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1. WO2020121983 - サイトメガロウイルスの先天性感染を予防又は治療するためのワクチン

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明 細 書

発明の名称 サイトメガロウイルスの先天性感染を予防又は治療するためのワクチン

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020  

先行技術文献

特許文献

0021  

非特許文献

0022  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0023  

課題を解決するための手段

0024   0025  

発明の効果

0026  

図面の簡単な説明

0027  

発明を実施するための形態

0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055  

実施例

0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

明 細 書

発明の名称 : サイトメガロウイルスの先天性感染を予防又は治療するためのワクチン

技術分野

[0001]
 本発明は、サイトメガロウイルスの先天性感染を予防又は治療するためのワクチンに関する。

背景技術

[0002]
 サイトメガロウイルス(CMV)感染症には、大きく2つがある。1つ目は妊婦が初感染した場合に胎児が発症する先天性CMV感染症であり、2つ目は、移植、AIDS、先天性免疫不全などの免疫抑制状態の患者において発症するCMV肺炎、腸炎、網膜炎などの臓器障害である。このうち、先天性CMV感染症は、TORCH症候群の1つであり、胎児に奇形又は重篤な臨床症状を引き起こす重要な先天性感染症である。妊婦がCMVに初感染した場合、およそ40%で胎盤を通して胎児の先天性感染が発生する(本明細書においては、「先天性感染」という用語と「経胎盤感染」という用語を同じ意味で用いている)。また、死産の約15%が先天性CMV感染によるという報告もある。先天性感染児の年間発生件数は、日本で3000人以上、米国で約4万人であり、症候性は日本で約1000人、米国で約8000人とも言われ、このうち約9割に中枢神経障害や難聴などの後障害が残る。
[0003]
 日本におけるCMV抗体保有率は欧米諸国に比して高く、日本人成人の80%~90%はCMV抗体陽性であり、ほとんどの人が乳幼児期に感染を受けている。しかし、最近の傾向として、若年者のCMV抗体保有率は90%台から60%台に低下傾向を示しており、先天性CMV感染症の予防対策の必要性はさらに高まっている(非特許文献1)。
[0004]
 米国医学研究所(the Institute of Medicine)は、先天性CMV感染症が先進国における先天性の中枢神経障害の原因としてダウン症候群を凌ぐインパクトを持っており、障害が残った先天性感染児の生涯に及ぶQOLの低下と社会経済的損失をQALYs(quality-adjusted life years)として算出すると、CMVワクチンは、最も医療経済効果が高いカテゴリーに分類されると分析している(非特許文献2)。
[0005]
 感染症を引き起こす病原体は、従来型ワクチンで十分な効果を得ることができるClass I群病原体と、従来型ワクチン又は病原体感染歴では十分な防御免疫を獲得できないClass II群病原体とに大別されるが、CMVは後者に分類される。Class II群病原体の克服が難しい理由として、それらが有する巧妙な免疫逃避機構が指摘されている。人類はこれまでにClass I群病原体に対する数多くの有効なワクチンを開発し、それらの引き起こす感染症の脅威に打ち勝ってきた。そして今後のワクチン開発の焦点は、Class II群病原体へと移りつつある。
[0006]
 先天性CMV感染症の被害を最小限に留めるために、妊婦スクリーニングで未感染妊婦を同定し、生活上の注意を啓発することも行われているが、十分ではない。さらに初感染妊婦を同定して、CMV抗体高力価免疫グロブリンを妊婦に投与することで胎児への感染予防や重症化の軽減に有効であったとする報告もあるが、現在のところ有効性に疑問が出てきている(非特許文献3)。一方、低分子薬としてガンシクロビル(ganciclovir)も上市されているが、その効果は限定的であり、副作用の問題もある。現時点においてCMVワクチンは存在せず、また前述の通り十分に有効な治療法も無いことから、そのアンメットニーズは高いと考えられる。
[0007]
 CMVワクチン開発に関しては、これまで複数の製薬企業やアカデミアにおいて弱毒生ワクチンやサブユニットワクチン、DNAワクチンなどを用いた検討が試みられてきたが、いずれもT細胞免疫、B細胞免疫共に応答が不十分であり、結果としてワクチンとして実用に耐え得る効果は得られていない。
[0008]
 その中でSanofi社のワクチンは、CMV糖タンパク質のgBを抗原としたサブユニットワクチンであるが、未感染成人女性を対象とした臨床試験において約50%程度の感染予防効果を示した。効果が限定的だったため、開発は事実上中断しているが、「gB抗原のみで一定の効果を示しうる(だが十分ではない)」という意義のある知見が得られた(非特許文献4)。
[0009]
 CMVのワクチン候補品の効果の実験的証明については、CMVの種特異性についての考慮が必要となる。CMVには種特異性があるため、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を用いた動物実験は基本的に不可能である。動物実験はマウス、ラット、モルモット、サルなどを用いて行われるが、各種動物種に固有のCMVを用いて実施される。経胎盤感染については、モルモットのみが、母体へのウイルス感染を起こさせることで、特殊な処置をせずとも胎仔への感染が確認できる動物モデル系であり、モルモットの経胎盤感染試験系は広く利用されている(非特許文献5)。
[0010]
 gBワクチンの経胎盤感染に対する効果に関しては、組換えGPCMVのgBタンパク質+アジュバントの雌モルモットへの投与により、雌モルモットの初感染が抑制され、また、胎仔への経胎盤感染も抑制されたことが報告されている(非特許文献6)。
[0011]
 非特許文献7では、GPCMVのgBタンパク質を組み込んだアデノウイルスベクターワクチンを用いて、モルモットの経胎盤感染モデルにおいて胎仔への経胎盤感染をgBが抑制することが示されている。
[0012]
 一方、CMVの主要抗原としてここ数年で大きな注目を集めているのがペンタマー(Pentamer)抗原である。ペンタマーはCMVの細胞指向性決定因子であり、ヒトCMVではgH、gL、UL128、UL130及びUL131(gH/gL/UL128/UL130/UL131)の5つのサブユニットから構成される分子である。
[0013]
 ペンタマーの経胎盤感染における寄与に関しては、ペンタマー遺伝子を欠失したGPCMVは上皮・内皮細胞への感染性と経胎盤感染能を失っており、欠失した遺伝子を異所性に発現させることによりそれらが復活することが報告されている(非特許文献8)。
[0014]
 また、ペンタマーワクチンの効果に関しては、ペンタマーを発現させたベクターワクチンMVA-PCをマウスに投与し誘導されたモノクローナル抗体について詳細に解析した結果、抗gH抗体に比べて抗ペンタマー抗体の上皮及び内皮細胞系での中和能が明らかに高く、経胎盤感染において重要と考えられる栄養膜細胞での中和能についても同様であったことが報告されている(非特許文献9)。
[0015]
 その一方で、相反する報告もある。非特許文献10では、ヒトの胎盤における栄養芽前駆細胞はCMVのターゲットであり、当細胞へのCMVの感染にはペンタマーの寄与はほぼ認められず、gBの寄与は明確に認められたとしている。
[0016]
 また、非特許文献11では、ex vivoの胎盤感染試験系を用いて、GPCMVの胎盤組織への感染及び増殖にはペンタマーの寄与がほとんど認められないとしている。
[0017]
 このように、ペンタマーのワクチン抗原としての有用性を示唆する報告は散見されるものの、経胎盤感染におけるペンタマーの役割が明白ではなく、ペンタマーワクチンの経胎盤感染に対する抑制効果については未だ結論が出ているとは言えない状況にある。
[0018]
 ペンタマーとgBの併用の効果については、特許文献1において、サルを対象とした感染防御試験において、ペンタマーとgBの併用が有効であったとする報告がなされているものの、経胎盤感染への影響については何らの示唆も与えていない。また、ペンタマー単独群及び非免疫群と比較して、ペンタマー+gBの併用群が優れていることは示されているが、gB単独群が設定されていないため、正確には併用の効果を示していることにならない。
[0019]
 また、非特許文献12では、抗gBモノクローナル抗体と抗ペンタマーモノクローナル抗体との併用効果についてin vitroで検証し、中和能と耐性株出現抑制に関して併用の利点があるとしているが、生体における感染防御能について併用の効果を証明してはいない。
[0020]
 更に、特許文献2では、gB+ペンタマーの2価ワクチンで免疫することで、いくつかのサイトカインの産生が単独群より高いというデータがあるが、中和能では併用群は優位ではなく、また、感染実験もされていない。

