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1. WO2020104881 - 正極活物質、および二次電池

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明 細 書

発明の名称

技術分野

0001   0002   0003  

背景技術

0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

非特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010   0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016   0017  

発明の効果

0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232   0233   0234   0235   0236   0237   0238   0239   0240   0241   0242   0243   0244   0245   0246   0247   0248   0249   0250   0251   0252   0253   0254   0255   0256   0257   0258   0259   0260   0261   0262   0263   0264   0265   0266   0267   0268   0269   0270   0271   0272   0273   0274   0275   0276   0277   0278   0279   0280   0281   0282   0283   0284   0285   0286   0287   0288   0289   0290   0291   0292   0293   0294   0295   0296   0297   0298   0299   0300   0301   0302   0303   0304   0305   0306   0307   0308   0309   0310   0311   0312   0313   0314   0315   0316   0317   0318   0319   0320   0321   0322   0323   0324   0325   0326   0327   0328   0329   0330   0331   0332   0333   0334   0335   0336   0337   0338   0339   0340   0341   0342   0343   0344   0345   0346   0347   0348   0349   0350   0351   0352   0353   0354   0355   0356   0357   0358   0359   0360   0361   0362   0363   0364   0365   0366   0367   0368   0369   0370   0371   0372   0373   0374   0375   0376   0377   0378   0379   0380   0381   0382   0383  

実施例 1

0384   0385   0386   0387   0388   0389   0390   0391   0392   0393   0394   0395   0396   0397   0398   0399   0400   0401   0402   0403   0404   0405   0406   0407   0408   0409   0410   0411   0412   0413   0414   0415   0416   0417   0418   0419   0420   0421   0422   0423   0424   0425   0426   0427   0428   0429  

実施例 2

0430   0431   0432   0433   0434   0435   0436   0437   0438   0439   0440   0441   0442   0443   0444   0445   0446   0447   0448   0449   0450   0451   0452   0453   0454   0455  

符号の説明

0456  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1A   1B   2A   2B   3   4   5   6A   6B   7A   7B   8   9   10   11A   11B   12A   12B   12C   13A   13B   13C   13D   14   15A   15B   15C   16A   16B   16C   16D   17A   17B   18A1   18A2   18B1   18B2   19A   19B   20   21A   21B   21C   22A   22B   23   24   25A   25B   25C   26A   26B1   26B2   26C   26D   27A   27B   28A   28B   28C   28D   28E   28F   28G   28H   29A   29B   29C   30   31A   31B   31C   32   33   34A   34B   35A   35B   36   37A   37B   38   39A   39B   40A   40B   41A   41B   42A   42B   43A   43B   44A   44B   45A   45B   46A   46B  

明 細 書

発明の名称 : 正極活物質、および二次電池

技術分野

[0001]
 本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置または電子機器、またはそれらの製造方法に関する。特に、二次電池に用いることのできる正極活物質、二次電池、および二次電池を有する電子機器に関する。
[0002]
 なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、蓄電装置とは、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
[0003]
 本明細書等において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。

背景技術

[0004]
 近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、次世代クリーンエネルギー自動車(ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)等)など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大している。また、リチウムイオン二次電池は、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
[0005]
 リチウムイオン二次電池に要求される特性としては、さらなる高エネルギー密度化、サイクル特性の向上、様々な動作環境での安全性、及び長期信頼性の向上などがある。
[0006]
 そこでリチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上および高容量化を目指した、正極活物質の改良が検討されている(特許文献1および特許文献2)。また、正極活物質の結晶構造に関する研究も行われている(非特許文献1乃至非特許文献3)。
[0007]
 X線回折法(XRD:X−ray Diffraction)は、正極活物質の結晶構造の解析に用いられる手法の一つである。非特許文献5に示すICSD(Inorganic Crystal Structure Database)を用いることにより、XRDデータの解析を行うことができる。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2002−216760号公報
特許文献2 : 特開2006−261132号公報

