処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2020202461 - 金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体および金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法

Document

明 細 書

発明の名称 金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体および金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013   0014   0015  

課題を解決するための手段

0016   0017  

発明の効果

0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130  

実施例

0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167  

符号の説明

0168  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : 金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体および金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体および金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 強化繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維など)をマトリックス樹脂に含有させて複合化した繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)は、軽量で引張強度や加工性等に優れる。そのため、民生分野から産業用途まで広く利用されている。自動車産業においても、燃費、その他の性能の向上につながる車体軽量化のニーズを満たすため、FRPの軽量性、引張強度、加工性等に着目し、自動車部材へのFRPの適用が検討されている。
[0003]
 中でも、炭素繊維を強化繊維として用いる炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、炭素繊維の強度に起因して、特に軽量であり、引張強度に特に優れているため、自動車部材をはじめとした様々な用途において有望な材料である。
[0004]
 一方で、CFRPのマトリックス樹脂は、一般に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であるため脆性を有していることから、変形すると脆性破壊する可能性がある。また、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として用いるCFRPは、塑性変形しないことから、一度硬化させてしまうと曲げ加工ができない。さらに、CFRPは、一般に高価であり、自動車部材等の各種部材のコストアップの要因となる。
[0005]
 CFRPの上述したような利点を維持しつつ、これらの問題点を解決するため、最近では、金属部材とCFRPとを積層して一体化(複合化)させた金属-CFRP複合材料が検討されている。金属部材は延性を有していることから、このような金属部材と複合化することで、脆性が低下し、複合材料を変形・加工できる。さらに、低価格の金属部材とCFRPを複合化することで、CFRPの使用量を減らすことができるため、自動車部材のコストを低下させることができる。
[0006]
 ところで、CFRP中の炭素繊維は、良好な導電体である。したがって、CFRPと接触した金属部材が電気的に導通し、電食作用によって腐食する現象(異種材料接触腐食)が生じうる。このような異種材料接触腐食を防止するために、いくつかの提案がなされている。
[0007]
 特許文献1には、炭素繊維強化樹脂成形品のマトリックス樹脂中に粒子状またはオイル状のシリコーン化合物を分散させた、金属部品と接触状態で使用される炭素繊維強化樹脂成形品が提案されている。
[0008]
 特許文献2には、金属製締結部材とCFRP積層板との間に非導電性スリーブおよびガラス繊維強化樹脂等の非導電性シートを配置した、繊維強化樹脂部材が提案されている。特許文献3には、炭素繊維強化樹脂材と金属製のカラーの当接部とを絶縁性の接着剤を介して接着させた炭素繊維強化樹脂材の締結構造が提案されている。
[0009]
 特許文献4には、金属板の少なくとも片面に、有機樹脂(A)と、25℃の電気抵抗率が0.1×10 -6~185×10 -6Ωcmのホウ化物、炭化物、窒化物、ケイ化物から選ばれる非酸化物セラミックス粒子(B)とを含む塗膜(α)が形成されており、前記塗膜(α)中の有機樹脂(A)と非酸化物セラミックス粒子(B)の25℃での体積比が90:10~99.9:0.1であり、前記有機樹脂(A)が、カルボキシル基、スルホン酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を構造中に含む樹脂(A1)、または更に該樹脂(A1)の誘導体(A2)を含むことを特徴とする、導電性、耐食性塗装金属板が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 特開2014-162848号公報
特許文献2 : 国際公開第2016/021259号
特許文献3 : 国際公開第2016/117062号
特許文献4 : 国際公開第2012/029988号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 ところで、金属-CFRP複合材料は、用途に応じて電着塗装が施される。したがって、このような用途に金属-CFRP複合材料を使用する場合、金属部材-CFRP複合材料にも優れた電着塗装性が要求される。CFRPにも電着塗装を行う場合、CFRPと金属部材とが適度に導通する必要がある。しかしながら、CFRPと金属部材とが導通する場合、上述した異種材料接触腐食を抑制することができなかった。
[0012]
 一方で、特許文献2、3に記載の技術においては、CFRPと金属部材との間を絶縁体により遮断しているため、電着塗装の適用が困難である。また、特許文献1に記載の成形品は、炭素繊維強化樹脂成形品の表面をシリコーンにより撥水性を付与したものであり、炭素繊維と金属部品との導通を防止したものではない。したがって、異種材料接触腐食を抑制することは困難である。
[0013]
 ここで、発明者らが検討した結果、金属部材に直接CFRPを貼り付けた複合材料に電着塗装を施すと、金属部材の表面のみならずCFRP表面にも電着塗装が被覆されることを知見した。しかし、金属部材に直接CFRPを貼り付けた複合材料に電着塗装を施しただけの複合体では、金属部材とCFRPとの接触部からの腐食が抑えきれないことも知見した。一方、金属部材とCFRP中の炭素繊維との異種材料接触腐食を抑制するために絶縁物である樹脂皮膜を設けてもCFRPを金属板に貼付ける際には、一般的に熱圧着するため、この工程においてCFRP中の炭素繊維が樹脂絶縁皮膜を貫通して金属と接触してしまい、異種材料接触腐食を完全に抑制することは困難であった。しかも、絶縁皮膜があるため、たとえ一部の炭素繊維が金属部材と接触していても導通性は損なわれるため、この絶縁皮膜層を有する複合材料に電着塗装を施しても、電着塗膜が被覆されにくく、異種材料接触腐食の抑制には効果がなかった。
[0014]
 以上、従来、異種接触材料腐食の抑制と電着塗装性の向上については検討されておらず、また、これらを両立した金属-CFRP複合材料は知られていなかった。
 特許文献4には、金属板に有機樹脂と非酸化物セラミックス粒子とを含む導電性を有する塗膜に関する発明が開示されている。しかしながら、この発明に係る鋼板にCFRPを直接貼り付けると電着塗膜は被覆されたが腐食を抑制することはできなかった。特許文献4に記載の金属板のように単に導電性皮膜を金属に被覆することで電着塗装性を付与しても、電着塗装の欠陥部などから腐食因子である水などが金属板に被覆した皮膜とCFRPとの界面に侵入することで異種材料接触腐食が発生する。
[0015]
 そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、金属部材の異種材料接触腐食が抑制され、且つ、電着塗装性に優れた新規かつ改良された金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体および金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0016]
 本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、金属部材と炭素繊維強化樹脂材料との間に樹脂皮膜層を設け、前記樹脂皮膜層中に金属粒子、金属間化合物粒子、導電性酸化物粒子、および導電性非酸化物セラミクス粒子のいずれか1種または複数種を導電性粒子として含み、23~27℃の粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下であり、かつZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種または複数種を構成元素として含むことにより、金属部材の異種材料接触腐食を抑制しつつ、電着塗装性を向上させることができることを見出した。これは、金属部材と炭素繊維強化樹脂材料との間の樹脂皮膜層中に導電性物質を添加することで、金属部材と炭素繊維強化樹脂材料との間が電気的に導通され、電着塗装の際に電着塗膜が金属材とCFRP表面に被覆されて、複合材料に侵入する腐食因子のバリヤー効果をより発揮し、更に、前記導電性微粒子をZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、Mn、Wの各金属、もしくは、Zn、Si、Zr、V、Cr、Mo、Mn、Wを含む金属間化合物、またはこれら各金属を含む導電性酸化物もしくは非酸化物セラミックスとすることで、これら遷移元素が溶出して金属板やCFRP中の炭素繊維表面に沈着して両者の間に絶縁皮膜を形成するため、異種材料接触が回避され耐食性が高まるものと推定する。
[0017]
 本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1) 金属部材と、
 前記金属部材の表面の少なくとも一部に配置された樹脂皮膜層と、
 前記樹脂皮膜層の表面の少なくとも一部に配置され、マトリックス樹脂および当該マトリックス樹脂中に存在する炭素繊維材料を含む炭素繊維強化樹脂材料と、を有し、
 前記樹脂皮膜層は、金属粒子、金属間化合物粒子、導電性酸化物粒子、および導電性非酸化物セラミクス粒子のいずれか1種または複数種を導電性粒子として含み、さらに、バインダ樹脂を含み、
 前記導電性粒子は、23~27℃の粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下であり、かつZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種または複数種を構成元素として含む、金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(2) 前記導電性酸化物粒子が、ドープ型導電性酸化物粒子である、(1)に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(3) 前記導電性粒子が、Alドープ型酸化亜鉛、ZrB 、MoSi 、CrB 、WSi 、VB 、フェロシリコンおよびフェロマンガンからなる群から選択される1種以上からなる、(1)または(2)に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(4) 前記樹脂皮膜層における前記導電性粒子の体積率が、1.0%以上30.0%以下である、(1)~(3)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(5) 前記樹脂皮膜層の平均厚みが、1.0μm以上200.0μm以下である、(1)~(4)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(6) 前記導電性粒子の平均粒径が、50.0μm以下である、(1)~(5)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(7) 前記樹脂皮膜層の平均厚みをT(μm)、前記導電性粒子の平均粒径をr(μm)とした際に、0.5≦T/r≦300.0の関係を満足する、(1)~(6)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(8) 前記樹脂皮膜層のガラス転移温度が、100℃以下である、(1)~(7)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(9) 前記バインダ樹脂は、エポキシ樹脂、もしくはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上とエポキシ樹脂を含む樹脂である、(1)~(8)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(10) 前記マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂を含む、(1)~(9)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(11) 前記マトリックス樹脂は、フェノキシ樹脂を含む、(1)~(10)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(12) 前記樹脂皮膜層および/または前記炭素繊維強化樹脂材料上に形成された電着塗装皮膜を有する、(1)~(11)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(13) 前記金属部材が、鋼材またはめっき鋼材である、(1)~(12)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
(14) 導電性粒子およびバインダ樹脂を含む樹脂皮膜層の表面の少なくとも一部に設けられた金属部材と、炭素繊維強化樹脂材料とを前記樹脂皮膜層を介して熱圧着する工程を有し、
 前記炭素繊維強化樹脂材料は、マトリックス樹脂および当該マトリックス樹脂中に存在する炭素繊維材料を含み、
 前記導電性粒子は、金属粒子、金属間化合物粒子、導電性酸化物粒子および導電性非酸化物セラミクス粒子のいずれか1種または複数種を含み、
 前記導電性粒子は、23~27℃の粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下であり、かつZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種または複数種を構成元素として含む、金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法。
(15) さらに、前記熱圧着する工程前に、前記金属部材を成形する工程を有する、(14)に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法。
(16) さらに、前記熱圧着する工程後に、前記金属部材と前記炭素繊維強化樹脂材料とが積層した積層体を成形する工程を有する、(14)に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法。
(17) さらに、前記樹脂皮膜層および/または前記炭素繊維強化樹脂材料上に電着塗装により電着塗装皮膜を形成する工程を有する、(14)~(16)のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法。

