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1. WO2020121921 - 状態推定装置

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明 細 書

発明の名称 状態推定装置 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : 状態推定装置

関連出願の相互参照

[0001]
 本出願は、2018年12月12日に出願された日本国特許出願2018-232183号に基づくものであって、その優先権の利益を主張するものであり、その特許出願の全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。

技術分野

[0002]
 本開示は、車両に設けられる酸素吸蔵触媒の状態を推定する状態推定装置に関する。

背景技術

[0003]
 内燃機関を備える車両には、内燃機関から排出される排ガスを浄化するための三元触媒が設けられる。三元触媒は、排ガスに含まれる一酸化炭素、炭化水素、及び窒素酸化物を、それぞれ酸化反応や還元反応により浄化するための触媒である。
[0004]
 三元触媒における浄化率は、排ガスの空燃比が所謂「理論空燃比」の近傍であるときにおいて最も高くなることが知られている。換言すれば、三元触媒に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであったり、理論空燃比よりもリーンであったりする場合には、三元触媒における浄化率は低下してしまう。
[0005]
 そこで、三元触媒に、酸素を吸蔵及び放出する能力を持たせて、これを「酸素吸蔵触媒」として構成することが行われている。流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときには、酸素吸蔵触媒へと酸素が吸蔵されるので、酸素吸蔵触媒の内部における空燃比は理論空燃比に近づくこととなる。また、流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときには、酸素吸蔵触媒から酸素が放出されるので、やはり酸素吸蔵触媒の内部における空燃比は理論空燃比に近づくこととなる。これにより、流入する排ガスの空燃比が理論空燃比からずれている場合であっても、触媒による排ガスの浄化率を高く維持することが可能となる。
[0006]
 ただし、酸素の吸蔵量が最大吸蔵酸素量に到達してしまうと、酸素吸蔵触媒はそれ以上酸素を吸蔵することができなくなる。このような状態においては、リーンな排ガスに対する浄化率は低下してしまうこととなる。また、酸素の吸蔵量がほぼ0となってしまうと、酸素吸蔵触媒はそれ以上酸素を放出することができなくなる。このような状態においては、リッチな排ガスに対する浄化率は低下してしまうこととなる。
[0007]
 このため、例えば下記特許文献1に記載された排気浄化装置においては、酸素吸蔵触媒における酸素の吸蔵量を常に推定しており、その推定値が所定の目標値となるように、内燃機関から排出される排ガスの空燃比を調整することとしている。これにより、酸素吸蔵触媒における酸素の吸蔵量が最大吸蔵酸素量に到達してしまうことや、ほぼ0になってしまうことを防止している。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2000-120475号公報

発明の概要

[0009]
 上記の排気浄化装置では、所定の制御周期が経過する毎に、吸蔵量の推定値に対して加算又は減算を行うことで、推定値を最新のものに更新している。この場合、推定値に対して加算又は減算される値は、上記推定値についての変化速度といえるものである。上記の排気浄化装置では、空燃比センサで測定された排ガスの空燃比と、酸素吸蔵触媒を通過する排ガスの流量と、に基づいて、上記の変化速度を算出している。例えば、測定された空燃比がリーンであるほど、吸蔵量の推定値の増加速度は大きな値として算出される。また、測定された空燃比がリッチであるほど、吸蔵量の推定値の減少速度は大きな値として算出される。更に、排ガスの流量が大きいほど、吸蔵量の推定値の変化速度は大きな値として算出される。このように、酸素吸蔵触媒における酸素の吸蔵量の変化速度は、排ガスの空燃比や流量に応じて変化する。
[0010]
 ところで、本発明者らが行った実験等によれば、吸蔵量の変化速度については、状況に応じた限界速度が存在することが判明している。例えば、吸蔵量が増加しているときにおいては、その増加速度は、増加時についての限界速度を超えることはない。同様に、吸蔵量が減少しているときにおいては、その減少速度は、減少時についての限界速度を超えることはない。
[0011]
 上記特許文献1に記載された排気浄化装置では、上記のような限界速度を考慮することなく変化速度が算出されており、当該変化速度に基づいて、酸素の吸蔵量の推定値が更新されている。このため、算出された推定値が、実際の吸蔵量から乖離してしまう可能性がある。
[0012]
 本開示は、酸素吸蔵触媒における酸素の吸蔵量を正確に推定することのできる状態推定装置、を提供することを目的とする。
[0013]
