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1. WO2020189741 - 信号処理装置及び信号処理方法

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明 細 書

発明の名称 信号処理装置及び信号処理方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

非特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056  

符号の説明

0057  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 信号処理装置及び信号処理方法

技術分野

[0001]
 本発明は、信号処理装置及び信号処理方法に関する。

背景技術

[0002]
 近年、蛍光粒子間の蛍光共鳴エネルギ移動(FRET:Fluorescence Resonance Energy Transfer)を利用した信号処理の実装により、微小サイズかつ低消費電力で計算を行う計算素子の開発が進められている(例えば、非特許文献1を参照)。

先行技術文献

非特許文献

[0003]
非特許文献1 : T. Nishimura et al., Appl. Phys. Lett. 101, 233703 (2012)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 しかしながら、現在の微細加工技術では、大規模なFRET経路を設計通りに物理実装することは困難であるという問題点を有している。
[0005]
 本発明は、大規模なFRET経路が物理実装された信号処理装置、及び信号処理方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明の一態様に係る信号処理装置は、複数の蛍光粒子を含み、該複数の蛍光粒子を介したエネルギの移動経路が自律的かつランダムに定まるように構成された光エネルギネットワークと、前記光エネルギネットワークへ入力すべき入力信号に応じて、前記複数の蛍光粒子の少なくとも一部を励起させる信号入力部と、前記一部の蛍光粒子を励起させた後に、前記光エネルギネットワークから光信号を読み出す信号読出部と、該信号読出部により読み出した光信号に基づき、前記光エネルギネットワークによる演算結果を取得する取得部とを備える。
[0007]
 本発明の一態様に係る信号処理方法は、複数の蛍光粒子によるエネルギの移動経路が自律的かつランダムに定まるように構成された光エネルギネットワークへの入力信号の入力に応じて、前記複数の蛍光粒子の少なくとも一部を励起させ、前記一部の蛍光粒子を励起させた後に、前記光エネルギネットワークから光信号を読み出し、読み出した光信号に基づき、前記光エネルギネットワークによる演算結果を取得する。

発明の効果

[0008]
 上記一態様によれば、大規模なFRET経路による光エネルギネットワークを用いて信号処理を実行できる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 本実施の形態に係る信号処理装置の構成を示す模式図である。
[図2] FRETネットワーク部の構成を示す模式図である。
[図3] 学習フェーズにおいて本実施の形態に係る信号処理装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
[図4] 運用フェーズにおいて本実施の形態に係る信号処理装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
[図5] 実施の形態2におけるFRETネットワーク部の構成を示す模式図である。
[図6] 蛍光強度の多様性を検証した検証結果を説明する図である。
[図7] 蛍光寿命の多様性を検証した検証結果を説明する図である。
[図8] 励起強度の違いによる蛍光寿命の多様性を検証した検証結果を説明する図である。

