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1. WO2020111271 - 皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物

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明 細 書

発明の名称 皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049  

実施例

0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065  

符号の説明

0066  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物

技術分野

[0001]
 本発明は、有効成分として、線維芽細胞を含む、皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物に関する。

背景技術

[0002]
 皮膚は生体内と生体外の環境を分ける体表を覆う器官である。皮膚は、物理的なバリアとして働き、乾燥や有害物質が生体内へ侵入することから守り、生命の維持に不可欠な役割を果たしている。
[0003]
 高等脊椎動物の皮膚は、最外層から大別すると表皮、真皮、皮下組織の層から形成されている。表皮は、主にケラチノサイト(角化細胞)と呼ばれる細胞から構成されており、表皮の最深部(基底層)でケラチノサイトが分裂しながら、上層に向かって有棘層、顆粒層、そして角層へと分化しながら表面へと移動し、やがて垢となって脱落する。
[0004]
 表皮の基底層にはメラノサイトが存在し、メラノサイト内のメラノソームによってメラニンが生成される。生成されたメラニンは、周囲のケラチノサイトに取り込まれる。取り込まれたメラニンはケラチノサイトのターンオーバーとともに角層まで移行し約40日かけて生体外へと排出される。
[0005]
 皮膚のしみ・そばかすなどの色素沈着は、ホルモンの異常や紫外線曝露、局所の炎症等により、メラノサイトでメラニンが過剰に形成されることや、メラニン顆粒が表皮基底層のケラチノサイト内に沈着することなどが原因であると考えられている。色素沈着、例えば、加齢による老人性色素斑などを治療または予防する方法や、治療剤(美白剤)が開発されているが、期待された効果が得られなかったり、一時的な効果が得られるが、効果が持続せず再発するなどの課題があり、新たな治療法または予防法や、治療剤を開発するニーズが存在し続けている。
[0006]
 近年、細胞等を用いた再生医療が開発されており、それは美容分野においても適用されている。例えば、引用文献1では、皮膚における色素脱失症の治療を目的とした、メラノサイトと線維芽細胞との混合細胞組成物を開示されている。また、引用文献2では、アンチエイジング、特に皮膚のシワを除去するために、自己の皮膚線維芽細胞を適用する方法を開示している。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 国際公開第2007/061168号公報
特許文献2 : 中国特許出願公開第106176561号明細書

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 本発明の目的は、皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物を提供することである。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者らが鋭意検討を行った結果、色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞を含む組成物を、色素沈着部位またはその近傍の真皮組織に適用することにより、皮膚の色素沈着を治療または予防可能であることを見出した。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[0010]
 [1] 有効成分として、線維芽細胞を含む、皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物であって、
 ここで前記線維芽細胞が、前記皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞であり、
 前記組成物は、前記色素沈着部位またはその近傍の真皮組織に適用されることを特徴とする、組成物。
 [2] 前記色素沈着が、老人性色素斑、脂漏性角化症、肝斑、雀卵斑および花弁状色素斑からなる群から1以上選択される疾患に由来する、[1]に記載の組成物。
 [3] 前記線維芽細胞が、生体の低露光部位または非露光部位の組織由来である、[1]または[2]に記載の組成物。
 [4] 前記線維芽細胞が、臀部、腹部、胸部、大腿部、上腕部、背部、歯肉、口腔粘膜、頭部、手掌、蹠および耳介後部からなる群から選択される組織由来である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の組成物。
 [5] 前記線維芽細胞が、自家の線維芽細胞である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の組成物。
 [6] 前記線維芽細胞が、多能性幹細胞または組織幹細胞から分化した線維芽細胞である、[1]または[2]に記載の組成物。
 [7] 前記線維芽細胞が、前記色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも細胞老化マーカーの発現が低いことを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1項に記載の組成物。
 [8] 前記細胞老化マーカーが、老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ(SA-βgal)、細胞周期チェック機構関連因子および細胞老化関連分泌現象(Senescence-associated secretory phenotype(SASP))因子からなる群から1又は2以上選択される、[7]に記載の組成物。
 [9] 細胞治療によって適用されることを特徴とする、[1]~[8]のいずれか1項に記載の組成物。
 [10] 皮膚の色素沈着を治療または予防する方法であって、
 有効成分として、線維芽細胞を含む組成物を、それを必要とする対象に適用すること、を含み、
 ここで前記線維芽細胞が、前記皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞であり、
 前記組成物は、前記色素沈着部位またはその近傍の真皮組織に適用されることを特徴とする、方法。
 [11] 皮膚の色素沈着を軽減または予防する、非治療的な美容方法であって、
 有効成分として、線維芽細胞を含む組成物を、それを必要とする対象に適用すること、を含み、
 ここで前記線維芽細胞が、前記皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞であり、
 前記組成物は、前記色素沈着部位またはその近傍の真皮組織に適用されることを特徴とする、方法。

