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1. WO2020196426 - ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料の製造法

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明 細 書

発明の名称 ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料の製造法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007   0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012  

発明の効果

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041  

実施例

0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

明 細 書

発明の名称 : ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料の製造法

技術分野

[0001]
 本発明はホエー蛋白質を含む中性液体蛋白質飲料の製造法に関する。より詳しくは、本発明は、中性付近のpHを有し、かつ高蛋白質含量である、ホエー蛋白質を含む中性液体蛋白質飲料の製造法に関する。

背景技術

[0002]
 日本の内閣府発表の「平成23年版 高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者人口は、過去最高の2,958万人となること、5人に1人が高齢者となることが記載されており、超高齢社会(全人口中65歳以上の高齢者の占める割合が、21%を超えた社会)が目前に迫っている。このような中、日本の厚生労働省が推進する「健康日本21」において挙げられている目標が、健康寿命の延伸である。ここで言われる「健康寿命」とは、生涯の間で病気や障害がなく過ごすことができた期間を指し、健康寿命(平均自立期間)=平均寿命-非自立期間(健康を損ない自立して生活できない期間)で表される。
[0003]
 健康寿命を延伸させるためには、必要量の栄養成分の摂取が欠かせない。特に蛋白質は、生命の維持に不可欠な物質であり、組織を構築すると共に、様々な機能を果たしている。厚生労働省が示す「日本人の栄養摂取基準」(2010年版)によると、蛋白質の推奨摂取量は、70歳以上の高齢者においても一般成人と同じ1日当たり60gである。しかし、一般に高齢者は、日常の生活活動が不活発である。そのため、高齢者の食欲は低下し、該食事摂取量は少なくなる。したがって、高齢者の場合、少量の摂取量で効率良く蛋白質を摂取することが必要とされる。
[0004]
 このような状況下、食品メーカーは、蛋白質の補給を目的とした加工食品の開発に注力している。該加工食品のジャンルの一つとして、中性付近のpHを有する液体蛋白質飲料(以下、「中性液体蛋白質飲料」と略する。)が存在する。しかしながら、中性液体蛋白質飲料は、pHが4未満の酸性の液体飲料に比べて、微生物学上腐敗しやすい性質を有する。そのため、該飲料を密閉容器にパックして流通させる場合には、微生物の管理のため、該飲料の製造は、酸性の液体飲料よりも厳しい加熱条件で、レトルト殺菌などの十分な加熱殺菌工程を経なければならない。
[0005]
 ホエー蛋白質は、乳中に存在する蛋白質であり、主にチーズやカゼインを製造する際の副生成物としてよく知られている。ホエー蛋白質は良質な蛋白質成分であり、ミネラル分も豊富なことから、近年は様々な食品に使用されている。また、食品以外にもシャンプー、リンス及びクリーム等の化粧品等にも使用されている。
[0006]
 このようにホエー蛋白質は幅広い用途に利用されている一方で、加熱安定性が低く、70~90℃の加熱で速やかに変性してしまうことが知られている。
 上述の通り、中性液体蛋白質飲料にホエー蛋白質を添加する場合、厳しい加熱条件で加熱殺菌を行う必要がある。この加熱殺菌の温度条件は、ホエー蛋白質の変性温度領域を大きく超える。そのため、中性液体蛋白質飲料中でホエー蛋白質が変性し、製造工程中や製品化後において該飲料の粘度上昇、ゲル化、凝集等の現象が生じる。このような現象は、該飲料製品の品質に好ましくない影響を及ぼす。そのため、該飲料製品中にホエー蛋白質は添加しないようにするか、その添加量を品質に悪影響を及ぼさないレベルに制限する必要があった。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 米国特許第3873751号公報
特許文献2 : 米国特許第4378376号公報
[0008]
 特許文献1~3などに見られるよう、ホエー蛋白質と大豆蛋白質を含む複合素材化技術がある。これらはホエーと植物性蛋白質の混合物を調製し、これを特定の均質化工程や加熱処理工程、あるいは酵素処理を行い、乾燥することにより、粉末状の複合蛋白質素材を得る技術を開示している。特許文献1では、加熱処理条件として、285~320°F(約141~160℃)で約7秒間を教示している。特許文献2では、ブロメラインというプロテアーゼで酵素処理することを教示している。
 そこで、発明者らは上記粉末状複合蛋白質素材を調製し、評価を実施したが、比較的多くの蛋白質を含む中性液体蛋白質飲料において、長期に渡って沈殿が生じ難く蛋白質の分散安定性を保証することは何れの技術も困難であり、飲料適性に対し十分な機能を有していないと判断した。

