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1. WO2020129116 - 反応処理装置、反応処理容器および反応処理方法

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明 細 書

発明の名称 反応処理装置、反応処理容器および反応処理方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

図面の簡単な説明

0018  

発明を実施するための形態

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076  

符号の説明

0077  

産業上の利用可能性

0078   0079  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : 反応処理装置、反応処理容器および反応処理方法

技術分野

[0001]
 本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)に使用される反応処理装置、反応処理容器および反応処理方法に関する。

背景技術

[0002]
 遺伝子検査は、各種医学分野における検査、農作物や病原性微生物の同定、食品の安全性評価、さらには病原性ウィルスや各種感染症の検査にも広く活用されている。微小量のDNAを高感度に検出するために、DNAの一部を増幅して得られたものを分析する方法が知られている。中でもPCRを用いた方法は、生体等から採取されたごく微量のDNAのある部分を選択的に増幅する注目の技術である。
[0003]
 PCRは、DNAを含む生体サンプルと、プライマーや酵素などからなるPCR試薬とを混合した試料に、所定のサーマルサイクルを与え、変性、アニーリングおよび伸長反応を繰り返し起こさせて、DNAの特定の部分を選択的に増幅させるものである。
[0004]
 PCRにおいては、対象の試料をPCRチューブまたは複数の穴が形成されたマイクロプレート(マイクロウェル)などの反応処理容器に所定量入れて行うことが一般的であるが、近年、基板に形成された微細な流路を備える反応処理容器(チップとも呼ばれる)を用いて行うことが実用化されてきている(例えば特許文献1)。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2009-232700号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 往復式流路タイプの反応容器によるPCRでは、試料にサーマルサイクルを与えるために、流路上にそれぞれ異なる温度に維持された複数の温度領域が設定され、その流路中で複数の温度領域間を往復式に移動させる。試料に適切にサーマルサイクルを与えるためには、試料がそれぞれの温度領域に正確に停止する必要がある。停止位置がばらつくと、反応が起こらなかったり、反応の進度が試料の場所でばらついたり、DNAの増幅等の反応が不正確になり、ひいては作業者や業務従事者の判断ミスを招来するおそれがある。
[0007]
 本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる温度領域が設定されている流路内で試料を往復式に移動させることにより、試料にサーマルサイクルを与えることができる反応処理装置または反応処理容器において、試料を温度領域の所定の位置に正確に停止させることのできる技術を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008]
 上記課題を解決するために、本発明のある態様の反応処理装置は、試料が移動する流路と、流路の一端に配置された第1フィルタと、流路の他端に配置された第2フィルタと、流路の一端側に設けられる第1温度領域と、流路の他端側に設けられる第2温度領域と、を備える反応処理容器と、反応処理容器の第1温度領域を第1温度に維持するとともに、反応処理容器の第2温度領域を第1温度よりも低い第2温度に維持する温度制御システムと、試料を流路内で移動させる送液システムと、を備える。第1フィルタおよび第2フィルタは、通気性を有するとともに撥水性を有する。送液システムによって第1温度領域から第2温度領域に試料を移動させるとき、第2フィルタで試料が堰き止められることにより、試料が第2温度領域で停止し、送液システムによって第2温度領域から第1温度領域に試料を移動させるとき、第1フィルタで試料が堰き止められることにより、試料が第1温度領域で停止する。
[0009]
 第1フィルタおよび第2フィルタは、フッ素樹脂を含有してもよい。第1フィルタおよび第2フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマーから選ばれる少なくとも一つのフッ素樹脂を含有してもよい。
[0010]
 第1フィルタおよび第2フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン製であってもよい。
[0011]
 第1温度は試料を変性させる温度に設定され、第2温度は試料をアニーリングおよび伸長させる温度に設定されてもよい。反応処理装置は、第2温度領域内の一部の領域に位置する試料からの蛍光を検出するように配置された蛍光検出器をさらに備えてもよい。
[0012]
 反応処理容器は、第1フィルタと流路との間の隙間、第2フィルタと流路との間の隙間を塞ぐために環状のパッキンを備えてもよい。
[0013]
 本発明の別の態様は、試料が移動する流路と、流路の一端に配置された第1フィルタと、流路の他端に配置された第2フィルタと、流路の一端側に設けられる第1温度領域と、流路の他端側に設けられる第2温度領域と、を備える反応処理容器である。第1フィルタおよび第2フィルタは、通気性を有するとともに撥水性を有する。第1温度領域から第2温度領域に試料が移動されるとき、第2フィルタで試料が堰き止められることにより、試料が前記第2温度領域で停止し、第2温度領域から第1温度領域に試料が移動されるとき、第1フィルタで試料が堰き止められることにより、試料が第1温度領域で停止する。
[0014]
 本発明のさらに別の態様は、試料が移動する流路と、流路の一端に配置された第1フィルタと、流路の他端に配置された第2フィルタと、流路の一端側に設けられる第1温度領域と、流路の他端側に設けられる第2温度領域と、を備える反応処理容器と、反応処理容器の第1温度領域を第1温度に維持するとともに、反応処理容器の第2温度領域を第1温度よりも低い第2温度に維持する温度制御システムと、試料を流路内で移動させる送液システムと、を備える反応処理装置における反応処理方法である。この方法において、第1フィルタおよび第2フィルタは、通気性を有するとともに撥水性を有し、送液システムによって第1温度領域から第2温度領域に試料を移動させるとき、第2フィルタで試料が堰き止められることにより、試料が第2温度領域で停止し、送液システムによって第2温度領域から第1温度領域に試料を移動させるとき、第1フィルタで試料が堰き止められることにより、試料が第1温度領域で停止する。
[0015]
 反応処理方法はリアルタイムPCR法であってもよい。反応処理方法はインターカレーター法であってもよい。
[0016]
 反応処理方法は、さらに、融解分析工程を備えてもよい。融解分析工程は、第2温度領域内の温度を変化させることにより融解分析曲線を得てもよい。

