処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2020116218 - 複列円すいころ軸受

Document

明 細 書

発明の名称 複列円すいころ軸受

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024  

発明の効果

0025  

図面の簡単な説明

0026  

発明を実施するための形態

0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066  

符号の説明

0067  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

明 細 書

発明の名称 : 複列円すいころ軸受

技術分野

[0001]
 本発明は、複列円すいころ軸受に関する。

背景技術

[0002]
 鉄道車両の車軸などを支持する転がり軸受として、内輪と外輪の間を密封するシール部材を備える複列円すいころ軸受が知られている(特許文献1参照)。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2015-218878号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 複列円すいころ軸受を備える鉄道車両などにおいては、主電動機の電流を車輪からレールへ接地する接地用集電装置が不完全な場合に、主電動機の電流が軸受の内外輪及び円すいころを通って、車輪とレール間に流れることがある。このとき、円すいころと外輪軌道面との間又は内輪軌道面との間で放電が生じ、放電部分に電食が発生する。
[0005]
 そこで、本発明は、電食を防止できる複列円すいころ軸受を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 前記課題を解決するためになされた本発明は、外周に軌道面を有する内輪と、内周に軌道面を有する外輪と、内輪の軌道面と外輪の軌道面の間に介在する複列の円すいころと、内輪と外輪の間の軸受内部空間を軸方向両側で密封するシール部材とを備え、外輪は、シール部材の端面と軸方向で当接可能のシール規制面を有し、外輪の外周面から幅面に渡って絶縁被膜が設けられている複列円すいころ軸受である。
[0007]
 このように、本発明に係る複列円すいころ軸受においては、シール部材を外輪のシール規制面に当接させて軸方向の位置決めを行いつつ、外輪の外周面から幅面に渡って絶縁被膜が設けられていることで、絶縁性を確保して電食を防止することができる。
[0008]
 ところで、外輪の外周面から両幅面に至る全域にセラミックス等を溶射することで絶縁被膜を形成する現状の溶射技術では、溶射後に形成される絶縁被膜の膜厚のばらつきが大きいため、絶縁被膜の表面を研削して最終仕上げ寸法に仕上げる必要がある。その一方で、研削時の削り代が大きすぎると膜厚不足となり、必要な絶縁性を確保できない。そのため、絶縁被膜の形成後には、その膜厚管理が必要とされる。
[0009]
 絶縁被膜の膜厚を測定する方法として、特開2009-24883号公報に記載のものが知られている。これは、図5に示すように、外輪100の幅面101の内周縁部に環状の段部103を設け、この段部の内面104を膜厚測定の基準面とするものである。具体的には、先ず、絶縁被膜の形成前に、基準面104と反基準面側の幅面102との間の幅寸法Aを測定する。次いで、絶縁被膜105を形成し、その後、基準面104と反基準面側の幅面102を覆う絶縁被膜の表面との間の幅寸法Bを測定し、反基準面側の幅面102に形成した絶縁被膜105の取り代を決定する。次に、基準面104をバッキングプレートに当てながら反基準面側の幅面102を覆う絶縁被膜105を機械加工し、その後、目標寸法である幅仕上げ寸法と、外輪100の絶縁被膜を含む全幅寸法Cとから、もう一方の絶縁被膜の取り代を決定する。その後、幅面102を覆う加工済みの絶縁被膜105の表面を基準とし、幅仕上げ寸法の許容範囲内に入るように、逆側幅面を加工する。
[0010]
 この膜厚管理法では、外輪100の幅面101の内周縁部に、基準面104を形成するための環状の段部103を設ける必要がある。しかしながら、外輪の幅面101の径方向寸法が短い場合には、基準面を設けることができず、膜厚測定を行うことが困難となる。
[0011]
 他の膜厚測定法として、電磁波を照射して膜厚を測定する膜厚計を使用することも考えられるが、外輪の幅面の径方向寸法が短い場合には、膜厚計のプローブが幅面からはみ出でしまい、同様に、膜厚測定が困難となる。
[0012]
 そこで、軸受サイズを大型化することなく、膜厚測定のための基準面を確保できるようにするために、前記シール規制面を研削面とすることが好ましい。
[0013]
