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1. WO2020129916 - 紫外発光蛍光体及びその製造方法、並びに紫外励起光源

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明 細 書

発明の名称 紫外発光蛍光体及びその製造方法、並びに紫外励起光源

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005  

発明の効果

0006  

図面の簡単な説明

0007  

発明を実施するための形態

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055  

符号の説明

0056  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22  

明 細 書

発明の名称 : 紫外発光蛍光体及びその製造方法、並びに紫外励起光源

技術分野

[0001]
 本開示は、紫外発光蛍光体及びその製造方法、並びに紫外励起光源に関するものである。

背景技術

[0002]
 特許文献1には、エキシマ放電手段によって紫外光を発生させる素子に関する技術が開示されている。この素子は、放電管、放電手段、及び発光材料を備えている。放電管は、ガス充填物で満たされている放電空間を有し、紫外光に対して少なくとも部分的に透明である。放電手段は、放電空間内においてエキシマ放電を引き起こし、且つそれを維持する。発光材料は、一般式が(Y 1-x-y-zLu xSc yz)PO 4で表される母体格子を有するリン光体を含む。但し、0≦x<1、0<y≦1、0<z<0.05であり、Aはビスマス、プラセオジウム、及びネオジウムからなる群から選択される活性剤である。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特表2008-536282号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 従来、紫外光源は、光計測、殺菌・消毒用、あるいは医療用やバイオ化学用として用いられている。紫外光源には、例えばエキシマ放電等により発生した紫外光を出力するものの他に、エキシマ放電等により発生した紫外光を蛍光体に照射することにより励起された、該紫外光よりも長波長の紫外光を出力するものがある。そして、このような紫外光源においては、例えば特許文献1に記載されたような従来の組成とは異なる組成を有する紫外励起の有用な蛍光体求められている。本開示は、従来の組成とは異なる組成を有する紫外励起の有用な紫外発光蛍光体及びその製造方法、並びに紫外励起光源を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0005]
 上述した課題を解決するために、本開示の一態様による紫外発光蛍光体は、Sc x1-xPO 4結晶(但し0<x<1)を含み、第1の波長を有する紫外光を受けて第1の波長よりも長い第2の波長を有する紫外光を発生する。また、本開示の一態様による紫外発光蛍光体の製造方法は、上記いずれかの紫外発光蛍光体を製造する方法であって、イットリウム(Y)の酸化物、スカンジウム(Sc)の酸化物、リン酸若しくはリン酸化合物、及び液体を含む混合物を作製する第1工程と、液体を蒸発させる第2工程と、混合物を焼成する第3工程と、を含む。

