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1. (WO2019065116) OIL WELL PIPE MARTENSITIC STAINLESS SEAMLESS STEEL PIPE AND PRODUCTION METHOD FOR SAME
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明 細 書

発明の名称 油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管およびその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009   0010   0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015  

発明の効果

0016  

発明を実施するための形態

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043  

実施例

0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053  

請求の範囲

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管およびその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、原油あるいは天然ガスの油井、ガス井(以下、単に油井と称する)に使用される油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管およびその製造方法に係るものである。とくに硫化水素(H 2S)を含む環境における耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)の改善に関する。

背景技術

[0002]
 近年、原油価格の高騰や、近い将来に予想される石油資源の枯渇という観点から、従来、省みられなかったような高深度の油田や、炭酸ガス、塩素イオンや硫化水素を含む厳しい腐食環境の油田やガス油田等の開発が盛んになっている。このような環境下で使用される油井管用鋼管には、高強度で、かつ優れた耐食性を兼ね備えた材質を有することが要求される。
[0003]
 従来、炭酸ガス、塩素イオン等を含む環境の油田、ガス田では、採掘に使用する油井管として13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が多く使用されている。最近では、硫化水素を含む極めて厳しい腐食環境での油田等の開発が世界規模で行われているため、耐SSC性要求が高まりつつあり、Cを低減させ、NiやMoを増加させた成分系の改良型13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管の使用も拡大している。
[0004]
 特許文献1では、13%Cr系鋼を基本組成として、Cを従来よりも著しく低減し、Ni、Mo、Cuを含有させ、Cr+2Ni+1.1Mo+0.7Cu≦32.5を満足し、さらにNb:0.20%以下、V:0.20%以下のうち1種または2種をNb+V≧0.05%の条件を満足するように、それぞれ含有した組成とすることで、降伏応力:965MPa以上の高強度と、-40℃におけるシャルピー吸収エネルギーが50J以上の高靱性を兼備し、かつ良好な耐食性が確保できるとしている。
[0005]
 特許文献2では、0.015%以下の極低C量、および0.03%以上のTiを含有する成分系の13%Cr系マルテンサイト系ステンレス鋼管が記載されており、降伏応力95ksi級の高強度と、HRCで27未満という低硬さを兼備し、優れた耐SSC性を有するとしている。また、特許文献3では、Ti/Cが、引張応力から降伏応力を差し引いた値と相関関係を有するとの理由から6.0≦Ti/C≦10.1を満たすマルテンサイト系ステンレス鋼が記載されている。該記載された技術によって、引張応力から降伏応力を引いた値が20.7MPa以上であり、かつ、耐SSC性を低下させる硬度のばらつきを抑えることができるとしている。
[0006]
 また、特許文献4では、鋼中のMo量をMo≧2.3-0.89Si+32.2Cで規定し、かつ、金属組織を、主として焼戻しマルテンサイト、焼き戻し時に析出した炭化物および焼き戻し時に微細析出したラーベス相やδ相等の金属間化合物から構成されるマルテンサイト系ステンレス鋼が記載されている。記載された技術により、前記鋼の0.2%耐力が860MPa以上の高強度となり、優れた耐炭酸ガス腐食性および耐硫化物応力腐食割れ性を有することができるとされている。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特開2007-332442号公報
特許文献2 : 特開2010-242163号公報
特許文献3 : 国際公開2008/023702号
特許文献4 : 国際公開2004/057050号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 近年の油田やガス田は、CO 2、Cl 、H 2Sを含む厳しい腐食環境で開発されている。更に、油田やガス田の経年変化によるH 2S濃度の増加が懸念されており、使用される油井用鋼管には、優れた耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)が要求されるようになっている。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、鋼が優れた耐CO 2腐食性を有するとしているが、耐硫化物応力腐食割れ性に対する検討は行われておらず、厳しい腐食環境に耐え得る耐食性を有しているとは言えない。
