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1. WO2020209303 - 免疫増強剤

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明 細 書

発明の名称 免疫増強剤

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

非特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005   0006   0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039  

実施例

0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 免疫増強剤

技術分野

[0001]
 本発明は、泌乳牛における免疫機能増強剤に関し、さらに詳しくは、5-アミノレブリン酸(5-ALA)若しくはその誘導体又はそれらの塩(以下、「ALA類」ともいう)を含む泌乳牛における免疫機能増強剤等に関する。

背景技術

[0002]
 乳牛は、泌乳期間中に免疫機能が低下することが知られている。免疫機能の低下は、感染症の数を増加(例えば、非特許文献1及び2参照)させ、牛乳の生産と品質の低下等をもたらす(例えば、非特許文献3参照)ことが知られている。酪農、乳業業界においては、低コストで高品質の製品を提供する新しい動物生産システムを探求する義務があるとされており(例えば、非特許文献4参照)、様々な検討が続けられている。

先行技術文献

非特許文献

[0003]
非特許文献1 : Journal of Dairy Science, 82(2),315-319,1999
非特許文献2 : Journal of Dairy Science, 100(9),7549-7555,2017
非特許文献3 : Journal of Dairy Science, 82(11),2259-2273,1997
非特許文献4 : Animal Science Journal, 87(7),857-862,1997

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 本発明の課題は、泌乳期における牛の免疫機能の低下を予防又は免疫機能を向上させることにより、感染症等の病気の発生率を低下させ、乳牛においては牛乳の生産量と品質を向上させるための安全な副作用の少ない手段を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0005]
 本発明者らは牛の免疫機能を向上させるために様々な試行錯誤を重ねてきたが、通常の飼料に代えて、ALA類が添加された改良飼料を泌乳牛に投与した場合に、血液中の顆粒球等が増加し、CD4陽性細胞が活性化することを見いだした。さらに、食作用が増加すること等を確認し、本発明を完成するに至った。
[0006]
 すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]下記式(I)で示される化合物又はその塩を含有する、泌乳牛における免疫機能増強剤。
[化1]


(式中、R は、水素原子又はアシル基を表し、R は、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す)
[2]免疫機能増強が、顆粒球の増加であることを特徴とする、上記[1]記載の免疫機能増強剤。
[3]顆粒球が、好中球であることを特徴とする、上記[2]記載の免疫機能増強剤。
[4]免疫機能増強が、CD4陽性細胞の増加であることを特徴とする、上記[1]記載の免疫機能増強剤。
[5]免疫機能増強が、食作用の増加であることを特徴とする、上記[1]記載の免疫機能増強剤。
[6]上記[1]~[5]のいずれか記載の免疫機能増強剤を添加した飼料。
[7]5-アミノレブリン酸を0.02~2mg/kg体重/日を泌乳牛に経口投与することを特徴とする免疫機能増強方法。
[0007]
 本発明の他の態様としては、式(I)で示される化合物又はその塩を対象に投与することを特徴とする免疫機能の増強方法や、免疫機能増強剤として使用するための式(I)で示される化合物又はその塩や、免疫機能を増強するための飲食品として使用するための本件化合物や、式(I)で示される化合物又はその塩の免疫機能増強剤の調製における使用や、式(I)で示される化合物又はその塩の、免疫機能を増強するための飼料の調製における使用を挙げることができる。

発明の効果

[0008]
 本発明の免疫機能増強剤を泌乳牛に投与することにより、顆粒球の産生が増加し、CD4陽性細胞の産生が増加し、また食作用が有意に増加し、その結果、泌乳牛におけるウイルス、細菌等による感染症などの病気の発生率を減少させ、ひいては牛乳の生産と品質の向上をもたらすことができる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] ALA摂取群(5-ALA)とコントロール群とにおける、末梢血単核細胞に対する、A:Con A(Concanavalin A)添加と、B:PHA(phytohemagglutinin)添加による末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cells:PBMC)量の増加を示すグラフである。Y軸は、S.I.(Stimulation Index)で示される。
[図2] ALA摂取群(5-ALA)とコントロール群の末梢血単核細胞における食作用の程度を示すグラフである。Y軸は、AU(Arbitrary Unit)で示される。