 シール規制面が、高い表面精度を有する研削面で形成されることで、シール規制面を膜厚測定時の基準面として利用することができる。また、このシール規制面は、シール部材を外輪に取り付ける際の取り付け部付近に存在する既設面であり、このシール規制面を基準面として用いる際には、新たに基準面を設ける必要がない。そのため、外輪の幅面の半径方向寸法が小さい場合にも、精度良く膜厚を測定することが可能となる。
[0014]
 シール規制面が焼入れ鋼切削で形成された面であっても、当該面が高い表面精度を有するため、シール規制面を膜厚測定時の基準面として用いることができる。従って、上記と同様の作用効果を得ることができる。
[0015]
 また、外輪が、シール部材の外周面と嵌合するシール嵌合面と、シール嵌合面と軌道面との間に設けられ、シール部材の外周面に設けたビードと係合して、シール部材の軸方向の抜け止めを行うビード溝を有する構成の場合、シール規制面の表面粗さを、ビード溝の表面粗さよりも小さくしてもよい。
[0016]
 かかる構成によっても、シール規制面が高い表面精度を有するため、シール規制面を膜厚測定時の基準面として用いることができ、上記と同様の作用効果を得ることができる。
[0017]
 図12は、外輪200の表面に絶縁被膜300が設けられた従来の転がり軸受(玉軸受)の断面図である。
[0018]
 図12に示す転がり軸受は、鉄道車両の車軸を支持する転がり軸受である。この種の転がり軸受においては、外輪200が軸方向に移動しないように軸箱などのハウジング400によって固定される。ここで、確実に外輪200を固定するには、図12に示すように、ハウジング400の肩高さhを大きくし、ハウジング400と外輪200との接触面積を大きく確保する必要がある。しかしながら、このように、ハウジング400の肩高さhを大きくすると、ハウジング400と外輪200(非絶縁部)との間の沿面距離αが絶縁被膜300の厚みδ分だけとなるため(α=δ)、ハウジング400と外輪200との間に一定以上の電位差が生じた場合に、絶縁被膜300の端部に沿って沿面放電が生じ、電食が発生する虞がある。
[0019]
 斯かる沿面放電の問題を解決するため、特開2007-205555号公報では、図13に示すように、外輪200の角部に面取り部200aを形成し、面取り部200aを絶縁被膜300で被覆する構成が提案されている。この場合、ハウジングと外輪(非絶縁部)との間の沿面距離αが、面取り部200aの軸方向長さγ分だけ増加するので(α=δ+γ)、軸受の絶縁性能を向上させることができる。なお、本明細書中での「沿面距離」とは、2つの導体間に挟まれた絶縁被膜(絶縁部材)の表面に沿った最小距離を言う。
[0020]
 しかしながら、図13に示すような絶縁被膜300を有する面取り部200aがあると、外輪と内輪の間にシール部材を装着する際にシール部材が面取り部200aの絶縁被膜300に接触することで、絶縁被膜300が損傷する虞がある。
[0021]
 特に、鉄道車両の車軸を支持する転がり軸受においては、耐環境性と強度を確保するために、シール部材として樹脂製のものを用いることができないため(金属製の芯金を有する剛性の高いシール部材を使用する必要があるため)、シール部材が絶縁被膜に接触した際に、絶縁被膜が損傷する可能性が大きくなる。
[0022]
 そこで、このようなシール部材の装着に伴う絶縁被膜の損傷を防止し、絶縁性能の向上を図るため、外輪の幅面と内周面との間に、外輪の幅面よりも軸方向内側に傾斜する第1面取り部を設けると共に、第1面取り部の軸方向内側に、外輪の幅面に対して第1面取り部よりも軸方向内側に大きく傾斜する第2面取り部を設け、第1面取り部の表面に絶縁被膜が設けられ、第2面取り部の表面に絶縁被膜は設けられていないようにすることが好ましい。
[0023]
 このように、外輪の端面と内周面との間に、絶縁被膜を有する第1面取り部と、絶縁被膜を有しない第2面取り部とを設けることで、第1面取り部の絶縁被膜を損傷させることなく、シール部材を軸受内に容易に装着することができる。すなわち、シール部材を軸受内に装着する際、シール部材の外周面を第2面取り部に接触させて案内することで、シール部材を軸受内に容易に装着することができる。このとき、シール部材が第2面取り部に接触しても、第2面取り部には絶縁被膜が設けられていないので、シール部材の接触による絶縁被膜の損傷の虞はない。一方、第1面取り部には絶縁被膜が設けられていることで、第1面取り部が外輪の端面よりも軸方向内側に傾斜している分、沿面距離が長くなり、絶縁性能を向上させることができる。また、沿面距離が長くなることで、外輪を固定するハウジングを外輪の端面に対して広い範囲に渡って(外輪の内周面に近い位置にまで)接触させることができるようになり、転がり軸受の軸方向移動を確実に規制して位置決めできるようになる。
[0024]
 本発明に係る複列円すいころ軸受は、例えば、鉄道車両の車軸を支持する鉄道車両車軸用軸受に用いることが可能である。

