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1. WO2020116548 - オレフィン異性化触媒とその製造方法、2-ブテンの製造方法とそれを用いたプロピレン製造方法

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明 細 書

発明の名称 オレフィン異性化触媒とその製造方法、2-ブテンの製造方法とそれを用いたプロピレン製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013  

課題を解決するための手段

0014   0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049  

実施例

0050   0051   0052   0053   0054   0055  

実施例 1

0056   0057  

実施例 2

0058  

実施例 3

0059  

実施例 4

0060  

実施例 5

0061  

実施例 6

0062  

実施例 7

0063   0064   0065   0066  

実施例 8

0067   0068  

実施例 9

0069   0070   0071  

実施例 10

0072   0073  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19  

図面

1   2   3a   3b   4  

明 細 書

発明の名称 : オレフィン異性化触媒とその製造方法、2-ブテンの製造方法とそれを用いたプロピレン製造方法

技術分野

[0001]
 本発明はオレフィン異性化触媒、特に1-ブテンを2ブテンに異性化するための触媒とその製造方法、更にはその触媒を用いた2-ブテンの製造方法、及びプロピレンを得るための方法に関する。

背景技術

[0002]
 オレフィン異性化触媒、特に天然ガスなどに多く含まれる1-ブテンを2-ブテンに異性化する触媒が注目されている。その理由は、用途の少ない1-ブテンを、用途、使用量が多い2-ブテンに異性化することにより付加価値を高めることにある。2-ブテンの用途としては、例えばオレフィンメタセシス触媒(特許文献1)に2-ブテンとエチレンガスを接触させることによるプロピレンを得る用途がある。
[0003]
 1-ブテンから2-ブテンへの異性化触媒としては、下記のような性能が必要とされている。
(1)異性化効率(転化率)が高く、長時間維持される(劣化速度が小さい)こと、
(2)また一度反応させて劣化した触媒を再生させることにより、異性化触媒を複数回繰り返し使用できること、
(3)入手しやすい安価な原料を使用して触媒を製造できること
(4)触媒製造工程が、危険な工程を伴わず、シンプルな工程であること。
[0004]
 特に近年は、ポリオレフィン樹脂の大量生産、低価格化に対応できるよう、触媒を安価に供給でき、更に使用済み触媒を繰り返し使用できる触媒が強く求められている。
[0005]
 1-ブテンから2-ブテンへの異性化触媒としては、従来から金属酸化物を主要成分とする触媒が使用されている。そのような触媒としては、アルミナなどの金属酸化物担体上にカリウムなどのアルカリ金属が担持された構成の触媒(特許文献2)と、酸化マグネシウム担体を用いた触媒(特許文献3)の2種類の形態が知られている。
[0006]
 特許文献2には、表面積の大きなγ-アルミナ担体100重量部に対して、アルカリ金属を25重量%以上担持させた触媒により平衡組成に近い高い転化率が示されている。この触媒を得るためには高純度で表面積の大きなγ―アルミナについて、硝酸などの前処理を行った上、25%以上のアルカリを担持させるために多量のアルカリ金属が使用され、それが発火などの事故を起こしやすい問題がある。更にはアルミナ担体を使用した触媒は、コーキングによる劣化を起こしやすいといわれている。これらの理由から、γーアルミナ担体の代わりに、酸化マグネシウムを触媒活性のある担体として使用する例が増加している。
[0007]
 酸化マグネシウムを使用する例としては、硫黄含有量を74ppm以下、鉄含有量を330ppm以下にした高純度酸化マグネシウム触媒が特許文献3(段落[0024])に示されている。しかしながら代表的な酸化マグネシウム製造法である電解法による一般グレードの酸化マグネシウムは、特許文献3で触媒毒とされた硫黄を、硫黄原子換算で数千ppm含有している。そのため硫黄含有量が74ppm以下の高純度に精製する必要があり、安価な異性化触媒を得る上で大きなネックとなっている。
[0008]
 一方、高純度酸化マグネシウムの代わりに、高濃度硫黄を含有する一般グレードの酸化マグネシウムを使用した異性化触媒が特許文献4に開示されている。この文献中には、使用済の触媒を、酸素ガス濃度が1ppm以下の超高純度窒素ガスを使用して再生する方法により、転化率が79.9%とほぼ平衡転化率に近い値が得られている(特許文献4、段落[0037]、表2)。この方法では、再生後の高い活性は得られたものの、劣化速度が0.108%/時と、高純度酸化マグネシウムに比べ大きい。この劣化速度は、300時間(12.5日)の反応後に79.9%の転化率が50%前後まで低下することを示しており、頻繁な触媒交換が必要となり実用的とは言えない。また超高純度窒素ガスも必要であり、コストの面でも好ましくない。
[0009]
 以上述べた如く、一般グレード用酸化マグネシウムを使用したオレフィン異性化触媒であって、反応活性が高く、且つ触媒再生後の繰り返し反応時の劣化速度が小さい、換言すれば耐久性の良好なオレフィン異性化触媒は、未だ実現できていないのが実情である。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 特許第595965号公報
特許文献2 : 特公昭60-6333号公報
特許文献3 : 特許第4390556号公報
特許文献4 : 特表2005-506172号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 本発明の第一の目的は、高い異性化効率を有し、且つ、異性化反応と再生(再活性化)を2回、もしくは3回以上繰り返しても、小さな劣化速度が維持される耐久性の良好な触媒を提供することである。
[0012]
 本発明の第二の目的は、硫黄などの不純物を多く含む一般グレードの酸化マグネシウム原料を使用して、安価で高活性、高耐久性の触媒を製造し、オレフィン異性化反応に提供することである。
[0013]
 本発明の他の目的は、以下の記載から明らかとなろう。

