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1. WO2020129348 - 不妊・不育症または妊娠状態を改善するための薬剤

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明 細 書

発明の名称 不妊・不育症または妊娠状態を改善するための薬剤

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044  

先行技術文献

特許文献

0045  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0046   0047   0048  

課題を解決するための手段

0049   0050   0051   0052   0053   0054  

発明の効果

0055   0056  

図面の簡単な説明

0057  

発明を実施するための形態

0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125  

実施例

0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178  

産業上の利用可能性

0179   0180   0181   0182  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1a   1b   2a   2b   3a   3b   4   5a   5b   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 不妊・不育症または妊娠状態を改善するための薬剤

技術分野

[0001]
 本発明は、特定の免疫抑制成分を含んでなる、母体と胎児間の免疫相互作用に影響される不妊・不育症または妊娠状態を改善するための薬剤に関する。特にこのような薬剤の代表例には、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させるための薬剤が挙げられる。

背景技術

[0002]
 反復着床不全(RIF)や反復流産(RPL)を含む不妊・不育症は、世界中で約1億9,000万人存在すると推定され、生殖可能夫婦の8%~12%に値する[参考文献1]。
[0003]
 不妊・不育症の原因は多数存在し、受精卵や胎児の問題、母体の問題、母体と胎児の相互作用に関連する問題等に大きく分類される。
[0004]
 受精卵もしくは胎児または母体の問題は、既存の治療法により治療され、患者の80%~90%が出産を成功させることが可能である。しかし、残りの10%~20%には、母体と胎児の相互作用である母体と胎児間での免疫に関連した異常による不妊・不育症患者が含まれており、既存の治療法では治療が困難である[参考文献2]。
[0005]
 この難しさの1つの理由は、これらの母体と胎児間での免疫に関連した異常に焦点を当てた新規治療の開発の遅れであると考えられる。
[0006]
 いくつかの免疫抑制剤または免疫調節剤が候補に挙げられ、その治療法がこの問題に対してアプローチされてきたが、現時点では臨床使用において適切かつ効果的な治療法はほとんどない[参考文献3]。
[0007]
 母体と胎児間の良好な免疫相互作用は、主に、胎児へ対する拒絶免疫を阻害し、免疫寛容を誘導することである。臓器移植[参考文献4-12]およびがんの分野[参考文献13-18]での免疫学は急速に進歩しており、これらと妊娠には多くの共通した免疫機構がある(図1a)。
[0008]
 身体に侵入した外来物質を迅速に除去する自然免疫と、樹状細胞(Dendritic cell、DC)によって認識された情報に基づいて外来抗原に対する攻撃または免疫寛容を誘導する獲得免疫は、いずれも基本的な免疫学的メカニズムであるが、臓器移植、がんまたは妊娠では、それぞれ異なる特性を有する。
[0009]
 移植における主な免疫メカニズムには、T細胞抗原レセプターによる、ドナー樹状細胞表面上に発現しているペプチド/同種間HLA(アロ-HLA)複合体の直接認識およびレシピエント樹状細胞表面上に発現しているアロ-ペプチド/自己HLA複合体の間接的認識により誘導されたT細胞による拒絶反応が含まれる[参考文献4-7]。
[0010]
 強力な移植片反応は、主にT細胞の直接認識によって引き起こされると考えられ、B細胞の産生する抗アロ-HLA特異的抗体によって引き起こされる慢性拒絶が随伴する。レシピエントB細胞は、ドナー樹状細胞の表面上に発現しているペプチド/同種間HLA(アロ-HLA)複合体を認識結合し、そのB細胞表面上のアロ-HLA由来ペプチド/自己HLAクラスII複合体をTh2細胞が間接的認識することを介して形質細胞へ分化誘導される[参考文献8]。
[0011]
 2つの回避機序ががんの免疫において解明されている。第一に、遺伝的異常を有するがん細胞によって産生された免疫抑制性サイトカイン(TGF-β)が骨髄由来サプレッサー細胞および調節性T細胞(Treg)を誘導することである[参考文献15-16]。
[0012]
 第二に、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)から産生されたIFN-γは、がん細胞の表面および腫瘍浸潤マクロファージ上でプログラム死リガンド(PD-L1)の発現を誘導する。CTLは、PD-1受容体がPD-L1に結合することによって抑制される[参考文献15、17、18]。
[0013]
 絨毛栄養膜(villous trophoblast)細胞の表面上のHLA-G発現は、妊娠の成功における第一段階であり、自然免疫からの回避を達成し、免疫寛容を誘導するための鍵である[参考文献19-26]。しかしながら、母体-胎児の境界面における免疫の不均衡および胎盤バリアーの突破は、他の外来性物質に対する応答と同様に従来の免疫応答を誘導し得、結果的に胎盤構築や胎児成長に有害な影響を及ぼしたり、母体合併症を引き起こす。胎盤を通過した胎児抗原または胎盤での胎児抗原の認識は、母体での胎児細胞内標的タンパク質に対する特異的な抗体の産生を誘導する。
[0014]
 妊娠中の免疫学的な反応は、移植でみられる免疫応答と類似する。しかしながら、妊娠初期の胎児には十分なDC数が存在しないと推定されるため、ペプチド/アロ-HLA複合体の直接認識は妊娠においてとても弱い可能性がある点で異なる。さらに、提示された抗原の抗原性は、胎児の場合は半分の同種異系抗原を有することから弱いものである。抗体産生のプロセスは、移植時のそれと同じである。
[0015]
 従って、自然免疫が妊娠における重要な免疫学的反応であり、その後のDCによるT細胞活性化は、移植の場合より弱い可能性がある。胎児抗原に対する特異的抗体の産生は、アカゲザルD(Rh-D)不適合妊娠および胎児ヘモクロマトーシスにおいて考えられる。しかしながら、アロ-HLA由来のペプチドを含む別の胎児抗原もまた標的として作用する可能性があり、妊娠経験がありTh2細胞比率が高い患者においては、Th2活性化による不妊・不育症への関与が予測される。
[0016]
 胎児を受け入れ、妊娠の継続を成功させるためには、着床環境を整えるとともに受精卵の容認、受精卵および胎児への攻撃の抑制と免疫寛容を含む、母体免疫系へのいくつかの対応が必要とされる(図1b)[参考文献19-43]。
[0017]
 これらのメカニズムの機能不全は、胎児に対する制御されない免疫応答をもたらし、不妊・不育症を引き起こす。また、このような不妊・不育症は、妊娠経験の無い女性やパートナーを代えた女性だけでなく、流産または出産後にも起こる可能性がある。
[0018]
 同じ抗原に対する母体の寛容は、妊娠および出産の成功後に増強すると一般に考えられているが、着床不全、流産および出産でさえも、母体に胎児抗原を認識させる機会を増やし、その結果、拒絶反応の可能性が高まる。これらの事象は、胎児抗原への感作を増強し、拒絶反応を促進することがあり得る。既存の治療法では、これらの患者において妊娠の成功を達成することができない可能性がある。
[0019]
 正常妊娠中に作用する詳細な免疫機構は完全には解明されていないが、免疫寛容の誘導の機会は、同じパートナーで前回の妊娠を経験した母体を含めて、着床前もしくは後に誘導され得る。母体の自然免疫により起こる拒絶反応は、それぞれの妊娠において抑制される必要がある。
[0020]
 胎児由来の絨毛外栄養膜は、組織適合抗原HLA-A、-Bまたは-Dを発現せず[参考文献44]、したがってCTLの標的にはならないが、ナチュラルキラー(NK)細胞の標的になり得る。しかし、上記のHLAタイプの代わりに、栄養膜は、HLA-C、EおよびGを発現している[参考文献19、20、45-49]。
[0021]
 胎児母系HLA-Cミスマッチは母体T細胞活性化と関連するが、精液プライミング、十分なプロゲステロンの存在、HLA-Gを含むいくつかの条件下で免疫応答を免疫寛容の方向に切り替えることができる[参考文献26、45-48](図2a)。この反応は、未成熟DC(imDC)から寛容原性DC(tDC)へのDCの分化を促進し、続いて指示された調節性T細胞を介して免疫寛容を誘導する[参考文献50-53]。HMHAI、KIAA0020、BCL2A1および雄抗原(H-Y)のようなマイナーな組織適合抗原に対しても同様の所見が観察され、これらは絨毛外栄養膜細胞上で発現される[参考文献54-57]。
[0022]
 HLA-Eは脱落膜におけるNK細胞の活性を抑制し[参考文献49]、絨毛外栄養膜細胞の表面上のHLA-Gの発現は、NK攻撃からの回避およびマクロファージ活性化の阻害を誘導する[参考文献21-24]。抑制されたNK/NKT細胞は、パーフォリンおよびグランザイムまたはグラニュライシンおよびタイプ1サイトカイン産生をダウンレギュレートする。マクロファージからのタイプ1サイトカインの産生もまた抑制され、NK/NKT細胞活性の減少した増強に寄与する(図2b)。
[0023]
 RIFまたはRPLを有する患者における免疫学的拒絶反応の主な機序は、Th1タイプ免疫であり[参考文献58-64]、末梢血中のTh1、Th2、Th17、Treg、NK/NKTおよびDCと重複するが同一ではない[参考文献63]。子宮内で起こる免疫学的変化は上記のとおりであるが、RIF患者の免疫学的問題は、通常ではTh1タイプ免疫が優位であることにより引き起こされ、妊娠前よりTh1タイプ免疫の活性は持続的に上昇している。一方、RPL患者では胎児へ対する免疫学的拒絶反応を活性化させる様々な要因がある。
[0024]
 免疫反応は、着床後に開始され、胎児抗原は、妊娠中の母体-胎児の境界面で以下の3つの経路を介して認識され得る:
-着床後の絨毛外栄養膜、
-胎盤における合胞体栄養細胞、および、
-胎盤の完成後の母体の胎児細胞または抗原の循環。
[0025]
 RIFとRPLとの間で免疫学的変化が異なるという仮説は、不妊・不育症患者の子宮におけるNK細胞の亜集団によって支持される。RIF患者においてCD56 bright/NKp44+細胞が増加し、CD56 dim/NKp46+細胞が減少し、一方、CD56 dim/NKp46+細胞はRPL患者で増加したと報告されている[参考文献37、65-70](図3a)。
[0026]
 異なるNK細胞は、異なるメカニズムによって標的細胞を攻撃する。CD56 bright/NKp44+およびCD56 dim/NKp46+細胞は、granzyme Bとともに、それぞれgranulysinおよびperforinを介して標的細胞アポトーシスを誘導する[参考文献71、72]。長期刺激は、CD56 brim/NKp44+細胞からのgranulysin産生を誘導するのに必要であるが、CD56 dim/NKp46+細胞におけるgranzyme B産生を伴うパーフォリンを誘導しない。したがって、Th1タイプ免疫の長期曝露は、RIF患者の子宮におけるCD56 bright/NKp44+活性化を導く[参考文献71、72]。
[0027]
 これらの知見に基づいて、診断パラメータを同定し、免疫抑制剤治療が適応となるRIF患者を選択することは比較的容易である。しかしRPL患者においては、妊娠中に、異なる経路で異なる時期に母体が胎児抗原を認識する複数の機会があるため、適応患者の選択はより複雑である。
[0028]
 受精卵の着床と子宮内の脱落膜への絨毛の浸潤、胎児から母体の血液循環への抗原の移行は胎盤構築後に時間の経過と共に増加し、妊娠中期以降に加速する。免疫学的反応の2つのピークは、理論的には母体-胎児間の境界面で起こるが、これらの胎児に対する免疫反応のタイミングおよび強度は多様である。胎児の安全性を確保するためには、妊娠初期の同種免疫攻撃の抑制と胎児の完全免疫寛容が重要なポイントである。子宮における母体免疫反応のいくつかのパターンを図3bに示す。
[0029]
 一方、獲得免疫は、ヘルパーT細胞の種類や作用の仕方によって、さらに「細胞性免疫」と「液性免疫」に分類される。母体と胎児とが関連する免疫系の疾患または症状としては、例えば、「細胞性免疫」については、着床障害による不妊症、胎盤構築障害による不育症、妊娠高血圧症等が挙げられ、一方、母体と胎児とが関連する液性免疫については、血液型不適合妊娠または胎児ヘモクロマトーシスが挙げられる。
[0030]
 免疫と妊娠との関係について、例えば特許文献1には、「細胞性免疫」が起因する不妊・不育症の治療薬として、特定の免疫抑制剤を有効成分とする治療薬が記載されている。
[0031]
 胎盤は母体と胎児との血液の混合を避けるように構成されているが、血液細胞を含む少量の胎児抗原は胎盤(胎児母体間輸血、FMT)を介して母体循環に入る。FMTは出産中に最も頻繁に起こるが、ほとんどの症例で明らかな臨床的意義はなく[参考文献1a~3a]、誘発または自然流産をもたらす妊娠を含むすべての妊娠中にも起こりうる。
[0032]
 胎児抗原に対する抗体は、母体の免疫寛容能力を超える抗原性および外来抗原として認識される場合、母体において産生される。生成された病原性抗体は、他のIgG抗体と同様に胎盤を介して胎児循環系に移動し、標的胎児細胞または抗原を攻撃する。
[0033]
 胎盤の構築が完了した後、胎児から母体へ移入する抗原量は妊娠経過と共に増加する。従って、母体の胎児に対する病原抗体産生量も増加し、胎児の状態の悪化は病原抗体産生量に比例して観察され、特に妊娠中期以降に加速する。
[0034]
血液型不適合
 例えば母体がRho(D)陰性であって胎児がRho(D)陽性である妊娠は、血液型不適合妊娠とされている。胎盤構築後、微量ではあるが血球成分を含む胎児抗原は胎児から胎盤を介して母体へ移行する。この時、移行してきた胎児抗原が母体の免疫寛容能力を超える抗原または寛容されない抗原に対しては、母体により抗体が産生され、その抗体は他の抗体と同様に胎盤を介して胎児へ移行し、胎児の細胞を標的として攻撃する。血液型不適合妊娠では母体から産生された抗D抗体が胎盤を介して胎児へ移行し、胎児血中の赤血球を破壊し、胎児貧血、後には重篤な胎児水腫や子宮内胎児死亡を引き起こす[参考文献4a]。この病態は初回妊娠では顕著ではなく、2回目の妊娠以降に、感作の機会が増すごとに重症化する。また、胎盤の構築が行われた後、移行抗原量は妊娠経過とともに徐々に増すため妊娠週数とともに病態が進行する。特に移行量の多くなる中期以降に急速に悪化することが多い。現在知られている治療は、母体より産生された抗D抗体を除去するための血漿交換、貧血に陥ってしまった胎児へ対し胎児輸血を行い、リスクの低い状態での出産を促すことである。或いは、D抗原への感作を防ぐために、Rh不適合の妊娠の女性は、妊娠中にRh免疫グロブリン(Ig)で治療しなければならず、患者がまだ感作されていない場合には出産または中絶後に治療するべきである。これはRhDにのみならず、他の血液型においても母体胎児間で不適合となることによって血液型不適合妊娠が発症する可能性はある。
[0035]
 抗D抗体を有する母体は、母体血中抗体価と妊娠中の胎児性貧血の予測指標である胎児中大脳動脈(MCA)血流速度を測定するためにドップラー超音波検査に基づいた管理が必要となる[参考文献5a]。
[0036]
 一方、胎児ヘモクロマトーシスは、胎児期、新生児期に重篤な肝不全をおこす疾患であり、その原因としては同種免疫性胎児肝障害が推定されている。病原となる抗原は同定されていないが、胎児の鉄代謝に関連する蛋白(酵素など)が母体のそれとは異なる状況で妊娠した場合に発症する。
[0037]
 妊娠後は胎盤構築が完成された後に胎児の鉄代謝に関連する胎児蛋白は胎盤を介して母体へ移行し、その移行した胎児蛋白抗原に対する母体の免疫応答により母体内で病原抗体が産生される。母体内で産生された病原抗体は胎盤を介して胎児へ移行し、その抗体は胎児体内で鉄代謝に関連する胎児蛋白を攻撃することにより発症する胎児鉄代謝障害が基本病態である。
[0038]
 同じ母体からの胎児ヘモクロマトーシスの再発率は90%であり、治療においては1990年頃から鉄キレート剤と抗酸化剤を用いた内科的治療と肝移植との併用療法が行われていたが、児の生存割合は高くても50%程度であった。2009年には新たな治療法として出生後の胎児の交換輸血と大量γグロブリン療法による治療法が報告されており、児の生存割合は75%に改善している。
[0039]
 現在の治療方法は、妊娠中に母体へ大量のγグロブリン療法を行い胎児ヘモクロマトーシスの発症を予防するものである。しかしながら、大量のγグロブリンが必要となることから、更なる治療方法が求められている。
[0040]
妊娠高血圧症候群
 妊娠時に高血圧を発症した場合を、妊娠高血圧症候群(HDP)という。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠(CH)と呼び、妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症(GH)に分類され、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症(PE)に分類される。2018年からは蛋白尿を認めなくても肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や胎児の発育が不良になれば、妊娠高血圧腎症に分類されるようになった。妊娠高血圧症候群が重症化するとHELLP症候群、子癇(eclampsia)、中枢神経障害などの関連疾患を発症する場合がある。
[0041]
HELLP症候群
 HELLP症候群は、妊娠時または分娩時に生じる母体や胎児の生命の危険を伴う一連の症候(溶血:H、肝機能障害:EL、血小板低下:LP)を示す状態であり、妊娠高血圧症候群に関連する疾患である。HELLP症候群が認められた場合は、緊急に急遂分娩または帝王切開による妊娠継続の終了に移る必要がある。
[0042]
子癇
 子癇は、周産期に患者が異常な高血圧と共に痙攣または意識喪失、視野障害を起こした状態である。分娩前、分娩中、産褥期にも起こりうる。子癇は、高血圧にともなう脳組織の循環障害と機能障害であり、これも妊娠高血圧症候群に関連する疾患である。
[0043]
 妊娠高血圧症候群やその関連疾患(HELLP症候群、子癇など)では、胎児発育不全、常位胎盤早期剥離、胎児機能不全、胎児死亡など、母体と胎児共に大変危険な状態となる場合があるため、妊娠において妊娠高血圧症候群やその関連疾患(子癇、HELLP症候群など)を発症予防あるいは発症遅延させることは大変重要な課題となっている。
[0044]
 HELLP症候群や子癇の原因は明確ではないが、妊娠高血圧症候群に合併することが知られている[参考文献1b、2b]。妊娠高血圧症候群のカテゴリーの中から母体側の根本的な問題としての誘因である高血圧、腎機能障害、加齢、肥満を除くと、残りのカテゴリーは胎盤の構築障害であり、それは異常な母体-胎児間の免疫によって引き起こされているのであろうと考えられている[参考文献3b~10b]。異常な母体-胎児間の免疫は、細胞性免疫やT細胞を介した液性免疫による攻撃の抑制や胎児抗原の免疫寛容が不十分であることとされている[参考文献11b]。