発明の効果

[0018]
 以上説明したように本発明によれば、金属部材の異種材料接触腐食が抑制され、且つ、電着塗装性に優れた金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体および金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 本発明の一実施形態に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の積層方向における断面模式図である。
[図2] 本発明の一変形例に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の積層方向における断面模式図である。
[図3] 本発明の他の変形例に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の積層方向における断面模式図である。
[図4] 本発明の他の変形例に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の積層方向における断面模式図である。
[図5] 本発明の他の変形例に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の積層方向における断面模式図である。
[図6] 本発明の他の変形例に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の積層方向における断面模式図である。
[図7] 本発明の他の変形例に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の積層方向における断面模式図である。
[図8] 本発明の第1の実施形態に係る金属-CFRP複合体の製造方法を説明する模式図である。
[図9] 本発明の第1の実施形態に係る金属-CFRP複合体の製造方法を説明する模式図である。
[図10] 本発明の第2の実施形態に係る金属-CFRP複合体の製造方法を説明する模式図である。
[図11] 本発明の第2の実施形態に係る金属-CFRP複合体の製造方法を説明する模式図である。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[0021]
 また、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。また、説明の容易化のために各図は適宜拡大、縮小しており、図は各部の実際の大きさ及び比率を示すものではない。
[0022]
<1.金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体>
[1.1.金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の構成]
 まず、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の一例としての金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体1の積層方向における断面構造を示す模式図である。
[0023]
 図1に示すように、金属-炭素繊維強化樹脂材料(CFRP)複合体1は、金属部材11と、炭素繊維強化樹脂材料(CFRP層)12と、樹脂皮膜層13と、を備える。金属部材11とCFRP層12とは、樹脂皮膜層13を介して複合化されている。ここで、「複合化」とは、金属部材11とCFRP層12とが、樹脂皮膜層13を介して接合され(貼り合わされ)、一体化していることを意味する。また、「一体化」とは、金属部材11、CFRP層12及び樹脂皮膜層13が、加工や変形の際、一体として動くことを意味する。
[0024]
 また、本実施形態においては、樹脂皮膜層13は、金属粒子、金属間化合物粒子、導電性酸化物粒子および導電性非酸化物セラミクス粒子からなる群から選ばれるいずれか1種または複数種からなる導電性粒子131を含み、導電性粒子131は、23~27℃の粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下であり、かつZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種または複数種を構成元素として含む。これにより、金属-CFRP複合体1は、異種材料接触腐食が抑制されるとともに、電着塗装性に優れたものとなる。具体的には、導電性粒子131は、金属粒子、金属間化合物粒子、導電性酸化物粒子、および導電性非酸化物セラミクス粒子からなる群から選ばれる1種または複数種を含み、23~27℃の粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下であり、かつZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種または複数種を構成元素として含むことにより、犠牲防食作用を発現し、さらに、当該元素が酸化した部位は、酸化皮膜を生じて金属部材11の腐食を防止する。一方で、導電性粒子131は、23~27℃での粉体抵抗率が7.0×10 以下であることにより、樹脂皮膜層13が適度な導電性を有するものとなり、電着塗装性が向上する。
 以下、金属-CFRP複合体1の各構成について詳述する。
[0025]
(金属部材11)
 金属部材11の材質、形状及び厚みなどは、プレス等による成型加工が可能であれば特に限定されるものではないが、形状は薄板状が好ましい。金属部材11の材質としては、例えば、鉄、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びこれらの合金などが挙げられる。ここで、合金の例としては、例えば、鉄系合金(ステンレス鋼含む)、Ti系合金、Al系合金、Mg合金などが挙げられる。金属部材11の材質は、鉄鋼材料、鉄系合金、チタン及びアルミニウムであることが好ましく、他の金属種に比べて引張強度が高い鉄鋼材料であることがより好ましい。そのような鉄鋼材料としては、例えば、自動車に用いられる薄板状の鋼板として日本工業規格(JIS)等で規格された一般用、絞り用あるいは超深絞り用の冷間圧延鋼板、自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板、一般用や加工用の熱間圧延鋼板、自動車構造用熱間圧延鋼板、自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板をはじめとする鉄鋼材料があり、一般構造用や機械構造用として使用される炭素鋼、合金鋼、高張力鋼等も薄板状に限らない鉄鋼材料として挙げることができる。
[0026]
 また、金属部材11がアルミニウム合金であると部材の軽量化が達成されるため、好適である。アルミニウム合金としては、アルミニウムにSi、Fe、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Ti、V、Zr、Pb、Biのうち1種または2種以上を添加したもので、例えばJIS H4000:2006に記載される1000番台系、2000番台系、3000番台系、4000番台系、5000番台系、6000番台系、7000番台系など一般に公知のものを使用することができる。強度と成形性を有する5000番台系や6000番台系などは、好適である。マグネシウム合金としては、マグネシウムにAl、Zn、Mn、Fe、Si、Cu、Ni、Ca、Zr、Li、Pb、Ag、Cr、Sn、Y、Sbその他希土類元素のうち1種または2種以上を添加したもので、Alを添加したASTM規格に記載されているAM系、AlとZnを添加したAZ系、Znを添加したZK系など一般に公知のものを使用することができる。なお、金属部材11が板状である場合、これらは成形されていてもよい。
[0027]
 鉄鋼材料には、任意の表面処理が施されていてもよい。ここで、表面処理とは、例えば、亜鉛めっき及びアルミニウムめっきなどの各種めっき処理、クロメート処理及びノンクロメート処理などの化成処理、並びに、サンドブラストのような物理的もしくはケミカルエッチングのような化学的な表面粗化処理が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、めっきの合金化や複数種の表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、少なくとも防錆性の付与を目的とした処理が行われていることが好ましい。
[0028]
 特に、鉄鋼材料の中でもめっき処理が施されためっき鋼材は、耐食性に優れることから好ましい。金属部材11として特に好ましいめっき鋼材としては、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板もしくはこれらを熱処理して亜鉛めっき中にFeを拡散させることで合金化させた合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気Zn-Niめっき鋼板、溶融Zn-5%Al合金めっき鋼板や溶融55%Al-Zn合金めっき鋼板に代表される溶融Zn-Al合金めっき鋼板、溶融Zn-1~12%Al-1~4%Mg合金めっき鋼板や溶融55%Al-Zn-0.1~3%Mg合金めっき鋼板に代表される溶融Zn-Al-Mg合金めっき鋼板、Niめっき鋼板もしくはこれらを熱処理してNiめっき中にFeを拡散させることで合金化させた合金化Niめっき鋼板、Alめっき鋼板、錫めっき鋼板、クロムめっき鋼板等が挙げられる。亜鉛系めっき鋼板は耐食性に優れ好適である。更に、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板は更に耐食性が優れるため、より好適である。
[0029]
 CFRP層12との接着性を高めるために、金属部材11の表面は、プライマーにより処理されていることが好ましい。この処理で用いるプライマーとしては、例えば、シランカップリング剤やトリアジンチオール誘導体が好ましい。シランカップリング剤としては、一般に公知のシランカップリング剤、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル〔3-(メチルジエトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランなどを挙げることができるが、グリシジルエーテル基を有するシランカップリング剤、例えば、グリシジルエーテル基を有するγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを使用すると、塗膜の加工密着性は特に向上する。更に、トリエトキシタイプのシランカップリング剤を使用すると、下地処理剤(プライマー)の保存安定性を向上させることができる。これは、トリエトキシシランが水溶液中で比較的安定であり、重合速度が遅いためであると考えられる。シランカップリング剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。トリアジンチオール誘導体としては、6-ジアリルアミノ-2,4-ジチオール-1,3,5-トリアジン、6-メトキシ-2,4-ジチオール-1,3,5-トリアジンモノナトリウム、6-プロピル-2,4-ジチオールアミノ-1,3,5-トリアジンモノナトリウム及び2,4,6-トリチオール-1,3,5-トリアジンなどが例示される。
[0030]
(CFRP層12)
 CFRP層12は、後述する樹脂皮膜層13を介して金属部材11と接合されている。すなわち、CFRP層12は、樹脂皮膜層13の表面上に配置されている。なお、本実施形態においては、本発明が奏する効果を説明することを目的として、樹脂皮膜層13の表面の一部のみにCFRP層12が配置される態様を示したが、本発明は図示の態様に限定されず、樹脂皮膜層13の表面の全てまたは一部において、任意の形状のCFRP層を配置することができる。そして後述する理由により、CFRP層12は、その表面125上において比較的均一な電着塗装皮膜を形成することが可能である。
[0031]
 CFRP層12は、マトリックス樹脂123と、当該マトリックス樹脂123中に含有され、複合化された炭素繊維材料121と、を有している。
[0032]
 炭素繊維材料121としては、特に制限はないが、例えば、PAN系、ピッチ系のいずれも使用でき、目的や用途に応じて選択すればよい。また、炭素繊維材料121として、上述した繊維を1種類単独で使用してもよいし、複数種類を併用してもよい。
[0033]
 CFRP層12に用いられるCFRPにおいて、炭素繊維材料121の基材となる強化繊維基材としては、例えば、チョップドファイバーを使用した不織布基材や連続繊維を使用したクロス材、一方向強化繊維基材(UD材)などを使用することができる。補強効果の面からは、強化繊維基材としてクロス材やUD材を使用することが好ましい。
[0034]
 マトリックス樹脂123は、樹脂組成物の固化物または硬化物であることができる。ここで、単に「固化物」というときは、樹脂成分自体が固化したものを意味し、「硬化物」というときは、樹脂成分に対して各種の硬化剤を含有させて硬化させたものを意味する。なお、硬化物に含有されうる硬化剤には、後述するような架橋剤も含まれ、上記の「硬化物」は、架橋形成された架橋硬化物を含むものとする。
[0035]
 マトリックス樹脂123を構成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれも使用することができるが、熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。マトリックス樹脂123に用いることができる熱可塑性樹脂の種類は、特に制限されないが、例えば、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン及びその酸変性物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性芳香族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、並びにナイロン等から選ばれる1種以上を使用できる。なお、「熱可塑性樹脂」には、後述する第2の硬化状態である架橋硬化物となり得る樹脂も含まれる。また、マトリックス樹脂123に用いることができる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、及び、ウレタン樹脂から選ばれる1種以上を使用することができる。
[0036]
 ここで、マトリックス樹脂123が熱可塑性樹脂を含有した場合、上述したCFRPのマトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を用いたときの問題点、すなわち、CFRP層12が脆性を有すること、タクトタイムが長いこと、曲げ加工ができないことなどの問題点を解消できる。ただし、通常、熱可塑性樹脂は、溶融したときの粘度が高く、熱硬化前のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂のように低粘度の状態で炭素繊維材料121に含浸させることができないことから、炭素繊維材料121に対する含浸性に劣る。そのため、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂123として用いた場合のようにCFRP層12中の強化繊維密度(VF:Volume Fraction)を上げることができない。例えば、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂123として用いた場合には、VFを60%程度とすることができるが、ポリプロピレンやナイロン等の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂123として用いた場合には、VFが50%程度となってしまう。また、ポリプロピレンやナイロン等の熱可塑性樹脂を用いると、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いたときのようにCFRP層12が高い耐熱性を有することができない。
[0037]
 このような熱可塑性樹脂を用いたときの問題を解消するには、マトリックス樹脂123として、フェノキシ樹脂を使用することが好ましい。フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂と分子構造が酷似しているため、エポキシ樹脂と同程度の耐熱性を有し、また、金属部材11や炭素繊維材料121との接着性が良好となる。さらに、フェノキシ樹脂に、エポキシ樹脂のような硬化成分を添加して共重合させることで、いわゆる部分硬化型樹脂とすることができる。このような部分硬化型樹脂をマトリックス樹脂123として使用することにより、炭素繊維材料121への含浸性に優れるマトリックス樹脂とすることができる。さらには、この部分硬化型樹脂中の硬化成分を熱硬化させることで、通常の熱可塑性樹脂のようにCFRP層12中のマトリックス樹脂123が高温に曝された際に溶融又は軟化することを抑制できる。フェノキシ樹脂への硬化成分の添加量は、炭素繊維材料121への含浸性と、CFRP層12の脆性、タクトタイム及び加工性等とを考慮し、適宜決めればよい。このように、フェノキシ樹脂をマトリックス樹脂123として使用することで、自由度の高い硬化成分の添加と制御を行うことが可能となる。
[0038]