発明を実施するための形態

[0010]
 以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
 図1は本実施の形態に係る信号処理装置の構成を示す模式図であり、図2はFRETネットワーク部12の構成を示す模式図である。本実施の形態に係る信号処理装置は、FRETにより信号が伝達する光エネルギネットワークを利用して演算を行う装置であり、信号入力部11、FRETネットワーク部12、信号読出部13、制御部14、記憶部15、及び入出力部16を備える。
[0011]
 FRETネットワーク部12は、複数の蛍光粒子121,121,…,121が固体中、液体中又はアモルファス中にランダムに配置されたナノ構造体120により構成される。ここで、蛍光粒子121は、蛍光分子であってもよく、量子ドットとして機能する蛍光材料であってもよい。また、ナノ構造体120は積層構造を有してもよい。ナノ構造体120に配置する蛍光粒子121の数は、隣接する蛍光粒子121,121間の距離が10nm以下となるように調整される。例えば、体積が1μm 3 程度のナノ構造体120には10 6 個程度の蛍光粒子121が配置される。蛍光粒子121には、励起ピークが550nm、蛍光ピークが570nmのCy3、励起ピークが649nm、蛍光ピークが670nmのCy5等が用いられる。
[0012]
 蛍光粒子121はナノ構造体120においてランダムに配置されるので、任意の2つの蛍光粒子121,121間の距離は様々であるが、その距離がおよそ10nm以下である場合、FRETが発生し得る。なお、FRETの発生条件は、2つの蛍光粒子121,121間の距離だけでなく、ドナー側の発光スペクトルとアクセプタ側の吸収スペクトルとの重なりが大きいこと、2つの蛍光粒子121,121が適切な配向をとっていること、ドナー側の蛍光量子収率が大きく、かつ、アクセプタの吸収強度が大きいことが挙げられる。このようなナノ構造体120を用いることにより、FRETネットワーク部12では、蛍光粒子121,121間をエネルギが移動する経路は自律的かつランダムに定まる。すなわち、ナノ構造体120における蛍光粒子121,121,…,121は、FRETにより信号が伝達する光エネルギネットワークを構築する。
[0013]
 信号入力部11は、入力信号に応じて、蛍光粒子121,121,…,121の少なくとも一部を励起させる。入力信号は、信号処理装置において演算対象となる信号であり、制御部14の内部にて生成されてもよく、入出力部16を通じて外部から入力されてもよい。信号入力部11は、入力信号に応じて調整された変調パラメータに従って、ナノ構造体120へ照射すべき光の波長及び時系列光強度を制御し、波長及び時系列光強度を制御した光(以下、励起光という)をナノ構造体120の特定の照射領域へ照射する。変調方法は任意であり、予め設定したルールに従って変調されればよい。また、励起光を照射する照射領域は予め設定される。励起光が照射された場合、照射領域に含まれる蛍光粒子121,121,…,121のエネルギ状態は、例えば基底状態から励起状態へ遷移する。
[0014]
 蛍光粒子121,121,…,121の一部が励起状態へ遷移した場合、上述した条件を満たす2つの蛍光粒子121,121間でFRETが発生する。すなわち、ドナー側の蛍光粒子121からアクセプタ側の蛍光粒子121へ励起エネルギが移動する。このような2つの蛍光粒子121,121間のFRETは、ナノ構造体120を構成する蛍光粒子121,121,…,121において次々に発生する。よって、信号入力部11によって励起光がナノ構造体120に照射された後、ナノ構造体120を構成する各蛍光粒子121,121,…,121のエネルギ状態は、発生条件を満たす他の蛍光粒子121からのFRETによって自律的に変化し、演算結果を表す状態へと変化する。
[0015]
 信号読出部13は、信号入力部11から励起光を照射した後、各蛍光粒子121,121,…,121のエネルギ状態が演算結果を表す状態に変化したタイミング以降(例えば、励起光を照射してから10 -12 秒程度が経過したタイミング以降)でFRETネットワーク部12から信号を読み出す。信号読出部13は、分光器を用いて波長分解計測/時間分解計測を行うことにより、FRETネットワーク部12から信号を読み出すことができる。FRETネットワーク部12から信号を読み出す手法は、公知の手法を用いることができる。また、信号読出部13が信号を読み出す読出領域は、ナノ構造体120の全領域を設定してもよく、ナノ構造体120の一部の領域を設定してもよい。信号読出部13によって読み出される信号は、読出領域に含まれる蛍光粒子121,121,…,121から得られる蛍光スペクトルの信号である。信号読出部13は、FRETネットワーク部12から読み出した信号を制御部14へ出力する。
[0016]
 制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。制御部14のCPUは、ROM又は記憶部15に記憶された各種コンピュータプログラムを実行することにより、ハードウェア各部の動作の制御及び各種の演算を実行し、装置全体を本願の信号処理装置として機能させる。制御部14のRAMは、各種コンピュータプログラムの実行中に生成されるデータ等を一時的に記憶する。
[0017]
 制御部14が実行する演算は、信号読出部13がFRETネットワーク部12から読み出す信号と、FRETネットワーク部12による演算結果との関係を学習する演算、および、学習演算の結果を利用して、FRETネットワーク部12が読み出した信号から演算結果を導出する演算を含む。これらの演算については、後に詳述することとする。
[0018]
