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1. WO2020116588 - フェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法

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明 細 書

発明の名称 フェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009  

発明の効果

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066  

実施例

0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077  

産業上の利用可能性

0078  

符号の説明

0079  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : フェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法

技術分野

[0001]
 本開示は、フェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 近年、火力発電においては熱効率を高めるため蒸気条件の高温高圧化が進められており、将来的には650℃、350気圧という超々臨界圧条件での操業が計画されている。フェライト系耐熱鋼は、オーステナイト系耐熱鋼またはNi基耐熱鋼に比べて安価であるばかりでなく、熱膨張係数が小さいという高温用鋼としての利点を有するため広く利用されている。
[0003]
 フェライト系耐熱鋼については、将来的な蒸気条件の過酷化に対応すべく、例えば、特許文献1または特許文献2のようにWとMoの含有量を最適化するとともに、Co、およびBを含有させることにより高強度化を図った材料が提案されている。また、特許文献3に開示されているようにマルテンサイトラス界面に析出する炭化物または金属間化合物相を積極的に活用することにより、高強度化を図った材料などが種々提案されている。
[0004]
 さらに、最近では、フェライト系耐熱鋼を溶接構造物として使用する場合の課題である、溶接継手の溶接熱影響部(以下、単に「HAZ」とも称す)のクリープ強度低下の抑制を目的としたフェライト系耐熱鋼が種々提案されている。例えば、特許文献4には、Bを0.003%~0.03%含有させることにより、HAZでの細粒化を抑えることによりHAZでのクリープ強度低下を抑制できるフェライト系耐熱鋼が開示されている。また、特許文献5および特許文献6には、多量のBを含有するとともに、溶接入熱またはBの含有量に応じてCの含有量を調整することで、HAZの強度低下を抑制するとともに、溶接時の液化割れを防止できるフェライト系耐熱鋼がそれぞれ開示されている。
[0005]
 ところで、これら多量のBを含有するフェライト系耐熱鋼は溶接して使用されるのが一般的である。そのため、溶接時に使用する溶接材料として、例えば、特許文献7には、Bを0.0005%~0.006%含有し、かつ(Mo+W)/(Ni+Co)を所定の範囲に調整することにより、クリープ強度と靭性の両立を図ったフェライト系耐熱鋼用溶接材料が提案されている。また、特許文献8には、任意でBを0.0005%~0.006%含有するとともに、(Mo+W)/(Ni+Co)および(0.5×Co+0.5×Mn+Ni)に加えて、Cr当量を調整することにより、クリープ強度と靭性の両立を図ったフェライト系耐熱鋼用溶接材料が提案されている。また、特許文献9にはB:0.007%~0.015%を含有するとともに、(Cr+6Si+1.5W+11V+5Nb+10B-40C-30N-4Ni-2Co-2Mn)を所定の範囲に調整することにより、優れたクリープ強度と靭性を両立するフェライト系耐熱鋼用溶接材料が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0006]
 特許文献1: 特開平4-371551号公報
 特許文献2: 特開平4-371552号公報
 特許文献3: 特開2002-241903号公報
 特許文献4: 特開2004-300532号公報
 特許文献5: 特開2010-7094号公報
 特許文献6: 国際公開第2008/149703号
 特許文献7: 特開平8-187592号公報
 特許文献8: 特開平9-308989号公報
 特許文献9: 国際公開第2017/104815号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 ところで、これら多量のBを含有するフェライト系耐熱鋼の溶接には、安定して優れたクリープ強度が得られるため、Ni基耐熱合金用溶接材料が用いられることもある。しかしながら、溶接金属に凝固割れが発生する場合がある。
[0008]
 本開示は、上記現状に鑑みてなされたもので、多量のBを含有するフェライト系耐熱鋼母材を多層溶接する際に、Ni基耐熱合金用溶接材料を用いても安定して凝固割れを抑制することが可能なフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 上述の状況を踏まえて検討を重ねた結果、本発明者らは、以下の手段により上記課題を解決し得ることを見出した。
<1>
 Bを0.006質量%~0.023質量%含むフェライト系耐熱鋼母材をNi基耐熱合金用溶接材料で多層溶接する多層溶接工程を有し、
 前記多層溶接工程での初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の横断面における、溶融した前記フェライト系耐熱鋼母材の面積[S BM]と溶接金属の面積[S WM]との比が、前記フェライト系耐熱鋼母材に含有されるBの質量%[%B BM]に対して下記(1)式を満たす溶接条件で初層溶接を行うフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法。
 0.1≦[S BM]/[S WM]≦-50×[%B BM]+1.3・・・(1)
<2>
 前記フェライト系耐熱鋼母材が、質量%で、
C:0.04%~0.15%、
Si:0.05%~0.80%、
Mn:0.10%~1.00%、
P:0%~0.020%、
S:0%~0.010%、
Cr:8.0%~10.0%、
MoおよびWの少なくとも一種を合計:0.5%~4.0%、
NbおよびTaの少なくとも一種を合計:0.02%~0.30%、
V:0.05%~0.40%、
B:0.006%~0.023%
N:0.002%~0.025%、
Al:0%~0.030%、並びに
O:0%~0.020%を含み、残部がFeおよび不純物からなる<1>に記載のフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法。
<3>
 前記フェライト系耐熱鋼母材が、前記Feの一部に代えて、質量%で、下記群より選択される少なくとも一種の元素を含有する<2>に記載のフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法。
群 Co:4.0%以下、
  Ni:1.00%以下、
  Cu:1.0%以下、
  Ti:0.30%以下、
  Ca:0.050%以下、
  Mg:0.050%以下、
  REM:0.100%以下
<4>
 前記Ni基耐熱合金用溶接材料が、質量%で、
C:0.005%~0.180%、
Si:0.02%~1.20%、
Mn:0.02%~4.00%、
P:0%~0.020%、
S:0%~0.010%、
Co:0%~15.0%、
Cu:0%~0.80%、
Cr:16.0%~25.0%、
Mo:0%~12.0%、
NbおよびTaの少なくとも一種を合計:0%~4.50%、
Ti:0%~1.00%、
Fe:0%~6.00%、
N:0%~0.050%、
Al:0.002%~1.800%、並びに
O:0%~0.020%を含み、残部がNiおよび不純物からなる<1>~<3>のいずれか一つに記載のフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法。