 なお、例えば、炭素繊維材料121の表面には、エポキシ樹脂と馴染みのよいサイジング剤が施されていることが多い。フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂の構造と酷似していることから、マトリックス樹脂123としてフェノキシ樹脂を使用することにより、エポキシ樹脂用のサイジング剤をそのまま使用することができる。そのため、コスト競争力を高めることができる。
[0039]
 また、熱可塑性樹脂の中でもフェノキシ樹脂は、良成形性を備え、炭素繊維材料121や金属部材11との接着性に優れる他、酸無水物やイソシアネート化合物、カプロラクタム等を架橋剤として使用することで、成形後に高耐熱性の熱硬化性樹脂と同様の性質を持たせることもできる。よって、本実施形態では、マトリックス樹脂123の樹脂成分として、樹脂成分100質量部に対してフェノキシ樹脂を50質量部以上含む樹脂組成物の固化物又は硬化物を用いることが好ましい。このような樹脂組成物を使用することによって、金属部材11とCFRP層12とを強固に接合することが可能になる。樹脂組成物は、樹脂成分100質量部のうちフェノキシ樹脂を55質量部以上含むことがより好ましい。接着樹脂組成物の形態は、例えば、粉体、ワニスなどの液体、フィルムなどの固体とすることができる。
[0040]
 なお、フェノキシ樹脂の含有量は、以下のように、赤外分光法(IR:InfraRed spectroscopy)を用いて測定可能であり、IRで対象とする樹脂組成物からフェノキシ樹脂の含有割合を分析する場合、透過法やATR反射法など、IR分析の一般的な方法を使うことで、測定することができる。
[0041]
 鋭利な刃物等でCFRP層12を削り出し、可能な限り繊維をピンセットなどで除去して、CFRP層12から分析対象となる樹脂組成物をサンプリングする。透過法の場合は、KBr粉末と分析対象となる樹脂組成物の粉末とを乳鉢などで均一に混合しながら潰すことで薄膜を作製して、試料とする。ATR反射法の場合は、透過法同様に粉末を乳鉢で均一に混合しながら潰すことで錠剤を作製して、試料を作製しても良いし、単結晶KBr錠剤(例えば直径2mm×厚み1.8mm)の表面にヤスリなどで傷をつけ、分析対象となる樹脂組成物の粉末をまぶして付着させて試料としても良い。いずれの方法においても、分析対象となる樹脂と混合する前のKBr単体におけるバックグラウンドを測定しておくことが重要である。IR測定装置は、市販されている一般的なものを用いることができるが、精度としては吸収(Absorbance)は1%単位で、波数(Wavenumber)は1cm -1単位で区別が出来る分析精度をもつ装置が好ましく、例えば、日本分光株式会社製のFT/IR-6300などが挙げられる。
[0042]
 フェノキシ樹脂の含有量を調査する場合、フェノキシ樹脂の吸収ピークは、例えば1450~1480cm -1、1500cm -1近傍、1600cm -1近傍などに存在することから、同吸収ピークの強度に基づいて、含有量を計算することが可能である。
[0043]
 なお、「フェノキシ樹脂」とは、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応、又は2価フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂との重付加反応から得られる線形の高分子であり、非晶質の熱可塑性樹脂である。フェノキシ樹脂は、溶液中又は無溶媒下で従来公知の方法で得ることができ、粉体、ワニス及びフィルムのいずれの形態でも使用することができる。フェノキシ樹脂の平均分子量は、質量平均分子量(Mw)として、例えば、10,000以上200,000以下の範囲内であるが、好ましくは20,000以上100,000以下の範囲内であり、より好ましくは30,000以上80,000以下の範囲内である。フェノキシ樹脂(A)のMwを10,000以上の範囲内とすることで、成形体の強度を高めることができ、この効果は、Mwを20,000以上、さらには30,000以上とすることで、さらに高まる。一方、フェノキシ樹脂のMwを200,000以下とすることで、作業性や加工性に優れるものとすることができ、この効果は、Mwを100,000以下、さらには80,000以下とすることで、さらに高まる。なお、本明細書におけるMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値とする。
[0044]
 本実施形態で用いるフェノキシ樹脂の水酸基当量(g/eq)は、例えば、50以上1000以下の範囲内であるが、好ましくは50以上750以下の範囲内であり、より好ましくは50以上500以下の範囲内である。フェノキシ樹脂の水酸基当量を50以上とすることで、水酸基が減ることで吸水率が下がるため、硬化物の機械物性を向上させることができる。一方、フェノキシ樹脂の水酸基当量を1,000以下とすることで、水酸基が少なくなるのを抑制できるので、被着体との親和性を向上させ、金属-CFRP複合体1の機械物性を向上させることができる。この効果は、水酸基当量を750以下、さらには500以下とすることでさらに高まる。
[0045]
 また、フェノキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、65℃以上150℃以下の範囲内のものが適するが、好ましくは70℃以上150℃以下の範囲内である。Tgが65℃以上であると、成形性を確保しつつ、樹脂の流動性が大きくなりすぎることを抑制できるため、樹脂皮膜層13の厚みを十分に確保できる。一方、Tgが150℃以下であると、溶融粘度が低くなるため、強化繊維基材にボイドなどの欠陥なく含浸させることが容易となり、より低温の接合プロセスとすることができる。なお、本明細書における樹脂のTgは、示差走査熱量測定装置を用い、10℃/分の昇温条件で、20~280℃の範囲内の温度で測定し、セカンドスキャンのピーク値より計算された数値である。
[0046]
 フェノキシ樹脂としては、上記の物性を満足するものであれば特に限定されないが、好ましいものとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製フェノトートYP-50、フェノトートYP-50S、フェノトートYP-55Uとして入手可能)、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製フェノトートFX-316として入手可能)、ビスフェノールAとビスフェノールFの共重合型フェノキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製YP-70として入手可能)、上記に挙げたフェノキシ樹脂以外の臭素化フェノキシ樹脂やリン含有フェノキシ樹脂、スルホン基含有フェノキシ樹脂などの特殊フェノキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製フェノトートYPB-43C、フェノトートFX293、YPS-007等として入手可能)などを挙げることができる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
[0047]
 マトリックス樹脂123の樹脂成分として用いる熱可塑性樹脂は、160~250℃の範囲内の温度域のいずれかで、溶融粘度が3,000Pa・s以下になるものが好ましく、90Pa・s以上2,900Pa・s以下の範囲内の溶融粘度となるものがより好ましく、100Pa・s以上2,800Pa・s以下の範囲内の溶融粘度となるものがさらに好ましい。160~250℃の範囲内の温度域における溶融粘度が3,000Pa・s以下とすることにより、溶融時の流動性が良くなり、CFRP層12にボイド等の欠陥が生じにくくなる。一方、溶融粘度が90Pa・s以上であることにより樹脂組成物としての分子量を適度とすることができ、脆化およびこれに伴う、金属-CFRP複合体1の機械的強度の低下を抑制することができる。
[0048]
 また、マトリックス樹脂123を構成する樹脂組成物は、上述した樹脂組成物に対し、架橋剤が配合された架橋性樹脂組成物であってもよい。例えば、フェノキシ樹脂(以下、「フェノキシ樹脂(A)」ともいう。)を含有する樹脂組成物に、例えば、酸無水物、イソシアネート、カプロラクタムなどを架橋剤として配合することにより、架橋性樹脂組成物(すなわち、樹脂組成物の硬化物)とすることもできる。架橋性樹脂組成物は、フェノキシ樹脂(A)に含まれる2級水酸基を利用して架橋反応させることにより、樹脂組成物の耐熱性が向上するため、より高温環境下で使用される部材への適用に有利となる。フェノキシ樹脂(A)の2級水酸基を利用した架橋形成には、架橋硬化性樹脂(B)と架橋剤(C)を配合した架橋性樹脂組成物を用いることが好ましい。架橋硬化性樹脂(B)としては、例えばエポキシ樹脂等を使用できるが、特に限定するものではない。このような架橋性樹脂組成物を用いることによって、樹脂組成物のTgがフェノキシ樹脂(A)単独の場合よりも大きく向上した第2の硬化状態の硬化物(架橋硬化物)が得られる。架橋性樹脂組成物の架橋硬化物のTgは、例えば、160℃以上であり、170℃以上220℃以下の範囲内であることが好ましい。
[0049]
 架橋性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂(A)に配合する架橋硬化性樹脂(B)としては、2官能性以上のエポキシ樹脂が好ましい。2官能性以上のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製エポトートYD-011、エポトートYD-7011、エポトートYD-900として入手可能)、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製エポトートYDF-2001として入手可能)、ジフェニルエーテルタイプエポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製YSLV-80DEとして入手可能)、テトラメチルビスフェノールFタイプエポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製YSLV-80XYとして入手可能)、ビスフェノールスルフィドタイプエポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製YSLV-120TEとして入手可能)、ハイドロキノンタイプエポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製エポトートYDC-1312として入手可能)、フェノールノボラックタイプエポキシ樹脂、(例えば、新日鉄住金化学株式会社製エポトートYDPN-638として入手可能)、オルソクレゾールノボラックタイプエポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製エポトートYDCN-701、エポトートYDCN-702、エポトートYDCN-703、エポトートYDCN-704として入手可能)、アラルキルナフタレンジオールノボラックタイプエポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製ESN-355として入手可能)、トリフェニルメタンタイプエポキシ樹脂(例えば、日本化薬株式会社製EPPN-502Hとして入手可能)等が例示されるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
[0050]
 また、架橋硬化性樹脂(B)としては、特に限定する意味ではないが、結晶性エポキシ樹脂が好ましく、融点が70℃以上145℃以下の範囲内で、150℃における溶融粘度が2.0Pa・s以下である結晶性エポキシ樹脂がより好ましい。このような溶融特性を示す結晶性エポキシ樹脂を使用することにより、樹脂組成物としての架橋性樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができ、CFRP層12の接着性を向上させることができる。また、溶融粘度が2.0Pa・s以下であることにより、架橋性樹脂組成物の成形性を十分に優れたものとすることができ、金属-CFRP複合体1の均質性を向上させることができる。
[0051]
 架橋硬化性樹脂(B)として好適な結晶性エポキシ樹脂としては、例えば、新日鉄住金化学株式会社製エポトートYSLV-80XY、YSLV-70XY、YSLV-120TE、YDC-1312、三菱化学株式会社製YX-4000、YX-4000H、YX-8800、YL-6121H、YL-6640等、DIC株式会社製HP-4032、HP-4032D、HP-4700等、日本化薬株式会社製NC-3000等が挙げられる。
[0052]
 架橋剤(C)は、フェノキシ樹脂(A)の2級水酸基とエステル結合を形成することにより、フェノキシ樹脂(A)を3次元的に架橋させる。そのため、熱硬化性樹脂の硬化のような強固な架橋とは異なり、加水分解反応により架橋を解くことができるので、金属部材11とCFRP層12とを容易に剥離することが可能となる。従って、金属部材11をリサイクルできる。
[0053]
 架橋剤(C)としては、酸無水物が好ましい。酸無水物は、常温で固体であり、昇華性があまり無いものであれば特に限定されるものではないが、金属-CFRP複合体1への耐熱性付与や反応性の点から、フェノキシ樹脂(A)の水酸基と反応する酸無水物を2つ以上有する芳香族酸無水物が好ましい。特に、ピロメリット酸無水物のように2つの酸無水物基を有する芳香族化合物は、トリメリット酸無水物と水酸基の組み合わせと比べて架橋密度が高くなり、耐熱性が向上するので好適に使用される。芳香族酸二無水物でも、例えば、4,4’-オキシジフタル酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物といったフェノキシ樹脂及びエポキシ樹脂に対して相溶性を有する芳香族酸二無水物は、Tgを向上させる効果が大きくより好ましい。特に、ピロメリット酸無水物のように2つの酸無水物基を有する芳香族酸二無水物は、例えば、酸無水物基を1つしか有しない無水フタル酸に比べて架橋密度が向上し、耐熱性が向上するので好適に使用される。すなわち、芳香族酸二無水物は、酸無水物基を2つ有するために反応性が良好で、短い成形時間で脱型に十分な強度の架橋硬化物が得られるとともに、フェノキシ樹脂(A)中の2級水酸基とのエステル化反応により、4つのカルボキシル基を生成させるため、最終的な架橋密度を高くできる。
[0054]
 フェノキシ樹脂(A)、架橋硬化性樹脂(B)としてのエポキシ樹脂、及び架橋剤(C)の反応は、フェノキシ樹脂(A)中の2級水酸基と架橋剤(C)の酸無水物基とのエステル化反応、更にはこのエステル化反応により生成したカルボキシル基とエポキシ樹脂のエポキシ基との反応によって架橋及び硬化される。フェノキシ樹脂(A)と架橋剤(C)との反応によってフェノキシ樹脂架橋体を得ることができるが、エポキシ樹脂が共存することで樹脂組成物の溶融粘度を低下させられるため、被着体(樹脂皮膜層13)との含浸性の向上、架橋反応の促進、架橋密度の向上、及び機械強度の向上などの優れた特性を示す。
[0055]
 なお、架橋性樹脂組成物においては、架橋硬化性樹脂(B)としてのエポキシ樹脂が共存してはいるが、熱可塑性樹脂であるフェノキシ樹脂(A)を主成分としており、その2級水酸基と架橋剤(C)の酸無水物基とのエステル化反応が優先していると考えられる。すなわち、架橋剤(C)として使用される酸無水物と、架橋硬化性樹脂(B)として使用されるエポキシ樹脂との反応は時間がかかる(反応速度が遅い)ため、架橋剤(C)とフェノキシ樹脂(A)の2級水酸基との反応が先に起こり、次いで、先の反応で残留した架橋剤(C)や、架橋剤(C)に由来する残存カルボキシル基とエポキシ樹脂とが反応することで更に架橋密度が高まる。そのため、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分とする樹脂組成物とは異なり、架橋性樹脂組成物によって得られる架橋硬化物は熱可塑性樹脂であり、貯蔵安定性にも優れる。
[0056]
 フェノキシ樹脂(A)の架橋を利用する架橋性樹脂組成物においては、フェノキシ樹脂(A)100質量部に対して、架橋硬化性樹脂(B)が5質量部以上85質量部以下の範囲内となるように含有されることが好ましい。フェノキシ樹脂(A)100質量部に対する架橋硬化性樹脂(B)の含有量は、より好ましくは9質量部以上83質量部以下の範囲内であり、さらに好ましくは10質量部以上80質量部以下の範囲内である。架橋硬化性樹脂(B)の含有量を85質量部以下とすることにより、架橋硬化性樹脂(B)の硬化時間を短縮できるため、脱型に必要な強度を短時間で得やすくなる他、FRP層12のリサイクル性が向上する。この効果は、架橋硬化性樹脂(B)の含有量を83質量部以下、更には80質量部以下とすることにより、さらに高まる。一方、架橋硬化性樹脂(B)の含有量を5質量部以上とすることにより、架橋硬化性樹脂(B)の添加による架橋密度の向上効果を得やすくなり、架橋性樹脂組成物の架橋硬化物が160℃以上のTgを発現しやすくなり、また、流動性が良好になる。なお、架橋硬化性樹脂(B)の含有量は、上述したようなIRを用いた方法によって、エポキシ樹脂由来のピークについて同様に測定することで、架橋硬化性樹脂(B)の含有量を測定できる。
[0057]