課題を解決するための手段

[0014]
 本発明者等は、上記の実状に鑑み、従来技術の欠点を解決すべく鋭意研究した結果、本発明の課題を解決するための指針として以下の知見を得た。
(1)先ず先行技術である特許文献3、4の内容を分析した。酸化マグネシウム触媒中の硫黄は触媒毒として作用するために、劣化速度の小さな触媒を得るためには、硫黄含有量が74ppmという高純度酸化マグネシウムを使用する必要がある(特許文献3)。
(2)一方、触媒中の硫黄含有量が2300ppm以上の一般グレードの酸化マグネシウムを使用した場合、再生処理用窒素ガス中の酸素濃度を1ppm以下に制御することにより、その劣化速度は改良されるものの、それでも0.108%/時(特許文献4、表2)と、高純度酸化マグネシウムの場合の0.027%/時(特許文献3、表3)に比べると非常に大きく、実用上大きな障害となる。
(3)本発明者らは硫黄含有量が高く安価な一般グレードの酸化マグネシウムを原料として使用しながら、高純度酸化マグネシウムの触媒と同等以上の異性化-再生繰り返し耐久性を有する触媒の開発をターゲットとして検討を行った。
(4)まず一般グレードの酸化マグネシウムを用いて高い転化率を達成する指針を得るために、一般グレードの酸化マグネシウム上に、高純度の酸化マグネシウムを担持させて硫黄成分の露出を小さくしたところ、転化率が向上するとともに、劣化速度も低減した。このことから、酸化マグネシウム中の不純物、その中でも硫黄が活性を低下させているという、特許文献3の結果を支持する結果が得られた。
(5)上記硫黄成分は、酸化マグネシウム中で主として酸性であるSO として存在することから、その酸性を中和すれば触媒毒としての作用が低減するのではないかと予想した。それを裏付けるために、一般グレードの酸化マグネシウム表面にアルカリ金属を担持してその効果を検討したところ、著しい転化効率の向上が認められた。
(6)更に上記(5)の使用済アルカリ担持触媒の再生処理を行ったところ、2回目の使用時にその劣化速度は殆ど増加せず、更に3回目の使用では逆に劣化速度が小さくなり、耐久性が良化する結果が得られた。
(7)同じようなテストを高純度酸化マグネシウム触媒で行い、一般グレード品との比較を行った。一般グレード品の1回目反応の劣化効率は、高純度酸化マグネシウムに比べ僅かに劣るものの、2回、3回の再生・繰り返し使用では、高純度酸化マグネシウムよりも劣化速度が小さくなる(耐久性が高い)という驚くべき結果を得た。
(8)上記現象のメカニズムを知るために、酸素ガスの昇温脱離-質量分析法で解析したところ、一般グレード酸化マグネシウムにアルカリ金属を担持することにより、酸素吸着量が増加し、それと共に劣化速度が急減する結果を得ることが出来た。このことから、アルカリ金属担持により酸素ガス吸着が増加し、異性化反応時のコーキングを防止することが示唆された。
(9)また、異性化反応終了後の触媒の外観を観察したところ、硫黄含有量の大きな本発明の触媒は、高純度酸化マグネシアの触媒に比べ破壊強度が高いことが見出された。一般グレード品のこの高い破壊強度が、異性化反応時の400℃前後の高温ストレスに対して強い抵抗力となって、触媒の耐久性を向上させる一つの理由となっていると理解された。(10)上記(8)と(9)の解析結果から、再生後の触媒の劣化速度は、吸着酸素によるコーキング抑制と触媒の破壊強度の向上の両方の寄与が推測された。
(11)以上から、高濃度硫黄を含有する酸化マグネシウムにアルカリ金属を特定量担持することにより、高純度酸化マグネシウムと同等以上の活性、耐久性を有する触媒が得られ、本発明に到達した。
[0015]
 すなわち本発明は、以下に関する:
1.酸化マグネシウム純度が56重量%以上かつ99重量%未満である酸化マグネシウム担体上に、少なくとも1種のアルカリ金属が担持されたオレフィン異性化触媒。
2.酸化マグネシウム担体が、硫黄原子重量換算で500ppm以上の硫黄化合物を含有する、上記1に記載のオレフィン異性化触媒。
3.酸化マグネシウム担体が、硫黄原子重量換算で2000ppm以上の硫黄化合物を含有する、上記1に記載のオレフィン異性化触媒。
4.酸化マグネシウム担体が、硫黄原子重量換算で4000ppm以上の硫黄化合物を含有する、上記1に記載のオレフィン異性化触媒。
5.前記の少なくとも1種のアルカリ金属がカリウムおよびナトリウムからなる群から選択される、上記1~4のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒。
6.酸化マグネシウム担体100重量部に対して金属換算で0.2~5重量部の少なくとも1種のアルカリ金属が担体表面上に担持された上記1~5のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒。
7.酸化マグネシウム担体100重量部に対して金属換算で0.5~3重量部の少なくとも1種のアルカリ金属が担体表面上に担持された上記1~5のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒。
8.酸化マグネシウム担体100重量部に対して金属換算で0.7~2.5重量部の少なくとも1種のアルカリ金属が担体表面上に担持された上記1~5のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒。
9.TPD-MASS測定法による酸素吸着量が、0.5~20μmol/g、より好ましくは0.6~15μmol/g、更に好ましくは0.7~10μmol/g、特に好ましくは0.8~4μmol/gである、上記1~8のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒。
10.ペレット状、粒状、円柱状、円筒状、もしくは柱状の成型体である、上記1~9のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒。
11.オレフィン異性化が、1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応である、上記1~10のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒。
12.少なくとも25Nの破壊強度を有する、上記1~11のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒。
13.a)酸化マグネシウム純度が56重量%以上かつ99重量%未満である酸化マグネシウムを成型して担体を得る工程、
 b)工程a)により得られた担体に少なくとも1種のアルカリ金属を噴霧塗布する工程、および
 c)工程b)により得られたアルカリ金属が担持された担体を焼成する工程、
を含む、上記1~12のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒の製造方法。
14.前記酸化マグネシウムが、海水を原料として電解法により製造された酸化マグネシウムである、上記13に記載のオレフィン異性化触媒の製造方法。
15.1-ブテンを上記1~12のいずれか1つに記載のオレフィン異性化触媒と接触させることを含む、2-ブテンの製造方法。
16.上記1~12のいずれか1つに記載の触媒を1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応に使用後、その使用された触媒を再生し、再度1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応に使用する、上記15に記載の2-ブテンの製造方法。
17.異性化反応と再生処理を交互に2回以上行う、上記16に記載の2-ブテンの製造方法。
18.触媒の再生が、体積換算で10ppm以上、好ましくは1,000ppm以上、より好ましくは10,000ppm以上の酸素を含有する窒素ガス中で触媒を、200℃以上、より好ましくは350℃以上に加熱することを含む、上記16または17に記載の2-ブテンの製造方法。
19.i)上記1~12のいずれか1つに記載の触媒を充填した反応槽に、1-ブテンを通過させて2-ブテンを得る工程、および
 ii)得られた2-ブテンを、エチレンガスと一緒に後段のオレフィンメタセシス触媒を通過させてプロピレンを得る工程、
を含む、プロピレンを製造する方法。

