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1. WO2020116468 - 機能性構造体

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明 細 書

発明の名称 機能性構造体

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

実施例

0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111  

符号の説明

0112  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 機能性構造体

技術分野

[0001]
 本発明は、多孔質構造の担体(骨格体)と機能性物質とを備える機能性構造体に関する。

背景技術

[0002]
 石油コンビナートの製油所では、原油から、ナフサと呼ばれる石油化学原料や、重油、軽油、灯油、ガソリン、LPガス等の各種燃料が製造されている。原油は、上記の石油化学原料や各種燃料の他、様々な不純物が混ざり合った混合物であるため、原油に含まれる各成分を蒸留、分離する工程が必要となる。
[0003]
 そこで石油精製プロセスでは、各成分の沸点差を利用し、常圧蒸留装置における塔内の棚段で原油を加熱して成分毎に分離し、分離後の各物質を濃縮している。これにより、LPガス、ナフサ等の低沸点物質が常圧蒸留装置の上部棚段で取り出されると共に、重油等の高沸点物質が常圧蒸留装置の底部から取り出される。そして、分離、濃縮された各物質に脱硫等の二次処理を施すことにより、各種燃料製品が製造される。
[0004]
 一般に、石油改質用触媒は、上記石油精製プロセスにおいて低沸点のナフサ等を効率良く改質してオクタン価の高いガソリン等を製造するために使用されている。原油中のナフサ留分はそのままではオクタン価が低く、車両を走らせるガソリンとしては不適合であるため、ナフサ留分中のオクタン価の低いパラフィン分およびナフテン分を、石油改質用触媒を用いてオクタン価の高い芳香族分に改質することにより、車両の燃料に適した性状の改質ガソリンを製造している。
[0005]
 また、原油の重質化に伴い、重質油を直脱装置、間脱装置などの水素化脱硫装置にて水素化脱硫処理して得られる脱硫重油、脱硫重質軽油等を更に分解して、脱硫ナフサ、脱硫灯油、脱硫軽油等を増産する水素化分解処理が行われている。例えば、常圧蒸留残渣油を水素化分解処理することにより、脱硫灯軽油留分、脱硫ナフサ留分の得率を増大して脱硫重油を低減し、且つ、その脱硫重油を接触分解装置にてLPG留分、FCCガソリン留分、LCO留分を生産することによって残渣油を低減し、軽質油留分を増大させる。このとき、代表的なゼオライトである結晶性アルミノシリケート担体からなる触媒や、ゼオライトと多孔性無機酸化物とを特定の割合で含む水素化分解触媒が提案されている。
[0006]
 例えば、水素化分解触媒として、Y型ゼオライトからなる担体の表面に、Pd、Pt、Co、Fe、Cr、Mo、W及びこれらの混合物から選択される材料からなる金属が沈着されてなる触媒が開示されている(特許文献1)。
[0007]
 また、自動車分野においては、ディーゼルエンジンを搭載した車両の排気ガス用触媒構造体として、基材セラミック表面にセラミック担体を配置し、該セラミック担体に主触媒成分及び助触媒成分の双方を担持してなるセラミック触媒体が提案されている。このセラミック触媒体では、γ-アルミナからなるセラミック担体の表面に、結晶格子中の格子欠陥等からなる多数の細孔が形成されており、Ce-Zr、Pt等からなる主触媒成分がセラミック担体の表面近傍に直接担持された構成を有している(特許文献2)。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 米国特許出願公開第2016/0030934号明細書
特許文献2 : 米国特許出願公開第2003/0109383号明細書
特許文献3 : 特開2017-128480号公報
特許文献4 : 国際公開第2010/097108号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 しかしながら、上記のような触媒構造体では、触媒粒子が担体の表面或いは表面近傍に担持されているため、改質処理中に被改質物質等の流体から受ける力や熱などの影響に因って触媒粒子が担体内で移動し、触媒粒子同士の凝集(シンタリング)が発生し易い。触媒粒子同士の凝集が生じると、触媒としての有効表面積が減少することで触媒活性が低下することから寿命が通常よりも短くなるため、触媒構造体自体を短期間で交換・再生しなければならず、交換作業が煩雑であると共に、省資源化を図ることができないという問題がある。また、石油改質用触媒は、通常、常圧蒸留装置の下流側に連結されて石油精製プロセスにおいて連続的に使用されるため、触媒の再活性化技術を適用し難く、仮に再活性化技術を適用できたとしても作業が非常に煩雑となる。また、このような機能の経年的な低下の抑制或いは防止は、触媒分野のみならず様々な技術分野での課題として挙げられており、機能の長期的な維持を図るべく解決策が望まれている。さらには、実用化の観点から、さらなる触媒活性の向上が求められている。例えば特許文献3、4において、触媒の凝集を抑制するために、エマルション法によりアモルファスシリカ被覆金属微粒子を作製し、次いでこの粒子を水熱処理することで、ゼオライトに金属微粒子を包摂させた技術が報告されている。エマルション法によるアモルファスシリカ被覆金属微粒子の作製は、有機溶媒中で界面活性剤と金属源を混合した乳濁液に、還元剤を加えることによって金属微粒子を形成させた後に、シランカップリング剤を添加して金属微粒子表面にシリカ層を形成することで達成される。しかしながら、エマルション法により金属粒子を作製する場合、得られる粒子の粒子サイズは、エマルション化した際の液滴のサイズと、金属粒子の凝集のしやすさにより影響を受ける。一般的に、卑金属はナノ粒子の状態を維持することが困難である。実際に、引用文献3、4でナノサイズの粒径を有する粒子について記載されているのは貴金属のみであり、凝集しやすい卑金属とその酸化物の試料について、ナノサイズの粒径を有する粒子は開示されていない。また、引用文献4、5において、エマルション法では、有機溶媒、界面活性剤などが残留し、ゼオライト構造を形成する際に使用する試薬等が不純物となり、ゼオライトの熱安定性に悪影響を与えることも報告されている。
[0010]
 本発明の目的は、触媒として用いた場合に高い触媒能を示し、機能性物質の機能の低下を抑制して長寿命化を実現することができる機能性構造体を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、金属元素(M)を含み前記担体に内在する少なくとも1つの機能性物質と、を備え、前記担体が、互いに連通する通路を有し、前記機能性物質が、前記担体の少なくとも前記通路に存在し、かつ前記機能性物質から派生する金属元素(M)と、前記担体を構成する元素とが部分的に置換していることによって、触媒として用いた場合に高い触媒能を示し、機能性物質の機能低下を抑制し、長寿命化を実現できる機能性構造体が得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
[0012]
 すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、
 金属元素(M)を含み前記担体に内在する少なくとも1つの機能性物質と、
を備え、
 前記担体が、互いに連通する通路を有し、
 前記機能性物質が、前記担体の少なくとも前記通路に存在し、かつ前記機能性物質から派生する金属元素(M)と、前記担体を構成する元素とが部分的に置換していることを特徴とする、機能性構造体。
[2]前記金属元素(M)は、4配位構造と6配位構造の2種類の配位構造の中心原子として、前記機能性部構造体に存在していることを特徴とする、[1]に記載の機能性構造体。
[3]前記4配位構造の金属元素(M)が、前記4配位構造の金属元素(M)と前記6配位構造の金属元素(M)の合計に対し、原子比で0.15以上であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の機能性構造体。
[4]ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、
 金属元素(M)を含み前記担体に内在する少なくとも1つの機能性物質と、
を備える機能性構造体であって、
 前記担体が、互いに連通する通路を有し、
 前記機能性物質が、前記担体の少なくとも前記通路に存在し、
 XAFS測定による前記機能性構造体に含まれる金属の吸収端から特定したXANESスペクトルに基づいて、前記4配位構造をとる金属元素(メタロシリケートに対応するスペクトル形状を持つ前記機能性構造体の金属元素)のピーク強度の数値(a)と、前記6配位構造をとる金属元素(金属に還元する前の金属酸化物に対応するスペクトル形状を持つ前記機能性構造体の金属元素)のピーク強度の数値(b)とを、以下の(1)式に代入して算出したときの4配位構造をとる金属元素(M)の存在割合Pの数値が、0.15以上であることを特徴とする、機能性構造体。
   P=(a)/(a+b) ・・・(1)
[5]前記存在割合Pの数値が、0.25以上であることを特徴とする、[4]に記載の機能性構造体。
[6]前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造の一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ
 前記機能性物質が、少なくとも前記拡径部に存在していることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の機能性構造体。
[7]前記拡径部は、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔同士を連通している、[6]に記載の機能性構造体。
[8]前記機能性物質は、触媒物質であり、
 前記担体は、少なくとも1つの前記触媒物質を担持することを特徴とする、[1]~[7]のいずれかに記載の機能性構造体。
[9]前記触媒物質は、金属酸化物微粒子であることを特徴とする、[8]に記載の機能性構造体。
[10]前記金属酸化物微粒子の平均粒径が、前記通路の平均内径よりも大きく、且つ前記拡径部の内径以下であることを特徴とする、[9]に記載の機能性構造体。
[11]前記金属酸化物微粒子の金属元素(M)が、前記機能性構造体に対して0.5~2.5質量%で含有されていることを特徴とする、[9]に記載の機能性構造体。
[12]前記金属酸化物微粒子の平均粒径が、0.1nm~50nmであることを特徴とする、[9]~[11]のいずれかに記載の機能性構造体。
[13]前記通路の平均内径に対する前記金属酸化物微粒子の平均粒径の割合が、0.06~500であることを特徴とする、[9]~[12]のいずれかに記載の機能性構造体。
[14]前記通路の平均内径は、0.1nm~1.5nmであることを特徴とする、[1]~[13]のいずれかに記載の機能性構造体。
[15]前記担体の外表面に保持された少なくとも1つの他の機能性物質を更に備えることを特徴とする、[1]~[14]のいずれかに記載の機能性構造体。
[16]前記担体に内在する前記少なくとも1つの機能性物質の含有量が、前記担体の外表面に保持された前記少なくとも1つの他の機能性物質の含有量よりも多いことを特徴とする、[15]に記載の機能性構造体。
[17]前記ゼオライト型化合物は、ケイ酸塩化合物であることを特徴とする、[1]~[16]のいずれかに記載の機能性構造体。

