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1. WO2020116466 - 液晶硬化フィルム及びその製造方法

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明 細 書

発明の名称 液晶硬化フィルム及びその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005   0006   0007   0008   0009  

課題を解決するための手段

0010   0011  

発明の効果

0012  

図面の簡単な説明

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232   0233   0234   0235   0236   0237   0238   0239   0240   0241   0242   0243   0244   0245   0246   0247   0248   0249   0250   0251   0252   0253   0254   0255   0256   0257   0258   0259   0260   0261   0262   0263   0264   0265   0266   0267   0268   0269   0270   0271  

実施例

0272   0273   0274   0275   0276   0277   0278   0279   0280   0281   0282   0283   0284   0285   0286   0287   0288   0289   0290   0291   0292   0293   0294   0295  

符号の説明

0296  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : 液晶硬化フィルム及びその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、液晶硬化フィルム及びその製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 光学フィルムの一つとして、液晶硬化フィルムが知られている。液晶硬化フィルムは、一般に、液晶性化合物を含む液晶組成物を配向させ、その配向状態を維持したままで硬化させた硬化物で形成された液晶硬化層を備える。このような液晶硬化フィルムとして、特許文献1~3に記載のものが提案されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特許第5604774号公報
特許文献2 : 特許第5804991号公報
特許文献3 : 特開2015-161714号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 液晶硬化フィルムが備える液晶硬化層には、通常、液晶性化合物が含まれる。この液晶性化合物の分子は、液晶硬化層の層平面に対して傾斜することがある。このように分子が傾斜した液晶性化合物を含む液晶硬化層を備えた適切な液晶硬化フィルムを画像表示装置に設けた場合、視野角特性等の光学特性が改善されうる。
[0005]
 ところが、分子が傾斜した液晶性化合物を含む液晶硬化層は、偏光顕微鏡で観察した場合、配向ムラが観察されることがあった。具体的には、液晶組成物の層の空気界面であった面において、液晶性化合物の分子の配向方向が不均一となることにより、その配向方向の層平面に平行な方向成分(面内成分方向)が不均一となって、面内での遅相軸方向にバラツキが生じることがあった。特に、このような配向ムラは、逆分散液晶性化合物を用いた場合に、顕著であった。
[0006]
 本発明者が前記の配向ムラについて検討したところ、前記の配向ムラが、液晶性化合物の分子の配向方向のねじれによって生じていることが判明した。具体的には、配向方向の層平面に平行な方向成分に着目すると、液晶硬化層の厚み方向の位置毎に、液晶性化合物の分子の配向方向は異なりうる。そして、液晶硬化層の厚み方向のある位置にある分子の配向方向を基準とすると、その基準となる分子から厚み方向に大きく離れている分子の配向方向ほど、層平面に平行な方向成分の方向が大きく異なる傾向がある。通常は、液晶性化合物の分子は、液晶硬化層内のある第一の平面上では、ある一の配向方向に配向する。層内の、当該第一の平面に重なる次の第二の平面では、分子の配向方向は、第一の平面における配向方向と、少し角度をなしてずれる。当該第二の平面にさらに重なる次の第三の平面では、分子の配向方向は、第二の平面における配向方向から、さらに角度をなしてずれる。このように、重なって配列している平面において、当該平面での分子の配向方向の角度は順次ずれていき、液晶性化合物の分子の配向方向は全体としてらせん状にねじれうる。層平面に対して傾斜した液晶性化合物の分子を含む従来の液晶硬化層では、前記のねじれの向き(即ち、右向き及び左向き)が面内で不均一となることがあるので、分子の配向方向が不均一となり、配向ムラを生じていた。以下、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の配向方向が、厚み方向において生じるねじれを、単に「配向方向のねじれ」ということがある。
[0007]
 また、前記のように液晶性化合物の分子の配向方向のねじれがあると、その液晶性化合物の分子を含む液晶硬化層を透過する光は、旋光を生じることがある。しかし、液晶硬化層を透過する光が、その一部だけが旋光を生じ、他の一部は偏光状態が乱されることがあった。例えば、液晶硬化層に直線偏光が入射した場合に、液晶硬化層を透過することによって、直線偏光の一部が偏光解消したり楕円偏光になったりすることがあった。このような偏光状態の乱れは、液晶硬化フィルムを光学フィルムとして用いる場合に性能低下の原因となりうるので、抑制することが望まれる。
[0008]
 例えば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、適宜「有機EL表示装置」ということがある。)には、その表示面に、外光の反射を抑制するための反射抑制フィルムとして、円偏光板及び楕円偏光板等の偏光板が設けられることがある。この偏光板は、通常、直線偏光子と位相差フィルムとを組み合わせて含む。この位相差フィルムとして液晶硬化フィルムを採用した場合、前記のような偏光状態の乱れが生じると、外光の反射を抑制する能力が低下する可能性があった。
[0009]
 本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、層平面に対して分子が傾斜した液晶性化合物を含み、配向ムラ及び透過光の偏光状態の乱れを抑制することが可能な液晶硬化層を備える液晶硬化フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、キラル化合物を適切に含む液晶組成物を用いることにより、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は、下記のものを含む。
[0011]
 〔1〕 液晶性化合物、及び、不斉炭素原子を含むキラル化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成され、配向状態を固定されていてもよい前記液晶性化合物の分子を含む液晶硬化層を備え、
 前記液晶硬化層に含まれる前記液晶性化合物の少なくとも一部の分子が、前記液晶硬化層の層平面に対して傾斜しており、
 測定波長550nmにおける前記液晶硬化層の正面直線偏光位相差LRe及び正面円偏光位相差CReが、下記式(1)を満たす、液晶硬化フィルム。
[数1]


 〔2〕 測定波長550nmにおける前記液晶硬化層の正面円偏光位相差CReと前記液晶硬化層の厚みD[nm]との比CRe/Dが、0.0002以上0.0133以下である、〔1〕に記載の液晶硬化フィルム。
 〔3〕 前記液晶性化合物100重量部に対する前記キラル化合物の量が、0.05重量部以上0.5重量部以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の液晶硬化フィルム。
 〔4〕 測定波長550nmにおける前記液晶硬化層の正面直線偏光位相差LReが、50nm以上90nm以下の範囲、又は、120nm以上160nm以下の範囲にある、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルム。
 〔5〕 前記液晶性化合物が、逆波長分散性の複屈折を発現できる、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルム。
 〔6〕 前記液晶性化合物が、ベンゾチアゾール環を有する、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルム。
 〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルムの製造方法であって、
 前記液晶組成物の層を形成する工程と、
 前記液晶組成物の層に含まれる前記液晶性化合物を配向させる工程と、
 前記液晶組成物の層を硬化させて前記液晶硬化層を得る工程と、を含む、液晶硬化フィルムの製造方法。

発明の効果

[0012]
 本発明によれば、層平面に対して分子が傾斜した液晶性化合物を含み、配向ムラ及び透過光の偏光状態の乱れを抑制することが可能な液晶硬化層を備える液晶硬化フィルム及びその製造方法を提供できる。

図面の簡単な説明

[0013]
[図1] 図1は、ある例に係る液晶硬化層のレターデーション比R(θ)/R(0°)を、入射角θに対してプロットしたグラフである。
[図2] 図2は、ある液晶層の両側に、パラニコルに設定した一対の直線偏光子を配置した光学系を模式的に示す斜視図である。
[図3] 図3は、波長λ=550nmを代入した場合の式(3)における透過率Iと面内レターデーションΔn×dとの関係を示すグラフである。
[図4] 図4は、本発明の一実施形態に係る液晶硬化フィルムが備える液晶硬化層の例を模式的に示す断面図である。
[図5] 図5は、本発明の一実施形態に係る液晶硬化フィルムが備える液晶硬化層の例を模式的に示す断面図である。
[図6] 図6は、傾斜方向から液晶硬化層のレターデーションとしての直線偏光位相差R(θ)を測定する際の測定方向を説明するための斜視図である。

発明を実施するための形態

[0014]
 以下、例示物及び実施形態を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
[0015]
 以下の説明において、ある層の「面内方向」とは、別に断らない限り、層平面に平行な方向を表す。
[0016]
 以下の説明において、ある層の「厚み方向」とは、別に断らない限り、層平面に垂直な方向を表す。よって、別に断らない限り、ある層の面内方向と厚み方向とは、垂直である。
[0017]
 以下の説明において、ある面の「正面方向」とは、別に断らない限り、その面の法線方向を表し、具体的には前記面の極角0°の方向を指す。
[0018]
 以下の説明において、ある面の「傾斜方向」とは、別に断らない限り、その面に平行でも垂直でもない方向を表し、具体的には前記面の極角が5°以上85°以下の範囲の方向を指す。
[0019]
 以下の説明において、用語「偏光板」及び用語「波長板」は、別に断らない限り、樹脂フィルム等の可撓性を有するフィルム及びシートを包含する。
[0020]
 以下の説明において、複屈折の逆波長分散性とは、別に断らない限り、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N1)を満たすことをいう。このような逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物は、通常、測定波長が長いほど、大きい複屈折を発現できる。
 Δn(450)<Δn(550) (N1)
[0021]
 以下の説明において、複屈折の順波長分散性とは、別に断らない限り、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N2)を満たすことをいう。このような順波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物は、通常、測定波長が長いほど、小さい複屈折を発現できる。
 Δn(450)>Δn(550) (N2)
[0022]
 以下の説明において、ある層の正面直線偏光位相差LReとは、別に断らない限り、「LRe=(nx-ny)×d」で表される値である。また、ある層の正面円偏光位相差CReとは、別に断らない限り、「CRe=(φ/360°)×λ」で表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。φは、層を厚み方向に透過する直線偏光の旋光角[°]を表す。λは、測定波長を表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。これらの正面直線偏光位相差LRe及び正面円偏光位相差CReは、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定できる。
[0023]
 以下の説明において、固有複屈折値が正の樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、固有複屈折値が負の樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
[0024]
 以下の説明において、ある層の遅相軸とは、別に断らない限り、面内方向の遅相軸をいう。
[0025]
 以下の説明において、要素の方向が「平行」及び「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±4°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
[0026]
 以下の説明において、別に断らない限り、ある層に含まれる液晶性化合物の分子の「傾斜角」とは、その液晶性化合物の分子が当該層の層平面に対してなす角度を表し、「チルト角」とも呼ばれることがある。この傾斜角は、液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向が層平面となす角度のうち、最大の角度に相当する。また、以下の説明においては、別に断らない限り、「傾斜角」とは、液晶性化合物の分子の、当該液晶性化合物が含まれる層の層平面に対する傾斜角を表す。
[0027]
 以下の説明において、ある層に含まれる液晶性化合物の分子の「実質最大傾斜角」とは、その層の一方の面での分子の傾斜角が0°であり、且つ分子の傾斜角が厚み方向において一定比率で変化していると仮定した場合の、液晶性化合物の分子の傾斜角の最大値をいう。具体的には、液晶性化合物を含む層の厚み方向において、液晶性化合物の分子の傾斜角が、層の一側に近いほど小さく前記一側から遠いほど大きい場合を考える。実質最大傾斜角は、このような厚み方向における傾斜角の変化の比率(即ち、一側に近いほど減少し、一側から遠いほど増加するという変化の比率)が一定であると仮定して計算される、傾斜角の最大値を表す。具体例を挙げると、支持面上に形成された液晶組成物の層を硬化させて得られる液晶硬化層においては、実質最大傾斜角は、通常、液晶硬化層の支持面側の面での分子の傾斜角が0°であり、且つ、分子の傾斜角が厚み方向において一定比率で変化していると仮定した場合の、液晶性化合物の分子の傾斜角の最大値を表す。また、後述するように第一硬化層及び第二硬化層を含む複層構造の液晶硬化層においては、実質最大傾斜角は、通常、第一硬化層側の面での分子の傾斜角が0°であり、且つ、分子の傾斜角が厚み方向において一定比率で変化していると仮定した場合の、液晶性化合物の分子の傾斜角の最大値を表す。
[0028]
 以下の説明において、置換基を有する基の炭素原子数には、別に断らない限り、前記置換基の炭素原子数を含めない。よって、例えば「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基」との記載は、置換基の炭素原子数を含まないアルキル基自体の炭素原子数が1~20であることを表す。
[0029]
[1.液晶硬化フィルムの概要]
 本発明の一実施形態に係る液晶硬化フィルムは、液晶性化合物及びキラル化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を備える。キラル化合物とは、不斉炭素原子を含む化合物を表す。
[0030]
 液晶組成物の硬化物で形成されているので、液晶硬化層は、液晶性化合物の分子を含む。液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子は、配向状態を固定されていてもよい。用語「配向状態を固定された液晶性化合物」には、液晶性化合物の重合体が包含される。通常、重合によって液晶性化合物の液晶性は失われるが、本願においては、そのように重合した液晶性化合物も、用語「液晶硬化層に含まれる液晶性化合物」に含める。
[0031]
 液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子は、当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜している。ある液晶性化合物の分子が層平面に対して「傾斜している」とは、その分子の層平面に対する傾斜角が5°以上85°以下の範囲にあることを表す。このように傾斜した液晶性化合物の分子は、通常、層平面に対して平行でも垂直でもない状態となっている。
[0032]
 測定波長550nmにおける液晶硬化層の正面直線偏光位相差LRe及び正面円偏光位相差CReは、下記式(1)を満たす。以下、正面直線偏光位相差LReを「面内レターデーション」LReということがある。また、以下、正面円偏光位相差CReを「旋光位相差」CReということがある。
[数2]


