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1. WO2020196835 - 電解生成ガスの精製方法及び電解装置

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明 細 書

発明の名称 電解生成ガスの精製方法及び電解装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006   0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014  

発明の効果

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022  

図面の簡単な説明

0023  

発明を実施するための形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064  

実施例

0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078  

産業上の利用可能性

0079   0080  

符号の説明

0081  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 電解生成ガスの精製方法及び電解装置

技術分野

[0001]
 本発明は、電解により生成される陰極ガス又は陽極ガスを電解プロセス内で効率よく高純度化させる電解生成ガスの精製方法及び電解装置に関するものである。本発明は、特に、電解により高純度に精製された水素ガスを生成する電解装置及び電解生成ガスの精製方法に関するものである。

背景技術

[0002]
 アルカリ水電解、非精製水の電解、食塩電解、塩化物水溶液、臭化物水溶液、塩酸水溶液、硫酸水溶液の電解等では、電解により陰極室から水素ガスが発生する。水素ガスを発生する電解装置及び電解方法の一例として、特許文献1に記載されるアルカリ水電解装置及びアルカリ水電解方法がある。特許文献1に記載の電解方法では、アルカリ水溶液を電解液として、隔膜により隔離された陽極室及び陰極室を有する電解槽の陽極室及び陰極室に供給して、電解液循環タンクを介して循環させながら連続して電解処理する。具体的には、前記電解槽の陰極室において電解処理された陰極側電解液及び陰極側電解生成ガスである水素ガスを陰極室より排出し、該陰極室より排出された陰極側電解液及び水素ガスから、水素ガスを分離した後、ガス分離後の陰極側電解液を電解液循環タンクに供給する。これと共に、前記陽極室において電解処理された陽極側電解液及び陽極側電解生成ガスである酸素ガスを陽極室より排出し、該陽極室より排出された陽極側電解液及び酸素ガスから、酸素ガスを分離した後、ガス分離後の陽極側電解液を電解液循環タンクに供給する。そして、該電解液循環タンクにおいて、前記陰極側電解液と前記陽極側電解液を混合して、両電解室内に供給する電解液の濃度を同じ濃度にすると共に、常に一定濃度に維持しながら連続電解を行っている。
[0003]
 近年、地球温暖化防止のため化石燃料からの脱却が重要となっており、代替えエネルギー源として水素ガスの利用が広く検討されている。電解によって生成する水素ガスを利用することも期待される。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2015-29921号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 然しながら、隔膜を用いたアルカリ水電解装置による電解により生成した水素ガスは、陽極側で発生する酸素ガスが、濃度拡散などの現象から膜を介して対極室である陰極室へ拡散し、不純物として混入される。例えば、純度99.95%以上の高濃度にすることは困難であった。そのため、電解によって生成された水素ガスは、反応塔に送られて、金属触媒を用い、水素ガス中に不純物として含まれる酸素ガスを除去する方法等の手段で、高純度化することが行われている。然るに、これに使用する金属触媒は長期使用中に劣化し、再生処理や適宜新品との交換が必要でありコストがかかり、また、精製システムとしても、充分な容量の反応塔の設備も必要であり、水素ガスの純度を向上させるためには、多大なユーティリティコストがかかっていた。
[0006]
 上記に対し、隔膜を用いたアルカリ水電解装置において、隔膜の厚みを厚くするなどの設計変更をすることで、場合によっては99.95%レベルの純度を達成できることもある。しかし、この場合は、膜抵抗が高くなり、運転時のセル電圧が上昇し、結果として電力消費量が高くなり、高性能の電解システムとは言えなくなる。即ち、現実的な装置ではなくなる。
[0007]
 アルカリ水電解、非精製水の電解、食塩電解、塩化物水溶液、臭化物水溶液、塩酸水溶液、硫酸水溶液、固体高分子形水電解等の電解では、いずれの場合も、電解により陰極室より水素ガスが生成される。これと共に、陽極室より酸素ガス、オゾンガス及び/又は塩素ガス等の陽極側電解生成ガスが生成される。酸素ガス等のこれら陽極側電解生成ガスは、大気放出される場合もあれば、回収して別用途に供される場合もある。その場合にも、陽極側電解生成ガスの高純度化が望まれる。然るに、酸素ガス等の陽極側電解生成ガスにおいても、純度を高める効率的な方法は見つかっていない。
[0008]
 従来の電解装置においては、気液分離装置によって、水素ガスや酸素ガス等の電解生成ガスが、電解液から分離される。そして、アルカリ水電解装置では、電解液循環タンクで混合されたアルカリ電解液が、陽極室及び陰極室において循環使用される。このため、それぞれの電極から生成される電解生成ガス中への、供給電解液に混在する溶存ガスや微細気泡の気相への同伴移行は避けられない。このことが目的とする電解生成ガス中への不純物混入の主因となっている。また、食塩電解においては、陽極液と陰極液は、循環せずに使用される場合と、循環使用される場合とがある。しかし、いずれの場合においても、陰極室には、供給電解液中に共存ガス等の不純物が存在するので、陰極室で生成される水素ガスには不純物が含有されており、高純度化することが必要になる。 
[0009]
 上記したように、水溶液の電解装置においては、陰極側電解生成ガスとして水素ガスが発生し、陽極側電解生成ガスとして、電解系に依存する酸素ガス、又は塩素ガス等のハロゲンガス等が発生する。そして、これらの電解生成ガスには、陽極側電解液又は陰極側電解液中に、溶存ガス若しくは微細ガスバブルとして共存することが原因して、例えば、水素ガス中には、酸素ガス等が不純物として存在し、酸素ガス中には、水素ガス等が不純物として混入する。このため、純度の高い電解生成ガスを簡便に製造することが困難であるという課題があった。
[0010]
 したがって、本発明の目的は、従来技術の課題を解消し、金属触媒と反応塔を使用した比較的高価な設備、工程の負荷並びにランニングコストを低減できる簡便な手段により、例えば、陰極側電解生成ガスである水素ガスの純度を向上させ、また、場合によっては、酸素ガス等の陽極側電解生成ガスの純度を向上させることも可能な電解装置及び電解生成ガスの精製方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0011]
 上記の目的は、下記の本発明によって達成される。本発明は、第1の解決手段として下記の電解生成ガスの精製方法を提供する。
[1]陰極及び陽極を有する電解槽内に供給した電解液を電解し、電解された電解液を電解槽外に設けた電解液循環タンクを介して循環させながら電解を繰り返す工程で、該電解生成ガスのガスバブルが共存している電解液を精製しながら電解することで、前記電解槽から発生する電解生成ガスを精製する電解生成ガスの精製方法であって、前記電解液循環タンクの内部に、前記電解生成ガス及び前記電解液と共存しているバブル径の大きなガスバブルを透過させずに残留させる構成の多孔質隔膜材質からなる、上端に開口を有し、全側面及び全底面が閉じられた形状の、前記全側面及び前記全底面に広範な透過面積を有する袋状隔膜体を、前記電解液循環タンクの内面との間に間隔を空けて設置し、前記電解生成ガスのガスバブルが共存している電解液を、前記袋状隔膜体の開口より前記袋状隔膜体の内部に供給し、前記袋状隔膜体の内部に供給した前記電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記電解液循環タンク内へ、前記全側面及び前記全底面より、前記電解液及び前記電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブルを透過させ、前記袋状隔膜体の内部に、前記電解生成ガス及び前記バルブ径の大きなガスバブルを残留させて、共存しているガスバブルを少なくした前記電解液を、前記電解液循環タンクより前記電解槽に連続的に循環しながら電解を繰り返すことで、前記電解槽から発生する電解生成ガスを精製することを特徴とする電解生成ガスの精製方法。
[0012]
 本発明は、第2の解決手段として下記の電解生成ガスの精製方法を提供する。
[2]前記電解槽として、隔膜又はイオン交換膜により隔離された陰極室及び陽極室を有し、前記陰極室及び前記陽極室内にそれぞれ陰極及び陽極を有するアルカリ水電解槽を用い、該電解槽の前記陰極室及び前記陽極室内に、苛性アルカリを含有する共通の組成の電解液を供給するとともに、前記電解液循環タンクを、陰極側電解液と陽極側電解液に共通の共通電解液循環タンクとして使用し、前記陰極室内で陰極側電解生成ガスを生成し、前記陽極室内で陽極側電解生成ガスを生成し、前記陰極側電解生成ガス、前記陰極側電解液、及び前記陰極側電解液と共存しているガスバブル並びに前記陽極側電解生成ガス、前記陽極側電解液、及び前記陽極側電解液と共存しているガスバブルを、前記袋状隔膜体の開口より内部に供給し、前記袋状隔膜体の内部に供給した前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記共通電解液循環タンク内へ、前記袋状隔膜体の前記全側面及び前記全底面より、前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液並びに前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブルを透過させ、前記袋状隔膜体の内部に、前記陰極側電解生成ガス、前記陽極側電解生成ガス、及び前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているバルブ径の大きなガスバブルを残留させて、前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているガスバブルを少なくした共通の組成の電解液を、前記共通電解液循環タンクより前記電解槽に連続的に循環しながら電解を繰り返すことで、
 前記陰極側電解生成ガスである水素ガス又は該水素ガスと前記陽極側電解生成ガスである前記酸素ガスとを精製する上記[1]の電解生成ガスの精製方法。
[0013]
 本発明は、第3の解決手段として下記の電解装置を提供する。
[3]陰極及び陽極を有する電解槽内に供給した電解液を電解し、電解された電解液を電解液循環タンクにより循環しながら連続的に電解処理し、電解生成ガスを回収することで精製された電解生成ガスを得るための電解装置であって、前記電解槽内に供給された電解液と、前記電解槽内の前記電解液を循環するための電解液循環タンクと、前記電解液循環タンクの内部に、前記電解液循環タンクの内面との間に間隔を空けて設置した袋状隔膜体とを有してなり、前記袋状隔膜体が、前記電解液及び前記電解液と共存しているバブル径の大きなガスバブルを透過させずに残留させる構成の多孔質隔膜材質からなる、上端に開口を有し、全側面及び全底面が閉じられた形状の、前記全側面及び前記全底面に広範な透過面積を有する袋状隔膜体よりなり、前記電解生成ガスのガスバブルが共存している電解液を、前記袋状隔膜体の開口より前記袋状隔膜体の内部に供給し、前記袋状隔膜体の内部に供給した前記電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記電解液循環タンク内へ、前記袋状隔膜体の前記全側面及び前記全底面より、前記電解液及び前記電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブルを透過させ、前記袋状隔膜体の内部に、前記電解生成ガス及び電解液と共存しているバルブ径の大きなガスバブルを残留させて、共存しているガスバブルを少なくした前記電解液を、前記電解液循環タンクより前記電解槽に連続的に循環しながら電解を繰り返すことで、前記電解槽から発生する電解生成ガスを精製できるように構成されていることを特徴とする電解装置。
[0014]
 本発明は、第4の解決手段として下記の電解装置を提供する。
[4]前記電解槽が、隔膜又はイオン交換膜により隔離された陰極室及び陽極室を有し、前記陰極室及び前記陽極室内にそれぞれ陰極及び陽極を有してなり、該電解槽内に供給された陰極側電解液と陽極側電解液が、共通の組成の苛性アルカリ水溶液よりなり、前記電解液循環タンクが、前記陰極側電解液と前記陽極側電解液を混合し、共通の組成の苛性アルカリ水溶液として、前記陰極室及び前記陽極室にそれぞれ供給するための、前記陰極側電解液と前記陽極側電解液に共通の共通電解液循環タンクであり、前記陰極室にて生成された陰極側電解生成ガス、前記陰極側電解液及び前記陰極側電解液と共存しているガスバブル並びに前記陽極室にて生成された陽極側電解生成ガス、陽極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているガスバブルを、前記袋状隔膜体の開口より内部に供給し、前記袋状隔膜体の内部に供給した前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記共通電解液循環タンク内へ、前記袋状隔膜体の前記全側面及び前記全底面より、前記陰極側電解液、前記陽極側電解液、前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブルを透過させ、前記袋状隔膜体の内部に、前記陰極側電解生成ガス、前記陽極側電解生成ガス、及び前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているバルブ径の大きなガスバブルを残留させて、前記陽極側電解液及び前記陰極側電解液と共存しているガスバブルを少なくした共通の組成の電解液を、前記共通電解液循環タンクより前記電解槽に連続的に循環しながら電解を繰り返すことで、前記陰極側電解生成ガスである水素ガス又は該水素ガスと前記陽極側電解生成ガスである酸素ガスとを精製する上記[3]に記載の電解装置。

