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1. WO2020116344 - 渦電流式ダンパ

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明 細 書

発明の名称 渦電流式ダンパ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010   0011  

課題を解決するための手段

0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063  

産業上の利用可能性

0064  

符号の説明

0065  

請求の範囲

1   2  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 渦電流式ダンパ

技術分野

[0001]
 本発明は、渦電流式ダンパに関する。

背景技術

[0002]
 地震等による振動から建物を保護するために、建物には制振装置が取り付けられる。制振装置は建物に与えられた運動エネルギを熱エネルギ等の他のエネルギに変換することで、建物の揺れを抑制する。このような制振装置として、渦電流式ダンパが知られている。
[0003]
 渦電流式ダンパはたとえば、特公平5-86496号公報(特許文献1)に開示される。
[0004]
 特許文献1の渦電流式ダンパは、主筒に取り付けられた複数の永久磁石と、ねじ軸に接続されたヒステリシス材と、ねじ軸と噛み合うボールナットと、ボールナットに接続された副筒と、を備える。複数の永久磁石は、磁極の配置が交互に異なる。ヒステリシス材は、複数の永久磁石と対向し、相対回転可能である。この渦電流式ダンパに運動エネルギが与えられると、副筒及びボールナットが軸方向に往復移動し、ボールねじの作用によってヒステリシス材が回転する。これにより、ヒステリシス損が生じ、運動エネルギが消費される。また、ヒステリシス材に渦電流が発生するため、渦電流損により運動エネルギが消費されて、減衰力が得られる、と特許文献1には記載されている。
[0005]
 しかしながら、特許文献1の渦電流式ダンパでは、ボールナットの往復移動範囲の端においてヒステリシス材の回転方向が切り替わる。そのため、ボールナットが往復移動範囲の端に近づくにつれヒステリシス材の回転速度は低下し、発生する渦電流の強さが弱くなる。すなわち、特許文献1の渦電流式ダンパではその構造上、ボールナットの往復移動範囲の端近傍において渦電流による減衰力の低下が避けられない。
[0006]
 一方、建物に取り付けられるダンパとしては、渦電流式ダンパ以外にも粘性流体を用いた流体式ダンパが知られている。流体式ダンパでもピストンが往復移動することで減衰力が得られるため、ピストンの往復移動範囲の端近傍で減衰力は低下する。
[0007]
 この流体式ダンパの往復移動範囲の端近傍での減衰力の低下を改善する技術が、国際公開第2007/091399号(特許文献2)に開示されている。
[0008]
 特許文献2の流体式ダンパでは、シリンダ内に磁性流体が封入され、ピストンロッドが磁性部及び非磁性部から構成されている。ピストンロッドが往復移動範囲の中央近傍にある場合は通常の流体式ダンパ同様に磁性流体の粘性抵抗で減衰力を得る。一方、ピストンロッドが往復移動範囲の端近傍に近づくと、ピストンロッドの磁性部が磁場発生装置(磁石等)に近づくことにより、磁気回路が形成される。この磁気回路の磁場により磁性流体の粘性抵抗が高まるため、往復移動範囲の端近傍における減衰力を向上できる、と特許文献2には記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特公平5-86496号公報
特許文献2 : 国際公開第2007/091399号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
 しかしながら、特許文献2の技術は、流体式ダンパに関するものであり、渦電流式ダンパとは根本的に構造が異なる。そのため、特許文献2の技術を渦電流式ダンパに採用することは困難である。
[0011]
 本発明の目的は、ねじ軸の往復移動範囲の端近傍における減衰力を向上させる渦電流式ダンパを提供することである。

課題を解決するための手段

[0012]
 本発明の実施形態による渦電流式ダンパは、円筒形状の磁石保持部材と、複数の永久磁石と、円筒形状の導電部材と、ねじ軸と、ボールナットと、連結機構と、を含む。複数の永久磁石は、磁石保持部材に固定される。複数の永久磁石は、磁石保持部材の円周方向に沿って相互に隙間を空けて配置される。複数の永久磁石は、円周方向に沿って磁極の配置が交互に反転する。導電部材は、複数の永久磁石と磁石保持部材の径方向に隙間を空けて対向する。ねじ軸は、磁石保持部材の中心軸方向に沿って往復移動可能である。ボールナットは、ねじ軸と噛み合い、ねじ軸が移動することで複数の永久磁石と導電部材とを相対的に回転させる。連結機構は、磁石保持部材と導電部材とを繋ぎ、磁石保持部材と導電部材とを互いに逆方向に回転させる。

