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1. WO2020129854 - 導電性高分子組成物

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明 細 書

発明の名称 導電性高分子組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008  

発明を実施するための形態

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071  

実施例

0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : 導電性高分子組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、導電性高分子組成物に関する。

背景技術

[0002]
 導電性高分子の用途の一つとしてコンデンサの固体電解質が挙げられる。より過酷な環境下での使用が求められており、高熱・高湿環境下における信頼性が必要となっている。
[0003]
 特許文献1には、PEDOT/PSS膜を固体電解質として用いたコンデンサが開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2018-22727号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 しかし、PEDOT/PSSを代表とする導電性高分子は湿熱条件下においては、構造の変化が起こるため導電率の低下が発生し、また塗膜の基材からの剥がれ、塗膜の割れなどの状態変化が起きるなどの問題があった。
[0006]
 本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、塗膜耐湿熱性に優れた導電性高分子組成物を提供するものである。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明によれば、溶媒と、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子組成物であって、ビニルスルホン基を含有するビニルスルホン基含有化合物が前記導電性高分子のドーパント又は添加剤として含有され、前記ビニルスルホン基含有化合物が前記添加剤として含有される場合、前記ビニルスルホン基含有化合物は、複数の前記ビニルスルホン基を含有する、導電性高分子組成物が提供される。
[0008]
 本発明者が塗膜耐湿熱性を高めるべく鋭意検討を行ったところ、ビニルスルホン基含有化合物を導電性高分子のドーパントとして又は導電性高分子組成物の添加剤として含有させることによって、塗膜耐湿熱性が向上することが見出され、本発明の完成に到った。

発明を実施するための形態

[0009]
 以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
[0010]
1.導電性高分子組成物
 本発明の一実施形態の導電性高分子組成物は、溶媒と、π共役系導電性高分子を含む。以下、各構成要素について詳述する。
[0011]
1-1.ビニルスルホン基含有化合物
 本実施形態の導電性高分子組成物は、ビニルスルホン基を含有するビニルスルホン基含有化合物が前記導電性高分子のドーパント又は添加剤として含有される点が特徴である。
[0012]
 ビニルスルホン基は、化学式(4)で表される官能基である。
[化4]


[0013]
 ビニルスルホン基のビニル基は反応性が高くないので、架橋開始温度未満の温度ではほとんど又は全く架橋反応が進行しない。このため、本実施形態の導電性高分子組成物は貯蔵安定性が優れている。架橋開始温度は、例えば140℃である。
[0014]
 ビニルスルホン基のビニル基は、架橋開始温度以上に加熱すると、熱のラジカル重合によって架橋反応を行う。架橋反応によって網目構造が形成されて塗膜が安定化されるので、塗膜耐湿熱性が向上する。
[0015]
 また、ビニルスルホン基は、親水性が高いために導電性高分子と馴染みやすい。このため、本実施形態の導電性高分子組成物を用いてコンデンサの固体電解質を形成すると、容量出現率が高くなりやすい。
[0016]
 ビニルスルホン基含有化合物が導電性高分子のドーパントとして含有される場合は、ビニルスルホン基含有化合物は、ビニルスルホン酸のようなビニルスルホン基を有する一価酸、又はそのアルカリ金属塩等であることが好ましい。ビニルスルホン基含有化合物がドーパントとしてπ共役系高分子と強固に結合しているので、ビニルスルホン基含有化合物のビニル基の数が1つであっても架橋反応によって網目構造を形成することができる。
[0017]
 一方、ビニルスルホン基含有化合物が添加剤として含有される場合は、ビニルスルホン基含有化合物は、複数のビニルスルホン基を含有することが必須である。この場合、ビニルスルホン基含有化合物によって形成された網目構造中に導電性高分子が補足されることによって塗膜が安定化される。ビニルスルホン基含有化合物は、一般式(3)で表される化合物であることがさらに好ましい。
[0018]
[化3]


