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1. WO2020121943 - 検査システム、検査方法、およびプログラム

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明 細 書

発明の名称 検査システム、検査方法、およびプログラム

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198  

産業上の利用可能性

0199  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16  

図面

1   2   3   4A   4B   5   6   7   8   9   10   11   12   13A   13B   14   15   16A   16B   17A   17B  

明 細 書

発明の名称 : 検査システム、検査方法、およびプログラム

技術分野

[0001]
 本発明は、検査システム、検査方法、およびプログラムに関し、特に、鉄道車両の軌道を検査するために用いて好適なものである。本願は、2018年12月10日に日本に出願された特願2018-230834号に基づき優先権を主張し、それらの内容を全てここに援用する。

背景技術

[0002]
 軌道上を鉄道車両が走行すると鉄道車両からの荷重により軌道の位置が変化する。このような軌道の変化が生じると、鉄道車両が異常な挙動を示す虞がある。そこで、特許文献1には、輪軸のヨーイングを記述する運動方程式に、輪軸のヨーイング方向における角変位と、データ同化を行うフィルタにより求めた状態変数と、軸箱を支持するための部材に生じる前後方向の力である前後方向力の測定値と、を代入して、鉄道車両の軌道不整(通り狂い量等)を導出する技術が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 国際公開第2017/164133号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 しかしながら、特許文献1に記載の技術では、データ同化を行う際に、前後方向力の測定値と、輪軸および台車(必要に応じて更に車体)のそれぞれにおける左右方向の加速度の測定値を用いる。これらの測定値は、特殊なセンサを用いなくても得ることができるが、鉄道車両に配置するセンサの数は少ない方が好ましい。
[0005]
 本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、鉄道車両の軌道不整を検知するために用いるセンサの数を低減することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明の検査システムは、車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得手段と、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出手段と、前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出手段と、を有し、前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、前記軌道状態導出手段は、前記状態変数導出手段により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、前記状態変数導出手段は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とする。
[0007]
 本発明の検査方法は、車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得工程と、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出工程と、前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出工程と、を有し、前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、前記軌道状態導出工程は、前記状態変数導出工程により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、前記状態変数導出工程は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とする。
[0008]
 本発明のプログラムは、車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得工程と、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出工程と、前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出工程と、をコンピュータに実行させ、前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、前記軌道状態導出工程は、前記状態変数導出工程により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、前記状態変数導出工程は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とする。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 図1は、鉄道車両の概略の一例を示す図である。
[図2] 図2は、鉄道車両の構成要素の主な運動の方向を概念的に示す図である。
[図3] 図3は、台車の左右方向における加速度と、輪軸の左右方向における加速度のそれぞれにおける測定値および計算値を示す図である。
[図4A] 図4Aは、直線軌道における通り狂い量の一例を示す図である。
[図4B] 図4Bは、曲線軌道における通り狂い量の一例を示す図である。
[図5] 図5は、検査装置の機能的な構成の一例を示す図である。
[図6] 図6は、検査装置のハードウェアの構成の一例を示す図である。
[図7] 図7は、検査装置における処理の一例を示すフローチャートである。
[図8] 図8は、自己相関行列の固有値の分布の一例を示す図である。
[図9] 図9は、前後方向力の測定値の時系列データ(測定値)と、前後方向力の予測値の時系列データ(計算値)の一例を示す図である。
[図10] 図10は、前後方向力の高周波成分の時系列データの一例を示す図である。
[図11] 図11は、検査システムの構成の一例を示す図である。
[図12] 図12は、計算例を示す図であって、通り狂い量の導出対象の軌道の曲率1/Rと、鉄道車両の走行速度を示す図である。
[図13A] 図13Aは、計算例を示す図であって、自己相関行列Rの固有値の分布の第1の例を示す図である。
[図13B] 図13Bは、計算例を示す図であって、自己相関行列Rの固有値の分布の第2の例を示す図である。
[図14] 図14は、計算例を示す図であって、前後方向力の測定値の時系列データと、前後方向力の予測値の時系列データとを示す図である。
[図15] 図15は、計算例を示す図であって、前後方向力の高周波成分の時系列データを示す図である。
[図16A] 図16Aは、第1の実施形態の手法による計算例を示す図であって、通り狂い量y の第1の例を示す図である。
[図16B] 図16Bは、第1の実施形態の手法による計算例を示す図であって、通り狂い量y の第2の例を示す図である。
[図17A] 図17Aは、第2の実施形態の手法による計算例を示す図であって、通り狂い量y の第1の例を示す図である。
[図17B] 図17Bは、第2の実施形態の手法による計算例を示す図であって、通り狂い量y の第1の例を示す図である。

発明を実施するための形態

[0010]
 以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(着想)
 まず、本発明の実施形態の実現に際し、本発明者らが得た着想について説明する。
 図1は、鉄道車両の概略の一例を示す図である。尚、図1において、鉄道車両は、x軸の正の方向に進むものとする(x軸は、鉄道車両の走行方向に沿う軸である)。また、z軸は、軌道16(地面)に対し垂直方向(鉄道車両の高さ方向)であるものとする。y軸は、鉄道車両の走行方向に対して垂直な水平方向(鉄道車両の走行方向と高さ方向との双方に垂直な方向)であるものとする。また、鉄道車両は、営業車両であるものとする。尚、各図において、○の中に●が付されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×が付されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。
[0011]
 図1に示すように本実施形態では、鉄道車両は、車体11と、台車12a、12bと、輪軸13a~13dとを有する。このように本実施形態では、1つの車体11に、2つの台車12a、12bと4組の輪軸13a~13dとが備わる鉄道車両を例に挙げて説明する。輪軸13a~13dは、車軸15a~15dとその両端に設けられた車輪14a~14dとを有する。本実施形態では、台車12a、12bが、ボルスタレス台車である場合を例に挙げて説明する。尚、図1では、表記の都合上、輪軸13a~13dの一方の車輪14a~14dのみを示すが、輪軸13a~13dの他方にも車輪が設けられている(図1に示す例では、車輪は合計8個ある)。また、鉄道車両は、図1に示す構成要素以外の構成要素(後述する運動方程式で説明する構成要素等)を有するが、表記の都合上、図1では、当該構成要素の図示を省略する。例えば、台車12a、12bは、台車枠および枕バネなどを有する。また、各輪軸13a~13dのy軸に沿う方向の両側には、軸箱が配置される。また、台車枠と軸箱は、軸箱支持装置により相互に結合される。軸箱支持装置は、軸箱および台車枠の間に配置される装置(サスペンション)である。軸箱支持装置は、軌道16から鉄道車両に伝わる振動を吸収する。また、軸箱支持装置は、軸箱が台車枠に対してx軸に沿う方向およびy軸に沿う方向に移動することを抑制するように(好ましくは、当該移動が生じないように)軸箱の台車枠に対する位置を規制した状態で軸箱を支持する。軸箱支持装置は、各輪軸13a~13dのy軸に沿う方向の両側に配置される。尚、鉄道車両自体は公知の技術で実現できるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
[0012]
 鉄道車両が軌道16上を走行すると、車輪14a~14dと軌道16との間の作用力(クリープ力)が振動源となり、輪軸13a~13d、台車12a、12b、車体11に振動が順次伝搬する。図2は、鉄道車両の構成要素(輪軸13a~13d、台車12a、12b、車体11)の主な運動の方向を概念的に示す図である。図2に示すx軸、y軸、z軸は、それぞれ、図1に示したx軸、y軸、z軸に対応する。
[0013]
 図2に示すように本実施形態では、輪軸13a~13d、台車12a、12b、および車体11が、x軸を回動軸として回動する運動と、z軸を回動軸として回動する運動と、y軸に沿う方向の運動とを行う場合を例に挙げて説明する。以下の説明では、x軸を回動軸として回動する運動を必要に応じてローリングと称し、x軸を回動軸とする回動方向を必要に応じてローリング方向と称し、x軸に沿う方向を必要に応じて前後方向と称する。尚、前後方向は、鉄道車両の走行方向である。本実施形態では、x軸に沿う方向が鉄道車両の走行方向であるものとする。また、z軸を回動軸として回動する運動を必要に応じてヨーイングと称し、z軸を回動軸とする回動方向を必要に応じてヨーイング方向と称し、z軸に沿う方向を必要に応じて上下方向と称する。尚、上下方向は、軌道16に対し垂直な方向である。また、y軸に沿う方向の運動を必要に応じて横振動と称し、y軸に沿う方向を必要に応じて左右方向と称する。尚、左右方向は、前後方向(鉄道車両の走行方向)と上下方向(軌道16に対し垂直な方向)との双方に垂直な方向である。また、鉄道車両は、この他の運動も行うが、各実施形態では説明を簡単にするため、これらの運動については考慮しないものとする。しかしながら、これらの運動を考慮してもよい。
[0014]
[第1の着想]
 特許文献1に記載の技術では、輪軸13a、13b、13c、13dの左右方向における加速度y w1・・、y w2・・、y w3・・、y w4・・と、台車12a、12bの左右方向における加速度y t1・・、y t2・・と、必要に応じて更に車体11の左右方向における加速度y ・・を観測変数として用いて、データ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)によるフィルタリングを行うことにより状態変数を導出する。
[0015]
 図3は、台車12aの左右方向における加速度y t1・・と、輪軸13a、13bの左右方向における加速度y w1・・、y w2・・のそれぞれにおける測定値および計算値を示す。計算値は、データ同化により算出される観測変数の推定値である。図3の横軸は、基準の時刻を0(ゼロ)とした場合の当該基準の時刻からの経過時間(秒)である。具体的に図3の横軸は、台車12aの左右方向における加速度y t1・・と、輪軸13a、13bの左右方向における加速度y w1・・、y w2・・の測定時刻・計算時刻を表す。データ同化を行う際には、本来は観測変数の測定値として与えられる値と推定値との誤差が最小または当該誤差の期待値が最小になるように状態変数の推定値を導出する。
[0016]
 図3に示すように、輪軸13a、13bの左右方向における加速度y w1・・、y w2・・の測定値および台車12aの左右方向における加速度y t1・・、y t2・・の測定値には多くのノイズが含まれる。このことから、本発明者らは、軌道16(軌条)の状態によっては、データ同化を行っても、推定値が測定値に近づかず、概ね一定値になるという知見を得た。このことは、輪軸13c、13dの左右方向における加速度y w3・・、y w4・・と、台車12bの左右方向における加速度y t2・・と、車体11の左右方向における加速度y ・・についても同じである。このことから、本発明者らは、状態変数の導出の際に、これらの加速度の測定値を用いなくても、通り狂い量y R1、y R2、y R3、y R4を、精度を大きく落とすことなく導出することができるのではないかと考えた。
[0017]
[第2の着想]
 特許文献1に記載のように、本発明者らは、輪軸13a~13b(13c~13d)と、当該輪軸13a~13b(13c~13d)が設けられる台車12a(12b)との間に配置される部材に生じる前後方向の力の測定値を用いて、通り狂い量を算出する方法に想到した。以下の説明では、この部材に生じる前後方向の力を、必要に応じて前後方向力と称する。
[0018]
 通り狂い量は、鉄道車両の直線軌道の走行時における運動を記述する運動方程式に基づく式であって、通り狂い量と前後方向力との関係を示す式を用いて算出される。軌道16には、直線部と曲線部とが含まれる。以下の説明では、軌道16の直線部を必要に応じて直線軌道と称し、軌道16の曲線部を必要に応じて曲線軌道と称する。
[0019]
 データ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)によるフィルタリングを行う場合に、曲線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式を用いて状態方程式を構成すると、状態変数が発散する虞がある。そこで、データ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)によるフィルタリングを行う場合の状態方程式を、直線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式を用いて構成する。
 曲線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式では、走行時に鉄道車両が受ける遠心力等を考慮する必要がある。従って、曲線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式には、軌条(レール)の曲率半径を含む項が含まれる。よって、鉄道車両が曲線軌道を走行しているときに、直線軌道を走行する鉄道車両の運動を記述する運動方程式を用いて構成したデータ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)を用いて状態変数を導出すると、状態変数を高精度に導出することができなくなる虞がある。
[0020]
 本発明者らは、鉄道車両が曲線軌道を走行する場合には、直線軌道を走行しているときに対し、前後方向力の測定値が或るバイアスを持つことに着目した。通り狂いによる前後方向力の成分自体は、曲線軌道であっても、直線軌道であっても同じように生じる。そこで、本発明者らは、通り狂い量自体は、前記バイアスの量とは無関係であると考え、前後方向力の測定値の時系列データから低周波成分(前記バイアスの挙動)を低減させることにより、鉄道車両の直線軌道の走行時における運動を記述する運動方程式に基づく式を用いてデータ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)を構成しても、状態変数の推定値から、鉄道車両が曲線軌道を走行することに起因する低周波成分を低減することができると考えた。このことから、本発明者らは、低周波成分が低減された前後方向力の値の時系列データを用いて通り狂い量を算出することに想到した。このようにして通り狂い量を算出することによって、鉄道車両の直線軌道の走行時における運動を記述する運動方程式に基づく式を用いているのにも関わらず、曲線軌道における通り狂い量を算出することができる。また、通り狂い量の算出式は、曲線軌道であっても直線軌道であっても同じ算出式になる。尚、設計上は直線軌道であっても、実際には通り狂い量の推定精度に影響を与える程度の曲率を有することがある。従って、曲線軌道だけではなく、直線軌道においても、前後方向力の測定値の時系列データから低周波成分(前記バイアスの挙動)を低減させることは、通り狂い量の推定精度の向上に寄与する。以下では、設計上は直線軌道であっても、実際には通り狂い量の推定精度に影響を与える程度の曲率を有する軌道も曲線軌道であるものとして説明を行う。
[0021]
(運動方程式)
 次に、鉄道車両の運動を記述する運動方程式の一例を説明する。本実施形態では、特許文献1に記載の運動方程式を例に挙げ、鉄道車両が21自由度を有する場合を例に挙げて説明する。即ち、輪軸13a~13dが、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とを行うものとする(2×4セット=8自由度)。また、台車12a、12bが、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とローリング方向における運動(ローリング)とを行うものとする(3×2セット=6自由度)。また、車体11が、左右方向における運動(横振動)とヨーイング方向における運動(ヨーイング)とローリング方向における運動(ローリング)とを行うものとする(3×1セット=3自由度)。また、台車12a、12bに対してそれぞれ設けられている空気バネ(枕バネ)が、ローリング方向における運動(ローリング)を行うものとする(1×2セット=2自由度)。また、台車12a、12bに対してそれぞれ設けられているヨーダンパが、ヨーイング方向における運動(ヨーイング)を行うものとする(1×2セット=2自由度)。
[0022]
 尚、自由度は、21自由度に限定されない。自由度を大きくすれば計算精度は向上するが、計算負荷が高くなる。また、後述するカルマンフィルタの動作が安定しなくなる虞がある。これらの点を考慮して自由度を適宜決定することができる。また、以下の運動方程式は、それぞれの構成要素(車体11、台車12a、12b、輪軸13a~13d)のそれぞれの方向(左右方向、ヨーイング方向、ローリング方向)の動作を、例えば、非特許文献1、2の記載に基づいて表すことにより実現することができる。従って、ここでは、それぞれの運動方程式の概要を説明し、詳細な説明を省略する。尚、以下の各式には、軌道16(軌条)の曲率半径(曲率)を含む項が存在しない。即ち、以下の各式は、鉄道車両が直線軌道を走行することを表現する式となる。鉄道車両が曲線軌道を走行することを表現する式において、軌道16(軌条)の曲率半径を無限大(曲率を0(ゼロ))とすることにより、鉄道車両が直線軌道を走行することを表現する式が得られる。
[0023]
 以下の各式において、添え字wは、輪軸13a~13dを表す。添え字w(のみ)が付されている変数は、輪軸13a~13dで共通であることを表す。添え字w1、w2、w3、w4はそれぞれ、輪軸13a、13b、13c、13dを表す。
 添え字t、Tは、台車12a、12bを表す。添え字t、T(のみ)が付されている変数は、台車12a、12bで共通であることを表す。添え字t1、t2はそれぞれ、台車12a、12bを表す。
 添え字b、Bは、車体11であることを表す。
[0024]
 添え字xは、前後方向またはローリング方向を表し、添え字yは、左右方向を表し、添え字zは、上下方向またはヨーイング方向を表す。
 また、変数の上に付している「・・」、「・」はそれぞれ、2階時間微分、1階時間微分を表す。
 尚、以下の運動方程式の説明に際し、必要に応じて、既出の変数の説明を省略する。また、運動方程式自体は、特許文献1に記載されているものと同じである。
[0025]
[輪軸の横振動]
 輪軸13a~13dの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(1)式~(4)式で表される。
[0026]
[数1]


