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1. WO2020121978 - 根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材および熱交換器

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明 細 書

発明の名称 根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材および熱交換器

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037  

発明の効果

0038  

図面の簡単な説明

0039  

発明を実施するための形態

0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048  

実施例 1

0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059  

符号の説明

0060  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : 根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材および熱交換器

技術分野

[0001]
 この発明は、ろう付後において根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材および熱交換器に関するものである。

背景技術

[0002]
 熱交換器用ヘッダープレート材料は、心材に、他部材との接合のためのろう材、冷却水に接する犠牲材を張り合わせた三層からなるアルミニウム合金が使用される(例えば特許文献1~3参照)。ヘッダープレート材料は、高強度が求められており、心材にAl-Mn系合金を使用し、Mg、Cuの元素を添加することで強度を向上させている。しかしながら、Mgはろう付中に大気中の酸素と結合することで酸化皮膜を形成し、ろう付性を低下させる。また、Cuは、ヘッダープレートとチューブの接合部にできるフィレットに凝縮することで電位を貴とするため、相対的に電位が卑となる接合部近傍のチューブが早期に貫通してしまうという耐食性低下の問題がある。また、ろう付後におけるろうのSi系析出物および共晶相の分布を適切な状態とすることで耐食性を大幅に向上させたブレージングシートが提案されている(特許文献4参照)。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2009-074318号公報
特許文献2 : 特開2011-042853号公報
特許文献3 : 特開2014-031588号公報
特許文献4 : 特開2014-054656号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 近年、熱交換器の軽量化のために、薄肉化及び高強度化が求められており、さらには耐食性に優れた合金が求められる。そのため、心材にCuを多量に添加している材料でも耐食性に優れた合金であることが求められている。
 また、冷却水側に張り合わされる犠牲材には、心材への腐食進展を防止するため、Znを添加することにより面状へ腐食が進展する。しかし、熱交換器の構造上犠牲材の表面にはパッキンが貼り合わされており、そのすき間に冷却水が留まり、腐食が早期に面状に進展するため、冷却水が漏れてしまう課題がある。
[0005]
 本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、高強度で根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材および熱交換器を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 すなわち、本発明の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材のうち、第1の形態は、それぞれがアルミニウム合金からなり、少なくともろう材と心材とが積層されて、ろう付対象材とろう付される熱交換器用多層クラッド材であって、
 心材の電位をE1、ろう付対象材と熱交換器用多層クラッド材との接合部に形成されるフィレットの共晶ろうの電位をE3とし、ろう付対象材の電位がE2であるとき、E3<E1<E2の電位差の関係を有し、かつE3とE2の電位差ΔE が105mV以上かつE3とE1の電位差ΔE が80mV以上であることを特徴とする。
[0007]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、前記心材は、質量%で、Mn:1.2~2.0%、Cu:0.3~1.0%、Si:0.5~1.2%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する。
[0008]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、前記ろう材は、質量%で、Si:5.0~12.0%、Zn:1.0~5.0%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する。
[0009]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、ろう材が積層されている前記心材の他面側に、犠牲材が積層されていることを特徴とする。
[0010]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、前記犠牲材は、質量%で、Mn:1.2~2.0%、Si:0.5~1.2%、Zn:0.05~0.5%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する。
[0011]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、前記犠牲材は、熱交換器用として使用される際にパッキンと接触して配置される。