発明の効果

[0006]
 本開示の一態様によれば、従来の組成とは異なる組成を有する紫外励起の有用な紫外発光蛍光体及びその製造方法、並びに紫外励起光源を提供できる。

図面の簡単な説明

[0007]
[図1] 一実施形態に係る紫外発光蛍光体を備える紫外励起光源10Aの構成を示す断面図であって、中心軸線を含む断面を示す。
[図2] 図1に示された紫外励起光源10AのII-II線に沿った断面図であって、中心軸線に垂直な断面を示す。
[図3] 紫外励起光源10Bの構成を示す断面図であって、中心軸線を含む断面を示す。
[図4] 図3に示された紫外励起光源10BのIV-IV線に沿った断面図であって、中心軸線に垂直な断面を示す。
[図5] 紫外励起光源10Cの構成を示す断面図であって、中心軸線を含む断面を示す。
[図6] 図5に示された紫外励起光源10CのVI-VI線に沿った断面図であって、中心軸線に垂直な断面を示す。
[図7] 蛍光体14の製造方法における各工程を示すフローチャートである。
[図8] 実施例において用いられた実験装置を概略的に示す図である。
[図9] 一実施例において得られた、焼成温度と発光強度との関係を示すグラフである。
[図10] 実施例において得られた、焼成温度毎の発光スペクトルを示すグラフである。
[図11] 実施例において得られた、P及びOを除く成分に占めるScの濃度と発光強度との関係を示すグラフである。
[図12] 図11の基になった数値を示す図表である。
[図13] Sc濃度毎の発光スペクトルを示すグラフである。
[図14] Sc濃度毎の発光スペクトルを示すグラフである。
[図15] CuKα線を用いたX線回折計によって測定された、焼成温度が互いに異なる各試料の回折強度波形を示すグラフである。
[図16] 図15に示された各焼成温度の回折強度波形における<200>面付近(2θ/θ=26°付近)の回折強度ピーク波形を拡大し、重ねて示すグラフである。
[図17] 焼成温度と<200>面の回折ピーク強度との関係を示すグラフである。
[図18] <200>面に対応する回折強度ピーク波形の半値幅と焼成温度との関係を示すグラフである。
[図19] 図18の基になった数値を示す図表である。
[図20] 比較例において得られた、焼成温度毎の発光スペクトルを示すグラフである。
[図21] 焼成温度を1600℃としたSc:YPO 4結晶の発光スペクトルG11と、焼成温度を同温度とし、Sc:YPO 4結晶にBiを更に添加した場合の発光スペクトルG12とを重ねたグラフである。
[図22] 液相法及び固相法のそれぞれを用いて作製した試料を励起して発光スペクトルを計測した結果を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0008]
 一実施形態に係る紫外発光蛍光体は、Sc x1-xPO 4結晶(但し0<x<1)を含み、第1の波長を有する紫外光を受けて第1の波長よりも長い第2の波長を有する紫外光を発生する。本開示者の実験によれば、このような組成を有する紫外発光蛍光体に第1の波長(例えば172nm付近)の紫外光を照射すると、該紫外光よりも長波長(具体的には240nm付近)の波長を有する紫外光を励起させることができる。従って、従来の組成とは異なる組成を有する紫外励起の有用な紫外発光蛍光体を提供できる。
[0009]
 上記の紫外発光蛍光体では、Scのモル組成比xが0.02以上0.6以下であってもよい。本開示者の実験によれば、Scの濃度がこのような範囲内にある場合に、紫外光の発光強度を顕著に高めることができる。
[0010]
 上記の紫外発光蛍光体では、CuKα線を用いたX線回折計によって測定される<200>面の回折強度ピーク波形の半値幅が0.25°以下であってもよい。本開示者の実験によれば、この場合に紫外光の発光強度を顕著に高めることができる。
[0011]
 また、一実施形態に係る紫外発光蛍光体の製造方法は、上記いずれかの紫外発光蛍光体を製造する方法であって、イットリウム(Y)の酸化物、スカンジウム(Sc)の酸化物、リン酸若しくはリン酸化合物、及び液体を含む混合物を作製する第1工程と、液体を蒸発させる第2工程と、混合物を焼成する第3工程と、を含む。このような製造方法によれば、上述した紫外発光蛍光体を好適に作製することができる。加えて、本開示者の実験によれば、このような液相法(溶液法ともいう)により、Yの酸化物、Scの酸化物、及びリン酸(若しくはリン酸化合物)の粉末を単に混合して焼成する方法(固相法)と比較して、紫外光の発光強度をより高めることができる。
[0012]
 上記の製造方法の第1工程では、リン酸及びリン酸化合物を除くScの酸化物の混合割合を1.2質量%以上47.8質量%以下としてもよい。本開示者の実験によれば、Scがこのような混合割合である場合に、紫外光の発光強度を顕著に高めることができる。
[0013]