先行技術文献

特許文献

[0021]
特許文献1 : 国際公開第2017153954号
特許文献2 : 特表2017-515503号公報
特許文献3 : 国際公開第2003004647号

非特許文献

[0022]
非特許文献1 : Azuma H et al.,“Cytomegalovirus seropositivity in pregnant women in Japan during 1996-2009” J Jpn Soc Perin Neon Med 46 (2010) 1273-1279
非特許文献2 : Kathleen R. Stratton et al., “Vaccines for the 21st century: a Tool for Decisionmaking” The National Academies Press, 2000
非特許文献3 : Revello MG et al., “Randomized trial of hyperimmune globulin to prevent congenital cytomegalovirus” N Engl J Med 370 (2014) 1316-1326
非特許文献4 : Rieder F et al., “Cytomegalovirus vaccine: phase II clinical trial results” Clin Microbiol Infect 20 Suppl 5 (2014) 95-102
非特許文献5 : Yamada S et al., “Characterization of the guinea pig cytomegalovirus genome locus that encodes homologs of human cytomegalovirus major immediate-early genes, UL128,and UL130” Virology 391 (2009) 99-106
非特許文献6 : Schleiss MR et al., “Glycoprotein B(gB) vaccines adjuvanted with AS01 or AS02 protect female guinea pigs against cytomegalovirus (CMV) viremia and offspring mortality in a CMV-challenge model” Vaccine 32 (2014) 2756-2762
非特許文献7 : Hashimoto K et al., “Effects of immunization of pregnant guinea pigs with guinea pig cytomegalovirus glycoprotein B on viral spread in the placenta” Vaccine 31 (2013) 3199-3205
非特許文献8 : Coleman S et al., “A Homolog Pentameric Complex Dictates Viral Epithelial Tropism, Pathogenicity and Congenital Infection Rate in Guinea Pig Cytomegalovirus” PLoS Pathog 12 (2016) e1005755
非特許文献9 : Flavia Chiuppesi et al., “Vaccine-Derived Neutralizing Antibodies to the Human Cytomegalovirus gH/gL Pentamer Potently Block Primary Cytotrophoblast Infection” J Virol 89 (2015) 11884-11898
非特許文献10 : Martin Zydek et al., “HCMV Infection of Human Trophoblast Progenitor Cells of the Placenta Is Neutralized by a Human Monoclonal Antibody to Glycoprotein B and Not by Antibodies to the Pentamer Complex” Viruses 6 (2014)1346-1364
非特許文献11 : Yamada S et al., “An Ex vivo culture model for placental cytomegalovirus infection using slices of Guinea pig placental tissue” Placenta 37 (2016) 85-88
非特許文献12 : Patel HD et al., “In Vitro Characterization of Human Cytomegalovirus-Targeting Therapeutic Monoclonal Antibodies LJP538 and LJP539” Antimicrob Agents Chemother 60 (2016) 4961-4971
非特許文献13 : Burke HG et al., “Crystal Structure of the Human Cytomegalovirus Glycoprotein B” PLoS Pathog 11 (2015) e1005227
非特許文献14 : Ciferri C et al., “Structural and biochemical studies of HCM VgH/gL/gO and Pentamer reveal mutually exclusive cell entry complexes” Proc Natl Acad Sci USA 112 (2015) 1767-1772
非特許文献15 : Kanai K et al., “Re-evaluation of the genome sequence of guinea pig cytomegalovirus” J Gen Virol 92(Pt 5) (2011) 1005-1020
非特許文献16 : Yamada S et al., “Guinea pig cytomegalovirus GP129/131/133,homologues of human cytomegalovirus UL128/130/131A, are necessary for infection of monocytes and macrophages” J Gen Virol 95(Pt 6) (2014) 1376-1382

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0023]
 上述したように、CMVの感染予防において、特にCMVの先天性感染を抑制し得る有効なCMVワクチンが存在しない。したがって、本発明は、CMVの先天性感染を予防及び治療できる有効なワクチンを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0024]
 本発明者らは、CMVの主要な抗原であるgBとペンタマーを併用し2価ワクチンとすることで、モルモットにおける先天性CMV感染を強く抑制しうることを見出し、本発明の完成に至った。
[0025]
 すなわち、本発明は、以下の各発明に関する。
[1] サイトメガロウイルス(CMV)のエンベロープ糖タンパク質B(gBタンパク質)抗原と、ペンタマー抗原とを含む、CMVの先天性感染を予防又は治療するためのワクチン。
[2] gBタンパク質抗原がCMV gBタンパク質のエクトドメインである、[1]のワクチン。
[3] gBタンパク質抗原が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のgBタンパク質のエクトドメインである、[2]のワクチン。
[4] ペンタマー抗原が、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のgH、gL、UL128、UL130及びUL131からなる、[1]~[3]のいずれかのワクチン。
[5] ペンタマー抗原が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のペンタマータンパク質のエクトドメインである、[4]のワクチン。
[6] ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のエンベロープ糖タンパク質B(gBタンパク質)抗原を含むワクチンと、
 HCMVのgH、gL、UL128、UL130及びUL131からなるペンタマー抗原とを含むワクチンと
を含む、HCMVの先天性感染を予防又は治療するためのワクチンキット。
[7] ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の先天性感染を予防又は治療するためのワクチン又はワクチンキットの製造における、HCMVのエンベロープ糖タンパク質B(gBタンパク質)抗原、並びに、HCMVのgH、gL、UL128、UL130及びUL131からなるペンタマー抗原の使用。

発明の効果

[0026]
 本発明によれば、CMVの先天性感染防御において、gBタンパク質抗原とペンタマー抗原とを併用することで、それぞれの単独投与による効果を上回る感染抑制効果を有するワクチンを提供することができる。これにより、CMVワクチンの実用化が期待できる。

