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1. WO2020116200 - 時刻伝送補正装置、時刻伝送システム、および、遅延測定方法

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明 細 書

発明の名称 時刻伝送補正装置、時刻伝送システム、および、遅延測定方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

非特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010   0011   0012   0013   0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018  

発明の効果

0019  

図面の簡単な説明

0020  

発明を実施するための形態

0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040  

符号の説明

0041  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 時刻伝送補正装置、時刻伝送システム、および、遅延測定方法

技術分野

[0001]
 本発明は、時刻伝送補正装置、時刻伝送システム、および、遅延測定方法に関する。

背景技術

[0002]
 時刻同期技術は、モバイルにおける基地局間連携において次世代移動通信5G(Generation)などで今後必要とされている。時刻同期システムは、例えば、時刻基準装置であるGM(Grand Master)を各地点に分散配置させる構成により実現される。各地点のGMは、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの信号を直接受信するGNSSレシーバとして機能し、受信した信号を直接エンドアプリケーションに配信する。
 しかし、高性能であるGNSSレシーバの台数を増やすと、その分コストも高くなってしまう。また、悪天候により衛星からの信号を受信できない時間帯は、時刻の精度が悪化してしまう。
[0003]
 そこで、GMからの情報をパケットネットワークによって配信する(つまり、GNSS信号を間接的に受信する)形態として、例えば、パケットのタイムスタンプを利用して時刻同期を行うPTP(Precision Time Protocol)が用いられる(非特許文献1)。PTPでは、通信事業者の高信頼なネットワークを介して時刻同期が行われる。
 これにより、時刻基準となるGNSSアンテナの受信地点および設置数を集約でき、集約したGNSSレシーバ(GM)へ監視機能を具備することでGNSS受信の信頼性を向上することができる。また、パケットネットワークの経路二重化により、信頼性も向上できる。さらに、GMはPTPパケットを主信号に重畳することで、経済的かつ高精度に時刻情報を伝達することができる。
[0004]
 図8は、時刻同期技術が適用された時刻伝送システムの構成図である。
 時刻伝送システムは、PTPに対応したPTPノードであるGMノード82と、BC(Boundary Clock)ノード83,84と、OC(Ordinary Clock)ノード85とがネットワークで接続されて構成される。
 以下、時刻同期を直接行うPTPノード間で、時刻情報を提供する側をマスタノード91(図9)とし、マスタノード91から時刻情報を受ける被同期装置の側をスレーブノード92(図9)とする。以下、時刻情報の伝搬の順序を図8の太線矢印で記載する。太線矢印の矢印元側が上り側であり、太線矢印の矢印先側が下り側である。つまり、GMノード82→BCノード83→BCノード84→OCノード85の順に正確な時刻情報が下りに伝搬される。
[0005]
 GMノード82は、GPS衛星81からの信号を直接受信するアンテナ82aを備える。
 BCノード83は、マスタノード91であるGMノード82から時刻情報を受けるスレーブノード92であり、その後にBCノード84に時刻情報を提供するマスタノード91として機能する。
 BCノード84は、BCノード83から時刻情報を受けるスレーブノード92であり、その後にOCノード85に時刻情報を提供するマスタノード91として機能する。
 OCノード85は、BCノード84から時刻情報を受けるスレーブノード92であり、その後にエンド端末86に時刻情報を提供する。
 なお、BCノード83,84とOCノード85との呼び方のちがいは、他PTPノードへの接続ポートがBCノード83,84には複数本存在し、OCノード85には1本だけ存在することによる。
[0006]
 図9は、PTPの仕組みを示すシーケンス図である。
 時刻情報(タイムスタンプ)を付与したPTPパケットは、マスタノード91~スレーブノード92間で送受信される。PTPパケットとして、下りのSyncメッセージ(S11)と、下りのFollow-upメッセージ(S12)と、上りのDelay_Requestメッセージ(S13)と、下りのDelay_Responseメッセージ(S14)とが順番に送受信される。
 発時刻t1は、Syncメッセージ(S11)がマスタノード91から送信された時刻である。なお、Syncメッセージの発時刻t1をSyncメッセージそのものに含ませることは困難であるので、Syncメッセージの発時刻t1は後続のFollow-upメッセージにて、スレーブノード92に通知される。
 着時刻t2は、Syncメッセージがスレーブノード92に到着した時刻である。
 発時刻t3は、Delay_Requestメッセージがスレーブノード92から送信された時刻である。
 着時刻t4は、Delay_Requestメッセージがマスタノード91に到着した時刻である。着時刻t4は、Delay_Requestメッセージに対するDelay_Responseメッセージに含めて、スレーブノード92に通知される。
 これにより、スレーブノード92は、4つのタイムスタンプ(発時刻t1~着時刻t4)をすべて把握できる。
[0007]
 PTPパケットの送受信には、以下の伝搬遅延が発生する。
 ・下り遅延Dmsは、マスタノード91→スレーブノード92の下り方向のSyncメッセージの伝搬遅延である。マスタノード91側の時計に対するスレーブノード92側の時計のずれをオフセット値とすると、下り遅延Dms=(着時刻t2-オフセット値)-発時刻t1で求まる。
 ・上り遅延Dsmは、スレーブノード92→マスタノード91の上り方向のDelay_Requestメッセージの伝搬遅延である。上り遅延Dsm=着時刻t4-(発時刻t3-オフセット値)で求まる。
 下り遅延Dms=上り遅延Dsmと仮定すると、スレーブノード92は、以下の数式1でオフセット値を求める。
 オフセット値=((着時刻t2-発時刻t1)-(着時刻t4-発時刻t3))/2 …(数式1)
 そして、スレーブノード92は、求めたオフセット値で自身の時計の時刻を修正することで、マスタノード91の時計とスレーブノード92の時計とが同期(時刻一致)される。

