 又は以下に示す基を表す。ここで、X は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を表し、L は、炭素原子数1~12の炭化水素基、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを表す。以下に示す基において、X -は後述するZ -と同義であり、R は、水素原子、又はアルキル基、アリール基、置換若しくは無置換のアミノ基及びハロゲン原子から選択される置換基を表す。視認性向上の観点から、X は、-NPh であることが好ましい。
[0083]
[化32]


[0084]
 一般式(i)中、R 及びR は、それぞれ独立に、炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R 及びR は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、R とR とは互いに結合して5員環又は6員環を形成していることも好ましい。視認性向上の観点から、5員環を形成していることが特に好ましい。
[0085]
 一般式(i)中、Ar 、Ar は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、芳香族炭化水素基を表す。芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12以下のアルコキシ基が挙げられる。視認性向上の観点から、電子供与性基であることが好ましく、具体的には炭素原子数12以下のアルコキシ基、炭素原子数12以下のアルキル基であることがより好ましい。Y 、Y は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12以下のジアルキルメチレン基を表す。R 、R は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数20以下の炭化水素基を表す。炭素原子数20以下の炭化水素基は置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素原子数12以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R 、R 、R 及びR は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12以下の炭化水素基を表す。原料の入手容易性から、好ましくは水素原子である。また、Z -は、対アニオンを表す。ただし、一般式(i)で表されるシアニン色素構造を有する化合物が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ -は必要ない。好ましいZ -は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又はスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、又はアリールスルホン酸イオンである。視認性向上の観点からは、Z -は無機アニオンあるいは強酸のカウンターアニオンであることが好ましい。このような観点からは、PF -、BF -、CF SO -、C SO -が好ましく、PF -が特に好ましい。
[0086]
 一般式(i)で表されるシアニン色素構造を有し、分子中に少なくとも一つの溶剤可溶性基を有する化合物の具体例としては、下記の化合物(IR-1)~(IR-32)が挙げられる。下記具体例において、Acはアセチル基を表す。
[0087]
[化33]


[0088]
[化34]


[0089]
[化35]


[0090]
[化36]


[0091]
[化37]


[0092]
[化38]


[0093]
[化39]


[0094]
[化40]


[0095]
[化41]


[0096]
 発色系Aにおいて用いられる赤外線吸収染料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 発色系Aにおいて用いられる赤外線吸収染料の含有量は1~100mg/m が好ましく、5~75mg/m がより好ましく、10~60mg/m が更に好ましい。
[0097]
 発色系Aにおいて、赤外線吸収染料の発色効率を高める目的で、発色助剤を併用しても良い。発色助剤としては、赤外線吸収染料が熱及び/又は赤外線露光により励起した後、赤外線吸収染料から電子を受取ることで発色体形成を助長させる電子アクセプター性の発色助剤と、赤外線吸収染料が熱及び/又は赤外線露光により励起した後、赤外線吸収染料へ電子を受け渡すことで発色体形成を助長させる電子ドナー性の発色助剤が挙げられる。ただし、どちらの場合も発色助剤自体は発色しない。詳細な発色機構は明らかではないが、電子アクセプター性の発色助剤及び/又は電子ドナー性の発色助剤を併用することで発色体の吸収スペクトルが変化し、赤外線レーザー露光による色相変化を助長する結果が得られる。
[0098]
 電子アクセプター性の発色助剤の具体例としてはオニウム塩化合物が好ましく挙げられ、ヨードニウム塩やスルホニウム塩が特に好ましい。
[0099]
 ヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
[0100]
 スルホニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩が好ましく、特に電子求引性基、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
[0101]
 電子ドナー性の発色助剤の具体例としては、ボレート化合物が好ましく挙げられる。
[0102]
 ボレート化合物としては、下記化合物が好ましく挙げられる。下記化合物において、X は、一価のカチオンを表し、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。また、Buは、n-ブチル基を表す。
[0103]
[化42]


[0104]
[化43]


[0105]
[化44]


[0106]
[化45]


[0107]
 発色助剤の含有量は、0.001~0.3g/m が好ましく、0.005~0.25g/m がより好ましく、0.01~0.2g/m が特に好ましい。
[0108]
〔発色系B〕
 発色系Bにおいては、赤外線吸収染料と発色前駆体とが併用される。
 発色系Bにおいて用いられる赤外線吸収染料としては、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述の発色前駆体又は酸発生剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。赤外線吸収染料は、好適には、波長760~1200nmに吸収極大を有する染料である。
[0109]
 赤外線吸収染料としては、特開2008-195018号公報の段落番号[0059]~[0071]及び[0077]~[0086]に記載されている染料を用いることができる。
 好ましい赤外線吸収染料としては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。特に好ましい赤外線吸収染料の例として、下記一般式(a)で表されるシアニン色素が挙げられる。
[0110]
[化46]


[0111]
 一般式(a)中、X は、水素原子、ハロゲン原子、-N(R )(R 10)、-X -L または以下に示す基を表す。ここで、R 及びR 10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1~8のアルキル基又は水素原子を表し、あるいは、R とR 10とが互いに結合して環を形成してもよい。炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基又は炭素原子数1~8のアルキル基は置換基を有していてもよい。なかでもフェニル基が好ましい。X は酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、L は、炭素原子数1~12の炭化水素基、またはヘテロ原子を含む炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを表す。以下に示す基において、Xa -は後述するZa -と同義であり、R は、水素原子、又はアルキル基、アリール基、置換若しくは無置換のアミノ基及びハロゲン原子から選択される置換基を表す。
[0112]
[化47]


