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1. WO2020184509 - セラミック焼結体およびセラミック粉末

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明 細 書

発明の名称 セラミック焼結体およびセラミック粉末

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005   0006   0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045  

実施例

0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056  

符号の説明

0057  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : セラミック焼結体およびセラミック粉末

技術分野

[0001]
 本開示は、ジルコニアを主成分として含むセラミック焼結体およびセラミック粉末に関する。

背景技術

[0002]
 従来、様々な技術分野において、比較的高い強度と比較的高い靭性とを両立するセラミック焼結体(セラミック粉末が成形、焼成されてなるもの)が求められている。このようなセラミック焼結体の一例として、下記特許文献1には、人工関節等に適するセラミック焼結体が挙げられている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2005-131081号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 例えば刃物等の用途において、セラミック焼結体にはさらに高い強度と靭性との両立が求められている。

課題を解決するための手段

[0005]
 本開示に係るセラミック焼結体は、ジルコニアを主成分として含むセラミック焼結体であって、複数の焼結体結晶と、複数の焼結体結晶の間にある粒界部とを備え、CeO (セリア)を少なくとも含み、焼結体結晶の中央領域よりも、粒界部の方がCeの含有量が大きい。
[0006]
 本開示に係るセラミック焼結体およびセラミック粉末は、ジルコニアを75~95質量%、アルミナを5~25質量%、ジルコニアおよびアルミナの総和を100質量%とした際に、酸化亜鉛が0.2~0.4質量%含まれるジルコニア系複合酸化物からなり、ジルコニアが1.5~2.8モル%のY (イットリア)を含む部分安定化ジルコニアと8~12モル%のCeO を含む部分安定化ジルコニアとを含み、ジルコニア総量に対するY を含む部分安定化ジルコニアの比率が15~50%である。
[0007]
 本開示に係る刃物は、上述のセラミック焼結体を含有する刃体を備える。さらに、本開示に係る治工具は、上述のセラミック焼結体を含有する切削部または耐摩耗部を備える。

発明の効果

[0008]
 本開示のセラミック焼結体は、高い抗折強度と高い破壊靭性とを有する。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 本開示の一実施形態に係るセラミック焼結体の概略表面拡大図である。
[図2] 本開示の一実施形態に係るセラミック焼結体の表面拡大写真の一例である。
[図3] 図2に示すセラミック焼結体における各元素の含有割合を示すデータである。
[図4] 図2に示すセラミック焼結体の他の部分の透過型電子顕微鏡写真である。

