処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2020196060 - 高強度鋼板

Document

明 細 書

発明の名称 高強度鋼板

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111  

実施例

0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129  

産業上の利用可能性

0130  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : 高強度鋼板

技術分野

[0001]
 本発明は高強度鋼板に関する。

背景技術

[0002]
 近年、環境保全につながる自動車の燃費向上等の観点から、自動車用鋼板を高強度化して薄くし、車体を軽量化することが求められている。一般的に、鋼板は強度が向上すると加工性が劣化する。しかし、近年の自動車の骨格系部品等に用いられる高強度鋼板は、穴広げ性や延性といった加工性の向上も要求される。また、高強度鋼板の加工は曲げ成形が主体となり、良好な曲げ性も重要となる。
[0003]
 ところで、鋼板の曲げ加工において、曲げ外周表層部には円周方向に引張応力がかかる一方で、曲げ内周表層部には圧縮応力がかかる。そのため、高強度鋼板の曲げ性には表層部の状態が影響する。そこで、高強度鋼板の表層部に軟質層を設けることによって曲げ加工時に表層部に生じる引張応力、圧縮応力を緩和し、高強度鋼板の曲げ性を改善する技術が知られている。
[0004]
 このような表層部に軟質層を有する高強度鋼板に関して、下記特許文献1~3に以下のような鋼板およびそれらの製造方法が開示されている。
[0005]
 まず、特許文献1では、鋼板とめっき層との界面から鋼板側に向って順に、Siおよび/またはMnの酸化物を含む内部酸化層と、前記内部酸化層を含む軟質層と、マルテンサイトとベイナイトを主体とする組織で構成される硬質層とを有し、前記軟質層の平均深さTが20μm以上、および前記内部酸化層の平均深さtが4μm以上、前記T未満を満足することを特徴とする高強度めっき鋼板およびその製造方法が記載されている。
[0006]
 次に、特許文献2では、鋼板表面から100μmの位置のビッカース硬度から、鋼板表面から深さ20μm位置のビッカース硬度を差し引いた値(△Hv)が30以上であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法が記載されている。
[0007]
 次に、特許文献3では、表層から板厚方向へ5μm位置のビッカース硬さが板厚方向の1/2位置の硬度の80%以下であり、表層から板厚方向へ15μm位置の硬度が板厚方向の1/2位置のビッカース硬度の90%以上であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2015-34334号公報
特許文献2 : 特開2015-117403号公報
特許文献3 : 国際公開第2016/013145号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 しかし、自動車の骨格系部品等に用いられる高強度鋼板は、曲げ性および加工性を向上させるとともに、曲げ荷重も同時に高められることが求められる。
[0010]
 そこで、本発明は、従来技術の現状に鑑み、加工性、曲げ荷重および曲げ性が高められた高強度鋼板を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明者らは、従来知見である表層に軟質部を有する鋼板を製造し、曲げ性を調査した。また、本発明者らは、鋼板の曲げ荷重を高めるため、表層において軟質組織中に硬質組織が分布した表層軟質部を有する鋼板を製造し、曲げ性を調査した。その結果、表層軟質部に分布させる硬質組織としてパーライトを活用し、パーライトとパーライトとの平均間隔を制御することで、鋼板の曲げ荷重および曲げ性を同時に高められ得ることを見出した。さらに、前述の表層軟質部の金属組織制御に加え、板厚中心部の金属組織も制御することによって、曲げ性と加工性がより優れた高強度鋼板が得られることを見出した。このようにして得られた本発明の要旨は以下のとおりである。
[0012]
 (1)板厚中心部と、前記板厚中心部の片側又は両側に形成された表層軟質部とを有する高強度鋼板であって、前記高強度鋼板の断面において、前記板厚中心部の金属組織が、面積率で、焼戻しマルテンサイト:85%以上、フェライト、ベイナイト、パーライト、残留オーステナイトの1種又は2種以上:合計で15%未満、及び焼入れままマルテンサイト:5%未満からなり、前記表層軟質部の金属組織が、面積率で、フェライト:65%以上、パーライト:5%以上20%未満、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトの1種又は2種以上:合計で10%未満、及び焼入れままマルテンサイト:5%未満からなり、片側又は両側に形成された前記表層軟質部のそれぞれの厚さが、10μm超、かつ、板厚の15%以下であり、前記表層軟質部のパーライトとパーライトとの平均間隔が3μm以上であり、前記板厚中心部のビッカース硬さ(Hc)および前記表層軟質部のビッカース硬さ(Hs)が、0.50≦Hs/Hc≦0.75を満足し、前記板厚中心部の成分組成が、質量%で、C:0.10%以上、0.30%以下、Si:0.01%以上、2.5%以下、Al:0%以上、2.50%以下、Mn:0.1%以上、10.0%以下、P:0.10%以下、S:0.050%以下、N:0.0100%以下、O:0.0060%以下、Cr:0%以上、5.0%以下、Mo:0%以上、1.00%以下、B:0%以上、0.0100%以下、Nb:0%以上、0.30%以下、Ti:0%以上、0.30%以下、V:0%以上、0.50%以下、Ni:0%以上、1.00%以下、Cu:0%以上、1.00%以下、Ca:0%以上、0.040%以下、Mg:0%以上、0.040%以下、及びREM:0%以上、0.040%以下を含有し、残部がFeおよび不純物であることを特徴とする高強度鋼板。
[0013]
 (2)前記板厚中心部の成分組成が、質量%で、Cr:0.1%以上、5.0%以下、
  Mo:0.01%以上、1.00%以下、B:0.0001%以上、0.0100%以下、Nb:0.001%以上、0.30%以下、Ti:0.001%以上、0.30%以下、V:0.001%以上、0.50%以下、Ni:0.0001%以上、1.00%以下、Cu:0.001%以上、1.00%以下、Ca:0.001%以上、0.040%以下、Mg:0.001%以上、0.040%以下、及びREM:0.001%以上、0.040%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
[0014]
 (3)前記表層軟質部のC含有量が前記板厚中心部のC含有量の0.9倍以下であることを特徴とする、前記(1)又は(2)の高強度鋼板。
[0015]
 (4)表面に溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかの高強度鋼板。
[0016]
 (5)表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかの高強度鋼板。