発明の効果

[0013]
 本発明の渦電流式ダンパによれば、ねじ軸の往復移動範囲の端近傍における減衰力を向上させることができる。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 図1は、第1実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。
[図2] 図2は、図1の一部拡大図である。
[図3] 図3は、図1中のIII-III線での断面図である。
[図4] 図4は、図3の一部拡大図である。
[図5] 図5は、図1中のV-V線での断面図である。
[図6] 図6は、第1実施形態の渦電流式ダンパの磁気回路を示す模式図である。
[図7] 図7は、渦電流式ダンパに正弦波の振動が加わった場合のねじ軸の変位、速度及び加速度を示す図である。
[図8] 図8は、第2実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図の一部拡大図である。

発明を実施するための形態

[0015]
 本実施形態の渦電流式ダンパは、円筒形状の磁石保持部材と、複数の永久磁石と、円筒形状の導電部材と、ねじ軸と、ボールナットと、連結機構と、を含む。複数の永久磁石は、磁石保持部材に固定される。複数の永久磁石は、磁石保持部材の円周方向に沿って相互に隙間を空けて配置される。複数の永久磁石は、円周方向に沿って磁極の配置が交互に反転する。導電部材は、複数の永久磁石と磁石保持部材の径方向に隙間を空けて対向する。ねじ軸は、磁石保持部材の中心軸方向に沿って往復移動可能である。ボールナットは、ねじ軸と噛み合い、ねじ軸が移動することで複数の永久磁石と導電部材とを相対的に回転させる。連結機構は、磁石保持部材と導電部材とを繋ぎ、磁石保持部材と導電部材とを互いに逆方向に回転させる。
[0016]
 このような構成の渦電流式ダンパによれば、渦電流式ダンパに振動が加わり、ねじ軸が軸方向に変位すると、ボールナットが回転する。ボールナットが回転することで磁石保持部材(又は導電部材)が回転し、永久磁石と導電部材とが相対的に回転する。加えて、連結機構の機能により、導電部材(又は磁石保持部材)が磁石保持部材(又は導電部材)の回転方向とは逆方向に回転する。これにより、永久磁石と導電部材との相対速度差を大きくすることができ、渦電流による減衰力を大きくすることができる。
[0017]
 また、磁石保持部材及び導電部材は加速度を持って回転するため、磁石保持部材及び導電部材にはそれぞれ慣性力が生じる。磁石保持部材及び導電部材の回転方向が反転するとき、すなわちねじ軸が往復移動範囲の端にあるとき、その慣性力は最大となって、連結機構及びボールナットを介してねじ軸に伝わり、ねじ軸の運動を妨げる抵抗力として働く。本実施形態の渦電流式ダンパでは磁石保持部材及び導電部材の双方が回転するため、慣性力は、磁石保持部材及び導電部材のいずれか一方が回転する渦電流式ダンパと比べて大きくなる。したがって、本実施形態の渦電流式ダンパでは、ねじ軸が往復移動範囲の端近傍にあるとき、慣性力による抵抗力を従来よりも大きく働かせることができる。その結果、ねじ軸の往復移動範囲の端近傍におけるねじ軸の運動に対する抵抗力を向上させることができる。
[0018]
 上記の渦電流式ダンパは次の構成であるのが好ましい。連結機構は、磁石保持部材に固定された第1歯車と、導電部材に固定された第2歯車と、第1歯車と第2歯車と噛み合う遊星歯車と、を含む。
[0019]
 以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[0020]
 [第1実施形態]
 図1は、第1実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図である。渦電流式ダンパ1は、磁石保持部材5と、複数の永久磁石6と、導電部材4と、ねじ軸2と、ボールナット3と、連結機構7と、を含む。なお、本明細書において「軸方向」とはねじ軸2の中心軸方向を意味し、ねじ軸2の中心軸は磁石保持部材5及び導電部材4の中心軸と一致する。また、本明細書において「径方向」とは磁石保持部材5及び導電部材4の半径方向を意味する。本明細書において「円周方向」とは磁石保持部材5及び導電部材4の円周方向を意味する。
[0021]
 [磁石保持部材]