発明の効果

[0015]
 本発明は、陰極及び陽極を有する電解槽内に供給した電解液を電解し、電解された電解液を電解槽外に設けた電解液循環タンクを介して循環させながら電解を繰り返す工程で、前記電解液循環タンクの内部に、特有の多孔質隔膜材質からなる、上端に開口を有し、全側面及び全底面が閉じられた形状の、該全側面及び該全底面に広範な透過面積を有する袋状隔膜体(以下、「袋状隔膜体」又は「メンブレンバック」とも呼ぶ)を配置したことを特徴とする。このように構成したことで、電解により生成した電解生成ガスが溶存するとともに該電解生成ガスのガスバブルが共存している電解液を精製しながら電解することを可能にして、前記電解槽から発生する電解生成ガスを精製する電解生成ガスの精製を実現する。本発明によれば、前記電解生成ガス及び前記電解液中に共存しているバブル径の大きなガスバブル(以下、「バブル径の大きな共存ガスバブル」とも呼ぶ)は、袋状隔膜体(メンブレンバック)内に分離、保持され、電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブル(以下、「バブル径の小さな共存ガスバブル」とも呼ぶ)及び電解液中に溶存する溶存ガスを含有する電解液が電解槽にて再電解される。このためバブル径の大きな共存ガスバブルは、電解槽に循環されなくなり、結果として電解生成ガスが精製される。
[0016]
 本願は、日本国の特願2019-060832号を優先権の基礎(基礎出願と呼ぶ)とするものであり、当該基礎出願の内容を全て記載するものである。優先権を主張して出願するにあたり、本発明を特徴づける「袋状隔膜体」を下記の通りに規定した。これは表現の変更であって、下記に述べる通り、基礎出願に係る発明を実体的に変更するものではない。基礎出願では、「前記袋状隔膜体(メンブレンバック)は、水溶性透過性の隔膜よりなる」と記載し、また、該袋状隔膜体(メンブレンバック)の構造について、「該袋状隔膜体(メンブレンバック)内部に、前記電解生成ガス及び前記電解液中に共存するバブル径の大きなガスバブルが分離、保持され、バブル径の小さなガスバブルが共存する電解液が該袋状隔膜体(メンブレンバック)を透過する簡便な構成」と記載し、また、「共存するバブル径の小さなガスバブルを含有する電解液と、バブル径の大きなガスバブル(共存ガスバブル)を含有する電解液に分離するための隔膜の透過面積を大きくすることで、電解液が隔膜を透過する」と記載していた。本発明では、「袋状隔膜体」を、「電解生成ガス及び電解液と共存しているバブル径の大きなガスバブルを透過させずに残留させる構成の多孔質隔膜材質からなる、上端に開口を有し、全側面及び全底面が閉じられた形状の、全側面及び全底面に広範な透過面積を有する」と規定した。
[0017]
 先に述べた通り、本発明によれば、循環される電解液中のガスバブルの量が少なくなると共に、バブル径の大きな共存ガスバブルが電解槽に循環されなくなり、供給電解液中の不純物となる共存ガスが少なくなることから、再電解時に電極で発生するガスと共に電解液の溶存ガスが液相から気相に移ることが抑制され、製品ガスの純度、品質を下げることがなくなり、電解生成ガスの純度を向上させることができる。特に、電解液中に共存するガスバブルの内、酸素ガス、塩素ガス等の陽極側電解生成ガスは、平均バブル径が大きい傾向があり、本発明の電解生成ガスの精製方法を適用することで顕著な効果が得られ、有用である。
[0018]
 即ち、本発明では、電解液循環タンク内に前記袋状隔膜体(メンブレンバック)を設置し、電解液を循環させるときに、該袋状隔膜体内の電解液が電解液循環タンク内へ透過するように構成しただけで、例えば、電解液中に共存しているバブル径の大きな、酸素ガス、塩素ガス等の陽極側電解生成ガスの電解液循環タンク内への透過を抑制している。本発明によれば、上記簡便な手段により、陰極側電解生成ガスである水素ガス中に不純物として存在する酸素ガス等が容易に除去され、その結果、高純度に精製された水素ガスを製造することができる。
[0019]
 より具体的には、本発明によれば、従来技術で、陰極側電解生成ガスである水素ガスを精製するために使用していた金属触媒を用いた反応塔、その他の装置、工程の負荷を低減することができ、特別に水素精製設備を設けることなく、簡便な手段で、陰極側電解生成ガスである水素ガスの純度を少なくとも99.94%以上に向上させることができる。更に、本発明によれば、袋状隔膜体を電解液循環タンク内に設置するだけで、特段、スペースを要する如何なる付帯設備、工程を設けることなく、酸素ガス等の陽極側電解生成ガスについても高純度に精製することができる。また、本発明によれば、如何なる付帯設備や工程も用いる必要がないため、設備容積を削減することができる。また、振動、騒音、長期運転時の機械的損傷がなく、長期にわたって安定して稼働することが可能となり、装置のメンテナンス費が大幅に低減される。
[0020]
 一方、電解液に溶存する溶存ガス及びバブル径の小さな共存ガスバブルは、袋状隔膜体内から電解液循環タンクに透過され、電解液とともに電解槽に循環され、再電解される。しかし、溶存ガス及びバブル径の小さな共存ガスバブルは、再電解によって新たなガスが激しく発生しても、その発生ガスにより、液相から気相に移る不純物ガスとはならないので、純度の高い電解生成ガスを得ることができる。したがって、本発明によれば、特別な高圧ポンプなどをプロセス内に設置することなく、自重での差圧を活用して、通常の運転により、電解生成ガスを精製することができる。
[0021]
 これに対し、従来技術によって、電解液を電解するシステムにおいて連続運転を行った場合、下記の課題がある。例えば、水電解においては、陰極側電解生成ガスとして、水素ガスが生成され、陽極側電解生成ガスとして、酸素ガスが生成され、同時に、電解液中には、陰極側電解生成ガスである水素ガスのガスバブル及び陽極側電解生成ガスである酸素ガスのガスバブルが共存することになる。そして、水素ガスのバブル径は、比較的小さいが、酸素ガスのガスバブルのバブル径は、比較的大きいことが知られている。このため、電解液を循環しながら連続電解する場合に、電解槽において生成された電解液を、本発明を構成する袋状隔膜体を用いず、循環タンクよりそのまま電解槽に循環して再電解すると、バブル径の大きな共存ガスバブルである、酸素ガスバブルは、電解液とともに電解槽に循環される。そして、陰極においては、再電解時に電極で発生するガス(水素ガス)により激しく撹拌され、その発生ガスとともに電解液に溶存している酸素ガス及び共存していた酸素ガスバブルは、不純物として、酸素ガスとして、水素ガス中に混入されるため、電解生成ガスである水素ガスの純度、品質を下げることになる。
[0022]
 即ち、本発明者の検討によれば、従来方法の電解液を電解するシステムにおいて連続運転を行う場合、電解時に気液混合流体が生じ、第1段の気液分離装置を経ても、電解液と共存する共存ガスバブルの除去、分離はできず、電解液循環タンクに供給され、電解液とともに、該共存ガスバブルが同時に電解槽に循環されることになる。