発明の効果

[0017]
 本発明によれば、加工性、曲げ荷重および曲げ性が高められた高強度鋼板を提供し得る。このような本発明の高強度鋼板は、例えば自動車等の骨格系部品に好適である。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
[0019]
 本実施形態の高強度鋼板は、板厚中心部と該板厚中心部の片面側又は両面側に形成された表層軟質部とを有する。はじめに、板厚中心部および表層軟質部の金属組織について説明する。なお、以下に示す金属組織の分率は、高強度鋼板の断面における各組織の割合を面積率で示すものである。よって、金属組織の分率の説明において、「%」は「面積%」を意味する。
[0020]
 [板厚中心部]
 まず、板厚中心部の金属組織は、85%以上の焼戻しマルテンサイトと、合計で15%未満のフェライト、ベイナイト、パーライトおよび残留オーステナイトの1種または2種以上と、5%未満の焼入れままマルテンサイトと、からなる。
[0021]
 「焼戻しマルテンサイト:85%以上」
 焼戻しマルテンサイトは、転位密度が高く硬質であり、鋼板の引張強度の向上に寄与する組織である。焼戻しマルテンサイトの面積率が85%未満である場合、鋼板は1180MPa以上の引張強度を満たしながら十分な穴広げ性が得られない場合がある。これは、組織の均一性が劣化するためである。したがって、焼戻しマルテンサイトの面積率は、85%以上とされ、100%であってもよい。
[0022]
 「フェライト、ベイナイト、パーライト、残留オーステナイトの1種以上:合計で15%未満」
 フェライトは、軟質な組織であるので変形し易く、鋼板の延性の向上に寄与する。しかし、硬質組織とフェライトとの界面は破壊の起点となり得る。フェライトが15%以上では、破壊の起点となり得る界面が多くなるため、鋼板の穴広げ性の劣化を招く場合がある。そのため、フェライトは15%未満とされ、ゼロでもよい。
[0023]
 ベイナイトは、転位密度が高いラス状のベイニティックフェライトとベイニティックフェライトの界面もしくは内部の炭化物を含み、硬質である。そのため、ベイナイトは鋼板の引張強度の向上に寄与する。ベイナイトが15%以上では、鋼板は1180MPa以上の引張強度を満足し得るが、組織の均一性が劣化して穴広げ性の劣化を招く場合がある。そのため、ベイナイトは15%未満とされ、ゼロでもよい。
[0024]
 残留オーステナイトは、加工誘起変態(Transformation Induced Plasticity:TRIP)効果により、鋼板の延性向上に寄与する組織である。一方で、残留オーステナイトは、加工誘起変態により焼入れままマルテンサイトに変態するため、鋼板の穴広げ性を劣化させる場合がある。そのため、残留オーステナイトは15%未満とされ、ゼロでもよい。
[0025]
 パーライトは、軟質なフェライトと硬質なセメンタイトとが層状に並んだ硬質な組織であり、鋼板の引張強度の向上に寄与する組織である。しかしながら、軟質なフェライトと硬質なセメンタイトとの界面は破壊の起点となり得る。パーライトが15%以上では、このような破壊の起点となり得る界面が多くなるため、鋼板の穴広げ性の劣化を招く場合がある。そのため、パーライトは15%未満とされ、ゼロでもよい。
[0026]
 フェライト、ベイナイト、パーライト、残留オーステナイトの2種以上を含有する場合、これらの組織の合計が15%以上では鋼板の穴広げ性が劣化する場合があるため、これらの組織の合計を15%未満とする。
[0027]
 「焼入れままマルテンサイト:5%未満」
 焼入れままマルテンサイトは、転位密度が高く非常に硬質な組織であり、鋼板の引張強度の向上に寄与する。しかしながら、焼入れままマルテンサイトは非常に硬質であるため、焼入れままマルテンサイトと他の組織との強度差が大きい。そのため、焼入れままマルテンサイトと他の組織との界面は破壊の起点となり得る。このような界面が多くなると鋼板の穴広げ性を劣化させる場合がある。そのため、焼入れままマルテンサイトは5%未満とされ、ゼロでもよい。
[0028]
 [表層軟質部]
 表層軟質部の金属組織は、少なくともフェライトとパーライトとを含む混合組織である。より具体的には、本実施形態の表層軟質部の金属組織は、65%以上のフェライトと、5%以上20%未満のパーライトと、合計で10%未満の焼戻しマルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイトの1種又は2種以上と、5%未満の焼入れままマルテンサイトと、で構成される。
[0029]
 「フェライト:65%以上」
 フェライトは、軟質な組織であるので変形しやすく、鋼板の曲げ性の向上に寄与する。フェライトが65%未満では、鋼板が曲げられた際に、表層軟質部が十分に変形できずに鋼板の曲げ性が低くなる場合がある。そのため、表層軟質部のフェライトは65%以上必要である。ただし、後述するように、表層軟質部にはパーライトも5%以上必要であるため、フェライトの上限は95%である。
[0030]
 「パーライト:5%以上20%未満」
 パーライトは、フェライト中に分散し、軟質なフェライトと硬質なセメンタイトとが層状に並んだ硬質な組織である。また、パーライトは、鋼板の曲げ荷重を高め得る組織である。表層軟質部のパーライトが5%未満では、鋼板の曲げ荷重が十分に高められない場合がある。一方、表層軟質部のパーライトが20%以上では、パーライトと軟質なフェライトとの界面が多くなる。当該界面は割れの起点となり得るため、当該界面が多くなれば、鋼板の曲げ性の劣化を招く場合がある。そのため、パーライトは5%以上20%未満とされる。
[0031]
 「焼戻しマルテンサイト:10%未満」
 焼戻しマルテンサイトは、転位密度が高く硬質であり、鋼板の曲げ荷重を高め得る組織である。ただし、焼戻しマルテンサイトが10%以上では、硬質な焼戻しマルテンサイトと軟質なフェライトとの界面が多くなる。当該界面は割れの起点となり得るため、当該界面が多くなれば、鋼板の曲げ性の劣化を招く場合がある。そのため、焼戻しマルテンサイトは10%未満とされ、ゼロでもよい。
[0032]
 「ベイナイト:10%未満」
 ベイナイトは、転位密度が高いラス状のベイニティックフェライトとベイニティックフェライトの界面もしくは内部の炭化物を含み、硬質である。そのため、ベイナイトは鋼板の曲げ荷重を高め得る組織である。しかしながら、ベイナイトが10%以上では、ベイナイトと軟質なフェライトとの界面が多くなる。当該界面は割れの起点となり得るため、当該界面が多くなれば、鋼板の曲げ性の劣化を招く場合がある。そのため、ベイナイトは10%未満とされ、ゼロでもよい。
[0033]
 「残留オーステナイト:10%未満」
 残留オーステナイトは、加工誘起変態効果により、鋼板の延性向上に寄与する組織である。一方で、残留オーステナイトは、加工誘起変態により焼入れままマルテンサイトに変態するため、鋼板の曲げ性を劣化させる場合がある。そのため、残留オーステナイトは10%未満とされ、ゼロでもよい。
[0034]
 焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトの2種以上を含有する場合、これらの組織の合計が10%以上となると、鋼板の曲げ性が劣化する場合がある。そのため、これらの組織の合計は10%未満とされることが好ましい。
[0035]
 「焼入れままマルテンサイト:5%未満」
 焼入れままマルテンサイトは、転位密度が高く非常に硬質な組織であり、鋼板の曲げ荷重を高め得る組織である。しかしながら、焼入れままマルテンサイトは非常に硬質であるため、焼入れままマルテンサイトと他の組織との強度差が大きい。そのため、焼入れままマルテンサイトと他の組織との界面は破壊の起点となり得る。このような界面が多くなると、鋼板の曲げ性が大きく劣化する場合がある。そのため、焼入れままマルテンサイトは5%未満され、ゼロでもよい。
[0036]
 なお、本発明において、板厚中心部における各金属組織の同定および面積率の算出は、以下のように行われる。
[0037]
 「フェライト」
 まず、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を有する試料を採取し、当該断面を観察面とする。この観察面のうち、鋼板表面から板厚の1/4の位置を中心とする100μm×100μmの領域を観察領域とする。この観察領域を走査型電子顕微鏡によって1000~50000倍にして観察することで見られる電子チャンネリングコントラスト像は、結晶粒の結晶方位差をコントラストの差として表示する像である。この電子チャンネリングコントラスト像において均一なコントラストの部分がフェライトである。そして、このようにして同定されるフェライトの面積率をポイントカウンティング法(ASTM E562準拠)によって算出する。
