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1. WO2020129936 - 積層コアおよび回転電機

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明 細 書

発明の名称 積層コアおよび回転電機

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028  

発明の効果

0029  

図面の簡単な説明

0030  

発明を実施するための形態

0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097  

実施例

0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106  

産業上の利用可能性

0107  

符号の説明

0108  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : 積層コアおよび回転電機

技術分野

[0001]
 本発明は、積層コアおよび回転電機に関する。
 本願は、2018年12月17日に、日本に出願された特願2018-235858号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 従来から、下記特許文献1に記載されているような積層コアが知られている。この積層コアでは、積層方向に隣り合う電磁鋼板が、接着層により接着されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 日本国特開2011-023523号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 前記従来の積層コアには、磁気特性を向上させることについて改善の余地がある。
[0005]
 本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、積層コアの磁気特性を向上させることを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
(1)本発明の一態様は、互いに積層された複数の電磁鋼板と、積層方向に隣り合う前記電磁鋼板同士組の間に設けられ、前記電磁鋼板同士組をそれぞれ接着する接着部と、を備え、前記電磁鋼板は、環状のコアバック部と、前記コアバック部から前記コアバック部の径方向に延びるとともに前記コアバック部の周方向に間隔をあけて配置された複数のティース部と、を有し、前記電磁鋼板の前記コアバック部には、前記接着部が設けられた接着領域が形成されており、前記接着領域は、当該接着領域に接触する前記電磁鋼板の領域を通過する磁束に沿った方向に延びる積層コアである。
[0007]
 上述の構成によれば、接着部は一方向に沿って延びる。接着部を一方向に沿って延びた形状とすることで、同一範囲に点状の接着部を間欠的に設ける場合と比較して、接着部の接着面積を大きくして接着強度を高めることができる。
 一般的に、接着剤は硬化時に収縮する。このため、接着部に接触する電磁鋼板の領域である接着領域には、接着剤の硬化収縮に起因する歪が生じ、当該領域において電磁鋼板の鉄損が上昇する。ここで、接着領域と接触して歪によって鉄損が上昇する領域を劣化領域と呼ぶ。上述の構成によれば、接着領域が延びる方向を、劣化領域を通過する磁束に沿った方向と一致させる。これにより、磁束の経路断面積における劣化領域の占める割合を低減させることができ、劣化領域を通過する磁束線の数を抑制できる。また、磁束の経路断面積における劣化領域の占める割合を低減することで、磁気抵抗の高い劣化領域を磁束が迂回しやすくなる。結果的に、磁気回路を形成する磁束の流れを劣化領域が阻害することを抑制することでき、ステータコアとしての積層コアの磁気特性を高めることができる。
[0008]
(2)前記(1)に係る積層コアでは、前記コアバック部は、周方向に沿って交互に並ぶ第1部位および第2部位を有し、前記第1部位は、前記ティース部の径方向外側において前記ティース部に対して径方向に連なり、前記第2部位は、周方向において前記第1部位同士の間に位置し、前記接着領域は、前記第1部位および前記第2部位の少なくとも一方において周方向に離散的に形成される、構成としてもよい。
[0009]
 上述の構成によれば、接着領域がコアバック部において、周方向に離散的に配置される。これにより、電磁鋼板同士をバランスよく固定することができる。加えて、電磁鋼板に形成される劣化領域が、離散的に配置されるため、劣化領域が磁束の流れを阻害し難い。
[0010]
(3)前記(2)に係る積層コアでは、上述の積層コアにおいて、前記接着領域は、前記第1部位に形成され、前記接着領域の周方向両側には、前記接着領域が形成されていない、構成としてもよい。
[0011]
 上述の構成によれば、劣化領域の周方向両側に鉄損の上昇が生じない領域(非劣化領域)が設けられる。このため、磁気回路を形成する磁束が非劣化領域に迂回して通過することができ、ステータコアとしての積層コアの磁気特性を高めることができる。
[0012]
(4)前記(3)に係る積層コアでは、上述の積層コアにおいて、前記接着領域は、前記ティース部の中心線に沿って径方向に延びる、構成としてもよい。
[0013]
 ティース部からコアバック部に流れる磁束は、コアバック部の第1部位において径方向に沿って延びて、第1部位の径方向の中程で周方向両側に分岐する。上述の構成によれば、接着領域がティース部の中心線に沿って径方向に沿って延びるため、接着領域が延びる方向は、第1部位において磁束が延びる方向と一致する。このため、磁束の流れを劣化領域が阻害することを抑制することができ、ステータコアの磁気特性を高めることができる。
[0014]
(5)前記(3)又は前記(4)に係る積層コアでは、前記ティース部は、前記コアバック部から径方向の内側に延び、前記接着領域は、前記コアバック部の径方向外端から径方向内側に延びる、構成としてもよい。
[0015]
 磁束が流れる経路は、磁気抵抗が低い最短距離を取りやすい。上述の構成によれば、接着領域がコアバック部の径方向外端から延びるため、最短距離を通過する磁束の流れを阻害し難い。
[0016]
(6)前記(2)に係る積層コアでは、前記接着領域は、前記第2部位に設けられ、前記接着領域の径方向両側には、前記接着領域が形成されていない、構成としてもよい。
[0017]
 上述の構成によれば、劣化領域の径方向両側に非劣化領域が設けられる。このため、磁気回路を形成する磁束が非劣化領域に迂回して通過することができ、ステータコアとしての積層コアの磁気特性を高めることができる。
[0018]
(7)前記(6)に係る積層コアでは、前記接着領域は、周方向に沿って延びる、構成としてもよい。
[0019]
 コアバック部に流れる磁束は、第2部位において周方向に沿って流れる。上述の構成によれば、接着領域が周方向に沿って延びるため、劣化領域が磁束の流れを阻害し難い。
[0020]
(8)前記(6)又は前記(7)に係る積層コアでは、前記ティース部は、前記コアバック部から径方向の内側に延び、前記接着領域は、前記コアバック部の径方向外側に偏って配置される、構成としてもよい。
[0021]
 上述の構成によれば、接着領域がコアバック部の径方向外側に偏って配置されるため、最短距離を通過する磁束の流れを阻害し難い。
[0022]
(9)前記(2)に係る積層コアでは、前記接着領域は、1つの前記第1部位と1つの前記第2部位とに跨って設けられる、構成としてもよい。
[0023]
 上述の構成によれば、接着領域が、ティース部の中心線に対し非対称に形成される。このため、ティース部に対し周方向一方側と他方側とで磁束密度が互いに異なることとなり、このような積層コアは、一方向へのみ回転させる回転電機に用いる場合に、回転電機のエネルギ効率を高めることができる。
[0024]
(10)前記(1)~前記(9)の何れか1つに記載の積層コアでは、前記接着部の平均厚みが1.0μm~3.0μmであってもよい。
[0025]
(11)前記(1)~前記(10)の何れか1つに記載の積層コアでは、前記接着部の平均引張弾性率Eが1500MPa~4500MPaであってもよい。
[0026]
(12)前記(1)~前記(11)の何れか1つに記載の積層コアでは、前記接着部が、エラストマー含有アクリル系接着剤からなるSGAを含む常温接着タイプのアクリル系接着剤であってもよい。
[0027]
(13)本発明の一態様の回転電機は、前記(1)~前記(12)の何れか1つに記載の積層コアを備える、回転電機。
[0028]
 上述の構成の回転電機によれば、磁気特性に優れた積層コアを有するため、回転電機のエネルギ効率を高めることができる。