 なお、制御部14は、上記の構成に限定されるものではなく、1又は複数のCPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイコン等を含む任意の処理回路であればよい。また、制御部14は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えていてもよい。
[0019]
 記憶部15は、メモリやHDD(Hard Disk Drive)などを用いた記憶装置を備える。記憶部15には、制御部14によって実行される各種コンピュータプログラム、コンピュータプログラムの実行に必要なデータ、制御部14による演算結果等が記憶される。記憶部15に記憶されるコンピュータプログラムは、信号読出部13がFRETネットワーク部12から読み出す信号と入力信号に対する出力として取得すべき演算結果との関係を学習するための学習プログラム、及び、学習結果に基づき、FRETネットワーク部12から信号読出部13が読み出した信号を演算結果に変換するための計算プログラム等を含む。
[0020]
 なお、記憶部15に記憶されるコンピュータプログラムは、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体により提供されてもよい。記録媒体は、例えば、CD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型メモリである。この場合、制御部14は、不図示の読取装置を用いて記録媒体からコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部15にインストールすることが可能である。また、記憶部15に記憶されるコンピュータプログラムは通信により提供されてもよい。この場合、制御部14は、不図示の外部サーバと通信を行うことによってコンピュータプログラムを取得し、取得したコンピュータプログラムを記憶部15にインストールすることができる。
[0021]
 入出力部16は、各種情報を入出力するためのインタフェースを備える。入出力部16は、キーボード、マウス等の入力デバイスを接続するインタフェースを備え、接続された入力デバイスを通じてユーザの指示を受け付けてもよい。また、入出力部16は、外部コンピュータを接続するインタフェースを備え、接続された外部コンピュータから出力される信号が入力されてもよい。更に、入出力部16は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の出力デバイスを接続するインタフェースを備え、制御部14による演算結果等を出力デバイスへ出力してもよい。
[0022]
 以下、本実施の形態に係る信号処理装置の動作について説明する。
 図3は学習フェーズにおいて本実施の形態に係る信号処理装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。信号処理装置の制御部14は、学習が行われていない初期状態において、以下の処理を実行することにより、信号読出部13がFRETネットワーク部12から読み出す信号と、FRETネットワーク部12による演算結果との関係を学習する。また、入出力部16を通じてユーザの指示を受付けた場合、制御部14は、以下の処理を実行することにより、信号読出部13がFRETネットワーク部12から読み出す信号と、FRETネットワーク部12による演算結果との関係を再学習してもよい。
[0023]
 制御部14は、演算対象となる入力信号が入力された場合、信号入力部11を制御することによって、FRETネットワーク部12を構成する蛍光粒子121,121,…,121の少なくとも一部を励起させる(ステップS101)。演算対象となる入力信号は、入出力部16を通じて制御部14に入力されてもよく、制御部14の内部にて生成されてもよい。制御部14は、演算対象の入力信号に応じて変調パラメータを生成し、生成した変調パラメータに従って照射すべき励起光の波長及び時系列光強度を制御する。信号入力部11は、制御部14によって生成される変調パラメータに基づき波長及び時系列光強度が制御された励起光をFRETネットワーク部12の予め定められた照射領域へ照射する。
[0024]
 励起光の照射によって、照射領域に含まれる蛍光粒子のエネルギ状態は、例えば基底状態から励起状態へ遷移する。蛍光粒子121,121,…,121の一部が励起状態へ遷移した場合、発生条件を満たす2つの蛍光粒子121,121間でFRETが発生する。蛍光粒子121,121間のFRETは、ナノ構造体120を構成する蛍光粒子121,121,…,121において次々に発生し、ナノ構造体120の全体に伝わる。すなわち、蛍光粒子121,121,…,121のエネルギ状態はFRETによって自律的に変化し、演算結果を表す状態へと変化する。
[0025]
 次いで、信号読出部13は、FRETネットワーク部12から信号の読み出しを行う(ステップS102)。この信号の読み出しは、蛍光粒子121,121,…,121のエネルギ状態が演算結果を表す状態に変化したタイミング以降(例えば、励起光を照射してから10 -12 秒程度が経過したタイミング以降)にて行えばよい。信号読出部13は、分光器を用いて波長分解計測/時間分解計測を行うことにより、FRETネットワーク部12から信号を読み出すことができる。FRETネットワーク部12から読み出された信号は、制御部14へ出力される。
[0026]
 次いで、制御部14は、信号読出部13によって読み出される信号と、入力信号に対する理想的な出力を示す教師信号とに基づき設定されるコスト関数を算出する(ステップS103)。コスト関数L({k i })は、例えば、次式により表される。
[0027]
[数1]


