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1. WO2020194805 - 積層造形用合金粉末、積層造形物及び積層造形方法

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明 細 書

発明の名称 積層造形用合金粉末、積層造形物及び積層造形方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042  

発明の効果

0043  

図面の簡単な説明

0044  

発明を実施するための形態

0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085  

符号の説明

0086  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 積層造形用合金粉末、積層造形物及び積層造形方法

技術分野

[0001]
 本開示は、積層造形用合金粉末、積層造形物及び積層造形方法に関する。

背景技術

[0002]
 近年、金属を積層造形して三次元形状物を得る積層造形法が種々の金属製品の製造方法として利用されている。例えば、パウダーベッド法による積層造形法では、層状に敷設された金属粉末にレーザービームや電子ビーム等のエネルギービームを照射することによって、溶融固化を繰り返し積層することにより三次元形状物を形成する。
 エネルギービームが照射される領域内では、金属粉末が急速に溶融され、その後、急速に冷却・凝固されることで、金属凝固層が形成される。このような過程が繰り返されることによって、立体的に造形された積層造形物が形成される。
[0003]
 一方、Niを主成分とするNi基合金は、耐熱性が高く、高温強度が大きいことが知られており、鋳造法によるNi基合金からなる部材は、従来からガスタービン用のタービン部材等、高温強度が要求される耐熱部材の用途に広く使用されている。
[0004]
 そして最近では、例えばタービン翼のような複雑形状のNi基合金からなる部品の製造方法として、複雑な製造工程を経ずに直接造形が可能な積層造形法を適用する試みがなされている(例えば特許文献1等)。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2018-168400号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 積層造形法で製造したNi基合金の積層造形物では、エネルギービーム照射後の急速凝固のため、結晶粒が微細となり、且つ、積層方向に長く伸びた形態を有する。そのため、該積層造形物において、結晶の異方性のために強度等の物性値が方向によって異なってしまう。そこで、結晶の異方性を抑制するために該積層造形物を熱処理することで結晶粒を粗大化させて、等方的な形態に近づけることが考えられる。
 鋳造によって製造したNi基合金の従来の製品では、粒界の移動を阻害するMC型炭化物が比較的大きな形態で結晶粒界に点在している。しかし、積層造形法で製造したNi基合金の積層造形物では、エネルギービーム照射後の急速凝固のため、微細なMC型炭化物が結晶粒界や結晶粒内に分散して析出する。そのため、熱処理による粒界の移動が微細な形態で分散しているMC型炭化物によって阻害され、結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることが困難である。
[0007]
 積層造形法で製造したNi基合金の積層造形物であっても、融点に近い高温での熱処理を行うことで、結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることができる。しかし、複雑な形状を有する部品の場合、融点に近い高温での熱処理を行うことで、変形してしまうおそれがあるため、より低い温度で熱処理を行うことが望ましい。
[0008]
 上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、Ni基合金によって構成される積層造形物における結晶の異方性を抑制することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る積層造形用合金粉末は、
 ニッケル基合金により構成される積層造形用合金粉末であって、
 0.0質量%以上4.0質量%未満のコバルトと、
 12質量%以上25質量%以下のクロムと、
 1.0質量%以上5.5質量%以下のアルミニウムと、
 0.0質量%以上4.0質量%以下のチタンと、
 0.0質量%以上3.0質量%以下のタンタルと、
 1.5質量%未満のニオブと、
を含む。
[0010]
 発明者らが鋭意検討した結果、積層造形することで得られるニッケル基合金製の積層造形物においてMC型炭化物の析出を抑制するためには、積層造形用合金粉末において、チタン、タンタル、及びニオブの含有量を減らすとよいこと、及び、コバルトの含有量を減らすとよいことが判明した。また、発明者らが鋭意検討した結果、積層造形物における強度確保のためにγ’相を構成する元素を確保するためには、積層造形用合金粉末において、アルミニウム及びタンタルの含有量を増やすとよいことが判明した。
 これらの点を踏まえ、発明者らが鋭意検討した結果、ニッケル基合金により構成される積層造形用合金粉末において、各元素の組成を上記(1)のようにすると積層造形物におけるMC型炭化物の析出を効果的に抑制できることが判明した。
 これにより、上記(1)の構成による積層造形用合金粉末を用いて積層造形することで得られた積層造形物において、MC型炭化物の析出が効果的に抑制できる。そのため、積層造形物において、熱処理による粒界の移動がMC型炭化物によって阻害され難くなり、結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることが容易となる。したがって、積層造形物の熱処理温度を抑制でき、熱処理による積層造形物の変形を抑制できる。
