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1. WO2020129305 - グリース組成物

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明 細 書

発明の名称 グリース組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009  

発明の効果

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023  

実施例

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : グリース組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、フッ素系グリース組成物に関する。

背景技術

[0002]
 近年、高速化、高効率化、高圧化及び小型化に伴い、自動車、工業機械等に使用される潤滑剤は、高圧、高速、高荷重及び高温度下で使用しても長時間にわたって充分に機械寿命を保証できる優れた潤滑性能が要求されている。このような状況下において、優れた熱安定性、低揮発性、耐薬品性、耐樹脂性および温度粘度特性を有する含フッ素系合成オイル、特にパーフルオロポリエーテル油は、潤滑組成物の基油として、注目を集めている。しかしながら、フッ素系合成オイルを基油とするフッ素系グリースは、エステル油や、合成炭化水素油等の合成油を基油とするグリースと比べて、金属とのなじみが悪く、耐摩耗性、耐焼付性について、一般的な合成油よりも劣っている。また、フッ素系グリースは油溶性に劣ることから、一般的な合成油に配合可能な汎用添加剤との相溶性が悪く、添加剤の添加による十分な耐摩耗性、耐焼付性を得ることが困難である。
[0003]
 特許文献1には、パーフルオロポリエーテル基油に、増ちょう剤として脂肪族ジカルボン酸金属塩、モノアミドモノカルボン酸金属塩またはモノエステルカルボン酸金属塩の少なくとも一種を添加してなる潤滑グリース組成物が開示されているが、潤滑特性を更なる改善が望まれる。
[0004]
 また、特許文献2において、フッ素系基油に、リン酸塩、タングステン酸塩、硫酸塩および亜硫酸塩から選ばれる1種以上の無機酸塩を配合してなることを特徴とするグリース組成物が開示されているが、添加剤の凝集により、潤滑性能の劣化が懸念される。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2001-354986号公報
特許文献2 : 特開2015-59153号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明者らは、以上の事情に鑑みてなされたものであり、十分な耐摩耗性を有するフッ素系グリース組成物を提供することを課題としている。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明は、上記課題を解決するため、以下の[1]~[5]を含む。
[1] 基油としてのパーフルオロポリエーテル油と、増ちょう剤と、パーフルオロポリエーテル鎖を含む基を有するフラーレン誘導体とを有し、前記基油100質量部に対して、前記フラーレン誘導体を0.0001~0.2000質量部含有するグリース組成物。
[2] 前記増ちょう剤はポリテトラフルオロエチレンである、前項[1]に記載のグリース組成物。
[3] 前記フラーレン誘導体におけるパーフルオロポリエーテル鎖を含む基は、アリール基を有する接合構造を介して、フラーレン骨格に接合することを特徴とする前項[1]または前項[2]に記載のグリース組成物。
[4] 前記フラーレン誘導体が、下記の式(1)または式(2)で表される構造を有する化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前項[1]~[3]のいずれかに記載のグリース組成物。
[0008]
[化1]


[0009]
[化2]



(式中、FLNはフラーレン骨格を表し、A 、A はそれぞれ独立にパーフルオロポリエーテル鎖を含む基を表し、R 、R はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数24以下の炭化水素基を表す。なおa、cはそれぞれ独立に2~5の整数を表し、b、dはそれぞれ独立に1~5の整数を表す。)
[5] 前記R 及びR は、お互い独立して、炭素数24以下のアルキル基又はアリール基である前項[4]に記載のグリース組成物。