[0033]
 前記の構成を有する液晶硬化層によれば、当該液晶硬化層の配向ムラを抑制でき、且つ、当該液晶硬化層を透過する光の偏光状態の乱れを抑制することができる。
[0034]
[2.液晶性化合物]
 液晶性化合物は、液晶性を有する化合物であり、通常、当該液晶性化合物を配向させた場合に、液晶相を呈することができる。
[0035]
 液晶性化合物として、逆分散液晶性化合物を用いてもよく、順分散液晶性化合物を用いてもよく、逆分散液晶性化合物と順分散液晶性化合物との組み合わせを用いてもよい。逆分散液晶性化合物とは、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物である。また、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物とは、当該液晶性化合物の層を形成し、その層において液晶性化合物を配向させた際に、逆波長分散性の複屈折を発現する液晶性化合物をいう。他方、順分散液晶性化合物とは、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物である。また、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶性化合物とは、当該液晶性化合物の層を形成し、その層において液晶性化合物を配向させた際に、順波長分散性の複屈折を発現する液晶性化合物をいう。
[0036]
 通常は、液晶性化合物をホモジニアス配向させた場合に、液晶性化合物の層が示す複屈折の波長分散性を調べることで、その液晶性化合物が示す複屈折の波長分散性を確認できる。液晶性化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶性化合物を含む層を形成し、その層における液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。また、前記の層の複屈折は、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から求められる。
[0037]
 液晶性化合物としては、逆分散液晶性化合物を用いることが好ましい。逆分散液晶性化合物を用いると、通常、逆波長分散性の面内レターデーションLReを有する液晶硬化層を得ることができるので、広い波長範囲において所望の光学的機能を発揮できる液晶硬化フィルムを得ることができる。また、配向ムラは、逆分散液晶性化合物を用いた従来の液晶硬化層において顕著に生じていたので、配向ムラの抑制という効果を有効に活用する観点からも、本実施形態では逆分散液晶性化合物を用いることが好ましい。
[0038]
 逆分散液晶性化合物の複屈折は、当該逆分散液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において、最大の屈折率を示す方向の屈折率と、この方向に垂直な別の方向の屈折率との差として発現しうる。また、逆分散液晶性化合物の分子構造に応じて、前記の各方向の屈折率の波長分散性は、異なりうる。例えば、ある逆分散液晶性化合物は、屈折率が相対的に大きいある方向では、長波長で測定した屈折率は、短波長で測定した屈折率よりも小さくなるが、それらの差は小さい。他方、屈折率が相対的に小さい別の方向では、長波長で測定した屈折率は、短波長で測定した屈折率よりも小さくなり、且つ、それらの差は大きい。このような例の液晶性化合物では、前記方向間での屈折率差は、測定波長が短いと小さく、測定波長が長いと大きくなる。その結果、この逆分散液晶性化合物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる。
[0039]
 液晶性化合物は、重合性を有することが好ましい。よって、液晶性化合物は、その分子が、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基等の重合性基を含むことが好ましい。液晶性化合物の分子1つ当たりの重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。重合性を有する液晶性化合物は、液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の配向状態を維持したまま重合体となることができる。よって、液晶硬化層において液晶性化合物の配向状態を固定したり、液晶性化合物の重合度を高めて液晶硬化層の機械的強度を高めたりすることが可能である。
[0040]
 液晶性化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する液晶性化合物を用いる場合に、液晶組成物の塗工性を特に良好にできる。
[0041]
 測定波長590nmにおける液晶性化合物の複屈折Δnは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である。このような範囲の複屈折Δnを有する液晶性化合物を用いる場合に、配向欠陥の少ない液晶硬化層を得やすい。
[0042]
 液晶性化合物の複屈折は、例えば、下記の方法により測定できる。
 液晶性化合物の層を作製し、その層に含まれる液晶性化合物をホモジニアス配向させる。その後、その層の面内レターデーションを測定する。そして、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から、液晶性化合物の複屈折を求めることができる。この際、面内レターデーション及び厚みの測定を容易にするために、ホモジニアス配向させた液晶性化合物の層は、硬化させてもよい。
[0043]
 液晶性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0044]
 液晶性化合物の例としては、下記式(I)で表される液晶性化合物が挙げられる。式(I)で表される液晶性化合物は、通常、逆波長分散性の複屈折を発現できる。
[0045]
[化1]


[0046]
 式(I)において、Arは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されていてもよい、炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等が挙げられる。複素環としては、例えば、1,3-ジチオラン環、ピロリジン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニル環、ナフタレン環等が挙げられる。
[0047]
 Arの好ましい例としては、例えば、下記式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基が挙げられる。式(II-1)~式(II-4)において、*は、Z 又はZ との結合位置を表す。また、Arは、ベンゾチアゾール環を有することが好ましい。
[0048]
[化2]


[0049]
 前記の式(II-1)~式(II-4)において、E 及びE は、それぞれ独立して、-CR 1112-、-S-、-NR 11-、-CO-及び-O-からなる群より選ばれる基を表す。また、R 11及びR 12は、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。中でも、E 及びE は、それぞれ独立して、-S-であることが好ましい。
[0050]
 前記の式(II-1)~式(II-4)において、D ~D は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非環状基を表す。D 及びD は、一緒になって環を形成していてもよい。D ~D が表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、1~100である。
[0051]
 D ~D における非環状基の炭素原子数は、1~13が好ましい。D ~D における非環状基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基;シアノ基;カルボキシル基;炭素原子数1~6のフルオロアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;-C(=O)-CH ;-C(=O)NHPh;-C(=O)-OR ;が挙げられる。中でも、非環状基としては、シアノ基、カルボキシル基、-C(=O)-CH 、-C(=O)NHPh、-C(=O)-OC 、-C(=O)-OC 、-C(=O)-OCH(CH 、-C(=O)-OCH CH CH(CH )-OCH 、-C(=O)-OCH CH C(CH -OH、及び-C(=O)-OCH CH(CH CH )-C 、が好ましい。前記のPhは、フェニル基を表す。また、前記のR は、炭素原子数1~12の有機基を表す。R の具体例としては、炭素原子数1~12のアルコキシ基、または、水酸基で置換されていてもよい炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。
[0052]
 D ~D における非環状基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数1~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF ;-C(=O)-R ;-O-C(=O)-R ;-C(=O)-O-R ;-SO ;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0053]
 R は、炭素原子数1~6のアルキル基;並びに、炭素原子数1~6のアルキル基若しくは炭素原子数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
[0054]
 R は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
[0055]
 R における炭素原子数1~20のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは4~10である。R における炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基等が挙げられる。
[0056]
 R における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CH CF 等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;及び、ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0057]
 R における炭素原子数2~20のアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~12である。R における炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、およびイコセニル基等が挙げられる。
[0058]
 R における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、R における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0059]
 R における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が好ましい。
[0060]
 R における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0061]
 R における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基が好ましい。
[0062]
 R における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CH CF 等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF ;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CH CF 等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF ;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0063]
 D 及びD が一緒になって環を形成している場合、前記のD 及びD によって環を含む有機基が形成される。この有機基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。下記式において、*は、各有機基が、D 及びD が結合する炭素を表す。
[0064]
[化3]


