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1. WO2020121808 - 位置判定システム

Document

明 細 書

発明の名称 位置判定システム 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26  

明 細 書

発明の名称 : 位置判定システム

関連出願の相互参照

[0001]
 本出願は、2018年12月14日に出願された日本特許出願番号2018-234565号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。

技術分野

[0002]
 本開示は、車両に搭載されて使用されるシステムであって、ユーザによって携帯される携帯端末から所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号の受信強度に基づいて、車両に対する携帯端末の相対位置を推定する位置判定システムに関する。

背景技術

[0003]
 車両のユーザによって携帯される携帯端末と無線通信を実施することにより、車両に対する携帯端末の位置を推定する位置判定システムが種々提案されている。例えば特許文献1には、車両から携帯端末に向けてLF(Low Frequency)帯の電波を用いて応答要求信号を送信し、当該応答要求信号に対する応答信号を受信できたことに基づいて、携帯端末が車室外の車両近傍(以降、作動エリア)に存在するか否かを判定する構成が開示されている。なお、作動エリアは、携帯端末が携帯端末との無線通信による自動的なドアの開錠の実行を許容するエリアに相当する。車両から携帯機への信号送信にLF帯の電波が用いられる理由は、無線信号の到達範囲を車両近傍に限定しやすいためである。車両においてLF帯の電波を送信するためのアンテナは、無線信号が当該作動エリアにのみ到達するように、送信電力等が調整されている。
[0004]
 このような位置判定システムは、携帯端末の位置に応じて所定の車両制御を実施するパッシブ・エントリ・パッシブ・スタートシステム(以降、PEPSシステム)に利用される。PEPSシステムでは、盗難防止等の観点から、車両からユーザが一定距離(例えば2m)以上離れている場合には携帯端末との無線通信による自動的なドアの開錠は実行しないことがシステム要件として求められることがある。以降では、携帯端末との無線通信による自動的なドアの開錠を禁止する領域を禁止エリアとも記載する。前述の作動エリアは、禁止エリアの観点から車両から少なくとも2m以内の領域に設定される。一般的に、作動エリアは、車両から1m以内や0.7m以内に設定されることが多い。
[0005]
 また、特許文献2には、車両のユーザによって携帯される携帯端末とBluetooth(登録商標)規格に準拠した無線通信を実施することで、車両に対する携帯端末の位置を推定する車載装置が開示されている。具体的には、次の通りである。特許文献1に開示の車載装置は、例えば運転席の足元付近などの車室内の床面に設置されている通信装置(以降、車載通信機)から、携帯端末に対して応答信号の返送を要求するリクエスト信号を定期送信させる。携帯端末は、車載通信機からのリクエスト信号を受信した場合、当該リクエスト信号のRSSI(Received Signal Strength Indication)を含む応答信号を返送する。車載装置は、携帯端末から返送されてくる応答信号に含まれているRSSIをメモリに保存していく。そして、車載装置は、メモリに保存されている直近5回分のRSSIの平均値が所定の閾値を超過している場合に、携帯端末は車室内に存在すると判定する。一方、直近5回分のRSSIの平均値が閾値以下である場合には車室外に存在すると判定する。
[0006]
 なお、以降では、Bluetoothなどの、通信範囲が例えば数十メートル程度となる所定の無線通信規格に準拠した通信を近距離通信と称する。近距離通信には、例えば2.4GHzなど、1GHz以上の電波(以降、高周波電波)が使用される。このような高周波電波は、LF帯の電波に比べて直進性が強く、車両のボディなどの金属体で反射されやすい性質を持つ。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特許第5438048号公報
特許文献2 : 特許第6313114号公報

発明の概要

[0008]
 近年はスマートフォンなどの携帯型の情報処理端末を車両の鍵として機能させたいといった需要が高まっている。それに伴い、LF帯の電波の代わりに、Bluetooth等の近距離通信で使用される高周波電波の受信強度を用いて車両に対する携帯端末の位置を判定可能な構成が求められている。一般的にスマートフォンは、LF帯の電波を送受信する機能は備えていない一方、Bluetooth等の近距離通信機能は標準装備として備えている事が多いためである。
[0009]
 しかし、Bluetooth等の近距離通信で使用される高周波電波はLF帯の電波に比べて直進性が強く、車両のボディなどの金属体で反射されやすい性質を持つ。また、高周波電波はLF帯の電波に比べて伝搬距離による信号強度の減衰度合いが小さい。そのため、車両と携帯端末とが近距離通信を実施する構成では、車両と携帯端末との通信エリアを車両近傍に限定しづらいといった課題がある。
[0010]
 特許文献2に開示の構成によれば、車両と携帯端末とが近距離通信を実施する構成においても、携帯端末が車室内に存在するか否かについては或る程度の確度で判定可能である。しかしながら特許文献2では、携帯端末が車室外の作動エリアに存在するのか禁止エリアに存在するのかを判別する方法については何ら検討されていない。
[0011]
 車室内と車室外との間には、車両のボディといった電波の伝搬を阻害する要素が存在するため、携帯端末が車室内に存在するのか車室外に存在するのかに応じて、携帯端末から送信された信号の車載通信機での受信強度には有意な差が生じうる。故に、携帯端末が車室内に存在するのか否かについては、特許文献2に開示されている方法によって、或る程度の確度で判別することはできる。
[0012]
 しかしながら、車室外の作動エリアと禁止エリアとの間には車両のボディのような構造体は存在しない。また、前述の通り、高周波電波はLF帯の電波に比べて距離による信号強度の減衰量が小さい。つまり、車室外においては、携帯端末からの信号は連続的に減衰していく。そのため、受信強度に基づいて携帯端末が作動エリアに存在するのか、禁止エリアに存在するのかを判定することは現実的には難しい場合がある。
[0013]
 本開示は、携帯端末の位置を誤判定することを低減可能な位置判定システムを提供することを目的とする。
[0014]
 本開示の一態様に係る位置判定システムは、車両のユーザによって携帯される携帯端末と1GHz以上の電波を用いて無線通信することで車両に対する携帯端末の位置を判定する車両用の位置判定システムであって、車両の側面部に設置されてあって、携帯端末から送信される無線信号を受信するためのアンテナと、アンテナにて受信した無線信号の受信強度を検出する強度検出部と、を有する車室外通信機と、車室外通信機が検出した携帯端末からの無線信号の受信強度である室外機強度に基づいて、車両から所定の作動距離以内となる車室外領域である作動エリアに携帯端末が存在するか否かを判定する位置判定部と、を備え、車室外通信機は、車両のドアの下方において、アンテナの指向性の中心が上又は下に向いた姿勢で設置されている。
[0015]
 以上の構成によれば、車室外通信機は指向性の中心が上向き又は下向となる姿勢で取り付けられているため、車幅方向に向けては強い電波は放射されない。また、車室外通信機はドアの下方に上記姿勢で取り付けられているため、信号の直接的な伝搬又は地面での反射によって、ドア付近に存在する携帯端末からの信号は相対的に高いレベルで受信可能となる。故に、携帯端末が、車室外において相対的に車両の近傍となる作動エリア内に存在する場合と、相対的に車両から離れた領域に存在する場合とで、車室外通信機にて観測される受信強度に有意な差を生じさせることができる。これにより、携帯端末からの信号の受信強度に基づいて携帯端末が車室外における位置をより高精度に判定可能となる。
[0016]
 また、1GHz以上の電波は直進性が強いため、上記のように車室外通信機を指向性の中心が上向き又は下向となる姿勢で車両のドアの下方に取り付けた構成によれば、車室内には強い電波は入り込みにくい。故に、携帯端末が車室外の作動エリアに存在する場合と、車室内に存在する場合とで、車室外通信機にて観測される受信強度に有意な差を生じさせることができる。これにより、携帯端末からの信号の受信強度に基づいて携帯端末が車室外のドア付近に存在するのか、車室内に存在するのかもより高精度に判定可能となる。すなわち、上記の構成によれば、携帯端末の位置を誤判定することを低減することができる。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 車両用電子キーシステムの概略的な構成を説明するための図である。
[図2] 車両の構成を説明するための図である。
[図3] 車載システムの概略的な構成を示すブロック図である。
[図4] 車載通信機の概略的な構成を示すブロック図である。
[図5] 車載通信機の搭載位置の一例を示す概念図である。
[図6] 車載通信機の搭載位置を説明するための車両の概念的な側面図である。
[図7] 室外右側通信機及び室外左側通信機の内部構成の一例を示す図である。
[図8] 室外右側通信機の取付位置及び取り付け姿勢を説明するための図である。
[図9] 室外右側通信機の取付位置及び取り付け姿勢を説明するための図である。
[図10] 室外右側通信機及び室外左側通信機の内部構成の一例を示す図である。
[図11] 室外右側通信機の取付位置及び取り付け姿勢を説明するための図である。
[図12] スマートECUの機能を説明するための図である。
[図13] 車載システムが実施する接続関連処理のフローチャートである。
[図14] スマートECUが実施する位置判定処理のフローチャートである。
[図15] PEPSシステムとしての要件について説明するための図である。
[図16] アンテナをBピラーに搭載した場合とサイドシルに搭載した場合における、取付姿勢毎の電界強度分布のシミュレーション結果を示す図である。
[図17] アンテナをダイポールアンテナとした場合とパッチアンテナとした場合における電界強度分布のシミュレーション結果を示す図である。
[図18] アンテナとしてのパッチアンテナのサイドシルに対する相対位置による電界強度分布への影響を試験した結果を示す図である。
[図19] アンテナとしてのパッチアンテナのサイドシルに対する相対位置と、期待される判定精度との関係を示す図である。
[図20] 変形例3におけるブラケットの構成を説明するための図である。
[図21] 変形例4における室外右側通信機の内部構成を示す図である。
[図22] 反射体の作用効果を説明するための図である。
[図23] 変形例5における室外右側通信機の内部構成を示す図である。
[図24] 変形例5における室外右側通信機の構成を示す図である。
[図25] 室外右側通信機の取付位置の変形例を示す図である。
[図26] 室外右側通信機の取付姿勢の変形例を示す図である。