[0038]
 「パーライト」
 まず、上記観察面をナイタール試薬で腐食する。腐食された観察面のうち、鋼板表面から板厚の1/4の位置を中心とする100μm×100μmの領域を観察領域とする。この観察領域を光学顕微鏡で1000~50000倍にして観察し、観察像において暗いコントラストの領域をパーライトとする。そして、このようにして同定されるパーライトの面積率をポイントカウンティング法によって算出する。
[0039]
 「ベイナイト及び焼戻しマルテンサイト」
 上記のようにナイタール試薬で腐食された観察領域を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM:Field Emission Scanning Electron Microscope)によって1000~50000倍にして観察する。この観察領域において、組織内部に含まれるセメンタイトの位置およびセメンタイトの配列から、以下のようにベイナイト及び焼戻しマルテンサイトを同定する。
[0040]
 ベイナイトの存在状態としては、ラス状のベイニティックフェライトの界面にセメンタイト又は残留オーステナイトが存在している場合や、ラス状のベイニティックフェライトの内部にセメンタイトが存在している場合ある。ラス状のベイニティックフェライトの界面にセメンタイト又は残留オーステナイトが存在している場合は、ベイニティックフェライトの界面がわかるため、ベイナイトを同定することができる。また、ラス状のベイニティックフェライトの内部にセメンタイトが存在している場合、ベイニティックフェライトとセメンタイトの結晶方位関係が1種類であり、セメンタイトが同一のバリアントを持つことから、ベイナイトを同定することができる。このようにして同定されるベイナイトの面積率をポイントカウンティング法によって算出する。
[0041]
 焼戻しマルテンサイトでは、マルテンサイトラスの内部にセメンタイトが存在するが、マルテンサイトラスとセメンタイトの結晶方位が2種類以上あり、セメンタイトが複数のバリアントを持つことから、焼戻しマルテンサイトを同定することができる。このようにして同定される焼戻しマルテンサイトの面積率をポイントカウンティング法によって算出する。
[0042]
 「焼入れままマルテンサイト」
 まず、上記フェライトの同定に用いた観察面と同様の観察面をレペラ液でエッチングし、上記フェライトの同定と同様の領域を観察領域とする。レペラ液による腐食では、マルテンサイトおよび残留オーステナイトは腐食されない。そのため、レペラ液によって腐食された観察領域をFE-SEMで観察し、腐食されていない領域をマルテンサイトおよび残留オーステナイトとする。そして、このようにして同定されるマルテンサイトおよび残留オーステナイトの合計面積率をポイントカウンティング法によって算出する。次に、以下のようにして算出される残留オーステナイトの体積率を残留オーステナイトの面積率と見なし、当該面積率を上記合計面積率から差し引くことにより、焼入れままマルテンサイトの面積率を算出することができる。
[0043]
 「残留オーステナイト」
 残留オーステナイトの体積率は、X線回折法で求めることができる。まず、上記のように採取した試料のうち鋼板の表面から板厚の1/4の位置までを機械研磨及び化学研磨により除去し、鋼板の表面から板厚の1/4の位置の面を露出させる。そして、このようにして露出した面にMoKα線を照射し、bcc相の(200)面、(211)面、及び、fcc相の(200)面、(220)面、(311)面の回折ピークの積分強度比を求める。この回折ピークの積分強度比から、残留オーステナイトの体積率を算出できる。この算出方法としては、一般的な5ピーク法を用いることができる。このようにして求めた残留オーステナイトの体積率を残留オーステナイトの面積率とする。
[0044]
 また、本発明において、表層軟質部における各金属組織の同定および面積率の算出は、以下のように行われる。
[0045]
 まず、上記板厚中心部における金属組織の同定方法と同様に試料を採取する。当該試料の観察面のうち、後述するようにして表層軟質部と定義される範囲内において、板厚方向に偏りがないようにランダムに複数の観察領域を選択する。これらの観察領域の合計面積は、2.0×10 -9以上とされる。残留オーステナイト以外の組織の同定方法は、観察領域が異なる以外、上記板厚中心部における金属組織の同定方法と同様である。
[0046]
 表層軟質部の残留オーステナイトの体積率は、電子後方散乱回折法(EBSD:Electron BackScattering Diffraction法)により、観察領域の結晶方位情報を取得することで求めることができる。
[0047]
 具体的には、まず、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を有する試料を採取する。当該断面を観察面とし、エメリー紙による湿式研磨、1μmの平均粒子サイズをもつダイヤモンド砥粒による研磨、および化学研磨を観察面に順次施す。そして、このように研磨された観察面のうち後述する方法によって表層軟質部と判断される範囲内において、板厚方向に偏りがないようにランダムに複数の観察領域を選択し、合計で2.0×10 -9以上の領域の結晶方位を0.05μm間隔で取得する。
[0048]
 この際に、本発明では結晶方位のデータ取得ソフトとして、株式会社TSLソリューションズ製のソフトウェア「OIM Data Collection TM (ver.7)」等を用いた。取得した結晶方位情報は、株式会社TSLソリューションズ製のソフトウェア「OIM Analysis TM (ver.7)」でbcc相とfcc相に分離した。このfcc相が残留オーステナイトである。このようにして求められる残留オーステナイトの体積率を残留オーステナイトの面積率と見なし、上記のように焼入れままマルテンサイトまたは残留オーステナイトと判断される領域の面積率から引くことにより、焼入れままマルテンサイトの面積率を求めることができる。
[0049]
 さらに、本発明の高強度鋼板において、片側の表層軟質部の厚さは10μm以上、かつ、板厚の15%以下である。また、表層軟質部のパーライトとパーライトとの平均間隔は3μm以上である。さらに、表層軟質部において、板厚中心部のビッカース硬さHcと表層軟質部のビッカース硬さHsとの比Hs/Hcは、0.50≦Hs/Hc≦0.75を満たす。
[0050]
 「表層軟質部の厚さ:10μm超、かつ、板厚の15%以下」
 表層軟質部は、曲げ性を向上する効果がある。表層軟質部の厚さが10μm以下では、表層軟質部を設けた効果はほとんど得られない。一方、表層軟質部の厚さが板厚の15%を超えると、曲げ荷重および引張強度が大きく低下する場合がある。したがって、本発明の高強度鋼板では、表層軟質部の厚さを、10μm以上、かつ、板厚の15%以下とする。鋼板の両側に表層軟質部を有する場合は、それぞれの表層軟質部について、厚さを10μm以上、かつ、板厚の15%以下とする。
[0051]
 「表層軟質部のパーライトとパーライトとの平均間隔が3μm以上」
 硬質なパーライトと軟質なフェライトとの界面は硬度差が大きいため、当該界面が破壊の起点となって鋼板の曲げ性の劣化を招く場合がある。しかしながら、表層軟質部のパーライトとパーライトとの平均間隔が3μm以上とされることによって、前記界面に生成するボイド同士の連結が抑制され、鋼板の曲げ性の劣化が抑制され得る。前記平均間隔の上限は特に限定されないが、表層軟質部の硬さHsや曲げ荷重の低下を抑制する観点からは、前記平均間隔は50μm以下であることが好ましい。
[0052]
 パーライトの平均間隔Dを直接的に求めることは困難である。そのため、パーライトの平均間隔Dは以下のようにして求められる。すなわち、パーライトの平均間隔Dは、パーライトの面積率A (0≦A ≦1)とパーライトの平均長さdとを用いて、以下の式(1)で定義される。ここで、パーライトの平均長さdは、次のようにして求められる。まず、後述するようにして定義される表層軟質部において、板厚方向に偏りがないようにランダムに複数の観察領域を選択する。観察領域は、合計で2.0×10 -9以上とする。次に、観察領域内に含まれるパーライトの総面積を観察領域内に含まれるパーライトの総数で割った値をパーライトの平均面積とする。そして、このパーライトの平均面積の平方根をパーライトの平均長さdとする。
[0053]
[数1]