発明の効果

[0011]
 本発明により、色素沈着部位にて生じているメラニンの過剰合成を治療または予防することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 図1は、本発明にかかる組成物を評価する方法を示す概略図である。各構成要素は、主に断面を表している。
[図2] 図2はPUVA処理または未処理の線維芽細胞の増殖性の違いを示す。(A)単層培養したPUVA処理または未処理(コントロール)の線維芽細胞の画像(培養1日目、4日目、7日目)。(B)PUVA処理後の線維芽細胞の増殖グラフ。
[図3] 図3は、PUVA処理または未処理(コントロール)の線維芽細胞における老化関連因子・SA-β-galの産生レベルの違いを示す。(A)単層培養した線維芽細胞の溶解物中のSA-β-galの酵素活性値。(B)SA-β-galの染色画像。SA-β-gal陽性細胞は青緑色に染まる。
[図4] 図4は、PUVA処理または未処理(コントロール)の線維芽細胞におけるメラニン生成促進因子SCF(Stem Cell Factor)の産生レベルの違いを示す。(A)SCF産生量の経時的な変動を示すグラフ。(B)SCF抗体を用いたSCF染色、DAPIを用いた核染色、SCF染色および核染色の融合画像(Merge)(各2枚)。
[図5] 図5は、PUVA処理または未処理(コントロール)の線維芽細胞におけるメラニン生成促進因子HGF(Hepatocyte growth factor)の産生レベルの違いを示す。(A)HGF抗体を用いたHGF染色、DAPIを用いた核染色、HGF染色および核染色の融合画像(Merge)(各2枚)。
[図6] 図6は、PUVA処理または未処理の色素沈着皮膚モデルの色素沈着を示す図である。(A)PUVA処理を行った色素沈着皮膚モデルにおける、表皮モデルの画像(培養0日目、培養21日目)。(B)PUVA未処理の色素沈着皮膚モデルにおける、表皮モデルの画像(培養0日目、培養21日目)。
[図7] 図7は、PUVA処理の真皮モデルと約10日間共培養した表皮モデルを、PUVA未処理の真皮モデル上に移し替えて約10日間培養した後の、表皮モデルの画像である。
[図8] 図8は、PUVA処理または未処理(コントロール)の色素沈着皮膚モデル、およびPUVA処理の色素沈着皮膚モデルの表皮モデルを、PUVA未処理の真皮モデル上に移し替えて培養した表皮モデル(Replace)の色素沈着を示す。(A)位相差顕微鏡の明視野で観察条件を固定して撮影した表皮モデルの画像。(B)(A)の画像を二値化処理し、色素沈着領域の割合を定量化したグラフ。
[図9] 図9は、PUVA処理または未処理(コントロール)の色素沈着皮膚モデル、およびPUVA処理の色素沈着皮膚モデルの表皮モデルを、PUVA未処理の真皮モデル上に移し替えて培養した表皮モデル(Replace)中のメラニン顆粒を示す。(A)フォンタナマッソン染色法により表皮モデル切片のメラニン顆粒を染色。(B)(A)の画像を二値化処理し、メラニン顆粒領域の割合を定量化したグラフ。
[図10] 図10は、PUVA処理または未処理(コントロール)の色素沈着皮膚モデル、およびPUVA処理の色素沈着皮膚モデルの表皮モデルを、PUVA未処理の真皮モデル上に移し替えて培養した表皮モデル(Replace)中の活性化メラノサイトを示す。(A)TRP2(Tyrosine Related Protein 2)抗体を用いて表皮モデル切片の活性化メラノサイトを染色、およびヘマトキシリン染色法で核染色した画像。(B)(A)の画像から活性化メラノサイトの割合を定量化したグラフ。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照しながら説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに限定されない。
[0014]
 本明細書において、「第1」「第2」「第3」等の用語は、1つの要素をもう1つの要素と区別するために用いており、例えば、第1の要素を第2の要素と表現し、同様に第2の要素を第1の要素と表現してもよく、これによって本発明の範囲を逸脱するものではない。
[0015]
 特段の定義がない限り、本明細書で使用する用語(技術的用語および科学的用語)は、当業者が一般に理解している用語と同一の意味を有する。
[0016]
 <皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物>
 一実施態様において、本発明は、有効成分として、線維芽細胞を含む、皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物であって、ここで前記線維芽細胞が、前記皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞であり、前記組成物は、前記色素沈着部位またはその近傍の真皮組織に適用されることを特徴とする、組成物を提供する。本発明により、表皮に存在するメラノサイトによるメラニンの過剰合成を抑制し、その結果、皮膚の色素沈着を治療または予防することを可能とし、また、皮膚の色素沈着を軽減または予防する美容方法にも用いることができる。本明細書において、「色素沈着部位の近傍の真皮組織」とは、色素沈着部位の周辺部に存在する真皮組織であり、例えば、色素沈着部位の境界から1cm以内、好ましくは5mm以内、より好ましくは3mm以内、最も好ましくは1mm以内の領域に含まれる真皮組織をいう。
[0017]
 色素沈着は、ホルモンの異常や紫外線曝露、局所の炎症等により、メラノサイトでメラニンが過剰に形成されることや、メラニン顆粒が表皮基底層のケラチノサイト内に沈着すること等によって引き起こされると考えられている。色素沈着としては、例えば、老人性色素斑、脂漏性角化症、肝斑、雀卵斑および花弁状色素斑等の疾患によって引き起こされる。すなわち、本発明を適用することにより、色素沈着部位のメラノサイトからのメラニンの過剰合成が抑制され、色素沈着を治療または予防することが可能とし、また、皮膚の色素沈着を軽減または予防する美容方法にも用いることができる。