非特許文献

[0009]
非特許文献1 : Toyoki Okumura et al,”Correlation of lithium ion distribution and X−ray absorption near−edge structure in O3−and O2−lithium cobalt oxides from first−principle calculation”,Journal of Materials Chemistry,2012,22,p.17340−17348
非特許文献2 : Motohashi,T.et al,”Electronic phase diagram of the layered cobalt oxide system LiXCoO2(0.0≦X≦1.0)”,Physical Review B,80(16);165114
非特許文献3 : Zhaohui Chen et al,“Staging Phase Transitions in LiXCoO2”,Journal of The Electrochemical Society,2002,149(12) A1604−A1609
非特許文献4 : W.E.Counts et al,Journal of the American Ceramic Society,(1953) 36[1] 12−17.Fig.01471
非特許文献5 : Belsky,A.et al.,“New developments in the Inorganic Crystal Structure Database(ICSD):accessibility in support of materials research and design”,Acta Cryst.,(2002)B58 364−369.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
 本発明の一態様は、高容量、かつ充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用正極活物質、およびその作製方法を提供することを課題の一とする。または、生産性の高い正極活物質の作製方法を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、高容量の二次電池を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、充放電特性の優れた二次電池を提供することを課題の一とする。または、高電圧で充電した状態を長時間保持した場合でもコバルト等の遷移金属の溶出が抑制された正極活物質を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することを課題の一とする。
[0011]
 または、本発明の一態様は、新規な物質、活物質粒子、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供することを課題の一とする。
[0012]
 なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明の一態様は、リチウムと、コバルトと、酸素と、を有し、2価のコバルトイオン及び4価のコバルトイオンに起因するスピン密度が、2.0×10 17spins/g以上1.0×10 18spins/g以下である正極活物質である。
[0014]
 前述の正極活物質において、さらにマグネシウムを有することが好ましい。マグネシウム濃度は、コバルトに対し0.1atomic%以上6.0atomic%以下であることが好ましい。
[0015]
 前述の正極活物質において、さらにフッ素を有することが好ましい。
[0016]
 前述の正極活物質において、a axis(a軸)の格子定数が、2.8155×10 −10m以上2.8175×10 −10mであり、c axis(c軸)の格子定数が、14.045×10 −10m以上14.065×10 −10m以下であることが好ましい。
[0017]
 本発明の一態様は、前述の正極活物質を有する正極と、負極と、を有する二次電池である。