発明の効果

[0010]
 本発明によれば、耐摩耗性が優れたフッ素系グリース組成物を提供することができる。

発明を実施するための形態

[0011]
 以下、本発明の一実施形態を挙げて、詳細に説明する。なお、本発明はその要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
[0012]
 本実施形態で得られるグリース組成物は、パーフルオロポリエーテル油からなる基油と、増ちょう剤と、パーフルオロポリエーテル鎖を含む基を有するフラーレン誘導体を含有し、基油100質量部に対して、フラーレン誘導体の含有量は0.0001~0.2000質量部である。
[0013]
 本実施形態に係る基油として用いるパーフルオロポリエーテル油は、特に限定されるものではなく、通常公知のものは好適に用いられる。例えば、下記の一般式(i)または(ii)の構造を有するものを用いることが可能である。
(i) Rf -O(CF O) (C O) 〔CF(CF )CF O〕 -Rf (ここで、Rf 、Rf は、それぞれ独立に炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。なお、e、f、gは0または正の整数であり、かつ、e+f+g=2~200である)
(ii) F(CF CF CF O)
(ここで、hは2~200の整数を意味する。)
 上記のパーフルオロポリエーテル油は、一種類を単独で使用しても良く、またこれらの中から選ばれる2種以上のものを任意の割合で混合して使用してもよい。
(増ちょう剤)
 本実施形態に係るグリース組成物の増ちょう剤は、パーフルオロポリエーテルに分散し、半固体のグリース状にできるものであれば、用いることができる。例えば、金属石けん、ウレア化合物、フッ素樹脂等が挙げられる。耐熱性を考慮する場合、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルキレン樹脂等のフッ素樹脂が好ましく、その中で、フッ素系基油への分散性がよい点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がより好ましい。また、これらの増ちょう剤は、一種類を単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。なお、増ちょう剤の含有量は、所望のちょう度が得ればよいが、硬くなりすぎないように、基油100質量部に対して、50質量部未満であることが好ましく、40質量部未満であることがより好ましい。
(フラーレン誘導体)
 本発明の実施形態に係るフラーレン誘導体は、パーフルオロポリエーテル鎖を含む基を有するものである。
[0014]
 本発明の実施形態に係るフラーレン誘導体中のフラーレン骨格としては、例えば、C 60、C 70、C 76、C 78、さらに高次のフラーレンが挙げられるが、潤滑油への溶解性の高さの点から、C 60及びC 70が好ましく、純度の高いものを工業的に容易に得る点と、潤滑油への着色が少ない点から、C 60がより好ましい。また、フラーレン誘導体のコストを低減するため、フラーレン誘導体の合成工程において、C 60とその他のフラーレンとの混合物であるミックスフラーレンを用いることもできる。ミックスフラーレンを使用する場合、C 60の質量割合が全体の50%以上であることが好ましい。
[0015]
 本発明のフラーレン誘導体が有するパーフルオロポリエーテル鎖を含む基のパーフルオロポリエーテル鎖の部分は、-(CF O-(式中xは1~5の整数である)で表される構造を有することが好ましい。さらに、-(CF CF O) (CF O) -で表される部分構造を有することがより好ましい。ここで、y及びzは1~50の整数である。前記パーフルオロポリエーテル鎖を含む基の、パーフルオロポリエーテル鎖以外の部分は特に限定されない。前記パーフルオロポリエーテル鎖を含む基の末端部の構造としては、トリフルオロメチル基やパーフルオロブチル基などのパーフルオロアルキル基、メチル基やブチル基などのアルキル基、フェニル基やナフチル基などのアリール基、またはベンジル基やフェニルプロピル基などのアラルキル基を含む構造が好ましく、その中でもパーフルオロアルキル基がより好ましく、パーフルオロブチル基が特に好ましい。前記構造を有すると、フラーレン誘導体は、パーフルオロポリエーテル油への溶解性が向上する。
[0016]
 なお、前記パーフルオロポリエーテル鎖を含む基は、直接的にフラーレン骨格に接合してもよく、接合構造を介して、フラーレン骨格に接合してもよい。接合構造について、特に限定されないが、アリール基を含む接合構造が好ましい。また、前記パーフルオロポリエーテル鎖を含む基は、直接的にアリール基と連結することがより好ましい。前記パーフルオロポリエーテル鎖を含む基のアリール基との連結部の構造としては、例えば、エーテル結合やエステル結合を含む構造が挙げられ、その中でもエーテル結合を含む構造が好ましく、特に-OCH -を含む構造が好ましい。
[0017]
 本発明のフラーレン誘導体は、特に以下の式(1)または式(2)の構造を有するものが最も好ましい。
[0018]
[化3]


[0019]
[化4]