先行技術文献

特許文献

[0045]
特許文献1 : 国際公開2016/068208号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0046]
 本発明は、特定の免疫抑制成分を含んでなる、母体と胎児間の免疫相互作用に影響される不妊・不育症または妊娠状態を改善するための薬剤、特に、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させるための薬剤を提供することを目的とする。
[0047]
 併せて、本発明は、正常な免疫状態を回復させることにより、血液型不適合妊娠または胎児ヘモクロマトーシスを治療または改善することを目的とする。
[0048]
 さらに、本発明は、胎児に対する母体の拒絶免疫の活性化の抑制と胎児へ対する寛容を促進することにより、妊娠高血圧症候群および/またはその関連疾患の発症を予防または遅延することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0049]
 すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は以下の実施形態を包含する。
[0050]
(実施形態1)
 (i)  式(I)
[化1]


(式中、R およびR 、R およびR 、R およびR の隣接するそれぞれの対は、各々独立して、
(a)2つの隣接する水素原子を表すか、もしくはR はアルキル基であってもよく、または
(b)結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
は、水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基であるか、もしくはR と一緒になってオキソ基を表わし;
およびR は独立して、水素原子、ヒドロキシ基を表わし;
10は、水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、またはオキソ基によって置換されたアルキル基を表わし;
Xは、オキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式-CH O-で表わされる基を表わし;
Yは、オキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式N-NR 1112もしくはN-OR 13で表わされる基を表わし;
11およびR 12は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基またはトシル基を表わし;
13、R 14、R 15、R 16、R 17、R 18、R 19、R 22およびR 23は独立して、水素原子またはアルキル基を表わし;
24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環を表わし;
nは1または2を表わし、
上記の意味に加え、さらにY、R 10およびR 23は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環の、窒素原子、硫黄原子および酸素原子より選択される1以上の複素原子を含有する複素環基を形成してもよく、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、ベンジル基、式-CH Se(C )で表わされる基、および1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分として含む、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させるための薬剤。
(実施形態2)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、ステロイドホルモン受容体の活性化と核内移行による、ステロイドホルモンの作用増強を誘導するための薬剤。
 ここで、ステロイドホルモンにはグルココルチコイド、ミネラロコルチコイド、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲンなどが含まれる。妊娠においては着床前の、主にプロゲステロンによる子宮内膜の分化促進と子宮内の免疫抑制により、受精卵もしくは胎児を受け入れるための子宮内環境を良好にする薬剤をも提供可能である。
(実施形態3)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、子宮内において、受精卵もしくは胎児成分により活性化される可能性のある自然免疫に代表されるナチュラルキラー/ナチュラルキラーT細胞またはマクロファージの活性を抑制するための薬剤。
(実施形態4)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、子宮内において、受精卵もしくは胎児を獲得免疫により直接もしくは間接的に攻撃する可能性のある、受精卵もしくは胎児成分の抗原を提示する抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージなど)、細胞障害性T細胞もしくは細胞間伝達物質を産生するT細胞の活性を阻害するための薬剤。
(実施形態5)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、受精卵もしくは胎児を免疫寛容するために必要な抗原提示細胞を誘導するための、または、未分化樹状細胞から寛容型樹状細胞への分化を誘導するための薬剤。
(実施形態6)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、ヒト白血球抗原(HLA:Human Leukocyte Antigen)を含めた胎児成分に対する、液性免疫応答、すなわち胎児特異抗体の産生を抑制するための薬剤。尚、胎児特異抗体の産生により引き起こされる病態としては、不妊症、不育症における受精卵、胎児の拒絶反応や血液型不適合妊娠、新生児ヘモクロマトーシスなどを含む。
(実施形態7)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、妊娠の継続に問題をきたす母体内での病原抗体の産生を抑制するための薬剤。ここで、当該病原抗体としては、抗リン脂質抗体症候群を代表とする自己抗体などを含む。
(実施形態8)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、胎児に対する母体の拒絶免疫の活性化の抑制および/または胎児へ対する寛容を促進するための薬剤。
(実施形態9)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、妊娠高血圧症候群および/または妊娠高血圧症候群に関連する疾患を発症予防または発症遅延するための薬剤。
(実施形態10)
 妊娠高血圧症候群に関連する疾患がHELLP症候群である、実施形態9の薬剤。
(実施形態11)
 妊娠高血圧症候群に関連する疾患が子癇である、実施形態9の薬剤。
(実施形態12)
 有効成分が式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式(I)の化合物がタクロリムスまたはその薬学的に許容される塩である、実施形態1~11のいずれかの薬剤。
[0051]
 更に、本発明は、以下の実施形態をも包含する。
(実施形態13)
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の反応免疫の阻害のための薬剤。
(実施形態14)
 タクロリムスまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、実施形態13に記載の薬剤。
[0052]
 また、本発明の化合物は、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させるための薬剤となり得るため、本発明の化合物を用いて以下の治療を提供することが可能となり、同様に、本発明の化合物は、以下の治療のための薬剤となり得る。
[0053]
(実施形態15)
 母体と胎児との関係における液性免疫が関連する疾患の治療、またはそのための薬剤。
(実施形態16)
 母体と胎児との関係における液性免疫が関連する疾患が、血液型不適合妊娠である、実施形態15の治療、またはそのための薬剤。
(実施形態17)
 母体と胎児との関係における液性免疫が関連する疾患が、胎児へモクロマトーシスである、実施形態15の治療、またはそのための薬剤。
(実施形態18)
 第2子以降の妊娠に適用される、実施形態15の治療、またはそのための薬剤。
(実施形態19)
 妊娠初期より投与される、実施形態15の治療、またはそのための薬剤。
(実施形態20)
 妊娠初期より1~10mg/日の用量で投与される、実施形態15の治療、またはそのための薬剤。
(実施形態21)
 妊娠初期より3~6mg/日の用量で投与される、実施形態151の治療、またはそのための薬剤。
(実施形態22)
 血液型不適合妊娠の可能性のある患者に式(I)の化合物を妊娠初期より1~10mg/日の投与量で投与される、実施形態15の治療、またはそのための薬剤。
[0054]
 更には、本発明の化合物の作用機序を考慮すると、本発明の化合物は、以下の方法のための薬剤となり得る。
(実施形態23)
 高いTh2細胞比率とその活性によるB細胞への作用が関与する液性免疫の抑制。

発明の効果

[0055]
 本発明により、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させ、その結果、血液型不適合妊娠または胎児ヘモクロマトーシスを治療または改善することが可能となる。
[0056]
 また、本発明により、胎児に対する母体の拒絶免疫の活性化の抑制と胎児へ対する寛容を促進し、その結果、妊娠高血圧症候群および/またはその関連疾患の発症を予防または遅延することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0057]
[図1a] 母性免疫が、臓器移植およびがんとの多くの共通免疫機構を共有することを示す図である。
[図1b] 着床の容認、胎児の攻撃の抑制、および胎児の免疫寛容が、妊娠の成功を達成するために重要であり、これらの点のいずれかの機能不全は不妊・不育症をもたらす可能性があることを示す図である。
[図2a] 胎児-母性HLA-Cミスマッチが、母体T細胞活性化に関連していることを示す図である。免疫応答は、種々の条件下で免疫寛容の方向に切り替えることができる。
[図2b] 絨毛外栄養膜(extravillous trophoblast)(EVT)はHLA-A、-B、-Dを発現しないため、細胞傷害性T細胞の標的ではなく、NK細胞(CD16+/CD56 dim)の標的になる可能性があることを示す図である。EVTは、HLA-C、E、およびGを発現する。HLA-C発現は免疫寛容に関連し、HLA-EはNK細胞活性を抑制し、HLA-GはNK細胞攻撃を避けるよう影響し、マクロファージによるI型サイトカインの産生を抑制する(図3b参照)。ILTはIg様転写物、KIRはキラー細胞Ig様受容体、HLAはヒト白血球抗原を示す。HLA-A、B、およびCはMHCクラスIaに属し、HLA-E、FおよびGはMHCクラスIbに属し、HLA-DR、DQおよびDPは、MHCクラスIIに属する。
[図3a] 反復着床不全(RIF)および反復流産(RPL)がいずれも優勢なTh1タイプ免疫と関連していることを示す図である。全身における持続的Th1タイプ優性免疫は、RIF患者への着床前の子宮の状態を反映することがあるが、RPL患者への着床後、子宮の状態は全身の状態を正確に反映しないことがある。この理論は、子宮内のNK細胞亜集団から推測することができる。
[図3b] Th1タイプ免疫のいくつかの変動パターンの推定図である。活性化のタイミングは、着床前、母体が最初に胎児を認識する妊娠直後、および胎児抗原が胎盤を介して母体循環に入るようになったときの第2妊娠期である。
[図4] タクロリムスの細胞内作用機序を示す図である。タクロリムスは、特定の受容体を認識して結合し、いくつかの細胞および分子経路に作用する。活性化されたFKBPは、カルシニューリン活性の阻害を介してNFAT経路へ抑制的に影響し、ステロイドホルモンシャペロン複合体と結合することによって複合体からのホルモン受容体放出および核内移行を誘導する。GRはグルココルチコイド受容体、NFATは活性化T細胞の核因子、ERは小胞体を示す。
[図5a] 不妊・不育症患者におけるタクロリムスによる治療の可能性を示唆する図である。プロゲステロン受容体の活性化は、着床中の子宮内膜の成熟を誘導することができる。タクロリムスの主な作用は、活性化されたNK/NKT細胞および活性化Th1細胞の直接抑制である。imDCのtDCへの成熟が誘導され、胎児に対する免疫寛容に影響を及ぼすことができる。
[図5b] 不妊・不育症治療のためのタクロリムスによる免疫学的コントロールを示す図である。タクロリムスは、臓器移植または膠原病におけるその用途とは異なり、不妊・不育症では高められた免疫レベルを正常レベルへ戻すために使用される。従って、不妊・不育症を治療するために用いるタクロリムスの用量は、他の疾患に用いられる量と比較して低用量でよい。
[図6] 上段は患者のTh1、Th2およびその比を示すグラフである。当初にTh1/Th2の比が高いことは、免疫系の異常による不妊症であることを示唆している。下段は、妊娠週における妊婦の抗D抗体の力価を示すグラフである。妊娠初期からのタクロリムス投与により抗体価の上昇は緩徐であったが、急速に上昇し始めた妊娠28週に投与量を増量(5mg/日)したことにより、抗D抗体の力価がさらに上昇せず安定していることがわかる。
[図7] 妊娠週における胎児の体重、および中大脳動脈の血流速度を示すグラフである。妊娠初期からタクロリム投与の増量(5mg/日)が必要となった28週以降も順調に体重が増加し、胎児貧血の尺度である血流速度は週数相当であった。
[図8] CD4陽性細胞中のTh1およびTh2細胞の割合とNK細胞活性の妊娠中の変化を示すグラフである。CD4陽性細胞中のTh1およびTh2細胞の割合は継続的に低下していた一方、NK細胞活性は妊娠中期には低下した後、妊娠32週の検査では顕著に上昇していた。

発明を実施するための形態

[0058]
 以下、本発明について詳細に説明する。
[0059]
 すなわち、本発明は、
(i) 式(I)
[化2]


