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1. WO2020105642 - 歯科用清掃材及び歯科用仮着材除去材

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明 細 書

発明の名称 歯科用清掃材及び歯科用仮着材除去材

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

非特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013   0014  

課題を解決するための手段

0015  

発明の効果

0016  

発明を実施するための形態

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075  

実施例

0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104  

産業上の利用可能性

0105  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30  

明 細 書

発明の名称 : 歯科用清掃材及び歯科用仮着材除去材

技術分野

[0001]
 本発明は、陶材、セラミックス、金属酸化物、無機フィラーと樹脂とを含む歯科用コンポジットレジン硬化物(以下、単に「歯科用コンポジットレジン硬化物」と表現する)などの歯科用修復物、及び歯面などの支台歯の清掃などに用いる歯科用清掃材に関する。また、本発明は、歯科用仮着材除去材に関する。

背景技術

[0002]
 従来、歯科分野での修復治療において、歯科用修復物は、陶材、セラミックス、金属酸化物、歯科用コンポジットレジン硬化物などからなり、様々な様式で歯の欠損部に適合させるために使用されてきた。この歯科用修復物は、一般的に、適合性を確認する目的で、固定する前に予備的に挿入する試適を行う。その際、歯科用ラバーダムを使用した場合でも、タンパク質含有体液(例えば唾液、歯液、血液など)による歯科用修復物及び支台歯の汚染は、事実上不可避である。これらのタンパク質含有体液等は、その後の歯科用修復物と支台歯との接着の際に、歯科用修復物と歯科用接着材若しくは歯科用セメントとの間、又は、支台歯と歯科用接着材若しくは歯科用セメントとの間での接着性低下をもたらす。このタンパク質含有体液による汚染を除去するための手段として、歯科用清掃材が提案されている(特許文献1及び2)。
[0003]
 特許文献1には、歯面のプラークや着色などを除去する方法として歯面清掃材のことが記載されている。特許文献2には、歯科用修復物の洗浄、特に、タンパク質汚染物質を除去するための洗浄用粒子を含有する組成物のことが記載されている。
[0004]
 また、大きな窩洞や支台歯の暫間修復においては咬合及び接触関係の保持を重視して、常温重合レジン等で作製された暫間修復物を仮着材と呼ばれる暫間材料にて仮着する処置が一般的に行われている。なお、最終修復物として補綴物を使用しない充填修復治療等においては、当該目的に使用される材料は仮封材とも呼ばれるが、本明細書中では仮着材の一種として仮封材も含むこととする。
[0005]
 仮着材は、最終修復物の合着に使用される合着材のように長期間に渡って高い接着強さを要求されるものではなく、最終修復物が装着されるまでの1~数週間という比較的短い期間において、暫間的な修復物を窩洞や支台歯へ固定できる接着強さを有すればよい。一般的な仮着材の種類としては、(1)フレッチャーセメント、(2)ユージノール系仮着材、(3)非ユージノール系仮着材、(4)カルボン酸系仮着材などが挙げられる(例えば、特許文献3を参照)。
[0006]
 (1)フレッチャーセメントは、主成分として酸化亜鉛とアラビアゴムとを含むものであり、これらを蒸留水で泥状に錬和して用いられる。(2)ユージノール系仮着材は、主成分として酸化亜鉛とユージノールを含むことが一般的であり、仮封材としても多くの製品がある。(3)非ユージノール系仮着材は、主成分として酸化亜鉛と脂肪族化合物あるいは芳香族化合物とを含み、ユージノールを含まない。(4)カルボン酸系仮着材は、主成分として酸化亜鉛とポリアクリル酸とを含み、歯質(象牙質)を強化する効果のあるHY材と呼ばれるタンニンフッ化物合材が配合されている。
[0007]
 ところで、仮着材は最終修復物の合着操作の際には、歯質等からなる窩洞や支台歯から完全に除去されていることが望ましく、残存していると最終修復物と歯質等との接着強さに大きく影響を及ぼす因子になるとされている(例えば、非特許文献1を参照)。
[0008]
 現在の仮着材の除去方法としては、エアスケーラーや回転ブラシによる機械的な処理、超音波洗浄処理などが挙げられる(例えば、非特許文献2を参照)。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開2016-003213号公報
特許文献2 : 特許第5607559号公報
特許文献3 : 特許第5522909号公報

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : Journal of Dentistry, Volume 40, Issue 2, February 2012, Pages 131-138.
非特許文献2 : Journal of Oral Science 2005 ; Vol.47, No.1, 9-13.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 しかしながら、特許文献1には、pH12~13の水、界面活性剤、塩基性物質を含む歯科用清掃材が定義されているが、強アルカリ性であることから口腔内では使用不可であり、安全性に問題があった。また、特許文献2には、歯科用修復材料の接着剤固定の範囲内で、タンパク質汚染物質を除去するための洗浄用粒子を含有する組成物について記載されているが、この組成物は水酸化ナトリウムを含む塩基性物質であることから、口腔内では使用不可であり、安全性に問題があった。
[0012]
 また、歯科用清掃材としては冷蔵庫内で保管中に析出物の生成を抑制する必要がある。析出物の生成により、組成物が不均一となり性能にばらつきが生じる可能性がある。また、洗浄中に固体が補綴物表面に残留することで接着性低下を招く恐れがある。
[0013]
 また、非特許文献1及び2には、仮着材をエアスケーラーによる塊の除去や超音波処理による洗浄では接着強さの低下を招く恐れがあることが記載されている。また、非特許文献2には、回転ブラシを用いた機械的刺激による洗浄によって仮着材が除去されていると記載されているが、当該除去方法では、技術者の手技に大きく依存するばかりか院内に当該設備を保有していない場合もある。そのため、洗浄方法として推奨するのは難しく、より簡便な処理により仮着材が除去できる方法が求められている。
[0014]
 上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、析出物の生成を抑制することで性能のばらつきをなくし、その上で歯科用修復物、及び支台歯のタンパク質含有体液による汚染に対して優れた洗浄性を示し、洗浄後の接着耐久性に優れ、かつ口腔内で使用した際にも安全である歯科用清掃材を提供することである。また、上記事情に鑑み、発明が解決しようとする他の課題は、機械的処理を行わずともより簡便な方法でかつ仮着材に対する優れた洗浄性を示し、洗浄後の接着強さに優れる歯科用仮着材除去材を提供することである。

課題を解決するための手段

[0015]
 鋭意検討した結果、本発明者らは、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有することによって歯科用清掃材に関する前記目的を達成できることを見出し、また、本発明者らは、酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を含有することによって歯科用仮着材除去材に関する前記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有する、歯科用清掃材。
[2]pHが8.0未満である、[1]に記載の歯科用清掃材。
[3]前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種の単量体を含有する、[1]又は[2]に記載の歯科用清掃材。
[4]前記有機アミン化合物(c)が第三級有機アミン化合物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の歯科用清掃材。
[5]前記第三級有機アミン化合物が脂肪族化合物を含む、[4]に記載の歯科用清掃材。
[6]前記脂肪族化合物がトリエタノールアミン、及び/又は2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートである、[5]に記載の歯科用清掃材。
[7]前記第三級有機アミン化合物が芳香族化合物を含む、[4]~[6]のいずれかに記載の歯科用清掃材。
[8]さらに塩基性無機化合物(d)を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の歯科用清掃材。
[9]前記塩基性無機化合物(d)がリン酸塩、リン酸水素塩、及びリン酸二水素塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩基性物質である、[8]に記載の歯科用清掃材。
[10]前記塩基性無機化合物(d)が、リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、及びリン酸二水素アルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種である、[8]又は[9]に記載の歯科用清掃材。
[11]さらに親水性フィラー(e-1)、疎水性フィラー(e-2)、及び高分子系増粘剤(e-3)からなる群から選択される少なくとも1種のゲル化剤(e)を含有する、[1]~[10]のいずれかに記載の歯科用清掃材。
[12]前記ゲル化剤(e)が親水性フィラー(e-1)及び疎水性フィラー(e-2)である、[11]に記載の歯科用清掃材。
[13]前記親水性フィラー(e-1)が親水性ヒュームドシリカであって、かつ前記疎水性フィラー(e-2)が疎水性ヒュームドシリカである、[12]に記載の歯科用清掃材。
[14]前記親水性フィラー(e-1)と前記疎水性フィラー(e-2)の質量比が4:6~2:8の範囲である、[12]又は[13]に記載の歯科用清掃材。
[15]酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を混合する工程を含む、歯科用清掃材の製造方法。
[16]歯科用仮着材を除去するための、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有する歯科用清掃材の非治療的使用。
[17]酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を含有する、歯科用仮着材除去材。
[18]pHが8.0未満である、[17]に記載の歯科用仮着材除去材。
[19]前記酸性基含有化合物(A)が酸性基含有重合性単量体(A-1)である、[17]又は[18]に記載の歯科用仮着材除去材。
[20]前記酸性基含有重合性単量体(A-1)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種である、[19]に記載の歯科用仮着材除去材。
[21]前記塩基性化合物(C)が塩基性無機化合物(C-1)及び有機アミン化合物(C-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[17]~[20]のいずれかに記載の歯科用仮着材除去材。
[22]前記塩基性無機化合物(C-1)がリン酸塩、リン酸水素塩、及びリン酸二水素塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩基性物質である、[21]に記載の歯科用仮着材除去材。
[23]前記塩基性無機化合物(C-1)が、リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、及びリン酸二水素アルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種である、[21]又は[22]に記載の歯科用仮着材除去材。
[24]前記有機アミン化合物(C-2)が第三級有機アミン化合物を含む、[21]に記載の歯科用仮着材除去材。
[25]さらにゲル化剤(D)を含有する、[17]~[24]のいずれかに記載の歯科用仮着材除去材。
[26]前記ゲル化剤(D)が親水性フィラー(D-1)及び疎水性フィラー(D-2)を含有する、[25]に記載の歯科用仮着材除去材。
[27]前記親水性フィラー(D-1)が親水性ヒュームドシリカであって、かつ前記疎水性フィラー(D-2)が疎水性ヒュームドシリカである、[26]に記載の歯科用仮着材除去材。
[28]前記親水性フィラー(D-1)と前記疎水性フィラー(D-2)の質量比が4:6~2:8の範囲である、[26]又は[27]に記載の歯科用仮着材除去材。
[29]前記ゲル化剤(D)が高分子系増粘剤(D-3)を含有する、[25]~[28]のいずれかに記載の歯科用仮着材除去材。
[30]酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を混合する工程を含む、[17]に記載の歯科用仮着材除去材の製造方法。