図面の簡単な説明

[0027]
[図1] SDS-PAGEによるGPCMV-gBの性状解析の結果を示す図である。
[図2] HPLCゲルろ過分析によるGPCMV-gBの性状解析の結果を示す図である。
[図3] SDS-PAGEによるGPCMV-Pentamerの性状解析の結果を示す図である。
[図4] HPLCゲルろ過分析によるGPCMV-Pentamerの性状解析の結果を示す図である。
[図5] SDS-PAGEによるHCMV-gBの性状解析の結果を示す図である。
[図6] HPLCゲルろ過分析によるHCMV-gBの性状解析の結果を示す図である。
[図7] SDS-PAGEによるHCMV-Pentamerの性状解析の結果を示す図である。
[図8] HPLCゲルろ過分析によるHCMV-Pentamerの性状解析の結果を示す図である。
[図9] GPCMV-gB、GPCMV-Pentamer又はGPCMV-gBとGPCMV-Pentamer2価の免疫血清に含まれるGPCMV-gB結合抗体価を評価した結果を示す図である。
[図10] GPCMV-gB、GPCMV-Pentamer又はGPCMV-gBとGPCMV-Pentamer2価の免疫血清に含まれるGPCMV-Pentamer結合抗体価を評価した結果を示す図である。
[図11] HCMV-gB、HCMV-Pentamer又はHCMV-gBとHCMV-Pentamer2価の免疫血清に含まれるHCMV-gB結合抗体価を評価した結果を示す図である。
[図12] HCMV-gB、HCMV-Pentamer又はHCMV-gBとHCMV-Pentamer2価の免疫血清に含まれるHCMV-Pentamer結合抗体価を評価した結果を示す図である。
[図13] HCMV既感染者PBMCを用い、HCMV-gB、HCMV-Pentamer又はHCMV-gBとHCMV-Pentamerの2価で刺激した場合のIFNγ産生ドナーの割合を示す図である。