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 上述の通り、中性液体飲料は、酸性液体飲料よりも強度の加熱殺菌処理が必須となる。該加熱処理は、蛋白質の液中での分散安定性を悪化させる要因となるため、中性液体飲料において、比較的多くの蛋白質を配合することは、技術的に困難である。
 様々な蛋白質の種類のうち、ホエー蛋白質は特に熱安定性が悪く、加熱処理を行うと凝集、沈殿、ゲル化等が発生する。さらに、乾燥した粉末の状態にある蛋白質素材は、飲料の製造時に再度水和させる必要があり、これを高濃度に添加して分散安定化することは、例えば液体の蛋白質素材を添加するよりも困難である。
[0010]
 以上の状況から、ホエー蛋白質を比較的高濃度に含み、製造時や長期保管中にホエー蛋白質の凝集、沈澱、ゲル化等の現象が生じにくく、ホエー蛋白質の液中での分散が安定に維持される中性液体蛋白質飲料の提供が、依然として必要とされている。本発明の目的は、かかる課題の技術的解決思想を提供することである。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、新たな特性を有するホエー蛋白質を含む粉末状複合蛋白質素材を見出し、これを添加することにより、低粘性で飲み口に優れ、かつ、加熱殺菌耐性にも優れた中性液体蛋白質飲料を製造できることができる知見を得、本発明を完成するに到った。
[0012]
 すなわち本発明は、以下のような構成を包含する。
(1)下記ア)~オ)の要件を満たす粉末状複合蛋白質素材を添加することを特徴とする、蛋白質含量が1重量%以上であり、pH6~8である、ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料の製造法、
  ア)ホエー蛋白質及び植物性蛋白質が複合化されていること、
  イ)総蛋白質に対するホエー蛋白質の含量が20~98%、
  ウ)0.22M トリクロロ酢酸可溶率が5~25%、
  エ)該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後の遠心沈殿率が5%以下、
  オ)該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後のメジアン径が1.0μm以下、
(2)ホエー蛋白質の供給源が、ホエー蛋白質濃縮物、ホエー蛋白質単離物及びホエーパウダーから選ばれる1種類以上である、前記(1)記載の飲料の製造法、
(3)粉末状植物性蛋白質素材が大豆、エンドウ及び緑豆から選ばれる1種類以上の由来である、前記(1)又は(2)記載の飲料の製造法、
(4)pHが6.6~7.5である、前記(1)~(3)の何れか1項記載の飲料の製造法、
(5)該粉末状複合蛋白質素材の固形分中の蛋白質含量が、70重量%以上である、前記(1)~(4)の何れか1項記載の飲料の製造法、
(6)該粉末状複合蛋白質素材の総蛋白質に対するホエー蛋白質の含量が、45~98%である、前記(1)~(5)の何れか1項記載の飲料の製造法、
(7)該粉末状複合蛋白質素材の総蛋白質に対するホエー蛋白質の含量が、20~40%である、前記(1)~(5)の何れか1項記載の飲料の製造法、
(8)該粉末状複合蛋白質素材の0.22M トリクロロ酢酸可溶率が、16~21%である、前記(1)~(7)の何れか1項記載の飲料の製造法、
(9)該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後の遠心沈殿率が、2%以下である、前記(1)~(8)の何れか1項記載の飲料の製造法、
(10)該粉末状複合蛋白質素材の該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後のメジアン径が0.15μm以下である、前記(1)~(9)の何れか1項記載の飲料の製造法、
(11)ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料の製造において、ホエー蛋白質を含有する蛋白質素材として、前記(1)記載のア)~オ)の要件を満たす粉末状複合蛋白質素材を、添加することを特徴とする、該飲料の保存安定性の向上方法。

発明の効果

[0013]
 本発明によれば、ホエー蛋白質が比較的高濃度に添加され、強度な加熱殺菌処理が必要とされる場合であっても、長期の保存期間に渡って沈殿、凝集やゲル化などの現象が生じにくく、ホエー蛋白質の液中での分散が安定に維持される中性液体蛋白質飲料を得ることができる。しかも、本発明によれば低粘度で飲み口に優れた品質の飲料を得ることができる。

