処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2020129983 - 化粧シート

Document

明 細 書

発明の名称 化粧シート

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123  

符号の説明

0124  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 化粧シート

技術分野

[0001]
 本発明は、化粧シートに関する。

背景技術

[0002]
 近年、例えば、特許文献1から特許文献3に示すように、ポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが数多く提案されている。
 しかし、これらの化粧シートは塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生は抑制されるものの、例えば、一般的なポリプロピレンシートもしくは軟質ポリプロピレンシートを使用した場合には、表面の耐擦傷性(耐傷性)が悪くなる傾向がある。このため、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートは、耐傷性の点において、従来のポリ塩化ビニル化粧シートに比べて劣ることがある。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特許第3271022号公報
特許文献2 : 特許第3861472号公報
特許文献3 : 特許第3772634号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 化粧シートの耐傷性を向上させるために、表面保護層に電離放射線硬化性樹脂を塗工・硬化させる方法が知られている。しかしながら、化粧シートにまったく傷がつかないわけではなく、高荷重条件下で耐傷性試験を実施すると化粧シートに傷がつくことがあるといった問題があった。
 そこで、高荷重条件下での耐傷性を向上させるために、表面保護層をより硬く、より厚くすることが提案されているが、表面保護層を硬くしすぎると表面保護層が脆くなり、落下物等に対する耐衝撃性が悪化したり、耐候性が悪化したりすることがあり、また、表面保護層を厚くすると、コストが掛かったりすることがあるといった問題もあった。
[0005]
 また、表面保護層の場合と同様に、高荷重条件下での耐傷性を向上させるために、表面保護層の下層に位置する透明樹脂層をより硬く、より厚くすることが提案されているが、透明樹脂層を硬くしすぎると透明樹脂層が脆くなり、落下物等に対する耐衝撃性が悪化したり、耐候性が悪化したりすることがあり、また、透明樹脂層を厚くすると、コストが掛かったりすることがあるといった問題もあった。
 また、高荷重条件下での耐傷性を向上させるために、表面保護層に無機フィラーを加えることが提案されているが、表面保護層に無機フィラーを添加するとその無機フィラーが表面保護層から大きく突出したり、表面保護層との界面に空隙がある場合、耐傷性試験の際に無機フィラーが破損したり、表面保護層から無機フィラーが欠落することによって、ツヤ変化を引き起こすことがあるといった問題もあった。
[0006]
 本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、高荷重条件下での耐傷性を向上させた化粧シートを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、化粧シートに特定のエロージョン率を有する表面保護層及び透明樹脂層の少なくとも一方を形成することによって、前記課題を解決し得ることを見出した。
[0008]
 本発明の一態様に係る化粧シートは、原反、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に備えた化粧シートであって、前記表面保護層は、複層から構成され、前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、その下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、前記第1の表面保護層は、平均粒子径(D50)が1.2μmである多角アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.10μm/g以上0.45μm/g以下の範囲内である1種以上の電離放射線硬化性樹脂と、0.30μm/g以上0.6μm/g以下の範囲内である1種以上の熱硬化性樹脂とを含み、前記電離放射線硬化性樹脂と前記熱硬化性樹脂との質量比率(電離放射線硬化性樹脂/熱硬化性樹脂)が95/5~40/60であることを特徴とする。
[0009]
 また、本発明の別の態様に係る化粧シートは、原反、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に備えた化粧シートであって、前記表面保護層は複層から構成され、前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、その下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、前記第1の表面保護層の、平均粒子径(D 50)が1.2μmである多角アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eは、0.1μm/g以上0.4μm/g以下の範囲内であることを特徴とする。
[0010]
 また、本発明の別の態様に係る化粧シートは、原反、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に備えた化粧シートであって、前記透明樹脂層は、平均粒子径(D50)が1.2μmである多角アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.05μm/g以上2μm/g以下の範囲内であることを特徴とする。