発明の効果

[0010]
 本開示によれば、多量のBを含有するフェライト系耐熱鋼母材をNi基耐熱合金用溶接材料を用いて多層溶接する場合でも、安定して凝固割れを抑制することが可能なフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法を提供できる。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 本開示に係るフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法における、初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の横断面を示す概略断面図である。
[図2] 実施例において開先加工を施した板材の形状を示す概略断面図である。

発明を実施するための形態

[0012]
 以下、本開示の実施形態に係るフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法について詳述する。
 本明細書中の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
 本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。含有量を「0%~X%」(Xは数値)と記載している元素は任意元素であり、その元素を含まなくてもよいし(すなわち、0%)、0%超~X%の範囲で含んでもよいことを意味する。
[0013]
[フェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法]
 本開示に係るフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法は、Bを0.006%~0.023%含むフェライト系耐熱鋼母材をNi基耐熱合金用溶接材料で多層溶接する多層溶接工程を有する。
 そして、前記多層溶接工程での初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の横断面における、溶融した前記フェライト系耐熱鋼母材の面積[S BM]と溶接金属の面積[S WM]との比が、前記フェライト系耐熱鋼母材に含有されるBの質量%[%B BM]に対して下記(1)式を満たす溶接条件で初層溶接を行う。
 0.1≦[S BM]/[S WM]≦-50×[%B BM]+1.3・・・(1)
[0014]
 本発明者らは、前記した課題を解決するために詳細な調査を行った。その結果、以下に述べる知見が明らかになった。
(1)Bを0.006%~0.023%含むフェライト系耐熱鋼母材をNi基耐熱合金用溶接材料を用いて溶接する場合、初層の溶接金属に凝固割れが発生しやすい。この理由は、溶接時に母材が溶融することにより、母材に含まれるBが溶接金属中に流入するためである。
[0015]
(2)初層溶接金属に発生する凝固割れを抑制するためには、フェライト系耐熱鋼用母材のBの含有量に応じて、初層溶接金属への母材の溶融量を所定の範囲に管理する必要があることがわかった。具体的には、初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の横断面における、溶融したフェライト系耐熱鋼母材の面積[S BM]と溶接金属(初層溶接金属)の面積[S WM]との比を、フェライト系耐熱鋼母材に含有されるBの量(質量%)[%B BM]に対して、{-50×[%B BM]+1.3}以下とする必要があることを明らかにした。
[0016]
 ここで、比[S BM]/[S WM]の上限値を、{-50×[%B BM]+1.3}との式で規定した理由について説明する。即ち、この関係は、Bの含有量[%B BM]が異なる様々なフェライト系耐熱鋼母材を用いて試験を行い、比[S BM]/[S WM]と凝固割れ発生有無の関係を調査した結果、[S BM]/[S WM]が{-50×[%B BM]+1.3}より小さい場合に、凝固割れを抑制できることが実験的に導出されたものである。
[0017]
(3)フェライト系耐熱鋼母材の溶融を抑えることが、安定した凝固割れの抑制に有効である一方、極端に母材の溶融を抑えた場合、別の溶接欠陥、いわゆる融合不良または裏波不良が生じやすくなることがわかった。そして、これを抑制するためには、初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の横断面における溶融したフェライト系耐熱鋼母材の面積[S BM]と溶接金属(初層溶接金属)の面積[S WM]との比が0.1以上となるよう初層溶接を管理することが有効であることが併せて明らかとなった。
[0018]
 以上の知見から、本開示において、フェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法を限定する理由は次の通りである。
 Bを0.006%~0.023%含むフェライト系耐熱鋼母材を、Ni基耐熱合金用溶接材料を用いて多層溶接する場合、初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の横断面における、溶融したフェライト系耐熱鋼母材の面積[S BM]と溶接金属(初層溶接金属)の面積[S WM]との比[S BM]/[S WM]は、フェライト系耐熱鋼母材に含有されるBの質量%[%B BM]に応じて、{-50×[%B BM]+1.3}以下とする。
[0019]
 比[S BM]/[S WM]が{-50×[%B BM]+1.3}以下であれば、初層溶接中に母材からBが溶接金属に流入しても、最終凝固部の残留液相中に濃化するB量が少なくなるため、凝固温度の低下が抑えられると考えられる。これにより、初層溶接金属における凝固割れが抑制される。
 比[S BM]/[S WM]が、{-50×[%B BM]+1.3}を上回ると、初層溶接中に母材からBが溶接金属に過剰に流入する。溶接金属に過剰に流入したBは、溶接金属の凝固時に最終凝固部の残留液相中に濃化し、凝固温度を低下させ凝固割れを生じさせるものと考えられる。
[0020]
 溶接金属の凝固割れ抑制のためには、比[S BM]/[S WM]は、小さくするほど好ましいが、0.1を下回ると、母材の溶融量が小さくなるため、融合不良または裏波不良が発生しやすくなる。そのため、比[S BM]/[S WM]を0.1以上とする。さらに好ましくは0.2以上である。
[0021]
 上記理由により、比[S BM]/[S WM]の好ましい範囲を下記(1)式に規定した。
 0.1≦[S BM]/[S WM]≦-50×[%B BM]+1.3・・・(1)
[0022]
 ・比[S BM]/[S WM]の制御方法
 比[S BM]/[S WM]は、初層溶接時の溶接条件、例えば、溶接入熱、溶接材料の供給速度、開先形状、ギャップ、溶接方法及びシールドガス種等を適正に管理することにより所定の範囲とすることができる。