発明を実施するための形態

[0018]
 [実施形態]
 以下、本開示に係る位置判定システムの実施形態の一例について、図を用いて説明する。図1は、本開示に係る位置判定システムが適用された車両用電子キーシステムの概略的な構成の一例を示す図である。図1に示すように車両用電子キーシステムは、車両Hvに搭載された車載システム1と、当該車両Hvのユーザによって携帯される通信端末である携帯端末2と、を備えている。
[0019]
 車載システム1は、携帯端末2と所定の周波数帯の電波を用いた無線通信を実施することで、携帯端末2の位置に応じた所定の車両制御を実施するパッシブ・エントリ・パッシブ・スタートシステム(以降、PEPSシステム)を実現する。
[0020]
 例えば車載システム1は、携帯端末2が車両Hvに対して予め設定されている作動エリアLx内に存在することを確認できている場合には、後述するドアボタン13に対するユーザ操作に基づいて、ドアの施錠や開錠といった制御を実行する。また、車載システム1は、携帯端末2との無線通信によって携帯端末2が車室内に存在することを確認できている場合には、後述するスタートボタン14に対するユーザ操作に基づいて、エンジンの始動制御を実行する。
[0021]
 作動エリアLxとは、当該エリア内に携帯端末2が存在することに基づいて、車載システム1がドアの施錠や開錠といった所定の車両制御を実行するためのエリアである。例えば、運転席用のドア付近や、助手席用のドア付近、トランクドア付近が作動エリアLxに設定されている。ドア付近とは、外側ドアハンドルから、所定の作動距離(例えば0.7メートル)以内となる範囲を指す。外側ドアハンドルとは、ドアの外側面に設けられた、ドアを開閉するための把持部材を指す。本実施形態では一例として、車室外のうち、運転席用の外側ドアハンドル及び助手席用の外側ドアハンドルから所定距離(例えば0.7メートル)以内となる領域が作動エリアLxに設定されている。車両右側に設定されている作動エリアLxのことを右側エリアLa、車両左側に設定されている作動エリアLxのことを左側エリアLbとも記載する。作動エリアLxの大きさを規定する作動距離は1mであってもよいし、1.5mであってもよい。作動距離は、後述する禁止エリアの大きさを規定する禁止距離(2m)よりも小さく設定されていれば良い。
[0022]
 本実施形態の車載システム1及び携帯端末2はそれぞれ、通信距離を10メートル程度に設定可能な所定の近距離無線通信規格に準拠した通信(以降、近距離通信とする)を実施可能に構成されている。ここでの近距離無線通信規格としては、例えばBluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を採用することができる。近距離無線通信規格は、例えば、数メートル~数10メートル程度の通信距離を提供可能なものであればよい。本実施形態の車載システム1と携帯端末2とは一例としてBluetooth Low Energy規格に準拠して無線通信を実施するように構成されている。
[0023]
 携帯端末2は、車載システム1と対応付けられてあって、車両Hvの電子キーとして機能する装置である。携帯端末2は、上述の近距離通信機能を備えた、ユーザが携帯可能な装置であればよい。例えばスマートフォンを携帯端末2として用いることができる。もちろん、携帯端末2は、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、携帯用音楽プレーヤ、携帯用ゲーム機等であってもよい。携帯端末2が近距離通信として送信する信号には、送信元情報が含まれている。送信元情報は、例えば携帯端末2に割り当てられた固有の識別情報(以降、端末IDとする)である。端末IDは他の通信端末と携帯端末2とを識別するための情報として機能する。
[0024]
 携帯端末2は、送信元情報を含む通信パケットを所定の送信間隔で無線送信することで、近距離通信機能を備えた周囲の通信端末に対して、自分自身の存在を通知する(すなわちアドバタイズする)。以降では、アドバイズを目的として定期的に送信される通信パケットのことをアドバタイズパケットと称する。
[0025]
 車載システム1は、上述した近距離通信機能によって携帯端末2から送信されてくる信号(例えばアドバタイズパケット)を受信することで、携帯端末2が車載システム1と近距離通信可能な範囲内に存在することを検出する。以降では、車載システム1が近距離通信機能によって携帯端末2と相互にデータ通信が可能な範囲のことを通信エリアとも記載する。
[0026]
 本実施形態では一例として携帯端末2から逐次送信されるアドバタイズパケットを受信することで、車載システム1は通信エリア内に携帯端末2が存在することを検出するように構成されているものとするが、これに限らない。他の態様として、車載システム1がアドバタイズパケットを逐次送信し、携帯端末2との通信接続(いわゆるコネクション)が確立したことに基づいて、通信エリア内に携帯端末2が存在することを検出するように構成されていてもよい。
[0027]
 <車両の構成について>
 車両Hvの構成について図2を用いて説明する。車両Hvは例えば乗車定員人数が5人の乗用車である。ここでは一例として車両Hvは、前部座席と後部座席とを備えるとともに、右側に運転席(換言すればハンドル)が設けられている。後部座席の背もたれ部47よりも車両後方に位置する車室内空間は、荷室(換言すればトランクルーム)として機能する空間(以降、トランクエリア)として構成されている。車両Hvの後部座席用の空間は、後部座席用の背もたれ部47の上方を介して荷室と連通している。
[0028]
 本明細書では、車室内空間のうち、前部座席の背もたれ部46よりも車両前方となる空間のことをフロントエリアと記載する。フロントエリアには、インストゥルメントパネル49の上方となる車室内空間も含まれる。また、前部座席の背もたれ部46よりも車両後方であり、且つ、後部座席の背もたれ部47よりも車両前方となる車室内空間をリアエリアとも記載する。
[0029]
 車両Hvは上述した例以外の構造を有する車両であってもよい。例えば車両Hvは左側に運転席が設けられている車両であってもよい。また、後部座席を備えない車両をであってもよい。加えて、車両Hvは車室内空間とは独立した荷室を備える車両であっても良い。後部座席を複数列備える車両であっても良い。車両Hvは、トラックなどの貨物自動車などであってもよい。また、車両Hvはタクシーや、キャンピングカーであってもよい。
[0030]
 その他、車両Hvは、車両貸出サービスに供される車両(いわゆるレンタカー)であってもよいし、カーシェアリングサービスに供される車両(いわゆるシェアカー)であってもよい。シェアカーには、個人所有の車両をこの車両の管理者が使用していない時間帯に他者に貸し出すサービスに用いられる車両も含まれる。車両Hvが上記サービスに供される車両(以下、サービス車両)である場合には、それらのサービスの利用契約を行っている人物がユーザとなりうる。つまり、車両Hvを使用する権利を有する人物がユーザとなりうる。
[0031]
 車両Hvのボディは、金属部材を用いて実現されている。ここでのボディには、例えばサイドシル42などのようにボディ本体部を提供するフレームのほかに、車両Hvの外観形状を提供するボディパネルも含まれる。ボディパネルには、サイドボディパネルや、ルーフパネル、リアエンドパネル、ボンネットパネル、ドアパネルなどが含まれる。なお、サイドシル42は、ドア41の下側に位置するフレームであって、ロッカーとも称される。サイドシル42には、図8にて例示の通り、サイドシル42を保護するための樹脂製のサイドシルカバー6が取り付けられている。
[0032]
 金属板は電波を反射する性質を有するため、車両Hvのボディは電波を反射する。すなわち、車両Hvのボディは、電波の直進的な伝搬を遮断するように構成されている。ここでの電波とは、車載システム1と携帯端末2との無線通信に使用される周波数帯の電波(以降、システム使用電波)のことを指す。ここでのシステム使用電波とは2.4GHz帯の電波を指す。
[0033]
 ここでの遮断とは、理想的には反射であるが、これに限らない。電波を所定のレベル(以降、目標減衰レベル)以上減衰できる構成が、電波の伝搬を遮断する構成に相当する。目標減衰レベルは、車室内外で電波の信号強度に有意な差が生じる値とすればよく、例えば10dBとする。なお、目標減衰レベルは5dB以上の任意の値(例えば10dBや20dB)に設定することができる。
[0034]
 車両Hvは、ルーフパネルによって提供される屋根部43を有し、このルーフパネルを支持するための複数のピラー45を備える。複数のピラー45は、前端から後端に向けて、順に、Aピラー、Bピラー、Cピラーと呼ばれる。車両Hvは、ピラー45として、Aピラー45A、Bピラー45B、及びCピラー45Cを備える。Aピラー45Aは前部座席の前方に設けられたピラー45に相当する。Bピラー45Bは、前部座席と後部座席の間に設けられたピラー45に相当する。Cピラー45Cは後部座席斜め後ろに設けられているピラー45に相当する。
[0035]
 他の態様として、車両Hvは、前方から4つ目のピラー45であるDピラー45や、前方から5つめのピラー45であるEピラー45を備えていてもよい。各ピラー45の一部又は全部は、高張力鋼鈑等の金属部材を用いて実現されている。なお、他の態様としてピラー45は、カーボンファイバー製であっても良いし、樹脂製であってもよい。さらに、種々の材料を組み合わせて実現されていても良い。
[0036]
 このように車両Hvは全体として、全てのドア41が閉じられている場合には、システム使用電波は窓部44を介して車室外から車室内に進入したり、車室内から車室外に漏洩したりするように構成されている。つまり窓部44がシステム使用電波の通り道として作用するように構成されている。ここでの窓部44とは、フロントウインドウや、車両Hvの側面部分に設けられている窓(いわゆるサイドウインドウ)、リアウインドウなどである。
[0037]
 他の態様として、車両Hvのドア41等に設けられている窓ガラスもまた、システム使用電波の直進的な伝搬を遮断するように構成されていてもよい。ここでの窓ガラスとは、車両Hvに設けられている窓部44に配置される透明な部材であって、その素材は厳密にはガラスでなくともよい。例えばアクリル樹脂等を用いて実現されていても良い。すなわち、ここでの窓ガラスとは、風防として機能する透明な部材である。
[0038]
 <車載システムの構成について>
 車載システム1の構成及び作動について述べる。車載システム1は、図3に示すように、スマートECU11、複数の車載通信機12、ドアボタン13、スタートボタン14、エンジンECU15、及びボディECU16を備える。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。
[0039]
 スマートECU11は、ユーザによって携帯される通信端末である携帯端末2と無線通信を実施することでドア41の施開錠やエンジンの始動等の車両制御を実行する電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)である。当該スマートECU11は、コンピュータを用いて実現されている。すなわち、スマートECU11は、CPU111、フラッシュメモリ112、RAM113、I/O114、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。CPU111は、種々の演算処理を実行する演算処理装置である。フラッシュメモリ112は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。RAM113は揮発性の記憶媒体である。I/O114は、スマートECU11が、データ通信機12γなど、車両Hvに搭載されている他の装置と通信するためのインターフェースとして機能する回路モジュールである。I/O114は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
[0040]
 フラッシュメモリ112には、ユーザが所有する携帯端末2に割り当てられている端末IDが登録されている。また、フラッシュメモリ112には、コンピュータをスマートECU11として機能させるためのプログラム(以降、位置判定プログラム)等が格納されている。なお、上述の位置判定プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。CPU111が位置判定プログラムを実行することは、位置判定プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
[0041]
 フラッシュメモリ112には、スマートECU11が携帯端末2からの信号の受信強度に基づいて携帯端末2の位置を判定するための閾値(以降、判定用閾値)として、車室内相当値Pinと作動閾値Plxの2つのパラメータが保存されている。車室内相当値Pinは、携帯端末2は車室内に存在すると判定するための閾値である。作動閾値Plxは、携帯端末2は車室外の作動エリアLxに存在すると判定するための閾値である。車室内相当値Pinが車室内判定値に相当に相当する。車室内相当値Pinや作動閾値Plxの技術的な意義及び設定方法については後述する。
[0042]
 スマートECU11の詳細については後述する。なお、スマートECU11は、CPU111の代わりに、MPUやGPUを用いて実現されていてもよい。また、スマートECU11は、CPU111や、MPU、GPUなど、複数種類の演算処理装置を組み合せて実現されていてもよい。さらに、スマートECU11が提供すべき機能の一部は、FPGA(field-programmable gate array)や、ASIC(application specific integrated circuit)などを用いて実現されていても良い。
[0043]
 車載通信機12は、車両Hvに搭載されている、近距離通信を実施するための通信モジュールである。各車載通信機12は専用の通信線又は車両内ネットワークを介してスマートECU11と相互通信可能に接続されている。各車載通信機12には、固有の通信機番号が設定されている。通信機番号は、携帯端末2にとっての端末IDに相当する情報である。通信機番号は、複数の車載通信機12を識別するための情報として機能する。
[0044]
 図4は、車載通信機12の電気的な構成を概略的に示したものである。図4に示すように車載通信機12は、回路基板30、アンテナ31、送受信部32、及び通信マイコン33を備える。回路基板30は、例えばプリント基板である。回路基板30には、車載通信機12を構成する種々の電子部品が設けられている。
[0045]
 アンテナ31は、近距離通信に用いられる周波数帯(例えば2.4GHz帯)の電波を送受信するためのアンテナである。アンテナ31は送受信部32と電気的に接続されている。アンテナ31としては、パッチアンテナ、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、逆Fアンテナ、逆Lアンテナなど多様なアンテナ構造を採用可能である。ここでは一例としてアンテナ31はパッチアンテナとして構成されているものとする。送受信部32は、アンテナ31で受信した信号を復調し、通信マイコン33に提供する。また、送受信部32は、通信マイコン33を介してスマートECU11から入力された信号を変調して、アンテナ31に出力し、電波として放射させる。送受信部32は通信マイコン33と相互通信可能に接続されている。
[0046]
 送受信部32は、アンテナ31で受信した信号の強度を逐次検出する受信強度検出部321を備える。受信強度検出部321は多様な回路構成によって実現可能である。受信強度検出部321が検出した受信強度は、受信データに含まれる端末IDと対応付けられて通信マイコン33に逐次提供される。なお、受信強度は、例えば電力の単位[dBm]で表現されればよい。便宜上、受信強度と端末IDとを対応づけたデータを受信強度データと称する。受信強度検出部321が強度検出部に相当する。
[0047]