発明の効果

[0025]
 本発明によれば、シール部材を外輪のシール規制面に当接させて軸方向の位置決めを行いつつ、絶縁性を確保して電食を防止することができる。

図面の簡単な説明

[0026]
[図1] 鉄道車両車軸用軸受として用いた電食防止転がり軸受を示す断面図である。
[図2] 図1の右側のシール部材の取り付け部周辺を拡大して示す断図である。
[図3] 本実施形態に係る膜厚の測定工程を示す断面図である。
[図4] 本実施形態に係る膜厚の測定工程を示す断面図である。
[図5] 従来の膜厚測定工程を示す断面図である。
[図6] 本発明の他の実施形態に係る車軸用軸受装置の断面図である。
[図7] 転がり軸受の一端部側を拡大して示す断面図である。
[図8] 外輪の端部を拡大して示す断面図である。
[図9] 比較例に係る外輪の端部を拡大して示す断面図である。
[図10] 本発明の構成を内輪に適用した例を示す断面図である。
[図11] 内輪の端部を拡大して示す断面図である。
[図12] 外輪の表面に絶縁被膜が設けられた従来の転がり軸受の断面図である。
[図13] 絶縁被膜を有する面取り部が設けられた従来の転がり軸受の断面図である。

発明を実施するための形態

[0027]
 以下、本発明に係る電食防止転がり軸受の実施形態を、図1~4に基づいて説明する。
[0028]
 図1は、本発明にかかる電食防止転がり軸受の一実施形態を示す断面図である。この実施形態の電食防止転がり軸受1は、いわゆる密封形複列転がり軸受であり、例えば鉄道車両の車軸の支持に用いられる。
[0029]
 この電食防止転がり軸受は、外周面に軌道面4aを有する内輪4と、内周面に軌道面5aを有する外輪5と、内輪4の軌道面4aと外輪5の軌道面5aとの間に介在させた転動体6と、転動体6を円周方向等間隔に保持する保持器7と、内輪4と外輪5の間の環状空間(軸受内部空間)を軸方向両側で密封するシール装置8とを主要な要素として構成される。本実施形態では、転動体6として円すいころを使用した、密封形複列円すいころ軸受を例示している。
[0030]
 内輪4として、軸方向に離間した一対が使用される。各内輪4の外周面に軌道面4aが形成されている。外輪5は、内周面に複列(2列)の軌道面5aが形成されたいわゆる複列外輪である。各列の内輪4の軌道面4aと外輪5の軌道面5aとの間にそれぞれ複数の転動体6が配置され、これにより、列毎に複数の転動体6を備えた二列のころ列が軸方向に離間して形成される。内輪4は車軸2の外周に圧入固定され、外輪5は図示しないハウジングの内周に嵌合固定される。
[0031]
 シール装置8は、外輪5に取り付けられる、シール部材としてのシールケース81と、シールケース81の内周に取付けたオイルシール82とで構成される。オイルシール82は、弾性材料からなるシールリップ82aを有する。転がり軸受を間に挟んで車軸2の外周に嵌合した油切り9および後蓋10の外周面に、各オイルシール82のシールリップ82aを接触させることにより、接触式シールが構成され、そのため、軸受内部空間に封入されたグリースの漏洩や軸受内部空間への異物(塵埃、雨水等)の侵入を防止することが可能となる。
[0032]
 図2に、図1の右側のシール装置8の取り付け部付近の構造を拡大して示す。
 図2に示すように、シールケース81は、その外径側の先端に円筒状の嵌合部81aを備えている。嵌合部81aの先端の外周面には、外径方向に突出するビード81a1が環状に設けられている。外輪5の両端部の内周面には、円筒面状のシール嵌合面5bが形成される。このシール嵌合面5bは、外輪5の軌道面5aの外端(軌道面5aのうち外輪端部側の端部)の内径寸法よりも大径に形成されている。外輪5の軌道面5aとシール嵌合面5bとの間には、溝底面をシール嵌合面5bよりも大径にしたビード溝5cと、シールケース81の嵌合部81aの先端面81a2と軸方向で当接可能となるように半径方向に延びたシール規制面5dとが形成される。シール規制面5dは、例えばビード溝5cの軸方向両側の壁面のうち、軌道面5a側の壁面を内径側に延ばすことで形成される。シール規制面5dの内径端部は、外輪5の軌道面5aの外端と交わっている。