[0019]
 一般式(3)中、Rは原子又は原子団であり、Rの主鎖は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択される1又は複数種の原子によって構成され、好ましくは、炭素原子、窒素原子、及び酸素原子から選択される1又は複数種の原子によって構成され、さらに好ましくは、炭素原子及び窒素原子から選択される1又は複数種の原子によって構成され、さらに好ましくは、炭素原子によって構成される。
[0020]
 Rの主鎖の原子数は、例えば1~20であり、好ましくは、1~10であり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
[0021]
 Rの側鎖は、Rの主鎖について列挙した原子、又は水素原子によって構成される。
[0022]
 Rの分子量は、12~1000であることが好ましく、具体的には例えば、12、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
[0023]
 Rは、ビニルスルホン基以外のビニル基を有さないことが好ましい。ビニルスルホン基以外のビニル基を有すると、貯蔵安定性が悪くなる場合があるからである。
[0024]
 Rの具体例としては、以下の構造を有するものが挙げられる。
(a)アルキレン基
(b)アルキレン基の両端にアミド基が結合(好ましくは、アミド基の窒素原子が結合)した構造の原子団
(c)構造(b)の原子団の両端のアミド基に別のアルキレン基が結合した構造の原子団
[0025]
 Rとしては、構造(a)~(c)の片端又は両端に別の原子又は原子団が結合した原子団であってもよく、構造(a)~(c)の両端がビニルスルホン基の硫黄原子に結合したものであってもよい。
[0026]
 一般式(3)で表されるビニルスルホン基含有化合物の具体例としては、N,N'-エチレンビス[2-(ビニルスルホニル)アセトアミド]、N,N'-トリメチレンビス[2-(ビニルスルホニルアセトアミド]、ビス(ビニルスルホニル)メタン、1,2-ビス(ビニルスルホニル)エタン、1,4-ビス(ビニルスルホニル)ブタン等が挙げられる。
[0027]
1-2.溶媒
 溶媒は、導電性高分子を溶解又は分散可能なものであれば特に限定されないが、有機溶媒を含むことが好ましい。ビニルスルホン基含有化合物のビニル基を架橋させる際に溶媒が残留している必要があるので、溶媒は、沸点が架橋開始温度(例えば140℃)以上である高沸点溶媒を含有することが好ましい。また、溶媒中の高沸点溶媒の割合は、50体積%以上が好ましく、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100体積%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
[0028]
 高沸点溶媒としては、プロピレンカーボネート(カーボネート類)、γブチロラクトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
[0029]
 溶媒は、高沸点溶媒のみを含んでいてもよいが、高沸点溶媒以外にも、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸系溶媒などを含んでもよい。
[0030]
 導電性高分子組成物のうち、溶媒を除いた不揮発分は、特に制限されないが、例えば0.1質量%以上20.0質量%以下である。具体的には、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、5.0、10.0、15.0、20.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
[0031]
 溶媒は、上記有機溶媒以外に水を含んでも良いが、基材密着性の観点から含水率は溶媒全体に対して50%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましい。
[0032]
1-2.π共役系導電性高分子
 本発明のπ共役系導電性高分子は、π共役系高分子がドーパントによってドーピングされて構成される。
[0033]
 π共役系高分子としては、π共役系を有する任意の高分子が挙げられ、例えば、アニリン、ピロール、チオフェン又はその誘導体を骨格に含む高分子が挙げられ、チオフェン又はその誘導体を骨格に含む高分子が好ましい。この場合、ドープ状態、未ドープ状態における湿度以外の温度や酸素などに対する環境安定性が優れているからである。
[0034]
 ドーパントとしては、π共役系高分子に導電性を付与可能な任意の化合物が挙げられ、高分子ドーパントと低分子ドーパントの何れであってもよい。高分子ドーパントとしては、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等の多価酸が例示される。高分子ドーパントとしては、π共役系高分子から電子を受け取ってポリアニオンとなるものが好ましい。低分子ドーパントとしては、ビニルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸、テトラフルオロホウ酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフルオロメタンスルホンイミド等の一価酸、又はそのアルカリ金属塩等が挙げられる。
[0035]
 低分子ドーパントとしては、π共役系高分子から電子を受け取ってモノアニオンとなるものが好ましく、スルホ基を有するモノアニオンが好ましく、アルキル鎖とスルホ基が結合した構造を有するモノアニオンが更に好ましい。モノアニオンとなるドーパントを用いると導電性高分子の導電率が向上しやすいので、モノアニオンとなるドーパントを用いることが好ましい。
[0036]
 ビニルスルホン基含有化合物が添加剤として含有されない場合、ビニルスルホン基含有化合物をドーパントとして含有させることが必要である。この場合、ドーパントとして、ビニルスルホン基含有化合物以外の化合物を含んでもよい。ドーパント全体に対するビニルスルホン基含有化合物の割合は、50mol%以上であることが好ましく、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この割合が小さすぎると、ビニル基による架橋が十分に行われず、塗膜耐湿熱性の向上が不十分になる場合がある。
[0037]
 ビニルスルホン基含有化合物が添加剤として含有されている場合、ビニルスルホン基含有化合物はドーパントとして含有されていてもいなくてもよい。
[0038]
 導電性高分子は、一般式(1)又は下記一般式(2)で表される構成単位の少なくとも1つを有するものが好ましい。この導電性高分子に含まれるπ共役系高分子は、R を有することによって溶媒への分散性が高められている。
[0039]
[化1]