 図2は、図1の一部拡大図である。磁石保持部材5は、内周面及び外周面を含む円筒形状である。内周面の内側にはねじ軸2の一部及びボールナット3の一部が収容される。外周面には複数の永久磁石6が固定される。つまり、磁石保持部材5は、複数の永久磁石6を保持する。永久磁石6からの磁束を外部に漏れにくくするため、磁石保持部材5の材質は炭素鋼、鋳鉄等の磁性体であるのが好ましい。この場合、磁石保持部材5はヨークとしての役割を果たす。
[0022]
 磁石保持部材5の一方の端部は、後述する第1歯車7Aを介してボールナット3のフランジ部に固定される。したがって、ボールナット3が回転すると、それに伴って磁石保持部材5も回転する。磁石保持部材5の他方の端部は自由端となっており、スラスト軸受24を介してハウジング8に支持されている。
[0023]
 [永久磁石]
 図3は、図1中のIII-III線での断面図である。図3では、磁石保持部材5、複数の永久磁石6及び導電部材4のみ図示し、他の構成の図示は省略している。複数の永久磁石6は、磁石保持部材5の外周面に固定される。複数の永久磁石6は、磁石保持部材5の円周方向に配列され、相互に隣接する2つの永久磁石6の間には隙間が設けられる。
[0024]
 図4は、図3の一部拡大図である。複数の永久磁石6は、径方向において導電部材4の内周面と隙間を空けて対向する。隙間の大きさは、永久磁石6からの磁束を導電部材4に効率的に到達させるため、可能な限り小さいほうが好ましい。また、各永久磁石6と導電部材4の内周面との距離は一定であるのが好ましい。
[0025]
 複数の永久磁石6は、磁石保持部材5の円周方向に沿って磁極の配置を交互に反転して配列される。別の言葉で言えば、磁石保持部材5の円周方向において隣接する永久磁石6同士は互いに磁極の配置が反転する。なお、図4では、永久磁石6の磁極の配置が導電部材4の径方向である場合を示すが、磁極の配置はこれに限られない。例えば永久磁石6の磁極の配置が磁石保持部材5の軸方向(すなわちねじ軸の軸方向)であってもよい。
[0026]
 [導電部材]
 図1を参照して、導電部材4は円筒形状である。導電部材4の内部(円筒の内部空間)には、ねじ軸2の一部、ボールナット3の一部、磁石保持部材5及び永久磁石6が収容される。つまり、導電部材4は磁石保持部材5の外側に配置される。別の観点では、導電部材4は磁石保持部材5と同心状に配置される。導電部材4は磁石保持部材5を包囲する。永久磁石6が形成する磁場によって渦電流を発生させるため、導電部材4の材質は鋼等の導電性を有する材料である。
[0027]
 図2を参照して、導電部材4の一方の端部は自由端となっており、後述する第2歯車7B、スラスト軸受24、及び歯車固定部材7Dを介してハウジング8に支持されている。導電部材4の他方の端部は自由端となっており、スラスト軸受24を介してハウジング8に支持されている。
[0028]
 [ねじ軸]
 図1を参照して、ねじ軸2は、直線状に延びる部材であり、外周面にはねじ部が形成されている。ねじ軸2は、建物に取り付けられた取付具22に固定される。建物が揺れるとその振動は、取付具22を介してねじ軸2に伝達される。これにより、ねじ軸2が軸方向に変位し、振動に同期して往復移動する。
[0029]
 図1では、ねじ軸2が往復移動中央位置にある状態を示す。往復移動中央位置とは、ねじ軸2の軸方向に沿った往復移動範囲の中央を意味する。渦電流式ダンパ1は、ねじ軸2を往復移動中央位置にした状態で、建物に取り付けられる。
[0030]
 [ボールナット]
 ボールナット3は、ねじ軸2とともにボールねじを構成する。ねじ軸2が軸方向に変位するとボールナット3は回転する。すなわち、ボールナット3はねじ軸2の並進運動を回転運動に変換する。
[0031]
 ボールナット3は、貫通孔と、フランジ部とを含む。貫通孔にはねじ軸2が通される。貫通孔の内周面には、ねじ軸2のねじ部と噛み合うねじ部が形成されている。フランジ部は、軸方向から見て、中空の円板形状(リング形状)である。
[0032]
 [連結機構]
 図2を参照して、連結機構7は、第1歯車7Aと、第2歯車7Bと、遊星歯車7Cと、を含む。第1歯車7A及び第2歯車7Bはいずれもリング形状であり、相互に同心状に配置される。本実施形態では、第2歯車7Bが固定された導電部材4は、第1歯車7Aが固定された磁石保持部材5の外側に配置されている。このため、第2歯車7Bは第1歯車7Aを包囲する。