発明を実施するための形態

[0010]
 本発明の免疫機能増強剤としては、ALA類、すなわち上記式(I)で示される化合物又はその塩を含有する、泌乳牛における免疫機能増強剤であれば特に制限されず、かかる免疫機能増強剤は、他の免疫機能増強剤や、インターロイキンやインターフェロン等のサイトカインや、ビタミンA、ビタミンB1,B2,B6,B12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等の各種ビタミンや、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、麹菌、酵母等の微生物などと併用することもできる。
[0011]
 本発明において、泌乳牛における免疫機能の増強は、好中球等の顆粒球(数)の増加、CD4陽性細胞の増加、食作用の増加の他、サイトカイン合成の増加、T細胞数の増加、T細胞の活性化、T細胞の分化能の増加、及び/又は、マクロファージから樹状細胞への分化能の増加などを指標として評価することができる。
[0012]
 上記顆粒球としては、好中球、好塩基球、及び好酸球を挙げることができるが好中球を好適に挙げることができる。公知の細胞判別装置や細胞判別方法により、上記各細胞の分類を行うことができ、又は、公知の染色液を用いて細胞を染色することにより、形態学的差異に基づき細胞の区別をつけたうえで、顆粒球中の各細胞の細胞数や存在の割合を算出することができる。
[0013]
 上記好中球は、食作用のほか、殺菌作用に係る顆粒球の一種であり、好中球の産生の増減を判定する方法としては、白血球数×1000×(好中球数+杵状核球数)÷100の計算式により好中球数を計算することにより、投与前と投与後の好中球数を比較する方法を例示することができる。また、スライドグラス上に血液を固定し、ギムザ染色を行った場合に、赤紫色に染まり、偽足を出し盛んにアメーバ様運動をする不定形の細胞であるという好中球の形態的特徴から、顆粒球中の好中球の産生の増減の有無を判定する方法を例示することができる。
[0014]
 上記好塩基球は、アレルギー反応に関連する顆粒球の一種であり、好塩基球の産生増減を判定する方法としては、好塩基球は細胞表面にFcレセプタを介してアレルゲン特異的IgE抗体を結合していることから、好塩基球のアレルゲンに対する反応性に着目した試験方法として、ヒスタミンリリーステスト(HRT)や、アレルゲンを添加して好塩基球をインビトロで活性化し、好塩基球の活性化マーカーであるCD203cの発現量の変化を、フローサイトメトリーを用いて測定する方法を例示することができる。また、スライドグラス上に血液を固定し、ギムザ染色を行った場合に、好塩基球は暗紫色に染まることから、顆粒球中の好塩基球の産生の増減の有無を判定することもできる。
[0015]
 上記好酸球は、アレルギー性疾患や寄生虫病の際に増加する顆粒球の一種であり、エオシンでピンク色に染まる好酸性顆粒である。また、スライドグラス上に血液を固定し、ギムザ染色を行った場合に、好酸球は赤色に染まることから、顆粒球中の好酸球の産生の増減の有無を判定することもできる。
[0016]
 その他、顆粒球数から好酸球数を差し引きした数として算出することにより、好中球や好塩基球の細胞数を決定するなど、適宜顆粒球中の各細胞や複数の細胞の割合を計算することができる。
[0017]
 上記CD4陽性細胞としては、細胞表面にCD4抗原を発現している白血球の亜集団を挙げることができ、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞等のヘルパーT細胞、胸腺内において自己反応性T細胞と共に産生される内在性Treg、ナイーブCD4陽性T細胞から分化させる自己認識能の低い誘導性Tregを挙げることができる。
[0018]
 本発明の免疫機能増強剤の摂取により、CD4陽性細胞が活性化されるか否かを判定する方法としては、ヒトリンパ球のT細胞を活性化する分裂促進因子(マイトージェン:Mitogen)を添加するリンパ球幼弱化試験を行うことにより判定することができ、マイトージェンとして、CD4陽性細胞をより強く活性化するインゲン豆等から抽出したPHAと、CD8陽性細胞をより活性化するタチナタ豆等から抽出したCon-Aとをそれぞれ添加して、PHAにおける反応性が高い場合にCD4陽性細胞が活性化していると判定する方法を例示することができる。
[0019]
 上記食作用は、貪食能とも呼ばれ、細菌、ウイルス、死細胞等の外来の異物を取り込み、これらを分解する作用を指し、食作用に係る細胞としては、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、樹状細胞等の、核を有する末梢血単核細胞を挙げることができる。
[0020]
 本発明の免疫機能増強剤の摂取により、食作用が増加するか否かを判断する方法としては特に限定されないが、試料にルミノール等の一定要件下で化学発光する化合物を結合したポリマー微粒子であるマイクロビーズを添加し、かかるビーズが食細胞に貪食された後に細胞内の活性酸素と反応することにより発光する性質を用いて、発光強度を測定することにより、貪食能を算出し、発光強度が増加した場合に、食作用が増加していると判定する方法を例示することができる。
[0021]
 上記白血球数、好中球、好酸球、好塩基球等の顆粒球数、CD4陽性細胞の活性化、食作用の増減は、赤血球、血小板、ヘモグロビン等の他の分析項目とともに、市販の自動血液分析機を用いて分析することもできる。
[0022]