発明の効果

[0029]
 本発明によれば、積層コアの磁気特性を向上させることができる。

図面の簡単な説明

[0030]
[図1] 本発明の一実施形態に係る回転電機の断面図である。
[図2] 図1に示す回転電機が備えるステータの平面図である。
[図3] 図1に示す回転電機が備えるステータの正面図である。
[図4] 図2および図3に示すステータの電磁鋼板および接着領域の模式図である。
[図5] 変形例1のステータの接着領域の模式図である。
[図6] 変形例2のステータの接着領域の模式図である。
[図7] 変形例3のステータの接着領域の模式図である。
[図8] 変形例4のステータの接着領域の模式図である。
[図9] 変形例5のステータの接着領域の模式図である。
[図10] モデルNo.1~モデルNo.4の鉄損のシミュレーション結果を示すグラフである。
[図11] 比較例としてのモデルNo.4のステータコアの模式図である。

発明を実施するための形態

[0031]
 以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る回転電機を説明する。なお本実施形態では、回転電機として電動機、具体的には交流電動機、より具体的には同期電動機、より一層具体的には永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明する。この種の電動機は、例えば、電気自動車などに好適に採用される。
[0032]
 図1および図2に示すように、回転電機10は、ステータ20と、ロータ30と、ケース50と、回転軸60と、を備える。ステータ20およびロータ30は、ケース50に収容される。ステータ20は、ケース50に固定される。
[0033]
 本実施形態の回転電機10において、例えば、ステータ20の各相には、実効値10A、周波数100Hzの励磁電流を印加され、これに伴い、ロータ30および回転軸60が回転数1000rpmで回転する。
[0034]
 本実施形態では、回転電機10として、ロータ30がステータ20の内側に位置するインナーロータ型を採用している。しかしながら、回転電機10として、ロータ30がステータ20の外側に位置するアウターロータ型を採用してもよい。また本実施形態では、回転電機10が、12極18スロットの三相交流モータである。しかしながら、例えば極数やスロット数、相数などは適宜変更することができる。
[0035]
 ステータ20は、ステータコア(積層コア)21と、図示しない巻線と、を備える。
 ステータコア21は、環状のコアバック部22と、複数のティース部23と、を備える。以下では、ステータコア21(コアバック部22)の軸方向(ステータコア21の中心軸線O方向)を軸方向といい、ステータコア21(コアバック部22)の径方向(ステータコア21の中心軸線Oに直交する方向)を径方向といい、ステータコア21(コアバック部22)の周方向(ステータコア21の中心軸線O周りに周回する方向)を周方向という。
[0036]
 コアバック部22は、ステータ20を軸方向から見た平面視において円環状に形成されている。
 複数のティース部23は、コアバック部22から径方向の内側に(径方向に沿ってコアバック部22の中心軸線Oに向けて)延びる。複数のティース部23は、周方向に同等の間隔をあけて配置されている。本実施形態では、中心軸線Oを中心とする中心角20度おきに18個のティース部23が設けられている。複数のティース部23は、互いに同等の形状で、かつ同等の大きさに形成されている。
 前記巻線は、ティース部23に巻き回されている。前記巻線は、集中巻きされていてもよく、分布巻きされていてもよい。
[0037]
 ロータ30は、ステータ20(ステータコア21)に対して径方向の内側に配置されている。ロータ30は、ロータコア31と、複数の永久磁石32と、を備える。
 ロータコア31は、ステータ20と同軸に配置される環状(円環状)に形成されている。ロータコア31内には、前記回転軸60が配置されている。回転軸60は、ロータコア31に固定されている。
 複数の永久磁石32は、ロータコア31に固定されている。本実施形態では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成している。複数組の永久磁石32は、周方向に同等の間隔をあけて配置されている。本実施形態では、中心軸線Oを中心とする中心角30度おきに12組(全体では24個)の永久磁石32が設けられている。
[0038]
 本実施形態では、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型モータが採用されている。ロータコア31には、ロータコア31を軸方向に貫通する複数の貫通孔33が形成されている。複数の貫通孔33は、複数の永久磁石32に対応して設けられている。各永久磁石32は、対応する貫通孔33内に配置された状態でロータコア31に固定されている。各永久磁石32のロータコア31への固定は、例えば永久磁石32の外面と貫通孔33の内面とを接着剤により接着すること等により、実現することができる。なお、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型に代えて表面磁石型モータを採用してもよい。
[0039]
<積層コア>
 図3に示すように、ステータコア21は、積層コアである。ステータコア21は、複数の電磁鋼板40が積層されることで形成されている。すなわち、ステータコア21は、厚さ方向に積層された複数の電磁鋼板40を備える。
[0040]
 なおステータコア21の積厚は、例えば50.0mmとされる。ステータコア21の外径は、例えば250.0mmとされる。ステータコア21の内径は、例えば165.0mmとされる。ただし、これらの値は一例であり、ステータコア21の積厚、外径や内径は、これらの値に限られない。ここで、ステータコア21の内径は、ステータコア21におけるティース部23の先端部を基準としている。ステータコア21の内径は、全てのティース部23の先端部に内接する仮想円の直径である。
[0041]
 ステータコア21およびロータコア31を形成する各電磁鋼板40は、例えば、母材となる電磁鋼板を打ち抜き加工すること等により形成される。電磁鋼板40としては、公知の電磁鋼板を用いることができる。電磁鋼板40の化学組成は特に限定されない。本実施形態では、電磁鋼板40として、無方向性電磁鋼板を採用している。無方向性電磁鋼板としては、例えば、JIS C 2552:2014の無方向性電鋼帯を採用することができる。