先行技術文献

非特許文献

[0008]
非特許文献1 : IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)、「IEEE Standard for a Precision Clock Synchronization Protocol for Networked Measurement and Control Systems」、IEEE Std 1588-2008,Revision of IEEE Std 1588-2002、2008年7月24日

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 PTPは、PTPパケットの伝送経路について、上り下りの遅延が等しいことを前提としたプロトコルである。よって、リンク非対称性(上り下りの遅延差)が発生する場合には、時刻同期精度に誤差が生じる。以下、上り下りの遅延差の要因を例示する。
 (a)伝送経路途中の装置内遅延として、例えば、パケット処理によるバッファリングやフレーム処理による変動遅延。
 (b)伝送路の温度変動。
 (c)二芯双方向通信の場合、ファイバ長の長さの差(5ns/m)がある場合。
 (d)一芯双方向通信の場合では上り下りで異なる波長を利用する場合にも、波長分散による遅延差が発生する。例えば、1500ns/1300ns波長でシングルモードファイバ80kmを伝送する場合、その遅延差130nsとなり、PTPによる時刻同期誤差は130/2=65nsとなる。
[0010]
 上り下りの遅延差の成分の大部分は(a)装置内遅延である。一方、(b)伝送路の温度変動は、PTPによる時刻同期頻度よりも温度変動の方が長周期であるため、ほとんど影響は無い。また、(c)ファイバ長の差と(d)異なる波長についても、(a)装置内遅延に比べると微差である。よって、時刻同期精度を高めるためには、(a)装置内遅延を考慮し、リンク非対称性の影響を低減するように時刻同期機構を設計する必要がある。
[0011]
 図10は、図9に対して伝送装置の装置内遅延を加味したシーケンス図である。図10では、マスタノード91とスレーブノード92との間に2台の伝送装置(第1SW93a,第2SW93b)が存在する場合を例示する。
 伝送装置の装置内遅延が0である理想的な状況でのPTPパケットの伝送(S11,S13)を破線矢印で示し、その破線矢印に対して伝送装置の装置内遅延が存在する実際のPTPパケットの伝送(S11b,S13b)を太実線矢印で示す。
 なお、S12,S14bのメッセージも実際には伝送装置の装置内遅延が存在する。しかし、S12,S14bのメッセージについては、PTPノードの発時刻も着時刻も時刻同期の計算には使用されないので、図10では装置内遅延が0であるとした。
[0012]
 PTPパケットとして、下りのSyncメッセージ(S11b)と、下りのFollow-upメッセージ(S12)と、上りのDelay_Requestメッセージ(S13b)と、下りのDelay_Responseメッセージ(S14b)とが順番に送受信される。
 Syncメッセージ(S11b)は、マスタノード91からスレーブノード92に向かう第1SW93aに送信される。第1SW93aは、Syncメッセージの受信時から送信時までに装置内遅延L11を発生させる。第2SW93bも、Syncメッセージの受信時から送信時までに装置内遅延L12を発生させる。よって、Syncメッセージの実際の着時刻t2bは、理想的な着時刻t2よりも2台の装置内遅延分だけ遅れてしまう。