[0012]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、前記犠牲材は、円相当直径0.1μm~0.5μmのAl-Mn-Si系化合物を1~100個/μm 含む。
[0013]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、ろう付時に2~8%の加工ひずみが加えられた当該熱交換器用多層クラッド材へのろうの侵食率が板厚の10%以下である。
[0014]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、ろう付後の心材の再結晶粒径が、圧延方向に水平な方向について40μm以上である。
[0015]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、ろう付保持温度が、590℃~610℃である。
[0016]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、前記ろう付対象の心材が、Al-Mn系合金であり、質量%で、Cu:0.1~1.0%を含有する。
[0017]
 他の形態の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材の発明は、前記形態の発明において、ヘッダープレートとして用いられ、前記ろう付対象材がチューブ材料である。
[0018]
 本発明の熱交換器のうち、第1の形態は、前記形態のいずれかの熱交換器用多層クラッド材からなるヘッダープレートと、ろう付対象材であるチューブとがろうによって接合されている。
[0019]
 以下に、本発明で規定する内容について説明する。なお、各成分における数値は質量%で示されている。
共晶ろうの電位;E3<心材の電位;E1<ろう付対象材の電位;E2
E3とE2の電位差ΔE 105mV以上、E3とE1の電位差ΔE が80mV以上
 E3とE2の電位差が105mV未満である場合、ろう付対象材が腐食してしまい、E3とE1の電位差80mV未満の場合は共晶ろうが優先腐食せずに心材まで腐食してしまう。このため、各電位の関係を上記に定める。
 上記の電位バランスを得るために、温度、時間を適正に管理した所定のろう付を行うのが望ましい。ろう付は例えば600℃×5分行うのが望ましいが、本発明としてはこの数値に限定されるものではない。
[0020]
 電位は、例えば以下の方法により測定することができる。
 電位は以下の方法で測定し得られた孔食電位とする。ろう付熱処理が施された各部位の例えば測定部10mm および導通する部分のみ暴露し、その他は絶縁塗料にて被覆した。測定はAlCl を2.67%含有した水溶液を用い、対極に白金、照合電極に飽和カロメルを用いる。飽和カロメル照合電極は使用した水溶液に影響してしまうため、KClが飽和した水溶液をバイパスした。溶存酸素の影響を排除するために雰囲気はN ガスを20分流入する。試験中水溶液の温度は恒温槽にて40℃に保持する。
 自然電位にて5分程度保持した後、速度を0.5mV/秒として自然電位より1000mV掃引する。孔食電位は不働態保持電流密度とその後の電流が流れた点のそれぞれの接線を結ぶ点の電位を選択し、得られた電位を基に、電位差を算出する。
 Znを含んだサンプルはZnの添加量によっては不働態化を確認できないものもあるので、その場合は1mA/cm の電位を選定した。
[0021]
(心材)
Mn:1.2~2.0%
 Mnは、心材の強度を向上させるため含有させる。ただし、Mn含有量が1.2%未満であると、含有量が少なく、ろう付後の材料の強度が低下するため熱交換器の耐圧強度不足となり所望の効果が得られない。一方、Mn含有量が、2.0%を超えると、製造性(鋳造性,圧延性)が悪化する。このため、Mnを含有する場合、上記範囲内とするのが望ましい。
 なお、同様の理由で、Mn含有量は、下限を1.5%、上限を1.8%とするのが望ましい。
[0022]
Si:0.5~1.2%
 Siは、心材の強度を向上させるため含有させる。ただし、Si含有量が0.5%未満であると、含有量が少なく、ろう付後の材料の強度が低下するため熱交換器の耐圧強度不足となり所望の効果が得られない。一方、Si含有量が、1.2%を超えると、融点が低下してろう付性が低下する。このため、Siを含有する場合、上記範囲内とするのが望ましい。
 なお、同様の理由で、Si含有量は、下限を0.8%、上限を1.0%とするのが望ましい。
[0023]
Cu:0.3~1.0%
 Cuは、心材の強度を向上させるため含有させる。ただし、Cu含有量が0.3%未満であると、含有量が少なく、所望の効果が得られない。一方、Cu含有量が、1.0%を超えると、融点が低下する。このため、Cuを含有する場合、上記範囲内とするのが望ましい。
 なお、同様の理由で、Cu含有量は、下限を0.7%、上限を0.9%とするのが望ましい。
[0024]
 ろう付後の心材の再結晶粒径が、圧延方向に水平な方向について、40μm以上
 再結晶粒が40μm未満であると、ろう付時に溶融ろうが心材へろう侵食し、フィレット形成に必要なろうを得ることができない。このため、上記再結晶粒径を40μm以上とする。
 40μm以上の再結晶粒を得るために心材の均質化処理温度を適宜選定する。例えば、500℃~600℃で1~10時間の間で選定することができる。
 ろう付保持温度としては、600℃×5分を一例として示すことができる。
 なお、ろう付後の強度低下が生じないように、上記再結晶粒径を200μmとするものであってもよい。
[0025]
 再結晶粒径の測定は以下の方法にて採取することができる。ろう付を施した材料の圧延方向に平行な断面に対して、機械研磨を行った。粒度の粗い研磨紙を用いて研磨し、徐々に粒度の細かい研磨紙を用いて鏡面状態に仕上げた。結晶粒を観察するために、鏡面状態に仕上げた面にバーカー氏液(HBF :H O=1:30)を用いて陽極酸化し、偏光光学顕微鏡にて倍率を50倍にして写真を撮影した。得られた再結晶粒に例えばJISG0551に記載される切断法を用いて結晶粒径を測定した。
[0026]
(ろう材)