[0113]
 一般式(a)中、R 及びR は、それぞれ独立に、炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R 及びR は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R 及びR とは互いに結合して、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
[0114]
 一般式(a)中、Ar 、Ar は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、芳香族炭化水素基を表す。芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環基及びナフタレン環基が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12以下のアルコキシ基が挙げられる。Y 、Y は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12以下のジアルキルメチレン基を表す。R 、R は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数20以下の炭化水素基を表す。炭素原子数20以下の炭化水素基は置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素原子数12以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R 、R 、R およびR は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12以下の炭化水素基を表す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za -は、対アニオンを表す。ただし、一般式(a)で表されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa -は必要ない。好ましいZa -は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又はスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、又はアリールスルホン酸イオンである。
[0115]
 一般式(a)で表されるシアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落番号[0017]~[0019]、特開2002-023360号公報の段落番号[0012]~[0021]、特開2002-040638号公報の段落番号[0012]~[0037]に記載されたものを挙げることができる。
[0116]
 発色系Bにおける赤外線吸収染料としては、上記発色系Aにおいて記載した赤外線吸収染料を用いることもできる。
[0117]
 発色系Bにおいて用いられる赤外線吸収染料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 発色系Bにおいて用いられる赤外線吸収染料の含有量は1~100mg/m が好ましく、5~75mg/m がより好ましく、10~60mg/m が更に好ましい。
[0118]
 発色系Bにおいて用いられる発色前駆体としては、酸発色剤及び熱発色剤が挙げられる。酸発色剤を用いる場合には、赤外線吸収染料からの電子移動及び/又はエネルギー移動によって酸を放出可能な酸発生剤を併用することにより、発生した酸の作用によって発色前駆体が発色する。熱発色剤を用いる場合には、赤外線吸収染料が光熱変換剤として作用することにより発生した熱により発色前駆体が発色する。
[0119]
 発色系Bにおいて発色前駆体として用いられる酸発色剤としては、酸の作用によって発色(無色から有色の変化)を起こす化合物であればいずれも好適に使用することができる。このような化合物の例としては、トリアリールメタン化合物、ビスフェニルメタン化合物、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロピラン化合物、及び特開2001-277730号公報記載の化合物が挙げられる。なかでも、トリアリールメタン化合物、キサンテン化合物、フルオラン化合物、スピロピラン化合物、特開2001-277730号公報記載の化合物が特に好ましい。好適な酸発色剤の具体例を以下に記載する。
[0120]
[化48]


[0121]
[化49]


[0122]
[化50]


[0123]
[化51]


[0124]
[化52]


[0125]
[化53]


[0126]
 発色系Bにおいて発色前駆体として用いられる熱発色剤としては、熱の作用によって発色(無色から有色の変化)を起こす化合物であればいずれも好適に使用できる。このような色素の例としては、スピロピラン化合物、アントロン化合物のような縮合芳香環置換エチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、コレステリック液晶などの液晶、電子供与体と電子受容体の有極性化合物中の熱平衡による電子授受機構にもとづくサーモクロミック材料であるメタモカラー(登録商標、パイロットインキ(株)製)等が挙げられる。好適な熱発色剤の具体例を以下に記載する。
[0127]
[化54]


[0128]
[化55]