 Delay_Requestメッセージ(S13b)は、スレーブノード92からマスタノード91に向かう第2SW93bに送信される。第2SW93bは、Delay_Requestメッセージの受信時から送信時までに装置内遅延L32を発生させる。第1SW93aも、Delay_Requestメッセージの受信時から送信時までに装置内遅延L31を発生させる。よって、Delay_Requestメッセージの実際の着時刻t4bは、理想的な着時刻t4よりも2台の装置内遅延分だけ遅れてしまう。Delay_Responseメッセージ(S14b)は、実際の着時刻t4bをスレーブノード92に通知する。
[0013]
 スレーブノード92は、下り遅延Dms≠上り遅延Dsmである図10の状況では、前記した数式1でオフセット値を求めることはできない。よって、スレーブノード92は、代わりに以下の数式2でオフセット値を求めることとなる。
 オフセット値=((着時刻t2-発時刻t1)-(着時刻t4-発時刻t3))/2+(上り遅延Dsm-下り遅延Dms)/2 …(数式2)
 しかし、数式2の第2項の下り遅延Dmsや、上り遅延Dsmは固定値とは限らず、時間的な変動がある場合も多い。時間的な変動として、例えば、同じ第2SW93bという装置でも、装置内遅延L12と装置内遅延L32とが大きく異なる。この要因は、通信の方向のちがいや、処理時点での負荷量の差などである。
 つまり、PTPパケットの端点であるマスタノード91およびスレーブノード92それぞれのタイムスタンプ情報だけからオフセット値を求める単純なPTPの仕様では、伝送装置の装置内遅延などのリンク非対称性により、時刻同期精度が不安定になってしまう。
[0014]
 そこで、本発明は、時刻同期装置間のリンク非対称性に影響されない時刻同期機構を提供することを、主な課題とする。

課題を解決するための手段

[0015]
 前記課題を解決するために、本発明の時刻伝送補正装置は、以下の特徴を有する。
 本発明は、時刻同期装置間で時刻伝送補正装置を経由して時刻同期用パケットを送受信し、その送受信の時刻情報をもとに前記時刻同期装置の時刻を同期する時刻伝送システムに用いられる前記時刻伝送補正装置であって、
 到着した前記時刻同期用パケットにより時刻情報を同期する第1時計部と、
 周波数信号に基づく時刻情報を同期する第2時計部と、
 前記時刻同期用パケットの経由元である前記時刻同期装置からの発時刻と、前記第2時計部の時刻情報から求めた自装置への前記時刻同期用パケットの到着時刻との時間差をもとに、前記時刻同期装置間の前記時刻同期用パケットの伝送遅延が設定遅延になるように前記時刻同期用パケットの待ち時間を設定する遅延設定部と、
 前記第1時計部の時刻情報をもとに、前記第2時計部の時刻情報の基準時刻からの時刻のずれを補正する時刻調整部と、を有することを特徴とする。
[0016]
 これにより、時刻同期装置間でリンク非対称性を吸収する一定の設定遅延が時刻同期用パケットに設定されるので、時刻同期装置間のリンク非対称性に影響されない時刻同期機構を提供することができる。
[0017]
 本発明は、前記時刻伝送補正装置と、前記時刻同期装置とを含めて構成される前記時刻伝送システムであって、
 前記時刻同期装置が、時刻を同期する相手である他の前記時刻同期装置から送信された前記時刻同期用パケットを受信すると、前記時刻同期用パケットの前記時刻同期装置間における発時刻および着時刻を用いて前記時刻同期装置の時計のずれであるオフセット値を計算することを特徴とする。
[0018]
 これにより、時刻同期装置間のリンク非対称性に影響されない時刻同期用パケットの発時刻および着時刻をもとに、高精度な時刻同期を実現することができる。