[0065]
 R は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
 R **は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
 R ***は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
 R ****は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、水酸基、及び、-COOR 13からなる群より選ばれる基を表す。R 13は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
 フェニル基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びアミノ基が挙げられる。中でも、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基及びアルコキシ基が好ましい。フェニル基が有する置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0066]
 前記の式(II-1)~式(II-4)において、D は、-C(R )=N-N(R )R 、-C(R )=N-N=C(R )R 、及び、-C(R )=N-N=R からなる群より選ばれる基を表す。D が表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、通常、3~100である。
[0067]
 R は、水素原子;並びに、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;からなる群より選ばれる基を表す。
[0068]
 R は、水素原子;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基;からなる群より選ばれる基を表す。
[0069]
 R における置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH -の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、又は、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;-G -Y -F ;-SO ;-C(=O)-R ;-CS-NH-R ;が挙げられる。R 及びR の意味は、上述した通りである。
[0070]
 R における炭素原子数1~20のアルキル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、R における炭素原子数1~20のアルキル基と同じである。
[0071]
 R における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;-SO ;-SR ;-SR で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。R 及びR の意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0072]
 R における炭素原子数2~20のアルケニル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、R における炭素原子数2~20のアルケニル基と同じである。
[0073]
 R における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、R における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0074]
 R における炭素原子数2~20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2-オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7-デカニル基等が挙げられる。
[0075]
 R における炭素原子数2~20のアルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、R における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0076]
 R における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、R における炭素原子数3~12のシクロアルキル基と同じ例が挙げられる。
[0077]
 R における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、R における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0078]
 R における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基がより好ましい。
[0079]
 R における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、D ~D における非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0080]
 R における炭素原子数2~30の芳香族複素環基としては、例えば、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、キノリル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、およびベンゾピラゾリル基等が挙げられる。中でも、芳香族複素環基としては、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、フラザニル基、チアゾリル基、及びチアジアゾリル基等の、単環の芳香族複素環基;並びに、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノリル基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、フタルイミド基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピラジニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、及びベンゾチアジアゾリル基等の、縮合環の芳香族複素環基;がより好ましい。
[0081]
 R における炭素原子数2~30の芳香族複素環基が有しうる置換基としては、例えば、D ~D における非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0082]
 G は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の2価の脂肪族炭化水素基;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH -の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR 14-C(=O)-、-C(=O)-NR 14-、-NR 14-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);からなる群より選ばれる有機基を表す。R 14は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
[0083]
 Y は、-O-、-C(=O)-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR 15-C(=O)-、-C(=O)-NR 15-、-O-C(=O)-NR 15-、-NR 15-C(=O)-O-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれる基を表す。R 15は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。中でも、Y としては、-O-、-O-C(=O)-O-及び-C(=O)-O-が好ましい。
[0084]
 F は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基を表す。この有機基の炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは10以上であり、好ましくは30以下である。前記の有機基の炭素原子数には、置換基の炭素原子を含まない。
[0085]
 F における芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等の、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。F が、複数の芳香族炭化水素環を有する場合、複数の芳香族炭化水素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
[0086]
 F における芳香族炭化水素環は、置換基を有していてもよい。F における芳香族炭化水素環が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF ;-C(=O)-R ;-C(=O)-O-R ;-O-C(=O)-R ;等が挙げられる。R の意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0087]
 F における芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等の、炭素原子数2~30の芳香族複素環が挙げられる。F が、複数の芳香族複素環を有する場合、複数の芳香族複素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
[0088]
 F における芳香族複素環は、置換基を有していてもよい。F における芳香族複素環が有しうる置換基としては、例えば、F における芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0089]
 F の好ましい例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~20の環状基」が挙げられる。以下、この環状基を、適宜「環状基(a)」ということがある。
[0090]
 環状基(a)が有しうる置換基としては、例えば、F における芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0091]
 環状基(a)の好ましい例としては、少なくとも一つの炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の炭化水素環基が挙げられる。この炭化水素環基を、以下、適宜「炭化水素環基(a1)」ということがある。
[0092]
 炭化水素環基(a1)としては、例えば、フェニル基(炭素原子数6)、ナフチル基(炭素原子数10)、アントラセニル基(炭素原子数14)、フェナントレニル基(炭素原子数14)、ピレニル基(炭素原子数16)、フルオレニル基(炭素原子数13)、インダニル基(炭素原子数9)、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基(炭素原子数10)、1,4-ジヒドロナフチル基(炭素原子数10)等の、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
[0093]
 前記の炭化水素環基(a1)の具体例としては、下記式(1-1)~(1-21)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Y との結合手を表す。
[0094]
[化4]


[0095]
 環状基(a)の別の好ましい例としては、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~18の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基が挙げられる。この複素環基を、以下、適宜「複素環基(a2)」ということがある。
[0096]
 複素環基(a2)としては、例えば、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジニル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~18の芳香族複素環基;キサンテニル基;2,3-ジヒドロインドーリル基;9,10-ジヒドロアクリジニル基;1,2,3,4-テトラヒドロキノリル基;ジヒドロピラニル基;テトラヒドロピラニル基;ジヒドロフラニル基;およびテトラヒドロフラニル基;が挙げられる。
[0097]
 前記の複素環基(a2)の具体例としては、下記式(2-1)~(2-51)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Y との結合手を表す。下記式中、Xは、-CH -、-NR -、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO -を表す。YおよびZは、それぞれ独立して、-NR -、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO -を表す。Eは、-NR -、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、R は、水素原子;または、メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO -は、それぞれ隣接しないものとする。)。
[0098]
[化5]


[0099]
 F の好ましい別の例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基で、少なくとも一つの水素原子が置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい、炭素原子数1~18のアルキル基」が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「置換アルキル基(b)」ということがある。
[0100]
 置換アルキル基(b)における炭素原子数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
[0101]
 置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」としては、例えば、環状基(a)として説明した範囲の基が挙げられる。
[0102]
 置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方」は、炭素原子数1~18のアルキル基の炭素原子に、直接に結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば、-S-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR 15-C(=O)-、-C(=O)-NR 15などが挙げられる。R 15の意味は、上述した通りである。よって、置換アルキル基(b)における「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」には、フルオレニル基、ベンゾチアゾリル基等の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する基;置換されていてもよい芳香族炭化水素環基;置換されていてもよい芳香族複素環基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基;が含まれる。
[0103]
 置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、およびフルオレニル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
[0104]
 置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、F における芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0105]
 置換アルキル基(b)における芳香族複素環基の好ましい例としては、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基が挙げられる。
[0106]
 置換アルキル基(b)における芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、F における芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0107]
 置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラセニルチオ基、フェナントレニルチオ基、ピレニルチオ基、フルオレニルチオ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ベンゾイソオキサゾリルチオ基、ベンゾイソチアゾリルチオ基、ベンゾオキサジアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基、ベンゾチアジアゾリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾチエニルチオ基、ベンゾイソオキサゾリルオキシ基、ベンゾイソチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサジアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、ベンゾチアジアゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾチエニルオキシ基、等が挙げられる。
[0108]
 置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」は、それぞれ、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、F における芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0109]
 置換アルキル基(b)が有しうる環状基以外の置換基としては、例えば、F における芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0110]
 置換アルキル基(b)の具体例としては、下記式(3-1)~(3-11)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Y との結合手を表す。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
[0111]
[化6]


[0112]
 特に、Arが式(II-2)で表される場合、F は、下記式(i-1)~(i-9)のいずれかで表される基であることが好ましい。また、特に、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、F は、下記式(i-1)~(i-13)のいずれかで表される基であることが好ましい。下記式(i-1)~(i-13)で表される基は、置換基を有していてもよい。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
[0113]
[化7]


[0114]
 更には、Arが式(II-2)で表される場合、F は、下記式(ii-1)~(ii-18)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、F は、下記式(ii-1)~(ii-24)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。下記式(ii-1)~(ii-24)で表される基は、置換基を有していてもよい。下記の式において、Yの意味は、上述した通りである。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
[0115]
[化8]


[0116]
[化9]


[0117]
 Arが式(II-2)で表される場合、F 中の環構造に含まれるπ電子の総数は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、F 中の環構造に含まれるπ電子の総数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
[0118]
 上述したものの中でも、R としては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH -の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;並びに、-G -Y -F ;が好ましい。その中でも、R としては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH -の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;並びに、-G -Y -F ;が特に好ましい。
[0119]
 R は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
[0120]
 R の好ましい例としては、(1)一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基、が挙げられる。この芳香族炭化水素環を有する炭化水素環基を、以下、適宜「(1)炭化水素環基」ということがある。(1)炭化水素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。
[0121]
[化10]


[0122]
 (1)炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。(1)炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;-OCF ;-C(=O)-R ;-O-C(=O)-R ;-C(=O)-O-R ;-SO ;等が挙げられる。R 及びR の意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基、が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0123]
 R の別の好ましい例としては、(2)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。この芳香環を有する複素環基を、以下、適宜「(2)複素環基」ということがある。(2)複素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
[0124]
[化11]


[0125]
[化12]


[0126]
[化13]


[0127]
[化14]


[0128]
[化15]


[0129]
[化16]


[0130]
[化17]


[0131]
[化18]


[0132]
 (2)複素環基は、置換基を有していてもよい。(2)複素環基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0133]
 R の更に別の好ましい例としては、(3)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「(3)置換アルキル基」ということがある。
[0134]
 (3)置換アルキル基における「炭素原子数1~12のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
 (3)置換アルキル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、R における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
 (3)置換アルキル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、R における炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
[0135]
 (3)置換アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。(3)置換アルキル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0136]
 R の更に別の好ましい例としては、(4)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルケニル基が挙げられる。この置換されたアルケニル基を、以下、適宜「(4)置換アルケニル基」ということがある。
[0137]
 (4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~12のアルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
 (4)置換アルケニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、R における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
 (4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、R における炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
[0138]
 (4)置換アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。(4)置換アルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0139]
 R の更に別の好ましい例としては、(5)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルキニル基が挙げられる。この置換されたアルキニル基を、以下、適宜「(5)置換アルキニル基」ということがある。
[0140]
 (5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~12のアルキニル基」としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などが挙げられる。
 (5)置換アルキニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、R における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
 (5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、R における炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
[0141]
 (5)置換アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。(5)置換アルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0142]
 R の好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
[0143]
[化19]


[0144]
 R の更に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
[0145]
[化20]


[0146]
 R の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
[0147]
[化21]


[0148]
 上述したR の具体例は、更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF ;-C(=O)-R ;-O-C(=O)-R ;-C(=O)-O-R ;-SO ;等が挙げられる。R 及びR の意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0149]
 R は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
[0150]
 R の好ましい例としては、一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基が挙げられる。
 また、R の別の好ましい例としては、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。
[0151]
 R の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。
[0152]
[化22]


[0153]
 式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基は、D ~D 以外に更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のアルキルスルフィニル基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のチオアルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルスルファモイル基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0154]
 式(I)におけるArの好ましい例としては、下記の式(III-1)~式(III-7)で表される基が挙げられる。また、式(III-1)~式(III-7)で表される基は、置換基として炭素原子数1~6のアルキル基を有していてもよい。下記式中、*は、結合位置を表す。
[0155]
[化23]


[0156]
 式(III-1)の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。下記式中、*は、結合位置を表す。
[0157]
[化24]


[0158]
[化25]