発明を実施するための形態

[0014]
 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(中性液体蛋白質飲料)
 本発明の対象である中性液体蛋白質飲料(以下、「本飲料」と称する。)は、液体の状態で製品化され、消費者に飲用されるものである。最近ではRTD飲料(Ready-To-Drink)と呼ばれる飲料や、濃厚流動食が、概念的に包含される。
[0015]
 典型的な一つの流通形態として、本飲料は、密封容器に無菌的に充填及び密封されて、そのまま密封容器詰め飲料として消費者に販売される。また別の流通形態として、飲食店のサーバーに入れられ、消費者の要望に応じてカップ等に注入されて提供される。このため、本飲料は長期間液状で保存されても不溶化した蛋白質の沈殿が生じにくいことが厳しく要求される。本発明の効果は、液体飲料の形態において特に奏されるものであり、より長期間保管される密封容器詰め飲料の形態において最も顕著に奏されるものである。
[0016]
 また本飲料のpHは、pH6~8の中性付近のpHを示す。特に、本飲料のpHは、pH6~7.5が好ましく、pH6.2~7.5がより好ましく、pH6.4~7.5がより好ましく、pH6.6~7.5がより好ましく、pH6.8~7.5がさらに好ましい。この範囲中で何れのpH値を選択するかは、当業者が製品の風味等の品質を考慮して適宜設定できる。
 本明細書において「中性」という用語は、pH7のみを限定して指すに留まらず、広義の意味で上述した中性付近のpH範囲を指す。
[0017]
(蛋白質)
 本飲料は、栄養成分として少なくとも蛋白質を含有する。
 本飲料中における蛋白質含量は、該飲料中1重量%以上である。さらに該蛋白質含量は、高い方が本発明の効果を有効に発揮させることができ好ましく、1.5重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、2.5重量%以上がさらに好ましい。また、該蛋白質含量の上限は20重量%以下、15重量%以下、あるいは10重量%以下であることができる。
[0018]
(ホエー蛋白質)
 本飲料は、蛋白質の種類として、ホエー蛋白質を含有することが必須である。ホエー蛋白質は、本飲料の製造工程中の強加熱により変性し、本飲料中に該蛋白質の凝集、沈殿やゲル化等の現象が生じやすい。そしてかかる現象の程度は、製品として長期保存されるほど多くなる傾向にあり、保存中の沈殿、分離は商品価値を大きく損ねてしまう。しかしながら、本発明ではホエー蛋白質が本飲料中に高度に含有していても、このような問題が解決されている。本明細書において定義されるホエー蛋白質の起源となる動物種は、ウシに限定されず、ヤギ、ヒツジ、ウマなどの全ての哺乳類動物種に関する。
[0019]
(植物性蛋白質)
 本飲料は、蛋白質の種類として、ホエー蛋白質と共に植物性蛋白質を含有することが必須である。
 植物性蛋白質の種類としては、大豆、エンドウ、緑豆、ヒヨコ豆、ササゲ等の豆類やキャノーラ種子、小麦、米、麻、クルミ等に由来する蛋白質が挙げられ、後述する粉末状植物性蛋白質素材に必要な要件を満たす限り、その起源は特に限定されない。ある実施形態では、植物性蛋白質の種類は、大豆、エンドウ及び緑豆から選択される1種以上に由来する蛋白質を選択できる。またある実施形態では、植物性蛋白質の種類は、流通量が豊富で原料の確保がしやすい大豆に由来する蛋白質を選択できる。植物性蛋白質は、ホエー蛋白質ほど加熱安定性が低くはないが、やはりそれ単独では、通常は中性付近のpHにおける強加熱処理により分散安定化が比較的困難である。しかし、本発明のホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料においては、意外にもホエー蛋白質との特殊な態様の組合せが相乗効果を奏するためか、該飲料の強加熱処理後の分散安定性に重要な効果を発揮する。
[0020]
(粉末状複合蛋白質素材)
 本飲料中の蛋白質は、上記のホエー蛋白質及び植物性蛋白質を含む蛋白質素材が本飲料中に添加される結果、その全部又は一部が含有することになる。そして、本飲料の製造法において、必須かつ重要な1つの該蛋白質素材が、下記に詳述する特定の「粉末状複合蛋白質素材」である。ここで、本明細書において使用される「粉末状複合蛋白質素材」の用語は、粉末状の製品形態を有する、ホエー蛋白質及び植物性蛋白質を主体とする食品素材を指す。
 該粉末状複合蛋白質素材は、固形分中の蛋白質含量が少なくとも40重量%以上、好ましくは50重量%以上、60重量%以上又は70重量%以上であるのが適当である。
 一方、粉末状複合蛋白質素材は、液状飲料へ使用されることから、保存中の不溶物の沈殿を防止するために不溶性食物繊維の含量はなるべく低い方が好ましく、乾物あたりでは2重量%以下であるのが好ましく、1重量%以下であるのがより好ましい。なお、不溶性食物繊維の含量は、「五訂日本食品標準成分表分析マニュアル」(科学技術庁資源調査会食品成分部会資料(平成9年))に従い、プロスキー変法により測定するものとする。
[0021]
(粉末状複合蛋白質の特性)
 本飲料に添加される粉末状複合蛋白質素材は、それ自体が少なくとも下記ア)~オ)の要件を満たす特性を有することが必須である。以下、これらの要件についてより具体的に説明する。
[0022]
ア)ホエー蛋白質及び植物性蛋白質の複合化
 本飲料に添加される粉末状複合蛋白質素材は、ホエー蛋白質及び植物性蛋白質を少なくとも含み、これらが複合化されていることが特徴である。
 本明細書において「複合化」という用語は、複数のものが合わさって一体となることを指す。そのため、「粉末状複合蛋白質素材」は、複数の蛋白質が合わさって一体となった粉末状の蛋白質素材を意味しており、通常は該素材の中で複数の種類の蛋白質が物理的に別々に分離できない状態にある。
[0023]
 該粉末状複合蛋白質素材に含まれる、ホエー蛋白質の供給源は、ホエー蛋白質単離物、ホエー蛋白質濃縮物、ホエーパウダー等のホエー蛋白質素材から選択され得る。好ましくは、ホエー蛋白質素材は脱塩され得る。蛋白質含量の観点で好ましいホエー蛋白質素材は、ホエー蛋白質単離物(WPI)又はホエー蛋白質濃縮物(WPC)である。また、これらのホエー蛋白質素材の原料は、チーズの製造における副産物として得られるスイートホエー、酸カゼインの製造における副産物として得られる酸ホエー、乳の精密ろ過によって得られる天然ホエー又はレンネットカゼインの製造において副産物として得られるレンネットホエー等から選択され得る。本飲料中のホエー蛋白質は、単一の供給源に由来してよく、又は任意の供給源の混合物に由来してもよい。