発明の効果

[0016]
 本発明によれば、オレフィン異性化反応、特に1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応の転化率が非常に高く、且つ複数回再生してもその劣化速度が非常に小さな高耐久性の触媒を提供できる。更に、硫黄含有量が数千ppm以上の安価な酸化マグネシウムを担体原料として使用することができ、破壊強度の高い触媒を提供できる。安価な原料の使用と複数回以上の繰り返し使用が可能となることにより、従来の酸化マグネシウム触媒に比べ極めて生産性の高い2-ブテン製造が容易となる。その方法により得られた2-ブテンをエチレンと共に後段のメタセシス触媒に接続することにより、高効率にプロピレンを製造することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 図1は流通反応装置による触媒活性の評価方法の概要を示す(流通反応装置による触媒活性の評価)。
[図2] 図2は、一般グレードの酸化マグネシウム担体上のアルカリ金属種類、その担持量と異性化転化率の関係を示す(アルカリ金属の種類、担持量と異性化活性の関係)。
[図3a] 図3aは、酸素吸着量と転化率の関係を示す(図3a:触媒酸素吸着量と転化率の関係)。
[図3b] 図3bは酸素吸着量と劣化速度の関係を示す(図3b:触媒酸素吸着量と劣化速度の関係)。
[図4] 異性化反応回数に対する触媒の劣化速度の変化を示す(触媒反応回数に対する触媒の劣化速度の変化)。

