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1. (WO2019049239) NEGATIVE ELECTRODE ACTIVE MATERIAL FOR ELECTRICAL DEVICES, METHOD FOR PRODUCING SAME, AND ELECTRICAL DEVICE USING THIS ACTIVE MATERIAL
Document

明 細 書

発明の名称 電気デバイス用負極活物質とその製造方法、およびこの活物質を用いた電気デバイス

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013   0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018   0019   0020  

発明の効果

0021   0022  

図面の簡単な説明

0023  

発明を実施するための形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153  

実施例

0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178  

符号の説明

0179  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 電気デバイス用負極活物質とその製造方法、およびこの活物質を用いた電気デバイス

技術分野

[0001]
 本発明は、電気デバイス用負極活物質とその製造方法、およびこの活物質を用いた電気デバイスに関する。本発明の電気デバイス用負極活物質およびこれを用いた電気デバイスは、例えば、二次電池やキャパシタ等として電気自動車、燃料電池車、ハイブリッド電気自動車およびプラグインハイブリッド電気自動車等の車両のモータ等の駆動用電源や補助電源に用いられる。

背景技術

[0002]
 近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっている。そのため、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの電気デバイスの開発が盛んに行われている。
[0003]
 モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
[0004]
 リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
[0005]
 従来、リチウムイオン二次電池の負極には充放電サイクルの寿命やコスト面で有利な炭素・黒鉛系材料が用いられてきた。しかし、炭素・黒鉛系の負極材料ではリチウムイオンの黒鉛結晶中への吸蔵・放出により充放電がなされるため、最大リチウム導入化合物であるLiC から得られる理論容量372mAh/g以上の充放電容量が得られないという欠点がある。このため、炭素・黒鉛系負極材料で車両用途の実用化レベルを満足する容量、エネルギー密度を得るのは困難である。
[0006]
 これに対し、負極にLiと合金化する材料を用いた電池は、従来の炭素・黒鉛系負極材料と比較しエネルギー密度が向上するため、車両用途における負極材料として期待されている。例えば、Si材料は、充放電において下記の反応式(A)のように1molあたり3.75molのリチウムイオンを吸蔵放出し、Li 15Si (=Li 3.75Si)においては理論容量3600mAh/gである。
[0007]
[化1]


[0008]
 しかしながら、負極にLiと合金化する材料を用いたリチウムイオン二次電池は、充放電時の負極での膨張収縮が大きい。例えば、Liイオンを吸蔵した場合の体積膨張は、黒鉛材料では約1.2倍であるのに対し、Si材料ではSiとLiが合金化する際、アモルファス状態から結晶状態へ転移し大きな体積変化(約4倍)を起こすため、電極のサイクル寿命を低下させる問題があった。また、Si負極活物質の場合、容量とサイクル耐久性とはトレードオフの関係であり、高容量を示しつつサイクル耐久性を向上させることが困難であるといった問題があった。
[0009]
 ここで、特許文献1では、高容量で、かつサイクル寿命に優れた負極ペレットを有する非水電解質二次電池を提供することを課題とした発明が開示されている。具体的には、ケイ素粉末とチタン粉末とをメカニカルアロイ法により60時間、混合し、湿式粉砕して得られるケイ素含有合金であって、ケイ素を主体とする第1相とチタンのケイ化物(TiSi 等)を含む第2相とを含むものを負極活物質として用いることが開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 国際公開第2006/129415号パンフレット

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 本発明者らの検討によれば、上記特許文献1に記載の負極ペレットを用いたリチウムイオン二次電池等の電気デバイスでは、良好なサイクル耐久性を示すことができるとされているにもかかわらず、サイクル耐久性が十分ではない場合があることが判明した。
[0012]
 また、上記特許文献1に記載のメカニカルアロイ法を用いた負極活物質の製造方法は、メカニカルアロイングに要する時間(プロセス時間)が長く、電池性能を大きく損なうことなく、プロセス時間のより一層の短縮が望まれていた。
[0013]
 そこで本発明は、リチウムイオン二次電池等の電気デバイスのサイクル耐久性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
[0014]
 また、本発明の他の目的は、電池性能を大きく損なうことなく、リチウムイオン二次電池等の電気デバイスの負極活物質の製造プロセスを短縮させうる手段を提供することである。

課題を解決するための手段

[0015]
 本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、Si-Sn-M(M:遷移金属元素)で表される合金にLiを少量加えた特定の組成を有する構成のケイ素含有合金(Si含有合金ともいう)を電気デバイス用負極活物質として用いることで上記課題が解決されうることを見出し本発明の完成に至った。
[0016]
 また、メカニカルアロイ法に、Si-Sn-M(M:遷移金属元素)で表される合金にLiを少量加えた特定の組成を有する構成のSi含有合金の各金属原料成分を用いることで、上記製法上の課題が解決されうることを見出し本発明の完成に至った。
[0017]
 すなわち、本発明は、Si含有合金からなる電気デバイス用負極活物質に関する。そして、前記Si含有合金は、下記化学式(1):
[0018]
[化2]


[0019]
(上記化学式(1)において、
 Mは、1または2以上の遷移金属元素であり、
 Aは、不可避不純物であり、
 x、y、z、aおよびbは、質量%の値を表し、この際、0<x<100、0≦y<100、0<z<100、0.2≦b≦1.5、aは残部であり、x+y+z+a+b=100である。)
で表される組成を有する点に特徴を有する。
[0020]
 また、本発明の電気デバイス用負極活物質の製造方法は、前記化学式(1)で表される組成を有するSi含有合金と同一の組成を有する母合金を用いたメカニカルアロイ法により、前記Si含有合金を作製することを有することを特徴とする。

発明の効果

[0021]
 本発明に係る負極活物質を構成するSi含有合金では、Si-Sn-M合金にLiを少量添加することにより、Si含有合金に高負荷がかからず、充放電効率/放充電効率を安定化することができ、その結果、サイクル耐久性を向上させることができる。更にLiを少量添加することにより、放電容量を向上させることもできる。
[0022]
 本発明に係る負極活物質の製造方法では、前記Si含有合金の各金属原料成分を用いてメカニカルアロイ法を行うことで、電池性能を大きく損なうことなく、プロセス時間を大幅に短縮することができる。

図面の簡単な説明

[0023]
[図1] 図1は、本発明に係る電気デバイスの代表的な一実施形態である積層型の扁平な非双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。
[図2] 図2は、本発明に係る電気デバイスの代表的な実施形態である積層型の扁平なリチウムイオン二次電池の外観を模式的に表した斜視図である。
[図3] 実施例1~4および比較例1~2のそれぞれのSi含有合金(負極活物質)について取得されたX線回折スペクトルを示す図面である。
[図4] 実施例1~4および比較例1~2のそれぞれのSi含有合金(負極活物質)について取得されたX線回折スペクトルより、下記に規定するX、Yの値をそれぞれ求め、これらの比の値(X/Y)を算出した結果と、50サイクル後の放電容量維持率[%]との関係を示す図面である。ここで、Xは、2θ=38~40°の範囲におけるC54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク強度を示す。またYは、2θ=27~29°の範囲におけるSiの(111)面の回折ピーク強度を示す。
[図5] 実施例1~4及び比較例1の各電池につき、1~50サイクルまで充放電試験を行い、1サイクル目の放電容量に対するnサイクル目の放電容量の割合(各サイクル毎の放電容量維持率[%])をそれぞれ求め、サイクル数と当該容量維持率の関係を示す図面である。ここで、nは2~50までの整数である。
[図6] 実施例1~4及び比較例1~2の各電池につき、1~50サイクルまで充放電試験を行い、1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の割合(50サイクル後の放電容量維持率[%])を求め、放電容量と当該容量維持率の関係を示す図面である。
[図7] 実施例3の充放電効率、充放電効率、真効率を示す図面である。
[図8] 比較例1の充放電効率、放充電効率、真効率を示す図面である。