発明を実施するための形態

[0010]
 以下、本開示のセラミック焼結体の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本開示のセラミック焼結体の概略表面拡大図の一例である。図2は、本開示のセラミック焼結体の表面の透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)の一例である。図1の表面拡大図は、図2のTEM写真をベースにして描画したものである。
[0011]
 図1および図2に示すセラミック焼結体1(以降、単に焼結体1と記載する場合がある)は、ジルコニアを主成分として含み、複数の焼結体結晶10と、複数の焼結体結晶10の間にある粒界部12とを備えている。焼結体結晶10は、CeO を少なくとも含み、焼結体結晶10の中央領域Aよりも、粒界部12の方がCeの含有量が大きい。
[0012]
 図3は、図1に示す焼結体結晶10における、ジルコニア以外の成分の含有割合の一例を示すグラフである。すなわち、図3は、図1および2に示すa、b、c、dおよびeそれぞれの点において、エネルギー分散型X線分光器(Thermo Scientific社製EDSアナライザ: NSS300E)を用いて測定した各元素の割合を示している。測定条件は加速電圧:200kV、測定Livetime:50secとした。図1および2の点aは中央領域Aに含まれ、点eは粒界部12に含まれている。その他の点b、cおよびdは、点aと点eとを結ぶ直線上にこの順に設定した任意の測定点である。図1に示す端部領域Bおよび中央領域Aと端部領域Bとの間の領域に、それぞれ点b、cおよびdのうち少なくとも1つの測定点を有するのが好ましい。
[0013]
 具体的には、ジルコニア以外の成分の含有割合は、焼結体結晶10の中央領域AのCe含有量(100質量%)に対して、粒界部12のCe含有量が110質量%以上、好ましくは120質量%以上であるのがよく、さらに150質量%以下、好ましくは140質量%以下であるのがよい。
[0014]
 図3に示す結果より分かるように定量的に、粒界部12ではジルコニアの安定化に必要なCeの含有量が多く、これに対して中央領域Aではジルコニアの安定化に必要なCeの含有量が少ないことが確認される。この含有量の差は、焼結体結晶10の内部で応力誘起変態に必要な臨界応力について、異なる領域が存在することを示し、各々で強度または靱性が上昇する効果を有する。
[0015]
 すなわち、焼結体結晶10の中央領域Aよりも粒界部12の方がCeの含有量が大きいことで、粒界部12でジルコニアの安定化が進む。その結果、応力誘起変態に必要な臨界応力が高くなり、強度が上昇する効果をもたらす。一方で、中央領域Aはジルコニアの安定化に必要なCeの含有量が少なくなる。そのため、応力誘起変態に必要な臨界応力が低くなり、靱性は高くなる。中央領域Aとは、電子顕微鏡写真像における焼結体結晶10の外接円の中心から、当該外接円の半径の50%の半径を有する円の領域である。
[0016]
 図3に示す結果からも明らかなように、本実施形態では、焼結体結晶10のCeの含有量は、焼結体結晶10の中央領域Aよりも、粒界部12に近い端部領域Bの方が大きい。端部領域Bとは、粒界部12から中央領域Aの中心を結ぶ線分の全長に対して、粒界部12からの長さが10%である領域である。粒界部12のCe含有量は、焼結体結晶10の中央領域Aから粒界部12に向かって漸増する。
[0017]
 これにより、焼結体結晶10の粒界部12から中央領域Aにかけてジルコニアの安定化状態の変化が連続的に生じる。その結果、応力誘起変態に必要な臨界応力が高い部分と低い部分とが調和を保ち共存して、セラミック焼結体全体の強度と靱性とを両立させる効果がある。
[0018]
 図1において、点aが中央領域Aに含まれ、点cおよび点dが端部領域Bに含まれる。点c~点eにかけてCeの含有量は漸増している。これにより、本実施形態の焼結体結晶10においては、ジルコニアの安定化状態が連続的に変化した応力誘起変態に寄与する相が、端部領域Bを挟み他の結晶相間に形成される。その結果、結晶粒内および結晶粒界起点の破壊に対する抵抗を高め、セラミック焼結体の強度と靱性値とを向上させる効果を有する。
[0019]
 粒界部12のCeの含有量は8質量%以上15質量%以下である。粒界部12のCeの含有量がこのような範囲である場合、強度と靭性とが比較的高い焼結体が得られる。
[0020]
 図4は、図1とは異なる部分の焼結体1の透過型電子顕微鏡写真の一例である。本実施形態の焼結体1は、少なくとも1つの焼結体結晶10が、アルミナのナノ粒子14を内部に備える。これにより、焼結体結晶10のジルコニア内にナノレベルの粒界部を形成し、上述の強度および靱性の強化機構をジルコニア内でも発生させる効果がある。その結果、セラミック焼結体全体の強度と靱性とが向上する。
[0021]