[0018]
 線維芽細胞とは、結合組織を構成する細胞の一つであり、多くの臓器および組織に存在している細胞である。線維芽細胞は、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの真皮を構成する成分を産生する。本発明の組成物は、皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞を含んでいる。本明細書において、「皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞」とは、皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞と比べて、DNAの損傷が少ない線維芽細胞をいう。一般に、細胞に含まれる遺伝情報を担うDNAは、活性酸素、紫外線、放射線および/または化学物質などによって、絶えず損傷を受けている。これらのDNA損傷は、細胞に備わった種々のDNA修復機構が働くことによって修復されている。しかしながら、DNAの損傷の発生頻度がDNA修復速度を超えると、DNA修復が追いつかなくなり、DNA損傷が蓄積する。その結果、細胞のDNAに変異が蓄積され、細胞が老化した状態が進行する。
[0019]
 「皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞」とは、皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも細胞老化の程度が低い線維芽細胞ということもできる。また、皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも、細胞のサイズが小さい、および/または増殖性が高い線維芽細胞ということもできる。細胞老化は、例えば、細胞老化マーカーの発現を調べることによって評価することができる。細胞老化マーカーとしては、例えば、老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ(SA-βgal)、細胞周期チェック機構関連因子(例えば、p16 INK4a、p21 CIP1、および/またはp53など)、および細胞老化関連分泌現象(Senescence-associated secretory phenotype(SASP))因子等が知られており、これらの1又は2以上の発現量を調べることにより、細胞老化の程度を比較することができる。
[0020]
 SASP因子には、炎症性サイトカイン、ケモカイン、増殖因子や細胞外マトリックス分解酵素などを含み、限定されないが、例えば、GM-CSF、GRO-α、GRO-β、GRO-γ、IGFBP-7、IL-1α、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-1、MCP-2、MIP-1α、MMP-1、MMP-10、MMP-3、アンフィレギュリン、ENA-78、イオタキシン-3、GCP-2、GITR、HGF、ICAM-1、IGFBP-2、IGFBP-4、IGFBP-5、IGFBP-6、IL-13、IL-1β、MCP-4、MIF、MIP-3α、MMP-12、MMP-13、MMP-14、NAP2、オンコスタチンM、オステオプロテゲリン、PIGF、RANTES、sgp130、TIMP-2、TRAIL-R3、Acrp30、アンジオゲニン、Axl、bFGF、BLC、BTC、CTACK、EGF-R、Fas、FGF-7、G-CSF、GDNF、HCC-4、I-309、IFN-γ、IGFBP-1、IGFBP-3、IL-1 R1、IL-11、IL-15、IL-2R-α、IL-6R、I-TAC、レプチン、LIF、MMP-2、MSP-a、PAI-1、PAI-2、PDGF-BB、SCF、SDF-1、sTNF RI、sTNF RII、トロンボポイエチン、TIMP-1、tPA、uPA、uPAR、VEGF、MCP-3、IGF-1、TGF-β、MIP-1-デルタ、IL-4、FGF-7、PDGF-BB、IL-16、BMP-4、MDC、MCP-4、IL-10、TIMP-1、Fit-3リガンド、ICAM-1、Axl、CNTF、INF-γ、EGF、BMP-6等が挙げられる。これらの因子の1又は2以上の発現量を調べることにより、細胞老化の程度を比較することもできる。
[0021]
 細胞老化マーカーを定量する方法としては、公知の方法を用いればよく、限定されないが、例えば、ELISA法、リアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法、ノーザンブロット法、フローサイトメーター法、またはマイクロアレイ法等を用いることができ、これらの方法によって細胞老化マーカーの発現量を比較することができる。皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞、例えば、色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも細胞老化マーカーの発現量が低い線維芽細胞を含む組成物を、色素沈着部位またはその近傍の真皮組織に適用することにより、色素沈着を治療または予防することができる。
[0022]
