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1. WO2020129433 - 血流促進装置、椅子、ベッド

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明 細 書

発明の名称 血流促進装置、椅子、ベッド 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090  

産業上の利用可能性

0091  

符号の説明

0092  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35  

明 細 書

発明の名称 : 血流促進装置、椅子、ベッド

関連出願の相互参照

[0001]
 本出願は、2018年12月21日に出願された日本国特許出願2018-239849号に基づくものであって、その優先権の利益を主張するものであり、その特許出願の全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。

技術分野

[0002]
 本開示は、音刺激を利用して血流を促進する技術に関する。

背景技術

[0003]
 皮膚の血流低下は、冷え症、しもやけ、肩こり等の症状を誘発する。低周波治療器は、皮膚に電極パッドを貼り付けて皮膚に直接刺激を与えることで血流を促進させる機器であるが、電源を入れた状態で電極面を触ってはいけないなど、使用時に様々な事項に注意する必要がある。

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 本開示者は音刺激の生物学的効果に注目し、音刺激と血流の相関に関する実験を行うことで音刺激が血流に影響を及ぼすことを突き止め、血流促進に適した音刺激を探し出した。
[0005]
 本開示はこうした状況に鑑みてなされており、その目的とするところの1つは、音刺激により血流を促進させる技術を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0006]
 上記課題を解決するために、本発明のある態様の血流促進装置は、血流促進のための音刺激を設定する設定部と、設定された音刺激を発生する音発生部とを備える。設定部は、音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定する。設定する音量レベルは、音発生部が発生した音刺激が出力されて、対象者に到達したときの音量レベル、つまり対象者の位置における音量レベルを意味する。
[0007]
 本開示の別の態様の血流促進装置は、機械刺激受容体を活性化するための音刺激を設定する設定部と、設定された音刺激を発生する音発生部とを備える。設定部は、音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定する。音量レベルは、音発生部が発生した音刺激が出力されて、対象者に到達したときの音量レベル、つまり対象者の位置における音量レベルを意味する。
[0008]
 なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 実施例の血流促進装置の構成を示す図である。
[図2] マウスの血流量を測定した実験結果を示す図である。
[図3] マウスの血流量を測定した実験結果を示す図である。
[図4] マウスの血流増加割合を示す図である。
[図5] マウスの血流増加割合を示す図である。
[図6] マウスの血流増加割合を示す図である。
[図7] 人の血流増加割合を示す図である。
[図8] マウス皮膚の血流の画像例を示す図である。
[図9] 人の血流量を測定した実験結果を示す図である。
[図10] 人の血流量を測定した実験結果を示す図である。
[図11] 音刺激の周波数の影響を調べた実験結果を示す図である。
[図12] 音刺激の周波数の影響を調べた実験結果を示す図である。
[図13] 人の血流増加割合を示す図である。
[図14] 人の手の血流の画像例を示す図である。
[図15] 異なる組織の血流量を測定した実験結果を示す図である。
[図16] マウスの脳血流量を測定した実験結果を示す図である。
[図17] カルシウムの取り込みを観察した実験結果を示す図である。
[図18] カルシウムの取り込みを観察した実験結果を示す図である。
[図19] カルシウムイオンが血管内皮細胞内に流入する様子を模式的に示す図である。
[図20] エンドセリン受容体の影響を検証するための実験結果を示す図である。
[図21] 一酸化窒素の影響を検証するための実験結果を示す図である。
[図22] 音刺激によるマウスの体表温の変化を測定した結果を示す図である。
[図23] 人の指の血流と皮膚表面温度の変化を測定した結果を示す図である。
[図24] サーモグラフィカメラにより撮影した指の画像を示す図である。
[図25] マウスの体重に対する音刺激の影響を観察した結果を示す図である。
[図26] 音刺激前と音刺激後の脂肪組織体積の変化を示す図である。
[図27] 音刺激の有無によるマウスの呼吸商を示す図である。
[図28] 生活習慣病に関係する項目の測定結果を示す図である。
[図29] 音刺激による褥瘡の改善効果を観察した結果を示す図である。
[図30] 音刺激による褥瘡の改善効果を観察した結果を示す図である。
[図31] 音刺激による褥瘡の改善効果を観察した結果を示す図である。
[図32] 脳血流低下モデルマウスの脳血流量を測定した実験結果を示す図である。
[図33] 結紮したマウス下肢の観察結果を示す図である。
[図34] 音刺激による疲労回復効果の観察実験を示す図である。
[図35] 実施例の血流促進装置の別の構成を示す図である。