 通信マイコン33は、スマートECU11とのデータの受け渡しを制御するマイクロコンピュータである。通信マイコン33は、送受信部32から入力された受信データを順次又はスマートECU11からの要求に基づいてスマートECU11に提供する。つまり、送受信部32が受信したデータは、通信マイコン33を介してスマートECU11に提供される。
[0048]
 通信マイコン33は、携帯端末2の端末IDを認証するとともに、スマートECU11からの要求に基づき、携帯端末2と暗号通信を実施する機能を備える。暗号化の方式としては、Bluetoothで規定されている方式など、多様な方式を援用することができる。IDの認証方式についても、Bluetoothで規定されている方式など、多様な方式を援用することができる。
[0049]
 通信マイコン33は、受信強度検出部321から受信強度データを取得すると、図示しないRAMに蓄積していく。逐次取得される受信強度データは、例えば、最新の受信データの受信強度が先頭となるように時系列順にソートされてRAMに保存されれば良い。保存されてから一定時間経過したデータは順次破棄されていく。つまり、受信強度データは通信マイコン33のRAMに一定時間保持される。通信マイコン33は、スマートECU11からの要求に基づいてRAMに蓄積されている受信強度データを提供する。スマートECU11に提供した受信強度データについてはRAMから削除されれば良い。なお、本実施形態では通信マイコン33がスマートECU11からの要求に基づいて内蔵RAMに蓄積されている受信強度データをスマートECU11に提供するものとするが、これに限らない。通信マイコン33は、受信強度データをスマートECU11に逐次提供するように構成されていても良い。各車載通信機12の設置や、具体的な構成、役割、作動については後述する。
[0050]
 ドアボタン13は、ユーザが車両Hvのドア41を開錠及び施錠するためのボタンである。車両Hvの各ドアハンドルに設けられればよい。ドアボタン13は、ユーザによって押下されると、その旨を示す電気信号を、スマートECU11に出力する。ドアボタン13は、スマートECU11がユーザの開錠指示及び施錠指示を受け付けるための構成に相当する。なお、ユーザの開錠指示及び施錠指示の少なくとも何れか一方を受け付けるための構成としては、タッチセンサを採用することもできる。タッチセンサは、ユーザがそのドアハンドルを触れていることを検出する装置である。
[0051]
 スタートボタン14は、ユーザが駆動源(例えばエンジン)を始動させるためのプッシュスイッチである。スタートボタン14は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す電気信号をスマートECU11に出力する。なお、ここでは一例として車両Hvは、エンジンを動力源として備える車両とするがこれに限らない。車両Hvは、電気自動車やハイブリッド車であってもよい。車両Hvがモータを駆動源として備える車両である場合には、スタートボタン14は駆動用のモータを始動させるためのスイッチである。
[0052]
 エンジンECU15は、車両Hvに搭載されたエンジンの動作を制御するECUである。例えばエンジンECU15は、スマートECU11からエンジンの始動を指示する始動指示信号を取得すると、エンジンを始動させる。
[0053]
 ボディECU16は、スマートECU11からの要求に基づいて車載アクチュエータ17を制御するECUである。ボディECU16は、種々の車載アクチュエータ17や、種々の車載センサ18と通信可能に接続されている。ここでの車載アクチュエータ17とは、例えば、各ドア41のロック機構を構成するドアロックモータや、座席位置を調整するためのアクチュエータ(以降、シートアクチュエータ)などである。また、ここでの車載センサ18とは、ドア41毎に配置されているカーテシスイッチなどである。カーテシスイッチは、ドア41の開閉を検出するセンサである。ボディECU16は、例えばスマートECU11からの要求に基づいて、車両Hvの各ドア41に設けられたドアロックモータに所定の制御信号を出力することで各ドア41を施錠したり開錠したりする。
[0054]
 <各車載通信機の役割及び構成について>
 車載システム1は、車載通信機12として、図5~図6に示すように、車室内通信機12α、室外右側通信機12K、室外左側通信機12L、室外後方通信機12M、及びデータ通信機12γを備える。データ通信機12γは、スマートECU11が携帯端末2とデータを送受信する役割を担う車載通信機12である。車室内通信機12α、室外右側通信機12K、室外左側通信機12L、及び室外後方通信機12Mは、携帯端末2から送信された信号の受信強度をスマートECU11に提供する役割を担う車載通信機12である。なお、図5は車両Hvの概念的な上面図であって、種々の車載通信機12の設置位置を説明するために屋根部43を透過させて示している。
[0055]
 車室内通信機12αは、車室内を強電界エリアとするための車載通信機12である。ここでの強電界エリアとは、車載通信機12から送信した信号が所定の閾値(以降、強電界閾値)以上の強度を保って伝搬するエリアである。強電界閾値は、近距離通信の信号としては十分に強いレベルに設定されている。例えば強電界閾値は-35dBm(-0.316μW)である。無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、強電界エリアは別の観点によれば、車載通信機12での携帯端末2から送信された信号の受信強度が強電界閾値以上となるエリアでもある。
[0056]
 車室内通信機12αは前部座席と後部座席の間の床部の車幅方向中央部に埋没されている。なお、車室内通信機12αの設置位置及び搭載姿勢は適宜変更可能である。車室内通信機12αは、センターコンソール48や、トランクエリアの床部に配されていてもよいし、運転席の足元付近、運転席用のドア41の車室内側の面部(以降、室内側面)に配されていても良い。
[0057]
 車室内に配されている車載通信機12の数も適宜変更可能である。換言すれば、車室内通信機12αは複数存在しても良い。車室内通信機12αの数は、2個、3個などであっても良い。車載通信機12の数は4個以上であってもよい。例えば車室内通信機12αとして、運転席の足元付近に配されている車載通信機12と、トランクエリアの床部に配されている車載通信機12の2つの車室内通信機12αを備えていてもよい。また、車室内通信機12αは、左右のBピラー45Bの室内側面にそれぞれ1つずつ配されていても良い。その他、車室内通信機12αは、後部座席用のドア41の室内側面や、後部座席の床面に配置されていても良い。
[0058]
 車室内通信機12αは、車室外が見通し外となる位置に設けられていることが好ましい場合がある。或る車載通信機12にとっての見通し内とは、当該車載通信機12から送信された信号が直接到達可能な領域である。無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、或る車載通信機12にとっての見通し内とは、換言すれば、携帯端末2から送信された信号を当該車載通信機12が直接的に受信可能な領域に相当する。また、或る車載通信機12にとっての見通し外とは、当該車載通信機12から送信された信号が直接到達しない領域である。無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、或る車載通信機12にとっての見通し外とは、換言すれば、携帯端末2から送信された信号を当該車載通信機12が直接的には受信できない領域に相当する。なお、携帯端末2から送信された信号は種々の構造物で反射されることによって見通し外にも到達しうる。
[0059]
 室外右側通信機12Kは、右側エリアLa、すなわち車両Hvの右側に設けられている前部座席用のドア41(以降、前部右側ドア41A)の周辺を強電界エリアとするための車載通信機12である。ここでは運転席が車両Hvの右側に配置されているため、前部右側ドア41Aは運転席用のドアに相当する。
[0060]
 室外右側通信機12Kは、図6に示すように、サイドシル42のうち、前部右側ドア41Aの外側ドアハンドルの下方に位置する部分に取り付けられている。また、室外右側通信機12Kは、上記の搭載位置にて、指向性の中心が上方に向き、且つ、電界振動方向(いわゆる偏波面)がドアパネルに対して垂直となる姿勢で取り付けられている。ここでの垂直とは厳密な垂直に限らず、30°程度傾いていても良い。すなわち、ここでの垂直には略垂直も含まれる。平行や対向といった表現についても同様に30°程度傾いている状態も含まれる。指向性の中心が車両上方に向いた姿勢もまた、指向性の中心が完全に車両上方を向いている姿勢に限定されない。指向性の中心が車両上方に向いているといった表現には、指向性の中心が車両水平面に対して45°以上、上を向いている構成も含まれる。なお、ドア41が樹脂製の場合には、室外右側通信機12Kは、サイドシル42においてBピラー45Bの下方に位置する部分に取り付けられていてもよい。
[0061]
 本実施形態の室外右側通信機12Kは、図7に示すように、長方形状の回路基板30の長手方向における一端に、アンテナ31としてのパッチアンテナ31Aが形成された構成を有している。すなわち、アンテナ31は、平板状の導体である放射素子311と、給電点312と、図示しないグランドパターンとを備える。便宜上以降では、互いに直交するX、Y、Z軸を備える三次元座標系の概念を適宜導入して、室外右側通信機12Kの構成及び取り付け姿勢について説明する。X軸は車幅方向に平行であって、車両右側を正方向とする軸である。Y軸は車両前後方向に平行であって、車両前方を正方向とする軸である。Z軸は、車両高さ方向に平行であって、車両上方を正方向とする軸である。
[0062]
 パッチアンテナ31Aを構成するグランドパターンは、接地電位を提供するための、放射素子311に対向配置された板状の導体部材である。ここでの板状には薄膜状も含まれる。グランドパターンは回路基板30の裏面又は内層部に形成されている。放射素子311は、矩形状に形成されている。放射素子311は、X軸方向の長さが電気的にシステム使用電波の半波長に設定されている。電気的な長さとは、誘電体が提供する波長短縮効果やフリンジング電界の影響を考慮した、実効的な長さを指す。例えばシステム使用電波の半波長とは真空中においては約62mmであるが、ここでは回路基板30が提供する波長短縮効果によって放射素子311のX軸方向の長さは30mm程度に設定されている。Y軸方向の長さは適宜設計されれば良く、例えばX軸方向と同じ長さに設定されている。給電点312は、放射素子311の中心を通ってX軸に平行な直線状に配置されている。給電点312は、給電線34によって送受信部32と接続されている。
[0063]
 パッチアンテナ31Aは、X軸方向に電流が流れるように(換言すれば偏波面がYZ平面と直交するように)に構成されている。図7及び次の図8中に示す白線矢印は、放射電波における電界の振動方向を表している。室外右側通信機12Kを構成する各部材は、防水性を提供するケースとしてのハウジング35に収容された状態で車両Hvに取り付けられる。このような構成を有する室外右側通信機12Kは、図8に示すように、サイドシル42の底部(換言すれば下端部)421にブラケット5を介して固定されている。また、室外右側通信機12Kは、パッチアンテナ31Aの一部又は全部がサイドシル42の側面部(以降、サイドシル側面部)422から車両右側(換言すればX軸正方向)に突出した態様で取り付けられている。
[0064]
 ブラケット5は、室外右側通信機12Kをサイドシル42の底面部421に固定するための構成であって、金属製の板状部材である。室外右側通信機12Kはブラケット5の下面部に留め具51、52によって固定されている。なお、ブラケット5はパッチアンテナ31Aによる電波の送受信を阻害しないように構成されている。すなわち、ブラケット5は、パッチアンテナ31Aを上側から覆わないようにハウジング35と固定されている。留め具51、52は例えばネジである。なお、室外右側通信機12Kをブラケット5に固定するための構成としては、ネジ止めのほか、スナップフィットなど多様な構成を採用可能である。また、ブラケット5は、留め具61によってサイドシルカバー6とともにサイドシル42に固定されている。
[0065]
 樹脂製のサイドシルカバー6は、サイドシル42を保護するための構成である。当該室外右側通信機12Kを内包するようにサイドシル42に取り付けられている。換言すれば、室外右側通信機12Kは、サイドシルカバー6の内側に取り付けられている。サイドシルカバー6は、留め具61によってブラケット5とともにサイドシル42の底面部421に係止されている。なお、サイドシルカバー6は、カーボン製であってもよい。サイドシルカバー6は電波を通す部材を用いて実現されていれば良い。
[0066]
 室外右側通信機12Kをブラケット5に固定するための留め具51、52は、サイドシルカバー6をサイドシル42に固定するための留め具61と兼用されていても良い。ブラケット5をサイドシル42に固定するための留め具は、サイドシルカバー6をサイドシル42に固定するための留め具とは別に設けられていても良い。各部材を固定するための構成は適宜変更可能であって、多様な構成を採用可能である。
[0067]
 図9は、図8に示す放射素子311周辺を拡大した図である。X軸方向におけるサイドシル側面部422と放射素子311の中心との距離である飛出量dXは、例えば、20mmに設定されている。また、高さ方向における底面部421と放射素子311との離隔dZは、36mmに設定されている。dZは高さ方向における底面部421に対する放射素子311の位置を示すパラメータ(以降、相対高さ位置)である。なお、室外右側通信機12Kは、パッチアンテナ31Aがサイドシル42等によって完全に電磁波的に遮蔽されない態様で搭載されていればよい。実体的には放射素子311の少なくとも一部がサイドシル側面部422よりも車両右側へ飛び出した態様で取り付けられていれば良い。
[0068]
 ハウジング35内部における部品の配置態様や、室外右側通信機12Kのサイドシル42への取り付け態様は適宜変更可能である。例えば他の態様として、室外右側通信機12Kは、図10に示すようにパッチアンテナ31Aに対してY軸方向に電子部品が並設された構成を有していても良い。ただし、パッチアンテナ31Aは、X軸方向に電流が流れるように(換言すれば偏波面がYZ平面と直交するように)に構成されているものとする。
[0069]
 当該構成を有する室外右側通信機12Kは、図11に示すように、ブラケット5を用いてサイドシル42の底面部421に取り付けられる。その際、室外右側通信機12Kは、パッチアンテナ31Aがサイドシル側面部422から車両右側(つまりX軸正方向)に飛び出し、かつ、長手方向がY軸に沿う姿勢で取り付けられればよい。室外右側通信機12Kは、ブラケット5の上面に固定されている。
[0070]
 図11に示すように室外右側通信機12Kの下側にブラケット5を取り付ける構成においては、ブラケット5は、放射素子311の下側にも延設されていることが好ましい場合がある。そのようなブラケット5の形成態様によれば、ブラケット5が放射素子311にとっての接地板/反射板として作用するため、パッチアンテナ31Aの指向性をより一層上向きに設定することができる。ところで、図11に示す取り付け位置は、サイドシル42の側方と解することもできる。室外右側通信機12Kはサイドシル42の底面部421又はサイドシル側面部422に取り付けられていればよい。
[0071]
 室外左側通信機12Lは、左側エリアLb、すなわち車両Hvの左側に設けられている前部座席用のドア41(以降、前部左側ドア41B)の周辺を強電界エリアとするための車載通信機12である。ここでは運転席が車両Hvの右側に配置されているため、前部左側ドア41Bは助手席用のドアに相当する。
[0072]
 室外左側通信機12Lは、車両Hvの左側の側面部において、室外右側通信機12Kと反対側となる位置に配置されている。室外左側通信機12Lは、室外右側通信機12Kと対をなす車載通信機12に相当する。室外左側通信機12Lは、前部左側ドア41Bの下方に位置するサイドシル42の底面部421において、指向性の中心が車両上方に向き、且つ、偏波面がドアパネルに対して垂直となる姿勢で配されている。室外左側通信機12Lの内部構成としては室外右側通信機12Kの構成を援用できるため、その具体的には説明は省略する。
