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1. WO2020196075 - プレス成形体の製造方法

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明 細 書

発明の名称 プレス成形体の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019  

課題を解決するための手段

0020  

発明の効果

0021   0022  

図面の簡単な説明

0023  

発明を実施するための形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113  

実施例

0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144  

符号の説明

0145  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19  

明 細 書

発明の名称 : プレス成形体の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、プレス成形体の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 炭素繊維を強化材として使用した複合材料は、引張強度・引張弾性率が高く、線膨張係数が小さいので寸法安定性に優れ、さらに耐熱性、耐薬品性、耐疲労特性、耐摩耗性、電磁波シールド性、及びX線透過性にも優れることから、炭素繊維を強化材として使用した複合材料は、自動車、スポーツ・レジャー、航空・宇宙、一般産業用途などに幅広く適用されている。
[0003]
 特に、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む複合材料(熱可塑性炭素繊維複合材料)は、熱可塑性のマトリックス樹脂内に炭素繊維が存在しているため、機械物性に優れており、自動車等の構造部材への適用が注目されている。
[0004]
 例えば特許文献1には、不連続の強化繊維と樹脂を有してなる基材を積層して作製したプリフォームをプレス成形して面状成形体を得た後に、該面状成形体を射出成形の金型にインサートし、その後、熱可塑性樹脂を射出成形して、一体化する、一体化成形品の製造方法が記載されている。
[0005]
 特許文献2には、熱可塑性樹脂と繊維長3mm以上100mm未満の強化繊維を含む繊維強化樹脂基材を金型によって賦形しながら、熱可塑性樹脂と繊維長0.02mm以上3mm未満の強化繊維を含む樹脂組成物を射出する、繊維強化複合材料成形品の製造方法が記載されている。
[0006]
 また、特許文献3には、繊維強化樹脂を含むシート状の基材を元に3次元形状に成形された繊維強化樹脂成形品であって、相互に異なる3方向以上の板部が連なって構成される角部に、射出成形により肉厚部を成形した繊維強化樹脂成形品が記載されている。
[0007]
 特許文献4には、熱硬化性樹脂を含むシートモールディングコンパウンド(以下、SMCと呼ぶ)を成形するにあたって、SMCから成形するための材料を切り出した後、残った端材を同時にプレスして成形体を製造する発明が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2010-253938号公報
特許文献2 : 国際公開第2016/167349号
特許文献3 : 特開2018-122573号公報
特許文献4 : 米国特許出願公開第2019/0016016号明細書

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 しかしながら、特許文献1に記載された発明では、一体化成形品を製造するためには、プレス成形と射出成形の2回の成形工程を行う必要があり、生産性に劣る。
[0010]
 特許文献2及び3には、シート状の繊維強化樹脂基材のプレス加工中に、別の熱可塑性樹脂を射出して、成形体を製造する方法が記載されているが、後述する原料である、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む複合材料のロスの低減については検討されていない。
[0011]
 特許文献4には、熱硬化性樹脂を含んだSMCを用いたプレス成形が記載されているものの、熱可塑性樹脂を含む複合材料をパターンカットしてプレス成形する際に発生する問題については認識されていない。
[0012]
 すなわち、シート状の成形材料からプレス成形体(特に、複雑形状を有する成形体)を製造する場合、炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む複合材料から、プレス成形のための成形材料をパターンカットして切り出すことがある。このパターンカットでは、通常、端材(原料のうち、プレス成形に供するために切り出された成形材料以外の部分)が発生する。特に、製造しようとする成形体の形状が複雑であるほど、端材の発生量は増加する傾向にあり(すなわち、1枚の複合材料から切り出すことができる成形材料の数が少なくなる傾向にあり)、複合材料のロスが発生してしまう。
[0013]
 特許文献1~4では、この問題については一切検討されていない。
[0014]
 そこで本発明の課題は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料からプレス成形体を製造する際に、原料である、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む複合材料のロスを低減でき、1枚の複合材料から切り出すことができる成形材料の数を多くすることができる、プレス成形体の製造方法を提供することにある。
[0015]
 以下、本発明の更なる課題であるスプリングバックについて述べる。
[0016]
 すなわち、特許文献2及び3には、繊維強化樹脂基材がスプリングバックする課題は認識されておらず、この課題についての解決手段は検討されていない。炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含むシート状の成形材料は、プレス成形の際に加熱すると、加熱前に比べて厚みが増大することがある(この現象を「スプリングバック」と呼ぶ)。
[0017]
 したがって、天面部と立面部を有する成形体を製造する際に、シート状の成形材料(本発明においては後述するX材料)をプレスしながら、射出成形用の成形材料(本発明においては後述するY材料)を射出すると、射出されたY材料を、立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域(例えば、天面部を形成するキャビティ領域)から立面部を形成するキャビティ領域に流動させようとしても、X材料の特に天面部から立面部に至る屈曲領域の厚みがスプリングバックにより増大しているため、射出させたY材料が通りにくいという問題が、次なる課題として存在する。
[0018]
 特許文献1~4では、この問題については一切検討されていない。
[0019]
 そこで本発明の更なる課題は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料から天面部と立面部を有するプレス成形体を製造する際に、立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域から立面部を形成するキャビティ領域に、射出成形材料を流動させることができるプレス成形体の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0020]
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]
 X材料を成形型内に配置する工程、
 前記成形型を閉じて、前記X材料の一部に圧力が加わり始めた後、混練された材料であるY材料を前記成形型内に射出する工程、及び
 前記X材料と前記Y材料とを前記成形型内でコールドプレスして、一体成形する工程、
を有するプレス成形体の製造方法であって、
 前記X材料は、重量平均繊維長Lw の炭素繊維A及び熱可塑性樹脂R を含む複合材料Mから切り出されたものであり、
 前記Y材料は、重量平均繊維長Lw Bの炭素繊維B及び熱可塑性樹脂R を含み、
 Lw B<Lw であり、
 Lw が1mm以上100mm以下である、
プレス成形体の製造方法。
[2]
 前記Y材料は、前記複合材料Mから前記X材料を切り出した残りの端材を原料として得られたものである、[1]に記載のプレス成形体の製造方法。
[3]
 前記X材料は前記複合材料Mからパターンカットされて切り出されたものである、[1]又は[2]に記載のプレス成形体の製造方法。
[4]
 使用する前記X材料の全重量Q と、使用する前記Y材料の全重量Q との比であるQ :Q が、99:1~50:50であり、
 前記プレス成形体の少なくとも1つの面内方向の端部に向けて、前記Y材料からなるY領域の占める割合が増加している、[1]~[3]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[5]
前記プレス成形体の少なくとも1つの面内方向の端部が、前記Y材料からなるY領域のみで形成されている、[4]に記載のプレス成形体の製造方法。
[6]
 前記プレス成形体は、前記X材料からなるX領域と、前記Y材料からなるY領域とが積層された遷移区間XYを有し、
 前記Y領域のみで形成されている面内方向の端部が、前記遷移区間XYのY領域と連続的に形成されている、[5]に記載のプレス成形体の製造方法。
[7]
 使用する前記X材料の体積V と、使用する前記Y材料の体積V とが、V ≧V の関係を満たす、[1]~[6]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[8]
 重量平均繊維長Lw Bは1.0mm以下である、[1]~[7]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[9]
 前記X材料の形状は、前記プレス成形体の3次元形状から、コンピューターにて逆成形解析により展開された形状である、[1]~[8]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[10]
 前記プレス成形体がフランジ部を有し、前記フランジ部の少なくとも1つの端部が前記Y材料からなるY領域のみで形成されている、[1]~[9]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[11]
 前記プレス成形体が、断面形状がハット形状である部分を含む、[1]~[10]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[12]
 前記X材料の繊維体積割合Vf と、前記Y材料の繊維体積割合Vf との関係が、Vf ≧Vf である、[1]~[11]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[13]
 前記X材料が板状であり、前記X材料の面内方向に前記Y材料を流動して延面して、前記プレス成形体を製造する、[1]~[12]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[14]
 前記Y材料が、前記複合材料から前記X材料を切り出した後に残った端材を砕いた材料を原料として得られたものである、[1]~[13]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[15]
 前記プレス成形体がフランジ部を有し、前記フランジ部の少なくとも1つの端部が前記Y材料からなるY領域のみで形成されている、[1]~[14]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[16]
 前記X材料は、スプリングバック量が1.0超14.0未満であり、
 前記プレス成形体は、立面部と天面部を有し、
 前記立面部の厚みt1と、前記天面部の厚みt2が、t1>t2を満たし、
 前記コールドプレスにおいて、前記Y材料を、前記立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域から前記立面部を形成するキャビティ領域に流動させてプレス成形する、[1]~[15]のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[17]
 前記成形型は、前記立面部を形成するキャビティ領域の厚みT1と、前記天面部を形成するキャビティ領域の厚みT2とが、T1>T2であるキャビティを有する、[16]に記載のプレス成形体の製造方法。
[18]
 前記立面部を形成するキャビティ領域の厚みT1と、スプリングバックしたX材料の板厚tx とが、T1>T x1を満たす、[17]に記載のプレス成形体の製造方法。