発明の効果

[0016]
 本発明の歯科用清掃材は、歯科用修復物、及び支台歯のタンパク質含有体液による汚染に対して優れた洗浄性を示し、洗浄後の接着耐久性に優れ、かつ口腔内で使用した際にも安全である。また、保存中及び使用中での固体の析出物の生成がないため性能のばらつきや接着を阻害する恐れはない。さらに、本発明の歯科用清掃材は、カビなどの繁殖を防ぐ防腐性にも優れる。また、本発明の歯科用仮着材除去材は、暫間的な材料である仮着材に対して優れた洗浄性を示し、洗浄後の接着強さに優れている。

発明を実施するための形態

[0017]
 本発明の歯科用清掃材(歯科用清掃材組成物)は、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有することを特徴とする。
[0018]
 以下、本発明の歯科用清掃材の成分である、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)について説明する。
[0019]
 まず、本発明で用いられる、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)について説明する。
[0020]
 酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)は、有機アミン化合物(c)と反応して塩を形成し、界面活性効果により、タンパク質含有体液やタンパク質含有体液由来の物質(例えばプラーク、ペリクルなど)による汚染に対する洗浄効果を向上させる。また、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)は、歯質を脱灰しながら浸透して歯質と結合し、歯質に対する接着性を向上させる。さらに、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)は、有機アミン化合物(c)と組み合わせることで、洗浄後の歯質及び歯科用補綴物に対して優れた接着耐久性を示す。また、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)は、有機アミン化合物(c)と組み合わせることで、カビなどの繁殖を防ぐ防腐性を示す。酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)は、リン酸基、ホスホン酸基、ピロリン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を少なくとも1個有し、かつアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などのラジカル重合性基を少なくとも1個有する重合性単量体である。前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)は、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。エナメル質に対する接着性の観点から、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基のいずれか1個を有する単官能性の酸性基含有(メタ)アクリル系単量体であることが好ましい。具体例としては、下記のものが挙げられる。なお、本明細書において、メタクリルとアクリルとを「(メタ)アクリル」と総称する。
[0021]
 リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9-(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10-(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-(4-メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-(4-メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート、これらのアミン塩が挙げられる。
[0022]
 ホスホン酸基含有(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3-ホスホノプロピオネート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-ホスホノアセテート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシル-ホスホノアセテート、これらのアミン塩が挙げられる。
[0023]
 ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、ピロリン酸ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ビス〔6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ビス〔8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ビス〔10-(メタ)アクリロイルオキシデシル〕、これらのアミン塩が挙げられる。
[0024]
 カルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸;4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸及びこれらの酸無水物;5-(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ヘキサンジカルボン酸、8-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-オクタンジカルボン酸、10-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-デカンジカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、これらのアミン塩が挙げられる。
[0025]
 スルホン酸基含有(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、これらのアミン塩が挙げられる。
[0026]
 上記の酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の中では、リン酸基、ピロリン酸基又はカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が歯科用修復物及び歯質に対してより優れた接着力を発現するので好ましく、特に、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましい。その中でも、分子内に主鎖として炭素数が6~20のアルキル基又はアルキレン基を有する2価のリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体がより好ましく、10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートなどの分子内に主鎖として炭素数が8~12のアルキレン基を有する2価のリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が最も好ましい。
[0027]
 酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)は、1種単独を配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量は、少なすぎると、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の配合による効果が得られないおそれがあり、多すぎると、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が歯科用修復物、及び支台歯に多く残存し、その後に適用する歯科用接着材の硬化性が低下して、接着性が低下するおそれがある。酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用清掃材の合計100質量部において、0.1~30質量部の範囲が好ましく、0.5~20質量部の範囲がより好ましく、1.0~15質量部の範囲がさらに好ましく、2.0~8.0質量部の範囲が特に好ましい。
[0028]
 本発明に係る歯科用清掃材は、重合性単量体として、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)以外に、酸性基を含有しないラジカル重合性単量体を含んでいてもよい。酸性基を含有しないラジカル重合性単量体としては、酸性基を含有しないラジカル親水性重合性単量体、酸性基を含有しない疎水性重合性単量体が挙げられる。酸性基を含有しないラジカル親水性重合性単量体とは、25℃における水に対する溶解度が10質量%以上のものを意味し、該溶解度が30質量%以上のものが好ましく、25℃において任意の割合で水に溶解可能なものがより好ましい。酸性基を含有しない疎水性重合性単量体とは、25℃における水に対する溶解度が10質量%未満のものを意味し、例えば、芳香族化合物系の二官能性重合性単量体、脂肪族化合物系の二官能性重合性単量体、三官能性以上の重合性単量体などの架橋性の重合性単量体が例示される。ある好適な実施形態としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有し、実質的に酸性基を含有しないラジカル重合性単量体を含まない、歯科用清掃材が挙げられる。実質的に酸性基を含有しないラジカル重合性単量体を含まないとは、酸性基を含有しないラジカル重合性単量体の含有量が、歯科用清掃材に含まれる重合性単量体の総量に対して5.0質量%未満であり、好ましくは1.0質量%未満であることを意味する。また、ある実施形態では、本発明に係る歯科用清掃材は、重合性基を有さない酸性基含有有機化合物(a-2)を含有していてもよい。重合性基を有さない酸性基含有有機化合物(a-2)としては、後述する歯科用仮着材除去材に用いる重合性基を有さない酸性基含有有機化合物(A-2)と同様のものが使用できる。本発明に係る歯科用清掃材における重合性基を有さない酸性基含有有機化合物(a-2)の含有量も、歯科用仮着材除去材と同様である。
[0029]
 次に、本発明で用いられる、水(b)について説明する。
[0030]
 水(b)は、有機アミン化合物(c)、及び酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)を溶解させる溶媒である。また、歯質に対する酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の脱灰作用を促進し、接着性を向上させる。水(b)は、接着性に悪影響を及ぼす不純物を実質的に含有しないものを使用する必要があり、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。水(b)の含有量は、歯科用清掃材の合計100質量部において、40~99.8質量部の範囲が好ましく、50~99質量部の範囲がより好ましく、60~98質量部の範囲がさらに好ましい。
[0031]
 本発明に係る歯科用清掃材には、さらに水以外の溶媒を配合してもよい。水以外の溶媒をさらに配合することにより、歯科用清掃材の粘度の調節や有効成分の濃縮による、より効率的な洗浄効果が期待できる場合もある。前記水以外の溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどの有機溶媒;エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2-ペンタジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールなどのアルコール類;などが挙げられる。前記水(b)以外の溶媒の含有量は、特に限定されないが、歯科用清掃材の合計100質量部において、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。また、前記水(b)以外の溶媒の含有量は、水(b)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましく、60質量部以下であってもよい。
[0032]
 続いて、本発明で用いられる、有機アミン化合物(c)について説明する。
[0033]
 有機アミン化合物(c)は、タンパク質含有体液やタンパク質含有体液由来の物質による汚染に対する洗浄効果及び酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の水に対する溶解性の向上をもたらし、冷蔵保存中の析出物の生成を抑制することができ、性能のばらつきなく、優れた接着強さ及び接着耐久性を歯科用清掃材に付与することができる。また、有機アミン化合物(c)の一部は、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)と反応して塩を形成し、界面活性効果により、タンパク質含有体液による汚染に対する洗浄効果をさらに向上させることができる。さらに、歯科用清掃材が有機アミン化合物(c)を含むことによって、歯科用修復物及び歯質に対して、洗浄後に優れた接着強さ及び接着耐久性をもたらす。前記有機アミン化合物(c)は、第一級有機アミン化合物や第二級有機アミン化合物を含んでいてもよいが、副反応抑制の観点から第三級有機アミン化合物を含むことが好ましい。有機アミン化合物(c)は、脂肪族化合物であっても芳香族化合物であってもよい。ある実施形態では、有機アミン化合物(c)は、性能のばらつきなく、より優れた接着強さ及び接着耐久性を歯科用清掃材に付与することができることから、水酸基を1個以上有する脂肪族化合物である第三級有機アミン化合物、水酸基を1個以上有する芳香族化合物である第三級有機アミン化合物を含むことが好ましく、水酸基を2個以上有する脂肪族化合物である第三級有機アミン化合物、水酸基を2個以上有する芳香族化合物である第三級有機アミン化合物を含むことがより好ましい。
[0034]
 脂肪族化合物である第三級有機アミン化合物の例としては、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられ、性能のばらつきなく、接着強さ及び接着耐久性により優れることからトリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートがより好ましい。
[0035]
 芳香族化合物である第三級有機アミン化合物の例としては、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられ、性能のばらつきなく、接着強さ及び接着耐久性により優れることから、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジンがより好ましい。