図面の簡単な説明

[0023]
[図1] 本発明の一例を示すアルカリ水電解装置で、陰極側電解生成ガスである水素ガス及び陽極側電解生成ガスである酸素ガスを精製することを説明するためのフロー図である。
[図2] 本発明の他の一例を示す食塩電解装置を用い、陰極側電解生成ガスである水素ガスを精製することを説明するためのフロー図である。

発明を実施するための形態

[0024]
 次に、本発明の好ましい形態を挙げて本発明を詳細に説明する。まず、本発明者が本発明に至った経緯について説明する。
[0025]
 電解液を電解するシステムで、連続運転を行う場合に電解液を循環し、電解液の電解と再使用を行うために電解液の電解液循環タンクが一般に必要である。斯かるシステムにおいて、電解時に気液混合流体が生じ、第一段の気液分離手段を経ても、液中に共存するガスバブルを全て分離はできず、電解液循環タンクに供給され、ガスバブルが共存する電解液が再び電解槽に供給されることになる。この時、当該電解液を電解すると、共存ガスバブルが再電解時に電極で発生するガスで激しく撹拌され、その発生ガスと共に電解液の溶存ガスが液相から気相に移り、発生ガスと同伴され、電解槽から排出される。この時、発生ガスを製品とする場合、同伴された共存ガスが不純物となり、この結果、製品ガスの純度、品質を下げることになる。本発明者は、この問題を解決するために、電解液循環タンク内に、多孔質隔膜材質からなる、上端に開口を有し、全側面及び全底面が閉じられた形状の、これらの面に広範な透過面積を有する袋状隔膜体を設置することで、電解液中の大きな共存ガスバブルを、簡便に且つ効果的に分離除去することを可能にし、これにより、電解生成物の純度及び品質を向上させることに成功したものである。
[0026]
 本発明者は、先に述べた従来技術の課題を解決すべく検討する過程で、上記のような水素ガス、酸素ガス等の電解生成ガスの性状を調査した結果、電解液中に共存するガスバブルの大きさが異なり、水素ガスのガスバブルのバブル径の大きさが比較的小さく、次いで、酸素ガス、塩素ガスの順に大きくなる傾向を見出した。そして、斯かる知見に基づき鋭意検討した結果、電解液を、電解処理後にアスベスト隔膜のような水溶液透過性の隔膜を通過させることにより、バブル径の大きな共存ガスバブルは、隔膜の内側に分離保持され、電解液中に溶存する溶存ガス及びバブル径の小さな共存ガスバブルは、前記隔膜を通過し、バブル径の小さな共存ガスバブルを含有する電解液と、バブル径の大きな共存ガスバブルを含有する電解液とに分離できることを見い出した。
[0027]
 本発明者は、更に、バブル径の小さな共存ガスバブルを含有する電解液と、バブル径の大きな共存ガスバブルを含有する電解液とに分離するための隔膜の透過面積を大きくすることで、電解液が隔膜を透過するために、特別な駆動力(加圧)を必要とせず、自重の液圧で隔膜を所定の流量流すことができる手法を見出した。その手法は、電解液循環タンクの内部に、隔膜で形成された袋状隔膜体(メンブレンバック)を設置することである。そして、電解液循環タンクの内部に設置する際に、例えば、上方から見た場合に、該タンクの内周面と、間隔を設けて同心円になる位置に(タンク内が二重構造になる位置に)、袋状隔膜体を設置することが好ましい(図1及び図2参照)。このように構成したことで、電解液循環タンク内に循環する電解液が、電解槽内を循環する前に、この設置した袋状隔膜体内に供給されて、袋状隔膜体を透過することになる結果、簡便に、電解液中に共存するバブルガスを大幅に除去することが実現される。特に、電解後の電解液中に存在するバブル径の大きな共存ガスバブルの除去率を向上させることができるので、電解生成ガス中に混入する不純物となるガスの量が低減されることになる。この結果、再電解の際に発生する新たなガスが激しく発生しても、その発生ガスと共に電解液の溶存ガスが液相から気相に移る不純物ガスは少なくなり、純度の高い電解生成ガスを得ることが実現できる。
[0028]
 以下、電解液が、純水又は電解質含有水溶液である場合の例の、本発明の電解装置の構成及び電解方法について説明する。本発明の電解装置は、陽極及び陰極を有する電解槽を持ち、電解液を電解槽に供給し、電解液を電解処理する構成のものであり、電解液循環タンク内に袋状隔膜体を設置したこと以外は、基本的には、従来の電解処理方法と異なるところはない。例えば、電解処理した電解液と電解生成ガスとの気液混合流体を、前記電解槽から排出し、排出された気液混合流体又は気液混合流体から電解生成ガスを分離した後の電解液を、電解液循環タンクに供給し、該電解液循環タンクに供給した電解液を、前記電解槽に循環し、電解液を連続的に電解することを基本構成とする。そして、上記のようにして電解することで、得られる電解生成ガスが、高純度に精製された電解生成ガスとなる効果が実現できることを特徴とする。即ち、本発明において、その特徴とするところは、下記の構成を有し、その結果、下記のようにして電解が行われて下記の効果が得られることにある。
[0029]
 (1)電解液循環タンク内に、電解生成ガス及びバブル径の大きな共存ガスバブルを透過させずに残留させる構成の多孔質隔膜材質からなる、上端に開口を有し、全側面及び全底面が閉じられた形状の、全側面及び全底面に広範な透過面積を有する袋状隔膜体を、電解液循環タンクの内面との間に間隔を空けて設置した構成とする。
 (2)電解生成ガスのガスバブルが共存している電解液を、袋状隔膜体の開口より袋状隔膜体の内部に供給する。
 (3)袋状隔膜体の内部に供給した前記電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記電解液循環タンク内へ、前記袋状隔膜体の広範な透過面積を有する前記全側面及び前記全底面より、前記電解液及び前記電解液中に溶存している溶存ガス及び前記電解液とバブル径の小さな共存ガスバブルを透過させ、
 (4)前記袋状隔膜体の内部に、前記電解生成ガス及び前記バルブ径の大きな共存ガスバブルを残留させて、
 (5)電解液循環タンク内に透過された、共存ガスバブルが少なくなった電解液を電解槽に循環し、連続的に電解処理(再電解)し、
 (6)供給電解液中における不純物となる共存ガスバブルが少なくなることから、再電解時に電極で発生する電解生成ガスと共に電解液の溶存ガスが液相から気相に移ることが抑制される。
 (7)上記のように構成したことで、例えば、電解生成ガスである水素ガス、酸素ガス等から、不純物であるバブル径の大きな共存ガスバブルが除去され、その結果、電解生成ガスが高純度に精製されて回収されることになる。
[0030]
 本発明を特徴づける袋状隔膜体は、水溶液である電解液を透過でき、且つ、バブル径の大きな共存ガスバブルを袋状隔膜体の内部に分離、保持し、共存ガスバブルの含有量の少ない電解液を外部に透過することのできるフィルター機能を持つ、水溶液透過性の隔膜であればよく、特に限定されない。例えば、アスベスト隔膜、PPS(ポリフェニレンサルファイド)の不織布、PTFE(ポリテトラフルオルエチレン)やPSF(ポリサルフォン又はポリスルホン)などのポリマーを含浸させた化学的耐性のある不織布等が、好適に使用される。
[0031]
 本発明において、前記袋状隔膜体によってもたらされるバブル径の大きな共存ガスバブルの分離効率を大きくするには、前記袋状隔膜体を透過する電解液の透過面積を大きくすることが効果的である。袋状隔膜体は、例えば、その全側面及び全底面を蛇腹状に形成することにより、電解液の透過面積を更に大きくすることができる。また、袋状隔膜体の形状は、電解液循環タンク内の形状と、相似形またはこれに近い形とすることにより、その透過面積を更に広くすることができる。
[0032]
 本発明を構成する前記袋状隔膜体は、袋状に形成し、電解液循環タンク内に設置することにより、図に示したように、電解液循環タンク内の状態を、二重構造にすることができる。電解液は、袋状隔膜体の全側面及び全底面から透過される。即ち、袋状隔膜体の中に供給された電解液は、その自重で、前後、左右及び下方の各方向から電解液循環タンク内に移行する。このように、袋状としたことで、電解液の透過する面が、全側面及び全底面となり、透過面積が広範となる。このため、不純物となる酸素ガス等のバブル径の大きなガスバブルは、効率的に除去され、この電解液が電解槽に循環されるので、水素ガス等を高純度に精製することができる。
[0033]
 これに対し、メンブレンバック状の袋状隔膜体に変えて、例えば、平面上の隔膜シートを用い、電解液循環タンクの上部に設置した場合、電解液が透過できる面積は、極端に小さくなり、本発明によって達成されるバブル径の大きな共存ガスバブルの除去は、ほとんど望めない。
[0034]
 以下、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