発明を実施するための形態

[0010]
 図1は、実施例の血流促進装置1の構成を示す。血流促進装置1は、人の血流を改善、つまりは促進する音刺激のパターンで音を発生する機能をもつ。以下、血流促進装置1が発生する音そのものを「音刺激」とも呼ぶ。血流促進装置1は、血流促進のための音刺激を出力するための操作を受け付ける操作受付部2と、操作に応じて音刺激を設定する設定部3と、設定された音刺激を発生する音発生部4と、発生した音刺激を出力する出力部5とを備える。実施例の音発生部4は、設定された周波数をもつ純音を時間的に連続して又は間欠的に発生する機能をもつ。出力部5はスピーカであって、血流促進装置1から音を外部に出力してもよいが、血流促進装置1に接続されるスピーカに音信号を出力するものであってもよい。
[0011]
 図1において、さまざまな処理を行う機能ブロックとして記載される各要素は、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
[0012]
 後に詳述するが、実施例の血流促進装置1は、血流促進のために、音量レベルを65デシベル(dB)以上、周波数を5から250ヘルツ(HZ)の間の値とする音刺激を発生する。音刺激は、時間的に連続して発せられる連続音であってよく、また間欠的且つ周期的に発せられる不連続音であってもよい。血流促進装置1は、たとえば病院などの医療施設に医療機器として設置され、冷え症、肝斑(シミ)、褥瘡(床ずれ)または肩こりをもつ患者の症状改善のために利用される。医師は患者の症状の程度に応じて、音量レベルおよび周波数を設定できてよい。
[0013]
 血流促進装置1は健康機器として市販されて、健常者の血流促進の目的で利用されてもよい。血流促進装置1は、持ち運べるようにコンパクトに形成されることが好ましい。血流促進装置1が健康機器として流通することで、血流促進による疲労回復や生活習慣病の予防または改善、エコノミークラス症候群や糖尿病患者の四肢壊疽を含む血管閉塞性疾患の予防または改善や、ダイエットを含む美容効果を期待できる。
[0014]
 本開示者は、以下で説明する実験等によって、音量レベルを65dB以上、周波数を5から250HZの間の値とする音が、血流促進に適した音刺激であることを突き止めた。なお以下のいくつかの図に音量レベルを変化させたときの血流の測定結果を示すが、音量レベルは、マウスまたは被検者の血流の測定部位における音量レベルであることに留意されたい。
[0015]
 図2は、音刺激の音量レベルを変化させてマウスの血流量を測定した実験結果を示す。図2(a)~図2(d)に示すグラフにおいて、横軸は時間(秒)、縦軸は皮膚血液量(ml/min/100g)を示す。なお音刺激は、100msの出力期間と600msの非出力期間とを交互に繰り返す不連続音であり、血流量の測定は、レーザードップラー血流計を利用している。図2(b)~図2(d)に示す音量レベルは、マウスの血流測定部位における音量レベルであり、両矢印は、音刺激を与えた期間を示す。
[0016]
 図2(a)は、音刺激を与えなかったときの皮膚血流量の変化を示す。音刺激を与えない場合、皮膚血流量は変化しない。
 図2(b)は、音量レベル60dB、周波数100Hzの音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。図2(b)において、音刺激の付与期間中、皮膚血流量は変化しない。したがって音量レベル60dB、周波数100Hzの音刺激は、皮膚血流を促進させない。
 図2(c)は、音量レベル70dB、周波数100Hzの音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。図2(c)において、音刺激の付与期間中、皮膚血流量は増加している。したがって音量レベル70dB、周波数100Hzの音刺激は、皮膚血流を促進させる。
 図2(d)は、音量レベル90dB、周波数100Hzの音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。図2(d)において、音刺激の付与期間中、皮膚血流量は大幅に増加している。したがって音量レベル90dB、周波数100Hzの音刺激は、皮膚血流を大きく促進させる。
 図2に示す実験結果により、皮膚血流は、100Hzで、70dB以上の音刺激によって促進されることが示される。
[0017]
 図3は、音刺激の周波数を変化させてマウスの血流量を測定した実験結果を示す。図3(a)~図3(d)に示すグラフにおいて、横軸は時間(秒)、縦軸は皮膚血液量(ml/min/100g)を示す。図2に示す実験結果から、90dBの音刺激が皮膚血流を大きく促進することが示されたため、図3(b)~図3(d)に示す実験結果では、マウスの位置における音刺激の音量レベルを90dBに揃えている。図2に示す実験と同様に、音刺激は、100msの出力期間と600msの非出力期間とを交互に繰り返す不連続音である。図3(b)~図3(d)のグラフ中、両矢印は、音刺激を与えた期間を示す。
[0018]
 図3(a)は、音刺激を与えなかったときの皮膚血流量の変化を示す。音刺激を与えない場合、皮膚血流量は変化しない。
 図3(b)は、音量レベル90dB、周波数4000Hzの音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。図3(b)において、音刺激の付与期間中、皮膚血流量は変化しない。したがって音量レベル90dB、周波数4000Hzの音刺激は、皮膚血流を促進させない。
 図3(c)は、音量レベル90dB、周波数500Hzの音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。図3(c)において、音刺激の付与期間中、皮膚血流量は変化しない。したがって音量レベル90dB、周波数500Hzの音刺激は、皮膚血流を促進させない。
 図3(d)は、音量レベル90dB、周波数100Hzの音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。図2(d)にも示したように、音刺激の付与期間中、皮膚血流量は大幅に増加する。
 図3に示す実験結果により、皮膚血流は、90dBで、500Hz以上の周波数の音刺激によって促進されないことが示される。
[0019]
 図4は、様々な条件で測定したマウスの血流の増加割合を示す。血流増加割合(%)は、
 (音刺激を与えているときの血流量/音刺激を与えていないときの血流量)×100
 の計算式により算出される。
 図4に示す血流増加割合により、100Hzの音刺激で血流は促進されるが、4000Hzの音刺激では、音量レベルを変化させても血流が促進されないことが示される。
[0020]