 架橋剤(C)の配合量は、通常、フェノキシ樹脂(A)の2級水酸基1モルに対して酸無水物基0.6モル以上1.3モル以下の範囲内の量であり、好ましくは0.7モル以上1.3モル以下の範囲内の量であり、より好ましくは1.1モル以上1.3モル以下の範囲内である。酸無水物基の量が0.6モル以上であると、架橋密度が高くなるため、機械物性や耐熱性に優れる。この効果は、酸無水物基の量を0.7モル以上、更には1.1モル以上とすることにより、さらに高まる。酸無水物基の量が1.3モル以下であると、未反応の酸無水物やカルボキシル基が硬化特性や架橋密度に悪影響を与えることを抑制できる。このため、架橋剤(C)の配合量に応じて、架橋硬化性樹脂(B)の配合量を調整することが好ましい。具体的には、例えば、架橋硬化性樹脂(B)として用いるエポキシ樹脂により、フェノキシ樹脂(A)の2級水酸基と架橋剤(C)の酸無水物基との反応により生じるカルボキシル基を反応させることを目的に、エポキシ樹脂の配合量を架橋剤(C)との当量比で0.5モル以上1.2モル以下の範囲内となるようにするとよい。好ましくは、架橋剤(C)とエポキシ樹脂の当量比が、0.7モル以上1.0モル以下の範囲内である。
[0058]
 架橋剤(C)をフェノキシ樹脂(A)、架橋硬化性樹脂(B)と共に配合すれば、架橋性樹脂組成物を得ることができるが、架橋反応が確実に行われるように触媒としての促進剤(D)をさらに添加してもよい。促進剤(D)は、常温で固体であり、昇華性が無いものであれば特に限定はされるものではなく、例えば、トリエチレンジアミン等の3級アミン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニルー4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらの促進剤(D)は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、架橋性樹脂組成物を微粉末とし、静電場による粉体塗装法を用いて強化繊維基材に付着させてマトリックス樹脂123を形成する場合は、促進剤(D)として、触媒活性温度が130℃以上である常温で固体のイミダゾール系の潜在性触媒を用いることが好ましい。促進剤(D)を使用する場合、促進剤(D)の配合量は、フェノキシ樹脂(A)、架橋硬化性樹脂(B)及び架橋剤(C)の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上5重量部以下の範囲内とすることが好ましい。
[0059]
 架橋性樹脂組成物は、常温で固形であり、その溶融粘度は、160~250℃の範囲内の温度域における溶融粘度の下限値である最低溶融粘度が3,000Pa・s以下であることが好ましく、2,900Pa・s以下であることがより好ましく、2,800Pa・s以下であることがさらに好ましい。160~250℃の範囲内の温度域における最低溶融粘度が3,000Pa・s以下とすることにより、熱プレスなどによる加熱圧着時に架橋性樹脂組成物を被着体へ十分に含浸させることができ、CFRP層12にボイド等の欠陥を生じることを抑制できるため、金属-CFRP複合体1の機械物性が向上する。この効果は、160~250℃の範囲内の温度域における最低溶融粘度を2,900Pa・s以下、さらには2,800Pa・s以下とすることにより、さらに高まる。
[0060]
 マトリックス樹脂123を形成するための樹脂組成物(架橋性樹脂組成物を含む)には、その接着性や物性を損なわない範囲において、例えば、天然ゴム、合成ゴム、エラストマー等や、種々の無機フィラー、溶剤、体質顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、難燃助剤等その他添加物を配合してもよい。
[0061]
 金属-CFRP複合体1において、CFRP層12のマトリックス樹脂123と、樹脂皮膜層13を構成する樹脂とは、同一の樹脂であってもよく、異なる樹脂であってもよい。ただし、CFRP層12と樹脂皮膜層13との接着性を十分に確保する観点からは、マトリックス樹脂123として、樹脂皮膜層13を構成する樹脂を形成する樹脂と同一又は同種の樹脂や、ポリマー中に含まれる極性基の比率等が近似した樹脂種を選択することが好ましい。ここで、「同一の樹脂」とは、同じ成分によって構成され、組成比率まで同じであることを意味し、「同種の樹脂」とは、主成分が同じであれば、組成比率は異なっていてもよいことを意味する。「同種の樹脂」の中には、「同一の樹脂」が含まれる。また、「主成分」とは、全樹脂成分100質量部のうち、50質量部以上含まれる成分を意味する。なお、「樹脂成分」には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が含まれるが、架橋剤などの非樹脂成分は含まれない。
[0062]
 金属-CFRP複合体1において、CFRP層12は、少なくとも1枚以上のCFRP成形用プリプレグを用いて形成されたものである。所望されるCFRP層12の厚さに応じて、積層するCFRP成形用プリプレグの数を選択することができる。
[0063]
(樹脂皮膜層13)
 樹脂皮膜層13は、金属-CFRP複合体1の金属部材11とCFRP層12との間に配置され、これらを接合する。また、樹脂皮膜層13は、腐食環境下において絶縁性を有し、金属部材11とCFRP層12との間を絶縁する。腐食環境としては、具体的には、金属-CFRP複合体1の水濡れ時や水濡れ後等の金属-CFRP複合体1の周囲に水分が付着および/または存在する環境が挙げられる。
[0064]
 そして樹脂皮膜層13は、少なくとも、金属粒子、金属間化合物粒子、導電性酸化物粒子および導電性非酸化物セラミクス粒子のいずれか1種または複数種を導電性粒子131として含み、さらにバインダ樹脂133を含む。導電性粒子131は、23~27℃の粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下であり、かつZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種または複数種を構成元素として含む。これにより、金属-CFRP複合体1は、異種材料接触腐食が抑制されるとともに、電着塗装性に優れたものとなる。
[0065]
 まず、異種材料接触腐食について、詳しく説明すると、一般に、CFRP層と金属部材とは、樹脂皮膜層を介した熱圧着により、接合される。この際に、CFRP層中の一部の炭素繊維材料は、熱圧着時の圧力により押圧されてCFRP層の表面より突出する。そして、突出した炭素繊維材料が樹脂皮膜層を貫通してしまうことにより、炭素繊維材料と金属部材が接触してしまい、電食作用により腐食が生じる。
[0066]
 これに対し、本実施形態において、導電性粒子131は、Zn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWのいずれか1種もしくは複数種を含むことで防錆顔料として作用する。したがって、炭素繊維材料121がCFRP層12の表面より突出した場合、まず炭素繊維材料121は樹脂皮膜層13へ貫入し、導電性粒子131と接触する。次に導電性粒子131は、腐食環境下で金属部材11や炭素繊維材料121より卑な導電性粒子131中の金属成分が犠牲防食作用を発現して金属イオンとして溶出し、導電性粒子131の表面にも導電性粒子の金属成分の酸化物や水酸化物が沈着する。更には、金属部材11及び炭素繊維材料121の表面にも同様に沈着し、金属部材11の酸化を防止する。さらには、導電性粒子131は、酸化された部位において導電性が低下した酸化物を形成し、酸化された周辺における保護膜として作用する。この結果、異種材料接触腐食が抑制される。
[0067]
 また、一方で、導電性粒子131は、23~27℃における粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下である。これにより、電着塗装処理時においては、導電性粒子131を介して炭素繊維材料121と金属部材11との間の導通が可能となり、CFRP層12の表面125上において比較的均一な電着塗装皮膜の形成が可能となる。さらに、樹脂皮膜層13のCFRP層12が被覆していない表面135においても、導電性粒子131により、金属部材11との導通が可能となり、比較的均一な電着塗装皮膜の形成が可能となる。
[0068]
 以上、本実施形態においては、樹脂皮膜層13において特定の導電性粒子131を採用することにより、異種材料接触腐食の抑制と、電着塗装性の向上とを同時に達成している。
[0069]
 なお、金属部材11の主成分は、金属部材11中において最も多い成分であることができる。例えば、鋼材やめっき鋼材の場合、金属部材11の主成分は、その母材を構成する最も多い成分、すなわちFeである。
[0070]
 また、導電性粒子131の23~27℃における粉体抵抗率は、上述したように7.0×10 Ωcm以下である。このように導電性粒子131の導電率が比較的大きいことにより、導電性粒子131は、炭素繊維材料121と金属部材11との間の導通を可能とする。これに対し、導電性粒子131の23~27℃における粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm超の場合、炭素繊維材料121と金属部材11との間の導通が十分でなく、電着塗装性が十分に高くならない。なお、導電性粒子131の23~27℃における粉体抵抗は、市販の粉体抵抗測定機、例えば三菱ケミカルアナリテック社製「粉体抵抗測定システムMCP-PD51型」などを用いて、10MPaで圧縮された粉体粒子の抵抗を測定することで求めることができる。また、一般に、粉体抵抗率は、測定される導電性粒子131の材料自体の体積抵抗率と同等とみなすことができる。
[0071]
 具体的には、導電性粒子131としては、Zn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種もしくは複数種を構成元素として含む金属粒子が好ましく、Zn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種もしくは複数種を含む金属間化合物粒子、例えば、フェロシリコン、フェロマンガンも好ましい。また、Zn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種もしくは複数種を含む導電性酸化物または非酸化物セラミクスであることも好ましい。
[0072]
 ここで、導電性酸化物とは、酸化物の結晶格子に不純物をドープすることで導電性を有する物質(ドープ型導電性酸化物)もしくは酸化物表面を導電性物質で修飾したタイプのものを使うことができる。前者としてはAl、Nb、Ga、Sn等から選択される1種以上の金属元素をドープした金属酸化物(例えば、Alドープ型酸化亜鉛、Nbドープ型酸化亜鉛、Gaドープ型酸化亜鉛、Snドープ型酸化亜鉛等)など一般に公知のものを使用することができる。後者としては、酸化物に導電性を有するSnO を修飾した酸化亜鉛やシリカなど一般に公知のものを使用することができる。導電性酸化物としてはドープ型導電性酸化物が好ましく、ドープ型導電性酸化物としては、Alドープ型酸化亜鉛が好ましい。
[0073]
 また、非酸化物セラミクスとは、酸素を含まない元素又は化合物からなるセラミクスであり、例えば、ホウ化物セラミクス、炭化物セラミクス、窒化物セラミクス、及びケイ化物セラミクスが挙げられる。また、ホウ化物セラミクス、炭化物セラミクス、窒化物セラミクス、及びケイ化物セラミクスとは、それぞれ、ホウ素B、炭素C、窒素N、ケイ素Siを主要な非金属構成元素とする非酸化物セラミクスのことであり、これら一般に公知の非酸化物セラミックで、Zn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種もしくは複数種を含むものを用いることができる。更に、非酸化物セラミクス粒子は、工業製品の有無、並びに、国内外市場での安定流通性、価格、及び電気抵抗率等の観点から、次に例示する非酸化物セラミクスがより好ましい。例えば、Mo B、MoB、MoB 、Mo 、NbB 、VB、VB 、W 、ZrB 、Mo C、V C、VC、WC、W C、ZrC、Mo N、VN、ZrN、Mo Si、Mo Si 、MoSi 、NbSi 、Ni Si、Ta Si、TaSi 、TiSi、TiSi 、V Si 、VSi 、W Si、WSi 、ZrSi、ZrSi 、CrB、CrB 、Cr 、Cr N、CrSiの粒子、これらから選ばれる2種以上の混合物の粒子がより好ましい。
[0074]
 上述した中でも、異種材料接触腐食を含む腐食をより確実に抑制する観点から、導電性粒子131は、好ましくは導電性酸化物粒子、非酸化物セラミクスおよび金属間化合物粒子から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは、Alドープ型酸化亜鉛、ZrB 、MoSi 、CrB 、WSi 、VB 、フェロシリコンおよびフェロマンガンからなる群から選択される1種以上であり、さらに好ましくは、Alドープ型酸化亜鉛、VB 、およびフェロマンガンからなる群から選択される1種以上である。
[0075]
 導電性粒子131の平均粒径は、特に限定されないが、例えば50.0μm以下、好ましくは10.0μm以下である。導電性粒子131の平均粒径が50.0μm以下であることにより、酸化物もしくは無機塩の粒子131が樹脂皮膜層13の表面上に突出することがより抑制され、且つ、10.0μm以下となることで、皮膜中の全粒子の表面積がより大きくなり腐食環境下で粒子が溶出しやすくなるため、耐食性にも効果的である。10.0μm以下であれば、前述の効果がより発揮されて好適である。更に、導電性粒子131の平均粒径が1.0μm以上であることにより、炭素繊維材料121と金属部材11とに対する接触をより確実なものとすることができ、これらの導通をより確実にすることができる。しかし、1.0μm以下のナノオーダーの微粒子の場合、1次粒径はナノオーダーでも分子間力により凝集して2次粒子としての粒径が1.0μm以上となった場合、効果を発揮する。その為、2次粒子の粒径を規定することは困難であるため、本願発明では導電性粒子の下限は規定しない。
[0076]
 なお、樹脂皮膜層13における導電性粒子131の平均粒径は、一般に公知の粒子分布測定装置、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX、日機装社製)などにより、体積基準で累積体積が50%となるときの粒子径(D50)を測定することができる。また、樹脂皮膜層13中に混入した状態で添加されている粒子の平均粒径を確認したいときは、樹脂皮膜層13の任意の断面を電解放出型電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA:Field-Emission Electron Probe Micro Analyzer)にて分析し、導電性粒子131に含まれる金属成分の面分布写真にて測定した粒子半径の平均値で求めることができる。
[0077]
 また、樹脂皮膜層13における導電性粒子131の体積率は、1.0%以上40.0%以下が好適である。好ましくは10.0%以上30.0%以下である。導電性粒子131の体積率が1.0%以上であることにより、導電性粒子131が金属部材11と炭素繊維材料121との間の導通をより確実にすることができる。また、導電性粒子131の体積率が40.0%以下であることにより、樹脂皮膜層13の凝集破壊が防止され、樹脂皮膜層13とCFRP層12との密着性が十分に優れるものとなる。
[0078]
 なお、樹脂皮膜層13における導電性粒子131の体積率は、樹脂皮膜層13を作製する際に添加した導電性粒子131の樹脂皮膜層13中の固形分質量比率を求めて、皮膜樹脂(バインダ樹脂133)の比重と導電性粒子131の比重から算出することができる。
[0079]
 また、樹脂皮膜層13における導電性粒子131の体積率は樹脂皮膜層13の任意の断面を電解放出型電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)にて分析し、導電性粒子131に含まれる金属成分の面分布写真を用いて画像解析することで求めた面積率を樹脂皮膜層13中の導電性粒子131の体積率とすることができる。発明者らが鋭意検討したところ、樹脂皮膜層13中の体積率と断面においてFE-EPMAを使って測定された導電性粒子131に含まれる金属成分の面積分率は厳密には異なるが近い値となることを知見したため、本願発明では前述のように求めることもできる。
[0080]
 また、上述したように本実施形態において、樹脂皮膜層13は、バインダ樹脂133を含む。バインダ樹脂133は、導電性粒子のバインダとして機能する。このようなバインダ樹脂133としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれも使用することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン(ポリプロピレン等)およびその酸変性物、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ナイロン等が挙げられる。なお、フェノキシ樹脂としては、上述したCFRP層12中のマトリックス樹脂123に使用され得るものと同様のものが挙げられる。
[0081]
 上述した中でも、バインダ樹脂133は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。これら樹脂は分子量やガラス転移温度にもよるが常温で流動しやすい、もしくは溶剤などに溶解して塗布することが容易であるため好適である。
[0082]
なお、マトリックス樹脂がフェノキシ樹脂であるCFRP層の場合、CFRP層との密着性の観点からは、バインダ樹脂133は、エポキシ樹脂または、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上とエポキシ樹脂とを含む樹脂であることが好ましい。バインダ樹脂133がエポキシ樹脂もしくは上記エポキシ樹脂を含む樹脂であると、フェノキシ樹脂と樹脂皮膜層13との界面に腐食因子である水などが侵入しにくく耐食性が向上し好適である。