発明を実施するための形態

[0024]
 以下、図面を参照しながら、本発明の電気デバイス用負極活物質とその製造方法並びにこれを用いてなる電気デバイス用負極および電気デバイスの実施形態を説明する。但し、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[0025]
 以下、本発明の電気デバイス用負極活物質が適用されうる電気デバイスの基本的な構成を、図面を用いて説明する。本実施形態では、電気デバイスとしてリチウムイオン二次電池を例示して説明する。
[0026]
 まず、本発明に係る電気デバイス用負極活物質を含む負極の代表的な一実施形態であるリチウムイオン二次電池用の負極およびこれを用いてなるリチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる。そのため本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極活物質を用いてなるリチウムイオン二次電池では、車両の駆動電源用や補助電源用として優れている。その結果、車両の駆動電源用等のリチウムイオン二次電池として好適に利用できる。このほかにも、携帯電話などの携帯機器向けのリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。
[0027]
 すなわち、本実施形態の対象となるリチウムイオン二次電池は、以下に説明する本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極活物質を用いてなるものであればよく、他の構成要件に関しては、特に制限されるべきものではない。
[0028]
 例えば、上記リチウムイオン二次電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
[0029]
 また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。
[0030]
 リチウムイオン二次電池内の電解質層の種類で区別した場合には、電解質層に非水系の電解液等の溶液電解質を用いた溶液電解質型電池、電解質層に高分子電解質を用いたポリマー電池など従来公知のいずれの電解質層のタイプにも適用し得るものである。該ポリマー電池は、さらに高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)を用いたゲル電解質型電池、高分子固体電解質(単にポリマー電解質ともいう)を用いた固体高分子(全固体)型電池に分けられる。
[0031]
 さらに、本形態では、イオン伝導率が有機電解質の2倍で、フル充電も数分で済む、超イオン伝導体であるLi 9.54Si 1.741.4411.7Cl 0.3などのセラミックス材料を固体電解質に用いた全固体電池にも適用し得るものである。
[0032]
 したがって、以下の説明では、本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極活物質を用いてなる非双極型(内部並列接続タイプ)リチウムイオン二次電池につき図面を用いてごく簡単に説明する。但し、本実施形態のリチウムイオン二次電池の技術的範囲が、これらに制限されるべきものではない。
[0033]
 <電池の全体構造>
 図1は、本発明の電気デバイスの代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
[0034]
 図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された正極と、電解質層17と、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層15とこれに隣接する負極活物質層13とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。
[0035]
 これにより、隣接する正極、電解質層、および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層の正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層15が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層の負極集電体が位置するようにし、該最外層の負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
[0036]
 正極集電体12および負極集電体11は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板27および負極集電板25がそれぞれ取り付けられ、ラミネートシート29の端部に挟まれるようにしてラミネートシート29の外部に導出される構造を有している。正極集電板27および負極集電板25は、それぞれ必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体12および負極集電体11に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
[0037]
 上記で説明したリチウムイオン二次電池は、負極に特徴を有する。以下、当該負極を含めた電池の主要な構成部材について説明する。
[0038]
 <活物質層>
 活物質層13または15は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
[0039]
 [正極活物質層]
 正極活物質層15は、正極活物質を含む。
[0040]
 (正極活物質)
 正極活物質としては、例えば、LiMn 、LiCoO 、LiNiO 、Li(Ni-Mn-Co)O およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられ、さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)O およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
[0041]
 NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
[0042]
 NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):Li Ni Mn Co (但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
[0043]
 一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
[0044]
 より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と寿命特性とのバランスを向上させるという観点からは好ましい。例えば、LiNi 0.5Mn 0.3Co 0.2は、一般的な民生電池で実績のあるLiCoO 、LiMn 、LiNi 1/3Mn 1/3Co 1/3などと比較して、単位重量あたりの容量が大きく、エネルギー密度の向上が可能となることでコンパクトかつ高容量の電池を作製できるという利点を有しており、航続距離の観点からも好ましい。なお、より容量が大きいという点ではLiNi 0.8Co 0.1Al 0.1がより有利であるが、寿命特性に難がある。これに対し、LiNi 0.5Mn 0.3Co 0.2はLiNi 1/3Mn 1/3Co 1/3並みに優れた寿命特性を有しているのである。
[0045]
 場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
[0046]
 正極活物質層15に含まれる正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1~30μmであり、より好ましくは5~20μmである。なお、本明細書において、「粒子径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用いて観察される活物質粒子(観察面)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。また、本明細書において、「平均粒子径」の値は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。他の構成成分の粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
[0047]
 正極活物質層15は、バインダを含みうる。
[0048]
 (バインダ)
 バインダは、活物質同士または活物質と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。正極活物質層に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
[0049]
 正極活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5~15質量%であり、より好ましくは1~10質量%である。
[0050]
 正極(正極活物質層)は、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法のほか、混練法、スパッタ法、蒸着法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法および溶射法のいずれかの方法によって形成することができる。
[0051]
 [負極活物質層]
 負極活物質層13は、負極活物質を含む。
[0052]
 (負極活物質)
 本実施形態において、負極活物質は、Si-Sn-M-Li(Mは1または2以上の遷移金属元素である)で表される四元系合金組成を有する。即ち、負極活物質を構成するSi含有合金は、Si-Sn-M(Mは1または2以上の遷移金属元素である)で表される三元系合金にLiを少量添加した合金組成(四元系合金組成)を有している。
[0053]
 詳しくは、本形態の負極活物質を構成するSi含有合金は、下記化学式(1)で表される組成を有することを特徴とするものである。
[0054]
[化3]