 アルミナのナノ粒子14は、粒径が0.8μm以下であるのがよく、0.5μm以下であるのがより望ましく、0.01μm以上であるのがよい。ジルコニア内に存在するナノレベルのアルミナの粒子径が0.8μm以下の場合、他のアルミナの結晶粒子径と異なる粒子径である。そのため、本開示の特徴であるジルコニア内でのCeの濃化機構の複雑化に、より関与しやすくなり、セラミック焼結体の強度と靱性との向上に、より寄与する。
[0022]
 本実施形態の焼結体1は、ジルコニアを75~95質量%、アルミナを5~25質量%、ジルコニアとアルミナとの総和を100質量%とした際に酸化亜鉛が0.2~0.4質量%含まれるジルコニア系複合酸化物からなる。ジルコニアは、1.5~2.8モル%のY を含む部分安定化ジルコニアと8~12モル%のCeO を含む部分安定化ジルコニアとの混合相からなり、Y を含む部分安定化ジルコニアの比率が、ジルコニア総量、すなわち部分安定化ジルコニアの混合相全体の15~50%である。
[0023]
 このような組成を有する焼結体1は、主組成であるジルコニアとアルミナとが各々の濃度で存在することにより、セラミック焼結体全体で分散強化機構が効果的に発生する。さらに、酸化亜鉛が上記の適切な濃度で存在することにより、焼結時にアルミナまたはジルコニア粒界部において焼結助剤としての効果をもたらし、焼結密度が上昇する効果がある。ジルコニアが上記した所定のY 濃度およびCeO 濃度を含有する部分安定化ジルコニアの混合相であることで、セラミック焼結体全体のジルコニアに巨視的な範囲で、応力誘起変態強化機構に必要な臨界応力の異なるY 部分安定化ジルコニアとCeO 部分安定化ジルコニアとが分散して存在する。その結果、外部応力からの破壊抵抗に対するジルコニアの抵抗応答性を高める効果を与える。酸化亜鉛は焼結過程で焼結助剤としての働きを示すだけでなく、アルミナとCeO との化合物を形成する。部分安定化ジルコニアの安定化剤Y とCeO とは、焼結時にジルコニア相間で相互に拡散して濃度分布が平衡する作用を受ける。しかし、酸化亜鉛が焼結過程においてジルコニアの粒界部で液相を形成する際に、上記アルミナとCeO との化合物を生成する方向に化学平衡が生じることで、結果として焼結後のジルコニアの粒界部分にCe濃度が濃化した領域を形成する効果も有する。
[0024]
 焼結体1は、ジルコニア系複合酸化物(ジルコニア-アルミナ複合酸化物)と焼結助剤としての酸化亜鉛とからなり、1450℃常圧焼結時の焼結密度が理論密度に対する相対密度で97.6%以上である。このような焼結体1は、焼結後の焼結密度が高く、空隙等によるセラミック焼結体内の構造欠陥が小さくなり、破壊源が減少する効果がある。その結果、このような焼結体1は、強度面で信頼性の高いセラミック焼結体としての利用が期待できる。
[0025]
 焼結体1は、破壊靱性値がIF法で12.0MPa・m 0.5以上、SEVNB法で10.0MPa・m 0.5以上であるのがよい。このような焼結体1は、破壊時の内部き裂の進展に対して高い抵抗を示す効果があり、これまでのセラミック焼結体に比べて金属に近い挙動を示す。そのため、これまでのセラミック焼結体では破壊靱性値が不足していたために使用できなかったような金属代替分野に応用が可能である。
[0026]
 焼結体1は、ビッカース硬度HV50が1100以上である。このような焼結体1は、一般的な金属材料よりも硬く、耐摩耗性に優れる効果がある。そのため、上記のような金属代替分野で、金属よりも耐摩耗性が求められるような分野に応用できる。焼結体1は、3点曲げ破壊時の抗折強度値が980MPa以上である。このような焼結体1は、これまでに記載した各種強化機構の効果により、各組成と複合化して焼結した後も、ジルコニア系セラミック焼結体が元来有する特徴である、他のセラミック焼結体と比較して高い強度値を維持することを示す。そのため、このような焼結体1は、セラミック焼結体の構造体への応用に適している。
[0027]
 このように、焼結体1は高い破壊靭性値と高い抗折強度値とを有しているので、刃物等に用いた際、鋭い切れ味が比較的長続きし、かつ割れ難いという効果がある。本開示の一実施態様である、焼結体1を含有する刃体を備えた刃物は、鋭い切れ味が比較的長続きし、かつ割れ難い。
[0028]
 本開示の他の実施形態である、焼結体1を含有する切削部または耐摩耗部を備えた治工具は、切削、回転、摺動、摩擦等を伴う治工具、例えば各種加工装置の摺動部品、産業用カッター等の機能に関して信頼性向上に有効である。
[0029]
 ジルコニア中のCeO 部分安定化ジルコニアに含まれるCeO の含有量は、このジルコニアを正方晶として安定化させ、単斜晶および立方晶の析出を抑制させるために、8~12モル%が望ましい。ジルコニア中のY 部分安定化ジルコニアに含まれるY の含有量も、上記と同様の理由から、1.5~2.8モル%であることが望ましい。
[0030]