 一実施態様において、本発明に用いられる線維芽細胞は、生体の低露光部位あるいは非露光部位の組織由来の線維芽細胞を用いてもよい。本明細書において「生体の低露光部位あるいは非露光部位の組織」とは、ヒトが日常生活を送る際の多くの時間において、被服または毛髪等によって被われている部位であって、光に曝露される頻度が(例えば、顔面と比較して)相対的に低い部位をいい、例えば、臀部、腹部、胸部、大腿部、上腕部、背部、歯肉、口腔粘膜、頭部、手掌、蹠または耳介後部等の組織が挙げられる。低露光部位の組織由来の線維芽細胞であれば、光、特に紫外線に曝露された頻度が低いため、損傷が少なく好ましい。一実施態様において、本発明に用いられる線維芽細胞は、生体組織を細かく刻み、コラゲナーゼ、トリプシン等のタンパク質分解酵素で処理されて得られた初代線維芽細胞であってもよく、得られた初代線維芽細胞を継代して増殖させた線維芽細胞であってもよい。また、一実施態様において、本発明に用いられる線維芽細胞は、公知の培地を用いて培養されたものであってもよい。
[0023]
 一実施態様において、本発明に用いられる線維芽細胞は、自家由来の線維芽細胞であってもよい。自家由来の線維芽細胞であれば、対象に適用された場合に免疫反応によって拒絶されず、好ましい。
[0024]
 一実施態様において、本発明に用いられる線維芽細胞は、多能性幹細胞または組織幹細胞から分化した線維芽細胞であってもよい。多能性幹細胞は、iPS細胞、ES細胞またはMuse細胞などであってもよく、これらの多能性幹細胞から、公知の方法によって分化誘導することによって得られる線維芽細胞あるいは分化誘導の過程で得られる線維芽細胞の前駆細胞(例えば、間葉系幹細胞を含む)を用いてもよい。
[0025]
 本明細書において、「真皮組織(真皮ともいう)」とは、皮膚において、表皮と皮下組織との間に存在する組織であり、主に線維芽細胞と、コラーゲン、弾性線維(エラスチン)、細胞外マトリックス、ヒアルロン酸などによって構成されている。本発明の組成物は、色素沈着部位またはその近傍の真皮組織に適用することにより、色素沈着部位に存在するメラノサイトに直接的または間接的に作用し、メラニンの過剰産生を抑制することができる。本発明の組成物を適用する方法としては、細胞治療を提供するための当技術分野で公知の任意の手段、例えば、懸濁液状の組成物を注射器によって注射する方法であってもよい。
[0026]
 本発明の組成物は、線維芽細胞の他、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。本明細書において「薬学的に許容可能な担体」とは、各国政府の規制機関により承認されており、動物、特にヒトにおいて使用することができる、希釈液、アジュバント、賦形剤、又はベヒクル等をいう。一実施形態において、本発明の組成物に含まれてもよい担体としては、生理学的緩衝溶液、注入可能ゲル溶液、生理食塩水、及び水が挙げられ、これらに限定されない。本発明に用いることができる生理学的緩衝溶液は、例えば、緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、ハンク平衡塩溶液、トリス緩衝生理食塩水、及びHEPES緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されない。
[0027]
 本発明に用いることができる注入可能なゲル溶液は、注入の前にゲル形態であってもよく、注入後にゲル化するものであってもよい。注入可能なゲル溶液は、例えば、水、生理食塩水又は生理学的緩衝溶液、及びゲル化物質から構成される。ゲル化物質の例としては、タンパク質類(コラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、ゼラチン、フィブリン、トロポエラスチン、ポリペプチド類、ラミニン、プロテオグリカン類、フィブリン糊、自己集合ペプチドヒドロゲル類、アテロコラーゲン等)、多糖類(ペクチン、セルロース、酸化セルロース、キチン、キトサン、アガロース、ヒアルロン酸等)、ポリヌクレオチド類(リボ核酸類、デオキシリボ核酸類等)、アルギン酸塩、架橋アルギン酸塩、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリレート、モノステアロイルグリセロールコスクシネート/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)のコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
[0028]
 本発明の組成物に含まれる線維芽細胞の数は、適用される色素沈着の部位の大きさ、色素沈着の程度、対象の年齢、対象疾患、適用方法等に応じて適宜決定されるため、限定されない。
[0029]
 <皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物を評価する方法>
 本発明の組成物は、例えば、図1の色素沈着皮膚モデル1aを用いることによって評価することができる。例えば、以下の手順を含む方法によって評価することができる。
[0030]
 (1)光照射により線維芽細胞100に損傷を与えた後、培養する工程(図1(A)に相当)、
 (2)前記工程(1)で得られる線維芽細胞100を、第1セルカルチャーインサート11上で、培養する工程(図1(B)に相当)、
 (3)メラノサイト202とケラチノサイト201とを含む細胞群200を、第2セルカルチャーインサート21上で、培養する工程(図1(C)に相当)、
 (4)前記工程(2)で得られる線維芽細胞100の上に、前記工程(2)で得られる線維芽細胞100が培養されている第2セルカルチャーインサート21を設置し、培養する工程(図1(D)に相当)、
 (5)組成物300を、第3セルカルチャーインサート31上で培養する工程(図1(E)に相当)、
 (6)前記工程(5)で得られる組成物300が培養されている第3セルカルチャーインサート31上に、前記工程(4)で得られる線維芽細胞100が培養されている第2セルカルチャーインサート21を移し替え、培養する工程(図1(F)に相当)、