 上記の製造方法の第3工程では、焼成温度を1050℃以上としてもよい。本開示者の実験によれば、この場合に紫外光の発光強度を顕著に高めることができる。
[0014]
 また、一実施形態に係る紫外励起光源は、上記いずれかの紫外発光蛍光体と、紫外発光蛍光体に第1の波長を有する紫外光を照射する光源と、を備える。この紫外励起光源によれば、上記いずれかの紫外発光蛍光体を備えることにより、従来の組成とは異なる組成を有する紫外励起の有用な発光材料を備える紫外光源を提供できる。
(実施の形態の詳細)
[0015]
 以下、添付図面を参照しながら本開示による紫外発光蛍光体及びその製造方法、並びに紫外励起光源の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[0016]
 図1は、一実施形態に係る紫外発光蛍光体を備える紫外励起光源10Aの構成を示す断面図であって、中心軸線を含む断面を示す。図2は、図1に示された紫外励起光源10AのII-II線に沿った断面図であって、中心軸線に垂直な断面を示す。図1及び図2に示されるように、紫外励起光源10Aは、真空排気された容器11と、容器11の内部に配置された電極12と、容器11の外部に配置された複数の電極13と、容器11の内面に配置された紫外発光蛍光体(以下、単に蛍光体という)14とを備えている。
[0017]
 容器11は、略円筒状といった形状を有している。容器11の中心軸方向における一端及び他端は半球状に閉じられ、容器11の内部空間15は気密に封止されている。容器11の構成材料は、例えば石英ガラスである。なお、容器11の構成材料は、蛍光体14から出力される紫外光を透過する材料であれば石英ガラスに限られない。内部空間15には、放電ガスとして例えばキセノン(Xe)が封入されている。
[0018]
 電極12は、例えば金属製の線条体であり、容器11の外部から内部空間15に導入されている。図1及び図2に示される例では、電極12は、らせん状に曲げられており、内部空間15において容器11の一端寄りの位置から他端寄りの位置まで延在している。図2に示されるように、電極12は、容器11の中心軸線に垂直な断面において、内部空間15の中央に配置されている。電極13は、例えば容器11の外壁面に密着する金属膜である。図1及び図2に示される例では、電極13は4つ設けられている。4つの電極13は、それぞれ容器11の中心軸方向に沿って延在し、互いに容器11の周方向に等間隔で並んでいる。
[0019]
 電極12と電極13との間には高周波電圧が印加され、電極12と電極13との間の空間、すなわち容器11の内部空間15には放電プラズマが形成される。上述したように、内部空間15には放電ガスが封入されているので、放電プラズマが発生すると、放電ガスがエキシマ発光し、真空紫外光が生じる。放電ガスがXeである場合、発生する真空紫外光の波長は172nmである。
[0020]
 蛍光体14は、容器11の内壁面の全面にわたって膜状に配置されている。蛍光体14は、賦活剤が添加された希土類元素を含有する酸化物結晶を含む。本実施形態では、賦活剤はスカンジウム(Sc)である。また、希土類元素を含有する酸化物結晶は、イットリウム(Y)及びリン(P)の酸化物すなわちYPO 4(イットリウムリン酸)である。すなわち、蛍光体14は、Sc x1-xPO 4結晶(但し0<x<1)を含み、一実施例ではSc x1-xPO 4結晶からなる。蛍光体14は、内部空間15において発生した真空紫外光により励起され、該真空紫外光よりも長波長(例えば241nm)の紫外光を発生する。蛍光体14から発生した紫外光は、容器11を透過して、複数の電極13の隙間から容器11の外部へ出力される。すなわち、電極12、電極13及び内部空間15内の放電ガスは、第1の波長(例えば172nm)を有する紫外光を蛍光体14に照射する光源を構成する。そして、蛍光体14は、第1の波長を有する紫外光を受けて、該第1の波長よりも長い第2の波長(例えば241nm)を有する紫外光を発生する。蛍光体14の膜厚は、例えば0.1μm以上1mm以下である。
[0021]
 後述する実施例に示されるように、P及びOを除く成分に占めるScのモル組成比、すなわちScの組成xは、0.02以上であってもよく、0.6以下であってもよい。換言すると、P及びOを除く成分に占めるScの濃度(以下、単にSc濃度と称することがある)は、2mol%以上であってもよく、60mol%以下であってもよい。この場合、紫外光の発光強度(言い換えると、第1の波長を有する紫外光のエネルギーに対する、第2の波長を有する紫外光への変換効率)を顕著に高めることができる。或いは、Scの組成xは、0.03以上であってもよく、0.04以上であってもよく、或いは0.05以上であってもよい。換言すると、Sc濃度は、3mol%以上であってもよく、4mol%以上であってもよく、或いは5mol%以上であってもよい。このような濃度レベルでは、濃度が大きくなるほど紫外光の発光強度を更に高めることができる。また、Scの組成xは、0.5以下であってもよく、0.4以下であってもよく、或いは0.3以下であってもよい。換言すると、Sc濃度は、50mol%以下であってもよく、40mol%以下であってもよく、或いは30mol%以下であってもよい。このような濃度レベルでは、濃度が小さくなるほど紫外光の発光強度を更に高めることができる。