[0009]
 また、特許文献2では、5%NaCl水溶液(H 2S:0.10bar)をpH:3.5に調整した雰囲気下において、655MPaの応力を負荷するという条件で耐硫化物応力割れ性が保持できるとされている。特許文献3では、20%NaCl水溶液(H 2S:0.03bar、CO 2bal.)をpH:4.5に調整した雰囲気下で、また、特許文献4では、25%NaCl水溶液(H 2S:0.03bar、CO 2bal)をpH:4.0に調整した雰囲気下において、鋼が耐硫化物応力割れ性を有するとされている。しかしながら、上記以外の雰囲気下での耐硫化物応力腐食割れ性は検討されておらず、昨今のより厳しい腐食環境に耐え得る、耐硫化物応力腐食割れ性を具備するとは言い難い。
[0010]
 本発明は、高強度で、かつ、優れた耐硫化物応力腐食割れ性を有する油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管およびその製造方法を提供することを目的とする。
[0011]
 なお、ここでいう「高強度」とは、降伏応力:758MPa(110ksi)以上であるものとする。好ましくは、降伏応力は、896MPa以下である。
[0012]
 また、ここでいう「優れた耐硫化物応力腐食割れ性」とは、試験液:0.165質量%NaCl水溶液(液温:25℃、H 2S:1bar、CO 2bal)に、酢酸Na+塩酸を加えてpH:3.5に調整した水溶液中に、試験片を浸漬させ、浸漬時間を720時間として、降伏応力の90%を負荷応力として付加して試験を行い、試験後の試験片に割れが発生しない場合をいうものとする。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明者らは、上記した目的を達成するために、13%Cr系ステンレス鋼管を基本組成として、CO 2、Cl 、更にH 2Sを含む腐食環境下における耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)に及ぼす各種合金元素の影響について鋭意検討した。その結果、鋼が各成分を所定の範囲で含有し、かつ、C、Mn、Cr、Cu、Ni、Mo、W、Nb、N、Tiを適正な関係式及び範囲を満足するように調整して含有し、かつ、適正な焼入れ処理および焼戻処理が施されることにより、所望の強度を有しかつCO 2、Cl 、更にH 2Sを含む腐食雰囲気下、かつ降伏応力近傍の応力が負荷される環境下において、優れた耐SSC性を有する油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管とすることができることを見出した。
[0014]
 本発明は、上記した知見に基づき、更に検討を加えて完成させたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
[1]質量%で、
  C:0.0010~0.0094%、
  Si:0.5%以下、
  Mn:0.05~0.5%、
  P:0.030%以下、
  S:0.005%以下、
  Ni:4.6~7.3%、
  Cr:10.0~14.5%、
  Mo:1.0~2.7%、
  Al:0.1%以下、
  V:0.2%以下、
  N:0.1%以下、
  Ti:0.01~0.50%、
  Cu:0.01~1.0%、
  Co:0.01~1.0%
を含有し、かつ下記値(1)および値(2)が下記(3)式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる758MPa以上の降伏応力を有する油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
[0015]
                 記
-109.37C+7.307Mn+6.399Cr+6.329Cu+11.343Ni-13.529Mo+1.276W+2.925Nb
+196.775N-2.621Ti-120.307 ・・・(1)
-1.324C+0.0533Mn+0.0268Cr+0.0893Cu+0.00526Ni+0.0222Mo-0.0132W-0.473N-0.5Ti-0.514 ・・・(2)
ここで、C、Mn、Cr、Cu、Ni、Mo、W、Nb、N、Ti:各元素の含有量(質量%)(但し、含有しない元素は0(零)%とする。)
-35.0≦値(1)≦45 且つ -0.40≦値(2)≦0.070        ・・・(3)
[2]前記組成に加えてさらに、質量%で
  Nb:0.25%以下、
  W:1.1%以下
のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とする[1]に記載の油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
[3]前記組成に加えてさらに、質量%で、
  Ca:0.010%以下、
  REM:0.010%以下、
  Mg:0.010%以下、
  B:0.010%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とする[1]または[2]に記載の油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の組成を有する鋼管素材を造管し鋼管としたのち、該鋼管をAc 3変態点以上に加熱し、続いて100℃以下の冷却停止温度まで冷却する焼入れ処理と、ついでAc 1変態点以下の温度で焼き戻しをする焼戻処理とを施す油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法。