 本発明のクラッド材では、適宜組成のろう材が用いられる。ろう材の組成は特定のものに限定されるものではないが、好適な成分として以下のものを示すことができる。
[0027]
Si:5.0~12.0%
 Siは、ろう付性を向上させる。ただし、Si含有量が5.0%未満であると、形成するフィレットのサイズが小さく、所望の根付部の耐食性について所望の効果が得られない。また、12.0%を超えても所定のろう付性が得られない。このため、ろう材のSi含有量を上記範囲内とするのが望ましい。なお、同様の理由で、Si含有量は、下限を6%、上限を9%とするのが望ましい。
[0028]
Zn:1.0~5.0%
 Znは、耐食性を向上させるので含有させる。ただし、1.0%未満では含有量が少なく、心材とろう付対象材の接合部に形成されるフィレットの電位が貴となり、フィレットとろう付対象材の電位差が小さくなるため、十分な耐食性が得られない。一方、Zn含有量が、5.0%を超えると、電位の卑化が生じ腐食減量が増加する。このため、ろう材のZn含有量を上記範囲内とするのが望ましい。なお、同様の理由で、Zn含有量は、下限を2.0%、上限を4.0%とするのが望ましい。
[0029]
 なお、心材にCuを多量に添加している材料でも耐食性に優れたクラッド材としてろう材にZnを添加している。材料の電位を卑とするZnは、犠牲陽極作用を付与することができる。Cuの濃縮により電位が貴となったクラッド材とろう付対象材との接合部にできたフィレットにZnが濃縮することで、フィレットの電位を卑とする。
 接合部にできたフィレットの電位を卑とすることにより、E3<E1<E2の電位差を有することができる。そのため、高強度化のため心材に添加したCuによる耐食性の低下を解決することができる。
[0030]
(犠牲材)
 本発明のクラッド材では、犠牲材を積層したものとすることができる。本発明の犠牲材は特定の組成に限定されるものではないが、好適な成分として以下のものを示すことができる。
[0031]
Mn:1.2~2.0%
 Mnは犠牲材の強度を向上させ、さらに耐食性を向上させるので含有させる。ただし、Mn含有量が1.2%未満であると、ろう付後の材料の強度が低下するため熱交換器の耐圧強度不足となり所望の効果が得られない。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、製造性(鋳造性,圧延性)が悪化する。このため、Mn含有量を上記範囲とするのが望ましい。なお、同様の理由で、Mn含有量は、下限を1.5%、上限を1.8%とするのが望ましい。
[0032]
Si:0.5~1.2%
 Siは、犠牲材の強度を向上させ、さらに耐食性を向上させるので含有させる。ただし。Si含有量が0.5%未満であると、含有量が少なく、ろう付後の材料の強度が低下するため熱交換器の耐圧強度不足となり所望の効果が得られない。一方、1.2%を超えると、融点が低下し、ろう付不良となる。このため、Si含有量を上記範囲とするのが望ましい。なお、同様の理由で、Si含有量は、下限を0.8%、上限を1.0%とするのが望ましい。
[0033]
Zn:0.05~0.5%
 Znは耐食性を向上させるので含有させる。ただし、Zn含有量が0.05%未満であると、含有量が少なく、所望の効果が得られない。一方、Zn含有量が0.5%を超えると、電位卑化が生じ腐食減量が増加する。このため、Zn含有量を上記範囲内とする。なお、同様の理由で、Zn含有量は、下限を0.3%、上限を0.5%とするのが望ましい。
[0034]
円相当直径0.1μm~0.5μmのAl-Mn-Si系化合物:1~100個/μm
 上記化合物の大きさが円相当径0.1μm未満であると、ろう付後の材料の強度が低下するため熱交換器の耐圧強度不足となり所望の効果が得られない。円相当径0.5μmを超えると、犠牲材の耐食性が低下し、またろう付後の材料の強度が低下するため熱交換器の耐圧強度不足となり所望の効果が得られない。
 上記化合物の個数は1個/μm 未満であると、ろう付後の耐食性が低下し、また材料の強度が低下するため熱交換器の耐圧強度不足となり所望の効果が得られない。100個/μm を超えると、犠牲材の耐食性が低下し、また、ろう付後の材料の強度が低下するため熱交換器の耐圧強度不足となり所望の効果が得られない。
 上記化合物の大きさを得るために、犠牲材には均質化処理を施さないのが望ましい。また、その後の熱処理の温度は化合物の成長を抑制するために出来る限り低温で行われるのが望ましい。例えば、材料の質別をOとする熱処理では、バッチ焼鈍炉で300℃~450℃で1~10時間で熱処理を行うことが挙げられる。
[0035]
 化合物の大きさ、個数については、例えば、以下の方法により測定することができる。
 ろう付を施した材料の圧延方向に平行な断面に、イオンミリング法を用いて加工を施す。汎用の走査型電子顕微鏡を用いて犠牲材のAl-Mn-Si系化合物の分布状態を観察する。観察する設備は例えばFE-SEMを用いて倍率は10000倍~50000倍が観察できるものが望ましい。Al-Mn-Si系化合物は1視野中に最低20個が含まれる写真を、例えば10視野程度撮影する。Al-Mn-Si系化合物の面積は得られた写真に対して二値化し、粒子と素地を分離することで得た。得られた化合物の面積より、円相当直径を算出する。
[0036]
 パッキンとの接触面などでの犠牲材の腐食を低減するため、犠牲材に添加されたZn量およびマトリクスより電位の卑なAl-Mn-Si系化合物に注目した。Zn量を低減し、Al-Mn-Si系化合物の大きさおよび分布状態を所定の範囲にすることで防食機能を付与し、パッキンなどと接触する犠牲材の耐食性を向上させている。
[0037]
ろう付対象材
 ろう付対象材としては、チューブ材料が代表的に挙げられる。ろう付対象材には、例えばAl-Mn系合金を用いることができ、質量%で、Cu:0.1~1.0%を含有するものを示すことができる。
 ヘッダープレートにろう付されるのは、一般的にはチューブ材であるため、代表的に上記材料が挙げられる。チューブ材料の心材はAl-Mn系合金が使用されることが多く、Cu:0.1~1.0%を含有している場合では、ヘッダおよびフィレットと電位バランスが成り立つ(最も貴となる)。
 但し、本発明としては、ろう付対象材が上記に限定されるものではない。