発明を実施するための形態

[0028]
 本発明のワクチンの一実施形態は、サイトメガロウイルス(CMV)のエンベロープ糖タンパク質B(gBタンパク質)抗原と、ペンタマー抗原とを含む、CMVの先天性感染を予防又は治療するためのワクチンである。すなわち、本実施形態のワクチンは2種類の抗原タンパク質を含む2価ワクチンである。
[0029]
 サイトメガロウイルス(CMV)は、任意のCMV株を含み、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、モルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)、マウスサイトメガロウイルス(MCMV)、ラットサイトメガロウイルス(RCMV)及びアカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)などが挙げられる。
[0030]
 CMVのgBタンパク質は、野生型CMV gBタンパク質であっても、改変型CMV gBタンパク質であってもよい。
[0031]
 野生型CMV gBタンパク質とは、任意のCMV株に由来するgBタンパク質を意味し、例えば配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するHCMV AD169株由来のgBタンパク質(GenBankの登録番号:GenBank ACCESSION No.: X17403.1)、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するGPCMV 22122株に由来するgBタンパク質(GenBankの登録番号:AB592928.1)などが挙げられる。
[0032]
 改変型CMV gBタンパク質としては、例えば、凝集体が形成しないようにするための改変を有する改変体、抗体誘導能又は中和抗体誘導能を向上させるための改変を有する改変体などが挙げられる。「中和抗体誘導能」とは、抗原タンパク質に対する中和抗体を誘導できる能力をいい、抗原タンパク質を被検動物に接種することで得られる免疫血清中の中和抗体価(neutralizing antibody titer)で評価され得る。「中和抗体」とは、ウイルス粒子の感染性を失わせることができる抗体をいい、例えば被検ウイルスのプラーク数を50%減少させるのに必要な抗体の濃度(NT50)にてその抗体の中和活性の高さを評価することができる。
[0033]
 改変型CMV gBタンパク質は、野生型CMV gBタンパク質に対して、少なくとも一つのアミノ酸残基又は連続したアミノ酸残基領域が、置換、欠損(欠失)又は付加されたタンパク質をいい、アミノ酸残基の置換又は欠損によって糖鎖導入されたタンパク質などの野生型に存在しないタンパク質修飾がされたタンパク質も含む。
[0034]
 CMVのgBタンパク質抗原は、gBタンパク質の全長であっても、gBタンパク質の一部の断片であってもよい。断片としては、例えばCMVのgBタンパク質のエクトドメイン又はエクトドメインの一部の領域が挙げられる。gBタンパク質の全長としては、例えば、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するHCMV gBタンパク質が挙げられる(GenBankの登録番号:GenBank ACCESSION No.: X17403.1)。但し、配列番号7に記載のアミノ酸配列のうち、1番目から24番目のアミノ酸配列は、リーダー配列である。エクトドメインとしては、例えば、配列番号7に記載のアミノ酸配列のうち、25番目から706番目のアミノ酸配列を有するHCMV gBタンパク質の断片が挙げられる。
[0035]
 また、これらgBタンパク質抗原は、アミノ酸置換などにより性状が改善されたものであってもよい。例えば、配列番号7に記載のアミノ酸配列のうち、1番目から706番目のアミノ酸配列を有するHCMV gBタンパク質のエクトドメインを基として、非特許文献13を参考に、156番目のアミノ酸残基をヒスチジン残基(His)に、157番目のアミノ酸残基をアルギニン残基(Arg)に、239番目のアミノ酸残基をグルタミン酸残基(Glu)に、240番目のアミノ酸残基をアラニン残基(Ala)に、456番目のアミノ酸残基をトレオニン残基(Thr)に、458番目のアミノ酸残基をグルタミン残基(Gln)に置換したHCMV gBタンパク質エクトドメイン改変体(配列番号1)が挙げられる。
[0036]
 CMVのgBタンパク質抗原は、CMVを用いてタンパク質精製によって作製してもよく、遺伝子工学の手法によって作製することができる。作製方法は特に限定されないが、たとえば、野生型gBタンパク質のcDNAをテンプレートとし、プライマーを設計して、PCRによって核酸を得て、発現プロモーターと機能的に連結し、場合によってタグも連結し、適切な発現ベクターに導入し、発現させることによって得ることができる。作製されたCMV gBタンパク質抗原は、必要に応じて精製してもよい。精製方法は特に限定されないが、アフィニティクロマトグラフィーカラムなどによる精製が挙げられる。
[0037]
 改変型gBタンパク質抗原が変異導入による改変体の場合、目的の変異を導入するためのプライマーを設計して、PCRによって変異が導入された核酸を得て、発現プロモーターと機能的に連結し、場合によってタグも連結し、適切な発現ベクターに導入し、発現させることによって得ることができる。
[0038]
 また、改変型gBタンパク質抗原が糖鎖導入(糖鎖修飾)による改変体の場合は、通常の方法であればよく、特に限定されないが、たとえば、N型糖鎖を導入する場合、野生型gBタンパク質のcDNAをテンプレートとし、N型糖鎖を導入する目的部位の3つの連続したアミノ酸配列が、N-X-S/T(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸)となるように、プライマーを設計し、PCRによって変異を導入する。目的の改変型gBタンパク質の核酸配列、さらに必要あれば6×Hisなどのタグを連結した核酸配列を適切なベクターにクローニングし、発現させることによって改変型CMV gBタンパク質を得ることができる。そして、gB改変体の目的部位のアスパラギンに通常の方法によってN型糖鎖を付加する。
[0039]
 CMVのペンタマーは、五量体複合体、又は単に五量体ともいう。野生型CMVペンタマーであっても、改変型CMVペンタマーであってもよい。
[0040]
 野生型CMVペンタマーとは、任意のCMV株に由来するペンタマーを意味し、例えばヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のgH、gL、UL128、UL130及びUL131からなる五量体、モルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)のGP75(gH)、GP115(gL)、GP129(UL128)、GP131(UL130)及びGP133(UL131)からなる五量体などが挙げられる。
[0041]
 HCMVペンタマーは、例えば配列番号2(gH)、配列番号3(gL)、配列番号4(UL128)、配列番号5(UL130)及び配列番号6(UL131)に記載のアミノ酸配列を有するHCMV Merlin株由来のペンタマータンパク質(GenBankの登録番号:GenBank ACCESSION No.: AY446894.2)(但し、UL128の塩基配列には変異を含んでいるため、他のCMV株の配列情報を基に修正を加えている)などが挙げられる。
[0042]
 GPCMVペンタマーは、例えば配列番号10(GP75)、配列番号11(GP115)、配列番号12(GP129)、配列番号13(GP131)及び配列番号14(GP133)に記載のアミノ酸配列を有するGPCMV 22122株由来のペンタマータンパク質(GenBankの登録番号:GenBank ACCESSION No.: AB592928.1)(但し、GP133の塩基配列には変異を含んでいるため、他のCMV株の配列情報を基に修正を加えている)などが挙げられる。
[0043]
