処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2020194823 - 全固体二次電池

Document

明 細 書

発明の名称 全固体二次電池

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

非特許文献

0003  

発明の概要

0004   0005   0006   0007  

発明を実施するための形態

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025  

実施例

0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : 全固体二次電池

技術分野

[0001]
 本発明は、全固体二次電池に関する。

背景技術

[0002]
 近年、リチウムイオン二次電池及びキャパシタ等の蓄電素子に用いられる固体電解質の研究開発が盛んである。特に、室温から高温にかけて十分なリチウムイオン伝導度を維持可能な固体電解質の開発が望まれている。ここで、非特許文献1では、Li SO とLiOHを均質に溶融した後に急冷させた凝固体を固体電解質として用いることが提案されている。特に、この固体電解質が低温で動作するデバイスに用いることができるとされている。

先行技術文献

非特許文献

[0003]
非特許文献1 : V.K.DESHPANDE, F.C.RAGHUWANSHI AND K.SINGH, "ELECTRICAL CONDUCTIVITY OF THE Li2SO4-LiOH SYSTEM", Solid State Ionics 18 & 19 (1986)378-381

発明の概要

[0004]
 しかしながら、非特許文献1に記載の固体電解質は、室温におけるリチウムイオン伝導度が十分に高いとはいえない。また、非特許文献1の固体電解質は、伝導度の温度依存性が小さく、温度上昇による伝導度上昇効果が期待できない。つまり、この固体電解質は室温から高温にかけて十分なリチウムイオン伝導度を有する材料とはいえない。これらの問題に対し、本発明者らは、3LiOH・Li SO で表される固体電解質が25℃において高いリチウムイオン伝導度を呈するとの知見を得ている。しかしながら、上記組成の材料のみでは高温で長時間保持した場合にリチウムイオン伝導度が低下しやすいとの別の問題があることが分かってきた。
[0005]
 本発明者らは、今般、3LiOH・Li SO と同定される固体電解質にホウ素をさらに含有させることで、高温で長時間保持した後においてもリチウムイオン伝導度の低下を有意に抑制できるとの知見を得た。
[0006]
 したがって、本発明の目的は、高温で長時間保持した後においてもリチウムイオン伝導度の低下を有意に抑制可能な3LiOH・Li SO ベースの固体電解質を備えた全固体二次電池を提供することにある。
[0007]
 本発明の一態様によれば、X線回折により3LiOH・Li SO と同定される固体電解質であって、前記固体電解質がホウ素をさらに含む、固体電解質を用いた全固体二次電池が提供される。