[0033]
 シール装置8は、外輪5のシール嵌合面5bにシールケース81の嵌合部81aを圧入することで外輪5に取り付けられる。圧入に伴い、ビード81a1とシール嵌合面5bの干渉によりシールケース81の嵌合部81aが縮径方向に弾性変形する。ビード81a1がビード溝5cと対向すると同時に嵌合部81aが拡径方向に弾性的に復帰し、ビード81aがビード溝5cに収容される。ビード81a1とビード溝5cとの軸方向の係合によりシールケース81の抜け止めがなされ、嵌合部81aの先端面81a2がシール規制面5dと当接することにより、シールケース81の押し込み方向への移動が規制される。これにより、シールケース81、延いてはシール装置8の軸方向の位置決めがなされる。
[0034]
 外輪5の製作工程では、外輪5のシール嵌合面5b、ビード溝5c、およびシール規制面5dが切削により形成される。この切削後に熱処理を行い、その後、外輪5のシール嵌合面5bおよびシール規制面5dが研削により仕上げられる。これにより外輪5のシール嵌合面5bおよびシール規制面5dが、表面に研削痕の残る研削面となる。また、ビード溝5cの表面は、熱処理後に後加工を行っていない未加工面となる(ビード溝5cの表面には切削痕が残っている)。研削面の表面精度は切削面(切削で仕上げられた面)の表面精度よりも良好であるため、シール嵌合面5bおよびシール規制面5dの表面粗さは、ビード溝5cの表面粗さよりも小さくなる。ここでの表面粗さの大小は、例えば、JIS B0031で定義される算術平均粗さRaで評価することができる。
[0035]
 この他、外輪5の少なくともシール規制面5dを焼入れ鋼切削により形成し、当該切削だけでシール規制面5dの加工を終了してもよい(切削後の研削は行わない)。焼入れ鋼切削は、鋼材の焼入れ後に切削を行う工程であり、機械部品の一般的な製造工程(切削→熱処理→研削)で得られる研削面に匹敵する高い表面精度が得られる。なお、シール規制面5dだけでなく、シール嵌合面5b、さらにはビード溝5cも焼入れ鋼切削で形成しても構わない。
[0036]
 このようにシール規制面5dを研削面あるいは焼入れ鋼切削で形成された面とすることで、後で述べる膜厚測定工程において、シール規制面5dを測定基準面として用いることが可能となる。既存の密封形複列転がり軸受において、シール規制面5dは、シール装置8の軸方向の位置決めを行う面にすぎず、特に精度が必要とされる面ではない。そのため、既存品のシール規制面5dは、精度の低い切削面のままで放置されるのが通例である。本実施形態は、このシール規制面5dを、研削あるいは焼入れ鋼切削等により高精度に加工した点で、既存の密封形複列転がり軸受と異なる。
[0037]
 なお、シール規制面5dは、その表面粗さ(例えば算術平均粗さRa)が1.6μm以下となるように仕上げるのが好ましい。
[0038]
 外輪5の外周面5e、軸方向両側の幅面5f、および、幅面5fの内径側に位置する内径チャンファ5g(幅面5fとシール嵌合面5bの間のチャンファ)は、何れも連続した絶縁被膜3で覆われる。この絶縁被膜3は、セラミックス等を溶射する公知の手法により形成される。外輪5の内周側に設けられた軌道面5a、シール嵌合面5b、ビード溝5cの表面、およびシール規制面5dには絶縁被膜3は形成されておらず、母材となる鋼材が露出している。
[0039]
 以上に述べた絶縁被膜3を有する密封形複列転がり軸受の製造工程では、外輪5のシール規制面5dを測定基準として、両幅面5fを覆う絶縁被膜3の膜厚の測定が行われる。膜厚測定は、図3に示すように、外輪5を、その軸方向を垂直方向に向け、かつ測定する幅面5fを上に向けた姿勢で載置することにより行われる。具体的には、絶縁被膜3の形成前に、シール規制面5dにブロックゲージ等の測定治具11を配置する。次に、適宜の保治具で保持した測定器、例えばダイヤルゲージ12等の比較測定器の測定子を測定治具11の上面に押し当てて零点を合せた後、外輪5の幅面5fに測定子を押し当て、測定値と測定治具11の長さとから、シール規制面5dと外輪5の幅面5fとの間の距離Aを求める。その後、外輪5の外周面5e、幅面5f、および内径チャンファ5gを覆う絶縁被膜3を形成する。