 図5は、音刺激の音量レベルを変化させてマウスの血流量を測定したときの血流増加割合を示す。音刺激は、100msの出力期間と600msの非出力期間とを交互に繰り返す不連続音であり、音刺激の周波数は100Hzに揃えている。
[0021]
 図5に示す実験結果により、皮膚血流は、70dB以上の音刺激で促進されることが示される。図2に示した実験結果を加味すると、皮膚血流は、60dB以下の音刺激では促進されず、70dB以上の音刺激で促進されることが分かった。
[0022]
 図6は、不連続音のパターンを変化させてマウスの血流量を測定したときの血流増加割合を示す。不連続音のパターンは、出力期間と非出力期間とを交互に繰り返す間欠パターンであり、図6では、出力期間を100msに固定し、非出力期間を50ms、100ms、300ms、600ms、900msと変化させている。この実験結果から、出力期間と非出力期間をそれぞれ100msに設定した場合に、最も血流増加割合が高いことが示される。
[0023]
 図7は、周波数を変化させて人の血流量を測定したときの血流増加割合を示す。音刺激は、100msの出力期間と100msの非出力期間とを交互に繰り返す不連続音であり、人の位置における音刺激の音量レベルは80dBに揃えている。実施例で音量レベルは、血流促進装置1から出力される音が人に到達したときの音量レベルを意味する。
[0024]
 この実験結果によると、50Hzから250Hzの間の音刺激が、有意な血流増加割合を示し、この範囲の中でも70Hzから250Hzの間の音刺激が、より有意な血流増加割合を示した。また70Hzから110Hzの間の音刺激が、大きな血流増加割合を示した。図3に示した実験結果を加味すると、皮膚血流は、周波数が500Hz以上の音刺激では促進されず、周波数が少なくとも50から250Hzの間の値をもつ音刺激で促進されることが分かった。
[0025]
 図8は、マウス皮膚の血流をイメージング技術により描出した画像例を示す。画像中、明るくなっている箇所は血流を示す。音刺激前と音刺激中の画像を比較すると、間欠音および連続音の双方の音刺激中に血流が増加していることが示される。
[0026]
 図9は、音刺激の周波数を時間的に変化させて人の血流量を測定した実験結果を示す。音刺激を与えない状態から皮膚血流量の測定を開始し、時間t1からt2の間、80dB、4000Hzの音刺激を被験者に与えたが、血流量は変化しなかった。時間t2で周波数を100Hzに変化させると、血流量の増加が測定された。この実験により4000Hzの音刺激は人の皮膚血流に影響を及ぼさないが、100Hzの音刺激は人の皮膚血流を促進することが示された。
[0027]
 次に、図9に示した皮膚血流の促進が、人の視覚や聴覚による影響でないことを確認するための比較実験を行った。
 図10(a)は、被験者の視覚および聴覚を遮断しない状態で皮膚血流量を測定した実験結果を、図10(b)は、被験者の視覚および聴覚を遮断した状態で皮膚血流量を測定した実験結果を示す。視覚および聴覚の遮断は、アイマスクおよび耳栓を使用した。この比較実験により、血流の変化が、視覚および聴覚の影響によるものではないことが確認された。なお手袋をした状態で手の血流を測定したところ、音刺激により血流が促進されることも確認された。
[0028]
 図11は、マウスに対する音刺激の周波数の影響を調べた実験結果を示す。図11において、白抜きの棒グラフは、音刺激を与えないときの血流増加割合を示し、黒色の棒グラフは、音刺激を与えたときの血流増加割合を示す。
[0029]
 一番左側の黒色棒グラフは、音刺激がないときの血流増加割合を示す。したがって血流増加割合は略100%となる。
 左から2番目の黒色棒グラフは、4000Hz、85dBの音刺激を与えたときの血流増加割合を示す。4000Hzの音刺激を与えても、血流は変化しない。
 左から3番目の黒色棒グラフは、4000Hz、85dBの音刺激と、100Hz、85dBの音刺激とを同時に与えたときの血流増加割合を示す。このとき、血流の促進が検出されている。
 左から4番目の黒色棒グラフは、100Hz、85dBの音刺激を与えたときの血流増加割合を示す。このとき、血流の促進が検出されている。
 図11に示す実験結果から、100Hzの音刺激により血流が促進されること、および100Hzの音刺激による血流促進が、4000Hzの音刺激の影響を受けないことが示された。
[0030]
 図12は、人に対する音刺激の周波数の影響を調べた実験結果を示す。この実験では、クラシック音楽を85dBで流している環境下で、100Hz、78dBの音刺激を被験者に与えて、皮膚血流量を測定した。音刺激がないとき、およびクラシック音楽を流しているときには、血流は変化しない。この実験では、100Hz、78dBの音刺激を被験者に与えた期間だけ、皮膚血流量が増加したことが示された。つまり雑多な音がある環境下であっても、人に100Hzの音刺激を与えることで、特異的に血流を促進できることが分かった。
[0031]
 したがって血流促進装置1の音発生部4は、音楽などの音を発生しつつ、発生中の音に音刺激を重畳する機能を含んでよい。たとえば音楽の出力中に、音刺激を重畳することで、ユーザは、音楽を聴きながら血流を効果的に改善できるようになる。
[0032]
 図13は、周波数を変化させて人の血流量を測定したときの血流増加割合を示す。人に与える音刺激は非出力期間を含まず、連続して発せられる連続音であり、人の位置における音刺激の音量レベルは85dBに揃えている。
[0033]
 この実験結果によると、5Hzから250Hzの間の音刺激が、有意な血流増加割合を示し、この範囲の中でも20Hzから150Hzの間の音刺激が、より有意な血流増加割合を示した。また35Hzから50Hzの間の音刺激が、大きな血流増加割合を示した。以上のように、周波数が5から250Hzの間の値をもつ音刺激により皮膚血流が促進されることが分かった。
[0034]
 図14は、人の手の血流をイメージング技術により描出した画像例を示す。この画像は、レーザードップラー血流画像化装置により取得されたものである。図13に示す実験結果から40Hzの連続音の音刺激が皮膚血流を大きく促進することが示されたため、周波数を40Hzに揃え、音量レベルを65dB、75dB、85dBのそれぞれに設定して、人の手の血流を画像化した。
[0035]
 血流画像中、明るくなっている領域は血流量の多い領域を示す。音刺激前、音刺激中、音刺激後の画像を比較すると、音刺激中に血流が増加していることが示される。これらの画像から、人の部位の位置での音量レベルを65dB以上に設定することで、血流が増加することが確認される。
[0036]
 図15は、マウスの複数の組織における血流量を測定した実験結果を示す。図15において点線は、音刺激を与えないときの血流量の変化を、実線は、音刺激(100Hz、90dB)を与えたときの血流量の変化を示している。この実験結果は、皮膚以外の部位であっても、音刺激を与えることで血流が促進されることを示す。