発明の効果

[0011]
 本発明の一態様に係る化粧シートによれば、高荷重条件下であっても優れた耐傷性を有する化粧シートを提供することが可能とする。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 本発明の実施形態に係る化粧シートの構成の一例を示す概略断面図である。
[図2] 本発明の別の実施形態に係る化粧シートの構成の一例を示す概略断面図である。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下に本発明の実施形態に係る化粧シートについて、図1及び図2に基づき詳細に説明する。
 ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
[0014]
(エロージョン率Eの測定)
 まず、本実施形態において規定する「エロージョン率E」について説明する。
 本実施形態におけるエロージョン率Eは、例えば、材料表面精密試験機(マイクロ・スラリージェット・エロージョン試験機、以下MSE試験機、株式会社パルメソ製/装置名ナノ・エム・エス・イー/型式N-MSE-A)を用いて測定される値である。また、エロージョン率Eの具体的な測定方法は、次の通りである。
[0015]
 平均粒子径D 50=1.2μmの多角アルミナ粉末(多角アルミナ粒子)を水に分散させて、スラリーの総質量に対して多角アルミナ粉末を3質量%含むスラリーを調製する。化粧シートを台に固定し、その化粧シートと、上記スラリーを噴射するためのノズルとの投射距離を4mmに設定する。ノズルのノズル径は1mm×1mmとする。ノズルから多角アルミナ粉末を含んだスラリーを噴射し、台に固定された化粧シートを表面保護層から順次切削する。この時の噴射強度は、事前に同様の実験条件にて既存のSiウエハまたはPMMA基板を切削し、スラリーの噴射量に対する削れた変位(即ち、スラリー1gを吹き付けた際に切削される深さ)から標準投射力Xを求め、その値に基づいて決定される。多角アルミナ粉末を用いた本実施形態では、既存のSiウエハに対して6.360μm/g削れたときの投射力を標準投射力Xとした。
[0016]
 本実施形態において、多角アルミナ粉末の場合は、X=1/100投射力(既存のSiウエハに対して0.064μm/g削れたときの投射力)とした。
 切削された部分を水で洗浄した後に、切削の深さ、即ちエロージョン深さZを測定する。エロージョン深さZは、例えば、触針式表面形状測定器(株式会社小坂研究所製/型式PU-EU1/触針子先端R=2μm/荷重100μN/計測倍率10,000/測長4mm/計測速度0.2mm/sec)を用いて測定する。本実施形態では、上述の投射力より算出した投射粒子量X’[g]とエロージョン深さZ[μm]とを用いて、エロージョン率E[μm/g]を算出した。
[0017]
 なお、エロージョン率Eは、エロージョン率Eの測定を実施する際、深さ方向に存在する下層のエロージョン率Eの大小に影響を受けないことがわかっている。よって、エロージョン率Eを測定する際には、最表面に位置する第1の表面保護層から順にMSE試験を実施してもよい。
 また、本実施形態では、表面保護層を構成する電離放射線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の各エロージョン率Eは、電離放射線硬化性樹脂のみで形成された層及び熱硬化性樹脂のみで形成された層についてそれぞれ測定したエロージョン率Eを用いている。
[0018]
(化粧シートの構成)
 以下に、本実施形態の化粧シートの各構成について説明する。なお、本実施形態では、表面保護層が2層の場合を想定して説明する。
 図1に示す化粧シートは、図面上部側から順に、表面保護層(第1の表面保護層)4a、表面保護層(第2の表面保護層)4b、透明樹脂層1、接着剤層6(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、絵柄模様層2、原反層7、プライマー層5を備えている。より詳しくは、本実施形態の化粧シートは、透明樹脂層1の一方の面に、絵柄模様層2を設け、透明樹脂層1の他方の面に、表面保護層(表面保護層4a及び表面保護層4b)4を設けた構成の化粧シートである。
[0019]
 図2に示す化粧シートは、図面上部側から順に、表面保護層(第1の表面保護層)4a、表面保護層(第2の表面保護層)4b、透明樹脂層1、接着性樹脂層8、接着剤層(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)6、絵柄模様層2、原反層7、プライマー層5を備えている。より詳しくは、本実施形態の化粧シートは、透明樹脂層1の一方の面に、絵柄模様層2及び隠蔽層3を設け、透明樹脂層1の他方の面に、表面保護層4を設けた構成の化粧シートである。
[0020]
 なお、意匠性を向上させるために透明樹脂層1の表面保護層4b側の面にエンボス模様1aを適宜設けてもよい。
 また、化粧シートの総厚みは、80μm以上250μm以下の範囲内であってもよい。
 また、本実施形態の化粧シートは、塩化ビニル樹脂を含有していないものが好ましい。非塩化ビニル系樹脂を用いた化粧シートとすることにより、焼却時における有毒ガス等の発生の心配が低減される。
 以下、本実施形態の化粧シートを構成する各層の詳細について説明する。
[0021]
<原反層>
 原反層(原反)7は、化粧シートに意匠性、耐傷性及び耐後加工性を付与する場合には、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンなどのゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属箔などから適宜選択して用いてもよい。また、原反層7は、透明樹脂層1と同一の樹脂組成物からなるシートであってもかまわない。上記のなかでもポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン系の材料が望ましい。
[0022]
 原反層7に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
[0023]
 原反層7として、ポリオレフィン系材料のような表面が不活性な基材を用いる場合には、原反層7の表裏に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。さらには、原反層7と絵柄模様層2との間に密着を確保させるためにプライマー層(図示せず)を設けてもよい。
 化粧シートに隠蔽性を付与したい場合には、原反層7に隠蔽性の着色シートを使用してもよいし、図2に示すように、原反層7の上層であって絵柄模様層2の下層に隠蔽層3を設けてもよい。原反層7として着色シートを使用する場合は、原反層7を構成する樹脂材料に着色剤を添加して着色することができる。着色剤としては、例えば、無機顔料(酸化チタンやカーボンブラック等)や有機顔料(フタロシアニンブルー等)の他、染料も使用することができる。本実施形態の着色剤は、公知または市販の着色剤から1種類または2種類以上を選択して用いることができ、所望の隠蔽性と意匠性とが得られるように添加量も調整可能である。
[0024]
 原反層7には、必要に応じて、例えば、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤、つや消し剤など各種添加剤を加えてもよい。
 原反層7の厚みとしては、印刷作業性、コストを考慮して30μm以上150μm以下の範囲内が好ましい。
[0025]
<絵柄模様層・隠蔽層>
 絵柄模様層2、隠蔽層3を設ける方法としては、原反層7または透明樹脂層1に、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インキジェット印刷などを行う方法がある。また、特に隠蔽層3を施す場合は、例えば、コンマコーター、ナイフコーター、リップコーター、金属蒸着あるいはスパッタ法等を用いてもよい。なお、隠蔽層3は、一般的には、原反層7の上層であって絵柄模様層2の下層に設けられる。
[0026]
 絵柄模様層2の形成にインキを使用する場合は、当該インキに含まれるバインダーは、例えば、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定すればよい。これらは水性、溶剤系、エマルションタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。
 さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いてイソシアネートで硬化させる方法である。
[0027]
 上記バインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されていてもよい。特によく用いられる顔料には、例えば、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等がある。また、インキの塗布とは別に、各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
[0028]
 隠蔽層3に使用される材料も基本的には絵柄模様層2と同じ材料でよい。隠蔽層3は、その目的として隠蔽性を持たせる必要があるために、顔料として、例えば、不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また、隠蔽性を向上させるために、例えば、金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。塗布厚み、即ち隠蔽層3の厚みは、2μmに満たない場合には隠蔽性を付与しにくく、10μmを超える場合には樹脂層の凝集力が弱くなる傾向がある。このため、隠蔽層3の厚みは、2μm以上10μm以下の範囲内が妥当である。
[0029]
<接着剤層>
 接着剤層6には、任意の材料選定が可能であり、接着剤層6を用いた接着方法としては、例えば、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等がある。接着剤層6に含まれる接着剤は、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の材料から選定できる。接着剤層6に含まれる接着剤は、通常はその凝集力から2液硬化タイプのものが望ましく、特にイソシアネートを用いたポリオールとの反応で得られるウレタン系の材料を用いることが望ましい。
[0030]
<接着性樹脂層>
 接着剤層6と透明樹脂層1との間には、図2に示すように、接着性樹脂層8を設けてもよい。接着性樹脂層8は、特に押出ラミネート方法においてさらなるラミネート強度を求める場合に設けることがある。なお、透明樹脂層1と接着性樹脂層8とは、共押出法でラミネートされて成形される場合が一般的である。
 接着性樹脂層8に含まれる樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したものが望ましく、その厚みは接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。接着性樹脂層8の厚みが2μmに満たない場合には、十分な接着力が得にくい傾向がある。また、接着性樹脂層8の厚みは、その厚みが厚すぎると、折角、高結晶性の透明樹脂層1で表面硬度を向上させたにも関わらず、接着性樹脂層8自体の柔らかさの影響を受けるため、20μm以下が望ましい。
[0031]
<透明樹脂層>
 透明樹脂層1は接着剤層6または接着性樹脂層8の上に形成されており、本実施形態の透明樹脂層1は単層である。透明樹脂層1が、特定のエロージョン率Eを有することによって、高荷重領域において優れた耐傷性を有する化粧シートを提供することが可能となる。
 以下、透明樹脂層について、詳しく説明する。
[0032]
 透明樹脂層1は、平均粒子径(D 50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eが0.05μm/g以上2μm/g以下の範囲内に調整した樹脂で構成されている。透明樹脂層1のエロージョン率Eが0.05μm/gに満たない場合には、耐傷性が著しく低下するため好ましくない。透明樹脂層1のエロージョン率Eが2μm/gを超える場合には、耐候性と加工性が著しく低下するため好ましくない。なお、透明樹脂層1の、平均粒子径(D 50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eは、0.1μm/g以上2μm/g以下の範囲内であれば、より好ましい。
[0033]
 透明樹脂層1は、製膜によって成形されたシートであってもよいし、既に成形したシートを積層したものであってもよい。透明樹脂層1は、例えば、高結晶性ポリプロピレン樹脂で形成されている。