[0129]
 発色前駆体の含有量は、0.001~0.3g/m が好ましく、0.005~0.25g/m がより好ましく、0.01~0.2g/m が特に好ましい。
[0130]
 発色系Bにおいて、発色前駆体として酸発色剤を用いる場合に併用する酸発生剤は、光励起した赤外吸収染料からの電子移動及び/又はエネルギー移動により酸を発生する化合物である。発生した酸が酸発色剤と反応して発色する。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸等の強酸であることが発色効果の観点から好ましい。
[0131]
 酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アジニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、米国特許第4,708,925号明細書、特開平7-20629号公報、特開2008-195018号公報に記載されている化合物を挙げることができる。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号の明細書に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2-100054号、特開平2-100055号および特開平9-197671号の各公報に記載されている活性スルホン酸エステル、特開2008-001740号公報に記載のN-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステルなどのイミドエステルや特開昭61-166544号、特開2003-328465号公報等に記載のジスルホン化合物類も好ましい。また、J.C.S. Perkin II (1979 )1653-1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202-232、特開2000-66385号公報、特開2000-80068号公報、特開2008-195018号公報に記載のオキシムエステル化合物も好ましい。他にも、特開平7-271029号に記載されているハロアルキル置換されたs-トリアジン化合物も好ましい。
[0132]
 酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩が特に好ましい。
[0133]
 ヨードニウム塩及びスルホニウム塩については、上述の電子アクセプター性の発色助剤におけるヨードニウム塩及びスルホニウム塩の記載を援用することができる。
[0134]
 アジニウム塩の例としては、1-シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-シクロヘキシルオキシ-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-エトキシ-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-クロロ-1-シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-エトキシ-4-シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4-ジクロロ-1-(2-エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-ベンジルオキシ-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-フェネチルオキシ-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=p-トルエンスルホナート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=ブロミド、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
[0135]
 酸発生剤の含有量は、0.001~0.3g/m が好ましく、0.005~0.25g/m がより好ましく、0.01~0.2g/m が特に好ましい。
[0136]
〔(2)熱可塑性ポリマー粒子〕
 本発明の平版印刷版原版の画像記録層に含まれる熱可塑性ポリマー粒子(以下、熱可塑性微粒子ポリマーともいう)はそのガラス転移温度(Tg)が60℃~250℃であることが好ましい。熱可塑性微粒子ポリマーのTgは、70℃~140℃がより好ましく、80℃~120℃が更に好ましい。
 Tgが60℃以上の熱可塑性微粒子ポリマーとしては、例えば、1992年1月のReseach Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及びEP931647号公報などに記載の熱可塑性微粒子ポリマーを好適なものとして挙げることができる。
 具体的には、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーから構成されるホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物などを例示することができる。好ましいものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。
[0137]
 熱可塑性微粒子ポリマーの平均粒径は、好ましくは0.005~2.0μmである。平均粒径が大き過ぎると解像度が悪くなることがあり、また小さ過ぎると経時安定性が悪くなることがある。この値は熱可塑性微粒子ポリマーを2種以上混ぜた場合の平均粒径としても適用される。平均粒径は、より好ましくは0.01~1.5μm、特に好ましくは0.05μm~1.0μmである。熱可塑性微粒子ポリマーを2種以上混ぜた場合の多分散性は0.2以上であることが好ましい。平均粒径及び多分散性はレーザー光散乱により算出される。
[0138]
 熱可塑性微粒子ポリマーは2種類以上を混合して用いてもよい。具体的には、粒子サイズの異なる少なくとも2種類の使用又はTgの異なる少なくとも2種類の使用が挙げられる。2種類以上を混合使用により、画像部の皮膜硬化性が更に向上し、平版印刷版とした場合に耐刷性が一層向上する。
 例えば、熱可塑性微粒子ポリマーとして粒子サイズが同じものを用いた場合には、熱可塑性微粒子ポリマー間にある程度の空隙が存在することになり、画像露光により熱可塑性微粒子ポリマーを溶融固化させても皮膜の硬化性が所望のものにならないことがある。これに対して、熱可塑性微粒子ポリマーとして粒子サイズが異なるものを用いた場合、熱可塑性微粒子ポリマー間にある空隙率を低くすることができ、その結果、画像露光後の画像部の皮膜硬化性を向上させることができる。
[0139]
 また、熱可塑性微粒子ポリマーとしてTgが同じものを用いた場合には、画像露光による画像記録層の温度上昇が不十分なとき、熱可塑性微粒子ポリマーが十分に溶融固化せず皮膜の硬化性が所望のものにならないことがある。これに対して、熱可塑性微粒子ポリマーとしてTgが異なるものを用いた場合、画像露光による画像記録層の温度上昇が不十分なときでも画像部の皮膜硬化性を向上させることができる。
[0140]
 Tgが異なる熱可塑性微粒子ポリマーを2種以上混ぜて用いる場合、熱可塑性微粒子ポリマーの少なくとも1種類のTgは60℃以上であることが好ましい。この際、Tgの差が10℃以上あることが好ましく、更に好ましくは20℃以上である。また、Tgが60℃以上の熱可塑性微粒子ポリマーを全熱可塑性微粒子ポリマーに対して70質量%以上含有することは、機上現像性及び耐刷性の点で好ましい。
[0141]
 熱可塑性微粒子ポリマーは架橋性基を有していてもよい。架橋性基を有する熱可塑性微粒子ポリマーを用いることにより、画像露光部に発生する熱によって架橋性基が熱反応してポリマー間に架橋が形成され、画像部の皮膜強度が増加し、耐刷性がより優れたものになる。架橋性基としては化学結合が形成されるならばどのような反応を行う官能基でもよく、例えば、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、付加反応を行うイソシアナート基あるいはそのブロック体及びその反応相手である活性水素原子を有する基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基など)、同じく付加反応を行うエポキシ基及びその反応相手であるアミノ基、カルボキシル基あるいはヒドロキシ基、縮合反応を行うカルボキシル基とヒドロキシ基あるいはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基あるいはヒドロキシ基などを挙げることができる。
[0142]
 架橋性基を有する熱可塑性微粒子ポリマーとしては、具体的には、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、酸無水物及びそれらを保護した基などの架橋性基を有するものを挙げることができる。これら架橋性基のポリマーへの導入は、微粒子ポリマーの重合時に行ってもよいし、微粒子ポリマーの重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