[0033]
 図5は、図1中のV-V線での断面図である。図5では、連結機構7のみ図示し、他の構成の図示は省略している。第1歯車7Aはリング形状であり、外周面に歯が形成されている。つまり、第1歯車7Aは外歯歯車である。第1歯車7Aの歯の種類は特に限定されない。第1歯車7Aは、たとえば平歯、はす歯等である。第2歯車7Bはリング形状であり、内周面に歯が形成されている。つまり、第2歯車7Bは内歯歯車である。第2歯車7Bの歯の種類は特に限定されないが、第1歯車7Aの歯と同じ種類である。第2歯車7Bの内周面の直径は、第1歯車7Aの外周面の直径よりも大きい。遊星歯車7Cは、第1歯車7A及び第2歯車7Bと噛み合う。すなわち、遊星歯車7Cは、径方向において第1歯車7Aと第2歯車7Bとの間に配置される。連結機構7は、遊星歯車7Cを2つ以上含んでもよい。この場合、複数の遊星歯車7Cは円周方向に沿って等間隔に配置されるのが好ましい。
[0034]
 図2を参照して、第1歯車7Aは、磁石保持部材5の一方の端部とボールナット3のフランジ部との間に配置される。第1歯車7Aは、磁石保持部材5及びボールナット3の双方に固定される。固定方法は特に限定されないが、たとえばボルトによる締結、接着剤による接着等である。第1歯車7Aはボールナット3と同期して回転し、これに伴い磁石保持部材5もボールナット3と同期して回転する。
[0035]
 第2歯車7Bは、導電部材4の一方の端部とスラスト軸受24との間に配置される。第2歯車7Bは、導電部材4及びスラスト軸受24の双方に固定される。スラスト軸受24は歯車固定部材7Dを介してハウジング8に支持されている。第2歯車7Bはハウジング8に対して回転することができる。第2歯車7Bの回転に伴い導電部材4も第2歯車7Bと同期して回転することができる。
[0036]
 遊星歯車7C、第1歯車7A及び第2歯車7Bは、軸方向において相互に噛み合うことが可能な位置に配置され、好ましくは軸方向において同じ位置に配置される。
[0037]
 連結機構7はさらに、歯車固定部材7Dを含んでもよい。歯車固定部材7Dは、ハウジング8に固定される。歯車固定部材7Dは、遊星歯車7Cを回転可能に支持し、遊星歯車7Cの軸方向、径方向及び円周方向への移動を制限する。このような歯車固定部材7Dを設けることで、遊星歯車7Cが安定して第1歯車7A及び第2歯車7Bと噛み合うことができる。
[0038]
 連結機構7は、歯車固定部材7Dを複数含んでもよい。すなわち、遊星歯車7Cが複数設けられる場合、1つの歯車固定部材7Dが1つの遊星歯車7Cを支持してもよい。しかしながら、歯車固定部材7Dの数は1つでもよく、1つの歯車固定部材7Dが複数の遊星歯車7Cを支持してもよい。
[0039]
 このような構成の第1実施形態の渦電流式ダンパに振動が加わった場合の動作について説明する。
[0040]
 建物に振動が加わると、その振動は取付具22に伝わり、ねじ軸2が軸方向に変位する。ねじ軸2が変位すると、ボールねじの作用によりボールナット3、第1歯車7A、磁石保持部材5及び複数の永久磁石6が同一方向に回転する。第1歯車7Aが回転することで、第1歯車7Aと噛み合っている遊星歯車7Cが回転し、遊星歯車7Cと噛み合っている第2歯車7Bが回転する。
[0041]
 ここで、遊星歯車7Cの機能により、第2歯車7Bの回転方向は、第1歯車7Aの回転方向とは逆方向になる。第2歯車7Bには導電部材4が固定されているため、導電部材4も第1歯車7Aとは逆方向に回転する。すなわち、第1実施形態の渦電流式ダンパでは、振動が加わったとき、導電部材4と複数の永久磁石6(磁石保持部材5)とが互いに逆方向に回転する。
[0042]
 続いて、このような動作をする第1実施形態の渦電流式ダンパの減衰力について説明する。第1実施形態の渦電流式ダンパの減衰力としては、渦電流による減衰力と、慣性力による抵抗力とがある。
[0043]
 [渦電流による減衰力]
 図6は、第1実施形態の渦電流式ダンパの磁気回路を示す模式図である。複数の永久磁石6は、隣接する永久磁石6同士で磁極が反転している。そのため、ある永久磁石6のN極から出た磁束は、磁石保持部材5を通り、隣接する永久磁石6のS極に到達する。この永久磁石6のN極から出た磁束は、導電部材4を通り、永久磁石6のS極に到達する。すなわち、隣接する2つの永久磁石6、磁石保持部材5及び導電部材4によって磁気回路が形成される。