発明の効果

[0021]
 本発明のプレス成形体の製造方法によれば、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料からプレス成形体を製造する際に、原料である、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む複合材料のロスを低減でき、1枚の複合材料から切り出すことができる成形材料の数を多くすることができる。
[0022]
 本発明の更なる効果としては、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料から天面部と立面部を有するプレス成形体を製造する際に、立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域から立面部を形成するキャビティ領域に、射出成形材料を流動させることができるプレス成形体の製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0023]
[図1] プレス成形体の一例を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)における一点鎖線sで切断した場合の断面図である。
[図2] 原料基材(複合材料M)からのX材料の切り出し方を示す模式図である。
[図3] 原料基材(複合材料M)からのX材料の切り出し方を示す模式図である。
[図4] (a)プレス成形体の一例を示す模式図である。(b)プレス成形体の一例を示す模式図であり、図4(a)プレス成形体の上下を逆さまにしたものである。
[図5] 原料基材からのX材料の切り出し方を示す模式図である。
[図6] 原料基材からのX材料の切り出し方を示す模式図である。
[図7] 成形型の一例の断面を示す模式図である。
[図8] 端部にショートショットが発生したプレス成形体の一例を示す模式図である。
[図9] 原料基材から切り出したX材料を示す模式図である。
[図10] プレス成形体の一例におけるX材料からなるX領域とY材料からなるY領域を示した断面模式図である。
[図11] プレス成形体の一例を示す断面模式図である。
[図12] 成形型の一例を示す断面模式図である。
[図13] 射出用のゲートが設けられた位置を示す模式図である。
[図14] 加熱前のX材料と加熱後のスプリングバックしたX材料の一例を示す断面模式図である。
[図15] スプリングバックしたX材料によって、天面部を形成するキャビティ領域へ投入されたY材料が立面部を形成するキャビティ領域への進行を阻まれている様子を示した断面模式図である。
[図16] プレス成形体の一例を示す模式図である(ダブルハット形状)。
[図17] 局所的な突起領域をY材料で作成した断面模式図である。点線よりも先に、本発明の成形体が含まれるものとする。
[図18] プレス成形体の一例を示す模式図であり、Y材料を用いてリブを作成している。
[図19] プレス成形体の一例を示す模式図であり、Y材料を用いてリブを作成している。