発明の効果

[0016]
 本発明によれば、CO 2、Cl 、更にH 2Sを含む腐食環境下において、優れた耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)を有し、かつ降伏応力YS:758MPa(110ksi)以上の高強度を有する油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管を得ることができる。

発明を実施するための形態

[0017]
 まず、本発明の鋼管の組成限定理由について説明する。以下、とくに断らない限り、質量%は単に%と記す。
[0018]
 C:0.0010~0.0094%
 Cはマルテンサイト系ステンレス鋼の強度に関係する重要な元素であり、強度向上に有効である。本発明における所望の強度を得るためには、0.0010%以上の含有を必要とする。一方、0.0094%を超える含有量では、Cr炭窒化物を生成するため、耐食性が低下する。このため、本発明では、Cは0.0010~0.0094%に限定した。好ましくは0.0050~0.0094%である。
[0019]
 Si:0.5%以下
 Siは、脱酸剤として作用するため、0.05%以上含有することが望ましい。一方で、0.5%を超える含有は、耐炭酸ガス腐食性および熱間加工性を低下させる。このため、Siは0.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.10~0.30%である。
[0020]
 Mn:0.05~0.5%
 Mnは、熱間加工性を向上させる元素であり、必要な強度を確保するためには0.05%以上含有する。一方、0.5%を超えてMnを含有しても、その効果が飽和し、かえってコストの高騰を招く。よって、Mnは0.05~0.5%に限定した。好ましくは、0.4%以下である。
[0021]
 P:0.030%以下
 Pは、耐炭酸ガス腐食性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性をともに低下させる元素であり、本発明ではできるだけ低減させることが望ましい。しかしながら、極端な低減は製造コストを高騰させる。よって、特性の極端な低下を招かない範囲で、かつ工業的に安価に実施可能な範囲として、Pは0.030%以下に限定した。なお、好ましくは0.020%以下である。
[0022]
 S:0.005%以下
 Sは、熱間加工性を著しく低下させる元素であるため、できるだけ低減させることが望ましい。S含有量を0.005%以下に低減することで、通常工程でのパイプ製造が可能となるため、本発明におけるSは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
[0023]
 Ni:4.6~7.3%
 Niは、保護被膜を強固にして耐食性を向上させ、更に固溶することで鋼の強度を増加させる元素である。このような効果を得るためには、4.6%以上の含有を必要とする。一方、Ni含有量が7.3%を超えると、マルテンサイト相の安定性が低下して、強度が低下する。よって、Niは4.6~7.3%に限定した。
[0024]
 Cr:10.0~14.5%
 Crは、保護被膜を形成して耐食性を向上させる元素であり、10.0%以上の含有で油井管用として必要な耐食性を確保できる。一方、含有量が14.5%を超えるとフェライトの生成が容易となるため、マルテンサイト相の安定確保ができなくなる。よって、Crは10.0~14.5%に限定した。なお、好ましくは11.0~13.5%である。
[0025]
 Mo:1.0~2.7%
 Moは、Cl による孔食に対する抵抗性を向上させる元素であり、厳しい腐食環境に必要な耐食性を得るためには、1.0%以上の含有が必要である。一方、2.7%を超えるMoの含有は、上記の効果が飽和することに加え、硬度が高くなることで耐食性が低下する。また、Moは高価な元素であるため、製造コストの高騰を招く。よって、Moは1.0~2.7%に限定した。なお、好ましくは1.5~2.5%である。
[0026]
 Al:0.1%以下
 Alは、脱酸剤として作用するため、このような効果を得るためには、0.01%以上の含有が有効である。しかしながら、0.1%を超える含有は、靱性に悪影響を及ぼすため、本発明におけるAlは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.01~0.03%である。
[0027]
 V:0.2%以下
 Vは、析出強化によって鋼の強度を向上させ、更に耐硫化物応力腐食割れ性も向上させるため、0.005%以上の含有が望ましい。一方、0.2%を超える含有は、靱性が低下するため、本発明におけるVは0.2%以下に限定した。好ましくは、Vは0.01~0.08%である。
[0028]
 N:0.1%以下