[0027]
 m は、輪軸13a~13dの質量である。y w1・・(式において・・はy w1の上に付される(以下、その他の変数についても同様))は、輪軸13aの左右方向における加速度である。f は、横クリープ係数である(尚、横クリープ係数f は、輪軸13a~13d毎に与えられてもよい)。vは、鉄道車両の走行速度である。y w1・(式において・はy w1の上に付される(以下、その他の変数についても同様))は、輪軸13aの左右方向における速度である。C wyは、軸箱と輪軸とをつなぐ軸箱支持装置の左右方向におけるダンピング定数である。y t1・は、台車12aの左右方向における速度である。aは、台車12a、12bに設けられている輪軸13a・13b、13c・13d間の前後方向における距離の1/2を表す(台車12a、12bに設けられている輪軸13a・13b、13c・13d間の距離は2aになる)。ψ t1・は、台車12aのヨーイング方向における角速度である。h は、車軸の中心と台車12aの重心との上下方向における距離である。φ t1・は、台車12aのローリング方向における角速度である。ψ w1は、輪軸13aのヨーイング方向における回動量(角変位)である。K wyは、軸箱支持装置の左右方向のバネ定数である。y w1は、輪軸13aの左右方向における変位である。y t1は、台車12aの左右方向における変位である。ψ t1は、台車12aのヨーイング方向における回動量(角変位)である。φ t1は、台車12aのローリング方向における回動量(角変位)である。尚、(2)式~(4)式の各変数は、前述した添え字の意味に従って(1)式の変数を読み替えることにより表される。
[0028]
[輪軸のヨーイング]
 輪軸13a~13dのヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(5)式~(8)式で表される。
[0029]
[数2]


[0030]
 I wzは、輪軸13a~13dのヨーイング方向における慣性モーメントである。ψ w1・・は、輪軸13aのヨーイング方向における角加速度である。f は、縦クリープ係数である。bは、輪軸13a~13dに取り付けられている2つの車輪と軌道16(軌条)との接点の間の左右方向における距離である。ψ w1・は、輪軸13aのヨーイング方向における角速度である。C wxは、軸箱支持装置の前後方向のダンピング定数である。b は、軸箱支持装置の左右方向における間隔の1/2の長さを表す(1つの輪軸に対して左右に設けられている2つの軸箱支持装置の左右方向における間隔は2b になる)。γは、踏面勾配である。rは、車輪14a~14dの半径である。y R1は、輪軸13aの位置での通り狂い量である。s は、車軸15a~15dの中心から軸箱支持バネまでの前後方向におけるオフセット量である。y t1は、台車12aの左右方向における変位である。K wxは、軸箱支持装置の前後方向のバネ定数である。尚、(6)式~(8)式の各変数は、前述した添え字の意味に従って(5)式の変数を読み替えることにより表される。ただし、y R2、y R3、y R4はそれぞれ、輪軸13b、13c、13dの位置での通り狂い量である。
[0031]
 ここで、通り狂いとは、日本工業規格(JIS E 1001:2001)に記載されているように、軌条の長手方向の左右の変位である。通り狂い量は、その変位の量である。図4Aおよび図4Bに、輪軸13aの位置での通り狂い量y R1の一例を示す。図4Aでは、軌道16が、直線軌道である場合を例に挙げて説明する。図4Bでは、軌道16が、曲線軌道である場合を例に挙げて説明する。図4Aおよび図4Bにおいて、16aは、軌条を示し、16bは、枕木を示す。図4Aでは、輪軸13aの車輪14aが位置401で軌条16aと接触しているとする。図4Bでは、輪軸13aの車輪14aが位置402で軌条16aと接触しているとする。輪軸13aの位置での通り狂い量y R1は、輪軸13aの車輪14aと軌条16aとの接触位置と、正規の状態であると仮定した場合の軌条16aの位置と、の左右方向の距離である。輪軸13aの位置とは、輪軸13aの車輪14aと軌条16aとの接触位置である。輪軸13b、13c、13dの位置での通り狂い量y R2、y R3、y R4も、輪軸13aの位置での通り狂い量y R1と同様に定義される。
[0032]
[台車の横振動]
 台車12a、12bの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(9)式、(10)式で表される。
[0033]
[数3]


[0034]
 m は、台車12a、12bの質量である。y t1・・は、台車12aの左右方向における加速度である。c´ は、左右動ダンパのダンピング定数である。h は、台車12aの重心と左右動ダンパとの上下方向における距離である。y ・は、車体11の左右方向における速度である。Lは、台車12a、12bの中心間の前後方向における間隔の1/2を表す(台車12a、12bの中心間の前後方向における間隔は2Lになる)。ψ ・は、車体11のヨーイング方向における角速度である。h は、左右動ダンパと車体11の重心との間の上下方向における距離である。φ ・は、車体11のローリング方向における角速度である。y w2・は、輪軸13bの左右方向における速度である。k´ は、空気バネ(枕バネ)の左右方向のバネ定数である。h は、台車12a、12bの重心と空気バネ(枕バネ)の中心との間の上下方向における距離である。y は、車体11の左右方向における変位である。ψ は、車体11のヨーイング方向における回動量(角変位)である。h は、空気バネ(枕バネ)の中心と車体11の重心との間の上下方向における距離である。φ は、車体11のローリング方向における回動量(角変位)である。尚、(10)式の各変数は、前述した添え字の意味に従って(9)式の変数を読み替えることにより表される。
[0035]
[台車のヨーイング]
 台車12a、12bのヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(11)式、(12)式で表される。
[0036]
[数4]


[0037]
 I Tzは、台車12a、12bのヨーイング方向における慣性モーメントである。ψ t1・・は、台車12aのヨーイング方向における角加速度である。ψ w2・は、輪軸13bのヨーイング方向における角速度である。ψ w2は、輪軸13bのヨーイング方向における回動量(角変位)である。y w2は、輪軸13bの左右方向における変位である。k´ は、ヨーダンパのゴムブッシュ剛性である。b´ は、台車12a、12bに対し左右に配置された2つのヨーダンパの左右方向における間隔の1/2を表す(台車12a、12bに対し左右に配置された2つのヨーダンパの左右方向における間隔は2b´ になる)。ψ y1は、台車12aに配置されたヨーダンパのヨーイング方向における回動量(角変位)である。k´´ は、空気バネ(枕バネ)の前後方向のバネ定数である。b は、台車12a、12bに対し左右に配置された2つの空気バネ(枕バネ)の左右方向における間隔の1/2を表す(台車12a、12bに対し左右に配置された2つの空気バネ(枕バネ)の左右方向における間隔は2b になる)。尚、(12)式の各変数は、前述した添え字の意味に従って(11)式の変数を読み替えることにより表される。
[0038]
[台車のローリング]
 台車12a、12bのローリングを記述する運動方程式は、以下の(13)式、(14)式で表される。
[0039]
[数5]


[0040]
 I Txは、台車12a、12bのローリング方向における慣性モーメントである。φ t1・・は、台車12aのローリング方向における角加速度である。c は、軸ダンパの上下方向のダンピング定数である。b´ は、台車12a、12bに対し左右に配置された2つの軸ダンパの左右方向における間隔の1/2を表す(台車12a、12bに対し左右に配置された2つの軸ダンパの左右方向における間隔は2b´ になる)。c は、空気バネ(枕バネ)の上下方向のダンピング定数である。φ a1・は、台車12aに配置された空気バネ(枕バネ)のローリング方向における角速度である。k は、軸バネの上下方向のバネ定数である。λは、空気バネ(枕バネ)の本体の容積を補助空気室の容積で割った値である。k は、空気バネ(枕バネ)の上下方向のバネ定数である。φ a1は、台車12aに配置された空気バネ(枕バネ)のローリング方向における回動量(角変位)である。k は、空気バネ(枕バネ)の有効受圧面積の変化による等価剛性である。尚、(14)式の各変数は、前述した添え字の意味に従って(13)式の変数を読み替えることにより表される。ただし、φ a2は、台車12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリング方向における回動量(角変位)である。
[0041]
[車体の横振動]
 車体11の横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式は、以下の(15)式で表される。
[0042]
[数6]


[0043]
 m は、台車12a、12bの質量である。y ・・は、車体11の左右方向における加速度である。y t2・は、台車12bの左右方向における速度である。φ t2・は、台車12bのローリング方向における角速度である。y t2は、台車12bの左右方向における変位である。φ t2は、台車12bのローリング方向における回動量(角変位)である。
[0044]
[車体のヨーイング]
 車体11のヨーイングを記述する運動方程式は、以下の(16)式で表される。
[0045]
[数7]


[0046]
 I Bzは、車体11のヨーイング方向における慣性モーメントである。ψ ・・は、車体11のヨーイング方向における角加速度である。c は、ヨーダンパの前後方向のダンピング定数である。ψ y1・は、台車12aに配置されたヨーダンパのヨーイング方向における角速度である。ψ y2・は、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイング方向における角速度である。ψ t2は、台車12bのヨーイング方向における回動量(角変位)である。
[0047]
[車体のローリング]
 車体11のローリングを記述する運動方程式は、以下の(17)式で表される。
[0048]
[数8]


[0049]
 I Bxは、車体11のローリング方向における慣性モーメントである。φ ・・は、車体11のローリング方向における角加速度である。
[0050]
[ヨーダンパのヨーイング]
 台車12aに配置されたヨーダンパ、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイングを記述する運動方程式は、それぞれ以下の(18)式、(19)式で表される。
[0051]
[数9]