[0054]
 「0.50≦Hs/Hc≦0.75」
 表層軟質部のビッカース硬さHsは、曲げ性の向上と曲げ荷重の確保に重要な因子である。表層軟質部のビッカース硬さHsと板厚中心部のビッカース硬さHcとの比Hs/Hcが0.50未満では、曲げ性は向上するものの曲げ荷重の大きな低下を招く場合がある。一方、Hs/Hcが0.75超では、曲げ荷重が高められるものの、曲げ性の大きな改善を得にくい。
[0055]
 なお、本発明において、板厚中心部のビッカース硬さHcおよび表層軟質部のビッカース硬さHsは、以下のようにして押し込み荷重100g重(0.98N)でJIS Z 2244(2009)に準拠した方法によりビッカース硬度計を用いて測定して決定される。
[0056]
 まず、板厚の1/2の位置から表面に向かって板厚の2%の間隔で、板厚方向に垂直且つ圧延方向に平行な線上において、5点ずつビッカース硬さを測定する。そして、このように測定されるそれぞれの板厚方向位置の5点のビッカース硬さの平均値を求め、その平均値をそれぞれの板厚方向位置におけるビッカース硬さとする。そして、板厚の1/2の位置におけるビッカース硬さを板厚中心部のビッカース硬さHcとする。
[0057]
 次に、板厚の1/2の位置におけるビッカース硬さに対してビッカース硬さが0.9倍以下となる板厚方向位置よりも表面側を、「表層軟質部」と定義する。このようにして定義される表層軟質部において、ランダムに10点のビッカース硬さを測定し、それらの10点のビッカース硬さの平均値を表層軟質部の平均ビッカース硬さHsとする。
[0058]
 本発明の鋼板の成分組成は、上述した組織が得られる範囲であれば特に限定されない。以下、本発明の鋼板に好適な成分組成の一例について説明する。以下、成分組成に係る「%」は「質量%」を意味する。
[0059]
 はじめに、板厚中心部の成分組成について説明する。
[0060]
 「C:0.10%以上、0.30%以下」
 Cは、所定量の焼戻しマルテンサイトを確保し、鋼板の強度を向上させる元素である。所定量の焼戻しマルテンサイトを得、引張強度を、好ましくは1180MPa以上に向上させるためには、Cの含有量は0.10%以上とすることが好ましい。一方、Cの含有量が0.30%を超えると、炭化物の生成が過多になって鋼板の穴広げ性が低下する場合がある。そのため、Cの含有量は0.30%以下であることが好ましい。
[0061]
 「Si:0.1%以上、2.5%以下」
 Siは、脱酸剤として作用する元素である。また、Siは、炭化物及び熱処理後の残留オーステナイトの形態に影響を及ぼす元素である。Siは、残留オーステナイトを活用して鋼板の高強度化を図るために有効である。炭化物の生成を抑制して鋼板の加工性の劣化を抑制するためには、Siの含有量が0.1%以上であることが好ましい。なお、Siの含有量を0.1%未満に抑えることは、現状の精錬プロセスではコストの増加を招く。一方、Siの含有量が2.5%を超えると、鋼板の脆化を招いて加工性を低下させる場合があるため、Siの含有量は2.5%以下であることが好ましい。
[0062]
 「Al:0%以上、2.500%以下」
 Alは、鋼の脱酸剤として作用してフェライトを安定化する元素であり、必要に応じて添加される。Alによってフェライトを安定化するためには、Alの含有量が0.001%以上であることが好ましい。一方、Alの含有量が2.500%を超えると、粗大なAl酸化物が生成して鋼板の加工性が低下する場合がある。このため、Alの含有量は2.50%以下であることが好ましい。
[0063]
 「Mn:0.1%以上、10.0%以下」
 Mnは、脱酸剤として作用する元素である。また、Mnは、焼入れ性を向上させる元素である。十分な焼戻しマルテンサイトを得るためには、Mnの含有量が0.1%以上であることが好ましい。一方、Mnの含有量が10.0%を超えると、粗大なMn酸化物が鋼中に形成され、それがプレス成型時に破壊の起点となって鋼板の加工性が劣化する場合がある。このため、Mnの含有量は10.0%以下であることが好ましい。
[0064]
 「P:0.100%以下」
 Pは、不純物元素であり、鋼板の板厚中央部に偏析して靭性を低下させる場合がある。また、Pは、溶接部を脆化させる元素である。Pの含有量が0.100%を超えると、溶接部強度や穴広げ性が著しく低下する場合があるため、Pの含有量は0.10%以下であることが好ましい。Pの含有量は、より好ましくは0.010%以下である。なお、Pの含有量は、少ないほど好ましく、0%でもよい。ただし、実用鋼板でPの含有量を0.0001%未満に低減するためには、製造コストが大幅に上昇して経済的に不利になる。このため、Pの含有量の実質的な下限は0.0001%である。
[0065]
 「S:0.050%以下」
 Sは、不純物元素であり、溶接性を低下させる場合がある。また、Sは、鋳造時と熱延時の製造性を低下させる場合がある。さらに、Sは、粗大なMnSを形成して、鋼板の穴広げ性を低下させる場合もある。Sの含有量が0.050%を超えると、溶接性の低下、製造性の低下、及び、穴広げ性の低下が顕著になるので、Sの含有量は0.050%以下であることが好ましい。Sの含有量は、より好ましくは0.010%以下である。Sの含有量は、少ないほど好ましく、0%でもよい。ただし、実用鋼板でSの含有量を0.0001%未満に低減するためには、製造コストが大幅に上昇して経済的に不利になる。このため、Sの含有量の実質的な下限は0.0001%である。
[0066]
 「N:0.01000%以下」
 Nは、粗大な窒化物を形成して鋼板の曲げ性や穴広げ性を低下させる場合がある。また、Nは、溶接時のブローホールの発生原因となり得る元素である。Nの含有量が0.01000%を超えると、鋼板の穴広げ性の低下やブローホールの発生が顕著となるので、Nの含有量は0.01000%以下であることが好ましい。Nの含有量は、少ないほど好ましく、0%でもよい。ただし、実用鋼板でNの含有量を0.00050%未満に低減するためには、製造コストが大幅に上昇して経済的に不利になる。このため、Nの含有量の実質的な下限は0.00050%である。
[0067]
 「O:0.0060%以下」
 Oは、粗大な酸化物を形成して鋼板の曲げ性や穴広げ性を低下させる場合がある。また、Oは、溶接時のブローホールの発生原因となり得る元素である。Oの含有量が0.0060%を超えると、鋼板の穴広げ性の低下やブローホールの発生が顕著となるので、Oの含有量は0.0060%以下であることが好ましい。Oの含有量は、少ないほど好ましく、0%でもよい。ただし、実用鋼板でOの含有量を0.0005%未満に低減するためには、製造コストが大幅に上昇して経済的に不利になる。このため、Oの含有量の実質的な下限は0.0005%である。
[0068]
 「Cr:0%以上、5.00%以下」
 Crは、Mnと同様に焼入れ性を高めて鋼板の高強度化に有効な元素であり、必要に応じて添加される。Crによって焼入れ性を高めて鋼板を高強度化するためには、Crの含有量は0.10%以上であることが好ましい。一方、Crの含有量が5.00%を超えると、Crが鋼板の中心部に偏析して粗大なCr炭化物が形成され、冷間成形性を低下させる場合がある。このため、Crの含有量は5.00%以下であることが好ましい。
[0069]
 「Mo:0%以上、1.000%以下」
 Moは、Mn、Crと同様に鋼板の強化に有効な元素であり、必要に応じて添加される。Moによって鋼板を高強度化するためには、Moの含有量は0.010%以上であることが好ましい。一方、Moの含有量が1.000%を超えると、粗大なMo炭化物が形成されて鋼板の冷間加工性が低下する場合がある。このため、Moの含有量は1.000%以下であることが好ましい。
[0070]
 「B:0%以上、0.0100%以下」