[0022]
 蛍光体14の結晶化の度合いは、焼結温度に応じて変化する。後述する実施例に示されるように、CuKα線(波長1.54Å)を用いたX線回折(X-ray diffraction:XRD)計によって測定される蛍光体14の<200>面の回折強度ピーク波形の半値幅は、0.25°以下であってもよい。この場合もまた、紫外光の発光強度を顕著に高めることができる。或いは、この半値幅は、0.20°以下であってもよく、0.18°以下であってもよく、0.16°以下であってもよい。この場合、紫外光の発光強度を更に高めることができる。
[0023]
 図3は、紫外発光蛍光体を備える別の紫外励起光源10Bの構成を示す断面図であって、中心軸線を含む断面を示す。図4は、図3に示された紫外励起光源10BのIV-IV線に沿った断面図であって、中心軸線に垂直な断面を示す。図3及び図4に示されるように、紫外励起光源10Bは、容器11と、電極12と、複数の電極13と、蛍光体14とを備えている。この紫外励起光源10Bと上述した紫外励起光源10Aとの相違点は、容器11及び電極12の形状である。
[0024]
 すなわち、紫外励起光源10Bの容器11は二重円筒状を呈しており、外側円筒部11aと、内側円筒部11bとを含む。内側円筒部11bと外側円筒部11aとの隙間は、中心軸方向における容器11の両端において閉じられており、気密に封止された内部空間15を構成する。また、電極12は、内側円筒部11bの内側に配置されている。例えば、電極12は内側円筒部11bの内壁面に形成された金属膜である。電極12は、内側円筒部11bの一端寄りの位置から他端寄りの位置まで延在している。
[0025]
 図5は、紫外発光蛍光体を備える別の紫外励起光源10Cの構成を示す断面図であって、中心軸線を含む断面を示す。図6は、図5に示された紫外励起光源10CのVI-VI線に沿った断面図であって、中心軸線に垂直な断面を示す。図5及び図6に示されるように、紫外励起光源10Cは、容器11と、電極12と、電極13と、蛍光体14とを備えている。この紫外励起光源10Cと上述した紫外励起光源10Aとの相違点は、電極12,13の態様である。
[0026]
 すなわち、紫外励起光源10Cの電極12は、円筒状の容器11の外側に配置されている。一例では、電極12は容器11の外壁面上に形成された金属膜である。また、電極13は、容器11の外壁面上において、中心軸線を挟んで電極12と対向する位置に配置されている。電極12,13は、中心軸方向に沿って延在している。
[0027]
 上述した紫外励起光源10B,10Cにおいても、電極12と電極13との間に高電圧が印加されると、容器11の内部空間15には放電プラズマが形成される。そして、放電ガスがエキシマ発光し、真空紫外光が生じる。蛍光体14は、内部空間15において発生した真空紫外光により励起され、該真空紫外光よりも長波長の紫外光を発生する。蛍光体14から発生した紫外光は、容器11の外側円筒部11aを透過して、複数の電極13の隙間、若しくは電極12,13の隙間から容器11の外部へ出力される。
[0028]
 図7は、蛍光体14の製造方法に含まれる各工程を示すフローチャートである。まず、第1工程S11において、Yの酸化物(Y 23)、Scの酸化物(Sc 23)、リン酸(H 3PO 4)若しくはリン酸化合物(例えばリン酸二水素アンモニウム(NH 42PO 4))及び液体(例えば純水)を含む混合物を作製する。具体的には、容器内に収容された液体内にYの酸化物、Scの酸化物、及びリン酸を投入し、十分に攪拌する。攪拌に要する時間は、例えば24時間である。これにより、容器内においてリン酸及び各酸化物を相互に反応させ、熟成させる。
[0029]
 この第1工程S11においては、Scの酸化物の混合割合を1.2質量%以上47.8質量%以下としてもよい。これにより、P及びOを除く成分に占めるScの濃度が2mol%以上60mol%以下である(すなわちScの組成xが0.02以上0.6以下である)蛍光体14を好適に作製することができる。或いは、Scの酸化物の混合割合を1.9質量%以上としてもよく、2.5質量%以上としてもよく、3.1質量%以上としてもよい。また、Scの酸化物の混合割合を37.9質量%以下としてもよく、28.9質量%以下としてもよく、20.7質量%以下としてもよい。
[0030]
 次に、第2工程S12において、上記混合物を加熱して液体を蒸発させる。これにより、上記混合物から液体を除いた粉末状の混合物が作製される。一例では、加熱温度は100~300℃の範囲内であり、加熱時間は1~5時間の範囲内である。