[0143]
 微粒子ポリマーの重合時に架橋性基を導入する場合は、架橋性基を有するモノマーを乳化重合あるいは懸濁重合することが好ましい。架橋性基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2-イソシアネートエチルメタクリレートあるいはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2-イソシアネートエチルアクリレートあるいはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2-アミノエチルメタクリレート、2-アミノエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどを挙げることができる。
 架橋性基の導入を微粒子ポリマーの重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、WO96/34316号に記載されている高分子反応を挙げることができる。
 熱可塑性微粒子ポリマーは、架橋性基を介して微粒子ポリマー同士が反応してもよいし、画像記録層に添加された高分子化合物あるいは低分子化合物と反応してもよい。
[0144]
 熱可塑性微粒子ポリマーの含有量は、画像記録層の固形分の70質量%以上であるが、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。熱可塑性微粒子ポリマーの含有量の上限は、好ましくは、99質量%である。
[0145]
 画像記録層は、上記赤外線レーザー露光によって生じる色相変化がΔa/Δb≧0.6である発色系及び熱可塑性ポリマー粒子以外に、以下に記載するような成分を含有することができる。
[0146]
 画像記録層は、親水性樹脂を含有することができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシル基、カルボキシラト基、スルホ基、スルホナト基、リン酸基などの親水基を有する樹脂が好ましい。
[0147]
 親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル-マレイン酸コポリマー類、スチレン-マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、N-メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
[0148]
 親水性樹脂の分子量は2000以上であることが好ましい。2000未満では、十分な皮膜強度や耐刷性が得られず、好ましくない。
[0149]
 親水性樹脂の含有量は、画像記録層固形分の0.5~30質量%が好ましく、0.7~20質量%がより好ましい。
[0150]
 画像記録層には無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物などが好適な例として挙げられる。無機微粒子は、皮膜の強化及び表面粗面化による搬送、加工などの際の傷の防止や積載時の荷崩れ防止に有用である。
[0151]
 無機微粒子の平均粒径は5nm~10μmが好ましく、10nm~1μmがより好ましい。この範囲で、熱可塑性微粒子ポリマーとも安定に分散され、画像記録層の膜強度を充分に保持し、印刷汚れを生じにくい親水性に優れた非画像部を形成できる。
[0152]
 無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物などの市販品として容易に入手できる。
 無機微粒子の含有量は、画像記録層固形分の1.0~70質量%が好ましく、5.0~50質量%がより好ましい。
[0153]
 画像記録層には、必要に応じて、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。
[0154]
 画像記録層において、熱反応性官能基(架橋性基)を有する微粒子ポリマーを用いる場合は、必要に応じて、熱反応性官能基(架橋性基)の反応を開始又は促進する化合物を添加することができる。熱反応性官能基の反応を開始又は促進する化合物としては、熱によりラジカル又はカチオンを発生するような化合物を挙げることができる。例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩、ジフェニルヨードニウム塩などを含むオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートなどが挙げられる。このような化合物の添加量は、画像記録層固形分の0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、0.8~20質量%が特に好ましい。この範囲で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
[0155]
 画像記録層は、画像記録層の塗布の均一性を確保する目的で、アニオン界面活性剤を含有してもよい。
 アニオン界面活性剤は、上記目的を達成する限り、特に制限されない。中でも、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルキルナフタレンスルホン酸又はその塩、(ジ)アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸又はその塩、アルキル硫酸エステル塩が好ましい。
 アニオン界面活性剤の添加量は、画像記録層固形分の0.1~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、画像記録層の強度と非画像部の現像性を両立する観点からは、0.1~10質量%が特に好ましい。
[0156]
〔画像記録層の形成〕
 画像記録層は、必要な上記各成分を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製し、支持体に塗布して形成される。溶剤としては、水又は水と有機溶剤との混合溶剤が用いられるが、水と有機溶剤の混合使用が、塗布後の面状を良好にする点で好ましい。有機溶剤の量は、有機溶剤の種類によって異なるので、一概に特定できないが、通常混合溶剤中5~50体積%が好ましい。但し、有機溶剤は熱可塑性微粒子ポリマーが凝集しない範囲の量で使用する必要がある。画像記録層用塗布液の固形分濃度は、好ましくは1~50質量%である。
[0157]
 塗布液の溶剤として用いられる有機溶剤は、水に可溶な有機溶剤が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのアルコール溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン溶剤、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル溶剤、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。特に、沸点が120℃以下であって、水に対する溶解度(水100gに対する溶解量)が10g以上の有機溶剤が好ましく、20g以上の有機溶剤がよりに好ましい。
[0158]
 画像記録層用塗布液の塗布方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的には0.3~5.0g/m が好ましく、0.3~3.0g/m がより好ましい。
[0159]
〔支持体〕
 本発明の平版印刷版原版に用いる支持体は、親水性表面を有する基板又は親水層の塗布などによって親水性表面を付与された基板である。具体的には、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記金属がラミネート又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム、又はこれら基板に親水層を塗布された基板が挙げられる。好ましい支持体としては、アルミニウム板及び親水層を塗布されたポリエステルフィルムが挙げられる。
[0160]
 アルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分として微量の異元素を含む合金板を含み、更に、アルミニウム又はアルミニウム合金の薄板にプラスチックがラミネートされた板でもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10%以下である。また、DC鋳造法を用いたアルミニウム鋳塊からのアルミニウム板でも、連続鋳造法による鋳塊からのアルミニウム板であってもよい。アルミニウム板には、従来公知公用の素材、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005等も適宜利用することができる。