(式中、R およびR 、R およびR 、R およびR の隣接するそれぞれの対は、各々独立して、
(a)2つの隣接する水素原子を表すか、もしくはR はアルキル基であってもよく、または
(b)結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく(すなわち、二重結合を形成する);
は、水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基であるか、もしくはR と一緒になってオキソ基を表わし;
およびR は独立して、水素原子、ヒドロキシ基を表わし;
10は、水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、またはオキソ基によって置換されたアルキル基を表わし;
Xは、オキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式-CH O-で表わされる基を表わし;
Yは、オキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式N-NR 1112もしくはN-OR 13で表わされる基を表わし;
11およびR 12は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基またはトシル基を表わし;
13、R 14、R 15、R 16、R 17、R 18、R 19、R 22およびR 23は独立して、水素原子またはアルキル基を表わし;
24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環を表わし;
nは1または2を表わし、
上記の意味に加え、さらにY、R 10およびR 23は、それらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環の、窒素原子、硫黄原子および酸素原子より選択される1以上の複素原子を含有する複素環基を形成してもよく、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、ベンジル基、式-CH Se(C )で表わされる基、および1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分として含む、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させるための薬剤、を提供する。
[0060]
 式(I)の化合物において、R 24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環を表わし、具体的には5員~7員の炭素環または5員または6員の複素環基である。5員または6員の複素環基としては、例えば、飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環の、窒素原子、硫黄原子および酸素原子より選択される1以上の複素原子を含有する複素環基である。好ましいR 24としては、適当な置換基を有していてもよいシクロ(C 5-)アルキル基を挙げることが出来るが、例えば次のような基を例示することが出来る。
(a)3,4-ジオキソ-シクロヘキシル基;
(b)3-R 20-4-R 21-シクロヘキシル基、
ここで、R 20は、ヒドロキシ、アルキルオキシ、オキソ、またはOCH OCH CH OCH を表わし、およびR 21は、ヒドロキシ、-OCN、アルキルオキシ、適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ、-OCH OCH CH OCH 、保護されたヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド基若しくはp-トリルオキシチオカルボニルオキシ、またはR 2526CHCOO-(式中、R 25は所望により保護されていてもよいヒドロキシ基、または保護されたアミノ基を表わし、およびR 26は水素原子またはメチルを表わす)を表わすか、またはR 20とR 21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子(すなわち、-O-)を形成する;または
(c)シクロペンチル基であって、そのシクロペンチル基は、メトキシメチル、所望により保護されたヒドロキシメチル、アシルオキシメチル(その中において、アシル部分は、所望により4級化されていてもよいジメチルアミノ基またはエステル化されていてもよいカルボキシ基である)、1以上の保護されていてもよいアミノおよび/またはヒドロキシ基、またはアミノオキザリルオキシメチルで置換されていてもよく、好ましい例は、2-ホルミル-シクロペンチル基である。
[0061]
 本明細書において使用されている各定義およびその具体例、並びにその好ましい実施態様を、以下に詳細に説明する。
[0062]
 「低級」とは、特に指示がなければ炭素原子1~6個を有する基を意味するものとする。
[0063]
 「アルキル基」および「アルキルオキシ基」のアルキル部分の好ましい例としては、直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等の炭素数1~6の低級アルキル基が挙げられる。
[0064]
 「アルケニル基」の好ましい例としては、1個の二重結合を含有する直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばビニル、プロペニル(アリル等)、ブテニル、メチルプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル等の低級アルケニル基が挙げられる。
[0065]
 「アリール基」の好ましい例としては、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル等が挙げられる。
[0066]
 「保護されたヒドロキシ基」および「保護されたアミノ」における好ましい保護基としては、例えばメチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオメチル、イソプロピルチオメチル、ブチルチオメチル、イソブチルチオメチル、ヘキシルチオメチル等の低級アルキルチオメチル基のような1-(低級アルキルチオ)(低級)アルキル基、さらに好ましいものとしてC ~C アルキルチオメチル基、最も好ましいものとしてメチルチオメチル基;例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、第三級ブチル-ジメチルシリル、トリ第三級ブチルシリル等のトリ(低級)アルキルシリル、例えばメチル-ジフェニルシリル、エチル-ジフェニルシリル、プロピル-ジフェニルシリル、第三級ブチル-ジフェニルシリル等の低級アルキル-ジアリールシリル等のようなトリ置換シリル基、さらに好ましいものとしてトリ(C ~C )アルキルシリル基およびC ~C アルキルジフェニルシリル基、最も好ましいものとして第三級ブチル-ジメチルシリル基および第三級ブチル-ジフェニルシリル基;カルボン酸、スルホン酸およびカルバミン酸から誘導される脂肪族アシル基、芳香族アシル基および芳香族基で置換された脂肪族アシル基のようなアシル基;等が挙げられる。
[0067]
 脂肪族アシル基としては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、カルボキシアセチル、カルボキシプロピオニル、カルボキシブチリル、カルボキシヘキサノイル等の、カルボキシのような適当な置換基を1個以上有していてもよい低級アルカノイル基;例えばシクロプロピルオキシアセチル、シクロブチルオキシプロピオニル、シクロヘプチルオキシブチリル、メンチルオキシアセチル、メンチルオキシプロピオニル、メンチルオキシブチリル、メンチルオキシペンタノイル、メンチルオキシヘキサノイル等の、低級アルキルのような適当な置換基を1個以上有していてもよいシクロ(低級)アルキルオキシ(低級)アルカノイル基;カンファースルホニル基;例えばカルボキシメチルカルバモイル、カルボキシエチルカルバモイル、カルボキシプロピルカルバモイル、カルボキシブチルカルバモイル、カルボキシペンチルカルバモイル、カルボキシヘキシルカルバモイル等のカルボキシ(低級)アルキルカルバモイル基、または例えばトリメチルシリルメトキシカルボニルエチルカルバモイル、トリメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリエチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、第三級ブチルジメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリメチルシリルプロポキシカルボニルブチルカルバモイル基等のトリ(低級)アルキルシリル(低級)アルキルオキシカルボニル(低級)アルキルカルバモイル基等の、カルボキシもしくは保護されたカルボキシのような適当な置換基を1個以上有する低級アルキルカルバモイル基等が挙げられる。
[0068]
 芳香族アシル基としては、例えばベンゾイル、トルオイル、キシロイル、ナフトイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ニトロナフトイル等の、ニトロのような適当な置換基を1個以上有してもよいアロイル基;例えばベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル、キシレンスルホニル、ナフタレンスルホニル、フルオロベンゼンスルホニル、クロロベンゼンスルホニル、ブロモベンゼンスルホニル、ヨードベンゼンスルホニル等の、ハロゲンのような適当な置換基を1個以上有していてもよいアレーンスルホニル基等が挙げられる。
[0069]
 芳香族基で置換された脂肪族アシル基としては、例えばフェニルアセチル、フェニルプロピオニル、フェニルブチリル、2-トリフルオロメチル-2-メトキシ-2-フェニルアセチル、2-エチル-2-トリフルオロメチル-2-フェニルアセチル、2-トリフルオロメチル-2-プロポキシ-2-フェニルアセチル等の、低級アルキルオキシまたはトリハロ(低級)アルキルのような適当な置換基を1個以上有していてもよいアリール(低級)アルカノイル基等が挙げられる。
[0070]
 上記アシル基中、さらに好ましいアシル基としては、カルボキシを有してもよいC ~C アルカノイル基、シクロアルキル部分に(C ~C )アルキルを2個有するシクロ(C ~C )アルキルオキシ(C ~C )アルカノイル基、カンファースルホニル基、カルボキシ(C ~C )アルキルカルバモイル基、トリ(C ~C )アルキルシリル(C ~C )アルキルオキシカルボニル(C ~C )アルキルカルバモイル基、ニトロ基を1個または2個有していてもよいベンゾイル基、ハロゲンを有するベンゼンスルホニル基、C ~C アルキルオキシトリハロ(C ~C )アルキルを有するフェニル(C ~C )アルカノイル基が挙げられ、それらのうち、最も好ましいものとしては、アセチル、カルボキシプロピオニル、メンチルオキシアセチル、カンファースルホニル、ベンゾイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ヨードベンゼンスルホニルおよび2-トリフルオロメチル-2-メトキシ-2-フェニルアセチルが挙げられる。
[0071]
 「5員~7員の炭素環」としては、5員~7員のシクロアルキル基またはシクロアルケニル基が例示され、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルまたはシクロへプテニルが挙げられる。
[0072]
 「飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環の、窒素原子、硫黄原子および酸素原子より選択される1以上の複素原子を含有する複素環基」の好ましい例としては、ピロリル基、テトラヒドロフリル基等が挙げられる。
[0073]
 「適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ」の中の「適当な置換基を有していてもよいヘテロアリール」部分とは、EP-A-532,088中の式で表される化合物の基R として例示のものが挙げられるが、例えば、1-ヒドロキシエチルインドール-5-イルが好ましい。その開示を引用して明細書記載の一部とする。
[0074]
有効成分
 本発明においては、有効成分として、(i)式(I)で表される化合物若しくはその薬学的に許容される塩、(ii)サイクロスポリン類、または、(iii)ラパマイシン若しくはその誘導体を用いることができる。尚、有効成分として、(i)式(I)で表される化合物、(ii)サイクロスポリン類、または、(iii)ラパマイシン若しくはその誘導体の2種以上を併用して用いてもよい。以下にそれぞれの有効成分について説明する。
[0075]
(i) 式(I)で表される化合物
 本発明において使用される式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、前記で説明したとおりであるが、具体的には、例えば、EP-A-184162、EP-A-323042、EP-A-423714、EP-A-427680、EP-A-465426、EP-A-480623、EP-A-532088、EP-A-532089、EP-A-569337、EP-A-626385、WO89/05303、WO93/05058、WO96/31514、WO91/13889、WO91/19495、WO93/5059等に記載されている。
[0076]
 特に、FR900506(=FK506、タクロリムス)、FR900520(アスコマイシン)、FR900523およびFR900525と呼称される化合物は、ストレプトミセス(Streptomyces)属、例えばストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No.9993(寄託機関:日本国茨城県つくば市東1丁目1-3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(旧名称:通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所)、寄託日:1984年10月5日、受託番号:微工研条寄第927号)もしくは、ストレプトミセス・ハイグロスコピカス・サブスペシース・ヤクシマエンシス(Streptomyces hygroscopicussubsp.yakushimaensis)No.7238(寄託機関:日本国茨城県つくば市町東1丁目1-3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所、寄託日:1985年1月12日、受託番号:微工研条寄第928号)(EP-A-0184162)により産生される物質であり、特に下記構造式で示されるFK506(一般名:タクロリムス)は、代表的な化合物である。
[0077]
[化3]


化学名:17-アリル-1,14-ジヒドロキシ-12-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル)-1-メチルビニル]-23,25-ジメトキシ-13,19,21,27-テトラメチル-11,28-ジオキサ-4-アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス-18-エン-2,3,10,16-テトラオン。
[0078]
 特に好ましい実施形態として、式(I)で表される化合物は、R およびR 、R およびR の隣接するそれぞれの対が、それらが結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間に形成されたもう一つの結合を形成しており(よって、R およびR 、R およびR 部分で二重結合を形成する)、
、R 、R およびR 23は、独立して水素原子であり、
は、ヒドロキシ基であり、R 10は、メチル、エチル、プロピルまたはアリル基であり、
は、ヒドロキシであり、
Xは、(水素原子、水素原子)またはオキソ基であり、
Yは、オキソ基であり、
14、R 15、R 16、R 17、R 18、R 19およびR 22は、それぞれメチル基であり、
24は、3-R 20-4-R 21-シクロヘキシル基であり、
ここで、R 20は、ヒドロキシ、アルキルオキシ、オキソ、またはOCH OCH CH OCH であり、
21は、ヒドロキシ、-OCN、アルキルオキシ、適当な置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ、1-テトラゾリルまたは2-テトラゾリル、-OCH OCH CH OCH 、保護されたヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド基若しくはp-トリルオキシチオカルボニルオキシであるか、または、R 2526CHCOO-(式中、R 25は所望により保護されていてもよいヒドロキシ基、または保護されたアミノ基、およびR 26は水素原子またはメチル)であるか、或いは
20とR 21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子(すなわち-O-)を形成し、そしてnは1または2である。
[0079]
 別の好ましい実施形態として、式(I)で表される化合物としては、タクロリムス、アスコマイシンまたはその誘導体が挙げられる。
[0080]
 更に、EP-0184162、EP323042、EP424714、EP427680、EP465426、EP474126、EP480623、EP484936、EP532088、EP532089、EP569337、EP626385、WO89/05303、WO93/05058、WO96/31514、WO91/13889、WO91/19495、WO93/5059、WO96/31514等に記載の化合物もまた、本発明の式(I)で表される化合物の好ましい例として挙げられ、その開示を引用して明細書記載の一部とする。
[0081]
式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩
 本発明の式(I)で表される化合物において「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される非毒性塩基または酸から調製される塩を指す。本発明の式(I)の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む、薬学的に許容される非毒性塩基から好都合に調製することができる。そのような無機塩基に由来する塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二および第一)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二および第一)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩が含まれる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムの塩が好ましい。薬学的に許容される非毒性の有機塩基から調製される塩は、天然起源と合成供給源の両方に由来する一級、二級、および三級アミンの塩を含む。薬学的に許容される非毒性の有機塩基には、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが含まれる。
[0082]
 本発明の式(I)で表される化合物が塩基性である場合、その対応する塩は、薬学的に許容される非毒性の無機酸および有機酸から好都合に調製することができる。そのような酸には、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などが含まれる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が好ましい。
[0083]
式(I)で表される化合物の溶媒和物または水和物
 本発明の式(I)で表される化合物は溶媒和物を形成することも出来るが、その場合も本願発明の範囲に含まれる。好ましい溶媒和物としては、水和物およびエタノレートが挙げられる。
[0084]
式(I)で表される化合物の結晶形
 本発明の式(I)で表される化合物は、非晶質形態および/または1以上の結晶質形態で存在することができ、式(I)で表される化合物のそのようなすべての非晶質形態および結晶質形態並びにそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。さらに、式(I)で表される化合物の結晶形についても、水との溶媒和物(すなわち、水和物)または通常の有機溶媒との溶媒和物を形成し得る。式(I)で表される化合物の結晶形の溶媒和物および水和物、特に、薬学的に許容され得る溶媒和物および水和物は、同様に、式(I)によって定義される化合物およびその薬学的に許容され得る塩の範囲内に包含される。
[0085]
式(I)で表される化合物の異性体
 本発明の式(I)で表される化合物においては、コンホーマーあるいは不斉炭素原子および二重結合に起因する光学異性体および幾何異性体のような1対以上の立体異性体が存在することがあり、そのようなコンホーマーあるいは異性体も本明の化合物の範囲に包含される。
[0086]
式(I)の化合物の調製方法
 本発明の式(I)の化合物は、文献公知のものであり、その製法方法は、例えば、EP-A-184162、EP-A-323042、EP-A-423714、EP-A-427680、EP-A-465426、EP-A-480623、EP-A-532088、EP-A-532089、EP-A-569337、EP-A-626385、WO89/05303、WO93/05058、WO96/31514、WO91/13889、WO91/19495、WO93/5059等に開示されている。又、タクロリムスは、アステラス製薬株式会社から、プログラフ(登録商標)の販売名で市販されている。
[0087]
(ii) サイクロスポリン類
 サイクロスポリン類としては、例えばサイクロスポリンA、B、D等が挙げられ、これらはメルクインデックス(12版)No.2821に記載されている。尚、サイクロスポリンは、例えば、サンディミュンという販売名でノバルティスファーマ株式会社から市販されている。
[0088]
(iii) ラパマイシンまたはその誘導体
 ラパマイシン(シロリムスとも呼ばれる)としては、メルクインデックス(12版)No.8288に記載されており、その誘導体も使用することが可能である。ラパマイシン誘導体の好ましい例としては、WO95/16691の1頁の式(A)
[化4]