 本発明における免疫機能の増強の程度としては、泌乳期において免疫機能が低下した牛において、対象の牛が本来有する免疫機能レベルにまで、又は感染症等の病気によりかかりにくい程度にまで、免疫機能が向上することを挙げることができる。
[0023]
 本発明の免疫機能増強剤の適用対象としては、ウシ亜科(Bovinae)、ウシ属(Bos)に属する、家畜化された又は野生の牛であれば特に制限されず、家畜化された牛としては、肉用牛、乳用牛、乳肉兼用牛、役用牛を例示することができ、具体的には、アバディーン・アンガス種、ヘレフォード種、ショートホーン種、シャロレー種、リムジン種、黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種等の肉用牛;ブラウンスイス種、ガンジー種、ホルスタイン種、ジャージー種、ケリー種、ミルキングデボン種、ノルウェイジャンレッド種等の乳用牛;これらの交雑種の牛;を挙げることができるが、ブラウンスイス種、ガンジー種、ホルスタイン種、ジャージー種、ケリー種、ミルキングデボン種、ノルウェイジャンレッド種等の乳用牛が好ましい。また、本発明の免疫機能増強剤が適用される年齢の牛としては、繁殖年齢に達し、泌乳している牛であれば特に制限されず、泌乳期において、免疫機能の低下を予防する、免疫機能の低下を治療する、又は免疫機能を向上させることにより健康状態を安定させる必要がある牛を例示することができる。なお、本発明において、泌乳牛には、実際には未だ泌乳していないが、泌乳期における免疫機能の低下を予防する必要のある泌乳前の牛を便宜上含める。
[0024]
 前記ALA類の中でも式(I)のR 及びR が共に水素原子の場合である5-ALA又はその塩を好適に例示することができる。5-ALAは、δ-アミノレブリン酸とも呼ばれるアミノ酸の1種である。また、5-ALA誘導体としては、式(I)のR が水素原子又はアシル基であり、式(I)のR が水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はアラルキル基である、5-ALA以外の化合物を挙げることができる。
[0025]
 式(I)におけるアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ベンジルカルボニル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1~8のアルカノイル基や、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイル基等の炭素数7~14のアロイル基を挙げることができる。
[0026]
 式(I)におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1~8のアルキル基を挙げることができる。
[0027]
 式(I)におけるシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル基等の炭素数3~12のシクロアルキル基を挙げることができる。
[0028]
 式(I)におけるシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル(例えば、1-シクロプロペニル)、シクロブテニル(例えば、1-シクロブテニル)、シクロペンテニル(例えば、1-シクロペンテニル)、シクロヘキセニル(例えば、1-シクロヘキセニル)、シクロヘプテニル(例えば、1-シクロヘプテニル)、シクロオクテニル(例えば、1-シクロオクテニル)、シクロデセニル(例えば、1-シクロデセニル)、シクロドデセニル(例えば、1-シクロドデセニル)基等の炭素数3~12のシクロアルケニル基を挙げることができる。
[0029]
 式(I)におけるアリール基としては、フェニル、ナフチル(例えば、1-ナフチル)、アントリル(例えば、1-アントリル)、フェナントリル(例えば、1-フェナントリル)、ピレニル(例えば、1-ピレニル)基等の炭素数6~18のアリール基を挙げることができる。
[0030]
 式(I)におけるアラルキル基としては、アリール部分は上記アリール基と同じ例示ができ、アルキル部分は上記アルキル基と同じ例示ができ、具体的には、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、ベンズヒドリル、トリチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル基等の炭素数7~15のアラルキル基を挙げることができる。
[0031]
 上記ALA誘導体としては、R が、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル基等である化合物や、上記R が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基等である化合物が好ましく、上記R とR の組合せが、ホルミルとメチル、アセチルとメチル、プロピオニルとメチル、ブチリルとメチル、ホルミルとエチル、アセチルとエチル、プロピオニルとエチル、ブチリルとエチルの組合せなどを好適に例示することができる。
[0032]