[0031]
 続いて、第3工程S13において、混合物の焼成(熱処理)を行う。具体的には、まず、坩堝に入れた混合物を熱処理炉(例えば電気炉)内に設置する。そして、大気中において混合物の熱処理を行い、これらを焼成する。このときの焼成温度は例えば1050℃以上であり、また1700℃以下である。焼成時間は例えば1~100時間の範囲内である。これにより、混合物の構成材料が結晶化する。なお、焼成温度は例えば1100℃以上であってもよく、1200℃以上であってもよく、1300℃以上であってもよく、1400℃以上であってもよく、1500℃以上であってもよい。一実施例では、焼成温度は1600℃である。1600℃以下の温度範囲においては、焼成温度が高くなるほど蛍光体14の結晶化の度合いが高まり、紫外光の発光強度を更に高めることができる。
[0032]
 続いて、第4工程S14において、焼成後の混合物を容器11の内壁面上に層状に配置する。このとき、粉末状の混合物をそのまま容器11の内壁面上に載せてもよいが、沈降法を用いてもよい。沈降法とは、アルコール等の液体中に粉末状の混合物を投入し、超音波等を用いて混合物を液体内にて分散させ、液体の底部に配置された容器11の内壁面上に混合物を自然に沈降させたのち乾燥させる方法である。このような方法を用いることによって、均一な密度及び厚さでもって混合物を容器11の内壁面上に堆積させることができる。こうして、蛍光体14が容器11の内壁面上に形成される。
[0033]
 続いて、第5工程S15において、蛍光体14の焼成(熱処理)を再び行ってもよい。この焼成は、アルコールを充分に蒸発させる目的と、容器11と混合物、および混合物同士の付着力を増加させる目的との為に大気中において行われる。このときの焼成温度は例えば1100℃であり、焼成時間は例えば2時間である。
[0034]
 なお、上記の説明では混合物の焼成ののちに容器11の内壁面上に該混合物を堆積させているが、焼成前の混合物を容器11の内壁面上に堆積させたのちに混合物の焼成を行ってもよい。その場合、混合物の容器11の内壁面上への堆積は上述した沈降法により行ってもよく、結合剤として有機物と混合して塗布を行った後に、焼成してそれらを除去する方法でもよい。
[0035]
 以上に説明した本実施形態の蛍光体14及びその製造方法、並びに紫外励起光源10A~10Cによって得られる効果について説明する。上述したように、蛍光体14の蛍光体14は、Sc x1-xPO 4結晶(但し0<x<1)を含む。後述する本開示者の実験によれば、このような組成を有する蛍光体14に例えば波長172nmの真空紫外線を照射すると、240nm付近(実験では241nm)の波長を有する紫外光を励起させることができる。従って、本実施形態によれば、従来の組成とは異なる組成を有する紫外励起の有用な蛍光体14を提供できる。
[0036]
 また、本実施形態に係る蛍光体14の製造方法は、図7に示されたように、Yの酸化物、Scの酸化物、リン酸、及び液体を含む混合物を作製する第1工程S11と、この混合物を加熱して液体を蒸発させる第2工程S12と、混合物を焼成する第3工程S13とを含む。このような製造方法によれば、蛍光体14を好適に作製することができる。加えて、後述する実施例に示されるように、このような液相法(溶液法ともいう)により、Yの酸化物、Scの酸化物、及びリン酸の粉末を単に混合して焼成する方法(固相法)と比較して、紫外光の発光強度をより高めることができる。
[0037]
 上述したように、YPO 4結晶に含まれるScの濃度は2mol%以上60mol%以下であってもよい。また、その為に、第1工程S11において、Scの酸化物の混合割合を1.2質量%以上47.8質量%以下としてもよい。後述する本開示者の実験によれば、Scの濃度がこのような範囲内にある場合に、紫外光の発光強度を顕著に高めることができる。
[0038]
 上述したように、CuKα線を用いたX線回折計によって測定される<200>面の回折強度ピーク波形の半値幅は0.25°以下であってもよい。また、その為に、第3工程S13において、焼成温度を1050℃以上としてもよい。後述する本開示者の実験によれば、このような場合に紫外光の発光強度を顕著に高めることができる。
[0039]
 また、本実施形態による紫外励起光源10A~10Cは、蛍光体14と、蛍光体14に紫外光を照射する光源(電極12,13及び放電ガス)とを備える。この紫外励起光源10A~10Cによれば、蛍光体14を備えることにより、従来の組成とは異なる組成を有する紫外励起の有用な発光材料を備える紫外光源を提供できる。
(第1実施例)
[0040]