[0083]
 また、バインダ樹脂133のガラス転移温度は、例えば100℃以下、好ましくは10℃以上60℃以下、より好ましくは10℃以上35℃以下である。これにより、CFRPを貼り付けた後に成形加工を行っても炭素繊維強化樹脂が剥離しにくくなる。
[0084]
 樹脂皮膜層13は、その接着性や物性を損なわない範囲において、例えば、天然ゴム、合成ゴム、エラストマー等や、種々の無機フィラー、溶剤、体質顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、難燃助剤等その他添加物が配合されていてもよい。
[0085]
 上述したような樹脂皮膜層13の平均厚みは、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上200.0μm以下、好ましくは5.0μm以上50.0μm以下、より好ましくは10.0μm以上20.0μm以下である。樹脂皮膜層13の平均厚みが、1.0μm以上であることにより、樹脂皮膜層13を介した金属部材11とCFRP層12との接合強度が十分なものとなる。一方で、樹脂皮膜層13の平均厚みTが、200.0μm以下であることにより、導電性粒子131を介した金属部材11とCFRP層12との間の導通がより確実なものとなる。また、樹脂皮膜層13の凝集破壊が防止され、樹脂皮膜層13とCFRP層12との密着性が十分に優れるものとなる。
[0086]
 また、樹脂脂皮膜層13の平均厚みをT(μm)、導電性粒子131の平均粒径をr(μm)とした際に、Tとrとは、好ましくは0.5≦T/r≦300.0の関係を満足する。導電性粒子131の平均粒径rと樹脂皮膜層13の平均厚みTとがT/r≦300.0の関係を満足することにより、樹脂皮膜層13の導電性が向上し、電着塗装性がより向上する。また、0.5≦T/rの関係を満足することにより、皮膜中の導電粒子の表面積が大きくなり、腐食環境下で導電粒子中の金属成分がより多く溶け出すため、耐食性に効果的に作用する。
[0087]
 樹脂皮膜層13には導電粒子に加えて、一般に公知の防錆顔料、例えば、酸化クロム(II)、シリカ、酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(V)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などを用いることができる。無機塩としては、クロム酸カリウム、クロム酸カルシウム、クロム酸ストロンチウムなどのクロム酸塩、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウムリン酸三マグネシウムなどのリン酸塩、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸カルシウムなどのモリブデン酸塩、メタバナジン酸ナトリウム、バナジン酸カルシウムなどのバナジン酸塩、タングステン酸カルシウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸などのタングステン酸塩などからなる群から選択される1種以上を添加することができる。これらを添加することで、腐食環境下でこれら防錆顔料からも金属イオンが溶出し、アノードとなる金属部材11やカソードとなる炭素繊維表面に沈着しやすく、耐食性により効果的である。防錆顔料を添加する場合の添加量は、必要に応じて適宜選定することができる。
[0088]
 また、樹脂皮膜層13のガラス転移温度は、例えば100℃以下、好ましくは10℃以上60℃以下、より好ましくは10℃以上35℃以下である。これにより、CFRPを貼り付けた後に成形加工を行っても炭素繊維強化樹脂が剥離しにくくなる。
[0089]
 なお、樹脂皮膜層13のガラス転移温度の測定は、熱機械分析(Thermomechanical Analysis、TMA)にて測定することができる。熱機械分析装置は市販の装置、例えば日立ハイテックサイエンス社製の「TMA7000シリーズ」などにより行うことができる。
[0090]
 以上、金属-CFRP複合体1の各構成について説明した。
[0091]
 なお、金属部材11、CFRP層12及び樹脂皮膜層13の厚みは、以下のようにJIS K 5600-1-7、5.4項の光学的方法の断面法に準拠して、測定することができる。すなわち、試料に有害な影響を及ぼさずに、隙間なく埋め込める常温硬化樹脂を用い、リファインテック株式会社製の低粘性エポマウント27-777を主剤に、27-772を硬化剤に用い、試料を埋め込む。切断機にて観察すべき箇所において、厚さ方向と平行となるように試料を切断して断面を出し、JIS R 6252又は6253で規定する番手の研磨紙(例えば、280番手、400番手又は600番手)を用いて研磨して、観察面を作製する。研磨材を用いる場合は、適切な等級のダイヤモンドペースト又は類似のペーストを用いて研磨して、観察面を作製する。また、必要に応じてバフ研磨を実施して、試料の表面を観察に耐えられる状況まで平滑化してもよい。
[0092]
 最適な像のコントラストを与えるのに適切な照明システムを備えた顕微鏡で、1μmの精度の測定が可能な顕微鏡(例えば、オリンパス社製BX51など)を用い、視野の大きさは300μmとなるように選択する。なお、視野の大きさは、それぞれの厚みが確認できるように変えてもよい(例えば、CFRP層12の厚みが1mmであれば、厚みが確認できる視野の大きさに変えてもよい)。例えば、樹脂皮膜層13の厚みを測定するときは、観察視野内を4等分して、各分画点の幅方向中央部において、樹脂皮膜層13の厚みを計測し、その平均の厚みを当該視野における厚みとする。この観察視野は、異なる箇所を5箇所選んで行い、それぞれの観察視野内で4等分して、各分画にて厚みを測定し、平均値を算出する。隣り合う観察視野同士は、3cm以上離して選ぶとよい。この5箇所での平均値を更に平均した値を、樹脂皮膜層13の厚みとすればよい。また、金属部材11やCFRP層12の厚みの測定においても、上記樹脂皮膜層13の厚みの測定と同様に行えばよい。
[0093]
 [1.2.変形例]
 次に、上述した実施形態に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体1の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の上記実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の上記実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の上記実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の上記実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。図2~図7は、それぞれ、本発明の変形例に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体を説明する断面模式図である。
[0094]
(第1の変形例)
 上述した実施形態においては、金属-CFRP複合体1は、金属部材11、CFRP層12および樹脂皮膜層13とからなるものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る金属-CFRP複合体1は、これらの各構成の層間または表面に、さらなる層が配置されていてもよい。例えば、図2に示すように、変形例に係る金属-CFRP複合体1Aは、樹脂皮膜層13と、金属部材11との間に、化成処理層14が配置されている。このような化成処理層14が金属部材11と樹脂皮膜層13との間に配置されることにより、金属部材11の耐食性が向上するとともに、金属-CFRP複合体1Aの金属部材11と樹脂皮膜層13との間の密着性が向上する。
[0095]
 このような化成処理層14としては、特に限定されないが、Cr、P、Siおよび/またはZrを含む化成処理層であることが好ましい。これにより、上述した耐食性および密着性の向上効果をより顕著に得ることができる。
[0096]
 このような化成処理層14はCr、P、Siおよび/またはZrがCやCOを介して重合することでネットワークを形成する無機タイプもしくは無機有機混合タイプでも良いし、樹脂などのバインダーの中にCr、P、Siおよび/またはZrからなる化合物を添加した皮膜を塗布乾燥するタイプでも良い。前記化成処理中には必要に応じて一般に公知の他の防錆成分、例えばV酸系、Ti酸系、P酸系などを添加しても良い。これら化成処理は処理した時に金属材表面の金属と反応して皮膜を析出させる反応型でも良いし、ウェット状態の処理液を塗布して乾燥硬化させるタイプのものでも良い。必要に応じて適宜選定できる。
[0097]
 この場合、化成処理層14は、Cr、P、Siおよび/またはZrを合計で、10mg/m 以上500mg/m 以下、好ましくは30g/m 以上300g/m 以下含むことができる。これにより、耐食性をより一層優れたものとしつつ、金属部材11と樹脂皮膜層13との間の密着性を十分に優れたものとすることができる。
[0098]
(第2の変形例)
 また、上述した実施形態では、金属部材11の片面にCFRP層12および樹脂皮膜層13が配置されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図3に示す金属-CFRP複合体1Bのように、金属部材11の両面にCFRP層12および樹脂皮膜層13が配置されていてもよい。また、この場合において、各CFRP層12および樹脂皮膜層13の構成は、互いに異なっていてもよいし、同一であってもよい。
[0099]
(第3の変形例)
 また、CFRP層は、上述した実施形態に限定されず、複数層であってもよい。例えば、図4に示す金属-CFRP複合体1Cのように、CFRP層12Aは、1層に限らず、2層以上であってもよい。CFRP層12Aを複数層とする場合のCFRP層12Aの層数nは、使用目的に応じて適宜設定すればよい。CFRP層12Aが複数層ある場合、各層は、同一の構成であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、CFRP層12Aを構成するマトリックス樹脂123の樹脂種、炭素繊維材料121の種類や含有比率などは、層ごとに異なっていてもよい。
[0100]
(第4の変形例)
 また、上述した実施形態では、電着塗装を施していない金属-CFRP複合体1について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図5~7に示す金属-CFRP複合体1D、1E、1Fのように、CFRP層12および樹脂皮膜層13上に電着塗装皮膜15が形成されていてもよい。
[0101]
(第5の変形例)
 上述した実施形態においては、金属-CFRP複合体1が板状である場合について模式的に説明したが、本発明はこれに限定されず、当然、本発明に係る金属-CFRP複合体は成形されていてもよい。
[0102]
<2.金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法>
 次に、本発明の実施形態に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法について説明する。本発明の一実施形態に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法は、導電性粒子およびバインダ樹脂を含む樹脂皮膜層の表面の少なくとも一部に設けられた金属部材と炭素繊維強化樹脂材料とを上記樹脂皮膜層を介して熱圧着する工程を有する。また、上記熱圧着する工程前後において、金属部材または当該金属部材と炭素繊維強化樹脂材料とが積層した積層体を成形する工程を有してもよい。以下、成形が行われることを前提として、本発明の実施形態に係る金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法を詳細に説明するが、成形が省略されてもよいことはいうまでもない。
[0103]
[2.1.第1の実施形態]
 図8および図9は、本発明の第1の実施形態に係る金属-CFRP複合体の製造方法を説明する模式図である。第1の実施形態に係る金属-CFRP複合体1Gの製造方法は、樹脂皮膜層13Aが表面の少なくとも一部に設けられた金属部材11Aと炭素繊維強化樹脂材料(CFRPまたはCFRP形成用プリプレグ)とを樹脂皮膜層13Aを介して熱圧着して、積層体100を得る熱圧着工程Aを少なくとも有する。また、本実施形態に係る金属-CFRP複合体1Gの製造方法は、積層体100を成形工程Aと、を有する。
 さらに、本実施形態においては、必要に応じて、金属部材11Aの表面の少なくとも一部に樹脂皮膜層13Aを形成する樹脂皮膜層形成工程、電着塗装工程、前処理工程および/または後工程を含み得る。以下、各工程について説明する。
[0104]
(前処理工程)
 まず、金属部材11Aを用意する(図8(a))。金属部材11に対しては、必要に応じて一般に公知の脱脂を行うことが好ましい。脱脂方法は溶剤でふき取る方法、水洗する、界面活性剤を含む水溶液もしくは洗剤で洗う方法、加熱して油成分を揮発させる方法、アルカリ脱脂など一般に公知の方法も用いることができる。アルカリ脱脂が工業的には一般的であり、脱脂効果が高いため好適である。また、使用する金型への離型処理や金属部材11A表面の付着物の除去(ゴミ取り)を行うことがより好ましい。これらの前処理により、金属部材11Aと、樹脂皮膜層13Aとの密着性が向上する。
[0105]
(皮膜形成工程)
 次に、金属部材11Aの表面に対し、樹脂皮膜層13Aを形成する(図8(b))。樹脂皮膜層13Aの形成は、樹脂皮膜層13Aの材料を含む樹脂皮膜層材料組成物を金属部材11Aの表面に対し塗工し、乾燥・焼付することにより行われる。樹脂皮膜層材料組成物は、液状またはスラリー状であってもよいし、粉末状であってもよい。予め板状に成形した樹脂皮膜層材料組成物としてのシートを熱圧着などで貼り付けても良い。
[0106]
 また、塗工方法も側に限定されず、シート状タイプのものの場合、貼付け方法は人手、ロボットなど一般に公知の方法で貼り付けることができる。粘性液体の場合、スリットノズルや円形状のノズルからの吐出方式での塗工、刷毛塗り、ブレート塗り、ヘラ塗りなど一般に公知の方法で塗布することができる。溶剤に溶解したものでは、一般に公知の塗布方法、例えば、刷毛塗り、スプレー塗工、バーコーター、各種形状のノズルからの吐出塗布、ダイコーター塗布、カーテンコーター塗布、ロールコーター塗布、スクリーン印刷、インクジェット塗布などを用いることができる。樹脂皮膜層材料組成物が粉末状である場合、粉体塗装等の公知の方法を採用することができる。特に、粉体塗装により形成された樹脂皮膜層13Aは、皮膜層材料組成物が微粒子であるために樹脂成分が溶融しやすく、かつ樹脂皮膜層13A内に適度な空隙を持つためボイドが抜けやすい。また、CFRP又はCFRP成形用プリプレグを熱圧着する際に樹脂皮膜層13Aを構成する樹脂成分が金属部材11Aの表面を良く濡らすため、ワニス塗工のような脱気工程が不要である。樹脂皮膜層13Aは金属部材11A全面に塗布しても良いし、炭素繊維強化樹脂材料(CFRP)を貼り付ける箇所のみに部分塗布しても良い。
[0107]
 樹脂皮膜層13Aを塗工する前に、金属部材11A上に化成処理層14を設けても良い。化成処理層14を設ける方法としては、一般に公知の処理方法、例えば、浸漬乾燥方式、浸漬・水洗・乾燥方式、スプレー・水洗・乾燥方式、塗布・乾燥方式、塗布・乾燥硬化方式などを用いることができる。塗布方法は浸漬、刷毛塗り、スプレー、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーターなど一般に公知方法で塗布することができる。
[0108]
 また、乾燥、焼付は、例えば、加熱処理等により行うことができる。加熱条件としては、特に限定されず、例えば100℃以上250℃以下の条件で、10秒以上30分以下とすることができる。樹脂皮膜層材料組成物を常温硬化型にしても良い。この場合、樹脂皮膜層材料組成物は、主樹脂と硬化剤を混ぜ合わせた状態の1液型でも良い。主樹脂と硬化剤を分離して塗工直前に混ぜ合わせる2液硬化型でも良いし、主樹脂と硬化剤、その他添加剤などをそれぞれ分離して塗工直前に混ぜ合わせる3液以上のタイプでも良い。
[0109]
 樹脂皮膜層13Aは、CFRP層12BとなるCFRP成形用プリプレグまたはCFRPと金属部材11Aを重ねて配置する際に塗工もしくは貼付けを行い、これら積層体を後述する熱圧着させる際に硬化させても良いし、事前に樹脂皮膜層13Aを金属部材11Aに塗工もしくは貼付けにて積層して硬化させたものの上に、CFRP成形用プリプレグまたはCFRPを重ねて配置し、後述する熱圧着を行っても良い。
[0110]
(熱圧着工程A)
 次に、金属部材11Aと炭素繊維強化樹脂材料(CFRPまたはCFRP形成用プリプレグ)とを樹脂皮膜層13Aを介して熱圧着し、積層体100を得る(図8(c))。具体的には、CFRP層12BとなるCFRP成形用プリプレグ(またはCFRP)を樹脂皮膜層13A上に積層した積層体を加圧機に設置し、加熱しつつ加圧を行う。これにより、金属部材11Aと、樹脂皮膜層13Aと、CFRP層12Bとがこの順で積層した積層体100が製造される。
[0111]
 具体的には、まず、金属部材11Aと、CFRP成形用プリプレグまたはCFRPを、樹脂皮膜層13Aを介して重ねて配置し、積層体を得る。なお、CFRPを用いる場合、CFRPの接着面は、例えば、ブラスト処理等による粗化や、プラズマ処理、コロナ処理などによる活性化がなされていることが好ましい。次に、この積層体を加熱及び加圧(熱圧着)することによって、積層体100が得られる。