発明の効果

[0038]
 本発明によれば、心材と、ろう付対象材と共晶ろうの電位を適切に定めることで、高い強度を有したままで、優れた耐食性を得ることができる。

図面の簡単な説明

[0039]
[図1] 本発明の一実施例における熱交換器用多層クラッド材の構造を示す断面図である。
[図2] 同じく、ろう付部分と電位の関係を示す拡大図である
[図3] 同じく、熱交換器の概略構成を示す斜視図である。

発明を実施するための形態

[0040]
 例えば半連続鋳造により、心材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用アルミニウム合金を鋳造する。
 心材用アルミニウム合金としては、例えば、質量%で、Mn:1.2~2.0%、Cu:0.3~1.0%、Si:0.5~1.2%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する合金を用いることができる。
 ろう材用アルミニウム合金として、例えば、質量%で、Si:5.0~12.0%、Zn:1.0~5.0%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する合金を用いることができる。
 犠牲材用アルミニウム合金としては、例えば、質量%で、Mn:1.2~2.0%、Si:0.5~1.2%、Zn:0.05~0.5%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する合金を用いることができる。
 なお、心材用アルミニウム合金、ろう材用アルミニウム合金および犠牲材用アルミニウム合金の組成は、上記で記載したものに限定されるものではない。また、本発明としては、犠牲材を用いないものとしてもよい。
[0041]
 得られた心材は500℃~600℃で1時間~10時間の範囲で選択し、均質化処理を行うことができる。ろう材については400℃~500℃で1時間~10時間の範囲で選択し均質化を行うことができる。犠牲材については均質化処理を行わないものとする。
 心材に均質化処理を行うことで、Mn等の析出物を制御してAl-Mn-Si系化合物の分布状態を適正なものとする。
[0042]
 心材の鋳塊の一方の面に犠牲材を、他方の面にろう材を組み合わせて、熱間粗圧延機あるいは熱間仕上げ圧延機の装置を用いて熱間圧延を行い、アルミニウム合金のクラッド材を作製する。クラッド材の構成は、例えば、犠牲材:心材:ろう材=5~15%:70~90%:5~15%とすることができる。ただし、本発明としては、クラッド率が特定のものに限定されるものではない。さらに所定の厚さまで冷間仕上げ圧延機の装置を用いて冷間圧延を行う。その後、材料の質別をOとするためにバッチ焼鈍炉にて熱処理を行う。熱処理の温度は300℃~450℃で時間は1~10時間の範囲で選択することができる。
[0043]
 図1は、上記で得られた熱交換器用多層クラッド材20の構成断面図を示すものである。心材20Aの片面にろう材20Bが積層され、心材20Aの他面に犠牲材20Cが積層されている。
[0044]
 当該熱交換器用多層クラッド材20は熱交換器のヘッダープレート用三層クラッド材として使用される。当該熱交換器用多層クラッド材20は、ヘッダープレート形状に例えばプレス加工された後、図2に示すように、チューブ材3と組み合わされ、ろう付が施される。チューブ材3としては、Al-Mn系合金で、質量%で、Cu:0.1~1.0%を含有するものを用いることができる。ろう付にてろう材20Bが溶融し、組み合わされているチューブ材3とろう付接合される。その際にろう溜まり(フィレット21)が形成され、そのフィレット近傍を根付部と呼ぶ。ろう付は、例えば、熱交換器形状に組み合わされた部材を室温から590~610℃まで加熱し、所定の温度に到達した後、1~10分保持される。その後30~150℃/分の冷却速度で室温まで冷却される工程である。ただし、本発明としては、ろう付の全ての条件が特定のものに限定されるものではない。