 ここで、上記実施形態の第1実施例について説明する。本開示者は、次に述べる方法によって、蛍光体14としての複数の試料(Sc:YPO 4)を実際に作製した。まず、Y 23、Sc 23、及びH 3PO 4を純水に混ぜて、複数の混合物を作製した。このとき、各試料のP及びOを除く成分に占めるScの濃度がそれぞれ0mol%、2mol%、5mol%、8mol%、10mol%、12mol%、15mol%、20mol%、40mol%、60mol%、80mol%、及び100mol%となるように、各混合物におけるSc 23の割合を互いに異ならせた。次に、各混合物を24時間かけて十分に攪拌し、Y 23、Sc 23、及びH 3PO 4を相互に反応させ、熟成させた。その後、混合物を加熱して純水を蒸発させ、粉末状の混合物を得た。続いて、大気中での混合物の焼成を行った。このとき、Scの濃度を5mol%とした試料については、更に複数に分け、そのうち1つの試料については焼成を行わず、また他の試料それぞれについては焼成温度を800℃、1000℃、1100℃、1200℃、1400℃、1500℃、1600℃、及び1700℃とした。また、他のSc濃度の試料のうち、2mol%、8mol%、10mol%、12mol%、15mol%、及び20mol%の試料に関しては焼成温度を1600℃とした。0mol%、40mol%、及び60mol%の試料に関しては、焼成温度を1400℃および1600℃の2通りとし、80mol%及び100mol%の試料に関しては焼成温度を1400℃とした。焼成時間は2時間であった。その後、前述した沈降法によって、円板状の石英基板上に、試料を層状に堆積させた。その後、1100℃で大気中2時間の焼成を行った。
[0041]
 図8は、本実施例において用いられた実験装置を概略的に示す図である。この装置30は、石英基板34上の試料35に対向して配置される紫外光源32を備えている。紫外光源32は、放電ガスとしてのXeがガラス容器内に封入されたエキシマランプ(浜松ホトニクス製)である。紫外光源32の発光波長は172nmである。この紫外光源32から、石英基板34上の試料35に紫外光UV1を照射した。石英基板34の裏面(試料35が配置された面とは反対の面)に光ファイバ36の一端を対向させ、光ファイバ36の他端を分光検出器37(浜松ホトニクス製、Photonic Multi-Analyzer PMA-12、型番C10027-01)に接続した。紫外光UV1により試料35が励起されて生じた紫外光UV2のうち石英基板34を透過した紫外光UV2を、光ファイバ36を介して分光検出器37に取り込み、計測を行った。
[0042]
 図9は、装置30によって得られた、焼成温度と発光強度との関係を示すグラフである。また、図10は、装置30によって得られた、焼成温度毎の発光スペクトルを示すグラフである。図9及び図10から明らかなように、焼成温度が1600℃のときに発光強度が最も大きくなり、1600℃までは焼成温度が高くなるほど発光強度が次第に大きくなる。特に、1000℃から1100℃にかけて、発光強度は顕著に増大している。すなわち、焼成温度を1050℃以上とすることにより、発光強度を顕著に高めることができる。なお、焼成温度が1600℃を超えると発光強度は低下するが、焼成温度が1700℃である場合であっても、十分な発光強度が得られている。
[0043]
 図11は、装置30によって得られた、P及びOを除く成分に占めるScの濃度と発光強度との関係を示すグラフである。なお、図中の〇は焼成温度が1600℃である場合のプロットであり、△は焼成温度が1400℃である場合のプロットである。図12は、図11の基になった数値を示す図表である。また、図13及び図14は、装置30によって得られた、Sc濃度毎の発光スペクトルを示すグラフである。図11~図14から明らかなように、Sc濃度が5mol%のときに発光強度が最も大きくなり、2mol%から60mol%の範囲内では比較的高い発光強度が得られる。但し、40mol%よりも大きい範囲では、Sc濃度が高くなるほど発光強度は次第に減少する。
[0044]
 ここで、焼成温度と試料の結晶性との関係について調べた結果について説明する。図15は、CuKα線を用いたX線回折計によって測定された、焼成温度が互いに異なる各試料(Sc濃度は5mol%)の回折強度波形を示すグラフである。図中には、各回折強度波形に対応する焼成温度が併記されている。また、図中に記載された複数の数値Aは、各回折強度波形のピークに対応する結晶面方位を表している。図15を参照すると、焼成温度が400℃を超えた辺りで、僅かに回折線が出現することがわかる。そして、焼成温度が高くなるほど、回折線が次第に明確となり、回折ピーク強度が増大する。
[0045]
 図16は、図15に示された各焼成温度の回折強度波形における<200>面付近(2θ/θ=26°付近)の回折強度ピーク波形を拡大し、重ねて示すグラフである。また、図17は、焼成温度と<200>面の回折ピーク強度との関係を示すグラフである。図17を参照すると、焼成温度が高くなるほど<200>面の回折ピーク強度が次第に増大するが、焼成温度1100℃辺りで飽和し始め、焼成温度1200℃辺りで完全に飽和することがわかる。