発明の効果

[0017]
 本発明によれば、異なる温度領域が設定されている流路内で試料を往復式に移動させることにより、試料にサーマルサイクルを与えることができる反応処理装置または反応処理容器において、試料を温度領域の所定の位置に正確に停止させることができる。

図面の簡単な説明

[0018]
[図1] 反応処理容器が備える基板の平面図である。
[図2] 反応処理容器の構成を説明するための概念図である。
[図3] 反応処理容器の断面構造を説明するための図である。
[図4] 本発明の実施形態に係る反応処理装置を説明するための模式図である。
[図5] 試料が流路の中温領域に送り込まれた状態を示す図である。
[図6] 試料が流路の高温領域に送り込まれた状態を示す図である。
[図7] 本実施例におけるPCRの増幅結果を示す図である。
[図8] 本実施例における融解分析結果を示す図である。
[図9] 本実施例における融解分析結果を示す図である。
[図10] 三水準の温度領域に対応する反応処理容器の概念図である。
[図11] 複数の試料に対する同時反応に供される反応処理容器の概念図である。

発明を実施するための形態

[0019]
 以下、本発明の実施形態に係る反応処理装置について説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
[0020]
 まず、本発明の実施形態に係る反応処理装置で使用可能な反応処理容器について説明する。この反応処理容器は、基板と、該基板に貼り付けられた封止フィルムと、フィルタと、から成る。図1は、反応処理容器が備える基板の平面図である。図2は、反応処理容器の構成を説明するための概念図である。図3は、反応処理容器の断面構造を説明するための図である。図3は、基板に形成される流路、フィルムおよびフィルタとの位置関係を説明するための図であり、実施の反応処理容器の断面図とは異なる点に留意されたい。
[0021]
 反応処理容器10は、上面14aに溝状の流路12が形成された樹脂性の基板14と、基板14の上面14a上に貼られた流路封止フィルム16、第1封止フィルム18および第2封止フィルム19と、基板14の下面14b上に貼られた第3封止フィルム20、第4封止フィルム21および第5封止フィルム22と、基板14内に配置された第1フィルタ28および第2フィルタ30と、を備える。また、第1フィルタ28と第3封止フィルム20との間、第2フィルタ30と第4封止フィルム21との間に、O(オー)リング23のような環状のパッキンを備える。Oリング23は、フィルタを基板に押しつけて、容易に動かないように配置してもよく、フィルタと流路との間の隙間を塞ぐことも可能である。環状のパッキンは、使用するフィルタや流路、またはフィルタの設置される部分の形状に応じた形状とし、略円形や四角形などの多角形状であってもよい。
[0022]
 基板14は、温度変化に対して安定で、使用される試料溶液に対して侵されにくい材質から形成されることが好ましい。さらに、基板14は、成形性がよく、透明性やバリア性が良好で、且つ、低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが好ましい。このような材質としては、ガラス、シリコン(Si)等の無機材料をはじめ、アクリル、ポリプロピレン、シリコーンなどの樹脂、中でもシクロオレフィンポリマー樹脂(COP)が好適である。
[0023]
 基板14の上面14aには溝状の流路12が形成されている。反応処理容器10において、流路12の大部分は基板14の上面14aに露出した溝状に形成されている。金型等を用いた射出成形により容易に成形できるようにするためである。この溝を封止して流路として活用するために、基板14の上面14a上に流路封止フィルム16が貼られる。溝の断面形状は特に限定されるものではなく矩形状やU字形状(丸形状)でもよい。また、成形の際の離型性をよくするために上面14aから深さ方向にテーパー状に狭まる形状を備えていてもよく、例えば台形状であってもよい。流路12の寸法の一例は、幅0.7mm、深さ0.7mmである。
[0024]
 流路封止フィルム16は、一方の主面が粘着性を備えていてもよいし、押圧や紫外線などのエネルギー照射、加熱等により粘着性や接着性を発揮する機能層が一方の主面に形成されていてもよく、容易に基板14の上面14aと密着して一体化できる機能を備える。流路封止フィルム16は、粘着剤も含めて低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが望ましい。この点でシクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはアクリルなどの樹脂からなる透明フィルムが適しているが、これらに限定されない。また、流路封止フィルム16は、板状のガラスや樹脂から形成されてもよい。この場合はリジッド性が期待できることから、反応処理容器10の反りや変形防止に役立つ。
[0025]
 流路12の一端12aには、第1フィルタ28が設けられている。流路12の他端12bには、第2フィルタ30が設けられている。流路12の両端に設けられた一対の第1フィルタ28および第2フィルタ30は、PCRによって目的のDNAの増幅やその検出を妨げないように、または目的のDNAの品質が劣化しないように、コンタミネーションを防止する。第1フィルタ28および第2フィルタ30の寸法は、基板14に形成されたフィルタ設置スペースに隙間なく収まるような寸法に形成される。
[0026]
 基板14には、第1フィルタ28を介して流路12の一端12aに通じる第1空気連通口24が形成されている。同様に基板14には、第2フィルタ30を介して流路12の他端12bに通じる第2空気連通口26が形成されている。一対の第1空気連通口24および第2空気連通口26は、基板14の上面14aに露出するように形成されている。
[0027]
 本実施形態においては、第1フィルタ28および第2フィルタ30として、低不純物特性が良好であり、且つ通気性および撥水性もしくは撥油性を有するものが用いられる。第1フィルタ28および第2フィルタ30としては、フッ素含有樹脂が好ましく、これらに限られないが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー)などが例示できる。さらにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製フィルタとしては、これらに限られないが、PF060やPF100(いずれもアドバンテックグループ社製)を用いることができる。PF060は、厚みが0.50mmであり、空隙率が75%であり、保留粒子径が6μmであり、圧力損失が0.069kPaであり、はっ水度が3.9kPa超である。PF100は、厚みが1.0mmであり、空隙率が77%であり、保留粒子径が10μmであり、圧力損失が0.059kPaであり、はっ水度が3.9kPa超である。さらに、第1フィルタ28および第2フィルタ30としては、フッ素含有樹脂でコーティングして表面を撥水処理したものも使用することができる。
[0028]
 流路12は、一対の第1フィルタ28および第2フィルタ30の間に、後述する反応処理装置により複数水準の温度の制御が可能な反応領域を備える。複数水準の温度が維持された反応領域を連続的に往復するように試料を移動させることにより、試料にサーマルサイクルを与えることができる。