発明の効果

[0019]
 本発明によれば、時刻同期装置間のリンク非対称性に影響されない時刻同期機構を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0020]
[図1] 本実施形態に係わる図10の時刻伝送システムに対してリンク非対称性を除去した時刻伝送システムのシーケンス図である。
[図2] 本実施形態に係わる各DCがバッファ遅延Lw1、Lw2の計算に使用する2種類の時刻同期方式(PTP同期、周波数同期)の説明図である。
[図3] 本実施形態に係わるDC内でのバッファ遅延の計算方法を示す説明図であるである。
[図4] 本実施形態に係わる図1のDC(Delay Correct)の構成図である。
[図5] 本実施形態に係わる2つの時計について、時間経過による時刻のずれを示すグラフである。
[図6] 本実施形態に係わる図5のグラフに対して、周波数時計部の時刻を補正した場合のグラフである。
[図7] 本実施形態に係わるDCの動作を示すフローチャートである。
[図8] 時刻同期技術が適用された時刻伝送システムの構成図である。
[図9] PTPの仕組みを示すシーケンス図である。
[図10] 図9に対して伝送装置の装置内遅延を加味したシーケンス図である。

発明を実施するための形態

[0021]
 以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[0022]
 図1は、図10の時刻伝送システムに対してリンク非対称性を除去した時刻伝送システムのシーケンス図である。
 Syncメッセージについて、図10のS11bが図1のS11cに置き換わる。Delay_Requestメッセージについて、図10のS13bが図1のS13cに置き換わる。その他のメッセージ(S12,S14b)は、図1も図10も同じであるので、図1では図示省略する。
 図10では、マスタノード91→第1SW93a→第2SW93b→スレーブノード92の伝送経路順にPTPパケットが下っていく構成を示した。図1では、PTPパケットの伝送経路順は、以下の通りである。
 [下りの伝送経路]マスタノード(時刻同期装置)1→第1SW3a→第2SW3b→第2DC4b→スレーブノード(時刻同期装置)2
 [上りの伝送経路]スレーブノード2→第2SW3b→第1SW3a→第1DC4a→マスタノード1
 なお、第1SW3a、第2SW3bなどの伝送装置をSW3とし、第1DC4a、第2DC4bなどの時刻伝送補正装置をDC4とする。
[0023]
 図1の時刻伝送システムでは、図10に対して、DC4の以下の処理が追加されている。
 (1)下りのSyncメッセージについて、第2DC4bが自装置内でバッファ遅延Lw2だけ余分に待ち合わせた結果、スレーブノード2への着時刻t2を着時刻t2maxにする処理。
 (2)上りのDelay_Requestメッセージについて、第1DC4aが自装置内でバッファ遅延Lw1だけ余分に待ち合わせた結果、マスタノード1への着時刻t4を着時刻t4maxにする処理。
 つまり、(1)および(2)は、下り遅延Dmsおよび上り遅延Dsmをそれぞれ強制的に設定遅延Lmaxになるように揃える処理である。これにより、個々のPTPパケットの下り遅延Dmsおよび上り遅延Dsmが通信状況の変化などにより一定にならない状況下でも、PTPノード間のPTPパケットの通信時間は設定遅延Lmaxになる。なお、バッファ遅延Lw1、Lw2の計算方法は図3で後記する。
[0024]
 そして、スレーブノード2は、発時刻t1および発時刻t3に加え、余分に遅延された着時刻t2maxおよび着時刻t4maxを用いて、数式3により時刻同期する。
 オフセット値=((着時刻t2max-発時刻t1)-(着時刻t4max-発時刻t3))/2 …(数式3)
 これにより、スレーブノード2は、伝送装置の装置内遅延がバッファ遅延Lw1、Lw2で一律化されたタイムスタンプ情報を用いることで、リンク非対称性の影響を低減した高精度な時刻同期を実行できる。
[0025]