 ALA類は、生体内で式(I)の5-ALA又はその誘導体の状態で有効成分として作用すればよく、投与する形態に応じて、溶解性を上げるため各種の塩の形として投与することができ、また、消化管吸収性、組織移行性、組織選択性、化学的安定性等を向上するために、あるいは副作用を軽減するために生体内の酵素で代謝されてから作用を及ぼすプロドラッグ(前駆体)の形(例えば、エステル)として投与することができる。例えば、5-ALA及びその誘導体の塩としては、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等を挙げることができる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の各無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の各有機酸付加塩を例示することができる。金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の各アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム塩等の各アルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の各金属塩を例示することができる。アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩等を例示することができる。有機アミン塩としては、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、トルイジン塩等の各塩を例示することができる。なお、これらの塩は使用時において溶液としても用いることができる。
[0033]
 以上のALA類のうち、望ましいものは、5-ALA、及び5-ALAメチルエステル、5-ALAエチルエステル、5-ALAプロピルエステル、5-ALAブチルエステル、5-ALAペンチルエステル等の各種エステル類、並びに、これらの塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩であり、5-ALA塩酸塩や5-ALAリン酸塩を特に好適に例示することができる。
[0034]
 上記ALA類は、化学合成、微生物による生産、酵素による生産のいずれの公知の方法によって製造することができる。また、上記ALA類は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
[0035]
 本発明の免疫増強剤の使用態様としては、顆粒状、粒状、粉末状、溶液状にして、通常牛に与えている飼料に混合して投与することもできるが、粉末剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤等の経口投与製剤;液剤、用時溶解型粉末剤等の注射製剤等の製剤の形態で用いることもできる。上記製剤の投与方法は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、腹腔投与、経皮投与、経直腸投与等を挙げることができる。
[0036]
 本発明の免疫増強剤の、経口投与の場合の投与量としては、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、例えば、牛の体重1kgあたりALA類を5-アミノレブリン酸換算で、0.02~2mg/日、好ましくは0.05~1mg/日、より好ましくは0.075~0.75mg/日、さらに好ましくは0.1~0.6mg/日、特に好ましくは0.2~0.4mg/日を投与することを例示することができる。
[0037]
 本発明の免疫機能増強剤を飼料に添加して使用する場合の、飼料の給餌方法としては、1日2~4回給餌を行う分離給餌法や、特定の給与時間を設けないで自由に摂取させる不断給餌等の給与方法を挙げることができる。なお、ALA類を添加する飼料としては、一般的に牛に給与するために使用されている飼料であれば特に制限されず、トウモロコシ、大豆ミール、アルファルファ、もみ殻、小麦ふすま、米ぬか、オーツヘイ、綿実油ミール、骨粉、石灰、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウム、尿素、糖蜜等の従来公知の飼料原料から調製された飼料を用いることができ、市販されている牛用の飼料も使用できる。
[0038]
 本発明のタンパク質含量増加剤を飼料に添加して使用して、本発明の効果を得るための、飼料の給餌期間としては特に制限されないが、1日~3月、好ましくは3日~2.5月、より好ましくは1週間~2月、さらに好ましくは10日~1月を例示することができる。
[0039]
 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例
[0040]
[実施例1]
 以下の試験は国立大学法人東京農工大学の動物実験小委員会の認可を得て行った。
[0041]
 5-ALAが泌乳牛の免疫の機能に及ぼす影響を検討した。6頭の泌乳ホルスタイン乳牛(平均体重698±18kg、平均乳生産量24.1±1.6kg/d(日)、平均泌乳日数(days-in-milk:DIM)209±34日、平均授乳数2.9±0.4)が自由厩舎に収容された。7日間の猶予期間後、6頭の牛を無作為にA区とB区とに割り当てた(各群n=3)。A区は猶予期間後、14日間のALA投与期(ALA摂取群A)、7日間の調整期間を間に挟み、その後の14日間のALA未投与期(コントロール群A)とし、B区は猶予期間後、14日間のALA未投与期(コントロール群B)、7日間の調整期間を間に挟み、その後の14日間のALA投与期(ALA摂取群B)とするクロスオーバー法により、実験が行なわれた。詳細は以下の表1のとおりである。なお、上記猶予期間、調整期間及びALA未投与期間中は、従来から使用している混合飼料(TMR)(表2参照)を給餌し、ALA投与期間中は、混合飼料(TMR)1kg当たり10mgの5-ALAを添加した飼料を給餌した。
[0042]
[表1]