[0159]
 式(I)において、Z 及びZ は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH -、-CH -O-、-O-CH -CH -、-CH -CH -O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR 21-C(=O)-、-C(=O)-NR 21-、-CF -O-、-O-CF -、-CH -CH -、-CF -CF -、-O-CH -CH -O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH -C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH -、-CH -O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH -、-CH -CH -C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH -CH -、-CH -CH -O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH -CH -、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH )-、-C(CH )=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R 21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
[0160]
 式(I)において、A 、A 、B 及びB は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。A 、A 、B 及びB が表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、3~100である。中でも、A 、A 、B 及びB は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の芳香族基が好ましい。
[0161]
 A 、A 、B 及びB における環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基等の、炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基等の、炭素原子数5~20のビシクロアルカンジイル基;等が挙げられる。中でも、置換されていてもよい炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。環状脂肪族基は、トランス体であってもよく、シス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。中でも、トランス体がより好ましい。
[0162]
 A 、A 、B 及びB における環状脂肪族基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0163]
 A 、A 、B 及びB における芳香族基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
[0164]
 A 、A 、B 及びB における芳香族基が有しうる置換基としては、例えば、A 、A 、B 及びB における環状脂肪族基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[0165]
 式(I)において、Y ~Y は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR 22-C(=O)-、-C(=O)-NR 22-、-O-C(=O)-O-、-NR 22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR 22-、及び、-NR 22-C(=O)-NR 23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R 22及びR 23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
[0166]
 式(I)において、G 及びG は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH -)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G 及びG の前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G 及びG の両末端のメチレン基(-CH -)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
[0167]
 G 及びG における炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
[0168]
 G 及びG における炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数3~20のアルキレン基が挙げられる。
[0169]
 式(I)において、P 及びP は、それぞれ独立して、重合性基を表す。P 及びP における重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH =CR 31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R 31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。中でも、CH =CR 31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH =CH-C(=O)-O-(アクリロイルオキシ基)、CH =C(CH )-C(=O)-O-(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
[0170]
 式(I)において、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
[0171]
 上述した液晶性化合物の中でも、本発明の所望の効果を顕著に発揮する観点から、当該液晶性化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環を含有するものが好ましい。ここで、ベンゾチアゾール環とは、下記式(II)に示す構造の環構造を示す。
[0172]
[化26]


[0173]
 式(I)で表される液晶性化合物は、例えば、国際公開第2012/147904号および国際公開第2018/173954号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
[0174]
 式(I)で表される液晶性化合物としては、具体的には、例えば、下記の式で表される化合物が挙げられる。
[0175]
[化27]


[0176]
[3.キラル化合物]
 キラル化合物としては、不斉炭素原子を含む化合物を用いうる。キラル化合物は、液晶組成物に含まれる液晶性化合物の分子に、一方の向きへの配向方向のねじれを積極的に生じさせうる。よって、配向方向のねじれの向きが不均一となることを抑制できるので、液晶硬化層の配向ムラを抑制することができる。
[0177]
 キラル化合物としては、例えば、特開2005-289881号公報、特開2004-115414号公報、特開2003-66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003-342219号公報、特開2000-290315号公報、特開平6-072962号公報、米国特許第6468444号明細書、国際公開第98/00428号、特開2007-176870号公報、等に掲載されるものが挙げられる。また、キラル化合物としては、市販品を使用することもでき、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。
[0178]
 キラル化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0179]
 キラル化合物のヘリカルツイスティングパワー(HTP)は、任意である。ただし、液晶性化合物の分子の配向方向のねじれを積極的に生じさせる観点では、HTPは大きいことが好ましい。具体的には、キラル化合物のHTPは、25℃において、好ましくは9.0以上、より好ましくは20.0以上である。他方、HTPの上限は、特に限定されず、例えば200以下でありうる。
 ここで、HTPは、HTP=1/(P ×0.01C )により求められる。式中、C は、配向時の液晶組成物中のキラル化合物の含有割合(重量%)を表し、P は液晶性化合物の分子の配向方向のねじれのピッチ(nm)を表す。ピッチP は、電子顕微鏡写真の実測より求めることができる。
[0180]
 キラル化合物の量は、所望の液晶硬化フィルムが得られる範囲で、任意の調整しうる。具体的な範囲を示すと、液晶性化合物100重量部に対するキラル化合物の量は、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.07重量部以上、特に好ましくは0.10重量部以上であり、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.4重量部以下、特に好ましくは0.3重量部以下である。キラル化合物の量が、前記の範囲の下限値以上である場合、液晶性化合物の分子の配向方向のねじれを効果的に生じさせられるので、液晶硬化層の配向ムラを効果的に抑制できる。他方、キラル化合物の量が、前記の範囲の上限値以下である場合、ねじれのピッチを十分に長くできるので、液晶硬化層を透過する光の偏光状態の乱れを効果的に抑制できる。
[0181]
[4.液晶組成物]
 液晶組成物は、上述した液晶性化合物及びキラル化合物を含む。また、液晶組成物は、液晶性化合物及びキラル化合物に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0182]
 任意の成分としては、例えば、重合開始剤が挙げられる。中でも、光重合開始剤が好ましい。重合開始剤の種類は、液晶組成物に含まれる重合性の化合物の種類に応じて選択しうる。例えば、重合性の化合物がラジカル重合性であれば、ラジカル重合開始剤を使用しうる。また、例えば、重合性の化合物がアニオン重合性であれば、アニオン重合開始剤を使用しうる。さらに、例えば、重合性の化合物がカチオン重合性であれば、カチオン重合開始剤を使用しうる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0183]
 重合開始剤の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。重合開始剤の量が前記範囲に収まることにより、重合を効率的に進行させることができる。
[0184]
 別の任意の成分としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の中でも、液晶組成物の塗工性を良好にする観点、並びに、配向性に優れた液晶硬化層を安定して得る観点から、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤が好ましい。以下の説明において、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤を、適宜「フッ素系界面活性剤」ということがある。
[0185]
 フッ素系界面活性剤は、所定の範囲のlogPを有することが好ましい。「logP」とは、1-オクタノール/水分配係数のことをいう。フッ素系界面活性剤のlogPの好ましい範囲は、好ましくは3.5以上7.5以下である。このような範囲のlogPを有するフッ素系界面活性剤を用いることにより、液晶硬化層の層平面に対する液晶性化合物の分子の傾斜角を、液晶硬化層の全体として、効果的に大きくできる。
[0186]
 フッ素系界面活性剤のlogPは、下記の測定方法によって測定できる。
 フッ素系界面活性剤を1重量%含む試料溶液を調製し、JIS 7260-117:2006{分配係数(1-オクタノール/水)の測定-高速液体クロマトグラフィー}に概ね準拠した方法で、HPLC/ELSD分析(高速液体クロマトグラフィー/蒸発光散乱検出分析)を行って、溶出時間(r.t.)を測定する。他方、JIS 7260-117:2006に記載のある、logPの値が既知の標準化合物に、前記フッ素系界面活性剤と同様にして、HPLC/ELSD分析を行い、溶出時間(r.t.)を測定する。標準化合物の測定結果に基づいて、溶出時間とlogPとの関係を示す検量線を作成する。その後、フッ素系界面活性剤について測定された溶出時間を、前記の検量線に当てはめることにより、フッ素系界面活性剤のlogPを求める。
[0187]
 界面活性剤はノニオン系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤がイオン性基を含まないノニオン系界面活性剤である場合に、液晶硬化層の面状態及び配向性を、特に良好にすることができる。
[0188]
 界面活性剤としては、例えば、AGCセイミケミカル社製のサーフロンシリーズ(S420など)、ネオス社製のフタージェントシリーズ(251、FTX-212M、FTX-215M、FTX-209など)、DIC社製のメガファックシリーズ(F-444など)などのフッ素系界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0189]
 界面活性剤の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは0.03重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは0.50重量部以下、より好ましくは0.40重量部以下、更に好ましくは0.30重量部以下である。界面活性剤の量が前記の範囲にあることにより、所望の液晶硬化層を安定して得ることができる。
[0190]
 更に別の任意の成分としては、例えば、溶媒が挙げられる。溶媒としては、液晶性化合物を溶解できるものが好ましい。このような溶媒としては、通常、有機溶媒を用いる。有機溶媒の例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;及びトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;が挙げられる。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[0191]
 溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、好ましくは60℃~250℃、より好ましくは60℃~150℃である。
[0192]
 溶媒の量は、液晶性化合物100重量部に対して、好ましくは200重量部以上、より好ましくは250重量部以上、特に好ましくは300重量部以上であり、好ましくは650重量部以下、より好ましくは550重量部以下、特に好ましくは450重量部以下である。溶媒の量を、前記範囲の下限値以上にすることにより異物発生の抑制ができ、前記範囲の上限値以下にすることにより乾燥負荷の低減ができる。
[0193]
 更に別の任意の成分としては、例えば、液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角を大きくする作用を発揮できる傾斜作用成分が挙げられる。傾斜作用成分を用いた場合、液晶性化合物の分子の傾斜を促進して、液晶性化合物の分子の傾斜角が大きい液晶硬化層を容易に得ることができる。ただし、液晶性化合物の分子の傾斜の促進は、液晶硬化層を製造する過程において操作又は条件を調整することによっても可能であるので、傾斜作用成分は必ずしも用いなくても構わない。このような傾斜作用成分としては、例えば、特開2018-163218号公報、特開2018-162379号公報、国際公開第2018/173778号などに記載の成分を用いうる。
[0194]
 液晶組成物が含みうるその他の任意の成分としては、例えば、金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;酸化防止剤;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;紫外線吸収剤;赤外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらの成分の量は、液晶性化合物の合計100重量部に対して、各々0.1重量部~20重量部でありうる。
[0195]
[5.液晶硬化層の特性]
 液晶硬化層は、上述した液晶組成物を硬化した硬化物の層である。前記の液晶組成物の硬化は、通常、当該液晶組成物が含む重合性の化合物の重合によって達成される。よって、液晶硬化層は、通常、液晶組成物が含んでいた成分の一部又は全部の重合体を含む。例えば、液晶性化合物が重合性を有する場合、液晶組成物の硬化時にその液晶性化合物が重合しうるので、液晶硬化層は、重合前の配向状態を維持したまま重合した液晶性化合物の重合体を含む層でありうる。前述のように、この重合した液晶性化合物も、用語「液晶硬化層に含まれる液晶性化合物」に含める。
[0196]
 液晶組成物の硬化物においては、硬化前の流動性が失われるので、通常、液晶性化合物の配向状態は、硬化前の配向状態のまま、固定されている。そして、この液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が、当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜している。
[0197]
 液晶硬化層において、液晶性化合物の分子のうち、一部が液晶硬化層の層平面に対して傾斜していてもよく、全部が液晶硬化層の層平面に対して傾斜していてもよい。よって、液晶硬化層の層平面に対して傾斜した液晶性化合物の分子を含む層を「傾斜配向層」と呼ぶ場合、液晶硬化層がその一部として傾斜配向層を含んでいてもよく、液晶硬化層の全体が傾斜配向層となっていてもよい。また、液晶硬化層において、傾斜配向層以外の層部分に含まれる液晶性化合物の分子は、通常、液晶硬化層の層平面に対して平行(傾斜角が0°)となっているか、又は、液晶硬化層の層平面に対して垂直(傾斜角が90°)になっている。
[0198]
 液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜していることは、十分な分解能を有する偏光顕微鏡で液晶硬化層の断面を観察することによって、確認できる。この観察は、液晶性化合物の分子の傾斜を視認し易くするために、必要に応じて、観察サンプルと偏光顕微鏡の対物レンズとの間に波長板を挿入して実施してもよい。
[0199]
 または、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜していることは、下記のようにして確認できる。液晶硬化層の面内の進相軸に対して垂直な測定方向で、入射角θにおける液晶硬化層のレターデーションとしての直線偏光位相差R(θ)を測定する。そして、入射角θでの液晶硬化層の直線偏光位相差R(θ)を入射角0°での液晶硬化層の直線偏光位相差R(0°)で割ったレターデーション比R(θ)/R(0°)を求める。ここで、入射角0°での液晶硬化層の直線偏光位相差R(0°)とは、即ち、液晶硬化層の面内レターデーションLReを表す。こうして求めたレターデーション比R(θ)/R(0°)を縦軸、入射角θを横軸としたグラフを描いた場合に、得られたグラフがθ=0°に対して非対称であれば、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜していることが確認できる。
[0200]
 以下、例を挙げてより具体的に説明する。図1は、ある例に係る液晶硬化層のレターデーション比R(θ)/R(0°)を、入射角θに対してプロットしたグラフである。液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の全ての分子の傾斜角が0°又は90°であると、レターデーション比R(θ)/R(0°)は、図1で破線で示す例のように、θ=0°の直線(図1では、θ=0°を通る縦軸)に対して線対称となる。これに対して、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が液晶硬化層の層平面に対して傾斜していると、レターデーション比R(θ)/R(0°)は、図1に実線で示す例のように、通常はθ=0°の直線に対して非対称となる。よって、レターデーション比R(θ)/R(0°)がθ=0°に対して非対称である場合には、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が当該液晶硬化層の層平面に対して傾斜している、と判定できる。
[0201]
 層平面に対して傾斜した液晶性化合物の分子は、一の方向に配向していてもよい(傾斜配向)。この場合、当該液晶性化合物の分子が層平面に対してなす傾斜角は、一定でありうる。また、層平面に対して傾斜した液晶性化合物の分子は、層平面に対してなす傾斜角が、液晶硬化層の一側に近いほど小さく、前記一側から遠いほど大きい態様で配向していてもよい(ハイブリッド配向)。
[0202]
 液晶組成物がキラル化合物を含むので、そのキラル化合物の作用により、液晶硬化層中の液晶性化合物の分子の配向方向は、一方の向き(即ち、右向き及び左向きの一方)にねじれを生じている。このようにキラル化合物によって一方の向きへの積極的なねじれを生じるので、液晶硬化層においては、液晶性化合物の分子の配向方向のねじれの向きの不均一さは、抑制されている。したがって、本発明の一実施形態に係る液晶硬化フィルムが備える液晶硬化層では、分子の配向方向が不均一になることを抑制できる。特に、配向方向の層平面に平行な成分が不均一になることを抑制できる。よって、配向ムラを抑制できる。
[0203]
 測定波長550nmにおける液晶硬化層の面内レターデーションLRe及び旋光位相差CReは、前記の式(1)を満たす。より詳細には、下記の式(2)によって定義されるパラメータXReが、通常500nm以上、好ましくは1000nm以上、特に好ましくは1500nm以上、通常20000nm以下、好ましくは10000nm以下、特に好ましくは5000nm以下である。パラメータXReが前記の範囲にあることにより、液晶硬化層を透過する光の偏光状態の乱れを抑制できる。
[0204]
[数3]