発明の効果

[0013]
 本発明によれば、触媒として用いた場合に高い触媒能を達成することができ、機能性物質の機能低下を抑制し、長寿命化を実現できる機能性構造体を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 図1は、本発明の実施形態に係る機能性構造体の内部構造が分かるように概略的に示したものであって、図1(a)は斜視図(一部を横断面で示す。)、図1(b)は部分拡大断面図である。
[図2] 図2は、図1の機能性構造体の機能の一例を説明するための部分拡大断面図であり、図2(a)は篩機能、図2(b)は触媒機能を説明する図である。
[図3] 図3は、図1の機能性構造体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
[図4] 図4は、図1の機能性構造体の変形例を示す模式図である。

発明を実施するための形態

[0015]
 以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[0016]
[機能性構造体の構成]
 図1は、本発明の実施形態に係る機能性構造体の構成を概略的に示す図であり、(a)は斜視図(一部を横断面で示す。)、(b)は部分拡大断面図である。なお、図1における機能性構造体は、その一例を示すものであり、本発明に係る各構成の形状、寸法等は、図1のものに限られないものとする。
[0017]
 図1(a)に示されるように、機能性構造体1は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体である骨格体10と、該骨格体10に内在する、少なくとも1つの機能性物質20とを備える。
[0018]
 機能性物質20は、単独で、または骨格体10と協働することで、一又は複数の機能を発揮する物質である。また、上記機能の具体例としては、触媒機能、発光(または蛍光)機能、吸光機能、識別機能等が挙げられる。機能性物質20は、例えば触媒機能を有する触媒物質であることが好ましい。なお、機能性物質20が触媒物質であるとき、骨格体10は、触媒物質を担持する担体である。
[0019]
 機能性構造体1において、複数の機能性物質20,20,・・・は、骨格体10の多孔質構造の内部に包接されている。機能性物質20の一例である触媒物質は、好ましくは金属酸化物微粒子である。金属酸化物微粒子については、詳しくは後述する。また、機能性物質20は、金属酸化物以外に、金属複合酸化物や金属酸化物の混合物または複合材料、金属酸化物と金属の混合物または複合材料を含む粒子であってもよい。
[0020]
 骨格体10は、多孔質構造であり、図1(b)に示すように、好適には複数の孔11a,11a,・・・が形成されることにより、互いに連通する通路11を有する。ここで機能性物質20は、骨格体10の少なくとも通路11に存在しており、好ましくは骨格体10の少なくとも通路11に保持され、より好ましくは骨格体10と部分的に結合している。
[0021]
 このような構成により、骨格体10内での機能性物質20の移動が抑制され、機能性物質20、20同士の凝集が有効に防止されている。その結果、機能性物質20としての有効表面積の減少を効果的に抑制することができ、機能性物質20の機能は長期にわたって持続する。すなわち、機能性構造体1によれば、機能性物質20の凝集による機能の低下を抑制でき、機能性構造体としての長寿命化を図ることができる。また、機能性構造体の長寿命化により、機能性構造体の交換頻度を低減でき、使用済みの機能性構造体の廃棄量を大幅に低減することができ、省資源化を図ることができる。
[0022]
 通常、機能性構造体を、流体(例えば、重質油や、NOx等の改質ガスなど)の中で用いる場合、流体から外力を受ける可能性がある。この場合、機能性物質が、骨格体10の外表面に付着状態で保持されているだけであると、流体からの外力の影響で骨格体10の外表面から離脱しやすいという問題がある。これに対し、機能性構造体1では、機能性物質20は骨格体10の少なくとも通路11に保持され、または部分的に結合しているため、流体による外力の影響を受けたとしても、骨格体10から機能性物質20が離脱しにくい。すなわち、機能性構造体1が流体内にある場合、流体は骨格体10の孔11aから、通路11内に流入するため、通路11内を流れる流体の速さは、流路抵抗(摩擦力)により、骨格体10の外表面を流れる流体の速さに比べて、遅くなると考えられる。このような流路抵抗の影響により、通路11内に保持された機能性物質20を改質して得られる機能性物質が流体から受ける圧力は、骨格体10の外部において機能性物質が流体から受ける圧力に比べて低くなる。そのため、骨格体11に内在する機能性物質20が離脱することを効果的に抑制でき、機能性物質20の機能を長期的に安定して維持することが可能となる。なお、上記のような流路抵抗は、骨格体10の通路11が、曲がりや分岐を複数有し、骨格体10の内部がより複雑で三次元的な立体構造となっているほど、大きくなると考えられる。
[0023]
 機能性構造体1において、機能性物質20から派生する金属元素(M)と、前記骨格体10を構成する元素とが部分的に置換している。ここで、「機能性物質20から派生する金属元素(M)」とは、機能性物質20に由来する金属元素(M)のことをいう。そして、骨格体10を構成する金属元素(M)は、機能性物質20に含まれる金属元素(M)とともに粒子を構成していたものでもある。このように、機能性物質20から派生する金属元素(M)が、前記骨格体10を構成する元素と部分的に置換するメカニズムについては明らかにはなっていないが、機能性物質20中の金属元素(M)が熱拡散等の何らかの現象によって、機能性物質20から骨格体10との接触界面または骨格体10の内部への原子レベルでの金属元素(M)の拡散移動が生じた結果、骨格体10を構成する元素が、機能性物質20に含まれていた金属元素(M)と部分的に置換したものと考えられる。このような構成により、骨格体10は固体酸触媒能を発現する。すなわち、このようにして得られる機能性構造体1は、固体酸触媒として用いることができ、例えばナフサなどの炭化水素の水素化分解反応を促進することができる。一方で、機能性構造体1において、金属元素(M)を含み骨格体10に内在する少なくとも1つの機能性物質20を備える場合、この機能性物質20により、上述した固体酸触媒としての反応において、その触媒反応の副生成物として発生するコークスの堆積を抑制することができる。このコークスは、骨格体10(特に固体酸を有する部分)や機能性物質20の表面に付着して堆積することにより、機能性物質20の触媒活性を低下させ、または喪失させ得るものである。したがって、機能性構造体1によれば、上述したような機能性物質20の凝集や離脱による機能の低下を抑制できるという作用だけではなく、その機能性物質20が存在することにより、コークスの堆積をも大幅に抑制し、より長期間にわたって優れた触媒活性を維持することができる。
[0024]
 また、前記金属元素(M)は、4配位構造と6配位構造の2種類の配位構造の中心原子として、前記機能性構造体1に存在していることが好ましい。ここで、「4配位構造」および「6配位構造」は、X線吸収微細構造(XAFS,X-ray absorption fine structure)測定による前記機能性構造体に含まれる金属の吸収端から特定したXANESスペクトルに基づいて同定されるものである。そして、「4配位構造」をとる金属元素(M)は、メタロシリケートに対応するスペクトル形状を持つ金属元素(M)であり、より具体的には、骨格体10の内部に、その骨格体10を構成する元素と部分的に置換した金属元素(M)である。一方で、「6配位構造」をとる金属元素(M)は、金属に還元する前の金属酸化物に対応するスペクトル形状を持つ金属元素(M)である。このように、金属元素(M)は、骨格体10を構成する元素として含まれるとともに、その骨格体10の通路に機能性物質20としても含まれる。
[0025]
 このような機能性構造体1において、前記4配位構造の金属元素(M)が、前記4配位構造の金属元素(M)と前記6配位構造の金属元素(M)の合計に対し、原子比で0.15以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.20超であることが更に好ましく、0.25以上であることが特に好ましく、0.30以上であることが最も好ましい。また、前記4配位構造の金属元素(M)が、前記4配位構造の金属元素(M)と前記6配位構造の金属元素(M)の合計に対し、0.40以上であることも好ましい。
[0026]
 より具体的に、この比は、前記4配位構造をとる金属元素(メタロシリケートに対応するスペクトル形状を持つ前記機能性構造体の金属元素)のピーク強度の数値(以下「a」とする)と、前記6配位構造をとる金属元素(金属に還元する前の金属酸化物に対応するスペクトル形状を持つ前記機能性構造体の金属元素)のピーク強度の数値(以下「b」とする)とを、以下の(1)式に代入して算出したときの4配位構造をとる金属元素(M)の存在割合Pの数値である。なお、4配位構造をとる金属元素のピーク強度および6配位構造をとる金属元素のピーク強度は、ピーク分離が必要な場合には、最小二乗法により線形結合でのピーク分離を行う。4配位構造をとる金属元素のピーク強度および6配位構造をとる金属元素のピーク強度は、それぞれのピーク面積を用い、下記(1)式における数値aおよび数値bとする。
   P=(a)/(a+b) ・・・(1)
[0027]
 また、通路11は、ゼオライト型化合物の骨格構造によって画定される一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、上記一次元孔、上記二次元孔及び上記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部12とを有していることが好ましく、このとき、機能性物質20は、少なくとも拡径部12に存在していることが好ましく、少なくとも拡径部12に保持されて包接されていることがより好ましく、拡径部12に結合していることがさらに好ましい。ここでいう一次元孔とは、一次元チャンネルを形成しているトンネル型またはケージ型の孔、もしくは複数の一次元チャンネルを形成しているトンネル型またはケージ型の複数の孔(複数の一次元チャンネル)を指す。また、二次元孔とは、複数の一次元チャンネルが二次元的に連結された二次元チャンネルを指し、三次元孔とは、複数の一次元チャンネルが三次元的に連結された三次元チャンネルを指す。
[0028]
 これにより、機能性物質20の骨格体10内での移動がさらに抑制され、機能性物質20離脱や、機能性物質20、20同士の凝集をさらに有効に防止することができる。包接とは、機能性物質20が骨格体10に内包されている状態を指す。このとき、機能性物質20と骨格体10とは、必ずしも機能性物質20の表面全体にわたり直接的に互いが接触している必要はなく、機能性物質20と骨格体10との間に他の物質(例えば、界面活性剤等)が介在した状態のことを指す。
[0029]