発明の効果

[0018]
 本発明の一態様により、高容量、かつ充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用正極活物質、およびその作製方法を提供することができる。また、生産性の高い正極活物質の作製方法を提供することができる。また、リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供することができる。また、高容量の二次電池を提供することができる。また、充放電特性の優れた二次電池を提供することができる。また、高電圧で充電した状態を長時間保持した場合でもコバルト等の遷移金属の溶出が抑制された正極活物質を提供することができる。また、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することができる。また、新規な物質、活物質粒子、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0019]
図1A、図1Bは、正極活物質の構成を説明する模式図である。
図2A、図2Bは、正極活物質の構成を説明する模式図である。
図3は、本発明の一態様の正極活物質の充電深度と結晶構造を説明する図である。
図4は、従来の正極活物質の充電深度と結晶構造を説明する図である。
図5は、結晶構造から計算されるXRDパターンである。
図6Aは、本発明の一態様の正極活物質の結晶構造を説明する図である。図6Bは、本発明の一態様の正極活物質の磁性を説明する図である。
図7Aは、従来の正極活物質の結晶構造を説明する図である。図7Bは、従来の正極活物質の磁性を説明する図である。
図8は、本発明の一態様の正極活物質の作製方法の一例を説明する図である。
図9は、本発明の一態様の正極活物質の作製方法の一例を説明する図である。
図10は、本発明の一態様の正極活物質の作製方法の一例を説明する図である。
図11A、図11Bは、導電助剤としてグラフェン化合物を用いた場合の活物質層の断面図である。
図12A、図12B、図12Cは、二次電池の充電方法を説明する図である。
図13A、図13B、図13C、図13Dは、二次電池の充電方法を説明する図である。
図14は、二次電池の放電方法を説明する図である。
図15A、図15B、図15Cは、コイン型二次電池を説明する図である。
図16A、図16B、図16C、図16Dは、円筒型二次電池を説明する図である。
図17A、図17Bは、二次電池の例を説明する図である。
図18A1、図18A2、図18B1、図18B2は、二次電池の例を説明する図である。
図19A、図19Bは、二次電池の例を説明する図である。
図20は、二次電池の例を説明する図である。
図21A、図21B、図21Cは、ラミネート型の二次電池を説明する図である。
図22A、図22Bは、ラミネート型の二次電池を説明する図である。
図23は、二次電池の外観を示す図である。
図24は、二次電池の外観を示す図である。
図25A、図25B、図25Cは、二次電池の作製方法を説明するための図である。
図26A、図26B1、図26B2、図26C、図26Dは、曲げることのできる二次電池を説明する図である。
図27A、図27Bは、曲げることのできる二次電池を説明する図である。
図28A、図28B、図28C、図28D、図28E、図28F、図28G、図28Hは、電子機器の一例を説明する図である。
図29A、図29B、図29Cは、電子機器の一例を説明する図である。
図30は、電子機器の一例を説明する図である。
図31A、図31B、図31Cは、車両の一例を説明する図である。
図32は、ESR測定結果を示す図である。
図33は、ESR測定結果を示す図である。
図34A、図34Bは、スピン密度を示す図である。
図35A、図35Bは、マグネシウム添加量とスピン密度の相関を示す図である。
図36は、XRD測定結果を示す図である。
図37A、図37Bは、XRD測定結果を示す図である。
図38は、XRD測定結果を示す図である。
図39A、図39Bは、格子定数を示す図である。
図40A、図40Bは、サイクル特性を示す図である。
図41A、図41Bは、サイクル特性を示す図である。
図42A、図42Bは、連続充電特性を示す図である。
図43A、図43Bは、ESR測定結果を示す図である。
図44A、図44Bは、スピン密度を示す図である。
図45A、図45Bは、マグネシウム添加量とスピン密度の相関を示す図である。
図46A、図46Bは、サイクル特性を示す図である。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
[0021]
 本明細書等において、結晶面および方向はミラー指数で示す。結晶面および方向の表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書等では出願表記の制約上、数字の上にバーを付す代わりに、数字の前に−(マイナス符号)を付して表現する場合がある。また、結晶内の方向を示す個別方位は[ ]で、等価な方向すべてを示す集合方位は< >で、結晶面を示す個別面は( )で、等価な対称性を有する集合面は{ }でそれぞれ表現する。
[0022]
 本明細書等において、偏析とは、複数の元素(例えばA,B,C)からなる固体において、ある元素(例えばB)が空間的に不均一に分布する現象をいう。
[0023]
 本明細書等において、活物質等の粒子表層部とは、表面から10nm程度までの領域をいう。ひびやクラックにより生じた面も表面といってよい。また粒子表層部より深い領域を、粒子内部という。
[0024]