 しかしながら、電磁鋼板40として、無方向性電磁鋼板に代えて方向性電磁鋼板を採用することも可能である。方向性電磁鋼板としては、JIS C 2553:2012の方向性電鋼帯を採用することができる。
[0042]
 電磁鋼板の加工性や、積層コアの鉄損を改善するため、電磁鋼板40の両面には、絶縁被膜が設けられている。絶縁被膜を構成する物質としては、例えば、(1)無機化合物、(2)有機樹脂、(3)無機化合物と有機樹脂との混合物、などが適用できる。無機化合物としては、例えば、(1)重クロム酸塩とホウ酸の複合物、(2)リン酸塩とシリカの複合物、などが挙げられる。有機樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
[0043]
 互いに積層される電磁鋼板40間での絶縁性能を確保するために、絶縁被膜の厚さ(電磁鋼板40片面あたりの厚さ)は0.1μm以上とすることが好ましい。
 一方で絶縁被膜が厚くなるに連れて絶縁効果が飽和する。また、絶縁被膜が厚くなるに連れてステータコア21における絶縁被膜の占める割合が増加し、ステータコア21の磁気特性が低下する。したがって、絶縁被膜は、絶縁性能が確保できる範囲で薄い方がよい。絶縁被膜の厚さ(電磁鋼板40片面あたりの厚さ)は、好ましくは0.1μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上2μm以下である。
[0044]
 電磁鋼板40が薄くなるに連れて次第に鉄損の改善効果が飽和する。また、電磁鋼板40が薄くなるに連れて電磁鋼板40の製造コストは増す。そのため、鉄損の改善効果および製造コストを考慮すると電磁鋼板40の厚さは0.10mm以上とすることが好ましい。
 一方で電磁鋼板40が厚すぎると、電磁鋼板40のプレス打ち抜き作業が困難になる。そのため、電磁鋼板40のプレス打ち抜き作業を考慮すると電磁鋼板40の厚さは0.65mm以下とすることが好ましい。
 また、電磁鋼板40が厚くなると鉄損が増大する。そのため、電磁鋼板40の鉄損特性を考慮すると、電磁鋼板40の厚さは0.35mm以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.20mm又は0.25mmである。
 上記の点を考慮し、各電磁鋼板40の厚さは、例えば、0.10mm以上0.65mm以下、好ましくは、0.10mm以上0.35mm以下、より好ましくは0.20mmや0.25mmである。なお電磁鋼板40の厚さには、絶縁被膜の厚さも含まれる。
[0045]
 ステータコア21を形成する複数の電磁鋼板40は、接着部41によって接着されている。接着部41は、積層方向に隣り合う電磁鋼板40同士の間に設けられ、分断されることなく硬化した接着剤である。接着剤には、例えば重合結合による熱硬化型の接着剤などが用いられる。接着剤の組成物としては、(1)アクリル系樹脂、(2)エポキシ系樹脂、(3)アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂を含んだ組成物などが適用可能である。このような接着剤としては、熱硬化型の接着剤の他、ラジカル重合型の接着剤なども使用可能であり、生産性の観点からは、常温硬化型の接着剤を使用することが望ましい。常温硬化型の接着剤は、20℃~30℃で硬化する。常温硬化型の接着剤としては、アクリル系接着剤が好ましい。代表的なアクリル系接着剤には、SGA(第二世代アクリル系接着剤。Second Generation Acrylic Adhesive)などがある。本発明の効果を損なわない範囲で、嫌気性接着剤、瞬間接着剤、エラストマー含有アクリル系接着剤がいずれも使用可能である。なお、ここで言う接着剤は硬化前の状態を言い、接着剤が硬化した後は接着部41となる。
[0046]
 接着部41の常温(20℃~30℃)における平均引張弾性率Eは、1500MPa~4500MPaの範囲内とされる。接着部41の平均引張弾性率Eは、1500MPa未満であると、積層コアの剛性が低下する不具合が生じる。そのため、接着部41の平均引張弾性率Eの下限値は、1500MPa、より好ましくは1800MPaとされる。逆に、接着部41の平均引張弾性率Eが4500MPaを超えると、電磁鋼板40の表面に形成された絶縁被膜が剥がれる不具合が生じる。そのため、接着部41の平均引張弾性率Eの上限値は、4500MPa、より好ましくは3650MPaとされる。
 なお、平均引張弾性率Eは、共振法により測定される。具体的には、JIS R 1602:1995に準拠して引張弾性率を測定する。
 より具体的には、まず、測定用のサンプル(不図示)を製作する。このサンプルは、2枚の電磁鋼板40間を、測定対象の接着剤により接着し、硬化させて接着部41を形成することにより、得られる。この硬化は、接着剤が熱硬化型の場合には、実操業上の加熱加圧条件で加熱加圧することで行う。一方、接着剤が常温硬化型の場合には常温下で加圧することで行う。
 そして、このサンプルについての引張弾性率を、共振法で測定する。共振法による引張弾性率の測定方法は、上述した通り、JIS R 1602:1995に準拠して行う。その後、サンプルの引張弾性率(測定値)から、電磁鋼板40自体の影響分を計算により除くことで、接着部41単体の引張弾性率が求められる。
 このようにしてサンプルから求められた引張弾性率は、積層コア全体としての平均値に等しくなるので、この数値をもって平均引張弾性率Eとみなす。平均引張弾性率Eは、その積層方向に沿った積層位置や積層コアの中心軸線回りの周方向位置で殆ど変わらないよう、組成が設定されている。そのため、平均引張弾性率Eは、積層コアの上端位置にある、硬化後の接着部41を測定した数値をもってその値とすることもできる。
[0047]
 モータは、駆動時に発熱する。このため、接着部41の融点が低いと、モータの発熱によって接着部41が溶融して接着領域42の形状が変化し所望の効果を得ることができない。一般的に、ステータコア21に巻かれる巻線の表面には、絶縁性の被覆(エナメル)が設けられる。この被覆の耐熱温度は、例えば180℃程度である。このため、一般的なモータは、180℃以下となるように駆動される。すなわち、モータは、180℃程度まで昇温し得る。本実施形態において、接着部41の融点は、180℃以上であることが好ましい。さらに、局所的に高温となる部位があることを加味した安全率を考慮し、接着部41の融点は、200℃以上であることがさらに好ましい。
[0048]
 接着方法としては、例えば、電磁鋼板40に接着剤を塗布した後、加熱および圧着のいずれかまたは両方により接着する方法が採用できる。なお加熱手段は、例えば高温槽や電気炉内での加熱、または直接通電する方法等、どのような手段でも良い。
[0049]