 更に、機能性物質20と骨格体10が部分的な結合を抑制することで機能性物質が活性化しやすくなる。
[0030]
 図1(b)では、機能性物質20が拡径部12に包接されている場合を示しているが、この構成だけには限定されず、機能性物質20は、拡径部12に結合していてもよく、また、機能性物質20は、その一部が拡径部12の外側にはみ出した状態で通路11に保持されていてもよい。また、機能性物質20は、拡径部12以外の通路11の部分(例えば通路11の内壁部分)に部分的に埋設され、または固着等によって保持されていてもよい。
 また、拡径部12は、上記一次元孔、上記二次元孔及び上記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔11a,11a同士を連通しているのが好ましい。これにより、骨格体10の内部に、一次元孔、二次元孔又は三次元孔とは異なる別途の通路が設けられるので、機能性物質20の機能をより発揮させることができる。
[0031]
 また、通路11は、骨格体10の内部に、分岐部または合流部を含んで三次元的に形成されており、拡径部12は、通路11の上記分岐部または合流部に設けられるのが好ましい。
[0032]
 骨格体10に形成された通路11の平均内径D は、上記一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかを構成する孔11aの短径及び長径の平均値から算出され、例えば0.1nm~1.5nmであり、好ましくは0.5nm~0.8nmである。また、拡径部12の内径D は、例えば0.5nm~50nmであり、好ましくは1.1nm~40nm、より好ましくは1.1nm~3.3nmである。拡径部12の内径D は、例えば後述する機能性材料(A)の細孔径、及び包接される機能性物質20の平均粒径D に依存する。拡径部12の内径D は、機能性物質20を包接し得る大きさである。
[0033]
 骨格体10は、ゼオライト型化合物で構成される。ゼオライト型化合物としては、例えば、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、陽イオン交換ゼオライト、シリカライト等のケイ酸塩化合物、アルミノホウ酸塩、アルミノヒ酸塩、ゲルマニウム酸塩等のゼオライト類縁化合物、リン酸モリブデン等のリン酸塩系ゼオライト類似物質などが挙げられる。中でも、ゼオライト型化合物はケイ酸塩化合物であることが好ましい。
[0034]
 ゼオライト型化合物の骨格構造は、FAU型(Y型またはX型)、MTW型、MFI型(ZSM-5)、FER型(フェリエライト)、LTA型(A型)、MWW型(MCM-22)、MOR型(モルデナイト)、LTL型(L型)、BEA型(ベータ型)などの中から選択され、好ましくはMFI型であり、より好ましくはZSM-5である。ゼオライト型化合物には、各骨格構造に応じた孔径を有する孔が複数形成されており、例えばMFI型の最大孔径は0.636nm(6.36Å)、平均孔径0.560nm(5.60Å)である。
[0035]
 以下、機能性物質20が金属酸化物微粒子(以下、「微粒子」ということがある。)である場合について詳しく説明する。
[0036]
 機能性物質20が上記微粒子である場合、微粒子20は一次粒子である場合と、一次粒子が凝集して形成した二次粒子である場合とがあるが、微粒子20の平均粒径D は、好ましくは通路11の平均内径D よりも大きく、且つ拡径部12の内径D 以下である(D <D ≦D )。このような微粒子20は、通路11内では、好適には拡径部12に包接されており、骨格体10内での微粒子20の移動が規制される。より好適にはこのような微粒子20は、拡径部12に保持されて部分的に結合し微粒子20の移動がさらに抑制される。よって、微粒子20が流体から外力を受けた場合であっても、骨格体10内での微粒子20の移動が抑制され、骨格体10の通路11に分散配置された拡径部12、12、・・のそれぞれに包接されるか又は結合された微粒子20、20、・・同士が接触するのを有効に防止することができる。
[0037]
 機能性物質20が金属酸化物微粒子である場合には、金属酸化物微粒子20の平均粒径D は、一次粒子および二次粒子のいずれの場合も、好ましくは0.1nm~50nmであり、より好ましくは0.1nm以上30nm未満であり、さらに好ましくは0.4nm~14.0nm、特に好ましくは1.0nm~3.3nmである。また、通路11の平均内径D に対する金属酸化物微粒子20の平均粒径D の割合(D /D )は、好ましくは0.06~500であり、より好ましくは0.1~36であり、更に好ましくは1.1~36であり、特に好ましくは1.7~4.5である。
[0038]
 また、前駆体物質20が金属酸化物微粒子である場合、金属酸化物微粒子の金属元素(M)は、機能性構造体1に対して0.5質量%以上7.6質量%以下で含有されているのが好ましく、0.5質量%以上6.9質量%以下で含有されているのがより好ましく、0.5質量%以上2.5質量%以下で含有されているのがさらに好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下で含有されているのがさらに好ましい。例えば、金属元素(M)がCoである場合、Co元素の含有量(質量%)は、(Co元素の質量)/(機能性構造体1の全元素の質量)×100で表される。
[0039]
 上記金属酸化物微粒子は、金属酸化物で構成されていればよく、例えば、単一の金属酸化物で構成されていてもよく、あるいは2種以上の金属酸化物の混合物で構成されていてもよい。なお、本明細書において、金属酸化物微粒子を構成する(材質としての)「金属酸化物」は、1種の金属元素(M)を含む酸化物と、2種以上の金属元素(M)を含む複合酸化物とを含む意味であり、1種以上の金属元素(M)を含む酸化物の総称である。
[0040]
 このような金属酸化物としては、例えば酸化コバルト(CoO )、酸化ニッケル(NiO )、酸化鉄(FeO )、酸化銅(CuO )、酸化ジルコニウム(ZrO )、酸化セリウム(CeO )、酸化アルミニウム(AlO )、酸化ニオブ(NbO )、酸化チタン(TiO )、酸化ビスマス(BiO )、酸化モリブデン(MoO )、酸化バナジウム(VO )、酸化クロム(CrO )等が挙げられ、上記のいずれか1種以上を主成分とすることが好ましい。
[0041]
 また、微粒子20を構成する金属元素(M)に対する、骨格体10を構成するケイ素(Si)の割合(原子数比Si/M)は、10~1000であるのが好ましく、50~200であるのがより好ましい。上記割合が1000より大きいと、活性が低いなど、機能性物質としての作用が十分に得られない可能性がある。一方、上記割合が10よりも小さいと、微粒子20の割合が大きくなりすぎて、骨格体10の強度が低下する傾向がある。なお、ここでいう微粒子20は、骨格体10の内部に保持され、または担持され、または結合された微粒子をいい、骨格体10の外表面に付着した微粒子を含まない。
[0042]
[機能性構造体の機能]
 機能性構造体1は、上記のとおり、多孔質構造の骨格体10と、骨格体に内在する少なくとも1つの機能性物質20とを備える。機能性構造体1は、骨格体に内在する機能性物質20が流体と接触することにより、機能性物質20に応じた機能を発揮する。具体的に、機能性構造体1の外表面10aに接触した流体は、外表面10aに形成された孔11aから骨格体10内部に流入して通路11内に誘導され、通路11内を通って移動し、他の孔11aを通じて機能性構造体1の外部へ出る。流体が通路11内を通って移動する経路において、通路11に保持され、または結合された機能性物質20と接触することによって、機能性物質20の機能に応じた反応(例えば、触媒反応)が生じる。また、機能性構造体1は、骨格体が多孔質構造であることにより、分子篩能を有する。
[0043]
 まず、機能性構造体1の分子篩能について、図2(a)を用いて、流体がベンゼン、プロピレン及びメシチレンを含む液体である場合を例として説明する。図2(a)に示すように、孔11aの孔径以下、言い換えれば、通路11の内径以下の大きさを有する分子で構成される化合物(例えば、ベンゼン、プロピレン)は、骨格体10内に浸入することができる。一方、分子の形状を考慮した上で孔11aの孔径を超える大きさを有する分子で構成される化合物(例えば、メシチレン)は、骨格体10内へ浸入することができない。このように、流体が複数種類の化合物を含んでいる場合に、骨格体10内に浸入することができない化合物の反応は規制され、骨格体10内に浸入することができる化合物を反応させることができる。
[0044]
 反応によって骨格体10内で生成した化合物のうち、孔11aの孔径以下の大きさを有する分子で構成される化合物のみが孔11aを通じて骨格体10の外部へ出ることができ、反応生成物として得られる。一方、孔11aから骨格体10の外部へ出ることができない化合物は、骨格体10の外部へ出ることができる大きさの分子で構成される化合物に変換させれば、骨格体10の外部へ出すことができる。このように、機能性構造体1を用いることにより、特定の反応生成物を選択的に得ることができる。
[0045]
 機能性構造体1では、図2(b)に示すように、好適には通路11の拡径部12に機能性物質20が包接されて、または保持されて、通路11と機能性物質とが結合している。機能性物質20が金属酸化物微粒子であるとき、金属酸化物微粒子の平均粒径D が、通路11の平均内径D よりも大きく、拡径部12の内径D よりも小さい場合には(D <D <D )、金属酸化物微粒子と拡径部12との間に小通路13が形成される。そこで、図2(b)中の矢印に示すように、小通路13に浸入した流体が金属酸化物微粒子と接触する。各金属酸化物微粒子は、拡径部12に包接され結合しているため、骨格体10内での移動が抑制されている。これにより、骨格体10内における金属酸化物微粒子同士の凝集が防止される。その結果、金属酸化物微粒子と流体との大きな接触面積を安定して維持することができる。
[0046]
 次に、機能性物質20が触媒機能を有する場合について説明する。具体的に、機能性物質20が酸化鉄(FeO )微粒子であり、機能性構造体1の骨格体10内に、ブチルベンゼンを浸入させた場合を例として説明する。骨格体10内にブチルベンゼンが浸入すると、下記に示すように、ブチルベンゼンが、分解反応によってベンゼン、ブテン(1-ブテン、2-ブテン)およびその他低級オレフィンに分解される。これは、機能性物質20が分解反応における触媒として機能することを意味する。このように、機能性構造体1を用いてブチルベンゼンの分解反応を行うことにより、各種化学原料として有用なブテンやその他低級オレフィンを得ることができる。特に、このような機能性構造体1によれば、ブチルベンゼンの分解反応の活性が高く、その反応中のブテン選択率および低級オレフィンの選択率が高く、その一方で、触媒活性を低下させる副生成物であるコークの生成量は少ない。したがって、このような機能性構造体1は、ブチルベンゼンの分解反応によるブタンおよび低級オレフィンの生成のための触媒として有用である。
[0047]
[化1]