[0036]
 有機アミン化合物(c)は、1種単独を配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。有機アミン化合物(c)の含有量は、少なすぎると、有機アミン化合物(c)の配合による効果が得られないおそれがあり、多すぎると、塩基性が強くなって、タンパク質の変性をおこすため、口腔内での安全性が低下するおそれがある。有機アミン化合物(c)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用清掃材(溶液又は懸濁液)のpHの観点から、歯科用清掃材の合計100質量部において、0.1~20質量部の範囲が好ましく、0.2~10質量部の範囲がより好ましく、0.25~5質量部の範囲がさらに好ましい。
[0037]
 本発明の歯科用清掃材は、塩基性無機化合物(d)を含有することが好ましい。塩基性無機化合物(d)は、リン酸塩、リン酸水素塩、及びリン酸二水素塩から選択される少なくとも1種の塩基性物質であることが好ましく、少量の配合であってもタンパク質含有体液やタンパク質含有体液由来の物質による汚染に対する洗浄効果をもたらす。また、塩基性無機化合物(d)の一部は、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)と反応して塩を形成し、界面活性効果により、タンパク質含有体液による汚染に対する洗浄効果を向上させることができる。さらに、歯科用清掃材が塩基性無機化合物(d)を含むことによって、歯科用修復物及び歯質に対して、洗浄後に優れた接着強さ及び接着耐久性を有する。塩基性無機化合物(d)としては、例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩又はリン酸二水素アルカリ金属塩;リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなどのリン酸アルカリ土類金属塩、リン酸水素アルカリ土類金属塩又はリン酸二水素アルカリ土類金属塩;リン酸三マグネシウム、リン酸水素マグネシウムなどが挙げられ、リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩及びリン酸二水素アルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でもリン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムがより好ましい。
[0038]
 塩基性無機化合物(d)は、1種単独を配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。塩基性無機化合物(d)の含有量は、少なすぎると、塩基性無機化合物(d)の配合による効果が得られないおそれがあり、多すぎると、塩基性が強くなって、タンパク質の変性をおこすため、口腔内での安全性が低下するおそれがある。また、多すぎると、塩基性無機化合物(d)自体が析出して、操作性が低下し、十分なタンパク質含有体液に対する洗浄効果が得られないおそれがある。塩基性無機化合物(d)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用清掃材(溶液又は懸濁液)のpHの観点から、歯科用清掃材の合計100質量部において、0.1~20質量部の範囲が好ましく、0.2~10質量部の範囲がより好ましく、0.25~5質量部の範囲がさらに好ましい。
[0039]
 本発明の歯科用清掃材は、pHが8.0未満であることが好ましい。pHが前記範囲を満たすことにより、洗浄後に優れた接着強さ及び接着耐久性を有し、より安全な歯科用清掃材が得られ、2.0以上8.0未満が好ましく、2.5以上7.5以下がより好ましく、3.0以上6.5以下がさらに好ましく、3.5以上5.5以下が特に好ましい。前記pHは公知の測定装置を用いて測定できる。測定装置としては、例えば、株式会社堀場製作所製「LAQUAtwin」が挙げられる。
[0040]
 本発明の歯科用清掃材は、ゲル化剤(e)を含有することが好ましい。ゲル化剤(e)としては、親水性フィラー(e-1)、疎水性フィラー(e-2)、高分子系増粘剤(e-3)が挙げられる。ゲル化剤(e)は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。本発明のある好適な実施形態では、歯科用清掃材は、ゲル化剤(e)として親水性フィラー(e-1)及び疎水性フィラー(e-2)を含有する。他の好適な実施形態では、歯科用清掃材は、ゲル化剤(e)として高分子系増粘剤(e-3)のみを含有する。さらに他の好適な実施形態では、歯科用清掃材は、親水性フィラー(e-1)、疎水性フィラー(e-2)及び高分子系増粘剤(e-3)を含有する。歯科用清掃材としては、親水性フィラー(e-1)と疎水性フィラー(e-2)及び高分子系増粘剤(e-3)の3種全てを組み合わせたゲル化剤(e)を含有することが好ましい。親水性フィラー(e-1)と疎水性フィラー(e-2)及び高分子系増粘剤(e-3)の併用により歯科用清掃材がゲル化し、歯科用修復物、及び歯面などの支台歯に対する塗りやすさをより向上させることができ、かつ界面活性効果を阻害することなく、タンパク質含有体液やタンパク質含有体液由来の物質を洗浄する効果をもたらす。
[0041]
 親水性フィラー(e-1)とは、粒子の表面が疎水化処理されていないフィラーを意味する。例えば、親水性フィラー(e-1)が、シリカ等の表面にシラノール基を有する粒子である場合、当該表面のシラノール基が未処理の粒子を意味する。疎水性フィラー(e-2)とは、粒子の表面が疎水化処理されているフィラーを意味する。例えば、疎水性フィラー(e-2)が、シリカ等の表面にシラノール基を有する粒子である場合、当該表面のシラノール基がジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、メタクリルシリル、アルキルシリルなどの置換基で疎水化された粒子である。親水性フィラー(e-1)としては、親水性無機フィラーが好ましく、親水性ヒュームドシリカがより好ましい。疎水性フィラー(e-2)としては、疎水性無機フィラーが好ましく、疎水性ヒュームドシリカがより好ましい。本明細書において、親水性フィラー(e-1)及び疎水性フィラー(e-2)の平均粒子径は、特に限定されず、0.0001~50μmが好ましく、0.001~10μmがより好ましく、歯科用清掃材の塗布性により優れる点から、0.001~1.0μmがさらに好ましい。親水性フィラー(e-1)及び疎水性フィラー(e-2)の平均粒子径とは平均一次粒子径であり、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求められる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.1μm未満の超微粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μmはレーザー回折散乱法により測定した値である。レーザー回折散乱法は、具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2300:株式会社島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。電子顕微鏡観察には、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU3800、S-4000等)を使用できる。電子顕微鏡観察は、具体的に例えば、粒子の電子顕微鏡写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View(株式会社マウンテック製))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
[0042]
 親水性フィラー(e-1)としては、親水性ヒュームドシリカ:日本アエロジル株式会社製の微粒子シリカが挙げられ、AEROSIL(登録商標)90、AEROSIL(登録商標)130、AEROSIL(登録商標)150、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)255、AEROSIL(登録商標)300、AEROSIL(登録商標)380、AEROSIL(登録商標)OX50、AEROSIL(登録商標)TT600、AEROSIL(登録商標)200 F、AEROSIL(登録商標)380 F、AEROSIL(登録商標)200 Pharma、AEROSIL(登録商標)300 Pharmaが挙げられ、AEROSIL(登録商標)130が好ましい。
[0043]
 疎水性フィラー(e-2)としては、疎水性ヒュームドシリカ:日本アエロジル株式会社製の微粒子シリカが挙げられ、AEROSIL(登録商標)R972、AEROSIL(登録商標)R974、AEROSIL(登録商標)R104、AEROSIL(登録商標)R106、AEROSIL(登録商標)R202、AEROSIL(登録商標)R208、AEROSIL(登録商標)R805、AEROSIL(登録商標)R812、AEROSIL(登録商標)R812 S、AEROSIL(登録商標)R816、AEROSIL(登録商標)R7200、AEROSIL(登録商標)R8200、AEROSIL(登録商標)R9200、AEROSIL(登録商標)R711、AEROSIL(登録商標)R50 、AEROSIL(登録商標)NY50、AEROSIL(登録商標)NY50 L、AEROSIL(登録商標)NY200、AEROSIL(登録商標)RY200 S、AEROSIL(登録商標)RX50、AEROSIL(登録商標)NY50、AEROSIL(登録商標)RX、AEROSIL(登録商標)RX00、AEROSIL(登録商標)R504、AEROSIL(登録商標)RNX90 S、AEROSIL(登録商標)NX90 G、AEROSIL(登録商標)RY300、AEROSIL(登録商標)REA90、AEROSIL(登録商標)REA200、AEROSIL(登録商標)RY51、AEROSIL(登録商標)NA50 Y、AEROSIL(登録商標)RA200 HS、AEROSIL(登録商標)NA50 H、AEROSIL(登録商標)RA200 HS、AEROSIL(登録商標)NA130 K、AEROSIL(登録商標)NA200 Y、AEROSIL(登録商標)NX130、AEROSIL(登録商標)RY200 L、AEROSIL(登録商標)R709、AEROSIL(登録商標)R976 Sが挙げられ、AEROSIL(登録商標)R972が好ましい。
[0044]
 また、高分子系増粘剤(e-3)とは、粘度を調節するために材料に添加され、分散性、増粘性の向上をもたらす高分子を指し、天然物質であってもよく、合成物質であってもよい。天然物質では、例えばカゼインやメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられ、合成物質では、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。高分子系増粘剤(e-3)としては市販されているものを使用することができ、ポリエチレングリコール系の増粘剤であるマクロゴール4000(丸石製薬株式会社製)、マクロゴール400(丸石製薬株式会社製)や、ポリビニルピロリドン(株式会社IPSコーポレーション製)が挙げられ、なかでも、マクロゴール4000(丸石製薬株式会社製)が好ましい。
[0045]
 ゲル化剤(e)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用清掃材の合計100質量部において、0.50~40質量部の範囲が好ましく、0.80~35質量部の範囲がより好ましく、1~30質量部の範囲がさらに好ましく、4~25質量部の範囲が特に好ましい。前記親水性フィラー(e-1)が親水性ヒュームドシリカであって、かつ前記疎水性フィラー(e-2)が疎水性ヒュームドシリカであることが好ましい。また、歯科用清掃材に含まれるゲル成分と液体成分の分離抑制の観点から、前記親水性フィラー(e-1)と前記疎水性フィラー(e-2)の質量比が4:6~2:8の範囲であることが好ましく、4.3:5.7~2.2:7.8の範囲がより好ましい。さらに、高分子系増粘剤(e-3)に関しては、歯科用清掃材に含まれるゲル成分と液体成分の分離抑制の観点から、歯科用清掃材の合計100質量部に対して、1~25質量部の範囲が好ましく、4~20質量部の範囲がより好ましく、8~17質量部の範囲がさらに好ましい。
[0046]
 この他、本発明の歯科用清掃材には、本発明の効果を阻害しない範囲で、フッ素イオン放出性物質、pH調整剤、重合禁止剤(例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ))、着色剤、蛍光剤、香料などを配合してもよい。また、セチルピリジニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、トリクロサンなどの抗菌性物質を配合してもよい。
[0047]