の40位のヒドロキシが-OR (ここで、R はヒドロキシアルキル、ヒドロアルキルオキシアルキル、アシルアミノアルキルおよびアミノアルキル)で置換されているO-置換誘導体、例えば、40-O-(2-ヒドロキシ)エチル-ラパマイシン、40-O-(3-ヒドロキシ)プロピル-ラパマイシン、40-O-[2-(2-ヒドロキシ)エトキシ]エチル-ラパマイシンおよび40-O-(2-アセトアミノエチル)-ラパマイシンが挙げられる。尚、ラパマイシン(シロリムス)は、ラパリムスという販売名でノーベルファーマ株式会社から市販されている。
[0089]
 本発明の式(I)で表される化合物、サイクロスポリン類、ラパマイシンおよびその誘導体は、類似の基本骨格、すなわちトリシクロマクロライド骨格を有しており、少なくとも一つの類似の生物学的特性(例えば、免疫抑制作用)を有する。
[0090]
その他の任意の成分
 本発明に係る薬剤は、上記の有効成分の他に、有効成分の活性を阻害する虞がなく、投与対象(以下、患者ともいう)にとって有害でないものである限り、他の疾病、疾患および症状に対して治療作用を有する治療活性物質を1つ以上含んでいてもよい。
[0091]
 そのような治療活性物質としては、例えば、エストロン、エストラジオール、エストリオールを含むエストロゲン、プロゲステロン、プレドニゾロン等が挙げられる。
[0092]
本発明の薬剤
 本発明の薬剤は、(i)式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、(ii)サイクロスポリン類、(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分として含み、更に、投与対象に有害でない、薬学的に受容可能な担体を含んでいてもよい。用いることが可能な担体は、固体、半固体、または液体型の何れであってもよく、例えば、水、電解質液、および、糖液等から選択される何れかが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明の薬剤は、補助剤を含んでいてもよい。補助剤としては、滑沢剤、安定化剤、防腐剤、乳化剤、増粘剤(粘稠剤)、着色剤、香料(着香剤)、賦形剤、保存剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、溶解補助剤などが挙げられる。
[0093]
剤型
 本発明の有効成分を含む薬剤は、種々の剤型で提供することができ、その剤型としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤、トローチ剤、ペレット、エマルジョン、懸濁液、および、公知のその他の形態が挙げられる。これらの中でも、例えば、経口投与製剤として、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、および、ゼリー剤のうちのいずれかであることが好ましく、錠剤、カプセル剤、および、顆粒剤のうちのいずれかであることがより好ましく、錠剤であることがさらに好ましい。なお、後述する通り、例えば、注射剤、坐剤、および、経皮吸収型製剤のような非経口投与製剤として製剤されてもよい。
[0094]
薬剤の製造方法
 本発明に係る薬剤は、公知の製造方法を利用して製造することができる。一例として、有効成分と任意のその他の成分とを成分毎に別途に製造したのち、それぞれの成分を所望の含有量となるように混合することによって製造される。
[0095]
薬剤の投与対象
 本発明の薬剤の投与対象としては、哺乳動物が挙げられる。哺乳類としては、ヒトならびにヒト以外の動物としてウシ、ウマ、ブタおよびヒツジなどのような家畜、サル、チンパンジー、並びに、犬、猫、ラットおよびウサギなどのような愛玩動物が挙げられ、好ましくはヒトが挙げられる。
[0096]
投与経路
 本発明の薬剤の投与方法(投与経路)は、投与対象の年齢、状態、および、治療期間等により適宜決定することができる。具体的には、経口投与または非経口投与の何れであってもよいが、経口投与であることが好ましい(実施例は経口投与)。非経口投与としては、注射投与、坐剤としての投与、経皮吸収型製剤としての投与などの方法が挙げられる。注射投与の種類としては、例えば、筋肉内、腹腔内、皮下、静脈内、および、局所注射が挙げられる。また、本発明の薬剤は、経皮、経鼻、経膣、および、直腸経由などの様々な経路を介して投与することができる。
[0097]
投与量
 薬剤の投与量は、薬剤投与を受ける患者の疾病、疾患または症状の種類、重篤度、各種検査結果、および薬剤の有効成分の種類などによって異なる。さらに、薬剤の投与量は、処置されるべき患者の年齢、本発明の治療方法による治療の実施回数、および、各種検査結果などに依存しても異なる。一例として、本発明の薬剤は、薬剤に含まれる有効成分の含有量の観点で、生体移植および免疫系疾患等の治療において免疫抑制剤として用いられる場合の投与量よりも低用量となる用量において投与される。例えば、薬剤の投与対象がヒトである場合は、特に限定されるわけではないが、患者の症状に応じて、一日につき有効成分の量として、好ましくは0.5~10mgか1~10mgの範囲内、より好ましくは0.5~6mgか3~6mgの範囲内の範囲内の量を投与する。なお、以下、特に断りが無い限り、薬剤の投与量に関する記載はヒトが対象である場合に適用され、投与量は有効成分の量として表されているものとする。
[0098]
 また、特に限定されないが、経口による投与の場合、一日当たりの投与回数は、好ましくは1~4回、より好ましくは1~3回、さらに好ましくは1~2回である。
[0099]
 本発明の有効成分を含む薬剤は、段階的にまたは別の治療薬と併用して投与することが可能である。別の治療薬と併用して投与する場合は、本発明の薬剤と別の治療薬とを個別の製剤として同時にまたは異なる投与間隔で投与することが可能である。
[0100]
 本発明の有効成分を含む薬剤を段階的にまたは別の治療薬と併用して投与する場合、一般に同じ投与剤形を使用することができる。これらの薬物を物理的に組み合わせて投与する場合、投与剤形および投与経路は、組み合わせる薬物の適合性に応じて選択すべきである。したがって、同時投与という用語は、2つの薬剤の同時もしくは連続的な投与、または2つの活性成分の固定用量の組み合わせとしての投与を包含すると理解される。
[0101]
 前記の別の治療薬としては、例えば、エストロン、エストラジオール、エストリオールを含むエストロゲン、プロゲステロン、プレドニゾロン等が挙げられる。更には、免疫グロブリン類、例えば、抗D免疫グロブリン等も挙げられる。
[0102]
 更に、本発明の薬剤は、血漿交換療法、胎児輸血等の物理的な療法と組み合わせてもよい。
[0103]
妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させるための薬剤
 タクロリムスは、日本の土壌放線菌から単離された関連物質(タクロリムス、ラパマイシン、アスコマイシン、メリダマイシン)の1つである。これは、23員環マクロライドマクロラクタム構造を有するマクロライド誘導体抗生物質である[参考文献73]。タクロリムスは、FK506結合タンパク質(FKBP)受容体に結合し、カルシニューリンの活性を阻害するカルシウム/カルモジュリン依存脱リン酸化酵素である[参考文献74-78]。このカルシニューリン阻害剤(CNI)は、T細胞受容体(図4)を介して刺激された細胞において、活性化T細胞の核因子(NFAT)を核に移す役割を果たすカルシウム依存性シグナルを阻害する[参考文献79-83]。細胞におけるシグナル伝達の詳細なメカニズムの解明は、移植および自己免疫疾患の分野におけるタクロリムスの成功した使用につながっている[参考文献84、85]。
[0104]
 タクロリムスは、T細胞のCN-NFAT経路だけでなく、ナチュラルキラー(NK)/ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ、B細胞、および樹状細胞(DC細胞)を含む他の細胞型でも作用することが報告されている[参考文献86-92]。直接的な阻害は、T細胞、NK/NKT細胞、およびマクロファージにおいて起こる。タクロリムスのtDC成熟への負の影響が報告されている研究はいくつかあるが[参考文献88、89]、他のものは、寛容原性DC細胞(tDC細胞)への未成熟DC細胞(imDC)の成熟を誘導するタクロリムスの正の役割を示している[参考文献26、90、91]。
[0105]
 B細胞(活性、抗体産生、およびクラススイッチング)は、T濾胞ヘルパー細胞88によって抑制される[参考文献87]。これらの知見は、タクロリムスが、活性化されたNK/NKT細胞およびマクロファージを阻害することによって、拒絶を抑制し、胎児に対する寛容を誘導することができ、また、imDCのtDCへの分化を誘導し得ることを示唆する。
[0106]
 図5aに、タクロリムスによる、活性化されたナチュラルキラー/ナチュラルキラーT細胞またはマクロファージを阻害するメカニズム、および、未成熟樹状細胞の寛容原性樹状細胞への分化を誘導するメカニズムを示す。
[0107]
 これにより、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させることが可能となり、ひいては、血液型不適合妊娠または胎児ヘモクロマトーシスを治療または改善することができる。
[0108]
 詳細には、タクロリムスは、プロゲステロン受容体のシャペロン複合体中のFKBP52に結合し、次いで複合体から放出することによって活性化される[参考文献33、112、113]。
[0109]
 次いで、活性化されたプロゲステロン受容体は、プロゲステロンの存在下で子宮内膜上皮細胞の成熟を誘導する。ガレクチン1はこれらの細胞から産生され、成熟した子宮内膜上皮細胞においてTh1アポトーシス、tDCおよび子宮NKを誘導する[参考文献30、31、34、35]。
[0110]
 第2に、タクロリムスは、CN-NFAT経路を介して第1型細胞、NK/NKT細胞、およびマクロファージの活性を直接阻害する[参考文献86、87]。
[0111]
 第3に、CN-NFAT経路を介してimDCとtDCとの分化を誘導し、その結果、Treg細胞の誘導を補助する[参考文献26、51、90、91]。
[0112]
 tDCの誘導はまた、他の薬理学的メディエーター、例えば、免疫抑制薬(サイクロスポリン、ラパマイシン、デオキシスペルグレイン、ミコフェノール酸モフェチル、サングリフェリンA)、抗炎症薬(コルチコステロイド、アスピリン)、1α25-ジヒドロキシビタミンD3、N-アセチル-L-システイン、サイクリックAMP誘導物質(PGE2、ヒスタミン、β2アゴニスト、神経ペプチド)、グルコサミンおよびコバルトプロトポルフィリンによって行われる[参考文献26]。
[0113]
 尚、不妊・不育症のためのタクロリムスを使用する免疫抑制のレベルは、移植におけるその使用とは異なる。後者はタクロリムスを使用して、通常の免疫より低いレベルで持続的な免疫抑制をし、前者は、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復することを必要とする(図5b)。
