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1. WO2020235443 - 射出成形用ポリアミド系樹脂組成物、及びそれからなる摺動部品

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明 細 書

発明の名称 射出成形用ポリアミド系樹脂組成物、及びそれからなる摺動部品

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008  

発明の効果

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024  

実施例

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040  

産業上の利用可能性

0041  

請求の範囲

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 射出成形用ポリアミド系樹脂組成物、及びそれからなる摺動部品

技術分野

[0001]
 本発明は射出成形用ポリアミド系樹脂組成物に関し、詳しくは摺動部品に好適な射出成形用ポリアミド系樹脂組成物に関する。

背景技術

[0002]
 ポリアミド樹脂は結晶性のため摺動性が優れている成形材料であるが、より優れた摺動特性を得るために、二硫化モリブデン、グラファイトおよびフッ素樹脂等の固形潤滑剤や各種の潤滑オイル、シリコーンオイル等の液体潤滑剤等を配合することが知られている。
[0003]
 これらの摺動改良剤のうち、固体潤滑剤は大量の固体潤滑剤を配合する必要があり、ベースとなるポリアミド樹脂の靭性を著しく低下させる欠点があり、液体潤滑剤は比較的少量で、効果の高い摺動性を付与できるが、多くの場合、ベースとなる樹脂との相容性が悪く、成形品の表面がこれらの液体潤滑剤で汚染される場合が多く、用途が制限されてしまう欠点がある。
[0004]
 このような各種潤滑剤配合による欠点を改善する方法として、炭素繊維やアラミド繊維を配合する方法(特許文献1)や、変性ポリエチレンを配合する方法などが提案されている(特許文献2)。
 かかるポリアミド樹脂組成物によって、上述のような欠点がなく、摺動特性に優れた成形品の提供が可能になった。しかしながら、近年、成形品の軽量化、成形品形状の複雑化などの動向のため、摺動特性の向上など、より高いレベルの特性が求められるようになっている。加えて、製品の複雑化などから金属のみならず、樹脂組成物同士の磨耗性が重要となっている。そのため、これまで提案された方法では、必ずしも満足できる特性が得られていない。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 国際公開WO2017/110323号
特許文献2 : 国際公開WO2008/075699号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明は、成形性、耐熱安定性に優れるとともに、耐磨耗性、摺動安定性に優れることが要求される摺動部品用に好適な射出成形用ポリアミド系樹脂組成物を提供しようとするものである。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、液晶骨格を有する有機繊維、特にポリエステル繊維が摺動特性に影響することを見出し、本発明に到達したのである。
[0008]
 すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
[1] 結晶性ポリアミド樹脂(A)、及び液晶骨格を有するポリエステル繊維(B)を含むことを特徴とする射出成形用ポリアミド系樹脂組成物。
[2] 結晶性ポリアミド樹脂(A)の融点が170℃以上であることを特徴とする[1]記載の射出成形用ポリアミド系樹脂組成物。
[3] 前記ポリアミド系樹脂組成物の総質量基準で0.1~40質量%の液晶骨格を有するポリエステル繊維(B)を含むことを特徴とする[1]または[2]記載の射出成形用ポリアミド系樹脂組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のポリアミド系樹脂組成物からなる摺動部品。

発明の効果

[0009]
 本発明のポリアミド系樹脂組成物は、成形性、耐熱安定性に優れるのみならず、耐磨耗性が向上して、動摩擦係数の低減など摺動特性の更なる向上が認められる。