[0052]
 ψ y2は、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイング方向における回動量(角変位)である。
[0053]
[空気バネ(枕バネ)のローリング]
 台車12aに配置された空気バネ(枕バネ)、台車12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリングを記述する運動方程式は、それぞれ以下の(20)式、(21)式で表される。
[0054]
[数10]


[0055]
 φ a2・は、台車12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリング方向における角速度である。
[0056]
(前後方向力)
 次に、前後方向力について説明する。尚、前後方向力自体は、特許文献1に記載されているものと同じである。
 1つの輪軸における左右の車輪のうち一方の車輪における縦クリープ力と他方の車輪における縦クリープ力との同相の成分は、ブレーキ力や駆動力に対応する成分である。従って、縦クリープ力の逆相成分に対応するように前後方向力を定めるのが好ましい。縦クリープ力の逆相成分とは、1つの輪軸における左右の車輪のうち一方の車輪における縦クリープ力と他方の車輪における縦クリープ力との相互に逆位相となる成分である。即ち、縦クリープ力の逆相成分とは、縦クリープ力の、車軸をねじる方向の成分である。この場合、前後方向力は、1つの輪軸の左右方向の両側に取り付けられた2つの前記部材に生じる力の前後方向の成分のうち、相互に逆位相となる成分となる。
[0057]
 以下に、縦クリープ力の逆相成分に対応するように前後方向力を定める場合の前後方向力の具体例について説明する。
 軸箱支持装置が、モノリンク式の軸箱支持装置である場合、軸箱支持装置は、リンクを備えており、軸箱と台車枠とがリンクにより連結されている。このリンクの両端にはゴムブッシュが取り付けられる。この場合、前後方向力は、1つの輪軸の左右方向の端にそれぞれ1つずつ取り付けられる2つのリンクのそれぞれが受ける荷重の前後方向の成分のうち、相互に逆位相となる成分になる。また、リンクの配置および構成により、リンクは、前後方向、左右方向、上下方向の荷重のうち主に前後方向の荷重を受ける。従って、例えば、各リンクに歪ゲージを1つ取り付ければよい。この歪ゲージの測定値を用いて、当該リンクが受ける荷重の前後方向の成分を導出することにより、前後方向力の測定値を得る。また、このようにすることに替えて、リンクに取り付けられたゴムブッシュの前後方向の変位を変位計で測定してもよい。この場合、測定した変位と当該ゴムブッシュのバネ定数との積を、前後方向力の測定値とする。軸箱支持装置が、モノリンク式の軸箱支持装置である場合、前述した、軸箱を支持するための部材は、リンクまたはゴムブッシュになる。
[0058]
 尚、リンクに取り付けられる歪ゲージにより測定される荷重には、前後方向の成分だけでなく、左右方向の成分および上下方向の成分のうち少なくとも何れか一方の成分が含まれる場合がある。しかしながら、このような場合であっても、軸箱支持装置の構造上、リンクが受ける左右方向の成分の荷重および上下方向の成分の荷重は、前後方向の成分の荷重に比べて十分に小さい。従って、各リンクに歪ゲージを1つ取り付けるだけで、実用上要求される精度を有する前後方向力の測定値を得ることができる。このように、前後方向力の測定値には、前後方向の成分以外の成分が含まれることがある。従って、上下方向および左右方向の歪みがキャンセルされるように3つ以上の歪ゲージを各リンクに取り付けてもよい。このようにすれば、前後方向力の測定値の精度を向上させることができる。
[0059]
 軸箱支持装置が、軸はり式の軸箱支持装置である場合、軸箱支持装置は、軸はりを備えており、軸箱と台車枠とが、軸はりにより連結されている。軸はりは、軸箱と一体に構成されていてもよい。この軸はりの台車枠側の端にはゴムブッシュが取り付けられる。この場合、前後方向力は、1つの輪軸の左右方向の端にそれぞれ1つずつ取り付けられる2つの軸はりのそれぞれが受ける荷重の前後方向の成分のうち、相互に逆位相となる成分になる。また、軸はりの配置構成により、軸はりは、前後方向、左右方向、上下方向の荷重のうち前後方向の荷重に加えて、左右方向の荷重も受けやすい。従って、例えば、左右方向の歪みがキャンセルされるように2つ以上の歪ゲージを各軸はりに取り付ける。これらの歪ゲージの測定値を用いて、軸はりが受ける荷重の前後方向の成分を導出することにより、前後方向力の測定値を得る。また、このようにすることに替えて、軸はりに取り付けられたゴムブッシュの前後方向の変位を変位計で測定してもよい。この場合、測定した変位と当該ゴムブッシュのバネ定数との積を、前後方向力の測定値とする。軸箱支持装置が、軸はり式の軸箱支持装置である場合、前述した、軸箱を支持するための部材は、軸はりまたはゴムブッシュになる。
[0060]
 尚、軸はりに取り付けられる歪ゲージにより測定される荷重には、前後方向および左右方向の成分だけでなく、上下方向の成分が含まれる場合がある。しかしながら、このような場合であっても、軸箱支持装置の構造上、軸はりが受ける上下方向の成分の荷重は、前後方向の成分の荷重および左右方向の成分の荷重に比べて十分に小さい。従って、軸はりが受ける上下方向の成分の荷重をキャンセルするように歪ゲージを取り付けなくても、実用上要求される精度を有する前後方向力の測定値を得ることができる。このように、計測された前後方向力には、前後方向の成分以外の成分が含まれることがあり、左右方向の歪みに加えて上下方向の歪みもキャンセルされるように3つ以上の歪ゲージを各軸はりに取り付けてもよい。このようにすれば、前後方向力の測定値の精度を向上させることができる。
[0061]
 軸箱支持装置が、板バネ式の軸箱支持装置である場合、軸箱支持装置は、板バネを備えており、軸箱と台車枠とが、板バネにより連結されている。この板バネの端にはゴムブッシュが取り付けられる。この場合、前後方向力は、1つの輪軸の左右方向の端にそれぞれ1つずつ取り付けられる2つの板バネのそれぞれが受ける荷重の前後方向の成分のうち、相互に逆位相となる成分になる。また、板バネの配置構成により、板バネは、前後方向、左右方向、上下方向の荷重のうち前後方向の荷重に加えて、左右方向の荷重および上下方向の荷重も受けやすい。従って、例えば、左右方向および上下方向の歪みがキャンセルされるように3つ以上の歪ゲージを各板バネに取り付ける。これらの歪ゲージの測定値を用いて、板バネが受ける荷重の前後方向の成分を導出することにより、前後方向力の測定値を得る。また、このようにすることに替えて、板バネに取り付けられたゴムブッシュの前後方向の変位を変位計で測定してもよい。この場合、測定した変位と当該ゴムブッシュのバネ定数との積を、前後方向力の測定値とする。軸箱支持装置が、板バネ式の軸箱支持装置である場合、前述した、軸箱を支持するための部材は、板バネまたはゴムブッシュになる。
[0062]
 尚、前述した変位計としては、公知のレーザ変位計や渦電流式の変位計を用いることができる。
 また、ここでは、軸箱支持装置の方式が、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式である場合を例に挙げて、前後方向力を説明した。しかしながら、軸箱支持装置の方式は、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式に限定されない。軸箱支持装置の方式に合わせて、モノリンク式、軸はり式、および板バネ式と同様に、前後方向力を定めることができる。
 また、以下では、説明を簡単にするために、1つの輪軸について1つの前後方向力の測定値が得られる場合を例に挙げて説明する。即ち、図1に示す鉄道車両は、4つの輪軸13a~13dを有する。従って、4つの前後方向力T ~T の測定値が得られる。
[0063]
(第1の実施形態)
 次に、本発明の第1の実施形態を説明する。
[0064]
<検査装置500>
 図5は、検査装置500の機能的な構成の一例を示す図である。図6は、検査装置500のハードウェアの構成の一例を示す図である。図7は、検査装置500における処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、図1に示すように、検査装置500が、鉄道車両に搭載される場合を例に挙げて示す。
[0065]
 図5において、検査装置500は、その機能として、記憶部501、データ取得部502、第1の周波数調整部503、状態変数導出部504、第2の周波数調整部505、軌道状態導出部506、および出力部507を有する。
[0066]
 図6において、検査装置500は、CPU601、主記憶装置602、補助記憶装置603、通信回路604、信号処理回路605、画像処理回路606、I/F回路607、ユーザインターフェース608、ディスプレイ609、およびバス610を有する。
[0067]
 CPU601は、検査装置500の全体を統括制御する。CPU601は、主記憶装置602をワークエリアとして用いて、補助記憶装置603に記憶されているプログラムを実行する。主記憶装置602は、データを一時的に格納する。補助記憶装置603は、CPU601によって実行されるプログラムの他、各種のデータを記憶する。補助記憶装置603は、後述する状態方程式および観測方程式を記憶する。記憶部501は、例えば、CPU601および補助記憶装置603を用いることにより実現される。
[0068]
 通信回路604は、検査装置500の外部との通信を行うための回路である。通信回路604は、例えば、前後方向力の測定値の情報を受信する。通信回路604は、検査装置500の外部と無線通信を行っても有線通信を行ってもよい。通信回路604は、無線通信を行う場合、鉄道車両に設けられるアンテナに接続される。
[0069]
 信号処理回路605は、通信回路604で受信された信号や、CPU601による制御に従って入力した信号に対し、各種の信号処理を行う。データ取得部502は、例えば、CPU601、通信回路604、および信号処理回路605を用いることにより実現される。また、第1の周波数調整部503、状態変数導出部504、第2の周波数調整部505および軌道状態導出部506は、例えば、CPU601および信号処理回路605を用いることにより実現される。
[0070]
 画像処理回路606は、CPU601による制御に従って入力した信号に対し、各種の画像処理を行う。この画像処理が行われた信号は、ディスプレイ609に出力される。
 ユーザインターフェース608は、オペレータが検査装置500に対して指示を行う部分である。ユーザインターフェース608は、例えば、ボタン、スイッチ、およびダイヤル等を有する。また、ユーザインターフェース608は、ディスプレイ609を用いたグラフィカルユーザインターフェースを有していてもよい。
[0071]
 ディスプレイ609は、画像処理回路606から出力された信号に基づく画像を表示する。I/F回路607は、I/F回路607に接続される装置との間でデータのやり取りを行う。図6では、I/F回路607に接続される装置として、ユーザインターフェース608およびディスプレイ609を示す。しかしながら、I/F回路607に接続される装置は、これらに限定されない。例えば、可搬型の記憶媒体がI/F回路607に接続されてもよい。また、ユーザインターフェース608の少なくとも一部およびディスプレイ609は、検査装置500の外部にあってもよい。
 出力部507は、例えば、通信回路604および信号処理回路605と、画像処理回路606、I/F回路607、およびディスプレイ609との少なくとも何れか一方を用いることにより実現される。
[0072]
 尚、CPU601、主記憶装置602、補助記憶装置603、信号処理回路605、画像処理回路606、およびI/F回路607は、バス610に接続される。これらの構成要素間の通信は、バス610を介して行われる。また、検査装置500のハードウェアは、後述する検査装置500の機能を実現することができれば、図6に示すものに限定されない。
[0073]
[記憶部501]
 記憶部501は、後述する状態変数導出部504が状態変数を導出する際に用いる方程式を記憶する。
 本実施形態では、記憶部501は、状態方程式と観測方程式とを記憶する。
 本実施形態では、特許文献1に記載の状態方程式および観測方程式を用いる場合を例に挙げて説明する。
[0074]
 まず、状態方程式について説明する。
 本実施形態では、(5)式~(8)式(輪軸13a~13dのヨーイングを記述する運動方程式)を状態方程式に含めずに、以下のようにして状態方程式を構成する。
 まず、(9)式、(10)式(台車12a、12bの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式)と、(13)式、(14)式(台車12a、12bのローリングを記述する運動方程式)と、(15)式(車体11の横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式)と、(16)式(車体11のヨーイングを記述する運動方程式)と、(17)式(車体11のローリングを記述する運動方程式)と、(18)式、(19)式(台車12aに配置されたヨーダンパ、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイングを記述する運動方程式)と、(20)式、(21)式(台車12aに配置された空気バネ(枕バネ)、台車12bに配置された空気バネ(枕バネ)のローリングを記述する運動方程式)については、これらをそのまま用いて状態方程式を構成する。
[0075]
 一方、(1)式~(4)式(輪軸13a~13dの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式)と、(11)式、(12)式(台車12a、12bのヨーイングを記述する運動方程式)には、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψ w1~ψ w4や角速度ψ w1・~ψ w4・が含まれる。(1)式~(4)式および(11)式、(12)式からこれらの変数を消去したものを用いて状態方程式を構成する。
[0076]
 まず、輪軸13a~13dにおける前後方向力T ~T は、以下の(22)式~(25)式で表される。このように、前後方向力T ~T は、輪軸のヨーイング方向の角変位ψ w1~ψ w4と、当該輪軸が設けられる台車のヨーイング方向の角変位ψ t1~ψ t2との差に応じて定まる。
[0077]
[数11]