発明を実施するための形態

[0008]
  固体電解質
 本発明の全固体二次電池に用いる固体電解質は、X線回折により3LiOH・Li SO と同定される固体電解質である。そして、この固体電解質はホウ素をさらに含む。3LiOH・Li SO と同定される固体電解質にホウ素をさらに含有させることで、高温で長時間保持した後においてもリチウムイオン伝導度の低下を有意に抑制することができる。すなわち、前述したとおり、本発明者らは、3LiOH・Li SO で表される固体電解質が25℃において高いリチウムイオン伝導度を呈するとの知見を得ている。しかしながら、上記組成のみでは高温で長時間保持した場合にリチウムイオン伝導度が低下しやすいとの別の問題があることが分かってきた。この点、3LiOH・Li SO と同定される固体電解質にホウ素をさらに含有させることで上記問題を解決することができる。ホウ素の含有によりイオン伝導度維持度を向上できるメカニズムは定かではないが、X線回折測定によると、ホウ素を含有させることにより、3LiOH・Li SO の回折ピークがわずかに高角側にシフトしていることから、ホウ素は3LiOH・Li SO の結晶構造のサイトのいずれかに取り込まれ、結晶構造の温度に対する安定性を向上させているものと推察される。
[0009]
 したがって、本発明に用いる固体電解質は、リチウムイオン二次電池及びキャパシタ等の蓄電素子に用いられるのが好ましく、特に好ましくはリチウムイオン二次電池に用いられる。リチウムイオン二次電池は、全固体電池(例えば全固体リチウムイオン二次電池)であってもよい。また、リチウムイオン二次電池は、固体電解質がセパレータとして用いられ、セパレータと対向電極との間に電解液を備えた液系の電池(例えばリチウム空気電池)であってもよい。
[0010]
 上述のとおり、本発明に用いる固体電解質は、X線回折により3LiOH・Li SO と同定される固体電解質である。すなわち、固体電解質は3LiOH・Li SO を主相として含むものである。固体電解質に3LiOH・Li SO が含まれているか否かは、X線回折パターンにおいて、ICDDデータベースの032-0598を用いて同定することで確認可能である。ここで「3LiOH・Li SO 」とは、結晶構造が3LiOH・Li SO と同一とみなせるものを指し、結晶組成が3LiOH・Li SO と必ずしも同一である必要はない。すなわち、3LiOH・Li SO と同等の結晶構造を有するかぎり、組成がLiOH:Li SO =3:1から外れるものも本発明の固体電解質に包含されるものとする。したがって、ホウ素を含有する固体電解質(例えばホウ素が固溶し、X線回折ピークが高角度側にシフトした3LiOH・Li SO )であっても、結晶構造が3LiOH・Li SO と同一とみなせるかぎり、3LiOH・Li SO として本明細書では言及するものとする。同様に、本発明に用いる固体電解質は不可避不純物の含有も許容するものである。
[0011]
 したがって、固体電解質には、主相である3LiOH・Li SO 以外に、異相が含まれていてもよい。異相は、Li、O、H、S及びBから選択される複数の元素を含むものであってもよいし、あるいはLi、O、H、S及びBから選択される複数の元素のみからなるものであってもよい。異相の例としては、原料に由来するLiOH、Li SO 及び/又はLi BO 等が挙げられる。これらの異相については3LiOH・Li SO を形成する際に、未反応の原料が残存したものと考えられるが、リチウムイオン伝導に寄与しないため、Li BO 以外はその量は少ない方が望ましい。もっとも、Li BO のようにホウ素を含む異相については、高温長時間保持後のリチウムイオン伝導度維持度の向上に寄与しうることから、所望の量で含有されてもよい。もっとも、固体電解質はホウ素が固溶された3LiOH・Li SO の単相で構成されるものであってもよい。
[0012]
 本発明に用いる固体電解質はホウ素をさらに含む。固体電解質中に含まれる硫黄Sに対するホウ素Bのモル比(B/S)は、0.002超1.0未満であるのが好ましく、より好ましくは0.003以上0.9以下、さらに好ましくは0.005以上0.8以下である。ホウ素含有量が少量であると、高温でのリチウムイオン伝導度の維持率が低下するが、上記範囲内のB/Sであるとリチウムイオン伝導度の維持率を向上することが可能である。また、ホウ素含有量が多いとリチウムイオン伝導度の絶対値の低下を招きうるが、上記範囲内のB/Sであるとホウ素を含む未反応の異相の含有量が低くなるため、リチウムイオン伝導度の絶対値を高くすることができる。
[0013]
 本発明に用いる固体電解質は、CuKαを線源としたX線回折パターンにおける、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピークの半値幅が0.500°以下であるのが好ましく、より好ましくは0.400°以下、さらに好ましくは0.200°以下である。このような範囲であると高温長時間保持後のリチウムイオン伝導度維持率をさらに向上できる。上記半値幅は小さければ小さいほど結晶性が高いことを意味するため好ましく、下限値は特に限定されるものではないが、典型的には0.08°以上、より典型的には0.1°以上である。
[0014]
 本発明に用いる固体電解質は、CuKαを線源としたX線回折パターンにおける、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピーク強度I LHSに対する、LiOHと同定される2θ=20.5°付近のピーク強度I LiOHの比である、I LiOH/I LHSが0.234未満であるのが好ましく、より好ましくは0.230以下、さらに好ましくは0.200以下である。LiOHが多いとリチウムイオン伝導度の絶対値の低下を招きうるが、上記範囲であるとLiOHの含有率が低くなるため、リチウムイオン伝導度の絶対値を高くすることができる。
[0015]