 改変型CMVペンタマーとしては、例えば、凝集体が形成しないようにするための改変を有する改変体、抗体誘導能又は中和抗体誘導能を向上させるための改変を有する改変体などが挙げられる。改変型CMVペンタマーは、野生型CMVペンタマーを構成する5つのタンパク質のうち少なくとも1つが改変タンパク質であるペンタマーをいい、野生型CMVペンタマーを構成するタンパク質に対して、少なくとも一つのアミノ酸残基又は連続したアミノ酸残基領域が、置換、欠損(欠失)又は付加されたタンパク質をいい、アミノ酸残基の置換又は欠損によって糖鎖導入されたタンパク質などの野生型に存在しないタンパク質修飾がされたタンパク質も含む。
[0044]
 CMVペンタマー抗原は、CMVを用いてタンパク質精製によって作製してもよく、遺伝子工学の手法によって作製することができる。作製方法は特に限定されないが、たとえば、野生型CMVペンタマーを構成する5つのタンパク質のcDNAをテンプレートとし、プライマーを設計して、PCRによって核酸を得て、発現プロモーターと機能的に連結し、場合によってタグも連結し、適切な発現ベクターに導入し、発現させ、フォールディングさせ五量体構造を形成させることによって得ることができる。CMVペンタマー抗原は、必要に応じて分泌型蛋白として発現させることもできる。例えば、gHを全長(配列番号9)ではなく、エクトドメイン(配列番号2)の断片として発現させることで、分泌型蛋白としての発現が可能となる。作製されたCMVペンタマー抗原は、必要に応じて精製してもよい。精製方法は特に限定されないが、アフィニティクロマトグラフィーカラムなどによる精製が挙げられる。
[0045]
 改変型CMVペンタマー抗原が変異導入による改変体、又は糖鎖導入(糖鎖修飾)による改変体の場合は、上述のように作製することができる。
[0046]
 本実施形態のワクチンは、たとえば、1:10~10:1の質量比でCMVのgBタンパク質抗原とCMVペンタマー抗原とを含有してよく、等質量で含有することが好ましい。ワクチンにおけるタンパク質抗原の含有量は、CMVのgBタンパク質抗原及びCMVペンタマー抗原は、それぞれ0.1~1000μgであればよく、1~100μgであることが好ましい。
[0047]
 本実施形態のワクチンの剤形は、例えば、液状、粉末状(凍結乾燥粉末、乾燥粉末)、カプセル状、錠剤、凍結状態であってもよい。
[0048]
 本実施形態のCMVワクチンは、医薬として許容されうる担体を含んでいてもよい。上記担体としては、ワクチン製造に通常用いられる担体を制限なく使用することができ、具体的には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、等張水性緩衝液及びそれらの組み合わせが挙げられる。ワクチンは、乳化剤、保存剤(例えば、チメロサール)、等張化剤、pH調整剤、不活化剤(例えば、ホルマリン)などが、更に適宜配合されてもよい。
[0049]
 本実施形態のワクチンの免疫原性をさらに高めるために、アジュバントを更に含むことも可能である。アジュバントとしては、例えば、アルミニウムアジュバント又はスクアレンを含む水中油型乳濁アジュバント(AS03、MF59など)、CpG及び3-O-脱アシル化-4’-モノホスホリル lipid A(MPL)などのToll様受容体のリガンド、サポニン系アジュバント、ポリγ-グルタミン酸などのポリマー系アジュバント、キトサン及びイヌリンなどの多糖類が挙げられる。
[0050]
 本実施形態のワクチンは、CMV gBタンパク質抗原及びCMVペンタマー抗原と、必要に応じて、担体、アジュバントなどと混合することにより得ることができる。アジュバントは、用時に混合するものであってもよい。
[0051]
 本実施形態のワクチンの投与経路は、例えば、経皮投与、舌下投与、点眼投与、皮内投与、筋肉内投与、経口投与、経腸投与、経鼻投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、口から肺への吸入投与であってもよい。
[0052]
 本実施形態のワクチンの投与方法は、例えば、シリンジ、経皮的パッチ、マイクロニードル、移植可能な徐放性デバイス、マイクロニードルを付けたシリンジ、無針装置、スプレーによって投与する方法であってもよい。
[0053]
 本実施形態のワクチンによれば、CMVの経胎盤感染を予防又は治療することができる。経胎盤感染の予防とは、母体にワクチンを投与することにより、胎児へのCMVの垂直感染を抑制すること、或いは、先天性感染により生じる各種症状の発現を抑制することである。これらは、胎児の羊水や新生児の体液を用いた核酸増幅法による検査や、新生児の頭部超音波検査、頭部CT検査、頭部MRI検査、または聴覚スクリーニングなどによって評価することができる。経胎盤感染の治療とは、先天性感染児にワクチンを投与することにより、先天性感染により生じる各種症状の発現や進展を抑制することである。これらは、先天性感染児の聴力検査、視力検査、その他の身体学的検査や精神発達検査などによって評価することができる。本実施形態のワクチンは、妊娠可能年齢の女性或いは女子児童を対象に投与することが好ましい。集団免疫の観点から、男性や男子児童、高齢者までを対象とすることも考えられる。また、投与回数は1回から3回、但し、2ヶ月から数年の間隔を置いて複数回接種することが望ましい。血中の抗体価を測定し、抗体が陰性或いは抗体価が低い人を接種対象とすることもできる。
[0054]
 本発明のワクチンキットは、HCMV gBタンパク質抗原を含むワクチンと、HCMVのgH、gL、UL128、UL130及びUL131からなるペンタマー抗原とを含むワクチンとを含む、HCMVの経胎盤感染を予防又は治療するためのワクチンキットである。すなわち、HCMV gBタンパク質抗原を含む1価ワクチンと、HCMVペンタマー抗原を含む1価ワクチンとの2種類のワクチンを含むワクチンキットである。
[0055]
 2種類のワクチンは、混合して投与してもよく、別々に投与してもよい。別々に投与する場合は、順番を問わず順に投与すればよく、例えば1種類目の投与後15分以内に2種類目を投与する。
実施例
[0056]
[材料・方法]
<GPCMV-gBの調製及び性状解析>
 モルモット経胎盤感染モデル系を用いて評価するため、モルモットに感染性を示すモルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)を用いた。組換えGPCMV gBタンパク質は凝集体を含む場合があるため、凝集体を含まない、性状改善した改変GPCMV gBタンパク質を作製した。
[0057]
 GPCMV 22122株に由来するgBのエクトドメイン(1-656aa)にリーダー配列を付加し、さらに性状改善のためのアミノ酸変異を導入したgB(配列番号15)をコードする遺伝子を人工合成し、pCAGGS1-dhfr-neo(特許文献3)にクローニングした。gBのC末端にはHis-tagが付加されるようにデザインした。発現には、Expi293発現システム(ライフテクノロジーズ社)を用いた。発現プラスミドを細胞にトランスフェクションし、4~6日で培養上清を回収した。GPCMV gBを含む培養上清から、Ni NTA Agarose(QIAGEN社)を用いて精製し、PBS+0.5M Arginineに対して透析を行い、改変GPCMV gBタンパク質のエクトドメイン(以下、「GPCMV-gB」と呼ぶ)の精製品を得た。
[0058]
 GPCMV-gBの精製品について、以下の通り性状解析を実施した。ジチオトレイトール(DTT)による還元処理を行った検体(DTT(+))と、行っていない検体(DTT(-))とをそれぞれ8~16%SDS-PAGEグラジエントゲルにて泳動し、Bullet CBB Stain One(nacalai tesque社)で染色した。その結果は図1に示す。図1におけるレーン1、2はそれぞれマーカー(Bench Mark Prestained Invitogen10748-010)、及び、精製したGPCMV-gB 2μg/レーンであり、レーン2においてGPCMV-gBのバンドがメインバンドとして確認された。また、Superdex200 Increase 5/150 GL(GE Healthcare社)を用いて、移動相としてPBSを用い、流速0.4mL/分でHPLCゲルろ過分析を行った結果、期待された三量体のピークがほぼシングルピークとして確認された(図2)。
[0059]
<GPCMV-Pentamerの調製及び性状解析>
 次に、GPCMV 22122株に由来するペンタマーのエクトドメインを調製した。GPCMVペンタマーのエクトドメインの可溶性発現に関しては報告例がなかったため、HCMVペンタマーのエクトドメインの可溶性発現の報告例(非特許文献14)を参考に、以下に述べるようにデザインし、発現プラスミドを構築した。