[0043]
 5-ALAはネオファーマジャパン社から提供された。各飼料と水は自由に与えられたが、各群の飼料摂取量は、ドライベースで、コントロール群は一頭当たり23.4kg/日、ALA摂取群は1頭当たり23.6kg/日であった。したがって、ALA摂取群における5-ALAの一日当たりの摂取量は、0.3296mg~0.3471mg/kgb.w./日となった。各乳牛は09:00と17:00に搾乳され、搾乳後に各飼料を自由摂取した。
[0044]
[表2]


[0045]
(血液試料の調製及び分析)
 上記各ALA投与期の最終日に摂食してから2時間後に頸静脈から血液(全血試料)を採取し、抗凝固剤としてヘパリンを添加しヘパリン添加血液試料とした。かかるヘパリン添加血液試料を用いて、赤血球(red blood cell:RBC)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(HCT)、平均赤血球容積(Mean corpuscular volume:MCV)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(Mean corpuscular hemoglobin concentration:MCHC)、血小板、白血球(WBC)、白血球百分率(differential count of WBC)、単球(Monocytes)、好酸球(Eosinocytes)、顆粒球(Granulocytes)を、自動血液分析機celltacα(日本光電工業株式会社製)により測定した。結果を表3に示す。
[0046]
[表3]