(式中、FLNはフラーレン骨格を表し、A 、A は、それぞれ独立にパーフルオロポリエーテル鎖を含む基を表し、R 、R はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数24以下の炭化水素基を表す。また、a、cはそれぞれ独立に2~5の整数を表し、b、dはそれぞれ独立に1~5の整数を表す。)
 より具体的に、例えば、R 、R としては、互いに独立に、水素原子、メチル基やエチル基などのアルキル基、フェニル基やナフチル基などのアリール基、ベンジル基やフェニルプロピル基などのアラルキル基が挙げられ、その中でもアルキル基またはアリール基であることが好ましく、メチル基またはフェニル基であることが特に好ましい。A 、A としては、互いに独立に、-OCH (CF O) (CF CF O) で表されるものが挙げられる。ここで、R としては、炭素数1~5のアルキル基、パーフルオロアルキル基が挙げられ、その中でもパーフルオロアルキル基であることが好ましく、パーフルオロブチル基であることが特に好ましい。なお、m、nはそれぞれ独立に1~50の整数を表す。本発明のフラーレン誘導体は上記の構造を有すれば、パーフルオロポリエーテル油への溶解性が高まる。
[0020]
 なお、上記式(1)または式(2)の構造を有するフラーレン誘導体は、WO2017/006812号公報または特開2017-14192号公報に記載の合成法により、作製することができる。
[0021]
 本実施形態のグリース組成物のフラーレン誘導体の含有量は、基油100質量部に対して、0.0001~0.2000質量部であり、好ましくは0.0010~0.2000質量部であり、より好ましくは0.0010~0.1000質量部である。フラーレン誘導体の含有量が上記範囲内であれば、フラーレン誘導体は、パーフルオロポリエーテル油に溶解でき、十分な耐摩耗性向上の効果が期待できる。また、フラーレン誘導体の含有量は上記の範囲内であれば、高温、高圧の使用条件下においても、フラーレン誘導体の分解または凝集による固体物の生成が少なく、長時間にわたって、優れた潤滑性能を維持することができる。
(添加剤)
 本実施形態のグリース組成物に、諸特性を改善するために、フラーレン誘導体以外の添加剤を更なる配合することができる。このような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、市販の酸化防止剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、腐食防止剤、油性向上剤、錆止め添加剤、消泡剤、加水分解抑制剤などを配合することができる。
[0022]
 本発明のグリース組成物は、一般的なグリースの製造方法で作製できる。たとえば、パーフルオロポリエーテル油からなる基油にフラーレン誘導体、増ちょう剤、場合により、他の添加剤を添加し、適宜な装置で混練する方法を挙げることができるが、パーフルオロポリエーテル油からなる基油にフラーレン誘導体を溶解させた後に、増ちょう剤を添加することが好ましい。また、フラーレン誘導体を市販のパーフルオロポリエーテル系グリースに添加して、混合することにより、本発明のグリース組成物を得ることもできる。
(用途)
 本実施形態のグリース組成物は、耐ガス性,低揮発性、高温特性、不燃性であることが特徴で、半導体真空ポンプ、高温ロール軸受、酸素ブロアー、電着塗装オーブン、フィルム延伸機 、ユルゲーター、複写機、レーザープリンター(LBP)、コーン製造機、クリーンルーム、真空機器、遠心分離機各種バルブ、航空機器、宇宙機器などの各種用途に使用することができる。
[0023]
 以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
実施例
[0024]
 以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(NMR分析)
  H-NMRは下記の条件にて測定した。
装置:日本電子製 JNM-EX270
試料調製:試料(約10mg~30mg)をCDCl /ヘキサフルオロベンゼン混合溶媒(約0.5mL)に溶解させた後、直径5mmのNMR試料管に入れた。
測定温度:室温
基準物質:溶媒に添加されたテトラメチルシランのシグナルを基準とした。
(フラーレン誘導体Aの合成)
 フッ素化トリエチレングリコールモノブチルエーテル(化学式:CF CF CF CF (OCF CF OCF CH OH、Exfluor社製、13g、24mmol)、ピリジン(2.3g、29mmol)をジクロロメタン(120mL)に加え、得られた溶液にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(8.2g、29mmol)のジクロロメタン(120mL)溶液を滴下した。室温で16時間攪拌した後、反応混合物を純水(100mL)と飽和炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で一度ずつ洗浄した。得られた有機層を濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、下記の式(3)の構造を有する化合物1(15g、22mmol、収率92%)を淡黄色油状物質として得た。
[0025]
[数1]


[0026]
[化5]



 上記で得た化合物1(6.5g、10mmol)、2,4,6-トリヒドロキシベンズアルデヒド(0.47g、3.0mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(60mL)に加え、得られた溶液に炭酸セシウム(4.4g、14mmol)を加えた。70℃で2時間攪拌した後、反応混合物を室温まで冷やし、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた混合物を純水(30mL)とAK―225(30mL)を用いて分液し、さらに水層をAK―225(20mL)で二度抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、赤褐色油状の粗生成物(5.2g)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン―酢酸エチル(9:1))で精製することで、下記の式(4)の構造を有する化合物2を淡黄色油状物質(4.4g、2.5mmol、収率83%)として得た。
[0027]
[化6]