[0028]
 ここで、x i (i=1,2,3,…)は入力信号、y i (t,λ)は信号読出部13がFRETネットワーク部12から読み出した信号を表している。f(x i )は、入力信号x i に対して理想的な出力を示す教師信号を表す。また、信号y i (t,λ)に対応する演算結果は、F(y i (t,λ),{k i })のように記述することができる。ここで、F(…)は信号y i (t,λ)を演算結果に変換するための関数である。F(…)は、線形関数であってもよく、非線形関数であってもよい。{k i }は、関数F(…)を用いて、信号y i (t,λ)を演算結果に変換する際に用いられるパラメータである。パラメータ{k i }は、学習によって調整される。
[0029]
 なお、コスト関数は数1の式に限定されるものではなく、例えば、次式で表されるコスト関数を用いてもよい。
[0030]
[数2]


[0031]
 次いで、制御部14は、算出したコスト関数L({k i })の値が閾値ε以下であるか否かを判断する(ステップS104)。ここで、閾値εは、コスト関数L({k i })が収束したか否かを判定するための閾値であり、適宜の微小な値が設定される。
[0032]
 算出したコスト関数Lの値が閾値ε以下でないと判断した場合(S104:NO)、制御部14は、パラメータ{k i }を変更する(ステップS105)。例えば、制御部14は、ステップS103で算出されるコスト関数Lの値を保持しておき、今回算出したコスト関数L({k i })の値L n が、前回算出したコスト関数L({k i })の値L n-1 よりも小さくなるように、勾配法を用いてパラメータ{x i }を変更してもよい。パラメータ{x i }を変更した後、制御部14は、処理をステップS101へ戻す。
[0033]
 一方、算出したコスト関数L({k i })の値が閾値ε以下であると判断した場合(S104:YES)、制御部14は、そのときのパラメータ{k i }の値を、運用フェーズで用いるパラメータ{k i }として決定する(ステップS106)。制御部14は、決定した{k i }を記憶部15に記憶させ、本フローチャートによる処理を終了する。
[0034]
 図4は運用フェーズにおいて本実施の形態に係る信号処理装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。信号処理装置の制御部14は、学習が完了した後の運用フェーズにおいて、以下の処理を実行することにより、信号読出部13から読み出した信号からFRETネットワーク部12の演算結果を取得する。
[0035]
 制御部14は、学習フェーズと同様に、演算対象となる入力信号が入力された場合、信号入力部11を制御することによって、FRETネットワーク部12を構成する蛍光粒子121,121,…,121の少なくとも一部を励起させる(ステップS201)。演算対象となる入力信号は、入出力部16を通じて制御部14に入力されてもよく、制御部14の内部にて生成されてもよい。制御部14は、演算対象の入力信号に応じて変調パラメータを生成し、生成した変調パラメータに従って照射すべき励起光の波長及び時系列光強度を制御する。信号入力部11は、制御部14によって生成される変調パラメータに基づき波長及び時系列光強度が制御された励起光をFRETネットワーク部12の予め定められた照射領域へ照射する。
[0036]
 励起光の照射によって、照射領域に含まれる蛍光粒子のエネルギ状態は、例えば基底状態から励起状態へ遷移する。蛍光粒子121,121,…,121の一部が励起状態へ遷移した場合、発生条件を満たす2つの蛍光粒子121,121間でFRETが発生する。蛍光粒子121,121間のFRETは、ナノ構造体120を構成する蛍光粒子121,121,…,121において次々に発生し、ナノ構造体120の全体に伝わる。すなわち、蛍光粒子121,121,…,121のエネルギ状態はFRETによって自律的に変化し、演算結果を表す状態へと変化する。
[0037]
 次いで、信号読出部13は、FRETネットワーク部12から信号の読み出しを行う(ステップS202)。この信号の読み出しは、蛍光粒子121,121,…,121のエネルギ状態が演算結果を表す状態に変化したタイミング以降(例えば、励起光を照射してから10 -12 秒程度が経過したタイミング以降)にて行えばよい。信号読出部13は、分光器を用いて波長分解計測/時間分解計測を行うことにより、FRETネットワーク部12から信号を読み出すことができる。FRETネットワーク部12から読み出された信号は、制御部14へ出力される。
[0038]