 図2は、各DC4がバッファ遅延Lw1、Lw2の計算に使用する2種類の同期方式(PTP同期、周波数同期)の説明図である。
 標準化団体ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)は、以下のように同期方式の仕様を文書で規定する。
 (1)PTP同期は、PTPパケットに基づく時刻同期方式である。このPTP同期の仕様として、GPS衛星81からの信号を直接受信するアンテナ82aを備えるGMノード82を実装したPRTC(Primary Reference Time Clock)の仕様G.8272およびePRTC(enhanced Primary Reference Time Clock)の仕様G.8272.1と、被同期側のT-BC(Telecom Boundary Clock)の仕様G.8273.2が提案されている。
 (2)周波数同期は、周波数信号に基づきSync-Ethernet(登録商標)などで実装された同期方式である。この周波数同期の仕様として、高安定原子時計であるePRC(enhanced Primary Reference Clock)の仕様G.811.1と、被同期側のEEC(synchronous Ethernet Equipment Clock)の仕様G.8262が提案されている。
[0026]
 DC4(第1DC4a、第2DC4b)は、2種類の時刻同期方式の双方に1台で対応する。つまり、1台のDC4の装置内に2つの時計が備えられている。この2つの時計は相互補完的に動作する。
 例えば、GMノード82がGPS衛星81からの信号を受信できない場合、DC4は高安定原子時計(ePRC)により時刻を維持する。また、時刻同期装置(T-BC)が時刻情報を取得できなかった(つまりホールドオーバした)場合に、周波数同期(Sync-E)により長期間の時刻を維持できる。
 なお、周波数同期の精度は、時計機器の技術進歩により向上している。例えば、商用セシウム原子時計における100nsの精度での時刻維持時間は、1997年には2.8時間だったが2018年には28時間に向上している。
[0027]
 図3は、DC4内でのバッファ遅延の計算方法を示す説明図である。
 バッファ遅延Lw1は、設定遅延Lmaxに対する下り装置内遅延和Lms(=L11+L12)の不足分として計算される。つまり、設定遅延Lmax=L11+L12+Lw1である。
 バッファ遅延Lw2は、設定遅延Lmaxに対する上り装置内遅延和Lsm(=L31+L32)の不足分として計算される。つまり、設定遅延Lmax=L31+L32+Lw2である。
 このように、PTPパケットの伝送路の合計として設定遅延Lmax分だけPTPパケットを待たせることで、上り下りの両方向の遅延を等しくする。また、同じ経路のPTPパケットでも、送信するタイミングにおけるネットワークの混雑状況により、同じ方向の通信でも遅延変動幅(Lmin~Lz)の範囲内で遅延がばらついてしまう。しかし、この遅延のばらつきも設定遅延Lmaxへの不足分だけDC4内で待ち合わせを行うことで、全パケットが同じ遅延となり、リンク対称性が事後的に確立される。
[0028]
 図4は、図1のDC4の構成図である。
 DC4は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、ハードディスク、不揮発メモリ、SSD(solid state drive)などで例示される記憶手段(記憶部)と、ネットワークインタフェースとを有するコンピュータとして構成される。
 このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部により構成される制御部(制御手段)を動作させる。
[0029]
 DC4は、PTPパケットの伝送機能に加え、PTPパケットの伝送時間が設定遅延Lmaxになるように、PTPパケットをバッファ遅延Lw1、Lw2の分だけ待ち合わせる機能が付加されている。