[0040]
 一般式(1)及び(2)中、R は、それぞれ置換基を有していてもよい、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、芳香族基、又は複素環基を表す。R は、それぞれ酸素原子又は硫黄原子であり、R は、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、芳香族基、又は複素環基を表す。A は、ドーパント由来のモノアニオンである。nは、2以上300以下である。
[0041]
 前記炭素数1以上12以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状等のいずれでもよく、例えば、炭素数1以上8以下、炭素数1以上6以下、炭素数1以上4以下等であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等があげられる。
[0042]
 前記炭素数1以上12以下のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状等のいずれでもよく、例えば、炭素数1以上8以下、炭素数1以上6以下、炭素数1以上4以下等である。
[0043]
 前記炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基としては、炭素数1以上8以下、炭素数1以上6以下、炭素数1以上4以下等があげられる。
[0044]
 前記芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基等の他にも各種の縮合環基をあげることができる。縮合環基としては、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環等があげられる。
[0045]
 前記複素環基としては例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環、エポキシ環、アジリジン環、チイラン環、オキセタン環、アゼチジン環、チエタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジン環、テトラヒドロチオフェン環、スルホラン環、チアゾリジン環、ε-カプロラクトン環、ε-カプロラクタム環、ピペリジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、1,3-ジオキサン環、1,4-ジオキサン環、トリオキサン環、テトラヒドロチオピラン環、チオモルホリン環、チオモルホリン-1,1-ジオキシド環、ピラノース環、ジアザビシクロ[2,2,2]-オクタン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、オキサントレン環、チオキサンテン環、フェノキサチイン環から導出される1価の基等があげられる。
[0046]
 R 又はR が有していてもよい置換基としては例えば、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、芳香族基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、アルデヒド基、アミノ基、炭素数3以上8以下のシクロアルキル基等があげられ、ヒドロキシ基、カルボキシル基が好ましい。
[0047]
 導電性高分子が有する構成単位(1)及び(2)の数としては特に制限されないが、好ましくは2以上300以下である。具体的には例えば、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200又は300であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
[0048]
 導電性高分子中に含まれる構成単位(1)及び(2)の含有割合は、一般式(5)で表されるチオフェン誘導体とアルデヒドの添加量の比によって調整することができる。チオフェン誘導体とアルデヒドの添加量のモル比(チオフェン誘導体/アルデヒド)は、例えば1/1、2/1、3/1、4/1、5/1等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよいが、可溶性と導電性のバランスの観点から1/1~4/1の比が好ましく、1/1~2/1の比がより好ましい。
[0049]
[化5]