[0078]
 以下の(26)式~(29)式のように、変換変数e ~e を定義する。このように、変換変数e ~e は、台車のヨーイング方向の角変位ψ t1~ψ t2と輪軸のヨーイング方向の角変位ψ w1~ψ w4との差で定義される。変換変数e ~e は、台車のヨーイング方向の角変位ψ t1~ψ t2と輪軸のヨーイング方向の角変位ψ w1~ψ w4とを相互に変換するための変数である。
[0079]
[数12]


[0080]
 (26)式~(29)式を式変形すると、以下の(30)式~(33)式が得られる。
[0081]
[数13]


[0082]
 (30)式~(33)式を、(1)式~(4)式の輪軸13a~13dの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式に代入すると、以下の(34)式~(37)式が得られる。
[0083]
[数14]


[0084]
 このように、(1)式~(4)式(輪軸13a~13dの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式)を、変換変数e ~e を用いて表現することで、当該運動方程式に含まれていた輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψ w1~ψ w4を消去することができる。
[0085]
 (22)式~(25)式を、(11)式、(12)式(台車12a、12bのヨーイングを記述する運動方程式)に代入すると、以下の(38)式、(39)式が得られる。
[0086]
[数15]


[0087]
 このように、(11)式、(12)式(台車12a、12bのヨーイングを記述する運動方程式)を、前後方向力T ~T を用いて表現することで、当該運動方程式に含まれていた輪軸13a~13dのヨーイング方向における角変位ψ w1~ψ w4および角速度ψ w1・~ψ w4・を消去できる。
[0088]
 また、(26)式~(29)式を、(22)式~(25)式に代入すると、以下の(40)式~(43)式が得られる。
[0089]
[数16]


[0090]
 以上のように本実施形態では、(34)式~(37)式のようにして輪軸13a~13dの横振動(左右方向における運動)を記述する運動方程式を表すと共に、(38)式、(39)式のようにして台車12a、12bのヨーイングを記述する運動方程式を表す。(34)式~(39)式を用いて状態方程式を構成する。また、(40)式~(43)式は、常微分方程式である。当該常微分方程式の解である変換変数e ~e の実績値は、輪軸13a~13dにおける前後方向力T ~T の値を用いることにより求めることができる。ここで、前後方向力T ~T の値は、後述する第1の周波数調整部503により、前後方向力の測定値の時系列データから鉄道車両が軌道の曲線部を走行することに起因して生じる低周波成分の信号強度が低減されたものである。
[0091]
 このようにして求めた変換変数e ~e の実績値を、(34)式~(37)式に与える。また、輪軸13a~13dにおける前後方向力T ~T の値を(38)式、(39)式に与える。ここで、前後方向力T ~T の値は、後述する第1の周波数調整部503により、前後方向力の測定値の時系列データから鉄道車両が軌道の曲線部を走行することに起因して生じる低周波成分の信号強度が低減されたものである。
[0092]
 本実施形態では、以下の(44)式に示す変数を状態変数とし、(9)式、(10)式、(13)式~(21)式、(34)式~(39)式の運動方程式を用いて状態方程式を構成する。
[0093]
[数17]


[0094]
 記憶部501は、例えば、以上のようにして構成される状態方程式を、オペレータによるユーザインターフェース608の操作に基づいて入力し、記憶する。
[0095]
 次に、観測方程式について説明する。
 本実施形態では、車体11の左右方向における加速度、台車12a、12bの左右方向における加速度、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度を観測変数とする。この観測変数は、後述するカルマンフィルタによるフィルタリングの観測変数である。本実施形態では、(34)式~(37)式、(9)式、(10)式、および(15)式(横振動を記述する運動方程式)を用いて観測方程式を構成する。
 記憶部501は、例えば、このようにして構成される観測方程式を、オペレータによるユーザインターフェース608の操作に基づいて入力し、記憶する。
[0096]
 以上のようにして、状態方程式および観測方程式が検査装置500に記憶された後に、データ取得部502、第1の周波数調整部503、状態変数導出部504、第2の周波数調整部505、軌道状態導出部506、および出力部507が起動する。即ち、図7のフローチャートによる処理は、状態方程式および観測方程式が検査装置500に記憶された後に開始する。
[0097]
[データ取得部502、S701]
 データ取得部502は、前後方向力の測定値の時系列データを取得する。前後方向力の測定の方法は、前述した通りである。データ取得部502は、例えば、前後方向力を測定するための歪ゲージの測定値を用いて前後方向力を演算する演算装置との通信を行うことにより、前後方向力の測定値の時系列データを取得することができる。尚、データ取得部502は、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データを取得しない。
[0098]
[第1の周波数調整部503、S702]
 第1の周波数調整部503は、データ取得部502により取得された前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減(好ましくは除去)する。この低周波成分の信号は、鉄道車両が、曲率が0(ゼロ)の直線軌道を走行している場合には計測されないが、鉄道車両が、曲線軌道を走行している場合に計測される信号である。即ち、鉄道車両が曲線軌道を走行している場合に計測される信号は、鉄道車両が曲率が0(ゼロ)の直線軌道を走行している場合に計測される信号に、この低周波成分の信号が重畳された信号と見なすことができる。
[0099]
 本発明者らは、自己回帰モデル(AR(Auto-regressive)モデル)を修正したモデルを考案した。そして、本発明者らは、このモデルを用いて、前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減することに想到した。以下の説明では、本発明者らが考案したモデルを、修正自己回帰モデルと称する。これに対し、公知の自己回帰モデルを、単に自己回帰モデルと称する。以下、修正自己回帰モデルの一例について説明する。
[0100]
 時刻k(1≦k≦M)における物理量yの時系列データの値をy とする。Mは、物理量yの時系列データがどの時刻までのデータを含むかを示す数であり、予め設定されている。以下の説明では、物理量の時系列データを必要に応じてデータyと略称する。データyの値y を近似する自己回帰モデルは、例えば、以下の(45)式のようになる。(45)式に示すように、自己回帰モデルとは、データyにおける時刻k(m+1≦k≦M)の物理量の予測値y^ を、データyにおけるその時刻kよりも前の時刻k-l(1≦l≦m)の物理量の実績値y k-lを用いて表す式である。尚、y^ は、(45)式において、y の上に^を付けて表記したものである。
[0101]
[数18]


[0102]
 (45)式におけるαは、自己回帰モデルの係数である。mは、自己回帰モデルにおいて時刻kにおけるデータyの値y を近似するために用いられるデータyの値の数であって、その時刻kよりも前の連続する時刻k-1~k-mにおけるデータyの値y k-1~y k-mの数である。mは、M未満の整数である。mとして、例えば、1500を用いることができる。
[0103]
 続いて、最小二乗法を用いて、自己回帰モデルによる時刻kにおける物理量の予測値y^ が、値y に近似するための条件式を求める。自己回帰モデルによる時刻kにおける物理量の予測値y^ が値y に近似するための条件として、例えば、自己回帰モデルによる時刻kにおける物理量の予測値y^ と値y との二乗誤差を最小化するとする条件を採用することができる。即ち、自己回帰モデルによる時刻kにおける物理量の予測値y^ を値y に近似するために最小二乗法を用いる。以下の(46)式は、自己回帰モデルによる時刻kにおける物理量の予測値y^ を値y との二乗誤差を最小にするための条件式である。
[0104]
[数19]


[0105]
 (46)式より、以下の(47)式の関係が成り立つ。
[0106]
[数20]


[0107]
 また、(47)式を変形(行列表記)することで、以下の(48)式が得られる。
[0108]
[数21]


[0109]
 (48)式におけるR jlはデータyの自己相関と呼ばれるもので、以下の(49)式で定義される値である。このときの|j-l|を時差という。
[0110]
[数22]


[0111]
 (48)式を基に、以下の(50)式を考える。(50)式は、自己回帰モデルによる時刻kにおける物理量の予測値y^ と、その予測値y^ に対応する時刻kにおける物理量の値y と、の誤差を最小化する条件から導出される方程式である。(50)式は、ユール・ウォーカー(Yule-Walker)方程式と呼ばれる。また、(50)式は、自己回帰モデルの係数から成るベクトルを変数ベクトルとする線形方程式である。(50)式における左辺の定数ベクトルは、時差が1からmまでのデータyの自己相関を成分とするベクトルである。以下の説明では、(50)式における左辺の定数ベクトルを必要に応じて自己相関ベクトルと称する。また、(50)式における右辺の係数行列は、時差が0からm-1までのデータyの自己相関を成分とする行列である。以下の説明では、(50)式における右辺の係数行列を必要に応じて自己相関行列と称する。
[0112]
[数23]


[0113]
 また、(50)式における右辺の自己相関行列(R jlで構成されるm×mの行列)を、以下の(51)式のように、自己相関行列Rと表記する。
[0114]
[数24]


[0115]
 一般に、自己回帰モデルの係数を求める際には、(50)式を係数αについて解くという方法が用いられる。(50)式では、自己回帰モデルで導出される時刻kにおける物理量の予測値y^ が、その時刻kにおける物理量の値y にできるだけ近づくように係数αを導出する。よって、自己回帰モデルの周波数特性には、各時刻におけるデータyの値y に含まれる多数の周波数成分が含まれる。
[0116]
 そこで、本発明者らは、自己回帰モデルの係数αに乗算される自己相関行列Rに着目し、鋭意検討した。その結果、本発明者らは、自己相関行列Rの固有値の一部を用いて、データyに含まれる高周波成分の影響を低減することができることを見出した。即ち、本発明者らは、低周波成分が強調されるように自己相関行列Rを書き換えることができることを見出した。
[0117]
 以下に、このことの具体例を説明する。
 自己相関行列Rを特異値分解する。自己相関行列Rの要素は、対称である。従って、自己相関行列Rを特異値分解すると以下の(52)式のように、直交行列Uと、対角行列Σと、直交行列Uの転置行列との積となる。
[0118]
[数25]


[0119]
 (52)式の対角行列Σは、以下の(53)式に示すように、対角成分が自己相関行列Rの固有値となる行列である。対角行列Σの対角成分を、σ 11、σ 22、・・・、σ mmとする。また、直交行列Uは、各列成分ベクトルが自己相関行列Rの固有ベクトルとなる行列である。直交行列Uの列成分ベクトルを、u 、u 、・・・、u とする。自己相関行列Rの固有ベクトルu に対する固有値がσ jjという対応関係がある。自己相関行列Rの固有値は、自己回帰モデルによる時刻kにおける物理量の予測値y^ の時間波形に含まれる各周波数の成分の強度を反映する変数である。
[0120]
[数26]


[0121]
 自己相関行列Rの特異値分解の結果から得られる対角行列Σの対角成分であるσ 11、σ 22、・・・、σ mmの値は、数式の表記を簡略にするために降順とする。(53)式に示す自己相関行列Rの固有値のうち、最大のものからs個の固有値を用いて、以下の(54)式のように、行列R’を定義する。sは、1以上且つm未満の数である。本実施形態では、sは、予め定められる。行列R’は、自己相関行列Rの固有値のうちs個の固有値を用いて自己相関行列Rを近似した行列である。
[0122]
[数27]


[0123]
 (54)式における行列U は、(52)式の直交行列Uの左からs個の列成分ベクトル(使用される固有値に対応する固有ベクトル)により構成されるm×s行列である。つまり、行列U は、直交行列Uから左のm×sの要素を切り出して構成される部分行列である。また、(54)式におけるU は、U の転置行列である。U は、(52)式の行列U の上からs個の行成分ベクトルにより構成されるs×m行列である。(54)式における行列Σ は、(52)式の対角行列Σの左からs個の列と、上からs個の行により構成されるs×s行列である。つまり、行列Σ は、対角行列Σから左上のs×sの要素を切り出して構成される部分行列である。
 行列Σ および行列U を行列要素で表現すれば、以下の(55)式のようになる。
[0124]
[数28]


[0125]
 自己相関行列Rの代わりに行列R’を用いることで、(50)式の関係式を、以下の(56)式のように書き換える。
[0126]
[数29]


[0127]
 (56)式を変形することで、係数αを求める式として、以下の(57)式が得られる。(57)式によって求められる係数αを用いて、(45)式により、時刻kにおける物理量の予測値y^ を算出するモデルが「修正自己回帰モデル」である。
[0128]
[数30]