 本開示に係る状態推定装置は、車両に設けられる酸素吸蔵触媒の状態を推定する状態推定装置であって、酸素吸蔵触媒に流入する排出ガスの流量及び空燃比に基づいて、酸素吸蔵触媒における酸素吸蔵量の変化速度を算出する速度算出部と、変化速度についての限界値、である限界速度を算出する限界算出部と、変化速度及び限界速度に基づいて、酸素吸蔵量の推定値を更新する吸蔵量更新部と、を備える。吸蔵量更新部は、変化速度が限界速度を超えない場合には、変化速度に基づいて推定値を更新し、変化速度が限界速度を超える場合には、限界速度に基づいて推定値を更新する。
[0014]
 このような状態推定装置では、速度算出部が、酸素吸蔵触媒に流入する排出ガスの流量及び空燃比に基づいて、酸素吸蔵触媒における酸素吸蔵量の変化速度を算出する。吸蔵量更新部は、基本的にはこの変化速度に基づいて酸素吸蔵量の推定値を更新する。これにより、空燃比等の状況に応じて酸素吸蔵量を推定することができる。
[0015]
 ただし、吸蔵量更新部は、変化速度が限界速度を超えない場合には、上記のように変化速度に基づいて推定値を更新する一方、変化速度が限界速度を超える場合には、限界速度に基づいて推定値を更新する。上記構成の状態推定装置によれば、限界速度を考慮することにより、酸素吸蔵量をより正確に推定することが可能となる。
[0016]
 本開示によれば、酸素吸蔵触媒における酸素の吸蔵量を正確に推定することのできる状態推定装置、が提供される。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 図1は、第1実施形態に係る状態推定装置、及びこれを搭載した車両の構成を模式的に示す図である。
[図2] 図2は、図1の内燃機関制御装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
[図3] 図3は、第1実施形態に係る状態推定装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
[図4] 図4は、酸素の吸蔵量に関する変化速度及び限界速度について説明するための図である。
[図5] 図5は、第1実施形態に係る状態推定装置によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
[図6] 図6は、第2実施形態に係る状態推定装置によって実行される処理について説明するための図である。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
[0019]
 第1実施形態について説明する。本実施形態に係る状態推定装置100は、後述の酸素吸蔵触媒31と共に車両MVに設けられものであり、酸素吸蔵触媒31の状態を推定するための装置、として構成されている。状態推定装置100の説明に先立ち、状態推定装置100が搭載される車両MVの構成について先ず説明する。
[0020]
 図1には、車両MVの一部の構成が模式的に図示されている。車両MVは、内燃機関10の駆動力によって走行する車両として構成されている。
[0021]
 内燃機関10は所謂エンジンであって、空気と共に供給される燃料を内部で燃焼させることにより、車両MVの駆動力を発生させるものである。内燃機関10には、吸気配管40と、排気配管50とが接続されている。
[0022]
 吸気配管40は、空気及び燃料を内燃機関10に供給するための配管である。吸気配管40には、空気の流量を調整するための不図示のスロットルバルブや、空気の流量を測定するための不図示のエアフローメータ等が設けられている。
[0023]
 排気配管50は、内燃機関10における燃焼で生じた排ガスを、車両MVの外部へと排出するための配管である。排気配管50には、浄化装置30と、空燃比センサ20とが設けられている。
[0024]
 浄化装置30は、排気配管50を通る排ガスを、外部に放出される前に予め浄化するための装置である。浄化装置30の内部には酸素吸蔵触媒31が収容されている。酸素吸蔵触媒31は、所謂三元触媒に、酸素を吸蔵及び放出する能力を持たせたものとなっている。酸素吸蔵触媒31に吸蔵されている酸素の量のことを、以下では「酸素吸蔵量」とも称する。
[0025]
 酸素吸蔵触媒31は、セラミックから成る基材に、触媒作用を有する白金等の貴金属と、それを支持するアルミナ等のサポート材と、酸素の吸蔵能力及び放出能力を有するセリア等の物質と、をそれぞれ担持させた構成となっている。酸素吸蔵触媒31は、排ガスによって加熱され所定の活性温度に達すると、炭化水素や一酸化炭素等の未燃ガスと窒素酸化物とを同時に浄化する。
[0026]
 浄化装置30に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときには、酸素吸蔵触媒31へと酸素が吸蔵され、酸素吸蔵触媒31の内部における空燃比は理論空燃比に近づくこととなる。また、浄化装置30に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときには、酸素吸蔵触媒31から酸素が放出され、やはり酸素吸蔵触媒31の内部における空燃比は理論空燃比に近づくこととなる。これにより、浄化装置30に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比からずれている場合であっても、酸素吸蔵触媒31による排ガスの浄化率を高く維持することが可能となっている。