[0050]
 導電性高分子を合成する方法としては、特に限定されないが、例えば、チオフェン誘導体とアルデヒドに、ドーパントと酸化剤を加え不活性ガス雰囲気下の溶媒中で、加熱撹拌して重合することで得ることができる。また、酸化剤の分解促進剤を加えても良い。
[0051]
 チオフェン誘導体に対するドーパントのモル比(ドーパント/チオフェン誘導体)は、例えば0.01~0.5であり、好ましくは0.1~0.5である。このモル比は、具体的に例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このモル比が小さすぎると導電性高分子の導電性が低くなりすぎたり、ドーパントがビニルスルホン基含有化合物である場合には架橋による網目構造が十分に形成されず、塗膜耐湿熱性が不十分になる場合がある。
[0052]
 酸化剤としては、特に限定されないが、重合反応が進行する酸化剤であればよく、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、水酸化鉄(III)、テトラフルオロホウ酸鉄(III)、ヘキサフルオロリン酸鉄(III)、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、ヘキサフルオロリン酸銅(II)およびオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの有機過酸化物等があげられる。
[0053]
 溶媒としては、特に限定されないが、ヘテロ環化合物とアルデヒド誘導体の反応が進行する溶媒であればよく、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、ヘプタン、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル等のグリコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸系溶媒等があげられる。酸化剤の効率から、非プロトン性溶媒であることが好ましい。
[0054]
1-3.添加剤
<ビニルスルホン基含有化合物>
 導電性高分子のドーパントがビニルスルホン基含有化合物でない場合には、添加剤として、ビニルスルホン基含有化合物を添加する。ビニルスルホン基含有化合物は、複数のビニルスルホン基を含有する化合物であることが好ましい。この場合、ビニルスルホン基含有化合物同士の反応によって網目構造が形成されて塗膜が安定化される。導電性高分子組成物の不揮発分全体に対する添加剤の割合は、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がさらに好ましい。添加剤の割合は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この割合が小さすぎると塗膜耐湿熱性が十分に向上しない場合があり、この割合が大きすぎると導電率が低くなる場合がある。
[0055]
<多官能チオール>
 導電性高分子組成物は、多官能チオールを含有することが好ましい。多官能チオールは、複数のチオール基を有する化合物である。ビニルスルホン基のビニル基は反応性が高くないので、加熱しても架橋反応が十分に進行しない場合がある。チオール基は、ビニルスルホン基のビニル基に対して、マイケル付加の求核剤として機能する。このため、多官能チオールの複数のチオール基が別々のビニル基と付加反応することによって架橋反応の進行が促進される。
[0056]
 多官能チオールとしては、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)のような2官能チオール、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)のような3官能チオール、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)のような4官能チオール、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)のような6官能チオールなどが挙げられる。
[0057]
 多官能チオールは、ビニル基に対するチオール基のモル比(チオール基/ビニル基)が0.1~10となるように添加することが好ましい。このモル比は、好ましくは、0.3~3であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このモル比が小さすぎると架橋反応の進行が不十分になる場合があり、このモル比が大きすぎると導電性高分子の導電性が低くなる場合がある。
[0058]
<塩基性化合物>
 導電性高分子組成物は、アミン化合物等の塩基性化合物を含有しないことが好ましい。塩基性化合物がビニル基と反応しやすいので、塩基性化合物の添加によって貯蔵安定性が低下するからである。アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、芳香族アミン、複素環式アミンが挙げられる。
[0059]
 なお、貯蔵安定性に対して深刻な提供を与えない程度であれば塩基性化合物の添加は許容されるが、その場合、ビニル基に対する、塩基性化合物の塩基性基のモル比(塩基性基/ビニル基)が0.3以下であることが好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