[0055]
 上記化学式(1)において、Mは、1または2以上の遷移金属元素であり、Aは、不可避不純物であり、x、y、z、aおよびbは、質量%の値を表し、この際、0<x<100、0≦y<100、0<z<100、0.2≦b≦1.5、aは残部であり、x+y+z+a+b=100である。
[0056]
 Si系負極活物質では、充電時にSiとLi(Si含有合金を構成するLi元素ではなく、正極側から移動したLiイオン)とが合金化する際、Si相がアモルファス状態から結晶状態へと転移して大きな体積変化(約4倍)を起こす。その結果、活物質粒子自体が壊れてしまい、活物質としての機能が失われてしまうという問題がある。このため、負極活物質が上記化学式(1)で表される組成を有することにより、充電時におけるSi相のアモルファス-結晶の相転移を抑制することで粒子自体の崩壊を抑制することができ、活物質としての機能(高容量)が保持され、サイクル寿命(耐久性)も向上させることができる。更にLiを少量添加することにより、最初(初期充電前)から負極側にLiがあるため、充放電(挿入・離脱)可能なLi量が低減し初期充放電容量が減少することが容易に予見されたにも拘らず、意外にも優れた初期充放電容量を発現できることがわかった。その結果、電池の放電容量を長期に亘って向上させることもできる。
[0057]
 また、Si-M(特にTi)は非常に強い結合性、Si-Snは反発性、M(特にTi)-Snは結合性を示す。このことから本形態のSi含有合金では、Si相(好ましくは一部にSn、Liを含むアモルファス(非晶質又は低結晶性)Si相)とシリサイド相を有する微細構造が得られることがわかる(図3参照)。ここにLiを少量添加することで、作用メカニズムは明らかでないが、得られるSi含有合金に高負荷がかからず、充放電効率/放充電効率を安定化できると考えられる。このようにSi-Sn-Mに少量のLiを含有させることで上述のような特性(サイクル耐久性や放電容量の高容量化)が発現することができる。
[0058]
 また、シリサイド相(TiSi 相等)は、Si相と比較して硬度および電子伝導性の点で優れている。そのため、充放電過程におけるSi相の膨張を、その周辺のシリサイド相(TiSi 相等)が効果的に抑え込むことで抑制することができる。これにより、充電時にSiとLi(Si含有合金を構成するLi元素ではなく、正極側から移動したLiイオン)とが合金化する際のアモルファス-結晶の相転移(Li 15Si への結晶化)が抑制される。その結果、電気デバイスの充放電過程における負極活物質を構成するSi含有合金の膨張収縮が低減され、かつ、導電性を有するシリサイドで構成されるシリサイド相によりSi相を均一に反応させることができる。その結果、当該負極活物質が用いられる電気デバイスの高容量を示しつつ、サイクル耐久性を向上することができる。
[0059]
 上述したように、本実施形態に係るSi含有合金は、Si、Sn、Ti及びLiの四元系の合金であり、その組成範囲(各構成元素の質量比)の合計は100質量%であり、その組成範囲(各構成元素の質量比)の好適な範囲は以下の通りである。
[0060]
 上記化学式(1)で表される合金組成において、x(Siの組成比;質量%(mass%))は、y、zおよびbが下記範囲であれば、特に制限されない。xは、充放電(Liイオンの挿入脱離)に対する耐久性の保持および初期容量のバランスという観点から、xは、好ましくは70以下であり、より好ましくは68以下であり、さらに好ましくは67以下であり、特に好ましくは66以下であり、中でも好ましくは65以下ある。また上記観点から、xは、好ましくは58以上であり、より好ましくは60以上であり、さらに好ましくは62以上、特に好ましくは63以上、中でも好ましくは64以上である。かかる範囲であると、充放電(Liイオンの挿入脱離)に対する耐久性の保持及び(初期)容量のバランスという点で優れており、耐久性を十分に向上させ高容量を得ることができ、本発明の効果をより効率的に発現することができる。
[0061]
 上記化学式(1)で表される合金組成において、y(Snの組成比;質量%(mass%))は、x、zおよびbが下記範囲であれば、特に制限されない。yは、充放電(Liイオンの挿入脱離)に対する耐久性の保持および初期容量のバランスという観点から、yは、好ましくは10以下であり、より好ましくは9以下であり、更に好ましくは8.5以下であり、特に好ましくは8以下であり、中でも好ましくは7.5以下であり、中でも特に好ましくは7以下である。また上記観点から、yは、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは2.5以上、特に好ましくは3以上、中でも好ましくは3.5以上である。かかる範囲であると、Si相中に固溶もしくは分散し、該Si相中のSiの原子間隔を広げる(Si正四面体間距離を増大させる)ことにより、充放電時の可逆的Liイオンの挿入脱離を可能にするという点で優れている。更にSi相中に固溶・分散しきれなくなるのを抑制し、一部がシリサイド相(TiSi 相等)とSi相の界面に遊離したSn相として析出するのを効果的に抑制することができる。これらにより、サイクル耐久性を十分に向上させることができ、本発明の効果をより効率的に発現することができる。
[0062]
 上記化学式(1)で表される組成において、z(遷移金属元素Mの組成比;質量%(mass%))は、x、yおよびbが上記乃至下記範囲であれば、特に制限されない。xは、充放電(Liイオンの挿入脱離)に対する耐久性の保持および初期容量のバランスという観点から、zは、好ましくは35以下であり、より好ましくは34以下であり、更に好ましくは33以下であり、特に好ましくは32以下であり、中でも好ましくは31以下、中でも特に好ましくは30以下である。また、上記観点から、zは、好ましくは23以上であり、より好ましくは24以上であり、更に好ましくは25以上であり、特に好ましくは26以上であり、中でも好ましくは27以上、中でも特に好ましくは28以上、とりわけ好ましくは29以上である。かかる範囲であると、充放電(Liイオンの挿入脱離)に対する耐久性の保持および初期容量のバランスという点で優れており、耐久性を十分に向上させ高容量を得ることができ、本発明の効果をより効率的に発現することができる。また、合金組織中に占めるシリサイド相の割合が小さくなり過ぎることもなく、充放電に伴うSiの膨張・収縮を十分に抑制することができ、耐久性を十分に向上することができる。更にシリサイド量が大きくなり過ぎることがないため、Li(Si含有合金中のLi金属ではなく、正極側から移動したLiイオン)と反応できるSi量が小さくなり過ぎることがなく、Si系合金の最大の魅力である高容量という特性を十分に発揮できる。
[0063]
 上記化学式(1)で表される組成において、b(Liの組成比;質量%(mass%))は、上記したように、Si-Sn-M合金にLiを少量添加することにより、Si-Sn-M合金に高負荷がかからず、充放電効率/放充電効率を安定化することができ、その結果、サイクル耐久性を向上させることができる。更にLiを少量添加することにより、放電容量を向上させることもできる。かかる観点から、bは、0.2≦b≦1.5の範囲である。bが0.2未満の場合には、充放電効率/放充電効率を安定化できず、サイクル耐久性を十分に向上させることができないため好ましくない。更に、放電容量を十分に向上させることもできないなど好ましくない。bが1.5を超える場合にも、充放電反応に関与しない負極合金を構成するLi量が増大するため、充放電効率/放充電効率を安定化できず、サイクル耐久性を十分に向上させることができないため好ましくない。同様の理由から、放電容量を十分に向上させることもできないなど好ましくない。上記観点から、bは、好ましくは、好ましくは1.4以下であり、より好ましくは1.3以下であり、更に好ましくは1.2以下であり、特に好ましくは1.1以下であり、中でも好ましくは1.0以下、中でも特に好ましくは0.9以下である。また、上記観点から、bは、好ましくは0.22以上であり、より好ましくは0.24以上であり、更に好ましくは0.26以上、特に好ましくは0.28以上であり、中でも好ましくは0.29以上、中でも特に好ましくは0.30以上である。かかる範囲であると、シリサイド相を適度に微細化でき、Si相のアモルファス形成能を増大でき、アモルファス度合いを高められる。そのため、充放電に伴うLiの挿入脱離に対しても、a-Si相の化学構造が変化しにくくなり、さらに高いサイクル耐久性が得られると考えられることなどからも、本発明の効果をより効率的に発現することができるといえる。ただし、上述した各構成元素の組成比の好適な数値範囲はあくまでも、好ましい実施形態を説明するものに過ぎず、特許請求の範囲に含まれている限り、本発明の技術的範囲内のものである。
[0064]
 上記化学式(1)で表される組成において、x+y+z+bは、最大100(100を超えない)である。
[0065]
 なお、本明細書において、上記化学式(1)中、Aで表される「不可避不純物」とは、Si含有合金において、原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりするものを意味する。当該不可避不純物は、本来は不要なものであるが、微量であり、Si合金の特性に影響を及ぼさないため、許容されている不純物である。上記化学式(1)中、Aで表される「不可避不純物」の許容量aは、x+y+z+b(最大100)の有効成分量以外の残部(微量)である。上記化学式(1)で表される組成において、aは、好ましくは0.5未満であり、より好ましくは0.1未満である。負極活物質(Si含有合金)が上記化学式(1)の組成を有するか否かは、蛍光X線分析(XRF)による定性分析、および誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法による定量分析により確認することが可能である。
[0066]
 本実施形態の負極活物質を構成するSi含有合金は、上記した合金組成を有することにより、上記したように、充放電でのSi膨張を抑制し、サイクル耐久性、更には放電容量を向上し得るという効果を奏し得るものである。
[0067]
 詳しくは、本実施形態の負極活物質を構成するSi含有合金では、Si-Sn-M合金にLiを少量添加することにより、微細組織を有する合金が得られると考えられる。この微細組織は、遷移金属Mのケイ化物を主成分とするシリサイド相と、Siを主成分とするSi相(特に、一部にSn、Liを含み、アモルファス(非晶質又は低結晶性の)Siを主成分とするSi相)とを有する組織となっていると考えられる(図3、4参照)。これにより、遷移金属M(特にTi)のケイ化物(シリサイド)を微細化できると考えられる。また、高容量活物質となるSi相の割合を多くできると考えられる。さらに、アモルファス(非晶質又は低結晶性Si)形成能を増大できると考えられる。そのため微細化・アモルファス化により、充放電でのSi膨張の抑制し、サイクル耐久性、更には放電容量を向上させることができるという効果が発現できると考えられる。
[0068]
 なぜ、本実施形態の負極活物質を構成するSi含有合金により上記作用効果が得られるのか、詳細は不明であるが、下記のような作用メカニズム(作用機序)が考えられる。なお、下記の作用メカニズム(作用機序)は推測によるものであり、本発明は下記作用メカニズム(作用機序)に何ら拘泥されるものではない。
[0069]
 本実施形態の負極活物質を構成するSi含有合金は、その微細組織において、Si相(特にアモルファスSi相;a-Si相)とシリサイド相(TiSi 相等)を有する構成となっている。また、シリサイド相は、Si相と比較して硬度および電子伝導性の点で優れている。そのため、充放電過程におけるSi相の膨張を、その周囲に散在するシリサイド相が抑え込むことで抑制することができる。これにより、充電時にSiとLiとが合金化する際のアモルファス-結晶の相転移(Li 15Si への結晶化)が抑制される。その結果、電気デバイスの充放電過程における負極活物質を構成するSi含有合金の膨張収縮が低減され、かつ、導電性を有するシリサイドで構成されるシリサイド相によりSi相を均一に反応させることができる。その結果、当該負極活物質が用いられる電気デバイスの高容量を示しつつ、サイクル耐久性、更には放電容量を向上することができる。
[0070]
 上記化学式(1)で表される組成において、M(遷移金属元素)の種類については、Siとの間でケイ化物(シリサイド)を形成する元素(本明細書中、単に「シリサイド形成元素」とも称する)であれば、特に制限されない。シリサイド形成元素として、好ましくはTi、Zr、Ni、Cu、Mo、V、Nb、Sc、Y、Co、CrおよびFeからなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくはTiおよびZrから選択される少なくとも一種であり、特に好ましくはTiである。これらの元素は、ケイ化物を形成した際に他の元素のケイ化物よりも高い電子伝導度を示し、かつ高い強度を有するものである。中でも、遷移金属元素MとしてTiを選択することで、Li合金化の際に、アモルファス-結晶の相転移を抑制してサイクル寿命、放電容量を向上させることができる。また、これによって、従来の負極活物質(例えば、炭素系負極活物質)よりも高容量のものとなる。特に、負極活物質(Si含有合金)への第1添加元素としてTiを選択し、第2添加元素としてSn、さらに第3添加元素としてLiを添加することで、Li合金化の際に、より一層アモルファス-結晶の相転移を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、上記化学式(1)で表される組成において、Mがチタン(Ti)である。
[0071]
 なお、遷移金属元素MがTiであり、シリサイド相に組成比が異なる2相以上(例えば、TiSi およびTiSi)が存在する場合、シリサイド相の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%がTiSi 相である(図3参照)。
[0072]
 次に、本実施形態における負極活物質を構成するSi含有合金の粒子径は特に制限されないが、平均粒子径D50としては、好ましくは0.1~20μmであり、より好ましくは0.2~10μmである。平均粒子径D90としては、好ましくは5~30μmであり、より好ましくは10~25μmである。なお、本明細書において、「平均粒子径D50」とは、レーザー回折散乱法により測定される粒度分布における積算値50%での粒径(D50)を意味する。
[0073]
 上記Si含有合金は、遷移金属のケイ化物を主成分とするシリサイド相と、Siを主成分とするSi相(好ましくは、一部にSn、Liを含み、アモルファス(非晶質または低結晶性)のSiを主成分とするa-Si相)を含む微細組織構造を有することが好ましい。シリサイド相、特にTiSi 相は、Si相、特にa-Si相と比較して硬度および電子伝導性の点で優れている。そのため、充放電過程におけるa-Si相の膨張を、TiSi 相が抑え込むことで抑制することができる。これにより、充電時にSiとLiとが合金化する際のアモルファス-結晶の相転移(Li 15Si への結晶化)が抑制される。その結果、充放電過程におけるSi含有合金の膨張収縮が低減され、かつ、導電性を有するシリサイドで構成されるシリサイド相によりa-Si相(特にSi活物質)を均一に反応させることができる。その結果、当該負極活物質が用いられる電気デバイスの高容量を示しつつ、サイクル耐久性を向上することができる。
[0074]
 前記シリサイド相が遷移金属元素のケイ化物を主成分とすることから、Mは、上記シリサイド形成元素から選択される1種以上の遷移金属元素である。すなわち、Mが、1つの遷移金属元素である場合、シリサイド相を構成するシリサイド形成元素である。またMが、2以上の遷移金属元素である場合、少なくとも1種はシリサイド相を構成するシリサイド形成元素である。残る遷移金属元素はSi相に含まれる遷移金属元素であってもよいし、シリサイド相を構成するシリサイド形成元素であってもよい。あるいは、シリサイド相及びSi相以外の遷移金属が晶出した相(遷移金属相)を構成する遷移金属元素であってもよい。
[0075]
 Si含有合金において、シリサイド相は、遷移金属のケイ化物を主成分とする。このシリサイド相は、Si相と比較して硬度および電子伝導性の点で優れている。このため、シリサイド相は、膨張時の応力に対して、Si相中のSi活物質の形状を維持する役割を担うとともに、Si相(特にSi活物質)の低い電子伝導性を改善することができる。さらに、このシリサイド相は、遷移金属のケイ化物(例えばTiSi )を含むことで、Si相との親和性に優れ、特に充電時の体積膨張における(結晶)界面での割れを抑制することができる。
[0076]
 また、上記化学式(1)で表される組成において、Mがチタン(Ti)であることが好ましい。特に、負極活物質(Si含有合金)への添加元素としてTiを選択し、第2添加元素としてSnを添加し、第3添加元素としてLiを少量添加することで、各相を微細化することができる。その結果、Li合金化の際に、より一層アモルファス-結晶の相転移を抑制してサイクル寿命(耐久性)及び放電容量を向上させることができる。また、これによって、本発明の負極活物質(Si含有合金)は、従来の負極活物質(例えば、炭素系負極活物質)よりも高容量のものとなる。したがって、遷移金属のケイ化物を主成分とするシリサイド相は、チタンシリサイド(TiSi )であるのが好ましい。
[0077]
 上記シリサイド相において、シリサイドを「主成分とする」とは、シリサイド相の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上がシリサイドである。なお、理想的にはシリサイドが100質量%である。しかし、合金中には、原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入したりする不可避不純物が含まれうる。よって、100質量%の第一の相を得るのは実際上、困難である。
[0078]
 Si含有合金において、Si相は、メカニカルアロイ法(MA法)を用いることにより、非晶質または低結晶性のSiを主成分として含有するa-Si相を形成することができる。更にMA法を用いることで、一部にSn、Liを含み(具体的には、Sn、LiがSi中に分散、固溶(固溶した状態で分散)している、或いはSi中に内包される形で(細かく)分散している)、非晶質または低結晶性のSiを主成分とするa-Si相を形成できる。
[0079]
 このSi相(特にa-Si相)は、本実施形態の電気デバイス(リチウムイオン二次電池)の作動時にリチウムイオンの吸蔵・放出に関与する相であり、電気化学的にLiと反応可能な相である。Si相は、Siを主成分とするため重量あたりおよび体積あたりに多量のLiを吸蔵・放出することが可能である。ただし、Siは電子伝導性に乏しいことから、Si相にはリンやホウ素などの微量の添加元素や遷移金属などが含まれていてもよい。なお、Si相は、シリサイド相よりもアモルファス化していることが好ましい。かような構成とすることにより、負極活物質(Si含有合金)をより高容量なものとすることができる。Si相がシリサイド相よりもアモルファス化しているか否かは、電子線回折分析により確認することができる。具体的には、電子線回折分析によると、単結晶相についは二次元点配列のネットパターン(格子状のスポット)が得られ、多結晶相についてはデバイシェラーリング(回折環)が得られ、アモルファス相についてはハローパターンが得られる。これを利用することで、上記の確認が可能となるのである。
[0080]
 また、好ましくはSi相中に含まれるSnもカーボン負極材料(炭素負極活物質)に比べて重量あたりおよび体積あたりに多量のLiを吸蔵・放出することが可能である。
[0081]
 上記Si相において、Siを「主成分とする」とは、Si相の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上が上記Siである。
[0082]
 上記Si相において、好ましくは、一部にSnを含み、としたのは、Si相にSnを含む場合、Si中にSnが分散固溶している、或いはSi中に内包された形で分散している(Sn-Si固溶体や内包されたSnが活物質として機能する)と考えられるためである。また、Snの残りの部分は、Si相ではなく、シリサイド相やSi相の境界部分などに晶出してSn相(活物質として機能する)を形成していると考えられる。
[0083]
 上記Si相において、好ましくは、一部にLiを含み、としたのは、Si相にLiを含む場合、Si中にLiが分散固溶している、或いはSi中に内包された形で分散していると考えられるためである。また、Liの残りの部分は、Si相ではなく、シリサイド相内部、シリサイド相やSi相の境界部分などに分散した形で晶出してLi相を形成していると考えられる。
[0084]
 〈Si含有合金の微細組織構造〉