[0024]
 該粉末状複合蛋白質素材に含まれる、植物性蛋白質の供給源は、植物性蛋白質単離物、植物性蛋白質濃縮物、植物性蛋白質抽出物等の植物性蛋白質素材から選択され得る。典型的な例として、植物が大豆である場合、大豆原料として脱脂大豆フレークを用い、これを適量の水中に分散させて水抽出を行い、繊維質を主体とする不溶性画分を除去して得られる抽出大豆蛋白質(脱脂豆乳)が、大豆蛋白質素材に包含される。また、該抽出大豆蛋白質を塩酸等の酸によりpH4.5前後に調整し、蛋白質を等電点沈澱させて酸可溶性画分(ホエー)を除去し、酸不溶性画分(カード)を再度適量の水に分散させてカードスラリーを得、水酸化ナトリウム等のアルカリにより中和して中和スラリーを得、該中和スラリーから得られる分離大豆蛋白質も、大豆蛋白素材に包含される。
 これらの抽出大豆蛋白や分離大豆蛋白は、溶液の状態において高温加熱処理装置によって加熱殺菌され、スプレードライヤー等により噴霧乾燥され、粉末状大豆蛋白素材として最終的に製品化される。
 ただし、上記の製造法に限定されるものではなく、大豆蛋白質の純度が大豆原料から高められる方法であればよい。また脱脂大豆からエタノールや酸によりホエーを除去して得られる濃縮大豆蛋白も大豆蛋白質素材に含まれる。これらのうち、分離大豆蛋白質は、蛋白質含量が通常固形分中90重量%程度と高い点において、抽出大豆蛋白よりもよく利用されている。
[0025]
 一つの実施態様では、粉末状複合蛋白質素材は、上記のホエー蛋白質の供給源と植物性蛋白質の供給源とを用意し、これらを混合し、複合化することによって得られる。別の実施態様では、ホエー蛋白質素材を製造する工程に沿って、その中間物に植物性蛋白質素材を混合し、複合化することによって得られる。また別の実施態様では、植物性蛋白質素材を製造する工程に沿って、その中間物にホエー蛋白質素材を混合し、複合化することによって得られる。任意の実施態様において、粉末状複合化蛋白質素材は、ホエー蛋白質及び植物性蛋白質と共に、他の蛋白質の供給源が複合化されていてもよい。他の蛋白質の供給源は、乳由来の蛋白質ではカゼインや濃縮乳蛋白(MPC)等であり得る。
[0026]
イ)ホエー蛋白質含量
 本飲料に添加される粉末状複合蛋白質素材は、総蛋白質含量に対するホエー蛋白質の含量が20~98重量%であることを特徴とする。ある実施態様では、該ホエー蛋白質の含量は、25~98重量%、30~98重量%、40~98重量%又は45~98重量%の範囲が好ましい場合がある。該ホエー蛋白質の含量が高く、相対的に植物性蛋白質が低い割合で含まれることは、本飲料によって多くのホエー蛋白質を摂取することを可能にし、また、本飲料の粘度を低下させることに繋がる。
 また、ある実施態様では、該ホエー蛋白質の含量は、20~70重量%、20~60重量%、20~55重量%、20~50重量%又は20~40重量%の範囲が好ましい場合がある。該ホエー蛋白質の含量が低く、相対的に植物性蛋白質の含量が高いことは、本飲料の熱安定性を向上させることに繋がる。
[0027]
ウ)0.22M トリクロロ酢酸可溶率
 本飲料で用いられる粉末状複合蛋白質素材は、一定のレベルまで低分子化されていることが重要である。蛋白質の低分子化率は、0.22M トリクロロ酢酸可溶率(以下、「TCA可溶率」と称する)を指標として表わされる。該数値は、粉末状複合蛋白質素材を蛋白質含量として1.0重量%となるように水に分散させ十分撹拌した分散液について、全蛋白質に対する0.22M トリクロロ酢酸に溶解する蛋白質の割合を、ケルダール法により測定したものである。蛋白質の低分子化が進行するにつれて、TCA可溶率の値は上昇する。
 本飲料に用いられる複合蛋白質素材は、このTCA可溶率が5~25%の範囲にあることが重要である。ある実施態様では、TCA可溶率は下限が7%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、14%以上、16%以上又は17%以上が好ましい。またある実施態様では、TCA可溶率は上限が24%以下、23%以下、22%以下又は21%以下が好ましい。TCA可溶率をかかる範囲に調整することにより、該粉末状複合蛋白質素材は好ましい低粘度特性を示す。具体的には、該粉末状複合蛋白質素材は、10重量%溶液としたときに、25℃において25mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下、より好ましくは15mPa・s以下、さらに好ましくは12mPa・s以下、最も好ましくは10mPa・s以下の粘度を示す。
[0028]
 該素材のTCA可溶率が低すぎる場合、すなわち、該素材の低分子化度が低い場合、本飲料として好ましい粘度に調製することが困難であり、飲み口の点で劣る品質になりやすい。また、粘度が高くなると本飲料中の蛋白質含量も所望の濃度にまで高めにくくなる。
 一方、該素材のTCA可溶率が高すぎる場合、すなわち該素材の低分子化がより進むにつれて、蛋白質の平均粒子径が大きくなる傾向となり、加熱処理後ないし保存中の沈殿、分離が生じやすくなる。また該素材は、低分子化が進むにつれて、低分子化したペプチドの苦味を感じやすくなる。市販の「ハイニュート (R)DC6」(不二製油(株)製)のような、いわゆる「大豆ペプチド」と呼ばれる製品は蛋白質がかなり高度に低分子化(分子中のアミノ酸の結合数が10個以下)されており、TCA可溶率は90%以上である。
[0029]
エ)強加熱後の遠心沈殿率(強加熱耐性)
 本飲料で用いられる粉末状複合蛋白質素材は、その5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後の遠心沈殿率が5%以下であることが重要である。この数値が低いほど、レトルト殺菌のような強度の加熱がされても加熱耐性を有していることを意味する。より好ましい態様では、該遠心沈殿率は、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.5%以下、又は2%以下である。
 具体的には、「強加熱後の遠心沈殿率」は、以下の通り測定される。
 粉末状複合蛋白質素材を蛋白質含量として5重量%となるようにホモミキサーを用いて溶解させる。その後、該溶液を高圧ホモゲナイザーを用いて15MPaで均質化し、強加熱用の5重量%水分散液を得る。その後、オートクレーブを用いて124℃で20分間加熱処理し、さらに24時間常温静置する。このようにして得られた加熱処理液を均一に撹拌後、そこから40gを遠沈管に分取し、10000×G、5分間遠心分離し、上清を静かに取り除いた後、沈殿のウェット重量(g)を計測する。