[0073]
 室外後方通信機12Mは、トランクドア付近に強電界エリアを形成するための車載通信機12である。室外後方通信機12Mは、車両後端部の車幅方向中央部に配置されている。例えば室外後方通信機12Mは、例えばトランク用のドアハンドルや、ナンバープレート付近、リアバンパの内部/下端部に配されている。例えば室外後方通信機12Mは、リアバンパの底部において、指向性の中心が車両上方(つまりZ軸正方向)に向き、且つ、偏波面がXZ平面に対して垂直となる姿勢で配されている。その際、パッチアンテナ31Aの指向性の中心(いわゆるメインローブ)がボディ等の金属体によって遮られないように、パッチアンテナ31Aの一部又は全部が後端面から車両後方に突出した態様で取り付けられているものとする。室外後方通信機12Mの内部構成としては室外右側通信機12Kの構成を援用できるため、その具体的には説明は省略する。
[0074]
 データ通信機12γは、ユーザ等の操作に基づいて、携帯端末2と鍵交換プロトコルの実行(いわゆるペアリング)を実施済みの車載通信機12である。ペアリングによって取得した携帯端末2についての情報(以降、端末情報)は、通信マイコン33が備える不揮発性のメモリに保存されている。端末情報とは、例えば、ペアリングによって交換した鍵や、端末IDなどである。交換した鍵の保存はボンディングとも称される。なお、車両Hvが複数のユーザによって使用される場合には、各ユーザが保有する携帯端末2の端末情報が保存される。
[0075]
 データ通信機12γは、携帯端末2からのアドバタイズパケットを受信すると、保存済みの端末情報を用いて自動的に携帯端末2との通信接続を確立する。そして、スマートECU11が携帯端末2とデータの送受信を実施する。なお、データ通信機12γは、携帯端末2との通信接続を確立すると、通信接続している携帯端末2の端末IDをスマートECU11に提供する。
[0076]
 Bluetooth規格によれば、暗号化されたデータ通信は、周波数ホッピング方式で実施される。周波数ホッピング方式は、通信につかうチャンネルを時間で次々に切り替えていく通信方式である。具体的にはBluetooth規格では、周波数ホッピング・スペクトル拡散方式(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)によってデータ通信が行われる。Bluetooth Low Energy(以降、Bluetooth LE)では、0番から39番までの40のチャンネルが用意されており、そのうちの0番から36番までの37チャンネルがデータ通信に使用可能である。なお、37番から39番までの3チャンネルは、アドバタイズパケットの送信に供されるチャンネルである。
[0077]
 データ通信機12γは、携帯端末2との通信接続が確立している状態では、37個のチャンネルを逐次変更しながら携帯端末2とデータの送受信を実施する。その際、データ通信機12γは、スマートECU11に対して、携帯端末2との通信に使用するチャンネルを示す情報(以降、チャンネル情報)を逐次提供する。チャンネル情報は、具体的なチャンネル番号であっても良いし、使用チャンネルの遷移規則を示すパラメータ(いわゆるhopIncrement)であってもよい。HopIncrementは、通信接続時にランダムに決定される5から16までの数字である。チャンネル情報は、現在のチャンネル番号と、HopIncrementを含むことが好ましい場合がある。
[0078]
 当該データ通信機12γは、例えばインストゥルメントパネル49の車幅方向中央部に設置されている。なお、データ通信機12γは、車室内及び車室外のドア付近が見通せる位置に配置されていることが好ましい場合がある。車室内及び車室外のドア付近が見通せる位置とは、例えば車室内の天井部分である。故に、データ通信機12γはオーバーヘッドコンソールや、天井部の中央部に設置されていてもよい。なお、携帯端末2がデータ通信機12γの見通し外に存在する場合であっても、構造物での反射等によって携帯端末2とデータ通信機12γとは無線通信を実施しうる。故に、データ通信機12γは、センターコンソール48や、運転席の足元、床部など、車室外が見通し外となる位置に設置されていても良い。
[0079]
 室外右側通信機12Kや、室外左側通信機12L、室外後方通信機12Mといった、車両Hvの外面部に配されている車載通信機12のことを車室外通信機12βとも記載する。ここでの外面部とは、車両Hvにおいて車室外空間に接するボディ部分であって、車両Hvの側面部、背面部、及び前面部が含まれる。加えて、車室外通信機12βのうち、室外右側通信機12K及び室外左側通信機12Lといった、左側面部又は右側面部に配されている車載通信機12のことを、側方通信機とも記載する。なお、車載システム1が備える車室外通信機12βの数は、適宜変更可能である。車室外通信機12βは、2個や、4個などであっても良いし、5個以上であってもよい。
[0080]
 車室内通信機12α及び車室外通信機12βは何れも主として携帯端末2からの信号の受信強度をスマートECU11に報告するための構成である。故に、以降では種々の車室内通信機12α及び車室外通信機12βのことを、強度観測機とも記載する。各強度観測機は、携帯端末2から送信された信号の受信強度をスマートECU11に提供する。なお、前述の通り、強度観測機の一部又は全部はデータ通信機12γとしての役割を担っていても良い。換言すれば、データ通信機12γは強度観測機としての役割を兼ねていてもよい。例えばデータ通信機12γは、センターコンソール48に設置されてあって、車室内通信機12αとしても機能するように構成されていても良い。
[0081]
 <スマートECUの機能について>
 スマートECU11は、上述した位置判定プログラムを実行することで、図12に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、スマートECU11は機能ブロックとして、車両情報取得部F1、通信処理部F2、認証処理部F3、位置判定部F4、及び車両制御部F5を備えている。
[0082]
 車両情報取得部F1は、車両Hvに搭載されたセンサやECU(例えばボディECU16)、スイッチなどから、車両Hvの状態を示す種々の情報(以降、車両情報)を取得する。車両情報としては、例えば、ドア41の開閉状態や、各ドア41の施錠/開錠状態、ドアボタン13の押下の有無、スタートボタン14の押下の有無等が該当する。また、車両情報取得部F1は、上述した種々の情報に基づいて、車両Hvの現在の状態を特定する。例えば車両情報取得部F1は、エンジンがオフであり、全てのドア41が施錠されている場合に、車両Hvは駐車されていると判定する。もちろん、車両Hvが駐車されていると判定する条件は適宜設計されればよく、多様な判定条件等を適用することができる。
[0083]
 各ドア41の施錠/開錠状態を示す情報を取得することは、各ドア41の施錠/開錠状態を判定すること、及び、ユーザによるドア41の施錠操作/開錠操作を検出することに相当する。また、ドアボタン13やスタートボタン14からの電気信号を取得することは、これらのボタンに対するユーザ操作を検出することに相当する。つまり、車両情報取得部F1はドア41の開閉や、ドアボタン13の押下、スタートボタン14の押下などといった、車両Hvに対するユーザの操作を検出する構成に相当する。以降における車両情報には、車両Hvに対するユーザ操作も含まれる。
[0084]
 車両情報に含まれる情報の種類は、上述したものに限らない。図示しないシフトポジションセンサが検出するシフトポジションや、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキセンサの検出結果なども車両情報に含まれる。パーキングブレーキの作動状態もまた車両情報に含めることができる。
[0085]
 通信処理部F2は、データ通信機12γと協働して携帯端末2とのデータの送受信を実施する構成である。例えば通信処理部F2は、携帯端末2宛のデータを生成し、データ通信機12γに出力する。これにより、所望のデータに対応する信号を電波として送信させる。また、通信処理部F2は、データ通信機12γが受信した携帯端末2からのデータを受信する。本実施形態ではスマートECU11と携帯端末2との無線通信は、暗号化して実施されるように構成されている。通信処理部F2としてのスマートECU11は、データ通信機12γからチャンネル情報を取得する。これにより、スマートECU11は、データ通信機12γが携帯端末2との通信に使用されるチャンネルを特定する。
[0086]
 スマートECU11は、データ通信機12γから、データ通信機12γが通信接続している携帯端末2の端末IDを取得する。このような構成によれば、車両Hvが複数のユーザによって共有される車両であっても、スマートECU11は、データ通信機12γが通信接続している携帯端末2の端末IDに基づいて車両Hv周辺に存在するユーザを特定する事ができる。
[0087]
 通信処理部F2は、データ通信機12γから取得したチャンネル情報及び端末IDを、各強度観測機に参照情報として配信する。参照情報に示されるチャンネル情報によって、各強度観測機は、Bluetooth規格が備える多数のチャンネルのうち、何れのチャンネルを受信すれば、携帯端末2からの信号を受信できるのかを認識可能となる。また、強度観測機は、参照情報に示される端末IDによって、複数のデバイスからの信号を受信している場合であっても、何れのデバイスからの信号の受信強度をスマートECU11に報告すべきかを特定可能となる。
[0088]
 認証処理部F3は、データ通信機12γと連携して、携帯端末2を認証する処理(以降、認証処理)を実施する。認証のための近距離通信は、データ通信機12γを介して暗号化されて実施される。つまり、認証処理は暗号通信によって実施される。認証処理自体は、チャレンジ-レスポンス方式など多様な方式を用いて実施されればよい。ここではその詳細な説明は省略する。認証処理に必要なデータ(例えば暗号鍵)などは携帯端末2とスマートECU11のそれぞれに保存されているものとする。
[0089]
 認証処理部F3が認証処理を実施するタイミングは、例えばデータ通信機12γと携帯端末2との通信接続が確立したタイミングとすればよい。認証処理部F3は、データ通信機12γと携帯端末2とが通信接続している間、所定の周期で認証処理を実施するように構成されていても良い。また、ユーザによってスタートボタン14が押下された場合など、車両Hvに対する所定のユーザ操作をトリガとして認証処理のための暗号通信を実施するように構成されていても良い。
[0090]
 本実施形態ではセキュリティ向上のためにスマートECU11及び携帯端末2は、認証等のためのデータ通信を暗号化して実施するように構成されているものとするが、これに限らない。他の態様として、スマートECU11及び携帯端末2は、認証等のためのデータ通信を暗号化せずに実施するように構成されていても良い。
[0091]
 ところで、Bluetooth規格においてデータ通信機12γと携帯端末2との通信接続が確立したということは、データ通信機12γの通信相手が予め登録されている携帯端末2であることを意味する。故に、スマートECU11は、データ通信機12γと携帯端末2との通信接続が確立したことに基づいて、携帯端末2の認証が成功したと判定するように構成されていても良い。
[0092]
 位置判定部F4は、複数の強度観測機のそれぞれから提供される、携帯端末2からの信号の受信強度に基づいて、携帯端末2が車室内に存在するのか否かを判定する構成である。位置判定部F4は、具体的には、携帯端末2からの応答信号の受信状況に基づいて、車室内、作動エリアLx内、及び、エリア外の何れのエリアに携帯端末2が存在するかを判定する。ここでのエリア外とは、車室外のうち、作動エリアLxの外側となる領域を指す。また、エリア外のうち、特に外側ドアハンドルから所定の禁止距離以上となる領域を禁止エリアと称する。禁止距離は後述する盗難防止の観点から2mに設定されている。なお、携帯端末2は基本的にはユーザに携帯されるものであるため、携帯端末2の位置を判定することはユーザの位置を判定することに相当する。禁止距離は1.6mや3mなどであってもよい。禁止エリアの大きさを規定する禁止距離は、車両が使用される地域等に応じて適宜変更されれば良い。
[0093]
 このような位置判定部F4は、携帯端末2の位置を判定するための準備処理として、車載システム1が備える複数の強度観測機から、携帯端末2からの信号の受信強度を逐次取得するとともに、取得した受信強度を取得元毎に区別してRAM113に保存していく。そして、位置判定部F4は、RAM113に保存されている強度観測機毎の受信強度と、フラッシュメモリ112に登録されている種々の判定用閾値に基づいて携帯端末2が車室内に存在するのか否かを判定する。位置判定部F4の具体的な作動、すなわち位置判定部F4が強度観測機毎の受信強度に基づいて携帯端末2の位置を判定する方法の詳細については後述する。なお、位置判定部F4の判定結果は、車両制御部F5によって参照される。
[0094]
 車両制御部F5は、認証処理部F3による携帯端末2の認証が成功している場合に、携帯端末2(換言すればユーザ)の位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を、ボディECU16等と協働して実行する構成である。車両Hvの状態は車両情報取得部F1によって判定される。携帯端末2の位置は位置判定部F4によって判定される。
[0095]
 例えば車両制御部F5は、車両Hvが駐車されている状況下で、携帯端末2が車室外に存在し、ユーザによってドアボタン13が押下された場合には、ボディECU16と連携してドア41のロック機構を開錠する。また、例えば位置判定部F4によって携帯端末2は車室内に存在すると判定されており、かつ、スタートボタン14がユーザによって押下されたことを検出した場合には、エンジンECU15と連携してエンジンを始動させる。
[0096]
 車両制御部F5は、基本的には車両Hvへのユーザ操作をトリガとしてユーザの位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を実行するように構成されている。ただし、車両制御部F5が実施可能な車両制御の中には、車両Hvへのユーザ操作を必要とせずに、ユーザの位置に応じて自動的に実行するものがあってもよい。
[0097]
 <接続関連処理>
 図13に示すフローチャートを用いて車載システム1が実施する接続関連処理について説明する。接続関連処理は、車載システム1が携帯端末2との通信接続の確立に係る処理である。図13に示す接続関連処理は、例えばデータ通信機12γが携帯端末2からのアドバタイズパケットを受信した場合に開始されれば良い。
[0098]
 データ通信機12γと携帯端末2との通信接続が確立されていない場合には、強度観測機に関しては暗電流抑制のために動作を停止させていてもよい。データ通信機12γに関しては、ユーザの接近に対する応答性を高めるために、常に待受状態で動作させておくことが好ましい場合がある。待受状態は携帯端末2からの信号(例えばアドバタイズパケット)を受信可能な状態である。
[0099]
 S101ではデータ通信機12γが携帯端末2との通信接続(換言すればコネクション)を確立してS102に移る。なお、データ通信機12γは携帯端末2との通信接続が確立すると、データ通信機12γと通信接続している携帯端末2の端末IDをスマートECU11に提供する。また、スマートECU11は、データ通信機12γは携帯端末2との通信接続が確立した時点において、強度観測機が休止モードとなっている場合には、強度観測機に対して所定の制御信号を出力し、待受状態に移行させる。休止モードは、例えば信号の受信機能を停止している状態である。休止モードは電源がオフになっている状態も含まれる。
[0100]
 S102ではデータ通信機12γがスマートECU11からの指示に基づいて定期的に暗号通信を実施する。この際にやり取りされるデータの内容は、携帯端末2に対して応答信号の返送を要求するものであれば何でもよい。チャレンジコードなど、携帯端末2を認証するためのデータであってもよい。定期的に携帯端末2と無線通信を実施することで、スマートECU11は、通信エリア内に携帯端末2が存在することを確認することができる。