 安定して十分な接着強度を得るために、接着部41の厚さは1μm以上とすることが好ましい。
 一方で接着部41の厚さが100μmを超えると接着力が飽和する。また、接着部41が厚くなるに連れて占積率が低下し、積層コアの鉄損などの磁気特性が低下する。したがって、接着部41の厚さは1μm以上100μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下とすることが好ましい。
 なお、上記において接着部41の厚さは、接着部41の平均厚みを意味する。
[0050]
 接着部41の平均厚みは、1.0μm以上3.0μm以下とすることがより好ましい。接着部41の平均厚みが1.0μm未満であると、前述したように十分な接着力を確保できない。そのため、接着部41の平均厚みの下限値は、1.0μm、より好ましくは1.2μmとされる。逆に、接着部41の平均厚みが3.0μmを超えて厚くなると、熱硬化時の収縮による電磁鋼板40の歪み量が大幅に増えるなどの不具合を生じる。そのため、接着部41の平均厚みの上限値は、3.0μm、より好ましくは2.6μmとされる。
 接着部41の平均厚みは、積層コア全体としての平均値である。接着部41の平均厚みはその積層方向に沿った積層位置や積層コアの中心軸線回りの周方向位置で殆ど変わらない。そのため、接着部41の平均厚みは、積層コアの上端位置において、円周方向10箇所以上で測定した数値の平均値をもってその値とすることができる。
[0051]
 なお、接着部41の平均厚みは、例えば、接着剤の塗布量を変えて調整することができる。また、接着部41の平均引張弾性率Eは、例えば、熱硬化型の接着剤の場合には、接着時に加える加熱加圧条件及び硬化剤種類の一方もしくは両方を変更すること等により調整することができる。
[0052]
 次に、図4を基に、電磁鋼板40と接着部41および接着領域42との関係について説明する。
 図4に示すように、積層方向に隣り合う電磁鋼板40同士は、互いに全面接着されていない。これらの電磁鋼板40同士は、互いに局所的に接着されている。接着部41は、電磁鋼板の複数のコアバック部22に設けられている。コアバック部22は接着部41によって接着されている。すなわち、複数の電磁鋼板40は、接着部41によって互いに接着されている。
[0053]
 電磁鋼板40において積層方向を向く面(以下、電磁鋼板40の第1面という)には、接着領域42と、ブランク領域43(非接着領域)とが形成されている。接着領域42とは、電磁鋼板40の第1面のうち、接着部41が設けられた領域である。より具体的には、接着領域42とは、電磁鋼板40の第1面のうち、硬化した接着剤が設けられている領域である。ブランク領域43とは、電磁鋼板の第1面のうち、接着部41が設けられていない領域である。
[0054]
 ここで、電磁鋼板40のコアバック部22を第1部位22aと第2部位22bとに区画する。第1部位22aと第2部位22bとは、周方向に沿って交互に並ぶ。すなわち、コアバック部22は、周方向に沿って交互に並ぶ第1部位22aおよび第2部位22bを有する。第1部位22aと第2部位22bとの境界線は、径方向に直線状に延びる。第1部位22aは、ティース部23の径方向外側においてティース部23に連なる。第2部位22bは、周方向において第1部位22a同士の間に位置する。
[0055]
 接着領域42は、コアバック部22の第2部位22bに設けられる。また、接着領域42は、コアバック部22の第1部位22aには設けられない。接着領域42は、1つの第2部位22bに1つ設けられる。接着領域42は、第2部位22bの周方向中央に位置する。また、接着領域42は、第2部位22bにおいて径方向外側に偏って配置される。
[0056]
 接着領域42は、平面視において径方向と直交する方向を長手方向とする略矩形状である。すなわち、接着領域42は、周方向に沿って延びる。本実施形態によれば、接着領域42を一方向に沿って延びる形状とすることで、同一範囲に点状の接着領域を間欠的に設ける場合と比較して、接着部41の接着面積を大きくして接着強度を高めることができる。
[0057]
 接着部41の幅寸法d1を大きくすることで、製造工程において接着部を容易に形成することができる。また、接着部41の幅寸法d1を小さくすることで、接着剤の圧縮応力によって電磁鋼板40に局所的に大きな歪を生じさせることがなく、電磁鋼板40全体としての鉄損の劣化を抑制できる。
 なお、接着領域42の幅寸法とは、接着領域42の短手方向の寸法であって、本実施形態において、接着領域42の径方向における寸法である。本実施形態において、接着領域42とは、電磁鋼板40の第1面において接着部41が設けられた領域であるため、接着領域42の幅寸法と、接着部41の幅寸法は同一である。
[0058]
 接着領域42の幅寸法d1に対する長手寸法d2の比率(d2/d1、アスペクト比)は、3.5以上であることが好ましい。接着領域42のアスペクト比を3.5以上とすることで、電磁鋼板40の歪を抑制しつつ電磁鋼板40同士の接着強度を確保することができる。
[0059]
 本実施形態において、接着剤は硬化時に収縮する。このため、接着部41に接触する電磁鋼板40の領域には、接着剤の硬化収縮に起因する歪が生じ、当該領域において電磁鋼板40の鉄損が上昇する。ここで、接着部41と接触して歪によって鉄損が上昇する領域を劣化領域29と呼ぶ。劣化領域29は、積層方向から見て接着領域42と重なる領域である。劣化領域29は、他の領域(非劣化領域)と比較して磁気抵抗が高い。
 なお、本明細書において、鉄損の値が上昇することを「鉄損の劣化」と呼ぶ場合がある。
[0060]
 ステータ20の巻線(図示略)に電流が流れることで、電磁鋼板40に磁束Bが形成される。磁束Bは、ティース部23およびコアバック部22を通過する磁気回路を形成する。磁束Bは、コアバック部22の第2部位22bにおいて周方向に沿って延びる。
[0061]
 本実施形態によれば、接着領域42は、第2部位22bに位置し、周方向に沿って延びる。すなわち、接着領域42が延びる方向は、第2部位22bにおいて磁束Bが延びる方向と一致する。言い換えると、接着領域42は、当該接着領域42に接触する電磁鋼板40の劣化領域29を通過する磁束Bに沿った方向に延びる。このため、磁束Bの経路断面積における劣化領域29の占める割合を低減させることができ、劣化領域29を通過する磁束線の数を抑制できる。また、磁束の経路断面積における劣化領域29の占める割合を低減することで、磁気抵抗の高い劣化領域29を磁束Bが迂回しやすくなる。結果的に、磁気回路を形成する磁束Bの流れを劣化領域29が阻害することを抑制し、かしめによって電磁鋼板同士を互いに固定した場合と比較して、ステータコア21の磁気特性を高めることができる。