[0161]
 上記基板の厚みは通常0.05~0.6mm、好ましくは0.1~0.4mm、特に好ましくは0.15~0.3mmである。
[0162]
 一般に、平版印刷版原版用アルミニウム板は、アルミニウム板に付着している圧延油を除く脱脂工程、アルミニウム板の表面のスマットを溶解、除去するデスマット処理工程、アルミニウム板の表面を粗面化する粗面化処理工程を経て製造される。
[0163]
 具体的には、アルミニウム板は、強固な汚れや自然酸化皮膜を除去等のため、苛性ソーダなどのアルカリ水溶液を用いて溶解処理が行われ、処理後の残留アルカリ成分を中和するため、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸等の酸又はそれらの混酸に浸漬する中和処理が行われる。必要により、上記アルミニウム板表面の油脂、錆、ゴミ等を除去するため、トリクレン、シンナー等による溶剤脱脂処理、ケロシン、トリエタノール等のエマルジョンを用いてエマルジョン脱脂処理を行ってもよい。
[0164]
 アルカリ水溶液を用いた溶解処理及び酸による中和処理の次に、後述の電気化学的粗面化処理を行う場合は、中和処理に使用する酸の種類及び組成を、電気化学的粗面化処理に使用する酸の種類及び組成に合わせることが好ましい。
[0165]
 アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われる。例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法、化学的に表面を選択溶解させる方法、及びこれらの方法の組み合わせを挙げることができる。
[0166]
 機械的粗面化方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。化学的粗面化方法としては、特開昭54-31187号に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適している。電気化学的粗面化法としては、塩酸又は硝酸等の酸を含む電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54-63902号に開示されているように混酸を用いた電解化学的粗面化方法も利用することができる。
[0167]
 粗面化は、アルミニウム板表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2~1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
[0168]
 粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理が施され、更に中和処理が施される。
[0169]
 本発明では、上記のように粗面化処理及び必要に応じて他の処理を施されたアルミニウム板に親水膜を設けることが好ましい。特に、密度が1000~3200kg/m である親水膜を設けた支持体は、皮膜強度や印刷での汚れにくさが良好である他、画像記録層で発生した熱が支持体に放散されるのを防ぐ断熱性が良好であるため好適である。
[0170]
 上記密度の測定は、例えば、メイソン法(クロム酸/リン酸混合液によって親水膜を溶解して親水膜の質量を求める)による親水層の質量と断面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察して求めた親水膜の膜厚から、以下の式で算出することができる。
[0171]
 密度(kg/m )=(単位面積当たりの親水膜質量)/膜厚
[0172]
 親水膜密度が1000kg/m 未満では皮膜強度が低くなり、画像形成性や耐刷性などに悪影響を及ぼす可能性があり、また、印刷での汚れにくさも劣化する可能性がある。親水膜密度が3200kg/m を越えると充分な断熱性が得られず、感度向上効果が低下する可能性がある。
[0173]
 親水膜を設ける方法としては、特に制限されず、陽極酸化法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、拡散法等を適宜用いることができる。また、親水性樹脂又はゾルゲル液に中空粒子を混合した溶液を塗布する方法を用いることもできる。
[0174]
 特に、陽極酸化法により酸化物皮膜を作製する処理、即ち、陽極酸化処理を用いることが特に好適である。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等の単独の又は2種以上を組み合わせた水溶液又は非水溶液の中で、アルミニウム板に直流又は交流を流すと、アルミニウム板の表面に、親水性皮膜である陽極酸化皮膜を形成することができる。
[0175]
 陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1~80%、液温5~70℃、電流密度0.5~60A/dm 、電圧1~200V、電解時間1~1000秒が適当である。
[0176]
 陽極酸化処理の中でも、英国特許第1,412,768号に記載の硫酸電解液中高電流密度で陽極酸化処理する方法、米国特許第3,511,661号に記載のリン酸を電解浴として陽極酸化処理する方法などが好ましい。また、硫酸中で陽極酸化処理し、更にリン酸中で陽極酸化処理するなどの多段陽極酸化処理を施すこともできる。
[0177]
 本発明においては、陽極酸化皮膜の量は、非画像部が傷付いて汚れを生じるのを有効に防ぐ観点から、1.5g/m 以上であるのが好ましい。
[0178]
 支持体は、上記のような粗面化処理され陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性等の一層の改良のため、必要に応じて、特開2001-253181号や特開2001-322365号に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理等を適宜選択して行うことができる。
[0179]
 表面親水化処理のための好適な親水性化合物としては、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基をもつ化合物、糖類化合物、クエン酸、アルカリ金属珪酸塩、フッ化ジルコニウムカリウム、リン酸塩/無機フッ素化合物等を挙げることができる。
[0180]
〔下塗り層〕
 本発明の平版印刷版原版は、支持体と画像記録層との間に、必要により、下塗り層を有していてもよい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず機上現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ作用を有する。
[0181]
 下塗り層に用いる化合物としては、具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が挙げられる。好ましいものとして、特開2005-125749号公報及び特開2006-188038号公報に記載のごとき、支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、及び架橋性基を有する高分子化合物が挙げられる。このような高分子化合物としては、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーの共重合体であることが好ましい。より具体的には、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO 、-OPO 、-CONHSO -、-SO NHSO -、-COCH COCH などの吸着性基を有するモノマーと、スルホ基などの親水性基を有するモノマーと、更にメタクリル基、アリル基などの重合性の架橋性基を有するモノマーとの共重合体が挙げられる。高分子化合物は、高分子化合物の極性置換基と、対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよい。また、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
[0182]
 下塗り層用高分子化合物中の不飽和二重結合の含有量は、高分子化合物1g当たり、好ましくは0.1~10.0mmol、より好ましくは2.0~5.5mmolである。
 下塗り層用高分子化合物は、質量平均分子量が5,000以上であるのが好ましく、10,000~300,000であるのがより好ましい。
[0183]
 下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時における汚れ防止のため、キレート剤、第2級又は第3級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物など(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)を含有することができる。