[0040]
 絶縁被膜3の形成後、図4に示すように、上記と同じ測定治具11をシール規制面5dに配置し、同様の手順で、基準面5dから幅面5fを覆う絶縁被膜3の表面までの距離Bをダイヤルゲージ12で測定する。B-Aを算出することで、絶縁被膜3の膜厚が求めることができる。
[0041]
 軸方向反対側(図1の図面左側)の外輪5の幅面5fについても、軸方向反対側のシール規制面5dを測定基準とし、上記と同様の手順で、当該幅面5fを覆う絶縁被膜3の膜厚を測定する。
[0042]
 その後、測定した膜厚値に応じて、幅仕上げ寸法の許容範囲内に入るように、両幅面5fを覆う絶縁被膜3の表面をそれぞれ研削することにより、外輪5が完成する。その後、外輪5に内輪4、転動体6、および保持器7を組み付け、さらに外輪5のシール嵌合面5bに、シール装置8を圧入固定することで、図1に示す密封形複列円すいころ軸受が完成する。
[0043]
 本実施形態では、外輪5のうち、シール装置8を構成するシール部材(シールケース81)の取り付け部付近に存在する既設のシール規制面5dを膜厚測定用の基準面として活用しているため、新たに基準面を設ける必要がない。そのため、特許文献1に記載の膜厚管理法のように、外輪5の幅面5fの半径方向寸法を大きくする必要はなく、外輪5の端部の半径方向の肉厚を薄くすることができる(例えば7mm以下の肉厚にすることも可能となる)。従って、複列転がり軸受の小型化を達成しつつ、絶縁被膜3の膜厚管理を精度よく行うことが可能となり、信頼度の高い絶縁性を得ることができる。
[0044]
 以上の説明では、複列転がり軸受として複列円すいころ軸受を例示したが、本発明の適用対象はこれに限定されず、例えば転動体として円筒ころを用いた複列円筒転がり軸受に適用することもできる。
[0045]
 また、本実施形態に係る電食防止転がり軸受を使用した軸受として、鉄道車両の車軸を支持する車軸軸受を例示したが、この電食防止転がり軸受の適用対象はこれに限定されず、転がり軸受を介した通電を避けるべき機器・装置における軸の支持に使用される転がり軸受に広く適用することができる。シール装置8の構成も任意であり、図1に例示した以外の構成のシール装置を用いることができる。例えば芯金の先端にシールリップを形成し、この芯金を外輪5に取り付けたシール装置8を使用することもできる。この場合、芯金がシール部材として用いられる。
[0046]
 次に、本発明の他の実施形態について説明する。
[0047]
 図6に示す本発明の他の実施形態に係る車軸用軸受装置50は、鉄道車両の車軸を回転自在に支持する。図1に示すように、車軸用軸受装置50は、車軸(図示省略)の外周に取り付けられた転がり軸受1と、一対のシール部材(シール装置)8と、ハウジングとしての軸箱51と、転がり軸受1の車両外側(図6の左側)に設けられた油切り9と、転がり軸受1の車両内側(図6の右側)に設けられた後蓋10など、を備える。
[0048]
 転がり軸受1は、いわゆる複列円すいころ軸受であり、複列の内側軌道面4aを有し、車軸の外周に固定された内輪4と、複列の外側軌道面5aを有し、軸箱51に固定された外輪5と、内外輪4,5の軌道面4a,5a間に配置された転動体としての円すいころ6と、円すいころ6の各列を円周方向所定間隔で保持する一対の保持器7と、を備える。図示例では、内輪4を構成する一対の分割内輪の間に間座(スペーサ)15を介在させているが、一対の分割内輪を軸方向に直接突き合わせたものや、単一部材で構成されたものであってもよい。内輪4と油切り9との間、及び、内輪4と後蓋10との間には、それぞれシール付きプレート16が介在している。