[0027]
 空燃比センサ20は、排気配管50を通る排ガスの空燃比を測定するためのセンサである。空燃比センサ20は、排気配管50のうち、浄化装置30よりも上流側となる位置に設けられている。このため、空燃比センサ20によって測定される空燃比は、浄化装置30に流入する排ガスの空燃比ということになる。
[0028]
 空燃比センサ20は、排ガスの空燃比に応じた信号を出力する。具体的には、排ガスの酸素濃度に応じてその出力電流の大きさを変化させる。測定された空燃比の大きさを示す出力電流は、空燃比センサ20から、状態推定装置100及び内燃機関制御装置200の両方に入力される。
[0029]
 比較的広い空燃比の範囲において、空燃比センサ20は、空燃比の変化に応じて出力電流を概ね一定の傾きで変化させる。つまり、空燃比センサ20は、所謂「リニアセンサ」として構成されている。
[0030]
 尚、空燃比を検知するためのセンサとしては、上記のような空燃比センサ20の他、「O 2センサ」と称されるセンサも知られている。O 2センサは、空燃比が理論空燃比付近の範囲においてその出力を急峻に変化させ、その他の範囲では概ね一定値を出力するセンサである。後に説明する状態推定装置100の機能を実現するにあたっては、空燃比センサ20に換えてO 2センサを用いることも可能ではある。しかしながら、O 2センサでは、空燃比の値を正確に取得することが難しいことに加え、その出力特性がヒステリシスを持つという問題もある。このため、空燃比を検知するためのセンサとしては、本実施形態のようにリニアセンサである空燃比センサ20を用いることが好ましい。
[0031]
 上記のような空燃比センサ20の構成としては、公知の構成を採用することができる。このため、空燃比センサ20の具体的な構成については説明および図示を省略する。
[0032]
 車両MVには、内燃機関制御装置200が搭載されている。内燃機関制御装置200は、内燃機関10の動作を制御するための装置であって、所謂「エンジンECU」と称されるものである。
[0033]
 内燃機関制御装置200は、不図示のスロットルバルブの開度を調整することで、吸気配管40から内燃機関10に流入する空気の流量を調整する。また、内燃機関制御装置200は、不図示の燃料噴射弁の開閉動作を制御することで、内燃機関10に供給される燃料の量を調整する。
[0034]
 先に述べたように、内燃機関制御装置200には、空燃比センサ20によって測定される空燃比が入力される。内燃機関制御装置200は、当該空燃比が所定の目標空燃比に一致するように、スロットルバルブ及び燃料噴射弁の動作を制御する。上記の目標空燃比としては、例えば理論空燃比の値が設定されるのであるが、理論空燃比とは異なる値が設定されることもある。
[0035]
 尚、排気配管50のうち浄化装置30よりも下流側となる位置に、空燃比センサ又はO 2センサを別途設けた上で、この下流側のセンサからの信号に基づいて、上記の目標空燃比が適宜調整されることとしてもよい。更に、浄化装置30よりも更に下流側となる位置に、別の浄化装置が設けられている構成としてもよい。
[0036]
 引き続き図1を参照しながら、状態推定装置100の構成について説明する。本実施形態に係る状態推定装置100は、酸素吸蔵触媒31の状態、具体的には、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量を推定するための装置として構成されている。
[0037]
 状態推定装置100と内燃機関制御装置200との間では、車載ネットワークを介して双方向の通信を行うことが可能となっている。当該通信により、内燃機関制御装置200は、状態推定装置100から酸素吸蔵量の推定値を取得することができる。また、状態推定装置100は、内燃機関10の動作状態を内燃機関制御装置200から取得することができる。更に、状態推定装置100は、車両MVの各部に設けられたセンサの測定値を、内燃機関制御装置200を介して取得することもできる。
[0038]
 尚、このような状態推定装置100は、本実施形態のように内燃機関制御装置200とは別体の装置として構成されていてもよいのであるが、内燃機関制御装置200と一体の装置として構成されていてもよい。換言すれば、状態推定装置100が、エンジンECUである内燃機関制御装置200の一部として構成されていてもよい。
[0039]
 状態推定装置100は、機能的な制御ブロックとして、速度算出部110と、限界算出部120と、吸蔵量記憶部140と、吸蔵量更新部130と、を備えている。
[0040]
 速度算出部110は、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量の変化速度を算出する部分である。速度算出部110は、以下の式(1)によって上記の変化速度を算出する。
変化速度=(触媒理論等量比-流入等量比)×吸入空気流量×0.232×演算周期・・・・・(1)
[0041]
 「等量比」とは、排ガスの空燃比を示す指標であって、理論空燃比を、当該排ガスの空燃比で除することにより得られる値である。式(1)における「流入等量比」とは、酸素吸蔵触媒31に流入する排ガスの等量比のことである。流入等量比は、空燃比センサ20の測定値に基づいて算出される。
[0042]