[0062]
 図4に示すように、接着領域42の径方向外側および接着領域42の径方向内側には、それぞれ接着領域42が設けられないブランク領域43が設けられる。すなわち、接着領域42の周方向両側には、接着領域42が形成されていない。ブランク領域43と重なる電磁鋼板40の領域は、接着剤の硬化収縮に伴う応力が付与されない。したがって、この領域は、劣化領域29と比較して鉄損が上昇しない。本明細書において、鉄損の上昇が生じない電磁鋼板40の領域を非劣化領域と呼ぶ。上述の構成によれば、劣化領域29の径方向両側に非劣化領域が設けられるため、磁気回路を形成する磁束Bが非劣化領域に迂回して通過することができ、ステータコア21の磁気特性を高めることができる。
[0063]
 磁束Bは、磁気抵抗の低い最短距離を流れる傾向がある。したがって、コアバック部22では、径方向内側から径方向外側に向かうに従い磁束密度が低くなる。本実施形態において、接着領域42は、コアバック部22の径方向外側に偏って配置される。このため、電磁鋼板40の劣化領域29を磁束密度の低い領域に形成することができ、接着部41を設けたことによるステータコア21の磁気特性の低下を抑制できる。
[0064]
 本実施形態によれば、接着領域42は、第2部位22bに設けられ、第1部位22aには設けられない。このため、接着領域42がコアバック部22において、周方向に離散的に配置される。これにより、電磁鋼板40同士をバランスよく固定することができる。加えて、電磁鋼板40に形成される劣化領域29が、離散的に配置されるため、劣化領域29が磁束Bの流れを阻害し難い。なお、このような効果は、接着領域42が第1部位22aに設けられ、第2部位22bに設けられない場合であっても得ることができる効果である。すなわち、接着領域42は、第1部位22aおよび第2部位22bの少なくとも一方において周方向に離散的に設けられていれば、上述の効果を得ることができる。
[0065]
 本実施形態において、ロータコア31は、ステータコア21と同様に、積層コアである。すなわち、ロータコア31は、厚さ方向に積層された複数の電磁鋼板を備える。本実施形態において、ロータコア31の積厚は、ステータコア21と等しく、例えば50.0mmとされる。ロータコア31の外径は、例えば163.0mmとされる。ロータコア31の内径は、例えば30.0mmとされる。ただし、これらの値は一例であり、ロータコア31の積厚、外径や内径はこれらの値に限られない。
[0066]
 本実施形態では、ロータコア31を形成する複数の電磁鋼板は、かしめC(ダボ、図1参照)によって互いに固定されている。しかしながら、ロータコア31を形成する複数の電磁鋼板40は、ステータコア21と同様の接着部によって互いに接着されていてもよい。
[0067]
 (変形例1)
 次に、上述の実施形態に採用可能な、変形例1の接着部141および接着領域142について図5を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
[0068]
 上述の実施形態と同様に、コアバック部22には、接着部141が設けられた接着領域142が形成されている。本変形例の接着領域142は、コアバック部22の第1部位22aに設けられる。また、接着領域142は、コアバック部22の第2部位22bには設けられない。接着領域142は、1つの第1部位22aに1つ設けられる。接着領域142は、第1部位22aの周方向中央に位置する。
[0069]
 接着領域142は、平面視において径方向を長手方向とする略矩形状である。接着領域142のアスペクト比(d2/d1)は、上述の実施形態と同様に、3.5以上であることが好ましい。
[0070]
 接着領域142は、ティース部23の中心線CLに沿って径方向に沿って延びる。中心線CLは、ティース部23における周方向の中心を径方向に通過する仮想線である。接着領域142の径方向外側の端部は、コアバック部22の径方向外端に位置する。すなわち、接着領域142は、コアバック部22の径方向外端から径方向内側に延びる。また、接着領域142の径方向内側の端部は、コアバック部22の径方向内端より径方向外側に位置する。
[0071]
 ステータ20の巻線(図示略)に電流が流れることで、電磁鋼板40に磁束Bが形成される。磁束Bは、ティース部23およびコアバック部22を通過する磁気回路を形成する。磁束Bは、コアバック部22の第1部位22aにおいて径方向に沿って延びて、第1部位22aの径方向の中程で周方向両側に分岐する。磁束Bは、ティース部23の中心線CLに対して対称方向に分岐する。
[0072]
 本変形例によれば、接着領域142は、第1部位22aに位置し、ティース部23の中心線CLに沿って径方向に延びる。すなわち、接着領域142が延びる方向は、第1部位22aにおいて磁束Bの少なくとも一部が延びる方向と一致する。言い換えると、接着領域142は、当該接着領域142に接触する電磁鋼板40の劣化領域129を通過する磁束の少なくとも一部に沿った方向に延びる。このため、磁束Bの経路断面積における劣化領域129の占める割合を低減することができ、劣化領域129を通過する磁束線の数を抑制できる。また、磁束Bの経路断面積における劣化領域129の占める割合を低減することで、磁気抵抗の高い劣化領域129を磁束Bが迂回しやすくなる。また、本変形例において接着領域142は、ティース部23の中心線CLに沿って延びるため、中心線CLに対して対称方向に分岐する磁束Bが、劣化領域129を迂回しやすい。結果的に、磁気回路を形成する磁束Bの流れを劣化領域129が阻害することを抑制することでき、かしめによって電磁鋼板同士を互いに固定した場合と比較して、ステータコア21の磁気特性を高めることができる。
[0073]
 図5に示すように、接着領域142の周方向両側には、それぞれ接着領域142が設けられないブランク領域143が設けられる。ブランク領域143と重なる電磁鋼板40の領域には、接着剤の硬化収縮に伴う応力が付与されない非劣化領域が形成される。上述の構成によれば、劣化領域129の周方向両側に非劣化領域が設けられるため、磁気回路を形成する磁束Bが非劣化領域に迂回して通過でき、ステータコア21の磁気特性を高めることができる。
[0074]
 磁束Bは、磁気抵抗の低い最短距離を流れる傾向があるため、コアバック部22では、径方向内側から径方向外側に向かうに従い磁束密度が低くなる。本変形例において、接着領域142がコアバック部22の径方向外端から延びる。したがって、電磁鋼板40の劣化領域129を磁束密度の低い領域に形成することができ、接着領域142を設けたことによるステータコア21の磁気特性の低下を抑制できる。