[0011]
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、0.0質量%以上1.0質量%未満のコバルトを含む。
[0012]
 発明者らが鋭意検討した結果、積層造形することで得られるニッケル基合金製の積層造形物においてMC型炭化物の析出を抑制するためには、積層造形用合金粉末において、コバルトの含有量を1.0質量%未満とするとさらによいということが判明した。
 その点、上記(2)の構成によれば、コバルトの含有量が0.0質量%以上1.0質量%未満であるので、積層造形物におけるMC型炭化物の析出をより効果的に抑制できる。
[0013]
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、0.0質量%以上2.0質量%以下のチタンを含む。
[0014]
 発明者らが鋭意検討した結果、積層造形することで得られるニッケル基合金製の積層造形物においてMC型炭化物の析出を抑制するためには、積層造形用合金粉末において、チタンの含有量を0.0質量%以上2.0質量%以下とするとさらによいということが判明した。
 その点、上記(3)の構成によれば、チタンの含有量が0.0質量%以上2.0質量%以下であるので、積層造形物におけるMC型炭化物の析出をより効果的に抑制できる。
[0015]
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、0.0質量%以上1.0質量%未満のニオブを含む。
[0016]
 発明者らが鋭意検討した結果、積層造形することで得られるニッケル基合金製の積層造形物においてMC型炭化物の析出を抑制するためには、積層造形用合金粉末において、ニオブの含有量を1.0質量%未満とするとさらによいということが判明した。
 その点、上記(4)の構成によれば、ニオブの含有量が0.0質量%以上1.0質量%未満であるので、積層造形物におけるMC型炭化物の析出をより効果的に抑制できる。
[0017]
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、レニウムの含有量が検出限界以下である。
[0018]
 発明者らが鋭意検討した結果、積層造形することで得られるニッケル基合金製の積層造形物においてMC型炭化物の析出を抑制するためには、積層造形用合金粉末において、レニウムを添加しなくてもよいことが判明した。
 したがって、上記(5)の構成によれば、高価なレアメタルの一種であるレニウムを添加しなくてもよいので、積層造形用合金粉末のコストを抑制できる。
[0019]
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、ルテニウムの含有量が検出限界以下である。
[0020]
 発明者らが鋭意検討した結果、積層造形することで得られるニッケル基合金製の積層造形物においてMC型炭化物の析出を抑制するためには、積層造形用合金粉末において、ルテニウムを添加しなくてもよいことが判明した。
 したがって、上記(6)の構成によれば、高価なレアメタルの一種であるルテニウムを添加しなくてもよいので、積層造形用合金粉末のコストを抑制できる。
[0021]
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
 チタンの含有量についてのパラメータをTi質量%とし、
 タンタルの含有量についてのパラメータをTa質量%とし、
 ニオブの含有量についてのパラメータをNb質量%とし、
 コバルトの含有量についてのパラメータをCo質量%とし、
 クロムの含有量についてのパラメータをCr質量%とし、
 第1パラメータP1を次式(A):
 P1=0.08×Ti+0.15×Ta+0.19×Nb・・・(A)
とし、
 第2パラメータP2を次式(B):
 P2=0.04×Co-0.03×Cr・・・(B)
とした場合に、
 前記第1パラメータP1及び前記第2パラメータP2は、次式(C):
 P1<-1.24×P2-0.27・・・(C)
で表される関係式を満たす。
[0022]
 MC型炭化物の析出に対して各元素が及ぼす影響について、MC型炭化物の直接の構成元素と、母相に固溶する元素であってMC型炭化物の析出に影響を与える元素とに分類して、発明者らが鋭意検討した結果、次のことが判明した。すなわち、MC型炭化物の直接の構成元素であるチタン、タンタル、及び、ニオブについての上記第1パラメータP1と、母相に固溶する元素であってMC型炭化物の析出に影響を与えるコバルト、及び、クロムについての上記第2パラメータP2とが、上述した式(C)で表される関係式を満たすと、MC型炭化物の析出を効果的に抑制できることが判明した。
 したがって、上記(7)の構成によれば、積層造形物におけるMC型炭化物の析出を効果的に抑制できる。
[0023]
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る積層造形方法は、
 上記(1)乃至(7)の何れかの構成の積層造形用合金粉末を用いて積層造形された積層造形物の応力を除去するための第1熱処理工程と、
 前記第1熱処理工程を行った後の前記積層造形物の結晶粒を粗大化させるための、1250℃未満の温度で熱処理する第2熱処理工程と、
を備える。
[0024]
 上記(8)の方法によれば、記(1)乃至(7)の何れかの構成の積層造形用合金粉末を用いることで、積層造形物の熱処理温度を1250℃未満としても結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることが可能であることが判明した。
 したがって、上記(8)の方法によれば、Ni基合金によって構成される積層造形物における変形を抑制しつつ、結晶の異方性を抑制できる。
[0025]
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の方法において、前記第2熱処理工程は、前記積層造形物を1230℃以下の温度で熱処理する。