 流入等量比が小さい場合、例えば、排ガスの空燃比が理論空燃比よりも極端にリーン側である場合には、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量は次第に増加して行くこととなる。また、流入等量比が大きい場合、例えば、排ガスの空燃比が理論空燃比よりも極端にリッチ側である場合には、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量は次第に減少して行くこととなる。式(1)における「触媒理論等量比」とは、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量が増加も減少もしない場合における流入等量比の値のことである。
[0043]
 式(1)における「吸入空気流量」とは、酸素吸蔵触媒31に流入する排ガスの流量のことである。具体的には、単位時間あたりに酸素吸蔵触媒31に流入する排ガスの質量のことである。本実施形態では、吸気配管40から内燃機関10に供給される空気の流量、すなわち、不図示のエアフローメータにより測定される流量の値が、上記の吸入空気流量として用いられる。
[0044]
 吸入空気量は、上記とは異なる方法によって取得されることとしてもよい。例えば、内燃機関10の回転速度及びスロットルバルブの開度等に基づいて、吸入空気流量が都度算出されることとしてもよい。
[0045]
 式(1)における「0.232」は、空気に含まれる酸素の質量の割合を示す数値である。
[0046]
 式(1)における「演算周期」は、後に説明する図5の処理等が実行される周期のことである。尚、式(1)によって算出される値は、最後にこの演算周期が掛けられることで、演算周期内に増加または減少する酸素吸蔵量を質量の次元で示すものとなる。ただし、演算周期は概ね一定であるから、式(1)によって算出される値は、実質的には酸素吸蔵量の変化速度を示す値となる。
[0047]
 以上のように、速度算出部110は、酸素吸蔵触媒31に流入する排出ガスの流量及び空燃比に基づいて、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量の変化速度を算出する。
[0048]
 限界算出部120は、上記の変化速度についての限界値、である限界速度を算出する部分である。酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量の実際の変化速度は、式(1)で算出される変化速度に常に一致するとは限らない。例えば、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量が100%に近くなっているときにおいては、演算周期における酸素吸蔵量の増加速度は、式(1)で算出される変化速度よりも小さな限界速度までしか上がらない。
[0049]
 限界算出部120は、上記の限界速度として、限界増加速度及び限界減少速度を算出する。限界増加速度とは、酸素吸蔵量が増加する速度についての限界速度のことである。つまり、酸素吸蔵触媒31において酸素が吸蔵される速度についての限界値のことである。また、限界減少速度とは、酸素吸蔵量が減少する速度についての限界速度のことである。つまり、酸素吸蔵触媒31から酸素が放出される速度についての限界値のことである。
[0050]
 限界算出部120は、以下の式(2)によって上記の限界増加速度を算出する。
限界増加速度=吸蔵速度係数×(触媒理論等量比-流入等量比)×(最大吸蔵酸素量-現在の酸素吸蔵量)×演算周期・・・・・(2)
[0051]
 式(2)における「吸蔵速度係数」とは、酸素吸蔵触媒31における酸素の吸蔵されやすさを示す係数である。吸蔵速度係数は、予め実験等に基づいて、酸素吸蔵触媒31に対応して個別に設定された定数である。
[0052]
 式(2)における「最大吸蔵酸素量」とは、酸素吸蔵触媒31が吸蔵し得る酸素の最大量のことである。最大吸蔵酸素量は、上記の吸蔵速度係数と同様に、予め実験等に基づいて、酸素吸蔵触媒31に対応して個別に設定された定数である。尚、酸素吸蔵触媒31が吸蔵し得る酸素の最大量は、酸素吸蔵触媒31を通過する排ガスの履歴に応じて変化することがある。このため、酸素吸蔵触媒31を常に一定の値とするのではなく、状況に応じて都度補正することとしてもよい。
[0053]
 式(2)における「現在の酸素吸蔵量」とは、状態推定装置100によって直近に算出された酸素吸蔵量の推定値のことであり、後述の吸蔵量記憶部140に記憶されている推定値のことである。
[0054]
 限界算出部120は、以下の式(3)によって上記の限界減少速度を算出する。
限界減少速度=放出速度係数×(触媒理論等量比-流入等量比)×(現在の酸素吸蔵量)×演算周期・・・・・(3)
[0055]
 式(3)における「放出速度係数」とは、酸素吸蔵触媒31における酸素の放出されやすさを示す係数である。放出速度係数は、予め実験等に基づいて、酸素吸蔵触媒31に対応して個別に設定された定数である。
[0056]
 吸蔵量記憶部140は、状態推定装置100により算出された酸素吸蔵量の推定値を記憶する部分である。状態推定装置100は、一定の演算周期が経過する毎に酸素吸蔵量の推定値を算出し、これを吸蔵量記憶部140に記憶している。
[0057]