[0184]
 下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1~100mg/m が好ましく、1~30mg/m がより好ましい。
[0185]
〔オーバーコート層〕
 本発明の平版印刷版原版は、保存時の親油性物質による汚染や取り扱い時の手指の接触による指紋跡汚染等から親水性の画像記録層表面を保護するため、画像記録層上に親水性のオーバーコート層を設けることができる。
[0186]
 オーバーコート層は印刷機上で容易に除去できるものであり、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有する。
[0187]
 水溶性樹脂は、水溶性の天然高分子及び合成高分子から選ばれ、水溶性樹脂単独若しくは架橋剤と共に用いて、塗布乾燥後の皮膜がフィルム形成能を有するものである。
[0188]
 好ましく用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解度65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ-2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリ-2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩等を挙げることができる。目的に応じて、水溶性樹脂を二種以上混合して用いることもできる。
[0189]
 水溶性樹脂の少なくとも1種以上を部分架橋して、画像記録層上にオーバーコート層を形成する場合、架橋は、水溶性樹脂の有する反応性官能基を用いて架橋反応することにより行われる。架橋反応は、共有結合性の架橋であってもイオン結合性の架橋であってもよい。
[0190]
 架橋により、オーバーコート層表面の粘着性が低下して平版印刷版原板の取り扱い性がよくなるが、架橋が進み過ぎるとオーバーコート層が親油性に変化して、印刷機上でのオーバーコート層の除去が困難になるので、適度な部分架橋が好ましい。好ましい部分架橋の程度は、25℃の水中に平版印刷版原板を浸したときに、30秒~10分間はオーバーコート層が溶出せず残存しているが、10分以上では溶出が認められる程度である。
[0191]
 架橋反応に用いられる化合物(架橋剤)としては、架橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられ、具体的には、ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリイソシアナート化合物、ポリアルコキシシリル化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジン等が挙げられる。
[0192]
 架橋剤は単独又は2種以上を混合して使用することができる。特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性の架橋剤は分散剤によって水に分散して使用することができる。
[0193]
 好ましい水溶性樹脂と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有水溶性樹脂/多価金属化合物、カルボン酸含有水溶性樹脂/水溶性エポキシ樹脂、水酸基含有樹脂/ジアルデヒド類が挙げられる。
[0194]
 架橋剤の好適な添加量は、水溶性樹脂の2~10質量%である。この範囲で印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、親油性物質による画像記録層の汚染を防止できる。
[0195]
 オーバーコート層には、感度を向上させるため水溶性の赤外線吸収剤を含有させることができる。上記の画像記録層に用いられる赤外線吸収染料が好適に用いられる。
[0196]
 オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン界面活性剤を添加することができる。非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等が挙げられる。非イオン界面活性剤の添加量は、オーバーコート層固形物中0.05~5質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。
[0197]
 オーバーコート層の厚みは、水溶性樹脂が架橋されていない場合は、好ましくは0.1~4.0μm、より好ましくは0.1~1.0μmであり、水溶性樹脂が部分架橋されている場合は、好ましくは0.1~0.5μm、より好ましくは0.1~0.3μmである。この範囲で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、親油性物質による画像記録層の汚染を防止できる。
[0198]
[製版方法]
 本発明の平版印刷版原版を用いる製版方法について、以下に説明する。本発明の平版印刷版原版の製版は、平版印刷版原版を画像露光する工程と、露光後の平版印刷用原版を機上現像する工程を含む。
 画像露光は、例えば、赤外線レーザーによる走査露光、赤外線ランプ露光などにより行われるが、波長700~1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー、YAGレーザー等の固体高出力赤外線レーザーによる露光が好適である。
[0199]
 本発明の平版印刷版原版は、レーザー、パルスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー用いて露光することが好ましい。この場合の露光量は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が10~250mJ/cm が好ましく、30~200mJ/cm がより好ましく、50~150mJ/cm が特に好ましい。
[0200]
 画像露光された平版印刷版原版は、それ以上の処理なしに印刷機の圧胴に取り付けられた後、湿し水とインキを供給する通常の印刷開始操作によって機上現像され、続いて印刷することができる。
[0201]
 印刷機に露光装置が搭載されている場合には、平版印刷版原版を印刷機の版胴上に取りつけた後に、印刷機の露光装置により露光し、続いて機上現像し、印刷することができる。
[0202]
 本発明においては、上記平版印刷版原版を、赤外線レーザーにより画像露光した後、印刷機上で印刷インキ及び湿し水の少なくともいずれかを用いて画像記録層未露光部分を除去する製版方法が好ましい。
実施例
[0203]
 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は質量平均モル質量(Mw)であり、繰り返し単位の比率はモル百分率である。
[0204]
[実施例1~10及び比較例1~7]
[0205]
〔平版印刷版原版の作製〕
[0206]
(支持体の作製)
 厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス-水懸濁液(比重1.1g/cm )を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。このアルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m であった。
[0207]
 次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm 、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
[0208]
 続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm の条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
 次に、このアルミニウム板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)を電解液として電流密度15A/dm で2.5g/m の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
 更に、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間、シリケート処理を施し、その後、水洗してアルミニウム支持体を得た。Siの付着量は10mg/m であった。このアルミニウム支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
[0209]
(平版印刷版原版の作製)
 下記表1に示す熱可塑性ポリマー粒子、赤外線吸収剤、発色前駆体などの成分を含有する画像記録層用水系塗布液を調製した後、上記支持体上に塗布し、50℃で1分間乾燥して画像記録層を形成し、平版印刷版原版1~12を作製した。各成分の乾燥後の塗布量を下記表1に示す。
[0210]
[表1]