 また、透明樹脂層1の片面または両面は、必要に応じて、例えばコロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等で活性化してもよい。また、隠蔽層3の基材(上記化粧シートが貼り合わせられる木質ボード類、無機系ボード類、金属板等の基材)に対する接着性に問題があれば、重ねてプライマー層5を適宜設けてもかまわない。
[0034]
 透明樹脂層1を製膜によるシートで成形する場合には、例えば、押出機を用いる方法を用いるのが一般的である。
 透明樹脂層1を積層して成形する場合は、特に規制はなく、例えば、熱圧を応用した方法、押出ラミネート法及びドライラミネート法等を用いるのが一般的である。また、エンボス模様1aを施す場合には、一旦各種方法でラミネートしたシートに、例えば、後から熱圧によりエンボスを入れる方法や、冷却ロールに凹凸模様を設け、その冷却ロールを用いて押出ラミネートと同時にエンボスを施す方法がある。より詳しくは、エンボス模様1aは、透明樹脂層1である、例えば高結晶性ポリプロピレンシートに直接付与され、その方法は製膜された前記シートに熱及び圧力により凹凸模様を有するエンボス版を用いてエンボス模様を付与する方法や、押出機を用いて製膜する際に凹凸模様を有する冷却ロールを用いて冷却と同時にエンボスを設ける方法などがある。ここではエンボス部としてのエンボス模様1aにインキを埋め込み、さらに意匠性を向上させることも可能である。
 なお、エンボス模様1aは必要であれば設ければよく、不要な場合は設けなくてもよい。
[0035]
 透明樹脂層1の厚みは40μm以上170μm以下の範囲内であることが好ましい。透明樹脂層1の厚みが40μmに満たない場合には、耐候性や耐傷性が低下することがある。透明樹脂層1の厚みが170μmを超える場合には、製造コストが高くなり、また可撓性が低下することがある。
 透明樹脂層1には、必要に応じて、例えば、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、そして、本実施形態の特徴を損なわない範囲で、例えば、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種添加剤を添加することもできる。
[0036]
 熱安定剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等を、また難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を、また紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等を、また光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系等を、それぞれ任意の組み合わせで添加するのが一般的である。特に、本用途に用いる場合は耐候性を考慮する必要があり、その場合には透明樹脂層1に紫外線吸収剤と光安定剤と添加してもよく、添加量はそれぞれ透明樹脂層1を100質量%として、0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲内が適量である。
 また、透明樹脂層1は、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理された結晶核剤(ナノサイズの造核剤)を含んでもよい。
[0037]
 超臨界逆相蒸発法による具体的なベシクル化処理は、超臨界二酸化炭素と分散剤としてのリン脂質と内包物質としての添加剤の混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって超臨界二酸化炭素と水相のエマルションが生成する。その後、減圧すると二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が添加剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセルが生成する。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、添加剤粒子表面で分散剤が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。なお、多重膜のカプセルとしたい場合には、リン脂質、添加剤、水相の混合流体中に超臨界二酸化炭素を注入することにより容易に作製することができる。ベシクルを調製する際に用いるリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセルロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質などが挙げられる。当該ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備することにより樹脂材料との優れた相溶性を実現することができる。
[0038]
 透明樹脂層1が上述したナノサイズの造核剤を含んだ樹脂層からなる場合には、結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分として90質量%以上100質量%以下の範囲内で含み、ナノサイズの添加剤としての造核剤を含むことが重要である。より好ましくは、当該ナノサイズの添加剤をベシクルの状態(造核剤ベシクル)で含有させることである。この場合には、造核剤ベシクルは、平均粒子径が可視光の波長の1/2以下とされていることが好ましい。具体的には、可視光の波長領域が400~750nmであるので、ナノサイズの造核剤の平均粒子径は375nm以下であることが好ましい。このような透明樹脂層1においては、製膜時の冷却条件を調整することによって、ヘイズ値が15%以下、より好ましくは10%以下、引張弾性率が800MPa以上2,000MPa以下の範囲内、引張破断伸度が200%以上とされていることが重要である。
[0039]
 また、結晶性ポリプロピレン樹脂は、ペンタッド分率の異なるアイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン及びこれらの混合物から適宜選択して設計することができる。より好ましくは、結晶性ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)95%以上、より好ましくは96%以上のプロピレンの単独重合体、すなわちホモポリマーである高結晶性ホモポリプロピレン樹脂とされることが重要である。なお、透明樹脂層1を構成する結晶性ポリプロピレン以外の樹脂は、結晶性ポリプロピレンの物性に著しく悪影響を与えないならば、その配合の目的によって適宜選定が可能である。但し、V溝曲げ加工適性を維持するためには透明樹脂層1を構成する結晶性ポリプロピレン樹脂との相溶性がよいものが好ましい。
 このような、透明樹脂層1は、その厚さが20μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、40μm以上170μm以下の範囲内である。
[0040]
 ナノサイズの造核剤は、その粒子径がナノサイズと極めて小さいことにより、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の3乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加して1つの造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、当該造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長していた結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長がとまるので、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒子径を極めて小さくすることができる。
 このため、透明樹脂層1に対してナノサイズの造核剤を含有させることにより、従来の造核剤と比較して、樹脂中により微細かつ大量の結晶核を発生させて、その結果、結晶部における結晶核同士の距離を短くして、個々の結晶の成長を抑制し、球晶の平均粒子径を極めて小さくさせることに成功した。そして、このような結晶性ポリプロピレン樹脂においては、ヘイズ値が15%以下という極めて高い透明性を実現している。
[0041]
 さらに、当該ナノサイズの造核剤をベシクルの状態、すなわち造核剤ベシクルとして含有させることにより、造核剤同士が凝集することを防いで樹脂材料に対する高い分散性を実現している。樹脂組成物中においては、当該造核剤ベシクルの外膜が部分的に崩壊して造核剤が露出した状態となり、樹脂材料の結晶化過程において、ナノサイズの造核剤粒子を結晶核とする球晶が形成される。
 この時、特に、超臨界逆相蒸発法によって得られた造核剤ベシクルは極めて小さいサイズとされている。このため、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒子径を極めて小さくすることができるとともに、結晶部の結晶化度を飛躍的に向上させることができる。
[0042]
 本実施形態の化粧シートにおいては、透明樹脂層1に対してナノサイズの造核剤、より好ましくは、造核剤ベシクルを含有させていることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒子径を極めて小径として、優れた耐傷性を実現している。特に、透明樹脂層1に造核剤ベシクルを含有させることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂中に造核剤を均一に分散させて、結晶性ポリプロピレンの結晶化度をコントロールして透明樹脂層1の硬度及び靭性が最適となるように調整することができる。また、透明樹脂層1に造核剤ベシクルを含有させることにより、引張弾性率が800MPa以上2000MPa以下の範囲内、かつ、引張破断伸度が200%以上の優れた耐傷性及び耐後加工性を実現することができる。
[0043]
 以下、簡単に上記説明において用いた用語の説明をする。
 造核剤とは、樹脂の結晶化時において、結晶核の生成を促進させる、もしくは、造核剤自体を結晶核とするために添加されるものである。造核剤には、添加時に基材の樹脂に溶融し再度析出して結晶核を生成する溶融型もしくは基材に添加した核剤が溶融することなくそのままの粒径で結晶核となる非溶融型の造核剤がある。ポリプロピレン樹脂の造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、本実施形態においては、ナノ化処理との効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
[0044]
 ヘイズ値とは、物体の一方の面から入射した光が他方の面に出射する場合に、他方の面から出射した光線のすべての積分値(全光線透過率)から他方の面から出射した光線のうち直線成分のみの積分値(直線透過率)を指し引いた値(拡散透過率)を、全光線透過率で除した値を百分率で表した値である。そのため、ヘイズ値が小さいほど透明性が高いことを表す。このヘイズ値は、結晶部における結晶化度や球晶サイズなどの物体の内部の状態によって決まる内部ヘイズと、入射面及び出射面の凹凸の有無などの物体の表面の状態によって決まる外部ヘイズとによって決定付けされる。なお、本実施形態においては、単にヘイズ値と称する場合には、内部ヘイズ及び外部ヘイズとによって決定される値を意味する。
[0045]
 アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた 13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、透明樹脂層1を構成する樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率とは、 13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。そして、このようなアイソタクチックペンタッド分率は、主に表面の耐傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはアイソタクチックペンタッド分率が高いほどシートの結晶化度が高くなるため、耐傷性が向上する。
[0046]
<表面保護層>
 本実施形態の表面保護層4は、表面保護層4aと表面保護層4bとを備えている。表面保護層4aが、特定のエロージョン率Eを有することによって、優れた表面の耐傷性を有する化粧シートを提供することが可能となる。
 また、本実施形態の表面保護層4aが、さらに特定の塗膜厚さと静摩擦係数とを有し、疎水化処理及び表面保護層4aとの結合を強化した無機フィラーを含むことによって、さらに優れた表面の耐傷性を有する化粧シートを提供することが可能となる。