[0049]
 シール部材8は、リング状のオイルシール82と、内周にオイルシール82を保持するリング状のシールケース81と、で構成されている。なお、シール部材8は、シールケース81を有さず、オイルシール82のみで構成されるものであってもよい。オイルシール82は、油切り9又は後蓋10の外周面に対して摺接可能に装着されている。一方、シールケース81は、内輪4と外輪5との間に圧入されることにより、外輪5の内周面に嵌合して固定されている(締り嵌め)。また、シールケース81の端部は、油切り9又は後蓋10に対して近接しており、シールケース81と油切り9との間、及び、シールケース81と後蓋10との間に、ラビリンスシールが形成されている。
[0050]
図7は、転がり軸受1の一端部側(図6における左端部側)を拡大して示す図である。
[0051]
 図7に示すように、転がり軸受1においては、沿面放電などによる転がり軸受1の電食を防止するため、外輪5の表面にセラミックスなどから成る絶縁被膜(絶縁層)3が設けられている。絶縁被膜3は、軸箱51が接触する面である、外輪5の外周面5eから端面(幅面)5fに渡って設けられている。
[0052]
 ここで、本実施形態のように、絶縁被膜3が、外輪5の端面5fと内周面(シール嵌合面)5bとの間の角部(内径チャンファ)5g、あるいは内周面5bの近傍にまで設けられていると、シールケース81を装着する際に、シールケース81が角部5gの絶縁被膜3に接触する可能性がある。そして、シールケース81が絶縁被膜3に接触することにより、絶縁被膜3が損傷すると、絶縁性能が低下し、電食が発生する虞がある。そこで、本実施形態においては、絶縁被膜3の損傷を回避するため、以下のような対策を講じている。
[0053]
 図8は、外輪5の端部を拡大して示す断面図である。
[0054]
 図8に示すように、本実施形態では、外輪5の端面5fと内周面5bとの間(角部5g)に、互いに異なる角度で傾斜する第1面取り部A及び第2面取り部Bが設けられている。第1面取り部Aは、第2面取り部Bよりも軸方向外側(図8の左側)に配置され、外輪5の端面5fに対して角度θ1で傾斜している。一方、第2面取り部Bは、第1面取り部Aよりも軸方向内側(図8の右側)に配置され、外輪5の端面5fに対して第1面取り部Aよりも大きい角度θ2で傾斜している。第1面取り部A及び第2面取り部Bは、それぞれ直線状の傾斜面で形成されており、これらの間の尖った角部を介して互いに連続している。また、第1面取り部Aの表面には絶縁被膜3が設けられている。これに対して、第2面取り部Bの表面には絶縁被膜3は設けられていない。
[0055]
 なお、第2面取り部Bには、絶縁被膜3が全くないことが望ましいが、僅かに絶縁被膜3が形成されている部分があってもよい。具体的には、第2面取り部B全体の表面積のうち、絶縁被膜3が設けられていない部分の面積が90%以上であればよい。従って、ここでいう「絶縁被膜が設けられていない」とは、第2面取り部Bに、絶縁被膜3が全く設けられていない場合のほか、第2面取り部B全体の表面積のうち、絶縁被膜3が設けられていない部分の面積が90%以上である場合も含むものとする。
[0056]
 このように、絶縁被膜3を有する第1面取り部Aとは別に、絶縁被膜3を有しない第2面取り部Bを設けることで、第2面取り部Bを、シールケース装着時のガイド面として利用することができる。すなわち、シールケース81を軸受内に装着する際、シールケース81の外周面を第2面取り部Bに接触させて案内することで、シールケース81を軸受内に容易に装着することができる。また、このとき、シールケース81が第2面取り部Bに接触しても、第2面取り部Bには絶縁被膜3が設けられていないので、シールケース81の接触による絶縁被膜3の損傷の虞はない。
[0057]