 但し、同じ列の異なる文字(a、b)は有意差を示す(p<0.05)。
(±:標準誤差)。
[0047]
(結果)
 上記表3から明らかなとおり、コントロール群と比較して、ALA摂取群(ALA摂取群A及びALA摂取群B)においては、顆粒球の数が有意に高くなったことが確認された。一方、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV、MCH、MCHC、血小板、白血球、リンパ球、単球、及び好酸球等においては、コントロール群とALA摂取群との間に統計学的差異が認められなかった。
[0048]
(顆粒球の検討)
 上記結果において、コントロール群と比較して、ALA摂取群においては、顆粒球が有意に増加していたが、好酸球は増加が認められなかったので、再度顆粒球について検討を行った。スライドガラス上に上記ヘパリン添加血液試料を固定し、ギムザ染色を行った。赤紫色に染色された細胞を好中球、暗紫色に染色された細胞を好塩基球、赤色に染色された細胞を好酸球として、各細胞の割合を算出したところ、好中球は、コントロール群及びALA摂取群のいずれの血液においても92%を占めたこと、そして顆粒球が有意な増加を示したことから、ALAを摂取した泌乳牛において、好中球が有意に増加することが確認された。一方、好酸球の数には有意差はなく、好塩基球の含量は非常に少なかったことから、これらには免疫系を調節するだけの増加は認められない。したがって、ALAは好中球の増加を介して免疫系を調節したと推察された。
[0049]
(PBMCの調製)
 PBMCは、Sato et al., Poultry Science, 91(7), 1582-1589, 2012に記載されている方法に従い、密度勾配分離によって全血の血液試料から単離された。すなわち、PBMCを含む血液試料をHistopaque-1077チューブ(シグマ社製)に静かに加え、15℃にて50分間、400×Gにて遠心分離を行った。 血漿とHistopaqueとの界面に形成された層をPBMCとして回収した。回収されたPBMCをRPMI-1640培地で3回洗浄し、単離PBMCとした。
[0050]
(リンパ球幼弱化試験)
 上記単離PBMCについて、リンパ球幼弱化試験を行った。Takahashi, et al., Science Journal, 2010,81(2),215-222に記載されている方法を参考に、マイトージェンであるConAとPHAとに対する増殖促進活性を評価した。上記単離されたPBMCを、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI-1640培地に懸濁し、PBMCを2.5×10 細胞/mLに希釈して、1ウェル当たり150Lの細胞を平底96ウェル培養プレートに播種し、加湿された5%CO 雰囲気下で37℃にて培養した。ConA(40mg/mL)又はPHA(20mg/mL)を添加して、T細胞の増殖を48時間誘導した。Cellcounting kit-8(株式会社同仁化学研究所製)を用いて、製造者のガイドラインに従って細胞増殖の程度を測定した。PBMCの吸光度値は、(ConAを添加して培養した細胞のConAの450nm-A655nmの値/ConAなしで培養した細胞のConAの450nm-A655nmの値、及び、PHAを添加して培養した細胞の450nm-A655nmの値/PHAなしでA450nm-A655nmで培養した細胞のA450nm-A655nm)として、相対値として表した。各結果の統計解析は混合モデルにより行い、p<0.05(*)を統計学的有意差があるとした。なお、有意性への傾向はp<0.10で考慮された。結果を図1に示す。
[0051]
(結果)
 図1から明らかなとおり、コントロール群と比較して、ALA摂取群においては、PHAによる刺激によって、PBMCの増殖が顕著に誘導されることが確認された。ConAによる刺激によっても、ALA添加飼料を与えた乳牛においてPBMCの数が増殖していることが示されたが、統計学的には、その変化は有意性があるとはいえなかった。PHAとConAは、いずれも末梢血T細胞に対して刺激能を有することが知られているが、PHAはCD4陽性細胞をより強く活性化するのに対し、ConAはCD8陽性細胞をより強く活性化するとされることから、CD4陽性細胞がより強く活性化していることが示された。なお、Y軸は、Stimulation Index(S.I.)、すなわち、マイトージェンを添加した群で培養した細胞の細胞活性を、マイトージェンを添加した群で培養した細胞の細胞数/陰性コントロール群で培養した細胞の細胞数として表したものである。
[0052]
(食作用の分析)
 上記単離されたPBMCを、20mmのHEPES(pH7.4)を含むハンクス平衡塩溶液を用いて2.5×10 細胞/mLの濃度に希釈後、37℃にて2分間予備培養を行った。その後、細胞をルミノール結合マイクロビーズ(カタログ番号KTS405;株式会社鎌倉テクノサイエンス製)と共培養した。ルミノール結合マイクロビーズを摂取した細胞からの化学発光を、TD-20/20ルミノメーター(プロメガ社製)で1分毎に15秒間、15分間にわたって測定することにより、PBMCの食作用の速度として貪食能を算出した。結果を図2に示す。Y軸の値は、貪食能を、化学発光の強度を平準化した値としてAU(Arbitrary Unit)で表した値である。なお、データは、SPSS(PASW Statistics18.0,IBM社製)の混合手順を用いてクロスオーバー設計として統計的に解析された。各結果の統計解析は混合モデルにより行い、p<0.05(*)を統計学的有意差があるとした。なお、有意性への傾向はp<0.10で考慮された。
[0053]
(結果)
 図2から明らかなとおり、コントロール群と比較して、ALA摂取群においては、食作用の速度の有意な増加が確認された。
[0054]
 なお、ALA摂取群の牛は、コントロール群の牛と比較して、毛づやがよく、また歩行状態が良好であるなど、健康状態がより優れていた。

請求の範囲

[請求項1]
下記式(I)で示される化合物又はその塩を含有する、泌乳牛における免疫機能増強剤。
[化1]


(式中、R は、水素原子又はアシル基を表し、R は、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す)
[請求項2]
免疫機能増強が、顆粒球の増加であることを特徴とする、請求項1記載の免疫機能増強剤。
[請求項3]
顆粒球が、好中球であることを特徴とする、請求項2記載の免疫機能増強剤。
[請求項4]
免疫機能増強が、CD4陽性細胞の増加であることを特徴とする、請求項1記載の免疫機能増強剤。
[請求項5]
免疫機能増強が、食作用の増加であることを特徴とする、請求項1記載の免疫機能増強剤。
[請求項6]
請求項1~5のいずれか記載の免疫機能増強剤を添加した飼料。
[請求項7]
5-アミノレブリン酸を0.02~2mg/kg体重/日を泌乳牛に経口投与することを特徴とする免疫機能増強方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]