 以下、表面保護層4について、詳しく説明する。
[0047]
 表面保護層4は、複層から構成されている。表面保護層4のうち最表面に位置する表面保護層を「表面保護層4a」とし、表面保護層4aの下層に位置する表面保護層を「表面保護層4b」としたとき、表面保護層4aの、平均粒子径(D 50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eは、0.1μm/g以上0.4μm/g以下の範囲内である。表面保護層4aのエロージョン率Eが0.1μm/gに満たない場合には、エロージョン率Eが小さく、表面保護層4bとの密着性が低下するおそれがある。そのため、耐衝撃性が低下することがある。表面保護層4aのエロージョン率Eが0.4μm/gを超える場合には、耐傷性に劣る傾向がある。
[0048]
 また、別の実施形態に係る表面保護層4aは、平均粒子径(D 50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eが0.10μm/g以上0.45μm/g以下の範囲内である1種以上の電離放射線硬化性樹脂と、平均粒子径(D 50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eが0.30μm/g以上0.6μm/g以下の範囲内である1種以上の熱硬化性樹脂とを含んでいる。また、表面保護層4aを構成する電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂との質量比率(電離放射線硬化性樹脂/熱硬化性樹脂)は95/5~40/60である。電離放射線硬化性樹脂のエロージョン率Eが0.10μm/g未満であり、熱硬化性樹脂のエロージョン率Eが0.30μm/g未満であり、熱硬化性樹脂の比率が5%未満である場合には、耐候性が著しく低下するため好ましくない。電離放射線硬化性樹脂のエロージョン率Eが0.45μm/gを超え、熱硬化性樹脂のエロージョン率Eが0.6μm/gを超え、熱硬化性樹脂の比率が60%を超える場合には、耐傷性が著しく低下するため好ましくない。なお、表面保護層4aと表面保護層4bとは、互いに異なる樹脂で形成されていてもよい。
[0049]
 また、表面保護層4aが電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを含んでいる場合において、表面保護層4aの、平均粒子径(D 50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eは、0.2μm/g以上0.45μm/g以下の範囲内であれば、より好ましい。表面保護層4aのエロージョン率Eが0.2μm/gに満たない場合には、耐候性が著しく低下するため好ましくない。表面保護層4aのエロージョン率Eが0.45μm/gを超える場合には、耐傷性が著しく低下するため好ましくない。
 表面保護層4aの厚みは、2μm以上7μm以下の範囲内であってもよい。表面保護層4aの厚みが2μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷性が低下し、バラつきが大きくなることがある。表面保護層4aの厚みが7μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。
[0050]
 表面保護層4bの厚みは、2μm以上14μm以下の範囲内であってもよい。表面保護層4bの厚みが2μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷性が低下し、バラつきが大きくなることがある。表面保護層4bの厚みが14μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。
 表面保護層4全体での厚みは、4μm以上21μm以下の範囲内であってもよい。表面保護層4全体の厚みが4μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷性が低下し、バラつきが大きくなることがある。表面保護層4全体の厚みが21μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。
[0051]
 本実施形態の化粧シート、即ち表面保護層4aの静摩擦係数μs(JISK7 125に準拠)は、0.25以上0.5以下の範囲内であってもよい。表面保護層4aの静摩擦係数μsが0.25に満たない場合には、化粧シートの最表層である表面保護層4aの表面がよく滑るため、高荷重条件下においても傷がつきにくいが、床材として用いる際に人が転倒するリスクが高まるという点で適切でないことがある。表面保護層4aの静摩擦係数μsが0.5を超える場合には、シート表面に接触する物体とシート表面との摩擦が大きくなるため、高荷重条件下において表面に傷がつきやすい傾向がある。
[0052]
 表面保護層4を設ける方法は、隠蔽層3や絵柄模様層2を設ける方法と同様で何ら規定されるものではない。
 表面保護層4は、紫外線や電子線照射で硬化する樹脂、即ち電離放射線硬化性樹脂と、熱で硬化する樹脂、即ち熱硬化性樹脂とを含んでいることが好ましい。より詳しくは、表面保護層4は、1種以上の電離放射線硬化性樹脂と、1種以上の熱硬化性樹脂とを含んでいることが好ましい。表面保護層4、特に表面保護層4aを構成する樹脂100質量部のうち、電離放射線硬化性樹脂の含有量は、65質量部以上100質量部以下の範囲内であってもよい。電離放射線硬化性樹脂の含有量が65質量部に満たない場合には、エロージョン率Eが上昇し、耐傷性が低下することがある。
[0053]
 熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルション、溶剤系のいずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでもよい。それらの中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。
[0054]
 イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体や各種プレポリマーなどの硬化剤から適宜選択して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤を使用することが好ましい。
[0055]
 電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、アクリルアクリレート系などから適宜選択して用いることができるが、特に、耐候(光)性が良好なウレタンアクリレート系及びアクリルアクリレート系のものを用いることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂の硬化方法としては、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化することが作業性の観点から好ましい。
 電子線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては180nm~400nmが好ましい。
[0056]
 熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合物については、例えば、熱硬化性樹脂としてのアクリルポリオールとイソシアネートとを反応し得られるウレタン系樹脂と、電離放射線硬化性樹脂としてのウレタンアクリレート系樹脂とを混合して用いることがより好ましい。熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合物を用いることによって、表面硬度を向上させるとともに、硬化収縮の抑制及び無機微粒子(無機フィラー)の密着性の少なくとも1つを向上させることができる。
[0057]
 表面保護層4、特に表面保護層4aを構成する電離放射線硬化性樹脂は、官能基が6以上であり、質量平均分子量が1,000以上の成分を1種以上含むものであってもよい。より好ましくは、官能基が6以上であり、質量平均分子量が1,000以上20,000以下の成分を1種以上含むものである。電離放射線硬化性樹脂の官能基が6に満たない場合には、架橋密度が小さく、耐傷性が著しく低下するため好ましくない。電離放射線硬化性樹脂の質量平均分子量が1,000に満たない場合には、塗工時の面状態が著しく悪化するため好ましくない。電離放射線硬化性樹脂の質量平均分子量が20,000を超える場合には、塗液の粘度が上昇し、塗工適性が著しく低下するため、好ましくない。
[0058]
 なお、電離放射線硬化性樹脂以外の樹脂、例えば、熱硬化性樹脂のほうが、電離放射線硬化性樹脂に比べてエロージョン率Eは大きい。
 さらに耐候性を向上させるために、表面保護層4、特に表面保護層4aに紫外線吸収剤及び光安定剤を適宜添加してもよい。また、各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行える。
 なお、本実施形態では、表面保護層4を、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを含んだ樹脂で形成した場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。表面保護層4は、勿論、電離放射線硬化性樹脂のみで形成された層であってもよいし、熱硬化性樹脂のみで形成された層であってもよい。
[0059]
 表面の耐傷性の向上、あるいは意匠性付与に伴う艶調整のため、表面保護層4に無機フィラーを加えることが望ましい。
 無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ、ベーマイト、酸化鉄、酸化マグネシウム、アルミノシリケート、ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロポレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、ガラス繊維等を添加してもよい。無機フィラーとして、平均粒子径が1μm以上30μm以下の範囲内の無機微粒子を用いることができ、特に1μm以上10μm以下の範囲内の無機微粒子が好適である。無機フィラーの平均粒子径が1μmに満たない場合には、艶消し効果を得にくい傾向がある。これは、艶消し効果を発揮するためには、無機フィラーが添加された膜(層)の厚みと同程度、もしくは大きな粒子径であることが理想的であるためである。無機フィラーの平均粒子径が30μm、より確実には10μmを超える場合には、高荷重条件下で無機フィラーが表面保護層4から脱落しやすく、艶が変化し表面が悪化して見える傾向がある。
[0060]
 例えばグラビア印刷を選択した場合、一層の塗布厚みは通常2μm~12μmが妥当である。この場合は、上述のように、一度に塗布可能な厚み以下から同程度の平均粒子径を有する無機フィラーを選択するのが好ましい。しかしながら、表面保護層4が複層からなる場合、下層に位置する表面保護層4bの膜厚よりも大きな平均粒子径を有する無機フィラーを加えることも可能である。
 無機フィラーの含有量は、表面保護層4aを構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下の範囲内であってもよい。無機フィラーの含有量が1質量部に満たない場合には、耐傷性が低下することがある。無機フィラーの含有量が20質量部を超える場合には、表面の艶が非常に低下するため、意匠を損なう可能性がある。また、耐候性や耐汚染性が低下することがある。
[0061]
 無機フィラーには、表面処理を施すことが望ましい。無機フィラーに表面処理を施すことで、表面保護層4との結合強化を図ることができる。なお、表面保護層4bのような下層に位置する表面保護層4には表面が未処理の無機フィラーを添加してもよい。
 また、表面処理を施す際は、無機フィラー表面の疎水化及び表面保護層4との反応性を付与する官能基を有することが望ましい。つまり、無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、表面保護層4、特に表面保護層4aを構成する主剤樹脂と反応する反応基を有することが望ましい。
 無機フィラーの表面処理を実施する際は、手法は特に限定せず、公知の方法を選ぶことができる。
[0062]
 無機フィラーの表面処理に用いられる表面処理剤としては、界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、シリコーン、ワックス、及び変性樹脂のうち少なくとも1つを使用することができる。本実施形態の表面処理剤としては、例えば、シリコーンオイル系、アルキルシラザン系、トリメチルシリル化剤、アルコキシシラン系、シロキサンやシランカップリング剤の他、チタンカップリング剤やリン酸系・脂肪酸系界面活性剤などを選ぶことができ、1種類でも複数種の掛け合わせたものであっても構わない。