[0029]
 本実施形態において、反応領域は、流路12の一端12a側に設けられる高温領域36と、流路12の他端12b側に設けられる中温領域38とを含む。後述の反応処理装置に反応処理容器10が搭載された際に、高温領域36は比較的高温(例えば約95℃)に維持され、中温領域38は、高温領域36よりも低温(例えば約62℃)に維持される。高温領域36は、流路12における紙面右側に位置しており、その一端は第1フィルタ28および接続流路29を介して第1空気連通口24に連通し、他端は接続流路40を介して中温領域38に連通している。中温領域38は、流路12における紙面左側に位置しており、その一端は接続流路40を介して高温領域36に連通し、他端は第2フィルタ30および接続流路31を介して第2空気連通口26に連通している。
[0030]
 高温領域36および中温領域38はそれぞれ、曲線部と直線部とを組み合わせた連続的に折り返す蛇行状の流路を含んでいる。このように蛇行状の流路とした場合、後述の温度制御システムを構成するヒータ等の限られた実効面積を有効に使うことができ、反応領域内での温度のばらつきを低減することが容易であるとともに、反応処理容器の実体的な大きさを小さくでき、反応処理装置の小型化に貢献できるという利点がある。一方、高温領域36と中温領域38の間の接続流路40は、直線状の流路であってよい。
[0031]
 高温領域36と中温領域38の間の接続流路40の中間には分岐点40aが設けられており、該分岐点40aから分岐流路42が分岐している。分岐流路42の先端には、基板14の下面14bに露出するように試料導入口44が形成されている。
[0032]
 第1封止フィルム18は、第1空気連通口24を封止するように基板14の上面14aに貼り付けられる。第2封止フィルム19は、第2空気連通口26を封止するように基板14の上面14aに貼り付けられる。第3封止フィルム20は、接続流路29および第1フィルタ28を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。第4封止フィルム21は、接続流路31および第2フィルタ30を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。第5封止フィルム22は、試料導入口44を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。これらの封止フィルムとしては、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはアクリルなどの樹脂を基材とする透明フィルムを用いることができる。流路封止フィルム16を含む全ての封止フィルムを貼った状態では、全流路は閉空間となっている。
[0033]
 反応処理容器10に後述する送液システムを接続する際には、第1空気連通口24、第2空気連通口26を封止している第1封止フィルム18、第2封止フィルム19を剥がし、送液システムに備わったチューブを第1空気連通口24、第2空気連通口26に接続する。あるいは、送液システムに備わった中空のニードル(先端がとがった注射針)で第1封止フィルム18、第2封止フィルム19に穿孔することにより行ってもよい。この場合、第1封止フィルム18、第2封止フィルム19は、ニードルによる穿孔が容易な材質や厚みから成るフィルムが好ましい。
[0034]
 試料導入口44を通じての試料の流路12内への導入は、第5封止フィルム22を一旦、基板14から剥がして行い、所定量の試料の導入後に第5封止フィルム22を再び基板14の下面14bに戻し貼り付ける。そのため、第5封止フィルム22としては、数サイクルの貼り付け/剥がしに耐久するような粘着性を備えるフィルムが望ましい。また第5封止フィルム22は、試料導入後に新しいフィルムを貼り付ける態様であってもよく、この場合は繰り返しの貼り付け/剥がしに関する特性の重要性は緩和されうる。
[0035]
 試料導入口44への試料の導入の方法は特に限定されないが、例えばピペットやスポイト、シリンジ等で試料導入口44から適量の試料を直接導入してもよい。あるいは、多孔質のPTFEやポリエチレンからなるフィルタが内蔵してあるコーン形状のニードルチップを介してコンタミネーションを防止しながらの導入方法であってもよい。このようなニードルチップは一般的に数多くの種類のものが販売され容易に入手でき、ピペットやスポイト、シリンジ等の先端に取り付けて使用することが可能である。さらにピペットやスポイト、シリンジ等による試料の吐出、導入後、さらに加圧して推すことにより流路12の所定の場所まで試料を移動させてもよい。
[0036]
 試料としては、例えば、一または二以上の種類のDNAを含む混合物に、PCR試薬として、耐熱性酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を添加したものがあげられる。さらに反応処理対象のDNAに特異的に反応するプライマー、さらに、場合によってはTaqMan等の蛍光プローブ(TaqMan/タックマンはロシュ ダイアグノスティックスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの登録商標)もしくはSYBR Green(SYBRはモレキュラープローブス インコーポレイテッドの登録商標)を混合する。市販されているリアルタイムPCR用試薬キット等も使用することができる。
[0037]
 図4は、本発明の実施形態に係る反応処理装置100を説明するための模式図である。
[0038]
 本実施形態に係る反応処理装置100は、反応処理容器10が載置される反応処理容器載置部(図示せず)と、温度制御システム50と、CPU52とを備える。温度制御システム50は、反応処理容器載置部に載置される反応処理容器10に対して、反応処理容器10の流路12における高温領域を約95℃(高温領域)、中温領域を約62℃に精度よく維持、制御できるように構成されている。
[0039]
 温度制御システム50は、反応領域の各温度領域の温度を維持するものであって、具体的には、流路12の高温領域36を加熱するための高温用ヒータ54と、流路12の中温領域38を加熱するための低温用ヒータ56と、各温度領域の実温度を計測するための例えば熱電対等の温度センサ(図示せず)と、高温用ヒータ54の温度を制御する高温用ヒータドライバ58と、低温用ヒータ56の温度を制御する低温用ヒータドライバ60とを備える。温度センサによって計測された実温度情報は、CPU52に送られる。CPU52は、各温度領域の実温度情報に基づいて、各ヒータの温度が所定の温度となるよう各ヒータドライバを制御する。各ヒータは例えば抵抗加熱素子やペルチェ素子等であってよい。温度制御システム50はさらに、各温度領域の温度制御性を向上させるための他の要素部品を備えてもよい。
[0040]
 本実施形態に係る反応処理装置100は、さらに、反応処理容器10の流路12内に導入された試料Sを流路12内で移動させるための送液システム62を備える。送液システム62は、第1ポンプ64と、第2ポンプ66と、第1ポンプ64を駆動するための第1ポンプドライバ68と、第2ポンプ66を駆動するための第2ポンプドライバ70と、第1チューブ72と、第2チューブ74とを備える。