 具体的には、DC4は、パケット複製部11と、PTP時計部(第1時計部)12と、可変バッファ13と、周波数時計部(第2時計部)21と、遅延設定部22と、最大遅延保持部23と、ドリフト検知部24と、時刻比較部25と、時刻調整部26とを有する。
[0030]
 パケット複製部11は、到着したPTPパケットを3つにコピーし、PTP時計部12と、周波数時計部21と、可変バッファ13とにそれぞれ通知する。
 PTP時計部12は、PTPパケットによるPTP同期に対応した時計である。周波数時計部21は、周波数信号による周波数同期に対応した時計である。周波数時計部21の初期時刻は、事前にGPS付きの簡易測定器等で合わせられており、マスタノード91の時刻と初期は一致しているものとする。その後、周波数時計部21は、ePRCからの信号により時刻をカウントする。
[0031]
 遅延設定部22は、図3で説明したように、以下の計算式でバッファ遅延Lw1、Lw2を求め、その結果を可変バッファ13に設定する。以下は、第2DC4bがバッファ遅延Lw2を求める場合の計算式である。
 (下り装置内遅延和Lms)=(第2DC4bの周波数時計部21が打刻したSyncメッセージの自装置への到着時刻)-(Syncメッセージのタイムスタンプ情報が示す発時刻t1)
 (第2DC4b内の可変バッファ13のバッファ遅延Lw2)=(最大遅延保持部23から読み込んだ設定遅延Lmax)-(下り装置内遅延和Lms)
[0032]
 以下は、第1DC4aがバッファ遅延Lw1を求める場合の計算式である。
 (上り装置内遅延和Lsm)=(第1DC4aの周波数時計部21が打刻したDelay_Requestメッセージの自装置への到着時刻)-(Delay_Requestメッセージのタイムスタンプ情報が示す発時刻t3)
 (第1DC4a内の可変バッファ13のバッファ遅延Lw1)=(最大遅延保持部23から読み込んだ設定遅延Lmax)-(上り装置内遅延和Lsm)
 なお、最大遅延保持部23には、管理者などにより、図3で示した設定遅延Lmaxが事前に登録されているものとする。
[0033]
 可変バッファ13は、自装置内でのPTPパケットの待ち合わせ時間が設定されたバッファ遅延Lw1、Lw2になるように、現在時刻からの追加の待ち合わせ時間だけPTPパケットを待ち合わせてから送信する。
 (追加の待ち合わせ時間)=(バッファ遅延Lw1、Lw2)+(PTPパケットの到着時刻)-(現在時刻)
[0034]
 また、PTP時計部12と周波数時計部21とは、互いの時刻のずれ(ドリフト)が発生する。よって、以下に示すように、PTP時計部12の時刻を用いて周波数時計部21の時刻を補正する。つまり、PTP時計部12は、周波数時計部21の長期的なずれ(ドリフト)を検知するために利用でき、周波数時計部21の時刻の補正に役立つ。
 時刻比較部25は、PTP時計部12の時刻と周波数時計部21の時刻とを定期的に比較して、その比較結果をドリフト検知部24に通知する。ドリフト検知部24は、時刻の比較結果であるPTP時計部12の時刻と周波数時計部21の時刻との差分を、周波数時計部21のドリフトであると検知する。
 時刻調整部26は、ドリフト検知部24が検知したドリフトの度合いを示すドリフト量を周波数時計部21に反映することで、周波数時計部21の時刻を補正する。
[0035]
 図5は、2つの時計について、時間経過による時刻のずれを示すグラフである。このグラフのY軸はUTC(Coordinated Universal Time)に対する時刻ずれを示し、プラス方向がUTCよりも早い時刻であり、マイナス方向がUTCよりも遅い時刻を示す。
 PTP時計部12のUTCに対する時刻ずれを太実線101で示し、周波数時計部21のUTCに対する時刻ずれを細実線102で示す。また、太実線101と細実線102との差分を破線103で示す。
 まず、初期段階(X=0)では、2つの時計をそれぞれUTCに合わせた状態から開始する。太実線101の時刻ずれがプラス方向とマイナス方向の間でゆらいでいるのは、PTPパケットの伝送遅延が変動するためである。図5に示すように、PTP時計部12はトラフィックの変動パターンが周期的であれば、一定の周期での時刻変動となる。よって、PTP時計部12は周波数時計部21の補正に活用できる。