 図1は、電解槽1としてアルカリ水電解槽を用い、陰極室内の陰極側電解液及び陽極室内の陽極側電解液を、共通の共通電解液循環タンク5にて混合し、共に循環しながら、陰極室内及び陽極室内でそれぞれ継続電解を行い、陰極側電解生成ガスである水素ガス及び陽極側電解生成ガスである酸素ガスを精製する目的で本発明の精製方法を適用した1例のアルカリ水電解を説明するためのフロー図である。図1において、アルカリ水電解装置は、電解槽1を有する。2は陰極を収容する陰極室、3は陽極を収容する陽極室、4は陰極室2と陽極室3とを区画する隔膜である。以下、図1を参照して説明する。
[0035]
 陰極側での電解液の搬送経路として、陰極側電解液循環手段と、陰極側電解生成ガス分離手段が設けられる。陰極側電解液循環手段は、陰極側電解液供給手段と陰極側電解液排出手段からなる。陰極側電解液供給手段は、共通電解液循環タンク5と、共通電解液循環タンク5の底部に接続された電解液供給ライン7と、循環ポンプ8と、陰極側電解液供給ライン14とを有する。共通電解液循環タンク5には、ポンプ20により純水タンク21から純水22が供給され、ポンプ23により、アルカリ水タンク24からアルカリ水25が供給され、共通電解液循環タンク5内で混合された電解処理前の電解液が、電解液供給ライン7と循環ポンプ8と陰極側電解液供給ライン14を介して陰極室2内に供給される。但し、ポンプ23の作動は、初期電解液建浴時及びアルカリ濃度が長期運転で減少した場合のみ行われる。また、図1の例では、電解液供給ライン7に熱交換器13が設置されている。
[0036]
 陰極側電解液排出手段は、陰極側電解液が、陰極室9の上部に連結された陰極側気液混合流体排出ライン9から排出され、陰極側気液分離手段10により、陰極側電解生成ガスである水素ガスと、陰極側電解液とに分離され、水素ガスを分離した後の陰極側電解液は、陰極側電解液循環ライン11により、前記共通電解液循環タンク5内に設置された袋状隔膜体32の上面に形成された開口30より、袋状隔膜体32の内部に供給される。該袋状隔膜体32は、前記電解液及び前記バブル径の小さい共存ガスバブルのみを透過し、前記電解生成ガス並びに前記バブル径の大きなガスバブルを透過しない多孔質隔膜材質よりなる。このため、共存しているガスバブルが少なくなった電解液が、自重による差圧により、前記共通電解液循環タンク5内に透過される。
[0037]
 陰極側電解液排出手段は、陰極側気液混合流体排出ライン9から排出された陰極側電解液は、陰極側気液分離手段10により、陰極側電解生成ガスである水素ガスと、陰極側電解液とに分離され、水素ガスを分離した後の陰極側電解液は、陰極側電解液循環ライン11により、上部に開口30を有し、底面31が閉じられた、水溶液透過性の隔膜よりなる袋状隔膜体32に供給される。該袋状隔膜体32は、共通電解液循環タンク5内に設置されており、袋状隔膜体32内に供給された陰極側電解液は、該袋状隔膜体32の全側面33及び底面31より前記共通電解液循環タンク5内に排出される。
[0038]
 本発明を特徴づける水溶液透過性の隔膜からなる袋状隔膜体32内に供給された陰極側電解液中には、隔膜よって隔離された対極室である陽極室3から透過してきた溶存酸素ガスとバブル状酸素ガス、及び陰極室での電解生成によって生じた溶存水素ガスとバブル状水素ガスが混在する。本発明では、バブル径の大きなバブル状酸素ガスは、袋状隔膜体32内に残留し、溶存酸素ガスと溶存水素ガスとバブル径の小さなバブル状水素ガスを含む電解液のみが、袋状隔膜体32内から共通電解液循環タンク5内に排出されるように構成されている。このため、バブル径の大きな共存バブルガスが電解槽に循環されることはない。
[0039]
 陰極側ガス分離手段は、陰極側気液混合流体排出ライン9と、陰極側気液分離手段10と、陰極側電解生成ガス排出ライン12とを有する。陰極側気液分離手段10は陰極側電解生成ガス排出ライン12を介して水封装置19に接続する。水封装置19は内部に水を収容する。陰極側電解生成ガス排出ライン12の先端は水封装置19内の水に浸漬しており、この処方は電解プロセスにおける陽極室と陰極室の圧力をコントロールする目的も持っており、分離された水素ガスは、高純度に精製されて、回収される。尚、気液分離手段10は、配管でT字型配管接続をするだけの簡単な手法でもよい。この手法は、多少、T字型繋ぎの配管系を単なるライン配管より太めにする程度で特段技術技巧を加えるものではなく、この法によれば、気液混合流体は水平に供給され、ガスは垂直に上方向へ向かい、液体は下方向へ流すプロセスである。
[0040]
 アルカリ水電解における水素ガス側は、常に当該気液分離手段を講じる必要があるが、アルカリ水電解の陽極側気液混合流体に関しては、気液分離手段を全く行わず、そのまま循環タンクに供給してもよい。このように構成した場合は、循環タンク内での水素濃度を相対的に下げる目的で酸素ガスを分離せず、そのまま供給することができる。そのため、この方法によれば、窒素ガスを使わず、電解運転により自ら発生する酸素ガスを利用して循環タンク内の水素濃度を希釈することができるという利点がある。
[0041]
 尚、袋状隔膜体(メンブレンバック)32及び共通電解液循環タンク5の上部の、電解生成ガスである水素ガス及び酸素ガスは、排気パイプ29から、陽極側電解生成ガス排出ライン27、水封装置28を経てパイプ26より、回収又は大気中に排気される。
[0042]
 陽極側での電解液の搬送経路として、陽極側電解液循環手段と、陽極ガス分離手段が設けられる。陽極側電解液循環手段は、陽極側電解液供給手段と陽極側電解液排出手段からなる。陽極側電解液供給手段は、共通電解液循環タンク5と、共通電解液循環タンク5の底部に接続された電解液供給ライン7と循環ポンプ8と陽極側電解液供給ライン15とを有する。共通電解液循環タンク5内で混合された電解液が、電解液供給ライン7と循環ポンプ8と陽極側電解液供給ライン15を介して陽極室3内に供給される。
[0043]
 陽極側電解液排出手段は、下記のように構成されている。陽極側気液混合流体排出ライン16から排出された陽極側電解液は、陽極側気液分離手段17により、陽極側電解生成ガスである酸素ガスと陽極側電解液とに分離され、酸素ガスを分離した後の陽極側電解液は、陽極側電解液循環ライン18により、上面に開口30を有し、底面31が閉じられた、水溶液透過性の隔膜よりなる袋状隔膜体32に供給される。該袋状隔膜体32は、前記したように共通電解液循環タンク5内に設置されており、袋状隔膜体32内に供給された陽極側電解液は、該袋状隔膜体32の全側面33及び底面31より前記共通電解液循環タンク5に排出される。
[0044]
 袋状隔膜体32内に供給された陽極側電解液中には、対極室の陰極室2から透過してきた溶存水素ガスとバブル状水素ガス、及び陽極での電解生成によって生じた溶存酸素ガスとバブル状酸素ガスが混在する。ここで、バブル径が大きいバブル状酸素ガスなどは、水溶液透過性の隔膜よりなる袋状隔膜体32内に残留する。一方、溶存酸素ガス、溶存水素ガス及びバブル径の小さなバブル状水素ガスを含む電解液は、袋状隔膜体32内から共通電解液循環タンク5内に排出される。この結果、酸素のバブルガスのようにバブル径の大きなバブルガスは、袋状隔膜体32内部に分離されるため、電解槽へ循環されることが抑制される。その抑制効果は、利用する袋状隔膜体の特性に依存する。袋状隔膜体32内から共通電解液循環タンク5内に排出された電解液は、循環ポンプ8により、電解液供給ライン7、陽極側電解液供給ライン15を介して、陽極室3に供給される。
[0045]
 陽極ガス分離手段は、陽極側気液混合流体排出ライン16と、陽極側気液分離手段17と、陽極側電解生成ガス排出ライン27とを有する。陽極側気液分離手段17の上方には、バルブ6が設けられており、該バルブ6を開にしておくことによって、陽極側気液分離手段17によって分離された陽極側電解生成ガスは、陽極側電解生成ガス排出ライン27を介して水封装置28に接続する。水封装置28は内部に水を収容する。陽極側電解生成ガス排出ライン27の先端は水封装置28内の水に浸漬しており、分離された陽極ガスである酸素ガスは、パイプ26より回収排気される。
[0046]
 本実施の態様によれば、前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液は、いずれも袋状隔膜体32を介して前記共通電解液循環タンク5に供給された後、陰極室及び陽極室に循環されるので、バブル径の大きな共存ガスバブルは袋状隔膜体32内に残留して、前記陰極室及び前記陽極室には、循環されない。このため、バブル径の大きな共存ガスバブルに由来して、再電解時に電極で激しく発生する電解生成ガスと共に電解液中の不純物となる溶存ガスが液相から気相に移ることが防止されるので、製品ガスの純度、品質を下げることがなくなる。結果的に、陰極側電解生成ガスである水素ガスと同時に、陽極側電解生成ガスである酸素ガスも精製されることになる。
[0047]