 (7)前記工程(6)で得られるメラノサイト202とケラチノサイト201とを含む細胞群200における色素産生および/または色素沈着の度合いを指標として、組成物300の治療または予防効果を評価する工程。
[0031]
 本明細書において、線維芽細胞100が培養されている第1セルカルチャーインサート11、および組成物300が培養されている第3セルカルチャーインサート31は、皮膚の真皮の構造を模していることから、「真皮モデル」(第1真皮モデル10または第2真皮モデル30)と呼ぶことがある。また、本明細書において、細胞群200を含む構造は、皮膚の表皮の構造を模していることから、「表皮モデル20」と呼ぶことがある。
[0032]
 線維芽細胞100は、好ましくは光増感剤の存在下で光照射され、損傷が与えられる。用いられる光増感剤としては、例えば、ソラレン、NAD、リボフラビン、トリプトファン、葉酸、ポルフィリン、メチレンブルー、チノール基で保護された金ナノクラスター(AUxSRy)などが挙げられる。光増感剤を用いることにより、照射された光が増感され、効率よく線維芽細胞100に損傷を与えることができる。
[0033]
 線維芽細胞100に損傷を与える時に用いられる光は、細胞内の核酸、例えばDNAやRNAに損傷を与えるが、全ての細胞が死滅しない程度の波長であればよく、紫外光(約200nm~約400nm)であることが好ましく、より好ましくはUVA(約320nm~約400nm)である。照射する光の強さは、細胞内の核酸、例えばDNAやRNAに損傷を与えるが、アポトーシス等が誘導されて全ての細胞が死滅しない程度であればよく、波長や照射する時間、細胞密度などによって適宜調整すればよい。例えば、UVAを照射する場合、0.01J/cm ~100J/cm 、好ましくは0.1J/cm ~20J/cm 、より好ましくは0.5J/cm ~10J/cm を照射すればよい。
[0034]
 光照射した線維芽細胞を一定期間培養することによって、アポトーシス等が誘導されず、生存した線維芽細胞100のみを増殖させることができる(図1の(A)に相当)。光照射によって損傷を受けた線維芽細胞は、例えば、細胞の形態が伸長し、増殖能力が低下し、老化関連因子(老化関連酸性βガラクトシダーゼ(SA-β-gal))、メラニン生成因子(例えば幹細胞増殖因子(SCF)、肝細胞増殖因子(HGF)など)の産生量が増加するなど、細胞老化のレベルが増加した特徴を示す(図2、図3、図4、図5参照)。細胞老化のレベルは、上述の細胞老化マーカーを測定することによって調べることができる。光照射量を調節することよって、所望の細胞老化レベルの線維芽細胞100を得ることができる。
[0035]
 第2セルカルチャーインサート21は、第1セルカルチャーインサート11および第3セルカルチャーインサート31の内径よりも小さい。これにより、第2セルカルチャーインサート21を、第1セルカルチャーインサート11および第3セルカルチャーインサート31の培養部分に挿入して使用することが可能となる。
[0036]
 色素沈着皮膚モデル1に用いられる細胞は、いずれの動物由来であってもよいが、脊椎動物由来が好ましく、哺乳動物由来がより好ましく、ヒト由来であることが最も好ましい。
[0037]
 色素沈着皮膚モデル(1、1a)に用いられる線維芽細胞100は、好ましくは真皮由来の線維芽細胞である。
[0038]
 ケラチノサイト201とは、表皮を構成する細胞の一つであり、生体の表皮組織においては、最深部(基底層)で分裂しながら上層に向かって有棘層、顆粒層、そして角層へと分化しながら表面へ移動し、やがて垢となって脱落する細胞である。
[0039]
 メラノサイト202とは、表皮組織を構成する細胞の一つであり、生体においては表皮の基底層に存在し、メラニンを形成する細胞である。
[0040]
 色素沈着皮膚モデル(1、1a)に用いられる線維芽細胞100、ケラチノサイト201およびメラノサイト202は、それぞれ、生体組織から採取された初代培養細胞であってもよく、予め単離および/または増殖され市販または頒布されている細胞であってもよく、株化された細胞であってもよく、ES細胞、iPS細胞、又はMuse細胞等の多能性幹細胞から分化誘導された細胞であってもよい。
[0041]
 第1真皮モデル10は、線維芽細胞100以外の細胞が含まれていてもよく、例えば、真皮組織に含まれている肥満細胞、組織球、形質細胞、真皮樹状細胞などが含まれていてもよい。第1真皮モデル10に含まれる線維芽細胞は、例えば、1×10 ~10 個/cm 、好ましくは0.1~10×10 個/cm の細胞数を含んでいる。
[0042]
 第1真皮モデル10は、線維芽細胞100が、ハイドロゲル化剤とともに播種されることが好ましい。本明細書において、「ハイドロゲル化剤」とは、ハイドロゲルを形成するために添加される物質をいう。本発明において用いられるハイドロゲル化剤としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロナート、ヒアルロナン、フィブリン、アルギナート、アガロース、キトサン、キチン、セルロース、ペクチン、デンプン、ラミニン、フィブリノーゲン/トロンビン、フィブリリン、エラスチン、ガム、セルロース、寒天、グルテン、カゼイン、アルブミン、ビトロネクチン、テネイシン、エンタクチン/ニドジェン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、ポリ(アクリル酸)およびその誘導体、ポリ(エチレンオキシド)およびその共重合体、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、マトリゲルならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
[0043]