 本開示におけるジルコニア系複合酸化物の主成分であるジルコニア中のCeO 部分安定化ジルコニアに含まれるCeO の含有量が8モル%よりも少ない場合には、準安定相である単斜晶が析出しやすくなる。そのため、焼結工程前後の体積膨張により、セラミック焼結体が破壊する原因になるおそれがある。一方、CeO の含有量が12モル%よりも多い場合には、立方晶が増加して本焼結体の特徴であるジルコニアの応力誘起変態機構が発揮されない傾向がある。そのため、抗折強度、靭性および硬度が低下するおそれがある。ジルコニア中のCeO 部分安定化ジルコニアに含まれるCeO の含有量は、9モル%以上11モル%以下であってもよい。
[0031]
 一方、ジルコニア中のY 部分安定化ジルコニアに含まれるY の含有量が1.5モル%よりも少ない場合には、CeO と同様、準安定相である単斜晶が析出しやすくなる。そのため、焼結工程前後の体積膨張により、セラミック焼結体が破壊する原因になるおそれがある。一方、Y の含有量が2.8モル%よりも多い場合には、立方晶が増加し、この場合も本焼結体の特徴であるジルコニアの応力誘起変態機構の発生が損なわれる傾向がある。そのため、抗折強度、靭性、硬度が低下するおそれがある。ジルコニア中のY 部分安定化ジルコニアに含まれるY の含有量は、1.7モル%以上2.6モル%以下であってもよい。
[0032]
 本開示におけるジルコニア系複合酸化物を構成するジルコニアの割合が75質量%よりも少なく、アルミナの割合が25質量%よりも多い場合には、機械的特性のうち特に靭性が低下するおそれがある。一方、ジルコニアの割合が95質量%よりも多く、アルミナの割合が5質量%よりも少ない場合には、アルミナの減少により、本セラミック焼結体の特徴であるCeの濃度の濃化機構が相対的に減少して、機械的特性のうち特に抗折強度およびビッカース硬度が低下するおそれがある。
[0033]
 本開示におけるジルコニア系複合酸化物では、アルミナがCeの濃化機構に関与する点で、アルミナはジルコニアの粒界に存在していてもよい。さらに、焼結工程において一定の割合で生じるジルコニア内に生じるナノレベルのアルミナ粒子は、ジルコニア内でのCeの濃化機構に関与して応力誘起変態の臨界応力の異なる領域を複雑化する効果を奏するので、存在していてもよい。
[0034]
 本開示におけるジルコニア系複合酸化物において、酸化亜鉛の含有量は、ジルコニアとアルミナとの総和を100質量%としたとき、0.2~0.4重量%の範囲が望ましい。酸化亜鉛の含有量が0.2重量%よりも少ない場合には、焼結助剤としての効果が失われ、セラミック焼結体中の残留気孔が増加して焼結密度が低下する傾向がある。そのため、強度面で信頼性が低くなるおそれがある。一方、酸化亜鉛の含有量が0.4質量%よりも多い場合は、酸化亜鉛がアルミナとCeO との化合物生成を促進してセラミック焼結体内で針状結晶を多量に生成する傾向がある。その結果、ジルコニアとアルミナとの存在状態が不均質化して、本焼結体の特徴である強度と靱性との向上が損なわれるおそれがある。
[0035]
 そして、本開示におけるジルコニアおよびアルミナは、ともに平均粒径が1μm以下であってもよく、抗折強度および靭性を高めるという点で平均粒径は0.3~0.8μmがより望ましい。
[0036]
 ジルコニアおよびアルミナの平均粒径が1μm以下の場合には、ジルコニア結晶が正方晶系から単斜晶系に変化しにくく、靭性が低下しにくくなる傾向がある。複合セラミック中に、ときに大きな結晶が存在することにより、耐摩耗性試験時にジルコニアもしくはアルミナの粒子の欠落が発生しやすく耐摩耗性が低下する傾向がある。このため、ジルコニアおよびアルミナの最大結晶径が2μm以下、特に、1.5μm以下であることが望ましい。
[0037]
 次に、本開示の焼結体の製法について説明する。
[0038]
 本開示では、まず、セラミック粉末を調製し、この粉末を所望の形状に成形する。セラミック粉末はCeO を8~12モル%含む第1ジルコニア粉末と、Y を1.5~2.8モル%含む第2ジルコニア粉末と、アルミナ粉末と、亜鉛化合物とを混合したジルコニア系混合粉末を含む。第1および第2ジルコニア粉末ならびにアルミナ粉末の平均粒径はともに1μm以下であることが好ましく、特に、0.8μm以下であることが望ましい。第1および第2ジルコニア粉末の配合量は、第1ジルコニア粉末50~85質量%および第2ジルコニア粉末15~50質量%の割合で混合して用いる。特に、焼成して得られる複合セラミックの靭性および機械的強度を高めるという理由から、第1ジルコニア粉末を50~75質量%、第2ジルコニア粉末を25~50質量%含有させるとよい。
[0039]
 さらに、本開示では、上記第1ジルコニア粉末および第2ジルコニア粉末を含むジルコニア粉末75~95質量%およびアルミナ粉末を5~25質量%の割合で混合して用いる。アルミナ粉末の割合がこれを超えると、焼成後の複合セラミックの破壊靱性値が低下し、強度値も低下するためである。一方でアルミナ粉末の割合がこれを下回ると、アルミナの複合強化機構が失われる傾向がある。