 Bは、オーステナイトからの冷却過程においてフェライト及びパーライトの生成を抑え、ベイナイト又はマルテンサイト等の低温変態組織の生成を促す元素である。また、Bは、鋼板の高強度化に有益な元素であり、必要に応じて添加される。Bによる上記効果を得るためには、Bの含有量が0.0001%以上であることが好ましい。なお、0.0001%未満のBを同定するためには、細心の注意を払って分析する必要があるとともに、分析装置によっては検出下限に至る。一方、Bの含有量が0.0100%を超える場合、鋼中に粗大なB酸化物の生成を招き、それがプレス成型時のボイドの発生起点となり、鋼板の加工性が劣化する場合がある。このため、Bの含有量は0.0100%以下であることが好ましい。
[0071]
 「Nb:0%以上、0.300%以下」
 Nbは、炭化物の形態制御に有効な元素であり、その添加により組織を微細化するため鋼板の靭性の向上にも効果的な元素である。Nbによる当該効果を得るためには、Nbの含有量を0.001%以上とすることが好ましい。一方、Nbの含有量が0.300%を超えると、微細で硬質なNb炭化物が多数析出し、鋼板の強度が上昇するとともに延性が顕著に劣化し、加工性が低下する場合がある。このため、Nbの含有量は0.300%以下であることが好ましい。
[0072]
 「Ti:0%以上、0.300%以下」
 Tiは、Nbと同様に炭化物の形態制御に重要な元素であり、多量の含有によりフェライトの強度増加を促す元素である。鋼板の加工性の確保の観点から、Tiの含有量は少ないほど好ましく、0%であってもよい。しかし、Tiの含有量を0.001%未満に低減することは精錬コストの増加を招くため、Tiの含有量の実質的な下限は0.001%である。一方、Tiの含有量が0.300%を超えると、粗大なTi酸化物又はTiNが鋼中に存在して鋼板の加工性を低下させる場合がある。このため、Tiの含有量は0.300%以下であることが好ましい。
[0073]
 「V:0%以上、0.500%以下」
 Vも、TiやNbと同様に、炭化物の形態制御に有効な元素であり、その添加により組織を微細化するため鋼板の靭性の向上にも効果的な元素である。Vによる当該効果を得るためには、Vの含有量は0.001%以上であることが好ましい。一方、Vの含有量が0.500%を超えると、微細なV炭化物が多数析出し、鋼板の強度が上昇するとともに延性が顕著に劣化し、加工性が低下する場合がある。このため、Vの含有量は0.500%以下であることが好ましい。
[0074]
 「Ni:0%以上、1.00%以下」
 Niは、鋼板の強度の向上に有効な元素であり、必要に応じて添加される。Niによって鋼板を高強度化するためには、Niの含有量は0.01%以上であることが好ましい。一方、Niの含有量が1.00%を超えると、鋼板の延性が低下して加工性の低下を招く場合がある。このため、Niの含有量は1.00%以下であることが好ましい。
[0075]
 「Cu:0%以上、1.000%以下」
 Cuは、鋼板の強度の向上に有効な元素であり、必要に応じて添加される。Cuによって鋼板を高強度化するためには、Cuの含有量は0.001%以上であることが好ましい。一方、Cuの含有量が1.000%を超えると、赤熱脆性を招いて熱延での生産性が低下する場合がある。このため、Cuの含有量は1.000%以下であることが好ましい。
[0076]
 「Ca:0%以上、0.040%以下」
 Caは、微量添加で硫化物の形態を制御できる元素であり、必要に応じて添加される。Caによって硫化物の形態を制御する効果を得るためには、Caの含有量は0.001%以上であることが好ましい。一方、Caの含有量が過剰であると、粗大なCa酸化物が生成し、それがプレス成型時のボイドの発生起点となって加工性が劣化する場合がある。このため、Caの含有量は0.040%以下であることが好ましい。
[0077]
 「Mg:0%以上、0.040%以下」
 Mgは、Caと同様に微量添加で硫化物の形態を制御できる元素であり、必要に応じて添加される。Mgによって硫化物の形態を制御する効果を得るためには、Mgの含有量は0.001%以上であることが好ましい。一方、Mgの含有量が過剰であると、粗大な介在物の形成によって鋼板の加工性が低下する場合がある。このため、Mgの含有量は0.040%以下であることが好ましい。
[0078]
 「REM:0%以上、0.040%以下」
 REM(希土類金属:Rare-Earth Metal)は、CaやMgと同様に微量添加で硫化物の形態を制御できる元素であり、必要に応じて添加される。本発明の高強度鋼板が含むREMとしては、W,Ta,Sn,Sb,As,Zr,Y,La,Ceが例示される。REMの含有量は0%でも良いが、REMによって硫化物の形態を制御する効果を得るためには、REMの含有量は0.001%以上であることが好ましい。一方、REMの含有量が過剰であると、粗大な介在物の形成によって鋼板の加工性が低下する場合がある。このため、REMの含有量は0.040%以下であることが好ましい。REMは、ミッシュメタルとして添加される場合が多いが、LaやCeの他にランタノイド系列の元素を複合して添加される場合もある。
[0079]
 なお、板厚中心部の化学組成の残部は、Feおよび不純物である。不純物としては、鋼原料もしくはスクラップから不可避的に混入する元素又は製鋼過程で不可避的に混入する元素であって、本発明の高強度鋼板が上記本発明の効果を奏し得る範囲で含有が許容される元素を例示することができる。
[0080]
 次に、表層軟質部の成分組成について説明する。表層軟質部の成分範囲は板厚中心部と同様であるが、表層軟質部におけるCの含有量が板厚中心部におけるCの含有量の0.9倍以下であることが好ましい。表層軟質部のC含有量が板厚中心部のC含有量の0.9倍以下であることによって、板厚中心部に対して表層軟質部の軟質化することが容易になり、鋼板の曲げ性を改善することが容易になる。
[0081]
 なお、表層軟質部のC以外の成分範囲は、含有量の範囲、その理由とも上述の板厚中心部の成分範囲と同じである。本発明の高強度鋼板においては、表層軟質部のC以外の含有量は、板厚中心部とほとんど違いはない。
[0082]
 次に、本発明の高強度鋼板の製造方法の一例について説明する。本発明の高強度鋼板は、たとえば次のように製造することができる。
[0083]
 まず、本発明の高強度鋼板の上記成分組成を有する鋳造スラブを作製する。その後、当該スラブを直接、又は一旦冷却した後に1100℃以上に加熱して、熱間圧延に供する。Ar 変態点以上の温度域で熱間圧延を完了し、熱延完了後の熱延鋼板を700℃以下の温度域で巻き取る。さらに、70℃以上100℃以下の温度で50秒以上300秒以下の時間、熱延鋼板を酸洗する。
[0084]
 上記酸洗後の熱延鋼板を、圧下率30%以上、80%以下の冷間圧延に供して冷延鋼板とする。以下、この「冷延鋼板」を単に「鋼板」という場合がある。次いで、酸素分圧P O2(atm)の対数:logP O2が、-26以上、-22以下の雰囲気中、「Ac3-30℃」以上、950℃以下の温度域において、鋼板を加熱して焼鈍する。Ac3は、オーステナイト逆変態完了温度であり、熱延鋼板から切り出した小片を1℃/秒で1100℃まで加熱し、その間の体積膨張を測定することで求められる。
[0085]
 上記焼鈍後は、下記1)または2)の冷却工程を行う。
1)20℃/秒以上の平均冷却速度で、25℃以上、600℃以下の温度域に鋼板を冷却し、次いで、100℃以上400℃以下の温度域で1000秒以下、鋼板を停留させる。
2)0.5℃/秒以上、20℃/秒以下の平均冷却速度で、600℃以上、750℃以下の温度域に鋼板を冷却し(1段目の冷却)、次いで、20℃/秒以上の平均冷却速度で、25℃以上、600℃以下の温度域に鋼板を冷却し(2段目の冷却)、次いで、100℃以上400℃以下の温度域で1000秒以下、鋼板を停留させる。