 工程(2)は、アスコルビン酸またはその塩の存在下で実施されてもよい。アスコルビン酸またはその塩が存在すると、線維芽細胞100の増殖やコラーゲン産生が促進されることにより真皮の構造のように重層化が促進されたりするため、好ましい。本明細書において、「アスコルビン酸」とは、アスコルビン酸又はその誘導体(例えば、アスコルビン酸2リン酸、アスコルビン酸1リン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸2-グルコシド等)をいい、さらに、その塩(ナトリウム塩、マグネシウム塩等)も含まれる。
[0044]
 細胞群200は、ケラチノサイト201およびメラノサイト202以外の細胞が含まれていてもよく、例えば表皮組成に含まれるランゲルハンス細胞や、メルケル細胞が含まれていてもよい。細胞群200は、例えば、ケラチノサイト201:メラノサイト202が、1:1~1000:1、好ましくは30:1~3:1の比の細胞を含んでいる。細胞群200は、例えば、ケラチノサイト201が1×10 ~10 個/cm 、好ましくは1.0~10×10 個/cm 、より好ましくは約4~8×10 個/cm を含み、メラノサイト202が、1~10×10 個/cm 、好ましくは4~8×10 個/cm を含んでいる。
[0045]
 表皮モデル20は、例えば、市販もされている、TESTSKIN(商標)LSE-melano(TOYOBO)、MelanoDerm(商標)(MatTek)などを用いることができる。
[0046]
 色素沈着皮膚モデル1は、例えば培養液として通常のケラチノサイト培養に用いられる培養液、例えばKG培地、EpilifeKG2(クラボウ)、Humedia-KG2(クラボウ)、アッセイ培地(TOYOBO)などを用い、約37℃で0~30日間かけて培養することができる。培地としては、その他にDMEM培地(GIBCO)又はアスコルビン酸含有KGMとDMEMを1:1混合した培地などが使用できる。
[0047]
 色素沈着皮膚モデル1は、光照射により損傷が与えられた線維芽細胞が直接または間接的にメラノサイトに作用し、メラニンの産生が促進される。従って、色素沈着皮膚モデル1の色素産生および/または色素沈着の度合いを測定することによって、色素沈着に影響を及ぼす因子について評価することができる。
[0048]
 本明細書において「色素産生」とは、色素沈着皮膚モデルが産生する色素、例えば、メラニン色素の産生をいう。メラニン色素は主にメラノサイトによって産生される。色素産生量は、例えば色素沈着皮膚モデル、特に第2細胞群(ケラチノサイトおよびメラノサイト)からメラニン色素を抽出して、405nmの吸光度を測定することによってメラニン量を求めることができる。また、色素産生量は、例えば色素沈着皮膚モデル、特に第2細胞群(ケラチノサイトおよびメラノサイト)に含まれるメラニンまたはそれをコードする核酸量(例えばmRNA量)を、ELISA法、フローサイトメーター法、ウエスタンブロット法、免疫組織化学法、qPCR法等の方法を用いることによって測定することができるが、これに限定されない。
[0049]
 本明細書において、「色素沈着の度合い」とは、可視光下における色素沈着皮膚モデル、特に第2細胞群(ケラチノサイトおよびメラノサイト)の色の明度をいう。本発明の色素沈着皮膚モデルは、メラノサイトが産生するメラニン量に依存して明度が変化する。そのため、メラニン量が多くなると明度が低下し、色素沈着皮膚モデルは濃い色を呈する。逆にメラニン量が低下すると明度が上昇し、色素沈着皮膚モデルは淡い色を呈する。すなわち、色素沈着皮膚モデルの色の明度を比較することによって、添加される候補物質による色素沈着の治療または予防効果を評価することができる。明度は、色素沈着皮膚モデルを画像として記録し、公知の画像測定手段を用いることによって定量することができる。
実施例
[0050]
 以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
[0051]
 1.使用した材料及び方法
 1-1.線維芽細胞の培養およびPUVA処理
 1×10 個の正常ヒト線維芽細胞を増殖用培地(DMEM+10%牛胎児血清)で培養した。100%コンフルエントになる前にソラレン(終濃度25ng/mL)(SigmaAldrich社製)を加えた増殖用培地に置換し、培養した。24時間後に1mLのリン酸緩衝液(PBS)で膨潤させた後、PBSを取り除き、ソラレン(終濃度25ng/mL)を加えた1mLのPBSに置換し、6J/cm  UVA照射(SAN-EI UVE-502S)を行った(以下、「PUVA処理」という)。その後、1mLのPBSで膨潤させた後、PBSを取り除いて、増殖用培地に置換し、2~7日程度培養した。その過程で、PUVA処理の影響で細胞が一部死滅するが、その後、生存している線維芽細胞が増殖した。PUVA未処理の同一ドナー由来線維芽細胞を上記PUVA処理線維芽細胞に対するコントロールとした(図2~5)。
[0052]
 1-2.真皮モデルの作製
 上記1-1.においてPUVA処理、またはPUVA未処理(コントロール)の線維芽細胞をそれぞれ用いて真皮モデルを作製した。簡単に述べると、上記1.の手順後、増殖用培地を取り除いて1mLのPBSで膨潤させた。その後、PBSを取り除き、細胞剥離剤(TrypLE SELECT、Thermo Fisher Scientific社製)を6穴プレートの1ウェルあたり300μL添加し、37℃ 5%CO インキュベーター内に5分間静置し、細胞剥離処理を行った。増殖用培地を添加して反応を停止させ、15ml遠沈管に細胞懸濁液を回収した。1000rpmで5分間遠心後、上清を除去し、細胞ペレットを増殖用培地で再懸濁し、5×10 個の細胞/mLとなるように調整した。6穴プレートの各ウェルに適用可能な真皮モデルを作製するにあたり、表1の組成からなるゲル懸濁液を氷上にて調製した。
[表1]