 図1の例では、電解液はアルカリ水溶液(例えば、KOH水溶液又はNaOH水溶液)であり、常圧でも加圧システムも同様に行うことができる。本実施形態の電解装置は、電解液補充手段と水補充手段とを備える。電解液補充手段は、高濃度のアルカリ水25を貯留するアルカリ水タンク24と、ポンプ23とを備える。水補充手段は、純水22を貯留する純水タンク21と、ポンプ20とを備える。
[0048]
〔第2実施形態〕
 上記した通り、図1を参照して、陽極側電解液排出手段が、陽極側気液混合流体排出ライン16から排出された陽極側電解液は、陽極側気液分離手段17により陽極ガスである酸素ガスと陽極側電解液とに分離され、酸素ガスを分離した後の陽極側電解液は、陽極側電解液循環ライン18により、水溶液透過性の隔膜よりなる袋状隔膜体32の上部の開口30に供給される例について説明した。然るに、陽極側気液分離手段17の上方に設けたバルブ6を閉とすることにより、陽極側電解生成ガスである酸素ガスを、陽極側気液分離手段17によって分離せずに、陽極側気液混合流体として、陽極側気液混合流体排出ライン16から、陽極側電解液循環ライン18により、袋状隔膜体32に供給する形態とすることもできる。以下、この第2実施形態について説明する。
[0049]
 この場合、陽極で電解生成された大量の酸素ガスが、袋状隔膜体32の上部の開口30に供給されることになるが、この大量の酸素ガスは、袋状隔膜体32の内部の電解液中に溶解せず、その上部の開口30より排出パイプ29、陽極側電解生成ガス排出ライン27を介して水封装置28を経て、回収又は大気中に排出される。陽極側電解液中には、上記した大量の酸素ガスの他に、対極の陰極室2から透過してきた溶存水素ガスとバブル状水素ガス、及び陽極での電解生成によって生じた溶存酸素ガスとバブル状酸素ガスが混在する。ここで、バブル状酸素ガスは、水溶液透過性の隔膜よりなる袋状隔膜体32内に残留し、溶存酸素ガス、溶存水素ガス、バブル径の小さなバブル状水素ガスを含む電解液のみが、袋状隔膜体32から共通電解液循環タンク5内に排出される。
[0050]
 尚、陽極側気液混合流体から陽極側電解生成ガスを分離せずに、陽極側気液混合流体をそのまま、陽極側気液混合流体排出ライン16から、陽極側電解液循環ライン18により、袋状隔膜体32に供給する第2実施形態の場合、陽極側気液分離手段17、バルブ6を設けずに、陽極室3と袋状隔膜体32とを、陽極側気液混合流体排出ライン16及び陽極側電解液循環ライン18により直接接続する構成としてもよい。更に、本発明の電解生成ガスの精製方法は、加圧システムにおいても適用することができる。尚、加圧システムの場合、陽極、陰極室共に加圧される。従って、系内の陽極室と陰極室の差圧は常圧と同様の関係になり、袋状隔膜体32で濾す現象は同じとなる。
[0051]
〔第3実施形態〕
 第1実施形態と第2実施形態の例で説明したように、図1に示したアルカリ水電解装置では、陽極側と陰極側とで共通電解液循環タンクが共通する。従って、陰極側電解液循環手段と陽極側電解液循環手段では、陽極側電解液と陰極側電解液とが混合された電解液が、陰極室2と共通電解液循環タンク5との間及び陽極室3と共通電解液循環タンク5との間をそれぞれ循環する構成となっている。しかしながら、本発明は、上記の図示した例に限らず、陰極側電解液循環手段のみを設置し、陰極側電解液のみを電解液循環タンク5と陰極室2との間で循環し、陽極側電解液は循環しない構成(不図示)としてもよい。
[0052]
 更に、本発明は、アルカリ水電解以外に、食塩電解、塩化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属電解、固体高分子形水電解、硫酸電解、塩酸電解等の水溶液電解にも適用することができる。これらの電解においては、図1に示される共通電解液循環タンク5の代わりに、陰極側電解液循環タンク及び陽極側電解液循環タンクを設置する。そして、陰極側で、陰極側電解液を陰極側電解液循環タンクと陰極室との間で循環させ、陽極側で、陽極側電解液を陽極側電解液循環タンクと陽極室との間で循環させるように構成する。また、上記の例に限らず、陰極側電解液循環手段及び陽極側電解液循環手段のいずれか一方のみが設置される構成としてもよい。例えば、陰極側は陰極側電解液循環手段を設けて電解液が循環される構成とする一方で、陽極側は陽極側電解液循環ラインから装置外に排出する構成とすることもできる。
[0053]
 次に、本発明の電解生成ガスの精製方法に使用する電解槽として食塩電解槽又は塩化カリウム電解槽を用いる場合について説明する。
[0054]
〔第4実施形態〕
 図2は、本発明において、電解槽に食塩電解槽を用いる場合のフローを示したものである。図2に示した例では、食塩電解槽101を用い、陰極側電解液として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液からなる電解液を使用し、陽極側電解液として、食塩水からなる電解液を使用した。そして、電解液循環タンクとして、袋状隔膜体(メンブレンバック)132aを設置した陰極側電解液循環タンク105aと、及び袋状隔膜体(メンブレンバック)を設置していない陽極側電解液循環タンク105bを使用した。103は陽極室、104は陽イオン交換膜である。
[0055]
 陰極側の電解液の搬送経路として、陰極側電解液循環手段と、陰極ガス分離手段が設けられる。陰極側電解液循環手段は、陰極側電解液供給手段と陰極側電解液排出手段からなる。陰極側電解液供給手段は、陰極側電解液循環タンク105aと、該陰極側電解液循環タンク105aの底部に接続された陰極側電解液供給ライン114と、循環ポンプ108とを有する。陰極側電解液循環タンク105aには、陰極側のポンプ123より純水タンク121から純水122が供給され、陰極側電解液供給ライン114と循環ポンプ108とを介して、陰極側電解液が、陰極側電解液循環タンク105aから陰極室102内に供給される。
[0056]
 陰極側電解液排出手段は、下記のように構成されている。陰極側気液混合流体排出ライン109から排出された電解処理後の陰極側電解液は、陰極側気液分離手段110により陰極側電解生成ガスである水素ガスと陰極側電解液とに分離される。水素ガスを分離した後の電解処理後の陰極側電解液は、陰極側電解液循環ライン111により、上部に開口130aを有し、全底面131a及び全側面133aが閉じられた、袋状隔膜体132aに供給される。該袋状隔膜体132aは、電解液循環タンク105a内に、これと間隔を空けて、設置されており、袋状隔膜体132a内に供給された電解処理後の陰極側電解液は、該袋状隔膜体132aの全側面133a及び全底面131aより、前記電解液循環タンク105a内に透過される。袋状隔膜体132a内に供給された陰極側電解液中には、気液分離されなかった水素ガス、及び陽極室103から透過してきた陽極室由来の透過塩素ガスとともに、陰極側電解液中には、バブル径の大きな酸素ガスバブル、塩素ガスバブル及びバブル径の小さい水素ガスバブル等が共存する。ここで、陰極側電解液中に共存するバブル状塩素ガス及びバブル状酸素ガスバブルは、バブル径が大きいため、袋状隔膜体132a内に残留し、バブル径の小さいバブル状水素ガスを含む電解液が、自重による差圧により、袋状隔膜体132aから電解液循環タンク105a内に透過される。従って、バブル状塩素ガス及びバブル状酸素ガスのようにバブル径の大きな共存バブルガスは、陰極側電解液中に共存していても電解槽に循環されることはない。
[0057]
 袋状隔膜体132aから電解液循環タンク105a内に排出された電解処理後の陰極側電解液は、循環ポンプ108により、陰極側電解液供給ライン114を介して、陰極室102に供給される。陰極側ガス分離手段は、陰極側気液混合流体排出ライン109と、陰極側気液分離手段110と、陰極側電解生成ガス排出ライン112とを有する。陰極側気液分離手段110は、陰極側電解生成ガス排出ライン112を介して水封装置119に接続されている。水封装置119は内部に水を収容する。陰極側電解生成ガス排出ライン112の先端は水封装置119内の水に浸漬しており、分離された水素ガスは、高純度に精製されて、回収される。尚、袋状隔膜体(メンブレンバック)132a及び陰極側電解液循環タンク105aの上部の水素ガスは、陰極側の排出パイプ131から水封装置を介して回収される。
[0058]
 陽極側電解液循環手段は、陽極側電解液供給手段と陽極側電解液排出手段からなる。陽極側電解液供給手段は、陽極側電解液循環タンク105bと、陽極側電解液循環タンク105bの底部に接続された陽極側電解液供給ライン115と、循環ポンプ108とを有する。電解処理前の陽極側電解液は、ポンプ123より、供給塩水タンク124から供給塩水125である飽和食塩水が供給され、陽極側電解液循環タンク105b内の陽極側電解液が、陽極側電解液供給ライン115内で飽和食塩水と混合され、循環ポンプ108を介して陽極室103内に供給される。
[0059]
