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1. WO2020209262 - 摺動部品

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明 細 書

発明の名称 摺動部品

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013  

実施例

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039  

符号の説明

0040  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : 摺動部品

技術分野

[0001]
 本発明は、相対摺動する摺動部品に関し、例えば自動車、一般産業機械、あるいはその他のシール分野の回転機械の回転軸を軸封する軸封装置に用いられる摺動部品、または自動車、一般産業機械、あるいはその他の軸受分野の機械の軸受に用いられる摺動部品に関する。

背景技術

[0002]
 被密封流体の漏れを防止する軸封装置として、例えばメカニカルシールは相対回転し摺動面同士が摺動する一対の環状の摺動部品を備えている。例えば、特許文献1に示される摺動部品は、摺動面がダイヤモンドライクカーボン被膜(以下、DLC被膜と表記することもある。)により被覆されている。DLC被膜は、SiC等の硬質材からなる摺動部品の摺動面に比べて摩擦係数が遥かに小さく、例えば摺動面間に被密封流体である液体を介在させた潤滑環境下においてDLC被膜同士を相対摺動させることによりメカニカルシールの使用可能条件である摺動面の小さな摩擦係数を発現させ、摺動面間の低摩擦化を実現している。
[0003]
 ところで、メカニカルシールを摺動面間に液体を介在させない無潤滑環境下(ドライ環境下)で使用する形態もあるが、大気中におけるDLC被膜の摩擦係数は一般に0.1~0.3程度であることから、メカニカルシールの使用可能条件を満たす低摩擦効果を得るためには、例えばDLC被膜の水素含有量を増大させるとともに相対摺動する相手側の摺動部材の素材として触媒作用を有する酸化物セラミックスや金属を選定し、さらに運転条件として狭い範囲のPV値を選定することにより、摺動によるDLC被膜の摩耗粉を相手側の摺動部材の摺動面に移着させることによる移着膜の形成および移着膜の変質により摺動面間に低摩擦界面を形成することにより実現していた。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2004-225725号公報(第6頁、第2図)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 しかしながら、無潤滑環境下において摺動面間に移着膜による低摩擦界面を形成するために必要なDLC被膜の水素含有量や高PV値条件等の設定が煩雑であるだけでなく、摺動中における移着膜の均一性を維持することが困難であることから、摺動面間における低摩擦界面が不安定な状態となって摺動面の摩擦が変動してしまう虞があり、安定した低摩擦効果を得ることが難しいという問題があった。
[0006]
 本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、無潤滑環境下においても安定して低摩擦効果を得ることができる摺動部品を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 前記課題を解決するために、本発明の摺動部品は、
 摺動面が相対摺動する摺動部品であって、
 前記摺動面には、ポリマー構造が分散された炭素膜が形成されており、当該炭素膜は分光エリプソメトリの550nmの波長域で消衰係数0.2以下、屈折率1.5~2.0を満たす割合のポリマー構造が分散されている。
 これによれば、摺動部材の摺動面に形成される炭素膜が分光エリプソメトリの550nmの波長域で消衰係数0.2以下、屈折率1.5~2.0を満たす割合のポリマー構造が分散されたものであることにより、炭素膜の硬度が比較的低く相手側の摺動面との摩擦による欠削粒が小さくなるとともに、π電子が少なく化学反応性が低く摩耗粉や欠削粒が互いに結合し難くなるため、摺動面間に発生する摩耗粉や欠削粒が微細な状態に維持され、結合により大きな粒が生成されることがなく、摺動面間から表面の凹みや外部に排出されることで摩擦への影響が抑えられ、低摩擦効果を得ることができる。このように、摺動による炭素膜の摩耗粉や欠削粒を相手側の摺動面に移着させて移着膜を形成する必要がないことから、無潤滑環境下において安定して低摩擦効果を得ることができる。
[0008]
 前記炭素膜は、ビッカース硬さが2500HV以下であってもよい。
 これによれば、炭素膜が摩耗し難くなるため、長期間にわたり低摩擦効果を得ることができる。
[0009]
 前記摺動面と摺動する相手側摺動部品の摺動面が窒化珪素により形成されていてもよい。
 これによれば、摩擦による炭素膜の摩耗粉や欠削粒が相手側の摺動面に移着し難い。
[0010]
 前記炭素膜の表面における算術平均粗さRaは0.005~0.1μmであってもよい。
 これによれば、炭素膜の表面における凹みに摺動面間に発生する摩耗粉や欠削粒が捕集されやすくなるため、摺動面間から摩耗粉や欠削粒が排出され低摩擦効果がより得られやすくなる。
[0011]
 前記摺動部品は、メカニカルシールの密封環であってもよい。
 これによれば、無潤滑環境下においてメカニカルシールの使用可能条件を満たす低摩擦効果を得ることができる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 本発明の実施例におけるメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。
[図2] 実施例における炭素膜が形成された静止密封環の摺動面を示す断面図である。