発明を実施するための形態

[0018]
 即ち本発明は、オレフィン異性化反応に好適に使用できる触媒であって、純度が56重量%以上99重量%未満であり、好ましくはSO のような硫黄化合物を硫黄原子重量換算で500ppm以上、好ましくは1000ppm以上、より好ましくは2000ppm以上、さらに好ましくは2500ppm以上、よりさらに好ましくは3000ppm、特に好ましくは4000ppm以上、例えば4500ppm以上または5000ppm以上含有する酸化マグネシウムを原料とした担体に、アルカリ金属を、好ましくは担体重量100%に対して、金属換算で0.2~5重量%のアルカリ金属を、担持した触媒である。なお、硫黄化合物含有量の上限は、市販の酸化マグネシウムに一般的に含まれ得る範囲であれば特に限定はされないが、例えば5400ppm以下であることができる。
[0019]
 上記の酸化マグネシウムは、その純度が56重量%以上99重量%未満であれば、特に限定はされない。酸化マグネシウムは、一般にドロマイト鉱石の熱還元法、または海水からの電解法により精錬された原料に大別される。本発明ではいずれの方法の酸化マグネシウムも使用できるが、電解法はその原料調達の制限が少ない点でメリットがあり、現在の世界の生産の主流であり、コスト的にもメリットが大きい。反面、電解法により得られる酸化マグネシウムは、硫黄などの不純物濃度が高い。そのために硫黄濃度が例えば500ppm以上、もしくは2000ppm、または4000ppm以上であっても、オレフィン異性化触媒材料として使用できることが、経済性の点で大変好ましい。
[0020]
 本発明では、好ましくは電解法により得られた酸化マグネシウム、より好ましくは、海水を原料として電解法により製造された酸化マグネシウムが使用される。
[0021]
 本発明の触媒担体として使用する酸化マグネシウムとして99重量%以上の高純度品を使用することも可能ではあるが、経済的な観点から、本発明では純度が99重量%未満のものが使用される。また、上記酸化マグネシウムの純度は56重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、よりさらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。好ましくは、上記酸化マグネシウムとしては、95重量%以上99重量%未満の一般グレード品、より好ましくは96重量%~98重量%のものが使用される。不純物による予期せぬ原因で製品欠陥の原因となることを避けるために、96%以上の酸化マグネシウムを使用することが特に好ましい。酸化マグネシウム中に含まれる不純物元素としては、硫黄S以外にCa、Si、Fe、Al等が挙げられる。
[0022]
 酸化マグネシウムの一般グレード品としては種々のメーカーにより販売されている製品が本発明において使用可能である。例えばタテホ化学工業(株)製品名 TATEHOMAG、協和化学工業(株)製品名 KYOWAMAG、神島化学工業(株)製品名 スターマグなど、一般グレード品として販売されている製品の中から適宜選択して使用できる。それらの製品中の成分とそれらの組成比は、原料、製造工程における精製などの条件により異なるが、硫黄成分が硫黄原子換算で300ppm以下の場合には高純度品とよばれることが多く、高価格となる。残留硫黄含有量が多くなるにつれ一般に価格が低下し、標準グレード品には2000ppm以上の硫黄が含まれる場合が多い。本発明の酸化マグネシウム原料としては、その価格及び再生後の劣化速度を小さくする上で、例えば、硫黄含有量が硫黄原子重量換算で500ppm以上、好ましくは1000ppm以上、より好ましくは2000ppm以上、さらに好ましくは2500ppm以上、よりさらに好ましくは3000ppm、特に好ましくは4000ppm以上、例えば4500ppm以上または5000ppm以上の硫黄を含有する一般グレードの中から選択して使用することができる。
[0023]
 硫黄含有量は、例えば蛍光X線分析法、燃焼法により測定することができる。好ましくは、蛍光X線分析法により測定される。
[0024]
 一般グレード用酸化マグネシウムは、通常粉末として供給される。上記酸化マグネシウムは、反応器中での原料オレフィン流体と触媒の接触頻度を高めると共に、圧損を小さくするために、柱状、円盤状、円筒状など種々の形態に成型されることが好ましい。一般的には直径が1~6mm、長さ(高さ)が2~20mm程度の円柱状ペレットが好適に用いられる。しかしながらこれに限定されるわけではなく、種々の異形状のペレット、錠剤形状、顆粒状(粒状)及び破砕粒状として使用することもでき、場合によっては噴霧乾燥製造による微粒子状とした触媒とすることもできる。なお、本発明において、上記酸化マグネシウムは、オレフィン異性化触媒としての活性を有し得るが、典型的には上記のように成型されることにより、他の物質(例えばアルカリ金属)を担持する役割も担うことができる。従って、本明細書では上記酸化マグネシウム(好ましくは成形された上記酸化マグネシウム)を「酸化マグネシウム担体」とも呼ぶ。この語句は、本発明における酸化マグネシウム担体がそれ自身では触媒活性を有し得ないことを意味するものではない。
[0025]
 本発明の酸化マグネシウム担体は、水などの分散媒を添加、混合、混練し、次いで成型を行った後、焼成する方法により製造することができる。分散媒を粉末に添加する際には、混合物が不均一とならないように分割投入することが望ましい。分散媒は成型、焼成工程で一定の形状を維持するための凝集力を付与するために使用することができる。分散媒としては水が好適に使用され、必要によってはアルコール等の有機溶剤、その他の添加剤を使用することもできる。
[0026]
 分散媒と混練りされた原料は、次いで成型することができる。成型は、例えば打錠機、ディスクペレッターまたはプランジャー押出機を用いて行うことができる。成型体は次いで焼成することができる。焼成は、例えば、500~1000℃の温度、好ましくは600~900℃の温度、より好ましくは700~800℃の温度で、行うことができる。焼成時間は、例えば30分~10時間、好ましくは1~5時間、より好ましくは2~4時間である。
[0027]
 成型された酸化マグネシウム上には、少なくとも1種のアルカリ金属が担持される。担持されるアルカリ金属の種類は特に限定されないが、その中でもナトリウムおよび/またはカリウムが特に好ましい。酸化マグネシウム担体上に担持されるアルカリ金属の量は、酸化マグネシウム担体重量100重量部に対して、アルカリ金属換算で0.2~5重量部が好ましく、より好ましくは0.5~3重量部であり、更に好ましくは0.7~2.5重量部であり、特に好ましくは0.9~2重量部である。本発明では、アルカリ金属の量がこれらの範囲内にある場合に、顕著に高い異性化転化率を達成できることが見出された。
[0028]
 上記アルカリ金属、例えばナトリウム、カリウムの量は、当業者に公知の方法、例えば原子吸光光度法(AAS法)や蛍光エックス線分析(XRF分析)により、測定することができる。原子吸光光度法(AAS法)を用いる場合には、例えば、所定量の調製した触媒を酸に溶解させ、不溶分を濾別後、所定量の水を加え希釈した溶液をAASにてアルカリ金属分を分析できる(例えば、測定に使用するサンプル量は1g、希釈倍率は5000倍とすることができる)。XRF法の場合には、例えば、所定量の触媒を粉砕、ディスクに成型した後、半定量分析を行うことができる(例えば、サンプル量は4g、ディスクの大きさは3cm)。定量性が高いため、原子吸光光度法(AAS法)が好ましい。
[0029]
 なお、商業的に入手可能な酸化マグネシウム、特に一般グレードの酸化マグネシウムには、ナトリウム等のアルカリ金属が既に数百ppmレベルで含まれている場合があるが、本発明における上記のアルカリ金属量は、そのような潜在的な不純物とは独立して、酸化マグネシウム担体に添加したアルカリ金属の量(添加量)を特定することを意図するものである。
[0030]
 例えば、本発明の触媒の製造は、ペレット、円柱、円筒その他の形状に成型された酸化マグネシウム担体を、アルカリ金属化合物含有の水溶液により処理、乾燥および/または焼成することにより行われる。アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属のギ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩などの金属塩、アルカリ金属の塩化物等のハロゲン化合物、アルカリ金属の水酸化物などが使用できる。水溶液の処理方法としては、アルカリ金属化合物水溶液に酸化マグネシウム担体を所定時間浸漬した後、取り出し、次いで乾燥および/または焼成させる浸漬法、スプレー装置などを使用して、所定量を均一に噴霧、乾燥/焼成するスプレー法など、公知の方法を好適に使用できる。本発明の1つの好ましい実施態様では、アルカリ金属化合物水溶液を酸化マグネシウム担体上にスプレー法により噴霧塗布し、その後乾燥および/または焼成を行う。
[0031]
 アルカリ金属塩水溶液で処理された酸化マグネシウムは、空気中、もしくは真空中、あるいは不活性ガス中で焼成することができるが、空気雰囲気のオーブン中で加熱、焼成する方法が簡便で好ましい。焼成は、例えば、250~700℃の温度、好ましくは300~600℃の温度、より好ましくは400~500℃の温度、特に好ましくは420~480℃の温度で、行うことができる。また焼成時間は、温度にもよるが2分程度あれば使用可能であるが、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、3時間以下である。このようにして得られた触媒は、例えばペレット状、粒状、円柱状、円筒状または柱状の形態を有することができる。
[0032]
 上記の方法により作成された触媒は、次いで反応前処理に付してもよい。前処理は、触媒を加熱することにより、表面の水やその他の成分を除去し、反応活性を向上させる目的で行われる。オレフィン異性化反応の直前に行うことが特に好ましいが、触媒製造後、異性化反応の前の任意の時点でおこなうことも可能である。本発明の目的のためには、酸素濃度の低い不活性ガス、例えば0.1~30ppm、好ましくは0.2~20ppm、例えば0.3ppm~10ppmの酸素濃度の窒素ガスを、450~700℃、好ましくは480~600℃、より好ましくは500~570℃の温度条件で、30分~15時間、好ましくは1~8時間、より好ましくは2~6時間加熱することができる。または、出口ガスの露点が-50℃以下、好ましくは-80℃になるまで加熱処理することが望ましい。加熱する際の装置は、固定床、流動床など通常の装置を使用でき、特に異性化反応に使用する装置を使用して行うことが好ましい。