[0023]
 ・[S BM]、[S WM]の測定方法
 [S BM]および[S WM]は、以下の通り求められる。
 即ち、初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の横断面を現出する。例えば、現出した横断面は、図1に示すような断面となる。この横断面について、溶接金属(初層溶接金属)4の面積[S WM]および元の開先形状から溶融したフェライト系耐熱鋼母材の面積[S BM]を、画像解析により求めることができる。
[0024]
 なお、前記横断面は、突き合わせた母材2A及び2B同士の突き合わせ面に直交する方向の断面とする。前記横断面の現出は、初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部における定常部、即ち、アークスタート部およびクレーター部を除く、溶接ビードが安定して形成された箇所を切断して現出させる。
 溶接金属(初層溶接金属)4の面積[S WM]とは、初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の前記横断面における、溶接金属4(母材2A及び2Bの初層溶接によって溶融したと考えられる部分も含む)の面積を指す。
 溶融したフェライト系耐熱鋼母材の面積[S BM]とは、母材2A及び2Bの初層溶接によって溶融したと考えられる部分の、初層溶接前における面積を指す。
[0025]
 横断面の画像解析は、具体的には以下のようにして行う。
 前述の現出した溶接部横断面の画像データから溶接金属4部分、即ち、面積[S WM]に相当する領域を他の領域とは識別するために色分けする。画像データ上で開先加工時の幾何学情報から、母材2A及び2Bにおける初層溶接時に溶融した部分、即ち、面積[S BM]に相当する領域を同様に他の領域と識別するために色分けする。そして、それぞれ色分けされた領域の面積を市販の画像解析処理ソフトを用いて測定する。
[0026]
 次に本開示で用いられるフェライト系耐熱鋼用母材の化学組成は、Bの含有量が0.006%~0.023%の鋼組成であれば特に限定されるものではないが、以下に示す組成であることが好ましい。以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
[0027]
B:0.006%~0.023%
 Bは、マルテンサイト組織を得るのに有効であるとともに、高温での使用中に炭化物を旧オーステナイト境界およびマルテンサイトラス境界に微細分散させ、組織の回復を抑制し、クリープ強度の向上に大きく寄与する。また、溶接熱影響部のクリープ強度の低下の軽減にも有効な元素である。その効果を得るためには、0.006%以上含有させる。しかしながら、過剰に含有させると、溶接中に溶接金属に流入し、凝固割れ感受性を高めるとともに、靭性低下を招く。そのため、上限を0.023%とする。B含有量の好ましい下限は0.007%、好ましい上限は0.018%、さらに好ましい下限は0.008%、さらに好ましい上限は0.015%である。
[0028]
C:0.04%~0.15%
 Cは、マルテンサイト組織を得るのに有効であるとともに、高温使用時に微細な炭化物を生成し、クリープ強度の確保に寄与する。その効果を十分得るためには、0.04%以上含有すればよい。しかしながら、0.15%を超えて含有する場合には、クリープ強度向上の効果が飽和するため、0.15%以下とする。C含有量の好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.13%である。さらに好ましい下限は0.07%、さらに好ましい上限は0.11%である。
[0029]
Si:0.05%~0.80%
 Siは、脱酸剤として含有されるが、耐水蒸気酸化特性に有効な元素である。その効果を得るためには、0.05%以上含有させる。しかしながら、過剰に含有する場合、クリープ延性および延性の低下を招く。そのため、Siの含有量は0.80%以下とする。Si含有量の好ましい下限は0.10%であり、好ましい上限は0.60%である。さらに好ましい下限は0.20%、さらに好ましい上限は0.50%である。
[0030]
Mn:0.10%~1.00%
 Mnは、Siと同様、脱酸剤として含有されるが、マルテンサイト組織を得るのにも効果を有する元素である。その効果を得るためには、0.10%以上含有する。しかしながら、Mnを過剰に含有する場合、クリープ脆化を招くため、Mnの含有量は1.00%以下とする。Mn含有量の好ましい下限は0.20%であり、好ましい上限は0.80%である。さらに好ましい下限は0.30%、さらに好ましい上限は0.70%である。
[0031]
P:0%~0.020%
 Pは、不純物として含まれ、過剰に含有するとクリープ延性を低下させる。そのため、Pの含有量は0.020%以下とする。Pの含有量は0.018%以下とするのが好ましく、さらには0.016%以下とするのがより好ましい。Pの含有量は少ないほどよく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は材料コストを極端に増大させる。そのため、P含有量の好ましい下限は0.0005%、さらに好ましい下限は0.001%である。
[0032]
S:0%~0.010%
 Sは、Pと同様に不純物として含まれ、過剰に含有するとクリープ延性を低下させる。そのため、Sの含有量は0.010%以下とする。Sの含有量は0.008%以下とするのが好ましく、さらには0.005%以下とするのがより好ましい。Sの含有量は少ないほどよく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は製造コストを極端に増大させる。そのため、S含有量の望ましい下限は0.0002%である。
[0033]
Cr:8.0%~10.0%
 Crは、高温での耐水蒸気酸化性および耐食性の確保のために有効な元素である。また、高温での使用中に炭化物として析出し、クリープ強度の向上にも寄与する。これらの効果を十分に得るためには、8.0%以上のCrを含有すればよい。しかしながら、過剰に含有すると、炭化物の安定性を低下させてクリープ強度が低下するため、Crの含有量は10.0%以下とする。Cr含有量の好ましい下限は8.3%であり、好ましい上限は9.8%である。さらに好ましい下限は8.5%、さらに好ましい上限は9.5%である。
[0034]
MoおよびWの少なくとも一種を合計:0.5%~4.0%