発明を実施するための形態

[0024]
 以下、本発明を詳細に説明する。
[0025]
 本発明のプレス成形体の製造方法は、
 X材料を成形型内に配置する工程、
 前記成形型を閉じて、前記X材料の一部に圧力が加わり始めた後、混練された材料であるY材料を前記成形型内に射出する工程、及び
 前記X材料と前記Y材料とを前記成形型内でコールドプレスして、一体成形する工程、を有するプレス成形体の製造方法であって、
 前記X材料は、重量平均繊維長Lw の炭素繊維A及び熱可塑性樹脂R を含む複合材料Mから切り出されたものであり、
 前記Y材料は、重量平均繊維長Lw Bの炭素繊維B及び熱可塑性樹脂R を含み、
 Lw B<Lw であり、
 Lw が1mm以上100mm以下である、
プレス成形体の製造方法である。
[0026]
 上記のように、本発明のプレス成形体の製造方法は、少なくとも、互いに重量平均繊維長の異なる炭素繊維を含み、かつ熱可塑性樹脂を含む、X材料とY材料とを用い、X材料(典型的には板状の材料)を成形型内に配置し、成形型を閉じて、X材料の少なくとも一部に圧力が加わり始めた後、混練された材料であるY材料を成形型内に射出(典型的には、射出装置により投入)し、X材料とY材料とを成形型内でコールドプレスして、プレス成形体(単に「成形体」と呼ぶこともある。)を製造するものである。
[0027]
 本発明のプレス成形体の製造方法により、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料から複雑形状を有するプレス成形体を製造する際に、原料である、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む複合材料のロスを低減でき、1枚の複合材料から切り出すことができる成形材料の数を多くすることができる。理由について以下に説明する。
[0028]
 一般的に、プレス成形は、板状の成形材料を加熱し、加熱された成形材料を成形型で挟んで加圧することにより、所望の形状の成形体を得る成形方法である。成形材料が熱可塑性樹脂のみからなる場合は、プレス成形の際に成形材料が流動しやすいため、複雑な形状の成形体も容易に製造することができる。しかしながら、成形材料が熱可塑性炭素繊維複合材料である場合は、炭素繊維の繊維長が長いほど流動しにくくなるし、例えばプレス成形体の性能の向上を目的として、熱可塑性炭素繊維複合材料中の炭素繊維の配向方向を調整している場合は、流動させ過ぎると炭素繊維の配向方向に乱れが生じ、得られるプレス成形体の性能の向上の目的が十分に達成できないといった問題も起こり得る。
[0029]
 そこで、あまり流動させなくても所望の形状のプレス成形体を得ることができるように、プレス成形に供する熱可塑性炭素繊維複合材料を、原料基材(炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む複合材料M)から切り出す際に、パターン状にカットする(「パターンカット」ともいう)ことが好ましい。
[0030]
 なお、パターンカット形状(X材料の形状)は、製造するプレス成形体の3次元形状から、コンピューターにて逆成形解析により展開された形状であることが好ましい。
[0031]
 ただし、プレス成形に供する熱可塑性炭素繊維複合材料を原料基材から切り出すと端材(原料基材のうち、プレス成形に供するために切り出された熱可塑性炭素繊維複合材料以外の部分)が発生する。この端材の発生が複合材料Mのロスになるため、プレス成形体の製造工程における生産効率の低下の原因になることに本発明者らは着目した。
[0032]
 そこで、本発明者らは鋭意検討し、発生する端材の量を少なくする(1枚の原料基材から切り出す熱可塑性炭素繊維複合材料の数をより多くする)ことができれば、生産効率を高くすることができると考えた。なお、上記「1枚の原料基材から切り出す熱可塑性炭素繊維複合材料の数をより多くする」ということには、1種類の形状の熱可塑性炭素繊維複合材料を切り出す際にその数をより多くすることのみならず、異なる2種以上の形状の熱可塑性炭素繊維複合材料を切り出し、それらの合計の数をより多くすることも含むものである。
[0033]
 そして、原料基材からの熱可塑性炭素繊維複合材料(本発明におけるX材料)の切り方を検討することで、生産効率を高くすることが可能となった。
[0034]
 例えば、図1に示した断面形状がハット形状である部分を含むプレス成形体を製造する場合に、図2に示した形状に熱可塑性炭素繊維複合材料をカットするのが望ましいとする。図2の符号2は原料基材を示している。この場合、図2に示した形状にパターンカットすると、端材(図2中の符号3)が大量に発生する。
[0035]
 これに対して、本発明の好ましい態様では、同じ図1に示した断面形状がハット形状である部分を含むプレス成形体を製造する場合において、図3に示したXmのような形状に熱可塑性炭素繊維複合材料(X材料)をパターンカットして用いる。図3の符号2は原料基材を示している。図3に示した形状にパターンカットすると、端材(図3中の符号3)の発生量は図2の場合に比べて少ない。このようにパターンカットする形状を工夫することで、1つの原料基材から得られる熱可塑性炭素繊維複合材料(X材料)の数を増やし、発生する端材の量を削減することができる。
[0036]
 本発明では、図3のような形状の熱可塑性炭素繊維複合材料(X材料)を用いて所望の形状のプレス成形体を製造するに際して、X材料を成形型内に配置し、成形型を閉じて、X材料の一部に圧力が加わり始めた後、混練された材料であるY材料を成形型内に射出して、X材料とY材料とを成形型内でコールドプレスして、一体成形する。Y材料に含まれる炭素繊維Bの重量平均繊維長Lw Bは、X材料に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長よりも短いため、Y材料はX材料よりも流動しやすい。
[0037]
 また、Y材料は射出による圧力が加わるため、X材料よりも流動しやすい材料である。
[0038]
 本発明では、X材料とY材料を併用することにより、X材料として、(図2に示した形状のXmよりも小さい)図3に示した形状のXmを用いた場合にも、図1に示したプレス成形体を製造することができる。
[0039]
 本発明のプレス成形体の製造方法は、X材料と、X材料のプレス中に投入されたY材料とを成形型内で同時にプレス(以下「同時プレス」ともいう)して成形体を得るため、1回の成形工程で一体成形してプレス成形体を製造することができるため生産性に優れる。
[0040]
 また、本発明では、同時プレスするため、得られるプレス成形体において、X材料からなるX領域とY材料からなるY領域との接合強度にも優れる。
[0041]
 さらに、本発明では、流動しやすいY材料を必要な部分にのみ射出してプレスすることもできるため、より複雑な形状の成形体を製造することが可能である。
[0042]
 次に、X材料(複合材料M)及びY材料に含まれる炭素繊維について説明する。
[0043]
 X材料は、重量平均繊維長Lw の炭素繊維A及び熱可塑性樹脂R を含む複合材料Mから切り出されたものであり、すなわち、X材料自体も、重量平均繊維長Lw の炭素繊維A及び熱可塑性樹脂R を含む。
[0044]
 Y材料は、重量平均繊維長Lw Bの炭素繊維B及び熱可塑性樹脂R を含む。
[0045]
 X材料及びY材料は成形材料であるが、X材料は典型的には板状のプレス成形材料であるのに対し、Y材料は混練された後の材料である。すなわち、本発明において、Y材料とは、炭素繊維及び熱可塑性樹脂R を含むY材料前駆体を混練した後の、射出できる状態にあるもの(及びその後の工程においては、射出された後のもの)をいう。
[0046]
 Y材料前駆体とは、炭素繊維及び熱可塑性樹脂R を含む材料であり、混練によりY材料となる材料である。Y材料前駆体は、X材料の端材を破砕して得られた破砕材も良い。
[0047]
 混練とは、溶融した熱可塑性樹脂R とともに、Y材料前駆体に含まれる炭素繊維を混ぜ、射出できる状態にすることをいう。
[0048]
 通常、Y材料前駆体に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長は、Y材料に含まれる炭素繊維Bの重量平均繊維長Lw Bよりも長い。
[0049]
 本発明の効果がより顕著に発揮されるという理由から、前述のように、X材料は複合材料Mからパターンカットされて切り出されたものであることが好ましい。X材料の形状は、製造するプレス成形体の3次元形状から、コンピューターにて逆成形解析により展開された形状であることが好ましい。複合材料M及びX材料は板状であることが好ましい。なお、複合材料Mは特に限定なく公知の方法で製造することができる。例えば、予め熱可塑性のマトリクス樹脂を、開繊した炭素繊維束に含浸させた後にカットして作成しても良い。
[0050]
 Y材料は、複合材料MからX材料を切り出した残りの端材を原料として得られたものであることが好ましく、複合材料MからX材料を切り出した残りの端材を砕いた材料を原料として得られたものであることがより好ましい。これにより、端材を有効に利用することができ、複合材料のロスを更に低減することができる。
[0051]
 また、Y材料は後述する所望のVf となるように、複合材料MからX材料を切り出した残りの端材と、熱可塑性樹脂とを混錬して得られたものであることも好ましい。
[炭素繊維]
1.炭素繊維全般
 本発明に用いられる炭素繊維としては、一般的にポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維などが知られているが、本発明においてはこれらのいずれの炭素繊維であっても好適に用いることができる。なかでも、本発明においては引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましい。
2.炭素繊維のサイジング剤
 本発明に用いられる炭素繊維は、表面にサイジング剤が付着しているものであってもよい。サイジング剤が付着している炭素繊維を用いる場合、当該サイジング剤の種類は、炭素繊維の種類、及び、X材料(複合材料M)又はY材料に用いる熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択することができるものであり、特に限定されるものではない。
3.炭素繊維の繊維直径
 本発明に用いられる炭素繊維の単糸(一般的に、単糸はフィラメントと呼ぶ場合がある)の繊維直径は、炭素繊維の種類に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。平均繊維直径は、通常、3μm~50μmの範囲内であることが好ましく、4μm~12μmの範囲内であることがより好ましく、5μm~8μmの範囲内であることがさらに好ましい。炭素繊維が繊維束状である場合は、繊維束の径ではなく、繊維束を構成する炭素繊維(単糸)の直径を指す。炭素繊維の平均繊維直径は、例えば、JIS R7607:2000に記載された方法によって測定することができる。
[炭素繊維A]
 本発明におけるX材料(複合材料M)は重量平均繊維長Lw の炭素繊維Aを含む。Lw は用いるY材料に含まれる炭素繊維Bの重量平均繊維長Lw Bよりも長い。
[0052]