[0026]
 上記(9)の方法によれば、Ni基合金によって構成される積層造形物における変形をより効果的に抑制しつつ、結晶の異方性を抑制できる。
[0027]
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る積層造形物は、
 ニッケル基合金からなる積層造形物であって、
 0.0質量%以上4.0質量%未満のコバルトと、
 12質量%以上25質量%以下のクロムと、
 1.0質量%以上5.5質量%以下のアルミニウムと、
 0.0質量%以上4.0質量%以下のチタンと、
 0.0質量%以上3.0質量%以下のタンタルと、
 1.5質量%未満のニオブと、
を含む。
[0028]
 発明者らが鋭意検討した結果、ニッケル基合金からなる積層造形物において、各元素の組成を上記(10)のようにすると、MC型炭化物の析出を効果的に抑制できることが判明した。
 これにより、上記(10)の構成によれば、熱処理による粒界の移動がMC型炭化物によって阻害され難くなり、結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることが容易となる。したがって、積層造形物の熱処理温度を抑制でき、熱処理による積層造形物の変形を抑制できる。
[0029]
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の構成において、0.0質量%以上1.0質量%未満のコバルトを含む。
[0030]
 発明者らが鋭意検討した結果、ニッケル基合金からなる積層造形物において、コバルトの含有量を0.0質量%以上1.0質量%未満とすると、MC型炭化物の析出をより効果的に抑制できることが判明した。
 その点、上記(11)の構成によれば、MC型炭化物の析出をより効果的に抑制できる。
[0031]
(12)幾つかの実施形態では、上記(10)又は(11)の構成において、0.0質量%以上2.0質量%以下のチタンを含む。
[0032]
 発明者らが鋭意検討した結果、ニッケル基合金からなる積層造形物において、チタンの含有量を0.0質量%以上2.0質量%以下とすると、MC型炭化物の析出をより効果的に抑制できることが判明した。
 その点、上記(12)の構成によれば、MC型炭化物の析出をより効果的に抑制できる。
[0033]
(13)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(12)の何れかの構成において、0.0質量%以上1.0質量%未満のニオブを含む。
[0034]
 発明者らが鋭意検討した結果、ニッケル基合金からなる積層造形物において、ニオブの含有量を0.0質量%以上1.0質量%未満とすると、MC型炭化物の析出をより効果的に抑制できることが判明した。
 その点、上記(13)の構成によれば、MC型炭化物の析出をより効果的に抑制できる。
[0035]
(14)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(13)の何れかの構成において、レニウムの含有量が検出限界以下である。
[0036]
 発明者らが鋭意検討した結果、MC型炭化物の析出を抑制するためには、ニッケル基合金からなる積層造形物において、レニウムを添加しなくてもよいことが判明した。
 したがって、上記(14)の構成によれば、高価なレアメタルの一種であるレニウムを添加しなくてもよいので、積層造形物のコストを抑制できる。
[0037]
(15)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(14)の何れかの構成において、ルテニウムの含有量が検出限界以下である。
[0038]
 発明者らが鋭意検討した結果、MC型炭化物の析出を抑制するためには、ニッケル基合金からなる積層造形物において、ルテニウムを添加しなくてもよいことが判明した。
 したがって、上記(15)の構成によれば、高価なレアメタルの一種であるルテニウムを添加しなくてもよいので、積層造形物のコストを抑制できる。
[0039]
(16)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(15)の何れかの構成において、
 チタンの含有量についてのパラメータをTi質量%とし、
 タンタルの含有量についてのパラメータをTa質量%とし、
 ニオブの含有量についてのパラメータをNb質量%とし、
 コバルトの含有量についてのパラメータをCo質量%とし、
 クロムの含有量についてのパラメータをCr質量%とし、
 第1パラメータP1を次式(A):
 P1=0.08×Ti+0.15×Ta+0.19×Nb・・・(A)
とし、
 第2パラメータP2を次式(B):
 P2=0.04×Co-0.03×Cr・・・(B)
とした場合に、
 前記第1パラメータP1及び前記第2パラメータP2は、次式(C):
 P1<-1.24×P2-0.27・・・(C)
で表される関係式を満たす。
[0040]
 上述したように、上記第1パラメータP1と上記第2パラメータP2とが、上述した式(C)で表される関係式を満たすと、MC型炭化物の析出を効果的に抑制できることが判明した。
 したがって、上記(16)の構成によれば、MC型炭化物の析出を効果的に抑制できる。
[0041]
(17)幾つかの実施形態では、上記(10)乃至(16)の何れかの構成において、前記積層造形物における結晶粒は、結晶径のアスペクト比が1以上3未満である。
[0042]
 上記(10)乃至(16)の何れかの構成を備える積層造形物では、MC型炭化物の析出が効果的に抑制されているので、熱処理による粒界の移動がMC型炭化物によって阻害され難くなる。これにより、結晶粒を粗大化させて、結晶径のアスペクト比が1以上3未満とすることが容易となる。
 上記(17)の構成によれば、結晶径のアスペクト比が1以上3未満であるので、積層造形物において強度等の物性値が方向によって異なることを抑制できる。