[0037]
 図16は、音刺激の周波数を変化させてマウスの脳血流量を測定した実験結果を示す。図16(a)~図16(d)に示すグラフにおいて、横軸は時間(秒)、縦軸は脳血液量(ml/min/100g)を示す。図16(b)~図16(d)に示す実験結果では、マウスの頭部における音刺激の音量レベルを85dBに揃えており、音刺激は連続音である。画像において、白い箇所は血流が多い領域を、暗い箇所は血流の少ない領域を示す。図16(b)~図16(d)のグラフ中、両矢印は、音刺激を与えた期間(1分間)を示す。
[0038]
 図16(a)は、音刺激を与えなかったときの脳血流量の変化を示す。音刺激を与えない場合、脳血流量の定常レベルは変化しない。
 図16(b)は、音量レベル85dB、周波数40Hzの音刺激を与えたときの脳血流量の変化を示す。図16(b)において、音刺激の付与期間中、脳血流量は増加している。したがって音量レベル85dB、周波数40Hzの音刺激は、脳血流量を増加させる。
 図16(c)は、音量レベル85dB、周波数50Hzの音刺激を与えたときの脳血流量の変化を示す。図16(c)において、音刺激の付与期間中、脳血流量は増加している。したがって音量レベル85dB、周波数50Hzの音刺激は、脳血流量を増加させる。
 図16(d)は、音量レベル85dB、周波数70Hzの音刺激を与えたときの脳血流量の変化を示す。図16(d)において、音刺激の付与期間中、脳血流量は増加している。したがって音量レベル85dB、周波数70Hzの音刺激は、脳血流量を増加させる。
 図16に示す実験結果により、脳血流が、音量レベルが85dBで、少なくとも40Hzから70Hzの範囲の周波数の音刺激によって促進されることが示される。
[0039]
 図17(a)は音刺激前と音刺激中のA549細胞株におけるカルシウムをイメージング技術により画像化したものであり、カルシウムは蛍光として画像化される。ここで音刺激は、100msの出力期間と100msの非出力期間とを交互に繰り返す不連続音であり、音刺激の周波数は100Hz、音量レベルは85dBである。図17(b)は音刺激前と音刺激中の蛍光強度を示す。音刺激により、カルシウム、つまりは血流が増加していることが示される。
[0040]
 図18(a)はHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)細胞におけるカルシウムをイメージング技術により画像化したものである。ここで音刺激は、100msの出力期間と100msの非出力期間とを交互に繰り返す不連続音であり、音刺激の周波数は70Hz、音量レベルは85dBである。左側は音刺激前の画像、中央は音刺激中の画像、右側は音刺激中であって、イオンチャネルピエゾ1の阻害剤を注入した状態での画像を示す。図18(b)は、音刺激前、音刺激中、イオンチャネルピエゾ1の阻害剤注入状態での音刺激中の蛍光強度を示す。左側と中央の画像を比較して、音刺激により、カルシウム、つまりは血流が増加していることが示される。
[0041]
 ピエゾ1は、機械刺激により活性化されるイオンチャネルとして知られている。図18(a)および(b)の右側に示す蛍光画像および蛍光強度によれば、ピエゾ1阻害剤の存在下において、音刺激を与えても、カルシウムの取り込み量は増加しない。一方、中央に示す蛍光画像および蛍光強度によれば、ピエゾ1阻害剤が存在しなければ、音刺激によりピエゾ1が活性化されることで、カルシウムの取り込み量が増加している。このことにより本開示者は、ピエゾ1が機械刺激だけでなく、音刺激によっても活性化されることを知見として得た。
[0042]
 本開示者は、音量レベルを65dB以上、周波数を5から250Hzの間の値とする音刺激を設定して、HUVECのカルシウム取り込み量を調べたところ、音刺激のない場合と比較して、蛍光強度が高くなることを観察した。つまり設定した音刺激により、ピエゾ1が活性化されて血流が増加したことが観察された。したがって本実験により、設定部3が、音量レベルを65dB以上、周波数を5から250Hzの間の値とする音刺激を設定し、音発生部4が音刺激を発生することで、イオンチャネルピエゾ1を活性化できることが確認された。
[0043]
 以上の知見をもとに、本開示者は、適切な音刺激により血流を促進または改善するメカニズムが、以下のステップ1~3によることを考察した。ここで適切な音刺激は、上記した各種実験により、音量レベルを65dB以上、周波数を5から250Hzの間の値とする音刺激である。
[0044]
(ステップ1)
 人の部位に、適切な音刺激を与えることにより、血管内皮細胞に発現する機械刺激受容体(ピエゾ1、トリップブイ1(TRPV1))が活性化される。
 図19は、血管内皮細胞に対して音刺激が与えられたときに、機械刺激受容体のチャネルが開いて、カルシウムイオンが血管内皮細胞内に外部から流入する様子を模式的に示す。機械刺激受容体のチャネルが音刺激により開いて、カルシウムイオンが血管内皮細胞内に流入することは、図18に示す実験結果により検証されている。
[0045]
(ステップ2)
 カルシウムイオンの流入量が増加することで、エンドセリン受容体が活性化される。
(ステップ3)
 エンドセリン受容体が活性化されることで、一酸化窒素が放出されて、血管が拡張される。なお一酸化窒素が放出されると、血管が一次的に拡張して末梢血流が増加することは、過去の研究により知られている。
[0046]
 以下、ステップ2、3を検証する実験結果を示す。
 図20は、エンドセリン受容体の影響を検証するための実験結果を示す。図20(a)~図20(c)に示すそれぞれのグラフにおいて、横軸は時間(秒)、縦軸は皮膚血液量(ml/min/100g)を示し、左側のグラフは、野生型マウスの皮膚血流量を、右側のグラフは、エンドセリン受容体のないマウス(以下「欠損マウス」と呼ぶ)の皮膚血流量を示す。図20(b)~図20(c)において、両矢印は、連続音である音刺激を与えた期間を示す。
[0047]
 図20(a)は、音刺激を与えなかったときの皮膚血流量の変化を示す。音刺激を与えない場合、野生型マウス、欠損マウスともに、皮膚血流量は変化しない。
 図20(b)は、音量レベル80dB、周波数40Hzの音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。野生型マウスと欠損マウスの皮膚血流量はともに増加しているが、増加度を比較すると、野生型マウスの皮膚血流量が大きく増加しているのに対して、欠損マウスの皮膚血流量の増加度は小さい。