[図3] 実施例における炭素膜が形成される静止密封環の摺動面と回転密封環の摺動面とが接触した状態を示す断面図である。
[図4] 実施例における炭素膜の変形例を示す拡大断面図である。
[図5] 実施例における炭素膜が形成される静止密封環の摺動面におけるPV値に対する低摩擦効果の発現を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明に係る摺動部品を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
実施例
[0014]
 実施例に係る摺動部品につき、図1から図5を参照して説明する。尚、本実施例においては、摺動部品がメカニカルシールである形態を例に挙げ説明する。また、メカニカルシールを構成する摺動部品の内径側を漏れ側としての大気A側(低圧側)、外径側を被密封流体側としての被密封気体F側(高圧側)として説明する。
[0015]
 図1に示される一般産業機械用のメカニカルシールは、摺動面間に液体を介在させない無潤滑環境下(ドライ環境下)において摺動面の外径側から内径側に向かって漏れようとする被密封気体Fを密封するインサイド形のものであって、回転軸1にスリーブ2を介して回転軸1と共に回転可能な状態で設けられた摺動部品としての円環状の回転密封環20と、被取付機器のハウジング4に固定されたシールカバー5に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた摺動部品としての円環状の静止密封環10と、から主に構成され、スプリング7によって静止密封環10が軸方向に付勢されることにより、静止密封環10の摺動面11と回転密封環20の摺動面21とが互いに密接摺動するようになっている。
[0016]
 本実施例における静止密封環10はSiC(炭化珪素)から形成され、回転密封環20は窒化珪素から形成されている。尚、回転密封環20は、少なくとも摺動面21が窒化珪素により形成されるものであればよい。
[0017]
 図2に示されるように、静止密封環10は、摺動面11に炭素膜30が形成されている。すなわち、静止密封環10における実質的な摺動面11は、炭素膜30の表面30aにより構成されている。尚、本実施例において、炭素膜30とは、広義でのダイヤモンドライクカーボン被膜の一種でグラファイトとダイヤモンドの両方の炭素結合を併せ持つ炭素を主成分としたアモルファス構造の薄膜の総称である。また、本実施例において、回転密封環20の摺動面21には炭素膜が形成されないものとする。
[0018]
 炭素膜30は、プラズマCVD(化学蒸着法)やイオンビーム蒸着法等により、静止密封環10を構成するSiC基材12の軸方向の一方の端面部12aを被覆するように形成されている。尚、本実施例における炭素膜30の厚さは、好ましくは0.01×10 -6m~8×10 -6mの範囲、さらに好ましくは0.05×10 -6m~2×10 -6mの範囲に形成されることにより、炭素膜30の摩耗および剥離が抑制される。
[0019]
 また、炭素膜30は、SiC基材12の端面部12aに略均一な厚さで形成されている。すなわち、炭素膜30は、SiC基材12の端面部12aにおけるうねりや微細な凹凸に略沿った形状となることから、炭素膜30の表面30aには微細な凹み30bが無数に形成される(図2の拡大部分参照)。尚、炭素膜30の表面30aにおける算術平均粗さRaを一般的なメカニカルシールの使用範囲である0.005~0.1μmの範囲において比較的粗く形成されることにより、微細な凹み30bが形成されやすくしてもよい。
[0020]
 また、炭素膜30は、ビッカース硬さが2500HV以下かつ回転密封環20の摺動面21よりもビッカース硬さの数値が大きい。尚、回転密封環20の摺動面21を構成する窒化珪素のビッカース硬さが1400HV程度であることから、炭素膜30のビッカース硬さは、好ましくは1400HV~2500HVの範囲に形成されることにより、炭素膜30の摩耗が抑制される。
[0021]
 また、炭素膜30は、ポリマー構造を分散させたものである。尚、炭素膜におけるポリマー構造の分散度合は、分光エリプソメトリにより炭素膜の消衰係数kおよび屈折率nを分析することにより判別することができる。
[0022]
 次いで、本実施例における炭素膜30が形成された静止密封環10(サンプルA~G)を作成し、次の条件でRing‐on‐Ring摩擦・摩耗試験を行った結果について説明する。尚、静止密封環10の炭素膜30は、厚さが0.4×10 -6mに統一された状態で形成されるものとする。また、回転密封環20は、上述したように炭素膜が形成されず、少なくとも摺動面21が窒化珪素により形成されるものとする。
[0023]
   静止密封環の摺動面の面圧=0.03MPa
   回転密封環の回転数=75rpm
   PV値=0.002MPa.m/sec
   試験時間=摺動距離200mに達するまで
   被密封流体=窒素ガス
[0024]
 また、本実施例における静止密封環10(サンプルA~G)の炭素膜30について、分光エリプソメータ(J.A.Woollam社製計測装置(RC2))を用いて、分光エリプソメトリの550nmの波長域により炭素膜30の消衰係数kおよび屈折率nを分析した。
[0025]
 本実施例における静止密封環10(サンプルA~G)の炭素膜30の消衰係数kおよび屈折率nの分析結果とRing‐on‐Ring摩擦・摩耗試験の試験結果は表1のとおりであった。尚、Ring‐on‐Ring摩擦・摩耗試験については、メカニカルシールの使用可能条件である摺動面の摩擦係数0.05以下が発現されたか否かに基づき使用可否の判定を行った。さらに尚、Ring‐on‐Ring摩擦・摩耗試験後に回転密封環20の摺動面21への移着膜形成の有無を確認した。移着膜形成の有無を確認については、回転密封環20の摺動面21に対するエア吹き付けで付着物を除き、光学顕微鏡5倍の倍率において、移着膜が接触範囲内の面積率で5%以下であれば、回転密封環20の摺動面21への移着膜形成がないものとして判定を行った。
[0026]
[表1]