 一方、第1面取り部Aには絶縁被膜3が設けられていることで、軸箱51から外輪5の非絶縁部までの沿面距離α1(図8参照)を長くすることができる。すなわち、図9に示す比較例のように、面取り部Cに絶縁被膜3が設けられていない場合は、沿面距離α2を軸方向に長くすることができないが、図8に示す本実施形態のように、絶縁被膜3が第1面取り部Bに設けられていることで、沿面距離α1を軸方向に伸ばして長くすることが可能である。これにより、転がり軸受の絶縁性能が向上し、沿面放電などによる電食を効果的に防止できるようになる。
[0058]
 以上のように、本実施形態に係る転がり軸受によれば、外輪5の端面5fと内周面5bとの間に、絶縁被膜3を有する第1面取り部Aと、絶縁被膜3を有しない第2面取り部Bとを設けることで、第1面取り部Aの絶縁被膜3を損傷させることなく第2面取り部Bによってシールケース81を案内して軸受内に容易に装着することができる。また、第1面取り部Aに絶縁被膜3を設けることで、沿面距離を長くすることができ、絶縁性能の向上も実現できるようになる。特に、鉄道車両用車軸軸受においては、剛性の高いシール部材が用いられるため、シール部材を軸受内に装着する際に絶縁被膜が損傷する虞がある。従って、このような転がり軸受に本発明を適用した場合は、大きな効果を期待できる。
[0059]
 また、沿面距離が長くなることで、軸箱51などのハウジングを外輪5の端面5fに対して広い範囲に渡って(外輪5の内周面5bに近い位置にまで)接触させることができるようになる。これにより、転がり軸受1の軸方向移動を確実に規制して位置決めすることが可能となる。
[0060]
 また、本実施形態に係る転がり軸受においては、第1面取り部Aと第2面取り部Bとが異なる角度で傾斜しているため、軸方向からの絶縁材料の溶射のみで、第2面取り部Bに絶縁材料を付着させずに、第1面取り部Aと外輪5の端面5fとに絶縁被膜3を形成することができる。従って、溶射工数が増加することはなく、生産性を維持することが可能である。
[0061]
 以上、図8に基づき、外輪5の一方の端部における構成、及び、その作用・効果について説明したが、外輪5の他方の端部においても同様である。よって、他方の端部における構成、及び、その作用・効果については説明を省略する。
[0062]
 また、本発明は、上述の実施形態のように、絶縁被膜3が外輪5に設けられている構成に限らず、絶縁被膜3が内輪4に設けられている構成にも適用可能である。
[0063]
 例えば、図10に示す例のように、軸受4内に装着されるシール部材8が、内輪4の外周面4cに対して圧入(締り嵌め)により嵌合し固定される場合は、内輪4の外周面4c近傍に絶縁被膜3が設けられていると(図例では、内輪4の内周面4b及び端面4dに絶縁被膜3が設けられている。)、シール部材8を装着する際に絶縁被膜3が損傷する虞がある。従って、このような内輪4に対しても、図11に示すように、内輪4の端面4dと外周面4cとの間に、内輪4の端面4dよりも軸方向内側に傾斜し絶縁被膜3を有する第1面取り部Aと、第1面取り部よりも軸方向内側に大きく傾斜し絶縁被膜3を有しない第2面取り部Bとを設けることで、上述の実施形態と同様に、絶縁性能を向上させつつ、シール部材の装着に伴う絶縁被膜の損傷を防止できるようになる。なお、図10及び図11において、図6~図8と同一の符号の部材については、同一の機能もしくは形状を有する部材であるので、説明を省略する。
[0064]
 さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
[0065]
 上述の実施形態では、本発明を複列円すいころ軸受に適用した場合を例に説明したが、本発明は、円すいころ軸受に限らず、円筒ころ軸受や深溝玉軸受、あるいはその他の転がり軸受にも適用可能である。また、単列の転がり軸受であってもよい。
[0066]
 また、本発明は、鉄道車両の車軸を支持する転がり軸受(鉄道車両車軸用軸受)に限らず、汎用モータ、発電機用ジェネレータ、風力発電装置などに用いられる転がり軸受にも適用可能である。