[0112]
 ここで、本工程における熱圧着条件は、以下の通りである。
 熱圧着温度は、特に限定されないが、例えば、100℃以上400℃以下の範囲内、好ましくは150℃以上300℃以下、より好ましくは160℃以上270℃以下の範囲内、さらに好ましくは180℃以上250℃以下の範囲内である。このような温度範囲内において、結晶性樹脂であれば融点以上の温度がより好ましく、非結晶性樹脂であればTg+150℃以上の温度がより好ましい。上記上限温度以下であることにより、過剰な熱を加えてしまうことを抑制することができ樹脂の分解を防止できる。また、上記下限温度以上であることにより、樹脂の溶融粘度が適度とすることができ、CFRPへの付着性及びCFRP基材への含浸性を優れたものにすることができる。
[0113]
 熱圧着する際の圧力は、例えば、3MPa以上が好ましく、3MPa以上5MPa以下の範囲内がより好ましい。圧力が5MPa以下であることにより、過剰な圧力を加えることを防止し、変形や損傷の発生をより確実に防止することができる。また、また圧力が3MPa以上であることにより、CFRP基材への含浸性を向上させることができる。
[0114]
 熱圧着時間については、少なくとも3分以上あれば十分に加熱圧着が可能であり、5分以上20分以下の範囲内であることが好ましい。
[0115]
(追加の加熱工程)
 樹脂皮膜層13Aを形成するための接着樹脂組成物や、マトリックス樹脂123を形成するための原料樹脂として、フェノキシ樹脂(A)に架橋性硬化樹脂(B)及び架橋剤(C)を含有した架橋性接着樹脂組成物を使用する場合、さらに、追加の加熱工程を含めてもよい。
[0116]
 架橋性接着樹脂組成物を使用する場合は、上記熱圧着工程で、固化はしているが架橋形成(硬化)はしていない第1の硬化状態の硬化物(固化物)によって樹脂皮膜層13Aを形成することができる。また、CFRP層12BとなるCFRP成形用プリプレグのマトリックス樹脂の原料樹脂として、架橋性接着樹脂組成物と同一又は同種のものを用いる場合には、第1の硬化状態の硬化物(固化物)からなるマトリックス樹脂123を含むCFRP層12Bを形成することができる。
[0117]
 このように、上記熱圧着工程を経て、金属部材11Aと、未硬化の樹脂皮膜層13Aと、CFRP層12Bと、が積層され一体化された、金属-CFRP複合体1の中間体(プリフォーム)を作製できる。この中間体では、必要により、CFRP層12Bとして、マトリックス樹脂123が第1の硬化状態の硬化物(固化物)であるものを用いることもできる。そして、この中間体に対し、熱圧着工程の後で、さらに追加の加熱工程を実施することによって、少なくとも第1の硬化状態の硬化物(固化物)による樹脂皮膜層13Aに対しポストキュアを行い、樹脂を架橋硬化させて第2の硬化状態の硬化物(架橋硬化物)へ変化させることができる。好ましくは、CFRP層12Bについてもポストキュアを行うことで、第1の硬化状態の硬化物(固化物)からなるマトリックス樹脂123を架橋硬化させて第2の硬化状態の硬化物(架橋硬化物)へ変化させることができる。
[0118]
 ポストキュアのための追加の加熱工程は、例えば、200℃以上250℃以下の範囲内の温度で30分間~60分間程度の時間をかけて行うことが好ましい。なお、ポストキュアに代えて、塗装などの後工程での熱履歴を利用してもよい。
[0119]
 上述の通り、架橋性接着樹脂組成物を用いると、架橋硬化後のTgが、フェノキシ樹脂(A)単独よりも大きく向上する。そのため、上述した中間体に対して追加の加熱工程を行う前後、すなわち、樹脂が第1の硬化状態の硬化物(固化物)から第2の硬化状態の硬化物(架橋硬化物)へ変化する過程で、Tgが変化する。具体的には、中間体における架橋前の樹脂のTgは、例えば150℃以下であるのに対し、追加の加熱工程後の架橋形成された樹脂のTgは、例えば160℃以上、好ましくは170℃以上220℃以下の範囲内に向上するので、耐熱性を大幅に高めることができる。
[0120]
 なお、積層体100の成形が不要である場合、以下の成型工程Aを省略し、積層体100自体を金属-CFRP複合体としても得てもよい。
[0121]
(成形工程A)
 次に、積層体100を成形し(図9(d))、金属-CFRP複合体1Gを得る。積層体100の成形方法は、特に限定されず、例えばせん断加工、曲げ加工、絞り加工、鍛造加工等の各種プレス加工を採用することができる。
[0122]
 これらプレス加工は常温でも良いが、熱間プレスであると加工時にCFRPが金属部材11Aから剥がれにくく好適である。熱間プレスの温度は前述した熱圧着工程と同じ温度が好適である。
[0123]
 なお、本実施形態においては、熱圧着工程Aと成型工程A(金属-CFRP複合体1Dの成形)とが同時に行われてもよい。すなわち、加圧成形機において金属部材11Aと炭素繊維強化樹脂材料(CFRPまたはCFRP形成用プリプレグ)とを樹脂皮膜層13Aを介して熱圧着するとともに、同時に成形を行ってもよい。
[0124]
(電着塗装工程)
 また、必要に応じて、得られた金属-CFRP複合体1Gの樹脂皮膜層13Aおよび/またはCFRP層12B上に電着塗装により電着塗装皮膜を形成してもよい。CFRP層12B上に電着塗装が施されていると耐食性がより優れるため好適である。金属-CFRP複合体1Gは、電着塗装性に優れ、比較的均一な膜厚の電着塗装皮膜が形成される。なお、本工程における電着塗装の条件は、特に限定されず、公知の塗料および条件を採用して行うことができる。電着塗装の塗料としては、市販のものを使用することもできる。また、電着塗装を行う前に、前処理として、一般に公知の脱脂、表面調整、リン酸亜鉛処理もしくはジルコニア処理を施すことができる。これら脱脂剤、表面調整剤、リン酸亜鉛処理剤、ジルコニア処理剤は市販のものを使用しても良い。
[0125]
(後工程)
 金属-CFRP複合体1Dに対する後工程では、必要に応じて、塗装の他、ボルトやリベット留めなどによる他の部材との機械的な接合のため、穴あけ加工、接着接合のための接着剤の塗布などが行われる。
[0126]
[2.2.第2の実施形態]
 図10および図11は、本発明の第2の実施形態に係る金属-CFRP複合体の製造方法を説明する模式図である。第2の実施形態に係る金属-CFRP複合体1Hの製造方法は、樹脂皮膜層13Bの表面の少なくとも一部に設けられた金属部材11Bを成形する成形工程Bと、金属部材11Bと、炭素繊維強化樹脂材料とを樹脂皮膜層13Bを介して熱圧着し、金属-CFRP複合体1Hを得る熱圧着工程Bとを有する。
[0127]
 すなわち、第2の実施形態は、CFRP層12C形成前に、金属部材11Bと樹脂皮膜層13Bの積層体を成形する点で、第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態の場合、CFRPのマトリックス樹脂によっては樹脂に亀裂が入ったり、金属部材11Aから剥離してしまうなどの恐れがある。また、これらを防止するためには温間プレスが必要である。また、第1の実施形態で、CFRPの厚みが厚い場合、貼り付けた後のプレス金型を工夫する必要がある。このように、CFRP層12C形成前に、金属部材11Bを成形することにより、前述した第一の実施形態に生じ得る不具合を解消し、通常の使用しているプレス金型を流用できる。
[0128]
 なお、第2の実施形態において使用される各条件は、基本的に第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
[0129]
 具体的には、金属部材11Bを用意し(図10(a))、金属部材11Bの表面上に樹脂皮膜層13Bを形成する(図10(b))。その後、樹脂皮膜層13Bを形成した金属部材11Bについて成形を行う(図10(c))。最後に、成形後の金属部材11Bについて、樹脂皮膜層13Bを介して炭素繊維強化樹脂材料を熱圧着し、金属-CFRP複合体1Hを得る(図11(d)、(e))。また、必要に応じて、電着塗装工程および/または後工程を行う。
[0130]
 以上、本実施形態に係る金属-CFRP複合体の製造方法について説明した。なお、本発明に係る金属-CFRP複合体を製造するための方法は上述した実施形態に限定されない。
実施例
[0131]
 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
[0132]
<1.金属-CFRP複合体の製造>
(金属板の準備)
 成分がC:0.131質量%、Si:1.19質量%、Mn:1.92%、P:0.009質量%、S:0.0025質量%、Al:0.027質量%、N:0.0032質量%、残部はFeからなる鋼を熱間圧延、酸洗後、冷間圧延を行い、厚さ1.0mmの冷延鋼板を得た。次に、作製した冷延鋼板を連続焼鈍装置で最高到達板温が820℃となる条件で焼鈍した。焼鈍工程の焼鈍炉内のガス雰囲気は、1.0体積%のH 2を含むN 2雰囲気とした。作製した冷延鋼板を「CR」と称す。
[0133]
 また、作製した冷延鋼板を焼鈍工程を有する連続溶融めっき装置の焼鈍工程で最高到達板温が820℃となる条件で焼鈍した後にめっき工程で溶融亜鉛めっきしたものも準備した。焼鈍工程の焼鈍炉内のガス雰囲気は、1.0体積%のH 2を含むN 2雰囲気とした。めっき工程でのめっき浴の成分はZn-0.2%Al(「GI」と称す)、Zn-0.09%Al(「GA」と称す)、Zn-1.5%Al-1.5%Mg(「Zn-Al-Mg」と称す)、Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Mg(「Zn-Al-Mg-Si」と称す)の4種を用いた。なお、Zn-0.09%Alめっき(GA)の溶融めっき浴を用いたものは溶融めっき浴に鋼板を浸漬して、めっき浴から鋼板を引き抜きながら、スリットノズルからN ガスを吹き付けてガスワイピングし、付着量を調整した後に、インダクションヒーターにて板温480℃で加熱することで合金化させて、めっき層中へ鋼板中のFeを拡散させた。
[0134]
 なお、作製した金属板の引張強度を測定したところ、いずれも980MPaであった。
また、めっきした鋼板のめっきの付着量は、GAは45g/m 、GA以外のめっきは60g/m とした。
 また、上記以外に、別途鋼板以外の金属板として、アルミニウム合金板(以下「Al板」と称する)およびマグネシウム合金板(以下「Mg合金板」と称する)も用意した。
[0135]
(前処理工程)
 作製した金属板を日本パーカライジング社製アルカリ脱脂剤「ファインクリーナーE6404」で脱脂した。
(化成処理工程)
 脱脂した金属板上にγ-アミノプロピルトリエトキシシランを2.5g/L、水分散シリカ(日産化学社製「スノーテックN」を1g/L、水溶性アクリル樹脂(試薬のポリアクリル酸)を3g/L添加した水溶液をバーコーターで塗布し、熱風オーブンで到達板温が150℃となる条件で乾燥させた。また、炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液3g/L水溶液、及び日本パーカライジング社製クロメート処理液「ZM-1300AN」についても同様に、それぞれバーコーターで塗布し、熱風オーブンで到達板温が150℃となる条件で乾燥させた。以降、水分散シリカを含む水溶液を塗布したものを「Si系処理」(または単に「Si系」)、炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液で塗布したものを「Zr系処理」(または単に「Zr系」)、クロメート処理液で処理したものを「Cr系処理」(または単に「Cr系」)と称する。
[0136]
 また、それぞれの処理の付着量は30mg/m とした。金属板に全面に塗布したそれぞれの乾燥前のウェット塗布量を[塗布後の金属板の質量]-[塗布前の金属板の質量]により算出し、そのウエット塗布量中に含まれるCr、Si、Zrそれぞれの質量を算出し、これを金属板の面積で割ることで算出した。また、前述の方法で付着量を算出しながら異なる5種の付着量を有する化成処理金属板(乾燥済み)を作製し、これらを蛍光X線を用いて測定し、得られた検出強度と算出した付着量との関係から検量線を引き、これを用いて付着量を求めることもできる。
[0137]
(樹脂皮膜層形成工程)
 バインダー樹脂として三菱ケミカル社製エポキシ樹脂「jER (R)828」、三井化学社製ウレタン変性エポキシ樹脂「エポキー (R)802-30CX」、東洋紡社製ポリエステル樹脂「バイロン (R)300」を準備した。また、硬化剤として三菱ガス化学社製アミン「MXDA(メタキシレンジアミン)」、宇部興産社製「1,12-ドデカメチレンジアミン」、三井化学社製メラミン「ユーバン (R)20SB」、第一工業製薬社製水性ウレタン樹脂「スーパーフレックス (R)150」、サイテック社製メラミン樹脂「サイメル (R)325」を準備した。
次にこれら樹脂と硬化剤を混合することで、以下の皮膜樹脂サンプルを作製した。
[0138]
 ・エポキシ樹脂-A:三菱ケミカル社製「jER (R)828」を100質量部に対して宇部興産社製「1,12-ドデカメチレンジアミン」を30質量部添加して混合した。
 ・エポキシ樹脂-B:三菱ケミカル社製「jER (R)828」を100質量部に対して三菱ガス化学社製「MXDA(メタキシレンジアミン)」を30質量部添加して混合した。
[0139]
 ・エポキシ樹脂-C:三井化学社製「エポキー (R)802-30CX」の固形分100質量部に対して三井化学社製「ユーバン (R)20SB」を固形分で20質量部添加して混合した。
 ・ポリエステル/メラミン樹脂:東洋紡社製「バイロン (R)300」を溶剤であるシクロヘキサノンに30質量%溶解したものの固形分100質量部に対して三井化学社製「ユーバン (R)20SB」を固形分で20質量部添加して混合した。
 ・ポリエステル/エポキシ樹脂:東洋紡社製「バイロン (R)300」を溶剤であるシクロヘキサノンに30質量%溶解したものの固形分100質量部に対して三井化学社製「ユーバン (R)20SB」を固形分で20質量部、および、新日鉄住金化学社製のBPA型エポキシ樹脂「YD-013」を5質量部添加して混合した。
 ・ウレタン/メラミン樹脂:第一工業製薬社製水性ウレタン樹脂「スーパーフレックス (R)150」の固形分80質量部に、サイテック社製メラミン樹脂「サイメル (R)325」を固形分で20質量部添加して混合した。
[0140]
 更に、作製した樹脂に、次に示す粒子を混合することで樹脂皮膜塗布液を作製した。なお、粒子の添加量は、樹脂皮膜塗布液に添加する粒子の皮膜中の固形分質量比率を求めて、皮膜樹脂固形分の比重と粒子の比重から体積率を算出し、表1に記載される体積率となるように調整した。比重は、各物質のカタログ値もしくは文献値を用いた。
[0141]
・ホウ化バナジウム:日本新金属社製「VB -O」をふるいにて分級し、平均粒径3.1μmにしたものを用いた。以降、「VB2」と称する。
・Alドープ型酸化亜鉛:ハクステック社製導電性酸化亜鉛(Al-Doped ZnO)「23-K」、1次粒径120~250nm(カタログ値)を用いた。以降「Al-ZnO」と称する。
[0142]
・金属亜鉛:試薬の亜鉛粒を、ふるいを用いて分級し平均粒径10μmとしたものを用いた。以降「Zn」と称する。
・フェロシリコン:丸紅テツゲン社製のフェロシリコンを粉砕機で微粒子状に粉砕し、ふるいを用いて分級し平均粒径3μm、9μm、47μm、98μmとしたものを用いた。以降「Fe-Si」と称す。
[0143]
・フェロマンガン:丸紅テツゲン社製のフェロシリコンを粉砕機で微粒子状に粉砕し、ふるいを用いて分級し平均粒径3.5μmとしたものを用いた。以降、「Fe-Mn」と称す。
・ホウ化ジルコニウム:日本新金属社製「ZrB -O」をふるいにて分級し、平均粒径2μmにしたものを用いた。以降、「ZrB2」と称する。
[0144]
・ケイ化モリブデン:日本新金属社製「MoSi -F」をふるいにて分級し、平均粒径3.5μmにしたものを用いた。以降、「MoSi2」と称する。
・ホウ化クロム:日本新金属社製「CrB -O」をふるいにて分級し、平均粒径5μmにしたものを用いた。以降、「CrB2」と称する。
[0145]
・ケイ化タングステン:日本新金属社製「B -O」をふるいにて分級し、平均粒径2μmにしたものを用いた。以降、「WSi2」と称する。
・ニッケル:試薬のニッケル粉末を、ふるいを用いて分級し平均粒径5μmとしたものを用いた。以降「Ni」と称する。
[0146]
・アルミナ:昭和電工社製細粒アルミナ「A-42-2」平均粒径(粒度分布中心径)4.7μm(カタログ値)を用いた。以降「アルミナ」と称する。
・酸化チタン:石原産業社製「タイペーク (R)CR-95」、平均粒径0.28μm(カタログ値)を用いた。以降「TiO2」と称する。
[0147]
・窒化アルミニウム:トクヤマ社製フィラー用窒化アルミニウム粉末、粒径1μm(カタログ値)のを用いた。以降「AlN」と称する。
・導電性酸化チタン:石原産業社製Snドープ型酸化チタン「ET-500W」平均粒径2~3μm(カタログ値)を用いた。以降「導電Ti」と称する。
[0148]
 作製した皮膜塗布液を「皮膜-1」~「皮膜-27」なる標識で区別して、表1に示す。なお、表1中の粒子の粉体抵抗率は三菱ケミカルアナリテック社製粉体抵抗測定システムMCP-PD51型を用いて、それぞれの粉体を25℃で10MPa圧縮した時の抵抗値である。また、樹脂皮膜層のガラス転移点は、これら皮膜塗布液を200℃雰囲気のオーブン内で20分乾燥硬化させたものを島津製作所社製自動示唆走査熱量計「DSC-60A」で測定したものである。
[0149]
[表1]