 ○遠心沈殿率(%)=(ウェット重量(g))/40(g)×100
[0030]
オ)強加熱後のメジアン径
 本飲料で用いられる粉末状複合蛋白質素材は、その5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後のメジアン径(平均粒子径)が1.0μm以下であることが重要である。この数値が低いほど、強度の加熱がされても加熱耐性を有していることを意味する。より好ましい態様では、該メジアン径は、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、0.3μm以下、0.25μm以下、0.2μm以下、0.15μm以下で又は0.1μm以下ある。
 具体的には、「強加熱後のメジアン径」は、以下の通り測定される。
 上述の「強加熱後の遠心沈殿率」の測定方法と同様にして、粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液を加熱処理した液を用いて、レーザー回折式粒子径分布測定装置にてメジアン径を湿式測定(屈折率:実数部/虚数部=1.60/0.10i)する。なお、当該装置は、例えば(株)島津製作所製の「SALD-2300」を用いることができるが、これと誤差の少ない測定ができる装置で代替することができる。
[0031]
 本飲料に添加される上記要件ア)~オ)を全て満たす粉末状複合蛋白質素材は、植物性蛋白質素材の製造メーカー、例えば不二製油株式会社等から購入する、又は製造メーカーに製造を依頼することによって、容易に入手することができる。
 ちなみに、不二製油株式会社では上記ア)~オ)の全特性を備える新たな粉末状複合蛋白質素材として、「プロリーナWS」シリーズ(仮称)を試験製造できている。したがって、当業者はこれを指定すれば容易に当該製品又は試験サンプルを入手することができる。
[0032]
(粉末状複合蛋白質素材の製造)
 以下に、本発明の要件ア)~オ)を全て満たす粉末状複合蛋白質素材を製造するための参考態様を以下に示す。ただし、本発明の技術的思想は要件ア)~オ)の要件を満たす粉末状複合蛋白質素材を中性液体蛋白質飲料に適用することを本質とするものであるから、粉末状複合蛋白質素材の製法が特定の蛋白質の種類や特定の製造態様に限定されないことは当然である。
 粉末状複合蛋白質素材を製造するには、下記のように従来の分離大豆蛋白を製造する工程をベースとすることができる。ただし、蛋白質を濃縮する方法は、一般的な酸沈殿による方法を採用できるし、膜ろ過による濃縮法や濃縮大豆蛋白から水抽出する方法なども採用できる。
 蛋白質を抽出するための大豆原料としては、脱脂大豆を使用するのが一般的だが、全脂大豆や部分脱脂大豆も使用できる。全脂大豆や部分脱脂大豆を使用した場合には、抽出工程後に高速遠心分離を行って上層に分離した油分を除去し、低油分化できる。
 次に大豆原料と水とを混合し、スラリー状態に分散させ、必要により撹拌しつつ蛋白質を抽出する。
 次に、該スラリーから不溶性食物繊維(オカラ)を遠心分離機やろ過等の分離手段により除去し、抽出大豆蛋白溶液(豆乳)を得る。
 次に、該抽出大豆蛋白溶液からオリゴ糖や酸可溶性蛋白質などの酸可溶性画分(ホエー)を除去し、大豆蛋白質の濃縮液を得る。典型的な手段としては酸沈殿法を用いることができ、該抽出大豆蛋白溶液のpHを塩酸やクエン酸等の酸により4~5の等電点付近に調整し、蛋白質を不溶化させ、沈殿させる。次に遠心分離やろ過等の分離手段により酸可溶性画分を除去し、酸不溶性画分である「カード」を回収して再度適量の水に分散させてカードスラリーを得る。なお、酸沈殿法以外の大豆蛋白質の濃縮手段としては、限外ろ過等が挙げられる。
 そして、得られたカードスラリーを最終的にpH7付近に調整した中和スラリーを得る。次に、任意の工程として、該中和スラリーをプロテアーゼ等の蛋白質加水分解酵素で反応させ、所望の加水分解度となるような反応条件(温度、時間)で酵素分解を行う。
 ここで、ホエー蛋白質素材は、好ましくはこの段階又はそれ以前の何れかの工程で大豆蛋白質の液と混合する。
 次いで、ホエー蛋白質と大豆蛋白質が混合された液を、高温加熱処理によって加熱殺菌を行った後、スプレードライヤー等で乾燥し、粉末状大豆蛋白素材を得る。該粉末状植物性蛋白質素材は、その水溶液がおおよそpH6.5~7.5のpHを有する。スプレードライヤーによる乾燥の方法としては、ディスク型のアトマイザー方式や1流体、2流体ノズルによるスプレー乾燥の何れも利用できる。
 ここで、本発明のア)~オ)の要件を全て満たす粉末状複合蛋白質素材を得るために、下記の付加工程を採用してよい。すなわち第一に、少なくとも1回の加熱処理を行い、最終的に2回以上の加熱処理を行って製品化される。この2回以上の加熱処理は、何れも直接蒸気吹込み式高温瞬間加熱処理が好ましい。該加熱処理は、高温高圧の水蒸気を直接大豆蛋白溶液に吹き込み、加熱保持した後、真空フラッシュパン内において急激に圧力開放させるUHT殺菌の方式である。この加熱処理条件は、100~170℃、好ましくは110~165℃の範囲で、加熱時間は0.5秒~5分間、好ましくは1秒~60秒間が適当である。この際、加熱処理の対象となる大豆蛋白質及びホエー蛋白質を含む液又はスラリーは、製造工程の各段階で調整されるpHに応じて3~12の範囲において加熱処理されるが、該加熱処理方式が採用される市販の加熱殺菌装置を用いることができ、VTIS殺菌装置(アルファラバル社製)やジェットクッカー装置等を用いることができる。
 上記の付加工程に加えてさらに一つの好ましい態様としては、抽出工程後のスラリーから不溶性食物繊維除去して抽出大豆蛋白溶液を得る工程において、不溶性食物繊維の混入がなるべく少なくなるように、長時間の遠心分離を行ったり、複数回の遠心分離を行ったりして不溶性食物繊維の含量が最終製品の粉末状大豆蛋白素材中に1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下となるように除去するのが好ましい。
[0033]
 なお、任意の実施形態において、本飲料中には上記の特定の粉末状複合蛋白質素材を添加する他に、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、他の蛋白質素材を併用することができる。例えば粉末状複合蛋白質素材と共に、カゼインや濃縮乳蛋白(MPC)などの各種乳蛋白質素材などを本飲料に添加することもできる。この場合、粉末状複合蛋白質素材と乳蛋白質素材の混合割合は、固形分換算で60:40~99:1が好ましく、70:30~99:1がより好ましく、80:20~99:1がさらに好ましく、90:10~99:1が最も好ましい。