[0028]
[化7]



 上記で得た化合物2(4.4g、2.5mmol)とN-メチルグリシン(2.0g、23mmol)をヘキサフルオロテトラクロロブタン(20mL)に加え、得られた混合物にC 60(0.95g、1.3mmol)のオルトジクロロベンゼン(40mL)溶液を速やかに加えた。ジムロート冷却管を取り付け、160℃に設定した湯浴で加熱し、4時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、適量のAK―225に溶解させ濾過した。得られた溶液を純水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(4.1g)を得た。
[0029]
 次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086-CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を15~20MPaの範囲で変化させ、黒色油状のフラーレン誘導体Aを3.0g抽出した。下記の式に示したNMRの分析結果より、フラーレン誘導体Aは以下式(5)の構造を有することが確認された。
[0030]
  H-NMR δ(ppm):2.79(brs、6H)、4.39(br、18H)、6.22(brs、4H)。
[0031]
[化8]


[0032]
[化9]



(フラーレン誘導体Bの合成)
 フラーレン誘導体Aの合成と同様に化合物1を作製した。得た化合物1(8.2g、12mmol)と、2',4',6'-トリヒドロキシアセトフェノン一水和物(0.57g、3.0mmol)とをN,N-ジメチルホルムアミド(80mL)に加え、得られた溶液に炭酸セシウム(5.9g、18mmol)を加えた。70℃で2時間攪拌した後、反応混合物を室温まで冷やし、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた混合物を純水(30mL)とAK―225(30mL)を用いて分液し、さらに水層をAK―225(20mL)で二度抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、赤褐色油状の粗生成物(4.7g)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン―酢酸エチル(9:1))で精製することで、下記の式(6)の構造を有する化合物3を黄褐色油状物質(3.7g、2.1mmol、収率69%)として得た。
[0033]
[化10]


[0034]
[化11]


 上記で得た化合物3(3.7g、2.1mmol)とp-トルエンスルホニルヒドラジド(1.9g、10mmol)とをエタノール(50mL)とAK―225(30mL)に加え、得られた溶液に少量の塩酸を加えた。室温で4日攪拌した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。得られた混合物を純水(30mL)とAK―225(30mL)を用いて分液し、さらに水層をAK―225(20mL)で二度抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黄褐色油状の粗生成物(4.5g)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン―酢酸エチル(17:3))で精製することで、下記の式(7)の構造を有する化合物4を黄褐色油状物質(3.6g、1.9mmol、収率90%)として得た。
[0035]
[化12]


[0036]
[化13]



 上記で得た化合物4(3.6g、1.9mmol)とナトリウムメトキシド(0.11g、2.1mmol)とをヘキサフルオロテトラクロロブタン(10mL)とピリジン(10mL)に加えた。得られた混合物を室温で30分攪拌した後、C 60(0.7g、0.97mmol)のオルトジクロロベンゼン(100mL)溶液を速やかに加えた。ジムロート冷却管を取り付け、180℃に設定した湯浴で加熱し、18時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、反応溶媒を可能な限り取り除いた後に適量のAK―225に溶解させ濾過し、未反応のフラーレンを除去した。得られた溶液を純水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(2.0g)を得た。
[0037]
 次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086-CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を12~18MPaの範囲で変化させ、黒色油状のフラーレン誘導体Bを1.0g抽出した。下記に示したNMRの分析結果より、フラーレン誘導体Bは下記式(8)の構造を有することが確認された。
[0038]
  H-NMR δ(ppm):2.63(s、3H)、4.46(t、4H)、4.63(t、2H)、6.32(s、2H)。
[0039]
[化14]


[0040]
[化15]