[0033]
 本発明では上述のように製造した触媒、すなわち、56重量%以上99重量%未満の純度を有する酸化マグネシウム担体と少なくとも1種のアルカリ金属とを含む触媒(例えば、上記酸化マグネシウム担体と上記アルカリ金属から実質的になる触媒)を、オレフィンの異性化反応に使用することができる。上記触媒では、上記の少なくとも1種のアルカリ金属は、上記酸化マグネシウム担体上、好ましくは上記酸化マグネシウム担体表面上に、担持された状態にあることができる。
[0034]
 本発明の1つの実施態様において、本発明は、酸化マグネシウム純度が56重量%以上かつ99重量%未満であり、好ましくは硫黄を500ppm以上含有する酸化マグネシウムを原料として担体を成型し、含侵法によりアルカリ金属を担持した後、焼成する工程を含む、上記触媒の製造方法に関する。
[0035]
 また、本発明の別の実施態様において、本発明は、
 a)酸化マグネシウム純度が56重量%以上かつ99重量%未満であり、好ましくは硫黄原子重量換算で500ppm以上の硫黄化合物を含有する酸化マグネシウムを成型して担体を得る工程、
 b)工程a)により得られた担体に少なくとも1種のアルカリ金属を噴霧塗布する工程、および
 c)工程b)により得られたアルカリ金属が担持された担体を焼成する工程、
を含む、上記触媒の製造方法に関する。
[0036]
 本発明のさらに別の実施態様において、本発明は、
 a)酸化マグネシウム純度が56重量%以上かつ99重量%未満であり、好ましくは硫黄原子重量換算で500ppm以上の硫黄化合物を含有する酸化マグネシウムを成型して担体を得る工程、
 b)工程a)により得られた担体に少なくとも1種のアルカリ金属を噴霧塗布する工程、および
 c)工程b)により得られたアルカリ金属が担持された担体を焼成する工程、
を含む方法によって得られる、オレフィン異性化触媒に関する。
[0037]
 ここで、上記酸化マグネシウムは、海水を原料として電解法により製造された酸化マグネシウムであることができる。
[0038]
 また、本発明の別の実施態様において、本発明は、好ましくは0.5~20μmol/g、より好ましくは0.6~15μmol/g、更に好ましくは0.7~10μmol/g、特に好ましくは0.8~4μmol/g、例えば0.8~3μmol/gの酸素吸着量を有する上記オレフィン異性化触媒に関する。上記酸素吸着量は、実施例欄に記載されるようなTPD-MASS測定法(昇温脱離-質量分析法)により測定することができる。本発明では、酸素吸着量が上記の範囲内にある場合、特に0.8~4μmol/gである場合に、顕著に高い異性化転化率と劣化速度の最小化を同時に達成できることが見出された。
[0039]
 本発明のさらなる1つの実施態様において、本発明は、少なくとも25Nの破壊強度、好ましくは30N~100N、より好ましくは40N~80N、例えば40N~60Nの破壊強度を有するオレフィン異性化触媒に関する。破壊強度は、例えば、実施例欄に記載されるような荷重試験により測定することができる。
[0040]
 上述のように製造された触媒、好ましくは活性化前処理を施された上記触媒は、次にオレフィンの異性化反応に使用することができる。本発明の触媒を用いた異性化反応に付されるオレフィンとしては、例えばプロペン、ブテン、ペテン等の気体状の低級炭化水素ガス、例えば気体状の低級オレフィンガスが好ましく、特に1-ブテンがその用途の広さから好ましい。従って、本発明の1つの好ましい実施態様において、上記オレフィン異性化反応は、1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応である。オレフィン異性化反応のための反応装置としては特にその種類などは限定されないが、その中で固定床反応装置、流動床反応装置が好ましく、特に固定床反応装置が好ましい。
[0041]
 反応装置に充填され、必要な前処理がなされた触媒に原料ガスが供給されることにより、反応を開始させることができる。ここでは固定床反応装置を用いた1-ブテンの異性化反応を例に以下説明する。装置に充填された触媒に対して、1-ブテンガスを1~50WHSV(触媒量に対する反応ガスの空間速度)、好ましくは3~30WHSV、より好ましくは5~20WHSVの速度で接触させ、反応させることができる。反応温度は、好ましくは200~400℃、より好ましくは220~350℃、特に好ましくは250~320℃の温度である。この時のガス中の酸素濃度は好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、特に好ましくは15ppm以下である。
[0042]
 反応装置の出口側に、分析装置(例えばガスクロマトグラフ装置)を設けることにより、反応後の成分を連続的にモニターすることができる。通常は、1-ブテンのコンバージョンの低下、2-ブテンの生成量の低下が所定値を越えたところで、原料ガスの供給を止め、反応を停止する。必要な場合には、触媒の再活性化(再生)処理が行われ、活性の回復が確認できた場合には、異性化反応を再開してもよい。この触媒の再生処理は、例えば、体積換算で10ppm以上、好ましくは1000ppm以上、より好ましくは10000ppm以上の酸素を含有する高温の不活性ガス(窒素ガス)を、劣化した触媒に接触させることにより、表面析出した炭素などを酸化、除去することにより行われる。なお、酸素含有量の上限は、例えば10%以下、好ましくは6%以下であることができる。加熱温度としては、例えば350~550℃、好ましくは400~500℃、より好ましくは430~470℃で行われる。処理時間としては、例えば、10分~7時間、好ましくは20分~5時間、より好ましくは30分~4時間である。本発明では、上記のような酸素濃度を有する不活性ガスを用いて再生処理を行った場合であっても、本発明の触媒の十分な再生が達成され、劣化速度も小さく維持されることが見出された。
[0043]
 再生処理を行った場合には、再生処理が行われた本触媒に再度、原料ガスである1-ブテンを、再生前の条件もしくはそれに近い反応条件で通し、異性化反応を開始することができる。例えば、その再スタート時点での転化率を測定し、所定の範囲にあることが確認できれば反応を継続し、逆に、再スタート時の転化率が所定の範囲より小さい場合には、再生処理を繰り返し、所定の活性値確認できたら異性化反応を再開する。このような再生処理は、2回または3回以上繰り返すことができ、従って、上記異性化反応と上記再生処理を交互に2回または3回以上(例えば2~5回)繰り返すことも可能である。再生処理を行っても、その活性の回復が小さい場合には、反応を停止して触媒の交換を行うことが望ましい。
[0044]
 本発明の触媒は、反応の転化率が高い上に、再生処理後の劣化速度が小さく耐久性に優れるため、触媒交換頻度が低く、高い生産性を実現している。
[0045]
 本発明の1つの実施態様において、本発明は、1-ブテンを上記オレフィン異性化触媒と接触させることを含む、2-ブテンの製造方法に関する。本発明のさらなる実施態様において、本発明は、1-ブテンを上記触媒と1~50WHSVの速度でおよび/または200~400℃の温度で接触させる、上記の2-ブテンの製造方法に関する。
[0046]
 本発明のさらなる実施態様において、本発明は、上記オレフィン異性化触媒を1-ブテンから2-ブテンの異性化反応に使用後、その使用された触媒を再生し、再度1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応に使用する、2-ブテンの製造方法に関する。ここで、異性化反応と再生処理を交互に2回以上行うことができる。また、触媒の再生は、体積換算で10ppm以上、好ましくは1,000ppm以上、より好ましく10,000ppm以上の酸素を含有する窒素ガス中で触媒を、200℃以上、より好ましくは350℃以上に加熱することを含むことができる。
[0047]
 また、本発明の別の実施態様において、本発明は、1-ブテンの異性化反応のための、好ましくは1-ブテンから2-ブテンを製造するための、上記触媒に関する。さらに、本発明のさらなる実施態様において、本発明は、1-ブテンの異性化反応のための、好ましくは1-ブテンから2-ブテンを製造するための、上記触媒の使用に関する。当該製造は、上述のとおりに行うことができ、例えば、1-ブテンを上記オレフィン異性化触媒と接触させることを含み、好ましくは、1-ブテンを上記触媒と1~50WHSVの速度でおよび/または200~400℃の温度で接触させることを含む。
[0048]
 また、本発明のオレフィン異性化触媒は、オレフィンメタセシス触媒と組み合わせることにより、エチレンと本触媒により得られた2-ブテンを原料としてプロピレンを製造する工程で好適に使用することができる。オレフィンメタセシス触媒の前段に本発明の触媒装置を接続し、原料ガスを流すことにより、1-ブテンから連続的にプロピレンを製造することが可能となる。本発明のオレフィン異性化触媒が従来技術に比べ活性が高く、且つ耐久性が高い点は、トータルシステムとして高い生産性を可能としている。再生後の活性が低い場合には、プラント全体を停止して触媒交換する必要があるが、本発明の触媒は後述する実施例で示されるように、高純度酸化マグネシウムを用いた触媒よりも、再生処理後の耐久性が同等、もしくはそれ以上に良好である。それにより安価で長時間連続運転を可能とすることにより、プロピレン製造の経済性向上に大きく貢献することが可能となる。従って、本発明の1つの実施態様において、本発明は、以下の工程を含む、プロピレンを製造する方法に関する:
i)請求項1~12のいずれか1つに記載の触媒を充填した反応槽に、1-ブテンを通過させて2-ブテンを得る工程、および
ii)得られた2-ブテンを、エチレンガスと一緒に、上記触媒の後段に直接的もしくは間接的に接続されたオレフィンメタセシス触媒を通過させてプロピレンを得る工程。
[0049]
 以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例等によって何ら限定されるものではない。
実施例
[0050]
 表1に組成が示され、SO を硫黄原子換算で1.3重量%(5200ppm)含有する一般グレード酸化マグネシウム(神島化学工業株式会社、製品名Starmag G-2(一般グレード))を使用して実施例触媒サンプルを作成し、硫黄含有量0.004%のHP-30A(高純度グレード))を使用して比較例2触媒を作成した
[0051]
[表1]