 ろう付後は、犠牲材20C面は樹脂タンクとかしめ接合されるが、その接合界面にて冷却水漏れ防止のためパッキンが使用される。パッキンは例えばゴム質のO型形状に加工されたものが使用される。
[0045]
 図2に示すように、心材20Aの電位をE1、チューブ材3の電位をE2、フィレット21における共晶ろうの電位をE3として、E3<E1<E2の関係を満たし、E3とE2の電位差ΔE が105mV以上、E3とE1の電位差ΔE が80mV以上を満たしている。
 また、犠牲材20Cは、円相当直径0.1μm~0.5μmのAl-Mn-Si系化合物を1~100個/μm 含んでおり、心材20Aの再結晶粒径が、圧延方向に水平な方向について40μm以上を満たしている。
[0046]
 上記熱交換器用多層クラッド材20からなるヘッダープレート10を組み付けた熱交換器用組み付け体を図3に示す。
 ヘッダープレート10は、ろう材により構成される空気側の面10aと犠牲材により構成される冷媒側の面10bとを有し、空気側の面10a側から多数のチューブ11が嵌合され、該チューブ11の先端が冷媒側の面10bを超えて突き出されている。各チューブ11間には、空気側でフィン12が配置されてチューブ11に密着している。ヘッダープレート10の冷媒側には、上記チューブ11の突き出し部分を覆うように、樹脂タンク14が配置され、該樹脂タンク14とヘッダープレート10との間がゴムパッキン13によってシールされている。なお、タンクはアルミニウム合金材料で構成することも可能であり、該材料に本発明のアルミニウム合金材料を使用することも可能である。
 上記組み付け体は、常法によりろう付することができる。なお、ろう付における加熱条件や雰囲気、フラックスの種別などについては本発明としては特に限定をされるものではない。
[0047]
 上記ろう付に際し、チューブ11にフィン12がろう付されるとともに、ヘッダープレート10のアルミニウム合金ろう材は溶融し、ろうの流動が適度に抑制されており、チューブ11の嵌合部と良好に接合される。
 上記ろう付体を用いた熱交換器では、冷媒が樹脂タンク14内部を通して各チューブ11に流れる。この際に、冷媒に接するヘッダープレート10では、共晶相によってアルカリ性、酸性を問わず良好な耐食性を示す。
[0048]
 なお、上記実施形態では、優れた熱交換器用多層クラッド材をヘッダープレートに用いるものとして説明したが、本発明としては、その用途がヘッダープレートに限定されるものではない。
実施例 1
[0049]
 次に、本発明の実施例を説明する。
 表1に示す組成(残部がAlと不可避不純物)を有する心材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用アルミニウム合金を半連続鋳造法により溶製した。
 得られた心材は550~600℃で5~10時間の範囲で選択し、均質化処理を行った。犠牲材については均質化処理を行わなかった。一方、ろう材には400~500℃で1~10時間の均質化処理を施した。
[0050]
 心材の鋳塊の一方の面に犠牲材を、他方の面にろう材を組み合わせて、熱間粗圧延機あるいは熱間仕上げ圧延機の装置を用いて熱間圧延を行い、犠牲材:心材:ろう材=10%:80%:10%のクラッド率で積層した。さらに1~2mmの厚さまで冷間仕上げ圧延機の装置を用いて冷間圧延を行った。その後、材料の質別をOとするためにバッチ焼鈍炉で300℃~450℃で1~10時間の熱処理を施した。
[0051]
 上記熱交換器用多層クラッド材をヘッダープレートとして用いるためにプレス等にて加工し、例えばろう付対象体(Al-Mn系のチューブ材)と組みわせた後、ろう付にて接合した。