(パーフルオロポリエーテル油)
 パーフルオロポリエーテル油として、NOK(株)製:BRAAIERTA J-180(C O〔CF(CF )CF O〕 、jは2~100の整数である)
を用いる。
(実施例1)
 基油として上記のBRAAIERTA J-180 100gに、フラーレン誘導体Aを0.001g添加し、室温でスターラーを用いて36時間撹拌して溶液を得た。得た溶液に、増ちょう剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(喜多村(株)製 KTL-8FH)を20g添加して、自転・公転ミキサー(シンキー社製、「あわとり練太郎」)で、1200rmpで3分間予備混練したのち、3本ロールミルを用い、1.5MPa、0.4MPaの圧力で2回混練処理を行い、グリース組成物を調製した。得たグリース組成物のフラーレン誘導体の含有量とPTFEの含有量は、基油100質量部に対して、それぞれ0.0010質量部と20質量部である。なお、グリース組成物において、フラーレン誘導体の含有量とPTFEの含有量は、基油100質量部に対して、それぞれの仕込み量より算出した。
(耐摩耗性評価)
 ボールオンディスクトライボメーター(Antonparr製)試験により、得たグリース組成物の耐摩耗性を評価した。ボールとして、径6mm(SUJ2)、ディスクとして、径13mm、厚さ5mm(SUJ2)をそれぞれ用い、荷重2N、回転速度10rpm、回転数1000回の条件で摩耗痕径(mm)を測定した。本評価においては、摩耗痕径が小さいほど、摩耗特性に優れることを意味する
(実施例2~11、比較例1~6)
 増ちょう剤の含有量と、フラーレン誘導体の種類と、その含有量を表1の通りとした以外は、実施例1と同様にグリース組成物を調製し、表1に記載の荷重で耐摩耗性評価を実施した。なお、増ちょう剤の含有量、フラーレン誘導体の種類及びその含有量は、表1に記載の組成を有するグリース組成物となるようにそれぞれ調整した。
[0041]
[表1]


 表1から、明らかなとおり、耐摩耗性評価において、荷重が2Nの場合、フラーレン誘導体を有しない比較例1~3と比べて、実施例1~8の摩耗痕径はいずれも小さくなった。また、評価荷重が70Nの場合、フラーレン誘導体を有しない比較例4、5では、焼付きが発生した。一方、フラーレン誘導体を有する実施例9~11では、焼付きが生じなかった。以上より、本発明のグリース組成物が優れた耐摩耗性及び耐焼付性を有することが分かった。また、実施例1~3には、フラーレン誘導体の含有量の増加とともに、摩耗痕径の縮小が観察された。しかしながら、実施例4のフラーレン誘導体の含有量は、実施例3のフラーレン誘導体の含有量の2倍であることにも拘わらず、摩耗痕径がほぼ同じであることにより、フラーレン誘導体の含有量が一定値を超えると、フラーレン誘導体の含有量が上がっても、さらなる耐摩耗性の改善効果が少ないことが分かった。さらに、比較例6において、フラーレン誘導体の含有量が1.000質量部になると、焼付きが発生して、耐摩耗性の評価ができなかった。その原因は、測定過程中において、圧力によるフラーレン誘導体の分解が起こり、フラーレンの凝集粒子が形成して、グリース組成物の潤滑性能が劣化したと考えられる。したがって、フラーレン誘導体の含有量は、基油100質量部に対して、0.0001~0.2000質量部、好ましくは0.0010~0.1000質量部のフッ素系グリース組成物が好適に用いることができることが分かった。
[0042]
 本出願は2018年12月21日に出願した日本国特許出願第2018-240099号に基づくものであり、その全内容は参照することによりここに組み込まれる。

請求の範囲

[請求項1]
 基油としてのパーフルオロポリエーテル油と、
 増ちょう剤と、
 パーフルオロポリエーテル鎖を含む基を有するフラーレン誘導体とを有し、
 前記基油100質量部に対して、前記フラーレン誘導体を0.0001~0.2000質量部含有するグリース組成物。
[請求項2]
 前記増ちょう剤はポリテトラフルオロエチレンである、請求項1に記載のグリース組成物。
[請求項3]
 前記フラーレン誘導体におけるパーフルオロポリエーテル鎖を含む基は、アリール基を有する接合構造を介して、フラーレン骨格に接合することを特徴とする請求項1または2に記載のグリース組成物。
[請求項4]
 前記フラーレン誘導体が、下記の式(1)または式(2)で表される構造を有する化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のグリース組成物。
[化16]



[化17]



(式中、FLNはフラーレン骨格を表し、A 、A はそれぞれ独立にパーフルオロポリエーテル鎖を含む基を表し、R 、R はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数24以下の炭化水素基を表す。なおa、cはそれぞれ独立に2~5の整数を表し、b、dはそれぞれ独立に1~5の整数を表す。)
[請求項5]
 前記R 及びR は、お互い独立して、炭素数24以下のアルキル基又はアリール基である請求項4に記載のグリース組成物。