 吸蔵量更新部130は、吸蔵量記憶部140に記憶されている推定値を、最新のものに更新する処理を行う部分である。吸蔵量更新部130は、速度算出部110によって算出された変化速度、及び、限界算出部120によって算出された限界速度の両方に基づいて、酸素吸蔵量の推定値を更新する処理を行う。吸蔵量更新部130によって行われる処理の具体的な内容については後に説明する。
[0058]
 ところで、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量が最大吸蔵酸素量に到達してしまうと、酸素吸蔵触媒31はそれ以上酸素を吸蔵することができなくなる。このような状態においては、リーンな排ガスに対する浄化率は低下してしまうこととなる。また、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量がほぼ0となってしまうと、酸素吸蔵触媒31はそれ以上酸素を放出することができなくなる。このような状態においては、リッチな排ガスに対する浄化率は低下してしまうこととなる。そこで、本実施形態においては、内燃機関制御装置200が以下に説明する処理を行うことで、酸素吸蔵触媒31における酸素吸蔵量を目標値吸蔵量の近傍に維持することとしている。これにより、酸素吸蔵量が最大吸蔵酸素量に到達してしまうことや、ほぼ0となってしまうことが防止されている。
[0059]
 図2に示される一連の処理は、演算周期が経過する毎に、内燃機関制御装置200によって繰り返し実行されるものである。尚、先に述べたように、内燃機関制御装置200は、空燃比センサ20によって測定される空燃比が目標空燃比に一致するよう、内燃機関10の動作を制御する処理を行っている。図2に示される一連の処理は、上記の処理とは別に並行して実行されている。
[0060]
 最初のステップS01では、酸素吸蔵量を取得する処理が行われる。ここで取得される酸素吸蔵量は、状態推定装置100によって推定された現時点の酸素吸蔵量である。内燃機関制御装置200は、状態推定装置100の吸蔵量記憶部140に記憶されている酸素吸蔵量の推定値を、通信によって取得する。
[0061]
 ステップS01に続くステップS02では、ステップS01で取得された酸素吸蔵量が、目標吸蔵量を超えているか否かが判定される。目標吸蔵量としては、例えば50%、すなわち最大吸蔵酸素量の1/2の値が設定されているのであるが、これとは異なる値が設定されていてもよい。目標吸蔵量を常に一定の値とするのではなく、状況に応じて都度補正することとしてもよい。
[0062]
 酸素吸蔵量が目標吸蔵量を超えている場合には、ステップS03に移行する。ステップS03では、内燃機関10から排出される排ガスの空燃比が、現在よりもリッチ側の値となるように、内燃機関10の動作状態を変更する処理が行われる。当該処理は、例えば、先に述べた目標空燃比をリッチ側の値に変更することにより行われる。
[0063]
 排ガスの空燃比がリッチ側の値に変化すると、酸素吸蔵量の増加傾向は低減される。ステップS03の処理が繰り返し行われると、酸素吸蔵量は次第に減少して行き、目標吸蔵量に近づくこととなる。
[0064]
 ステップS02において、酸素吸蔵量が目標吸蔵量以下であった場合には、ステップS04に移行する。ステップS04では、ステップS01で取得された酸素吸蔵量が、目標吸蔵量を下回っているか否かが判定される。酸素吸蔵量が目標吸蔵量を下回っている場合には、ステップS05に移行する。ステップS05では、内燃機関10から排出される排ガスの空燃比が、現在よりもリーン側の値となるように、内燃機関10の動作状態を変更する処理が行われる。当該処理は、例えば、先に述べた目標空燃比をリーン側の値に変更することにより行われる。
[0065]
 排ガスの空燃比がリーン側の値に変化すると、酸素吸蔵量の減少傾向は低減される。ステップS05の処理が繰り返し行われると、酸素吸蔵量は次第に増加して行き、目標吸蔵量に近づくこととなる。
[0066]
 ステップS04において、酸素吸蔵量が目標吸蔵量を下回っていなかった場合、つまり、酸素吸蔵量が目標吸蔵量に等しかった場合には、内燃機関10の動作状態を変更する処理を行うことなく、図2に示される一連の処理を終了する。
[0067]
 内燃機関制御装置200が以上のような処理を行うことにより、酸素吸蔵量は目標吸蔵量の近傍に維持される。これにより、浄化装置30による排ガスの浄化性能が維持される。
[0068]
 続いて、状態推定装置100によって行われる処理の内容について説明する。図3に示される一連の処理は、演算周期が経過する毎に、状態推定装置100によって繰り返し実行されるものである。尚、図3に示される処理は、所定の実行条件が成立した場合にのみ実行されることとしてもよい。実行条件としては、例えば、車両MVの暖機が完了していること等が挙げられる。
[0069]
 当該処理の最初のステップS11では、浄化装置30に流入する排ガスの空燃比を取得する処理が行われる。ここでは、空燃比センサ20によって測定された空燃比が上記の空燃比として取得される。
[0070]
 ステップS11に続くステップS12では、吸入空気流量を取得する処理が行われる。先に述べたように、ここでは、不図示のエアフローメータにより測定される流量の値が吸入空気流量として取得される。
[0071]