 炭素繊維Aの重量平均繊維長Lw は、1mm以上100mm以下であり、3mm以上80mm以下であることが更に好ましく、5mm以上60mm以下であることが特に好ましい。Lw が100mm以下であれば、X材料(複合材料M)の流動性が低下しにくく、プレス成形の際に所望の形状のプレス成形体を得られやすい。また、Lw が1mm以上の場合、得られるプレス成形体の機械強度が低下しにくく、好ましい。
[炭素繊維Aの重量平均繊維長]
 本発明においては繊維長が互いに異なる炭素繊維Aを併用してもよい。換言すると、本発明に用いられる炭素繊維Aは、重量平均繊維長の分布において単一のピークを有するものであってもよく、あるいは複数のピークを有するものであってもよい。なお、射出成形体や押出成形体に含まれる炭素繊維は、炭素繊維を射出(押出)成形体中で均一に炭素繊維を分散させるために十分な混練工程を経たものは一般的に炭素繊維の重量平均繊維長は1mm未満となる。
[0053]
 炭素繊維Aの平均繊維長は、例えば、成形体から無作為に抽出した100本の繊維の繊維長を、ノギス等を用いて1mm単位まで測定し、下記式(1)に基づいて求めることができる。
[0054]
 個々の炭素繊維の繊維長をLi、測定本数をjとすると、数平均繊維長(Ln)と重量平均繊維長(Lw)とは、一般的に以下の式(1)、(2)により求められる。
[0055]
 Ln=ΣLi/j ・・・式(1)
 Lw=(ΣLi )/(ΣLi)・・・式(2)
 繊維長が一定長の場合は数平均繊維長と重量平均繊維長は同じ値になる。プレス成形体からの炭素繊維Aの抽出は、例えば、プレス成形体に対し、500℃×1時間程度の加熱処理を施し、炉内にて樹脂を除去することによって行うことができる。
[炭素繊維B]
 本発明におけるY材料は重量平均繊維長Lw Bの炭素繊維Bを含む。Lw Bは用いるX材料(複合材料M)に含まれる炭素繊維Aの重量平均繊維長Lw よりも短い。
[0056]
 炭素繊維Bの重量平均繊維長Lw Bは、好ましくは1.0mm以下である。Lw Bが1.0mm以下であれば、射出によってY材料を製造しやすい。また、Lw Bは0.1mm以上であることが好ましい。Lw Bが0.1mm以上であれば、Y領域における機械物性が担保しやすい。
[0057]
 なお、Y材料に含まれる炭素繊維Bの重量平均繊維長Lw Bは、混練された後のものであるため、本発明の製造方法により製造されたプレス成形体においてY材料からなるY領域に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長は、Lw Bと同じである。
[炭素繊維Bの重量平均繊維長]
 本発明においては繊維長が互いに異なる炭素繊維Bを併用してもよい。換言すると、本発明に用いられる炭素繊維Bは、重量平均繊維長の分布において単一のピークを有するものであってもよく、あるいは複数のピークを有するものであってもよい。
[0058]
 炭素繊維Bの重量平均繊維長及び数平均繊維長は、上述の式(1)、(2)と同じように測定可能である。なお、炭素繊維Bの繊維長の測定方法については後述する。
[X材料及びY材料における炭素繊維の体積割合]
 X材料とY材料のそれぞれについて、炭素繊維体積割合(Vf)は、下記式(3)で求めることができる。
[0059]
 炭素繊維体積割合に特に限定は無いが、炭素繊維体積割合(Vf)は、10~60Vol%であることが好ましく、20~50Vol%であることがより好ましく、25~45Vol%であればさらに好ましい。
[0060]
 炭素繊維体積割合(Vf)=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積) 式(3)
 本発明においては、X材料の炭素繊維体積割合Vf とY材料の炭素繊維体積割合Vf とが、Vf ≧Vf の関係を満たすことが、製造プロセス上好ましい。炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む複合材料(原料基材)からX材料を切り出した後に残った端材を砕いた材料をY材料として用いた場合、Vf =Vf となり、端材を砕いた後、更に熱可塑性樹脂を添加してY材料を製造した場合はVf >Vf となる。すなわち、Vf ≧Vf となるような製造方法を採用すれば、X材料を切り出した後に残った端材を効率的に利用できる。
[0061]
 Vf は、好ましくは20~45Vol%であり、より好ましくは25~40Vol%である。
[0062]
 Vf は、好ましくは1~40Vol%であり、より好ましくは5~30Vol%であり、更に好ましくは10~25Vol%である。
[0063]
 次に、X材料及びY材料に含まれる熱可塑性樹脂について説明する。
[熱可塑性樹脂]
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(熱可塑性のマトリクス樹脂)は特に限定されるものではなく、所望の軟化点又は融点を有するものを適宜選択して用いることができる。熱可塑性樹脂としては、通常、軟化点が180℃~350℃の範囲内のものが用いられるが、これに限定されるものではない。
[0064]
 熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂等を挙げることができる。
[0065]
 本発明のX材料及びY材料に用いられる熱可塑性樹脂は1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。2種類以上の熱可塑性樹脂を併用する態様としては、例えば、相互に軟化点又は融点が異なる熱可塑性樹脂を併用する態様や、相互に平均分子量が異なる熱可塑性樹脂を併用する態様等を挙げることができるが、この限りではない。
[0066]
 また、X材料に含まれる熱可塑性樹脂R と、Y材料に含まれる熱可塑性樹脂R と同種の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
[X材料を成形型内に配置する工程]
 本発明におけるX材料を成形型内に配置する工程は、従来公知の方法を用いて行うことができる。本発明ではコールドプレスを行うため、X材料は予め加熱された状態で成形型内に配置されることが好ましい。X材料に含まれる熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点以上分解温度以下、非晶性の場合はガラス転移温度以上分解温度以下に加熱することが好ましい。また、成形型の温度は、X材料に含まれる熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点未満、非晶性の場合はガラス転移温度未満に温度調節されていることが好ましい。このように、X材料及び成形型の温度を調節することで、好適にコールドプレスを行うことができる。
[0067]
 なお、プレスを開始する前に、X材料は予備賦形されることが好ましい。
[成形型を閉じて、X材料の一部に圧力が加わり始めた後、Y材料を成形型内に射出する工程]
 本発明では、X材料を成形型内に配置した後、成形型を閉じる。ここで、本発明では、成形型を閉じて(典型的には、成形上型を下降させて)、X材料の一部に圧力が加わり始めた後(好ましくはX材料の少なくとも一部に圧力が加わり始めた直後)、Y材料を成形型内に射出(好ましくは射出装置により成形型内に投入)する。
[0068]
 X材料の一部に圧力が加わり始めたことは、通常、プレス成形機に備わっている圧力計により確認することができる。より具体的には、成形型の上型(成形上型)が下降してきて、X材料に接した後に、プレス成形機の圧力計に圧力が出力されることにより確認することができる。
[0069]
 また、Y材料を成形型内に射出する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、成形型にゲートを設けておき、成形型の外部から射出装置によりY材料を射出する方法が挙げられる。Y材料を射出するためのゲートの数やゲートを設ける位置については特に限定されないが、例えば、プレス成形体の天面となる位置の成形下型にゲートを1つ設けたものであってもよい(図12参照)。
[0070]
 また、他の例としては、プレス成形体の天面部を形成するキャビティ領域の成形下型にゲートを2つ以上設けたもの、プレス成形体の天面部を形成するキャビティ領域の成形上型にゲートを1つ以上設けたもの、プレス成形体の天面部及び立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域(例えばフランジ部を形成するキャビティ領域)の成形下型又は上型にゲートを1つ以上設けたもの、などが挙げられる。ゲートの位置とキャビティの端部(フランジ部などの端部)は遠い方が好ましい。その理由は、キャビティの端部にY材料が到達した後、成形体板厚方向にY材料が流動し、更には、キャビティの端部から中央へ向かってY材料が逆流し、X材料を押しのけて、うねりなどを生じさせることが少ないためである。また、ゲートの位置が偏っていない方が好ましい。その理由は、Y材料の投入時間差から生じる成形材料の冷却開始時間差によって成形体の反りが発生するのを抑制できるためである。ゲートを多数設定してY材料の投入時間を短くすることが可能であるが、本発明では、ゲートの数は少ない方が好ましい場合がある。その理由は、射出ゲートから射出されたY材料同士が成形型内で衝突することによるウェルドの発生を抑制し、強度の低下を抑制できるためである。本発明で用いる成形型の一例の断面模式図を図12に示す。
[0071]
 本発明では、使用するX材料の体積V と、使用するY材料の体積V とが、V ≧V の関係を満たすことが好ましい。V :V は、90:10~50:50であることが好ましく、80:20~60:40であることがより好ましい。
[0072]
 V :V が90:10~50:50であると、例えば、X材料を用いてプレス成形体の主要な部分を形成し、必要な部分(例えば端部や細部など)のみ流動性が高いY材料を用いて形成することができる。
[0073]
 Y材料を射出するときの圧力は、好ましくは30~200kgf/m であり、より好ましくは40~150kgf/m である。また、Y材料の加熱温度に特に限定は無いが、例えば熱可塑性樹脂としてナイロン6を使用した場合、200~300℃であることが好ましい。
[X材料とY材料とを成形型内でコールドプレスして、一体成形する工程]
 コールドプレスは従来公知の方法を用いて行うことができる。
[0074]
 コールドプレス法は、例えば、第1の所定温度に加熱した熱可塑性炭素繊維複合材料(X材料及びY材料の総称として呼ぶ場合がある)を第2の所定温度に設定された成形型内に投入した後、加圧・冷却を行う。
[0075]
 具体的には、熱可塑性炭素繊維複合材料を構成する熱可塑性樹脂が結晶性である場合、第1の所定温度は融点以上であり、第2の所定温度は融点未満である。熱可塑性樹脂が非晶性である場合、第1の所定温度はガラス転移温度以上であり、第2の所定温度はガラス転移温度未満である。すなわち、コールドプレス法は、少なくとも以下の工程A-1)~A-2)を含んでいる。
[0076]
 工程A-1)熱可塑性炭素繊維複合材料を、熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点以上分解温度以下、非晶性の場合はガラス転移温度以上分解温度以下に加温する工程。