[0129]
 ここでは、対角行列Σの対角成分であるσ 11、σ 22、・・・、σ mmの値を降順とする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、係数αの算出過程において対角行列Σの対角成分は降順である必要はない。その場合には、行列U は、直交行列Uから左のm×sの要素を切り出して構成される部分行列ではなく、使用される固有値に対応する列成分ベクトル(固有ベクトル)を切り出して構成される部分行列になる。また、行列Σ は、対角行列Σから左上のs×sの要素を切り出して構成される部分行列ではなく、修正自己回帰モデルの係数の決定に利用される固有値を対角成分とするように切り出される部分行列になる。
[0130]
 (57)式は、修正自己回帰モデルの係数の決定に利用される方程式である。(57)式の行列U は、自己相関行列Rの特異値分解により得られる直交行列Uの部分行列であって、修正自己回帰モデルの係数の決定に利用される固有値に対応する固有ベクトルを列成分ベクトルとする行列(第3の行列)である。また、(57)式の行列Σ は、自己相関行列Rの特異値分解により得られる対角行列の部分行列であって、修正自己回帰モデルの係数の決定に利用される固有値を対角成分とする行列(第2の行列)である。(57)式の行列U Σ は、行列Σ と行列U とから導出される行列(第1の行列)である。
[0131]
 (57)式の右辺を計算することにより、修正自己回帰モデルの係数αが求まる。以上、修正自己回帰モデルの係数αの導出方法の一例について説明した。ここでは、修正自己回帰モデルの基となる自己回帰モデルの係数の導出方法を、直感的に分かり易いように、時刻kにおける物理量の予測値y^ に対して最小二乗法を用いる方法とした。しかしながら、一般的には確率過程という概念を用いて自己回帰モデルを定義し、その係数を導出する方法が知られている。その場合に、自己相関は、確率過程(母集団)の自己相関で表現される。この確率過程の自己相関は、時差の関数として表される。従って、本実施形態におけるデータyの自己相関は、確率過程の自己相関を近似するものであれば他の計算式で算出した値に代えてもよい。例えば、R 22~R mmは、時差が0(ゼロ)の自己相関であるが、これらをR 11に置き換えてもよい。
[0132]
 (53)式に示す自己相関行列Rから抽出する固有値の数sは、例えば、自己相関行列Rの固有値の分布から決定することができる。
 ここでは、前述した修正自己回帰モデルの説明における物理量は、前後方向力になる。前後方向力の値は、鉄道車両の状態等に応じて変動する。
 そこで、まず、鉄道車両を軌道16上で走行させて、前後方向力の測定値についてのデータyを得る。得られたデータy毎に、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを求める。この自己相関行列Rについて(52)式で表される特異値分解を行うことによって自己相関行列Rの固有値を求める。図8は、自己相関行列Rの固有値の分布の一例を示す図である。図8では、輪軸13aにおける前後方向力T の測定値yの時系列データのそれぞれについての自己相関行列Rを特異値分解して得られた固有値σ 11~σ mmを昇順に並べ替えて、プロットしている。図8の横軸は、固有値のインデックスであり、縦軸は、固有値の値である。
[0133]
 図8に示す例では、他よりも顕著に高い値をもつ固有値が1つある。また、前記顕著に高い値もつ固有値ほどではないが、他と比べると比較的大きな値を持ち0(ゼロ)とみなせない固有値が2つある。このことから、(53)式に示す自己相関行列Rから抽出する固有値の数sとして、例えば、2または3を採用することができる。どちらを採用しても結果に顕著な差異は生じない。尚、鉄道車両の構成や軌道の構成等により、他よりも顕著に高い値をもつ固有値の数は変わり得る。従って、自己相関行列Rから抽出する固有値の数sは、1以上であれば、これらの値に限定されない。
[0134]
 第1の周波数調整部503は、データ取得部502で前後方向力の測定値yの時系列データの時刻kにおける値y が所定のサンプリング周期で取得されるたびに以下の処理を行う。
 まず、第1の周波数調整部503は、前後方向力の測定値yの時系列データと、予め設定されている数M、mと、に基づいて、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを生成する。
[0135]
 次に、第1の周波数調整部503は、自己相関行列Rを特異値分解することで、(52)式の直交行列Uおよび対角行列Σを導出し、対角行列Σから自己相関行列Rの固有値σ 11~σ mmを導出する。
 次に、第1の周波数調整部503は、自己相関行列Rの複数の固有値σ 11~σ mmのうち、最大のものからs個の固有値σ 11~σ ssを、修正自己回帰モデルの係数αを求めるのに利用する自己相関行列Rの固有値として選択する。
 次に、第1の周波数調整部503は、前後方向力の測定値yの時系列データと、固有値σ 11~σ ssと、自己相関行列Rの特異値分解により得られた直交行列Uと、に基づいて、(57)式を用いて、修正自己回帰モデルの係数αを決定する。
[0136]
 そして、第1の周波数調整部503は、修正自己回帰モデルの係数αと、前後方向力の測定値yの時系列データと、に基づいて、(45)式により、前後方向力の測定値yの時系列データの時刻kにおける予測値y^ を導出する。前後方向力の予測値y^ の時系列データは、前後方向力の測定値yの時系列データに含まれる低周波成分を抽出した時系列データになる。
[0137]
 図9は、前後方向力の測定値の時系列データ(測定値)と、前後方向力の予測値の時系列データ(計算値)の一例を示す図である。尚、本実施形態では、4つの前後方向力T ~T の測定値が得られる。即ち、前後方向力について4つのデータyが得られる。図9では、これら4つのデータyのそれぞれにおける測定値および計算値を示す。図9の横軸は、基準の時刻を0(ゼロ)とした場合の当該基準の時刻からの経過時間(秒)であり、前後方向力T ~T の測定時刻・計算時刻を表す。縦軸は、前後方向力T ~T (Nm)である。
[0138]
 図9において、輪軸13aにおける前後方向力T の計算値は、概ね15秒~35秒において、バイアスがかかっている。即ち、輪軸13aにおける前後方向力T の計算値は、概ね15秒~35秒において、他の時間よりも大きな値を示す。この期間は、輪軸13aが曲線軌道を通過する期間に対応する。輪軸13bにおける前後方向力T の計算値、輪軸13cにおける前後方向力T の計算値、および輪軸13dにおける前後方向力T の計算値についても、輪軸13aにおける前後方向力T の計算値と同様に、輪軸13b、13c、13dが曲線軌道を通過する期間にバイアスがかかっている。
[0139]
 従って、図9において、輪軸13a~13dにおける前後方向力T ~T の測定値から計算値を除けば、前後方向力T ~T の信号のうち、輪軸13a~13dが曲線軌道を通過することに起因する低周波成分を除くことができる。即ち、図9において、輪軸13a~13dにおける前後方向力T ~T の測定値から計算値を除けば、輪軸13a~13dが曲線軌道を通過した場合の前後方向力T ~T として、輪軸13a~13dが直線軌道を通過した場合と同等の前後方向力を得ることができる。
[0140]
 そこで、第1の周波数調整部503は、前後方向力の測定値y の時系列データ(データy)から、前後方向力の予測値y^ の時系列データを減算する。以下の説明では、前後方向力の測定値y の時系列データ(データy)から、前後方向力の予測値y^ の時系列データを減算した時系列データを、必要に応じて前後方向力の高周波成分の時系列データと称する。また、前後方向力の高周波成分の時系列データの各サンプリング時刻における値を、必要に応じて前後方向力の高周波成分の値と称する。
[0141]
 図10は、前後方向力の高周波成分の時系列データの一例を示す図である。図10の縦軸は、前後方向力T 、T 、T 、T の高周波成分の時系列データを示す。即ち、図10の縦軸に示す前後方向力T 、T 、T 、T の高周波成分は、それぞれ、図9に示した、輪軸13a、13b、13c、13dにおける前後方向力T 、T 、T 、T の測定値から計算値を減算することにより得られるものである。また、図10の横軸は、図9の横軸と同様に、基準の時刻を0(ゼロ)とした場合の当該基準の時刻からの経過時間(秒)であり、前後方向力T ~T の測定時刻・計算時刻を表す。
 第1の周波数調整部503は、以上のようにして、前後方向力T ~T の高周波成分の時系列データを導出する。
[0142]
[状態変数導出部504、S703]
 状態変数導出部504は、観測方程式を記憶部501により記憶された観測方程式とし、状態方程式を記憶部501により記憶された状態方程式として、カルマンフィルタにより、(44)式に示す状態変数の推定値を決定する。このとき、状態変数導出部504は、第1の周波数調整部503で生成された前後方向力T ~T の高周波成分の時系列データを用いる。本実施形態では、状態変数の推定値を決定する際に、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データのうち、少なくとも前後方向力T ~T の測定値が得られた期間における時系列データを用いない。
[0143]
 カルマンフィルタは、データ同化を行う手法の一つである。即ち、カルマンフィルタは、観測できる変数(観測変数)の測定値と推定値との差異が小さく(最小に)なるように、未観測の変数(状態変数)の推定値を決定する手法の一例である。状態変数導出部504は、観測変数の測定値と推定値との差異が小さく(最小に)なるカルマンゲインを求め、そのときの未観測の変数(状態変数)の推定値を求める。カルマンフィルタにおいては、以下の(58)式の観測方程式と、以下の(59)式の状態方程式を用いる。
 Y=HX+V ・・・(58)
 X・=ΦX+W ・・・(59)
[0144]
 (58)式において、Yは、観測変数の測定値を格納するベクトルである。Hは、観測モデルである。Xは、状態変数を格納するベクトルである。Vは、観測ノイズである。(59)式において、X・は、Xの時間微分を示す。Φは、線形モデルである。Wは、システムノイズである。尚、カルマンフィルタ自体は、公知の技術で実現できるので、その詳細な説明を省略する。
[0145]
 特許文献1に記載の技術では、観測変数の測定値として与えられる値として測定値(車体11の左右方向における加速度の測定値、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値)をそのまま用いる。これに対し、本実施形態では、[第1の着想]の項において説明したように、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値として、測定値ではなく、予め設定された一定値を与える。本実施形態では、加速度の時系列データの平均値が0(ゼロ)であるとして、観測変数として与える一定値を全て0(ゼロ)とする。従って、本実施形態では、状態変数導出部504は、データ同化を行うに際して、観測変数の推定値の、一定値(ここでは0(ゼロ))に対する誤差が最小または当該誤差の期待値が最小になるように状態変数の推定値を導出することになる。
 状態変数導出部504は、(44)式に示す状態変数の推定値を所定のサンプリング周期で決定することにより、(44)式に示す状態変数の推定値の時系列データを生成する。
[0146]
[第2の周波数調整部505、S704]
 第1の周波数調整部503により、前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度が十分に除去されていないと、状態変数導出部504により生成される状態変数の推定値の時系列データに、鉄道車両が曲線軌道を走行することに起因する低周波成分の信号が残る虞がある。そこで、第2の周波数調整部505は、状態変数導出部504により生成された状態変数の推定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減(好ましくは除去)する。尚、第1の周波数調整部503により、前後方向力の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度が十分に除去されるように、(53)式に示す自己相関行列Rから抽出する固有値の数sを定めることができる場合には、第2の周波数調整部505の処理は不要になる。
[0147]
 本実施形態では、第2の周波数調整部505は、第1の周波数調整部503と同様に、修正自己回帰モデルを用いて、状態変数の推定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減する。
[0148]
 第2の周波数調整部505は、所定のサンプリング周期で状態変数毎に以下の処理を行う。
 ここでは、前述した修正自己回帰モデルの説明における物理量は、状態変数になる。即ち、状態変数のデータyは、状態変数導出部504により生成された状態変数の推定値の時系列データになる。状態変数の推定値は、何れも鉄道車両の状態に応じて変動する。
 まず、第2の周波数調整部505は、状態変数の推定値のデータyと、予め設定されている数M、mと、に基づいて、(49)式と(51)式とを用いて自己相関行列Rを生成する。
[0149]
 次に、第2の周波数調整部505は、自己相関行列Rを特異値分解することで、(52)式の直交行列Uおよび対角行列Σを導出し、対角行列Σから自己相関行列Rの固有値σ 11~σ mmを導出する。
 次に、第2の周波数調整部505は、自己相関行列Rの複数の固有値σ 11~σ mmのうち、最大のものからs個の固有値σ 11~σ ssを、修正自己回帰モデルの係数αを求めるのに利用する自己相関行列Rの固有値として選択する。sは、状態変数毎に予め定められる。各状態変数の推定値のデータyは、例えば、鉄道車両を軌道16上で走行させた状態で、これまで説明してきたようにして得られる。そして、第2の周波数調整部505は、自己相関行列Rの固有値の分布を状態変数毎に個別に作成する。第2の周波数調整部505は、この自己相関行列Rの固有値の分布から、(53)式に示す自己相関行列Rから抽出する固有値の数sを状態変数のそれぞれについて決定する。
[0150]
 次に、第2の周波数調整部505は、状態変数の推定値のデータyと、固有値σ 11~σ ssと、自己相関行列Rの特異値分解により得られた直交行列Uと、に基づいて、(57)式を用いて、修正自己回帰モデルの係数αを決定する。
[0151]
 そして、第2の周波数調整部505は、修正自己回帰モデルの係数αと、状態変数の推定値のデータyと、に基づいて、(45)式により、状態変数の推定値のデータyの時刻kにおける予測値y^ を導出する。状態変数の予測値y^ の時系列データは、状態変数の推定値のデータyに含まれる低周波成分を抽出した時系列データになる。
[0152]
 そして、第2の周波数調整部505は、状態変数の推定値のデータyから、状態変数の予測値y^ の時系列データを減算する。以下の説明では、状態変数の推定値のデータyから、状態変数の予測値y^ の時系列データを減算した時系列データの各サンプリング時刻における値を、必要に応じて状態変数の高周波成分の値と称する。
[0153]
[軌道状態導出部506、S705]
 (5)式~(8)式の輪軸13a~13dのヨーイングを記述する運動方程式に、(22)式~(25)式を代入すると、以下の(60)式~(63)式が得られる。
[0154]
[数31]