[0060]
 gHのエクトドメイン(1-698aa、配列番号16)をコードする遺伝子を人工合成し、pCAGGS1-dhfr-neoにクローニングした。gHのC末端にはHis-tagが付加されるようにデザインした。更に、HCMVのgLのオルソログであるGP115(1-258aa、配列番号11)をコードする遺伝子、HCMVのUL128のオルソログであるGP129(1-179aa、配列番号12)をコードする遺伝子、HCMVのUL130のオルソログであるGP131(1-192aa、配列番号13)をコードする遺伝子、HCMVのUL131のオルソログであるGP133(1-127aa、配列番号14)をコードする遺伝子を、それぞれ人工合成し、pCAGGS1-dhfr-neoにクローニングした。発現及び精製はGPCMV-gBと同様の方法で行い、GPCMVペンタマーのエクトドメイン(以下、「GPCMV-Pentamer」と呼ぶ)精製品を得た。
[0061]
 GPCMV-gBと同様に性状解析を実施したところ、SDS-PAGEではGPCMV-Pentamerを構成する各種構成成分のバンドがそれぞれ確認された(図3)。また、HPLCゲルろ過分析においては、期待された五量体(ペンタマー)のピークがメインピークとして確認された(図4)。
[0062]
<GPCMV/モルモット免疫原性試験>
 作製したGPCMV-gB及びGPCMV-Pentamerを用いて、モルモット免疫原性試験を実施した。4週齢、雌のHartleyモルモットに対し、各抗原(GPCMV-gB、GPCMV-Pentamer又はGPCMV-gB+GPCMV-Pentamer)は25μg/匹になるように、生理食塩水(大塚製薬)で調製し、アジュバントとして10v/v%のAlum(Invivogen)及び50μg/匹のCpG ODN1826(Invivogen)を使用した。調製した抗原液を2週間間隔で3回、Hartleyモルモット(雌 3匹/群)に筋肉内接種(100μL、後肢及び両足)し、最終免疫の2週間後にイソフルラン吸入麻酔下での心臓採血により全採血した。得られた血液は凝固促進剤入り分離管で血清分離し、56℃、30分間非働化処理を行ったものを免疫血清として、これら免疫血清を用いて中和抗体誘導能解析(中和抗体価解析)及び結合抗体誘導能解析(結合抗体価解析)を実施した。
[0063]
<中和抗体価解析のためのモルモットの細胞とGPCMV>
 ウイルスの培養と線維芽細胞系の中和抗体価解析にはATCCから購入したGPL細胞(CCL 158)を使用した。細胞培養用培地はF12(x1) Nutrient Mixture (+) L-glutamine培地(Gibco,Cat.No.11765-054)に10%FBS (Hyclone),100Units/mL Penicillin,100μg/mL Streptomycin(Gibco,Cat.No.15140-122)を添加して調製し、細胞の拡張、維持、解析に使用し、いずれも37℃、5%のCO 濃度の条件下で培養した。
[0064]
 中和抗体価解析に用いるモルモット由来マクロファージの調製は以下のように行った。脾臓細胞を回収し、遠心して細胞を集め、10~20mLの1×RBC(NH Cl 8.26g,NaHCO  1.19g,EDTA・Na  0.378gを滅菌水100mLに溶解し、pHを7.3に合わせて、ろ過滅菌後冷蔵保存し、使用時に滅菌水で10倍希釈したもの)に懸濁し赤血球を溶血させた。遠心の後、細胞を1×PBSに懸濁しては遠心することを数回繰り返し、得られた細胞を単球として-80℃に10%DMSOと50%FBSを含む培地を加えて保存、もしくは、そのままマクロファージに分化させて使用した。中和抗体価解析に用いるモルモット由来マクロファージは、単球1.5~2.5×10 個/ウェル/96穴プレートを100nM TPA存在下で2日培養し、上清を除いた後、プレートに張り付いている細胞をマクロファージとして使用した。
[0065]
 中和抗体価解析に用いるウイルスは、以下の手順で作製した。まず、pBluescript II KS(+)に、ATCCから購入したGPCMV 22122株(VR-682)感染細胞より抽出したDNAを鋳型としてPCR増幅して得たGPCMVゲノムの塩基配列(非特許文献15)の2642-4247領域及び13030-14482領域をクローニングした。次に、このプラスミドに、8.6kbのFプラスミドレプリコン(BAC)とGFP発現カセットを、GPCMV塩基配列3992と3993の間にクローニングした。得られたプラスミドをGPCMV 22122株ゲノムDNAとともにGPL細胞に遺伝子導入し、出現したGFP発現ウイルスを5回継代後、その感染細胞からHirt法により環状DNAを回収し、エレクトロポレーション法にて大腸菌DH10Bに遺伝子導入し、pBAC-GPCMVΔ9Kを得た。このBAC DNAをGPL細胞に遺伝子導入することで、GFPを発現しクローン化されたGPCMV-BACΔ9Kを作出した(非特許文献16)。
[0066]
 中和抗体価解析用の精製ウイルスバンクは以下のように調製した。70~80%程度の密度となったGPL細胞に、10分の1量のGPCMV-BACΔ9K感染GPL細胞を加え、60~70%の細胞が細胞変性効果により剥がれるまで数日間培養後、培養液を回収し、室温で1700×gの遠心を10分間行い、その上清を回収し、5mLの20%蔗糖含有PBSを最初に加えた超遠心用30mL遠心管に、蔗糖層と混ぜることがないようにゆっくりと重層し、70,000×gで2時間超遠心(ローター:日立工機P32ST)した。上清を除き、ペレットを上層した上清の50~100分の1量のPBSに懸濁後、分注し、中和抗体価解析用の精製ウイルスバンクとして-80℃に保存し、使用時には各分注を使いきりとした。
[0067]
 中和抗体価解析用の精製ウイルスバンクのウイルス力価は、以下のようにして決定した。-80℃に保存した精製ウイルスの分注を融解し、PBSにて希釈系列を作製後、24穴プレートに播種し80~90%となっているGPL細胞に感染させ、1~2日培養した。蛍光倒立顕微鏡下で、GFPを発現するGPCMVのフォーカスを計数した。なお、このGFP発現にもとづく力価決定法と、GPCMVに対するモノクローナル抗体を用いた免疫染色法は同じ結果となることは予め確認された。
[0068]
<GPCMV/線維芽細胞中和抗体価解析>
 GPL細胞を用いた中和抗体価解析は、フォーカス数減少活性(フォーカスリダクション活性)を用いて行った。解析には、96穴プレート(Corning 3596)に2×10 細胞/ウェルで播種したGPL細胞を一晩培養したプレートを使用した。各免疫血清(抗GPCMV-gB血清、抗GPCMV-Pentamer血清、又はGPCMV-gB+GPCMV-Pentamer血清)を、培地を用いて段階希釈して所定の濃度になるように調製し、約135PFUのGPCMV-BACΔ9K株を加えて50μLとした混合液を、37℃で30分反応させた。陰性コントロールとして血清の代わりに培地を加えた反応液を同様に反応させた。解析プレートの細胞に20μL/ウェルを接種後、37℃で2時間培養し、細胞に吸着させた。反応液を除去し、培地を加えて2日間培養した。GFP発現フォーカス数を、蛍光顕微鏡を用いて計数し、抗体を含まない反応液での結果を基準に、各免疫血清による細胞数の割合の抑制率から、中和抗体価を判定した。結果を表1に示す。
[0069]
<GPCMV/マクロファージ中和抗体価解析試験>
 マクロファージを用いた中和抗体価解析は、感染細胞数減少活性を用いて行った。解析には、上述の方法にて96穴プレート(Corning 3596)で単球から分化させたマクロファージを用いた。各免疫血清を、培地を用いて段階希釈して所定の濃度になるように調製し、約1350PFUのGPCMV-BACΔ9K株を加えて50μLとした混合液を、37℃で30分反応させた。陰性コントロールとして血清の代わりに培地を加えた反応液を同様に反応させた。解析プレートの細胞に20μL/ウェルを接種後、37℃2時間培養し、マクロファージに吸着させた。反応液を除去し、培地を加えて2日間培養した。GFP発現マクロファージを、蛍光顕微鏡を用いて計数し、抗体を含まない反応液での結果を基準に、各免疫血清による細胞数の割合の抑制率から、中和能を判定した。結果を表1に示す。
[表1]