[0114]
血液型不適合妊娠
 血液型不適合妊娠は、以下のような状態で生じる障害である。
(i)母体の赤血球膜上に無い抗原が胎児の赤血球膜上に存在する、
(ii)胎児血が胎盤を介して母体へ流入後、胎児赤血球膜上の抗原に対する病原抗体が母体内で産生される(病原抗体、例えば抗D抗体価、抗赤血球抗体などの上昇)、
(iii)病原抗体は胎盤を介して胎児へ移行して胎児赤血球を攻撃する、
(iv)胎児の赤血球は溶血し、胎児貧血となる。
[0115]
 よって、(ii)における病原抗体価の上昇前から、例えば妊娠直後より本発明の薬剤(例えばタクロリムス)を妊婦に投与することにより、病原体価の上昇が抑えられ(抗体の産生抑制)、血液型不適合妊娠に起因する症状を抑え、よって、血液型不適合妊娠の治療または改善を行うことが可能となる。
投与量は、有効成分として1mg/日~10mg/日が例示される。好ましくは、投与量は、3~6mg/日である。
[0116]
 そして、(iii)における、胎盤を通過した病原抗体による胎児赤血球の攻撃は、女性に一旦(前回の妊娠もしくは流産などで)胎児赤血球膜状の抗原が認識され、病原抗体産生のための記憶が残っているため、第1子の妊娠より第2子以降の妊娠のときに血液型不適合妊娠が起こりやすくなる。
[0117]
 尚、女性が不妊・不育症を患っており、例えば本発明の薬剤(有効成分として1~4mg/日)を用いて妊娠が成立した場合には、継続して投与し、例えば病原体価の上昇が認められた時に本発明の薬剤を更に増量して(例えば有効成分として5~10mg/日)投与してもよい。
[0118]
 さらに、女性が不妊・不育症を患っており、例えば本発明の薬剤以外の方法で妊娠が成立した場合にも、本発明の薬剤を用いて血液型不適合妊娠の治療が可能であり、例えば妊娠初期より、本発明の薬剤を(例えば有効成分として1~10mg/日)投与してもよい。
[0119]
胎児へモクロマトーシス
 胎児へモクロマトーシスは、以下のような状態で生じる症状である。
(i)胎児の鉄代謝に関連する酵素が母体のそれとは異なる、
(ii)胎児血が胎盤を介して母体へ流入後、その酵素に対する病原抗体が母体内で産生される、
(iii)病原抗体は胎盤を介して胎児へ移行して胎児の鉄代謝酵素を攻撃する、
(iv)胎児の鉄代謝は止まり、肝臓内に鉄が沈着し肝硬変となる。
[0120]
 よって、(ii)における病原抗体価の上昇前から、例えば妊娠直後より本発明の薬剤(例えばタクロリムス)を妊婦に投与することにより、病原体価の上昇が抑えられ(抗体の産生抑制)、病原抗体に起因する症状を抑え、それにより、胎児ヘモクロマトーシスの治療または改善を行うことが可能となる。
[0121]
 この際の本発明の有効成分である化合物の投与量としては、1~10mg/日が好ましく、より好ましくは3~6mg/日である。
[0122]
妊娠高血圧症候群およびその関連疾患(HELLP症候群、子癇など)
 妊娠高血圧症候群およびその関連疾患(HELLP症候群、子癇など)では、胎児発育不全、常位胎盤早期剥離、胎児機能不全、胎児死亡など、母体と胎児共に大変危険な状態となる場合がある。それは異常な母体-胎児間の免疫によって引き起こされ、この異常な母体-胎児間の免疫は、細胞性免疫やT細胞を介した液性免疫による胎盤を含む胎児成分(抗原)への攻撃抑制または免疫寛容促進が不十分であることによる。
[0123]
 よって、例えば、本発明の薬剤(例えばタクロリムス)を患者に投与することにより、胎児に対する母体の拒絶免疫の活性化の抑制と胎児へ対する寛容を促進することができ、より良い胎盤構築とその機能が達成され、妊娠中の妊娠高血圧症候群やその関連疾患の発症を予防および遅延することが可能となる。
[0124]
 特に、妊娠高血圧症候群やそれに関連する疾患の既往をもつ患者では、通常初回妊娠以降の胎児抗原に対する認識は増強されるため、2回目以降の妊娠においては、より早期に本発明の薬剤(例えばタクロリムス)を患者に投与することが好ましい。
[0125]
 投与量は、有効成分として1mg/日~10mg/日が例示される。例えば、母体への胎児抗原の流入が多くなる時期から母体の胎児へ対する免疫が強く活性化することから、妊娠後期においては、投与量を適宜増量することが好ましい。
実施例
[0126]
 以下に具体的な実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明はその実施形態に限定されるものではなく、それらにおける様々な変更および改変が当業者によって、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく実行され得ることが理解される。
[0127]
抗D抗体価の測定
 間接クームス試験により行う。間接クームス試験とは、患者の血清と健常者の血液を混合したものに抗免疫グロブリン抗体を加え赤血球凝集反応が起きるか否かを検査するものである(血清中に存在する不規則抗体を検出する)(クームス試験については、日産婦誌59巻10号、N-617~N-623を参照のこと)。
[0128]
Th1/Th2細胞比率
 近年、世界中で、対外授精(IVF)および胚移植(ET)の発生率が高まっている。これに伴い、反復着床不全を含む、複数回のIVFの失敗を経験する女性の数が増加している。IVF/ETを行う際、受精後2~5日の間に、胚を子宮腔へ移植する。いわば半同種移植片(semi-allograft)たる胚が、母体側の免疫寛容の確立を伴って、母体の脱落膜に成功裏に着床することによって、妊娠が確立される[参考文献7a]。着床時における、適切な免疫応答の確立が、成功裏な着床の鍵である。従って、免疫上の病因学は、IVF/ET後のRIFにおいて重要な役割を果たしていると考えられる。
[0129]
 Tヘルパー(Th)1、Th2、Th17、Treg細胞は、例えば免疫拒絶や免疫寛容等の免疫応答において重要な役割を果たす[参考文献8a]。妊娠時の免疫状態はTh2優勢に関連しており、Th1免疫応答は胚の拒絶に関連していることは、一般的に合意されている[参考文献6a、9a]。胚の拒絶の根底にあるメカニズムは、同種移植における拒絶反応に類似していると考えられる[参考文献10a]。IVF/ETの間における移植された胚は、同種移植の拒絶反応と同様の免疫応答によって、着床に失敗しうる。
[0130]
Th1細胞、およびTh2細胞の分析
 Th1/Th2細胞比率のベースライン値を評価する目的で、全部で10mlの静脈血を採取した。Th1細胞、およびTh2細胞は、細胞内インターフェロン(IFN)-γおよびIL-4の産生を検出することによって決定した。
[0131]
 リンパ球の特異的な染色は、全血を、抗-CD4-PC5または抗-CD8-PC5-コンジュゲート モノクローナル抗体(mAbs)(Beckman Coulter, Fullerton, Ca, USA)と共にインキュベートすることによって行った。赤血球(RBCs)を溶血によって除去し(FACS Lysing solutionを使用; Becton Dickinson, BD 134 Biosciences, Franklin Lake. NJ, USA)、リンパ球をフローサイトメトリー(FACSCalibur; Becton Dickinson)を用いて分析した。活性化された全血サンプルを、抗-CD4-PC5-コンジュゲートmAbsを用いて表面染色した後、製造者の使用説明書に従って、RBCの溶血、および、Fast Immune(商標)IFN-γ-FITC/IL-4-PE(Becton Dickinson)を用いた特異的な細胞内染色を順次行った。Th1細胞は、細胞内IFN-γを伴うが、細胞内IL-4を伴わないCD4 リンパ球として規定された。Th2細胞は、細胞内IL-4を伴うが、細胞内IFN-γを伴わないCD4 リンパ球として検出された。細胞内IL-4陽性のTh細胞に対する細胞内IFN-γ陽性のTh細胞の割合を、Th1/Th2細胞比率と表現した。
[0132]
実施例1
妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させることによるタクロリムスによる血液型不適合妊娠の治療
 患者は血液型Aの35歳の女性である。母体Rho(D)陰性、胎児Rho(D)陽性の血液型不適合妊娠の患者に対して下記の処置を行った。すなわち、初回妊娠時、抗D免疫グロブリンを妊娠中に投与しておらず、出産前に感作が成立し出産時の抗D抗体価は8倍であった。39週で上位胎盤早期剥離にて緊急帝王切開で出産した。出産後は5ヶ月後に抗体価は最高値64倍を示していた。
[0133]
 2年後に第2子を希望したが、不妊症となり体外受精による不妊治療を行ったが5回の胚移植で不成功であったため、免疫系の精査を行った。その際、Th1/Th2(Th1 32.4、Th2 1.3)比の著しい上昇(24.9)を認め免疫系の異常が原因とされる不妊症と判断し、タクロリムス治療を選択した。タクロリムス4mg/日の治療(経口投与:朝2mg、夕2mg)で1回の胚移植により妊娠が成立した。
[0134]
 妊娠成立直後の抗D抗体価は4倍であったが、24週で16倍、26週で32倍まで到達した(図6上段)。その後胎盤を介した胎児抗原の母体への移行はより増加することが想定され、急速な抗体価の上昇に備え血漿交換、胎児輸血の準備を開始した。また、同時に28週のTh1が再度上昇傾向を示したことも考慮に入れタクロリムスを5mg/日へ増量した(経口投与:朝3mg、夕2mg)。
[0135]
 以降予想されていた抗D抗体価の上昇は全くなく胎児貧血(中大脳動脈の血流速度上昇)もみられないまま32倍を維持し、児の成長も問題なく(図7)、37週2日で2834g健常男児を出産した。尚、中大脳動脈の血流速度および胎児の推定体重は、胎児超音波検査により測定した。
[0136]
 図7は、妊娠週における胎児の体重変化を示すグラフである。経時的に体重は増加しており、妊娠週数相当に胎児が成長していることを示している。併せて、図7では中大脳動脈の血流速度も示しており、全妊娠経過中胎児貧血は発症していないことを示している。
[0137]
 臍帯血タクロリムスの濃度は、化学発光免疫測定法(ECLIA)で、検出限界値以下であり、抗D抗体価は2倍であった。児の血液型はA型Rho(D)陽性であり、出生時のHb(ヘモグロビン)値は13.6と軽度低値であったが、外表奇形、内臓奇形なく身体機能も問題なかった。
[0138]
解析
 胎児ヘモグロビンは、妊娠初期から母体血液中に存在し得る。母体血液中のHbFは妊娠初期に検出され、胎児血液中のHbFから母体血液中への移行は一般的に妊娠9週頃より観察される[参考文献4a、11a、12a]。これらの知見は、胎児抗原へ対する母体の免疫応答は、胎児抗原の母体への流入が始まる妊娠初期より起こりうることを示唆している。一方、胎児への抗D抗体の移行は胎盤構築完成後に始まる。
[0139]
 今回の患者は、初回妊娠時に中和活性を持つ抗D免疫グロブリンを母体に投与していないので、上位胎盤早期剥離にて出産時に胎児血が大量に母体内へ流入した可能性があり、胎児抗原へ対する感作が強く成立したと考えられる。加えて、一般的な不妊治療により妊娠が成立せず、反復不成功したことによりさらに感作を助長した可能性は高い。これらのハプニングにより血球成分を含む胎児抗原は母体により強く認識され、抗D抗体に代表される液性免疫だけでなく、Th1細胞比率の著しい上昇から他の胎児成分に対する細胞性の免疫応答による拒絶が2回目の妊娠活動から始まり不妊症を引き起こした可能性が考えられた。