 陽極側電解液排出手段は、下記のように構成されている。陽極側気液混合流体排出ライン116から排出された電解処理後の陽極側電解液は、陽極側気液分離手段117によって、陽極側電解生成ガスである塩素ガスと電解処理後の陽極側電解液とに分離され、塩素ガスを分離した後の電解処理後の陽極側電解液は、陽極側電解液循環ライン118により、陽極側電解液循環タンク105bに供給される。陽極側電解液循環タンク105bの上部の塩素ガスは、排出パイプ129から水封装置を介して回収される。陽極側電解液循環タンク105b内に供給された電解処理後の陽極側電解液は、循環ポンプ108により、電解液供給ライン115を介して、陽極室103に供給される。
[0060]
 陽極側ガス分離手段は、陽極側気液混合流体排出ライン116と、陽極側気液分離手段117と、陽極側電解生成ガス排出ライン127とを有する。陽極側気液分離手段117は、陽極ガス気液混合流体排出ライン127を介して水封装置128に接続する。水封装置128は内部に水を収容する。陽極側電解生成ガス排出ライン127の先端は、水封装置128内の水に浸漬しており、分離された陽極側電解生成ガスである塩素ガスは、分離、回収される。尚、食塩電解槽の食塩の代わりに、フッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲンを用いたハロゲン化アルカリ金属電解槽を用いても同様な電解システムを行うことができる。
[0061]
〔第5実施形態〕
 図2に示した食塩電解装置では、陽極側と陰極側とで、それぞれ電解液循環タンクが設けられている。従って、上記では、陰極側電解液循環手段と陽極側電解液循環手段では、陽極側電解液と陰極側電解液とが、それぞれ循環する例について説明した。しかしながら、本発明は、陰極側電解液循環手段のみを設置し、陰極側電解液のみを陰極側電解液循環タンク105aと陰極室102との間で循環し、陽極側電解液は循環しない構成であってもよい。
[0062]
〔第6実施形態〕
 図2に示した食塩電解装置では、陽極側と陰極側とで電解液循環タンクがそれぞれ設けられており、前記電解液循環タンクとして、タンク内に袋状隔膜体132aを設置した陰極側電解液循環タンク105aと、タンク内に袋状隔膜体を設置していない陽極側循環タン105bを使用した例を示した。しかしながら、本発明は、上記に限定されず、例えば、陽極側循環タン105b内にも袋状隔膜体を設置し、陽極側電解液を、袋状隔膜体を通過させ、バブル径の大きな共存ガスバブルを袋状隔膜体内に残留させて除去した後、陽極室に循環するようにしてもよい。そのようにすることよって、陽極側電解生成ガスも同時に精製することができる。
[0063]
〔第7実施形態〕
 第4の実施態様及び第6の実施態様においては、「陽極側気液混合流体排出ライン116から排出された電解処理後の陽極側電解液は、陽極側気液分離手段117によって、陽極側電解生成ガスである塩素ガスと電解処理後の陽極側電解液とに分離され、塩素ガスを分離した後の電解処理後の陽極側電解液は、陽極側電解液循環ライン118により、陽極側電解液循環タンク105bに供給される。」例を示した。しかし、これに限定されず、陽極側気液混合流体排出ライン116から排出された電解処理後の陽極側電解液は、陽極側気液分離手段117によって、陽極側電解生成ガスである塩素ガスと電解処理後の陽極側電解液とに気液分離せずに、陽極側気液混合流体として、陽極側循環タンク105b又は陽極側循環タンク105bに設けた袋状隔膜体に供給してもよい。 
[0064]
 更に、本発明の電解生成ガスの精製方法は、加圧システムにおいても適用することができる。尚、加圧システムの場合は、陽極室、陰極室が共に加圧される。従って、系内の陽極室と陰極室の差圧は常圧と同様の関係になり、袋状隔膜体で濾す現象は同じとなる。
実施例
[0065]
 次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[0066]
<実施例1>
 電解槽として、図1に示すフローで運転されるアルカリ水電解槽を使用した。電解面積16dm の電解槽1で試験を実施した。陽極室3(容量18L)、陰極室2(容量18L)は共にNi製で、陽極は、エクスパンドメッシュ(厚さ約1.0mm×SW約4.0mm×LW8.0mm)に、活性陽極コーティングを施したものを用いた。陰極は、ファインメッシュ(厚さ約0.2mm×SW2.0mm×LW1.0mm)に、貴金属系の活性陰極コーティングを施してあるものを使用した。電解槽1の隔膜4として、親水処理を施した、PPS(ポリフェニレンサルファイド)製の不織布に高分子ポリマー含浸させた、厚みが250μmのフィルム状の隔膜を使用し、これを両極間に挟み、ゼロギャップの状態で組み立てた。
[0067]
 袋状隔膜体32として、下記の3種の隔膜材料からなる、上面が開口し、底面が閉じられている円筒状のものをそれぞれ用いた。具体的には、PSF(ポリサルフォン)とZrO からなるPSFをベースとするZIRFON PERL UTP 500(商品名、AGFA社製、膜厚500μm)で作製した袋状隔膜体、厚みが500μmの、前記した電解槽を隔離するための隔膜4と同様の材料で作製した、PPS不織布に高分子ポリマーを含浸した袋状隔膜体、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の多孔質膜であるポアフロンFP-500(商品名、住友電工社製、膜厚500μm)を用いた袋状隔膜体、をそれぞれ使用した。上記袋状隔膜体の形状は、いずれも、縦:50cm、径:20cm、表面積:3454cm :内容積:15.7Lの、上面が開口し、底面が閉じられている円筒状のものを使用した。
[0068]
 本実施例の電解液の循環方法では、図1に示したように、アルカリ水電解槽1の下部に設置してある電解液循環タンク5(電解液容量32L)から、循環ポンプ8で共通の電解液を陽極室3及び陰極室2に、流量0.5L/分~2.0L/分で電解液供給ノズルより供給した。電解槽1の上部のノズルから排出されるそれぞれの気液流体は、気液分離器10及び17を介し、液体は、いずれも電解液循環タンク5に戻され、ガス体はそれぞれ系外に放出される。運転条件としては、40A/dm 、電解液:30質量%KOH、電解温度:75~85℃、大気圧運転、セル系内の差圧力は、陽極室、陰極室それぞれから排出される酸素ガス並びに水素ガスを水封することで所定の条件を定めている。運転時における隔膜4の振動を防止するために、陽極室、陰極室間の差圧は50~100mmH Oに保持した。また、本実施例では、水素純度を高めることを目的とするため、陰極加圧の状態を維持した。
[0069]
 運転は、電気分解で水が分解した相当量の純水を連続的に電解液循環タンク5に供給しながら行った。夜間の運転は行わず試験を実施した。再現性のあるデータを取得するために、5日間毎日6時間の運転稼働をする形で、毎朝、電解液を電解槽1に電解液循環タンク5から供給し、運転を開始し、夜間は運転を止め、電解液を電解槽1から排出し、電解液循環タンク5に回収する形の間欠繰り返し運転を行った。斯かる作動でも、初期に用意したアルカリ水溶液(ここでは苛性カリKOH)が大きく消耗することはなく、所望の濃度の運転はでき、電解で分解した水を系内に添加することで、連続運転が可能であった。また、排出される水素ガスと共に同伴されるアルカリミスト量は、5日間の運転では大きくなかった。尚、電解液として使用するアルカリ水溶液は、苛性ソーダNaOHを用いても全く同じことであり、本発明は、本例で使用した苛性カリKOHに限定するものではない。
[0070]
 循環タンク内に設置した、上記したそれぞれの材料からなる袋状隔膜体(メンブレンバック)32に、電解液及び気液混合電解液を供給した。その結果、まず、電解液の自重で電解液循環タンク5内に電解液を透過させることが可能であることが確認できた。また、当該袋状隔膜体32に、ガスバブルが共存する電解液を透過させることで、電解プロセスから排出される(製品としての水素ガス)水素は、いずれの場合も高い純度のものになることが確認できた。さらに、袋状隔膜体(メンブレンバック)の材料によって、電解生成ガスの純度に違いがあることがわかり、電解液や電解条件を考慮して適切な隔膜を選択することで、より高い純度の製品を得ることが可能になることが確認できた。詳細については後述する。
[0071]
<比較例1>
 図1のアルカリ水電解槽において、電解槽の陰極室と陽極室とを隔離する隔膜に、実施例1で袋状隔膜体の形成材料に使用した3種の隔膜材料をそれぞれに用い、いずれの場合も、電解液循環タンク5内に袋状隔膜体32を設置しないこと以外は、実施例1と同様の装置及び実施例1と同じ電解条件で、電解を行った。
[0072]
<試験結果>
 実施例1及び比較例1で行った電解プロセスから出てきた陰極側電解生成ガスである水素ガス及び酸素ガスの純度を、表1及び表2にそれぞれ示した。表中に示した純度は、5日間行った間欠運転試験における、毎日6時間の運転稼働後に得られた各電解生成ガスの純度における、最低値と最高値の範囲で示した。
[0073]