[0070]
<GPCMV/結合抗体価解析>
 GPCMV-gB又はGPCMV-PentamerをPBS(Wako)で1μg/mLに希釈し、MaxiSorp plate(Nunc)に50μL入れ、4℃でオーバーナイトインキュベートすることによって固相化した。固相化後、プレートをPBSで洗浄し、各免疫血清(抗GPCMV-gB血清、抗GPCMV-Pentamer血清、又はGPCMV-gB+GPCMV-Pentamer血清)の希釈液をプレートのウェルに100μL加え室温でインキュベートした。1時間後、PBSTで洗浄し、検出抗体goat anti-Guinea Pig IgG HRP secondary antibody(ROCKLAND社 Cat.606-103-129)をプレートのウェルに100μL加え、室温でインキュベートした。1時間後、PBSTで洗浄し、TMB(SIGMA社 Cat.T-4444)をプレートのウェルに100μL加えることによって発色させた。30分後、1N硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社)で発色値(O.D.450nm/650nm)を測定した。測定した結果を図9、及び図10に示す。GPCMV-gB+GPCMV-Pentamer免疫血清は、GPCMV-gB及びGPCMV-Pentamerいずれに対しても高い結合抗体価を示していた。このことから、GPCMV-gB+GPCMV-Pentamer免疫群では、これら2種の抗原両方に対する免疫応答が誘導されたと考えられる。
[0071]
<モルモット経胎盤感染試験>
 以下の方法でモルモットの経胎盤感染に対する各種抗原の防御能の検討を行った。まず、上記得られたGPCMV-gB及びGPCMV-Pentamerを非妊娠雌モルモット(Hartley、4週齢)に免疫した。
[0072]
 群構成としては、GPCMV-gB群、GPCMV-Pentamer群、GPCMV-gB+GPCMV-Pentamer併用群、及び対照群として生理食塩水群の4群構成(各群40匹)とした。各抗原を25μg/匹で、アジュバントにはAlum+CpGを用いた。2週間隔で計3回の筋肉内投与を行い、3回目の投与から2週間後に抗血清を回収し、各群につき40匹分の抗血清をプールした。プールした抗血清からProteinAカラムクロマトグラフィーによる抗体画分の精製を行った。溶出後PBSに対して透析したものを抗体画分とした。
[0073]
<モルモットIgGの定量>
 抗体画分の投与量を決定するために各種モルモット抗血清中のIgG濃度をIgG定量ELISAにより定量した。
[0074]
 IgG定量ELISAは以下の手順で実施した。Anti-GUINEA PIG IgG (H&L) (GOAT) Antibody(ROCKLAND社 Cat.606-1102)をPBS(Wako)で1μg/mLに希釈し、MaxiSorp plate(Nunc)に100μL入れ、4℃でオーバーナイトインキュベートすることによって固相化した。固相化後、プレートをPBSで洗浄し、各種抗血清の希釈液をプレートのウェルに100μL加え室温でインキュベーションした。1時間後、PBSTで洗浄し、HRP標識抗モルモットIgG抗体(自家調製品)をプレートのウェルに100μL加え、室温でインキュベートした。1時間後、PBSTで洗浄し、TMB(SIGMA社Cat.T-4444)をプレートのウェルに100μL加えることによって発色させた。30分後、1N 硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社)で発色値(O.D.450nm/650nm)を測定した。標準品として抗HSV gD抗体(自家調製品)を用い、検量線を作成することによって抗血清中のIgG濃度を定量した。
[0075]
 その結果、抗血清中のIgG濃度は、GPCMV-gB群が2.71mg/mL、GPCMV-Pentamer群が2.94mg/mL、GPCMV-gB+GPCMV-Pentamer併用群が3.44mg/mL、及び対照群が1.56mg/mLであった。
[0076]
 血清中IgG濃度が1.6~3.4mg/mLであったため、1回の投与で1匹分のIgGを投与するために、2mL/匹ずつの投与を想定して、Amicon Ultra(メルク社 UFC903024)を用いてタンパク質濃縮を行い、15~30mg/mLのIgG精製品を調製した。
[0077]
 IgG精製品を妊娠モルモットに投与し、翌日、GPCMVを感染させた(各群4匹)。感染から1週間後に抗体画分を追加投与した。
[0078]
 Hartleyモルモット(妊娠4週齢)の腹腔内にIgG精製品を2mLずつ投与した。翌日、野生型GPCMVを1×10 PFU/個体となるように皮下接種した。代謝された抗体を補う目的で、1週間後に腹腔内にIgG精製品を1mLずつ追加投与した。感染3週間後に安楽殺後、解剖し、母体の臓器(脾臓、肝臓、腎臓、肺、唾液腺、胎盤)、胎仔の臓器(肝臓、肺、脳)を採集した。各臓器を細切後ホモジネートにした検体からウイルスDNAをMaxwell16 Tissue DNAPurificaion Kit(Promega社)を用いて精製し、定量PCRによりウイルスコピー数を算出した。5×10 個の細胞あたり1コピー以上のウイルスコピー数が検出された検体は「感染あり」と判定した。なお、定量PCRは表2に示す条件で実施した。使用したプライマー及びプローブは表3に示す。
[表2]