 MoおよびWは、いずれもマトリックスに固溶もしくは金属間化合物として長時間使用中に析出し、高温でのクリープ強度確保に寄与する元素である。この効果を得るためには、少なくとも一種を合計で0.5%以上含有すればよい。しかしながら、4.0%を超えて含有すると、クリープ強度向上の効果が飽和するとともに、非常に高価な元素であるため、材料コストを増大させる。そのため、4.0%以下とする。好ましい下限は0.8%であり、好ましい上限は3.8%である。さらに好ましい下限は1.0%であり、さらに好ましい上限は3.5%である。
[0035]
NbおよびTaの少なくとも一種を合計:0.02%~0.30%
 NbおよびTaは、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度の向上に寄与する。その効果を得るためには、少なくとも一種を合計で0.02%以上含有すればよい。しかしながら、含有量が過剰になると、多量かつ粗大に析出し、クリープ強度およびクリープ延性の低下を招く。そのため、0.30%を上限とする。含有量の好ましい下限は0.04%であり、好ましい上限は0.25%である。さらに好ましい下限は0.06%、さらに好ましい上限は0.20%である。
[0036]
V:0.05%~0.40%
 Vは、NbおよびTaと同様、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度の向上に寄与する。その効果を得るためには、0.05%以上含有させる。しかしながら、含有量が過剰になると、多量かつ粗大に析出し、クリープ強度およびクリープ延性の低下を招く。そのため、Vの含有量は0.40%を上限とする。好ましい下限は0.10%であり、好ましい上限は0.35%である。さらに好ましい下限は0.15%、さらに好ましい上限は0.25%である。
[0037]
N:0.002%~0.025%
 Nは、高温での使用中に微細な窒化物として粒内に微細に析出し、クリープ強度の向上に寄与する。この効果を得るためには、0.002%以上含有させる。しかしながら、過剰に含有すると、窒化物の粗大化を招き、クリープ延性の低下を招く。そのため、Nの含有量は、0.025%を上限とする。好ましい下限は0.004%であり、好ましい上限は0.020%である。さらに好ましい下限は0.006%、さらに好ましい上限は0.015%である。
[0038]
Al:0%~0.030%
 Alは、脱酸剤として含有されるが、多量に含有すると清浄性を著しく害し、加工性を劣化させる。また、クリープ強度の観点からも好ましくない。そのため、Alの含有量は0.030%以下とする。好ましくは0.025%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。下限は特に設ける必要はなく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は製造コストを増大させる。そのため、0%超でもよく、0.001%以上とするのが好ましい。ここで言うAlとはSol.Al(固溶Al)を指す。
[0039]
O:0%~0.020%
 Oは、不純物として存在するが、多量に含まれる場合には、加工性を低下させる。そのため、Oの含有量は0.020%以下とする。好ましくは0.018%以下、さらに好ましくは0.015%以下である。下限は特に設ける必要はなく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は製造コストを増大させる。そのため、0%超でもよく、0.001%以上とするのが好ましい。
[0040]
 さらに、本開示で用いられるフェライト系耐熱鋼用母材は、母材に含まれるFeの一部に代えて、下記の第1群から第3群までの少なくとも1つの群に属する少なくとも一種の元素を含有してもよい。下記にその限定理由を述べる。
[0041]
第1群 Co:4.0%以下、Ni:1.00%以下、Cu:1.0%以下
Co:4.0%以下(0%~4.0%)
 Coは、含有量が0%でもよいし、マルテンサイト組織を得、クリープ強度を向上させるのに有効な元素であるため含有させてもよい。しかしながら、過剰に添加すると、クリープ強度およびクリープ延性がかえって低下する。加えて、非常に高価な元素であるため、材料コストを増大させる。そのため、Coの含有量は4.0%以下とする。好ましい上限は3.8%であり、さらに好ましい上限は3.5%である。含有させる場合の好ましい下限は0.05%、さらに好ましい下限は0.1%である。
[0042]
Ni:1.00%以下(0%~1.00%)
 Niは、含有量が0%でもよいし、Coと同様、マルテンサイト組織を得るのに有効であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、上記のCo含有量範囲においては、1.00%を超えて含有しても、その効果は飽和するとともに、高価な元素であるため、1.00%を上限とする。好ましい上限は0.80%であり、さらに好ましくは0.60%以下である。含有させる場合の好ましい下限は0.05%、さらに好ましい下限は0.10%である。
[0043]
Cu:1.0%以下(0%~1.0%)
 Cuは、含有量が0%でもよいし、CoおよびNiと同様、マルテンサイト組織の生成に有効であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、1.0%を超えて含有すると、クリープ延性を低下させるため、1.0%以下とする。好ましい上限は0.8%であり、さらに好ましくは0.6%以下である。含有させる場合の好ましい下限は0.05%、さらに好ましい下限は0.1%である。
[0044]
第2群 Ti:0.30%以下(0%~0.30%)
 Tiは、含有量が0%でもよいし、Nb、VおよびTaと同様、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、クリープ強度の向上に寄与するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、含有量が過剰になると、多量かつ粗大に析出し、クリープ強度およびクリープ延性の低下を招く。そのため、0.30%を上限とする。さらに好ましくは0.20%以下である。含有させる場合の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい下限は0.04%である。
[0045]
第3群 Ca:0.050%以下、Mg:0.050%以下、REM:0.100%以下
Ca:0.050%以下(0%~0.050%)
 Caは、含有量が0%でもよいし、製造時の熱間加工性を改善する効果を有するため、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、過剰の添加は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間加工性を劣化させるため0.050%以下とする。好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。含有させる場合の好ましい下限は0.0005%である。さらに好ましい下限は0.001%である。