[0044]
 渦電流式ダンパに振動が加えられて、複数の永久磁石6と導電部材4が相対的に回転すると、導電部材4の内周面を通過する磁束が変化し、導電部材4に渦電流が発生する。渦電流が発生すると、新たな磁束(反磁界)が生じる。この反磁界は、導電部材4の回転を妨げる方向に働く。導電部材4は連結機構7を介して磁石保持部材5と連動して回転するため、導電部材4の回転が妨げられると、磁石保持部材5の回転(すなわちボールナット3の回転)が妨げられる。ボールナット3の回転が妨げられると、ねじ軸2の軸方向への運動も妨げられ、振動が減衰する。これが渦電流による減衰力となる。
[0045]
 渦電流による減衰力の強さは、複数の永久磁石6と導電部材4との相対的な回転速度差に依存する。この点、第1実施形態の渦電流式ダンパでは、複数の永久磁石6(磁石保持部材5)と導電部材4とは互いに逆方向に回転するため、複数の永久磁石6及び導電部材4のいずれか一方のみが回転する場合に比べて、複数の永久磁石6と導電部材4との相対的な速度差を大きくすることができる。
[0046]
 要するに、第1実施形態の渦電流式ダンパによれば、従来とボールナット3の回転速度が同じであっても、より大きな渦電流による減衰力を得ることができる。続いて、慣性力による抵抗力について説明する。
[0047]
 [慣性力による抵抗力]
 図1を参照して、上述したように第1実施形態の渦電流式ダンパでは、渦電流式ダンパに振動が加わると、振動に同期してねじ軸2が軸方向に沿って往復移動し、上述した渦電流による減衰力が働く。
[0048]
 しかしながら、渦電流による減衰力は、常に一定ではなく、往復移動中央位置からのねじ軸2の変位(ねじ軸2の軸方向の速度)に応じて変動する。
[0049]
 図7は、渦電流式ダンパに正弦波の振動が加わった場合のねじ軸の変位、速度及び加速度を示す図である。図7では、ねじ軸の往復移動中央位置を位相0としている。ねじ軸の変位及び速度のグラフを見ると、ねじ軸の変位が往復移動中央位置から往復移動範囲の端(π/2)に近づくにつれ、ねじ軸の速度は低下し、往復移動範囲の端では速度は0となる。その後、ねじ軸は移動の向きを変える。ねじ軸の変位が往復移動の端から往復移動中央位置(π)に向かうにつれ、ねじ軸の速度は増加し、往復移動中央位置で最大となる。ねじ軸の速度は導電部材に発生する渦電流の強さに比例する。このため、渦電流による減衰力は、ねじ軸の往復移動中央位置で最大となり、往復移動範囲の端に近づくにつれ弱くなり、往復移動範囲の端では0となる。
[0050]
 一方、ねじ軸の変位及び加速度のグラフを見ると、ねじ軸の変位が往復移動中央位置から往復移動範囲の端(π/2)に近づくにつれ、ねじ軸の加速度は増加し、往復移動範囲の端では最大となる。この点は、連結機構及びボールナットを介してねじ軸と連動する磁石保持部材及び導電部材の回転方向の加速度についても同じである。つまり、ねじ軸が往復移動範囲の端にあるとき、磁石保持部材及び導電部材の回転方向の加速度は最大となる。
[0051]
 ここで、物体が加速すると、加速度の向きと反対方向に慣性力が働くことは周知のとおりである。この点を磁石保持部材及び導電部材について見ると、ねじ軸が往復移動範囲の端にあるとき磁石保持部材及び導電部材の加速度は最大となるため、磁石保持部材及び導電部材の慣性力も最大となる。そして、磁石保持部材及び導電部材の慣性力は連結機構及びボールナットを介してねじ軸に伝わり、その向きはねじ軸が往復移動中央位置に向かうことを妨げる方向となる。つまり、磁石保持部材及び導電部材の慣性力により、ねじ軸の軸方向への運動が妨げられ、ねじ軸の移動量が低減される。
[0052]
 図1を参照して、第1実施形態の渦電流式ダンパ1では、磁石保持部材5及び導電部材4が互いに逆方向に回転する。そのため、第1実施形態の渦電流式ダンパ1に生じる慣性力によるねじ軸2の運動に対する抵抗力は、磁石保持部材5及び導電部材4のいずれか一方のみが回転する渦電流式ダンパ1に生じる慣性力による抵抗力よりも大きくなる。さらに、磁石保持部材5及び導電部材4の慣性力の大きさは、磁石保持部材5及び導電部材4の径方向の大きさに依存する。この点、第1実施形態の渦電流式ダンパ1では、導電部材4が磁石保持部材5の径方向外側に配置されるため径方向に大きい。したがって、導電部材4の慣性力の大きさをより大きくすることができ、慣性力によるねじ軸2の運動に対する抵抗力をさらに大きくすることができる。