発明を実施するための形態

[0010]
 以下に本発明を具体的に説明する。
 本発明における結晶性ポリアミド樹脂(A)としては、主鎖中にアミド結合(-NHCO-)を有する重合体で結晶性であれば特に限定されないが、例えばポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリメタキシリレンアジパミド(PAMXD6)、ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸重合体(PA6T)、ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸およびアジピン酸共重合体(PA6T/66)、ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸およびεカプロラクタム共重合体(PA6T/6)、トリメチルヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸重合体(PATMD-T)、メタキシリレンジアミンとアジピン酸およびイソフタル酸共重合体(PAMXD-6/I)、トリヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸およびε-カプロラクタム共重合体(PATMD-T/6)、ジアミノジシクロヘキシレンメタン(CA)とイソフタル酸およびラウリルラクタム共重合体等の結晶性ポリアミド樹脂、もしくはこれらのブレンド物等を例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。
[0011]
 結晶性ポリアミド樹脂(A)としては、融点が170℃以上であるポリアミドであることが好ましい。上記の融点未満の結晶性ポリアミドの場合、しばしばガラス転移温度も40℃以下であり、摺動時に発生する熱によって表面が軟化することが懸念される。結晶性ポリアミド樹脂(A)の融点は、200℃以上がより好ましく、220℃以上がさらにより好ましい。結晶性ポリアミド樹脂(A)の融点の上限は、液晶骨格を有するポリエステル繊維の分解抑制の観点から350℃以下が好ましい。
 本発明においては、結晶性ポリアミド樹脂(A)としては、ポリアミド6およびポリアミド66が特に好ましい。
[0012]
 本発明における結晶性ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、特に限定されないが、96%硫酸溶液(ポリアミド樹脂濃度1g/dl、温度25℃)で測定されたもので、2.0~5.0の範囲のものを使用することができる。結晶性ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、2.0~3.5が好ましく、2.1~3.4がより好ましい。
 結晶性ポリアミド樹脂(A)の配合量(含有量)は、ポリアミド系樹脂組成物の総質量基準で、35質量%以上が好ましく、より好ましくは60~99.9質量%、さらに好ましくは70~99質量%であり、特に好ましくは75~98質量%である。
[0013]
 本発明における有機繊維(B)は、液晶骨格を有するポリエステル繊維(B)(以下、液晶ポリエステル繊維(B)と称することもある)であることが好ましい。液晶ポリエステル繊維(B)を構成するポリエステルとしては、例えば、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2価フェノールおよびフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6-ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、分子の直鎖が規則正しく並んだ液晶的な性質を示し、熱可塑性樹脂に属する合成樹脂と定義されるものであれば良い。
[0014]
 液晶ポリエステル繊維(B)を構成するポリエステルのその他の例としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及び/又は芳香族ヒドロキシカルボン酸やこれらの誘導体からなるもので、場合により、これらと、脂環族ジカルボン酸、脂環族ジオール、脂肪族ジオールやこれらの誘導体との共重合体も挙げられる。ここで芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジカルボキシジフェニル、2,6-ジカルボキシナフタレン、1,2-ビス(4-カルボキシフェノキシ)エタン等や、これらのアルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲン基の核置換体が挙げられる。芳香族ジオールとしては、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン等やこれらのアルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲン基の核置換体が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸、1-ヒドロキシナフタレン-5-カルボン酸等やこれらのアルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲン基の核置換体が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、トランス-1,4-ジカルボキシシクロヘキサン、シス-1,4-ジカルボキシシクロヘキサン等やこれらのアルキル、アリール、ハロゲン基の核置換体が挙げられる。脂環族及び脂肪族ジオールとしては、トランス-1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、シス-1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、キシリレンジオール等が挙げられる。