 以下の実施例、比較例で使用する転化率、劣化速度の定義と測定方法を以下に示す。また触媒の表面特性評価、破壊強度測定等は、以下の方法によった。
(1)転化率、評価、測定方法
 作成した触媒は前処理として、70gの触媒を直径4cmのSUS-316製流通反応器に充填され、550℃窒素気流下で4時間前処理を行い、次いで反応温度300℃まで冷却した。所定の温度に調整されたところで、原料ガス(1-ブテン)を流速170ml/min、300℃温度の条件で触媒に流通させ、出口側のガス成分をガスクロマトグラフィーにより分析することにより、連続的に生成する2-ブテンの量を測定することにより、反応温度(300℃)に到達後の時間tにおける1ブテン(1-C )転化率Ctを(1)式で定義した。
[0052]
    Ct=[(N -N )/N ]×100(%)・・・・・(1)
    N ;反応前の1-ブテンモル数
    N ;時間tにおける(未反応)1-ブテンモル数

 以下では、12時間後の転化率をC 12,24時間後の転化率をC 24と表記した。
[0053]
 本実施例で用いられた流通反応装置の原理は図1で示される。原料ガス(1-ブテン)は、常に同じ濃度で触媒充填層の一端から流入し、異性化反応を受けて、他端から流出する。流出したガスは時間を変えながら、一定量ガスクロマトグラフ分析により採取され、1-ブテン濃度が測定され、(1)式から1-ブテン添加率Ctが計算される。流通速度を一定にしているために、触媒に流入した1-ブテンガスのモル数N は一定であり、それが触媒層を通過する時間τの間にNtモルだけ異性化を受けて(N -N )となる。転化率Ctは、触媒層通過時間τの間にどれだけ異性化を受けたかを示す尺度、即ち触媒活性を示す指標として理解され、その時間変化は、触媒活性の経時変化、もしくは劣化速度を表す指標となる。
(2)触媒劣化速度 Dv
 所定温度に達してから任意の時間t1,t2時間における1-ブテン転化率の時間当たりの変化を(2)として触媒の耐久性の指標として用いた。
[0054]

  劣化速度Dv = (C t1-t2)/(t2-t1)     (2)

 本実施例では、t =12,t =24の時の転化率を用いて、(3)式の計算による値を、触媒の劣化速度として使用した。
[0055]

  劣化速度D =(C 12-C 24)/12        ・・・・(3)