[0034]
(飲料の長期保存安定性)
 本飲料は、長期保存中の沈澱量が低く、極めて蛋白質の分散安定性に優れたものである。そのような長期保存安定性の指標としては、本飲料自体の「遠心沈殿率」を用いることができる。該遠心沈殿率は、本飲料自体を遠心分離して発生する沈殿中の蛋白質量を、本飲料全液中の蛋白質量で除することにより求められる。
 具体的には、まず測定対象とする本飲料中の蛋白質含量(重量%)を測定する。次いで該飲料の一定量を遠沈管に分取し、遠心分離器で10000×G、5分間の条件にて遠心分離する。上澄みを廃棄した後の沈殿量(g)を測定し、これを分子とする。また分取したサンプル液量(g)を分母とし、その割合(重量%)を「遠心沈殿率」とする。これによって蛋白質の液中での長期の分散安定性を簡便に確認することができる。本飲料では遠心沈殿率は10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下となり得る。
[0035]
(飲料中の平均粒子径)
 本飲料は、均質化され微細化されているためか、中性で液状の条件下で長期に保存されても蛋白質の沈殿が生じにくく、食感のざらつきも感じにくいものである。本飲料中に分散された粒子の平均粒子径は少なくとも1.0μm以下にすることができる。
[0036]
(飲料の粘度)
 本飲料は、一つの実施態様において、中性のpHで低粘度であることができる。低粘度の飲料の場合、蛋白質の沈澱のリスクが高まるが、本飲料はそれにもかかわらず、長期保存中に蛋白質が沈殿しにくく分散安定性が高い品質を維持することができる。飲料の粘度は嗜好に合わせて増粘剤等の添加により適宜調整することができるため、特に限定されるものではないが、すっきりとした飲み口を嗜好する場合には、より低粘度であるのが好ましく、またその方が本発明の効果をより享受することができる。該粘度は20mPa・s以下とすることができ、好ましくは10mPa・s以下とすることができる。なお粘度は20℃の室温にてB型粘度計で測定するものとする。
[0037]
(飲料に配合される他の原料)
 本飲料は、任意の実施態様として、上述の原料の他に、当業者の製品設計に合わせて種々の原料を配合することができ、他の原料の種類や添加量は特に限定されるものではない。
 例えば、各種の果汁(柑橘類、ブドウ等)、糖類(ショ糖、果糖ブドウ糖液糖、デキストリン等)、甘味料(スクラロース、アスパルテーム等)、油脂(菜種油、大豆油、EPA、DHA等)、蛋白質の分散安定剤(カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース等)、乳化剤(レシチン、脂肪酸エステル等)、pH調整剤(クエン酸、フマル酸、酒石酸、リン酸等)、ミネラル(カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩等)、ビタミン(A,B,C,D,E,P,K等)、キレート剤(クエン酸ナトリウム、重合リン酸塩等)香料、生理機能素材(イソフラボン、サポニン、乳酸菌末、ペプチド類、グルコサミン等)等を適宜配合することができる。
 好ましい一つの実施態様では、本飲料の製造において、蛋白質の分散安定剤の添加をより少量とすることができる。例えば飲料中の該分散安定剤の添加量は、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.02重量%以下又は0.01重量%以下とすることができ、さらに好ましい実施態様では、0重量%である。
 本飲料の製造工程においてpH調整剤を添加し、pHを6~8に調整するタイミングは、粉末状複合蛋白質素材を添加した後が好ましい。
[0038]
(中性液体蛋白質飲料の製造)
 本飲料は、公知の方法により製造することができ、例えば原料の調合、加水、撹拌、溶解、pH調整、均質化(ホモゲナイザー等)、容器への充填、密封、加熱殺菌等の工程を経て製造することができる。これらの工程は任意に順序を変えることができ、また複数回行うことができる。特に、本飲料は中性であるため、加熱殺菌は中性飲料に関して微生物の管理上公的に定められた方法及び条件にて実施する。加熱殺菌装置としては、レトルト式殺菌機、プレート式殺菌機、チューブ式殺菌機等が一般に用いられる。加熱殺菌の条件は、例えば約120~150℃で1~60分とすることができる。
[0039]
(測定方法)
 本発明において、下記の項目は、以下の測定方法に従うものとする。
<蛋白質含量>
 蛋白質含量は、ケルダール法により総窒素量を測定し、これに窒素換算係数(6.25)を乗じて算出する。
[0040]
<10%溶液粘度>
 粉末状複合蛋白質素材を蛋白質含量として10重量%となるようにイオン交換水にホモミキサーを用いて溶解させる。静置脱泡後、その溶液の粘度をB型粘度計により測定する。
[0041]
<0.22M TCA可溶率>
 粉末状複合蛋白質素材の2重量%水溶液を調製し、これに0.44Mトリクロロ酢酸(TCA)を等量加えて、全蛋白質量中の可溶性蛋白質量の割合をケルダール法により測定する。
実施例
[0042]
 以下、実施例等により本発明の実施態様をより具体的に説明する。なお、例中の「%」と「部」は特記しない限り「重量%」と「重量部」を示す。また実施例等で使用した各種大豆蛋白質素材及び複合蛋白質素材は、全て不二製油(株)製の市販品又は試作品を、ホエー蛋白質素材はフォンテラ(株)製の市販品を用いた。
[0043]
■試験材料
 粉末状大豆蛋白質素材として、分離大豆蛋白に分類される市販品A,B,Cを用意した。これらは全て不二製油(株)に問合わせることにより入手できる。また、ホエー蛋白質素材として市販品D「WPC392」(フォンテラ(株)製)を用意した。
 次に、新たに粉末状複合蛋白質素材として製造した試作品E,Fと、試作品T1~T8「プロリーナWS」(ロットNo. 001~008)(仮称)を用意した。試作品E,Fは大豆蛋白質とホエー蛋白質を含む複合蛋白質素材であり、特許文献1~3の追試サンプルである。試作品T1~T8(T6を除く)は、大豆蛋白質とホエー蛋白質を含む複合蛋白質素材であり、試作品D,Eの改良品である。これらの試作品は、全て不二製油(株)に問合わせることにより入手できる。
 これらの粉末状蛋白質素材の固形分中の蛋白質含量、総蛋白質あたりのホエー蛋白質含量、0.22M TCA可溶率、10%溶液粘度(25℃)、強加熱後の遠心沈殿率、メジアン径(平均粒子径)について分析を行った。各分析値を下記表1に示した。
[0044]
(表1-1)