 シリコーンオイル系処理剤としては、例えば、ストレートシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなど)や変性シリコーンオイル(アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性変性、異種官能基変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸含有変性、フッ素変性シリコーンオイルなど)を選択することができる。
[0063]
 アルキルシラザン系処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルシラザンなどを選択することができる。
 シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトシキシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシランなどのクロロシラン化合物を選択することができる。
[0064]
 トリメチルシリル化剤としては、シランカップリング剤中のアルコキシシラン化合物を選択することができる。
 チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネーと、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2ジアリルオキシメチル-1ブチル)ビス(ジートリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、などを選択することができる。
 アルミネート系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどを選択できる。
[0065]
 界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性界面活性剤などを選択することができる。
 上述した表面処理剤を、上述した超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理して分散させた後、表面処理に用いることによって、表面処理時の反応率が向上する。
 超臨界逆相蒸発法を用いて処理した表面処理剤を用いて、公知の方法で表面処理を実施することによって、優れた表面処理フィラーを得ることができる。
[0066]
 上述のように、本実施形態の化粧シートの特徴(発明特定事項)の一つは、「無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、超臨界逆相蒸発法によりベシクルに表面処理剤を内包させた表面処理剤内包ベシクルである」ことにある。そして、表面処理剤をベシクルに内包させた状態で無機フィラーと反応させることで、表面処理剤と無機フィラーとの反応性が飛躍的に向上するという効果が奏するが、その特徴を、完成された化粧シートの状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された表面処理剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、高い反応確率で無機フィラーと反応する。しかしながら、表面処理剤をベシクルの状態で無機フィラーと反応させて表面保護層を作製した後の、化粧シートの作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、表面処理剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、表面処理剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シートの処理工程によってばらつくためである。そして、この表面処理剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか表面処理剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本願発明は、従来に比して、表面処理剤と無機フィラーとの反応性が飛躍的に向上している点で相違があるものの、表面処理剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シートの状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
[0067]
 無機フィラーの表面処理の方法は、上述したように、特に限定されない。表面処理の方法としては、一般的に用いられるのは乾式法、湿式法、またはインテグラルブレンド法のいずれかを選択することができる。乾式法では、表面が未処理の無機フィラーに水もしくは有機溶剤に希釈した表面処理剤を噴霧等によって添加し、その後攪拌・養生等を行い、反応を進行させて表面処理フィラーを得る。
[0068]
 さらに、表面保護層4側の透明樹脂層1の面にエンボス模様1aを施した場合には、このエンボス模様1aの中に、表面保護層4aを形成するインキをワイピング加工により埋め込んで意匠性を向上させることも可能である。
 耐候性の面からは、基材としての透明樹脂層1を守るために、上記のように表面保護層4及び透明樹脂層1にそれぞれ耐候性を付与する方法もある。また、それだけではなく、絵柄模様層2を守るために接着性樹脂層8、接着剤層6、絵柄模様層2自体にそれぞれ紫外線吸収剤及び光安定剤を添加する方法もある。
 光開始剤の添加量は特に限定されず、主剤樹脂100質量部に対し、0.1~15質量部程度が好ましい。
[0069]
 光開始剤の種類は特に限定されない。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光開始剤として、例えば、アセトフェノン系やベンゾフェノン系、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,Nジメチルアミノベンゾエートなどの少なくとも1種類を選択することができる。また、光源や生産環境に合わせて、複数種を組み合わせて設計することが望ましい。
 また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光開始剤として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩などの少なくとも1種が選択できる。
[0070]
<プライマー層>
 プライマー層5に使用される材料は、基本的には絵柄模様層2や隠蔽層3と同じ材料でよい。また、化粧シートの裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、プライマー層5に例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。塗布厚み、即ちプライマー層5の厚みは、基材である原反層7との密着を確保することが目的であるので、0.1μm以上10.0μm以下の範囲内が妥当であり、より好ましくは0.1μm以上3.0μm以下の範囲内である。
 プライマー層5は、原反層7がオレフィン系材料のように表面が不活性な場合には必要であるが、表面が活性な基材の場合は特に必要ではない。
[0071]
[実施例]
(第1実施例)
 以下に、本発明の化粧シートの具体的な実施例について検討する。
 実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-2においては、表面保護層4a以外は同様の材料を使用し、表面保護層4bまでは、下記方法で形成した。
[0072]
<透明樹脂層の作製>
 高結晶性ホモポリプロピレン樹脂100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV-1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂を、押出機を用いて溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
[0073]
<原反層への絵柄模様層とプライマー層の作製>
 隠蔽性のある80μmのポリエチレンシート(原反層7)の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ(株)製)を用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層2を設け、また、原反層7の他方の面にプライマー層5を設けた。
[0074]
<透明樹脂層と絵柄模様層との貼り合わせ>
 しかる後、原反層7の絵柄模様層2の面上に、透明樹脂層1をドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m )を塗工した接着剤層6を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。
<エンボス模様の作製>
 この貼り合わせたシートの透明樹脂層1の表面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した。
[0075]
<表面保護層4bに用いるトップコート剤Dの調製>
 実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-2で用いるトップコート剤Dは、熱硬化性樹脂Dを主剤とし、構成される。熱硬化性樹脂Dは、ガラス転移温度が約100℃、質量平均分子量Mwが約60,000、水酸基価が16であるアクリルポリマーである。トップコート剤Dは、主剤100部に対し、紫外線吸収剤としてTinuvin479(BASF社製)を5部、光安定剤としてTinuvin123(BASF社製)を3部、希釈溶剤として酢酸エチルを50部、光沢調整剤として、無機フィラーL-121(AGCエスアイテック(株)製)を15部、硬化剤としてデュラネートTAP-100(旭化成(株)製)を5部配合して調製した。
[0076]
<表面保護層4bの作製>
 エンボス模様1aを施した透明樹脂層1上に、トップコート剤Dを塗布量10g/m にて塗工し、表面保護層4bを形成した。
[0077]
 以下、実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-2の表面保護層4aについては、下記方法で形成した。
<表面保護層4aに用いるトップコート剤A、B、Cの調製>
 実施例1-1~1-4、比較例1-2で用いるトップコート剤A、B、Cは、それぞれ電離放射線硬化性樹脂A、B、Cを主剤として構成される。電離放射線硬化性樹脂Aは3~15、Bは2~9、Cは1~6の官能基を有する多官能ウレタンアクリレートオリゴマーである。トップコート剤A、B、Cは、各主剤100部に対し、紫外線吸収剤としてTinuvin479(BASF社製)を5部、光安定剤としてTinuvin123(BASF社製)を3部、光沢調整剤としてサイロホービック702(富士シリシア化学(株)製)を8部、希釈溶剤として酢酸エチルを50部配合して調製した。
[0078]
<比較例1-1>
 表面保護層4bの面上に熱硬化型のトップコート剤Dを塗布量5g/m にて塗工し、比較例1-1の表面保護層4aを形成した。
<比較例1-2>
 表面保護層4bの面上に電離放射線硬化型のトップコート剤Aとトップコート剤B及び熱硬化型のトップコート剤Dを24:6:70で配合し、塗布量5g/m にて塗工し、比較例1-2の表面保護層4aを形成した。
[0079]
<実施例1-1>
 表面保護層4bの面上に電離放射線硬化型のトップコート剤Aとトップコート剤B及び熱硬化型のトップコート剤Dを40:10:50で配合し、塗布量5g/m にて塗工し、実施例1-1の表面保護層4aを形成した。
<実施例1-2>
 表面保護層4bの面上に電離放射線硬化型のトップコート剤Aとトップコート剤B及び熱硬化型のトップコート剤Dを64:16:20で配合し、塗布量5g/m にて塗工し、実施例1-2の表面保護層4aを形成した。
[0080]
<実施例1-3>
 表面保護層4bの面上に電離放射線硬化型のトップコート剤Aと熱硬化型のトップコート剤Dを80:20で配合し、塗布量5g/m にて塗工し、実施例1-3の表面保護層4aを形成した。
<実施例1-4>
 表面保護層4bの面上に電離放射線硬化型のトップコート剤Cと熱硬化型のトップコート剤Dを80:20で配合し、5g/m にて塗工し、実施例1-4の表面保護層4aを形成した。
[0081]
 実施例1-1~1-4及び比較例1-1~1-2で得られた各々化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、ホフマンスクラッチ試験・コインスクラッチ試験・スチールウールラビング試験にて表面硬度を判定した。その評価結果を下記表1~表3に示した。
[0082]
[表1]