[0074]


[0075]
 表1及び表2の結果から、いずれの隔膜材料を用いた場合も、電解液循環タンク5内に袋状隔膜体32を設置しない構成の比較例と比べると、実施例では電解生成ガスの純度を向上させることができたことを確認した。その理由は、電解液循環タンク5内に設けた袋状隔膜体32の内部に、電解液中に混在していたバブル径の大きな共存ガスバブルが残留し、電解液循環タンク5から連続して電解槽1内に供給される電解液中から共存ガスバブルが除去できたためと考えられる。即ち、上記の結果、バブル径の大きな共存ガスバブルが電解槽1に循環されなくなり、再電解時に電極で発生するガスで電解液が激しく撹拌されても、共存ガスバブルが少ないため、その発生ガスと共に電解液の溶存ガスが液相から気相に移ることが低減され、その結果、製品ガスの純度、品質を下げることがなくなり、電解生成ガスの純度を向上させることができたと考えられる。
[0076]
 表1に示した、電解プロセスから出てくる陰極側電解生成ガスである水素ガス及び酸素ガスの純度の結果から、袋状隔膜体(メンブレンバック)32の材料として、PSFをベースとする隔膜、或いは、PPS不織布に高分子ポリマーを含浸させた隔膜を選択することで、安定して99.94%以上の高い純度の電解生成ガスを得ることが達成できることが確認できた。特に、陰極側電解生成ガスである水素ガスについては、99.96%を超える高純度の製品を得ることができた。一方、表2の比較例に示したように、電解液を循環するときに、袋状隔膜体(メンブレンバック)を使用しない場合には、陰極側電解生成ガスである水素ガス濃度を、99.95%以上の純度を有するものにすることはできないため、この場合は、別途、精製処理が必要となる。
[0077]
 また、表1及び表2に示したように、陽極側電解生成ガスである酸素ガスについても、循環する電解液を、電解液循環タンク5内に設けた袋状隔膜体(メンブレンバック)を透過させることにより、電解槽1内に循環される電解液中からバブル径の大きな不純物ガス(共存ガスバブル)が除去されるため、実施例では、99.94%以上の純度を有する精製された陽極側電解生成ガスである酸素ガスを得ることができることを確認した。一方、電解液を循環するときに、袋状隔膜体(メンブレンバック)を使用しない従来の方法の場合は、表2に示したように、陽極側電解生成ガスである酸素ガスとして、濃度が99.92%を超える純度を有する酸素ガスを得ることできなかった。
[0078]
 以上は、アルカリ水電解槽を使用した場合の電解システムについて説明したが、食塩電解槽又はその他のハロゲン化アルカリ電解槽を使用した場合においても、上記アルカリ水電解槽を使用した場合と同様な結果が得られた。