[0053]
 6穴プレートに真皮モデル作製用セルカルチャーインサートを設置し、セルカルチャーインサート内に3mLゲル懸濁液を添加した。37℃ 5%CO インキュベーターでゲル懸濁液を固化させた後、6穴プレートにアスコルビン酸(AA2G)を含有する増殖用培地を2mL添加し、37℃ 5%CO インキュベーターにて24時間培養した。
[0054]
 1-3.表皮モデルとの組み合わせた色素沈着皮膚モデル
 上記真皮モデルとは別に、メラノサイトとケラチノサイトで構成された市販の表皮モデル(MatTek社製)を使用した(図1(C)参照)。
[0055]
 表皮モデルを、上記1-2.の真皮モデルの上に載せて組み合わせ(図1(D)参照)、専用容器(コーニング・バイオコート、ディープウェルプレート、6穴用)(Corning #355467)に設置し、9.5mLの三次元皮膚モデル用培地(表皮モデル専用培地(MatTek #EPI-100-NMM-113)とDMEMを1:1で混合したもの)を加え、3~4日に1回の頻度にて同培地で培地交換を行った。
[0056]
 1-4.真皮モデルを置き換えた色素沈着皮膚モデル
 PUVA処理線維芽細胞を用いて作製した真皮モデルと組み合わせて10日間培養した表皮モデルを、PUVA未処理の正常線維芽細胞を用いて作製した真皮モデルと置き換え、さらに10日間培養を行った(図1(E)および(F)参照)。なお、置き換え用真皮モデル(PUVA未処理の線維芽細胞を用いて作製した真皮モデル)は、置き換える前日に作製した。
[0057]
 2.結果
 2-1.PUVA処理後の線維芽細胞
 図2は、PUVA処理後及び未処理の線維芽細胞を示している。PUVA処理後の線維芽細胞は、伸長していた(図2(A))。PUVA処理後及び未処理の線維芽細胞の増殖数の変動を調べたところ、PUVA処理後の線維芽細胞は増殖速度が著しく低下していた(図2(B))。
[0058]
 2-2.PUVA処理後の線維芽細胞の老化レベル
 PUVA処理後及び未処理の線維芽細胞それぞれの細胞溶解物中の老化関連因子SA-β-galの酵素活性値について調べたところ、PUVA処理後の線維芽細胞はSA-β-galの酵素活性値が著しく増加していた(図3(A))。また、SA-β-galの染色を行ったところ、PUVA処理後の線維芽細胞は著しく多数のSA-β-gal陽性細胞(青緑色)が観察された(図3(B))。
[0059]
 2-3.PUVA処理後の線維芽細胞のメラニン生成因子・SCFの産生レベル
 PUVA処理後及び未処理の線維芽細胞それぞれ単層培養し、PUVA処理1日前、PUVA処理0、1、3、7、14、21日目に培養上清に含まれるSCF量をELISA法で測定し、1細胞あたりの分泌量として算出したところ、PUVA処理後の線維芽細胞のSCFレベルは著しく増加していた(図4(A))。また、SCF抗体を用いてSCF染色、DAPIによる核染色を行い、SCF染色および核染色の融合画像(Merge)を作成した結果、PUVA処理後の線維芽細胞においてSCF陽性細胞が多数観察された(図4(B))。
[0060]
 2-4.PUVA処理後の線維芽細胞のメラニン生成因子・HGFの産生レベル
 PUVA処理後及び未処理の線維芽細胞それぞれ単層培養し、HGF抗体を用いてHGF染色、DAPIによる核染色を行い、HGF染色および核染色の融合画像(Merge)を作成した結果、PUVA処理後の線維芽細胞においてHGF陽性細胞が多数観察された(図5(A))。
[0061]
 2-5.PUVA処理後の線維芽細胞のメラニン生成因子・HGFの産生レベル
 図6は、PUVA処理後(A)または未処理(B)の色素沈着皮膚モデルにおける、表皮モデルの色素沈着を示す図である。PUVA処理を行った色素沈着皮膚モデルにおける、表皮モデルは、色素沈着が促進されていることが観察された。
[0062]
 2-6.真皮モデルを置き換えた色素沈着皮膚モデル
 PUVA処理線維芽細胞を用いて作製した真皮モデルと組み合わせて10日間培養した表皮モデルを、PUVA未処理の正常線維芽細胞を用いて作製した真皮モデルと置き換え、さらに10日間培養を行った結果、PUVA処理を行った色素沈着皮膚モデルにおける表皮モデルの色素沈着(図6(A))に比べて色素沈着が抑制されていることが観察された(図7)。
[0063]
 2-7.PUVA処理、未処理、真皮モデルを置き換えた色素沈着皮膚モデルの色素沈着
 PUVA処理または未処理(コントロール)の色素沈着皮膚モデル、およびPUVA処理の色素沈着皮膚モデルの表皮モデルを、PUVA未処理の真皮モデル上に移し替えて培養した表皮モデル(Replace)の外観について観察したところ、PUVA処理の色素沈着皮膚モデルの表皮モデルで色素沈着が促進したのに対し、Replace条件の表皮モデルでは色素沈着が緩和している様子が観察された(図8(A))。図8(A)の画像を元に定量化を行ったところ、PUVA処理の色素沈着皮膚モデルで最も色素濃化領域の割合が高いのに対して、Replace条件の色素沈着皮膚モデルでは色素濃化領域が減少することが示された(図8(B))。
[0064]
 2-8.PUVA処理、未処理、真皮モデルを置き換えた色素沈着皮膚モデルのメラニン生成
 PUVA処理または未処理(コントロール)の色素沈着皮膚モデル、およびPUVA処理の色素沈着皮膚モデルの表皮モデルを、PUVA未処理の真皮モデル上に移し替えて培養した表皮モデル(Replace)で切片を作成し、フォンタナマッソン染色法により表皮モデル切片のメラニン顆粒を染色した(図9(A))。また、図9(A)の染色像を二値化処理し、メラニン顆粒領域の割合を定量化したところ、PUVA処理の色素沈着皮膚モデルで最もメラニン領域の割合が高いのに対して、Replace条件の色素沈着皮膚モデルではメラニン領域が減少することが示された(図9(B))。
[0065]
 2-9.PUVA処理、未処理、真皮モデルを置き換えた色素沈着皮膚モデルのメラノサイト数
 PUVA処理または未処理(コントロール)の色素沈着皮膚モデル、およびPUVA処理の色素沈着皮膚モデルの表皮モデルを、PUVA未処理の真皮モデル上に移し替えて培養した表皮モデル(Replace)で切片を作成し、TRP2抗体を用いて表皮モデル切片の活性化メラノサイトを染色し、ヘマトキシリン染色法で核を染色した(図10(A))。図10(A)の画像から活性化メラノサイトの割合を定量化したところ、PUVA処理の色素沈着皮膚モデルで最も活性化メラノサイト数の割合が高いのに対して、Replace条件の色素沈着皮膚モデルでは活性化メラノサイト数が減少することが示された(図10(B))。