[0041]
 反応処理容器10の第1空気連通口24には、第1チューブ72の一端が接続される。第1空気連通口24と第1チューブ72の一端の接続部には、気密性を確保するためのパッキン76やシールが配置されることが好ましい。第1チューブ72の他端は、第1ポンプ64の出力に接続される。同様に、反応処理容器10の第2空気連通口26には、第2チューブ74の一端が接続される。第2空気連通口26と第2チューブ74の一端の接続部には、気密性を確保するためのパッキン77やシールが配置されることが好ましい。第2チューブ74の他端は、第2ポンプ66の出力に接続される。
[0042]
 第1ポンプ64、第2ポンプ66は、例えばダイアフラムポンプからなるブロアポンプやマイクロブロアポンプ、送風機であってよい。このようなブロアポンプや、マイクロブロアポンプ、送風機は、動作時に一次側より二次側の圧力を高めることができるが、停止した瞬間または停止時には一次側と二次側の圧力が等しくなるような特性を備えることが好ましい。例えば、試料がその送風や圧力に起因して推進力を得ている場合には、ポンプの停止した瞬間にその推進力をなくすることが可能となり、試料の停止制御が容易になるからである。
[0043]
 CPU52は、第1ポンプドライバ68、第2ポンプドライバ70を介して、第1ポンプ64、第2ポンプ66からの送風や加圧を制御する。第1ポンプ64、第2ポンプ66からの送風や加圧は、第1空気連通口24、第2空気連通口26を通じて流路12内の試料Sに作用し、推進力となって試料Sを移動させる。より詳細には、第1ポンプ64、第2ポンプ66を交互に動作させることにより、試料Sのいずれかの端面にかかる圧力が他端にかかる圧力より大きくなるため、試料Sの移動に係る推進力が得られる。第1ポンプ64、第2ポンプ66を交互に動作させることによって、試料Sを流路内で往復式に移動させて、反応処理容器10の流路12の各温度領域を通過させることができ、その結果、試料Sにサーマルサイクルを与えることが可能となる。より具体的には、高温領域36において変性、中温領域38においてアニーリング・伸長の各工程を繰り返し与えることにより、試料S中の目的のDNAを選択的に増幅させる。言い換えれば高温領域36は変性温度域、中温領域38はアニーリング・伸長温度域とみなすことができる。また各温度領域に滞留する時間は、試料Sが各温度領域の所定の位置で停止する時間を変えることによって適宜設定することができる。
[0044]
 本実施形態に係る反応処理装置100は、さらに、蛍光検出器78を備える。一般的にリアルタイムPCRでは、試料に蛍光を発生する試薬が添加される。DNAの増幅が進むにつれ試料から発せられる蛍光信号の強度が増加するので、その蛍光信号の強度値をPCRの進捗や反応の終端の判定材料としての指標とすることができる。
[0045]
 蛍光検出器78としては、非常にコンパクトな光学系で、迅速に測定でき、かつ明るい場所か暗い場所かにもかかわらず、蛍光を検出することができる日本板硝子株式会社製の光ファイバ型蛍光検出器FLE-510を使用することができる。この光ファイバ型蛍光検出器は、その励起光/蛍光の波長特性を試料の発する蛍光特性に適するようにチューニングしておくことができ、様々な特性を有する試料について最適な光学検出系を提供することが可能であり、さらに光ファイバ型蛍光検出器によってもたらされる光線の径の小ささから、流路などの小さいまたは細い領域に存在する試料からの蛍光を小さいノイズで検出するのに適している。
[0046]
 光ファイバ型の蛍光検出器78は、光学ヘッド80と、蛍光検出器ドライバ82と、光学ヘッド80と蛍光検出器ドライバ82とを接続する光ファイバ84とを備える。蛍光検出器ドライバ82には励起光用光源(LED、レーザその他特定の波長を出射するように調整された光源)、光ファイバ型合分波器及び光電変換素子(PD,APD又はフォトマル等の光検出器)(いずれも図示せず)等が含まれており、これらを制御するためのドライバ等からなる。光学ヘッド80はレンズ等の光学系からなり、励起光の試料Sへの指向性照射と試料から発せられる蛍光の集光の機能を担う。集光された蛍光は光ファイバ84を通じて蛍光検出器ドライバ82内の光ファイバ型合分波器により励起光と分けられ、光電変換素子によって電気信号に変換される。蛍光検出器は、試料Sからの蛍光を検出する機能を発揮するものであれば光ファイバ型蛍光検出器に限定されない。
[0047]
 本実施形態に係る反応処理装置100においては、流路中の試料に含まれるDNAの増幅の進度を知ることができる限りにおいて、蛍光検出領域の位置は流路に沿った領域のうちいずれにあってもよい。例えば、中温領域38内の一部の領域86(「蛍光検出領域86」と称する)に位置する試料Sから蛍光を検出することができるように光学ヘッド80が配置されてもよい。試料Sは流路内を繰り返し往復移動することで反応が進み、試料Sに含まれる所定のDNAが増幅するので、検出された蛍光の量の変動をモニタリングすることで、DNAの増幅の進度をリアルタイムで知ることができる。
[0048]
 次に、反応処理装置100により試料Sにサーマルサイクルを与える動作について説明する。
[0049]
 まず、以下の手順(1)~(6)に従って、反応処理容器10に試料Sを充填し、反応処理容器10を反応処理装置100にセットする。また、反応処理容器10を反応処理装置100にセットする前に、第1ポンプ64および第2ポンプ66を動作させて、第1チューブ72、第2チューブ74のほか、パッキン76、77等の空気の通過するパスを、エアで吹くようにしてもよい。こうすることによりパス内に残存している可能性のあるエアロゾル等を排除することができ、キャリーオーバーを防止することに役立つ。
(1)第1空気連通口24を封止する第1封止フィルム18および第2空気連通口26を封止する第2封止フィルム19のいずれか一方を剥がす。
(2)試料導入口44を封止する第5封止フィルム22を剥がす。
(3)試料導入口44よりピペッター等で試料Sを導入し、分岐点40aの先まで試料Sを押し込む。
(4)第5封止フィルム22を貼り戻す
(5)第1封止フィルム18および第2封止フィルム19の他方を剥がす。
(6)反応処理容器10を反応処理装置100の反応処理容器載置部に配置し、第1空気連通口24、第2空気連通口26に送液システム62の第1チューブ72、第2チューブ74を接続する。
[0050]
 次に、以下の手順(7)~(11)に従って、反応処理装置100を動作させる。
(7)図5は、試料Sが流路12の中温領域38に送り込まれた状態を示す。例えば、第1空気連通口24に連通した流路12の圧力を、第2空気連通口26に連通した流路12の圧力より高くする。または、第1空気連通口24から空気を送り込む。これにより、試料Sが流路12の中温領域38に送り込まれる。中温領域38に送り込まれた試料Sは図5に示すように、第2フィルタ30により堰き止められる。第2フィルタ30は通気性があり、且つ撥水性を備えるからである。
(8)試料Sが流路12の中温領域38で停止した状態で、流路12の中温領域38および高温領域36が所定の温度になるのを待つ。例えば、中温領域38は試料Sをアニーリングおよび伸長させる温度(例えば約62℃)とされ、高温領域36は試料Sを変性させる温度(例えば約95℃)とされる。