[0211]
 上記画像記録層用塗布液に用いた成分は以下に示す通りである。
[0212]
[化56]


[0213]
[化57]


[0214]
[化58]


[0215]
[化59]


[0216]
[化60]


[0217]
C-1:山本化成工業製 BLUE-63
C-2:山本化成工業製 BLACK-XV
C-3:東京化成工業製 2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン
C-4:東京化成工業製 ロイコマラカイトグリーン
TPB:ナトリウムテトラフェニルボレート
熱可塑性ポリマー粒子:スチレン/アクリロニトリル共重合体(モル比50/50)、Tg:99℃、平均粒径60nm
[0218]
[平版印刷版原版の評価]
 各平版印刷版原版について、視認性、湿し水汚染、及びアブレーションを以下のようにして評価した。結果を下記表2に示す。
[0219]
(視認性)
 平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、表2に示す露光量(版面エネルギー量)にて、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像としては2cm角のベタ画像、および、視認性を目視判定するために用いる0.2ptのトンボ(レジスターマーク)画像、及び7ptの文字の入った画像を使用した。
 色相の変化値(Δa/Δb)を評価するため、未露光部及び露光部の色相をコニカミノルタ製分光測色計CM2600dとオペレーションソフトCM-S100Wとを用い、SCE(正反射光除去)方式で測定を行った。測定によって得られたL*a*b*値に基づいて以下に示す数式に従って換算を行い、ΔL、Δa、Δbを各々算出した。
  ΔL = 未露光部L*値 - 露光部L*値
  Δa = |未露光部a*値 - 露光部a*値|
  Δb = |未露光部b*値 - 露光部b*値|
  但しΔaおよびΔbは絶対値
 一方、目視判定は、5段階評価で点数付けを行った。
   5点・・・良好  4点・・・ほぼ良好  3点・・・充分  2点・・・やや不足  1点・・・不足
 目視による画像判別を行うためには、目視判定が3点以上であることが必要である。
[0220]
(湿し水汚染)
 平版印刷版原版(745mm×645mm)を露光及び現像処理することなく、菊半裁判サイズのハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する、容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水としてPRESSMAX S-S2(富士フイルム(株)製))80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K-HS墨GE-M(T&K(株)製)を用い、湿し水とインキを供給した後、毎時10000枚の印刷速度で印刷を500枚行った。500枚時点では、画像記録層の未露光部の機上現像が完了し、印刷用紙にインキが転写しない状態となっていた。この機上現像~1000枚印刷のテストを毎回新しい平版印刷版原版を用いて、10回繰り返した。
 上記のテスト10回終了後に、湿し水循環装置内の湿し水を採取しその色味を目視観察し、下記指標に基づいて評価した。
[0221]
<湿し水汚染評価>
5:テスト前の湿し水と同等の無色透明で極めて良好なレベル
4:若干の着色が認められるが良好なレベル
3:着色あるが許容下限レベル
2:着色程度高くNGレベル
1:着色が著しく劣悪なレベル
[0222]
(アブレーション)
 平版印刷版原版(幅600mm、縦800mm)50枚に、Creo社製Trendsetter3244VXにて全面露光を行った。露光量は表2に示す通りであった。予め、露光装置の排気口と集塵装置を繋ぐ配管にフィルターを取り付けておき、露光前後でフィルターの汚染を観察し、下記指標に基づいて評価した。
 4・・・汚染が認められない 3・・・許容下限レベル 2・・・やや汚染 1・・・かなり汚染
[0223]
[表2]


[0224]
 上記表2に記載の評価結果から、本発明に係る熱融着型の平版印刷版原版は、露光画像が優れた視認性を示し、かつ、レーザー露光によるアブレーションが抑制され、機上現像において湿し水の汚染が抑制されていることが分かる。即ち、本発明に係る熱融着型の平版印刷版原版は、露光画像の視認性、アブレーションの抑制、湿し水汚染の抑制のいずれにおいても良好な結果を示している。他方、比較例の平版印刷版原版においては、露光画像の視認性、アブレーションの抑制、及び湿し水汚染の抑制のいずれかにおいて劣っている。例えば、比較例3のように、赤外線吸収剤の塗布量を大きくし、かつ、画像露光時の露光量を増やした場合、露光画像の視認性は優れているが、アブレーション及び湿し水汚染が不良である。