符号の説明

[0067]
 1    電食防止転がり軸受
 2    車軸
 3    絶縁被膜
 4    内輪
 4a   軌道面
 5    外輪
 5a   軌道面
 5b   シール嵌合面
 5c   ビード溝
 5d   シール規制面
 5e   外周面
 5f   幅面
 5g   内径チャンファ
 6    転動体(円すいころ)
 7    保持器
 8    シール装置
 11   測定治具(ブロックゲージ)
 12   測定器(ダイヤルゲージ)
 81   シール部材(シールケース)
 81a1 ビード
 81a2 シール部材の端面(先端面)
 82   オイルシール
 A    第1面取り部
 B    第2面取り部

請求の範囲

[請求項1]
 外周に軌道面を有する内輪と、内周に軌道面を有する外輪と、前記内輪の軌道面と前記外輪の軌道面の間に介在する複列の円すいころと、前記内輪と前記外輪の間の軸受内部空間を軸方向両側で密封するシール部材とを備え、
 前記外輪は、前記シール部材の端面と軸方向で当接可能のシール規制面を有し、
 前記外輪の外周面から幅面に渡って絶縁被膜が設けられている複列円すいころ軸受。
[請求項2]
 前記シール規制面が研削面である請求項1に記載の複列円すいころ軸受。
[請求項3]
 前記シール規制面が焼入れ鋼切削で形成された面である請求項1に記載の複列円すいころ軸受。
[請求項4]
 前記外輪は、前記シール部材の外周面と嵌合するシール嵌合面と、前記シール嵌合面と前記軌道面との間に設けられ、前記シール部材の外周面に設けたビードと係合して、前記シール部材の軸方向の抜け止めを行うビード溝を有し、
 前記シール規制面の表面粗さを、前記ビード溝の表面粗さよりも小さくした請求項1に記載の複列円すいころ軸受。
[請求項5]
 前記外輪の幅面と内周面との間に、前記外輪の幅面よりも軸方向内側に傾斜する第1面取り部を設けると共に、前記第1面取り部の軸方向内側に、前記外輪の幅面に対して前記第1面取り部よりも軸方向内側に大きく傾斜する第2面取り部を設け、
 前記第1面取り部の表面に前記絶縁被膜が設けられ、前記第2面取り部の表面に前記絶縁被膜は設けられていない請求項1に記載の複列円すいころ軸受。
[請求項6]
 鉄道車両の車軸を支持する鉄道車両車軸用軸受に用いられる請求項1から5のいずれかに記載の複列円すいころ軸受。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]