 次いで、制御部14は、信号読出部13から出力される信号に基づき、FRETネットワーク部12による演算結果を導出する(ステップS203)。このとき、制御部14は、学習フェーズにおいて決定したパラメータ{k i }を読み出し、パラメータ{k i }により記述される関数F(y,{k i })へ信号y i(t,λ)信号入力することによって、FRETネットワーク部12による演算結果を導出する。制御部14は、入出力部16を通じて、導出した演算結果を出力する(ステップS204)。
[0039]
 以上のように、本実施の形態に係る信号処理装置では、FRETネットワーク部12が有する蛍光粒子121の物理的性質を直接的に演算に用いているので、電気信号を用いた従来の計算装置と比較し、小型化及び低消費電力化を実現することができる。
[0040]
(実施の形態2)
 実施の形態2では、FRETネットワーク部12の空間ダイナミクスを利用した信号処理装置について説明する。
[0041]
 図5は実施の形態2におけるFRETネットワーク部12の構成を示す模式図である。実施の形態2におけるFRETネットワーク部12のナノ構造体120は、第1層120A~第3層120Cを積層した積層構造を有する。第1層120Aは、例えば蛍光波長が540nmの蛍光粒子121Aを含み、第2層120Bは、例えば蛍光波長が580nmの蛍光粒子121Bを含み、第3層120Cは、例えば蛍光波長が620nmの蛍光粒子121Cを含む。これらの各層120A~120Cは、蛍光粒子121A~121Cを含有したポリマー溶剤をカバーガラス上でスピンコート後に硬化することによって形成される。蛍光粒子121Aは、第1層120Aの内部にてランダムに配置される。同様に、蛍光粒子121Bは、第2層120Bの内部にてランダムに配置され、蛍光粒子121Cは、第3層120Cの内部にてランダムに配置される。なお、図5では3層構造のナノ構造体120を例に挙げて説明したが、ナノ構造体120は、2層又は4層以上の積層体であってもよい。また、ナノ構造体120は、層構造を持たず、蛍光粒子121A,121B,121Cがランダムに配置された構造であってもよい。ランダムに配置される蛍光粒子の種類は3種類に限らず、2種類又は4種類以上であってもよい。
[0042]
 図5に示すナノ構造体120において、蛍光波長が540nmの蛍光粒子121Aから蛍光波長580nmの蛍光粒子121Bへのエネルギ移動は許容され、その逆方向への移動は禁止される。同様に、蛍光波長が580nmの蛍光粒子121Bから蛍光波長620nmの蛍光粒子121Cへのエネルギ移動は許容され、その逆方向への移動は禁止される。したがって、第1層120Aの側からナノ構造体120に励起光を照射し、第1層120A内の蛍光粒子121Aを励起した場合、そのエネルギ状態は、第1層120A内の蛍光粒子121A、第2層120B内の蛍光粒子121B、第3層120C内の蛍光粒子121Cの順に順次伝わる。蛍光粒子121Cが発する蛍光は、ナノ構造体120の第3層120Cの側から観測可能である。
[0043]
 蛍光粒子121A~121Cは、各層内においてランダムに配置されるので、励起光の照射面積が同じであっても、エネルギ移動に寄与する蛍光粒子121A~121Cの数は、励起光を照射する場所によって異なる。例えば、図5に示す照射領域111,112,113にそれぞれ励起光を照射し、観測領域131,132,133のそれぞれにおいて蛍光を観測した場合、各領域においてエネルギ移動に寄与する蛍光粒子121A~121Cの数は異なるので、観測結果として得られる蛍光強度及び蛍光寿命は各領域において異なることが予想される。
[0044]
 図6は蛍光強度の多様性を検証した検証結果を説明する図である。図6は、図5に示すナノ構造体120の異なる領域に励起光を照射し、それぞれにおいて蛍光強度を観測した結果を示している。照射領域111,112,113は、直径16μmの円形領域とした。各照射領域111,112,113に対応する観測領域131,132,133は、一辺が1μmの正方形領域とした。各領域間の間隔は、100μmとした。照射領域111,112,113に照射する励起光には、515nmの波長を有するレーザ光を用いた。本実施の形態では、分光器を用いて波長分解計測を行うことにより、蛍光強度の多様性を検証した。
[0045]
 各観測領域131,132,133において観測される蛍光強度の波長依存性は、図6の右欄に示すグラフのようになった。各グラフの横軸は波長(nm)を示し、縦軸は蛍光強度(任意目盛り)を示している。各観測領域131,132,133において観測される蛍光強度は、540nm,580nm,620nm付近にピークを有しており、蛍光粒子間でエネルギ移動が生じていることが分かる。また、図6に示すグラフから、蛍光強度の波長依存性は観測領域131,132,133に応じて相違することが分かる。蛍光強度の相違は、各領域内における蛍光粒子121A,121B,121Cの密度の相違に由来するものであると推察される。
[0046]