[0046]
Mg:0.050%以下(0%~0.050%)
 Mgは、含有量が0%でもよいし、Caと同様、製造時の熱間加工性を改善する効果を有するため、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、過剰の添加は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間加工性を劣化させるため0.050%以下とする。好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。含有させる場合の好ましい下限は0.0005%である。さらに好ましい下限は0.001%である。
[0047]
REM:0.100%以下(0%~0.100%)
 REMは、含有量が0%でもよいし、CaおよびMgと同様、製造時の熱間加工性を改善する効果を有するため、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、過剰の添加は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間加工性を劣化させるため0.100%以下とする。好ましくは0.080%以下、さらに好ましくは0.060%以下である。含有させる場合の好ましい下限は0.010%である。さらに好ましい下限は0.020%である。
[0048]
 「REM」とはSc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。REMについては一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REMの量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
[0049]
 本開示で用いられるNi基耐熱合金用溶接材料の化学組成は、特に限定されるものではないが、以下に示す組成であることが好ましい。以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
[0050]
C:0.005%~0.180%
 Cは、オーステナイト生成元素であり、溶接金属の高温使用時のオーステナイト組織の安定性を高めるのに有効な元素である。その効果を得るためには0.005%以上含有させる。しかしながら、過剰に含有すると、炭化物として多量に析出し、クリープ延性または高温での耐食性を低下させる。そのため、Cの含有量は0.180%以下とする。好ましい下限は0.008%、好ましい上限は0.150%である。さらに好ましい下限は0.010%、さらに好ましい上限は0.120%である。
[0051]
Si:0.02%~1.20%
 Siは、脱酸剤として添加されるが、溶接金属の耐水蒸気酸化特性に有効な元素である。その効果を得るためには、0.02%以上含有させる。しかしながら、過剰に含有すると、溶接金属の凝固割れ感受性を増大させるため、Siの含有量は1.20%を上限とする。好ましい下限は0.05%、好ましい上限は1.00%である。さらに好ましい下限は0.1%、さらに好ましい上限は0.80%である。
[0052]
Mn:0.02%~4.00%
 Mnは、Siと同様、脱酸剤として添加されるが、溶接金属の高温での組織の安定性を高めるのに有効な元素である。その効果を得るためには0.02%以上含有させる。しかしながら、過剰に含有すると脆化を招くため、Mnの含有量は4.00%以下とする。好ましい下限は0.05%、好ましい上限は3.50%である。さらに好ましい下限は0.08%、さらに好ましい上限は3.00%である。
[0053]
P:0%~0.020%
 Pは、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に凝固割れ感受性を増大させるとともに、クリープ延性の低下を招く。そのため、Pの含有量は0.020%以下とする。Pの含有量は0.018%以下とするのが好ましく、さらには0.016%以下とするのが好ましい。Pの含有量は少ないほどよく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は材料コストを極端に増大させる。そのため、P含有量の好ましい下限は0.0005%、さらに好ましい下限は0.001%である。
[0054]
S:0%~0.010%
 Sは、Pと同様に不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に凝固割れ感受性を増大させるとともに、クリープ延性の低下を招く。そのため、Sの含有量は0.010%以下とする。Sの含有量は0.008%以下とするのが好ましく、さらには0.005%以下とするのが好ましい。Sの含有量少ないほどよく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は製造コストを極端に増大させる。そのため、S含有量の好ましい下限は0.0001%、さらに好ましい下限は0.0002%である。
[0055]
Co:0%~15.0%
 Coは、溶接材料中に必ずしも含有されなくともよいが、溶接金属の高温での組織を安定化し、クリープ強度を向上させるのに有効な元素であるので含有させてもよい。しかしながら、過剰に添加すると、クリープ強度およびクリープ延性がかえって低下する。加えて、非常に高価な元素であるため、材料コストを増大させる。そのため、上限を15.0%とする。好ましい上限は14.5%、さらに好ましい上限は14.0%である。含有量が0%であってもよいが、0%超でもよく、含有させる場合の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい下限は0.05%である。
[0056]
Cu:0%~0.80%
 Cuは、Coと同様、溶接材料中に必ずしも含有されなくともよいが、溶接金属の高温での組織を安定化し、クリープ強度を向上させるのに有効な元素であるので含有させてもよい。しかしながら、過剰に添加すると、クリープ延性がかえって低下する。そのため、上限を0.80%とする。好ましい上限は0.60%、さらに好ましい上限は0.50%である。含有量が0%であってもよいが、0%超でもよく、含有させる場合の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい下限は0.05%である。
[0057]
Cr:16.0%~25.0%
 Crは、溶接金属の高温での耐水蒸気酸化性および耐食性に有効な元素である。また、高温での使用中に炭化物として析出し、クリープ強度の向上にも寄与する。これらの効果を得るためには、16.0%以上含有させる。しかしながら、過剰に含有すると、高温での組織安定性を低下させてクリープ強度が低下するため、Crの含有量は25.0%以下とする。Cr含有量の好ましい下限は16.5%であり、好ましい上限は24.5%である。さらに好ましい下限は17.0%、さらに好ましい上限は24.0%である。