[0048]
 このような機能性構造体1は、機能性物質から派生する鉄元素(Fe)と、担体を構成する元素とが部分的に置換していることにより、オレフィンの生成のために適度な酸量を有していると考えられる。酸量が多すぎると、オレフィンの水素移行反応が進行する。一方で、酸量が少なすぎると、触媒活性が低く、分解反応が生じにくくなる。なお、この反応は、酸化バナジウム、酸化タングステンまたは酸化モリブデンなどの酸性触媒を用いても進行する。
[0049]
 また、機能性物質20が酸化鉄(FeO )微粒子であり、機能性構造体1の骨格体10内に、重質油であるドデシルベンゼンを浸入させた場合を例として説明する。骨格体10内にドデシルベンゼンが浸入すると、下記に示すように、ドデシルベンゼンが、酸化分解反応によって種々のアルコール及びケトンに分解される。さらに、分解物の1つであるケトン(ここではアセトフェノン)から、軽質油であるベンゼンが生成される。このように、機能性構造体1を用いることにより、重質油を軽質油に変換することができる。従来、重質油を軽質油に変換するためには、水素を用いた水素化分解処理が行われていた。これに対して、機能性構造体1を用いれば、水素が不要となる。そのため、水素の供給が難しい地域においても重質油を軽質油に変換するために利用することができる。また、水素が不要となることで、低コスト化を実現でき、これまで十分に利用することができなかった重質油の利用が促進されることが期待できる。
[0050]
[化2]