 本実施形態における負極活物質を構成するSi含有合金は、上記したように、シリサイド相の母相中に、Siの結晶構造の内部にSn(更にはLi)が固溶してなる非晶質または低結晶性のSiを主成分とする相(a-Si相)が分散されてなる構造を有することが好ましい。すなわち、連続相としてのシリサイド相からなる海の中に、分散相としてのa-Si相からなる島が分散しているいわゆる海島構造を有することが、本実施形態に係るSi含有合金の好ましい形態の1つである。このような構造を有することで、負極活物質(Si含有合金)の電子伝導性をよりいっそう向上させることができ、しかもa-Si相の膨張時の応力を緩和して活物質の割れを防止することができる。なお、Si含有合金がこのような微細組織構造を有しているか否かは、例えば、Si含有合金を高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)を用いて観察した後、観察画像と同じ視野についてEDX(エネルギー分散型X線分光法)により元素強度マッピングを行うことにより確認することができる。
[0085]
 〈a-Si相〉
 本実施形態に係るSi含有合金において、a-Si相は、非晶質または低結晶性のSiを含む相である。このa-Si相は、本実施形態の電気デバイス(リチウムイオン二次電池)の作動時にリチウムイオンの吸蔵・放出に関与する相であり、電気化学的にリチウムと反応可能(重量あたりおよび体積あたりに多量のリチウムを吸蔵・放出することが可能)な相である。また、a-Si相を構成するSiの結晶構造の内部にはSn(更にはLi)が固溶していることが好ましい。さらに、ケイ素は電子伝導性に乏しいことから、a-Si相にはリンやホウ素などの微量の添加元素や遷移金属などが含まれていてもよい。
[0086]
 このa-Si相は、シリサイド相よりもアモルファス化していることが好ましい。かような構成とすることにより、負極活物質(Si含有合金)をより高容量なものとすることができる。なお、a-Si相がシリサイド相よりもアモルファス化しているか否かは、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)を用いたa-Si相およびシリサイド相のそれぞれの観察画像を高速フーリエ変換(FFT)して得られる回折図形から判定することができる。すなわち、この回折図形に示される回折パターンは、単結晶相については二次元点配列のネットパターン(格子状のスポット)を示し、多結晶相についてはデバイシェラーリング(回折環)を示し、非晶質相についてはハローパターンを示す。これを利用することで、上記の確認が可能となる。本実施形態において、a-Si相は、非晶質または低結晶性であればよいが、より高いサイクル耐久性を実現するという観点から、a-Si相は、非晶質のものであることが好ましい。
[0087]
 なお、本実施形態に係るSi含有合金はSnを必須に含むが、Sn(更にはLi)はSiとの間でシリサイドを形成しない元素であることから、シリサイド相ではなくa-Si相に存在することになる。そしてSnの含有量が少ない場合には全てのSn元素はa-Si相においてSiの結晶構造の内部に固溶して存在する。一方、Snの含有量が多くなると、a-Si相のSi中に固溶しきれなくなったSn元素は凝集してSn単体の結晶相として存在する。本実施形態において、このようなSn単体の結晶相は存在しないことが好ましい。
[0088]
 〈シリサイド相〉
 一方、上述した海島構造の海(連続相)を構成するシリサイド相は、シリサイド(TiSi 等)を主成分とする結晶相である。このシリサイド相は、シリサイド(TiSi 等)を含むことでa-Si相との親和性に優れ、特に充電時の体積膨張における結晶界面での割れを抑制することができる。さらに、シリサイド相はa-Si相と比較して電子伝導性および硬度の観点で優れている。このように、シリサイド相はa-Si相の低い電子伝導性を改善し、かつ膨張時の応力に対して活物質の形状を維持する役割をも担っている。本実施形態においては、このような特性を有するシリサイド相が海島構造の海(連続相)を構成することで、負極活物質(Si含有合金)の電子伝導性をよりいっそう向上させることができ、しかもa-Si相の膨張時の応力を緩和して活物質の割れを防止することができ、サイクル耐久性の向上に寄与しているものと考えられる。
[0089]
 さらに、本実施形態において好ましくは、活物質として機能しうるSi相であるavailable-Si相とシリサイド相との質量比が所定の範囲内の値であると、より一層優れたサイクル耐久性が実現可能である。具体的に、Si含有合金におけるavailable-Si相の質量(m )に対するシリサイド相の質量(m )の比(シリサイド相/active-Si相の比=m /m )の値は、好ましくは1.6以上であり、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは1.8以上である。上記観点から、上記m /m の値は、好ましくは2.6以下であり、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.4以下であり、特に好ましくは2.3以下である。ここで、当該実施形態において、Si含有合金におけるavailable-Si相の質量比についても特に制限はないが、他の構成元素の特性を発揮させつつ十分な容量を確保するという観点から、Si含有合金100質量%に占めるavailable-Si相の質量(m )の比は、好ましくは26質量%以上であり、より好ましくは27質量%以上であり、さらに好ましくは28質量%以上であり、特に好ましくは28質量%~合金中のSi全量(質量%)であり、なかでも好ましくは28~35質量%である。本実施形態によれば、Sn(原子量=118.7)の一部をLi(原子量=6.941)によって置き換えることで、SnとLiとの合計原子数(原子モル数)が一定の場合でもこれらの質量比を大幅に低下させることが可能となる。その結果、m /m の値を比較的高めに維持したまま、Si含有合金からなる負極活物質の容量を増大させることが可能となる。
[0090]
 なお、上記m /m の値を算出するためのSi含有合金におけるavailable-Si相の質量(m )及びシリサイド相の質量(m )については、合金組成における構成金属元素の質量%を原子%へ変換し、Tiが全てTiSi になるものと仮定して、下記式により算出される理論値であり、後述する実施例においてもこの手法にてavailable-Si量及びTiSi 量を算出している。
[0091]
 available-Si量(質量%)=
([at%Si]-[at%Ti]×2)×28.0855(Si原子量)/{([at%Si]-[at%Ti]×2)×28.0855(Si原子量)+[at%Sn]×118.71(Sn原子量)+[at%Ti]×104.038(TiSi 式量)}
 ここで、組成がSi 64.7Sn 5.2Ti 29.8Li 0.34の四元系合金を例に挙げて計算すると、合金のat%Si=76.3原子%、合金のat%Ti=20.6原子%であることから、available-Si量(質量%)は29.7質量%と算出される。
[0092]
 同様に、シリサイド(TiSi )量は、
 TiSi 量(質量%)=
([at%Ti]×104.038(TiSi 式量))/{([at%Si]-[at%Ti]×2)×28.0855(Si原子量)+[at%Sn]×118.71(Sn原子量)+[at%Ti]×104.038(TiSi 式量)}
にて算出可能である。ここでも組成がSi 64.7Sn 5.2Ti 29.8Li 0.34の四元系合金を例に挙げて計算すると、合金のat%Si=76.3原子%、合金のat%Ti=20.6原子%であることから、シリサイド(TiSi )量(質量%)は64.7質量%と算出される。
[0093]
 〈Si含有合金のX線回折測定で観測される回折ピーク〉
 上述したように、本実施形態における負極活物質を構成するSi含有合金は、上記化学式(1)において、Mが、Tiである場合、X線回折測定で観測される特定の2つの回折ピークの強度が所定の関係を有する点にも特徴がある。すなわち、Si含有合金のCuKα1線を用いたX線回折(XRD)測定において、2θ=38~40°の範囲におけるC54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク強度Xに対する、2θ=27~29°の範囲におけるSiの(111)面の回折ピーク強度Yの比の値(X/Y)が、1.2以下である点に特徴を有する。
[0094]
 ここで、チタンのダイシリサイド(TiSi )について説明する。TiSi には、C49構造およびC54構造という2種類の結晶構造が存在する。C49構造は抵抗率が60μΩ・cm程度と高抵抗率を示す準安定相であり、底心-斜方晶系の構造である。一方、C54構造は抵抗率が15~20μΩ・cm程度と低抵抗率の安定相であり、面心-斜方晶系の構造である。また、C49構造を有するTiSi は400℃程度の低温で形成され、C54構造を有するTiSi は800℃程度の高温で形成される。本実施形態に係るSi含有合金は、Si含有合金と同一の組成を有する母合金を用いたメカニカルアロイ(MA)法により製造することができる。比較例1、2で示されるように、当該製造方法において、MA時間を大きくすると、C54構造を有するTiSi 割合が小さくなることがわかる。また、実施例1~4及び比較例1で示されるように、当該製造方法において、MA時間が同じであると、Liを少量添加した実施例のSi含有合金の方が、C54構造を有するTiSi 割合が小さくなることがわかる。
[0095]
 なお、本明細書において、上記回折ピークの強度比を算出するためのX線回折測定は、後述する実施例の欄に記載の手法を用いて行うものとする。
[0096]
 次に、本明細書における回折ピーク強度の求め方について説明する。例えば、2θ=38~40°の範囲におけるC54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク強度Xは、以下のようにして求めることができる(図3参照)。
[0097]
 まず、X線回折測定により得られた回折スペクトルにおいて、2θ=38°における垂線と回折スペクトルとが交わる点をAとする。同様に、2θ=40°における垂線とX線路回折スペクトルとが交わる点をBとする。ここで、線分ABをベースラインとし、C54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピークにおける垂線と当該ベースラインとが交わる点をCとする。そして、C54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピークの頂点Dと点Cとを結ぶ線分CDの長さとして、C54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク強度Xを求めることができる。
[0098]
 2θ=27~29°の範囲におけるSiの(111)面の回折ピーク強度Yについても上記のピーク強度Xと同様の方法で求めることができる。
[0099]
 本実施形態に係る負極活物質を構成するSi含有合金のX線回折測定において、2θ=38~40°の範囲におけるC54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク強度Xに対する、2θ=27~29°の範囲におけるSiの(111)面の回折ピーク強度Yの比の値(X/Y)は、1.2以下であることが好ましい。当該比の値(X/Y)は、好ましくは1.1以下であり、より好ましくは1.0以下である。当該比の値(X/Y)が1.2以下、より好ましくは1.0以下であると、アモルファス化度が過度に大きくなり過ぎるのを効果的に抑制する事ができ、アモルファス状態から結晶状態へ転移し大きな体積変化を起こすのを効果的に抑制することができる。そのため、電極のサイクル寿命を低下させるのを効果的に抑制し、リチウムイオン二次電池等の電気デバイスのサイクル耐久性を向上させることができる。なお、上記比の値(X/Y)の下限は、特に制限されないが、充放電容量の観点から、好ましくは0.5以上である。
[0100]
 上記比の値(X/Y)を1.2以下に制御する方法は、特に制限されないが、Si含有合金の合金組成や、MA法を用いたSi含有合金の製造方法においてMA時間やMAで用いる装置(例えば、ボールミル装置)の回転数等の製造条件を適宜設定することにより調整することができる。例えば、合金組成については、Siに対するTiの配合量を多くすると、シリサイドの生成量が多くなるため、上記比の値(X/Y)が大きくなる傾向がある。また、MA法において、プロセス時間短縮の観点から、MA時間を短くすると、C54構造を有するTiSi 割合が増加する。また、MA時間を短く抑えると、Siの結晶がアモルファス化されにくいため、結晶性Siの割合が増大する。さらにMA時間を短くした場合、少量添加するLi量の増加に応じて、C54構造を有するTiSi 割合は減少する傾向にあり、結晶性Siの割合が増大する傾向にあることがわかる(図3参照)。これらから、MA時間を短くし、Liを少量添加することで、上記比の値(X/Y)を小さくでき、上記比の値(X/Y)を1.2以下に制御できることがわかる(図4参照)。
[0101]
 上述したように、本実施形態に置いて、X線回折測定で観測される特定の2つの回折ピークの強度が所定の関係を有するSi含有合金からなる負極活物質を用いることにより、電気デバイスのサイクル耐久性及び放電容量が向上するメカニズムは不明であるが、本発明者らは以下のように推測している。すなわち、本実施形態に係るSi含有合金は、MA法を用いた製造方法により製造されうるが、MA時間を短くし、Liを少量添加することで、アモルファス化度が過度に大きくなり過ぎるのを効果的に抑制する事ができ(図4参照)、アモルファス状態から結晶状態へ転移し大きな体積変化を起こすのを効果的に抑制することができる。そのため、電極のサイクル寿命を低下させるのを効果的に抑制し、リチウムイオン二次電池等の電気デバイスのサイクル耐久性を向上させることができると考えられる。ただし、上記のメカニズムはあくまでも推測であり、本発明が上記メカニズムによって限定的に解釈されるべきではない。
[0102]
 <負極活物質の製造方法>
 本実施形態に係る電気デバイス用負極活物質の製造方法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。本実施形態では、上記した一般式(1)で表される組成を有するSi含有合金からなる負極活物質の製造方法の一例としては、メカニカルアロイ(MA)法(メカニカルアロイング処理による合金の作製)が好ましい。これは、従来、高容量、高耐久を有するSi含有合金(SiSnTi合金等の3元系合金)を得ようとすると、MA法によるSi含有合金のアモルファス化が有効とされていた。しかしながら、MA法では、プロセス時間が非常に長くかかり(MA時間;100時間程度)、コスト高になるという課題があった。そこで、液体急冷凝固(MS)法とMA法とを組み合わせることにより、プロセス時間をある程度まで短くできたものの(MS+MA時間;50時間程度)、なお長時間を要したため、十分なコスト低減を図ることができないという課題があった。本形態の製造方法では、プロセス時間の更なる短縮を図るべく鋭意検討した結果、Si合金溶要製時にLiを添加しMA処理することでプロセス時間の大幅な短縮によっても十分な性能(高容量、高耐久)を有するSi含有合金が得られることを見出したものである。すなわち、本実施形態では、前記Si含有合金と同一の組成を有する母合金に対してMA処理を施して前記Si含有合金からなる電気デバイス用負極活物質を得る、電気デバイス用負極活物質の製造方法が提供される。このように、3元系合金にLiを添加した母語金を用いることで、メカニカルアロイング処理を施す際のプロセス時間を大幅に短縮化した上で、十分な性能(高容量、高耐久)を有する上記一般式(1)で表される組成を有するSi含有合金を製造することが可能となる。以下、本形態に係る製造方法について、説明する。
[0103]
 (MA法;メカニカルアロイング処理)
 (母合金の作製)
 母合金を得るために、原料として、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、リチウム(Li)、遷移金属元素M(例えば、チタン(Ti)等)のそれぞれについて、高純度の原料(単体のインゴット、ワイヤ、板など)を準備する。続いて、最終的に製造したいSi含有合金(負極活物質)の組成を考慮して、アーク溶解法などの公知の手法により、インゴット等の形態の母合金を作製する。ここで、必要に応じて、上記で得られたインゴット等の形態の母合金は、メカニカルアロイング処理に用いるボールミル装置等に投入しやすい大きさに、適当な粉砕機で粗粉砕を行い、得られた粉砕物に対してメカニカルアロイング処理を行ってもよい。
[0104]
 (MA法;メカニカルアロイング処理)
 メカニカルアロイング処理は、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えばボールミル装置(例えば、遊星ボールミル装置)を用いて、粉砕ポットに粉砕ボールおよび合金の原料粉末を投入し、回転数を高くして高エネルギーを付与することで、合金化を図ることができる。合金化処理は、回転数を高くして原料粉末に高エネルギーを付与することで合金化させることができる。すなわち、高エネルギー付与により熱が生じ、原料粉末が合金化してSi相の適度なアモルファス化及び当該Si相へのSn(更にはLi)の分散(固溶)、並びにシリサイド相の形成が進行する。合金化処理で用いる装置の回転数(付与エネルギー)を高くする(300rpm以上)ことにより、得られる合金の圧縮強度を向上することができ、合金活物質粒子の割れを抑制しつつ、電極構造を維持できる。その結果、導電ネットワークからのSi(活物質粒子)の脱落を防止し、不可逆容量化するのを防ぐことができる。また、合金活物質粒子の割れによる合金新生面が生じ難いため、当該新生面と電解液との反応を防止し、電解液の分解を防ぐことで、サイクル耐久性の劣化を効果的に防止することができる。そのため、当該Si-Sn-M-Li四元系合金(負極活物質)が用いられる電気デバイスの高容量を保持しつつ、サイクル耐久性及び放電容量を向上することができる。かかる観点から、ボールミル装置の回転数は、好ましくは300rpm以上、より好ましくは400rpm以上、さらに好ましくは500rpm以上、特に好ましくは600rpm以上である。また、MAによる処理時間(プロセス時間)は、プロセス時間の大幅な短縮化の観点から、好ましくは15分以上であり、より好ましくは30分以上であり、さらに好ましくは45分以上であり、特に好ましくは60分(1時間)以上である。同様に、プロセス時間の大幅な短縮化の観点から、好ましくは180分(3時間)以下であり、より好ましくは150分(2.5時間)以下であり、さらに好ましくは120分(2時間)分以下であり、特に好ましくは90分(1.5時間)以下である。
[0105]
 本形態では、上記メカニカルアロイング処理の時間の短縮をより一層図る上では、使用する装置の回転数や粉砕ボール数、試料(合金の原料粉末)充填量などを変化させることによっても、Si含有合金に与えられるエネルギーが変化する。そのため、こうした条件の最適化により、Si含有合金に与えられるエネルギーを変えることなく(同じ性能の合金を得る上で)、上記メカニカルアロイング処理の時間の短縮が図られるように、他の条件を制御することが可能である。
[0106]
 上述した手法によるメカニカルアロイング処理は、Liを含有する合金を用いることから、乾燥雰囲気下で行われるが、メカニカルアロイング処理後の粒度分布は大小の幅が非常に大きい場合がある。このため、粒度を整えるための粉砕処理および/または分級処理を行うことが好ましい。
[0107]
 なお、チタンのダイシリサイド(TiSi )には、C49構造及びC54構造という2種類の結晶構造が存在する。遷移金属元素MにTiを用いた場合、メカニカルアロイング処理を施して得られたSi含有合金に含まれるダイシリサイド(TiSi )はC54構造を有するものであることも確認されている(図3参照)。C54構造はC49構造と比較して低い抵抗率(高い電子伝導性)を示すことから、負極活物質としてはより好ましい結晶構造を有するものである。
[0108]
 以上、負極活物質層に必須に含まれる上記一般式(1)で表される組成を有するSi含有合金(負極活物質)について説明したが、負極活物質層はその他の負極活物質を含んでいてもよい。上記所定の合金以外の負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどのカーボン、SiやSnなどの純金属や上記所定の組成比を外れる合金系活物質、あるいはTiO、Ti 、TiO 、もしくはSiO 、SiO、SnO などの金属酸化物、Li 4/3Ti 5/3もしくはLi MnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物(複合窒化物)、Li-Pb系合金、Li-Al系合金、Liなどが挙げられる。ただし、上記Si含有合金を負極活物質として用いることにより奏される作用効果を十分に発揮させるという観点からは、負極活物質の全量100質量%に占める上記Si含有合金の含有量は、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%であり、さらに好ましくは90~100質量%であり、特に好ましくは95~100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
[0109]
 続いて、負極活物質層13は、バインダを含む。