[0046]
 また、図18は、<200>面に対応する回折強度ピーク波形の半値幅と焼成温度との関係を示すグラフである。また、図19は図18の基になった数値を示す図表である。図18及び図19を参照すると、焼成温度が高くなるほど<200>面の回折強度ピーク波形の半値幅が次第に狭くなるが、焼成温度1400℃辺りで飽和することがわかる。このときの半値幅はおよそ0.16°である。また、図18を参照すると、焼成温度が1050℃である場合の半値幅は0.25°、焼成温度が1100℃である場合の半値幅はおよそ0.2°であることがわかる。
[0047]
 回折ピーク強度はX線の強度や照射時間といった照射条件に依存して変化するが、回折強度ピーク波形の半値幅は、結晶性に応じて定まる定性的な値であるため、X線の照射条件には依存しない。すなわち、試料作製時の焼成温度は回折強度ピーク波形の半値幅に置き換えることができ、回折強度ピーク波形の半値幅を測定することによって、試料作製時の焼成温度を知ることができる。上記の実施形態において述べた、蛍光体14における<200>面の回折強度ピーク波形の半値幅は、蛍光体14の作製時における第3工程S13の焼成温度に対応する。
(第1比較例)
[0048]
 続いて、上記実施形態の比較例について説明する。本開示者は、賦活剤としてScに加えてBiを添加した複数の試料を作製し、その発光特性について調べた。なお、作製方法及び実験装置は、材料にBi 23を加えたことを除いて、上記実施例と同様である。但し、P及びOを除く成分に占めるScの濃度を5mol%とし、Biの濃度を0.5mol%とした。また、各試料の焼成温度を1000℃、1200℃、1400℃、及び1600℃とした。図20は、本実施例において得られた、焼成温度毎の発光スペクトルを示すグラフである。図20を参照すると、Biを添加した場合であっても、240nm付近の波長を有する紫外光を試料が発光していることがわかる。また、焼成温度が高くなるほど発光強度が増大し、1600℃において最大の発光強度が得られていることがわかる。
[0049]
 但し、Biを添加した場合と添加しない場合とで、次のような相違がある。図21は、焼成温度を1600℃としたSc:YPO 4結晶の発光スペクトルG11と、焼成温度を同温度とし、Sc:YPO 4結晶にBiを更に添加した場合の発光スペクトルG12とを重ねたグラフである。図21を参照すると、それぞれ同程度のピーク強度が得られているが、発光スペクトルG11のピーク波形の半値幅は、発光スペクトルG12のピーク波形の半値幅よりも大きい。すなわち、これらの発光スペクトルG11,G12をそれぞれ積分して得られる総発光量に関しては、Biを添加しないSc:YPO 4結晶の方が、Sc:YPO 4結晶にBiを添加した場合よりも大きくなる。
(第2実施例)
[0050]
 次に、上記実施形態の第2実施例について説明する。本開示者は、液相法及び固相法のそれぞれを用いて、蛍光体14としての複数の試料(Sc:YPO 4)を実際に作製した。
<液相法での作成>
[0051]
 5mol%のSc:YPO 4を2グラム作製するために、Sc 23の粉末を0.038グラム、Y 23の粉末を1.181グラム、それぞれ秤量した。これらをH 3PO 4(液体)中で混合して混合物を作製した。その後、電気炉にてこの混合物を加熱することにより(大気中1600℃)、焼成を行った。
<固相法での作成>
[0052]
 5mol%のSc:YPO 4を2グラム作製するために、Sc 23の粉末を0.038グラム、Y 23の粉末を1.181グラム、NH 42PO 4の粉末を1.266グラム、それぞれ秤量した。これらを混合して混合物を作製し、その後、電気炉にてこの混合物を加熱することにより(大気中1600℃)、焼成を行った。
[0053]
 続いて、液相法及び固相法のそれぞれを用いて作製した試料を石英基板上に膜状に塗布し、これをXeランプ(波長172nm)により励起して発光スペクトルを計測した。図22は、その計測結果を示すグラフである。同図において、グラフG1は液相法による結果を示し、グラフG2は固相法による結果を示す。同図に示されるように、液相法では、発光強度のピーク値および全体の発光量ともに、固相法よりも大きくなった。
[0054]
 本開示による紫外発光蛍光体及びその製造方法、並びに紫外励起光源は、上述した実施形態の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
[0055]
 上記実施形態では、紫外発光蛍光体に紫外光を照射する光源としてエキシマランプを例示したが、光源はこれに限られず、紫外光を出力可能な他の様々な発光装置を利用できる。また、上記実施形態ではBiを含まないSc x1-xPO 4結晶を例示したが、上記実施形態の効果を奏する範囲内において、微量のBiを含むことを妨げない。