[0140]
 上昇した抗D抗体価および増加したTh1細胞比率は、液性免疫および細胞性免疫によってそれぞれ誘導された。これらは、外来抗原および胎児抗原に対する通常の免疫応答である。
[0141]
 発明者らは、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させるために、タクロリムスを用いて患者を治療し、不妊症に対する細胞性免疫を抑制できた。詳細なメカニズムおよびTh1細胞に関連する結果は以前に記載されている[参考文献13a~15a]。この結果に基づいて、不妊症治療として妊娠前よりタクロリムスの投与を開始し、妊娠成立後もTh1細胞比率に低下傾向が見られなかったため投与を続行、妊娠28週でTh1細胞比率が増加したため5mg/日に増量した。母体および胎児の状態は合併症なく安定しており、妊娠経過は順調で患者は安全な出産を達成した。
[0142]
 妊娠24週以降、大量の胎児赤血球の侵入に対応して抗D抗体価が急激に上昇する可能性はあったものの、結果として抗D抗体の産生も抑制され、出産まで母体と児の集中治療は不要であった。
[0143]
 この効果は予想外であったが、メカニズムは、カルシニューリン/NFAT経路の阻害によるT細胞機能のダウンレギュレーション、およびそれに続くB細胞活性化の阻害および抗体産生の抑制によって、抗原の認識および抗病原体抗体の産生が阻害されると説明することができる。これは、免疫抑制効果を有する高用量の静脈内免疫グロブリンによる連続的治療のように考えることもできる[参考文献16a~19a]。
[0144]
 結論として、この治療は、血漿交換療法、大量γグロブリン療法や高用量ステロイド治療のような強力な治療を行わずに抗体産生の促進を緩和する利点を提供する。タクロリムスを用いた治療は同種免疫妊娠に有益であると発明者らは考えている。
[0145]
 タクロリムスの投与による免疫抑制により容易に妊娠が成立し、さらに拒絶免疫の亢進に対する妊娠中のタクロリムスの増量により安定した妊娠継続とともに抗D抗体の産生を抑制し、胎児貧血の発症から回避できたことが考えられる。これはタクロリムスにより細胞性免疫および液性免疫両者の抑制による効果であると推測された。
[0146]
実施例2
 形態学的および発生的に良質の胚を用いた体外受精/胚移植後に5以上の連続するRIFの病歴を有し、血清学的検査で不妊・不育症に関連する異常所見が認められなかった42人の患者を、胚移植の2日前から妊娠試験の日までタクロリムスを用いてまたは用いずに治療した。タクロリムスの1日用量は、Th1/Th2細胞比に従って決定した。治療を受けた患者の臨床的妊娠率は、未治療群の0%(0/17)と比較して64.0%(16/25)であった[参考文献114]。胚移植前のTh1/Th2細胞比は、タクロリムス処置および未処置患者における補助生殖技術の結果を予測できることが分かっており、Th1細胞レベルは妊娠結果(n=124)と負の相関がある[参考文献115]。
[0147]
 RPLに関しては、妊娠5~8週間で11回連続の流産歴を有する1例の患者は、低用量のアスピリン、ヘパリン、プレドニゾロン(5mg/日)、大量γグロブリン療法(3日間1g/kg)により順に治療されたが、成功しなかった[参考文献116]。しかしながら、妊娠中にタクロリムス(2mg/日)で継続的に治療することにより、他の治療をすることなく良好な妊娠経過を辿った。加えて、タクロリムスを用いたB細胞の免疫抑制に関しては、RhD不適合妊娠において血漿交換を使用せず、良好な妊娠経過を得、出産に成功した(データ示さず)。タクロリムスのメカニズムは、主に細胞性免疫の抑制に依存しているが、T細胞を介して液性免疫も抑制している。
[0148]
 タクロリムスはまた、母体-胎児間の免疫の異常によって引き起こされる他の疾患、ならびに胎盤の構築および機能に影響を及ぼし得、また、妊娠における胎児発育遅延および母体の妊娠高血圧症を予防することができる。
[0149]
 液性免疫の抑制の関点からは、タクロリムスは、妊娠中の血漿交換療法や大量ガンマグロブリン療法などの強い治療をすることなく、新生児ヘモクロマトーシス(これはRhD非適合性妊娠のような胎児抗原に対する液性免疫反応に起因する)および抗リン脂質症候群の治療の候補薬となり得る。
[0150]
 しかしながら、妊娠後に既存抗体によって引き起こされる病態の場合は、タクロリムスはB細胞の分化を抑制するのみなので、既存の病原性抗体の活性を急速に除去するためには、これらの強い治療との併用療法を必要とする。
[0151]
 タクロリムス治療は、妊娠の初期段階、すなわち妊娠5~6週より以前の反復流産または反復化学流産の既往を有する患者への使用に特に有益性がある。
[0152]
 免疫抑制レベルの量のグルココルチコイドや大量γグロブリン療法などの強い治療を行うにあたり最適タイミングを決定することは困難である。タクロリムスはこのような時でも使用しやすいであろう。
[0153]
 さらに、Th1優性免疫に関して説明する中で、高いTh2細胞比率を有する不妊・不育症患者における拒絶反応のメカニズムを解説することは難しいが、拒絶反応が胎児性HLAに対する抗体に依存すると仮定すれば、タクロリムスはこれらの場合にも有効であり得る。
[0154]
実施例3
新生児ヘモクロマト―シス治療
 本治療法は、母体内での胎児抗原の認識を抑制し、病原抗体産生能力の低下を主な目的とした。
[0155]
 胎児に発症する疾患は異なるが、血液型不適合妊娠と同様に、胎盤構築完成後に胎児から胎児抗原が母体へ流入し、母体で認識、その抗原に対する病原抗体が産生され、その中のIgGは胎盤を介して胎児へ移行することにより胎児に疾患を発症する。本疾患は、この病原抗体が胎児の鉄代謝に関係する蛋白を阻害し、肝臓に鉄が沈着し、肝不全となり子宮内胎児死亡や出生後に死亡もしくは肝移植が必要となる程度の重篤な場合が多い。
[0156]
 本治療によるメカニズムは、カルシニューリン/NFAT経路の阻害によるT細胞機能の抑制とそれによるB細胞活性化の阻害および抗体産生の抑制によって、胎児抗原の認識および抗病原体抗体の産生が阻害されると説明することができる。
[0157]
 この疾患の病原とされる胎児抗原は同定されていない。胎盤構築完成後に胎児から原因とされる抗原が母体へ流入する事を考慮に入れると妊娠12週ごろからの治療開始が考えられるが、胎盤構築には個人差があり、胎児抗原の移行時期も明確ではないため、より有効な治療を行うためには妊娠初期よりの治療開始が好ましい。
[0158]
 既存の唯一の予防方法である母体への大量γグロブリン療法の場合、18週より開始し、出産まで継続投与する必要性があり、医療費(60万円/週)は著しく高額となるが、本治療法はその10分の1以下の医療費で妊娠全経過中の治療が行うことができ、適宜その投与量を変更することも容易であるためさらに医療費を節約できる可能性もある。
[0159]
 既存の唯一の予防方法である母体への大量γグロブリン療法は、大量に集められプールされた血液から精製されるため、血液に含まれる可能性のある感染症に曝露される危険性があり、特に胎児貧血を引き起こすパルボウイルスの感染が問題とされるが、本治療法では他のウイルスを含め感染の危険性は全く無い。
[0160]
 胎児ヘモクロマトーシスにおいて、妊娠中は流産や早産、子宮内発育不全、羊水過少、胎動不全、胎盤浮腫のいずれかが認められることが多く、出生後は出生直後からの全身状態不良(呼吸・循環不全など)、胎児発育遅延、胎児水腫、肝不全徴候などを認める。新生児血液所見では、凝固障害、胆汁うっ滞、トランスアミナーゼ異常値などをみる。敗血症に起因しない播種性血管内凝固症候群、フェリチン高値αフェトプロテイン高値、トランスフェリン飽和率が高値を示し、画像検査所見ではMRI T2強調画像で肝臓以外の臓器に鉄沈着を示唆する低信号を認める。本治療により、これらの妊娠中の胎児および出生後の新生児の所見が改善することにより評価が可能である。
[0161]
 母体の末梢血からの情報に基づいて子宮内の免疫学的状態を決定することは困難である。いくつかの研究では、末梢血および脱落膜におけるNK細胞レベルの相関関係が評価され、相反する意見もある[参考文献117、118]。RIF患者の子宮の免疫状態が全身の正常な免疫状態を反映するとすれば、RPL患者と比較してRIF患者の子宮免疫状態を判定する方が簡単かもしれない。対照的に、RPL患者の母体末梢血に子宮の状態が反映されるまでには時間がかかることがあり、早期RPL患者では母体末梢血の免疫状態の変化がないかまたは非常に弱い可能性がある。場合によっては、中絶後に変化が現れることがある。これらの患者におけるタクロリムス治療の問題は、タクロリムス治療後に末梢血に細胞比率の変化が現れず、活性が子宮内で抑制される可能性さえあることである。
[0162]
 いくつかの免疫学的パラメータが母体血液中で評価されている。しかし、それらは胎児の状態を直接反映するものではなく、母体の免疫学的状態および胎児抗原に対するその反応性のみを分析することが可能であることを意味する。免疫抑制剤の正確かつ適切な使用方法をサポートするために、そして、胎児に関するより詳細な情報を提供するために、さらなる研究が必要である。
[0163]
 不妊症と不育症の病態は異なり、不妊症は通常の母体免疫状態が子宮内に反映されているが、不育症では子宮内の免疫反応が迅速に全身に伝わることは無く、全身への変化を及ぼす前に妊娠が中断してしまうことが多いと推測される。従って、新たなバイオマーカーが必要とされる。
[0164]
実施例4
妊娠高血圧症候群およびそれに関連する疾患(HELLP症候群および子癇)の発症予防または発症遅延
 本治療法は、胎児に対する母体の拒絶免疫の活性化の抑制と胎児へ対する寛容を促進することを主な目的とした。
[0165]
 患者は、38歳の女性で妊娠高血圧性腎症とHELLP症候群の既往をもつ。32歳での初回妊娠時には、妊娠初期より体調不良を訴え、妊娠15週より下腿浮腫、体重増加、血圧上昇傾向がみられ、妊娠18週より急激な浮腫の増強、タンパク尿、高血圧が出現し、妊娠高血圧症候群(HDP)の中の妊娠高血圧腎症(PE)と診断された。妊娠20週でHELLP症候群および子癇発作を発症し、緊急帝王切開が行われ、死産した。出産後は重症合併症である肺水腫、播種性血管内凝固(DIC)、腹腔内出血を認め、人工呼吸器による管理、アルブミンの補充、成分輸血などの治療が行われた。
[0166]
 今回、妊娠前の血液学的検査所見では、肝機能、腎機能、凝固機能ともに異常はなく、抗リン脂質抗体症候群(抗CL-IgG抗体、抗CL-IgM抗体、抗PS/PT抗体、抗CL-β2GP1抗体、LAC、抗PE-IgG抗体、抗PE-IgM抗体)、自己免疫疾患(抗DNA抗体、抗核抗体)や凝固機能異常などの不育症に関与する検査項目における異常所見は見られなかった。
[0167]
 初回妊娠および今回妊娠の状況を表1に記載した。
[0168]
(表1)