[0015]
 液晶ポリエステル繊維(B)には、本発明の目的を阻害しない範囲で、他のポリマーあるいは添加剤を含有していてもよく、集束剤が塗布されていてもよい。
[0016]
 液晶ポリエステル繊維(B)の繊維長および繊維径は、特に限定されないが、好ましくは繊維径が0.1~50μmで、繊維長が0.05~10mmの範囲である。繊維径は、より好ましくは、1~30μm、さらに好ましくは、8~25μm、特に好ましくは、10~22μmである。繊維長は、より好ましくは、0.3~5mmであり、チョップドストランドタイプのものが好ましく用いられる。
[0017]
 液晶ポリエステル繊維(B)としては、KBセーレン社製の「ゼクシオン(Zxion)(登録商標)」や、クラレ社製の「ベクトラン(登録商標)」が使用可能である。
[0018]
 液晶ポリエステル繊維(B)の配合量(含有量)は、ポリアミド系樹脂組成物の総質量基準で、0.1~40質量%が好ましく、より好ましくは1~30質量%であり、さらに好ましくは2~25質量%である。0.1質量%未満では、摺動特性向上効果が不十分であり、一方、40質量%を超えると、効果が飽和に達して望ましくなく、成形品の外観に液晶ポリエステル繊維が浮く不良が生じることがある。
[0019]
 本発明において、液晶ポリエステル繊維(B)を用いることで、摺動特性が向上する理由、特にダストを介した摺動特性が向上する理由は、液晶ポリエステル繊維の良好な摩擦特性がポリアミド系樹脂組成物の表面特性に潤滑性を付与していることが考えられる。加えて、ポリアミド系樹脂組成物が損傷すると同時に組成物中に存在する液晶ポリエステル繊維が脱離し表面に析出する。その繊維が繊維方向にせん断および細裂することで磨耗粉化し、磨耗体と被磨耗体との間に潤滑性を有する中間層を形成することで直接的なダストとの接触を防止していることも示唆される。ダストを介する磨耗は、砂利やその他無機物による接触であるため、最表面には激しい損傷が生じる。ゆえに単に潤滑性を付与することや、樹脂組成物表面の弾性率を向上させるだけでは不十分である。よって、潤滑性を有する中間保護層の形成は、ダスト磨耗抑制に極めて効果的である。液晶骨格を有する有機繊維としてアラミド繊維が挙げられるものの、液晶ポリエステル繊維のように繊維方向にせん断および細裂するというより、むしろ分子間壁界面でのせん断を起こすため同一の機構は生じず、中間層を形成しないままダスト磨耗が進行する。炭素繊維においては、損傷と同時に析出した繊維が樹脂組成物を磨耗しうる中間体となって作用するため、磨耗を助長する可能性があり好適ではない。加えて、相手磨耗体が樹脂である場合、相手磨耗体も磨耗させる可能性もある。
[0020]
 本発明において、さらに充填材を添加することにより強度、剛性を大幅に向上させることができる。このような充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラストナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどが挙げられる。
 これらを配合するのは、強度、剛性を優先する場合であり、その配合量(含有量)は、ポリアミド系樹脂組成物の総質量基準で、5~60質量%が好ましく、特に好ましくは5~40質量%である。摺動特性を優先する場合、その配合量(含有量)は、ポリアミド系樹脂組成物の総質量基準で、5質量%以下が好ましい。
[0021]
 本発明において、さらにポリオレフィン樹脂や、熱可塑性エラストマー添加することにより、じん性を大幅に向上させることができる。ポリオレフィン樹脂とは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチルペンテン)等のオレフィン系樹脂を挙げることが出来る。熱可塑性エラストマーとは、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどである。
 これらを配合する場合、その配合量(含有量)は、ポリアミド系樹脂組成物の総質量基準で、0.5~10質量%が好ましく、より好ましくは1~8質量%である。
[0022]
 本発明のポリアミド系樹脂組成物には、摺動性や成形性を阻害しない範囲であれば、(A)、(B)や上述した充填材、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーの他に、通常のポリアミド系樹脂組成物に用いられる耐候性改良剤であるカーボンブラックや銅酸化物および/又はハロゲン化アルカリ金属、光又は熱安定剤、離型剤、結晶核剤、滑材、帯電防止剤、顔料、染料、カップリング剤等を配合しても問題はない。
 これらを配合する場合、その配合量(含有量)の合計は、ポリアミド系樹脂組成物の総質量基準で、0.1~5質量%が好ましく、より好ましくは0.2~3質量%である。