 ろう付工程として、室温から600℃まで加熱し、600℃に到達した後5分保持した。その後60℃/分で300℃まで冷却した。
 得られた供試材について以下の評価を行い、表1または表2に示した。
[0052]
[電気化学測定]
 ろう付して得られた材料を50mmL×20mmwに切出し、測定部10mm および導通する部分のみ暴露し、その他は絶縁塗料にて被覆した。測定はAlCl を2.67%含有した水溶液を用い、対極に白金、照合電極に飽和カロメルを用いた。飽和カロメル照合電極は使用した水溶液に影響してしまうため、KClが飽和した水溶液をバイパスした。溶存酸素の影響を排除するために雰囲気はN ガスを20分流入した。試験中水溶液の温度は恒温槽にて40℃に保持した。
 自然電位にて5分程度保持した後、速度を0.5mV/秒として自然電位より1000mV掃引した。孔食電位は不働態保持電流密度とその後の電流が流れた点のそれぞれの接線を結ぶ点の電位を選択した。得られた電位をもとに電位差ΔE およびΔE を算出し、ΔE が105mV以上でかつΔE が80mV以上のものを〇とし、それ以外を×とした。また更に良好なものとしてΔE が120mV以上でかつΔE が100mV以上のものを◎とした。
[0053]
[ろう侵食率]
 ろう付する前の材料について、所定の加工ひずみ(2~8%)を加え、ろう付相当熱処理を施し、圧延方向に平行な断面に対して、機械研磨を行った。粒度の粗い研磨紙を用いて研磨し、徐々に粒度の細かい研磨紙を用いて鏡面状態に仕上げた。汎用の光学顕微鏡(倍率50倍)を用いてろう侵食率を下記式より算出した。
  E={t 0-(l +l )-t }×100
 ここでE:ろう侵食率、t 0:加熱前のブレージングシートの厚さ、t :加熱後のブレージングシートのろう侵食をうけていない部分の最小厚さ、l 、l :皮材厚さとする。実施例のろうの侵食率では、Eが10%以下のものを〇、Eが10%より高いものを×とした。更にEが5%以下のものを◎とした。
 ろう付相当熱処理は、特に限定されるものではないが、ろう付と同等の熱処理を行うことを指す。
[0054]
[再結晶粒径測定]
 ろう付を施した材料の圧延方向に平行な断面に対して、機械研磨を行った。粒度の粗い研磨紙を用いて研磨し、徐々に粒度の細かい研磨紙を用いて鏡面状態に仕上げた。結晶粒径の測定は汎用の光学顕微鏡(倍率50倍)を用いて再結晶粒が見られる写真を撮影した。得られた再結晶粒に例えば切断法を用いて結晶粒径を測定した。
実施例では、心材の再結晶粒径が40μm以上のものを○、それ以外を×とした。更に100μm以上のものを◎とした。
[0055]
[化合物観察]
 ろう付を施した材料の圧延方向に平行な断面に、イオンミリング法を用いて加工を施した。汎用の走査型電子顕微鏡を用いて犠牲材のAl-Mn-Si系化合物の分布状態を観察した。得られた化合物の面積より、円相当直径を算出した。実施例では、円相当直径0.1μm~0.5μmのAl-Mn-Si系化合物が1~100個/μm のものを○以上とし、そのうちで、さらに80~100個/μm のものを◎とした。それ以外を×とした。
[0056]
(耐食性等)
ヘッダー/チューブ/フィレットに対する“耐食性”;根付部
 測定した電位をもとに電位差ΔE およびΔE を算出し、ΔE が105mV以上でかつΔE が80mV以上のものを〇とし、それ以外を×とした。また更に良好なものとしてΔE が120mV以上でかつΔE が100mV以上のものを◎とした。
[0057]
犠牲材/パッキンに対する“耐食性”;パッキン下耐食性
 所定の腐食試験後(熱交換器内部OY水循環試験)において、洩れがないこと。実施例では、腐食試験により犠牲材とパッキンとのすき間から漏れがないものについて○および漏れが発生したものは×とした。更に良好なものに対しては◎とした。
[0058]
[表1]