 Nは、耐孔食性を著しく向上させる元素である。しかしながら、N含有量が0.1%超えでは、種々の窒化物を形成して靱性を低下させるため、本発明におけるNは0.1%以下に限定した。好ましくは0.004~0.08%であり、さらに好ましくは0.005~0.05%である。
[0029]
 Ti:0.01~0.50%
 Tiは、Cと結合することでTi炭化物を形成し、極低C化する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有が必要となる。一方、0.50%を超える含有では、靱性や耐硫化物応力腐食割れ性を低下させる原因である粗大な炭化物が生成する。よって、Tiは0.01~0.50%に限定した。なお、好ましくは0.05~0.15%である。
[0030]
 Cu:0.01~1.0%
 Cuは、0.01%以上の含有で、保護皮膜を強固にすると共に活性溶解を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる。一方、1.0%を超える含有は、CuSが析出して熱間加工性を低下させる。よって、Cuは0.01~1.0%に限定した。
[0031]
 Co:0.01~1.0%
 Coは、Ms点を上昇させα変態を促進することで、硬さを低減すると共に、耐孔食性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、過剰な含有は靱性を低下させる場合があり、更に材料コストを高騰させる。よって、本発明におけるCoは0.01~1.0%に限定した。
[0032]
 本発明では更に、C、Mn、Cr、Cu、Ni、Mo、W、Nb、N、Tiについて、下記の値(1)および値(2)が下記の(3)式を満足するように各元素を含有する。値(1)は残留γ量に相関する式であり、値(1)の値を小さくすることで、残留オーステナイトが低減し、硬度が低下して、耐硫化物応力腐食割れ性が向上する。また、値(2)は孔食電位に相関する式であり、値(2)を下記(3)式の範囲を満足するように、C、Mn、Cr、Cu、Ni、Mo、W、N、Tiを含有することで、硫化物応力腐食割れの起点となる孔食の発生を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性が顕著に向上する。尚、値(1)は10以上で硬度の上昇を招くが、値(2)が下記(3)式の範囲を満足することで、孔食発生の抑制が顕著に現れ、耐硫化物応力腐食割れ性が向上する。
[0033]
                 記
-109.37C+7.307Mn+6.399Cr+6.329Cu+11.343Ni-13.529Mo+1.276W+2.925Nb
+196.775N-2.621Ti-120.307 ・・・(1)
-1.324C+0.0533Mn+0.0268Cr+0.0893Cu+0.00526Ni+0.0222Mo-0.0132W-0.473N-0.5Ti-0.514 ・・・(2)
ここで、C、Mn、Cr、Cu、Ni、Mo、W、Nb、N、Ti:各元素の含有量(質量%)(但し、含有しない元素は0(零)%とする。)
-35.0≦値(1)≦45 且つ -0.40≦値(2)≦0.070        ・・・(3)
更に、必要に応じて選択元素として、Nb:0.25%以下、W:1.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することができる。
[0034]
 Nbは、炭化物を形成することで、固溶炭素を減少させて、硬度を低減できる。一方、過剰な含有は、靱性を低下させる場合がある。Wは、耐孔食性を向上させる元素であるが、過剰な含有は靱性を低下させる場合があり、更に材料コストを高騰させる。よって、含有する場合には、Nb:0.25%以下、W:1.1%以下に限定した。
[0035]
 さらにまた、必要に応じて選択元素として、
  Ca:0.010%以下、
  REM:0.010%以下、
  Mg:0.010%以下、
  B:0.010%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上することができる。
[0036]
 Ca、REM、Mg、Bは、いずれも介在物の形態制御を介し、耐食性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、
  Ca:0.0005%以上、
  REM:0.0005%以上、
  Mg:0.0005%以上、
  B:0.0005%以上
含有することが望ましい。一方、
  Ca:0.010%、
  REM:0.010%、
  Mg:0.010%、
  B:0.010%
を超えて含有すると、靱性および耐炭酸ガス腐食性を低下させる。よって、含有する場合には、
  Ca:0.010%以下、
  REM:0.010%以下、
  Mg:0.010%以下、
  B:0.010%以下
に限定した。
[0037]