[0205]
 式(2)で表されるパラメータXReが式(1)を満たす前記範囲にあることは、厚み方向において液晶性化合物の分子の配向方向のねじれが緩やかであることを表す。ここで、配向方向のねじれが「緩やか」とは、分子の配向方向のねじれのピッチ(らせん構造の周期)が長いことを表す。すなわち、配向方向のねじれが「緩やか」とは、単位厚み当たりの配向方向の差が小さいことを表す。
[0206]
 一般に、配向方向がらせん状にねじれた液晶性化合物の分子を含む液晶層を光が透過する際、旋光を生じるためには、ねじれのピッチが十分に長いことが求められる(モーガン条件;SEMIカラーTFT液晶ディスプレイ改訂版編集委員会編、「カラーTFT液晶ディスプレイ改訂版」、共立出版、2005年10月30日、p.36)。仮にねじれのピッチが短いと、その液晶層を透過する光は、ねじれに追従した旋光ができない光成分が生じ、その光成分の偏光状態が乱され、楕円偏光となったり偏光解消が生じたりすることがある。式(1)は、このような偏光状態の乱れを抑制できる程度に配向方向のねじれが緩やかであることを表している。
[0207]
 式(1)の意義について、更に詳細に説明する。図2は、ある液晶層100の両側に、パラニコルに設定した一対の直線偏光子110及び120を配置した光学系を模式的に示す斜視図である。パラニコルとは、一方の直線偏光子110の偏光透過軸A 110と、他方の直線偏光子120の偏光透過軸A 120とが平行となった状態をいう。一方の直線偏光子110に自然光L1が入射すると、その直線偏光子110の偏光透過軸A 110に平行な振動方向を有する直線偏光L2が透過する。直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。直線偏光L2は、液晶層100を透過し、その透過光L3が他方の直線偏光子120に入射する。透過光L3のうち、直線偏光子120の偏光透過軸A 120に平行な振動方向を有する成分だけが透過して透過光L4となり、それ以外の成分は直線偏光子120で遮られる。
[0208]
 前記の光学系に関して、TN液晶パネルの式として、下記式(3)のグッチ・テリーの式が知られている(SEMIカラーTFT液晶ディスプレイ改訂版編集委員会編、「カラーTFT液晶ディスプレイ改訂版」、共立出版、2005年10月30日、p.42-43)。この式(3)は、液晶層100に含まれる液晶性化合物の分子の配向方向が90°のねじれを生じており、そのため、液晶層100によって直線偏光L2が旋光角φ=90°だけ旋光させられる場合に、直線偏光子120を透過できる光の割合(透過率)Iを表している。式(3)において、Δnは液晶層100の複屈折を表し、dは液晶層100の厚みを表し、λは光の波長を表す。よって、式(3)において、Δn×dは、液晶層100の面内レターデーションを表す。
[0209]
[数4]