[0040]
 この場合、第1および第2ジルコニア粉末ならびにアルミナ粉末の平均粒径は、1μm以下のものを用いるのがよい。平均粒径が1μm以下のものを用いた場合には、焼結後の複合セラミックを構成するジルコニアおよびアルミナの平均粒径が大きくなりにくい。好ましくは各粉末を、または各粉末を混合する際に、粉末粒子を湿式粉砕等の手段で微細化して、第1および第2ジルコニア粉末ならびにアルミナ粉末の平均粒径をともに、適正な平均粒径の範囲である0.1~0.6μmにするとよい。
[0041]
 本開示に用いる第1および第2ジルコニア粉末などのジルコニア粉末およびアルミナ粉末の純度は、99.9%以上であるのが望ましい。
[0042]
 さらに、本開示ではジルコニアとアルミナとの混合時に、0.2~0.4質量%の酸化亜鉛換算で亜鉛化合物を添加することが望ましい。亜鉛化合物は炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、または有機化合物などの形態で添加してもよい。例えば、焼結時にセラミック焼結体に気孔が発生しないような、強熱減量が少ない酸化亜鉛を添加することが望ましい。
[0043]
 この場合、亜鉛化合物の粒径は0.1~1.0μm、好ましくは0.1~0.5μmであることが望ましい。亜鉛化合物の粒径が0.1~1.0μmの場合、焼結時に酸化亜鉛がジルコニアまたはアルミナの粒界部に塊として残存しにくくなり、焼結助剤としての効果が損なわれにくくなる。本開示に用いる亜鉛化合物の純度は99.9%以上が望ましい。
[0044]
 本開示ではこのようにして得た成形体を焼結してセラミック焼結体が得られる。熱間静水圧焼結を必要とせず、1450℃以下の大気雰囲気中で焼結することができる。これは、酸化亜鉛が適切な添加量で存在することで焼結助剤として働くためであり、1350~1450℃で焼結することが望ましい。1450℃以下の温度で焼成を行うと、ジルコニアおよびアルミナの粒成長がより穏やかになり、平均結晶径が必要以上に大きくなりにくい。その結果、ジルコニアが正方晶から単斜晶に転移しにくくなり、靭性および耐摩耗性がより低下しにくくなる。焼成温度の下限としては、酸化亜鉛が焼結助剤として焼結性を高める温度範囲である1300℃以上、さらに好ましくは1350℃以上がよい。
[0045]
 本開示では、セラミック粉末の調整に用いるジルコニア粉末は、CeO とY とジルコニア粉末とを粉末混合した後に仮焼して得られたもの、あるいは、Ce、Yおよびジルコニアの金属塩またはアルコキシドをpH調整した水溶液中で混合する方法(以下、加水分解法と記載する場合がある)で得られたもののいずれでもよい。均一な粒子径を有し、かつ、より安定化したジルコニアが得られるという点で、加水分解法により合成した粉末が好ましい。
実施例
[0046]
 以下、実施例を挙げて本開示のセラミック焼結体を詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
[0047]
 まず、加水分解法により調製したCeO を10モル%含む部分安定化ジルコニア粉末(純度99.9%、粒径0.5μm)およびY を2.0モル%含む部分安定化ジルコニア粉末(純度99.9%、粒径0.5μm)を表1に示す所定の比率になるように混合したジルコニア粉末と、アルミナ粉末(純度99.9%、粒径0.5μm)と、酸化亜鉛(純度99.9%、粒径0.2μm)とを、表1に示す組成になるように配合した。混合は、高純度耐摩耗アルミナボールとポリエチレン容器とを用い、IPA(イソプロピルアルコール)を溶媒として24時間湿式ボールミルを用いて行った。その後、乾燥して得られたセラミック粉末をプレス成形し、大気中、1350~1450℃で2時間焼成してセラミック焼結体(試料No.1~10)を作製した。
[0048]
 得られたセラミック焼結体の結晶組織観察は透過型電子顕微鏡を用いて行った。具体的にはセラミック焼結体を、透過型電子顕微鏡試料室内に設置可能であり、電子線の透過観察に適した厚さのサイズに切断して、試料No.1を作製した。この試料を透過型電子顕微鏡試料室内に設置し、透過電子線による結像を観察した。その結果を図2に示す。
[0049]
 次に、得られたセラミック焼結体を研削加工して、4×3×35mmの試料を作製した。焼結体の密度はアルキメデス法で測定した。抗折強度はJIS-R1601による室温における3点曲げ強度で評価した。
[0050]
 セラミック焼結体のビッカース硬度はJIS-R1610のビッカース硬さ試験方法、破壊靱性値はJIS-R1607のIF法により評価した。本開示における焼結体は高い強度、靱性を有するので、各試験の圧子圧入圧は50kgf(490N)とした。それらの結果を表1に示す。
[0051]
[表1]