 ステップS12に続くステップS13では、酸素吸蔵量の変化量を算出する処理が行われる。ここでいう「変化量」とは、図3に示される処理が前回の演算周期において実行されてから、今回の演算周期において実行されるまでの間における、酸素吸蔵量の変化量のことである。酸素吸蔵触媒31において酸素の吸蔵が行われているときには、変化量は正値として算出される。酸素吸蔵触媒31から酸素の放出が行われているときには、負値として算出される。変化量を算出するために行われる処理の具体的な内容については後に説明する。
[0072]
 ステップS13に続くステップS14では、酸素吸蔵量の推定値を更新する処理が行われる。ここでは、吸蔵量記憶部140に記憶されている推定値に、ステップS13で算出された変化量を加算して得られた値を、最新の推定値として吸蔵量記憶部140に記憶させる処理が行われる。当該処理は吸蔵量更新部130によって行われる。
[0073]
 以上のような処理が繰り返し実行されることにより、吸蔵量記憶部140には、常に最新の推定値が記憶される。当該推定値は、要求に応じて内燃機関制御装置200へと送信される。
[0074]
 ステップS13において行われる処理の概要について、図4を参照しながら説明する。図4に示されるグラフの横軸は、酸素吸蔵量を0%から100%(つまり最大吸蔵酸素量)までの範囲で示すものである。同グラフの縦軸は、酸素吸蔵量の変化速度を示すものである。
[0075]
 また、図4に示される線L1は、限界算出部120によって算出される限界増加速度を示すものである。線L1によって示されるように、限界増加速度は、酸素吸蔵量が多くなる程小さくなっていき、酸素吸蔵量が100%の時には限界増加速度は0となる。つまり、酸素吸蔵量が大きいときほど、限界算出部120によって算出される限界増加速度の絶対値は小さくなる
[0076]
 図4に示される線L2は、限界算出部120によって算出される限界減少速度を示すものである。線L2によって示されるように、限界減少速度は、酸素吸蔵量が少なくなる程その絶対値が小さくなっていき、酸素吸蔵量が0%の時には限界減少速度は0となる。つまり、酸素吸蔵量が小さいときほど、限界算出部120によって算出される限界減少速度の絶対値は小さくなる。
[0077]
 図4においては、速度算出部110によって算出される変化速度の例が、複数の点P10等によって示されている。点P10、P12は、いずれも、酸素吸蔵量がx10であるときに算出される変化速度である。点P20、P22は、いずれも、酸素吸蔵量がx20であるときに算出される変化速度である。
[0078]
 図4の例において、点P10における変化速度はy10となっている。y10は0よりも大きく、酸素吸蔵量がx10であるときの限界増加速度よりも小さな値となっている。すなわち、算出された変化速度y10は、限界増加速度を超えない値となっている。尚、以下の説明において、変化速度が限界速度を「超える」というときは、変化速度の絶対値が限界速度の絶対値よりも大きくなることを意味するものとする。
[0079]
 この場合、速度算出部110によって算出される変化速度y10は、実際の変化速度と概ね等しくなる。このため、図3のステップS13では、上記のy10がそのまま変化量として算出される。また、同図のステップS14では、酸素吸蔵量の推定値はy10だけ増加することとなる。
[0080]
 図4の例において、P12において算出される変化速度はy12となっている。y12は0よりも大きく、酸素吸蔵量がx10であるときの限界増加速度よりも更に大きな値となっている。すなわち、算出された変化速度y12は、限界増加速度を超える値となっている。
[0081]
 先に述べたように、酸素吸蔵量の実際の変化速度は、限界増加速度を超えて大きくなることは無い。従って、実際の変化速度は、酸素吸蔵量がx10であるときの限界増加速度に等しくなる。図4では、このような実際の変化速度がy11として示されている。この場合、図3のステップS13では、上記のy11が変化量として算出される。また、同図のステップS14では、酸素吸蔵量の推定値はy11だけ増加することとなる。
[0082]
 仮に、限界増加速度を考慮することなく、y12の値が変化量として用いられた場合には、酸素吸蔵量の推定値は、実際の値よりも大きな値となってしまう。このため、例えば、酸素吸蔵触媒31から酸素を放出させるための処理が必要以上に実行されてしまい、リッチな排ガスが外部に排出されてしまうようなことが起こり得る。これに対し、本実施形態に係る状態推定装置100では、限界増加速度を考慮して変化量の算出が行われる。これにより、酸素吸蔵量の推定値を常に正確に更新し続けることが可能となる。
[0083]
 図4の例において、点P20において算出される変化速度はy20となっている。y20は0よりも小さく、酸素吸蔵量がx20であるときの限界減少速度よりも大きな値となっている。すなわち、算出された変化速度y20は、限界減少速度を超えない値となっている。
[0084]
 この場合、速度算出部110によって算出される変化速度y20は、実際の変化速度と概ね等しくなる。このため、図3のステップS13では、上記のy20がそのまま変化量として算出される。また、同図のステップS14では、酸素吸蔵量の推定値はy20だけ減少することとなる。
[0085]