(9)図6は、試料Sが流路12の高温領域36に送り込まれた状態を示す。中温領域38および高温領域36が所定の温度になった後、反応処理装置100を操作し、試料Sを流路12の高温領域36に送り込む。例えば、第2空気連通口26に連通した流路12の圧力を、第1空気連通口24に連通した流路12の圧力より高くする。または、第2空気連通口26から空気を送り込む。これにより、試料Sが流路12の高温領域36に送り込まれる。高温領域36に送り込まれた試料Sは図6に示すように、第1フィルタ28により堰き止められる。第1フィルタ28は通気性があり、且つ撥水性を備えるからである。
(10)高温領域36における所定の反応時間が経過した後、試料Sを再び中温領域38に送り込む。
(11)この高温領域36と中温領域38との間の往復移動を所定回数繰り返すことにより、試料Sにサーマルサイクルを与え、PCRを実施することができる。試料Sが中温領域38にあるときに、蛍光検出領域86に位置する試料Sからの蛍光を検出し、その蛍光強度をモニタ等することにより、サーマルサイクルとともにPCRの進度を計る、リアルタイムPCRを実施することができる。
[0051]
 以上説明したように、本実施形態に係る反応処理装置100においては、反応処理容器10のフィルタとして通気性および撥水性を有するものを使用し、送液システム62によって反応処理容器10の流路12内で試料Sを移動させる際に、フィルタで試料Sを堰き止めることにより、試料を各温度領域で停止させることとした。試料Sの停止位置がフィルタによって決まるので、試料Sを各温度領域の所定の位置に正確に停止させることができる。
[0052]
 本実施形態によれば、例えば試料Sの位置を蛍光検出器で検出し、該検出結果に基づいて送液システム62を制御するといった構成および処理をするよりも、フィルタにより試料Sの停止位置が機械的に定まるので、装置構成が簡素化され、反応処理装置100の低コスト化を図ることができる。第1フィルタ28および第2フィルタ30に撥水性もしくは撥油性が求められる理由は、試料がそれぞれのフィルタに接して堰き止められるときに、液状の試料が濾材に浸潤したり、一部の試料がフィルタを透過したりするのを防止するためである。
[0053]
 試料Sの停止位置にバラツキが発生する場合、それを吸収するために各温度領域を広くとる必要があり、その結果、反応処理装置100が大型化する可能性がある。しかしながら、本実施形態に係る反応処理装置100では、常にフィルタの位置で試料Sが停止するので、停止位置にバラツキがある場合と比べて、各温度領域を必要以上に広くとる必要がない。また、各温度領域を加熱するためのヒータのサイズも小型化できる。したがって、本実施形態によれば、反応処理装置100の小型化を図ることができる。さらに、ヒータの小型化により、消費電力を低減できる。
[0054]
 一般的に、リアルタイムPCR法には大きく分けてプローブ法とインターカレーター法がある。プローブ法は、増幅のためにその対象DNA配列に特有のプライマーと(蛍光)プローブが必要であり、プローブが分解していくことで増幅と共に蛍光信号が増える。一方インターカレーター法は、プローブを使用せず、DNA二本鎖に取り込まれて蛍光を発生する蛍光色素(例えばSYBR Green)を混ぜておき、増幅と共にDNA二本鎖が増え、比例して蛍光信号が増える。ただし、インターカレーター法では、プローブ法のような対象DNA配列に特有のものが少なくなるので非特異反応が増える可能性があり、この非特異反応が無いかを確かめる必要がある。インターカレーター法では、通常、このような非特異反応の有無を確認するために「融解分析」が行われる。
[0055]
 融解分析では、PCR後の試料に対して、温度と蛍光強度の関係を取得し、グラフ化する。DNA二本鎖は温度を上げていくと所定の温度(DNAの長さ等に依存)で分解するために、この温度を境に急激に蛍光強度が変化する。つまりこのグラフの微分曲線(「融解分析曲線」と呼ばれる)におけるピークが一つであれば非特異反応は無かったと分かる。
[0056]
 本実施形態に係る反応処理装置100は、プローブ法とインターカレーター法の両方を適用することができる。インターカレーター法では、試料に含まれるDNAが高温領域で熱変性を受けると、その試料から蛍光を発しない。そのため、高温領域と中温領域の間の接続流路に対応する場所のみに蛍光検出領域を設けた場合は、試料から発する蛍光を適切に検出することができない。そのため、その蛍光検出領域に対応した蛍光検出器からの蛍光信号のみに基づいて試料の位置や速度の制御をしているときは、試料の適正な往復移動や停止などに支障をきたすおそれがある。
 本実施形態に係る反応処理装置100においては、上述したように、試料はフィルタの位置で停止するように構成されており、蛍光検出領域が流路に沿った領域のいずれにあったとしても、その蛍光検出器からの蛍光信号のみに基づいて、試料の位置や速度の制御をすることがない限り、試料の適正な往復移動や停止などに支障をきたす蓋然性は小さい。
[0057]
 さらに、本実施形態に係る反応処理装置100においては、中温領域38内に蛍光検出領域86が設けられている場合、試料の往復移動の過程で、試料からの蛍光を検出することによりDNAの増幅の進度をリアルタイムで知ることができるほか、所定回数の往復移動とサーマルサイクルの終了後に、中温領域38に試料を停止させた状態で、この領域内の流路の温度を変化させながら蛍光強度を測定できる。このことは、例えば融解分析を行う場合にも利用できる。また、そのために別途構成を追加する必要等がないので、インターカレーター法によるPCRに必要な増幅後の融解分析を簡便に行うことができる。従って、プローブ法のほか融解分析を伴うインターカレーター法の実施をする場合は、蛍光検出領域は中温領域38内に設けられていることが望ましい。融解分析が温度の上昇とともに蛍光信号の強度を計測する工程を含むため、当初から比較的温度の低い中温領域38で行うことが好ましい。
[0058]
 また、本実施形態に係る反応処理装置100は、高温領域36と中温領域38の間の接続流路に対応する場所に、蛍光検出領域が設けられていてもよい。プローブ法によるPCRを実施した場合には、接続流路においても試料から蛍光が発せられるため、この蛍光信号を検出することにより、蛍光検出器からの蛍光信号に基づいて試料の位置や速度の同定に寄与できる。
[0059]
 さらに、本実施形態に係る反応処理装置100は、高温領域36内に蛍光検出領域が設けられていてもよい。プローブ法によるPCRを実施した場合には、高温領域においても試料から蛍光が発せられるため、この蛍光信号を検出することにより、高温領域に試料が存在するということを把握することができる。これによって、各温度領域に試料が侵入した状態を検出することができるため、高精度な停止位置の制御をはじめ、試料のより適正な往復移動に寄与することが示唆される。
[0060]
 次に、本発明の実施例を説明する。中温領域38内に蛍光検出領域86を備える上述の反応処理装置100を用いて、表1に示す試料15μLに対し1μLの鋳型1×10 Copies/μLを1μLを添加し、さらにタカラバイオ社のSYBR Greenの1000倍希釈液を添加したものを用いて、リアルタイムPCRを実施した。
[表1]