 図20(c)は、音量レベル90dB、周波数40Hzの音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。図20(b)に示したグラフと同様に、野生型マウスと欠損マウスの皮膚血流量はともに増加しているが、増加度を比較すると、野生型マウスの皮膚血流量が大きく増加しているのに対して、欠損マウスの皮膚血流量の増加度は小さい。
[0048]
 図20に示す実験結果により、エンドセリン受容体があれば、音刺激を与えると血流量が大きく増加し、一方で、エンドセリン受容体がなければ、音刺激を与えても、血流の増加量が抑制されることが分かった。つまりステップ2におけるエンドセリン受容体の活性化が、血流量の上昇に大きく影響していることが検証された。
[0049]
 図21は、一酸化窒素の影響を検証するための実験結果を示す。図21(a)~図21(b)に示すグラフにおいて、横軸は時間(秒)、縦軸は皮膚血液量(ml/min/100g)を示し、マウスには、連続音となる音刺激を与えた。
[0050]
 図21(a)は、生理食塩水を腹腔に投与されたマウスの皮膚血流量の変化を示し、図21(b)は、一酸化窒素阻害剤であるL-NAMEを腹腔に投与されたマウスの皮膚血流量の変化を示す。
 図21(a)に示すグラフでは、音刺激を与えると、皮膚血流量が増加している様子が示される。一方で図21(b)に示すグラフでは、音刺激に対して、皮膚血流量が変化しない。この実験により一酸化窒素の放出が阻害されると、血流量が増加しないことが分かった。つまりステップ3における一酸化窒素の放出が、血流量の上昇に大きく影響していることが検証された。
 以上の実験により、適切な音刺激が、ステップ1~3のメカニズムにより血流を促進することが検証された。
[0051]
 図22は、音刺激によるマウスの体表温の変化を測定した結果を示す。ここで音刺激は連続音であり、音刺激の周波数は100Hz、音量レベルは85dBである。
 図22(a)は、室温における体表温の変化を示す。四角のプロット点をつないだ変化曲線は、音刺激を与えたときの複数マウスの平均体表温の変化を示し、菱形のプロット点をつないだ変化曲線は、音刺激を与えないときの複数マウスの平均体表温の変化を示す。このグラフによると、室温では音刺激の有無にかかわらず、体表温は略一定であることが観察される。
[0052]
 図22(b)は、寒冷刺激を与えた後の体表温の変化を示す。この観察では、マウスの後肢を5分間冷水(8.3度)につけ、その後の音刺激の有無による複数マウスの体表温(後肢表面温度)の変化の平均値をプロットした。四角のプロット点をつないだ変化曲線は、寒冷刺激の後、冷水から後肢を引き出して後肢に音刺激を与えたときの複数マウスの平均体表温の変化を示し、菱形のプロット点をつないだ変化曲線は、寒冷刺激の後、冷水から後肢を引き出して音刺激を与えないときの複数マウスの平均体表温の変化を示す。
[0053]
 図22(b)の音刺激を与えたときの変化曲線に示されるように、マウスの後肢の体表温は、音刺激を与えた直後に、ほぼ寒冷刺激前の体表温まで戻っている。つまり体温が下がっている場合に音刺激を与えると、短時間で平時の体温に戻ることが確認される。このことは、音刺激が冷え症の回復に効果があることを示す。
[0054]
 図23は、人の指の血流と皮膚表面温度の変化を測定した結果を示す。まず人が指を1分間冷水(8度)につけ、連続音による音刺激の有無による血流の変化と、皮膚表面温度の変化を測定している。この観察では、指を冷水に入れているときから、音刺激を与えている。
[0055]
 この実験結果に示されるように、指を冷水に入れている間に音刺激を与えることで、音刺激を与えない場合と比較すると、冷水中における指の血流量が多く、また表面温度が高くなる。また冷水から指を引き上げると、音刺激を与えた方が血流量および表面温度の上昇度は高い。これらの観察から、音刺激が冷え症の改善に効果があることが確認された。
[0056]
 図24は、サーモグラフィカメラにより撮影した指の画像を示す。音刺激を与えることで、皮膚温度が短時間で上昇することが、画像からも見てとれる。
[0057]
 図25は、マウスの体重に対する音刺激の影響を観察した結果を示す。この観察では高脂肪食で誘導した肥満マウスに対して、1日5分間、70Hz、85dBの低周波間欠音を与えて、体重を測定した。なお音刺激は、100msの出力期間と100msの非出力期間とを交互に繰り返す不連続音である。
 図26は、音刺激前と、音刺激後(19日後)の脂肪組織体積の変化をマイクロCTにて測定した結果を示す。
[0058]
 図25に示す体重変化により、音刺激を与えたマウスは、高脂肪食を与えているにも関わらず体重を減少させていることが確認される。また図26に示すマイクロCTを用いた脂肪組織体積の変化の測定結果から、音刺激を与えたマウスの内臓脂肪が減少していることが確認される。これらの結果は、音刺激がダイエット効果を生み出すことを示す。
[0059]
 図27は、音刺激の有無によるマウスの呼吸商を示す。ここで呼吸商とは、単位時間あたりにおける二酸化炭素排出量と酸素吸入量の体積比であり、糖質代謝であれば1.0、脂質代謝であれば0.7となる。図27の左側のグラフは、音刺激を与えないときのマウスの呼吸商を、右側のグラフは、5分間の音刺激を与えた後のマウスの呼吸商を示す。図27に示すように、マウスに音刺激を与えることで、糖質代謝から脂質代謝への変換が促進されることが観察された。なお呼吸商について人に対して同様の観察をした結果、音刺激中および音刺激後に、音刺激を与えられた人の呼吸商が低下することが分かった。このことは音刺激により体脂肪が燃焼されたことを意味し、したがって音刺激がダイエットを含む美容効果や生活習慣病の予防または改善に役立つことが確認された。
[0060]
 図28は、生活習慣病に関係する項目の測定結果を示す。この観察では高脂肪食を6匹のマウスに3週間与え続け、最後の1週間だけ3匹に対して、1日5分間、70Hz、85dBの低周波間欠音を与えた。高脂肪食を与えてから3週間後(音刺激を与えてから1週間後)、各マウスの中性脂肪、血糖、総コレステロール、HDLコレステロールを調べたところ、音刺激を1週間与えたマウス群の中性脂肪が大きく減っていた。この結果からも、音刺激が中性脂肪の減少に役立つことが確認された。
[0061]
 図29は、音刺激による褥瘡の改善効果を観察した結果を示す。この観察では、まずマウスに人為的に褥瘡を誘導した。ここでは、マウスの後肢の皮膚に血流プローブを密着させ、その上下から1000Gの強度の磁石で挟み込んで皮膚を圧迫する誘導手法を採用した。図29は、後肢の虚血環境(皮膚血流量が低下状態)下において、圧迫開始から15分と20分が経過したタイミング(両矢印で示す期間)で、音刺激を与えたときの皮膚血流量の変化を示す。
[0062]