[0155]
 本実施形態では、(60)式~(63)式に示すようにして、前後方向力T ~T と輪軸13a~13dの位置での通り狂い量y R1~y R4との関係を示す関係式が定められる。
 軌道状態導出部506は、(30)式~(33)式より、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψ w1~ψ w4の推定値を算出する。そして、軌道状態導出部506は、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψ w1~ψ w4の推定値と、第2の周波数調整部505で生成された状態変数の高周波成分の値と、第1の周波数調整部503により生成された前後方向力T ~T の高周波成分の値とを、(60)式~(63)式に与えることにより、輪軸13a~13dの位置での通り狂い量y R1~y R4を算出する。ここで使用される状態変数は、台車12a~12bの左右方向の変位y t1~y t2、台車12a~12bの左右方向の速度y t1・~y t2・、輪軸13a~13dの左右方向の変位y w1~y w4、および輪軸13a~13dの左右方向の速度y w1・~y w4・である。軌道状態導出部506は、以上のような通り狂い量y R1~y R4の算出を所定のサンプリング周期で行うことにより、通り狂い量y R1~y R4の時系列データを得る。
[0156]
 そして、軌道状態導出部506は、通り狂い量y R1~y R4から、最終的な通り狂い量y を算出する。例えば、軌道状態導出部506は、通り狂い量y R2~y R4の時系列データの位相を、通り狂い量y R1の時系列データの位相に合わせる。即ち、軌道状態導出部506は、輪軸13aと輪軸13b~13dとの前後方向の距離と、鉄道車両の速度とから、或る位置を輪軸13aが通過する時刻に対する、当該位置を輪軸13b~13dが通過する時刻の遅れ時間を算出する。軌道状態導出部506は、通り狂い量y R2~y R4の時系列データに対して、この遅れ時間だけ位相をずらす。
[0157]
 軌道状態導出部506は、位相を合わせた通り狂い量y R1~y R4の同じサンプリング時刻における値の和の算術平均値を当該サンプリング時刻における最終的な通り狂い量y として算出する。軌道状態導出部506は、このような計算を各サンプリング時刻において行うことにより、最終的な通り狂い量y の時系列データを得る。通り狂い量y R2~y R4の位相を、通り狂い量y R1の位相に合わせるので、通り狂い量y R1~y R4の時系列データに共通して存在する外乱因子を相殺することができる。
[0158]
 尚、軌道状態導出部506は、位相を合わせた通り狂い量y R1~y R4のそれぞれについて移動平均をとり(即ち、ローパスフィルタを通し)、当該移動平均をとった通り狂い量y R1~y R4から、最終的な通り狂い量y を算出してもよい。
 また、軌道状態導出部506は、位相を合わせた通り狂い量y R1~y R4の同じサンプリング時刻における値のうち、最大値と最小値を除く2つの値の算術平均値を最終的な通り狂い量y として算出してもよい。
[0159]
 検査装置500は、鉄道車両が、通り狂い量の導出対象の走行区間を走行している間にデータ取得部502により取得された各サンプリング時刻における前後方向力の測定値の時系列データを用いて、第1の周波数調整部503、状態変数導出部504、第2の周波数調整部505、および軌道状態導出部506の処理を実行する。
[0160]
 このようにして、軌道状態導出部506は、通り狂い量の導出対象の走行区間を鉄道車両が走行している間の各サンプリング時刻における通り狂い量y を得ることができる。軌道状態導出部506は、各サンプリング時刻に鉄道車両の走行位置を、例えば、鉄道車両の走行速度と、鉄道車両の走行開始からの経過時間とに基づいて算出する。鉄道車両の走行位置を、例えば、輪軸13aの位置とすることができる。軌道状態導出部506は、各サンプリング時刻における通り狂い量y と、各サンプリング時刻に鉄道車両の走行位置とに基づいて、当該鉄道車両の各走行位置おける最終的な通り狂い量y を導出する。
[0161]
 尚、軌道状態導出部506は、各サンプリング時刻に鉄道車両の走行位置を、必ずしも前述したようにして算出する必要はない。例えば、軌道状態導出部506は、GPS(Global Positioning System)を用いて、各サンプリング時刻に鉄道車両の走行位置を求めてもよい。
[0162]
[出力部507、S706]
 出力部507は、軌道状態導出部506により算出された最終的な通り狂い量y の情報を出力する。このとき出力部507は、最終的な通り狂い量y が、予め設定された値よりも大きい場合には、軌道16が異常であることを示す情報を出力してもよい。出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、およびの内部または外部の記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを採用することができる。
[0163]
[まとめ]
 以上のように本実施形態では、検査装置500は、前後方向力T ~T の測定値と、変換変数e ~e の実績値と、をカルマンフィルタに与えて、状態変数(y w1・~y w4・、y w1~y w4、y t1・~y t2・、y t1~y t2、ψ t1・~ψ t2・、ψ t1~ψ t2、φ t1・~φ t2・、φ t1~φ t2、y ・、y 、ψ ・、ψ 、φ ・、φ 、ψ y1、ψ y2、φ a1、φ a2)を導出する。このとき、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値(車体11、台車12a、12b、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度)として予め設定された一定値(例えば0(ゼロ))が用いられる。次に、検査装置500は、前記状態変数に含まれる台車12a、12bのヨーイング方向における回動量(角変位)ψ t1~ψ t2と、変換変数e ~e の実績値と、を用いて、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψ w1~ψ w4を導出する。次に、検査装置500は、輪軸13a~13dのヨーイングを記述する運動方程式に、輪軸13a~13dのヨーイング方向における回動量(角変位)ψ w1~ψ w4と、前記状態変数と、前後方向力T ~T の測定値と、を代入して、輪軸13a~13dの位置での通り狂い量y R1~y R4を導出する。そして、検査装置500は、通り狂い量y R1~y R4から、最終的な通り狂い量y を導出する。従って、車体11、台車12a、12b、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値を用いずに、通り狂い量y R1~y R4(最終的な通り狂い量y )を、精度を大きく落とすことなく導出することができる。従って、通り狂い量y R1~y R4(最終的な通り狂い量y )を導出する際に用いるセンサの数を低減することができる。
[0164]
 また、本実施形態では、検査装置500は、前後方向力の測定値yの時系列データから、自己相関行列Rを生成し、自己相関行列Rを特異値分解して得られた固有値のうち、最大のものからs個の固有値を用いて、前後方向力の測定値yの時系列データを近似する修正自己回帰モデルの係数αを決定する。従って、前後方向力の測定値yの時系列データに含まれる低周波成分の信号が残り、高周波成分が残らないように、係数αを決定することができる。検査装置500は、時刻kにおける前後方向力の予測値y^ を、このようにして係数αが定められた修正自己回帰モデルに、その時刻よりも前の時刻k-l(1≦l≦m)の前後方向力の測定値yの時系列データを与えることにより算出する。従って、カットオフ周波数を予め想定することなく、前後方向力の測定値yの時系列データから、鉄道車両の曲線軌道の走行に起因する低周波成分の信号を低減することができる。そして、検査装置500は、このようにして前後方向力T ~T の測定値の時系列データに含まれる低周波成分の信号強度を低減し、前後方向力T ~T の高周波成分の時系列データを生成する。検査装置500は、前後方向力T ~T の高周波成分の時系列データを、前後方向力T ~T と輪軸13a~13dの位置での通り狂い量y R1~y R4との関係式に与えることにより、輪軸13a~13dの位置での通り狂い量y R1~y R4を算出する。この関係式は、鉄道車両の直線軌道の走行時における運動を記述する運動方程式(即ち、軌道16(レール)の曲率半径Rを含まない式)に基づく式である。従って、曲線軌道における通り狂い量y R1~y R4(最終的な通り狂い量y )を、鉄道車両の直線軌道の走行時における運動を記述する運動方程式に基づいて、特別な測定装置を用いることなく検出することができる。
[0165]
[変形例]
 本実施形態では、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値として、予め設定された一定値を与える。この一定値は、0(ゼロ)に限定されない。例えば、検査装置500を搭載した鉄道車両または当該鉄道車両と同等の鉄道車両(当該鉄道車両と構造が同じ鉄道車両)が、通り狂い量y R1~y R4(最終的な通り狂い量y )の導出対象の軌道16を走行しているときの、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データを得て、各々の時系列データの平均値を、一定値として用いてもよい。また、これらの測定値を用いて、前述した修正自己回帰モデルにより、車体11の左右方向における加速度y^ の予測値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度y^ の予測値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の予測値y^ の時系列データを導出する。そして、それらの平均値を、一定値として用いてもよい。このようにする場合、加速度の測定を行うが、当該測定は、鉄道車両および軌道16毎に、それぞれ1回行えばよく、輪軸13a~13dにおける前後方向力T ~T の測定値が得られた期間における加速度の測定値は、状態変数の導出の際には用いられない。
[0166]
 本実施形態では、修正自己回帰モデルを用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしも、修正自己回帰モデルを用いて、前後方向力測定値yの時系列データから、鉄道車両の曲線軌道の走行に起因する低周波成分の信号を低減する必要はない。例えば、鉄道車両の曲線軌道の走行に起因する周波数帯を特定することができる場合には、ハイパスフィルタを用いて、前後方向力の測定値yの時系列データから、鉄道車両の曲線軌道の走行に起因する低周波成分の信号を低減してもよい。また、鉄道車両が走行する軌道が、(曲率が0(ゼロ)の理想的な)直線軌道、または、設計上は直線軌道であるが通り狂い量の推定精度に影響を与えない程度の曲率を有している軌道である場合には、第1の周波数調整部503および第2の周波数調整部505の処理は不要になる。
[0167]
 また、本実施形態では、位相を合わせる際の基準となる輪軸が輪軸13aである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、基準となる輪軸は、輪軸13a以外の輪軸13b、13c、または13dでもよい。
 また、本実施形態では、カルマンフィルタを用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、観測変数の推定値の、一定値に対する誤差が最小または当該誤差の期待値が最小になるように状態変数の推定値を導出するフィルタ(即ち、データ同化を行うフィルタ)を用いていれば、必ずしもカルマンフィルタを用いる必要はない。例えば、粒子フィルタを用いてもよい。尚、観測変数の推定値の、一定値に対する誤差としては、例えば、観測変数の推定値と一定値との二乗誤差が挙げられる。
[0168]
 また、本実施形態では、通り狂い量を導出する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、軌道16の状態を反映する情報として、軌道不整(軌道16の外観上の不良)を反映する情報を導出していれば、必ずしも通り狂い量を導出する必要はない。例えば、通り狂い量に加えてまたは代えて以下の(64)式~(67)式の計算を行うことにより、鉄道車両が直線軌道を走行しているときに生じる横圧(車輪とレールとの間における左右方向の応力)を導出してもよい。ただし、Q 、Q 、Q 、Q はそれぞれ、車輪14a、14b、14c、14dにおける横圧である。f はスピンクリープ係数を表す。
[0169]
[数32]