[0061]
 図7は、本実施例におけるPCRの増幅結果を示す。図7において、横軸はサイクル数であり、縦軸は蛍光強度[任意単位]である。図7に示すように、PCRのサイクル数とともに蛍光信号の強度が増大する。サイクル数18を超えたあたりから蛍光信号の強度が上昇して顕著な増幅が開始され、サイクル数が28前後を超えたあたりからプラトーな状態となった。このような蛍光信号の増幅曲線は、試料中の検体が増幅していることを示しており、本実施形態に係る反応処理装置100を用いて良好なPCRを行うことができることが分かる。
[0062]
 図8および図9は、本実施例における融解分析結果を示す図である。リアルタイムPCRの実施後、試料を中温領域38に移動させ、中温領域38内の温度を上昇させながら蛍光検出領域86に位置する試料の蛍光信号を引き続き計測した。図8は、中温領域38内の温度に対する蛍光信号強度の関係を示す。図9は、いわゆる融解分析曲線であり、図8に示す曲線を1回微分したものである。
[0063]
 図8から、温度の上昇とともに蛍光強度が低下し、87℃を超えたあたりからさらに急峻に低下し、熱変性による影響が増すことが分かる。また図8から、約93℃を超えたあたりから蛍光強度が下げ止まりの傾向を示すことが分かる。
[0064]
 図9から、融解分析曲線が88.4℃において唯一のピークを有していることは明らかである。本実施例におけるPCRの増幅産物は、Primer Dimerのような比較的短い増幅産物を含んでいないことが分かる。
[0065]
 以下、反応処理容器の変形例について説明する。
[0066]
 図10は、三水準の温度領域に対応する反応処理容器110の概念図である。上記では、高温および中温の二水準の反応領域を備える反応処理容器10について述べたが、図10に示す反応処理容器110は、高温、中温及び低温の三水準の反応領域を備える。
[0067]
 反応処理容器110は、分岐部112dから三方に延びる第1流路112a、第2流路112b、第3流路112cを備える。第1流路112aの一端には第1フィルタ128が配置され、第2流路112bの一端には第2フィルタ130が配置され、第3流路112cの一端には第3フィルタ131が配置されている。第1フィルタ128には、第1空気連通口124が連通され、第2フィルタ130には、第2空気連通口126が連通され、第3フィルタ131には、第3空気連通口127が連通されている。第1流路112aには高温領域136が設けられ、第2流路112bには中温領域138が設けられ、第3流路112cには低温領域139が設けられている。第3流路112cの中途には分岐点142aが設けられており、該分岐点142aから分岐流路142が分岐している。分岐流路142の先端には、試料導入口144が設けられている。
[0068]
 このように構成された反応処理容器110においても、反応処理装置の送液システムによって各温度領域に試料を移動させる際に、フィルタで試料を堰き止めることにより、各温度領域で試料が停止される。すなわち、高温領域136に試料が移動する際には、第1フィルタ128で試料が堰き止められる。中温領域138に試料が移動する際には、第2フィルタ130で試料が堰き止められる。低温領域139に試料が移動する際には、第3フィルタ131で試料が堰き止められる。試料の停止位置がフィルタによって決まるので、試料を各温度領域の所定の位置に正確に停止させることができる。
[0069]
 また、反応処理容器110においても、中温領域138に蛍光検出領域186が設けられている。これにより、プローブ法だけでなく、インターカレーター法を好適に適用できる。
[0070]
 反応処理容器110を使用する反応処理装置においては、ポンプと空気連通口との間にバルブを追加する。例えば中温領域138から高温領域136に送液するときには、低温領域139側のバルブを閉めることにより、低温領域139への試料流入を防ぎながら中温領域138から高温領域136に送液が可能である。
[0071]
 図11は、複数の試料に対する同時反応に供される反応処理容器210の概念図である。図11には、一例として、2つの試料に対して同時にPCRを実施できる反応処理容器210を示すが、流路の数を変えることにより、任意の数の試料に対応することができる。
[0072]
 反応処理容器210は、並列に配置された第1流路212aおよび第2流路212bを備える。第1流路212aの一端には第1フィルタ228が配置され、他端には第2フィルタ230が配置されている。第2流路212bの一端には第3フィルタ229が配置され、他端には第4フィルタ231が配置されている。第1フィルタ228および第3フィルタ229には、共通の第1空気連通口224が連通されている。第2フィルタ230および第4フィルタ231には、共通の第2空気連通口226が連通されている。第1流路212aおよび第2流路212bの一端側には共通の高温領域236が設けられている。第1流路212aおよび第2流路212bの他端側には共通の中温領域238が設けられている。第1流路212aの中間には第1分岐点242aが設けられており、該第1分岐点242aから第1分岐流路242が分岐している。第1分岐流路242の先端には、第1試料導入口244が設けられている。同様に、第2流路212bの中間には第2分岐点243aが設けられており、該第2分岐点243aから第2分岐流路243が分岐している。第2分岐流路243の先端には、第2試料導入口245が設けられている。
[0073]
 このように構成された反応処理容器210においても、反応処理装置の送液システムによって各温度領域に試料を移動させる際に、フィルタで試料を堰き止めることにより、各温度領域で試料が停止される。すなわち、第1流路212a内の第1試料、第2流路212b内の第2試料が高温領域236に移動する際には、それぞれ第1フィルタ228、第3フィルタ229で堰き止められる。また、第1流路212a内の第1試料、第2流路212b内の第2試料が中温領域238に移動する際には、それぞれ第2フィルタ230、第4フィルタ231で堰き止められる。試料の停止位置がフィルタによって決まるので、試料を各温度領域の所定の位置に正確に停止させることができる。
[0074]
 反応処理容器210によれば、2つの試料に対して同時にPCRを実施することができる。2つの流路に対して1つの送液システムがあればよいので、反応処理容器210を使用する反応処理装置の小型化および低コスト化を図ることができる。
[0075]
 反応処理容器210においても、第1流路212aの中温領域238に第1蛍光検出領域286が設けられ、第2流路212bの中温領域238に第2蛍光検出領域287が設けられている。これにより、プローブ法だけでなく、インターカレーター法を好適に適用できる。
[0076]
 以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。