 図29において、平均8.34ml/min/100mgの皮膚血流量は、褥瘡が誘導された状態、つまり虚血状態にあることを示す。虚血状態にあるマウスに対して、70Hz、85dBの間欠音を与えると、皮膚血流量が平均16.55ml/min/100mgに上昇している。この平均血流量は、皮膚を圧迫する前の血流量と実質的に等しい。つまり虚血状態にあるマウスに対して音刺激を与えている期間、マウスの虚血状態は改善されることが確認される。このことから実施例の音刺激が褥瘡の症状改善に効果があることが示される。
[0063]
 図30は、音刺激による褥瘡の改善効果を観察した結果を示す。この観察では、まず2匹のマウスの後背部の皮膚を磁石で挟み込んで2時間圧迫して、血流を遮断した。その後、一匹のマウスについては30分間音刺激を与え、別のマウスについては音刺激を与えず、それぞれの皮膚血流量を2次元レーザー血流計で150分間測定した。その結果、音刺激を与えていないマウスの皮膚血流量は改善されず、虚血状態が維持されることが分かった。一方で、音刺激を与えたマウスは、音刺激中に皮膚血流量が増加することが確認された。音刺激を停止した直後は、皮膚血流量が減少したものの、それから徐々に皮膚血流量が増加することが確認された。このことは音刺激を終了した後であっても、音刺激を与えた効果が持続して、褥瘡の症状改善に効果があることを示している。
[0064]
 図31(a)は、音刺激による褥瘡の改善効果を観察した結果を示す。この観察では、6匹のマウスの後背部の皮膚を磁石で挟み込んで2時間圧迫して褥瘡を誘導し、その後、3匹のマウスについては30分間音刺激を与え、他方の3匹のマウスについては音刺激を与えず、床ずれの面積を測定した。この観察は毎日行われ、図31(a)に示す比較結果は、6日後のそれぞれのマウス群における床ずれ面積を示す。この比較結果によると、褥瘡状態の誘導後に音刺激を30分間与えることで、床ずれ面積が大きく改善されることが分かった。
 図31(b)は、3日後の褥瘡状態(音刺激後)を撮影した画像を示す。
[0065]
 図32は、血管性認知症モデルマウスの脳血流量を測定した実験結果を示す。図32(a)~図32(b)に示すグラフにおいて、横軸は時間(秒)、縦軸は脳血液量(ml/min/100g)を示す。図32(a)~図32(b)に示す画像中、白い箇所は血流が多い領域を、暗い箇所は血流の少ない領域を示し、点線の円で示す箇所は、脳動脈を結紮して血流を低下させた領域である。
[0066]
 図32(a)は、音刺激を与えなかったときの脳血流量の変化を示す。音刺激を与えない場合、脳血流量の最低レベルは変化しない。図32(b)は、音量レベル85dB、周波数40Hzの連続音の音刺激を与えたときの脳血流量の変化を示す。両矢印は、音刺激を与えた期間(1分間)を示し、音刺激を与えている間、脳血流量は増加している。この実験結果から、音刺激を血管性認知症の予防や改善に利用できる可能性が見い出される。
[0067]
 次に、マウスの下肢の一方を結紮して、結紮した下肢と結紮していない下肢(対照)との血流を観察した。
 図33(a)は、2つの下肢の血流画像を示す。この血流画像において、黒い筋は動脈であり、結紮の血流画像では、中央付近の結紮箇所で、下から上への血管が細くなっている様子が示される。結紮下肢の血流画像においては、音刺激中に結紮箇所近傍が明るくなっており、このことは結紮箇所近傍の毛細血管の血流が増加していることを意味する。
 図33(b)は、音刺激前の血流を100%としたときの相対的な血流量を示す。白い棒グラフが対照マウスの血流量を、黒い棒グラフが結紮マウスの血流量を示す。音刺激を与えることで、結紮マウスの血流量が大きく改善することが観察される。
[0068]
 以上の観察から、音刺激を与えることで、動脈血栓モデルマウスの血流が改善されることが示された。このことは、たとえば糖尿病による四肢血流不全による壊死(糖尿病性壊疽)を予防できる可能性を意味する。
[0069]
 図34(a)は、音刺激による疲労回復効果の観察実験の手順を示す。この観察実験では、最初に、ロータロッド試験により、マウスの歩行時間を測定し、その後、重りをつけた状態で水中を10分間、強制的に水泳させる。それから一方のマウスには10分の休憩を与え、他方のマウスには10分間音刺激を与えて、その後、再びロータロッド試験により、歩行時間を測定した。
 図34(b)は、水泳前と水泳後の歩行時間の比較結果を示す。音刺激を与えなかったマウスの歩行時間は、水泳後に大幅に短くなっていることが示される。このことは10分間の休憩によっては、マウスの疲労が回復しなかったことを意味する。
 一方で、音刺激を与えたマウスの歩行時間は、水泳前と水泳後とで、それほど変わらない。このことは10分間の音刺激によって、マウスの疲労が回復したことを意味する。
 これらの観察実験により、音刺激には、疲労回復効果があることが確認される。
[0070]
 血流促進装置1を、自動車、バス、電車、トラック、船舶、飛行機、ロケット、宇宙船を含む種々の乗り物に搭載し、ユーザに対して音量レベルを65dB以上、周波数を5から250Hzの間の値とする音刺激を付加することで、血流改善によるエコノミークラス症候群や糖尿病患者の四肢壊疽を含む血管閉塞性疾患の予防または改善の効果が期待できる。設定部3は、刺激を受ける部位における音量レベルを所定範囲内で設定してよい。設定部3は、音量レベルを、例えば65dBから105dBの範囲内で設定してよい。設定部3は、刺激感受性の強い部位を刺激する場合には、音量レベルを所定範囲内で低めに設定し、刺激感受性の低い部位を刺激する場合には、音量レベルを所定範囲内で高めに設定してよい。血流促進装置1を住宅や工場、宇宙ステーションの居住スペースなどに設置することにより、血流改善による冷え症、肝斑、褥瘡または肩こりの症状改善、疲労回復、生活習慣病の予防または改善、血管閉塞性疾患の予防または改善、認知症の予防または改善、またはダイエットを含む美容効果の向上の少なくともいずれかを期待できる。血流促進装置1は、機械刺激受容体活性装置として様々な場所に設置されてよい。
[0071]
 図35は、血流促進装置1aの追加構成を示す。血流促進装置1aは、図1に示す血流促進装置1に加えて、人ないしは人の特定の部位を検出する検出部6、人の生体情報を取得する生体情報取得部7およびノイズキャンセル部8の構成を備える。血流促進装置1aは、部屋や乗り物等に設置されるAIスピーカであってもよい。
[0072]
 血流促進装置1aにおいて、設定部3は、血流促進のために、音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定し、音発生部4は、設定された音刺激を発生する。出力部5はスピーカを有し、音発生部4により発生された音刺激を空間内に出力する。なお設定部3は、血流を促進させるユーザの位置で音量レベルが65デシベル以上となるように、スピーカから出力される音量レベルを設定する。
[0073]