[0110]
 (バインダ)
 バインダは、活物質同士または活物質と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。負極活物質層に用いられるバインダの種類についても特に制限はなく、正極活物質層に用いられるバインダとして上述したものが同様に用いられうる。よって、ここでは詳細な説明は省略する。
[0111]
 なお、負極活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは負極活物質層に対して、0.5~20質量%であり、より好ましくは1~15質量%である。
[0112]
 (正極および負極活物質層15、13に共通する要件)
 以下に、正極および負極活物質層15、13に共通する要件につき、説明する。
[0113]
 正極活物質層15および負極活物質層13は、必要に応じて、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等を含む。特に、本形態の負極活物質層13では、活物質に導電性の低いSi含有合金を用いるため、導電助剤を必須に含む。
[0114]
 (導電助剤)
 導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
[0115]
 活物質層へ混入されてなる導電助剤の含有量は、活物質層の総量に対して、1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上の範囲である。また、活物質層へ混入されてなる導電助剤の含有量は、活物質層の総量に対して、15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下の範囲である。活物質自体の電子導電性は低く導電助剤の量によって電極抵抗を低減できる活物質層での導電助剤の配合比(含有量)を上記範囲内に規定することで以下の効果が発現される。即ち、電極反応を阻害することなく、電子導電性を十分に担保することができ、電極密度の低下によるエネルギー密度の低下を抑制でき、ひいては電極密度の向上によるエネルギー密度の向上を図ることができる。
[0116]
 また、上記導電助剤とバインダの機能を併せ持つ導電性結着剤をこれら導電助剤とバインダに代えて用いてもよいし、あるいはこれら導電助剤とバインダの一方ないし双方と併用してもよい。導電性結着剤としては、既に市販のTAB-2(宝泉株式会社製)を用いることができる。
[0117]
 (電解質塩(リチウム塩))
 電解質塩(リチウム塩)としては、Li(C SO N、LiPF 、LiBF 、LiClO 、LiAsF 、LiCF SO 等が挙げられる。
[0118]
 (イオン伝導性ポリマー)
 イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
[0119]
 正極活物質層および負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水電解質二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
[0120]
 各活物質層(集電体片面の活物質層)の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮し、通常1~500μm程度、好ましくは2~100μmである。
[0121]
 <集電体>
 集電体11、12は導電性材料から構成される。集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。
[0122]
 集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1~100μm程度である。
[0123]
 集電体の形状についても特に制限されない。図1に示す積層型電池10では、集電箔のほか、網目形状(エキスパンドグリッド等)等を用いることができる。
[0124]
 なお、負極活物質をスパッタ法等により薄膜合金を負極集電体12上に直接形成する場合には、集電箔を用いるのが望ましい。
[0125]
 集電体を構成する材料に特に制限はない。例えば、金属や、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が採用されうる。
[0126]
 具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
[0127]
 また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
[0128]
 非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
[0129]
 上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
[0130]
 導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
[0131]
 導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5~35質量%程度である。
[0132]
 <電解質層>
 電解質層17を構成する電解質としては、液体電解質、ポリマー電解質または超イオン伝導体であるセラミックス材料が用いられうる。
[0133]
 液体電解質は、有機溶媒にリチウム塩(電解質塩)が溶解した形態を有する。有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)等のカーボネート類が例示される。
[0134]
 また、リチウム塩としては、Li(CF SO N、Li(C SO N、LiPF 、LiBF 、LiAsF 、LiTaF 、LiClO 、LiCF SO 等の電極の活物質層に添加され得る化合物を採用することができる。
[0135]
 一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質とに分類される。
[0136]
 ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質(電解液)が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導を遮断することが容易になる点で優れている。
[0137]
 マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
[0138]
 ゲル電解質中の上記液体電解質(電解液)の割合としては、特に制限されるべきものではないが、イオン伝導度などの観点から、数質量%~98質量%程度とするのが望ましい。本実施形態では、電解液の割合が70質量%以上の、電解液が多いゲル電解質について、特に効果がある。
[0139]
 なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質や真性ポリマー電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータ(不織布を含む)の具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜や多孔質の平板、更には不織布が挙げられる。
[0140]
 真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
[0141]
 ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
[0142]
 さらに、本実施形態では、イオン伝導率が有機電解質の2倍で、フル充電も数分で済む、超イオン伝導体であるLi 9.54Si 1.741.4411.7Cl 0.3などのセラミックス材料を固体電解質として用いてもよい。かかる固体電解質は、次世代電池とされる全固体(型)セラミックス電池に好適に適用し得るものである。かかる電池では、低温(マイナス30℃)、高温(100℃)でも安定して充電、放電ができる。
[0143]
 <集電板およびリード>
 電池外部に電流を取り出す目的で、集電板を用いてもよい。集電板は集電体やリードに電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
[0144]
 集電板を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極集電板と負極集電板とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
[0145]
 正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
[0146]
 <電池外装材>
 電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
[0147]
 なお、上記のリチウムイオン二次電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
[0148]
 <リチウムイオン二次電池の外観構成>
 図2は、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
[0149]
 図2に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極集電板59、負極集電板58が引き出されている。発電要素57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極集電板59および負極集電板58を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、図1に示すリチウムイオン二次電池(積層型電池)10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
[0150]
 なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のもの(ラミネートセル)に制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のもの(コインセル)や角柱型形状(角型セル)のもの、こうした円筒型形状のものを変形させて長方形状の扁平な形状にしたようなもの、更にシリンダー状セルであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型や角柱型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
[0151]
 また、図2に示す正極集電板59、負極集電板58の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極集電板59と負極集電板58とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極集電板59と負極集電板58をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出すようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、集電板に変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
[0152]
 上記したように、本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極活物質を用いてなる負極ならびにリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、好適に利用することができる。即ち、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
[0153]
 なお、上記実施形態では、電気デバイスとして、リチウムイオン電池を例示したが、これに制限されるわけではなく、他のタイプの二次電池、さらには一次電池にも適用できる。また、電池だけではなくキャパシタにも適用できる。
実施例
[0154]
 本発明を、以下の実施例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[0155]
 (実施例1)
 [Si含有合金の作製]
 Si含有合金(組成:Si 64.7Sn 5.2Ti 29.8Li 0.34)は、メカニカルアロイ法により製造した。具体的には、Si:63.9mass%、Sn:4.9mass%、Ti:29.5mass%、Li:1.7mass%となるように各元素を秤量し、アーク溶解炉を用いて合金インゴットを作製した。合金インゴットの成分はICP分析の結果、Si:64.7mass%、Sn:5.2mass%、Ti:29.8mass%、Li:0.34mass%であった。得られた合金インゴットを乳鉢で2~3mmサイズに予備粉砕後、ドイツ フリッチュ社製遊星ボールミル装置P-6を用いて、ジルコニア製粉砕ポットにジルコニア製粉砕ボールと予備粉砕した合金を投入し、400rpmで1時間、メカニカルアロイ処理を実施し、負極活物質として上記組成を有するSi含有合金を得た。得られたSi含有合金(負極活物質)粉末の平均粒子径D50は、6.3μmであった。溶解材料には高純度Si(11N)、高純度Tiワイヤ(3N)、高純度Snショット(4N)、高純度リチウム(純度:99%以上)を用いた。
[0156]
 [負極の作製]
 更に、上記負極活物質80質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック5質量部と、バインダであるポリイミド15質量部を混合し、N-メチルピロリドンに分散させて負極スラリーを得た。負極スラリーは脱泡混練機(Thinky AR-100)を用いて作製した。その後、負極スラリーを、銅箔よりなる負極集電体の両面にそれぞれ負極活物質層の厚さが30μmとなるように均一に塗布し、真空中で24時間乾燥させて、負極を得た。
[0157]
 [リチウムイオン二次電池(コインセル)の作製]
 上記で作製した負極と対極Liとを対向させ、この間にセパレータ(ポリオレフィン、膜厚20μm;セルガード2400(ポリプロピレン製セパレータ;セルカード社製))を配置した。次いで、負極、セパレータ、および対極Liの積層体をコインセル(CR2032、材質:ステンレス鋼(SUS316))の底部側に配置した。さらに、正極と負極との間の絶縁性を保つためガスケットを装着し、下記電解液をシリンジにより注入し、スプリングおよびスペーサを積層し、コインセルの上部側を重ねあわせ、かしこめることにより密閉して、リチウムイオン二次電池(コインセル)を得た。対極Liには、Li箔(直径15mm、厚さ200μm、本城金属株式会社製)を用いた。なお、対極には正極スラリー電極(例えば、LiCoO 、LiNiO 、LiMn 、Li(Ni、Mn、Co)O 、Li(Li、Ni、Mn、Co)O 、LiRO -LiMn (R=Ni、Mn、Co等の遷移金属元素)でも可能である。
[0158]
 なお、上記電解液としては、エチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DC=1:2(体積比)の割合で混合した有機溶媒に、リチウム塩(支持塩)である六フッ化リン酸リチウム(LiPF )を、濃度が1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。
[0159]
 (実施例2)
 Si含有合金(組成:Si 63.9Sn 5.4Ti 29.9Li 0.80)は、メカニカルアロイ法により製造した。具体的には、Si:63.3mass%、Sn:4.9mass%、Ti:29.2mass%、Li:2.6mass%となるように各元素を秤量し、アーク溶解炉を用いて合金インゴットを作製した。合金インゴットの成分はICP分析の結果、Si:63.9mass%、Sn:5.4mass%、Ti:29.9mass%、Li:0.80mass%であった。以降の工程は、実施例1と同様の方法でSi含有合金(負極活物質)、負極およびリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。また、溶解材料にも、実施例1と同様のものを用いた。なお、得られたSi含有合金(負極活物質)粉末の平均粒子径D50は、6.8μmであった。
[0160]
 (実施例3)
 Si含有合金(組成:Si 64.4Sn 5.3Ti 29.4Li 0.88)は、メカニカルアロイ法により製造した。具体的には、Si:62.1mass%、Sn:4.8mass%、Ti:28.7mass%、Li:4.4mass%となるように各元素を秤量し、アーク溶解炉を用いて合金インゴットを作製した。合金インゴットの成分はICP分析の結果、Si:64.4mass%、Sn:5.3mass%、Ti:29.4mass%、Li:0.88mass%であった。以降の工程は、実施例1と同様の方法でSi含有合金(負極活物質)、負極およびリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。また、溶解材料にも、実施例1と同様のものを用いた。なお、得られたSi含有合金(負極活物質)粉末の平均粒子径D50は、5.2μmであった。
[0161]
 (実施例4)
 Si含有合金(組成:Si 66.1Sn 5.3Ti 27.9Li 0.74)は、メカニカルアロイ法により製造した。具体的には、Si:65.2mass%、Sn:4.9mass%、Ti:27.2mass%、Li:2.7mass%となるように各元素を秤量し、アーク溶解炉を用いて合金インゴットを作製した。合金インゴットの成分はICP分析の結果、Si:66.1mass%、Sn:5.3mass%、Ti:27.9mass%、Li:0.74mass%であった。以降の工程は、実施例1と同様の方法でSi含有合金(負極活物質)、負極およびリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。また、溶解材料にも、実施例1と同様のものを用いた。なお、得られたSi含有合金(負極活物質)粉末の平均粒子径D50は、6.0μmであった。
[0162]
 (比較例1)
 Si含有合金(Si 65Sn Ti 30)は、メカニカルアロイ法により製造した。具体的には、Si:65mass%、Sn:5mass%、Ti:30mass%となるように各元素を秤量し、アーク溶解炉を用いて合金インゴットを作製した。合金インゴットの成分はICP分析の結果、Si:65mass%、Sn:5mass%、Ti:30mass%であった。以降の工程は、実施例1と同様の方法でSi含有合金(負極活物質)、負極およびリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。また、溶解材料には、実施例1と同様のもの(Liは除く)を用いた。なお、得られたSi含有合金(負極活物質)粉末の平均粒子径D50は、7.1μmであった。
[0163]
 (比較例2)
 [Si含有合金の作製]
 Si含有合金(Si 65Sn Ti 30)は、メカニカルアロイ法により製造した。具体的には、Si:65mass%、Sn:5mass%、Ti:30mass%となるように各元素を秤量し、アーク溶解炉を用いて合金インゴットを作製した。合金インゴットの成分はICP分析の結果、Si:65mass%、Sn:5mass%、Ti:30mass%であった。得られた合金インゴットを乳鉢で2~3mmサイズに予備粉砕後、ドイツ フリッチュ社製遊星ボールミル装置P-6を用いて、ジルコニア製粉砕ポットにジルコニア製粉砕ボールと予備粉砕した合金を投入し、400rpmで1時間、メカニカルアロイ処理を実施した。固着したSi合金粉末の掻き落とし、400rpmで1時間のメカニカルアロイ処理を合計24回繰り返し、24時間メカニカルアロイ処理を実施し、負極活物質として上記組成を有するSi含有合金を得た。得られたSi含有合金(負極活物質)粉末の平均粒子径D50は、6.3μmであった。溶解材料には高純度金属Si(11N)、高純度Tiワイヤ(3N)、高純度Snショット(4N)を用いた。
[0164]
 [負極の作製]
 更に、上記負極活物質80質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック5質量部と、バインダであるポリイミド15質量部と、を混合し、N-メチルピロリドンに分散させて負極スラリーを得た。負極スラリーは脱泡混練機(Thinky AR-100)を用いて作製した。その後、負極スラリーを、銅箔よりなる負極集電体の両面にそれぞれ負極活物質層の厚さが30μmとなるように均一に塗布し、真空中で24時間乾燥させて、負極を得た。
[0165]
 [リチウムイオン二次電池(コインセル)の作製]
 以降の工程は、実施例1と同様の方法でリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
[0166]
 実施例1~4及び比較例1~2のSi含有合金を作製に要したMA時間(メカニカルアロイング処理時間)、溶解材料の仕込み組成、得られたSi含有合金の実組成(ICP分析)を表1に示す。
[0167]
[表1]