[0210]
 前記の式(3)に、光の波長λ=550nmを代入して、透過率Iを縦軸、面内レターデーションΔn×dを横軸に取ったグラフで表示すると、図3のようになる。図3から分かるように、透過率Iは、面内レターデーションΔn×d=500nm付近で最小点(約476nm)をとり、この最小点より面内レターデーションΔn×dが小さい範囲では透過率Iが大きい。この結果は、面内レターデーションΔn×dが前記の最小点より小さい範囲では、液晶層100に含まれる分子の配向方向のねじれが十分に「緩やか」でないので、偏光状態の乱れが生じていることを表す。他方、面内レターデーションΔn×dが前記の最小点以上である範囲では、分子の配向方向のねじれが十分に「緩やか」であり、偏光状態の乱れを抑制できていることを表す。なお、液晶層100は、旋光だけでなく、面内レターデーションΔn×dの作用によっても透過光の偏光状態を変化させうるので、面内レターデーションΔn×dが前記の最小点以上であっても透過率Iが0.0とならない範囲が生じている。このように、旋光角φが90°である場合には、配向方向のねじれが「緩やか」であることを式(3)を利用して表すことができる。
[0211]
 しかし、上述した実施形態に係る液晶硬化層の旋光角は、必ずしも90°ではなく、通常は更に小さい値である。よって、本実施形態では、液晶硬化層が旋光角90°を有するように当該液晶硬化層の厚みを調整したと仮定した場合に、その液晶硬化層が有するであろう面内レターデーションを、式(2)で表されるパラメータXReとして求めている。こうして求めたパラメータXReは、式(3)のグッチ・テリーの式における面内レターデーションΔn×dに相当する。そこで、このパラメータXRe及び式(3)のグッチ・テリーの式を用いて、配向方向のねじれが「緩やか」となる条件を特定し、この条件を式(1)に規定している。
[0212]
 前記のパラメータXReは、例えば、液晶性化合物の種類;キラル化合物の種類及び量;並びに液晶硬化層の厚み;により、調整できる。
[0213]
 測定波長550nmにおける液晶硬化層の旋光位相差CReと液晶硬化層の厚みDとの比CRe/Dは、好ましくは0.0002以上、より好ましくは0.0005以上、特に好ましくは0.0010以上であり、好ましくは0.0133以下、より好ましくは0.0100以下、特に好ましくは0.0050以下である。前記の比CRe/Dが、前記範囲の下限値以上である場合、液晶性化合物の分子の配向方向が効果的にねじれられているので、配向ムラを効果的に抑制できる。また、前記の比CRe/Dが前記範囲の上限値以下である場合、配向方向のねじれが緩やかであるので、液晶硬化層を透過する光の偏光状態の乱れを効果的に抑制できる。
[0214]
 測定波長550nmにおける液晶硬化層の旋光位相差CReは、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは1.2nm以上、特に好ましくは1.5nm以上であり、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、特に好ましくは7nm以下である。前記の旋光位相差CReが前記範囲の下限値以上である場合、配向ムラを効果的に抑制できる。また、前記の旋光位相差CReが前記範囲の上限値以下である場合、液晶硬化層を透過する光の偏光状態の乱れを効果的に抑制できる。
[0215]
 旋光位相差CReは、例えば、液晶性化合物の種類;キラル化合物の種類及び量;並びに液晶硬化層の厚み;により、調整できる。
[0216]
 測定波長550nmにおける液晶硬化層の具体的な面内レターデーションLReは、液晶硬化フィルムの用途に応じて任意に設定しうる。中でも好ましい範囲を挙げると、前記の面内レターデーションLReは、好ましくは50nm以上、より好ましくは55nm以上、特に好ましくは60nm以上であり、また、好ましくは90nm以下、より好ましくは85nm以下、特に好ましくは80nm以下の第一の範囲にある。または、前記の面内レターデーションLReは、好ましくは120nm以上、より好ましくは125nm以上、特に好ましくは130nm以上であり、また、好ましくは160nm以下、より好ましくは155nm以下、特に好ましくは150nm以下の第二の範囲にある。第一の範囲に面内レターデーションLReがある場合、液晶硬化層をλ/8波長板として使用できる。また、第二の範囲に面内レターデーションLReがある場合、液晶硬化層をλ/4波長板として使用できる。
[0217]
 液晶硬化層の面内レターデーションLReは、逆波長分散性を示すことが好ましい。よって、液晶硬化層の波長450nm及び波長550nmにおける面内レターデーションLRe(450)及びLRe(550)は、好ましくは下記式(N3)を満たし、より好ましくは下記式(N4)を満たす。
 LRe(450)/LRe(550)<1.00 (N3)
 LRe(450)/LRe(550)<0.90 (N4)
 このように逆波長分散性の面内レターデーションLReを有する液晶硬化層は、1/4波長板又は1/2波長板等の光学用途において、広い波長帯域において均一に機能を発現できる。逆波長分散性の面内レターデーションLReを有する液晶硬化層は、液晶性化合物として逆分散液晶性化合物を用いることにより、実現できる。
[0218]
 液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の層全体としての傾斜角の大きさは、実質最大傾斜角によって表すことができる。液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角は、通常、5°以上85°以下となる。中でも、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角は、好ましくは40°以上、より好ましくは46°以上、特に好ましくは56°以上であり、好ましくは85°以下、より好ましくは83°以下、特に好ましくは80°以下である。
[0219]
 実質最大傾斜角は、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の傾斜角の大きさを示す指標である。液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角が大きいことは、通常、当該液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の傾斜角が全体として大きいことを表す。実質最大傾斜角が大きい液晶硬化層は、厚み方向における複屈折の調整を適切に行うことができるので、当該液晶硬化層を直線偏光子と組み合わせて反射抑制フィルムとして有機EL表示装置に設けた場合に、表示面の傾斜方向において反射を効果的に抑制することができる。したがって、高い視野角特性を達成できる偏光板を実現することが可能である。
[0220]
 液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角は、後述する実施例に記載の測定方法で測定できる。
[0221]
 液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子が当該液晶硬化層の全体として大きな傾斜角を有する場合、液晶硬化層の厚み方向の複屈折を適切に調整できる。したがって、液晶硬化層は、反射抑制フィルムとしての偏光板に設けた場合に、表示面の傾斜方向において反射を効果的に抑制できるという優れた視野角特性を得ることができる。
[0222]
 液晶硬化層の面内方向においては、液晶性化合物の分子の配向方向は、通常、均一である。よって、液晶硬化層は、通常、液晶硬化層を厚み方向から見た液晶性化合物の分子の配向方向に平行な遅相軸を有しうる。
[0223]
 液晶硬化層は、透明性に優れることが好ましい。具体的には、液晶硬化層の全光線透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは84%以上である。また、液晶硬化層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定できる。また、ヘイズは、ヘイズメーターを用いて測定できる。
[0224]
[6.液晶硬化層の層構成]
 図4及び図5は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る液晶硬化フィルムが備える液晶硬化層200及び300の例を模式的に示す断面図である。
 図4に示す例のように、液晶硬化層200は、1層のみを含む単層構造を有していてもよい。また、図5に示す例のように、液晶硬化層300は、第一硬化層310、第二硬化層320等の複数の層を含む複層構造を有していてもよい。以下の説明では、液晶硬化層に含まれる部分としての第一硬化層及び第二硬化層等の層を、適宜「単位硬化層」と呼ぶことがある。
[0225]
 複数の単位構造層を含む複層構造の液晶硬化層300において、隣り合う単位構造層同士の間には、他の層が無いことが好ましい。よって、第一硬化層310及び第二硬化層320を含む液晶硬化層300において、第一硬化層310と第二硬化層320との間には、他の層が無いことが好ましい。このように間に他の層を挟まないで2層が接することを、「直接に」接する、ということがある。
[0226]
 図5に示すような複層構造は、通常、液晶硬化層300の製造方法に起因して生じる。例えば、逆分散液晶性化合物を用いた場合、層平面に対して傾斜した逆分散液晶性化合物の分子を含む第一硬化層310等の単位硬化層の表面310Uは、通常、その表面310U上に形成される第二硬化層320等の他の単位硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の傾斜角を大きくする配向膜として機能できる。よって、液晶硬化層300に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の傾斜角を層全体として大きくしたい場合、先に形成された単位硬化層上に更に別の単位硬化層を形成することを含む製造方法を採用することが好ましい。第一硬化層310及び第二硬化層320を備える液晶硬化層300では、このように第一硬化層310を配向膜として機能させた場合、第二硬化層320に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角が、第一硬化層310に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角よりも、大きくなりうる。
[0227]
 液晶硬化層に含まれる各単位硬化層は、下記の方法によって区別できる。液晶硬化層を、エポキシ樹脂で包埋して、試料片を得る。この試料片を、ミクロトームを用いて、液晶硬化層の厚み方向に平行にスライスして、観察サンプルを得る。この際、スライスは、液晶硬化層の遅相軸と断面とが平行となるように行う。その後、スライスにより現れた断面を、偏光顕微鏡を用いて観察する。この観察は、観察サンプルと偏光顕微鏡の対物レンズとの間に波長板を挿入して、観察サンプルの位相差に応じた色を呈した像が見られるように行う。このとき、色が異なる部分を、単位硬化層同士の境目として確認し、各単位硬化層を区別できる。
[0228]
 液晶硬化層は、当該液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の少なくとも一部の分子が液晶硬化層の層平面に対して傾斜しているのであるから、一部の単位硬化層に含まれる液晶性化合物の分子は、液晶硬化層の層平面に対して傾斜していなくてもよい。よって、例えば、一部の単位硬化層に含まれる液晶性化合物の分子が液晶硬化層の層平面に対して平行又は垂直であってもよい。しかし、通常は、いずれの単位硬化層に含まれる液晶性化合物の分子も、液晶硬化層の層平面に対して傾斜している。よって、図5に示す例のように第一硬化層310及び第二硬化層320を備える液晶硬化層300では、通常、第一硬化層310に含まれる液晶性化合物の分子が層平面に対して傾斜しており、且つ、第二硬化層320に含まれる液晶性化合物の分子が層平面に対して傾斜している。
[0229]
[7.液晶硬化層の厚み]
 液晶硬化層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは7.0μm以下である。液晶硬化層の厚みが前記の範囲にある場合、面内レターデーションLRe、旋光位相差CRe等の特性を所望の範囲に容易に調整することができる。また、このような厚みの液晶硬化層は、有機EL表示装置の反射抑制フィルムに用いられてきた従来の位相差フィルムよりも薄いので、有機EL表示装置の薄型化に貢献できる。
[0230]
[8.任意の層]
 液晶硬化フィルムは、液晶硬化層のみを含むフィルムであってもよく、液晶硬化層に組み合わせて任意の層を含むフィルムであってもよい。任意の層としては、液晶硬化層の製造に用いる基材;位相差フィルム;他の部材と接着するための接着剤層;フィルムの滑り性を良くするマット層;耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層;反射防止層;防汚層;等が挙げられる。
[0231]
[9.液晶硬化フィルムの製造方法]
 液晶硬化フィルムの製造方法は、特に制限されない。例えば、液晶硬化フィルムは、
 (i)液晶組成物の層を形成する工程と、
 (ii)液晶組成物の層に含まれる液晶性化合物を配向させる工程と、
 (iii)液晶組成物の層を硬化させて液晶硬化層を得る工程と、
 を含む製造方法によって製造できる。
[0232]
 液晶組成物の層を形成する工程(i)では、通常、適切な支持面に、液晶組成物の層を形成する。支持面としては、液晶組成物の層を支持できる任意の面を用いうる。この支持面としては、液晶硬化層の面状態を良好にする観点から、凹部及び凸部の無い平坦面を用いることが好ましい。また、液晶硬化層の生産性を高める観点から、前記の支持面としては、長尺の基材の表面を用いることが好ましい。ここで「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して1万倍以下としうる。
[0233]
 基材としては、通常、樹脂フィルム又はガラス板を用いる。特に、高い温度で配向処理を行う場合、その温度に耐えられる基材を選択するのが好ましい。樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。中でも、配向規制力の高さ、機械的強度の高さ、及びコストの低さといった観点から、樹脂としては、正の固有複屈折値を有する樹脂が好ましい。更には、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、ノルボルネン系樹脂等の、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いることが好ましい。基材に含まれる樹脂の好適な例を商品名で挙げると、ノルボルネン系樹脂として、日本ゼオン社製「ゼオノア」を挙げられる。
[0234]
 支持面としての基材の表面には、液晶組成物の層における液晶性化合物の配向を促進するため、配向規制力を付与するための処理が施されていることが好ましい。配向規制力とは、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させることができる、面の性質をいう。支持面に配向規制力を付与するため処理としては、例えば、光配向処理、ラビング処理、イオンビーム配向処理、延伸処理などが挙げられる。
[0235]
 液晶組成物の層を形成する工程(i)において、液晶組成物は、通常、流体状で用意される。そのため、通常は、支持面に液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成する。液晶組成物を塗工する方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。
[0236]
 液晶組成物の層を形成する工程(i)の後で、液晶組成物の層に含まれる液晶性化合物を配向させる工程(ii)を行いうる。この工程(ii)では、通常は、液晶組成物の層に配向処理を施すことにより、支持面の配向規制力に応じた方向に液晶性化合物を配向させる。
[0237]
 配向処理は、通常、液晶組成物の層の温度を所定の配向温度に調整することによって行う。配向温度は、液晶組成物の液晶化温度以上の温度としうる。この際、配向温度は、基材に含まれる樹脂のガラス転移温度未満の温度であることが好ましい。これにより、配向処理による基材の歪みの発生を抑制できる。
[0238]
 通常、面内方向においては、液晶性化合物は、支持面の配向規制力に応じた方向に配向する。また、厚み方向において、液晶性化合物は、通常、少なくとも一部が層平面に対して大きく傾斜するように配向する。これにより、液晶性化合物の層平面に対する傾斜角を効果的に大きくできる。
[0239]