[0027]
 メカニカルシールの使用可能条件である摺動面の摩擦係数0.05以下が発現され、かつ回転密封環20の摺動面21への移着膜形成がない静止密封環10(サンプルD,E,F,G)については、分光エリプソメトリの550nmの波長域で消衰係数0.2以下、屈折率1.5~2.0のポリマー構造の分散度合を有していることが判明した。
[0028]
 以上のように、本発明に係わる静止密封環10の摺動面11は、ポリマー構造が分散された炭素膜30が形成されており、当該炭素膜30は分光エリプソメトリの550nmの波長域で屈折率1.5~2.0であって特開2010-281928に定義されるta‐Cの領域に分類される高硬度のDLC被膜と比較して硬度が低く、かつ消衰係数0.2以下であってπ電子が少ない特性となっている。硬度が比較的低いことから、相手側である回転密封環20の摺動面21との摩擦によって生じる摩耗粉P30や欠削粒P31(図3における黒色の粒子)が小さくなるとともに、π電子が少なく化学反応性が低いことから摩耗粉P30や欠削粒P31が互いに結合し難くなるため、摺動面11,21間に発生する炭素膜30由来の摩耗粉P30および欠削粒P31が微細な状態に維持され、結合により大きな粒が生成されることがなく、摺動面11,21間から表面の凹み(例えば炭素膜30の表面30aに形成される凹み30b)や大気A側に排出されることで摩擦への影響が抑えられ、低摩擦効果を得ることができる。尚、摺動面11,21間に発生する回転密封環20の摺動面21由来の摩耗粉P20(図3における白色の粒子)についても、炭素膜30由来の摩耗粉P30および欠削粒P31と結合し難くなるため、摩耗粉P20,P30および欠削粒P31が微細な状態に維持されやすい。
[0029]
 このように、摺動による炭素膜30の摩耗粉P30を回転密封環20の摺動面21に移着させて移着膜を形成する必要がないことから、無潤滑環境下において安定して低摩擦効果を得ることができる。
[0030]
 また、回転密封環20の摺動面21が低摩擦かつ非磁性の窒化珪素により形成されているため、摩擦による炭素膜30由来の摩耗粉P30および欠削粒P31が摺動面21に移着し難い。尚、回転密封環20の摺動面21の材質としては、窒化珪素に限らず、低摩擦化されたSUS、SiC、Al 、ZrO 、Tiまたはチタン系合金等であってもよい。
[0031]
 炭素膜30の表面30aは、算術平均粗さRa0.005~0.1μmの範囲において比較的粗く形成されることにより、微細な凹み30bが無数に形成されやすくなることから、摺動面11,21間に発生する摩耗粉P20,P30および欠削粒P31が捕集されやすくなるため、大気A側から離れた被密封気体F側においても摺動面11,21間から摩耗粉P20,P30および欠削粒P31が排出され低摩擦効果がより得られやすくなる。
[0032]
 尚、図4に示されるように、炭素膜30の変形例として、プラズマCVDやイオンビーム蒸着法等により形成された炭素膜30の表面30aに対してレーザ加工により所定サイズの凹み130bを複数形成してもよい。また、回転密封環20についても、例えばポーラスSiCにより構成されることにより摺動面21における凹みが多い構造としてもよい。
[0033]
 また、炭素膜30は、ビッカース硬さが2500HV以下であることから摩耗し難くなるため、長期間にわたり低摩擦効果を得ることができる。