[0101]
 S103ではデータ通信機12γ及びスマートECU11が協働して、参照情報の共有を開始する。具体的には、データ通信機12γが、通信接続している携帯端末2の端末ID、及び、チャンネル情報をスマートECU11に逐次提供する。また、スマートECU11はデータ通信機12γから提供されたチャンネル情報及び端末IDを参照情報として各強度観測機に逐次配信する。
[0102]
 S104では各強度観測機が、スマートECU11から提供される参照情報を用いて、携帯端末2からの信号の受信強度を観測し始める。すなわち、強度観測機は、Bluetooth規格が備える多数のチャンネルのうち、チャンネル情報に示されている番号のチャンネルを受信対象に設定する。また、強度観測機は、受信対象とするチャンネルを、スマートECU11から提供されるチャンネル情報に応じて順次変更する。
[0103]
 携帯端末2とデータ通信機12γとが周波数ホッピング方式の無線通信を実施する場合であっても、携帯端末2からの信号の受信強度を取得して、スマートECU11に逐次報告される。つまり、車載システム1と携帯端末2との通信の秘匿性(換言すればセキュリティ)を確保している状態で、車載システム1が備える種々の車載通信機12が携帯端末2からの信号の受信強度を検出可能となる。
[0104]
 S105では強度観測機が、参照情報に示される端末IDを含む信号を受信したか否かを判定する。参照情報に示される端末IDを含む信号を受信した場合には、S106に移る。S106では当該受信信号の受信強度をスマートECU11に報告する。つまり、S105~S106では種々の強度観測機が、チャンネル情報に示されるチャンネルで受信した信号のうち、参照情報に示される端末IDを含む信号の受信強度をスマートECU11に報告する。なお、S105において一定時間、携帯端末2からの信号を受信しなかった場合にはS108が実行されればよい。
[0105]
 S107ではスマートECU11が、各強度観測機から提供される受信強度を、提供元としての強度観測機毎に区別してRAM113に保存する処理を実行し、S108に移る。S108ではスマートECU11及びデータ通信機12γが協働して、携帯端末2との通信接続が終了したか否かを判定する。携帯端末2との通信接続が終了した場合とは、例えばデータ通信機12γが携帯端末2からの信号を受信できなくなった場合である。携帯端末2との通信接続が終了した場合にはS108が肯定判定されてS109を実行する。一方、携帯端末2との通信接続がまだ維持されている場合には、S105に戻る。
[0106]
 S109ではスマートECU11が、強度観測機に対して所定の制御信号を出力し、携帯端末2からの信号の受信強度を観測する処理を終了させる。例えばスマートECU11は、例えば強度観測機を休止モードに移行させる。S109での処理が完了すると本フローを終了する。
[0107]
 <位置判定処理>
 図14に示すフローチャートを用いてスマートECU11が実施する位置判定処理について説明する。位置判定処理は、携帯端末2の位置を判定するための処理である。この位置判定処理は、データ通信機12γと携帯端末2との通信接続が確立されている状態において、例えば所定の位置判定周期で実施される。位置判定周期は、例えば200ミリ秒である。位置判定周期は100ミリ秒や300ミリ秒であってもよい。
[0108]
 S201では認証処理部F3が、データ通信機12γと協働して、携帯端末2を認証する処理を実行してS202に移る。なお、S201は省略可能である。また、携帯端末2の認証を実施するタイミングで適宜変更可能である。S202では位置判定部F4が、RAM113に保存されている強度観測機毎の受信強度に基づいて、各強度観測機についての個別強度代表値を算出する。1つの強度観測機についての個別強度代表値とは、当該強度観測機での直近所定時間以内における受信強度を代表的に示す値である。ここでは一例として、個別強度代表値は、直近N個分の受信強度の平均値とする。このような個別強度代表値は、受信強度の移動平均値に相当する。
[0109]
 本実施形態ではNは2以上の自然数であればよく、本実施形態では5とする。この場合、位置判定部F4は直近5つの時点で取得(換言すればサンプリング)された携帯端末2の受信強度を用いて移動平均値を算出することとなる。もちろん、Nは10や20などであってもよい。なお、他の態様としてNは1であってもよい。N=1とする構成は、最新の受信強度をそのまま個別強度代表値として採用する構成に相当する。
[0110]
 具体的には、S202において位置判定部F4は、車室内通信機12αでの個別強度代表値として、車室内通信機12αから提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均値を算出する。なお、仮に車室内通信機12αを複数備える場合には、各車室内通信機12αについて、その車室内通信機12αから提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均をそれぞれ算出する。
[0111]
 位置判定部F4は、室外右側通信機12Kでの個別強度代表値として、室外右側通信機12Kから提供された直近5つの受信強度を母集団とする平均値を算出する。室外左側通信機12L及び室外後方通信機12Mなど、他の車室外通信機12βについても同様に、その車室外通信機12βから提供された直近5つの受信強度の平均値を算出する。
[0112]
 RAM113に保存されている受信強度の数がN個未満である強度観測機の個別強度代表値については、データ欠落分の受信強度として、車載通信機12が検出可能な受信強度の下限値に相当する値を代用して算出されれば良い。車載通信機12が検出可能な受信強度の下限値は、車載通信機12の構成によって決定されればよく、例えば-60dBmなどである。
[0113]
 例えば、携帯端末2に位置に起因して車載システム1が備える複数の強度観測機の一部しか携帯端末2からの信号を受信できていない場合であっても、後続の処理を実施することができる。例えば、携帯端末2が車両Hvの車室外右側に存在することによって室外左側通信機12Lが携帯端末2からの信号を受信できていない場合であっても、それぞれの強度観測機についての個別強度代表値を算出することができる。
[0114]
 本実施形態では直近N個の受信強度の平均値を個別強度代表値として用いるが、これに限らない。個別強度代表値は、直近N個の受信強度の中央値や最大値であってもよい。また、個別強度代表値は、直近N個の受信強度から、最大値と最小値を除去した受信強度の平均値であってもよい。個別強度代表値は、瞬間的な受信強度の変動成分が除去された値である場合がある。S202での処理が完了するとS203に移る。
[0115]
 S203では位置判定部F4が、各車室内通信機12αについての個別強度代表値に基づいて、室内機強度代表値Paを決定する。ここでは一例として車室内通信機12αが1つだけであるため、当該1つの車室内通信機12αについての個別強度代表値をそのまま室内機強度代表値Paとして採用する。なお、他の態様として、車室内通信機12αを複数備える場合には、各車室内通信機12αでの個別強度代表値の最大値、平均値、又は中央値を室内機強度代表値Paとして採用すればよい。
[0116]
 S204では位置判定部F4が、各車室外通信機12βについての個別強度代表値に基づいて、室外機強度代表値Pbを決定する。本実施形態の位置判定部F4は、各車室外通信機12βについての個別強度代表値の最大値を室外機強度代表値Pbとして採用する。S204での処理が完了するとS205に移る。なお、室外機強度代表値Pbは、各車室外通信機12βでの個別強度代表値の平均値、又は中央値であってもよい。
[0117]
 S205では位置判定部F4が、室外機強度代表値Pbが作動閾値Plx以上であるか否かを判定する。作動閾値Plxは、携帯端末2が作動エリアLxに存在すると判定するための閾値である。作動閾値Plxは、作動エリアLx内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値Pbの最小値を基準として設計されればよい。作動エリアLx内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値Pbの最小値は、作動エリアLx内の各地点に携帯端末2を配置したときの室外機強度代表値Pbを測定する試験の結果に基づいて決定されればよい。
[0118]
 仮に、作動エリアLx内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値Pbの最小値が-40dBmであるという試験結果が得られている場合には、作動閾値Plxは最小値-40dBmよりも所定量低い-42dBmに設定されれば良い。なお、作動閾値Plxは、作動エリアLx内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値Pbの最小値以下であって、かつ、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値Pbの最大値以上に設定されていることが好ましい場合がある。そのような技術思想によって作動閾値Plxを設定した構成によれば、室外機強度代表値Pbが作動閾値Plx以上であるということは、携帯端末2が車室内ではなく車室外(特に作動エリアLx)に存在することを意味する。その他、作動閾値Plxは、外側ドアハンドルから2m離れた地点に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値Pbの最大値に所定の裕度を加えた値に設定されていてもよい。
[0119]
 S205の判定処理において、室外機強度代表値Pbが作動閾値Plx以上である場合にはS205を肯定判定してS206に移る。一方、室外機強度代表値Pbが作動閾値Plx未満である場合にはS206を否定判定してS207を実行する。S206では位置判定部F4が、携帯端末2は作動エリアLx内に存在すると判定して本フローを終了する。
[0120]
 S207では位置判定部F4が、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上であるか否かを判定する。車室内相当値Pinは、携帯端末2が車室内に存在すると判定するための閾値である。車室内相当値Pinは適宜試験等によって設計されている。車室内相当値Pinは、例えば空車状態の車室内に携帯端末2のみが存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値を基準として設計されている。空車状態の車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値は、空車状態に設定された車室内の各観測地点での室内機強度代表値を測定する試験の結果に基づいて決定されればよい。仮に、空車状態の車室内に携帯端末2のみが存在する場合に観測されうる室内機強度代表値の最小値が-35dBmであるという試験結果が得られている場合、車室内相当値Pinは最小値-35dBmに所定の裕度を与えた-38dBmに設定されれば良い。なお、ここでの空車状態とは、ユーザによって持ち込まれた荷物や、乗員が存在しない状態を指す。つまり、車室内に予め備え付けられている構成以外の物が存在しない状態を指す。車室内相当値Pinは、運転席に平均的な体格を有する人物が着座している状態に観測されうる室内機強度代表値の最小値を基準として設計されていてもよい。このような技術思想によって車室内相当値Pinを設定した構成によれば、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上であるということは、携帯端末2が車室内に存在することを意味する。
[0121]
 S207の判定処理において、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上である場合にはS207を肯定判定してS208に移る。一方、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin未満である場合にはS207を否定判定してS209を実行する。S208では位置判定部F4が、携帯端末2は車室内に存在すると判定して本フローを終了する。S209では位置判定部F4が、携帯端末2はエリア外に存在すると判定して本フローを終了する。
[0122]
 S206、S208、S209での判定結果は、携帯端末2の位置情報としてRAM113に保存され、車両制御部F5などによって参照される。以降では、車載システム1のように、携帯端末2からの信号の受信強度を用いて携帯端末2の位置を判定する構成のことを、受信強度位置判定システムと称する。
[0123]
 ここではPEPSシステム(特に受信強度位置判定システム)として要求される要件について説明した上で、室外右側通信機12K及び室外左側通信機12Lを上記実施形態として開示の態様(位置及び姿勢)にて取り付けることによる効果について説明する。
[0124]
 PEPSシステムでは、盗難防止の観点から、図15に示すように車両の外面部(例えば外側ドアハンドル)から2m以上離れている場合には無線通信による自動的なドア41の開錠を禁止することが求められることがある。当該要件は、英国保険協会(Association of British Insurers)が設立した団体であるThe Motor Insurance Repair Research Centreの規定に基づくものである。故に、車載システム1は、携帯端末2が車両Hvから2m以内に存在するのか否かを精度良く判別可能に構成されている場合がある。なお、前述の禁止エリアは、当該要件に応じて設定されている。
[0125]
 上記の2mという範囲は1つの指標であって、多くの車両メーカーは、セキュリティ向上の観点から、PEPSシステムが作動するエリア(つまり作動エリアLx)をより狭い範囲に限定することが多い。例えば作動エリアLxは、車両Hvから0.7m以内とする事が多い。すなわち、PEPSシステムとしては、少なくとも携帯端末2が車両Hvから2m以内に存在するのか否かを精度良く判別可能であることを前提として、さらに、携帯端末2が所定の作動エリアLx内に存在するのか否かも精度良く判別することが求められている。加えて、携帯端末2が車室内に存在するのか否かの判定精度もまたPEPSシステムとしては重要な要件である。
[0126]
 受信強度位置判定システムにおいては、室外右側通信機12K及び室外左側通信機12Lは、携帯端末2が作動エリアLx内に存在するか否かに応じて携帯端末2からの信号の受信強度に有意な差が生じるように構成されている場合がある。加えて、受信強度位置判定システムにおいては、室外右側通信機12K及び室外左側通信機12Lは、携帯端末2が車室内に存在するか否かに応じて携帯端末2からの信号の受信強度が顕著に異なるように構成されてもよい。
[0127]
 発明者らは、車両右側側面部における室外右側通信機12Kの設置位置及びそのアンテナ31の姿勢を変えながら、当該アンテナから無線送信された信号の電界強度分布を測定し、これらの最大値を算出した。送信信号の電界強度と受信強度とは厳密には異なる物理量であるが、送受の可逆性からこれらは比例関係にあり、代替特性として採用することができる。その結果を図16に示す。
[0128]
 図16に示すシミュレーション結果はアンテナ31としてダイポールアンテナ31Bを採用した際のシミュレーション結果であるが、アンテナ31としてパッチアンテナ31Aを採用した場合も同様の傾向を示す結果が得られた。図16に示す電界強度は、2402MHzと、2442MHzと、2480MHzの3チャネルの電界強度の最大値を示す。送信出力は30dBmとしている。
[0129]