 さらに、工程(ii)は、液晶性化合物の分子の傾斜角が大きい液晶硬化層が得られるように、操作又は条件を調整して行うことが好ましい。
[0240]
 例えば、液晶性化合物として逆分散液晶性化合物を用いている場合、工程(ii)は、液晶組成物の層の温度条件が所定の要件を満たすように行うことが好ましい。具体的には、工程(ii)における液晶組成物の層の温度条件が、試験組成物の残留分粘度が通常800cP以下となる温度条件と同一になるように、行うことが好ましい。前記の試験組成物とは、液晶組成物から重合開始剤を除いた組成を有する組成物である。また、試験組成物の残留分粘度とは、工程(ii)の液晶組成物の層と同一温度条件における、試験組成物の残留成分の粘度である。また、試験組成物の残留成分とは、試験組成物に含まれる成分のうち、工程(ii)の液晶組成物の層と同一温度条件において気化せずに残留した成分である。このような要件を満たすように工程(ii)を行うことで、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の傾斜角を大きくすることが可能である。
[0241]
 更に詳しく説明する。液晶性化合物を配向させる工程(ii)を、前記の要件を満たすように行う場合、当該工程(ii)は、試験組成物の残留分粘度が所定範囲に収まる温度条件と同一温度条件に、液晶組成物の層を調整して、行う。前記残留分粘度の具体的範囲は、通常800cP(センチポアズ)以下、好ましくは600cP以下、より好ましくは400cP以下、さらに好ましくは200cP以下である。このように試験組成物の残留分粘度が低くなる温度条件と同一温度条件で液晶組成物の層中の液晶性化合物を配向させることにより、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の傾斜角を大きくすることができる。前記残留分粘度の下限は、所望の厚みの液晶硬化層を得る観点から、好ましくは5cP以上、より好ましくは10cP以上である。
[0242]
 工程(ii)の液晶組成物の層と同一温度条件における試験組成物の残留分粘度は、下記の方法によって測定できる。
 液晶組成物から重合開始剤を除いた試験組成物を用意する。この試験組成物をロータリーエバポレーターで減圧濃縮して溶媒を除去し、残留成分を得る。この残留成分について、予め、測定温度を変化させながら粘度を測定し、測定温度とその測定温度での粘度との情報を得る。この情報を、以下、適宜「温度-粘度情報」という。この「温度-粘度情報」から、工程(ii)での液晶組成物の層の温度における粘度を、残留分粘度として読み取る。
[0243]
 工程(ii)の液晶組成物の層と同一温度条件において試験組成物の残留分粘度を上述した範囲に収める方法としては、例えば、下記(A)及び(B)の方法が挙げられる。
 (A)液晶性化合物を配向させる工程(ii)における液晶組成物の層の温度を、適切に調整する。この方法では、通常、液晶組成物の層の温度を十分に高温にすることで、この温度と同一温度条件での試験組成物の残留分粘度を低くして、上述した範囲となるように調整する。
 (B)液晶組成物の組成を、適切に調整する。この方法では、通常、液晶組成物に含まれる成分として、液晶性化合物に適切な種類及び量の添加剤を組み合わせることで、当該添加剤を含む試験組成物の残留分粘度を低くして、上述した範囲となるように調整する。
[0244]
 工程(ii)における液晶組成物の層の温度条件の調整については、国際公開第2018/173773号の記載を参照してよい。
[0245]
 また、例えば、逆分散液晶性化合物と磁場応答性を有する液晶性化合物とを含む液晶組成物を用いる場合には、工程(ii)を、液晶組成物の層に磁界を印加した状態で行うことが好ましい。これにより、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の傾斜角を効果的に大きくできる。磁界の印加については、特開2018-163218号公報の記載を参照してよい。
[0246]
 液晶性化合物を配向させる工程(ii)は、通常、オーブン内において行われる。この際、オーブンの設定温度と、そのオーブン内に置かれた液晶組成物の層の温度とは、異なる場合がありえる。この場合、予め、多数のオーブン設定温度において、その設定温度のオーブン内に置かれた液晶組成物の層の温度を測定し、記録しておくことが好ましい。この記録されたオーブンの設定温度とその設定温度のオーブン内に置かれた液晶組成物の層の温度との情報を、以下、適宜「設定温度-層温度情報」という。この「設定温度-層温度情報」を用いれば、オーブン設定温度から、オーブン内に置かれた液晶組成物の層の温度を容易に知ることができる。
[0247]
 液晶性化合物を配向させる工程(ii)において、液晶組成物の層の温度を前記の温度に保持する時間は、所望の液晶硬化層が得られる範囲で任意に設定でき、例えば30秒間~5分間でありうる。
[0248]
 液晶性化合物を配向させる工程(ii)の後で、液晶組成物の層を硬化させて、液晶硬化層を得る工程(iii)を行う。この工程(iii)の液晶組成物の硬化は、通常、当該液晶組成物が含む重合性の化合物の重合によって達成される。例えば、液晶性化合物が重合性を有する場合、その液晶性化合物の一部又は全部を重合させることにより、液晶組成物の層を硬化させる。重合は、通常、液晶性化合物の分子の配向を維持したままで進行する。よって、前記の重合により、重合前の液晶組成物に含まれる液晶性化合物の配向状態は、固定される。
[0249]
 重合方法としては、液晶組成物に含まれる成分の性質に適合した方法を選択しうる。重合方法としては、例えば、活性エネルギー線を照射する方法、及び、熱重合法が挙げられる。中でも、加熱が不要であり、室温で重合反応を進行させられるので、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。ここで、照射される活性エネルギー線には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光、並びに電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。
[0250]
 なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。紫外線照射時の温度は、基材に悪影響を与えない範囲という観点から、基材のガラス転移温度以下とすることが好ましく、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下である。紫外線照射時の温度の下限は、15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。紫外線の照射強度は、好ましくは0.1mW/cm 2以上、より好ましくは0.5mW/cm 2以上であり、好ましくは10000mW/cm 2以下、より好ましくは5000mW/cm 2以下である。紫外線の照射量は、好ましくは0.1mJ/cm 2以上、より好ましくは0.5mJ/cm 2以上であり、好ましくは10000mJ/cm 2以下、より好ましくは5000mJ/cm 2以下である。
[0251]
 以上の工程を行うことにより、液晶硬化層を得ることができる。上述した製造方法は、こうして得られた液晶硬化層上に、更に液晶硬化層を形成する工程を含んでいてもよい。この場合、前記のようにして形成された液晶硬化層に相当する第一硬化層と、この第一硬化層上に更に形成された第二硬化層とを含む複層構造の液晶硬化層が得られる。
[0252]
 第二硬化層は、第一硬化層上に、直接に形成することが好ましい。ここで、ある層上に別の層を形成する態様が「直接に」とは、これら2層の間に他の層が無いことをいう。逆分散液晶性化合物を用いた場合、その逆分散液晶性化合物を含む第一硬化層等の単位硬化層は、当該単位硬化層上に直接に形成される別の単位硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の傾斜角を大きくする配向膜として機能できる。よって、通常は、先に形成される単位構造層(例えば、第一硬化層)に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角よりも、その後に形成される別の単位構造層(例えば、第二硬化層)に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角を大きくできる。よって、単位硬化層の形成を繰り返すことにより、全体として逆分散液晶性化合物の大きな傾斜角を有する液晶硬化層を得ることができる。こうして得られた液晶硬化層においては、通常、後に形成された単位硬化層ほど、大きな実質最大傾斜角を有する傾向がある。
[0253]
 第二硬化層は、例えば、上述した工程(i)~工程(iii)を行うことにより、形成できる。この際、第二硬化層を形成するために用いる液晶組成物に含まれる液晶性化合物は、第一硬化層を形成するために用いる液晶組成物に含まれる液晶性化合物と、同一でもよく、異なっていてもよい。さらに、第二硬化層を形成するために用いる液晶組成物と、第一硬化層を形成するために用いる液晶組成物とは、異なっていてもよいし、同一であってもよい。
[0254]
 第一硬化層の表面には、液晶組成物の層を形成する前に、ラビング処理等の配向規制力を付与するための処理を施してもよい。しかし、第一硬化層の表面は、特段の処理を施さなくても、当該表面上に形成される液晶組成物の層に含まれる逆分散液晶性化合物を適切に配向させる配向規制力を有する。よって、工程数を減らして液晶硬化フィルムの製造を効率的に進める観点では、第一硬化層の表面にラビング処理を施さないことが好ましい。
[0255]
 また、第二硬化層を形成した後で、その第二硬化層状に、更に任意の単位硬化層を形成する工程を行ってもよい。
[0256]
 上述した製造方法により、液晶硬化層を含む液晶硬化フィルムを製造できる。この製造方法では、通常、基材と、この基材の支持面上に形成された液晶硬化層とを含む液晶硬化フィルムが得られる。
[0257]
 また、上述した製造方法は、基材を剥離する工程を含んでいてもよい。この場合、液晶硬化層それ自体を、液晶硬化フィルムとして用いることができる。
[0258]
 さらに、液晶硬化フィルムの製造方法は、例えば、基材上に形成された液晶硬化層を、任意のフィルム層に転写する工程を含んでいてもよい。よって、例えば、液晶硬化フィルムの製造方法は、基材上に形成された液晶硬化層と任意のフィルム層とを貼り合わせた後で、必要に応じて基材を剥離して、液晶硬化層及び任意のフィルム層を含む液晶硬化フィルムを得る工程を含んでいてもよい。この際、貼り合わせには、適切な粘着剤又は接着剤を用いてもよい。
[0259]
 また、液晶硬化フィルムの製造方法は、例えば、液晶硬化層上に、更に任意の層を形成する工程を含んでいてもよい。
[0260]
 さらに、液晶硬化フィルムの製造方法は、例えば、液晶組成物の層を硬化させる工程(iii)の前に、液晶組成物の層を乾燥させる工程を含んでいてもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、液晶組成物の層から、溶媒を除去することができる。
[0261]
 前記のような製造方法によれば、長尺の基材を用いて、長尺の液晶硬化フィルムを得ることができる。このような長尺の液晶硬化フィルムは、連続的な製造が可能であり、生産性に優れる。また、長尺の液晶硬化フィルムは、他のフィルムとの貼り合わせを、ロールトゥロールによって行うことができるので、この点でも、生産性に優れる。通常、長尺の液晶硬化フィルムは、巻き取られてロールの状態で保存及び運搬がなされる。
[0262]
[10.偏光板]
 上述した液晶硬化フィルムを用いることにより、偏光板を製造できる。この偏光板は、通常、上述した製造方法で液晶硬化フィルムを製造する工程と、この液晶硬化フィルムと直線偏光子とを貼合する工程と、を含む製造方法により、製造できる。
[0263]
 こうして得られた偏光板は、液晶硬化フィルムと直線偏光子とを含む。この偏光板は、円偏光板又は楕円偏光板として機能できることが好ましい。このような偏光板を有機EL表示装置に設けることにより、有機EL表示装置の表示面において外光の反射を抑制できる。特に、上述した液晶硬化層は、液晶性化合物の分子の傾斜角が適切に調整されることで、面内方向だけでなく厚み方向においても複屈折を適切に調整することができる。よって、この液晶硬化層を含む偏光板は、有機EL表示装置の表示面の正面方向だけでなく傾斜方向においても外光の反射を抑制できる。したがって、この偏光板を用いることにより、視野角の広い有機EL表示装置を実現することができる。さらに、上述した液晶硬化層が配向ムラ及び透過光の偏光状態の乱れを抑制できるので、その液晶硬化層を含む液晶硬化フィルムを備えた偏光板は、正面方向及び傾斜方向の両方において効果的な反射の抑制が可能である。
[0264]
 直線偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるフィルム;ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるフィルム;が挙げられる。また、直線偏光子の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子などの、偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうち、直線偏光子としては、ポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
[0265]
 直線偏光子に自然光を入射させると、一方の偏光だけが透過する。この直線偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
 また、直線偏光子の厚みは、好ましくは5μm~80μmである。
[0266]
 偏光板を円偏光板として機能させたい場合、直線偏光子の偏光吸収軸に対して液晶硬化層の遅相軸がなす角度は、45°またはそれに近い角度であることが好ましい。前記の角度は、具体的には、好ましくは45°±5°(即ち、好ましくは40°~50°)、より好ましくは45°±4°(即ち、より好ましくは41°~49°)、特に好ましくは45°±3°(即ち、特に好ましくは42°~48°)である。
[0267]
 偏光板は、直線偏光子及び液晶硬化層に組み合わせて、更に任意の層を含んでいてもよい。任意の層としては、例えば、直線偏光子と液晶硬化層とを貼り合わせるための接着剤層;直線偏光子を保護するための偏光子保護フィルム層;などが挙げられる。
[0268]
[11.有機EL表示装置]
 上述した偏光板を用いることにより、有機EL表示装置を製造できる。この有機EL表示装置は、通常、上述した製造方法で偏光板を製造することを含む製造方法により、製造できる。
[0269]
 この有機EL表示装置は、上述した偏光板を含む。有機EL表示装置は、通常、表示素子として有機EL素子を含み、この有機EL素子の視認側に、偏光板が設けられる。また、偏光板は、有機EL素子側から、液晶硬化フィルム及び直線偏光子をこの順に含む。そして、このような構成において、前記の偏光板が反射抑制フィルムとして機能できる。
[0270]
 以下、偏光板が円偏光板として機能する場合を例に挙げて、反射抑制の仕組みを説明する。装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子を通過し、次にそれが液晶硬化層を通過することにより、円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子の反射電極等)により反射され、再び液晶硬化層を通過することにより、入射した直線偏光の振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光となり、直線偏光子を通過しなくなる。これにより、反射抑制の機能が達成される。このような反射抑制の原理は、特開平9-127885号公報を参照してよい。
[0271]
 有機EL素子は、通常、透明電極層、発光層及び電極層をこの順に備え、透明電極層及び電極層から電圧を印加されることにより発光層が光を生じうる。有機発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層を備えていてもよい。
実施例
[0272]
 以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
[0273]
[厚みの測定方法]
 以下の実施例及び比較例において、層の厚みは、膜厚測定計(Filmetrix社製「F-20」)を用いて測定した。
[0274]
[液晶性化合物の説明]
 下記の実施例及び比較例で用いた逆分散液晶性化合物(L-A)~(L-C)の分子構造は、下記の通りである。
[0275]
[化28]