 ある好適な実施形態(W-1)としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種の単量体を含有し、歯科用清掃材の合計100質量部において、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(b)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、有機アミン化合物(c)の含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用清掃材が挙げられる。他の好適な実施形態(W-2)としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種の単量体を含有し、前記有機アミン化合物(c)が第三級有機アミン化合物を含有し、歯科用清掃材の合計100質量部において、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(b)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、有機アミン化合物(c)の含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用清掃材が挙げられる。また、他の好適な実施形態(W-3)としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種の単量体を含有し、前記有機アミン化合物(c)が第三級有機アミン化合物を含有し、前記第三級有機アミン化合物が脂肪族化合物を含有し、歯科用清掃材の合計100質量部において、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(b)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、有機アミン化合物(c)の含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用清掃材が挙げられる。また、他の好適な実施形態(W-4)としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記有機アミン化合物(c)が第三級有機アミン化合物を含有し、前記第三級有機アミン化合物が脂肪族化合物及び芳香族化合物を含有し、歯科用清掃材の合計100質量部において、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(b)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、有機アミン化合物(c)の含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用清掃材が挙げられる。また、他の好適な実施形態(W-5)としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含有し、前記有機アミン化合物(c)が第三級有機アミン化合物を含み、前記第三級有機アミン化合物が、水酸基を2個以上有する脂肪族化合物を含有し、歯科用清掃材の合計100質量部において、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(b)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、有機アミン化合物(c)の含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用清掃材が挙げられる。また、他の好適な実施形態(W-6)としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記有機アミン化合物(c)が第三級有機アミン化合物を含有し、前記第三級有機アミン化合物が脂肪族化合物及び芳香族化合物を含有し、前記脂肪族化合物が水酸基を2個以上有する脂肪族化合物であり、前記芳香族化合物が水酸基を2個以上有する芳香族化合物であり、歯科用清掃材の合計100質量部において、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(b)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、有機アミン化合物(c)の含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用清掃材が挙げられる。また、他の好適な実施形態(W-7)としては、前記した実施形態(W-1)~(W-6)のいずれかにおいて、さらに塩基性無機化合物(d)を含有し、歯科用清掃材の合計100質量部において、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(b)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、有機アミン化合物(c)及び塩基性無機化合物(d)の合計含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用清掃材が挙げられる。さらに、他の好適な実施形態(W-8)としては、前記した実施形態(W-1)~(W-7)のいずれかにおいて、ゲル化剤(e)を含有し、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(b)の含有量が45~99.3質量部の範囲であり、有機アミン化合物(c)の含有量が0.1~20質量部の範囲であり、ゲル化剤(e)の含有量が0.50~40質量部の範囲である、歯科用清掃材が挙げられる。前記した好適な実施形態(W-1)~(W-8)のいずれにおいても、本明細書の説明に基づいて、各成分の含有量及び種類を適宜変更でき、任意の成分について、追加、削除等の変更をすることができる。
[0048]
 本発明の歯科用清掃材の製造方法は、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を混合する工程を含むことを特徴とする。混合方法や混合に用いる装置は本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)の水(b)への溶解性が低い場合には、有機アミン化合物(c)を水(b)に混合した後、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)を混合させる方法、または有機アミン化合物(c)を酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)に混合した後、水(b)を混合する方法が好ましい。なお、歯科用清掃材が前述の(a)~(c)成分以外の他の成分(例えば、ゲル化剤(e))を含む場合には、(a)~(c)成分と該他の成分を併せて同時に混合してもよく、(a)~(c)成分を混合する工程とは別に該成分を混合する工程を組み合わせてもよい。
[0049]
 また、本発明の他の実施形態としては、歯科用仮着材を除去するための、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有する歯科用清掃材の非治療的使用が挙げられる。歯科用清掃材に含まれる各成分は上記のとおりである。前記歯科用清掃材は、歯科用仮着材を除去するためにも使用できる。最終修復物を充填し、合着する充填修復治療の前に、該治療の前処理の非治療的処置として、歯科用仮着材を除去するために、前記歯科用清掃材を使用できる。さらに、本発明の別の他の実施形態としては、歯科用仮着材の除去治療に使用される、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有する歯科用清掃材が挙げられる。歯科用仮着材は、後述するとおりである。
[0050]
 また、本発明の他の実施形態としては、酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を含有する、歯科用仮着材除去材(歯科用仮着材除去材組成物)が挙げられる。
[0051]
 酸性基含有化合物(A)は、塩基性化合物(C)と反応して塩を形成することで、1)界面活性効果により、仮着材に含有されるポリアクリル酸などの有機化合物に対する洗浄効果が得られることに加え、2)歯質表面に吸着している仮着材の主成分である酸化亜鉛由来の亜鉛イオンが酸性基に吸着されることにより水洗による除去が可能となるため、優れた仮着材除去効果を有すると考えられる。
[0052]
 酸性基含有化合物(A)としては、公知の酸性基含有化合物を使用することができ、例えば、酸性基含有重合性単量体(A-1)、重合性基を有さない酸性基含有有機化合物(A-2)などを好ましく使用することができるが、歯質を脱灰しながら浸透して歯質と結合し、かつ仮着材除去後に適用される合着材中の重合性単量体成分と重合反応により歯質に対する合着材の接着性を向上させることができることから、酸性基含有重合性単量体(A-1)がより好ましく使用される。
[0053]
 酸性基含有重合性単量体(A-1)は、リン酸基、ホスホン酸基、ピロリン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を少なくとも1個有し、かつアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などの重合性基を少なくとも1個有する重合性単量体である。前記酸性基含有重合性単量体(A-1)は、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。エナメル質に対する接着性の観点から、酸性基含有重合性単量体(A-1)は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基のいずれか1個を有する単官能性の酸性基含有(メタ)アクリル系単量体であることが好ましい。具体例としては、下記のものが挙げられる。
[0054]
 酸性基含有重合性単量体(A-1)の例示については、歯科用清掃材の酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)と同様である。
[0055]
 酸性基含有重合性単量体(A-1)の中では、リン酸基、ピロリン酸基又はカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が歯質に対してより優れた接着性を発現するので好ましく、特に、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましい。その中でも、前記1)に記載された界面活性効果は、ミセル形成を促進させるため炭素鎖が長い方が好ましく、前記2)に記載された亜鉛イオンとの吸着力は炭素鎖同士の立体障害を加味すると炭素鎖が短い方が好ましい。1)、2)双方の効果を効率よく発現させられることから、分子内に主鎖として炭素数が6~20のアルキル基又はアルキレン基を有する2価のリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体がより好ましく、10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートなどの分子内に主鎖として炭素数が8~12のアルキレン基を有する2価のリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体が最も好ましい。
[0056]
 重合性基を有さない酸性基含有有機化合物(A-2)としては、酸性基含有重合性単量体(A-1)と同様の酸性基(リン酸基、ホスホン酸基、ピロリン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基等)を有する有機化合物を使用することができる。その中でも、酸性基含有重合性単量体(A-1)と同様の理由で、分子内に主鎖として炭素数が6~20のアルキル基又はアルキレン基を有する2価のリン酸基含有化合物がより好ましく、分子内に主鎖として炭素数が8~12のアルキレン基を有する2価のリン酸基含有化合物がより好ましく使用できる。
[0057]
 酸性基含有化合物(A)は、1種単独を配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。酸性基含有化合物(A)の含有量は、少なすぎると、酸性基含有化合物(A)の配合による効果が得られないおそれがあり、多すぎると、酸性基含有化合物(A)が窩洞及び支台歯に多く残存し、その後に適用する歯科用接着材の硬化性が低下して、接着性が低下するおそれがある。酸性基含有化合物(A)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、0.1~30質量部の範囲が好ましく、0.5~20質量部の範囲がより好ましく、1.0~15質量部の範囲がさらに好ましく、2.0~8.0質量部の範囲が特に好ましい。
[0058]
 本発明に係る歯科用仮着材除去材は、酸性基を含有しない重合性単量体を含んでいてもよい。酸性基を含有しない重合性単量体としては、酸性基を含有しない親水性重合性単量体、酸性基を含有しない疎水性重合性単量体が挙げられる。酸性基を含有しない親水性重合性単量体とは、25℃における水に対する溶解度が10質量%以上のものを意味し、該溶解度が30質量%以上のものが好ましく、25℃において任意の割合で水に溶解可能なものがより好ましい。酸性基を含有しない疎水性重合性単量体とは、25℃における水に対する溶解度が10質量%未満のものを意味し、例えば、芳香族化合物系の二官能性重合性単量体、脂肪族化合物系の二官能性重合性単量体、三官能性以上の重合性単量体などの架橋性の重合性単量体が例示される。ある好適な実施形態としては、酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を含有し、酸性基を含有しない重合性単量体を実質的に含まない、歯科用仮着材除去材が挙げられる。酸性基を含有しない重合性単量体を実質的に含まないとは、酸性基を含有しない重合性単量体の含有量が、歯科用仮着材除去材に含まれる重合性単量体の総量に対して5.0質量%未満であり、好ましくは1.0質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。
[0059]
 水(B)は、塩基性化合物(C)、及び酸性基含有化合物(A)を溶解させる溶媒である。また、歯質に対する酸性基含有化合物(A)の脱灰作用を促進し、接着性を向上させる。水(B)は、接着性に悪影響を及ぼす不純物を実質的に含有しないものを使用する必要があり、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。水(B)の含有量は、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、40~99.8質量部の範囲が好ましく、45~99.3質量部の範囲がより好ましく、50~98質量部の範囲がさらに好ましく、60~97質量部の範囲が特に好ましい。
[0060]
 本発明に係る歯科用仮着材除去材は、ある実施形態において、さらに水以外の溶媒を配合してもよい。水以外の溶媒をさらに配合することにより、組成物の粘度の調節や有効成分の濃縮による、より効率的な洗浄効果が期待できる場合もある。前記水以外の溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどの有機溶媒;エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2-ペンタジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールなどのアルコール類;などが挙げられる。当該実施形態における前記水(B)以外の溶媒の含有量は、特に限定されないが、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。また、前記水(B)以外の溶媒の含有量は、水(B)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましく、60質量部以下であってもよい。
[0061]
 続いて、本発明で用いられる、塩基性化合物(C)について説明する。この塩基性化合物(C)は塩基性無機化合物(C-1)、有機アミン化合物(C-2)であり、それぞれ説明する。塩基性化合物(C)は、1種単独を配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。例えば、塩基性無機化合物(C-1)と有機アミン化合物(C-2)を併用してもよい。塩基性化合物(C)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用仮着材除去材(溶液又は懸濁液)のpHの観点から、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、0.1~20質量部の範囲が好ましく、0.2~10質量部の範囲がより好ましく、0.25~8質量部の範囲がさらに好ましく、0.5~5質量部の範囲が特に好ましい。