発明の効果

[0043]
 本発明の少なくとも一実施形態によれば、Ni基合金によって構成される積層造形物における結晶の異方性を抑制できる。

図面の簡単な説明

[0044]
[図1] 鋳造によって製造されたニッケル基合金製の従来の鋳造物の組織、及び、積層造形法によって製造されたニッケル基合金製の積層造形物の組織を模式的に示した図である。
[図2] 従来の積層造形用合金粉末による積層造形物の組織、及び、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による積層造形物の組織を模式的に示した図である。
[図3] 幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末の組成を示す表である。
[図4] 幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末を用いて積層造形を行った積層造形物についての熱処理前後の組織の一例を模式的に示した図である。
[図5] 従来の積層造形用合金粉末による積層造形物についての、熱処理後の組織を示した図である。
[図6] 幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による積層造形物についての、熱処理後の組織を示した図である。
[図7] 幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末に含まれる各元素に関して、第1パラメータと第2パラメータとの関係を表すグラフである。
[図8] 図7における各プロットにおける成分及び組成を表す表である。
[図9] 幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末を用いて積層造形された積層造形物の熱処理についてのフローチャートである。

発明を実施するための形態

[0045]
 以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
 例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
 例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
 例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
 一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
[0046]
 図1は、鋳造によって製造されたニッケル基合金製の従来の鋳造物の組織、及び、積層造形法によって製造されたニッケル基合金製の積層造形物の組織を模式的に示した図である。
 積層造形法で製造したニッケル基合金の積層造形物20では、エネルギービーム照射後の急速凝固のため、結晶粒21が微細となり、且つ、積層方向に長く伸びた形態を有する。そのため、該積層造形物20において、結晶の異方性のために強度等の物性値が方向によって異なってしまう。そこで、結晶の異方性を抑制するために該積層造形物20を熱処理することで結晶粒を粗大化させて、等方的な形態に近づけることが考えられる。
[0047]
 一方、鋳造によって製造したニッケル基合金の従来の鋳造物10では、結晶粒11は、比較的大きな粒径を有し、粒界の移動を阻害するMC型炭化物31は、比較的大きな形態で結晶粒界に点在している。しかし、積層造形法で製造したニッケル基合金の積層造形物20では、エネルギービーム照射後の急速凝固のため、微細なMC型炭化物33が結晶粒界や結晶粒内に分散して析出する。そのため、熱処理による粒界の移動が微細な形態で分散しているMC型炭化物33によって阻害され、結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることが困難である。すなわち、ニッケル基合金の積層造形物20に対して、1250℃未満の温度による熱処理を施しても、結晶粒の形状に大きな変化は見られない。
[0048]
 積層造形法で製造したニッケル基合金の積層造形物20であっても、融点に近い高温での熱処理を行うことで、結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることができる。しかし、積層造形物20が複雑な形状を有する部品の場合、融点に近い高温での熱処理を行うことで、積層造形物20が変形してしまうおそれがあるため、より低い温度で熱処理を行うことが望ましい。
[0049]
 発明者らが鋭意検討した結果、積層造形することで得られるニッケル基合金製の積層造形物20においてMC型炭化物の析出を抑制するためには、積層造形用合金粉末において、チタン、タンタル、及びニオブの含有量を減らすとよいこと、及び、コバルトの含有量を減らすとよいことが判明した。また、発明者らが鋭意検討した結果、積層造形物20における強度確保のためにγ’相を構成する元素を確保するためには、積層造形用合金粉末において、アルミニウム及びタンタルの含有量を増やすとよいことが判明した。
[0050]
 これらの点を踏まえ、発明者らが鋭意検討した結果、ニッケル基合金により構成される積層造形用合金粉末において、各元素の組成を以下の組成にすると積層造形物20におけるMC型炭化物の析出を効果的に抑制できることが判明した。
 具体的には、ニッケル基合金により構成される積層造形用合金粉末において、4.0質量%未満のコバルトと、1.0質量%以上5.5質量%のアルミニウムと、0.0質量%以上4.0質量%以下のチタンと、0.0質量%以上3.0質量%以下のタンタルと、1.5質量%未満のニオブとを含むとよいことが判明した。
 図2は、従来の積層造形用合金粉末による積層造形物20の組織、及び、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による積層造形物40の組織を模式的に示した図である。図2に示すように、上述した幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による積層造形物40では、従来の積層造形用合金粉末による積層造形物20と比べて、MC型炭化物の析出量を抑制できる。
[0051]