[化3]


[0051]
[機能性構造体の製造方法]
 図3は、図1の機能性構造体1の製造方法を示すフローチャートである。以下、骨格体に内在する機能性物質が金属酸化物微粒子である場合を例に、機能性構造体の製造方法の一例を説明する。
[0052]
(ステップS1:準備工程)
 図3に示すように、先ず、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の骨格体を得るための前駆体材料(A)を準備する。前駆体材料(A)は、好ましくは規則性メソ細孔物質であり、機能性構造体の骨格体を構成するゼオライト型化合物の種類(組成)に応じて適宜選択できる。
[0053]
 ここで、機能性構造体の骨格体を構成するゼオライト型化合物がケイ酸塩化合物である場合には、規則性メソ細孔物質は、細孔径1~50nmの細孔が1次元、2次元または3次元に均一な大きさかつ規則的に発達したSi-O骨格からなる化合物であることが好ましい。このような規則性メソ細孔物質は、合成条件によって様々な合成物として得られるが、合成物の具体例としては、例えばSBA-1、SBA-15、SBA-16、KIT-6、FSM-16、MCM-41等が挙げられ、中でもMCM-41が好ましい。なお、SBA-1の細孔径は8~30nm、SBA-15の細孔径は6~10nm、SBA-16の細孔径は6nm、KIT-6の細孔径は9nm、FSM-16の細孔径は3~5nm、MCM-41の細孔径は1~10nmである。また、このような規則性メソ細孔物質としては、例えばメソポーラスシリカ、メソポーラスアルミノシリケート、メソポーラスメタロシリケート等が挙げられる。
[0054]
 前駆体材料(A)は、市販品および合成品のいずれであってもよい。前駆体材料(A)を合成する場合には、公知の規則性メソ細孔物質の合成方法により行うことができる。例えば、前駆体材料(A)の構成元素を含有する原料と、前駆体材料(A)の構造を規定するための鋳型剤とを含む混合溶液を調製し、必要に応じてpHを調整して、水熱処理(水熱合成)を行う。その後、水熱処理により得られた沈殿物(生成物)を回収(例えば、ろ別)し、必要に応じて洗浄および乾燥し、さらに焼成することで、粉末状の規則性メソ細孔物質である前駆体材料(A)が得られる。ここで、混合溶液の溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。また、原料は、骨格体の種類に応じて選択されるが、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)等のシリカ剤、フュームドシリカ、石英砂等が挙げられる。また、鋳型剤としては、各種界面活性剤、ブロックコポリマー等を用いることができ、規則性メソ細孔物質の合成物の種類に応じて選択することが好ましく、例えばMCM-41を作製する場合にはヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等の界面活性剤が好適である。水熱処理は、例えば、密閉容器内で、80~800℃、5時間~240時間、0~2000kPaの処理条件で行うことができる。焼成処理は、例えば、空気中で、350~850℃、2~30時間の処理条件で行うことができる。
[0055]
(ステップS2:含浸工程)
 次に、準備した前駆体材料(A)に、金属含有溶液を含浸させ、前駆体材料(B)を得る。
[0056]
 金属含有溶液は、機能性構造体の金属酸化物微粒子を構成する金属元素(M)に対応する金属成分(例えば、金属イオン)を含有する溶液であればよく、例えば、溶媒に、金属元素(M)を含有する金属塩を溶解させることにより調製できる。このような金属塩としては、例えば、塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩等の金属塩が挙げられ、中でも硝酸塩が好ましい。溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。
[0057]
 前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、後述する焼成工程の前に、粉末状の前駆体材料(A)を撹拌しながら、金属含有溶液を複数回に分けて少量ずつ添加することが好ましい。また、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液がより浸入し易くなる観点から、前駆体材料(A)に、金属含有溶液を添加する前に予め、添加剤として界面活性剤を添加しておくことが好ましい。このような添加剤は、前駆体材料(A)の外表面を被覆する働きがあり、その後に添加される金属含有溶液が前駆体材料(A)の外表面に付着することを抑制し、金属含有溶液が前駆体材料(A)の細孔内部により浸入し易くなると考えられる。
[0058]
 このような添加剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、分子サイズが大きく前駆体材料(A)の細孔内部には浸入できないため、細孔の内部に付着することは無く、金属含有溶液が細孔内部に浸入することを妨げないと考えられる。非イオン性界面活性剤の添加方法としては、例えば、後述する焼成工程の前に、非イオン性界面活性剤を、前駆体材料(A)に対して50~270質量%添加するのが好ましい。非イオン性界面活性剤の前駆体材料(A)に対する添加量が50質量%未満であると上記の抑制作用が発現し難く、非イオン性界面活性剤を前駆体材料(A)に対して500質量%よりも多く添加すると粘度が上がりすぎるので好ましくない。よって、非イオン性界面活性剤の前駆体材料(A)に対する添加量を上記範囲内の値とする。
[0059]
 また、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量は、前駆体材料(A)に含浸させる金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)の量(すなわち、前駆体材料(B)に内在させる金属元素(M)の量)を考慮して、適宜調整することが好ましい。例えば、後述する焼成工程の前に、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液中に含まれる金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算して、10~1000となるように調整することが好ましく、50~200となるように調整することがより好ましい。例えば、前駆体材料(A)に金属含有溶液を添加する前に、添加剤として界面活性剤を前駆体材料(A)に添加した場合、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、原子数比Si/Mに換算して50~200とすることで、金属酸化物微粒子の金属元素(M)を、機能性構造体に対して0.5質量%~7.6質量%で含有させることができる。前駆体材料(B)の状態で、その細孔内部に存在する金属元素(M)の量は、金属含有溶液の金属濃度や、上記添加剤の有無、その他温度や圧力等の諸条件が同じであれば、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量に概ね比例する。また、前駆体材料(B)に内在する金属元素(M)の量は、機能性構造体の骨格体に内在する金属酸化物微粒子を構成する金属元素の量と比例関係にある。したがって、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を上記範囲に制御することにより、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液を十分に含浸させることができ、ひいては、機能性構造体の骨格体に内在させる金属酸化物微粒子の量を調整することができる。
[0060]
 前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させた後は、必要に応じて、洗浄処理を行ってもよい。洗浄溶液として、水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶液を用いることができる。また、前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させ、必要に応じて洗浄処理を行った後、さらに乾燥処理を施すことが好ましい。乾燥処理としては、一晩程度の自然乾燥や、150℃以下の高温乾燥が挙げられる。なお、金属含有溶液に含まれる水分や、洗浄溶液の水分が、前駆体材料(A)に多く残った状態で、後述の焼成処理を行うと、前駆体材料(A)の規則性メソ細孔物質としての骨格構造が壊れる恐れがあるので、十分に乾燥するのが好ましい。
[0061]
(ステップS3:焼成工程)
 次に、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の骨格体を得るための前駆体材料(A)に金属含有溶液が含浸された前駆体材料(B)を焼成して、前駆体材料(C)を得る。
[0062]
 焼成処理は、例えば、空気中で、350~850℃、2~30時間の処理条件で行うことが好ましい。このような焼成処理により、規則性メソ細孔物質の孔内に含浸された金属成分が結晶成長して、孔内で金属酸化物微粒子が形成される。
[0063]
(ステップS4:水熱処理工程)
 次いで、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合した混合溶液を調製し、前記前駆体材料(B)を焼成して得られた前駆体材料(C)を水熱処理して、機能性構造体を得る。
[0064]
 構造規定剤は、機能性構造体の骨格体の骨格構造を規定するための鋳型剤であり、有機構造規定剤(“organic structure directing agents”または“OSDA”と通常表記される)およびOH を持った無機構造規定剤の少なくともいずれか1つを用いることができる。このうち、有機構造規定剤としては、例えば界面活性剤を用いることができる。有機構造規定剤は、機能性構造体の骨格体の骨格構造に応じて選択することが好ましく、例えばテトラメチルアンモニウムブロミド(TMABr)、テトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)、テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)等の界面活性剤が好適である。また、無機構造規定剤として代表的なものはアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物であり、たとえば水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(Rb(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH) )、水酸化ストロンチウム(Sr(OH) )などが好適である。
[0065]
 前駆体材料(C)と構造規定剤との混合は、本水熱処理工程時に行ってもよいし、水熱処理工程の前に行ってもよい。また、上記混合溶液の調製方法は、特に限定されず、前駆体材料(C)と、構造規定剤と、溶媒とを同時に混合してもよいし、溶媒に前駆体材料(C)と構造規定剤とをそれぞれ個々の溶液に分散させた状態にした後に、それぞれの分散溶液を混合してもよい。溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。また、混合溶液は、水熱処理を行う前に、酸または塩基を用いてpHを調整しておくことが好ましい。
[0066]
 水熱処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、密閉容器内で、80~800℃、5時間~240時間、0~2000kPaの処理条件で行うことが好ましい。また、水熱処理は、塩基性雰囲気下で行われることが好ましい。
 ここでの反応メカニズムは必ずしも明らかではないが、前駆体材料(C)を原料として水熱処理を行うことにより、前駆体材料(C)の規則性メソ細孔物質としての骨格構造は次第に崩れるが、前駆体材料(C)の細孔内部での金属酸化物微粒子の位置は概ね維持されたまま、構造規定剤の作用により、機能性構造体の骨格体としての新たな骨格構造(多孔質構造)が形成される。このようにして得られた機能性構造体は、多孔質構造の骨格体と、骨格体に内在する金属酸化物微粒子を備え、さらに骨格体はその多孔質構造により複数の孔が互いに連通した通路を有し、金属酸化物微粒子はその少なくとも一部分が骨格体の通路に保持され、または結合している。
[0067]
 また、本実施形態では、上記水熱処理工程において、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合した混合溶液を調製して、前駆体材料(C)を水熱処理しているが、これに限らず、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合すること無く、前駆体材料(C)を水熱処理してもよい。
[0068]
 水熱処理後に得られる沈殿物(機能性構造体)は、回収(例えば、ろ別)後、必要に応じて洗浄、乾燥および焼成することが好ましい。洗浄溶液としては、水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶液を用いることができる。乾燥処理としては、一晩程度の自然乾燥や、150℃以下の高温乾燥が挙げられる。なお、沈殿物に水分が多く残った状態で、焼成処理を行うと、機能性構造体の骨格体としての骨格構造が壊れる恐れがあるので、十分に乾燥するのが好ましい。また、焼成処理は、例えば、空気中で、350~850℃、2~30時間の処理条件で行うことができる。このような焼成処理により、機能性構造体に付着していた構造規定剤が焼失する。また、機能性構造体は、使用目的に応じて、回収後の沈殿物を焼成処理することなくそのまま用いることもできる。例えば、機能性構造体の使用する環境が、酸化性雰囲気の高温環境である場合には、使用環境に一定時間晒すことで、構造規定剤は焼失し、焼成処理した場合と同様の機能性構造体が得られるので、そのまま使用することが可能となる。
[0069]
[機能性構造体1の変形例]
 図4は、図1の機能性構造体1の変形例を示す模式図である。
 図1の機能性構造体1は、骨格体10と、骨格体10に内在する機能性物質20とを備える場合を示しているが、この構成だけには限定されず、例えば、図4に示すように、機能性構造体2が、骨格体10の外表面10aに保持された他の機能性物質30を更に備えていてもよい。