[0062]
 前記塩基性無機化合物(C-1)は、リン酸塩、リン酸水素塩、及びリン酸二水素塩から選択される少なくとも1種の塩基性物質であることが好ましい。塩基性無機化合物(C-1)の一部は、酸性基含有化合物(A)と反応して塩を形成し、界面活性効果により、仮着材に含まれる有機成分及び酸化亜鉛成分に対する洗浄効果を向上させることができる。さらに、歯科用仮着材除去材が塩基性無機化合物(C-1)を含むことによって、歯質に対して、洗浄後に優れた接着強さを有する。塩基性無機化合物(C-1)の例示については、歯科用清掃材の塩基性無機化合物(d)と同様である。
[0063]
 塩基性無機化合物(C-1)は、1種単独を配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。塩基性無機化合物(C-1)の含有量は、少なすぎると塩基性無機化合物(C-1)の配合による効果が得られないおそれがあり、多すぎると、塩基性が強くなって、タンパク質の変性をおこすため、口腔内での安全性が低下するおそれがある。また、多すぎると塩基性無機化合物(C-1)自体が析出して、操作性が低下し、十分な仮着材に対する洗浄効果が得られないおそれがある。塩基性無機化合物(C-1)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用仮着材除去材(溶液又は懸濁液)のpHの観点から、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、0.1~20質量部の範囲が好ましく、0.2~10質量部の範囲がより好ましく、0.25~8質量部の範囲がさらに好ましく、0.5~5質量部の範囲が特に好ましい。
[0064]
 前記有機アミン化合物(C-2)は、酸性基含有化合物(A)の水に対する溶解性の向上をもたらす。また、有機アミン化合物(C-2)の一部は、酸性基含有化合物(A)と反応して塩を形成し、界面活性効果により、仮着材に含まれる有機成分及び酸化亜鉛成分に対する洗浄効果をさらに向上させることができる。さらに、歯科用仮着材除去材が有機アミン化合物(C-2)を含むことによって、歯科用修復物及び歯質に対して、洗浄後に優れた接着強さの耐久性をもたらす。有機アミン化合物(C-2)は、第一級有機アミン化合物や第二級有機アミン化合物を含んでいてもよいが、副反応抑制の観点から第三級有機アミン化合物を含むことが好ましい。第三級有機アミン化合物は、脂肪族化合物であっても芳香族化合物であってもよい。
[0065]
 脂肪族化合物である第三級有機アミン化合物及び芳香族化合物である第三級有機アミン化合物の例示としては、歯科用清掃材の有機アミン化合物(c)の第三級有機アミン化合物の例示と同様である。
[0066]
 前記有機アミン化合物(C-2)は、1種単独を配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。有機アミン化合物(C-2)の含有量は、少なすぎると有機アミン化合物(C-2)の配合による効果が得られないおそれがあり、多すぎると塩基性が強くなって、タンパク質の変性をおこすため、口腔内での安全性が低下するおそれがある。有機アミン化合物(C-2)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用仮着材除去材(溶液又は懸濁液)のpHの観点から、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、0.1~20質量部の範囲が好ましく、0.2~10質量部の範囲がより好ましく、0.25~8質量部の範囲がさらに好ましく、0.5~5質量部の範囲が特に好ましい。
[0067]
 本発明の歯科用仮着材除去材は、pHが8.0未満であることが好ましい。pHが前記範囲を満たすことにより、洗浄後に優れた接着強さを有し、より安全な歯科用仮着材除去材が得られ、3.0以上8.0未満が好ましく、3.5以上7.5以下がより好ましく、4.5以上7.4以下がさらに好ましい。前記pHは公知の測定装置を用いて測定できる。測定装置としては、例えば、株式会社堀場製作所製「LAQUAtwin」が挙げられる。
[0068]
 本発明の歯科用仮着材除去材は、ゲル化剤(D)を含有することが好ましい。ゲル化剤(D)としては、親水性フィラー(D-1)、疎水性フィラー(D-2)、高分子系増粘剤(D-3)が挙げられる。ゲル化剤(D)は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。本発明のある好適な実施形態では、歯科用仮着材除去材は、ゲル化剤(D)として親水性フィラー(D-1)及び疎水性フィラー(D-2)を含有する。他の好適な実施形態では、歯科用仮着材除去材は、ゲル化剤(D)として高分子系増粘剤(D-3)のみを含有する。さらに他の好適な実施形態では、歯科用仮着材除去材は、親水性フィラー(D-1)、疎水性フィラー(D-2)及び高分子系増粘剤(D-3)を含有する。本発明の歯科用仮着材除去材としては、親水性フィラー(D-1)、疎水性フィラー(D-2)及び高分子系増粘剤(D-3)の3種全てを組み合わせたゲル化剤(D)を含有することが好ましい。親水性フィラー(D-1)、疎水性フィラー(D-2)及び高分子系増粘剤(D-3)の併用により歯科用仮着材除去材がゲル化し、歯科用修復物、及び歯面などの支台歯に対する塗りやすさを向上することができ、かつ界面活性効果を阻害することなく、仮着材に含まれる有機成分及び酸化亜鉛成分を洗浄する効果をもたらす。
[0069]
 本発明の歯科用仮着材除去材に用いる、親水性フィラー(D-1)、疎水性フィラー(D-2)、高分子系増粘剤(D-3)に関する定義、例示、平均粒子径及びその測定方法は、歯科用清掃材に用いる、親水性フィラー(e-1)、疎水性フィラー(e-2)、高分子系増粘剤(e-3)と同様である。
[0070]
 ゲル化剤(D)の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、0.50~40質量部の範囲が好ましく、0.80~35質量部の範囲がより好ましく、1~30質量部の範囲がさらに好ましく、4~25質量部の範囲が特に好ましい。ある実施形態では、前記親水性フィラー(D-1)が親水性ヒュームドシリカであって、かつ前記疎水性フィラー(D-2)が疎水性ヒュームドシリカであることが好ましい。また、歯科用仮着材除去材に含まれるゲル成分と液体成分の分離抑制の観点から、前記親水性フィラー(D-1)と前記疎水性フィラー(D-2)の質量比が4:6~2:8の範囲が好ましく、4.3:5.7~2.2:7.8の範囲がより好ましい。さらに、高分子系増粘剤(D-3)に関しては、歯科用仮着材除去材に含まれるゲル成分と液体成分の分離抑制の観点から、歯科用仮着材除去材の合計100質量部に対して、1~25質量部の範囲が好ましく、4~20質量部の範囲がより好ましく、8~17質量部の範囲が特に好ましい。
[0071]
 この他、本発明の歯科用仮着材除去材には、本発明の効果を阻害しない範囲で、フッ素イオン放出性物質、pH調整剤、重合禁止剤(例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ))、着色剤、蛍光剤、香料などを配合してもよい。また、本発明の歯科用仮着材除去材は、前記歯科用清掃材の説明で例示された抗菌性物質を配合してもよい。
[0072]
 本発明のある好適な実施形態(X-1)としては、酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を含有し、前記塩基性化合物(C)が塩基性無機化合物(C-1)を含有し、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、酸性基含有化合物(A)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(B)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、塩基性無機化合物(C-1)の含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用仮着材除去材が挙げられる。他の好適な実施形態(X-2)としては、酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を含有し、前記塩基性化合物(C)が有機アミン化合物(C-2)を含有し、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、酸性基含有化合物(A)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(B)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、有機アミン化合物(C-2)の含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用仮着材除去材が挙げられる。また、他の好適な実施形態(X-3)としては、酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を含有し、前記塩基性化合物(C)が塩基性無機化合物(C-1)及び有機アミン化合物(C-2)を含有し、歯科用仮着材除去材の合計100質量部において、酸性基含有化合物(A)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(B)の含有量が40~99.8質量部の範囲であり、塩基性無機化合物(C-1)及び有機アミン化合物(C-2)の合計含有量が0.1~20質量部の範囲である、歯科用仮着材除去材が挙げられる。さらに、他の好適な実施形態(X-4)としては、前記した実施形態(X-1)~(X-3)のいずれかにおいて、ゲル化剤(D)を含有し、酸性基含有化合物(A)の含有量が0.1~30質量部の範囲であり、水(B)の含有量が45~99.3質量部の範囲であり、塩基性化合物(C)の含有量が0.1~20質量部の範囲であり、ゲル化剤(D)の含有量が0.50~40質量部の範囲である、歯科用仮着材除去材が挙げられる。前記した好適な実施形態(X-1)~(X-4)のいずれにおいても、本明細書の説明に基づいて、各成分の含有量及び種類を適宜変更でき、任意の成分について、追加、削除等の変更をすることができる。
[0073]
 本発明の歯科用仮着材除去材によって除去できる歯科用仮着材としては、(1)フレッチャーセメント(主成分:酸化亜鉛及びアラビアゴム)、(2)ユージノール系仮着材(主成分:酸化亜鉛及びユージノール)、(3)非ユージノール系仮着材(主成分:酸化亜鉛及び脂肪族化合物あるいは芳香族化合物)、(4)カルボン酸系仮着材(主成分:酸化亜鉛及びアクリル酸系重合体)等が挙げられる。
[0074]
 本発明の歯科用仮着材除去材の製造方法は、酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を混合する工程を含むことを特徴とする。混合方法や混合に用いる装置は本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、酸性基含有化合物(A)の水(B)への溶解性が低い場合には、塩基性化合物(C)を水(B)に混合した後、酸性基含有化合物(A)を混合させる方法、又は塩基性化合物(C)を酸性基含有化合物(A)に混合した後、水(B)を混合する方法が好ましい。なお、歯科用仮着材除去材が前述の(A)~(C)成分以外の他の成分(例えば、ゲル化剤(D))を含む場合には、(A)~(C)成分と該他の成分を併せて同時に混合してもよく、(A)~(C)成分を混合する工程とは別に該成分を混合する工程を組み合わせてもよい。
[0075]
 本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
実施例
[0076]
 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下で用いる略記号は次の通りである。
[0077]
〔酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)〕
 MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
〔有機アミン化合物(c)〕
 TTA:トリエタノールアミン
 DEPT:N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン
 DMAEMA:2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
〔ゲル化剤(e)〕
 (e-1):親水性ヒュームドシリカ:日本アエロジル株式会社製の微粒子シリカ「AEROSIL(登録商標)130」(平均粒子径:16nm)
 (e-2):疎水性ヒュームドシリカ:日本アエロジル株式会社製の微粒子シリカ「AEROSIL(登録商標)R972」(平均粒子径:16nm)
 (e-3):ポリビニルピロリドン(株式会社IPSコーポレーション製)、マクロゴール4000(丸石製薬株式会社製)
[0078]
[実施例1-1~1-9及び比較例1-1~1-7]
 実施例及び比較例として、歯科用清掃材を以下のように調製した。
[0079]
[歯科用清掃材の調製]
 下記表3及び4に記載の各成分を、表3及び4に記載の質量比で常温下において混合して歯科用清掃材を作製した。得られた歯科用清掃材は、「ティースメイト(登録商標)ディセンシタイザー 液剤」(クラレノリタケデンタル株式会社製)の容器に充填して用いた。
[0080]
[pH測定]
 調製した歯科用清掃材のpHを、pHメーター(株式会社堀場製作所製「LAQUAtwin」)を用いて測定した。
[0081]
[冷蔵保存中の析出物の生成の有無の検証]
 歯科用清掃材を440mLの容器に充填し、4℃の冷蔵庫に1週間保存した際の析出物の生成の有無を目視で確認し、析出物が全く生成しないものを「○」、析出物が生成したものを「×」と評価した。
[0082]
[カビなどの繁殖を防ぐ防腐性の有無の検証]
 第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」に従い保存効力試験を行い、歯科用清掃材の防腐性を評価した。試験菌液は下記表1の試験菌株を前記保存効力試験法の培養条件に従って培養し調製した。歯科用清掃材に試験菌液を添加し2週間後に生菌数を測定した。初期の生菌数は1mLあたり10 CPU以上であり、2週間後に5種全ての生菌数が10CPU未満であるものを「○」、5種全ての生菌数が10 CPU未満であって、少なくとも1種の生菌数が10CPU以上10 CPU未満であるものを「△」、少なくとも1種の生菌数が10 CPU以上であるものを「×」とした。
[0083]
[表1]