[0060]
<ビニルスルホン基含有化合物以外のビニル化合物>
 導電性高分子組成物は、ビニルスルホン基含有化合物以外のビニル化合物(「他のビニル化合物」)を含有しないことが好ましい。他のビニル化合物は、比較的低い温度で重合反応が進行するので、他のビニル化合物の添加によって貯蔵安定性が低下するからである。
[0061]
 他のビニル化合物としては、ビニル基が1つの単官能ビニル化合物と、ビニル基が複数である多官能ビニル化合物が挙げられる。後者の場合、複数のビニル基による架橋反応が進行しやすいので、貯蔵安定性に対する悪影響がより顕著である。
[0062]
 他のビニル化合物は、ビニルスルホン基含有化合物のビニル基に対する他のビニル化合物のビニル基のモル比(他のビニル化合物/ビニルスルホン基含有化合物)が0.3以下であることが好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
[0063]
2.導電性高分子薄膜の製造方法
 本発明の一実施形態の導電性高分子薄膜の製造方法は、薄膜形成工程を備える。
[0064]
 薄膜形成工程では、「1.導電性高分子組成物」で説明した導電性高分子組成物を基材上に塗布した後に熱処理を行って、ビニルスルホン基のビニル基を架橋させると共に溶媒を除去して、薄膜を形成する。
[0065]
 基材は、特に限定されないが、コンデンサに用いられる基材が好ましい。コンデンサ用途では、高温・高湿環境下での信頼性が求められるからである。
[0066]
 基材として、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ又はこれらの合金を含むものを用いることができる。
[0067]
 基材の表面には、誘電体層を形成してもよい。誘電体層は、例えば、表面を酸化処理することによって形成することができる。基材の表面を酸化処理する方法としては、特に制限されないが、例えば、リン酸、アジピン酸等の弱酸が含まれる水溶液中で、5~90分程度の間、電圧をかけて陽極酸化処理する方法があげられる。
[0068]
 基材の表面に形成された誘電体層を介して導電性高分子薄膜を形成することによって、固体電解コンデンサの陽極体を形成することができる。また、この陽極体を用いて、固体電解コンデンサを製造可能である。
[0069]
 塗布の方法は、限定されず、基材上に導電性高分子組成物を滴下したり、基材に導電性高分子組成物を含浸させたりすることによって行うことができる。
[0070]
 熱処理は、ビニルスルホン基のビニル基の架橋開始温度以上の温度で行うことができる。これによって、熱によるラジカル重合を開始させて架橋反応を進行させることができる。熱処理の温度は、140~250℃であり、好ましくは140~180℃であり、具体的には例えば、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この温度が低すぎると架橋が十分に進行せず、この温度が高すぎると塗膜の劣化などが起こりやすくなる。
[0071]
 熱処理の時間は、例えば10~120分であり、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この時間が短すぎると架橋が十分に進行せず、この時間が長すぎると塗膜の劣化や生産性低下などが起こりやすくなる。
実施例
[0072]
1.分散液の製造
・製造例1(一般式(1)+ビニルスルホン酸)
 1Lフラスコにプロピレンカーボネート250g、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)1.7g、VSA-S(ビニルスルホン酸, 旭化成ファインケム社製)0.65gを加えて0.5時間撹拌した。次いで、窒素パージ下、トリスパラトルエンスルホン酸鉄(III)(Fe(PTS) )0.02g、OFBA(フタルアルデヒド酸)0.9g、過酸化ベンゾイル(純度75質量%、日油製)4.5gを加え40℃にて4時間、60℃にて2時間撹拌した。プロピレンカーボネートを50gで不揮発分を調液後、超音波ホモジナイザーにて処理し、不揮発分1.0質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Aを得た。
[0073]
・製造例2(一般式(1)+ナフタレンスルホン酸)
 製造例1のVSA-S0.65gを2-ナフタレンスルホン酸0.6gに変更した以外は同じ手順で不揮発分1.0質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Bを得た。
[0074]
・製造例3(一般式(2)+ビニルスルホン酸)
 製造例1のOFBA(フタルアルデヒド酸)0.9gを1.8gに変更した以外は同じ手順で不揮発分1.3質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Cを得た。
[0075]
2.実施例・比較例の導電性高分子組成物の製造
 以下の方法で実施例・比較例の導電性高分子組成物を製造した。導電性高分子組成物の概要を表1に示す。
[0076]
[表1]