[0075]
 (変形例2)
 次に、上述の実施形態に採用可能な、変形例2の接着部241および接着領域242について図6を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
[0076]
 上述の実施形態と同様に、コアバック部22には、接着部241が設けられた接着領域242が形成されている。本変形例の接着領域242は、コアバック部22の第1部位22aに設けられる。また、接着領域242は、コアバック部22の第2部位22bには設けられない。接着領域242は、1つの第1部位22aに1つ設けられる。接着領域242は、第1部位22aの周方向中央に位置する。また、接着領域242は、第1部位22aにおいて径方向内側に偏って配置される。
[0077]
 接着領域242は、平面視において径方向と直交する方向を長手方向とする略矩形状である。また、接着領域242のアスペクト比(d2/d1)は、上述の実施形態と同様に、3.5以上であることが好ましい。
[0078]
 ステータ20の巻線(図示略)に電流が流れることで、電磁鋼板40に磁束Bが形成される。磁束Bは、ティース部23およびコアバック部22を通過する磁気回路を形成する。磁束Bは、コアバック部22の第1部位22aにおいて径方向に沿って延びて、第1部位22aの径方向の中程で周方向両側に分岐する。
[0079]
 本変形例によれば、接着領域242は、第1部位22aに位置し、周方向に沿って延びる。すなわち、接着領域242が延びる方向は、第1部位22aにおいて分岐して周方向に延びる磁束Bの方向と部分的に一致する。言い換えると、接着領域242の少なくとも一部は、当該接着領域242に接触する電磁鋼板40の劣化領域229を通過する磁束Bに沿った方向に延びる。このため、磁束Bの経路断面積における劣化領域229の占める割合を低減することができるのみならず、磁気抵抗の高い劣化領域229を磁束Bが迂回しやすくなる。結果的に、磁気回路を形成する磁束Bの流れを劣化領域229が阻害することを抑制することでき、かしめによって電磁鋼板同士を互いに固定した場合と比較して、ステータコア21の磁気特性を高めることができる。
[0080]
 図6に示すように、接着領域242の周方向両側には、それぞれ接着領域242が設けられないブランク領域243が設けられる。ブランク領域243と重なる電磁鋼板40の領域には、接着剤の硬化収縮に伴う応力が付与されない非劣化領域が形成されない。上述の構成によれば、劣化領域229の周方向両側に非劣化領域が設けられるため、磁気回路を形成する磁束Bが非劣化領域を通過でき、ステータコア21の磁気特性を高めることができる。
[0081]
 (変形例3)
 次に、上述の実施形態に採用可能な、変形例3の接着部341および接着領域342について、図7を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
[0082]
 上述の実施形態と同様に、コアバック部22には、接着部341が設けられた接着領域342が形成されている。本変形例の接着領域342は、変形例2の接着領域242の構成と類似する。本変形例の接着領域342は、第1部位22aにおいて径方向外側に偏って配置される点において、変形例2の接着領域242と異なる。
[0083]
 磁束Bは、磁気抵抗の低い最短距離を流れる傾向があるため、コアバック部22では、径方向内側から径方向外側に向かうに従い磁束密度が低くなる。本変形例において、接着領域342は、コアバック部22の径方向外側に偏って配置される。したがって、電磁鋼板40の劣化領域329を磁束密度の低い領域に形成することができ、接着領域342を設けたことによるステータコア21の磁気特性の低下を抑制できる。
[0084]
 本変形例によれば、接着領域342は、第1部位22aの径方向外側に偏って配置され、周方向に沿って延びる。このため、接着領域342は、変形例2の接着領域242と比較して、第1部位22aにおいて分岐して周方向に延びる磁束Bの方向とより広範囲で平行に延びる。このため、磁束Bの経路断面積における劣化領域329の占める割合をより一層低減することができるのみならず、磁気抵抗の高い劣化領域329を磁束Bがより一層迂回しやすくなる。結果的に、磁気回路を形成する磁束Bの流れを劣化領域329が阻害することを抑制することでき、ステータコア21の磁気特性を変形例2と比較してさらに高めることができる。
[0085]
 (変形例4)
 次に、上述の実施形態に採用可能な、変形例4の接着部441および接着領域442について、図8を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
[0086]
 上述の実施形態と同様に、コアバック部22には、接着部441が設けられた接着領域442が形成されている。本変形例の接着領域442は、1つの第1部位22aと1つの第2部位22bとに跨って設けられる。また、本変形例の接着領域442は、コアバック部22の径方向外側に偏って配置され、周方向に沿って延びる。
[0087]
 本変形例において、接着領域442は、1つの第1部位22aに対し、周方向一方側の第2部位22bと境界線上には設けられ、周方向他方側の第2部位22bとの境界線上には設けられない。したがって、接着領域442は、ティース部23の中心線CLに対し非対称に形成される。ティース部23からコアバック部22に流れる磁束Bの密度は、接着領域442が設けられる周方向一方側より、接着領域442が設けられない周方向他方側の方が高まりやすい。すなわち、本実施形態によれば、中心線CLに対し周方向一方側と他方側とで磁束密度が互いに異なることとなる。このような積層コアは、回転方向が一方向に制限された回転電機に用いる場合に、回転電機のエネルギ効率を高めることができる。
[0088]
 (変形例5)
 次に、上述の実施形態に採用可能な、変形例5の接着部541および接着領域542について、図9を基に説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
[0089]
 上述の実施形態と同様に、コアバック部22には、接着部541が設けられた接着領域542が形成されている。本変形例の接着領域542は、平面視T字状であり、変形例1の接着領域142および変形例3の接着領域342を組み合わせた構成と考えることができる。本変形例によれば、変形例1および変形例3の効果を享受するとともに、接着領域542を十分な面積確保し、接着強度を高めることができる。本変形例に示すように、実施形態および各変形例の構成を組み合わせた構成を採用して組み合わせた効果を得てもよい。