 本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属とリチウムが規則配列して二次元平面を形成し、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥があってもよい。また、層状岩塩型結晶構造は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構造となっている場合がある。
[0025]
 本明細書等において、岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
[0026]
 本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する擬スピネル型の結晶構造とは、空間群R−3mであり、スピネル型結晶構造ではないものの、コバルト、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する結晶構造をいう。なお、擬スピネル型の結晶構造は、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合があり、この場合もイオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する。
[0027]
 擬スピネル型の結晶構造は、層間にランダムにリチウムを有するもののCdCl 型の結晶構造に類似する結晶構造であるということもできる。このCdCl 型に類似した結晶構造は、ニッケル酸リチウムを充電深度0.94まで充電したとき(Li 0.06NiO )の結晶構造と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構造を取らないことが知られている。
[0028]
 層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)をとる。擬スピネル型結晶も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。これらが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在する。ただし、層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶の空間群はR−3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm−3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd−3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、擬スピネル型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
[0029]
 二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)像、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscopy)像、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡(HAADF−STEM:High−angle Annular Dark Field−STEM)像、環状明視野走査透過電子顕微鏡(ABF−STEM:Annular bright field−STEM)像等から判断することができる。X線回折(XRD)、電子線回折、中性子線回折等も判断の材料にすることができる。TEM像等では、陽イオンと陰イオンの配列が、明線と暗線の繰り返しとして観察できる。層状岩塩型結晶と岩塩型結晶において立方最密充填構造の向きが揃うと、結晶間で、明線と暗線の繰り返しのなす角度が5度以下、より好ましくは2.5度以下である様子が観察できる。なお、TEM像等では酸素、フッ素をはじめとする軽元素は明確に観察できない場合があるが、その場合は金属元素の配列で配向の一致を判断することができる。
[0030]
 本明細書等において、正極活物質の理論容量とは、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離した場合の電気量をいう。例えばLiCoO の理論容量は274mAh/g、LiNiO の理論容量は274mAh/g、LiMn の理論容量は148mAh/gである。
[0031]
 本明細書等において、挿入脱離可能なリチウムが全て挿入されているときの充電深度を0、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離したときの充電深度を1ということとする。
[0032]
 本明細書等において、充電とは、電池内において正極から負極にリチウムイオンを移動させ、外部回路において負極から正極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウムイオンを離脱させることを充電という。また充電深度が0.74以上0.9以下、より詳細には充電深度が0.8以上0.83以下の正極活物質を、高電圧で充電された正極活物質ということとする。そのため、例えばLiCoO において219.2mAh/g充電されていれば、高電圧で充電された正極活物質である。またLiCoO において、25℃環境下で、充電電圧を4.525V以上4.65V以下(対極リチウムの場合)として定電流充電し、その後電流値が0.01C、あるいは定電流充電時の電流値の1/5から1/100程度となるまで定電圧充電した後の正極活物質も、高電圧で充電された正極活物質ということとする。
[0033]