 図16における第1姿勢とは、アンテナ31としてのダイポールアンテナ31BがX軸に平行となる姿勢を指す。第1姿勢は、換言すれば、メインローブが車幅方向(換言すればX軸)に直交する方向に向き、且つ、偏波面が車両側面部に対して垂直となる姿勢に相当する。なお、ダイポールアンテナ31Bは、放射素子の軸に対して回転対称なドーナツ状の放射指向性(別の観点によれば8の字特性)を有する。ダイポールアンテナ31Bにとってメインローブとは、放射素子の軸に直交する方向を指すものとする。なお、パッチアンテナ31Aにとっての第1姿勢とは、放射素子311(換言すれば指向性の中心)がZ軸方向を向き、且つ、偏波面がYZ平面に直交する姿勢に相当する。
[0130]
 第2姿勢とは、アンテナ31としてのダイポールアンテナがY軸に平行となる姿勢を指す。第2姿勢は、メインローブが車両遠心方向に形成される姿勢に相当する。ここでの車両遠心方向とは、車両水平面に平行であって、車両から遠ざかる方向に相当する。車両水平面とは、車両の高さ方向に直交する平面を指す。車両水平面はXY平面に相当する。室外右側通信機12Kにとっての車両遠心方向とは車両右方向を指す。また、室外左側通信機12Lにとっての車両遠心方向とは車両左方向を指す。なお、パッチアンテナ31Aにとっての第2姿勢とは、放射素子311(換言すれば指向性の中心)がX軸正方向を向き、且つ、偏波面がXZ平面に直交する姿勢に相当する。
[0131]
 第3姿勢とは、アンテナ31としてのダイポールアンテナがZ軸に並行となる姿勢を指す。第3姿勢もまたメインローブが車両遠心方向に形成される姿勢に相当する。なお、パッチアンテナ31Aにとっての第3姿勢とは、放射素子311(換言すれば指向性の中心)がX軸正方向を向き、且つ、偏波面がZY平面に直交する姿勢に相当する。
[0132]
 アンテナ31としてのダイポールアンテナ31BをBピラー45Bに搭載した構成においては、次のような傾向が見られる。アンテナ31を第2姿勢及び第3姿勢で取り付けた場合には、窓部付近で強電界となる一方、作動エリアLxの下方(例えばドアの側方)の電界強度が低レベルとなる。また、禁止エリアでの電界強度も相対的に高レベルとなる領域が生じる。故に、作動エリアLxの下方と禁止エリアとの識別が困難となる。また、アンテナ31としてのダイポールアンテナ31Bを第1姿勢で取り付けた場合には、作動エリアLxの概ね全体が強電界エリアとなるが、車室内もまた相対的に電界強度が高レベルとなってしまう。なお、ここでの強電界とは、例えば136[dBuV/m]以上を指す。
[0133]
 これに対し、アンテナ31をサイドシル42(具体的にはその底面部421)に搭載した構成によれば、Bピラー45Bに搭載した構成に比べて、車室内での電界強度が低下する。例えばサイドシル42に第1姿勢で取り付けた場合には、Bピラー45Bに同じ第1姿勢で取り付けた場合に比べて、車室内での電界強度の平均値は10dB以上低い値となる。故に、アンテナ31をサイドシル42に取り付けた構成によれば、アンテナ31をBピラー45Bに搭載した構成に比べて、携帯端末2が作動エリアLxに存在するのか車室内に存在するのかを判別しやすくなる。
[0134]
 アンテナ31の取付位置としてサイドシル42を採用した構成における、アンテナ31の取付姿勢による違いとしては、次のような傾向が見られる。すなわち、アンテナ31を第1姿勢で取り付けることで、エリア外での電界強度を低レベルに抑制することができる。また、作動エリアLxにおいては全体的に電界強度が高レベルになる。すなわち、アンテナ31をサイドシル42に第1姿勢で取り付けることにより、携帯端末2が作動エリアLx内にいるのかエリア外にいるのかの識別精度を高めることができる。
[0135]
 アンテナ31の取付位置としてサイドシル42を採用した構成において、アンテナ31を第2、第3姿勢で取り付けた場合には、車両遠心方向にメインローブが向くため、エリア外での電界強度が相対的に高レベルとなってしまう。加えて、アンテナ31の取付位置としてサイドシル42を採用した構成において、アンテナ31を第3姿勢で取り付けた場合には、作動エリアLx内上部での電界強度が低レベルとなり、携帯端末2が作動エリアLxに存在するのかエリア外に存在するのかの判別が困難となる。
[0136]
 以上の試験結果より、アンテナ31は、サイドシル42にて、指向性の中心が車両上方(Z軸正方向)に向いた姿勢で取り付けられることが分かる。そのような取付位置及び姿勢によれば、作動エリアLx内とエリア外で電界強度(別の観点によれば受信強度)に有意な差を生じさせることができる。また、車室内での受信強度を低レベルに抑制できる。よって、携帯端末2がエリア外、作動エリアLx内、車室内の何れに存在するのかを携帯端末2からの信号の受信強度を用いて高精度で判別可能となる。
[0137]
 アンテナ31をサイドシル42にメインローブが車両上方に向く姿勢で取り付ける場合において、アンテナ構造としてダイポールアンテナを採用した場合と、パッチアンテナを採用した場合の電界強度分布の試験結果を図17に示す。図17の(A)は、アンテナ31をダイポールアンテナとした構成の電界強度分布を示しており、図17の(B)は、アンテナ31をパッチアンテナとした構成の電界強度分布を示している。
[0138]
 アンテナ31としてダイポールアンテナを採用した構成においては、図17に示すように、作動エリアLx内にヌル領域Rnが形成される。ここでのヌル領域Rnとは、電界強度が他の領域よりも相対的に大きく低下しまう領域である。この原因としては次の作用が考えられる。アンテナ構造としてダイポールアンテナを採用した場合には、車両上方向だけでなく、車両下方向にも相対的に強い電波が放射される。ダイポールアンテナは、放射素子の軸に対して回転対称な、ドーナツ状の放射指向性(放射パターン)を有するためである。アンテナ31としてのダイポールアンテナから車両下方向に放射された電波は、地面で反射され、ダイポールアンテナから上向きに直接放射された電波(以降、直接波)と干渉しうる。その結果、作動エリアLxの一部には、地面で反射された電波(以降、地面反射波)と上向きの直接波とが弱め合うように干渉することでヌル領域Rnが形成されると考えられる。このようにアンテナ31としてダイポールアンテナ31Bを採用した構成においてはヌル領域Rnが生じうるため、携帯端末2の位置を誤判定することが相対的に高い。
[0139]
 これに対して、アンテナ構造としてパッチアンテナを採用した構成によれば、放射素子311から車両下方に向けては相対的に強い電波は放射されない。パッチアンテナはその構造上、バックローブはメインローブに比べて無視できるほど小さくなるためである。そのため、アンテナ構造としてパッチアンテナを採用した構成によれば、地面からの反射波に起因するヌル領域Rnが生じにくい。その結果、作動エリアLxにおける電界強度を全体的に高レベルに設定できる。また、作動エリアLxでの電界強度のばらつきを抑制できる。
[0140]
 以上の試験結果より、アンテナ31としてはダイポールアンテナよりもパッチアンテナの好適であり、取付位置としてはサイドシル42が好適であり、取付姿勢としては第1姿勢が好適であることが分かる。以降では、本実施形態のように、パッチアンテナ31Aをサイドシル42においてメインローブが車両上方に向き、且つ、偏波面が側面部に垂直となる姿勢で取り付けた構成のこと主提案構成と称する。また、アンテナ31としてパッチアンテナ以外の種類のアンテナを採用した上で、当該アンテナ31をサイドシル42に、メインローブが上に向き、且つ、偏波面が側面部に垂直となる姿勢で取り付けた構成のことを副提案構成と称する。パッチアンテナ以外のアンテナとしては、ダイポールアンテナや、モノポール、逆Fアンテナ、逆Lアンテナなど、多様なアンテナを採用可能である。なお、ダイポールアンテナや、モノポール、逆Fアンテナ、逆Lアンテナといった線状の放射素子311を採用可能なアンテナのことを線状アンテナとも記載する。なお、偏波面が側面部に垂直となる取付姿勢とは、主偏波面が側面部に垂直となる取付姿勢に限定されない。アンテナとして副偏波が十分に強いレベルとなるアンテナを採用する場合には、副偏波面が側面部に垂直となる取り付け姿勢もまた、偏波面が側面部に垂直となる取り付け姿勢に該当する。十分に強い副偏波とは、例えば主偏波とのレベル差が5dB以内となるものを指す。
[0141]
 さらに、発明者らは主提案構成にて、飛出量dX、及び、高さ方向における底面部421に対する放射素子311の位置を示す相対高さ位置dZを変えながら当該アンテナから無線送信された信号の電界強度分布を測定した結果を図18、図19に示す。なお、図18では、送信電力を他の図とは30dBmほど低下させた状態でシミュレーションを行った。そのため、図18に示す電界強度は全体的に他の図に比べて低い値となっている。図18に示すシミュレーション結果においては、例えば106[dBuV/m]以上となる領域を強電界エリアとみなすことができる。
[0142]
 なお、正の飛出量dXは、サイドシル側面部422から放射素子311が外側へ飛び出している状態を表し、負の飛出量dXは、サイドシル側面部422よりも車両内側に入り込んでいる態様を表す。正の相対高さ位置dZは、放射素子311が底面部421よりも下側に位置する状態を表す。すなわち、負の相対高さ位置dZは、放射素子311が底面部421より上側に位置する状態を表す。なお、負の相対高さ位置dZは、図11で示すように、放射素子311が完全にサイドシル側面部422よりも外側に位置している場合にのみ取りうる。
[0143]
 図18の(A)は飛出量dX=0mm、相対高さ位置dZ=36mmに設定した場合の電界強度分布のシミュレーション結果を示している。(B)は飛出量dX=-40mm、相対高さ位置dZ=36mmに設定した場合の電界強度分布のシミュレーション結果を示している。(C)は、飛出量dX=40mm、相対高さ位置dZ=36mmに設定した場合の電界強度分布のシミュレーション結果を示している。(D)は飛出量dX=0mm、相対高さ位置dZ=17mmに設定した場合の電界強度分布のシミュレーション結果を示している。
[0144]
 以降では、作動エリアLx内での電界強度が何れの領域においても禁止エリアでの最大電界強度以上となる構成を、誤判定率を所定の目標レベルに抑制可能な構成と評する。作動エリアLx内の何れの領域でも電界強度が禁止エリアでの最大電界強度以上となる構成においては、作動閾値Plxを禁止エリアでの最大電界強度に設定することにより、作動エリアLxの全領域にて携帯端末2は作動エリアLxに存在すると判定可能になるためである。
[0145]
 なお、誤判定率を所定の目標レベルに抑制可能な構成とは、誤判定率を所定の目標レベルに抑制可能な作動閾値Plxを設定可能である(換言すればそのような値が存在する)構成に相当する。ここでの誤判定率は、作動エリアLx全体のうち、携帯端末2はエリア外に存在すると誤判定する領域が占める割合を指す。故に、誤判定率を所定の目標レベルに抑制可能な閾値を設定可能な構成とは、より具体的には、携帯端末2はエリア外に存在すると誤判定される領域が占める割合が所定の許容範囲の上限値(以降、許容上限値)未満となる閾値が存在する構成に相当する。許容上限値は、PEPSシステムの精度として要求されるレベルに応じて適宜設計されるべきパラメータである。ここでは0%に設定しているが、3%や5%などであっても良い。
[0146]
 図18の(A)に示すように、飛出量dX=0mm、相対高さ位置dZ=36mmに設定した場合には、作動エリアLx内が全体的に強電界となるとともに、作動エリアLxとエリア外(特に禁止エリア)とで電界強度に有意な差が生じた。また、作動エリアLx内の何れの領域でも電界強度がエリア外での最大電界強度以上となった。つまり、上記構成によれば、誤判定率を所定の目標レベルに抑制可能であることがわかった。
[0147]
 図18の(B)に示すように、飛出量dX=-40mmに設定した構成、すなわち、放射素子311の中心が車体下に入り込んだ構成においては、作動エリアLx内に電界強度がエリア外での最大電界強度を下回る領域が存在した。具体的には、作動エリアLxの上方領域(例えば窓部付近)において、電界強度がエリア外での最大電界強度を下回った。すなわち、上記構成では誤判定率を所定の目標レベルに抑制困難であることがわかった。なお、上記の理由は、アンテナ31のメインローブの大半/全部がボディ(例えばサイドシル42)によって遮られるためであると推測される。
[0148]
 図18の(C)に示すように、飛出量dX=40mm、相対高さ位置dZを36mmに設定した構成においては、作動エリアLxの下方領域(例えばアンテナ31の側方)において、電界強度がエリア外での最大電界強度を下回った。すなわち、上記構成では誤判定率を所定の目標レベルに抑制困難であることがわかった。これは、パッチアンテナ自体が車両遠心方向への指向性を持っていないためであると考えられる。具体的には、次の通りである。放射素子311の中心がサイドシル側面部422より大きく飛び出した構成では、放射素子311から放射された電波がサイドシル側面部422で車両遠心方向(換言すれば車両側方)に向けて反射されるといった事象が生じにくい。そのため、図18の(C)に示すように、作動エリアLxの下方領域(例えばアンテナ31の側方)において、電界強度がエリア外での最大電界強度を下回りやすくなる。
[0149]
 飛出量dX=40mmに設定した構成に対して、飛出量dXを抑えた構成において良好な電界強度分布が得られる理由は、放射素子311とサイドシル42とが、メインローブの一部がサイドシル側面部422で反射される位置関係となっているためと考えられる。すなわち、飛出量dX=0mm、相対高さ位置dZ=36mmに設定した構成では、放射素子311から放射された電波の一部がサイドシル側面部422で車両遠心方向に向けて反射される事により、アンテナ31の側方での電界強度が高まっている。このような試験結果を鑑みると、アンテナ31として指向性アンテナを採用する場合には、メインローブの中心を車両上方に向けつつ、その一部(例えば半分)がサイドシル側面部422や底面部421にぶつかる姿勢にて取り付けることが好ましい場合がある。放射素子311から放射された電波を車両遠心方向に向けて反射する構成には、放射素子311から放射された電波を車両遠心方向から±45°程度、上/下に傾いた方向に向けて反射する構成も含まれる。
[0150]
 図18の(D)に示すように、飛出量dX=0mm、相対高さ位置dZ=17mmに設定した構成においては、作動エリアLx内の上側領域にて、電界強度が禁止エリアでの最大電界強度を下回った。つまり、上記構成では誤判定率を所定の目標レベルに抑制困難である。これは、放射素子311と底面部421との距離が近すぎると、放射素子311から放射された電波が回折しにくくなるためであると考えられる。また、放射素子311からの電波の大半がサイドシル42の底面部421で反射される構成では、車両上方に回折できない電波が反射によって車幅方向に分散してしまう。その結果、禁止エリアでの電界強度も相対的に高まり、誤判定の要因となりうる。
[0151]
 図18の(A)と(D)に示す試験結果を鑑みると、放射素子311と底面部421との離隔dZは、放射素子311から放射された電波が車両上方に回折しうる程度に大きいことが好ましい場合がある。
[0152]
 図19は、飛出量dX、及び、相対高さ位置dZとの組み合わせ毎に、誤判定率を所定の目標レベルに抑制可能であったか否かを判定した結果を示している。図19中の丸記号“○”は誤判定率を所定の目標レベルに抑制可能な構成であることを示し、バツ印“×”は誤判定率を所定の目標レベルに抑制困難な構成であることを示している。図19に示す試験結果からも飛出量dXは0mm~20mm程度に設定されてもよい。そのような構成によれば、放射素子311からの電波の一部は直接的に車両上方に向かって伝搬するとともに、一部がサイドシル側面部422で反射されて車両遠心方向に向かうためである。また、放射素子311とサイドシル42とは直線距離で26mm以上離れてもよい。そのような構成によれば、放射素子311からの電波の一部は回折や反射によって車両上方に向かうためである。
[0153]