[0169]
 CD4陽性細胞中のTh1(CD4g IFN-g )/Th2(CD4 IL-4 )の比率は15.2/2.1(正常値:10.3未満)であり明確な免疫学的な異常も妊娠前には見られなかった[参考文献12b]が、受精卵の着床後は母体の免疫は活性化し、母体-胎児間の免疫異常は胎盤構築およびその機能を抑制し、胎児発育不全や妊娠中の高血圧症を引き起こすであろうと想定した。このことを考慮に入れ、患者は妊娠確認後より母体-胎児間の免疫をコントロールする目的で、妊娠4週よりタクロリムス1mg/dayで治療された。
[0170]
 妊娠経過は順調であり、妊娠32週までタンパク尿、浮腫、高血圧は見られず、胎児の成長も良好であったが、次の週にタンパク尿や血圧上昇傾向がみられ、その後約3日間で急速にHELLP症候群へ至り、妊娠33週3日で帝王切開にて1490gの男児を出産した。
[0171]
 妊娠経過中の免疫学的所見においては、CD4陽性細胞中のTh1およびTh2細胞の割合は継続的に低下していた一方、NK細胞活性(正常値:18-40%)は中期には低下した後、妊娠32週では顕著に上昇していた(図8)。
[0172]
 この症例では、妊娠初期よりタクロリムス1mg/dayで単独治療を行い、血流改善によるHDP予防を目的とするLDA(low dose aspirin)の併用治療は行わなかった[参考文献13b]。妊娠経過は、前回HELLP症候群を発症した妊娠中期には全く問題が無く、妊娠後期まで順調に経過したが、妊娠33週を過ぎて前回と同様に急速にHELLP症候群へ至った。
[0173]
 免疫学的検査所見ではCD4陽性細胞中のTh1およびTh2細胞の割合、NK細胞活性ともに中期まで低下し、タクロリムスによる十分な免疫抑制がみられたが、妊娠32週にはNK細胞活性が上昇していた。
[0174]
 一つの可能性として、母体への胎児抗原の流入が多くなる時期から母体の胎児へ対する免疫が強く活性化し、妊娠後期ではタクロリムス1mg/dayによる免疫抑制作用が不十分となったことが示唆された。また、Treg以外のT細胞がその細胞割合は変わらない状態で同時に活性化された可能性も考えられた。
[0175]
 同一患者において2回のHELLP症候群が発症したが、その発症メカニズムは同様であることが容易に推測される。HDPの重症合併症としてHELLP症候群および子癇が挙げられるが、この患者は、前回妊娠時には、未治療で妊娠早期に両疾患を発症し、死産している。今回はHELLP症候群へは至ったものの、タクロリムスの単独投与により早期の発症を回避し、前回より約13週間発症を遅らせ、挙児を得ることに成功した。
[0176]
 免疫異常の関与する不妊・不育症患者では、通常初回妊娠以降の胎児抗原に対する認識は増強する可能性がある。したがって、次の妊娠での妊娠高血圧症の増悪に伴うHELLP症候群や子癇発作はより早期に発症することが推測された。それに反して、タクロリムス治療によって前回より発症時期を遅らせることに成功し、その効果は併用薬の非存在により明確となった。胎児に対する母体の拒絶免疫の活性化の抑制と胎児へ対する寛容を促進することにより、より良い胎盤構築とその機能は達成され、妊娠中の高血圧や胎児発育不全の予防を達成したと考えられた。しかし、満期まで妊娠継続が出来なかったこと、出生時の児の成長も遅れていたことを考慮に入れると、この症例へはより多い投与量が必要であったことが考えられた。
[0177]
 この症例では、我々はCD4陽性細胞中のTh1およびTh2細胞の割合とNK細胞活性で患者の病態を議論し、その中の一つのNK細胞活性で母体-胎児間の異常な免疫の発現を示唆したが、母体の胎児抗原へ対する免疫寛容の異常と拒絶免疫の増強、それに次ぐ炎症をバイオマーカーとするTreg細胞、Tfh細胞、Th17細胞、サイトカインやケモカイン等の更に多くのパラメータが妊娠高血圧症の評価をするために存在している[参考文献3b~10b]。
[0178]
 より多くのパラメータによる評価は、詳細な母体の状態を知ることに有用であり、母体-胎児間の免疫状態を評価する新たなパラメータの発見や妊娠高血圧症症候群やそれに関連する疾患への治療効果を評価するための被験者の増加が期待される。