符号の説明

[0077]
 10,110,210 反応処理容器、 12 流路、 14 基板、 16 流路封止フィルム、 18 第1封止フィルム、 19 第2封止フィルム、 20 第3封止フィルム、 21 第4封止フィルム、 22 第5封止フィルム、 23 Oリング、 24,124,224 第1空気連通口、 26,126,226 第2空気連通口、 28,128,228 第1フィルタ、 29,31,40 接続流路、 30,130,230 第2フィルタ、 36,136,236 高温領域、 38,138,238 中温領域、 42,142 分岐流路、 44,144 試料導入口、 50 温度制御システム、 52 CPU、 54 高温用ヒータ、 56 低温用ヒータ、 58 高温用ヒータドライバ、 60 低温用ヒータドライバ、 62 送液システム、 64 第1ポンプ、 66 第2ポンプ、 68 第1ポンプドライバ、 70 第2ポンプドライバ、 72 第1チューブ、 74 第2チューブ、 76,77 パッキン、 78 蛍光検出器、 80 光学ヘッド、 82 蛍光検出器ドライバ、 84 光ファイバ、 86,186 蛍光検出領域、 100 反応処理装置、 127 第3空気連通口、 131 第3フィルタ、 139 低温領域、 229 第3フィルタ、 231 第4フィルタ、 242 第1分岐流路、 243 第2分岐流路、 244 第1試料導入口、 245 第2試料導入口、 286 第1蛍光検出領域、 287 第2蛍光検出領域。