[0086]
 以下、上記の各工程条件について詳細に説明する。
[0087]
 「鋳造スラブ」
 熱間圧延に供される鋳造スラブは、鋳造されたスラブであればよく、特定の鋳造スラブに限定されない。例えば、連続鋳造スラブや、薄スラブキャスターで製造されたスラブであればよい。
[0088]
 「鋳造スラブの加熱温度:1100℃以上」
 一旦冷却した鋳造スラブを加熱してから熱間圧延に供する場合、鋳造スラブを1100℃以上に加熱する。本発明の高強度鋼板の製造に用いる鋳造スラブは、本発明の高強度鋼板の引張強度を1180MPa以上とするため、合金元素を比較的多く含有している。このため、鋳造スラブを熱間圧延に供する前に、鋳造スラブを加熱して合金元素を鋳造スラブ中に固溶させる必要がある。鋳造スラブの加熱温度が1100℃未満であると、合金元素が鋳造スラブ中に十分に固溶せずに粗大な合金炭化物が残り、熱間圧延中に脆化割れが生じる場合がある。このため、鋳造スラブの加熱温度は1100℃以上であることが好ましい。鋳造スラブの加熱温度の上限は、特に限定されないが、加熱設備の加熱能力や生産性の観点から1250℃以下であることが好ましい。
[0089]
 「熱間圧延完了温度域:Ar 変態点以上」
 上記のように本発明の高強度鋼板の製造に用いる鋳造スラブは合金元素を比較的多く含有しているため、熱間圧延の際に圧延荷重を大きくする必要がある。このため、熱間圧延は高温で行われることが好ましい。熱間圧延完了温度域は、鋼板の金属組織の制御の点で重要である。熱間圧延完了温度域が、(オーステナイト+フェライト)の2相温度域にあると、金属組織の不均一性が大きくなり、熱処理後の成形性が低下する場合がある。このため、熱間圧延完了温度域をAr 変態点以上の温度域とする。なお、熱間圧延の際、粗圧延鋼板を接合して連続的に熱間圧延を行ってもよい。
[0090]
 「熱延鋼板の巻取温度域:700℃以下」
 熱延鋼板の巻取温度が700℃を超えると、金属組織の不均一性が大きくなって熱処理後の成形性が劣化しやすい。このため、巻取温度域は700℃以下とされることが好ましい。巻取温度域の下限は特に限定されないが、巻取温度を室温以下とすることは技術的に困難であるので、室温が巻取温度の実質的な下限である。
[0091]
 [酸洗:70℃以上の温度で50秒以上300秒以下]
 上記のように巻き取った熱延鋼板を、70℃以上の温度で50秒以上300秒以下の時間、酸洗する。この酸洗工程では、熱延鋼板の表面の酸化物を除去し、冷延鋼板の化成処理性やめっき性の向上を図る。さらに、酸洗条件を制御することで熱延鋼板の表面粗度を制御することができ、後工程の冷間圧延で表層にせん断ひずみを効率的に導入することができる。
[0092]
 上述の酸洗条件によれば、酸洗により冷延前の鋼板表面のピークカウント数(PPc)を60(/mm)以上となり、冷延により導入される表層せん断歪を制御できる。ピークカウント数(PPc)は、JIS B 0601(2013)に準拠して触針式表面粗さ測定機を用いて測定される。通常の酸洗条件ではパーライトとパーライトの平均間隔を十分に広くすることができないが、上記の酸洗方法によれば、後工程の焼鈍において表層軟質部のパーライトとパーライトとの平均間隔を制御することができる。
[0093]
 酸洗に用いる溶液は、通常の酸洗に用いる溶液であればよく、たとえば5vol.%以上の塩酸や硫酸が挙げられる。また、酸洗は一回でもよく、必要に応じ複数回に分けて行ってもよい。上記の酸洗時間は、酸洗を1回だけ行う場合は当該酸洗の時間を意味し、酸洗を複数回行う場合はこれらの酸洗の合計時間を意味する。酸洗温度を70℃以上とすることによって、表層の酸化物を十分に除去し得る。酸洗温度の上限は特に限定されないが、現実的には95℃程度である。また、酸洗時間を50秒以上とすることによって、表面粗度を大きくして冷間圧延での表層へのせん断ひずみの導入が容易になる。酸洗時間の下限は、好ましくは100秒である。一方、酸洗時間が300秒超の場合は、表面粗度が過度に粗くなって表面清浄が悪化し、さらに、冷延後に残った凹凸がノッチのような効果を生じさせ、曲げ性が劣化する場合がある。酸洗時間の上限は、好ましくは200秒である。
[0094]
 「冷間圧延の圧下率:30%以上、80%以下」
 上記のように酸洗した熱延鋼板を、圧下率30%以上、80%以下の冷間圧延に供して冷延鋼板とする。冷間圧延の圧下率を30%以上とすることによって、冷延鋼板の形状を平坦に保って最終製品の延性低下を抑制し得る。冷間圧延の圧下率は、好ましくは50%以上である。一方、冷間圧延の圧下率を80%以下とすることによって、圧延荷重が過大になって圧延が困難となることを抑制し得る。冷間圧延の圧下率は、好ましくは70%以下である。圧延パスの回数およびパス毎の圧下率は、特に限定されず、冷間圧延の圧下率が上記範囲となるように適宜設定されればよい。
[0095]
 「雰囲気の酸素分圧P O2の対数logP O2:-26以上、-22以下」
 「焼鈍温度域:「Ac3-30℃」以上、950℃以下」
 連続焼鈍ラインの加熱炉及び均熱炉において、炉内雰囲気の酸素分圧P O2の対数logP O2を、-26以上、-22以下に維持し、「Ac3-30℃」以上、950℃以下の温度域に鋼板を加熱して、鋼板に焼鈍を施す。
[0096]
 加熱炉及び均熱炉による焼鈍において、「Ac3-30℃」以上の温度域で、鋼板表面の脱炭が進み、表層の炭素量が低下する。表層の炭素量が低下して表層の焼入れ性が低下することにより、表層において適切な量のフェライトとパーライトを得ることができる。このような脱炭を促進するため、炉内雰囲気の酸素分圧:P O2を適切な範囲に限定する。
[0097]
 雰囲気の酸素分圧P O2の対数logP O2が-26以上であると、酸素ポテンシャルが十分に高くなって上記脱炭が進行し、SiやMnの外部酸化状態が抑制され、良好なめっき密着性を確保し得る。logP O2は、好ましくは-25以上である。一方、logP O2が-22以下であると、酸素ポテンシャルが高すぎることによる過度な脱炭が抑制され、Si及びMnだけでなく素地鋼板自体も酸化されてしまうことが抑制され、所望の表面状態を得やすくなる。
[0098]
 焼鈍温度域を「Ac3-30℃」以上とすることによって、焼鈍中にオーステナイトが生成し、最終組織として所定量の焼戻しマルテンサイトを得やすくなる。このため、鋼板が所望の引張強度を満たし易くなる。一方、焼鈍温度域を950℃超とする場合、鋼板の特性上は問題ないが、生産性が低下する。このため、焼鈍温度域は950℃以下であることが好ましく、900℃以下であることがより好ましい。
[0099]
 上記1)の冷却工程
 「平均冷却速度:20℃/秒以上」
 「冷却停止温度:25℃以上、450℃以下」
 焼鈍後の鋼板を、20℃/秒以上の平均冷却速度で、25℃以上、450℃以下の温度域まで冷却する。この冷却は、所定量の焼戻しマルテンサイトの元となる焼入れままマルテンサイトを得る点で、重要である。
[0100]
 焼入れままマルテンサイトは、25℃以上、450℃以下の温度域において、変態前のオーステナイト粒に存在する微量の転位を核として変態して生成する。焼鈍温度から、25℃以上、450℃以下の温度域に到達するまでの平均冷却速度を20℃/秒以上とすることによって、変態前のオーステナイト粒に含まれる上記転位が消滅してしまうことが抑制される。この冷却工程における平均冷却速度は、好ましくは35℃/秒以上である。
[0101]
 冷却停止温度を25℃以上とすることによって、生産性の低下を抑制できる。冷却停止温度は、好ましくは100℃以上である。一方、冷却停止温度を450℃以下とすることによって、ベイナイトやフェライト、パーライトの生成進行を抑制し、所定量のマルテンサイトを確保し得る。冷却停止温度は、好ましくは400℃以下である。