工程A-2)上記工程A-1)で加温された熱可塑性炭素繊維複合材料を、熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点未満、非晶性の場合はガラス転移温度未満に温度調節された成形型に配置し、加圧する工程。
[0077]
 これらの工程を行うことで、熱可塑性炭素繊維複合材料の成形を完結させることができる(プレス成形体を製造することができる)。
[0078]
 上記の各工程は、上記の順番で行う必要があるが、各工程間に他の工程を含んでもよい。他の工程とは、例えば、工程A-2)の前に、工程A-2)で利用される成形型と別の賦形型を利用して、成形型のキャビティの形状に予め賦形する賦形工程等がある。また、工程A-2)は、熱可塑性炭素繊維複合材料に圧力を加えて所望形状の成形体を得る工程であるが、このときの成形圧力については特に限定はしないが、成形型キャビティ投影面積に対して20MPa未満が好ましく、10MPa以下であるとより好ましい。また、当然のことであるが、プレス成形時に種々の工程を上記の工程間に入れてもよく、例えば真空にしながらプレス成形する真空プレス成形を用いてもよい。
[0079]
 なお、Y材料は射出によって成形型に投入されるため、成形型内に投入される際のY材料は熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点以上分解温度以下、非晶性の場合はガラス転移温度以上分解温度以下に加温されているのが一般的である。
[0080]
 本発明では、X材料が板状であり、X材料の面内方向にY材料を流動して延面して、プレス成形体を製造することが好ましい。
[プレス成形体]
 本発明により製造されるプレス成形体の形状は特に限定されない。本発明により製造されるプレス成形体は、少なくとも1つの厚さ(板厚)を有する少なくとも1つの平面部を有することが好ましく、断面形状がT字型、L字型、コの字型、ハット型(ハット形状)およびこれらを含む三次元形状のものであってもよく、さらに凹凸形状(例えばリブ、ボスなど)を有していてもよい。本発明により製造されるプレス成形体の形状は、断面形状がハット形状である部分を含む形状であることが好ましい。
[0081]
 また、図16はダブルハット形状のプレス成形体である。図16のようなダブルハット形状の場合、立面部のX材料が成形上型によって下にひきずられながら成形されるため、X材料のみ使用したプレス成形では、天面の板厚(例えば図16の1601)が減少することによって成形圧を損失し、物性低下および外観不良を引き起こす可能性がある。
[0082]
 本発明では、Y材料で欠損部分を補填することができるため、より容易にダブルハット形状のプレス成形体を製造することが可能である。
[0083]
 また、図18や図19の1001のように、主にY材料によってハット部分にリブを設けることも可能である。リブを設けることで、プレス成形体の剛性を向上できる。
[0084]
 本発明で使用するX材料の全重量Q と、使用するY材料の全重量Q との比であるQ :Q は、99:1~50:50であり、プレス成形体の少なくとも1つの面内方向の端部に向けて、Y材料からなるY領域の占める割合が増加していることが好ましく、プレス成形体の少なくとも1つの面内方向の端部が、Y材料からなるY領域のみで形成されていることがより好ましい。
[0085]
 また、本発明において製造されるプレス成形体は、X材料からなるX領域と、Y材料からなるY領域とが積層された遷移区間XYを有し、Y領域のみで形成されている面内方向の端部が、遷移区間XYのY領域と連続的に形成されていることが好ましい。このようなプレス成形体の一例の断面模式図は、図10で表される。
[0086]
 上記のように、プレス成形体の少なくとも1つの面内方向の端部が、Y材料からなるY領域のみで形成されているにより、プレス成形体の端部の欠損(ショートショット)が抑制され、寸法安定性に優れ、かつバリの発生も低減する。その理由は、Y材料の方がX材料よりも流動しやすい材料であり、プレス成形において成形型の端まで流動することで欠けの発生を抑制することができるため、及びY材料に含まれる炭素繊維Bの重量平均繊維長Lw Bが0.1mm以上であることで、端部のバリの発生も抑制できるためである。
[0087]
 Q :Q は、95:5~50:50であることがより好ましく、90:10~70:30であることが更に好ましい。
[0088]
 本発明により製造されるプレス成形体の例としては、図1に示したプレス成形体や図4に示したプレス成形体などが挙げられる。
[0089]
 図1は断面形状がハット形状である部分を含むプレス成形体の模式図であり、図1(a)はプレス成形体の斜視図であり、図1(b)はプレス成形体の平面図であり、図1(c)は図1(b)の一点鎖線sでプレス成形体を切断した場合の断面図(ハット形状)である。図1のプレス成形体は、X領域(図1中の符号X)とY領域(図1中の符号Y)を有し、かつ図1(c)中の符号xyで示したような遷移区間XYを有する。
[0090]
 本発明では、得られるプレス成形体が遷移区間XYを有するものとするために、X材料とY材料の少なくとも一部が重なった状態で同時プレスすることが好ましい。
[0091]
 本発明により製造されるプレス成形体は、フランジ部を有し、当該フランジ部の少なくとも1つの面内方向の端部がY領域のみで形成されていることが好ましい。フランジ部とは、断面形状がハット形状である部分については、ハットのつばに相当する部分であり、図1(a)(b)(c)において符号Fで示される部分である。図1(a)のプレス成形体は、図1(c)に示すように、フランジ部Fの面内方向の端部はY領域のみで形成されている部分を有している。
[0092]
 本発明のプレス成形体の製造方法は、X材料と、X材料のプレス中に投入されたY材料とを成形型内で同時にプレス(以下「同時プレス」ともいう)して成形体を得るため、1回の成形工程で一体成形してプレス成形体を製造することができるため生産性に優れる。
[0093]
 また、本発明では、同時プレスするため、得られるプレス成形体において、X材料からなるX領域とY材料からなるY領域との接合強度にも優れる。
[0094]
 さらに、本発明では、流動しやすいY材料を必要な部分にのみ射出してプレスすることもできるため、より複雑な形状の成形体(例えば、リブやボスを有する成形体など)を製造することが可能である。
[射出-プレスのハイブリッド成形体]
 本発明では成形型内に射出されるY材料も(好ましくは射出成形機によって成形型内へインサートされる)、X材料とともにプレス成形される。射出とプレスが両方使われているため、本発明における「プレス成形体」とは「射出-プレスのハイブリッド成形体」ともいえる。
[好ましいプレス成形体の形状]
 本発明の製造方法により製造されるプレス成形体は、少なくとも天面部と立面部を有することが好ましい。天面部とはプレス成形体の天面を含む部分である。天面部は立面部と一体的に接続している。立面部とは立面を含む部分であり、天面部と交差する方向に延びている部分(側面部)である。立面部と天面部のなす角度は特に限定されないが、例えば90度超~180度未満であることが好ましく、90度超~135度未満であることがより好ましく、90度超~120度未満であることが更に好ましい。
[0095]
 なお、天面部は見方によっては(プレス成形体の上下を逆さまにして見れば)底面部ともなる。
[0096]
 本発明の製造方法により製造されるプレス成形体は、天面部及び立面部以外の部分を有していてもよい。例えば、立面部に接続したフランジ部などを有していてもよい。
[0097]
 本発明の製造方法により製造されるプレス成形体の立面部の厚みt1と、天面部の厚みt2とは、t1>t2の関係を満たすことが好ましい。すなわち、立面部の厚みの方が天面部の厚みよりも大きい。
[0098]
 t1の値は特に限定されないが、t1の値は1.0mm以上5.0mm未満が好ましく、1.5mm以上4.0mm未満がより好ましく、2.0mm以上3.5mm未満が更に好ましい。
[0099]
 t2の値は特に限定されないが、t2の値は0.5mm以上4.0mm未満が好ましく、1.0mm以上3.5mm未満がより好ましく、1.0mm以上2.0mm未満が更に好ましい。
[0100]
 また、t1とt2の関係はt1>t2×1.2であることが好ましく、t1>t2×1.3であることがより好ましく、t1>t2×1.4であることが更に好ましい。
[0101]
 なお、プレス成形体の立面部が偏肉構造である場合は(立面部の厚みが一定でない場合は)、立面部の最小板厚をt1とする。
[0102]
 同様に、天面部の板厚が偏肉構造である場合は(天面部の厚みが一定でない場合は)、天面部の最小板厚をt2とする。Y材料が円滑に流路を流動できるか否かは、キャビティの最狭部に起因するためであり、最も狭いキャビティ流路を広げておく必要がある。
[0103]
 本発明の製造方法により製造されるプレス成形体の一例の断面模式図を図11に示す。図11のプレス成形体1は、天面部7と、天面部7に接続する立面部8とを有する。また、プレス成形体1は、立面部8に接続するフランジ部Fを有する。
[その他の形状]
 X材料の歩留まりをよくするため、局所的な突起形状はY材料のみで製造すると好ましい。例えば図17に描かれているように、突起部はY材料で作成し、平面部はX材料で作成した成形体領域を、本発明のプレス成形体は有していても良い。なお、図17で描かれた点線よりも先に、本発明の成形体が含まれるものとする。
[プレス成形体が偏肉構造となった場合の厚み]
 プレス成形体の立面部、天面部、フランジ部などに偏肉構造(厚みが一定でない部分)を有する場合、Y材料が偏肉構造に寄与する。X材料は板状である一方、Y材料は射出材料であるため、偏肉構造の成形体を製造しやすい。
[0104]
 例えば、2mmから徐々に3mmとなる偏肉構造を有する成形体を製造する場合、1mm厚みのX材料を成形型に載置すると、残りの1mm~2mmの偏肉領域はY材料によって形成される。
[スプリングバック量とキャビティ領域の厚み]
 前記X材料は、スプリングバック量が1.0超14.0未満であり、
 前記プレス成形体は、立面部と天面部を有し、
 前記コールドプレスにおいて、前記Y材料を、前記立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域から前記立面部を形成するキャビティ領域に流動させ、
 前記立面部の厚みt1と、前記天面部の厚みt2が、t1>t2を満たす、
ことが好ましい。
[0105]
 また、前記立面部を形成するキャビティ領域の厚みT1と、スプリングバックしたX材料の板厚tx とが、T1>T x1を満たすことが好ましい。
[0106]
 本発明におけるX材料の好ましいスプリングバック量は1.0超14.0未満である。ここで、スプリングバック量とは、予熱後の成形材料の板厚を、予熱前の成形材料の板厚で割った値である。すなわち、予熱前のX材料の板厚をt X0とし、予熱後のX材料の板厚をt X1とした場合、X材料のスプリングバック量は、t X1/t X0である。本発明におけるX材料の好ましいスプリングバック量は1.0超7.0以下であり、より好ましくは1.0超5.0以下であり、更に好ましくは1.0超3.0以下であり、より一層好ましくは1.0超2.5以下である。
[0107]