[0150]
 作製した皮膜塗布液を評価に必要なサイズに切断した金属板の上にブレードコーターにて片面のみ、且つ、CFRPを貼り付ける部分のみ部分塗布し、到達板温が60秒で230℃となる条件で乾燥硬化させた。部分塗布は予めCFRPを貼り付ける部分以外をマスキングテープ(日東電工社製「ニトフロン (R)テープ」を使用)にてマスキングした後に、樹脂皮膜層を塗布し、乾燥焼付後にマスキングテープを剥がすことで行った。
[0151]
 皮膜層厚は、予め垂直断面が観察できるように樹脂に埋め込んで研磨したサンプルを用いて垂直断面を顕微鏡で観察し、皮膜層厚を測定して求めた。
[0152]
(熱圧着工程)
 新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールA型フェノキシ樹脂「フェノトートYP-50S」(Mw=40,000、水酸基当量=284g/eq、250℃における溶融粘度=90Pa・s、Tg=83℃)を粉砕、分級した平均粒子径D50が80μmである粉体を、炭素繊維からなる強化繊維基材(クロス材:東邦テナックス社製、IMS60)に、静電場において、電荷70kV、吹き付け空気圧0.32MPaの条件で粉体塗装を行った。その後、オーブンで170℃、1分間加熱溶融して樹脂を熱融着させ、厚み0.65mm、弾性率75[GPa]、引張荷重13500[N]、Vf(繊維体積含有率)60%のフェノキシ樹脂CFRPプリプレグを作製した。プリプレグのサイズは金属板と同じサイズとした。
[0153]
 また、試薬のナイロン6を粉砕、分級した平均粒子径D50が80μmである粉体を、炭素繊維からなる強化繊維基材(クロス材:東邦テナックス社製、IMS60)に、静電場において、電荷70kV、吹き付け空気圧0.32MPaの条件で粉体塗装を行った。その後、オーブンで170℃、1分間加熱溶融して樹脂を熱融着させ、厚み0.65mm、Vf(繊維体積含有率)60%のナイロンCFRPプリプレグも作製した。プリプレグのサイズは金属板と同じサイズとした。
[0154]
 なお、粉砕、分級したフェノキシ樹脂の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX、日機装社製)により、体積基準で累積体積が50%となるときの粒子径を測定した。
[0155]
 次に樹脂皮膜層を積層した金属板上に作製したプリプレグを重ね、250℃に加熱した平金型を有するプレス機で、3MPaで3分間プレスすることで表2、3に示すような複合体サンプルとしての金属-CFRP複合体を作製した
[0156]
<評価>
1.電着塗装性
 作製した巾70mm×長さ150mmの複合体サンプルを用いて、脱脂、表面調整、リン酸亜鉛処理を行った後に電着塗装を施した。脱脂は、日本パーカライジング社製脱脂剤「ファインクリーナーE6408」を用いて、60℃の条件で5分間浸漬して脱脂した。脱脂したサンプルを表面調整は日本パーカライジング社製「プレパレンX」を用いて、40℃の条件で5分浸漬した。その後に日本パーカライジング社製リン酸亜鉛化成剤「パルボンドL3065」を用いて35℃の条件で3分間浸漬することで、リン酸亜鉛処理を行った。リン酸亜鉛処理を行った後は水洗して150℃雰囲気のオーブンで乾燥させた。その後、日本ペイント社製の電着塗料「パワーフロート1200」を各水準サンプルに用いている金属板が無処理(樹脂皮膜層やCFRP層、化成処理がなしの状態)で塗装したときに15μmとなる条件で電着塗装し、170℃雰囲気のオーブンで20分焼き付けたものをサンプルとして用いた。電着塗装はCFRPを貼り付けていない金属部分のみ塗装された。
 作製したサンプルのCFRP状を目視で観察し、電着塗装が施されているか否かを評価した。
[0157]
2.耐食性
 作製したサンプルを用いてサイクル腐食試験(CCT)を行った。CCTのモードは自動車工業規格JASO-M609に準じて行った。サンプルはCFRP側を評価面として、評価面に塩水が噴霧されるように試験機に設置して試験した。
 試験は15サイクル(8時間で1サイクル)毎にサンプル外観を目視観察し、赤錆が発生するサイクルを求めた。赤錆が発生するまでのサイクル数が多いものほど、耐食性に優れる。また、赤錆は金属に貼り付けたCFRPの端付近から発生するため、そこに着目して観察した。なお、用いる金属板がアルミニウム合金板及びマグネシウム合金板の場合は、鉄の酸化物である赤錆が発生しないため、アルミニウムやマグネシウムの酸化物である白錆が発生するサイクル数を求めた。
[0158]
 なお、耐食性は、用いる金属板によって異なる。したがって、耐食性の評価は、金属板の種類ごとに基準を設けて行った。具体的には、冷延鋼板(CR)を用いた場合30サイクル以下で赤錆が発生した場合を不合格品、それ以外を合格品と、めっき鋼板(GI)を用いた場合60サイクル以下で赤錆が発生した場合を不合格品、それ以外を合格品と、めっき鋼板(GA)を用いた場合60サイクル以下で赤錆が発生した場合を不合格品、それ以外を合格品と、めっき鋼板(Zn-Al-Mg)を用いた場合120サイクル以下で赤錆が発生した場合を不合格品、それ以外を合格品と、めっき鋼板(Zn-Al-Mg-Si)を用いた場合120サイクル以下で赤錆が発生した場合を不合格品、それ以外を合格品と、アルミニウム合金板(Al板)を用いた場合120サイクル以下で白錆が発生した場合を不合格品、それ以外を合格品と、マグネシウム合金板(Mg合金板)を用いた場合120サイクル以下で白錆が発生した場合を不合格品、それ以外を合格品と評価した。
[0159]
3.3点曲げ試験
 巾30mm×長さ100mmの複合体サンプルを用いて試験した。本サンプルは金属板の片面側全面にCFRPを貼り付けたものを用いた。サンプルを支点間距離60mmの治具に載せて支点間の中央に荷重をかけることで3点曲げ試験を行った。荷重をかける側をCFRP側となるように治具にサンプルを設置して試験した。3点曲げ試験にて荷重を掛けたときにサンプルがたわんだときの金属板とCFRPの剥離状態を観察して評価した。たわみが1.0mm以下で剥離した場合「D」、1.0mm超3.0mm以下で剥離した場合「C」、3.0mm超5.0mm以下で剥離した場合「B」、5.0mm超で剥離した場合「A」と評価した。
[0160]
4.プレス加工性
 V字型の凹凸金型を200℃に加熱した状態での熱間加工におけるプレス加工性を、巾50mm×長さ50mmの複合体サンプルを用いて試験した。本サンプルは金属板の片面側全面にCFRPを貼り付けたものを用い、凹金型側をCFRP、凸金型側を金属材となるように金型に設置して、プレスを行った。なおV字型金型のV部の角度は90°の金型を用い、曲げ部のR(曲率半径)の異なる金型を使ったプレス加工をそれぞれ行い、CFRPが剥離しない限界Rを求めた。より小さい曲げRでも剥離しないものほどプレス成形性に優れる。
[0161]
5.電着塗装膜の塗装均一性
 電着塗装したサンプルについて、樹脂皮膜層上、CFRP層上、CFRP端面について垂直断面を光学顕微鏡にて観察し、電着塗膜の膜厚を評価した。なお、電着塗膜の膜厚は任意の3視野について測定し、その平均値とした。皮膜層上の電着塗膜の膜厚が10μm以上の場合は「A」、5μm以上10μm未満の場合は「B」、2μm以上5μm未満の場合は「C」、1μm以上2μm未満の場合は「D」、1μm未満の場合は「E」と評価した。そして、評価が「A」~「D」のサンプルを合格品、「E」のサンプルを不合格品とした。
[0162]
 以上の評価結果を、複合体サンプルの構成とともに表2~4に示す。
[0163]
[表2]