[0276]
[化29]


[0277]
[化30]


[0278]
[キラル化合物の説明]
 下記の実施例及び比較例では、キラル化合物(C-X)として、BASF社製「LC756」を用いた。
 また、キラル化合物(C-Y)としては、下記の分子構造を有する化合物を用いた。下記式において、Meはメチル基を表す。キラル化合物(C-X)であるBASF社製「LC756」およびキラル化合物(C-Y)のHTPは、それぞれ、20以上200以下の値である。
[0279]
[化31]


[0280]
[実施例及び比較例]
 (液晶組成物の調整)
 下記表1に示す種類の逆分散液晶性化合物100重量部と、フッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル社製「S420」;logP=5.3)0.15重量部と、下記表1に示す種類及び量のキラル化合物と、光重合開始剤(ADEKA社製「NCI-730」)4.0重量部と、溶媒としてのシクロペンタノン162.3重量部及び1,3-ジオキソラン243.5重量部とを混合して、液晶組成物を得た。
[0281]
 (基材フィルムの用意)
 基材フィルムとして、片面にマスキングフィルムが貼り合わせられた熱可塑性のノルボルネン樹脂からなる樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」;厚み100μm)を用意した。この基材フィルムは、光学的に等方性のフィルムであったので、後述する液晶硬化層の位相差LRe、CRe及びR(θ)の測定結果に影響を及ぼすものでは無い。この基材フィルムからマスキングフィルムを剥離し、マスキング剥離面にコロナ処理を施した。次いで、コロナ処理面に、ラビング処理を施した。
[0282]
 (第一硬化層の形成)
 基材フィルムのラビング処理面に、#2又は#3のワイヤーバーを用いて液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成した。
 その後、液晶組成物の層を、110℃で4分間加熱して、配向処理を行った。この配向処理での配向温度は、各実施例及び比較例の液晶組成物に対応する試験組成物の残留分粘度が800cP以下となる温度条件と同一であった。この配向処理により、液晶組成物の層に含まれる逆分散液晶性化合物が配向した。
 配向処理を施された液晶組成物の層に、窒素雰囲気下で、500mJ/cm の紫外線を照射して、液晶組成物の層を硬化させて、下記表1に示す厚みの第一硬化層を形成した。これにより、第一硬化層/基材フィルムの層構成を有する中間フィルムを得た。
[0283]
 (液晶硬化層の形成)
 中間フィルムの第一硬化層の表面に、#3又は#6のワイヤーバーを用いて更に液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成した。
 その後、液晶組成物の層を、110℃で4分間加熱して、配向処理を行った。この配向処理により、液晶組成物の層に含まれる逆分散液晶性化合物が配向した。
 配向処理を施された液晶組成物の層に、窒素雰囲気下で、1000mJ/cm の紫外線を照射して、液晶組成物の層を硬化させて、第二硬化層を形成した。これにより、第一硬化層及び第二硬化層を合わせた層として、表1に示す厚みの液晶硬化層を得た。そして、これにより、液晶硬化層/基材フィルムの層構成を有する液晶硬化フィルムを得た。
[0284]
 (液晶硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の傾斜配向性の確認)
 図6は、傾斜方向から液晶硬化層400のレターデーションとしての直線偏光位相差R(θ)を測定する際の測定方向を説明するための斜視図である。図6において、矢印A1は液晶硬化層400の面内の遅相軸を表し、矢印A2は液晶硬化層400の面内の進相軸を表し、矢印A3は液晶硬化層400の厚み方向を表す。
[0285]
 液晶硬化フィルムを、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)にセットした。液晶硬化層400の進相軸A2を回転軸として液晶硬化フィルムを回転させて、図6に示すように、液晶硬化層400の直線偏光位相差R(θ)を、入射角θが-50°~50°の範囲で測定した。よって、前記の測定方向A4は、液晶硬化層400の進相軸A2に対して垂直に設定される。また、測定波長は590nmであった。
[0286]
 入射角θが-50°~50°の範囲で測定された液晶硬化層の直線偏光位相差R(θ)を、入射角0°での液晶硬化層の直線偏光位相差R(0°)で割って、レターデーション比R(θ)/R(0°)を求めた。求めたレターデーション比R(θ)/R(0°)を縦軸、入射角θを横軸としたグラフを描いた。
 得られたレターデーション比R(θ)/R(0°)のグラフがθ=0°に対して非対称である場合、液晶硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の少なくとも一部の分子が液晶硬化層の層平面に対して傾斜していると判定できる。また、レターデーション比R(θ)/R(0°)のグラフがθ=0°に対して対称である場合、液晶硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の全ての分子が液晶硬化層の層平面に対して平行又は垂直であると判定できる。
[0287]
 測定の結果、いずれの実施例及び比較例でも、レターデーション比R(θ)/R(0°)のグラフがθ=0°に対して非対称であった。よって、液晶硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の少なくとも一部の分子が液晶硬化層の層平面に対して傾斜していると判定した。
[0288]
 (実質最大傾斜角の測定)
 前記の(液晶硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の傾斜配向性の確認)で測定された直線偏光位相差R(θ)から、前記の位相差計に付属の解析ソフトウェア(Axometrics社製の解析ソフトウェア「Multi-Layer Analysis」;解析条件は、解析波長590nm、層分割数20層)により、液晶硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角Θを計算した。
[0289]
 (面内レターデーションLRe及び旋光位相差CReの測定)
 位相差計(Axometrix社製「Axoscan」)を用いて、液晶硬化層の面内レターデーションLRe及び旋光位相差CReを測定した。測定波長は、550nmであった。
[0290]
 (逆波長分散性の確認)
 液晶硬化フィルムの液晶硬化層の測定波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションLRe(450)及びLRe(550)を、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて、測定した。測定の結果、いずれの実施例及び比較例でも、LRe(450)/LRe(550)<0.9が成立していた。
[0291]
 (液晶硬化層の面状の評価)
 液晶硬化フィルムの液晶硬化層を、偏光顕微鏡を用いて観察した。観察された像において、配向ムラの量を評価した。前記の実施例及び比較例において、配向ムラは、通常、逆分散液晶性化合物の分子の配向方向が不均一な部分が形成されることによって、生じる。よって、配向ムラが少ないほど、逆分散液晶性化合物の分子の配向方向が揃い、面状が良好であると判定できる。そこで、配向ムラの量に基づき、下記の基準で、液晶硬化層の面状を評価した。
  「良」:配向ムラがないか、配向ムラがわずかである。
  「不良」:配向ムラがある。
[0292]
 (消光の評価)
 2枚の直線偏光フィルムを用意し、クロスニコルとなるように重ねた。次いで、前記の直線偏光フィルムの間に液晶硬化フィルムを配置した。厚み方向の軸を中心に液晶硬化フィルムを回転させて、液晶硬化フィルムの向きを、消光位となるように調整した。ここで、消光位とは、一方の直線偏光フィルム、液晶硬化フィルム及び他方の直線偏光フィルムをこの順で厚み方向に透過する透過光の光量が最小となる液晶硬化フィルムの向きを表す。
[0293]
 この状態で前記の透過光を観察し、透過光が視認される現象としての「光抜け」を評価した。前記の実施例及び比較例において、光抜けは、通常、液晶硬化層に含まれる逆分散液晶性化合物の分子の配向方向のねじれのピッチが短すぎることにより、液晶硬化層を透過した直線偏光の偏光状態が乱れることによって、生じる。すなわち、光抜けは、液晶硬化層へ偏光が入射した場合に、液晶硬化層を透過する過程で偏光の一部が楕円偏光となったり偏光解消を生じたりして、その一部又は全部が直線偏光フィルムを透過して生じる。この光抜けを、下記の基準で評価した。
 「良」:光抜けがない。
 「可」:光抜けがわずかにある。
 「不良」:光抜けがある。
[0294]
[結果]
 前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。下記表において、略称の意味は、以下の通りである。
 Θ:液晶硬化層の実質最大傾斜角。
 LRe:液晶硬化層の面内レターデーション。
 CRe:液晶硬化層の旋光位相差。
 XRe:式(2)で定義されるパラメータ。
[0295]
[表1]


符号の説明

[0296]
 100 液晶層
 110 直線偏光子
 120 直線偏光子
 200 液晶硬化層
 300 液晶硬化層
 310 第一硬化層
 320 第二硬化層
 400 液晶硬化層

請求の範囲

[請求項1]
 液晶性化合物、及び、不斉炭素原子を含むキラル化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成され、配向状態を固定されていてもよい前記液晶性化合物の分子を含む液晶硬化層を備え、
 前記液晶硬化層に含まれる前記液晶性化合物の少なくとも一部の分子が、前記液晶硬化層の層平面に対して傾斜しており、
 測定波長550nmにおける前記液晶硬化層の正面直線偏光位相差LRe及び正面円偏光位相差CReが、下記式(1)を満たす、液晶硬化フィルム。
[数1]


[請求項2]
 測定波長550nmにおける前記液晶硬化層の正面円偏光位相差CReと前記液晶硬化層の厚みD[nm]との比CRe/Dが、0.0002以上0.0133以下である、請求項1に記載の液晶硬化フィルム。
[請求項3]
 前記液晶性化合物100重量部に対する前記キラル化合物の量が、0.05重量部以上0.5重量部以下である、請求項1又は2に記載の液晶硬化フィルム。
[請求項4]
 測定波長550nmにおける前記液晶硬化層の正面直線偏光位相差LReが、50nm以上90nm以下の範囲、又は、120nm以上160nm以下の範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルム。
[請求項5]
 前記液晶性化合物が、逆波長分散性の複屈折を発現できる、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルム。
[請求項6]
 前記液晶性化合物が、ベンゾチアゾール環を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルム。
[請求項7]
 請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶硬化フィルムの製造方法であって、
 前記液晶組成物の層を形成する工程と、
 前記液晶組成物の層に含まれる前記液晶性化合物を配向させる工程と、
 前記液晶組成物の層を硬化させて前記液晶硬化層を得る工程と、を含む、液晶硬化フィルムの製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]