 本発明では、成形型として、立面部を形成するキャビティ領域の厚みT1と、天面部を形成するキャビティ領域の厚みT2とが、T1>T2であるキャビティを有する成形型を用いることが好ましい。このような成形型を用いることで、立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域(例えば、天面部を形成するキャビティ領域)から立面部を形成するキャビティ領域に、射出成形材料であるY材料を流動させることができる。
[0108]
 T1の値は特に限定されないが、T1の値は、例えば、1.0mm以上5.0mm未満が好ましく、1.5mm以上4.0mm未満がより好ましく、2.0mm以上3.5mm未満が更に好ましい。
[0109]
 T2の値は特に限定されないが、T2の値は、例えば、0.5mm以上4.0mm未満が好ましく、1.0mm以上3.5mm未満がより好ましく、1.0mm以上2.0mm未満が更に好ましい。
[0110]
 また、T1とT2の関係はT1>T2×1.2であることが好ましく、T1>T2×1.3であることがより好ましく、T1>T2×1.4であることが更に好ましい。
なお、プレス成形体の厚みと成形型キャビティの厚みは対応しており、原則として、T1=t1であり、T2=t2である。
[0111]
 本発明において、立面部を形成するキャビティ領域の厚みT1と、予熱後の(スプリングバックした)X材料の板厚t X1とは、T1>t X1であることが好ましい。
[0112]
 X材料のスプリングバック量が1.0超の場合、図14に示すように、加熱前の厚みがt X0であるX材料を加熱するとスプリングバックによりX材料の厚みがt X1に増加する。これを図15のように、成形下型5に載置し、t1=t2(すなわちT1=T2)かつT1>t X1であるプレス成形体を製造する場合(成形キャビティを用いた場合)、混練された材料であるY材料を天面部を形成するキャビティ領域から投入すると、Y材料はスプリングバックしたX材料に阻まれることなく、容易に立面部やフランジ部などを形成するための成形型キャビティ領域へ進むことができる。
[0113]
 立面部が偏肉構造である成形体を製造する場合は(立面部の厚みが一定でない場合は)、立面部を形成するキャビティ領域の厚みも偏肉構造となる。この場合、最狭部の厚みを、立面部を形成するキャビティ領域の厚みT1とする。同様に、天面部の板厚が偏肉構造である成形体を製造する場合は(天面部の厚みが一定でない場合は)、天面部を形成するキャビティ領域の厚みも偏肉構造となる。この場合、最狭部の厚みを、天面部を形成するキャビティ領域の厚みT2とする。Y材料が円滑に流路を流動できるか否かは、キャビティの最狭部に起因するためであり、最も狭いキャビティ流路を広げておくと好ましい。
[その他]
 本発明において、重量は質量の意味である。
実施例
[0114]
 以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.以下の製造例、実施例で用いた原料は以下の通りである。なお、分解温度は、熱重量分析による測定結果である。
(PAN系炭素繊維)
 帝人株式会社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40-24K(平均繊維径7μm)
(熱可塑性樹脂)
 ポリアミド6:以下、PA6と略する場合がある。
[0115]
 結晶性樹脂、融点225℃、分解温度(空気中)300℃
2.評価方法
2.1 炭素繊維体積割合(Vf)の分析
 プレス成形体のX領域とY領域からそれぞれサンプルを切り出し、500℃×1時間、炉内にて熱可塑性樹脂を燃焼除去し、処理前後の試料の質量を秤量することによって炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量を算出した。次に、各成分の比重を用いて、炭素繊維と熱可塑性樹脂の体積割合を算出した。
[0116]
 Vf=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積)
2.2 重量平均繊維長の分析
 X材料、Y材料、原料基材(複合材料M)、プレス成形体に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長の測定は、予め500℃×1時間程度、炉内にて熱可塑性樹脂を除去して測定する。
2.2.1 X材料に含まれる炭素繊維A
 プレス成形体より、X材料に該当していた箇所を切り出してX材料に含まれる熱可塑性樹脂を除去した後、無作為に抽出した炭素繊維100本の長さをノギスで1mm単位まで測定して記録し、測定した全ての炭素繊維の長さ(Li、ここでi=1~100の整数)から、次式により重量平均繊維長(Lw )を求めた。
[0117]
 Lw =(ΣLi )/(ΣLi) ・・・ 式(2)
 なお、原料基材(複合材料M)、プレス成形体のX領域に含まれる炭素繊維Aの重量平均繊維長についても、X領域に含まれる熱可塑性樹脂を除去したあと、上記と同様の方法で測定することができる。
2.2.2 Y材料に含まれる炭素繊維B
 プレス成形体より、Y材料に該当していた箇所を切り出して熱可塑性樹脂を除去した後、得られた炭素繊維を界面活性剤入りの水に投入し、超音波振動により充分に撹拌させた。撹拌された分散液を計量スプーンによりランダムに採取し評価用サンプルを得て、ニレコ社製画像解析装置Luze APにて繊維数3000本の長さを計測した。
[0118]
 炭素繊維長の測定値を用いて、前述の式(1)、(2)と同様にして数平均繊維長Ln B、重量平均繊維長Lw Bを求めた。
2.4.ショートショット
 得られたプレス成形体のフランジ部(端部)を観察し、ショートショット(欠け)の発生状況を以下の基準で評価した。
[0119]
 Perfect:欠けが無かった。
[0120]
 Excellent:部分的な欠けが1箇所有った。
[0121]
 Great:部分的な欠けが2箇所有った。
[0122]
 Good:長さ方向又は幅方向のいずれか1方向のフランジ部に連続的な欠けが発生した。
[0123]
 Bad:長さ方向と幅方向のフランジ部に連続的な欠けが発生した。
[実施例1]
(原料基材の製造)
 炭素繊維として、繊維長20mmにカットした帝人株式会社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40-24K(平均繊維径7μm、単繊維数24,000本)を使用し、樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を用いて、米国特許第8946342号に記載された方法に基づき二次元ランダムに炭素繊維が配向した炭素繊維およびナイロン6樹脂の複合材料を作成した。得られた複合材料を260℃に加熱したプレス装置にて、2.0MPaにて5分間加熱し、平均厚み1.5mm、幅800mm×長さ1000mmの板状の原料基材(複合材料M)を得た。板状の原料基材に含まれる炭素繊維の解析を行ったところ、炭素繊維体積割合(Vf)は35Vol%、炭素繊維の繊維長は一定長であり、重量平均繊維長は20mmであった。
(X材料の作成)
 X材料(図5のXm)を、図5のように板状の原料基材からカットして作成した(切り出したX材料はすべて同じ形状である)。なお、図9は、切り出したX材料(図5のXm)の平面図であり、長さa1、a3、a4、及びa6は50mmであり、長さa2は260mmであり、長さa5は380mmであった。X材料に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長Lw は20mmであり、X材料の繊維体積割合(Vf )は35Vol%であった。
(Y材料の製造)
 上記X材料(図5のXm)を作成した後に発生する端材(図5のXmを切り抜いた残りの部分)よりY材料を作成した。具体的には、前記端材を市販の切断機に供給して切断する。切断機の切断刃寸法、切断刃間隔、粉砕時間、回転数を適宜変更して切断片の容積分布を測定することにより、切断片の容積を好ましい大きさに入る条件に調整することができる。さらに、切断片をフィルターに通し、一定粒度以下の切断片を回収する。フィルターを通過しない切断片は再度、切断機に供給して切断を行う。このように、フィルターの開口面積を調整することにより、好ましい切断片を集合体として得ることができる。
[0124]
 得られた切断片の集合体にユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を追加投入して、Y材料前駆体とした。このY材料前駆体を加熱して熱可塑性樹脂を溶融させると共に、混練した混練物を準備し、プレス成形型内へ投入する直前の材料をY材料とする。
[0125]
 Y材料に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長Lw Bを測定したところ0.3mmであった。Y材料の繊維体積割合(Vf )は10Vol%であった。
[0126]
 溶融混練機の供給口から供給されたY材料前駆体は、加熱シリンダーで外部からの加熱溶融作用と材料自身のせん断発熱、およびスクリュー本体の回転に伴う混練作用により均一に溶融する。剪断流動により樹脂を混練する。X材料を切り出した残りの端材を、Y材料の原料としたため、既に熱可塑性樹脂が炭素繊維に含浸している。このため、前記剪断流動の際の剪断力によって繊維が折損する程度を軽減でき、得られる繊維強化熱可塑性樹脂複合材料成形体中の炭素繊維の繊維長を長く保て、成形体の機械的特性を向上できた。
(プレス成形体の作成)
 X材料を120℃の熱風乾燥機で4時間乾燥した後、赤外線加熱機により290℃まで昇温し、図7に示したような成形上型4及び成形下型5からなる成形型内にX材料を配置した。図7に示すように、成形下型5には、プレス成形体の天面となる領域の中央部にY材料を射出するためのゲート6が1つ設けられている。成形型の温度は150℃である。
[0127]
 成形型を閉じ、X材料の一部に圧力が加わり始めたことを圧力計により確認した後に、ゲート6からY材料を成形型内に射出した(Y材料の加熱温度は240℃であり、Y材料の射出圧力は110kgf/m であった、約1078Pa)。その後、プレス圧力5MPaで1分間加圧して、X材料とY材料を同時にプレスし、図4の形状のプレス成形体を製造した。
[0128]
 使用したX材料の全重量Q と、使用したY材料の全重量Q との比であるQ :Q は、73:27であった。
[0129]
 結果を表1に示す。
[実施例2~5]
 プレス圧力、射出の際のY材料の加熱温度及びY材料の射出圧力を下記表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にプレス成形体を製造した。
[比較例1]
 実施例1と同様に原料基材を製造した。
[0130]
 X材料(図6のXm)を、図6のように板状の原料基材からカットして作成した(切り出したX材料はすべて同じ形状である)。X材料(図6のXm)は長さ480mm、幅360mmの板状であった。このX材料を用い、かつY材料を用いないこと以外は実施例1と同様にプレス成形を行い、プレス成形体を製造した。
[0131]
 なお、実施例1~5で製造したプレス成形体は、少なくとも1つの面内方向の端部に向けてY材料からなるY領域の占める割合が増加しており、少なくとも1つの面内方向の端部がY材料からなるY領域のみで形成されていた。
[0132]
[表1]