 図4の例において、点P22において算出される変化速度はy22となっている。y22は0よりも小さく、酸素吸蔵量がx20であるときの限界減少速度よりも更に小さな値となっている。すなわち、算出された変化速度y22は、限界減少速度を超える値となっている。
[0086]
 先に述べたように、酸素吸蔵量の実際の変化速度は、限界減少速度を超えてその絶対値が大きくなることは無い。従って、実際の変化速度は、酸素吸蔵量がx20であるときの限界減少速度に等しくなる。図4では、このような実際の変化速度がy21として示されている。この場合、図3のステップS13では、上記のy21が変化量として算出される。また、同図のステップS14では、酸素吸蔵量の推定値はy21だけ減少することとなる。
[0087]
 仮に、限界減少速度を考慮することなく、y22の値が変化量として用いられた場合には、酸素吸蔵量の推定値は、実際の値よりも小さな値となってしまう。このため、例えば、酸素吸蔵触媒31に酸素を吸蔵させるための処理が必要以上に実行されてしまい、リーンな排ガスが外部に排出されてしまうようなことが起こり得る。これに対し、本実施形態に係る状態推定装置100では、限界減少速度を考慮して変化量の算出が行われる。これにより、酸素吸蔵量の推定値を常に正確に更新し続けることが可能となる。
[0088]
 以上のような変化量の算出を実現するために、状態推定装置100によって行われる処理の具体的な内容について、図5を参照しながら説明する。図5に示されるフローチャートは、図3のステップS13において実行される処理の流れを示すものである。当該処理は、その大部分が吸蔵量更新部130によって実行される。
[0089]
 当該処理の最初のステップS21では、流入等量比を算出する処理が行われる。先に述べたように、流入等量比は、空燃比センサ20の測定値に基づいて算出される。
[0090]
 ステップS21に続くステップS22では、ステップS21で算出された流入等量比が、触媒理論等量比よりも小さいか否かが判定される。
[0091]
 流入等量比が触媒理論等量比よりも小さい場合には、ステップS23に移行する。この場合、酸素吸蔵量は増加することとなる。ステップS23では、酸素吸蔵量の変化速度を算出する処理が行われる。当該処理は、先に述べた式(1)を用いて、速度算出部110によって行われる。
[0092]
 ステップS23に続くステップS24では、限界増加速度を算出する処理が行われる。当該処理は、先に述べた式(2)を用いて、限界算出部120によって行われる。
[0093]
 ステップS24に続くステップS25では、ステップS23で算出された変化速度が、ステップS24で算出された限界増加速度よりも大きいか否かが判定される。
[0094]
 変化速度が限界増加速度よりも大きい場合には、ステップS26に移行する。ステップS26では、変化量に限界増加速度の値を代入する処理が行われる。これにより、図3のステップS13では、変化量として限界増加速度の値が算出されることとなる。
[0095]
 以上のように、本実施形態に係る吸蔵量更新部130は、変化速度が限界増加速度を超える場合には、限界増加速度に基づいて推定値を更新する。
[0096]
 ステップS25において、変化速度が限界増加速度以下であった場合には、ステップS27に移行する。ステップS27では、変化量に変化速度の値を代入する処理が行われる。これにより、図3のステップS13では、変化量として変化速度の値が算出されることとなる。
[0097]
 以上のように、本実施形態に係る吸蔵量更新部130は、変化速度が限界増加速度を超えない場合には、変化速度に基づいて推定値を更新する。
[0098]
 ステップS22において、流入等量比が触媒理論等量比以上であった場合には、ステップS28に移行する。この場合、酸素吸蔵量は減少することとなる。ステップS28では、酸素吸蔵量の変化速度を算出する処理が行われる。当該処理は、先に述べた式(1)を用いて、速度算出部110によって行われる。
[0099]
 ステップS28に続くステップS29では、限界減少速度を算出する処理が行われる。当該処理は、先に述べた式(2)を用いて、限界算出部120によって行われる。
[0100]
 ステップS29に続くステップS30では、ステップS28で算出された変化速度が、ステップS29で算出された限界減少速度よりも小さいか否かが判定される。
[0101]
 変化速度が限界減少速度よりも小さい場合には、ステップS31に移行する。ステップS31では、変化量に限界減少速度の値を代入する処理が行われる。これにより、図3のステップS13では、変化量として限界減少速度の値が算出されることとなる。
[0102]
 以上のように、本実施形態に係る吸蔵量更新部130は、変化速度が限界減少速度を超える場合には、限界減少速度に基づいて推定値を更新する。
[0103]
 ステップS30において、変化速度が限界減少速度以上であった場合には、ステップS32に移行する。ステップS32では、変化量に変化速度の値を代入する処理が行われる。これにより、図3のステップS13では、変化量として変化速度の値が算出されることとなる。
[0104]
 以上のように、本実施形態に係る吸蔵量更新部130は、変化速度が限界減少速度を超えない場合には、変化速度に基づいて推定値を更新する。
[0105]