 本発明による固体電解質は、CuKαを線源としたX線回折パターンにおける、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピーク強度I LHSに対する、Li SO と同定される2θ=22.2°付近のピーク強度I Li2SO4の比である、I Li2SO4/I LHSが1.10未満であるのが好ましく、より好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.20以下である。Li SO が多いとリチウムイオン伝導度の絶対値の低下を招きうるが、上記範囲であるとLi SO の含有率が低くなるため、リチウムイオン伝導度の絶対値を高くすることができる。
[0016]
 本発明に用いる固体電解質は、溶融凝固体を粉砕した粉末の圧粉体であってもよいが、溶融凝固体(すなわち加熱溶融後に凝固させたもの)が好ましい。
[0017]
  製造方法
 本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いる固体電解質は、LiOH、Li SO 及びLi BO を含む原料を溶融して冷却することによって凝固体を形成する工程を経て製造することができる。この場合に用いる原料はxLiOH・Li SO ・yLi BO (式中、2.0≦x≦4、0.002≦y≦1)で表される組成を有するのがイオン伝導度の観点から好ましいが、所望の特性が得られるかぎりこれに限定されない(例えば1.0≦x≦4であってもよい)。例えば、固体電解質の製造は、(a)LiOH、Li SO 及びLi BO を含む原料(好ましくは上記組成の原料)の溶融物を冷却することによって凝固体を形成し、(b)凝固体を粉砕することによって固体電解質粉末とし、(c)固体電解質粉末を成形すること又は固体電解質粉末を再度溶融後冷却して固化することによって固体電解質を形成することにより行うことができる。上記(a)における溶融物の冷却は急冷又は徐冷(例えば炉冷)のいずれでもよい。上記(b)における粉砕の方法は、公知の手法及び条件に従い、容器にジルコニアボール等の玉石と固体電解質の凝固体を投入して粉砕することにより行うことができる。上記(c)工程における成形は、プレス(例えば金型プレス、ラバープレス)等の様々な手法により行うことができ、好ましくは金型プレスである。上記(c)工程における固体電解質粉末の再度の溶融後の冷却時の降温速度は10~1000℃/hであるのが好ましく、より好ましくは10~100℃/hである。
[0018]
  全固体二次電池
 前述のとおり、本発明に用いる固体電解質は全固体二次電池に用いられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば上記固体電解質を用いた全固体二次電池が提供される。この全固体二次電池は、正極と負極との間に本発明による固体電解質を備える。そして、固体電解質の少なくとも一部又は全部がリチウムイオン伝導材料層を構成する。
[0019]
 正極は、リチウム二次電池に一般的に用いられる正極を用いることができるが、リチウム複合酸化物を含むのが好ましい。リチウム複合酸化物とは、Li MO (0.05<x<1.10であり、Mは少なくとも1種類の遷移金属であり、Mは典型的にはCo、Ni、Mn及びAlの1種以上を含む)で表される酸化物である。リチウム複合酸化物は、層状岩塩構造又はスピネル型構造を有するのが好ましい。層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物の例としては、Li CoO (コバルト酸リチウム)、Li NiO (ニッケル酸リチウム)、Li MnO (マンガン酸リチウム)、Li NiMnO (ニッケル・マンガン酸リチウム)、Li NiCoO (ニッケル・コバルト酸リチウム)、LixCoNiMnO (コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム)、Li CoMnO (コバルト・マンガン酸リチウム)、Li MnO 、及び上記化合物との固溶物等が挙げられる。特に好ましくは、Li CoNiMnO (コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム)、及びLi CoO (コバルト酸リチウム、典型的にはLiCoO )である。スピネル構造を有するリチウム複合酸化物の例としては、LiMn 系材料、LiNi 0.5Mn 1.5系材料等が挙げられる。
[0020]
 リチウム複合酸化物には、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Y,Zr、Nb、Mo、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Bi、及びWから選択される1種以上の元素が含まれていてもよい。また、オリビン構造を持つLiMPO (式中、MはFe、Co、MnおよびNiから選択される少なくとも1種である)等も好適に用いることができる。
[0021]
 正極は、一般に合材電極と呼ばれる、正極活物質、電子伝導助剤、リチウムイオン伝導性材料及びバインダー等の混合物を成形した形態であってもよいし、正極原料粉末を焼結した焼結板の形態であってもよい。焼結板は緻密体でも多孔体でもよく、その多孔体の孔内には固体電解質を含んでもよい。また、正極活物質と固体電解質の間には、正極と固体電解質の反応を抑制するための保護層や、界面抵抗を低減するための層が導入されていてもよい。
[0022]
 負極としては、リチウム二次電池に一般的に用いられる負極を用いることができる。そのような一般的な負極材料の例としては、炭素系材料や、Li、In、Al、Sn、Sb、Bi、Si等の金属若しくは半金属、又はこれらのいずれかを含む合金が挙げられる。その他、酸化物系負極を用いてもよい。
[0023]
 特に好ましい負極は0.4V(対Li/Li )以上でリチウムイオンを挿入脱離可能な材料を含み、好ましくはTiを含んでいる。かかる条件を満たす負極活物質は、少なくともTiを含有する酸化物であるのが好ましい。そのような負極活物質の好ましい例としては、チタン酸リチウムLi Ti 12(以下、LTO)、ニオブチタン複合酸化物Nb TiO 、酸化チタンTiO が挙げられ、より好ましくはLTO及びNb TiO 、さらに好ましくはLTOである。なお、LTOは典型的にはスピネル型構造を有するものとして知られているが、充放電時には他の構造も採りうる。例えば、LTOは充放電時にLi Ti 12(スピネル構造)とLi Ti 12(岩塩構造)の二相共存にて反応が進行する。したがって、LTOはスピネル構造に限定されるものではない。