[0083]
[表2]


[0084]
[表3]


[0085]
 以下に、各評価試験の試験方法を簡単に説明する。
<ホフマンスクラッチ試験>
 ホフマンスクラッチ試験は、ホフマンスクラッチハードネステスター(BYK-Gardner社製)を用いて、荷重200g~2000gについて、200g毎・試験長5cm、木質基材に貼り合せた各化粧シートの表面を一定の速度で引っ掻き、化粧シートの表面の傷つきが発生した荷重を示した。
 ◎:ホフマンスクラッチ1600g以上
 〇:ホフマンスクラッチ1200g以上1600g未満
 △:ホフマンスクラッチ600g以上1200g未満
 ×:ホフマンスクラッチ600g未満
 なお、本ホフマンスクラッチ試験において、「◎」、「○」、「△」を合格とした。
[0086]
<コインスクラッチ試験>
 コインスクラッチ試験は、100円または10円硬貨を用い、化粧シートに対してコインの角度を45±1°に固定して、当該コインに1kg~5kg(1~4kgは10円硬貨、5kgは100円硬貨)の荷重を付加した状態で5cmスライドさせて化粧シートに3mm以上の傷が形成されるか否かの判定を行い、引っ掻き傷が形成された荷重を化粧シートの表面硬度として示す。
 ◎:コインスクラッチ3kg以上
 〇:コインスクラッチ2kg以上コインスクラッチ3kg未満
 △:コインスクラッチ1kg以上コインスクラッチ2kg未満
 ×:コインスクラッチ1kg未満
 なお、本コインスクラッチ試験において、「◎」、「○」、「△」を合格とした。
[0087]
<スチールウールラビング試験>
 スチールウールラビング試験は、木質基材に貼り合せた各化粧シートの表面に対し、スチールウールを当接させた状態で治具を用いて固定し、当該治具に500g/cm の荷重をかけたまま一定の速度で、距離50mm、50往復の条件にて擦らせて、化粧シートの表面の傷つきの有無を目視にて判定した。スチールウールは、ボンスター#0(日本スチールウール(株)製)を1cm角に丸めて使用した。
 ◎:ツヤ変化及び傷なし
 〇:わずかなツヤ変化が確認できるが、傷はなし
 △:ツヤ変化がありわずかに傷が発生
 ×:ツヤ変化があり多数の傷が発生
 なお、本スチールウールラビング試験において、「◎」、「○」、「△」を合格とした。
 表2から表3より明らかなように、本発明の実施例1-1~1-4による化粧シートは、耐傷性にバランスよく優れる結果となった。
 表面保護層4aの樹脂組成が電離放射線硬化性樹脂を80%以上含む場合や、架橋密度の高い樹脂を含む場合、エロージョン率がE小さく、特に耐傷性が優れる結果となった。
[0088]
(第2実施例)
 以下に、本発明の化粧シートの具体的な実施例について検討する。
 実施例2-1~2-2、比較例2-1~2-2においては、透明樹脂層以外は同様の材料を使用し、下記方法で形成した。
<透明樹脂層の作製>
 高結晶性ホモポリプロピレン樹脂100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV-1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂を、押出機を用いて溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。この際、高結晶性ポリプロピレンの結晶性をコントロールし、エロージョン率Eを調整した透明樹脂シートA、B、C、Dを製膜した。
[0089]
 以下、実施例2-1~2-2、比較例2-1~2-2については、下記方法で形成した。
<比較例2-1>
 エロージョン率Eを0.047μm/gに調整した透明樹脂シートAを製膜した。
<実施例2-1>
 エロージョン率Eを0.52μm/gに調整した透明樹脂シートBを製膜した。
<実施例2-2>
 エロージョン率Eを1.4μm/gに調整した透明樹脂シートCを製膜した。
<比較例2-2>
 エロージョン率Eを2.1μm/gに調整した透明樹脂シートDを製膜した。
 続いて、製膜された各透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
[0090]
<原反層への絵柄模様層とプライマー層の作製>
 隠蔽性のある80μmのポリエチレンシート(原反層7)の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ(株)製)を用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層2を設け、また、原反層7の他方の面にプライマー層5を設けた。
[0091]
<透明樹脂層と絵柄模様層との貼り合わせ>
 原反層7の絵柄模様層2の面上に、エロージョン率Eを調整した各透明樹脂シートA、B、C、Dをドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m )を塗工した接着剤層6を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。
<エンボス模様の作製>
 この貼り合わせたシートの透明樹脂層1の表面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した。
[0092]
<表面保護層4bに用いるトップコート剤Xの調製>
 トップコート剤Xは、熱硬化性樹脂Xを主剤として構成される。熱硬化性樹脂Xは、ガラス転移温度が約100℃、質量平均分子量Mwが約60,000、水酸基価が16であるアクリルポリマーである。トップコート剤Xは、主剤100部に対し、紫外線吸収剤としてTinuvin479(BASF社製)を5部、光安定剤としてTinuvin123(BASF社製)を3部、希釈溶剤として酢酸エチルを50部、光沢調整剤として、無機フィラーL-121(AGCエスアイテック(株)製)を15部、硬化剤としてデュラネートTAP-100(旭化成(株)製)を5部配合して調製した。
[0093]
<表面保護層4bの作製>
 エンボス模様1aを施した透明樹脂層1上に、トップコート剤Xを塗布量10g/m にて塗工し、表面保護層4bを形成した。
[0094]
<表面保護層4aに用いるトップコート剤Yの調製>
 トップコート剤Yは電離放射線硬化性樹脂Yを主剤として構成される。電離放射線硬化性樹脂Yは3~15の官能基を有する多官能ウレタンアクリレートオリゴマーである。
 トップコート剤Yは、主剤100部に対し、紫外線吸収剤としてTinuvin479(BASF社製)を5部、光安定剤としてTinuvin123(BASF社製)を3部、光沢調整剤としてサイロホービック702(富士シリシア化学(株)製)を8部、希釈溶剤として酢酸エチルを50部配合して調製した。
<表面保護層4aの作製>
 表面保護層4bの面上にトップコート剤Yを塗布量5g/m にて塗工し、表面保護層4aを形成した。
[0095]
 実施例2-1~2-2及び比較例2-1~2-2で得られた各々化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、ホフマンスクラッチ試験・コインスクラッチ試験にて表面硬度を判定した。またメタルウェザー試験にて耐候性を判定した。その評価結果を下記表4に示した。
 なお、ホフマンスクラッチ試験及びコインスクラッチ試験の各試験方法については、第1実施例で説明しているため、ここではそれらの説明については省略する。
[0096]
[表4]