[0164]
[表3]


[0165]
[表4]


[0166]
 本結果より、同一の種の金属板を用いた場合、本願発明の金属-CFRP複合体は炭素繊維と金属との異種材料接触腐食に対する耐食性に優れ、且つ、CFRP部においても電着塗装性に優れたものであった。
[0167]
 以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

符号の説明

[0168]
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H  金属-CFRP複合体
11、11A、11B           金属部材
12、12A、12B、12C       CFRP層
121                  炭素繊維材料
123                  マトリックス樹脂
13、13A、13B           樹脂皮膜層
131                  導電性粒子
133                  バインダ樹脂
14                   化成処理層
15                   電着塗装皮膜

請求の範囲

[請求項1]
 金属部材と、
 前記金属部材の表面の少なくとも一部に配置された樹脂皮膜層と、
 前記樹脂皮膜層の表面の少なくとも一部に配置され、マトリックス樹脂および当該マトリックス樹脂中に存在する炭素繊維材料を含む炭素繊維強化樹脂材料と、を有し、
 前記樹脂皮膜層は、金属粒子、金属間化合物粒子、導電性酸化物粒子、および導電性非酸化物セラミクス粒子のいずれか1種または複数種を導電性粒子として含み、さらに、バインダ樹脂を含み、
 前記導電性粒子は、23~27℃の粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下であり、かつZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種または複数種を構成元素として含む、金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項2]
 前記導電性酸化物粒子が、ドープ型導電性酸化物粒子である、請求項1に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項3]
 前記導電性粒子が、Alドープ型酸化亜鉛、ZrB 、MoSi 、CrB 、WSi 、VB 、フェロシリコンおよびフェロマンガンからなる群から選択される1種以上からなる、請求項1または2に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項4]
 前記樹脂皮膜層における前記導電性粒子の体積率が、1.0%以上30.0%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項5]
 前記樹脂皮膜層の平均厚みが、1.0μm以上200.0μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項6]
 前記導電性粒子の平均粒径が、50.0μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項7]
 前記樹脂皮膜層の平均厚みをT(μm)、前記導電性粒子の平均粒径をr(μm)とした際に、0.5≦T/r≦300.0の関係を満足する、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項8]
 前記樹脂皮膜層のガラス転移温度が、100℃以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項9]
 前記バインダ樹脂は、エポキシ樹脂、またはウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上とエポキシ樹脂とを含む樹脂である、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項10]
 前記マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項11]
 前記マトリックス樹脂は、フェノキシ樹脂を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項12]
 前記樹脂皮膜層および/または前記炭素繊維強化樹脂材料上に形成された電着塗装皮膜を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項13]
 前記金属部材が、鋼材またはめっき鋼材である、請求項1~12のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体。
[請求項14]
 導電性粒子およびバインダ樹脂を含む樹脂皮膜層の表面の少なくとも一部に設けられた金属部材と、炭素繊維強化樹脂材料とを前記樹脂皮膜層を介して熱圧着する工程を有し、
 前記導電性粒子は、金属粒子、金属間化合物粒子、導電性酸化物粒子および導電性非酸化物セラミクス粒子のいずれか1種または複数種を含み、
 前記導電性粒子は、23~27℃の粉体抵抗率が7.0×10 Ωcm以下であり、かつZn、Si、Zr、V、Cr、Mo、MnおよびWからなる群から選択されるいずれか1種または複数種を構成元素として含む、金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法。
[請求項15]
 さらに、前記熱圧着する工程前に、前記金属部材を成形する工程を有する、請求項14に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法。
[請求項16]
 さらに、前記熱圧着する工程後に、前記金属部材と前記炭素繊維強化樹脂材料とが積層した積層体を成形する工程を有する、請求項14に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法。
[請求項17]
 さらに、前記樹脂皮膜層および/または前記炭素繊維強化樹脂材料上に電着塗装により電着塗装皮膜を形成する工程を有する、請求項14~16のいずれか一項に記載の金属-炭素繊維強化樹脂材料複合体の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]