[0077]
・実施例1
 分散液Aをそのまま、実施例1の導電性高分子組成物とした。
[0078]
・実施例2
 分散液B5gに、複数のビニルスルホン基を有する添加剤として、VS-C(N,N'-トリメチレンビス[2-(ビニルスルホニルアセトアミド)]、富士フイルム社製)0.0043gを添加したものを実施例2の導電性高分子組成物とした。
[0079]
・実施例3
 分散液A5gに、多官能チオールとして、TS-G(1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、四国化成工業社製)0.0043gを添加したものを実施例3の導電性高分子組成物とした。
[0080]
・実施例4
 分散液B5gに、複数のビニルスルホン基を有する添加剤として、VS-C(N,N'-トリメチレンビス[2-(ビニルスルホニルアセトアミド)]、富士フイルム社製)0.0043g、多官能チオールとして、TEMPIC(トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート)0.0040gを添加したものを実施例4の導電性高分子組成物とした。
[0081]
・実施例5
 分散液Cをそのまま、実施例5の導電性高分子組成物とした。
[0082]
・比較例1
 P T2(PEDOT/PSS、ヘレウス社製)をそのまま、比較例1の導電性高分子組成物とした。
[0083]
・比較例2
 分散液Bをそのまま、比較例2の導電性高分子組成物とした。
[0084]
・比較例3
 分散液B5gに、他のビニル化合物として、DVB960(ジビニルベンゼン、新日鉄住金化学社製)0.0046gを添加したものを比較例3の導電性高分子組成物とした。
[0085]
・比較例4
 分散液B5gに、重合体として、フェニルマレイミドーアクリルアミド共重合物10wt%プロピレンカーボネート溶液0.050gを添加したものを比較例4の導電性高分子組成物とした。
[0086]
・比較例5
 分散液B5gに、他のビニル化合物として、4-スチレンスルホン酸水溶液1.0wt%プロピレンカーボネート溶液0.5gを添加したものを比較例5の導電性高分子組成物とした。
[0087]
・比較例6
 分散液B5gに、添加剤として、VSA-S(ビニルスルホン酸、旭化成ファインケム社製)0.005gを添加したものを比較例6の導電性高分子組成物とした。
[0088]
3.各種評価
 上記の実施例・比較例の導電性高分子組成物を用いて、以下に示す評価を行った。その結果を表1に示す。
[0089]
 各種評価の詳細は、以下の通りである。
[0090]
・液貯蔵安定性
 導電性高分子組成物の製造直後と、1週間経過後の粘度を測定し、以下の基準で評価した。粘度の測定は、エー・アンド・デイ社製音叉型振動式粘度計SV-1Aによって行った。
○:粘度の変化が20%以下
×:粘度の変化が20%超
[0091]
・塗膜耐湿熱性
 ガラス板上に導電性高分子溶液をポッティングした後に熱処理を行うことによって2cm×2cm、膜厚5μmの塗膜を得た。熱処理は、比較例1については105℃×30分の条件で行い、その他の実施例・比較例については150℃×30分の条件で行った。
[0092]
 その後、塗膜を85℃/85%の環境下に放置し、7日又は12日経過後における塗膜状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:塗膜の浮き及び割れの何れもなし
×:ガラス板から塗膜が浮いているか、又は塗膜に割れが発生した
[0093]
 また、塗膜を85℃/85%の環境下に放置する前(試験前)と、7日又は12日間放置した後(試験後)に、塗膜の導電率を測定し、以下の式に基づいて導電率維持率を算出した。導電率は、抵抗率計(ロレスタGP,三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて測定した。
  導電率維持率(%)=(試験後の導電率/試験前の導電率)×100
[0094]
・容量出現率
表面化成済みのタンタル板を13wt%のアジピン酸二ナトリウム水溶液に5cm 浸漬し、LCRメーターによって静電容量を測定し、1cm あたりの静電容量を算出した(静電容量1)。
[0095]
 同タンタル板に導電性高分子溶液をポッティングした後に熱処理を行うことによって2cm×2cm、膜厚約1.5μmの塗膜を形成し、次いでカーボン層、銀層を積層し銀素子を作製した。LCRメーターによって静電容量を測定し、1cm あたりの静電容量を算出した(静電容量2)。
[0096]
 容量出現率は、下記式によって算出した。
  容量出現率(%)=(静電容量2/静電容量1)×100
[0097]
4.考察
 ビニルスルホン酸をドーパントとして用いた実施例1は、2-ナフタレンスルホン酸をドーパントとして用いた比較例2に比べ、塗膜耐湿熱性が優れていた。これは、ビニルスルホン酸のビニル基による架橋によって塗膜が安定化されたためであると考えられる。
 実施例2は、ビニルスルホン基による架橋は、複数のビニルスルホン基を有する添加剤によっても可能であることを示している。
 実施例3,4は、ビニルスルホン基に対するマイケル付加の求核剤となる多官能チオールの添加によって塗膜耐湿熱性がさらに向上することを示している。
 比較例3のように、ビニルスルホン基含有化合物以外のビニル化合物を添加した場合、液貯蔵安定性、塗膜耐湿熱性、容量出現率が何れも良好でなかった。容量出現率の評価に用いたタンタル板は表面が平滑であるので容量出現率が良好でなかった原因は、比較例3で添加されたジビニルベンゼンの重合体が導電性高分子中に良好に分散されず、導電性高分子の導電性に与える悪影響が大きかったためであると考えられる。
 比較例4のように、添加剤としてモノマーではなく重合体を添加した場合、導電率維持率及び容量出現率が良好でなかった。容量出現率が良好でなかった原因は、比較例4で添加した重合体が導電性高分子中に良好に分散されず、導電性高分子の導電性に与える悪影響が大きかったためであると考えられる。
 比較例5のように、ビニルスルホン基は有さないがスルホン基とビニル基の両方を有する化合物を添加した場合、液貯蔵安定性、塗膜耐湿熱性が良好でなかった。
 比較例6のように、1つのビニルスルホン基を有する化合物を添加剤として添加した場合、塗膜耐湿熱性が良好でなかった。