[0170]
 また、本実施形態では、車体11の状態を表す状態変数を含める場合を例に挙げて説明した。しかしながら、車体11は、車輪14a~14dと軌道16との間の作用力(クリープ力)による振動の伝搬が最後に伝わる部分である。従って、例えば、車体11においてその伝搬による影響が小さいと判断される場合には、車体11の状態を表す状態変数を含めなくてもよい。このようにする場合、(1)式~(21)式の運動方程式のうち、(15)式~(17)式(車体11の横振動、ヨーイング、ローリングを記述する運動方程式)と、(18)式、(19)式(台車12aに配置されたヨーダンパ、台車12bに配置されたヨーダンパのヨーイングを記述する運動方程式)は不要になる。また、(1)式~(21)式の運動方程式において、車体に関する状態量(添え字bを含む状態量)と、車体に関する状態量(添え字bを含む状態量)を含む{}内の値(例えば(21)式の左辺第3項の{φ a2-φ })を0(ゼロ)にする。
[0171]
 また、本実施形態では、台車12a、12bがボルスタレス台車である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、台車12a、12bは、ボルスタレス台車に限定されない。この他、鉄道車両の構成要素、鉄道車両が受ける力、および鉄道車両の運動の方向等に応じて、運動方程式は、適宜書き換えられる。即ち、運動方程式は、本実施形態で例示したものに限定されない。鉄道車両が、状態変数に依存しない外力を受けることを、運動方程式に表す場合、状態方程式には、当該外力を表す項が含まれることになる。
[0172]
(第2の実施形態)
 次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値(車体11の左右方向における加速度、台車12a、12bの左右方向における加速度、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度)を一定値(0(ゼロ))として、データ同化を行うフィルタ(カルマンフィルタ)を用いて状態変数を導出する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、データ同化を行わずに状態変数を導出する場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、状態変数を導出する手法(状態変数導出部504が有する機能)が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1~図10に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
[0173]
 本実施形態では、記憶部501は、状態方程式((58)式)および観測方程式((59)式)を記憶せずに、以下の(68)式の運動方程式を記憶する。
 X・=cΦX ・・・(68)
 (68)式は、(9)式、(10)式、(13)式~(21)式、(34)式~(39)式の運動方程式を(44)式に示す状態変数を用いて表現した式((68)式においてcを1とした式)を、当該式よりも状態変数の時間変化が小さくなるように変更した式の一例である。具体的に、(68)式は、(9)式、(10)式、(13)式~(21)式、(34)式~(39)式の運動方程式を(44)式に示す状態変数を用いて表現した式において、状態変数の一階時間微分(X・)の項と等号で結ばれる項に忘却係数(forgetting factor)cを乗算したものである。即ち、(68)式は、(59)式の状態方程式において、忘却係数cを導入することによってシステムノイズWを0(ゼロ)としたものである。
[0174]
 忘却係数cは、予め定められる値であり、(理論的には)0超1以下の値(0<c≦1)である。忘却係数cは、その値が小さいほど、過去の観測値を忘却するように作用するものである。(68)式においては、忘却係数cの値が小さいほど、前後方向力の測定値が、状態変数の推定値(解)に与える影響が小さくなる。このため、状態変数の推定値(解)を正確に得ようとする観点からは、忘却係数cの値は1に近いほうが望ましい。一方、忘却係数cの値が大き過ぎると、状態変数の推定値(解)が発散する可能性が高くなる。本実施形態では、データ同化を行うフィルタを用いずに、(68)式をそのまま解く。このため、状態変数の推定値(解)が発散することを抑制する必要がある。以上のような観点から、忘却係数cの値が定められる。忘却係数cは、例えば、0.0超1.0以下(0.0<c≦1.0)の値、好ましくは0.90以上1.0以下(0.90≦c≦1.0)の値、より好ましくは0.95以上1.0以下(0.95≦c≦1.0)の値、さらに好ましくは0.99以上1.0以下(0.99≦c≦1.0)の値の中から、最も好ましくは1.0が選択される。
[0175]
 但し、忘却係数cは、(68)式を解いて得られる状態変数の推定値(解)が発散しないように選択されることが必須である。(68)式を解いて得られる状態変数の推定値(解)が発散しなければ、忘却係数cの値が1.0のときの当該状態変数の推定値(解)が、最も精度の高い解となる。しかしながら、忘却係数cの値が1.0であると、(68)式を解いて得られる状態変数の推定値(解)が発散する(解が求まらない)可能性が高い。
 このような観点から、忘却係数cの上限値を1.0未満として、忘却係数cの選択を行ってもよい。即ち、忘却係数cの値は、例えば、0.0超1.0未満(0.0<c<1.0)の値、好ましくは0.90以上1.0未満(0.90≦c<1.0)の値、より好ましくは0.95以上1.0未満(0.95≦c<1.0)の値、さらに好ましくは0.99以上1.0未満(0.99≦c<1.0)の値の中から選択することができる。
 尚、忘却係数cの値が1.0である場合、(68)式は、(9)式、(10)式、(13)式~(21)式、(34)式~(39)式の運動方程式そのもの(当該運動方程式を、状態変数を用いて表現しただけのもの)となる。
[0176]
 状態変数導出部504は、第1の周波数調整部503で生成された前後方向力T ~T の高周波成分の時系列データを用いて、変換変数e ~e の実績値を導出して(34)式~(37)式に代入すると共に、第1の周波数調整部503で生成された前後方向力T ~T の高周波成分の時系列データを前後方向力T ~T の測定値として(38)式~(39)式に代入して(68)式の方程式を解くことにより、(44)式に示す状態変数の推定値を決定する。(68)式の方程式を解く手法は、例えば、公知の数値解法(オイラー法等)で実現することができる。従って、状態変数導出部504は、状態変数の推定値を導出する際に、車体11の左右方向における加速度の測定値の時系列データ、台車12a、12bの左右方向における加速度の測定値の時系列データ、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値の時系列データを用いない。また、観測方程式も用いない。
[0177]
 以上のように本実施形態では、検査装置500は、システムノイズWを0(ゼロ)とした状態方程式において、状態変数の時間微分項X・以外の項に忘却係数cが乗算された方程式に、前後方向力T ~T の測定値と、変換変数e ~e の実績値と、を与えて状態変数(y w1・~y w4・、y w1~y w4、y t1・~y t2・、y t1~y t2、ψ t1・~ψ t2・、ψ t1~ψ t2、φ t1・~φ t2・、φ t1~φ t2、y ・、y 、ψ ・、ψ 、φ ・、φ 、ψ y1、ψ y2、φ a1、φ a2)を導出する。従って、車体11、台車12a、12b、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値を用いずに、通り狂い量y R1~y R4(最終的な通り狂い量y )を、精度を大きく落とすことなく導出することができる。
 本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。状態方程式Xに依存しない外力等が運動方程式に含まれる場合、(68)式は、以下の(69)式のように表される。
 X・=c(ΦX+Gf) ・・・(69)
 Gは、運動方程式において、状態方程式に依存しない項を格納するベクトルである。fは、ベクトルGに対応する行列である。
[0178]
(第3の実施形態)
 次に、第3の実施形態を説明する。
 第1、第2の実施形態では、鉄道車両に搭載した検査装置500が最終的な通り狂い量y を算出する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、検査装置500の一部の機能が実装されたデータ処理装置が、指令所に配置される。このデータ処理装置は、鉄道車両から送信される計測データを受信し、受信した計測データを用いて最終的な通り狂い量y を算出する。このように、本実施形態では、第1、第2の実施形態の検査装置500が有する機能を、鉄道車両と指令所とで分担して実行する。本実施形態と第1、第2の実施形態とは、このことによる構成および処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1、第2の実施形態と同一の部分については、図1~図10に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。尚、本実施形態は、第1、第2の実施形態の何れにも適用することができる。
[0179]
 図11は、検査システムの構成の一例を示す図である。図11において、検査システムは、データ収集装置1110a、1110bと、データ処理装置1120とを有する。図11には、データ収集装置1110a、1110bおよびデータ処理装置1120の機能的な構成の一例も示す。尚、データ収集装置1110a、1110bおよびデータ処理装置1120のハードウェアは、例えば、図6に示すもので実現することができる。従って、データ収集装置1110a、1110bおよびデータ処理装置1120のハードウェアの構成の詳細な説明を省略する。
[0180]
 鉄道車両のそれぞれには、データ収集装置1110a、1110bが1つずつ搭載される。データ処理装置1120は、指令所に配置される。指令所は、例えば、複数の鉄道車両の運行を集中管理する。
[0181]
[データ収集装置1110a、1110b]
 データ収集装置1110a、1110bは、同じもので実現することができる。データ収集装置1110a、1110bは、データ取得部1111a、1111bと、データ送信部1112a、1112bとを有する。
[0182]
<データ取得部1111a、1111b>
 データ取得部1111a、1111bは、データ取得部502と同じ機能を有する。即ち、データ取得部1111a、1111bは、データ取得部502と同様に、前後方向力の測定値の時系列データを取得する。前後方向力の測定値を得るための構成は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
[0183]
[データ送信部1112a、1112b]
 データ送信部1112a、1112bは、データ取得部1111a、1111bで取得された前後方向力の測定値の時系列データを、データ処理装置1120に送信する。本実施形態では、データ送信部1112a、1112bは、データ取得部1111a、1111bで取得された前後方向力の測定値の時系列データを、無線通信により、データ処理装置1120に送信する。このとき、データ送信部1112a、1112bは、データ収集装置1110a、1110bが搭載されている鉄道車両の識別番号を、データ取得部1111a、1111bで取得された前後方向力の測定値の時系列データに付加する。このようにデータ送信部1112a、1112bは、鉄道車両の識別番号が付加された前後方向力の測定値の時系列データを送信する。
[0184]
<データ処理装置1120>
[データ受信部1121]
 データ受信部1121は、データ送信部1112a、1112bにより送信された前後方向力の測定値の時系列データを受信する。この前後方向力の測定値の時系列データには、当該前後方向力の測定値の時系列データの送信元である鉄道車両の識別番号が付加されている。
[0185]
[データ記憶部1122]
 データ記憶部1122は、データ受信部1121で受信された前後方向力の測定値の時系列データを記憶する。データ記憶部1122は、鉄道車両の識別番号ごとに前後方向力の測定値の時系列データを記憶する。データ記憶部1122は、鉄道車両の現在の運行状況と、前後方向力の測定値の時系列データの受信時刻とに基づいて、当該前後方向力の測定値の時系列データの受信時刻における鉄道車両の位置を特定し、特定した位置の情報と当該前後方向力の測定値の時系列データとを相互に関連付けて記憶する。尚、データ収集装置1110a、1110bが、鉄道車両の現在の位置の情報を収集し、取集した情報を前後方向力の測定値の時系列データに含めてもよい。
[0186]
[データ読み出し部1123]
 データ読み出し部1123は、データ記憶部1122により記憶された前後方向力の測定値の時系列データを読み出す。データ読み出し部1123は、データ記憶部1122により記憶された前後方向力の測定値の時系列データのうち、オペレータにより指定されたデータを読み出すことができる。また、データ読み出し部1123は、予め定められたタイミングで、予め定められた条件に合致する前後方向力の測定値の時系列データを読み出すこともできる。本実施形態では、データ読み出し部1123により読み出される前後方向力の測定値の時系列データは、例えば、鉄道車両の識別番号および位置の少なくとも何れか1つに基づいて決定される。
[0187]
 記憶部501、第1の周波数調整部503、状態変数導出部504、第2の周波数調整部505、軌道状態導出部506、および出力部507は、第1の実施形態と説明したものと同じである。従って、ここでは、これらの詳細な説明を省略する。尚、第1の周波数調整部503は、データ取得部502で取得された前後方向力の測定値の時系列データに代えてデータ読み出し部1123で読み出された前後方向力の測定値の時系列データを用いて、前後方向力T ~T の高周波成分の時系列データを生成する。
[0188]
<まとめ>
 以上のように本実施形態では、鉄道車両に搭載されたデータ収集装置1110a、1110bは、前後方向力の測定値の時系列データを収集してデータ処理装置1120に送信する。指令所に配置されたデータ処理装置1120は、データ収集装置1110a、1110bから受信した前後方向力の測定値の時系列データを記憶し、記憶した前後方向力の測定値の時系列データタを用いて、最終的な通り狂い量y を算出する。従って、第1、第2の実施形態で説明した効果に加え、例えば、以下の効果を奏する。即ち、データ処理装置1120は、計測データを任意のタイミングで読み出すことにより、任意のタイミングで最終的な通り狂い量y を算出することができる。また、データ処理装置1120は、同じ位置における最終的な通り狂い量y の時系列的な変化を出力することができる。また、データ処理装置1120は、複数の路線における最終的な通り狂い量y を路線ごとに出力することができる。
[0189]
<変形例>
 本実施形態では、データ収集装置1110a、1110bからデータ処理装置1120に計測データを直接送信する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、クラウドコンピューティングを利用して検査システムを構築してもよい。
 その他、本実施形態においても、第1の実施形態および第2の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
[0190]
 また、第1、第2の実施形態では、記憶部501、データ取得部502、第1の周波数調整部503、状態変数導出部504、第2の周波数調整部505、軌道状態導出部506、および出力部507が1つの装置に含まれる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。記憶部501、データ取得部502、第1の周波数調整部503、状態変数導出部504、第2の周波数調整部505、軌道状態導出部506、および出力部507の機能を複数の装置で実現してもよい。この場合、これら複数の装置を用いて検査システムが構成される。
[0191]
(計算例)
 次に、計算例を説明する。本計算例では、第1の実施形態の手法により最終的な通り狂い量y を導出することと、第2の実施形態の手法により、最終的な通り狂い量y を導出することと、を行った。第1の実施形態の手法では、データ同化の際に本来は観測変数の測定値として与えられる値(一定値)を0(ゼロ)とした。また、第2の実施形態の手法では、忘却係数cを0.9987とした。
 また、第1の実施形態の手法に対し、観測変数の測定値として与えられる値(車体11、台車12a、12b、および輪軸13a~13dの左右方向における加速度の測定値)として予め設定された一定値ではなく、そのまま測定値を与えること(即ち、特許文献1に記載の手法)により最終的な通り狂い量y を導出することを行った。
[0192]
 図12は、本計算例を示し、通り狂い量の導出対象の軌道16の曲率1/Rと、鉄道車両の走行速度vを示す図である。図12において、グラフ1201は、鉄道車両の走行速度を示し、グラフ1202は、軌道16の曲率1/Rを示す。尚、図12の横軸は、基準の時刻を0(ゼロ)とした場合の当該基準の時刻からの経過時間(秒)である。
 図13Aおよび図13Bは、本計算例を示し、自己相関行列Rの固有値の分布を示す図である。図13Aは、輪軸13aにおける前後方向力T に対する自己相関行列Rの固有値の分布を示し、図13Bは、輪軸13bにおける前後方向力T に対する自己相関行列Rの固有値の分布を示す。
[0193]
 図14は、本計算例を示し、前後方向力T 、T の測定値yの時系列データと、前後方向力T 、T の予測値y^ の時系列データ(前後方向力の測定値yの時系列データに含まれる低周波成分を抽出した時系列データ)とを示す図である。図14において、測定値は、前後方向力の測定値yの時系列データを示し、バイアスは、前後方向力の予測値y^ の時系列データを示す。尚、図14の横軸は、基準の時刻を0(ゼロ)とした場合の当該基準の時刻からの経過時間(秒)であり、前後方向力T ~T の測定時刻・計算時刻を表す。
[0194]
 図15は、本計算例を示し、前後方向力T 、T の高周波成分の時系列データを示す図である。前後方向力T 、T の高周波成分の時系列データは、図14に示す前後方向力T 、T の測定値yの時系列データから、前後方向力T 、T の予測値y^ の時系列データを減算することにより得られる。尚、図15の横軸は、基準の時刻を0(ゼロ)とした場合の当該基準の時刻からの経過時間(秒)であり、前後方向力T 、T の高周波成分の時系列データの計算時刻を表す。
[0195]
 図16Aおよび図16Bは、図15に示す前後方向力T 、T の高周波成分の時系列データを用いて第1の実施形態の手法および特許文献1に記載の手法により導出された通り狂い量y を示す図である。図16Aにおいて、計算値は、特許文献1に記載の手法により導出された通り狂い量y を示し、測定値は、通り狂い量y の測定値を示す。図16Bにおいて、計算値は、第1の実施形態の手法により導出された通り狂い量y を示し、測定値は、通り狂い量y の測定値を示す。ここでは、通り狂い量y の計算値として、輪軸13aの位置での通り狂い量y R1と、輪軸13bの位置での通り狂い量y R2との平均値を用いた。また、図16Aに示す測定値と、図16Bに示す測定値は同じものである。尚、図16Aおよび図16Bの横軸は、基準の時刻を0(ゼロ)とした場合の当該基準の時刻からの経過時間(秒)であり、通り狂い量y が存在する位置に対応する時刻である。また、図16Aでは、表記の都合上、鉄道車両の出発点からの距離が小さい部分のデータの図示を省略している。
[0196]
 図17Aは、図15に示す前後方向力T 、T の高周波成分の時系列データを用いて第2の実施形態の手法により導出された通り狂い量y を示す図である。図17Bは、図15に示す前後方向力T 、T の高周波成分の時系列データを用いて特許文献1に記載の手法により導出された通り狂い量y を示す図である。図17Aにおいて、計算値は、特許文献1に記載の手法により導出された通り狂い量y を示し、測定値は、通り狂い量y の測定値を示す。図17Bにおいて、計算値は、第2の実施形態の手法により導出された通り狂い量y を示し、測定値は、通り狂い量y の測定値を示す。ここでは、通り狂い量y の計算値として、輪軸13aの位置での通り狂い量y R1と、輪軸13bの位置での通り狂い量y R2との平均値を用いた。また、図17Aに示す測定値と、図17Bに示す測定値は同じものである(これらの測定値は、図16Aおよび図16Bに示す測定値とも同じである)。尚、図17Aおよび図17Bの横軸は、基準の時刻を0(ゼロ)とした場合の当該基準の時刻からの経過時間(秒)であり、通り狂い量y が存在する位置に対応する時刻である。また、図17Aおよび図17Bでは、表記の都合上、鉄道車両の出発点からの距離が小さい部分のデータの図示を省略している。
[0197]
 図16Aの計算値と図16Bの計算値とを比較すると、第1の実施形態の手法により導出された通り狂い量y は、特許文献1に記載の手法により導出された通り狂い量y と良好な精度で一致していることが分かる。また、計算値と測定値も良好な精度で一致していることが分かる。同様に、図17Aの計算値と図17Bの計算値とを比較すると、第2の実施形態の手法により導出された通り狂い量y は、特許文献1に記載の手法により導出された通り狂い量y と良好な精度で一致していることが分かる。また、計算値と測定値も良好な精度で一致していることが分かる。また、図16Bの計算値と図17Bの計算値とを比較すると、両者は殆ど同じであり、第1の実施形態の手法でも第2の実施形態の手法でも、同等の通り狂い量y を導出することができることが分かる。
[0198]
(その他の実施形態)
 尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
 また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
 尚、特許文献1の明細書および図面の内容を全てここに援用することができる。