 室外右側通信機12Kとして主提案構成を採用し、さらに放射素子311の飛出量dXを20m、相対高さ位置dZを36mmに設定した態様によれば、放射電波の大半が車両上方へと向かうため、窓部付近を強電界にできる。また、サイドシル側面部422が反射板として作用し、放射電波の一部が車両遠心方向へと伝搬しうる。その結果、作動エリアLx全体における電界強度を高レベルに設定できるとともに、作動エリアLxと禁止エリアとで電界強度に有意な差を生じさせることができる。無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、作動エリアLxと禁止エリアとで電界強度に有意な差があることは、携帯端末2が作動エリアLxに存在する場合と禁止エリアに存在する場合とで、観測される受信強度に有意な差が生じることを意味する。
[0154]
 故に、上記の構成によれば、携帯端末2からの信号の受信強度を用いて携帯端末2の位置を判定する構成において、携帯端末2の位置を誤判定することを低減できる。なお、以上では主として室外右側通信機12Kの作用効果について説明したが、当該説明は室外左側通信機12Lについても同様のことが言える。
[0155]
 以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
[0156]
 なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[0157]
 [変形例1]
 上述した実施形態では位置判定部F4は、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上である場合に、携帯端末2は車室内に存在すると判定する態様を開示したが、携帯端末2が車室内に存在するか否かの判定アルゴリズムはこれに限らない。携帯端末2が車室内に存在するか否かを判定するアルゴリズムとしては多様なアルゴリズムを採用可能である。例えば位置判定部F4は、室内機強度代表値Paが室外機強度代表値Pb以上であることに基づいて携帯端末2は車室内に存在すると判定するように構成されていても良い。
[0158]
 位置判定部F4は、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上であって、かつ、室外機強度代表値Pbが所定の車室外相当値Pout未満であることに基づいて、携帯端末2は車室内に存在すると判定するように構成されていてもよい。ここで導入される車室外相当値Poutは、携帯端末2は車室外に存在すると判定するための閾値であって、作動閾値Plxとは異なるパラメータである。車室外相当値Poutは、車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値に所定の裕度(例えば3dBm)を与えた値に設定されればよい。車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値は、車室内の各地点に携帯端末2を配置したときの室外機強度代表値を測定する試験の結果に基づいて決定されればよい。車室外相当値Poutは車室内に携帯端末2が存在する場合に観測されうる室外機強度代表値の最大値以上に設定されているため、室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上であるということは、携帯端末2が車室外に存在することを意味する。
[0159]
 以上の判定アルゴリズムでは、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上であって且つ室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout未満である場合に携帯端末2は車室内に存在すると判定する。また、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上であっても室外機強度代表値Pbが車室外相当値Pout以上である場合や、室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin未満である場合には、携帯端末2は車室外に存在すると判定する。なお、車室外相当値Poutは、車室内通信機12αが車室外に形成する漏れ領域内に携帯端末2が存在する場合に観測される室外機強度代表値の最小値に設定されていても良い。漏れ領域は、車室外において室内機強度代表値Paが車室内相当値Pin以上となる領域である。漏れ領域となりうる領域は、主として窓部44付近である。ここでの窓部44付近とは窓枠から数cm~数10cm以内となる範囲を指す。
[0160]
 位置判定部F4は、室内機強度代表値Paと、ハイレベル閾値と、ローレベル閾値と、を用いて、携帯端末2が車室内に存在するか否かを判定するように構成されていても良い。ハイレベル閾値は、携帯端末2は車室内に存在すると判定するための閾値である。ハイレベル閾値は、ローレベル閾値よりも相対的に高い値に設定されている。例えばハイレベル閾値は、試験等によって特定される、携帯端末2が車室内(特に運転席周辺)に存在する場合の室内機強度代表値Paを基準として設計されればよい。ハイレベル閾値は、上述した試験結果に基づいて、携帯端末2が禁止エリアに存在する場合に観測される室内機強度代表値Paよりも十分に大きい値に設定されていればよい。例えばハイレベル閾値は、-40dBmに設定される。ローレベル閾値は、携帯端末2は車室外に存在すると判定するための閾値である。ローレベル閾値の具体的な値も、ハイレベル閾値と同様に、携帯端末2の位置と室内機強度代表値Paとの対応関係を試験した結果に基づいて適宜設計されればよい。ローレベル閾値は、ハイレベル閾値よりも10dBm以上低い値に設定されていることが好ましい。例えば-50dBmに設定される。上記構成において、位置判定部F4は、室内機強度代表値Paがいったんハイレベル閾値以上となった場合には、室内機強度代表値Paがローレベル閾値未満となるまで、携帯端末2は車室内に存在すると判定する。また、室内機強度代表値Paがいったんローレベル閾値未満となった場合には、室内機強度代表値Paがハイレベル閾値以上となるまで、携帯端末2は車室外に存在すると判定するように構成されていても良い。携帯端末2が作動エリアLxに存在するか否かについても、携帯端末2が車室内に存在するのか否かの判定と同様に、多様な判定アルゴリズムを適用可能である。
[0161]
 [変形例2]
 パッチアンテナ31Aは、縮退分離素子や摂動素子として機能する切り欠き部を設けたり、給電点を2箇所に設けたりして、円偏波を送受信可能に構成してもよい円偏波を送受信するように構成されていても良い。そのような構成によれば、携帯端末2の姿勢に応じて車載通信機12での受信強度が変動することを低減できる。
[0162]
 また、給電点を2箇所に設けた構成においては、動作させる給電点を交互に切り替えるように構成されていても良い。そのような構成によっても携帯端末2の姿勢に応じて車載通信機12での受信強度が変動することを低減できる。
[0163]
 [変形例3]
 ブラケット5は、図20に示すように、アンテナ31を底面部421に固定するための本体部53に加えて、アンテナ31から放射された電波を車両側方(具体的には車両遠心方向)に向けて反射するための構成(以降、反射部)54を設けられていても良い。本体部53も反射部54も板状の導体部材である。当該L字型のブラケット5は、1枚の金属板を折り曲げ加工することによって製造されれば良い。本体部53に対する反射部54の角度は、所望の作動エリアLxが形成されるように調整されれば良い。本体部53(ひいては放射素子311)に対する反射部54の角度θは60°~90°の範囲において適宜調整されれば良い。このような構成によれば、放射素子311が形成する強電界エリアを車両遠心方向に肥大化させることができる。
[0164]
 [変形例4]
 上述した反射部54に相当する構成は、ハウジング35の内部に設けられていても良い。つまり、室外右側通信機12K及び室外左側通信機12Lは、図21に示すように、放射素子311の近傍に放射電波を車両遠心方向に反射するための反射体36が配置されていても良い。当該反射体36は、別の観点によれば、車両遠心方向から到来した電波を放射素子311に向けて反射する構成に相当する。反射体36は、例えば平板状の金属体である。放射素子311に対して反射体36がなす角度φは、所望の指向性が得られるように60°~90°の範囲において適宜調整されれば良い。
[0165]
 このような構成によれば、パッチアンテナ31Aが提供する、車両遠心方向に対する指向性(例えば受信感度)を強めることができる。なお、図22における破線は一般的なパッチアンテナの指向性を表している。また、図22の実線は、反射体36の存在によって矯正された、室外右側通信機12Kの実効的な指向性を表している。室外左側通信機12Lにも同様の構成を適用することにより、車両遠心方向(具体的にはX軸負方向)の指向性を強化/肥大化させることができる。なお、反射体36の表面には放射電波の反射方向や反射量を調整するための凹凸が形成されていても良い。放射素子311の近傍とは、例えば放射素子311から50mm以内となる領域を指す。放射素子311の近傍には、少なくともハウジング35内が含まれる。なお、放射素子311の近傍とは、アンテナ31の近傍に相当する。
[0166]
 上記の反射部54や反射体36は、パッチアンテナ31A以外のアンテナ(例えばダイポールアンテナ31B等)を、パッチアンテナと同様の指向性を有するアンテナとして機能させるための構成として、放射素子311の下方に設けられていてもよい。反射部54や反射体36は、パッチアンテナ31A以外のアンテナを採用している場合にも、指向性を矯正/調整するための部材として放射素子311の近傍に設置可能である。また、反射部54や反射体36は、パッチアンテナ31Aの車両上方への指向性を強めるために放射素子311の下方に設けられていても良い。
[0167]
 [変形例5]
 上述した変形例4では反射体36を用いてアンテナ31の指向性(ひいてはアンテナ31が形成する強電界エリア)を所定の作動エリアLxに適合するように矯正する態様を開示したが、アンテナ31の指向性を矯正する方法はこれに限らない。例えば、図23に示すように放射素子311の上側に電磁波を屈折、分散させるためのプリズム体37を配置することで、アンテナ31の指向性を車両遠心方向に肥大化させても良い。
[0168]
 プリズム体37の材料としては任意の樹脂材料を採用することができる。プリズム体37は、屈折率の違いを利用して放射電波の進行方向を車両遠心方向に曲げるように構成されていればよい。図23では一例としてプリズム体37を、ドーム状に形成している態様を示しているが、その具体的な形状は適宜変更可能である。この変形例によっても、プリズム体37の形状等を適宜調整することにより、変形例4と同様の効果を奏する。また、プリズム体37は、図24に示すように、ハウジング35と一体成形されていても良い。換言すれば、ハウジング35は、その一部がプリズム体37として機能するように構成されていても良い。なお、プリズム体37は、プリズム体37が無い場合に比べて放射電波の進行方向を少なくとも5°程度、車両遠心方向に近づけるものであればよい。プリズム体37は、放射電波の進路を完全に車両遠心方向に向けるものでなくとも良い。
[0169]
 [変形例6]
 サイドシル42は図25に示すように、サイドシル側面部422が多段形状に構成されていても良い。アンテナ31としての放射素子311は、メインローブが車両上方に向いた姿勢で取り付けられていればよい。なお、図25に示す態様では、指向性の中心方向にはサイドシルの第2底部423が位置することになるが、第2底部423と放射素子311とが高さ方向において十分に離れているため、回折によって作動エリアLxの上方にも強電界エリアが形成されうる。
[0170]
 [変形例7]
 上述した実施形態では、側方通信機を、サイドシル42の底部付近にて、放射素子311の指向性の中心が車両上方に向いた姿勢で取り付けた態様を開示したが、作動エリアLxを強電界エリアとするための構成はこれに限らない。側方通信機(例えば室外右側通信機12K)は、地面が反射板として作用しうることを鑑みて、図26に示すように、サイドシル42の底部付近にて、放射素子311の指向性の中心が下に向いた姿勢で取り付けられていても良い。このような構成によっても、上述した実施形態と同様の効果を奏する。また、本変形例によれば、実施形態として開示の構成に比べて、放射素子311から窓部44付近までの電波の伝播経路が長くなるため、前部右側ドア41A付近に形成される強電界エリアを肥大化させることができる。なお、本変形例にて開示の構成は、指向性の中心が完全に車両下方を向いている姿勢に限定されない。指向性の中心が車両水平面に対して45°以上、下方を向いている姿勢が指向性の中心が車両下方に向いた姿勢に該当する。
[0171]
 [変形例8]
 上述した実施形態では、金属製のボディを備える車両Hvに本開示に係る位置判定システムを適用した態様を開示したが、位置判定システムの適用先として好適な車両は、金属製のボディを備える車両に限らない。例えば車両Hvのボディを構成する種々のボディパネルは、電波の伝搬を5dB以上減衰させるほど十分な量のカーボンが充填されているカーボン系樹脂を用いて形成されていてもよい。このようなボディを備える車両もまた、位置判定システムの適用対象として好適である。
[0172]
 また、車両Hvのボディパネルは、車両Hvのボディパネルがカーボンを含まない汎用樹脂を用いて形成されていてもよい。車両Hvのボディパネルがカーボンを含まない汎用樹脂を用いて形成されている場合には、ボディパネルの表面に電波の伝搬を遮断する機能を奏する特定の金属パターンが設けられてもよい。電波の伝搬を遮断する機能を奏する金属パターン(以降、シールドパターン)とは、例えば銀ナノワイヤなどの細線導体を電波の12波長以下の間隔で格子状に配置したパターンなどである。ここでの細線とは、線幅が50μm以下のものを指すこととする。なお、上記のシールドパターンは、メタ・サーフェス構造を援用して実現することができる。
[0173]
 また、車両Hvのボディは、汎用樹脂製のボディの上に、金属粉やカーボン粉末を含む塗料が塗られることによって電波の伝搬を遮断するように構成されていてもよい。さらに、電波の伝搬を遮断するフィルム(以降、シールドフィルム)がボディに貼り付けられていてもよい。このようなボディを備える車両も位置判定システムの適用対象として好適である。
[0174]
 [変形例9]
 アンテナ31を、サイドシル42にて、指向性の中心が車両上方(Z軸正方向)に向いた姿勢で取り付けた構成を開示したが、アンテナ31の取り付け姿勢は、これに限定されない。アンテナ31は指向性の中心が車両遠心方向を向く姿勢で搭載されてあってもよい。その場合には、変形例3~5にて開示されている構成を援用し、車両上方にも強電界エリアが形成されるように、例えば反射体36やプリズム体37がアンテナ31の周辺に設けられてもよい。
[0175]
 [他の変形例]
 上述した実施形態では車載通信機12は、アンテナ31と送受信部32等の電子部品とを一体的に備えるもの(いわゆる回路一体型アンテナ)としたがこれに限らない。送受信部32や通信マイコン33は、アンテナ31とは別の筐体に収容されていてもよい。サイドシルカバー6の形状は適宜変更可能である。また、サイドシルカバー6は必須の要素ではなく、省略可能である。
[0176]
 本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。なお、ここでの制御部には、スマートECU11など車載システム1が備える種々のECUが含まれる。つまり、スマートECU11が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。スマートECU11が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。
[0177]
 ここで、この出願に記載されるフローチャート、あるいは、フローチャートの処理は、複数のセクション(あるいはステップと言及される)から構成され、各セクションは、たとえば、S101と表現される。さらに、各セクションは、複数のサブセクションに分割されることができる、一方、複数のセクションが合わさって一つのセクションにすることも可能である。さらに、このように構成される各セクションは、デバイス、モジュール、ミーンズとして言及されることができる。