 上記した成分組成以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
[0038]
 つぎに、本発明の油井管用ステンレス継目無鋼管の好ましい製造方法について説明する。
[0039]
 本発明では、上記の組成を有する鋼管素材を用いるが、鋼管素材であるステンレス継目無鋼管の製造方法は特に限定する必要はなく、公知の継目無管の製造方法がいずれも適用できる。
[0040]
 上記組成の溶鋼を、転炉等の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊-分塊圧延法等の方法でビレット等の鋼管素材とすることが好ましい。続いて、これらの鋼管素材を加熱し、公知の造管方法である、マンネスマン-プラグミル方式、またはマンネスマン-マンドレルミル方式の造管工程にて、熱間加工および造管し、上記組成を有する継目無鋼管とする。
[0041]
 このように鋼管素材を造管し鋼管としたのちの処理も、特に限定されないが、好ましくは、鋼管をAc 3変態点以上に加熱し、続いて100℃以下の冷却停止温度まで冷却する焼入れ処理と、ついで、Ac 1変態点以下の温度で焼き戻しをする焼戻処理とを施す。
[0042]
 焼入れ処理
 本発明では、更に鋼管を、Ac 3変態点以上の温度に再加熱し、好ましくは5min以上保持し、続いて100℃以下の冷却停止温度まで冷却する。これによって、マルテンサイト相の微細化と高靱化が得られる。焼入れ加熱温度がAc 3変態点未満では、組織がオーステナイト単相域とならないため、その後の冷却で十分なマルテンサイト組織が得られず、所望の高強度を達成できない。よって、焼入れ加熱温度はAc 3変態点以上に限定する。なお、冷却方法は限定しないが、一般に空冷(冷却速度0.05℃/s以上20℃/s以下)または水冷(冷却速度5℃/s以上100℃/s以下)により冷却し、冷却速度の条件も限定されない。
[0043]
 焼戻処理
 続いて、焼入れ処理を施した鋼管に、焼戻処理を施す。焼戻処理は、鋼管をAc 1変態点以下に加熱し、好ましくは10min以上保持し、冷却する処理である。焼戻温度がAc 1変態点より高温になると、焼戻後にマルテンサイト相が析出し、所望の高靱性および優れた耐食性を確保できない。よって、焼戻温度はAc 1変態点以下に限定する。なお、上記のAc 3変態点(℃)、Ac 1変態点(℃)については、試験片に加熱および冷却の温度履歴を与え、膨張および収縮の微小変位から変態点を検出するフォーマスター試験により測定することができる。
実施例
[0044]
 以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
[0045]
 表1に示す成分の溶鋼を転炉にて溶製した後、連続鋳造法でビレット(鋼管素材)に鋳造する。更にこのビレットをモデルシームレス圧延機を用いる熱間加工で造管した後空冷または水冷による冷却を行い外径83.8mm×肉厚12.7mmの継目無鋼管とした。
[0046]
 得られた継目無鋼管から試験材を切り出し、この試験材に表2に示す条件で焼入及び焼戻処理を施した。焼入及び焼戻処理を施した試験材から、組織観察用試験片を採取し、研磨した後、残留オーステナイト(γ)量をX線回折法にて測定した。
[0047]
 具体的には、γの(220)面、αの(211)面の回折X線積分強度を測定し、次式
γ(体積率)=100/(1+(I αR γ/I γR α))
ここで、I α:αの積分強度
    R α:αの結晶学的理論計算値
    I γ:γの積分強度
    R γ:γの結晶学的理論計算値
を用いて換算した。
[0048]
 また、焼入れ処理および焼戻処理を施した試験材から、API弧状引張試験片を採取し、APIの規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏応力YS、引張応力TS)を求めた。表2中、Ac 3点(℃)、Ac 1点(℃)については、焼入処理を施した試験材から、4mmφ×10mmの試験片を採取し、フォーマスター試験により測定した。具体的には、試験片を5℃/sで500℃まで加熱し、更に0.25℃/sで920℃まで昇温させて10分間保持した後、2℃/sで室温まで冷却した。この温度履歴に伴う試験片の膨張・収縮を検出することでAc 3点(℃)、Ac 1点(℃)を得た。
[0049]
 SSC試験は、NACE TM0177 Method Aに準拠して実施した。試験環境は、試験溶液として0.165質量%NaCl水溶液(液温:25℃、H 2S:1bar、CO 2bal)に、0.41g/L CH 3COONa+HClを加えてpH:3.5に調整したものを用い、硫化水素分圧を0.1MPaとし、浸漬時間を720時間として、降伏応力の90%を負荷応力として試験を実施した。試験後の試験片に割れが発生しない場合を合格とし、割れが発生した場合を不合格とした。
[0050]
 得られた結果を表2に示す。
[0051]
[表1]