[0168]
 [サイクル耐久性の評価]
 実施例1~4および比較例1~2のそれぞれにおいて作製した各リチウムイオン二次電池(コインセル)について以下の充放電試験条件に従ってサイクル耐久性評価を行った。
[0169]
 (充放電試験条件)
  1)充放電試験機:HJ0501SM8A(北斗電工株式会社製)
  2)充放電条件[充電過程]0.3C、2V→10mV(定電流・定電圧モード)
         [放電過程]0.3C、10mV→2V(定電流モード)
  3)恒温槽:PFU-3K(エスペック株式会社製)
  4)評価温度:300K(27℃)。
[0170]
 評価用セルは、充放電試験機を使用して、上記評価温度に設定された恒温槽中にて、充電過程(評価用電極へのLi挿入過程を言う)では、定電流・定電圧モードとし、0.3Cにて2Vから10mVまで充電した。その後、放電過程(評価用電極からのLi脱離過程を言う)では、定電流モードとし、0.3Cにて10mVから2Vまで放電した。以上の充放電サイクルを1サイクルとして、同じ充放電条件にて、初期(初回)サイクル(1サイクル)~50サイクルまで充放電試験を行った。そして、1サイクル目の放電容量に対するnサイクル目の放電容量の割合(各サイクル毎の放電容量維持率[%])をそれぞれ求め、サイクル数と当該放電容量維持率[%]との関係を図5に示す。ここで、nは2~50までの整数である。また、1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の割合(耐久性;放電容量維持率[%])を求めた結果を下記表2に示す。また、上記1~50サイクルまで充放電試験を行い、1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の割合(50サイクル後の放電容量維持率[%])を求め、放電容量と当該放電容量維持率[%]との関係を図6に示す。また、MA時間、実組成及び合金の構成相(available-Si相、TiSi 相(シリサイド相)、電池性能(充電容量、放電容量、初回(初期)充放電効率)についても下記表2に示す。更に、実施例3の充放電効率、充放電効率、真効率を図7に示し、比較例1の充放電効率、放充電効率、真効率を図8に示す。ここで、充放電効率(%)=nサイクル目の放電容量/nサイクル目の充電容量×100である。また、放充電効率(%)=(n+1)サイクル目の充電容量/nサイクル目の放電容量×100である。さらに、真効率(%)=充放電効率/放充電効率×100である。なお、nは1~50までの整数である。
[0171]
[表2]