 以上においては、状態推定装置100によって算出された酸素吸蔵量の推定値が、内燃機関制御部100による制御のために用いられる場合の例について説明した。算出された推定値の用途としては、上記のようなものに限定されない。例えば、酸素吸蔵量の推定値に基づいて酸素吸蔵触媒31等の異常が判定され、その判定結果が乗員等に報知されるような態様であってもよい。
[0106]
 第2実施形態について説明する。本実施形態では、限界算出部120による限界速度の算出方法において第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
[0107]
 図6に示される線L1は、図4に示される線L1と同じものである。本実施形態では、酸素吸蔵触媒31の温度が低下すると、限界算出部120によって算出される限界増加速度が、線L1から線L11のように変化する。線L11は、線L1よりも傾きが小さく、且つ酸素吸蔵量が100%のときには0となるような直線である。酸素吸蔵量が0%から100%までのいずれの場合においても、低温時に算出される限界増加速度は、通常時に算出される限界増加速度よりもその絶対値が小さくなる。このような限界増加速度は、例えば、式(2)によって算出される値に対し、酸素吸蔵触媒31の温度に応じて小さくなるような係数を乗算することによって算出することができる。
[0108]
 本発明者らが実験等によって確認したところによれば、限界増加速度は、酸素吸蔵触媒31が低温になるほどその絶対値が小さくなるという知見が得られている。このため、本実施形態における限界算出部120は、限界増加速度をより正確に算出することができる。
[0109]
 図6に示される線L2は、図4に示される線L2と同じものである。本実施形態では、酸素吸蔵触媒31の温度が低下すると、限界算出部120によって算出される限界減少速度が、線L2から線L12のように変化する。線L12は、線L2よりも傾きが小さく、且つ酸素吸蔵量が100%のときには0となるような直線である。酸素吸蔵量が0%から100%までのいずれの場合においても、低温時に算出される限界減少速度は、通常時に算出される限界減少速度よりもその絶対値が小さくなる。このような限界減少速度は、例えば、式(3)によって算出される値に対し、酸素吸蔵触媒31の温度に応じて小さくなるような係数を乗算することによって算出することができる。
[0110]
 本発明者らが実験等によって確認したところによれば、限界減少速度は、酸素吸蔵触媒31が低温になるほどその絶対値が小さくなるという知見が得られている。このため、本実施形態における限界算出部120は、限界減少速度をより正確に算出することができる。
[0111]
 以上のように、本実施形態では、酸素吸蔵触媒31の温度が低いときほど、限界算出部120によって算出される限界増加速度及び限界減少速度のそれぞれの絶対値が小さくなる。尚、上記のような酸素吸蔵触媒31の温度に基づく限界速度の補正は、限界増加速度及び限界減少速度の両方に対して行われてもよいのであるが、いずれか一方のみに対して行われてもよい。
[0112]
 以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
[0113]
 本開示に記載の制御装置及び制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置及び制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置及び制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。

請求の範囲

[請求項1]
 車両(MV)に設けられる酸素吸蔵触媒(31)の状態を推定する状態推定装置(100)であって、
 前記酸素吸蔵触媒に流入する排出ガスの流量及び空燃比に基づいて、前記酸素吸蔵触媒における酸素吸蔵量の変化速度を算出する速度算出部(110)と、
 前記変化速度についての限界値、である限界速度を算出する限界算出部(120)と、
 前記変化速度及び前記限界速度に基づいて、前記酸素吸蔵量の推定値を更新する吸蔵量更新部(130)と、を備え、
 前記吸蔵量更新部は、
 前記変化速度が前記限界速度を超えない場合には、前記変化速度に基づいて前記推定値を更新し、
 前記変化速度が前記限界速度を超える場合には、前記限界速度に基づいて前記推定値を更新する状態推定装置。
[請求項2]
 前記限界算出部は、
 前記酸素吸蔵量が増加する速度についての前記限界速度である限界増加速度と、
 前記酸素吸蔵量が減少する速度についての前記限界速度である限界減少速度と、をそれぞれ算出する、請求項1に記載の状態推定装置。
[請求項3]
 前記酸素吸蔵量が大きいときほど、前記限界算出部によって算出される前記限界増加速度の絶対値が小さくなる、請求項2に記載の状態推定装置。
[請求項4]
 前記酸素吸蔵量が小さいときほど、前記限界算出部によって算出される前記限界減少速度の絶対値が小さくなる、請求項2に記載の状態推定装置。
[請求項5]
 前記酸素吸蔵触媒の温度が低いときほど、前記限界算出部によって算出される前記限界増加速度及び前記限界減少速度のうち、少なくとも一方の絶対値が小さくなる、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の状態推定装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]