[0052]
[表2]


[0053]
 本発明例はいずれも、降伏応力758MPa以上の高強度でありH 2Sを含む環境下で応力が負荷されても割れの発生が無い、優れた耐SSC性を有するマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例では、所望の高強度は得られているものの、優れた耐SSC性を確保できていない。

請求の範囲

[請求項1]
 質量%で、
  C:0.0010~0.0094%、
  Si:0.5%以下、
  Mn:0.05~0.5%、
  P:0.030%以下、
  S:0.005%以下、
  Ni:4.6~7.3%、
  Cr:10.0~14.5%、
  Mo:1.0~2.7%、
  Al:0.1%以下、
  V:0.2%以下、
  N:0.1%以下、
  Ti:0.01~0.50%、
  Cu:0.01~1.0%、
  Co:0.01~1.0%
を含有し、かつ下記値(1)および値(2)が下記(3)式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、758MPa以上の降伏応力を有する油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
                 記
-109.37C+7.307Mn+6.399Cr+6.329Cu+11.343Ni-13.529Mo+1.276W+2.925Nb
+196.775N-2.621Ti-120.307 ・・・(1)
-1.324C+0.0533Mn+0.0268Cr+0.0893Cu+0.00526Ni+0.0222Mo-0.0132W-0.473N-0.5Ti-0.514 ・・・(2)
ここで、C、Mn、Cr、Cu、Ni、Mo、W、Nb、N、Ti:各元素の含有量(質量%)(但し、含有しない元素は0(零)%とする。)
-35.0≦値(1)≦45 且つ -0.40≦値(2)≦0.070        ・・・(3)
[請求項2]
 前記組成に加えてさらに、質量%で
  Nb:0.25%以下、
  W:1.1%以下
のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とする請求項1に記載の油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
[請求項3]
 前記組成に加えてさらに、質量%で、
  Ca:0.010%以下、
  REM:0.010%以下、
  Mg:0.010%以下、
  B:0.010%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とする請求項1または2に記載の油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
[請求項4]
 請求項1~3のいずれかに記載の組成を有する鋼管素材を造管し鋼管としたのち、該鋼管をAc 3変態点以上に加熱し、続いて100℃以下の冷却停止温度まで冷却する焼入れ処理と、ついでAc 1変態点以下の温度で焼き戻しをする焼戻処理とを施す油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法。