[0133]
 実施例1~5では、ショートショットの結果がGood以上であったが、Y材料を用いていない比較例1はBadであった。
[0134]
 また、実施例1~5では、X材料(図5のXm)を、図5のように板状の原料基材2からカットして作成しており、その際に発生した端材3を用いて、別のプレス成形用の成形材料(X材料)を作成することも可能であるし、端材3を用いてY材料を作成することも可能である。したがって、原料である複合材料のロスを低減でき、1枚の複合材料から切り出すことができる成形材料の数を多くすることができる。
[0135]
 また、実施例1~5では、X材料に加えてY材料を用いており、X材料のみ用いた比較例1よりもプレスの圧力を均一に加えることができる。
[0136]
 比較例1では、パターンカットせず、矩形形状の成形材料をそのまま用いたため、成形体となった際、4つの角部の重さが重くなった(余分な肉厚部が発生した)。また、成形体に余分な肉厚部分が発生した分、実施例のように、別のプレス成形用の成形材料やY材料を作成することもできなかった。
[参考実施例、参考比較例]
 本発明における更なる効果である、「天面部と立面部を有するプレス成形体を製造する際に、立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域から立面部を形成するキャビティ領域に、射出成形材料を流動させることができる」点を検証するため、以下の参考実験を行った。
(スプリングバック量)
 成形材料を100mm×100mmにカットして2枚重ね合わせ、合わせ面中央部に熱電対を挿入して、上下ヒーター温度340℃に加熱した予熱炉に投入し、熱電対温度が275℃になるまで加熱する。熱電対温度が275℃に達した時点で炉から取り出し、冷却固化させ予熱後の肉厚を測定する。予熱前肉厚と予熱後の肉厚比をスプリングバック量とし、下記式で表わす。
[0137]
 スプリングバック量=予熱後の肉厚t X1(mm)/予熱前の肉厚t X0(mm)
[参考実施例1]
(原料基材の製造)
 炭素繊維として、繊維長20mmにカットした帝人株式会社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40-24K(平均繊維径7μm、単繊維数24,000本)を使用し、樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を用いて、米国特許第8946342号に記載された方法に基づき二次元ランダムに炭素繊維が配向した炭素繊維およびナイロン6樹脂の複合材料を作成した。得られた複合材料を260℃に加熱したプレス装置にて、2.0MPaにて5分間加熱し、平均厚み1.4mmの板状の原料基材(複合材料M)を得た。板状の原料基材に含まれる炭素繊維の解析を行ったところ、炭素繊維体積割合(Vf)は35Vol%、炭素繊維の繊維長は一定長であり、重量平均繊維長は20mmであった。
(X材料の作成)
 X材料を、板状の原料基材からパターンカットして作成した。X材料に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長Lw は20mmであり、X材料の繊維体積割合(Vf )は35Vol%であった。
(Y材料の製造)
 上記X材料を作成した後に発生する端材よりY材料を作成した。具体的には、前記端材を市販の切断機に供給して切断する。切断機の切断刃寸法、切断刃間隔、粉砕時間、回転数を適宜変更して切断片の容積分布を測定することにより、切断片の容積を好ましい大きさに入る条件に調整することができる。さらに、切断片をフィルターに通し、一定粒度以下の切断片を回収する。フィルターを通過しない切断片は再度、切断機に供給して切断を行う。このように、フィルターの開口面積を調整することにより、好ましい切断片を集合体として得ることができる。
[0138]
 得られた切断片の集合体にユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を追加投入して、Y材料前駆体とした。このY材料前駆体を加熱して熱可塑性樹脂を溶融させると共に、混練した混練物を準備し、プレス成形型内へ投入する直前の材料をY材料とする。
Y材料に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長Lw を測定したところ0.3mmであった。Y材料の繊維体積割合(Vf )は10Vol%であった。
[0139]
 溶融混練機の供給口から供給されたY材料前駆体は、加熱シリンダーで外部からの加熱溶融作用と材料自身のせん断発熱、およびスクリュー本体の回転に伴う混練作用により均一に溶融する。剪断流動により樹脂を混練する。X材料を切り出した残りの端材を、Y材料の原料としたため、既に熱可塑性樹脂が炭素繊維に含浸している。このため、前記剪断流動の際の剪断力によって繊維が折損する程度を軽減でき、得られる繊維強化熱可塑性樹脂複合材料成形体中の炭素繊維の繊維長を長く保て、成形体の機械的特性を向上できた。
(プレス成形体の作成)
 X材料を120℃の熱風乾燥機で4時間乾燥した後、赤外線加熱機により290℃まで昇温し、図12に示したような成形上型4及び成形下型5からなる成形型内にX材料を配置した。図12に示すように、成形下型5には、プレス成形体の天面を形成するキャビティ領域の中央部(成形体における天面部の中央。図13の201)にY材料を射出するためのゲート6が1つ設けられている。成形型の温度は150℃である。
[0140]
 成形体の立面部の厚みt1が3.0mm、天面部の厚みt2が2.0mmとなるように、成形型キャビティを設計した。
[0141]
 成形型を閉じ、X材料の一部に圧力が加わり始めたことを圧力計により確認した後に、ゲート6からY材料を成形型内に射出した(Y材料の加熱温度は240℃であり、Y材料の射出圧力は110kgf/m であった。約1078Pa)。その後、プレス圧力5MPaで1分間加圧して、X材料とY材料を同時にプレスし、図4の形状のプレス成形体を製造した。使用したX材料の全重量Q と、使用したY材料の全重量Q との比であるQ :Q は、73:27であった。
[0142]
 得られた成形体の立面部の厚みt1、立面部に占めるX領域の厚みtx、立面部に占めるY領域の厚みty、天面部の厚みt2をそれぞれ測定した。
結果を表2に示す。
[参考比較例1]
 成形体の立面部の厚みt1が2.0mm、天面部の厚みt2が2.0mmとなるように成形型キャビティを設計した。
[0143]
 使用したX材料の全重量Q と、使用したY材料の全重量Q との比であるQ :Q を、69:31としたこと以外は実施例1と同様にプレス成形を行い、成形体を得た。得ようとした成形体は立面厚みが実施例1に比べて薄かったため、成形型キャビティ領域の厚みが小さくなった。
[0144]
[表2]