 このように、観測領域131,132,133に応じて多彩な蛍光スペクトルが得られるので、上述したナノ構造体120をリザーバに応用可能であることが示唆される。すなわち、信号処理装置は、入力信号に空間変調パターンを持たせ、第1層120Aに含まれる蛍光粒子121Aを選択的に励起させた後に、FRETネットワーク部12の空間ダイナミクスに応じて定まる信号を読み出せばよい。
[0047]
(実施の形態3)
 実施の形態3では、FRETネットワーク部12の時間ダイナミクスを利用した信号処理装置について説明する。
[0048]
 図7は蛍光寿命の多様性を検証した検証結果を説明する図である。図7は、図5に示すナノ構造体120の異なる領域に励起光を照射し、それぞれにおいて蛍光寿命を観測した結果を示している。照射領域111,112,113は、実施の形態2と同様に、直径16μmの円形領域とした。各照射領域111,112,113に対応する観測領域131,132,133は、短辺が1μm、長辺が400μmの矩形領域とした。各領域間の間隔は、100μmとした。照射領域111,112,113に照射する励起光には、515nmの波長を有するレーザ光を用いた。本実施の形態では、分光器を用いて時間分解計測を行うことにより、蛍光寿命の多様性を検証した。
[0049]
 各観測領域131,132,133において観測される蛍光強度の時間変化は、図7の右欄に示すグラフのようになった。各グラフの横軸は時間(ns)、縦軸は蛍光強度(任意目盛り)を示している。蛍光寿命を示す曲線には、フィッティング関数(Aln(-t/τ1)+Bln(-t/τ2))でフィッティングした曲線を用いた。ここで、τ1,τ2は時定数を表し、それぞれの値は図7に示す通りとなった。図7に示すグラフから、各観測領域131,132,133において観測される蛍光寿命は、各領域に応じて相違することが分かる。蛍光寿命の相違は、各領域内における蛍光粒子121A,121B,121Cの分布の相違に起因したエネルギ伝達経路の長短に由来するものであると推察される。
[0050]
 このように、観測領域131,132,133に応じて多彩な蛍光スペクトルが得られるので、上述したナノ構造体120をリザーバに応用可能であることが示唆される。すなわち、信号処理装置は、入力信号に空間変調パターンを持たせ、第1層120Aに含まれる蛍光粒子121Aを選択的に励起させた後に、FRETネットワーク部12の時間ダイナミクスに応じて定まる信号を読み出せばよい。
[0051]
(実施の形態4)
 実施の形態4では、FRETネットワーク部12の時間ダイナミクスを利用した信号処理装置の他の例について説明する。
[0052]
 図8は励起強度の違いによる蛍光寿命の多様性を検証した検証結果を説明する図である。図8は、図5に示すナノ構造体120に異なる励起強度の励起光を照射し、それぞれにおいて蛍光寿命を観測した結果を示している。ナノ構造体120に照射する励起光には、強励起の場合、波長510nm、強度135mW、弱励起の場合、波長510nm、強度20mWのレーザ光を用いた。本実施の形態では、分光器を用いて時間分解計測を行うことにより、蛍光寿命の多様性を検証した。
[0053]
 各励起条件において蛍光粒子121Aを励起した場合における蛍光強度の時間変化は図8に示すグラフのようになった。各グラフの横軸は時間(ns)、縦軸は蛍光強度(任意目盛り)を示している。蛍光寿命を示す曲線には、フィッティング関数(Aln(-t/τ1)+Bln(-t/τ2))でフィッティングした曲線を用いた。図8の左側のグラフは強励起を行った場合の蛍光寿命を示し、右側のグラフは弱励起を行った場合の蛍光寿命を示している。なお、各グラフに示す5本の曲線は、蛍光粒子121A~121Cの濃度を変更して観測を行った結果を示している。
[0054]
 これらのグラフから、弱励起の条件にて励起した場合、強励起の条件にて励起した場合と比較して時定数τ1,τ2が長いことが分かる。この結果、強励起時には、略全ての蛍光粒子121A~121Cにおいて励起子が生成され、そのまま発光しているのに対し、弱励起時には、励起子を持たない蛍光粒子121A~121Cが存在し、FRETネットワーク部12のネットワーク構造を介して移動した励起エネルギが遅れて発光しているものと推察される。
[0055]
 このように、励起強度に応じて多彩な蛍光スペクトルが得られるので、上述したナノ構造体120をリザーバに応用可能であることが示唆される。すなわち、信号処理装置は、励起条件により規定される励起強度にて蛍光粒子121A~121Cを選択的に励起させた後に、FRETネットワーク部12の時間ダイナミクスに応じて定まる信号を読み出せばよい。
[0056]
 今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。