 たとえば血流促進装置1aは車室内において、ユーザから所定の距離となる位置に設置されてよい。また血流促進装置1aは、使用時に、ユーザから所定の距離となる位置に配置されることが、使用上のルールとして定められてもよい。ユーザと血流促進装置1aとの間の距離が固定される場合、設定部3は、ユーザと血流促進装置1aとの間の距離による減衰量を加味して、ユーザの位置で音量レベルが65デシベル以上となるように、音量レベルを設定できる。
[0074]
 検出部6は、部屋や車室などの空間内のユーザの有無を少なくとも検出する。検出部6は、空間内を撮影するカメラの画像を取得し、撮影画像を画像解析することで、ユーザの有無を検出してよい。検出部6はユーザがいることを検出すると、空間内におけるユーザの位置を特定し、出力部5とユーザとの距離を取得する。
[0075]
 設定部3は、ユーザとの距離に応じて、音発生部4から発生して出力部5から出力され音量レベルを決定してよい。これにより設定部3は、距離に対応する音量の減衰分を計算し、ユーザの位置で音量レベルが65デシベル以上となるように、音量レベルを設定できる。出力部5は指向性スピーカを有して、検出部6により特定されたユーザの位置に向かって、音刺激を出力することが好ましい。
[0076]
 検出部6は、ユーザの特定の部位を検出する機能を有してよい。検出部6は、たとえばベッドに寝た状態にある入院中の患者の褥瘡ができる(もしくはできそうな)部位を検出する。たとえば検出部6は、ベッドと患者の体の接触圧を検知する機能を有して、褥瘡ができる(できそうな)部位を検出してよい。患者が褥瘡予防のために体位変換したとき、指向性スピーカを有する出力部5は、検出部6が検出した部位に対して、音刺激を出力してよい。
[0077]
 入院病棟のベッドや在宅介護用のベッドに血流促進装置1aを設けることで、寝ている対象者に対して出力部5が音刺激を出力できるベッドを実現できる。このとき上記したように、検出部6および出力部5が動作することで、対象者の特定の部位に音刺激を効果的に与えることが可能となる。
[0078]
 また血流促進装置1aは、車両用椅子の背中側などに設けられてもよい。血流促進装置1aの出力部5が、椅子に着座しているドライバに対して音刺激を出力することで、ドライバの疲労回復等を促進することが可能となる。車室内において検出部6は、ドライバの四肢を検出して、出力部5が四肢に対して音刺激を出力してもよい。
[0079]
 生体情報取得部7は、音刺激を与える対象者の生体情報を取得する。たとえば生体情報取得部7は、対象者の血流、心拍数、心電図、体温、疲労度などを取得してよい。対象者の負担に配慮して生体情報取得部7は、非接触で、対象者の生体情報を取得できることが好ましい。たとえば生体情報により、対象者の体温が下がっている、または血流が正常範囲から外れていることが検出されると、設定部3は、取得した生体情報に応じて、音刺激を設定することが好ましい。このとき体温が通常時から下がっているほど、音刺激を与える時間を長くし、また音量レベルを高めることが好ましい。なお設定部3は、音刺激中の生体情報を監視し、体温や血流の十分な改善が認められれば、音刺激の発生を停止してもよい。
[0080]
 ノイズキャンセル部8は、ユーザが存在する空間内のノイズをキャンセルする役割をもつ。ノイズキャンセル部8は、空間内で発生するノイズを検出し、当該ノイズと逆位相の音を生成して、ノイズをキャンセルする。ノイズをキャンセルすることで、出力部5により出力される音刺激の効果を高めることができる。
[0081]
 以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。たとえば血流促進装置1、1aは音を発生するため、もともと音を発生する物、たとえばドライヤーや冷蔵庫などの家電機器に搭載されてもよい。
[0082]
 本開示の態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の血流促進装置は、血流促進のための音刺激を設定する設定部と、設定された音刺激を発生する音発生部と、を備え、設定部は、音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定する。
[0083]
 音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を人に与えることで、人の血流が促進される。
[0084]
 音発生部は、連続音の音刺激を発生してよい。また音発生部は、音刺激の出力期間と、音刺激の非出力期間とを交互に繰り返す間欠的なパターンで音刺激を発生してよい。設定部は、対象者との距離に応じて、音発生部から発生する音量レベルを決定してよい。このとき設定部は、対象者において音刺激を与えたい場所、たとえば患部との距離に応じて、音量レベルを決定するのが好ましい。設定部は、冷え症、肝斑、褥瘡または肩こりの症状改善、疲労回復、生活習慣病の予防または改善、エコノミークラス症候群や糖尿病患者の四肢壊疽を含む血管閉塞性疾患の予防または改善、認知症の予防または改善、またはダイエットを含む美容効果の向上の少なくともいずれかのための音刺激を設定してよい。
[0085]
 血流促進装置は、対象者の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、設定部が、取得した生体情報に応じて、音刺激を設定してよい。血流促進装置は、音発生部が発生する音刺激を出力する出力部を備えてよい。血流促進装置は、対象者の特定の部位を検出する検出部を備え、出力部は、前記検出部が検出した部位に対して、音刺激を出力してよい。血流促進装置は、椅子やベッドに搭載されて、対象者に音刺激を出力してよい。
[0086]
 本開示の別の態様の血流促進装置は、機械刺激受容体を活性化するための音刺激を設定する設定部と、設定された音刺激を発生する音発生部と、を備え、設定部は、音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定する。
[0087]
 音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を人に与えることで、イオンチャネルピエゾ1等の機械刺激受容体を活性化できる。
[0088]
 本開示の別の態様のプログラムは、コンピュータに、音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定する機能と、設定された音刺激を発生する機能とを実現させるためのプログラムである。
[0089]
 音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を人に与えることで、人の血流が促進される。
[0090]
 音発生機能は、他の音に、音刺激を重畳する機能を含んでよい。