産業上の利用可能性

[0179]
 妊娠前後の母体免疫の変動は(1)妊娠前より活性化している状態、(2)妊娠初期に初めて胎児抗原を認識して活性化する状態、(3)妊娠中期以降に胎児抗原が増加し活性化する状態が想定される。本発明により、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させることが可能となり、その結果、母体と胎児との関係における細胞性免疫(自然免疫や獲得免疫)が関与する不妊・不育症だけでなく、液性免疫が関連する不妊・不育症や抗リン脂質抗体症候群を含む自己免疫疾患、血液型不適合妊娠または胎児ヘモクロマトーシスなどを治療または改善することができ、妊娠の継続、並びに健常児の出産が可能となる。さらに、これらの母体-胎児間の免疫状態が良好に保たれることにより、胎盤の構築を良好にすることが可能となり、母体合併症(妊娠高血圧症候群やそれに関連する疾患であるHELLP症候群や子癇など)の回避にもつながる。
[0180]
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請求の範囲

[請求項1]
(i)  式(I)
[化1]


(式中、R およびR 、R およびR 、R およびR の隣接するそれぞれの対は、各々独立して、
(a)2つの隣接する水素原子を表すか、もしくはR はアルキル基であってもよく、または
(b)結合しているそれぞれの炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
は、水素原子、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基であるか、もしくはR と一緒になってオキソ基を表わし;
およびR は独立して、水素原子またはヒドロキシ基を表わし;
10は、水素原子、アルキル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基、アルケニル基、1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルケニル基、またはオキソ基によって置換されたアルキル基を表わし;
Xは、オキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式-CH O-で表わされる基を表わし;
Yは、オキソ基、(水素原子、ヒドロキシ基)、(水素原子、水素原子)、または式N-NR 1112もしくはN-OR 13で表わされる基を表わし;
11およびR 12は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基またはトシル基を表わし;
13、R 14、R 15、R 16、R 17、R 18、R 19、R 22およびR 23は独立して、水素原子またはアルキル基を表わし;
24は、所望により置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環を表わし;
nは1または2を表わし、
上記の意味に加え、さらにY、R 10およびR 23は、それらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環の、窒素原子、硫黄原子および酸素原子より選択される1以上の複素原子を含有する複素環基を形成してもよく、その複素環基は、アルキル基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、ベンジル基、式-CH Se(C )で表わされる基、および1以上のヒドロキシ基によって置換されたアルキル基から選ばれる1以上の基によって置換されていてもよい)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分として含む、妊娠前の過剰活性化免疫または妊娠後の過剰反応性免疫を阻害し、正常な免疫状態を回復させるための薬剤。
[請求項2]
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、ステロイドホルモン受容体の活性化と核内移行による、ステロイドホルモンの作用増強を誘導するための薬剤。
[請求項3]
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、子宮内において、受精卵もしくは胎児成分により活性化される可能性のある自然免疫に代表されるナチュラルキラー/ナチュラルキラーT細胞またはマクロファージの活性を抑制するための薬剤。
[請求項4]
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、子宮内において受精卵もしくは胎児を獲得免疫により直接もしくは間接的に攻撃する可能性のある、受精卵もしくは胎児成分の抗原を提示する抗原提示細胞、細胞障害性T細胞もしくは細胞間伝達物質を産生するT細胞の活性を阻害するための薬剤。
[請求項5]
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、受精卵もしくは胎児を免疫寛容するために必要な抗原提示細胞を誘導するための、または未分化樹状細胞から寛容型樹状細胞への分化を誘導するための薬剤。
[請求項6]
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、ヒト白血球抗原(HLA)を含めた胎児成分に対する、液性免疫応答、すなわち胎児特異抗体の産生を抑制するための薬剤。
[請求項7]
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、妊娠の継続に問題をきたす母体内での病原抗体の産生を抑制するための薬剤。
[請求項8]
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、胎児に対する母体の拒絶免疫の活性化の抑制および/または胎児へ対する寛容を促進するための薬剤。
[請求項9]
(i)  式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、
(ii) サイクロスポリン類、および
(iii)ラパマイシンまたはその誘導体、よりなる群から選択される化合物を有効成分とする、妊娠高血圧症候群および/または妊娠高血圧症候群に関連する疾患を発症予防または発症遅延するための薬剤。
[請求項10]
 妊娠高血圧症候群に関連する疾患がHELLP症候群である、請求項9に記載の薬剤。
[請求項11]
 妊娠高血圧症候群に関連する疾患が子癇である、請求項9に記載の薬剤。
[請求項12]
 有効成分が式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式(I)の化合物がタクロリムスまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1~11のいずれかの請求項に記載の薬剤。

図面

[ 図 1a]

[ 図 1b]

[ 図 2a]

[ 図 2b]

[ 図 3a]

[ 図 3b]

[ 図 4]

[ 図 5a]

[ 図 5b]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]