[0052]
 表1から、本開示のセラミック焼結体は、高い抗折強度と高い破壊靭性とを有することがわかる。
[0053]
 試料No.1~10のセラミック焼結体について、セラミック焼結体上の結晶粒界部と中央領域部の組成濃度の測定は走査型透過電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分析を用いて行った。測定には、Thermo Scientific社製EDSアナライザ: NSS300Eを用い、測定条件は加速電圧:200kV、測定Livetime:50secとした。
[0054]
 図3に試料No.1の各元素の含有割合を示す。表2に、各試料について焼結体結晶の中央領域のCe含有量と、粒界部のCe含有量とを示す。
[0055]
[表2]


[0056]
 表1および表2の数値から、Ceの含有量が焼結体結晶の中央領域よりも、粒界部の方が大きいセラミック焼結体は、高い抗折強度と高い破壊靭性とを有することがわかる。

符号の説明

[0057]
 1  セラミック焼結体
 10 焼結体結晶
 12 粒界部
 14 アルミナのナノ粒子
 A  中央領域
 B  端部領域

請求の範囲

[請求項1]
 ジルコニアを主成分として含むセラミック焼結体であって、
 複数の焼結体結晶と、複数の焼結体結晶の間にある粒界部とを備え、
 CeO を少なくとも含み、
 前記焼結体結晶の中央領域よりも、前記粒界部の方がCeの含有量が大きいことを特徴とするセラミック焼結体。
[請求項2]
 前記焼結体結晶のCeの含有量は、前記焼結体結晶の中央領域よりも、前記粒界部に近い端部領域の方が大きいことを特徴とする請求項1記載のセラミック焼結体。
[請求項3]
 前記粒界部のCeの含有量は、前記焼結体結晶の前記端部に近づくにしたがって漸増する領域を有することを特徴とする請求項2記載のセラミック焼結体。
[請求項4]
 前記粒界部のCeの含有量は、8質量%以上15質量%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のセラミック焼結体。
[請求項5]
 少なくとも1つの前記焼結体結晶は、アルミナのナノ粒子を内部に備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のセラミック焼結体。
[請求項6]
 ジルコニアを75~95質量%、アルミナを5~25質量%、ジルコニアとアルミナの総和を100質量%とした際に、酸化亜鉛が0.2~0.4質量%含まれるジルコニア系複合酸化物からなり、ジルコニアが1.5~2.8モル%のY を含む部分安定化ジルコニアと8~12モル%のCeO を含む部分安定化ジルコニアとを含み、ジルコニア総量に対するY を含む部分安定化ジルコニアの比率が15~50%であることを特徴とするセラミック焼結体。
[請求項7]
 ジルコニア-アルミナ複合酸化物と焼結助剤として酸化亜鉛とからなる焼結体であって、1450℃常圧焼結時の焼結密度が理論密度に対する相対密度で97.6%以上であることを特徴とするセラミック焼結体。
[請求項8]
 破壊靱性値が、IF法で12.0MPa・m 0.5以上、SEVNB法で10.0MPa・m 0.5以上であることを特徴とする請求項6または7記載のセラミック焼結体。
[請求項9]
 ビッカース硬度HV50が1100以上である請求項6~8のいずれかに記載のセラミック焼結体。
[請求項10]
 3点曲げ破壊時の抗折強度値が980MPa以上であることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載のセラミック焼結体。
[請求項11]
 請求項1~10のいずれかに記載のセラミック焼結体を含有する刃体を備えた刃物。
[請求項12]
 請求項1~10のいずれかに記載のセラミック焼結体を含有する切削部または耐摩耗部を備えた治工具。
[請求項13]
 ジルコニアを75~95質量%、アルミナを5~25質量%、ジルコニアとアルミナの総和を100質量%とした際に、酸化亜鉛が0.2~0.4質量%含まれるジルコニア系複合酸化物からなり、ジルコニアが1.5~2.8モル%のY を含む部分安定化ジルコニアと8~12モル%のCeO を含む部分安定化ジルコニアとを含み、ジルコニア総量に対するY を含む部分安定化ジルコニアの比率が15~50%であることを特徴とするセラミック粉末。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]