 このように、上記組成による積層造形用合金粉末を用いて積層造形することで得られた積層造形物40において、MC型炭化物33の析出が効果的に抑制できる。そのため、積層造形物40において、熱処理による粒界の移動がMC型炭化物によって阻害され難くなり、結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることが容易となる。したがって、積層造形物40の熱処理温度を抑制でき、熱処理による積層造形物40の変形を抑制できる。
[0052]
 図3は、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末の組成を示す表である。以下、図3を参照して、ニッケル基合金における析出物、及び、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末の各成分の組成について説明する。
[0053]
(γ’相について)
 γ’相は、主にNi、Ti、Al、Taから構成される析出物である。γ’相は、熱処理時に結晶粒内に微細分散析出することで,材料の強化に寄与する。
[0054]
(MC型炭化物について)
 MC型炭化物におけるMは、主にTi、Ta、Nbで構成される。MC型炭化物は、積層造形後に析出する。
 上述したように、MC型炭化物は、従来の鋳造材では粗大な析出物としてまばらに析出するが、積層造形物では急冷凝固のため,微細なMC型炭化物が結晶粒内に分散して析出する。
 上述したように、微細なMC型炭化物が結晶粒内に分散して析出すると、後の熱処理で結晶粒界が移動できず異方性の強い結晶形態が解消できない。そのため、MC型炭化物の析出をできるだけ低減する必要がある。
 但し,Ti、Ta、Nbはマトリクスの強化相であるγ’相の構成元素でもあるため、一定量の添加が必要である。
[0055]
(M 23型炭化物について)
 M 23型炭化物におけるMは、主にCr、Ni、Wで構成される。
 M 23型炭化物は、時効熱処理後に結晶粒界に析出することで粒界強度を高め、クリープ変形時において粒界破壊を抑制するため、応力集中に対し強く切欠強化特性を示すことができる。
[0056]
 以下の説明では、各元素の含有量を百分率で表す場合、特に断りがない場合には、質量%で表されているものとする。
[0057]
(Co:0.0%以上4.0%未満)
 Coは、Ti、Al等を高温でマトリックスに固溶させる限度(固溶限)を大きくさせる効果を有するため,一定量の添加が効果的である。一方、Coの添加量が多くなるほどMC型炭化物の析出量が多くなる傾向を見出した。特に、Coが4%より多くなるとその傾向が強くなるため、幾つかの実施形態では、Coの含有量は0.0%以上4%未満とした。なお、Coの含有量は、上記範囲内でも、特に、1.0%未満が望ましい。
[0058]
(Cr:12%以上25%以下)
 Crは、高温での耐酸化性を向上させるために有効な元素であるが、12%未満では、Crの添加による高温耐酸化性の向上が充分に図れなくなる。またCrの含有量が多くなるほどMC型炭化物の析出量が少なくなる傾向を見出したことから12%以上の添加が効果的である。一方,Cr量が25%を越えれば、有害相の析出を招き、強度低下、延性低下を引き起こすため好ましくない。そこでCrの含有量は、12%以上25%以下の範囲内とした。
[0059]
(W:4%以上10%以下)
 Wは、マトリックスであるγ相に固溶して、固溶強化による強度向上に効果がある。またWは、M 23型炭化物の構成元素であるが、拡散が遅い元素であるため、M 23型炭化物の粗大化を抑制する効果がある。これらの効果を発揮させるためには、4%以上のWの添加が必要である。但しW量が10%より多ければ、有害相が析出して強度低下、延性低下を引き起こす。そこでWの含有量は、4%以上10%の範囲内とした。
[0060]
(Mo:0.0%以上3.5%以下)
 Moは、Wと同様に、マトリックスであるγ相に固溶して、固溶強化による強度向上に効果がある。但しMo量が3.5%より多ければ有害相が析出して強度低下、延性低下を引き起こす。そこでMoを添加する場合のMoの添加量は、0.0%以上3.5%以下の範囲内とした。
[0061]
(Al:1.0%以上5.5%以下)
 Alは、γ’相を生成する元素であり、γ’相析出粒子による析出強化によって合金の高温強度、とりわけ高温クリープ強度を高めるとともに、高温での耐酸化性、耐食性向上にも効果がある。Al量が1.0%未満では、γ’相の析出量が少なくなって、析出物粒子による析出強化が充分に図れなくなる。但しAl量が5.5%を越えれば、溶接性が低下し、積層造形時に割れが多発する。そこでAlの含有量は、1.0%以上5.5%以下の範囲内とした。
[0062]
(Ti:0.0%以上4.0%以下)
 Tiは、γ’相を生成する元素であり、γ’相析出粒子による析出強化によって合金の高温強度、とりわけ高温クリープ強度を高めるとともに、高温での耐酸化性、耐食性向上にも効果がある。Ti量が4.0%を越えれば、溶接性が低下し、積層造形時に割れが多発するおそれが生じ、さらにはMC型炭化物の析出量が多くなり熱処理時の結晶粒粗大化の阻害要因となるため、4.0%以下に抑制する必要がある。そこでTiの添加量は、0.0%以上4.0%以下の範囲内とした。なお、Tiの含有量は、上記範囲内でも、特に、0.0%以上2.0%以下が望ましい。
[0063]
(Ta:0.0%以上3.0%以下)
 Taも、γ’相を生成する元素であり、γ’相析出粒子による析出強化によって合金の高温強度、とりわけ高温クリープ強度を高める。Taは高温で安定なMC型炭化物を結晶粒内に生成する元素であり、3.0%以上添加すれば、MC型炭化物の析出量が多くなり熱処理時の結晶粒粗大化の阻害要因となる。そこで、Taの添加量は、0.0%以上3.0%以下の範囲内とした。
[0064]
(Nb:0.0%以上1.5%未満)
 Nbも、γ’相を生成する元素であり、γ’相析出粒子による析出強化によって合金の高温強度、とりわけ高温クリープ強度を高める。Nbは高温で安定なMC型炭化物を結晶粒内に生成する元素であり、1.5%以上添加すれば、MC型炭化物の析出量が多くなり熱処理時の結晶粒粗大化の阻害要因となる。そこで、Nbの添加量は、0.0%以上1.5%未満とした。なお、Nbの含有量は、上記範囲内でも、特に、1.0%未満が望ましい。
[0065]
(C:0.04%以上0.2%以下)
 Cは、M 23型炭化物、MC型炭化物で代表される炭化物を生成し、適切な熱処理によって特にM 23型炭化物を粒界に析出させることにより、粒界強化をもたらすことができる。Cの含有量が0.04%よりも少なければ、炭化物が少なくなりすぎて、強化効果が期待できない。一方、Cが0.2%よりも多ければ、結晶粒内に析出するMC型炭化物が多くなり、MC型炭化物の析出量が多くなり熱処理時の結晶粒粗大化の阻害要因となる。そこで、Cの含有量は、0.04%以上0.2%以下の範囲内とした。