 前述したように流通反応方式による転化率C 12,C 24はそれぞれ12時間後、24時間後の流通通過時間τ内における転化量であることから、その差C 12-C 24は、時間τ内での転化量の変化、即ち触媒活性の変化を表す指標となる。即ち(3)式は、12時間から14時間の間の触媒活性の低下、即ち触媒劣化速度を表す指標となる。
(3)触媒再処理後の触媒活性評価
 触媒の1回目の異性化反応(Run#1)処理後、触媒を高温で加熱して再生(再活性化)処理を行った。その再生処理後の触媒を用いて、上記(1)と同じ方法で1-ブテンガスを流通させ異性化反応を行わせ、12時間後の転化率C 12,24時間後の転化率C 24、劣化速度Dvを求めた。
(4)O 吸着量
 マイクロトラックベル株式会社製昇温脱離装置型式BELCATと質量分析装置を組み合わせて、触媒の酸素吸着能力を調べた。触媒サンプルを550℃、5時間前処理した後、50℃で加熱しながら、0.4体積%の酸素を含有する窒素ガスをパルス状に照射し、それから脱離してくる酸素ガスの量を質量分析法により、m/z=32(m;イオン質量、z:イオン電荷数)のピークを測定し、酸素吸着量を調べた。
(5)触媒の破壊強度の測定
 日本計測システム株式会社製、MAX自動荷重試験機で圧壊強度の測定を行った。触媒をピストンで押し込み、触媒が崩壊したときの強度を圧壊強度とした。
実施例 1
[0056]
 表1の組成で示される一般グレードの酸化マグネシウム原料1kgに水を20ml加えた後、ビニール袋中で攪拌後、菊水打錠機を使用して3.2mmの円筒状に成型した。次いで空気雰囲気中で750℃に加熱し3時間焼成して、直径3.2mm、高さ3.2mmの円柱状の担体を得た。次いで、硝酸カリウムの1.3%水溶液を用意し、ガラス噴霧器を用いてスプレー法によりカリウム金属換算で担体100部に対して0.5重量%となるように、上記担体に噴霧塗布、担持後、450℃で焼成し、触媒サンプルAを作成した。
[0057]
 次いで、触媒の前処理として、70gの触媒を直径4cmのSUS-316反応器に充填し、550℃窒素気流下で4時間前処理を行い。次いで反応温度 300℃まで冷却した。所定の温度に調整されたところで、原料ガス(1-ブテン)を流速170ml/min、300℃温度の条件で触媒に流通させ、出口側のガス成分をガスクロマトグラフィーにより分析し、転化率と劣化速度を計算した。その結果を表2に示す。
実施例 2
[0058]
 担体100部に対してカリウム金属換算で1重量%となるようにカリウムを担持した以外は、実施例1と同様の方法により触媒Bを作成した。この触媒Bを実施例1と同様の方法で前処理し、次いで1-ブテンガスの異性化反応を行い、転化率C 24の測定を行った。その結果を表2に示す。
実施例 3
[0059]
 担体100部に対してカリウム金属換算で1.5重量%となるようにカリウムを担持した以外は、実施例1と同様の方法により触媒Cを作成した。この触媒Cを実施例1と同様の方法で前処理し、次いで1-ブテンガスの異性化反応を行い、転化率C 24の測定を行った。その結果を表2に示す。
実施例 4
[0060]
 担体100部に対してカリウム金属換算で3重量%となるようにカリウムを担持した以外は、実施例1と同様の方法により触媒Dを作成した。この触媒Dを実施例1と同様の方法で前処理し、次いで1-ブテンガスの異性化反応を行い、転化率の測定を行った。その結果を表2に示す。
実施例 5
[0061]
 担体100部に対してカリウム金属換算で5重量%となるようにカリウムを担持した以外は、実施例1と同様の方法により触媒Eを作成した。この触媒Eを実施例1と同様の方法で前処理し、次いで1-ブテンガスの異性化反応を行い、転化率の測定C 24を行った。その結果を表2に示す。
実施例 6
[0062]
 アルカリ金属としてカリウム(K)の代わりにナトリウム(Na)を使用した以外は、実施例2と同じ方法で、ナトリウム担持量1%の触媒Fを作成した。この触媒Fを実施例1と同様の方法で前処理し、次いで1-ブテンガスの異性化反応を行い、転化率C 24の測定を行った。その結果を表2に示す。
実施例 7
[0063]
 アルカリ金属としてカリウム(K)の代わりにリチウム(Li)を使用した以外は、実施例2と同じ方法で、リチウム担持量1%の触媒Gを作成した。この触媒Gを実施例1と同様の方法で前処理し、次いで1-ブテンガスの異性化反応を行い、転化率C 24の測定を行った。その結果を表2に示す。
[比較例1]
[0064]
 実施例1と同じ原料を使用して同じ条件で担体を作成した後、アルカリ金属塗布を行わずに同じ処理を行って、触媒Hを作成した。この触媒Hを実施例1と同様の方法で前処理し、次いで1-ブテンガスの異性化反応を行い、転化率の測定C 24を行った。その結果を表2に示す。
[比較例2]
[0065]
 一般グレードの酸化マグネシウム原料の代わりに、表1で示される高純度マグネシウムを使用して、実施例2と同じ方法で、カリウム担持量1重量%の触媒Jを作成した。この触媒Jを実施例1と同様の方法で前処理し、次いで1-ブテンガスの異性化反応を行い、24時間後の転化率C 24の測定を行った。その結果を表2に示す。
[0066]
[表2]


 表2において、アルカリ金属担持量に対して1-ブテンの24時間後の転化率C 24をプロットすると図2になる。このグラフから、アルカリ金属担持量が0.2~5重量%で活性が高くなり、0.5~3重量%で好ましい転化率が得られるようになり、更に0.7~2.5重量%で平衡転化率に近い高い転化率が得られることがわかる。
実施例 8
[0067]
 表2、図2の結果が、どのようなメカニズムにより起きるのか解析するために、いくつかの触媒を選んで、TPD-MASS(昇温脱離―質量分析)により酸素ガス吸着量の測定を行った。その結果を表3に示した。また酸素ガス吸着量と転化率の関係を図3a、酸素ガス吸着量と劣化速度の関係を図3bに示した。これからアルカリ担持量増加に伴い酸素吸着量が増大し、それと共に転化率が向上することがわかる。酸素吸着量が0.5~20μmol/gでは転化率が40%前後となり、酸素吸着量が0.6~15μmol/g、更には0.7~10μmol/gとなるとさらに転化率が向上し、特に酸素吸着量が0.8~4μmol/g付近で転化率が最大となると共に、劣化速度が最小となる。20μmol/g以上に酸素吸着量が大きくなると、転化率は減少し、劣化速度が大きくなる。これらの結果から、表面に吸着した酸素が、異性化反応により生じる炭素を酸化して、コーキングの進行を遅らせることが、劣化を抑制し、転化率を向上させる大きな理由の一つと考えられた。
[0068]
[表3]


実施例 9
[0069]
 実施例2で最初の異性化反応(Run#1)させた後の使用済み実施例触媒Bの69mlを、ガラス容器に充填し、再生処理を行った。その再生処理は、表4で示される第一段階から第三段階の処理を連続して合計7時間行った後、自然冷却する方法によった。
[0070]
[表4]