[0172]
 [負極活物質の組織構造の分析]
 実施例1~4および比較例1~2のそれぞれにおいて作製したSi含有合金(負極活物質)の組織構造を、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)を用いて観察した後、観察画像と同じ視野についてEDX(エネルギー分散型X線分光法)により元素強度マッピングを行うことにより確認した。その結果、実施例1~4および比較例1~2については、TiSi 相(シリサイド相)と、Siの結晶構造の内部にSn(更にはLi)が固溶してなる非晶質または低結晶性のSiを主成分とするSi相とを有する構造であることが確認された。
[0173]
 また、実施例1~4および比較例1~2のそれぞれにおいて作製したSi含有合金(負極活物質)の結晶構造をX線回折測定法により分析した。X線回折測定法に用いた装置および条件は以下の通りである。
[0174]
 装置名:リガク社製、X線回折装置(SmartLab9kW)
 電圧・電流:45kV・200mA
 X線波長:CuKα1。
[0175]
 実施例1~4および比較例1~2のそれぞれのSi含有合金(負極活物質)について取得されたX線回折スペクトルを図3に示す。図3に示されるX線回折スペクトルによると、実施例1~4および比較例1~2のいずれにおいても、C54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク(図3において「C54 TiSi 」の記載部分から矢印で示すピーク位置(2θ=約39°近傍))と、Siの(111)面の回折ピーク(図3において「Si」の記載部分から矢印で示すピーク位置(2θ=約28.5°近傍))が観測された。なお、比較例2では、Siの(111)面の回折ピークはほとんど観察されなかった。
[0176]
 実施例1~4および比較例1~2のそれぞれのSi含有合金(負極活物質)について取得されたX線回折スペクトルより、下記に規定するX、Yの値をそれぞれ求め、これらの比の値(X/Y)を算出した。結果を下記の図4に示す。ここで、Xは、2θ=38~40°の範囲におけるC54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク強度を示す。またYは、2θ=27~29°の範囲におけるSiの(111)面の回折ピーク強度を示すれ求め、これらの比の値(X/Y)を算出した結果を示す図面である。なお、このX線回折測定により、Si含有合金に含まれる遷移金属元素(Ti)はすべてシリサイド(TiSi )相として存在していることも確認された。
[0177]
 表2、図5~6の結果から、実施例1~4は比較例1、2に比べて、放電容量維持率が高い値に維持されておりサイクル耐久性に優れると共に、放電容量に優れるという両特性を兼ね備えていることがわかる。また、Si含有合金負極を用いた実施例では、炭素材料を用いた負極活物質に比べて、高容量である(この点は、負極材料を用いた比較例を示すまでもなく、いわば公知(背景技術参照)であるため、当該比較例は省略した)。このように高容量を示しつつ、高いサイクル耐久性及び高放電容量が実現できたのは、負極活物質を構成するSi含有合金が、Si-Sn-M-Li(Mは1または2以上の遷移金属元素である)で表される四元系の合金組成を有することによると考えられる。一方、比較例の負極活物質を用いたリチウムイオン電池では、実施例の負極活物質を用いたリチウムイオン電池と比べて、サイクル耐久性が低いか、放電容量が低いことがわかる。これは、Liを少量含有させた実施例のSi-Sn-M-Li合金は、Liを添加していない比較例のSi-Sn-Ti合金に比べて、図7、8に示すように、Si含有合金に高負荷がかからず充放電効率/放充電効率を安定化することができ、サイクル耐久性を向上させることができ、更に放電容量を向上させることができたと考えられる。
[0178]
 また、図3、4の結果から、C54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク強度X/Siの(111)面の回折ピーク強度Yの比の値(X/Y)は、1.2以下が好ましい(図4の実施例1~4参照)。実施例1~4のように当該比の値(X/Y)が1.2以下であると、アモルファス化度が過度に大きくなり過ぎるのを効果的に抑制する事ができ、アモルファス状態から結晶状態へ転移し大きな体積変化を起こすのを効果的に抑制することができると考えられる。そのため、電極のサイクル寿命を低下させるのを効果的に抑制し、リチウムイオン二次電池のサイクル耐久性(放電容量維持率)を向上させることができることがわかる。