[0066]
(B:0.001%以上0.02%以下)
 Bは、結晶粒界に存在することによって粒界を強化し、高温クリープ強度向上および切欠き弱化改善に効果があり、そのためには0.001%以上のB添加が必要である。ただし、B量が0.02%を越えれば、ホウ化物を生成し延性が低下するおそれがある。そこでB含有量は、0.001%以上0.02%以下の範囲内とした。
[0067]
(Zr:0.0%以上0.1%未満)
 Zrは、結晶粒界に存在することによって粒界を強化して高温クリープ強度向上および切欠弱化改善に効果がある。Zr量が0.1%を越えれば、結晶粒界部の局所的な融点を下げて強度低下を引き起こすおそれがある。そこでZrの添加量は、0.0%以上0.1%未満とした。
[0068]
(Re:0.0%以上10%以下)
 Reは、マトリックスであるγ相に固溶して、固溶強化による強度向上に効果がある。但し高価なレアメタルであるため添加すると素材費用が大幅に上昇し,また添加しなくとも他の元素の効果により十分な材料特性を確保できるため積極的に添加する必要はない。Reは、不可避的不純物として含まれることは許容される。
 したがって、Reは、含有することが許容されるが、検出限界以下であってもよい。例えば、Reの含有量は、0.0%以上10%以下であってもよい。なお、Reの含有量が検出限界以下であるということは、例えば試料中のX線光電子分光スペクトルに明瞭なReのピークが存在しないことを意味する。
 幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末、及び、該粉末による積層造形物によれば、高価なレアメタルの一種であるレニウムを添加しなくてもよいので、積層造形用合金粉末及び積層造形物のコストを抑制できる。
[0069]
(Ru:0.0%以上10%以下)
 Ruは、有害な析出物の生成を抑制するため,添加することでより多くのReを添加することが可能となる。但しRuおよびReともに高価なレアメタルであるため添加すると素材費用が大幅に上昇し,また添加しなくとも他の元素の効果により十分な材料特性を確保できるため積極的に添加する必要はない。Ruは、不可避的不純物として含まれることは許容される。
 したがって、Ruは、含有することが許容されるが、検出限界以下であってもよい。例えば、Ruの含有量は、0.0%以上10%以下であってもよい。なお、Ruの含有量が検出限界以下であるということは、例えば試料中のX線光電子分光スペクトルに明瞭なRuのピークが存在しないことを意味する。
 幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末、及び、該粉末による積層造形物によれば、高価なレアメタルの一種であるルテニウムを添加しなくてもよいので、積層造形用合金粉末及び積層造形物のコストを抑制できる。
[0070]
 以上の各元素の残部は、Ni及び不可避的不純物とする。なお、この種のNi基合金には不可避的不純物として、Fe、Si、Mn、Cu、P、S、N等が含まれることがあるが、これらは、Fe、Si、Mn、Cuについてはそれぞれ0.5%以下、P、S、Nについてはそれぞれ0.01%以下とすることが望ましい。
[0071]
 図4は、上述した幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末を用いて積層造形を行った積層造形物40についての熱処理前後の組織の一例を模式的に示した図である。図5は、従来の積層造形用合金粉末による積層造形物20についての、熱処理後の組織を示した図である。図6は、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による積層造形物40についての、熱処理後の組織を示した図である。なお、図5及び図6に示した各積層造形物20、40における熱処理温度は、1230℃である。また、図5及び図6では、説明の便宜上、結晶粒の形状を明確に表すために、幾つかの結晶粒の輪郭をなぞって強調している。
[0072]
 図4に示すように、熱処理前の積層造形物40Aは、積層方向の長さが積層方向に直交する方向に比べて長い、例えばアスペクト比で3を超えるような異方性の強い結晶粒41を有する。このような積層造形物40Aを、例えば後述するように1230℃で熱処理を行うことで、図4に示した熱処理後の積層造形物40Bが得られる。熱処理後の積層造形物40Bは、結晶粒41が粗大化し、長さの異方性が抑制されて等方的な形態に近づく。熱処理後の積層造形物40Bでは、例えば結晶径のアスペクト比が1以上3未満となる。
 なお、本稿においてアスペクト比とは、各結晶粒において、最も長さが長くなる方向における長さを、該方向と直交する方向の長さで除した無次元数である。すなわち、結晶径のアスペクト比とは、結晶粒の長軸長さを短軸長さで除した値である。たとえば、結晶径のアスペクト比が1より大きくなるほど細長い結晶粒となることを表す。
[0073]
 例えば、図5に示すように、従来の積層造形用合金粉末による熱処理後の積層造形物20Bでは、図5において不図示である熱処理前の積層造形物20Aと比べて結晶粒21の長さの異方性があまり抑制されていない。例えば、図5に示した、従来の積層造形用合金粉末による熱処理後の積層造形物20Bでは、アスペクト比は5.8である。
 これに対し、例えば、図6に示すように、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による熱処理後の積層造形物40Bでは、図6において不図示である熱処理前の積層造形物40Aと比べて結晶粒41が粗大化し、長さの異方性が抑制されて等方的な形態に近づいている。例えば、図6に示した、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による熱処理後の積層造形物40Bでは、アスペクト比は1.8である。
[0074]
 このように、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による積層造形物40では、後述する熱処理を施すことによって、結晶径のアスペクト比を1以上3未満とすることができる。すなわち、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による積層造形物40では、MC型炭化物の析出が効果的に抑制されているので、熱処理による粒界の移動がMC型炭化物によって阻害され難くなる。これにより、比較的低い熱処理温度であっても、結晶粒を粗大化させて、結晶径のアスペクト比が1以上3未満とすることが容易となる。