[0023]
 本発明のポリアミド系樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、混練装置として一般の単軸押出機や二軸押出機、加圧ニーダー等が使用できるが、本発明においては二軸押出機が特に好ましい。
 一実施態様としては、前記(A)、(B)および用途によっては顔料等を混合し、二軸押出機に投入する。二軸押出機によって均一に混練することにより、摺動性に優れたポリアミド系樹脂組成物を製造することが出来る。二軸押出機の混練温度は220~300℃で、混練時間は2~15分程度が好ましい。
[0024]
 本発明のポリアミド系樹脂組成物は、射出成形に適しており、特に射出成形によって、摺動性が求められる電気・電子部品、自動車部品、建築部材、工業用部品など各種用途に幅広く利用することができる。具体的な用途としては、ベアリング、ギア、ドアチェッカー、チェーンガイド、リーテナープレート部品などとして有用である。
実施例
[0025]
 以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
 本発明の実施例、比較例に使用した原材料は以下の通りである。
[0026]
結晶性ポリアミド樹脂(A)
A1:ポリアミド66(RV=2.8)、Vydyne 21FSR(Ascend社製)、融点265℃
A2:ポリアミド6(RV=2.6)、ZISAMIDE TP4208(集盛社製)、融点225℃
A3:ポリアミド12(RV=2.4)、Rilsamid(アルケマ社製)、融点175℃
[0027]
液晶ポリエステル繊維(B)
B1:Zxion-VS チョップドファイバー、繊維径14μm、繊維長3mm(KBセーレン製)
B2:Zxion-TS チョップドファイバー、繊維径20μm、繊維長3mm(KBセーレン製)
B3:Zxion-VS チョップドミルドファイバー、繊維径14μm、繊維長0.3mm(KBセーレン製)
[0028]
無機繊維(C)
C1:ガラス繊維、チョップドファイバー、T-275H、繊維径11μm、繊維長3mm(日本電気硝子社製)
C2:炭素繊維CFUW、チョップドファイバー、繊維径10μm、繊維長3mm(日本ポリマー産業株式会社製)
[0029]
その他の有機繊維(D)
D:パラアラミド繊維、チョップドストランド、テクノーラ T322UR 3-12、繊維径12μm、繊維長3mm(帝人株式会社製)
[0030]
[実施例1~11、比較例1~7]
 評価サンプルの製造は、表1、2に示したポリアミド系樹脂組成物の配合割合に各原料を計量し、タンブラーで混合した後、二軸押出機に投入した。二軸押出機の設定温度は250℃~300℃、混錬時間は5~10分とした。得られたペレットは、射出成形機で各種の評価サンプルを成形した。射出成形機のシリンダー温度は、250℃~290℃、金型温度は80℃とした。
[0031]
 各種の評価方法は以下の通りである。評価結果を表1、2に示した。
1.ポリアミド樹脂の相対粘度(RV)(96%硫酸溶液法)
 ウベローデ粘度管を用い、25℃において96質量%硫酸溶液で、ポリアミド樹脂濃度1g/dlで測定した。
[0032]
2.ポリアミド樹脂の融点
 示差走査熱量計 セイコーインスツルメンツ株式会社 EXSTAR 6000を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、吸熱ピーク温度を求めた。
[0033]
3.磨耗特性
 スラスト式磨耗試験機を用いて、射出成形により得たポリアミド樹脂組成物の平板(サイズ:50mm×50mm)と、長さ8mm、幅1.3mmの凸部を有するSUS製円形冶具を接触させて20分間、負荷荷重48.9kgf/cm 、速度15cm/secの条件で連続的に摺動させた。その後、磨耗前後の平板と円筒成形品の質量差と総磨耗距離から、単位距離あたりに換算した磨耗量(mg/km)と、磨耗試験時の収束した荷重の値から動摩擦係数を算出した。
[0034]
4.ダストを介した磨耗特性
 スラスト式磨耗試験機を用いて、ポリアミド樹脂組成物の平板(サイズ:50mm×50mm)上に一様に二硫化モリブデン配合のグリースを1mg塗布した後、粒子径および硬度が異なる無機物を導入するため、ケイ砂と火山灰の質量比率が1:1となるように混合して作製されたダスト2mgを塗布する。その面にポリオキシメチレン(POM)製の円筒成形品を接触させて30分間、負荷荷重30kgf/cm 、速度40mm/secの条件で連続的に摺動させた。その後、磨耗前後の平板と円筒成形品の質量差と総磨耗距離から、単位距離あたりに換算した磨耗量(mg/km)と、磨耗試験時の収束した荷重の値から動摩擦係数を算出した。
[0035]
5.成形性
 離型力測定装置を取り付けた金型を用いて上記成形温度条件で成形を行い、31ショット目から35ショットまでの離型力を測定して離型抵抗値を求めた。
[0036]
6.耐熱安定性
 ISO2578に詳述される手順に従って、再循環エアオーブン(ナガノ科学機械製作所製 熱風循環式乾燥機 NH-401S)において試験片を熱処理した。120℃環境下で所定の試験時間(250時間)で、試験片をオーブンから取り出し、室温に冷却し、試験の準備ができるまで、アルミニウム裏張りバッグ内に密閉した。次いで、ISO527-1,2に従って、引張強度を測定し、3つの試験片から得られた平均値から処理前後の保持率を算出した。
[0037]
[表1]