 一方、太実線101の時刻ずれはプラス方向に徐々に蓄積されていく。この蓄積は周波数カウントする周波数時計部21の特性によるものである。よって、周波数時計部21の時刻情報をバッファ遅延Lw1、Lw2の計算に使い続けると、破線103の絶対値が徐々に大きくなることで、その計算結果の精度は徐々に劣化してしまう。
[0036]
 図6は、図5のグラフに対して、周波数時計部21の時刻を補正した場合のグラフである。
 補正されたPTP時計部12のUTCに対する時刻ずれを太実線111で示す。時刻tcにおいて、時刻調整部26は、ドリフト検知部24が検知したドリフト量Dcを周波数時計部21に反映する(Dc分だけ遅らせる)ことで、周波数時計部21の時刻をUTCに合わせる。これにより、遅延設定部22の計算精度が時刻tcで回復する。
 なお、ドリフト検知部24が指定するドリフト量Dcは、2つの時計の時刻差分から求める代わりに、前回のUTCと一致した時刻からの経過時間より推定される補正値を用いてもよい。また、時刻調整部26が周波数時計部21の時刻をUTCに合わせる頻度は、周波数時計部21の周波数同期が高精度であれほど長期間補正をしなくてもすむように低頻度としてもよい。
[0037]
 図7は、DC4の動作を示すフローチャートである。
 S101として、パケット複製部11は、PTPパケットが到着したか否かを判定する。S101でYesならS102に進み、NoならS105に進む。
 S102として、パケット複製部11は、到着したPTPパケットを3つにコピーし、PTP時計部12と、周波数時計部21と、可変バッファ13とにそれぞれ通知する。
 S103として、PTP時計部12は到着したPTPパケットを用いて時刻同期を行い、遅延設定部22は周波数時計部21が打刻したPTPパケットの到着時刻をもとにバッファ遅延Lw1、Lw2を計算し、その計算結果をもとに可変バッファ13に待ち合わせ時間を設定する。
 S104として、可変バッファ13は、待ち合わせ時間を経過したPTPパケットを外部に送信する。
 S105として、時刻比較部25は、設定された補正頻度に基づき、補正契機が発生したか否かを判定する。S105でYesならS106に進み、NoならS101に戻る。
 S106として、時刻調整部26は、2つの時計の時刻差分のドリフト量により、周波数時計部21の補正を実行する。
[0038]
 以上説明した本実施形態の時刻伝送システムは、周波数時計部21が各PTPパケットの片方向遅延時間を測定する。遅延設定部22は、片方向遅延時間が最初に保守者が設定した設定遅延Lmax(実際の遅延よりも充分長い時間)との差分を求め、その差分だけパケットを待たせるように可変バッファ13にバッファ遅延Lw1、Lw2を設定する。
 つまり、遅延変動要因の主要因であるPTP非対応装置(SW3)の装置内遅延L11,L12,L31,L32を直接求める代わりに、PTPパケットの装置内遅延和が設定遅延Lmaxになるまで経路途中のDC4で待ち合わせることとした。
[0039]
 これにより、すべてのPTPパケットは保守者が事前に設定した設定遅延Lmaxになるように制御されるため、実効的に上りと下りの遅延を等しくすることができる。よって、待ち合わせた後のPTPパケットからは時刻同期誤差の要因である上り下り非対称性が除去され、スレーブノード2によるPTPの時刻同期を高精度化することができる。
[0040]
 なお、本実施形態においては、時刻伝送システムとして、図1に示すような2台のSW3(第1SW3a、第2SW3b)を上り方向でも下り方向でも通過するような伝送経路を例示した。一方、このようなSW3の台数に限定されず、任意の台数を扱ってもよい。
 また、本実施形態においては、一般的なコンピュータのハードウェア資源を、SW3の各手段として動作させるプログラムによって実現することができる。そして、このプログラムは、通信回線を介して配布したり、CD-ROM等の記録媒体に記録して配布したりすることも可能である。