符号の説明

[0057]
 11 信号入力部
 12 FRETネットワーク部
 13 信号読出部
 14 制御部
 15 記憶部
 16 入出力部

請求の範囲

[請求項1]
 複数の蛍光粒子を含み、該複数の蛍光粒子を介したエネルギの移動経路が自律的かつランダムに定まるように構成された光エネルギネットワークと、
 前記光エネルギネットワークへ入力すべき入力信号に応じて、前記複数の蛍光粒子の少なくとも一部を励起させる信号入力部と、
 前記一部の蛍光粒子を励起させた後に、前記光エネルギネットワークから光信号を読み出す信号読出部と、
 該信号読出部により読み出した光信号に基づき、前記光エネルギネットワークによる演算結果を取得する取得部と
 を備える信号処理装置。
[請求項2]
 前記入力信号は、空間変調パターンを有する信号であり、
 前記信号入力部は、前記入力信号が有する空間変調パターンに基づき、前記光エネルギネットワーク内の蛍光粒子を選択的に励起させ、
 前記信号読出部は、前記光エネルギネットワークの空間ダイナミクスに応じて定まる光信号を読み出す
 請求項1に記載の信号処理装置。
[請求項3]
 前記入力信号は、空間変調パターンを有する信号であり、
 前記信号入力部は、前記入力信号が有する空間変調パターンに基づき、前記光エネルギネットワーク内の蛍光粒子を選択的に励起させ、
 前記信号読出部は、前記光エネルギネットワークの時間ダイナミクスに応じて定まる光信号を読み出す
 請求項1に記載の信号処理装置。
[請求項4]
 前記信号入力部は、励起条件により規定される強度にて前記光エネルギネットワーク内の蛍光粒子を励起させ、
 前記信号読出部は、前記光エネルギネットワークの時間ダイナミクスに応じて定まる光信号を読み出す
 請求項1に記載の信号処理装置。
[請求項5]
 前記入力信号に対する出力信号が理想的な出力を示す教師信号を再現するように、前記信号読出部が読み出す光信号と前記取得部が取得する演算結果との関係を学習する学習部
 を備える請求項1から請求項4の何れか1つに記載の信号処理装置。
[請求項6]
 前記エネルギの移動は、ドナーとなる蛍光粒子の電子と、アクセプタとなる蛍光粒子の電子との間の共鳴によって励起エネルギが移動する蛍光共鳴エネルギ移動である
 請求項1から請求項5の何れか1つに記載の信号処理装置。
[請求項7]
 複数の蛍光粒子によるエネルギの移動経路が自律的かつランダムに定まるように構成された光エネルギネットワークへの入力信号の入力に応じて、前記複数の蛍光粒子の少なくとも一部を励起させ、
 前記一部の蛍光粒子を励起させた後に、前記光エネルギネットワークから光信号を読み出し、
 読み出した光信号に基づき、前記光エネルギネットワークによる演算結果を取得する
 信号処理方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]