 比較例2で最初の反応(Run#1)させた触媒Jについても表4と同じ条件で再生処理を行った。これらの再生処理済の触媒B、触媒JをRun#1と同じ条件で2回目の異性化反応(Run #2)を行った。更に続けて2度目の再処理を表4と同じ条件で行い、Run#1,Run#2と同じ条件で、再生後の触媒B,Jを用いて3回目の異性化反応(Run#3)を行わせた.Run#1~Run#3における触媒B,Jによる異性化転化率、劣化速度を調べ、表5に示した。
[0071]
[表5]


 表5について、反応回数と劣化速度との関係を図4に示す。これから、標準グレードの酸化マグネシウム担体を用いた触媒は、高純度酸化マグネシウムを用いた触媒に比べ1回目の劣化速度はやや大きいものの、再生繰り返し後の劣化速度は小さくなり、その耐久性が著しく良好であることが見て取れる。酸素濃度の高い一般グレードの窒素ガスを使用した再生処理により、高純度酸化マグネシウムと同等、もしくはそれ以上の優れた耐久性が確認された。
実施例 10
[0072]
 実施例9で示した反応-再生繰り返し時の耐久性向上の理由を調べるために、異性化反応前の触媒B(一般グレード酸化マグネシウム担体1%カリウム担持)と、触媒J(高純度酸化マグネシウム担体1%カリウム担持)の破壊強度の測定を行い、その結果を表5に示した。また3回反応を繰り返した後の触媒の外観を観察したところ、触媒Jの表面が一部崩壊しているのに対して、触媒Bの崩壊はわずかであった。触媒Bは担体の破壊強度が高いために、異性化反応時の高温などのストレスに耐えるのに対して、触媒Jは高温のストレスにより一部摩耗が観察された。この摩耗により、表面のアルカリ金属が剥離するなどして、劣化が大きくなることも、触媒活性低下の一つの要因と考えられた。
[0073]
 以上、実施例8(図4)と実施例9の結果について、考察すると以下のようになる。
1)硫黄含有量の大きな酸化マグネシウムを担体原料とした触媒は、その硫黄が触媒毒として作用するために、オレフィン異性化転化率が低下する。
2)それに対して、硫黄含有量の大きな一般グレードを用いた酸化マグネシウムにカリウムなどのアルカリ金属を担持すると、転化率が増加、劣化速度が高純度酸化マグネシウムと同等程度に改良される。この効果は、アルカリ添加による酸素吸着量の増加が主要因として作用していると推定される。
3)最初の異性化反応後に、酸素濃度の高い窒素ガスで再生処理し、異性化を繰り返すと、高純度酸化マグネシウムは劣化増加現象を示すのに対して、一般グレード酸化マグネシウムは、3回繰り返しまではその劣化速度の増加が殆ど観察されず、良好な耐久性の結果を示した。
4)以上から、硫黄含有量の大きな一般グレードの酸化マグネシウムを担体材料として使用し、適切な量のアルカリを担持させると、酸素吸着量が増加して異性化時のコーキングが抑制されること、及び一般グレードの酸化マグネシウム担体を用いた触媒の破壊強度が上昇することの二つの効果が、触媒の劣化防止に寄与していると理解された。

請求の範囲

[請求項1]
 酸化マグネシウム純度が56重量%以上かつ99重量%未満である酸化マグネシウム担体上に、少なくとも1種のアルカリ金属が担持されたオレフィン異性化触媒。
[請求項2]
 酸化マグネシウム担体が、硫黄原子重量換算で500ppm以上の硫黄化合物を含有する、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項3]
 酸化マグネシウム担体が、硫黄原子重量換算で2000ppm以上の硫黄化合物を含有する、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項4]
 酸化マグネシウム担体が、硫黄原子重量換算で4000ppm以上の硫黄化合物を含有する、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項5]
 前記の少なくとも1種のアルカリ金属がカリウムおよびナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項6]
 酸化マグネシウム担体100重量部に対して金属換算で0.2~5重量部の少なくとも1種のアルカリ金属が担体表面上に担持された請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項7]
 酸化マグネシウム担体100重量部に対して金属換算で0.5~3重量部の少なくとも1種のアルカリ金属が担体表面上に担持された請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項8]
 酸化マグネシウム担体100重量部に対して金属換算で0.7~2.5重量部の少なくとも1種のアルカリ金属が担体表面上に担持された請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項9]
 TPD-MASS測定法による酸素吸着量が、0.5~20μmol/g、より好ましくは0.6~15μmol/g、更に好ましくは0.7~10μmol/g、特に好ましくは0.8~4μmol/gである、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項10]
 ペレット状、粒状、円柱状、円筒状、もしくは柱状の成型体である、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項11]
 オレフィン異性化が、1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応である、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項12]
 少なくとも25Nの破壊強度を有する、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒。
[請求項13]
 a)酸化マグネシウム純度が56重量%以上かつ99重量%未満である酸化マグネシウムを成型して担体を得る工程、
 b)工程a)により得られた担体に少なくとも1種のアルカリ金属を噴霧塗布する工程、および
 c)工程b)により得られたアルカリ金属が担持された担体を焼成する工程、
を含む、請求項1に記載のオレフィン異性化触媒の製造方法。
[請求項14]
 前記酸化マグネシウムが、海水を原料として電解法により製造された酸化マグネシウムである、請求項13に記載のオレフィン異性化触媒の製造方法。
[請求項15]
 1-ブテンを請求項1に記載のオレフィン異性化触媒と接触させることを含む、2-ブテンの製造方法。
[請求項16]
 請求項1に記載の触媒を1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応に使用後、その使用された触媒を再生し、再度1-ブテンから2-ブテンへの異性化反応に使用する、請求項15に記載の2-ブテンの製造方法。
[請求項17]
 異性化反応と再生処理を交互に2回以上行う、請求項16に記載の2-ブテンの製造方法。
[請求項18]
 触媒の再生が、体積換算で10ppm以上、好ましくは1,000ppm以上、より好ましくは10,000ppm以上の酸素を含有する窒素ガス中で触媒を、200℃以上、より好ましくは350℃以上に加熱することを含む、請求項16に記載の2-ブテンの製造方法。
[請求項19]
 i)請求項1に記載の触媒を充填した反応槽に、1-ブテンを通過させて2-ブテンを得る工程、および
 ii)得られた2-ブテンを、エチレンガスと一緒に後段のオレフィンメタセシス触媒を通過させてプロピレンを得る工程、
を含む、プロピレンを製造する方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3a]

[ 図 3b]

[ 図 4]