[0070]
 この機能性物質30は、一又は複数の機能を発揮する物質である。他の機能性物質30が有する機能は、機能性物質20が有する機能と同一であってもよいし、異なっていてもよい。他の機能性物質30が有する機能の具体例は、機能性物質20について説明したものと同様であり、中でも触媒機能を有することが好ましく、このとき機能性物質30は触媒物質である。また、機能性物質20,30の双方が同一の機能を有する物質である場合、他の機能性物質30の材料は、機能性物質20の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。本構成によれば、機能性構造体2に保持された機能性物質の含有量を増大することができ、機能性物質の機能発揮を更に促進することができる。
[0071]
 この場合、骨格体10に内在する機能性物質20の含有量は、骨格体10の外表面10aに保持された他の機能性物質30の含有量よりも多いことが好ましい。これにより、骨格体10の内部に結合している機能性物質20による機能が支配的となり、安定的に機能性物質の機能が発揮される。
[0072]
 以上、本発明の実施形態に係る機能性構造体について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
実施例
[0073]
(実施例1~2)
[前駆体材料(A)の合成]
 シリカ剤(テトラエトキシシラン(TEOS)、和光純薬工業株式会社製)と、鋳型剤としての界面活性剤とを混合した混合水溶液を作製し、適宜pH調整を行い、密閉容器内で、80~350℃、100時間、水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水およびエタノールで洗浄し、さらに600℃、24時間、空気中で焼成して、表1に示される種類および孔径の前駆体材料(A)を得た。なお、界面活性剤は、前駆体材料(A)の種類に応じて(「前駆体材料(A)の種類:界面活性剤」)以下のものを用いた。
・MCM-41:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)(和光純薬工業株式会社製)
[0074]
[前駆体材料(B)および(C)の作製]
 次に、表1に示される種類の金属酸化物微粒子を構成する金属元素(M)に応じて、該金属元素(M)を含有する金属塩を、水に溶解させて、金属含有水溶液を調製した。なお、金属塩は、金属酸化物微粒子の種類に応じて(「金属酸化物微粒子:金属塩」)以下のものを用いた。
・FeO :硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)
[0075]
 次に、表1の「添加剤」の欄に「O-15」の記載がある実施例に関しては、粉末状の前駆体材料(A)に、添加剤としてのポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル(NIKKOL BO-15V、日光ケミカルズ株式会社製、以下、「O-15」と表記する。)の水溶液を添加する前処理を行い、金属含有水溶液を複数回に分けて少量ずつ添加し、室温(20℃±10℃)で12時間以上乾燥させて、前駆体材料(B)を得た。
[0076]
 また、前駆体材料(A)に添加する金属含有水溶液の添加量は、該金属含有水溶液中に含まれる金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算したときの数値が、表1の値になるように調整した。
[0077]
 次に、上記のようにして得られた金属含有水溶液を含浸させた前駆体材料(B)を、550℃、12時間、空気中で焼成して、前駆体材料(C)を得た。
[0078]
[機能性構造体の合成]
 上記のようにして得られた前駆体材料(C)と、表1に示すNa/(Na+OSDA)比になるように構造規定剤(OSDA)と水酸化ナトリウムを調整して混合水溶液を作製し、密閉容器内で、80~350℃、表1に示すpHおよび時間の条件で、水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水洗し、100℃で12時間以上乾燥させ、さらに550℃、12時間、空気中で焼成して、表1に示す骨格体と機能性物質としての金属酸化物微粒子とを有する機能性構造体を得た(実施例1~2)。
[0079]
(比較例1)
 比較例1では、含浸法によってMFI型シリカライトの外表面にFeOx粒子を担持させたものを用いた。
[0080]
 具体的には、実施例と同様の方法で、前駆体材料(A)に添加する金属含有水溶液の添加量を表1に示す割合に調整してMFI型シリカライトに金属含有水溶液を含浸させ、同条件で焼成して比較例1の機能性構造体を得た。
[0081]
(比較例2)
 比較例2では、MFI型シリカライトにFe金属を骨格置換させたものを用いた。具体的には、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と金属含有溶液を構造規定剤であるテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)と混合して混合水溶液を作製し、密閉容器内で80~350℃で水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水洗、乾燥させ、さらに空気中で焼成した。これにより、Fe元素を骨格内に含むメタロシリケートを得た。
[0082]
(比較例3)
 比較例3では、H 型のZSM-5を用いた。具体的には、ケイ酸ナトリウムと硫酸アルミニウムを構造規定剤であるテトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)と混合して混合水溶液を作製し、密閉容器内で80~350℃で水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水洗、乾燥させ、さらに空気中で焼成した。焼成後、硝酸アンモニウム水溶液を用いてイオン交換を行いNH 型とし、反応前に焼成することでH 型に変換して用いた。
[0083]
[評価]
 上記実施例の機能性構造体および比較例のシリカライトについて、以下に示す条件で、各種特性評価を行った。
[0084]
[A]断面観察
 上記実施例の機能性構造体および比較例1の酸化鉄微粒子付着シリカライトについて、粉砕法にて観察試料を作製し、透過電子顕微鏡(TEM)(TITAN G2、FEI社製)を用いて、断面観察を行った。
[0085]
 その結果、上記実施例1~2の機能性構造体では、シリカライトまたはゼオライトからなる骨格体の内部に機能性物質が内在し、保持されていることが確認された。一方、比較例1のシリカライトでは、機能性物質(FeOx微粒子)が骨格体の外表面に付着しているのみで、骨格体の内部には存在していなかった。
[0086]
 また、上記実施例1~2の機能性構造体について、FIB(集束イオンビーム)加工により断面を切り出し、SEM(SU8020、日立ハイテクノロジーズ社製)、EDX(X-Max、堀場製作所製)を用いて断面元素分析を行った。その結果、骨格体内部からFe元素が検出された。
[0087]
 上記TEMとSEM/EDXによる断面観察の結果から、骨格体内部に酸化鉄微粒子が存在していることが確認された。
[0088]
[B]骨格体の通路の平均内径および機能性物質の平均粒径
 上記評価[A]で行った断面観察により撮影したTEM画像にて、骨格体の通路を、任意に500個選択し、それぞれの長径および短径を測定し、その平均値からそれぞれの内径を算出し(N=500)、さらに内径の平均値を求めて、骨格体の通路の平均内径D とした。また、機能性物質についても同様に、上記TEM画像から、機能性物質を、任意に500個選択し、それぞれの粒径を測定して(N=500)、その平均値を求めて、機能性物質の平均粒径D とした。結果を表1に示す。
[0089]
 また、機能性物質の平均粒径及び分散状態を確認するため、SAXS(小角X線散乱)を用いて分析した。SAXSによる測定は、Spring-8のビームラインBL19B2を用いて行った。得られたSAXSデータは、Guinier近似法により球形モデルでフィッティングを行い、粒径を算出した。粒径は、金属酸化物が酸化鉄微粒子である機能性構造体について測定した。また、比較対象として、市販品である酸化鉄微粒子(Wako製)をSEMにて観察、測定した。
[0090]
 この結果、市販品では粒径約50nm~400nmの範囲で様々なサイズの酸化鉄微粒子がランダムに存在しているのに対し、TEM画像から求めた平均粒径が2.5nmの実施例1~2の機能性構造体では、SAXSの測定結果においても粒径が10nm以下の散乱ピークが検出された。SAXSの測定結果とSEM/EDXによる断面の測定結果から、骨格体内部に、粒径10nm以下の機能性物質が、粒径が揃いかつ非常に高い分散状態で存在していることが分かった。
[0091]
 また、実施例1~2の機能性構造体に対し、400℃以上の還元処理を行ったところ、TEM画像から求めた平均粒径が2.5nmの各実施例では、10nm以下の粒径を維持していた。
[0092]
 [C]金属含有溶液の添加量と骨格体内部に包接された金属量との関係
 原子数比Si/M=50,100,200,1000(M=Fe)の添加量で、酸化金属微粒子を骨格体内部に保持包接させた機能性構造体を作製し、その後、上記添加量で作製された機能性構造体の骨格体内部に保持包接された金属量(質量%)を測定した。尚、本測定において原子数比Si/M=100,200,1000の機能性構造体は、金属含有溶液の添加量を調整して作製し、金属含有溶液の添加量を異ならせたこと以外は、実施例1の機能性構造体と同様の方法で作製した。
[0093]
 金属量の定量は、ICP(高周波誘導結合プラズマ)単体か、或いはICPとXRF(蛍光X線分析)を組み合わせて行った。XRF(エネルギー分散型蛍光X線分析装置「SEA1200VX」、エスエスアイ・ナノテクノロジー社製)は、真空雰囲気、加速電圧15kV(Crフィルター使用)或いは加速電圧50kV(Pbフィルター使用)の条件で行った。
[0094]
 XRFは、金属の存在量を蛍光強度で算出する方法であり、XRF単体では定量値(質量%換算)を算出できない。そこで、Si/M=100で金属を添加した機能性構造体の金属量は、ICP分析により定量し、Si/M=50および100未満で金属を添加した機能性構造体の金属量は、XRF測定結果とICPO測定結果を元に算出した。
[0095]
 この結果、少なくとも原子数比Si/Mが50~1000の範囲内で、金属含有溶液の添加量の増加に伴って、機能性構造体に内在包接された金属量が増大していることが確認された。
[0096]
 [D]4配位構造の金属元素(M)の存在割合
 XAFS測定は、SPring-8のBL08B2でFe-K吸収端をライトル検出器を用いた蛍光収量法により行った。得られたXANESスペクトルに対し、Fe骨格置換ゼオライトとα-Fe を標準物質として用いてMicrosoft Excel(登録商標)のソルバーを用いた最小二乗法により線形結合でのピーク分離を行い、4配位構造に由来するピークの面積および6配位構造に由来するピーク面積を算出し、上記(1)式より、4配位構造の金属元素の濃度を算出した。その結果、実施例1~2の機能性構造体では、4配位構造の金属元素が確認され、機能性物質から派生する金属元素と、担体を構成する元素とが部分的に置換していることが確認された。
[0097]
 [E]性能評価
 上記実施例の機能性構造体および比較例のシリカライトについて、機能性物質(触媒物質)がもつ触媒能(性能)を評価した。結果を表1に示す。
[0098]
(1)触媒活性
 触媒活性は、以下の条件で評価した。
 まず、機能性構造体を、常圧流通式反応装置に0.2g充填し、窒素ガス(N )をキャリアガス(5ml/min)とし、400℃、2時間、ブチルベンゼン(重質油のモデル物質)の分解反応を行った。
[0099]
 反応終了後に、回収した生成ガスおよび生成液を、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により成分分析した。なお、生成ガスの分析装置には、TRACE 1310GC(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、検出器:熱伝導度検出器)を用い、生成液の分析装置には、TRACE DSQ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、検出器:質量検出器、イオン化方法:EI(イオン源温度250℃、MSトランスファーライン温度320℃、検出器:熱伝導度検出器))を用いた。
[0100]
 さらに、上記成分分析の結果に基づき、ブチルベンゼンよりも分子量が小さい化合物(具体的には、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、クメン、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブテン等)の収率(mol%)を求めた。上記化合物の収率は、反応開始前のブチルベンゼンの物質量(mol)に対する、生成液中に含まれるブチルベンゼンよりも分子量が小さい化合物の物質量の総量(mol)の百分率(mol%)として算出した。
[0101]
 本実施例では、触媒活性については、生成液中に含まれるブチルベンゼンよりも分子量が小さい化合物の収率が、20C-mol%以上である場合を触媒活性(分解能)が優れていると判定して「◎」、10C-mol%以上20C-mol%未満である場合を触媒活性が良好であると判定して「○」、5C-mol%以上10C-mol%未満である場合を触媒活性が劣ると判定して「△」、そして5C-mol%未満である場合を触媒活性が非常に劣る(不可)と判定して「×」とした
[0102]
 触媒の選択率については、生成ガス中に含まれるオレフィンの割合が、75mol%以上を優れていると判定して「〇」、50mol%以上75mol%未満を劣ると判定して「△」、50mol%未満である場合を選択率が非常に劣ると判定して「×」、とした。
[0103]
 触媒活性で評価した触媒構造体について、サンプルをCHN元素分析装置(機器名:CHN analyzer(CE-440、Exeter Analytical、Inc.社製))により触媒上の炭素量(生成コーク量)を分析した。
[0104]
 耐コーキング性について、触媒構造体全量の質量に対するコーク量を測定し評価した。具体的にコーク量が5wt%未満を優れていると判断して「〇」、5wt%以上を耐コーキング性が劣ると判断して「×」と判定した。
[0105]
[表1]