[0090]
 なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
[0091]
 上述の実施形態およびその変形例のステータコアにおいて、複数の電磁鋼板は、コアバック部に設けられた接着領域において互いに固定されている。しかしながら、電磁鋼板同士は、コアバック部に加えてティース部においても、互いに固定されていてもよい。この場合、ティース部にかしめが設けられていてもよく、また、ティース部に別途接着領域が設けられていてもよい。さらに、電磁鋼板同士は、接着領域による接着固定に加えて、互いに溶接固定されていてもよい。
[0092]
 上述の実施形態およびその変形例において、接着領域の幅寸法、接着領域の全長に亘って一様である場合について説明した。しかしながら、接着領域の幅寸法は、必ずしも一様でなくてもよい。一例として、接着領域の幅方向両端部が、長さ方向に沿って曲がりくねって延びていてもよい。
[0093]
 ステータコアの形状は、前記実施形態で示した形態に限定されるものではない。具体的には、ステータコアの外径および内径の寸法、積厚、スロット数、ティース部の周方向と径方向の寸法比率、ティース部とコアバック部との径方向の寸法比率、などは所望の回転電機の特性に応じて任意に設計可能である。
[0094]
 前記実施形態におけるロータでは、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成しているが、本発明はこれに限られない。例えば、1つの永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよく、3つ以上の永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよい。
[0095]
 前記実施形態では、回転電機として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、回転電機の構造は、以下に例示するようにこれに限られず、更には以下に例示しない種々の公知の構造も採用可能である。
 前記実施形態では、同期電動機として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機がリラクタンス型電動機や電磁石界磁型電動機(巻線界磁型電動機)であってもよい。
 前記実施形態では、交流電動機として、同期電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機が誘導電動機であってもよい。
 前記実施形態では、電動機として、交流電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機が直流電動機であってもよい。
 前記実施形態では、回転電機として、電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機が発電機であってもよい。
[0096]
 前記実施形態では、本発明に係る積層コアをステータコアに適用した場合を例示したが、ロータコアに適用することも可能である。
[0097]
 その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態およびその変形例における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
実施例
[0098]
 接着部の圧縮応力に起因する電磁鋼板の鉄損の劣化の抑制を検証する検証試験を実施した。なお本検証試験は、ソフトウェアを用いたシミュレーションにより実施した。ソフトウェアとしては、JSOL株式会社製の有限要素法電磁場解析ソフトJMAGを利用した。シミュレーションに用いるモデルとして、以下に説明するモデルNo.1~モデルNo.4のステータコア(積層コア)を想定した。各モデルに用いる電磁鋼板は、板厚0.25mmの薄板を打ち抜き加工することによって作製したものを用いた。電磁鋼板の形状は、図2に示すものと同形状である。
[0099]
 モデルNo.1~No.3のステータコアと、モデルNo.4のステータコアとは、電磁鋼板同士の固定の構成が異なる。モデルNo.1~モデルNo.3のステータコアにおいて、電磁鋼板同士の間には接着部が設けられ、電磁鋼板同士が互いに接着固定されている。一方で、モデルNo.4のステータコアは、かしめによって電磁鋼板同士が互いに固定されている。
[0100]
 モデルNo.1の接着部は、図4に示す接着部41に相当する。モデルNo.1の接着部の接着領域は、コアバック部の第2部位において周方向に沿って延びる。
[0101]
 モデルNo.2の接着部は、図5に示す接着部141に相当する。モデルNo.2の接着部の接着領域は、コアバック部の第1部位において径方向に沿って延びる。
[0102]
 モデルNo.3の接着部は、図6に示す接着部241に相当する。モデルNo.3の接着部の接着領域は、コアバック部の第1部位において周方向に沿って延びる。
[0103]
 モデルNo.4のステータコア1021を図11に示す。ステータコア1021は、上述の実施形態のステータコア21と同形状の電磁鋼板40を厚さ方向に積層して構成される。ステータコア1021は、上述の実施形態のステータコア21と比較して、電磁鋼板40同士がかしめ固定されている点が異なる。すなわち、ステータコア1021の電磁鋼板40は、かしめ1042(ダボ)によって互いに固定されている。かしめ1042は、コアバック部22の第2部位22bに位置する。
[0104]
 各モデルについて、電磁鋼板の鉄損をシミュレーションソフトにより計算した計算結果を図10に示す。また、図10に示す計算結果の鉄損(縦軸)は、モデルNo.4の鉄損を1.0として、他のモデルの鉄損を、モデルNo.4の鉄損に対する比率として表した。
[0105]
 図10に示すように、モデルNo.1~モデルNo.3のステータコアは、モデルNo.4のステータコアと比較して、鉄損の値が小さいことが確認された。
[0106]
 モデルNo.3のステータコアは、モデルNo.1およびモデルNo.2のステータコアと比較して鉄損が大きい。モデルNo.3のステータコアでは、図6に示すように、接着領域がティース部とコアバック部との境界の近傍に位置する。このため、接着領域に起因する劣化領域を通過する磁束が増加し、磁気抵抗が高まったと考えられる。このため、モデルNo.3のステータコアにおいて、図7に示すように接着領域をコアバック部の径方向外側に偏って配置することで、鉄損の値を低下できると考えられる。