[0102]
 「100℃以上400℃以下の温度域で1000秒以下停留」
 上記のように冷却された鋼板は焼入れままマルテンサイトを含む。この鋼板を100℃以上400℃以下に停留することによって、焼入れままマルテンサイトを焼戻しマルテンサイトに変化させ、鋼板の加工性を向上することができる。この工程において、停留温度を100℃以上とすることにより、焼戻しによる効果を得やすくなる。一方、停留温度を400℃以下とすることにより、過度な焼戻しの進行を抑制し、鋼板の強度低下を抑制し得る。また、停留時間を1000秒以下とすることにより、生産性の低下を抑制し得る。
[0103]
 表層軟質部のフェライトおよびパーライト生成を促進する目的で、焼鈍後の鋼板に対し、上記1)の冷却工程に代えて上記2)の冷却工程を行ってもよい。すなわち、0.5℃/秒以上、20℃/秒以下の平均冷却速度で、600℃以上、750℃以下の温度域に鋼板を冷却し(1段目の冷却)、次いで、20℃/秒以上の平均冷却速度で、25℃以上、600℃以下の温度域に鋼板を冷却し(2段目の冷却)てもよい。
[0104]
 「1段目の冷却」
 「平均冷却速度:0.5℃/秒以上、20℃/秒以下」
 「冷却停止温度:600℃以上、750℃以下」
 1段目の冷却における平均冷却速度を20℃/秒以下とすることによって、表層軟質部におけるフェライトおよびパーライトの生成を促進し得る。ただし、1段目の平均冷却速度が20℃/秒を超える場合は、上記1)の冷却工程を行った場合と同様の結果となるだけであり、鋼板の材質が劣化するわけではない。1段目の冷却における平均冷却速度の上限は、冷却を2段階にした場合の効果を得るための上限である。一方、1段目の冷却における平均冷却速度を0.5℃/秒以上とすることにより、表層軟質部だけでなく板厚中心部におけるフェライト変態およびパーライト変態の過度な進行が抑制され、所定量のマルテンサイトを得やすくなる。1段目の冷却における平均冷却速度は、好ましくは10℃/秒以上である。
[0105]
 1段目の冷却における冷却停止温度を600℃以上とすることにより、表層軟質部にフェライトおよびパーライト以外の組織が生成して鋼板の曲げ性が低下することが抑制され得る。1段目の冷却の冷却停止温度は、好ましくは620℃以上である。一方、1段目の冷却の冷却停止温度を750℃以下とすることにより、表層軟質部におけるフェライトおよびパーライトの生成を促進し得る。ただし、1段目の冷却の冷却停止温度が750℃を超える場合は、上記1)の冷却工程を行う場合と実質的に同様の結果となるだけであり、鋼板の材質が劣化するわけではない。1段目の冷却の冷却停止温度の上限は、冷却を2段階にした場合の効果を得るための上限である。
[0106]
 「2段目の冷却」
 「平均冷却速度:20℃/秒以上」
 「冷却停止温度:25℃以上、600℃以下」
 2段目の冷却の平均冷却速度および冷却停止温度は、上記1)の冷却工程における平均冷却速度および冷却停止温度と同様である。ただし、上記1段目の冷却によって表層軟質部のフェライトとパーライトの生成が促進されているため、曲げ性に優れた鋼板となり得る。
[0107]
 「焼戻し」
 また、鋼板に焼戻しを施してもよい。焼戻しは、室温への最終冷却途中の再加熱であってもよく、最終冷却が終わった後に行われてもよい。焼戻しの方法は特に限定されず、例えば、200℃以上500℃以下の温度域に鋼板を2秒以上停留させてもよい。焼戻しにより焼入れままマルテンサイトが焼戻しマルテンサイトとなり、鋼板の曲げ性や穴広げ性が向上し得る。
[0108]
 「めっき処理および表面処理」
 また、電気めっき処理、蒸着めっき処理等のめっき処理を鋼板に施してもよく、更に、めっき処理後に合金化処理を行ってもよい。また、有機皮膜の形成、フィルムラミネート、有機塩類または無機塩類処理、ノンクロム処理等の表面処理を鋼板に施してもよい。
[0109]
 めっき処理として鋼板に溶融亜鉛めっき処理を行う場合、例えば、亜鉛めっき浴の温度より40℃低い温度以上かつ亜鉛めっき浴の温度より50℃高い温度以下の温度に鋼板を加熱又は冷却し、当該鋼板を亜鉛めっき浴に通す。このような溶融亜鉛めっき処理により、表面に溶融亜鉛めっき層を備えた鋼板、すなわち溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。溶融亜鉛めっき層は、例えば、Fe:7質量%以上15質量%以下、並びに残部:Zn、Al及び不純物で表される化学組成を有する。また、溶融亜鉛めっき層は、亜鉛合金であってもよい。
[0110]
 溶融亜鉛めっき処理後に合金化処理を行う場合、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板を460℃以上600℃以下の温度に加熱する。この温度が460℃未満では、合金化が不足することがある。一方、この温度が600℃超では、合金化が過剰となって耐食性が劣化することがある。このような合金化処理により、表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備えた鋼板、すなわち合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
[0111]
 以上に例示した方法によって、本発明の実施形態に係る高強度鋼板を製造することができる。なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
実施例
[0112]
 以下、実施例を用いて、本発明の具体的な例を示す。ただし、本発明が以下の実施例により限定されるものでないことはいうまでもない。
[0113]
 表1-1、1-2に記載の成分組成を有する鋳造スラブを、表2-1~2-3に記載のスラブ加熱温度に加熱し、表2-1~2-3に記載の条件で熱間圧延に供し、巻き取った。得られた熱延鋼板を、表2-1~2-3に記載の条件で酸洗し、冷間圧延に供した。
[0114]
 続いて、得られた冷延鋼板に、表2-1~2-3に記載の条件で焼鈍処理を施し、一部の鋼板には、常法により、溶融亜鉛めっきを施し、さらに、一部のめっきを施した鋼板に対しては、常法により、合金化処理を施した。
[0115]
 鋳造スラブの成分、製造条件、および得られた鋼板の組織を上記のように同定して面積率を求めた結果を表3-1~3-3に示す。
[0116]
 また、得られた鋼板について、表層軟質部のC含有量と板厚中心部のC含有量との比、表層軟質部のパーライトとパーライトとの平均間隔(μm)、板厚(mm)、片面当たりの表層軟質部の厚さ(mm)、表層軟質部の位置(片側または両側)、片面当たりの表層軟質部の厚さの板厚に対する割合(%)、板厚中心部のビッカース硬さHc(Hv)、表層軟質部のビッカース硬さHs(Hv)、Hs/Hc、全伸びEl(%)、穴広げ率λ(%)、限界曲げ角度α(°)、および曲げ試験時の最大荷重(曲げ荷重)F(N)を計算または測定した。これらの結果を4-1~4-3に示す。ビッカース硬さは前述のとおりに測定した。全伸びは、JIS Z 2241(2011)に示される引張試験方法により測定した。穴広げ値λは、JIS Z 2256(2010)に示される穴広げ試験方法により測定した。限界曲げ角度α、曲げ荷重Fは、VDA(ドイツ自動車工業会規格)238-100に準拠した曲げ試験により測定した。
[0117]
 本実施例においては、
  0.50≦Hs/Hc≦0.75
  Hc×El≧4000
  Hc×λ≧7000
  α≧7.3t -37.2t+100
  F≧3500t +2600t+0.04Hc -7.6Hc-6000
を満たすものを良好と判断した。α、Fの閾値は、経験的に得られた値である。
[0118]
[表1-1]