[0053]
 要するに、第1実施形態の渦電流式ダンパ1では、導電部材4と磁石保持部材5(永久磁石6)とが互いに逆方向に回転するため、導電部材4と永久磁石6との相対速度差を大きくすることができ、渦電流による減衰力を大きくすることができる。また、渦電流による減衰力は、ねじ軸2が往復移動範囲の端に近づくにつれ弱くなるが、これを導電部材4及び磁石保持部材5の双方の慣性力によるねじ軸2の運動に対する抵抗力によって補うことができる。
[0054]
 特に、建物に甚大な被害を与え得る長周期振動は振幅(ねじ軸2の変位量)が大きくなる傾向にあるため、このような大振幅の振動の減衰に第1実施形態の渦電流式ダンパは有効である。
[0055]
 また、第1実施形態の渦電流式ダンパ1では、ボールナット3が導電部材4及び磁石保持部材5の内部に配置され、軸方向に移動しないように構成されている。このような構成により、渦電流式ダンパにボールナット3の軸方向への可動範囲を設ける必要がなく、渦電流式ダンパを小型にすることができる。
[0056]
 以上、第1実施形態の渦電流式ダンパについて説明した。しかしながら、本発明の渦電流式ダンパは、上述の第1実施形態に限られず、次のような実施形態とすることもできる。
[0057]
 [第2実施形態]
 第2実施形態の渦電流式ダンパについて説明する。
[0058]
 図8は、第2実施形態の渦電流式ダンパの軸方向に沿った面での断面図の一部拡大図である。第2実施形態の渦電流式ダンパは、磁石保持部材5と導電部材4との配置関係が逆になっている点で第1実施形態の渦電流式ダンパと相違する。また、第1歯車7Aと第2歯車7Bとの配置関係が逆になっている点でも第1実施形態の渦電流式ダンパと相違する。つまり、第2実施形態では、第1歯車7Aが固定された磁石保持部材5は、第2歯車7Bが固定された導電部材4の外側に配置されている。この場合、第1歯車7Aは内歯歯車であり、第2歯車7Bは外歯歯車である。第2実施形態の渦電流式ダンパのその他の構成は、第1実施形態の渦電流式ダンパと同じであるので詳細な説明は省略する。
[0059]
 このような第2実施形態の渦電流式ダンパでも、磁石保持部材5(永久磁石6)と導電部材4とが互いに逆方向に回転するため、第1実施形態の渦電流式ダンパと同様の効果が得られる。
[0060]
 もっとも、上記した通り、渦電流式ダンパに振動が加えられて、永久磁石6と導電部材4が相対的に回転すると、導電部材4には渦電流が発生する。このとき、ジュール熱により導電部材4は温度上昇して熱膨張する。第1実施形態では、第2歯車7Bが固定された導電部材4は、第1歯車7Aが固定された磁石保持部材5の外側に配置されている。つまり、第2歯車7Bが遊星歯車7Cの外側に配置されている。この場合、導電部材4が熱膨張すると、第2歯車7Bと遊星歯車7Cとの間のバックラッシが大きくなる。これに対して、第2実施形態では、第2歯車7Bが固定された導電部材4は、第1歯車7Aが固定された磁石保持部材5の内側に配置されている。つまり、第2歯車7Bが遊星歯車7Cの内側に配置されている。この場合、導電部材4が熱膨張すると、第2歯車7Bと遊星歯車7Cとの間のバックラッシが小さくなる。第2歯車7Bと遊星歯車7Cとの間のバックラッシが小さくなれば、遊星歯車7Cの円滑な回転が阻害されるおそれがある。したがって、遊星歯車7Cの円滑な回転を確保する観点から、第2実施形態よりも第1実施形態のほうが優れる。
[0061]
 相互に噛み合う第2歯車7B及び遊星歯車7Cの歯形は、インボリュート歯形とすることが好ましい。インボリュート歯形同士の噛み合いであれば、バックラッシが変動した場合でも一定の回転速度で噛み合うことができる。つまり、導電部材4が熱膨張した場合であっても、永久磁石6と導電部材4の相対的な回転速度を維持できる。遊星歯車7Cの歯形をインボリュート歯形とした場合、遊星歯車7Cと噛み合う第1歯車7Aもインボリュート歯形とすることが好ましい。
[0062]
 以上、本実施形態の渦電流式ダンパについて説明した。その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
[0063]
 たとえば、第1実施形態及び第2実施形態の渦電流式ダンパにおいて、ボールナット3を磁石保持部材5ではなく、導電部材4に固定してもよい。