[0084]
[人工唾液の調製]
 下記表2に記載の各成分を、表2に記載の組成で常温下において混合して人工唾液を作製した。
[0085]
[表2]


[0086]
[洗浄操作後のジルコニアに対する接着耐久性試験]
 CAD/CAMシステム用のジルコニアディスク(商品名:「カタナ(登録商標) ジルコニア」HT、クラレノリタケデンタル株式会社製)から作製した円柱状(内径12mm×高さ5mm)のジルコニア焼結体(1500℃で2時間焼成したもの)を#1000シリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨して、平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルを超音波洗浄機(ヤマト科学株式会社製)で5分間洗浄後、サンプル表面の水をエアブローすることで乾燥した。このジルコニア焼結体を人工唾液に1分間浸漬し、次いで、エアブローで乾燥した後、調製した歯科用清掃材をジルコニア焼結体の平坦面に塗布して10秒間擦り洗浄を実施し、水洗した。次いで、エアブローすることで乾燥した後、直径5mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規定し、被着体処理面とした。
[0087]
 得られた被着体処理面の上に、歯科用レジンセメント(クラレノリタケデンタル株式会社製、商品名「SA セメント プラス オートミックス(登録商標)」)を、ミキシングチップを用いて載置し、ステンレス製円柱棒(直径7mm、長さ2.5cm)の一方の端面(円形断面)を接着し、60分間静置した。ステンレス製円柱棒の周囲からはみ出た余剰の歯科用レジンセメントを除去した後、蒸留水に浸漬した。蒸留水に浸漬したサンプルを、37℃に保持した恒温器内に24時間静置した後に、70℃に保持した恒温器内に7日間静置して、接着試験供試サンプルとした。接着試験供試サンプルは全部で5個作製した。
[0088]
 上記5個の接着試験供試サンプルの引張接着強さを、万能試験機(株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定した。表3、4に記載の値は平均値である。引張接着強さの平均値を接着耐久性とし、引張接着強さのばらつきの値(SD)を算出した。接着耐久性としては16MPa以上が好ましく、18MPa以上がより好ましく、20MPa以上がさらに好ましい。引張接着強さのばらつきの値(SD)は、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。
[0089]
[ジルコニアに対する洗浄効果試験]
 CAD/CAMシステム用のジルコニアディスク(商品名:カタナ(登録商標)ジルコニアHT、クラレノリタケデンタル株式会社製)から作製した円柱状(内径12mm×高さ5mm)のジルコニア焼結体(1500℃で2時間焼成したもの)を、ラッピングフィルムシート(株式会社スリーエム製、粒度1ミクロン)で研磨し、平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルを超音波洗浄機(ヤマト科学株式会社製)で5分間洗浄後、サンプル表面の水をエアブローすることで乾燥した。このサンプルを人工唾液に1分間浸漬し、次いでエアブローすることで乾燥した。その後、歯科用清掃材をサンプルの平坦面に塗布して10秒間擦り洗浄を実施し水洗した。なお、この歯科用清掃材は4℃の冷蔵庫に1週間保存し析出物が生成した場合には生成したまま洗浄に用いた。次いで、エアブローすることで乾燥後、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU3500」)を用いて、倍率1000倍で洗浄効果を観察し、下記の基準に基づいて評価した(n=1)。
 ○:洗浄後に付着物なし
 ×:洗浄後に付着物あり
[0090]
[表3]