[0106]
 表1から明らかなように、断面観察により骨格体の内部に機能性物質が保持されていることが確認された機能性構造体(実施例1~2)は、単に機能性物質が骨格体の外表面に付着しているだけの機能性構造体(比較例1)、機能性物質を何ら有しておらず、骨格の化学結合の一部をFeイオンにて置換されたのみの骨格体(比較例2)またはFeを有していないZSM-5ゼオライト骨格体(比較例3)と比較して、ブチルベンゼンの分解反応において優れた触媒活性、オレフィン選択率およびコーク生成抑制能を示した。
[0107]
 [F]考察
 以下、この理由について考察する。実施例1の機能性構造体、比較例1の機能性構造体および比較例3の骨格体について、NH -TPD(昇温脱離法)測定を行った(BELCATII、マイクロトラック・ベル(株)製)。具体的に、各試料について、前処理として、ヘリウム流通下、550℃で焼成した後、100℃まで降温し、1%のNH ガス(ヘリウムバランス)を流通し、各試料にNH を吸着させた。その後、流通ガスをヘリウムに切り替え、5℃/分で650℃まで昇温した。昇温に伴い脱離したNH を熱伝導度検出器により分析し、その脱離量から酸量を算出した。下記表2に、実施例1、比較例1および比較例3の試料のNH -TPD測定のl-peakおよびh-peakの酸量の評価結果を示す。なお、l-peakは、弱酸点に吸着したNH の脱離に由来するピークであり、h-peakは、強酸点に吸着したNH の脱離に由来するピークである。
[0108]
[表2]