産業上の利用可能性

[0064]
 本発明の渦電流式ダンパは、建物の制振装置及び免振装置に有用である。

符号の説明

[0065]
  1:渦電流式ダンパ
  2:ねじ軸
  3:ボールナット
  4:導電部材
  5:磁石保持部材
  6:永久磁石
  7:連結機構
  7A:第1歯車
  7B:第2歯車
  7C:遊星歯車
  7D:歯車固定部材
  8:ハウジング
  22:取付具
  24:スラスト軸受

請求の範囲

[請求項1]
 円筒形状の磁石保持部材と、
 前記磁石保持部材に固定され、前記磁石保持部材の円周方向に沿って相互に隙間を空けて配置され、前記円周方向に沿って磁極の配置が交互に反転する複数の永久磁石と、
 前記複数の永久磁石と前記磁石保持部材の径方向に隙間を空けて対向する円筒形状の導電部材と、
 前記磁石保持部材の中心軸方向に沿って往復移動可能なねじ軸と、
 前記ねじ軸と噛み合い、前記ねじ軸が移動することで前記複数の永久磁石と前記導電部材とを相対的に回転させるボールナットと、
 前記磁石保持部材と前記導電部材とを繋ぎ、前記磁石保持部材と前記導電部材とを互いに逆方向に回転させる連結機構と、を備える、渦電流式ダンパ。
[請求項2]
 請求項1に記載の渦電流式ダンパであって、
 前記連結機構は、
 前記磁石保持部材に固定された第1歯車と、
 前記導電部材に固定された第2歯車と、
 前記第1歯車と前記第2歯車と噛み合う遊星歯車と、を含む、渦電流式ダンパ。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]