産業上の利用可能性

[0107]
 本発明によれば、磁気特性を向上させることができる。よって、産業上の利用可能性は大である。

符号の説明

[0108]
10…回転電機、20…ステータ、21…ステータコア(積層コア)、22…コアバック部、22a…第1部位、22b…第2部位、23…ティース部、40…電磁鋼板、41,141,241,341,441,541…接着部、42,142,242,342,442,542…接着領域、43,143,243…ブランク領域、B…磁束、CL…中心線

請求の範囲

[請求項1]
 互いに積層された複数の電磁鋼板と、
 積層方向に隣り合う前記電磁鋼板同士の間に設けられ、前記電磁鋼板同士をそれぞれ接着する接着部と、を備え、
 前記電磁鋼板は、
  環状のコアバック部と、
  前記コアバック部から前記コアバック部の径方向に延びるとともに前記コアバック部の周方向に間隔をあけて配置された複数のティース部と、を有し、
 前記電磁鋼板の前記コアバック部には、前記接着部が設けられた接着領域が形成されており、
 前記接着領域は、当該接着領域に接触する前記電磁鋼板の領域を通過する磁束に沿った方向に延びる、
積層コア。
[請求項2]
 前記コアバック部は、周方向に沿って交互に並ぶ第1部位および第2部位を有し、
 前記第1部位は、前記ティース部の径方向外側において前記ティース部に対して径方向に連なり、
 前記第2部位は、周方向において前記第1部位同士の間に位置し、
 前記接着領域は、前記第1部位および前記第2部位の少なくとも一方において周方向に離散的に形成される、請求項1に記載の積層コア。
[請求項3]
 前記接着領域は、前記第1部位に形成され、
 前記接着領域の周方向両側には、前記接着領域が形成されていない、
請求項2に記載の積層コア。
[請求項4]
 前記接着領域は、前記ティース部の中心線に沿って径方向に延びる、
請求項3に記載の積層コア。
[請求項5]
 前記ティース部は、前記コアバック部から径方向の内側に延び、
 前記接着領域は、前記コアバック部の径方向外端から径方向内側に延びる、
請求項3又は4に記載の積層コア。
[請求項6]
 前記接着領域は、前記第2部位に設けられ、
 前記接着領域の径方向両側には、前記接着領域が形成されていない、
請求項2に記載の積層コア。
[請求項7]
 前記接着領域は、周方向に沿って延びる、
請求項6に記載の積層コア。
[請求項8]
 前記ティース部は、前記コアバック部から径方向の内側に延び、
 前記接着領域は、前記コアバック部の径方向外側に偏って配置される、
請求項6又は7に記載の積層コア。
[請求項9]
 前記接着領域は、1つの前記第1部位と1つの前記第2部位とに跨って設けられる、
請求項2に記載の積層コア。
[請求項10]
 前記接着部の平均厚みが1.0μm~3.0μmである、
請求項1~9の何れか一項に記載の積層コア。
[請求項11]
 前記接着部の平均引張弾性率Eが1500MPa~4500MPaである、
請求項1~10の何れか一項に記載の積層コア。
[請求項12]
 前記接着部が、エラストマー含有アクリル系接着剤からなるSGAを含む常温接着タイプのアクリル系接着剤である、
請求項1~11の何れか一項に記載の積層コア。
[請求項13]
 請求項1~12の何れか一項に記載の積層コアを備える、
回転電機。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]