請求の範囲

[請求項1]
 溶媒と、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子組成物であって、
 ビニルスルホン基を含有するビニルスルホン基含有化合物が前記導電性高分子のドーパント又は添加剤として含有され、
 前記ビニルスルホン基含有化合物が前記添加剤として含有される場合、前記ビニルスルホン基含有化合物は、複数の前記ビニルスルホン基を含有する、導電性高分子組成物。
[請求項2]
 請求項1に記載の導電性高分子組成物であって、
 前記導電性高分子は、チオフェン又はその誘導体を骨格に含む、導電性高分子組成物。
[請求項3]
 請求項1又は請求項2に記載の導電性高分子組成物であって、
 前記導電性高分子は、一般式(1)又は下記一般式(2)で表される構成単位の少なくとも1つを有する、導電性高分子組成物。
[化1]



(一般式(1)及び(2)中、R は、それぞれ置換基を有していてもよい、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、芳香族基、又は複素環基を表す。R は、それぞれ酸素原子又は硫黄原子であり、R は、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、芳香族基、又は複素環基を表す。A は、ドーパント由来のモノアニオンである。nは、2以上300以下である。)
[請求項4]
 請求項1~請求項3の何れか1つに記載の導電性高分子組成物であって、
 前記ビニルスルホン基含有化合物が前記ドーパントとして含有され、前記ビニルスルホン基含有化合物は、ビニルスルホン酸である、導電性高分子組成物。
[請求項5]
 請求項1~請求項4の何れか1つに記載の導電性高分子組成物であって、
 前記ビニルスルホン基含有化合物が前記添加剤として含有され、前記ビニルスルホン基含有化合物は、一般式(3)で表される、導電性高分子組成物。
[化3]


(一般式(3)中、Rは原子又は原子団であり、Rの主鎖は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択される1又は複数種の原子によって構成される。)
[請求項6]
 請求項1~請求項5の何れか1つに記載の導電性高分子組成物であって、
 前記導電性高分子組成物が多官能チオールを含む、導電性高分子組成物。
[請求項7]
 請求項1~請求項6の何れか1つに記載の導電性高分子組成物であって、
 前記溶媒は、沸点が140℃以上である高沸点溶媒を含む、導電性高分子組成物。