[0058]
Mo:0%~12.0%
 Moは、溶接材料中に必ずしも含有されなくともよいが、マトリックスに固溶し、溶接金属の高温でのクリープ強度確保に寄与する元素であるので含有させてもよい。しかしながら、過剰な含有は、高温での組織安定性を低下させ、クリープ強度をかえって低下させる。そのため、12.0%以下とする。好ましい上限は11.5%、さらに好ましい上限は11.0%である。含有量が0%であってもよいが、0%超でもよく、含有させる場合の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい下限は0.05%である。
[0059]
NbおよびTaの少なくとも一種を合計:0%~4.50%
 NbおよびTaは、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度の向上に寄与するため含有させてもよい。しかしながら、含有量が過剰になると、多量かつ粗大に析出し、却ってクリープ強度およびクリープ延性の低下を招く。そのため、4.50%を上限とする。好ましい上限は4.20%、さらに好ましい上限は4.00%である。含有量が0%であってもよいが、0%超でもよく、含有させる場合の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい下限は0.05%である。
[0060]
Ti:0%~1.00%
 Tiは、NbおよびTaと同様、溶接材料中に必ずしも含有されなくともよいが、高温での使用中に微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属のクリープ強度の向上に寄与するため含有させてもよい。しかしながら、含有量が過剰になると、多量かつ粗大に析出し、却ってクリープ強度およびクリープ延性の低下を招く。そのため、1.00%を上限とする。好ましい上限は0.90%、さらに好ましい上限は0.80%である。含有量が0%であってもよいが、0%超でもよく、含有させる場合の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい下限は0.05%である。
[0061]
Fe:0%~6.00%
 Feは、溶接材料中に必ずしも含有されなくともよいが、溶接材料の製造時に熱間での変形能を改善する効果を有するため、含有させてもよい。しかしながら過剰に含有する場合、合金の熱膨張係数が大きくなるとともに、耐水蒸気酸化性も劣化する。その含有量は6.00%を上限とする。好ましくは5.50%以下、さらに好ましくは5.00%以下である。含有量が0%であってもよいが、0%超でもよく、含有させる場合の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましい下限は0.02%である。
[0062]
N:0%~0.050%
 Nは、高温での溶接金属組織安定性を高めるのに有効な元素であるが、過剰に含有する場合、高温での使用中に多量の窒化物の析出を招き、靭性および延性を低下させるため、0.050%以下とする。Nの含有量は0.030%以下とするのが好ましく、0.010%以下とするのがさらに好ましい。N含有量の下限は特に設けず、つまり含有量が0%であってもよいが、0%超でもよく、好ましい下限は0.0005%、さらに好ましい下限は、0.001%である。
[0063]
Al:0.002%~1.800%
 Alは、Niと結合して金属間化合物として粒内に微細に析出し,溶接金属のクリープ強度向上に貢献する。この効果を得るためには、0.002%以上含有する。一方で、過剰に含有すると金属間化合物相の過剰な析出を招き、靭性を低下させる。そのため、Al含有量は1.800%以下とする。Al含有量の好ましい下限は0.005%であり、望ましい上限は1.600%である。さらに好ましい下限は0.010%であり、さらに好ましい上限は1.500%である。
[0064]
O:0%~0.020%
 Oは、不純物として含有されるが、多量に含まれる場合には、溶接金属の延性を低下させる。そのため、0.020%を上限とする。Oの含有量は0.015%以下とするのが好ましく、0.010%以下とするのがさらに好ましい。Oの含有量は可能な限り低減することが好ましく、つまり含有量が0%であってもよいが、極度の低減は材料コストの増大を招くため、0%超でもよく、好ましい下限は0.0005%である。さらに好ましい下限は、0.001%である。
[0065]
 本開示に係るフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法を実施する場合、例えば、上述した化学組成を有するフェライト系耐熱鋼母材とNi基耐熱合金用溶接材料を用い、母材の開先形状、ギャップ、溶接方法、溶接材料の供給速度、溶接入熱、シールドガス種などの溶接条件を調整して初層溶接を行う。次いで、初層溶接後の溶接部横断面における、溶融した母材の面積[S BM]と溶接金属の面積[S WM]を画像処理により測定し、その比[S BM]/[S WM]を求めて、式(1)を満たす溶接条件を見出す。
 式(1)を満たす溶接条件で初層溶接を行い、続けて第二層以降の溶接を行って多層溶接を行う。
[0066]
 ・用途
 本開示に係るフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法によって製造されるフェライト系耐熱鋼溶接継手を有する溶接構造物は、例えば発電用ボイラ等、高温で使用される機器に用いられる。
 高温で使用される溶接構造物の例としては、例えば石炭火力発電プラント、石油火力発電プラント、ごみ焼却発電プラントおよびバイオマス発電プラント等のボイラ用配管;石油化学プラントにおける分解管;等が挙げられる。
 ここで、本開示における「高温での使用」とは、例えば350℃以上700℃以下(さらには400℃以上650℃以下)の環境で使用される態様が挙げられる。
実施例
[0067]
 以下、実施例によって本開示に係るフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法をより具体的に説明するが、本開示に係るフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0068]
 表1に示す化学組成を有するA~Hの材料を実験室にて溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延により成形、焼き入れ、焼き戻しの熱処理を行った後、板厚12mm、幅50mm、長さ200mmの板材に加工し、溶接母材用として作製した。
[0069]
[表1]