産業上の利用可能性

[0078]
 本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に利用できる。
[0079]
配列番号1:フォワードPCRプライマー
配列番号2:リバースPCRプライマー

請求の範囲

[請求項1]
 試料が移動する流路と、前記流路の一端に配置された第1フィルタと、前記流路の他端に配置された第2フィルタと、前記流路の前記一端側に設けられる第1温度領域と、前記流路の前記他端側に設けられる第2温度領域と、を備える反応処理容器と、
 前記反応処理容器の前記第1温度領域を第1温度に維持するとともに、前記反応処理容器の前記第2温度領域を前記第1温度よりも低い第2温度に維持する温度制御システムと、
 前記試料を前記流路内で移動させる送液システムと、
 を備え、
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、通気性を有するとともに撥水性を有し、
 前記送液システムによって前記第1温度領域から前記第2温度領域に前記試料を移動させるとき、前記第2フィルタで前記試料が堰き止められることにより、前記試料が前記第2温度領域で停止し、
 前記送液システムによって前記第2温度領域から前記第1温度領域に前記試料を移動させるとき、前記第1フィルタで試料が堰き止められることにより、前記試料が前記第1温度領域で停止することを特徴とする反応処理装置。
[請求項2]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、フッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の反応処理装置。
[請求項3]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマーから選ばれる少なくとも一つのフッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項2に記載の反応処理装置。
[請求項4]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン製であることを特徴とする請求項3に記載の反応処理装置。
[請求項5]
 前記第1温度は試料を変性させる温度に設定され、前記第2温度は試料をアニーリングおよび伸長させる温度に設定され、
 前記第2温度領域内の一部の領域に位置する前記試料からの蛍光を検出するように配置された蛍光検出器をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の反応処理装置。
[請求項6]
 前記反応処理容器は、前記第1フィルタと前記流路との間の隙間、前記第2フィルタと前記流路との間の隙間を塞ぐために環状のパッキンを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の反応処理装置。
[請求項7]
 試料が移動する流路と、前記流路の一端に配置された第1フィルタと、前記流路の他端に配置された第2フィルタと、前記流路の前記一端側に設けられる第1温度領域と、前記流路の前記他端側に設けられる第2温度領域と、を備える反応処理容器であって、
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、通気性を有するとともに撥水性を有し、
 前記第1温度領域から前記第2温度領域に前記試料が移動されるとき、前記第2フィルタで前記試料が堰き止められることにより、前記試料が前記第2温度領域で停止し、
 前記第2温度領域から前記第1温度領域に前記試料が移動されるとき、前記第1フィルタで試料が堰き止められることにより、前記試料が前記第1温度領域で停止することを特徴とする反応処理容器。
[請求項8]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、フッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項7に記載の反応処理容器。
[請求項9]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマーから選ばれる少なくとも一つのフッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項8に記載の反応処理容器。
[請求項10]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン製であることを特徴とする請求項9に記載の反応処理容器。
[請求項11]
 試料が移動する流路と、前記流路の一端に配置された第1フィルタと、前記流路の他端に配置された第2フィルタと、前記流路の前記一端側に設けられる第1温度領域と、前記流路の前記他端側に設けられる第2温度領域と、を備える反応処理容器と、
 前記反応処理容器の前記第1温度領域を第1温度に維持するとともに、前記反応処理容器の前記第2温度領域を前記第1温度よりも低い第2温度に維持する温度制御システムと、
 前記試料を前記流路内で移動させる送液システムと、
 を備える反応処理装置における反応処理方法であって、
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、通気性を有するとともに撥水性を有し、
 前記送液システムによって前記第1温度領域から前記第2温度領域に前記試料を移動させるとき、前記第2フィルタで前記試料が堰き止められることにより、前記試料が前記第2温度領域で停止し、
 前記送液システムによって前記第2温度領域から前記第1温度領域に前記試料を移動させるとき、前記第1フィルタで試料が堰き止められることにより、前記試料が前記第1温度領域で停止することを特徴とする反応処理方法。
[請求項12]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、フッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項11に記載の反応処理方法。
[請求項13]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマーから選ばれる少なくとも一つのフッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項12に記載の反応処理方法。
[請求項14]
 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン製であることを特徴とする請求項13に記載の反応処理方法。
[請求項15]
 前記反応処理装置は、蛍光検出器をさらに備え、
 前記第1温度は試料を変性させる温度に設定され、前記第2温度は試料をアニーリングおよび伸長させる温度に設定され、
 前記蛍光検出器を用いて、前記第2温度領域内の一部の領域に位置する前記試料からの蛍光を検出することを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載の反応処理方法。
[請求項16]
 当該反応処理方法はリアルタイムPCR法であることを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の反応処理方法。
[請求項17]
 当該反応処理方法はインターカレーター法であることを特徴とする請求項11から16のいずれかに記載の反応処理方法。
[請求項18]
 さらに、融解分析工程を備えることを特徴とする請求項17に記載の反応処理方法。
[請求項19]
 前記融解分析工程は、前記第2温度領域内の温度を変化させることにより融解分析曲線を得ることを特徴とする請求項18に記載の反応処理方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]