[表3]


[0079]
[結果・考察]
 結果を表4に示す。括弧内の数値は、評価した検体数(母体と胎仔は匹数で、胎盤は個数)に対してウイルス陽性となった検体数を表す。表4から、胎仔への先天性感染の抑制効果はgB+Pentamer群が最も高かった。次いでPentamer群が高く、gB群ではほとんど効果を認めなかった。gB+Pentamer併用群が胎仔への感染を最も強力に抑制したことから、CMVワクチンの実用化に向けたアプローチとしては「gB及びペンタマーを併用したサブユニットワクチン」という新たな方向性が有効と期待される。
[表4]


[0080]
 以上より、gB+Pentamer併用群は、モルモット母体の初感染にはほとんど効果を示さなかったにも関わらず、胎児への感染を有意に抑制した。その抑制効果は、gB及びPentamerのそれぞれの単独群に比べて高いものであった。今回の結果は、母体から胎児へのウイルスの移行を、抗gB抗体及び抗Pentamer抗体が共存することによって、より有効に抑制できることを、動物病態モデルを用いて示した初めての例であり、gB+Pentamerの併用療法がヒトの先天性感染抑制にも有効である可能性を強く示唆するものである。
[0081]
[ヒトへの適用/人体用ワクチン抗原の作製]
上記実施例にて、モルモットへの併用抗原の投与が経胎盤感染予防に効果があることが証明され、人体用CMVワクチン候補として、併用抗原が有効であると示唆された。そこで、ヒトへの適用のため、HCMVのgB及びペンタマー抗原を作製した。
[0082]
<HCMV-gBの調製及び性状解析>
 AD169株に由来するHCMV-gBのエクトドメインをベースに性状改善のためのアミノ酸変異を導入した改変HCMV-gBタンパク質「gB1-682-fm3Mv9」(以下、「HCMV-gB」と呼ぶ)を作製し(配列番号1)、GPCMV-gBと同様の方法で発現及び精製を行った。
[0083]
 性状解析もGPCMV-gBと同様に行った。SDS-PAGEではHCMV-gBのバンドがメインバンドとして確認された(図5)。また、HPLCゲルろ過分析においては、期待された三量体のピークがメインピークとして確認された(図6)。
[0084]
<HCMV-Pentamerの調製及び性状解析>
 次に、Merlin株に由来するHCMVペンタマーのエクトドメインを作製した。HCMVペンタマーのエクトドメインを構成するタンパク質として、Merlin株に由来するUL128(配列番号4)、UL130(配列番号5)、UL131(配列番号6)、gL(配列番号3)、及びgH(配列番号9)を使用した。
[0085]
 人工遺伝子合成及び遺伝子工学的手法を用いて、HCMVペンタマーのエクトドメインを構成する各タンパク質の遺伝子配列をpCAGGS1.dhfr.neoベクターにそれぞれクローニングし、野生型UL128発現プラスミド、野生型UL130発現プラスミド、野生型UL131発現プラスミド、野生型gL発現プラスミド、野生型gH発現プラスミドを作製した。次に、分泌型CMV五量体を作製するために、野生型gH発現プラスミドを改変した。非特許文献14を参考に、gHのC末端の位置716番目以降のアミノ酸を欠損させ、その位置にLGGリンカーとHistagを付加する改変を行った。
[0086]
 発現及び精製はGPCMV-gBと同様の方法で行い、HCMVペンタマーのエクトドメイン(以下、「HCMV-Pentamer」と呼ぶ)精製品を得た。
[0087]
 GPCMV-gBと同様に性状解析を実施したところ、SDS-PAGEではHCMV-Pentamerを構成する各種構成成分のバンドがそれぞれ確認された(図7)。また、HPLCゲルろ過分析においては、期待された五量体(ペンタマー)のピークがメインピークとして確認された(図8)。
[0088]
<HCMV/モルモット免疫原性試験>
 作製したHCMV-gB及びHCMV-Pentamerを用いて、モルモット免疫原性試験を実施した。4週齢、雌のHartleyモルモットに対し、各抗原(抗HCMV-gB血清、抗HCMV-Pentamer血清、又はHCMV-gB+HCMV-Pentamer血清)は25μg/匹になるように、生理食塩水(大塚製薬)で調製し、アジュバントとして10v/v%のAlum(Invivogen)及び50μg/匹のCpG ODN1826(eurofins)を使用した。調製した抗原液を2週間間隔で3回、Hartleyモルモット(雌 3匹/群)に筋肉内接種(100μL、後肢両足)し、最終免疫の2週間後にイソフルラン吸入麻酔下での心臓採血により全採血した。得られた血液は凝固促進剤入り分離管で血清分離し、56℃、30分間非働化処理を行ったものを免疫血清とし、これら免疫血清を用いて結合抗体誘導能解析(結合抗体価解析)を実施した。
[0089]
<HCMV/結合抗体価解析>
 HCMV-gB又はHCMV-PentamerをPBS(Wako)で1μg/mLに希釈し、MaxiSorp plate (Nunc)に50μL入れ、4℃でオーバーナイトインキュベートすることによって固相化した。固相化後、プレートをPBSで洗浄し、各免疫血清(抗HCMV-gB血清、抗HCMV-Pentamer血清、又はHCMV-gB+HCMV-Pentamer血清)の希釈液をプレートのウェルに100μL加え室温でインキュベートした。1時間後、PBSTで洗浄し、検出抗体goat anti-Guinea Pig IgG HRP secondary antibody(ROCKLAND社 Cat.606-103-129)をプレートのウェルに100μL加え、室温でインキュベートした。1時間後、PBSTで洗浄し、TMB(SIGMA社 Cat.T-4444)をプレートのウェルに100μL加えることによって発色させた。30分後、1N硫酸で反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社)で発色値(O.D.450nm/650nm)を測定した。測定した結果を図11、及び図12に示す。HCMV-gB+HCMV-Pentamer免疫血清は、HCMV-gB及びHCMV-Pentamerいずれに対しても高い結合抗体価を示していた。このことから、HCMV-gB+HCMV-Pentamer免疫群では、これら2種の抗原両方に対する免疫応答が誘導されたと考えられる。
[0090]
<HCMV既感染者PBMCに対するIFNγ誘導能の評価>
 細胞性免疫の評価にはPBMC(CTL社 Cat.CTL-CP1)を使用した。PBMCは、CTL社のデータによりHCMV感染歴があることが確かめられた21名のドナー由来検体を使用した。
[0091]
 CTL Anti-Aggregate Wash(20×)(CTL社 Cat.CTL-AA-001)を37℃に設定したウォーターバスで10分間温めて完全に解凍し、19mLのRPMI1640培地(gibco社 Cat.21870-076)にCTL Anti-Aggregate Wash(20×)を1mL加えてCTL Anti-Aggregate Wash(1×)とした。調製したCTL Anti-Aggregate Wash(1×)は、使用まで37℃、5%CO 条件下で20分以上静置し、1時間以内に使用した。CTL-Test Medium(CTL社 Cat.CTLT-010)にはL-Glutamine(100×)(Wako社 Cat.073-05391)を1%(v/v)添加し、使用まで37℃、5%CO 条件下で20分以上静置した。
[0092]
 PBMCが入ったバイアルを37℃に設定したウォーターバスで8分間温め、その後バイアルを2回転倒混和し、PBMCを懸濁した。バイアル中の細胞溶液を全て50mLチューブへ移し、さらにCTL Anti-Aggregate Wash(1×)1mLをバイアルに入れ、細胞溶液を完全に回収した。50mLチューブを穏やかに回しながら、CTL Ani-Aggregate Wash(1×)3mLを15秒間かけて加え、さらにCTL Anti-Aggregate Wash(1×)5mLを穏やかに加えて細胞溶液とした。細胞溶液を急速加速、急速減速設定で遠心(330×g、10分、室温)し、遠心後の上清を除去し、タッピングにて細胞を懸濁した。CTL Anti-Aggregate Wash(1×)を10mL添加し、2回転倒混和した。細胞溶液を急速加速、急速減速設定で遠心(330×g、10分、室温)し、遠心後の上清を除去し、タッピングにて細胞を懸濁した。細胞を1×L-Glutamine-CTL-Test Mediumで3×10 細胞/mL~5×10 細胞/mLの範囲内の濃度に希釈した。
[0093]
 Human IFN-γ ELISpot PLUS(MABTECH社 Cat.3420-4HST-2)に付属のプレートを300μL/ウェルのD-PBS(-)(Wako社 Cat.045-29795)で4回洗浄した後、1×L-Glutamine-CTL-Test Mediumを300μL/ウェル添加し、30分以上室温に静置した。プレートからCTL-Test Mediumを除き、細胞懸濁液を100 μL/ウェル添加した。さらにHCMV-gB、HCMV-Pentamer、HCMV-gB抗原とHCMV-Pentamer抗原の混合、Human IFN-γ ELISpotPLUSに付属のポジティブコントロール(mAB CD3-2)を1×L-Glutamine-CTL-Test Mediumで希釈したもの、およびネガティブコントロールとして1×L-Glutamine-CTL-Test Mediumを、それぞれ100μL/ウェル添加し懸濁した。プレートをアルミ箔で覆い、37℃、5%CO 条件下で12~24時間培養した。
[0094]
 Human IFN-γ ELISpot PLUSに付属の検出抗体(7-B6-1-biotin)を0.5%FBS(CORNING社 Cat.35-076-CV)-PBSで1μg/mLに希釈し、検出抗体液を作製した。プレートから培地とともに細胞を除去し、300μL/ウェルのD-PBS(-)で5回洗浄した。検出抗体液を100μL/ウェル添加し、室温で2時間静置した。Human IFN-γ ELISpot PLUSに付属のStreptavidin-HRPを0.5%FBS-PBSで1000倍に希釈し、Streptavidin-HRP溶液を作製した。プレートから検出抗体液を除去し、300μL/ウェルのD-PBS(-)で5回洗浄後、Streptavidin-HRP溶液を100μL/ウェル添加し、室温で1時間静置した。Human IFN-γ ELISpot PLUSに付属のReady-to-use TMBを0.22μmフィルターに通し、Ready-to-use TMB溶液を作製した。プレートからStreptavidin-HRP溶液を除去し、300μL/ウェルのD-PBS(-)で5回洗浄した。プレートにReady-to-use TMB溶液を100μL/ウェル添加し、明瞭なスポットが観察されるまで室温に5~30分の範囲内で静置後、300μL/ウェルの純水で3回洗浄した。プレートフレームからストリップウェルを取り外してプレート底面のPVDF膜側を純水ですすぎ、ストリップウェルを一晩乾燥させた。CTL社 ELISPOTリーダーにて画像撮影を行い、CTL社ImmunoSpot S5 verse Analyzerにてスポット数のカウントを行った。全検体のネガティブコントロール(対照)ウェルにおけるスポット数平均値よりも5倍以上のスポット数が見られた検体を「抗原刺激によるIFNγ誘導反応陽性」と判定した。判定結果から得られたELISpot陽性率(全ドナーにおける「抗原刺激によるIFNγ誘導反応陽性」ドナーの割合)を図13に示す。
[0095]
[結果・考察]
 HCMV-gBもしくはHCMV-Pentamerで刺激した場合と比べて、HCMV-gBとHCMV-Pentamerを混合して刺激した場合はより多くのドナーでIFNγ誘導が見られた。このことから、HCMV既感染者の中にはHCMV-gBとHCMV-Pentamerのうち、いずれか一方の抗原に対してはIFNγを誘導できない集団が存在しており、なおかつHCMV-gBとHCMV-Pentamerを併用してワクチンとして投与することで、両抗原のいずれに対する細胞性免疫誘導能をも有する集団のみならず、いずれか一方の抗原に対してのみしか細胞性免疫を誘導できない集団に対しても細胞性免疫を誘導できると考えられる。

請求の範囲

[請求項1]
 サイトメガロウイルス(CMV)のエンベロープ糖タンパク質B(gBタンパク質)抗原と、ペンタマー抗原とを含む、CMVの先天性感染を予防又は治療するためのワクチン。
[請求項2]
 gBタンパク質抗原がCMV gBタンパク質のエクトドメインである、請求項1に記載のワクチン。
[請求項3]
 gBタンパク質抗原が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のgBタンパク質のエクトドメインである、請求項2に記載のワクチン。
[請求項4]
 ペンタマー抗原が、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のgH、gL、UL128、UL130及びUL131からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のワクチン。
[請求項5]
 ペンタマー抗原が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のペンタマータンパク質のエクトドメインである、請求項4に記載のワクチン。
[請求項6]
 ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のエンベロープ糖タンパク質B(gBタンパク質)抗原を含むワクチンと、
 HCMVのgH、gL、UL128、UL130及びUL131からなるペンタマー抗原とを含むワクチンと
を含む、HCMVの先天性感染を予防又は治療するためのワクチンキット。
[請求項7]
 ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の先天性感染を予防又は治療するためのワクチン又はワクチンキットの製造における、HCMVのエンベロープ糖タンパク質B(gBタンパク質)抗原、並びに、HCMVのgH、gL、UL128、UL130及びUL131からなるペンタマー抗原の使用。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]