産業上の利用可能性

[0199]
 本発明は、例えば、鉄道車両を検査することに利用することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得手段と、
 前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出手段と、
 前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出手段と、を有し、
 前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、
 前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、
 前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、
 前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、
 前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
 前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、
 前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、
 前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、
 前記軌道状態導出手段は、前記状態変数導出手段により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、
 前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、
 前記状態変数導出手段は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とする検査システム。
[請求項2]
 前記状態変数導出手段は、前記状態方程式と、観測方程式と、を用いて、データ同化を行うフィルタを用いた演算を行うことにより、前記状態変数を導出し、
 前記観測方程式は、観測変数と、前記変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
 前記観測変数は、前記台車および前記輪軸の左右方向の加速度を含み、
 前記状態変数導出手段は、データ同化の際に本来は前記観測変数の測定値として与えられる値を予め定められた一定値として、前記前後方向力の測定値および前記変換変数の実績値を代入した前記状態方程式と、前記変換変数の実績値を代入した前記観測方程式と、を用いて、前記観測変数の計算値の、前記一定値に対する誤差または当該誤差の期待値が最小になるときの前記状態変数を導出することを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
[請求項3]
 前記一定値は、0であることを特徴とする請求項2に記載の検査システム。
[請求項4]
 前記状態方程式は、前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車のローリング方向の運動を記述した運動方程式と、前記空気バネのローリング方向の運動を記述した運動方程式と、を用いて構成され、
 前記台車のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度に代えて、前記前後方向力を用いて記述された運動方程式であり、
 前記観測方程式は、前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車の左右方向の運動を記述した運動方程式と、を用いて構成され、
 前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位に代えて、前記変換変数を用いて記述された運動方程式であり、
 前記変換変数は、前記台車のヨーイング方向の角変位と前記輪軸のヨーイング方向の角変位との差で表されることを特徴とする請求項2または3に記載の検査システム。
[請求項5]
 前記状態方程式は、前記車体の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記車体のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、前記車体のローリング方向の運動を記述した運動方程式と、前記鉄道車両に取り付けられるヨーダンパのヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、を更に用いて構成され、
 前記観測方程式は、前記車体の左右方向の運動を記述した運動方程式を更に用いて構成され、
 前記観測変数は、前記車体の左右方向の加速度を更に含み、
 前記状態変数は、前記車体の左右方向の変位および速度と、前記車体のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記車体のローリング方向の角変位および角速度と、前記ヨーダンパのヨーイング方向の角変位と、を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の検査システム。
[請求項6]
 前記フィルタは、カルマンフィルタであることを特徴とする請求項2~5の何れか1項に記載の検査システム。
[請求項7]
 前記状態変数導出手段は、前記状態方程式を解かずに、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を、前記状態変数と、前記前後方向力と、前記変換変数とを用いて表現した式であって、前記前後方向力の測定値および前記変換変数の実績値を代入した式を解くことにより、前記状態変数を導出することを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
[請求項8]
 前記状態変数導出手段は、前記状態方程式を用いずに、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を、前記状態変数と、前記前後方向力と、前記変換変数とを用いて表現した式を、当該式よりも前記状態変数の時間変化が小さくなるように変更した式であって、前記前後方向力の測定値および前記変換変数の実績値を代入した式を用いて、前記状態変数を導出することを特徴とする請求項7に記載の検査システム。
[請求項9]
 前記状態変数導出手段は、前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を、前記状態変数と、前記前後方向力と、前記変換変数とを用いて表現した式において、前記状態変数の1階時間微分の項と等号で結ばれる項のそれぞれに、忘却係数を乗算した式を解くことにより、前記状態変数を導出し、
 前記忘却係数は、予め定められる0.95以上1未満の値であることを特徴とする請求項8に記載の検査システム。
[請求項10]
 前記鉄道の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、前記台車のローリング方向の運動を記述した運動方程式と、前記空気バネのローリング方向の運動を記述した運動方程式と、を含み、
 前記輪軸の左右方向の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位に代えて、前記変換変数を用いて記述された運動方程式であり、
 前記台車のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度に代えて、前記前後方向力を用いて記述された運動方程式であり、
 前記変換変数は、前記台車のヨーイング方向の角変位と前記輪軸のヨーイング方向の角変位との差で表されることを特徴とする請求項7~9の何れか1項に記載の検査システム。
[請求項11]
 前記鉄道の運動を記述した運動方程式は、前記車体の左右方向の運動を記述した運動方程式と、前記車体のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、前記車体のローリング方向の運動を記述した運動方程式と、前記鉄道車両に取り付けられるヨーダンパのヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、を更に含み、
 前記状態変数は、前記車体の左右方向の変位および速度と、前記車体のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記車体のローリング方向の角変位および角速度と、前記ヨーダンパのヨーイング方向の角変位と、を更に有することを特徴とすることを特徴とする請求項10に記載の検査システム。
[請求項12]
 前記軌道状態導出手段は、前記状態変数導出手段により導出された前記状態変数の一つである前記台車の左右方向の変位および速度と、前記状態変数導出手段により導出された前記状態変数の一つである前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の前記推定値と、前記前後方向力の測定値と、前記輪軸のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式と、に基づいて、前記軌道の通り狂い量を、前記軌道の状態を反映する情報として導出し、
 前記輪軸のヨーイング方向の運動を記述した運動方程式は、前記前後方向力および前記軌道の通り狂い量を変数として含むことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の検査システム。
[請求項13]
 前記軌道状態導出手段は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、前記状態変数の一つである前記輪軸の左右方向の速度と、に基づいて、前記輪軸に設けられた車輪と前記軌道との間における左右方向の応力である横圧を、前記軌道の状態を反映する情報として導出することを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の検査システム。
[請求項14]
 前記鉄道車両の状態に応じて値が変動する物理量の時系列データから、前記鉄道車両が前記軌道の曲線部を走行することに起因して生じる低周波成分の信号強度を低減する周波数調整手段を更に有し、
 前記周波数調整手段は、前記物理量の一つである前記前後方向力の測定値の時系列データから、前記鉄道車両が前記軌道の曲線部を走行することに起因して生じる低周波成分の信号強度を低減する第1の周波数調整手段を有し、
 前記状態変数導出手段は、前記第1の周波数調整手段により低周波成分の信号強度が低減された前記前後方向力の値を用いて、前記状態変数を導出することを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載の検査システム。
[請求項15]
 車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得工程と、
 前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出工程と、
 前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出工程と、を有し、
 前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、
 前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、
 前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、
 前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、
 前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
 前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、
 前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、
 前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、
 前記軌道状態導出工程は、前記状態変数導出工程により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、
 前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、
 前記状態変数導出工程は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とする検査方法。
[請求項16]
 車体と台車と輪軸とを有する鉄道車両を軌道上で走行させることにより測定される測定値のデータとして、前後方向力の測定値のデータを取得するデータ取得工程と、
 前記鉄道車両の運動を記述した運動方程式を用いて構成される状態方程式で決定すべき変数である状態変数を、前記前後方向力の測定値を用いて導出する状態変数導出工程と、
 前記軌道の状態を反映する情報を導出する軌道状態導出工程と、をコンピュータに実行させ、
 前記前後方向力は、前記輪軸と、当該輪軸が設けられる前記台車との間に配置される部材に生じる前後方向の力であって、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と、当該輪軸が設けられる前記台車のヨーイング方向の角変位との差に応じて定まる力であり、
 前記部材は、軸箱を支持するための部材であり、
 前記前後方向は、前記鉄道車両の走行方向に沿う方向であり、
 前記ヨーイング方向は、前記軌道に対し垂直な方向である上下方向を回動軸とする回動方向であり、
 前記状態方程式は、前記状態変数と、前記前後方向力と、変換変数と、を用いて記述される方程式であり、
 前記状態変数は、前記台車の左右方向の変位および速度と、前記台車のヨーイング方向の角変位および角速度と、前記台車のローリング方向の角変位および角速度と、前記輪軸の左右方向の変位および速度と、前記鉄道車両に取り付けられている空気バネのローリング方向の角変位と、を含み、前記輪軸のヨーイング方向の角変位および角速度を含まず、
 前記ローリング方向は、前記前後方向を回動軸とする回動方向であり、
 前記変換変数は、前記輪軸のヨーイング方向の角変位と前記台車のヨーイング方向の角変位とを相互に変換する変数であり、
 前記軌道状態導出工程は、前記状態変数導出工程により導出された前記状態変数の一つである前記台車のヨーイング方向の角変位と、前記変換変数の実績値と、を用いて、前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を導出し、導出した前記輪軸のヨーイング方向の角変位の推定値を用いて前記軌道の状態を反映する情報を導出し、
 前記変換変数の実績値は、前記前後方向力の測定値を用いて導出され、
 前記状態変数導出工程は、前記前後方向力の測定値が得られた期間における、前記台車、前記輪軸、および前記車体の左右方向の加速度の測定値を用いずに、前記状態変数を導出することを特徴とするコンピュータプログラム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4A]

[ 図 4B]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13A]

[ 図 13B]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16A]

[ 図 16B]

[ 図 17A]

[ 図 17B]