符号の説明

[0056]
 10A,10B,10C…紫外励起光源、11…容器、12,13…電極、14…紫外発光蛍光体、30…装置、32…紫外光源、34…石英基板、35…試料、36…光ファイバ、37…分光検出器、UV1,UV2…紫外光。

請求の範囲

[請求項1]
 Sc x1-xPO 4結晶(但し0<x<1)を含み、第1の波長を有する紫外光を受けて前記第1の波長よりも長い第2の波長を有する紫外光を発生する、紫外発光蛍光体。
[請求項2]
 Scのモル組成比xが0.02以上0.6以下である、請求項1に記載の紫外発光蛍光体。
[請求項3]
 CuKα線を用いたX線回折計によって測定される<200>面の回折強度ピーク波形の半値幅が0.25°以下である、請求項1または2に記載の紫外発光蛍光体。
[請求項4]
 請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外発光蛍光体を製造する方法であって、
 イットリウム(Y)の酸化物、スカンジウム(Sc)の酸化物、リン酸若しくはリン酸化合物、及び液体を含む混合物を作製する第1工程と、
 前記液体を蒸発させる第2工程と、
 前記混合物を焼成する第3工程と、
 を含む、紫外発光蛍光体の製造方法。
[請求項5]
 前記第1工程において、リン酸及びリン酸化合物を除くScの酸化物の混合割合を1.2質量%以上47.8質量%以下とする、請求項4に記載の紫外発光蛍光体の製造方法。
[請求項6]
 前記第3工程において、焼成温度を1050℃以上とする、請求項4または5に記載の紫外発光蛍光体の製造方法。
[請求項7]
 請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外発光蛍光体と、
 前記紫外発光蛍光体に前記第1の波長を有する紫外光を照射する光源と、
 を備える、紫外励起光源。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]