[0097]
 以下に、耐候性に関する評価試験の試験方法を簡単に説明する。
<耐候性試験>
 耐候性試験機(サンシャインウエザーメーター(SWOM):スガ試験機(株)製)を用いて、JIS B 7753に準じたカーボンアーク耐候性試験を行った。そして、各化粧シートの表面にクラックや白化が発生するまでの時間を測定した。
 ◎:耐候性試験機2500時間以上
 ○:耐候性試験機2000時間以上2500時間未満
 △:耐候性試験機1500時間以上2000時間未満
 ×:耐候性試験機1500時間未満
 なお、本耐候性試験において、「◎」、「○」、「△」を合格とした。
 表4より明らかなように、本発明の実施例2-1~2-2による化粧シートは、耐傷性、耐候性にバランスよく優れる結果となった。
[0098]
(第3実施例)
 以下に、本発明の化粧シートの具体的な実施例について検討する。
<共通の材料>
 実施例3-1~3-10、比較例3-1~3-2においては、表面保護層4a以外は同様の材料を使用した。
<透明樹脂層の作製>
 図2の構成における化粧シートを作製した。具体的には、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂100質量部に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Tinuvin328;BASF社製)を20質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤(CHIMASSORB944:;BASF社製)を20質量部と、ナノ造核剤10質量部とを添加した樹脂を、溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.5%となった。
[0099]
<超臨界逆相蒸発法を用いた造核剤のナノ化処理>
 本実施例における超臨界逆相蒸発法を用いた造核剤のナノ化処理方法について、以下説明する。
 まず、メタノール100質量部、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-11、ADEKA社製)82質量部、ホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした。その後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100質量部注入した。容器内の温度及び圧力を保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによって造核剤が内包されたリン脂質からなる外膜を具備する造核剤ベシクルを得た。
[0100]
<絵柄模様層・隠蔽層の作製>
 得られた透明樹脂シートを透明樹脂層1とし、その透明樹脂層1の一方の面に、2液硬化型ウレタンインキ(V351:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を行い、絵柄模様層2を形成した後、絵柄模様層2に重ねて隠蔽性のある2液硬化型ウレタンインキ(V351:東洋インキ製造(株)製)を塗布量6g/m にて塗布して隠蔽層3を形成した。
<プライマー層の作製>
 また、この隠蔽層3に重ねて、プライマーコートとして2液硬化型ウレタンインキ(PET-E、レジウサー:大日精化(株)製)を塗布量1g/m にて塗布してプライマー層5を形成した。
[0101]
<エンボス模様の作製>
 次に、透明樹脂層1の他方の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した。
<表面保護層4bの作製>
 エンボス模様1a面上に2液硬化型ウレタントップコート(TD365URワニス、Z202硬化剤:ともに東洋インキ(株)製)を塗布量10g/m にて塗工した。
[0102]
<表面処理フィラーの作製>
 各実施例、及び各比較例で使用した表面処理無機微粒子NVC-X1は、無機微粒子(L-121:AGCエスアイテック(株)製)を、末端にOH基を有する表面処理剤を用いて表面処理することで得た。
 表面処理は乾式で実施した。具体的には、噴霧が可能なノズル口を付けたヘンシェルミキサーに対し、L-121(無機微粒子)を100質量部投入し、攪拌しながら表面処理剤を10質量部噴霧して、無機微粒子と表面処理剤とを反応させた。
[0103]
<表面保護層4a、4bの作製>
 表面保護層4aは、トップコート剤E~トップコート剤Hを用いて構成した。
<表面保護層4aに用いるトップコート剤>
 トップコート剤をトップコート剤E、トップコート剤F、トップコート剤G、トップコート剤Hとする。
 トップコート剤E、トップコート剤Fは、主剤がそれぞれ電離放射線硬化型の樹脂(電離放射線硬化性樹脂)E、Fで構成されており、トップコート剤G、トップコート剤Hは、主剤がそれぞれ熱硬化型の樹脂(熱硬化性樹脂)G、Hで構成されている。
[0104]
 電離放射線硬化性樹脂Eは、3~15の官能基を有する多官能ウレタンアクリレートオリゴマーであり、電離放射線硬化性樹脂Fは、2~9の官能基を有する多官能ウレタンアクリレートオリゴマーである。
 熱硬化性樹脂Gは、ガラス転移温度が約100℃、質量平均分子量Mwが約50,000、水酸基価が15であるアクリルポリオールであり、熱硬化性樹脂Hは、ガラス転移温度が約45℃、質量平均分子量Mwが約150,000、水酸基価が15であるアクリルポリオールである。
 トップコート剤E、トップコート剤F、トップコート剤G、トップコート剤Hでは、電離放射線硬化性樹脂E、電離放射線硬化性樹脂F、熱硬化性樹脂G、熱硬化性樹脂Hのそれぞれ100部に対し、紫外線吸収剤としてTinuvin479(BASF社製)を5部、光安定剤としてTinuvin123(BASF社製)を3部、希釈溶剤として酢酸エチルを50部、更にトップコート剤Gおよびトップコート剤Hを用いる際は、硬化剤としてデュラネートTAP-100(旭化成(株)製)を更に5部加え、配合した。
[0105]
<表面保護層4bに用いるトップコート剤I>
 表面保護層4bに用いるトップコート剤をトップコート剤Iとする。
 トップコート剤Iは、主剤が熱硬化型の樹脂(熱硬化性樹脂)Iで構成されている。
 熱硬化性樹脂Iは、ガラス転移温度が約100℃、質量平均分子量Mwが約40,000、水酸基価が12であるアクリルポリオールである。
 トップコート剤Iでは、主剤100部に対し、紫外線吸収剤としてTinuvin479(BASF社製)を5部、光安定剤としてTinuvin123(BASF社製)を3部、希釈溶剤として酢酸エチルを50部、光沢調整剤として、無機フィラーL-121(AGCエスアイテック(株)製)を15部、硬化剤としてデュラネートTAP-100(旭化成(株)製)を5部、配合して調整した。
[0106]
<実施例3-1>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを50:50で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を8部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-1の表面保護層4aを形成した。
<実施例3-2>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fと熱硬化型のトップコート剤Gを40:40:20で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を8部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-2の表面保護層4aを形成した。
[0107]
<比較例3-1>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fと熱硬化型のトップコート剤Hを40:40:20で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を8部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、比較例3-1の表面保護層4aを形成した。
<比較例3-2>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fと熱硬化型のトップコート剤Gを30:30:40で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を8部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、比較例3-2の表面保護層4aを形成した。
[0108]
<実施例3-3>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを25:75で配合し、無機微粒子は加えなかった塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-3の表面保護層4aを形成した。
<実施例3-4>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を10部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-4の表面保護層4aを形成した。
[0109]
<実施例3-5>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径8μmの無機微粒子NVC-X1を10部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-5の表面保護層4aを形成した。
<実施例3-6>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径17μmの無機微粒子NVC-X1を10部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-6の表面保護層4aを形成した。
[0110]
<実施例3-7>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを25:75で配合し、表面処理を施していない平均粒子径5μmの無機微粒子L-121を10部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-7の表面保護層4aを形成した。
<実施例3-8>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を5部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-8の表面保護層4aを形成した。
[0111]
<実施例3-9>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を20部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-9の表面保護層4aを形成した。
[0112]
<実施例3-10>
 表面保護層4bの面上に、電離放射線硬化型のトップコート剤Eとトップコート剤Fを25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を35部加えた塗工液を、塗布量5g/m にて塗工した。こうして、実施例3-10の表面保護層4aを形成した。
[0113]
 実施例3-1~3-10及び比較例3-1~3-2で得られた各々化粧シートのエロージョン率Eの測定方法について、以下説明する。
 平均粒子径D 50=1.2μmの多角アルミナ粉末を水に分散させて、スラリーの総質量に対して多角アルミナ粉末を3質量%含むスラリーを調製した。化粧シートを台に固定し、その化粧シートと、上記スラリーを噴射するためのノズルの投射距離を4mmに設定した。ノズルのノズル径は1mm×1mmとした。ノズルから多角アルミナ粉末を含んだスラリーを噴射し、台に固定された化粧シートを表面保護層から順次切削した。この時の噴射強度は、事前に同様の実験条件にて既存のSiウエハを切削し、スラリーの噴射量に対する削れた変位(即ち、スラリー1gを吹き付けた際に切削される深さ)から標準投射力Xを求め、その値に基づいて決定した。多角アルミナ粉末を用いた本実施例では、既存のSiウエハに対して6.360μm/g削れたときの投射力を標準投射力Xとした。
[0114]
 本実施例において、多角アルミナ粉末の場合は、X=1/100投射力(既存のSiウエハに対して0.064μm/g削れたときの投射力)とした。
 切削された部分を水で洗浄した後に、切削の深さ、即ちエロージョン深さZを測定した。
 エロージョン深さZは、触針式表面形状測定器(株式会社小坂研究所製/型式PU-EU1/触針子先端R=2μm/荷重100μN/計測倍率10,000/測長4mm/計測速度0.2mm/sec)で測定された値である。より詳しくは、まず、計測長の中で摩耗していない両端基準エリアA、Bを用いて傾き補正を実施した。次に、基準となる回帰直線から摩耗痕中心部C(50μm幅の平均値)までの段差を測定した。次に、0g投射での段差データと、各投射量での段差データとの差分をとり、エロージョン深さZを取得した。取得した投射量-エロージョン深さZの各データから、エロージョン進行グラフおよびエロージョン率分布グラフを作成した。こうして、エロージョン深さZを特定した。
[0115]
 本実施例では、上記エロージョン処理と、上記形状測定器による形状測定を設定回数(N回)繰り返して実施し、N回分の形状計測データを取得した。
 また、本実施例では、上述の投射力より算出した投射粒子量X’[g]とエロージョン深さZ[μm]とを用いて、エロージョン率E[μm/g]を算出した。
 また、実施例3-1~3-10及び比較例3-1~3-2で得られた各々化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、ホフマンスクラッチ試験・コインスクラッチ試験・スチールウール磨耗試験にて表面硬度を判定した。また、実施例3-1~3-10及び比較例3-1~3-2で得られた各々化粧シート表面の白化の程度を判定した。その評価結果を下記表5~表8に示した。
 なお、ホフマンスクラッチ試験、コインスクラッチ試験及びスチールウール磨耗試験の各試験方法については、第1実施例で説明しているため、ここではそれらの説明については省略する。
[0116]
 以下に、白化に関する評価試験の試験方法を簡単に説明する。
[0117]
<白化測定>
 白化測定は、株式会社堀場製作所製ハンディ光沢計<グロスチェッカ> IG-320を用いて、入射角60°の条件で、化粧シートの表面における光沢値を測定した。
 ○:白化していない(光沢値が1.0未満)
 ×:白化している(光沢値が1.0以上)
 なお、本白化測定において、「○」を合格とした。
[0118]
[表5]