産業上の利用可能性

[0091]
 本開示は、音刺激を利用する技術に関する。

符号の説明

[0092]
1、1a・・・血流促進装置、2・・・操作受付部、3・・・設定部、4・・・音発生部、5・・・出力部、6・・・検出部、7・・・生体情報取得部、8・・・ノイズキャンセル部。

請求の範囲

[請求項1]
 血流促進のための音刺激を設定する設定部と、
 設定された音刺激を発生する音発生部と、を備え、
 前記設定部は、音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定する、
 ことを特徴とする血流促進装置。
[請求項2]
 前記音発生部は連続音の音刺激を発生する、
 ことを特徴とする請求項1に記載の血流促進装置。
[請求項3]
 前記音発生部は、音刺激の出力期間と、音刺激の非出力期間とを交互に繰り返す間欠的なパターンで音刺激を発生する、
 ことを特徴とする請求項1に記載の血流促進装置。
[請求項4]
 前記設定部は、対象者との距離に応じて、前記音発生部から発生する音量レベルを決定する、
 ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の血流促進装置。
[請求項5]
 前記設定部は、冷え症、肝斑、褥瘡または肩こりの症状改善、疲労回復、生活習慣病の予防または改善、血管閉塞性疾患の予防または改善、認知症の予防または改善、またはダイエットを含む美容効果の向上の少なくともいずれかのための音刺激を設定する、
 ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の血流促進装置。
[請求項6]
 対象者の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、
 前記設定部は、取得した生体情報に応じて、音刺激を設定する、
 ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の血流促進装置。
[請求項7]
 前記音発生部が発生する音刺激を出力する出力部を備える、
 ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の血流促進装置。
[請求項8]
 対象者の特定の部位を検出する検出部を備え、
 前記出力部は、前記検出部が検出した部位に対して、音刺激を出力する、
 ことを特徴とする請求項7に記載の血流促進装置。
[請求項9]
 請求項7または8に記載の血流促進装置を備えた椅子であって、着座している対象者に対して、前記出力部が音刺激を出力することを特徴とする椅子。
[請求項10]
 請求項7または8に記載の血流促進装置を備えたベッドであって、体がベッドに接触している対象者に対して、前記出力部が音刺激を出力することを特徴とするベッド。
[請求項11]
 機械刺激受容体を活性化するための音刺激を設定する設定部と、
 設定された音刺激を発生する音発生部と、を備え、
 前記設定部は、音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定する、
 ことを特徴とする血流促進装置。
[請求項12]
 コンピュータに、
 音量レベルを65デシベル以上、周波数を5から250ヘルツの間の値とする音刺激を設定する機能と、
 設定された音刺激を発生する機能と、
 を実現させるためのプログラム。
[請求項13]
 音発生機能は、他の音に、音刺激を重畳する機能を含む、
 ことを特徴とする請求項12に記載のプログラム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]

[ 図 29]

[ 図 30]

[ 図 31]

[ 図 32]

[ 図 33]

[ 図 34]

[ 図 35]