[0034]
 また、図5に示されるように、本実施例の炭素膜30は、摺動面の接触面圧と周速の積から導かれるPV値に対する摩擦係数0.01以下の発現が、点線で表記される従来のDLC被膜よりも広範囲(ハッチングで表される範囲)となるため、メカニカルシールにおける使用可能範囲を拡大することができ、PV値の設定が容易となることから安定して低摩擦効果を得ることができる。
[0035]
 以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
[0036]
 例えば、前記実施例では、摺動部品として、一般産業機械用のメカニカルシールを例に説明したが、自動車やウォータポンプ用等の他のメカニカルシールであってもよい。また、メカニカルシールに限られず、すべり軸受などメカニカルシール以外の摺動部品であってもよい。
[0037]
 また、前記実施例では、摺動部品が適用されるメカニカルシールは、無潤滑環境下で使用されるものとして説明したが、これに限らず、摺動面間に被密封流体である液体を介在させた潤滑環境下で使用されてもよい。
[0038]
 また、前記実施例では、炭素膜30を静止密封環10にのみ設ける例について説明したが、炭素膜30を回転密封環20にのみ設けてもよく、回転密封環20と静止密封環10の両方に設けてもよい。
[0039]
 また、前記実施例では、静止密封環10はSiCから形成され、回転密封環20は窒化珪素から形成されるものとして説明したが、これに限らず、摺動材料はメカニカルシール用摺動材料として使用されているものであれば適用可能である。尚、SiCとしては、ボロン、アルミニウム、カーボン等を焼結助剤とした焼結体をはじめ、成分、組成の異なる2種類以上の相からなる材料、例えば、黒鉛粒子の分散したSiC、SiCとSiからなる反応焼結SiC等であってもよい。また、上記摺動材料以外では、金属材料、樹脂材料、複合材料等も適用可能である。

符号の説明

[0040]
10       静止密封環(摺動部品)
11       摺動面
12       SiC基材
12a      端面部
20       回転密封環(摺動部品)
21       摺動面
30       炭素膜
30a      表面
30b      凹み
130b     凹み
P20,P30  摩耗粉
P31      欠削粒

請求の範囲

[請求項1]
 摺動面が相対摺動する摺動部品であって、
 前記摺動面には、ポリマー構造が分散された炭素膜が形成されており、当該炭素膜は分光エリプソメトリの550nmの波長域で消衰係数0.2以下、屈折率1.5~2.0を満たす割合のポリマー構造が分散されている摺動部品。
[請求項2]
 前記炭素膜は、ビッカース硬さが2500HV以下である請求項1に記載の摺動部品。
[請求項3]
 前記摺動面と摺動する相手側摺動部品の摺動面が窒化珪素により形成されている請求項1または2に記載の摺動部品。
[請求項4]
 前記炭素膜の表面における算術平均粗さRaは0.005~0.1μmである請求項1ないし3のいずれかに記載の摺動部品。
[請求項5]
 前記摺動部品は、メカニカルシールの密封環である請求項1ないし4のいずれかに記載の摺動部品。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]