符号の説明

[0066]
 1、1a  色素沈着皮膚モデル
 10  第1真皮モデル
 100  線維芽細胞
 11  第1セルカルチャーインサート
 12  第1細胞培養容器
 13  第1培地
 14  第2培地
 20  表皮モデル
 200  メラノサイトとケラチノサイトとを含む細胞群
 201  ケラチノサイト
 202  メラノサイト
 21  第2セルカルチャーインサート
 22  第2細胞培養容器
 23  第3培地
 24  第4培地
 30  第2真皮モデル
 300  組成物
 31  第3セルカルチャーインサート
 32  第3細胞培養容器
 RD  光照射
 dFB  光照射による損傷を受けた線維芽細胞

請求の範囲

[請求項1]
 有効成分として、線維芽細胞を含む、皮膚の色素沈着を治療または予防するための組成物であって、
 ここで前記線維芽細胞が、前記皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも損傷が少ない線維芽細胞であり、
 前記組成物は、前記色素沈着部位またはその近傍の真皮組織に適用されることを特徴とする、組成物。
[請求項2]
 前記色素沈着が、老人性色素斑、脂漏性角化症、肝斑、雀卵斑および花弁状色素斑からなる群から1以上選択される疾患に由来する、請求項1に記載の組成物。
[請求項3]
 前記線維芽細胞が、生体の低露光部位または非露光部位の組織由来である、請求項1または2に記載の組成物。
[請求項4]
 前記線維芽細胞が、臀部、腹部、胸部、大腿部、上腕部、背部、歯肉、口腔粘膜、頭部、手掌、蹠および耳介後部からなる群から選択される組織由来である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項5]
 前記線維芽細胞が、自家の線維芽細胞である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項6]
 前記線維芽細胞が、多能性幹細胞または組織幹細胞から分化した線維芽細胞である、請求項1または2に記載の組成物。
[請求項7]
 前記線維芽細胞が、前記皮膚の色素沈着部位に局在する線維芽細胞よりも細胞老化マーカーの発現が低いことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
[請求項8]
 前記細胞老化マーカーが、老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ(SA-βgal)、細胞周期チェック機構関連因子および細胞老化関連分泌現象(Senescence-associated secretory phenotype(SASP))因子からなる群から1又は2以上選択される、請求項7に記載の組成物。
[請求項9]
 細胞治療によって適用されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]