[0109]
 通常、比較例3のZSM-5のような強い酸特性を持つ触媒を使用すると低級オレフィンの水素移行反応が進行し、低級オレフィンがさらにパラフィンへ変換されるとともに、コークが発生する。このため、最も酸量の高い比較例3(ZSM-5)が生成物中の低級オレフィンの選択率が低く、コーク量が多くなったと考えられる。水素移行反応を防ぐためには酸特性を抑制する必要があるが、酸特性を低くした比較例1の骨格体のように活性が低下する問題が生じる。
[0110]
 これに対し、本発明の実施例1の機能性構造体は、機能性物質から派生する金属元素(M)と、担体を構成する元素とが部分的に置換していることで、機能性物質もしくは担体、またはその両方が、比較例1の機能性構造体よりも高い酸特性を有し、比較例3の骨格体よりも低い酸特性を有しており、このような酸特性が、低級オレフィンの生成のために良好な活性および選択性、ならびにコーク生成抑制能がバランス良く発現したと考えられる。
[0111]
 [G]MOR型ゼオライト骨格体を用いた場合
 機能性構造体の合成の作製において、構造規定剤を用いず、Na/(Na+OSDA)比を1.00とし、混合水溶液のpHを13、水熱処理時間を96時間に変更した以外、実施例1と同様にして機能性構造体を得た。その結果、機能性構造体の骨格体はMOR型ゼオライトであった。TEMによる断面観察を行ったところ、この機能性構造体では、ゼオライトからなる骨格体の内部に機能性物質が内在し、保持されていることが確認された。また、SEMを用いて断面元素分析を行ったところ骨格体内部からFe元素が検出された。さらに、この機能性構造体では、実施例1~2と同様にしてTEM画像から求めた骨格体の通路の平均内径は0.60nm、機能性物質の平均粒径は2.5nm、D /D は4.2であった。この機能性構造体について、400℃以上の還元処理を行ったところ10nm以下の粒径を維持していた。この機能性構造体における4配位構造の金属元素の割合を、実施例1~2と同様にして測定したところその割合は0.74であり、機能性物質から派生する金属元素と、骨格体を構成する元素とが部分的に置換していることが確認された。

符号の説明

[0112]
 1 機能性構造体
 10 骨格体
 10a 外表面
 11 通路
 11a 孔
 12 拡径部
 20 機能性物質
 30 機能性物質
 D   平均粒径
 D   平均内径
 D   内径

請求の範囲

[請求項1]
 ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、
 金属元素(M)を含み前記担体に内在する少なくとも1つの機能性物質と、
を備え、
 前記担体が、互いに連通する通路を有し、
 前記機能性物質が、前記担体の少なくとも前記通路に存在し、かつ前記機能性物質から派生する金属元素(M)と、前記担体を構成する元素とが部分的に置換していることを特徴とする、機能性構造体。
[請求項2]
 前記金属元素(M)は、4配位構造と6配位構造の2種類の配位構造の中心原子として、前記機能性部構造体に存在していることを特徴とする、請求項1に記載の機能性構造体。
[請求項3]
 前記4配位構造の金属元素(M)が、前記4配位構造の金属元素(M)と前記6配位構造の金属元素(M)の合計に対し、原子比で0.15以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の機能性構造体。
[請求項4]
 ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、
 金属元素(M)を含み前記担体に内在する少なくとも1つの機能性物質と、
を備える機能性構造体であって、
 前記担体が、互いに連通する通路を有し、
 前記機能性物質が、前記担体の少なくとも前記通路に存在し、
 XAFS測定による前記機能性構造体に含まれる金属の吸収端から特定したXANESスペクトルに基づいて、前記4配位構造をとる金属元素(メタロシリケートに対応するスペクトル形状を持つ前記機能性構造体の金属元素)のピーク強度の数値(a)と、前記6配位構造をとる金属元素(金属に還元する前の金属酸化物に対応するスペクトル形状を持つ前記機能性構造体の金属元素)のピーク強度の数値(b)とを、以下の(1)式に代入して算出したときの4配位構造をとる金属元素(M)の存在割合Pの数値が、0.15以上であることを特徴とする、機能性構造体。
   P=(a)/(a+b) ・・・(1)
[請求項5]
 前記存在割合Pの数値が、0.25以上であることを特徴とする、請求項4に記載の機能性構造体。
[請求項6]
 前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造の一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ
 前記機能性物質が、少なくとも前記拡径部に存在していることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の機能性構造体。
[請求項7]
 前記拡径部は、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔同士を連通している、請求項6に記載の機能性構造体。
[請求項8]
 前記機能性物質は、触媒物質であり、
 前記担体は、少なくとも1つの前記触媒物質を担持することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の機能性構造体。
[請求項9]
 前記触媒物質は、金属酸化物微粒子であることを特徴とする、請求項8に記載の機能性構造体。
[請求項10]
 前記金属酸化物微粒子の平均粒径が、前記通路の平均内径よりも大きく、且つ前記拡径部の内径以下であることを特徴とする、請求項9に記載の機能性構造体。
[請求項11]
 前記金属酸化物微粒子の金属元素(M)が、前記機能性構造体に対して0.5~2.5質量%で含有されていることを特徴とする、請求項9に記載の機能性構造体。
[請求項12]
 前記金属酸化物微粒子の平均粒径が、0.1nm~50nmであることを特徴とする、請求項9~11のいずれか1項に記載の機能性構造体。
[請求項13]
 前記通路の平均内径に対する前記金属酸化物微粒子の平均粒径の割合が、0.06~500であることを特徴とする、請求項9~12のいずれか1項に記載の機能性構造体。
[請求項14]
 前記通路の平均内径は、0.1nm~1.5nmであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の機能性構造体。
[請求項15]
 前記担体の外表面に保持された少なくとも1つの他の機能性物質を更に備えることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の機能性構造体。
[請求項16]
 前記担体に内在する前記少なくとも1つの機能性物質の含有量が、前記担体の外表面に保持された前記少なくとも1つの他の機能性物質の含有量よりも多いことを特徴とする、請求項15に記載の機能性構造体。
[請求項17]
 前記ゼオライト型化合物は、ケイ酸塩化合物であることを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載の機能性構造体。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]