 同様に、放電とは、電池内において負極から正極にリチウムイオンを移動させ、外部回路において正極から負極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウムイオンを挿入することを放電という。また充電深度が0.06以下の正極活物質、または高電圧で充電された状態から充電容量の90%以上の容量を放電した正極活物質を、十分に放電された正極活物質ということとする。例えばLiCoO において充電容量が219.2mAh/gならば高電圧で充電された状態であり、ここから充電容量の90%である197.3mAh/g以上を放電した後の正極活物質は、十分に放電された正極活物質である。また、LiCoO において、25℃環境下で電池電圧が3V以下(対極リチウムの場合)となるまで定電流放電した後の正極活物質も、十分に放電された正極活物質ということとする。
[0034]
 本明細書等において、非平衡な相変化とは、物理量の非線形変化を起こす現象をいうこととする。例えば容量(Q)を電圧(V)で微分(dQ/dV)することで得られるdQ/dV曲線におけるピークの前後では、非平衡な相変化が起き、結晶構造が大きく変わっていると考えられる。
[0035]
(実施の形態1)
[0036]
 本実施の形態では、本発明の一態様の正極活物質について説明する。
[0037]
 本発明の一態様は、リチウムと、コバルトと、酸素と、を有する正極活物質である。本発明の一態様である正極活物質は、さらにマグネシウムを有することが好ましい。マグネシウムを有することで結晶構造が安定となり、充放電を繰り返した際に結晶構造が崩れることを抑制できる。また、本発明の一態様である正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO )において一部のLi がMg 2+に置換され、それに伴い近傍のCo 3+が還元されてCo 2+になる(図1A及び図2A参照)。また、一部のCo 3+がMg 2+に置換され、それに伴い近傍のCo 3+が酸化されてCo 4+になる(図1B及び図2A参照)。したがって、本発明の一態様である正極活物質は、Co 2+及びCo 4+のいずれか一または双方を有する。また、正極活物質の重量当たりのCo 2+及びCo 4+に起因するスピン密度が、2.0×10 17spins/g以上1.0×10 18spins/g以下であることが好ましい。前述のスピン密度を有する正極活物質とすることで、特に充電状態での結晶構造が安定となり好ましい。なお、図2Aはマグネシウムを有さない正極活物質の構成を説明する模式図であり、図1A及び図1Bは本発明の一態様であるマグネシウムを有する正極活物質の構成を説明する模式図である。また、マグネシウム添加量が多すぎると、Co 2+及びCo 4+に起因するスピン密度が低くなる場合がある(図2B参照)。また、本発明の一態様である正極活物質を二次電池に用いることで、サイクル特性およびレート特性に優れた二次電池とすることができる。
[0038]
 正極活物質中のマグネシウム濃度は、コバルト原子に対して0.1atomic%以上6.0atomic%以下であることが好ましく、0.5atomic%以上5.0atomic%以下であることがさらに好ましく、1.0atomic%以上4.0atomic%以下であることがさらに好ましい。なお、前述のマグネシウム濃度は、正極活物質の粒子全体の平均値を指す。
[0039]
 正極活物質中のスピン密度は、例えば、電子スピン共鳴法(ESR:Electron Spin Resonance)などを用いて分析することができる。また、正極活物質の粒子全体のマグネシウム濃度の平均値は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS:Inductively Coupled Plasma−Mass Spectrometry)などを用いて分析することができる。
[0040]
 本発明の一態様である正極活物質はさらにフッ素を有することが好ましい。フッ素を有することで、電解質の分解により生じるフッ酸に対する耐食性を向上させることができる。正極活物質の成分は、例えば、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)などで測定できる。また、正極活物質の粒子全体のフッ素濃度の平均値は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)などを用いて分析することができる。
[0041]
 本発明の一態様である正極活物質は、a軸の格子定数が2.8155×10 −10m以上2.8175×10 −10mであり、c軸の格子定数が14.045×10 −10m以上14.065×10 −10m以下であることが好ましい。
[0042]
[正極活物質の構造]
 図3および図4を用いて、本発明の一態様である正極活物質100と、従来の正極活物質について説明し、これらの違いについて述べる。図3および図4では、正極活物質が有する遷移金属としてコバルトを用いる場合について述べる。本発明の一態様である正極活物質100を、図3に示す。従来の正極活物質を、図4に示す。図4で述べる従来の正極活物質とは、リチウム、コバルト、酸素以外の元素を内部に添加する、または正極活物質の粒子表層部にコーティングする等の加工がされていない、単純なコバルト酸リチウム(LiCoO )である。
[0043]
<従来の正極活物質>
 従来の正極活物質の一のコバルト酸リチウムLiCoO は、非特許文献1および非特許文献2等で述べられているように、充電深度によって結晶構造が変化する。コバルト酸リチウムの代表的な結晶構造を図4に示す。
[0044]
 図4に示すように、充電深度0(放電状態)であるコバルト酸リチウムは、空間群R−3mの結晶構造を有する領域を有し、ユニットセル中にCoO 層が3層存在する。そのためこの結晶構造を、O3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、CoO 層とはコバルトに酸素が6配位した8面体構造が、稜共有の状態で平面に連続した構造をいうこととする。