符号の説明

[0041]
 1   マスタノード(時刻同期装置)
 2   スレーブノード(時刻同期装置)
 3   SW
 4   DC(時刻伝送補正装置)
 11  パケット複製部
 12  PTP時計部(第1時計部)
 13  可変バッファ
 21  周波数時計部(第2時計部)
 22  遅延設定部
 23  最大遅延保持部
 24  ドリフト検知部
 25  時刻比較部
 26  時刻調整部
 81  GPS衛星
 82a アンテナ
 82  GMノード
 83,84 BCノード
 85  OCノード

請求の範囲

[請求項1]
 時刻同期装置間で時刻伝送補正装置を経由して時刻同期用パケットを送受信し、その送受信の時刻情報をもとに前記時刻同期装置の時刻を同期する時刻伝送システムに用いられる前記時刻伝送補正装置であって、
 到着した前記時刻同期用パケットにより時刻情報を同期する第1時計部と、
 周波数信号に基づく時刻情報を同期する第2時計部と、
 前記時刻同期用パケットの経由元である前記時刻同期装置からの発時刻と、前記第2時計部の時刻情報から求めた自装置への前記時刻同期用パケットの到着時刻との時間差をもとに、前記時刻同期装置間の前記時刻同期用パケットの伝送遅延が設定遅延になるように前記時刻同期用パケットの待ち時間を設定する遅延設定部と、
 前記第1時計部の時刻情報をもとに、前記第2時計部の時刻情報の基準時刻からの時刻のずれを補正する時刻調整部と、を有することを特徴とする
 時刻伝送補正装置。
[請求項2]
 請求項1に記載の時刻伝送補正装置と、前記時刻同期装置とを含めて構成される前記時刻伝送システムであって、
 前記時刻同期装置は、時刻を同期する相手である他の前記時刻同期装置から送信された前記時刻同期用パケットを受信すると、前記時刻同期用パケットの前記時刻同期装置間における発時刻および着時刻を用いて前記時刻同期装置の時計のずれであるオフセット値を計算することを特徴とする
 時刻伝送システム。
[請求項3]
 時刻同期装置間で時刻伝送補正装置を経由して時刻同期用パケットを送受信し、その送受信の時刻情報をもとに前記時刻同期装置の時刻を同期する時刻伝送システムが実行する遅延測定方法であって、
 前記時刻伝送補正装置は、第1時計部と、第2時計部と、遅延設定部と、時刻調整部と、を有しており、
 前記第1時計部は、到着した前記時刻同期用パケットにより時刻情報を同期し、
 前記第2時計部は、周波数信号に基づく時刻情報を同期し、
 前記遅延設定部は、前記時刻同期用パケットの経由元である前記時刻同期装置からの発時刻と、前記第2時計部の時刻情報から求めた自装置への前記時刻同期用パケットの到着時刻との時間差をもとに、前記時刻同期装置間の前記時刻同期用パケットの伝送遅延が設定遅延になるように前記時刻同期用パケットの待ち時間を設定し、
 前記時刻調整部は、前記第1時計部の時刻情報をもとに、前記第2時計部の時刻情報の基準時刻からの時刻のずれを補正することを特徴とする
 遅延測定方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]