 これにより、結晶径のアスペクト比が1以上3未満であるので、積層造形物において強度等の物性値が方向によって異なることを抑制できる。
[0075]
 図7は、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末に含まれる各元素に関して、以下で説明する第1パラメータP1と第2パラメータP2との関係を表すグラフである。図8は、図7における各プロットにおける成分及び組成を表す表である。
 以下、主に図7を参照して、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末に含まれる各元素の構成比について説明する。
[0076]
 MC型炭化物の析出に対して各元素が及ぼす影響について、MC型炭化物の直接の構成元素と、母相に固溶する元素であってMC型炭化物の析出に影響を与える元素とに分類して、発明者らが鋭意検討した結果、次のことが判明した。
 MC型炭化物の直接の構成元素であるチタン、タンタル、及び、ニオブに関する第1パラメータP1を次式(A)で表すこととする。
 P1=0.08×Ti+0.15×Ta+0.19×Nb・・・(A)
 なお、式(A)において、「Ti」、「Ta」及び「Nb」は、それぞれ、積層造形用合金粉末におけるチタン、タンタル、及び、ニオブの含有量についてのパラメータであり、質量%の値で表される。
[0077]
 また、母相に固溶する元素であってMC型炭化物の析出に影響を与えるコバルト、及び、クロムに第2パラメータP2を次式(B)で表すこととする。
 P2=0.04×Co-0.03×Cr・・・(B)
 なお、式(B)において、「Co」及び「Cr」は、それぞれ、積層造形用合金粉末におけるコバルト、及び、クロムの含有量についてのパラメータであり、質量%の値で表される。
[0078]
 上記第1パラメータP1と上記第2パラメータP2とが、次式(C)で表される関係式を満たすと、MC型炭化物の析出を効果的に抑制できることが判明した。
 P1<-1.235×P2-0.2658・・・(C)
[0079]
 図7は、第1パラメータP1を縦軸にとり、第2パラメータP2を横軸にとったグラフである。図7において示した直線は、上述した式(C)の不等号を等号に置き換えた式、すなわち、次式(D)によって表される直線である。
 y=-1.235×x-0.2658・・・(D)
 なお、式(C)を「P1<-1.24×P2-0.27」とした場合でも、MC型炭化物の析出を効果的に抑制でき、この場合式(D)は、「y=-1.24×x-0.27」と表される。
[0080]
 図7において、白抜き丸のプロットは、MC型炭化物の析出がほとんど認められなかった積層造形物を表し、黒菱型のプロットは、多くのMC型炭化物の析出が認められた積層造形物を表す。なお、図7において、MC型炭化物の析出がほとんど認められなかった積層造形物に係る白抜き丸のプロットは、図8における実施例1~7のプロットであり、いずれも次式(C)で表される関係式を満たしている。また、図7において、多くのMC型炭化物の析出が認められた積層造形物に係る黒菱型のプロットは、図8における比較例1~6のプロットであり、いずれも次式(C)で表される関係式を満たしていない。
 すなわち、図7及び図8から明らかなように、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末が上述した式(C)で表される関係式を満たすことで、積層造形物40BにおけるMC型炭化物の析出を効果的に抑制できる。
[0081]
(熱処理について)
 図9は、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末を用いて積層造形された積層造形物40Aの熱処理についてのフローチャートである。
 幾つかの実施形態に係る熱処理は、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末を用いて積層造形された積層造形物40Aを1250℃未満の温度で熱処理する熱処理工程S10を備える。
 上述したように、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末を用いることで、積層造形物40Aの熱処理温度を1250℃未満としても結晶粒を粗大化させて等方的な形態に近づけることが可能であることが判明した。
 したがって、幾つかの実施形態によれば、ニッケル基合金によって構成される積層造形物40における変形を抑制しつつ、結晶の異方性を抑制できる。また、幾つかの実施形態によれば、熱処理温度を1250℃未満に抑制できるので、積層造形物40における変形を効果的に抑制しつつ、結晶の異方性を抑制できる。
[0082]
 幾つかの実施形態に係る熱処理工程S10は、第1熱処理工程S11と、第2熱処理工程S12とを含む。
 幾つかの実施形態に係る第1熱処理工程S11は、幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末を用いて積層造形された積層造形物40Aが造形時の残留応力で変形しないよう、応力を除去するための熱処理工程である。幾つかの実施形態に係る第1熱処理工程S11では、積層造形物40Aを例えば1200℃の温度で熱処理を行う。
[0083]
 幾つかの実施形態に係る第2熱処理工程S12は、第1熱処理工程S11を行った後の積層造形物40Aを均質化及び結晶粒粗大化のための熱処理工程である。幾つかの実施形態に係る第2熱処理工程S12では、積層造形物40Aを1250℃未満の温度で熱処理を行う。なお、幾つかの実施形態に係る第2熱処理工程S12では、積層造形物40Aを1230℃の温度で熱処理を行うとよい。
[0084]
 特に、幾つかの実施形態に係る熱処理によれば、図4及び図6を参照して説明したように、熱処理工程S10(第2熱処理工程S12)は、積層造形物40Aを1230℃以下の温度で熱処理する。
 これにより、積層造形物40における変形をより効果的に抑制しつつ、結晶の異方性を抑制できる。
[0085]
 本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。