請求の範囲

[請求項1]
 車両のユーザによって携帯される携帯端末と1GHz以上の電波を用いて無線通信することで前記車両に対する前記携帯端末の位置を判定する車両用の位置判定システムであって、
 前記車両の側面部に設置されており、前記携帯端末から送信される無線信号を受信するためのアンテナ(31)と、前記アンテナにて受信した無線信号の受信強度を検出する強度検出部(321)と、を有する車室外通信機(12K、12L、12γ)と、
 前記車室外通信機が検出した前記携帯端末からの無線信号の受信強度である室外機強度に基づいて、車室外において前記車両から所定の作動距離以内となる領域である作動エリアに前記携帯端末が存在するか否かを判定する位置判定部(F4)と、を備え、
 前記車室外通信機は、前記車両のドアの下方において、前記アンテナの指向性の中心が上又は下に向いた姿勢で設置されている位置判定システム。
[請求項2]
 請求項1に記載の位置判定システムであって、
 前記車室外通信機は、送信信号の一部が前記側面部によって車両側方へ向けて反射される姿勢で取り付けられている位置判定システム。
[請求項3]
 請求項1又は2に記載の位置判定システムであって、
 前記アンテナは、指向性アンテナであって、指向性の中心が上方に向いた姿勢で搭載されている位置判定システム。
[請求項4]
 請求項1又は2に記載の位置判定システムであって、
 前記アンテナは、指向性アンテナであって、指向性の中心が下方に向いた姿勢で搭載されている位置判定システム。
[請求項5]
 請求項3又は4に記載の位置判定システムであって、
 前記アンテナの近傍には、電磁波を車両側方に向けて反射するための反射体(36、54)が配置されている位置判定システム。
[請求項6]
 請求項4又は5に記載の位置判定システムであって、
 前記アンテナの近傍には、前記アンテナから放射される電波の進路を車両側方へと屈折させるためのプリズム体(37)が配置されている位置判定システム。
[請求項7]
 請求項1から6の何れか1項に記載の位置判定システムであって、
 前記車室外通信機は、前記アンテナの偏波面が前記側面部に対して垂直となる姿勢で搭載されている位置判定システム。
[請求項8]
 請求項1から7の何れか1項に記載の位置判定システムであって、
 前記車両の車室内に設置されており、前記携帯端末から送信される無線信号を受信するとともに、受信した無線信号の受信強度を検出する車室内通信機(12α)を備え、
 前記位置判定部は、
 前記車室外通信機で検出された前記受信強度である室外機強度が所定の作動閾値以上であることに基づいて前記携帯端末は前記作動エリア内に存在すると判定するとともに、
 前記車室内通信機で検出された前記受信強度である室内機強度が所定の車室内相当値以上であることに基づいて前記携帯端末は車室内に存在すると判定するように構成されている位置判定システム。
[請求項9]
 請求項1から7の何れか1項に記載の位置判定システムであって、
 前記車両の車室内に設置されており、前記携帯端末から送信される無線信号を受信するとともに、受信した無線信号の受信強度を検出する車室内通信機(12α)を備え、
 前記位置判定部は、
 前記車室外通信機で検出された前記受信強度である室外機強度が所定の作動閾値以上であることに基づいて、前記携帯端末は前記作動エリアに存在すると判定するとともに、
 前記室外機強度が前記作動閾値未満であって、且つ、前記車室内通信機で検出された前記受信強度が前記室外機強度よりも大きいことに基づいて前記携帯端末は車室内に存在すると判定するように構成されている位置判定システム。
[請求項10]
 請求項1から9の何れか1項に記載の位置判定システムであって、
 前記アンテナは、パッチアンテナ又は線状アンテナであることを特徴とする位置判定システム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]