[0091]
[表4]


[0092]
 表3に示すように、本発明に係る歯科用清掃材は、洗浄後のジルコニアに対して、歯科用セメントを適用し接着耐久性を検証したところ、20MPa以上の優れた接着耐久性が得られたことから、タンパク質含有体液による汚染に対して優れた洗浄効果を示すことが分かる。また、冷蔵保存下での析出物の生成は認められなかった。また、4℃の冷蔵庫に1週間保存した歯科用清掃材を用いて洗浄したジルコニア表面について、走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、優れた洗浄効果を有することが確認された。これに対して、表4に示すように、比較例では、タンパク質含有体液による汚染に対する洗浄効果が低いため接着耐久性が得られず、洗浄後のジルコニアに対する歯科用セメントの接着耐久性が15MPa以下であるとともに、冷蔵保存下において析出物の生成が認められた。
[0093]
 また、表3に示すように、実施例1-5、1-7、1-8、1-9において、防腐性が付与され生菌数の増加を抑制し、「〇」の評価結果となった。有機アミン化合物(c)は1種を単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合した際も防腐性を示すことが認められた。また塩基性無機化合物(d)を含有してもよく、防腐性を示すことが認められた。
[0094]
 以下の歯科用仮着材除去材の実施例及び比較例で用いる略記号は次の通りである。
〔酸性基含有化合物(A)〕
〔酸性基含有重合性単量体(A-1)〕
 MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
〔塩基性化合物(C)〕
〔塩基性無機化合物(C-1)〕
 Na HPO :リン酸水素二ナトリウム
〔有機アミン化合物(C-2)〕
 TTA:トリエタノールアミン
 DEPT:N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン
 DMAEMA:2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
〔ゲル化剤(D)〕
 (D-1):親水性ヒュームドシリカ:日本アエロジル株式会社製の微粒子シリカ「AEROSIL(登録商標)130」
 (D-2):疎水性ヒュームドシリカ:日本アエロジル株式会社製の微粒子シリカ「AEROSIL(登録商標)R972」
 (D-3):マクロゴール4000(丸石製薬株式会社製)
[0095]
[実施例2-1~2-5及び比較例2-1~2-3]
 実施例及び比較例として、歯科用仮着材除去材を以下のように調製した。
[0096]
[歯科用仮着材除去材の調製]
 下記表5に記載の各成分を、表5に記載の質量比で常温下において混合して歯科用仮着材除去材を作製した。得られた歯科用仮着材除去材は、「ティースメイト(登録商標)ディセンシタイザー 液材」(クラレノリタケデンタル株式会社製)の容器に充填して用いた。
[0097]
[使用した仮着材]
 ハイ-ボンドテンポラリーセメント ソフト(酸化亜鉛、アクリル酸-トリカルボン酸共重合体ナトリウム塩、及びHY材を含むカルボン酸系仮着材;株式会社松風製)
[0098]
[pH測定]
 調製した歯科用仮着材除去材のpHを、pHメーター(株式会社堀場製作所製「LAQUAtwin」)を用いて測定した。
[0099]
[仮着材に対する洗浄効果試験]
 ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて(#80)シリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨して、象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルの平坦面を流水下にて#1000のシリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)でさらに研磨し、得られたサンプルを超音波洗浄機(ヤマト科学株式会社製)で5分間洗浄後、サンプル表面の水をエアブローすることで乾燥した。仮着材として、IFU(使用説明書)に従って練和したハイ-ボンドテンポラリーセメント ソフトを象牙質サンプルの平坦面に塗布した。容器の中に蒸留水で湿らせたキムタオルを入れ、その上に前記仮着材を塗布した牛歯(象牙質)サンプルを入れて密閉し、37℃にて30分間硬化させた後、37℃水中にて1週間保管する。1週間後、取り出して仮着材を剥がし、水洗及びエアブローを行った後、仮着材が塗布されていた場所に調製した歯科用仮着材除去材を塗布して10秒間擦り洗浄を実施し、水洗した。次いで、エアブローすることで乾燥した。次いで、走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU3500」)を用いて、倍率1000倍で洗浄効果を観察し、下記の基準に基づいて評価した(n=1)。
○:洗浄後に付着物なし
×:洗浄後に付着物あり
[0100]
[仮着材の除去操作後の牛歯に対する引張接着試験]
 ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて(#80)シリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨して、象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルの平坦面を流水下にて#1000のシリコンカーバイド紙(日本研紙株式会社製)でさらに研磨し、得られたサンプルを超音波洗浄機(ヤマト科学株式会社製)で5分間洗浄後、サンプル表面の水をエアブローすることで乾燥した。仮着材として、IFU(使用説明書)に従って練和したハイ-ボンドテンポラリーセメント ソフトを象牙質サンプルの平坦面に塗布した。容器の中に蒸留水で湿らせたキムタオルを入れ、その上に前記仮着材を塗布した牛歯(象牙質)サンプルを入れて密閉し、37℃にて30分間硬化させた後、37℃水中にて1週間保管する。1週間後、取り出して仮着材を剥がし、水洗及びエアブローを行った後、仮着材が塗布されていた場所に調製した歯科用仮着材除去材を塗布して10秒間擦り洗浄を実施し、水洗した。次いで、エアブローすることで乾燥した後、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規定し、被着体処理面とした。
[0101]
 得られた被着体処理面の上に、歯科用レジンセメント(クラレノリタケデンタル株式会社製、商品名「SA セメント プラス オートミックス(登録商標)」)を、ミキシングチップを用いて載置し、ステンレス製円柱棒(直径7mm、長さ2.5cm)の一方の端面(円形断面)を接着し、60分間静置した。ステンレス製円柱棒の周囲からはみ出た余剰の歯科用レジンセメントを除去した後、蒸留水に浸漬した。蒸留水に浸漬したサンプルを、37℃に保持した恒温器内に24時間静置して、接着試験供試サンプルとした。接着試験供試サンプルは全部で5個作製した。
[0102]
 上記の5個の接着試験供試サンプルの引張接着強さを、万能試験機(株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定した。表5に記載の値は平均値である。引張接着強さは7MPa以上が好ましく、7.5MPa以上がより好ましい。なお、上記の引張接着試験において、仮着材を付着させずに同様の接着操作を実施した場合の引張接着強さは8MPaであり、仮着材を剥がしてから歯科用仮着材除去材を塗布せずに擦り洗浄を実施した場合は2MPaという結果となった。
[0103]
[表5]