産業上の利用可能性

[0079]
 本発明によれば、循環使用される電解液に共存するガスバブル(気泡)を、ガスバブルより小さな細孔径を持つ、極めて広い透過面積を有し、効果的なフィルター機能を有する隔膜材料で袋状隔膜体(メンブレンバック)を形成し、これを電解液循環タンク内に設置するという極めて簡便な手段により、袋状隔膜体内にバブル径の大きな共存ガスバブルを残留させて除去することができ、その結果、電解槽に循環する電解液中に共存するガスバブルの量を少なくすることができる。しかも、上記手段によれば、バブル径の大きなガスバブルを優先的に除去できるため、電解液中に共存する共存ガスバブルによって再電解時に、電極で発生するガスが激しく撹拌され、その発生ガスと共に電解液の溶存ガスが液相から気相に移ることが防止されるので、製品ガスの純度、品質を下げることがなくなり、電解生成ガスの純度を向上させることができ、その後に、別途、ガスの精製工程を設ける必要がなくなる。
[0080]
 従って、本発明によれば、電解液を電解液循環タンクにより循環しながら連続的に電解処理し、電解生成ガスを回収することで電解生成ガスを得る場合に、従来、電解生成ガスの精製のために用いていた金属触媒を用いた反応塔、その他の装置、工程などの特別な駆動機を設けることなく、陰極側電解生成ガスである水素ガスの純度を99.9%以上、陽極側電解生成ガスである酸素ガスの純度を相当程度に向上することができる。また、本発明によれば、電解生成ガスの精製のために、如何なる付帯設備や工程も設ける必要がないため、設備面積や容積を削減することができ、また、これらに由来する、振動、騒音、長期運転時の機械的損傷がなく、長期にわたって安定して稼働することが可能となり、装置のメンテナンス費が大幅に低減されるので、その実用価値は極めて高い。

符号の説明

[0081]
1:電解槽
2:陰極室
3:陽極室
4:隔膜/イオン交換膜
5:共通電解液循環タンク
11:陰極側電解液循環ライン
14:陰極側電解液供給ライン
15:陽極側電解液供給ライン
16:陽極側気液混合流体排出ライン
17:陽極側気液分離手段
18:陽極側電解液循環ライン
27:陽極側電解生成ガス排出ライン
29:陽極側電解生成ガス排出ライン
30:開口
31:全底面
32:袋状隔膜体
33:全側面
101:電解槽
102:陰極室
103:陽極室
104:隔膜/イオン交換膜
105a:陰極側電解液循環タンク
109:陰極側気液混合流体排出ライン
110:陰極側気液分離手段
111:陰極側電解液循環ライン
112:陰極側電解生成ガス排出ライン
114:陰極側電解液供給ライン
127:陽極側電解生成ガス排出ライン
129:陽極側電解生成ガス排出ライン
130a:開口
131a:全底面
132a:袋状隔膜体(メンブレンバック)
133a:全側面
131:陰極側電解生成ガス排出ライン

請求の範囲

[請求項1]
 陰極及び陽極を有する電解槽内に供給した電解液を電解し、電解された電解液を電解槽外に設けた電解液循環タンクを介して循環させながら電解を繰り返す工程で、該電解生成ガスのガスバブルが共存している電解液を精製しながら電解することで、前記電解槽から発生する電解生成ガスを精製する電解生成ガスの精製方法であって、
 前記電解液循環タンクの内部に、前記電解生成ガス及び前記電解液と共存しているバブル径の大きなガスバブルを透過させずに残留させる構成の多孔質隔膜材質からなる、上端に開口を有し、全側面及び全底面が閉じられた形状の、前記全側面及び前記全底面に広範な透過面積を有する袋状隔膜体を、前記電解液循環タンクの内面との間に間隔を空けて設置し、
 前記電解生成ガスのガスバブルが共存している電解液を、前記袋状隔膜体の開口より前記袋状隔膜体の内部に供給し、
 前記袋状隔膜体の内部に供給した前記電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記電解液循環タンク内へ、前記全側面及び前記全底面より、前記電解液及び前記電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブルを透過させ、前記袋状隔膜体の内部に、前記電解生成ガス及び前記バルブ径の大きなガスバブルを残留させて、
 共存しているガスバブルを少なくした前記電解液を、前記電解液循環タンクより前記電解槽に連続的に循環しながら電解を繰り返すことで、前記電解槽から発生する電解生成ガスを精製することを特徴とする電解生成ガスの精製方法。
[請求項2]
 前記電解槽として、隔膜又はイオン交換膜により隔離された陰極室及び陽極室を有し、前記陰極室及び前記陽極室内にそれぞれ陰極及び陽極を有するアルカリ水電解槽を用い、該電解槽の前記陰極室及び前記陽極室内に、苛性アルカリを含有する共通の組成の電解液を供給するとともに、前記電解液循環タンクを、陰極側電解液と陽極側電解液に共通の共通電解液循環タンクとして使用し、前記陰極室内で陰極側電解生成ガスを生成し、前記陽極室内で陽極側電解生成ガスを生成し、
 前記陰極側電解生成ガス、前記陰極側電解液、及び前記陰極側電解液と共存しているガスバブル並びに前記陽極側電解生成ガス、前記陽極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているガスバブルを、前記袋状隔膜体の開口より内部に供給し、
 前記袋状隔膜体の内部に供給した前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記共通電解液循環タンク内へ、前記袋状隔膜体の前記全側面及び前記全底面より、前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液並びに前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブルを透過させ、前記袋状隔膜体の内部に、前記陰極側電解生成ガス、前記陽極側電解生成ガス、及び前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているバルブ径の大きなガスバブルを残留させて、
 前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているガスバブルを少なくした共通の組成の電解液を、前記共通電解液循環タンクより前記電解槽に連続的に循環しながら電解を繰り返すことで、
 前記陰極側電解生成ガスである水素ガス又は該水素ガスと前記陽極側電解生成ガスである前記酸素ガスとを精製することを特徴とする請求項1に記載の電解生成ガスの精製方法。
[請求項3]
陰極及び陽極を有する電解槽内に供給した電解液を電解し、電解された電解液を電解液循環タンクにより循環しながら連続的に電解処理し、電解生成ガスを回収することで精製された電解生成ガスを得るための電解装置であって、
 前記電解槽内に供給された電解液と、
 前記電解槽内の前記電解液を循環するための電解液循環タンクと、
 前記電解液循環タンクの内部に、前記電解液循環タンクの内面との間に間隔を空けて設置した袋状隔膜体とを有してなり、
 前記袋状隔膜体が、前記電解液及び前記電解液と共存しているバブル径の大きなガスバブルを透過させずに残留させる構成の多孔質隔膜材質からなる、上端に開口を有し、全側面及び全底面が閉じられた形状の、前記全側面及び前記全底面に広範な透過面積を有する袋状隔膜体よりなり、
 前記電解生成ガスのガスバブルが共存している電解液を、前記袋状隔膜体の開口より前記袋状隔膜体の内部に供給し、
 前記袋状隔膜体の内部に供給した前記電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記電解液循環タンク内へ、前記袋状隔膜体の前記全側面及び前記全底面より、前記電解液及び前記電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブルを透過させ、前記袋状隔膜体の内部に、前記電解生成ガス及び電解液と共存しているバルブ径の大きなガスバブルを残留させて、
 共存しているガスバブルを少なくした前記電解液を、前記電解液循環タンクより前記電解槽に連続的に循環しながら電解を繰り返すことで、前記電解槽から発生する電解生成ガスを精製できるように構成されていることを特徴とする電解装置。
[請求項4]
 前記電解槽が、隔膜又はイオン交換膜により隔離された陰極室及び陽極室を有し、前記陰極室及び前記陽極室内にそれぞれ陰極及び陽極を有してなり、
 該電解槽内に供給された陰極側電解液と陽極側電解液が、共通の組成の苛性アルカリ水溶液よりなり、
 前記電解液循環タンクが、前記陰極側電解液と前記陽極側電解液を混合し、共通の組成の苛性アルカリ水溶液として、前記陰極室及び前記陽極室にそれぞれ供給するための、前記陰極側電解液と前記陽極側電解液に共通の共通電解液循環タンクであり、
 前記陰極室にて生成された陰極側電解生成ガス、前記陰極側電解液及び前記陰極側電解液と共存しているガスバブル並びに前記陽極室にて生成された陽極側電解生成ガス、陽極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているガスバブルを、前記袋状隔膜体の開口より内部に供給し、
 前記袋状隔膜体の内部に供給した前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液の自重による差圧によって、前記袋状隔膜体から前記共通電解液循環タンク内へ、前記袋状隔膜体の前記全側面及び前記全底面より、前記陰極側電解液、前記陽極側電解液、前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているバブル径の小さなガスバブルを透過させ、前記袋状隔膜体の内部に、前記陰極側電解生成ガス、前記陽極側電解生成ガス、及び前記陰極側電解液及び前記陽極側電解液と共存しているバルブ径の大きなガスバブルを残留させて、
 前記陽極側電解液及び前記陰極側電解液と共存しているガスバブルを少なくした共通の組成の電解液を、前記共通電解液循環タンクより前記電解槽に連続的に循環しながら電解を繰り返すことで、
 前記陰極側電解生成ガスである水素ガス又は該水素ガスと前記陽極側電解生成ガスである酸素ガスとを精製することを特徴とする請求項3に記載の電解装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]