[0119]
[表1-2]


[0120]
[表2-1]


[0121]
[表2-2]


[0122]
[表2-3]


[0123]
[表3-1]


[0124]
[表3-2]


[0125]
[表3-3]


[0126]
[表4-1]


[0127]
[表4-2]


[0128]
[表4-3]


[0129]
 本発明の鋼板は良好な特性を有することが確認された。

産業上の利用可能性

[0130]
 前述したように、本発明によれば、自動車等の構造部材として好適な、高い加工性および曲げ荷重を有しながら曲げ性に優れた高強度鋼板を提供することができる。本発明の高強度鋼板は、特に、耐衝突特性に優れているので、本発明は、自動車産業及び鋼板製造・加工産業において利用可能性が高いものである。

請求の範囲

[請求項1]
 板厚中心部と、前記板厚中心部の片側又は両側に形成された表層軟質部とを有する高強度鋼板であって、
 前記高強度鋼板の断面において、
 前記板厚中心部の金属組織が、面積率で、焼戻しマルテンサイト:85%以上、フェライト、ベイナイト、パーライト、残留オーステナイトの1種又は2種以上:合計で15%未満、及び焼入れままマルテンサイト:5%未満からなり、
 前記表層軟質部の金属組織が、面積率で、フェライト:65%以上、パーライト:5%以上20%未満、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトの1種又は2種以上:合計で10%未満、及び焼入れままマルテンサイト:5%未満からなり、
 片側又は両側に形成された前記表層軟質部のそれぞれの厚さが、10μm超、かつ、板厚の15%以下であり、
 前記表層軟質部のパーライトとパーライトとの平均間隔が3μm以上であり、
 前記板厚中心部のビッカース硬さ(Hc)および前記表層軟質部のビッカース硬さ(Hs)が、0.50≦Hs/Hc≦0.75を満足し、
 前記板厚中心部の成分組成が、質量%で、
  C :0.10%以上、0.30%以下、
  Si:0.01%以上、2.5%以下、
  Al:0%以上、2.50%以下、
  Mn:0.1%以上、10.0%以下、
  P :0.10%以下、
  S :0.050%以下、
  N :0.0100%以下、
  O :0.0060%以下、
  Cr:0%以上、5.0%以下、
  Mo:0%以上、1.00%以下、
  B :0%以上、0.0100%以下、
  Nb:0%以上、0.30%以下、
  Ti:0%以上、0.30%以下、
  V :0%以上、0.50%以下、
  Ni:0%以上、1.00%以下、
  Cu:0%以上、1.00%以下、
  Ca:0%以上、0.040%以下、
  Mg:0%以上、0.040%以下、及び
  REM:0%以上、0.040%以下
を含有し、残部がFeおよび不純物であることを特徴とする高強度鋼板。
[請求項2]
 前記板厚中心部の成分組成が、質量%で、
  Cr:0.1%以上、5.0%以下、
  Mo:0.01%以上、1.00%以下、
  B :0.0001%以上、0.0100%以下、
  Nb:0.001%以上、0.30%以下、
  Ti:0.001%以上、0.30%以下、
  V :0.001%以上、0.50%以下、
  Ni:0.0001%以上、1.00%以下、
  Cu:0.001%以上、1.00%以下、
  Ca:0.001%以上、0.040%以下、
  Mg:0.001%以上、0.040%以下、及び
  REM:0.001%以上、0.040%以下
から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
[請求項3]
 前記表層軟質部のC含有量が前記板厚中心部のC含有量の0.9倍以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高強度鋼板。
[請求項4]
 表面に溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
[請求項5]
 表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の高強度鋼板。