符号の説明

[0086]
10 鋳造物
11 結晶粒
20 積層造形物(従来の積層造形用合金粉末による積層造形物)
21 結晶粒
31、33 MC型炭化物
40 積層造形物(幾つかの実施形態に係る積層造形用合金粉末による積層造形物)
40A 積層造形物(熱処理前の積層造形物)
40B 積層造形物(熱処理後の積層造形物)
41 結晶粒

請求の範囲

[請求項1]
 ニッケル基合金により構成される積層造形用合金粉末であって、
 0.0質量%以上4.0質量%未満のコバルトと、
 12質量%以上25質量%以下のクロムと、
 1.0質量%以上5.5質量%以下のアルミニウムと、
 0.0質量%以上4.0質量%以下のチタンと、
 0.0質量%以上3.0質量%以下のタンタルと、
 1.5質量%未満のニオブと、
を含む
積層造形用合金粉末。
[請求項2]
 0.0質量%以上1.0質量%未満のコバルト
を含む
請求項1に記載の積層造形用合金粉末。
[請求項3]
 0.0質量%以上2.0質量%以下のチタン
を含む
請求項1又は2に記載の積層造形用合金粉末。
[請求項4]
 0.0質量%以上1.0質量%未満のニオブ
を含む
請求項1乃至3の何れか一項に記載の積層造形用合金粉末。
[請求項5]
 レニウムの含有量が検出限界以下である
請求項1乃至4の何れか一項に記載の積層造形用合金粉末。
[請求項6]
 ルテニウムの含有量が検出限界以下である
請求項1乃至5の何れか一項に記載の積層造形用合金粉末。
[請求項7]
 チタンの含有量についてのパラメータをTi質量%とし、
 タンタルの含有量についてのパラメータをTa質量%とし、
 ニオブの含有量についてのパラメータをNb質量%とし、
 コバルトの含有量についてのパラメータをCo質量%とし、
 クロムの含有量についてのパラメータをCr質量%とし、
 第1パラメータP1を次式(A):
 P1=0.08×Ti+0.15×Ta+0.19×Nb・・・(A)
とし、
 第2パラメータP2を次式(B):
 P2=0.04×Co-0.03×Cr・・・(B)
とした場合に、
 前記第1パラメータP1及び前記第2パラメータP2は、次式(C):
 P1<-1.24×P2-0.27・・・(C)
で表される関係式を満たす
請求項1乃至6の何れか一項に記載の積層造形用合金粉末。
[請求項8]
 請求項1乃至7の何れか一項に記載の積層造形用合金粉末を用いて積層造形された積層造形物の応力を除去するための第1熱処理工程と、
 前記第1熱処理工程を行った後の前記積層造形物の結晶粒を粗大化させるための、1250℃未満の温度で熱処理する第2熱処理工程と、
を備える積層造形方法。
[請求項9]
 前記第2熱処理工程は、前記積層造形物を1230℃以下の温度で熱処理する
請求項8に記載の積層造形方法。
[請求項10]
 ニッケル基合金からなる積層造形物であって、
 0.0質量%以上4.0質量%未満のコバルトと、
 12質量%以上25質量%以下のクロムと、
 1.0質量%以上5.5質量%以下のアルミニウムと、
 0.0質量%以上4.0質量%以下のチタンと、
 0.0質量%以上3.0質量%以下のタンタルと、
 1.5質量%未満のニオブと、
を含む
積層造形物。
[請求項11]
 0.0質量%以上1.0質量%未満のコバルト
を含む
請求項10に記載の積層造形物。
[請求項12]
 0.0質量%以上2.0質量%以下のチタン
を含む
請求項10又は11に記載の積層造形物。
[請求項13]
 0.0質量%以上1.0質量%未満のニオブ
を含む
請求項10乃至12の何れか一項に記載の積層造形物。
[請求項14]
 レニウムの含有量が検出限界以下である
請求項10乃至13の何れか一項に記載の積層造形物。
[請求項15]
 ルテニウムの含有量が検出限界以下である
請求項10乃至14の何れか一項に記載の積層造形物。
[請求項16]
 チタンの含有量についてのパラメータをTi質量%とし、
 タンタルの含有量についてのパラメータをTa質量%とし、
 ニオブの含有量についてのパラメータをNb質量%とし、
 コバルトの含有量についてのパラメータをCo質量%とし、
 クロムの含有量についてのパラメータをCr質量%とし、
 第1パラメータP1を次式(A):
 P1=0.08×Ti+0.15×Ta+0.19×Nb・・・(A)
とし、
 第2パラメータP2を次式(B):
 P2=0.04×Co-0.03×Cr・・・(B)
とした場合に、
 前記第1パラメータP1及び前記第2パラメータP2は、次式(C):
 P1<-1.24×P2-0.27・・・(C)
で表される関係式を満たす
請求項10乃至15の何れか一項に記載の積層造形物。
[請求項17]
 前記積層造形物における結晶粒は、結晶径のアスペクト比が1以上3未満である
請求項10乃至16の何れか一項に記載の積層造形物。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]