[0070]
 上記の溶接母材用板材の長手方向に、図2のU開先を加工した後、突き合わせ、表2に示す化学組成を有する外径1.2mmの符号1~3のNi基耐熱合金用溶接材料を用いて、シールドガスをArとした自動ガスタングステンアーク溶接により初層溶接した。溶接に際しては、入熱を6~10kJ/cm、溶接材料の供給速度を2.5~7.5mm/sと種々変化させた。
 得られた溶接継手の溶接金属表面について浸透探傷試験を行い、割れの有無を確認した後、溶接部の横断面を前述の方法により現出し、初層溶接後の溶接部横断面における、溶融した母材の面積[S BM]と溶接金属の面積[S WM]を画像処理により測定し、その比[S BM]/[S WM]を求め、初層溶接金属の割れとの関係を評価した。さらに、裏波形成の有無を目視にて観察した。そして、浸透探傷試験にて割れの指示模様がなく、かつ裏波が形成されている溶接継手を「合格」とした。
[0071]
[表2]


[0072]
 加えて、合格した溶接継手符号のうち、いくつかについては、入熱12kJ/cm、溶接材料の供給速度を5.5mm/sとし、自動ガスタングステンアーク溶接により積層溶接した。
 得られた溶接継手から、溶接金属を平行部中央に有する丸棒クリープ試験片を採取した。そして、650℃、127MPaの条件でクリープ破断試験を行い、破断時間が1000時間を超えるものを「合格」とした。結果を表3、表4、及び表5に示す。溶接継手のクリープ破断試験における「-」はクリープ破断試験を行わなかったことを意味する。
[0073]
[表3]