[0045]
 充電深度が1のときは、空間群P−3m1の結晶構造を有し、ユニットセル中にCoO 層が1層存在する。そのためこの結晶構造を、O1型結晶構造と呼ぶ場合がある。
[0046]
 充電深度が0.88程度のときのコバルト酸リチウムは、空間群R−3mの結晶構造を有する。この構造は、P−3m1(O1)のようなCoO の構造と、R−3m(O3)のようなLiCoO の構造と、が交互に積層された構造ともいえる。そのためこの結晶構造を、H1−3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、実際にはH1−3型結晶構造は、ユニットセルあたりのコバルト原子の数が他の構造の2倍となっている。しかし、図4をはじめ本明細書では、他の構造と比較しやすくするためH1−3型結晶構造のc軸をユニットセルの1/2にした図で示すこととする。
[0047]
 充電深度が0.88程度、またはそれ以上になるような高電圧の充電と、放電とを繰り返すと、コバルト酸リチウムはH1−3型結晶構造と、放電状態のR−3m(O3)の構造と、の間で結晶構造の変化(つまり、非平衡な相変化)を繰り返すことになる。
[0048]
 しかしながら、これらの2つの結晶構造は、CoO 層のずれが大きい。図4に点線および両矢印で示すように、H1−3型結晶構造では、CoO 層がR−3m(O3)から大きくずれている。このようなダイナミックな構造変化は、結晶構造の安定性に悪影響を与えうる。
[0049]
 さらに、H1−3型結晶構造とO3型結晶構造とでは体積の差も大きい。同数のコバルト原子あたりで比較した場合、H1−3型結晶構造と放電状態のO3型結晶構造の体積の差は3.5%以上である。
[0050]
 加えて、H1−3型結晶構造が有する、P−3m1(O1)のようなCoO 層が連続した構造は不安定である可能性が高い。
[0051]
 そのため、高電圧の充放電を繰り返すとコバルト酸リチウムの結晶構造は崩れていく。結晶構造の崩れが、サイクル特性の悪化を引き起こす。これは、結晶構造が崩れることで、リチウムが安定して存在できるサイトが減少し、またリチウムの挿入脱離が難しくなるためだと考えられる。
[0052]
<本発明の一態様の正極活物質>
<粒子内部>
 本発明の一態様である正極活物質100では、十分に放電された状態と、高電圧で充電された状態(充電深度が0.8以上0.83以下)における、結晶構造の変化および同数の遷移金属原子あたりで比較した場合の体積の差が小さい。
[0053]
 正極活物質100の充放電前後の結晶構造を、図3に示す。本発明の一態様である正極活物質100は、リチウムと、コバルトと、を有する複合酸化物である。上記に加えてマグネシウムを有することが好ましい。また、さらにフッ素、塩素等のハロゲンを有することが好ましい。
[0054]
 図3に示す充電深度0(放電状態)の結晶構造は、図4と同じR−3m(O3)である。一方、本発明の一態様の正極活物質100は、十分に充電された充電深度0.88程度の場合、図4と異なる構造の結晶を有する。この空間群R−3mの結晶構造を、本明細書等では擬スピネル型結晶構造と呼ぶこととする。なお、図3に示す擬スピネル型結晶構造の図では、コバルト原子の対称性と酸素原子の対称性について説明するために、リチウムの表示を省略しているが、実際はCoO 層の間にコバルトに対して12atomic%程度のリチウムが存在する。また、O3型結晶構造および擬スピネル型結晶構造いずれの場合も、CoO 層の間、つまりリチウムサイトに、希薄にマグネシウムが存在することが好ましい。また、さらに酸素サイトに、ランダムにフッ素等のハロゲンが存在することが好ましい。
[0055]
 正極活物質100では、高電圧で充電し多くのリチウムが離脱したときの、結晶構造の変化が、従来のLiCoO よりも抑制されている。例えば、図3中に点線で示すように、これらの結晶構造ではCoO 層のずれがほとんどない。
[0056]
 正極活物質100では、充電深度0のO3型結晶構造と、充電深度0.88の擬スピネル型結晶構造のユニットセルあたりの体積の差は2.5%以下、より詳細には2.2%以下である。
[0057]
 そのため、正極活物質100は高電圧で充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい。
[0058]
 なお、擬スピネル型結晶構造は、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0,0,0.5)、O(0,0,x)、0.20≦x≦0.25の範囲内で示すことができる。
[0059]
 CoO 層間、つまりリチウムサイトにランダムかつ希薄に存在するマグネシウムは、CoO 層のずれを抑制する効果がある。そのため、CoO 層間にマグネシウムが存在すると、擬スピネル型結晶構造になりやすい。また、マグネシウムは正極活物質100の粒子全体に分布していることが好ましい。マグネシウムを粒子全体に分布させるために、正極活物質100の作製工程において、加熱処理を行うことが好ましい。
[0060]
 しかしながら、加熱処理の温度が高すぎると、カチオンミキシングが生じてマグネシウムがコバルトサイトに入る可能性が高まる。マグネシウムがコバルトサイトに存在すると、R−3mの構造を保つ効果が小さくなってしまう場合がある。さらに、加熱処理の温度が高すぎると、層状岩塩型の構造が不安定になってしまう、リチウムが蒸散するなどの悪影響も懸念される。
[0061]