[0059]
 以上、本発明について上記実施形態および実施例に基づいて説明を行ったが、本発明は上記説明の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは、実施形態および実施例に対する適宜の変更が可能である。

符号の説明

[0060]
 3  チューブ材
 4  フィン
10  熱交換器用ヘッダープレート
11  チューブ
12  フィン
13  ゴムパッキン
20  熱交換器用多層クラッド材
20A 心材
20B ろう材
20C 犠牲材
21  フィレット

請求の範囲

[請求項1]
 それぞれがアルミニウム合金からなり、少なくともろう材と心材とが積層されて、ろう付対象材とろう付される熱交換器用多層クラッド材であって、
 心材の電位をE1、ろう付対象材と熱交換器用多層クラッド材との接合部に形成されるフィレットの共晶ろうの電位をE3とし、ろう付対象材の電位がE2であるとき、E3<E1<E2の電位差の関係を有し、かつE3とE2の電位差ΔE が105mV以上かつE3とE1の電位差ΔE が80mV以上であることを特徴とする根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項2]
 前記心材は、質量%で、Mn:1.2~2.0%、Cu:0.3~1.0%、Si:0.5~1.2%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する請求項1記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項3]
 前記ろう材は、質量%で、Si:5.0~12.0%、Zn:1.0~5.0%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する請求項1または2に記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項4]
 ろう材が積層されている前記心材の他面側に、犠牲材が積層されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項5]
 前記犠牲材は、質量%で、Mn:1.2~2.0%、Si:0.5~1.2%、Zn:0.05~0.5%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有する請求項4記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項6]
 前記犠牲材は、熱交換器用として使用される際にパッキンと接触して配置される請求項4または5に記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項7]
 前記犠牲材は、円相当直径0.1μm~0.5μmのAl-Mn-Si系化合物を1~100個/μm 含む請求項1~6のいずれか1項に記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項8]
 ろう付時に2~8%の加工ひずみが加えられた当該熱交換器用多層クラッド材へのろうの侵食率が板厚の10%以下である請求項1~7のいずれか1項に記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項9]
 ろう付後の心材の再結晶粒径が、圧延方向に水平な方向について40μm以上である請求項1~8のいずれか1項に記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項10]
 前記ろう付の保持温度が、590℃~610℃である請求項9記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項11]
 前記ろう付対象材が、Al-Mn系合金であり、質量%で、Cu:0.1~1.0%を含有する請求項1~10のいずれか1項に記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項12]
 ヘッダープレートとして用いられ、前記ろう付対象材がチューブ材料である請求項1~11のいずれか1項に記載の根付部の耐食性に優れた熱交換器用多層クラッド材。
[請求項13]
 請求項1~12のいずれか1項に記載の熱交換器用多層クラッド材からなるヘッダープレートと、ろう付対象材であるチューブとが共晶ろうによって接合されている熱交換器。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]