[0104]
 表5に示すように、本発明に係る歯科用仮着材除去材は、除去操作後の牛歯(象牙質)に対して、歯科用レジンセメントを適用し引張接着強さを検証したところ、いずれも7MPa以上の優れた引張接着強さが得られたことから、仮着材に含まれる有機成分及び酸化亜鉛に対して優れた洗浄効果を示すことが分かる。また、歯科用仮着材除去材を用いて洗浄した牛歯表面について、走査電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、仮着材に対する優れた洗浄効果を有することが確認された。これに対して、比較例ではいずれも3MPa程度となり、仮着材に含まれる有機成分及び酸化亜鉛に対する洗浄効果が低いため、仮着材の除去操作後の引張接着強さに劣る結果となったと考えられる。

産業上の利用可能性

[0105]
 本発明に係る歯科用清掃材は、歯科用修復物、及び支台歯の清掃などに用いることができる。また、本発明に係る歯科用仮着材除去材は、暫間的な材料である仮着材に対して優れた洗浄性を示し、洗浄後の接着強さに優れている。

請求の範囲

[請求項1]
 酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有する、歯科用清掃材。
[請求項2]
 pHが8.0未満である、請求項1に記載の歯科用清掃材。
[請求項3]
 前記酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種の単量体を含有する、請求項1又は2に記載の歯科用清掃材。
[請求項4]
 前記有機アミン化合物(c)が第三級有機アミン化合物を含む、請求項1~3のいずれかに記載の歯科用清掃材。
[請求項5]
 前記第三級有機アミン化合物が脂肪族化合物を含む、請求項4に記載の歯科用清掃材。
[請求項6]
 前記脂肪族化合物がトリエタノールアミン、及び/又は2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートである、請求項5に記載の歯科用清掃材。
[請求項7]
 前記第三級有機アミン化合物が芳香族化合物を含む、請求項4~6のいずれかに記載の歯科用清掃材。
[請求項8]
 さらに塩基性無機化合物(d)を含有する、請求項1~7のいずれかに記載の歯科用清掃材。
[請求項9]
 前記塩基性無機化合物(d)がリン酸塩、リン酸水素塩、及びリン酸二水素塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩基性物質である、請求項8に記載の歯科用清掃材。
[請求項10]
 前記塩基性無機化合物(d)が、リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、及びリン酸二水素アルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8又は9に記載の歯科用清掃材。
[請求項11]
 さらに親水性フィラー(e-1)、疎水性フィラー(e-2)、及び高分子系増粘剤(e-3)からなる群から選択される少なくとも1種のゲル化剤(e)を含有する、請求項1~10のいずれかに記載の歯科用清掃材。
[請求項12]
 前記ゲル化剤(e)が親水性フィラー(e-1)及び疎水性フィラー(e-2)である、請求項11に記載の歯科用清掃材。
[請求項13]
 前記親水性フィラー(e-1)が親水性ヒュームドシリカであって、かつ前記疎水性フィラー(e-2)が疎水性ヒュームドシリカである、請求項12に記載の歯科用清掃材。
[請求項14]
 前記親水性フィラー(e-1)と前記疎水性フィラー(e-2)の質量比が4:6~2:8の範囲である、請求項12又は13に記載の歯科用清掃材。
[請求項15]
 酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を混合する工程を含む、歯科用清掃材の製造方法。
[請求項16]
 歯科用仮着材を除去するための、酸性基含有ラジカル重合性単量体(a)、水(b)、及び有機アミン化合物(c)を含有する歯科用清掃材の非治療的使用。
[請求項17]
 酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を含有する、歯科用仮着材除去材。
[請求項18]
 pHが8.0未満である、請求項17に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項19]
 前記酸性基含有化合物(A)が酸性基含有重合性単量体(A-1)である、請求項17又は18に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項20]
 前記酸性基含有重合性単量体(A-1)が、リン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ピロリン酸基含有(メタ)アクリル系単量体、及びカルボン酸基含有(メタ)アクリル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項19に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項21]
 前記塩基性化合物(C)が塩基性無機化合物(C-1)及び有機アミン化合物(C-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項17~20のいずれかに記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項22]
 前記塩基性無機化合物(C-1)がリン酸塩、リン酸水素塩、及びリン酸二水素塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩基性物質である、請求項21に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項23]
 前記塩基性無機化合物(C-1)が、リン酸アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ金属塩、及びリン酸二水素アルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項21又は22に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項24]
 前記有機アミン化合物(C-2)が第三級有機アミン化合物を含む、請求項21に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項25]
 さらにゲル化剤(D)を含有する、請求項17~24のいずれかに記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項26]
 前記ゲル化剤(D)が親水性フィラー(D-1)及び疎水性フィラー(D-2)を含有する、請求項25に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項27]
 前記親水性フィラー(D-1)が親水性ヒュームドシリカであって、かつ前記疎水性フィラー(D-2)が疎水性ヒュームドシリカである、請求項26に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項28]
 前記親水性フィラー(D-1)と前記疎水性フィラー(D-2)の質量比が4:6~2:8の範囲である、請求項26又は27に記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項29]
 前記ゲル化剤(D)が高分子系増粘剤(D-3)を含有する、請求項25~28のいずれかに記載の歯科用仮着材除去材。
[請求項30]
 酸性基含有化合物(A)、水(B)、及び塩基性化合物(C)を混合する工程を含む、請求項17に記載の歯科用仮着材除去材の製造方法。