[0045]
(表1-2)


[0046]
(表1-3)


[0047]
(表1-4)


[0048]
 表1-1より、粉末状大豆蛋白質素材の市販品に関して、市販品A~Cは、蛋白質の種類が大豆蛋白質単独である。そのうち、市販品Aは低分子タイプではないものである。市販品B,Cは低分子タイプであり、TCA可溶率が5%以上である。
 市販品Aは、粘度が高く飲み口の点で劣る品質であるため、中性液体蛋白質飲料としての適性は不十分であった。また、市販品B,Cは、何れも遠心沈殿率が高く加熱安定性で劣り、中性液体蛋白質飲料としての適性が不十分であった。
 一方、市販品Dは、蛋白質の種類がホエー蛋白質単独であり、市販品B,Cと同様に遠心沈殿率が高く、中性液体蛋白質飲料としての適性は不十分であった。
[0049]
 表1-2より、特許文献1~3の追試として製造した、ホエー蛋白質と大豆蛋白質の粉末状複合蛋白質素材である試作品E,Fは、遠心沈殿率が約3%とまずまずであったが、メジアン径が1.4μm以上となり、共に中性液体蛋白質飲料としての適性は不十分であった。
[0050]
 一方、表1-2~表1-4より、試作品T1~T5及びT7~T8に示す粉末状複合蛋白質素材は、遠心沈殿率、メジアン径共に良好な結果であった。
 一般的に、蛋白質を低分子化する程、すなわちTCA可溶率が高くなる程、メジアン径は大きくなり、それに伴い遠心沈殿率も高くなる傾向にある。
 しかし、例えば、試作品T3は、TCA可溶率が試作品Fと同レベルであるが、驚くべきことに、遠心沈殿率1.9%、メジアン径0.10μmであり、中性液体蛋白質飲料としての適性が非常に良好であった。
 また、試作品T4も、10%溶液粘度が試作品Fと同レベルに低粘度化されているが、驚くべきことに、遠心沈殿率2.5%、メジアン径0.10μmであり、中性液体蛋白質飲料としての適性が非常に良好であった。
[0051]
 ホエー蛋白質の含有量を変化させた試作品T5~T8において、ホエー蛋白質を含まない試作品T6は、476mPa・sという、極めて高いレベルの10%溶液粘度を有し、中性液体蛋白質飲料としての適性は極めて不適であった。
 一方、試作品T6に比べてホエー蛋白質の含量を増やした試作品T7,T8は、試作品T6の7分の1以下の10%溶液粘度しか有さないことを確認し、特に試作品T8は40分の1以下の粘度しか有さなかった。なお、試作品T5~T8においては遠心沈殿率及びメジアン径は良好な結果であった。
[0052]
(考察)
 表1の通り、ホエー蛋白質に植物性蛋白質を混合して複合化した、粉末状複合蛋白質素材は、加熱耐性が低いホエー蛋白質を含むにも係わらず、強加熱後も遠心沈殿率が少なく、メジアン径も小さく、総合的に中性液体蛋白質飲料としての適性を有していた。
 一方、特許文献1~3の追試として製造した試作品E,Fは、強加熱後の遠心沈殿率は約3%と低かったが、メジアン径が大きく、中性液体蛋白質飲料としての適性は低かった。
 以上より、ホエー蛋白質を単独で用いるのではなく、ホエー蛋白質と植物性蛋白質を複合化して粉末状複合蛋白質素材とし、かつ特定の範囲のTCA可溶率に調整することが、ホエー蛋白質を含む中性液体蛋白質飲料の加熱安定性の向上に大きく寄与することを見出した。
[0053]
■実施例1(ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料の処方例)
 試験例で用意した、試作品T1の粉末状複合蛋白質素材を用いて、蛋白質濃度が5%の中性液体蛋白質飲料を下記の通り調製した。
 粉末状複合蛋白質素材48gとグラニュー糖56gを予め混合した後、これを常温水696gに添加し、ホモミキサーで均一に分散するまで撹拌した。その後、50%クエン酸溶液でpHを6.8に調整し、ホモゲナイザーを用いて15MPaにて均質化を施した。該均質化された分散液を容器に充填し、密封した。該密封された容器入りの分散液を、124℃、20分間の条件にてレトルト殺菌装置で加熱殺菌し、冷却して、ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料を得た。