[0038]
[表2]


[0039]
 実施例1~11は、SUS製円形冶具を接触させた磨耗試験やダストを介する磨耗試験において、比較例1~7と比較して同等以上の物性を有しており、良好な磨耗特性を有することを実現している。特に、ダストを介する磨耗試験では、この効果は顕著である。また、離型抵抗値も1.0MPa以下となっており連続射出成形の成形性の要件も満たしており、耐熱安定性も満足できるレベルと言える。
 比較例1は改質が施されていないポリアミド66であり、磨耗量が大きくなっている。比較例2、3はSUS製円形冶具を接触させた磨耗試験では磨耗性には寄与しているものの、実施例1~11ほどの効果は見られない。加えてダストを介する磨耗試験後の磨耗量では、磨耗量を低減できておらず、相手材であるPOM製の円筒成形品の磨耗を増大させる結果となっている。ダストを介した磨耗試験における相手材であるPOM製の円筒成形品の磨耗を増大させる傾向は、比較例4、5でも見られるため、無機系繊維強化材は接触する相手材がポリマーである場合は適していないことがわかる。比較例6、7は特許文献1の通り、磨耗性に寄与していることは確かであるものの、本発明の組成物と比較すると寄与は低い。
[0040]
 実施例1~11の主な改質機構として、組成物が損傷すると同時に組成物中に存在する液晶骨格を有するポリエステル繊維が繊維方向にせん断および細裂することで磨耗粉化し、磨耗体と被磨耗体との間に潤滑性を有する中間層を形成することで直接的な接触を防止していることが示唆される。また、液晶ポリエステル繊維自体の低摩擦性が寄与することによる動摩擦係数の低減効果が、表面に発現していることも併せて示唆される。

産業上の利用可能性

[0041]
 本発明のポリアミド系樹脂組成物は、優れた摺動特性を有する成形材料である。特に高い面圧を課されるような高度な耐磨耗性が要求される摺動部品用に好適であり、幅広い分野で使用することが出来るエンジニアリングプラスチックとして、産業界に大きく寄与すると期待できる。

請求の範囲

[請求項1]
 結晶性ポリアミド樹脂(A)、及び液晶骨格を有するポリエステル繊維(B)を含むことを特徴とする射出成形用ポリアミド系樹脂組成物。
[請求項2]
 結晶性ポリアミド樹脂(A)の融点が170℃以上であることを特徴とする請求項1記載の射出成形用ポリアミド系樹脂組成物。
[請求項3]
 前記ポリアミド系樹脂組成物の総質量基準で0.1~40質量%の液晶骨格を有するポリエステル繊維(B)を含むことを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用ポリアミド系樹脂組成物。
[請求項4]
 請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド系樹脂組成物からなる摺動部品。