[0024]
 負極は、一般に合材電極と呼ばれる、負極活物質、電子伝導助剤、リチウムイオン伝導性材料及びバインダー等の混合物を成形した形態であってもよいし、負極原料粉末を焼結した焼結板の形態であってもよい。焼結板は緻密体でも多孔体でもよく、その多孔体の孔内には固体電解質を含んでもよい。また、負極活物質と固体電解質の間には、負極と固体電解質の反応を抑制するための保護層や、界面抵抗を低減するための層が導入されていてもよい。
[0025]
 全固体二次電池の製造は、例えば、i)集電体を形成した正極と集電体を形成した負極とを準備し、ii)正極と負極との間に固体電解質を挟んで加圧や加熱等を施して正極、固体電解質及び負極を一体化させることにより行うことができる。正極、固体電解質、及び負極は他の手法により結合されてもよい。この場合、正極と負極の間に固体電解質を形成させる手法の例としては、一方の電極上に固体電解質の成形体や粉末を載置する手法、電極上に固体電解質粉末のペーストをスクリーン印刷で施す手法、電極を基板としてエアロゾルディポジション法等により固体電解質の粉末を衝突固化させる手法、電極上に電気泳動法により固体電解質粉末を堆積させて成膜する手法等が挙げられる。
実施例
[0026]
 本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
[0027]
  例1~17
(1)原料粉末の準備
 Li SO 粉末(市販品、純度99%以上)、LiOH粉末(市販品、純度98%以上)、及びLi BO (市販品、純度99%以上)を表1に示されるモル比となるように混合して原料混合粉末を得た。これらの粉末は、露点-50℃以下のAr雰囲気中のグローブボックス中で取り扱い、吸湿等の変質が起こらないように十分に注意した。
[0028]
(2)溶融合成
 Ar雰囲気中で原料混合粉末を高純度アルミナ製のるつぼに投入し、このるつぼを電気炉にセットし、430℃で2時間熱処理を行い溶融物を作製した。引き続き、電気炉内にて100℃/hで溶融物を冷却して凝固物を形成した。
[0029]
(3)乳鉢粉砕
 得られた凝固物をAr雰囲気中にて乳鉢で粉砕することによって、平均粒径D50が5~50μmの固体電解質粉末を得た。
[0030]
(4)溶融
 Ar雰囲気中のグローブボックス内で、固体電解質粉末を250MPaの圧力で金型プレスすることによって、直径10mmのペレット状の固体電解質を形成した。直径10mm、厚さ0.5mmの2枚のステンレス鋼(SUS)電極の間にペレット状の固体電解質を挟み、得られた積層物の上に15gの重しを載せ、400℃で45分加熱することにより固体電解質を溶融させた。その後、100℃/hで溶融物を冷却して凝固体を形成した。
[0031]
(5)評価
 得られた凝固体(固体電解質)に対して以下の評価を行った。
[0032]
<X線回折>
 固体電解質をX線回折装置(XRD、X線源:CuKα線)で分析することによりX線回折パターンを得た。なお、金属Si粉を内部標準として添加して2θ位置を合わせた。得られたX線回折パターンとICDDデータベースの032-0598とを対比することによって、3LiOH・Li SO 結晶相の同定を行い、3LiOH・Li SO の有無を判定した。また、上記得られたXRDプロファイルに基づき、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピークの半値幅を算出した。さらに、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピーク強度I LHSに対する、LiOHと同定される2θ=20.5°付近のピーク強度I LiOHの比(I LiOH/I LHS)を算出した。同様に、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピーク強度I LHSに対する、Li SO と同定される2θ=22.2°付近のピーク強度I Li2SO4の比(I Li2SO4/I LHS)を算出した。結果は表1に示されるとおりであった。
[0033]
<150℃100時間保持後のイオン伝導度及び伝導度維持率>
 固体電解質のリチウムイオン伝導度を一般的な交流インピーダンス測定を用いて以下のようにして測定した。まず、Ar雰囲気中において、固体電解質を2枚のステンレス鋼(SUS)電極の間に挟み、セル(宝泉株式会社製、コインセルCR2032)に入れて密閉し、イオン伝導度測定用セルを作製した。このイオン伝導度測定用セルを150℃の恒温乾燥器に入れ、交流インピーダンス測定装置(BioLogic社製、VMP3)を用いて交流インピーダンス法によりコンダクタンス(1/r)を測定した。測定した値とリチウムイオン伝導度σ=L/r(1/A)の式に基づき、初期リチウムイオン伝導度C を算出した。
[0034]
 また、上記イオン伝導度測定用セル内で固体電解質を150℃で100時間保持した後、上記同様にしてリチウムイオン伝導度C を測定した。150℃で100時間保持した後の固体電解質のリチウムイオン伝導度C を、初期リチウムイオン伝導度C で除して100を乗じることにより、150℃で100時間保持後の伝導度維持率(%)を求めた。
[0035]
<化学分析>
 各例で得られた固体電解質についてホウ素と硫黄の定量分析を行った。ホウ素及び硫黄の各々についてICP発光分光分析法(ICP-AES)にて、検量線法で定量分析を行った。ホウ素及び硫黄の各分析値をモル数に換算し、B/Sとして算出した。
[0036]
  結果
 例1~17の固体電解質の作製条件及び評価結果を表1にまとめて示す。例1~17において、LiOH、Li SO 及びLi BO を含む原料混合粉末を溶融して固体電解質を合成する工程や、固体電解質粉末を再度溶融する工程において、重量減は1%以下と非常に小さいものであり、固体電解質を構成するLi、O、H、S及びBの組成は調合時の組成からほとんど変化していないものと推測される。
[0037]
[表1]