請求の範囲

[請求項1]
下記ア)~オ)の要件を満たす粉末状複合蛋白質素材を添加することを特徴とする、蛋白質含量が1重量%以上であり、pH6~8である、ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料の製造法。
  ア)ホエー蛋白質及び植物性蛋白質が複合化されていること、
  イ)総蛋白質に対するホエー蛋白質の含量が20~98%、
  ウ)0.22M トリクロロ酢酸可溶率が5~25%、
  エ)該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後の遠心沈殿率が5%以下、
  オ)該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後のメジアン径が1.0μm以下。
[請求項2]
ホエー蛋白質の供給源が、ホエー蛋白質濃縮物、ホエー蛋白質単離物及びホエーパウダーから選ばれる1種類以上である、請求項1記載の飲料の製造法。
[請求項3]
粉末状植物性蛋白質素材が大豆、エンドウ及び緑豆から選ばれる1種類以上の由来である、請求項1又は2記載の飲料の製造法。
[請求項4]
pHが6.6~7.5である、請求項1又は2記載の飲料の製造法。
[請求項5]
pHが6.6~7.5である、請求項3記載の飲料の製造法。
[請求項6]
該粉末状複合蛋白質素材の固形分中の蛋白質含量が、70重量%以上である、請求項4記載の飲料の製造法。
[請求項7]
該粉末状複合蛋白質素材の固形分中の蛋白質含量が、70重量%以上である、請求項5記載の飲料の製造法。
[請求項8]
該粉末状複合蛋白質素材の総蛋白質に対するホエー蛋白質の含量が、45~98%である、請求項6記載の飲料の製造法。
[請求項9]
該粉末状複合蛋白質素材の総蛋白質に対するホエー蛋白質の含量が、45~98%である、請求項7記載の飲料の製造法。
[請求項10]
該粉末状複合蛋白質素材の総蛋白質に対するホエー蛋白質の含量が、20~40%である、請求項6記載の飲料の製造法。
[請求項11]
該粉末状複合蛋白質素材の総蛋白質に対するホエー蛋白質の含量が、20~40%である、請求項7記載の飲料の製造法。
[請求項12]
該粉末状複合蛋白質素材の0.22M トリクロロ酢酸可溶率が、16~21%である、請求項9記載の飲料の製造法。
[請求項13]
該粉末状複合蛋白質素材の0.22M トリクロロ酢酸可溶率が、16~21%である、請求項11記載の飲料の製造法。
[請求項14]
該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後の遠心沈殿率が、2%以下である、請求項12記載の飲料の製造法。
[請求項15]
該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後の遠心沈殿率が、2%以下である、請求項13記載の飲料の製造法。
[請求項16]
該粉末状複合蛋白質素材の該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後のメジアン径が0.15μm以下である、請求項14記載の飲料の製造法。
[請求項17]
該粉末状複合蛋白質素材の該粉末状複合蛋白質素材の5重量%水分散液(蛋白質換算)の強加熱後のメジアン径が0.15μm以下である、請求項15記載の飲料の製造法。
[請求項18]
ホエー蛋白質を含有する中性液体蛋白質飲料の製造において、ホエー蛋白質を含有する蛋白質素材として、請求項1記載のア)~オ)の要件を満たす粉末状複合蛋白質素材を、添加することを特徴とする、該飲料の保存安定性の向上方法。