[0119]
[表6]


[0120]
[表7]


[0121]
[表8]


[0122]
 表5から表8より明らかなように、本発明の実施例3-1~3-10による化粧シートは、耐傷性にバランスよく優れる結果となった。
 表面保護層4aの樹脂組成が電離放射線硬化性樹脂を65%以上含む場合や剛直な骨格からなる熱硬化性樹脂を含む場合、エロージョン率Eが小さく、特にホフマンスクラッチやスチールウールラビング試験が優れる結果となった。
 また、表面保護層4aに加えた無機フィラーが表面処理されていて、かつ平均粒子径が適切な場合や添加量が適切な場合は、静摩擦係数が小さく、抵抗が少ないため、同様に特にホフマンスクラッチやスチールウールラビング試験が優れる結果となった。
 また、表面保護層4aに無機微粒子を含む条件はホフマンスクラッチに優れる結果となった。
[0123]
 なお、本発明の実施例3-1~3-9による化粧シートであれば、優れた耐傷性を備えるとともに、表面の白化を低減することができる。
 本発明の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。

符号の説明

[0124]
1  透明樹脂層
1a エンボス模様
2  絵柄模様層
3 隠蔽層
4  表面保護層
4a 表面保護層(第1の表面保護層)
4b 表面保護層(第2の表面保護層)
5  プライマー層
6  接着剤層
7  原反層
8 接着性樹脂層

請求の範囲

[請求項1]
 原反、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に備えた化粧シートであって、
 前記表面保護層は、複層から構成され、
 前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、その下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、
 前記第1の表面保護層は、平均粒子径(D50)が1.2μmである多角アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが、0.10μm/g以上0.45μm/g以下の範囲内である1種以上の電離放射線硬化性樹脂と、0.30μm/g以上0.6μm/g以下の範囲内である1種以上の熱硬化性樹脂とを含み、
 前記電離放射線硬化性樹脂と前記熱硬化性樹脂との質量比率(電離放射線硬化性樹脂/熱硬化性樹脂)が95/5~40/60であることを特徴とする化粧シート。
[請求項2]
 前記第1の表面保護層のエロージョン率Eが0.2μm/g以上0.45μm/g以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
[請求項3]
 前記第1の表面保護層の前記電離放射線硬化性樹脂として、官能基が6以上であり、質量平均分子量が1,000以上の成分を1種以上含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
[請求項4]
 原反、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に備えた化粧シートであって、
 前記表面保護層は複層から構成され、
 前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、その下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、
 前記第1の表面保護層の、平均粒子径(D 50)が1.2μmである多角アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eは、0.1μm/g以上0.4μm/g以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。
[請求項5]
 前記第1の表面保護層の厚みは、2μm以上7μm以下の範囲内であり、
 前記第2の表面保護層の厚みは、2μm以上14μm以下の範囲内であり、
 前記表面保護層全体での厚みは、4μm以上21μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧シート。
[請求項6]
 原反、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に備えた化粧シートであって、
 前記透明樹脂層は、平均粒子径(D50)が1.2μmである多角アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.05μm/g以上2μm/g以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。
[請求項7]
 前記透明樹脂層は、平均粒子径(D50)が1.2μmである多角アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.05μm/g以上2μm/g以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化粧シート。
[請求項8]
 前記透明樹脂層のエロージョン率Eが0.1μm/g以上2μm/g以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化粧シート。
[請求項9]
 前記化粧シートの静摩擦係数μs(JISK7 125に準拠)は、0.25以上0.5以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の化粧シート。
[請求項10]
 前記透明樹脂層の厚みは、40μm以上170μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の化粧シート。
[請求項11]
 前記表面保護層が無機フィラーを含有し、
 前記無機フィラーの平均粒子径は、1μm以上10μm以下の範囲内であり
 前記無機フィラーは、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、ガラス、ベーマイト、酸化鉄、酸化マグネシウム、及びダイヤモンドのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の化粧シート。
[請求項12]
 前記表面保護層は、複層から構成され、
 前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、その下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、
 前記無機フィラーの含有量は、前記第1の表面保護層を構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項11に記載の化粧シート。
[請求項13]
 前記無機フィラーは、表面処理が施されていることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の化粧シート。
[請求項14]
 前記無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、シリコーン、ワックス、及び変性樹脂のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項13に記載の化粧シート。
[請求項15]
 前記表面保護層は、複層から構成され、
 前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、その下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、
 前記無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、前記第1の表面保護層を構成する主剤樹脂と反応する反応基を有することを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の化粧シート。
[請求項16]
 前記無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、超臨界逆相蒸発法によりベシクルに表面処理剤を内包させた表面処理剤内包ベシクルであることを特徴とする請求項15に記載の化粧シート。
[請求項17]
 前記化粧シートは、塩化ビニル樹脂を含有していないことを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の化粧シート。
[請求項18]
 前記表面保護層は、複層から構成され、
 前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、その下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、
 前記第1の表面保護層を構成する樹脂100質量部のうち、電離放射線硬化性樹脂の含有量は、65質量部以上100質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の化粧シート。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]