[0038]
 表1の結果について詳しく説明する。例1~17すべてのX線回折パターンの主相はICDDデータベースの032-0598と一致していたことから、3LiOH・Li SO 結晶相が存在することが分かった。ここでいう主相とは、LiOH、Li SO およびLi BO に帰属されないピークをいう。なお、特にホウ素を高濃度含んだ例においては、3LiOH・Li SO 結晶相のX線回折パターンの高角シフトが見られた。例えば、Li BO を添加していない例5においては3LiOH・Li SO の2θ=18.43°のピークが、Li BO を添加した例2では18.46°と高角側にピークシフトしており、ホウ素が3LiOH・Li SO 結晶相の骨格内に固溶したものと推測される。高角シフトしたことを除いてはICDDデータベースの032-0598と一致し、3LiOH・Li SO と同定される固体電解質を含むことが分かった。また、Li BO を加えて合成した例1~4、6~10及び12~17においては、化学分析にてB/Sが0より大きい値となり、固体電解質にホウ素が含まれていることが分かった。
[0039]
 ホウ素を含まない例5及び11はイオン伝導度維持率が75%以下と小さく、例10のようにB/Sが0.002以上となることで、イオン伝導度維持率が80%以上と大きくなることが分かった。また、例1及び3の150℃100時間保持後のイオン伝導度を比較すると、例1では伝導度が低いことが分かった。これはLi BO の添加量が多いため、未反応の異相の含有率が高くなったためと推測され、ホウ素の添加量を示すB/Sは1.0未満が好ましいことが分かった。
[0040]
 また、XRDでLiOHが検出される例3、8及び12の150℃100時間保持後のイオン伝導度を比較すると、例3及び8ではイオン伝導度が例12よりも高いことが分かる。X線回折によるピーク強度比(I LiOH/I LHS)に注目すると、例12にてその値が大きいことから、LiOHが異相として残留していることが推測され、これがイオン伝導を阻害したものと推測される。以上のことから、LiOHが異相として検出される場合は、ピーク強度比(I LiOH/I LHS)は0.234未満であるのが好ましいと考えられる。また、XRDでLi SO が検出される例14及び17の150℃保持後のイオン伝導度を比較すると、例14はイオン伝導度が例17よりも高いことが分かる。X線回折によるピーク強度比(I Li2SO4/I LHS)に注目すると、例17にてその値が大きいことから、Li SO が異相として残留していることが推測され、これがイオン伝導を阻害したものと推測される。このことから、Li SO が異相として検出される場合は、ピーク強度比(I Li2SO4/I LHS)が1.1未満であるのが好ましいと考えられる。
[0041]
 さらに、例3、8、14及び17に着目すると次のことが分かる。ここで、これらの例の原料配合割合はいずれもxLiOH・Li SO ・yLi BO (式中、1.0≦x≦4、0.002≦y≦1)で表される範囲内の組成であり、しかもLi SO :Li BO 比が1:0.05であるため、LiOHのモル比(上記式におけるx)のみを変動させたことによる特性変化を見ることができる。そして、例3、8、14及び17はいずれも150℃100時間保持後の伝導度維持率で望ましい結果が得られているものの、x=3、2.6及び2である例3、8及び14のイオン伝導度の方が、x=1.0である例17よりも高いイオン伝導度を示すことが分かる。このことから、2.0≦x≦4、0.002≦y≦1の範囲がイオン伝導度の観点から好ましい範囲であるといえる。
[0042]
<全固体二次電池の作製>
 例3と例5の固体電解質を用いて全固体二次電池を作製し、150℃100時間保持後の抵抗増加率を確認した。正極として、片側の面に集電層を形成したコバルト酸リチウムの緻密焼結板を用意し、負極として、片側の面に集電層を形成したチタン酸リチウムの緻密焼結板を用意した。これらの正極板及び負極板で固体電解質の粉末プレス体を挟み込み、加圧しながらセル化した。得られたセルを150℃で静置し、交流インピーダンス測定を行い、固体電解質部分の抵抗として、150℃昇温直後の抵抗R と、150℃100時間保持後の抵抗をR とを測定した。得られた抵抗値から抵抗増加率R /R を算出したところ、例3(ホウ素を添加した実施例)では1.0であったのに対し、例5(ホウ素を添加しなかった比較例)では1.3となり、3LiOH・Li SO にホウ素を添加した電解質を用いた全固体二次電池では抵抗の増加が小さいことが分かった。このことから、例5のセルでは150℃で100時間経過後に固体電解質部分の抵抗増加に起因して充放電容量が低下するが、例3のセルでは150℃で100時間経過しても固体電解質部分の抵抗増加に起因する容量低下がなく充放電できることが分かった。