[0074]
[表4]



[0075]
[表5]



[0076]
 表3、表4、及び表5に、上記各試験の結果を併せて示す。
 表3、表4、及び表5から、本開示で規定する条件を満足する溶接継手符号は初層溶接時に溶接金属割れまたは裏波未形成は発生せず、かつ、溶接継手も高いクリープ強度が得られることがわかる。
 これに対して、溶接継手代符A-1、A-11、A-16、A-21、D-1~D-4、D-6~D-7、D-11~D-15、およびG-1~G-3は、溶融した母材の面積[S BM]と溶接金属の面積[S WM]との比の関係式((1)式)から決まる上限を上回るため、溶接金属に割れが発生した。A-10、D-10、およびG-5は、溶融した母材の面積[S BM]と溶接金属の面積[S WM]との比が0.1を下回ったため、裏波未形成が発生した。
 さらに、溶接継手代符E-1~E-10は、母材のB含有量が本開示の範囲を上回ったため、溶接金属割れの抑制と裏波形成を両立しえなかった。
 溶接継手代符F-1~F-5は、溶接金属割れは安定して抑制できるものの、母材のB含有量が本開示の範囲を下回ったため、高い溶接継手のクリープ強度が得られなかった。
[0077]
 このように本開示の要件を満足する場合のみ、健全な溶接継手が得られることがわかる。

産業上の利用可能性

[0078]
 本開示によれば、多量のBを含有するフェライト系耐熱鋼母材をNi基耐熱合金用溶接材料を用いて多層溶接する場合に、安定して凝固割れを抑制する製造方法を提供することができる。

符号の説明

[0079]
 2A、2B 母材
 4 溶接金属(初層溶接金属)

請求の範囲

[請求項1]
 Bを0.006質量%~0.023質量%含むフェライト系耐熱鋼母材をNi基耐熱合金用溶接材料で多層溶接する多層溶接工程を有し、
 前記多層溶接工程での初層溶接後かつ第二層溶接前の溶接部の横断面における、溶融した前記フェライト系耐熱鋼母材の面積[S BM]と溶接金属の面積[S WM]との比が、前記フェライト系耐熱鋼母材に含有されるBの質量%[%B BM]に対して下記(1)式を満たす溶接条件で初層溶接を行うフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法。
 0.1≦[S BM]/[S WM]≦-50×[%B BM]+1.3・・・(1)
[請求項2]
 前記フェライト系耐熱鋼母材が、質量%で、
C:0.04%~0.15%、
Si:0.05%~0.80%、
Mn:0.10%~1.00%、
P:0%~0.020%、
S:0%~0.010%、
Cr:8.0%~10.0%、
MoおよびWの少なくとも一種を合計:0.5%~4.0%、
NbおよびTaの少なくとも一種を合計:0.02%~0.30%、
V:0.05%~0.40%、
B:0.006%~0.023%
N:0.002%~0.025%、
Al:0%~0.030%、並びに
O:0%~0.020%を含み、残部がFeおよび不純物からなる請求項1に記載のフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法。
[請求項3]
 前記フェライト系耐熱鋼母材が、前記Feの一部に代えて、質量%で、下記群より選択される少なくとも一種の元素を含有する請求項2に記載のフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法。
群 Co:4.0%以下、
  Ni:1.00%以下、
  Cu:1.0%以下、
  Ti:0.30%以下、
  Ca:0.050%以下、
  Mg:0.050%以下、
  REM:0.100%以下
[請求項4]
 前記Ni基耐熱合金用溶接材料が、質量%で、
C:0.005%~0.180%、
Si:0.02%~1.20%、
Mn:0.02%~4.00%、
P:0%~0.020%、
S:0%~0.010%、
Co:0%~15.0%、
Cu:0%~0.80%、
Cr:16.0%~25.0%、
Mo:0%~12.0%、
NbおよびTaの少なくとも一種を合計:0%~4.50%、
Ti:0%~1.00%、
Fe:0%~6.00%、
N:0%~0.050%、
Al:0.002%~1.800%、並びに
O:0%~0.020%を含み、残部がNiおよび不純物からなる請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のフェライト系耐熱鋼溶接継手の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]