符号の説明

[0179]
10、50  リチウムイオン二次電池(積層型電池)、
11  負極集電体、
12  正極集電体、
13  負極活物質層、
15  正極活物質層、
17  電解質層、
19  単電池層、
21、57  発電要素、
25、58  負極集電板、
27、59  正極集電板、
29、52  電池外装材(ラミネートフィルム)。

請求の範囲

[請求項1]
 下記化学式(1):
[化1]


(上記化学式(1)において、
 Mは、1または2以上の遷移金属元素であり、
 Aは、不可避不純物であり、
 x、y、z、aおよびbは、質量%の値を表し、この際、0<x<100、0≦y<100、0<z<100、0.2≦b≦1.5、aは残部であり、x+y+z+a+b=100である。)
で表される組成を有するSi含有合金からなることを特徴とする電気デバイス用負極活物質。
[請求項2]
 前記Si含有合金100質量%に占めるavailable-Si相の質量比が、27質量%以上であることを特徴とする請求項2に記載の電気デバイス用負極活物質。
[請求項3]
 前記Si含有合金におけるシリサイド相/available-Si相の比が、1.7以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気デバイス用負極活物質。
[請求項4]
 前記Mが、Tiであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電気デバイス用負極活物質。
[請求項5]
 前記Si含有合金のCuKα1線を用いたX線回折測定において、2θ=38~40°の範囲におけるC54構造を有するTiSi の(311)面の回折ピーク強度Xに対する、2θ=27~29°の範囲におけるSiの(111)面の回折ピーク強度Yの比の値(X/Y)が、1.2以下であることを特徴とする請求項4に記載の電気デバイス用負極活物質。
[請求項6]
 前記X/Yが、1.0以下である、請求項5に記載の電気デバイス用負極活物質。
[請求項7]
 前記Si含有合金と同一の組成を有する母合金を用いたメカニカルアロイ法により、Si含有合金を作製することを有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電気デバイス用負極活物質の製造方法。
[請求項8]
 請求項1~6のいずれか1項に記載の電気デバイス用負極活物質を用いてなることを特徴とする電気デバイス用負極。
[請求項9]
 請求項8に記載の電気デバイス用負極を用いてなることを特徴とする電気デバイス。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]