符号の説明

[0145]
 1 プレス成形体
 X X領域
 Y Y領域
 F フランジ部
 XY 遷移区間XY
 Xm X材料
 2 原料基材(複合材料M)
 3 端材
 4 成形上型
 5 成形下型
 6 ゲート
 S ショートショット
 7 天面部
 8 立面部
 9 フランジ部を形成するキャビティ領域
 10 天面部を形成するキャビティ領域
 11 立面部を形成するキャビティ領域
 t1 立面部の厚み
 t2 天面部の厚み
 201 射出用ゲートの位置
 T1 立面部を形成するキャビティ領域の厚み
 T2 天面部を形成するキャビティ領域の厚さ
 t X0 加熱前のX材料の厚み
 t X1 加熱後のスプリングバックしたX材料の厚み
 1601 成形上型に引きずられて作成された天面部
 1001 リブ(Y材料で作成)

請求の範囲

[請求項1]
 X材料を成形型内に配置する工程、
 前記成形型を閉じて、前記X材料の一部に圧力が加わり始めた後、混練された材料であるY材料を前記成形型内に射出する工程、及び
 前記X材料と前記Y材料とを前記成形型内でコールドプレスして、一体成形する工程、を有するプレス成形体の製造方法であって、
 前記X材料は、重量平均繊維長Lw の炭素繊維A及び熱可塑性樹脂R を含む複合材料Mから切り出されたものであり、
 前記Y材料は、重量平均繊維長Lw Bの炭素繊維B及び熱可塑性樹脂R を含み、
 Lw B<Lw であり、
 Lw が1mm以上100mm以下である、
プレス成形体の製造方法。
[請求項2]
 前記Y材料は、前記複合材料Mから前記X材料を切り出した残りの端材を原料として得られたものである、請求項1に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項3]
 前記X材料は前記複合材料Mからパターンカットされて切り出されたものである、請求項1又は2に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項4]
 使用する前記X材料の全重量Q と、使用する前記Y材料の全重量Q との比であるQ :Q が、99:1~50:50であり、
 前記プレス成形体の少なくとも1つの面内方向の端部に向けて、前記Y材料からなるY領域の占める割合が増加している、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項5]
 前記プレス成形体の少なくとも1つの面内方向の端部が、前記Y材料からなるY領域のみで形成されている、請求項4に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項6]
 前記プレス成形体は、前記X材料からなるX領域と、前記Y材料からなるY領域とが積層された遷移区間XYを有し、
 前記Y領域のみで形成されている面内方向の端部が、前記遷移区間XYのY領域と連続的に形成されている、請求項5に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項7]
 使用する前記X材料の体積V と、使用する前記Y材料の体積V とが、V ≧V の関係を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項8]
 重量平均繊維長Lw Bは1.0mm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項9]
 前記X材料の形状は、前記プレス成形体の3次元形状から、コンピューターにて逆成形解析により展開された形状である、請求項1~8のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項10]
 前記プレス成形体がフランジ部を有し、前記フランジ部の少なくとも1つの端部が前記Y材料からなるY領域のみで形成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項11]
 前記プレス成形体が、断面形状がハット形状である部分を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項12]
 前記X材料の繊維体積割合Vf と、前記Y材料の繊維体積割合Vf との関係が、Vf ≧Vf である、請求項1~11のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項13]
 前記X材料が板状であり、前記X材料の面内方向に前記Y材料を流動して延面して、前記プレス成形体を製造する、請求項1~12のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項14]
 前記Y材料が、前記複合材料から前記X材料を切り出した後に残った端材を砕いた材料を原料として得られたものである、請求項1~13のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項15]
 前記プレス成形体がフランジ部を有し、前記フランジ部の少なくとも1つの端部が前記Y材料からなるY領域のみで形成されている、請求項1~14のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項16]
 前記X材料は、スプリングバック量が1.0超14.0未満であり、
 前記プレス成形体は、立面部と天面部を有し、
 前記立面部の厚みt1と、前記天面部の厚みt2が、t1>t2を満たし、
 前記コールドプレスにおいて、前記Y材料を、前記立面部を形成するキャビティ領域以外のキャビティ領域から前記立面部を形成するキャビティ領域に流動させてプレス成形する、請求項1~15のいずれか1項に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項17]
 前記成形型は、前記立面部を形成するキャビティ領域の厚みT1と、前記天面部を形成するキャビティ領域の厚みT2とが、T1>T2であるキャビティを有する、請求項16に記載のプレス成形体の製造方法。
[請求項18]
 前記立面部を形成するキャビティ領域の厚みT1と、スプリングバックしたX材料の板厚tx とが、T1>T x1を満たす、請求項17に記載のプレス成形体の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]