請求の範囲

[請求項1]
 X線回折により3LiOH・Li SO と同定される固体電解質であって、前記固体電解質がホウ素をさらに含む、固体電解質を用いた全固体二次電池。
[請求項2]
 前記固体電解質中に含まれる硫黄Sに対する、前記ホウ素Bのモル比である、B/Sが0.002超1.0未満である、請求項1に記載の全固体二次電池。
[請求項3]
 前記固体電解質は、CuKαを線源としたX線回折パターンにおける、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピークの半値幅が0.500°以下である、請求項1又は2に記載の全固体二次電池。
[請求項4]
 前記固体電解質は、CuKαを線源としたX線回折パターンにおける、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピーク強度I LHSに対する、LiOHと同定される2θ=20.5°付近のピーク強度I LiOHの比である、I LiOH/I LHSが0.234未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の全固体二次電池。
[請求項5]
 前記固体電解質は、CuKαを線源としたX線回折パターンにおける、3LiOH・Li SO と同定される2θ=18.4°付近のピーク強度I LHSに対する、Li SO と同定される2θ=22.2°付近のピーク強度I Li2SO4の比である、I Li2SO4/I LHSが1.10未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体二次電池。
[請求項6]
 前記固体電解質が溶融凝固体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の全固体二次電池。
[請求項7]
 正極と負極との間に前記固体電解質を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の全固体二次電池。