産業上の利用可能性

[0225]
 本発明によれば、視認性に優れ、かつ、レーザー露光においてアブレーションが抑制され、機上現像において湿し水や印刷インキの汚染が抑制された熱融着型の平版印刷版原版が得られる。また、上記平版印刷版原版を用いる製版方法が得られる。
[0226]
 本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
 本出願は、2016年8月31日出願の日本特許出願(特願2016-170352)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

請求の範囲

[請求項1]
 支持体と画像記録層を有する平版印刷版原版であって、前記画像記録層は赤外線レーザー露光によって画像形成可能であり、前記画像記録層の未露光部は印刷機上で湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であり、前記画像記録層が、(1)赤外線レーザー露光によって生じる色相変化がΔa/Δb≧0.6である発色系、及び、(2)熱可塑性ポリマー粒子を前記画像記録層の固形分の70質量%以上含有する平版印刷版原版。
[請求項2]
 前記熱可塑性ポリマー粒子を、前記画像記録層の固形分の80質量%以上含有する請求項1に記載の平版印刷版原版。
[請求項3]
 前記熱可塑性ポリマー粒子を、前記画像記録層の固形分の90質量%以上含有する請求項1に記載の平版印刷版原版。
[請求項4]
 前記発色系が、赤外線吸収染料からなる請求項1~3のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
[請求項5]
 前記赤外線吸収染料が、下記式(1)で表される化合物である請求項4に記載の平版印刷版原版。
[化1]




 式(1)中、R は熱又は赤外線露光によりR -O結合が開裂する基を表し、R 及びR はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R 及びR は互いに連結して環を形成してもよく、Ar 及びAr はそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表し、Y 及びY はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR -又はジアルキルメチレン基を表し、R 及びR はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、R ~R はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
[請求項6]
 前記赤外線吸収染料が、下記一般式(i)で表されるシアニン色素構造を有し、分子中に少なくとも一つの溶剤可溶性基を有する化合物である請求項4に記載の平版印刷版原版。
[化2]




 一般式(i)中、X は、水素原子、ハロゲン原子、-NPh 、X -L 又は以下に示す基を表す。ここで、X は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を表し、L は、炭素原子数1~12の炭化水素基、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。以下に示す基において、X -は下記Z -と同義であり、R は、水素原子、又はアルキル基、アリール基、置換若しくは無置換のアミノ基及びハロゲン原子から選択される置換基を表す。
[化3]




 R 及びR は、それぞれ独立に、炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。R とR とは互いに結合して5員環又は6員環を形成してもよい。Ar 、Ar は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、芳香族炭化水素基を表す。Y 、Y は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12以下のジアルキルメチレン基を表す。R 、R は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数20以下の炭化水素基を表す。R 、R 、R 及びR は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12以下の炭化水素基を表す。Z -は、対アニオンを表す。ただし、一般式(i)で表されるシアニン色素構造を有する化合物が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ -は必要ない。
[請求項7]
 前記画像記録層が、更に、発色助剤を含む請求項4~6のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
[請求項8]
 前記発色助剤が、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩である請求項7に記載の平版印刷版原版。
[請求項9]
 前記発色助剤が、ボレート化合物である請求項7に記載の平版印刷版原版。
[請求項10]
 前記発色系が、赤外線吸収染料と発色前駆体からなる請求項1~3のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
[請求項11]
 前記赤外線吸収染料が、下記一般式(a)で表されるシアニン色素である請求項10に記載の平版印刷版原版。
[化4]




 一般式(a)中、X は、水素原子、ハロゲン原子、-N(R )(R 10)、-X -L または以下に示す基を表す。ここで、R 及びR 10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1~8のアルキル基又は水素原子を表し、あるいは、R とR 10とが互いに結合して環を形成してもよい。X は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を表し、L は、炭素原子数1~12の炭化水素基、またはヘテロ原子を含む炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。以下に示す基において、Xa -は下記Za -と同義であり、R は、水素原子、又はアルキル基、アリール基、置換若しくは無置換のアミノ基及びハロゲン原子から選択される置換基を表す。
[化5]




 R 及びR は、それぞれ独立に、炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。R 及びR とは互いに結合して、5員環または6員環を形成してもよい。Ar 、Ar は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、芳香族炭化水素基を表す。Y 、Y は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12以下のジアルキルメチレン基を表す。R 、R は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数20以下の炭化水素基を表す。R 、R 、R およびR は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12以下の炭化水素基を表す。Za -は、対アニオンを表す。ただし、一般式(a)で表されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa -は必要ない。
[請求項12]
 前記発色前駆体が、酸発色剤である請求項10又は11に記載の平版印刷版原版。
[請求項13]
 前記発色前駆体が、熱発色剤である請求項10又は11に記載の平版印刷版原版。
[請求項14]
 前記画像記録層が、更に、酸発生剤を含む請求項12に記載の平版印刷版原版。
[請求項15]
 前記酸発生剤が、ヨードニウム塩、スルホニウム塩又はアジニウム塩である請求項14に記載の平版印刷版原版。
[請求項16]
 請求項1~15のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を、赤外線レーザーにより画像露光した後、印刷機上で湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより画像記録層の未露光部分を除去する製版方法。
[請求項17]
 前記赤外線レーザーにより画像露光を、面露光強度50~150mJ/cm で行う請求項16に記載の製版方法。