 そこで、マグネシウムを粒子全体に分布させるための加熱処理よりも前に、コバルト酸リチウムにフッ素化合物等のハロゲン化合物を加えておくことが好ましい。ハロゲン化合物を加えることでコバルト酸リチウムの融点降下が起こる。融点降下させることで、カチオンミキシングが生じにくい温度で、マグネシウムを粒子全体に分布させることが容易となる。ここで、電解質が分解することで生じるフッ酸により、正極活物質が腐食してしまう場合がある。本発明の一態様である正極活物質100はフッ素を有することにより、電解質の分解により生じるフッ酸に対する耐食性を向上させることができる。
[0062]
 なお、本明細書等において、電解質とは電気伝導性を有する物質を指す。電解質は、液体に限られず、ゲルや固体であってもよい。液体の電解質を電解液と呼ぶ場合があり、電解液は溶質を溶媒に溶解させて作製できる。また、固体の電解質を固体電解質と呼ぶ場合がある。
[0063]
 なお、これまで正極活物質100がリチウムと、コバルトと、酸素と、を有する複合酸化物である場合について説明したが、コバルトに加えて、ニッケルを有していてもよい。この場合、コバルトとニッケルの原子数の和(Co+Ni)に占める、ニッケルの原子数(Ni)の割合Ni/(Co+Ni)が、0.1未満であることが好ましく、0.075以下であることがより好ましい。
[0064]
 高電圧で充電した状態を長時間保持すると、正極活物質から遷移金属が電解液に溶出し、結晶構造が崩れる恐れが生じる。しかし上記の割合でニッケルを有することで、正極活物質100からの遷移金属の溶出を抑制できる場合がある。
[0065]
 ニッケル添加を行うことで、充放電電圧が下がるため、同じ容量の場合、電圧を下げて実現できるため、結果として遷移金属の溶出や電解液の分解を抑えられる可能性がある。ここで充放電電圧とは例えば、充電深度ゼロから所定の充電深度までの範囲の電圧を指す。
[0066]
<粒子表層部>
 マグネシウムは正極活物質100の粒子全体に分布していることが好ましいが、これに加えて粒子表層部のマグネシウム濃度が、粒子全体の平均よりも高いことがより好ましい。粒子表層部のマグネシウム濃度は、例えば、X線光電子分光法(XPS)などで測定できる。粒子全体の平均のマグネシウム濃度は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)、グロー放電質量分析法(GDMS:Glow Discharge Mass Spectrometry)などで測定できる。粒子表面は、言うなれば全て結晶欠陥である上に、充電時には粒子表面からリチウムが脱離していくため、粒子内部よりもリチウム濃度が低くなりやすい部分である。そのため、粒子表面は不安定になりやすく、結晶構造が崩れやすい部分である。粒子表層部のマグネシウム濃度が高ければ、結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。また、粒子表層部のマグネシウム濃度が高いと、電解液が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することも期待できる。
[0067]
 フッ素等のハロゲンも、正極活物質100の粒子表層部の濃度が、粒子全体の平均よりも高いことが好ましい。電解液に接する領域である粒子表層部にハロゲンが存在することで、フッ酸に対する耐食性を効果的に向上させることができる。
[0068]
 このように正極活物質100の粒子表層部は粒子内部よりも、マグネシウムおよびフッ素の濃度が高い、粒子内部と異なる組成であることが好ましい。また、粒子表層部の組成として常温で安定な結晶構造をとることが好ましい。そのため、粒子表層部は粒子内部と異なる結晶構造を有していてもよい。例えば、正極活物質100の粒子表層部の少なくとも一部が、岩塩型の結晶構造を有していてもよい。また粒子表層部と粒子内部が異なる結晶構造を有する場合、粒子表層部と粒子内部の結晶の配向が概略一致していることが好ましい。
[0069]
 ただし、粒子表層部がMgOのみ、またはMgOとCoO(II)が固溶した構造のみではリチウムの挿入脱離が難しくなってしまう。そのため、粒子表層部は少なくともコバルトを有し、放電状態においてはリチウムも有し、リチウムの挿入脱離の経路を有している必要がある。また、マグネシウムよりもコバルトの濃度が高いことが好ましい。
[0070]
<結晶粒界>
 正極活物質100が有するマグネシウム又はハロゲンは、粒子内部にランダムかつ希薄に存在していてもよいが、一部は結晶粒界に偏析していることがより好ましい。
[0071]
 換言すれば、正極活物質100の結晶粒界およびその近傍のマグネシウム濃度は、粒子内部の他の領域よりも高いことが好ましい。また結晶粒界およびその近傍のハロゲン濃度は、内部の他の領域より高いことが好ましい。
[0072]
 粒子表面と同様、結晶粒界も面欠陥である。そのため、結晶粒界は不安定になりやすく結晶構造の変化が始まりやすい。そのため、結晶粒界およびその近傍のマグネシウム濃度が高ければ、結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。
[0073]
 結晶粒界およびその近傍のマグネシウムおよびハロゲン濃度が高い場合、正極活物質100の粒子の結晶粒界に沿ってクラックが生じた場合でも、クラックにより生じた表面の近傍でマグネシウムおよびハロゲン濃度が高くなる。そのためクラックが生じた後の正極活物質においてもフッ酸に対する耐食性を高めることができる。
[0074]
 なお、本明細書等において、結晶粒界の近傍とは、結晶粒界から10nm程度までの領域をいうこととする。
[0075]
<粒径>
 正極活物質100の粒子の粒径は、大きすぎるとリチウムの拡散が難しくなる、集電体に塗工したときに活物質層の表面が粗くなりすぎる、等の問題がある。一方、粒子の粒径は小さすぎると、集電体への塗工時に活物質層を担持しにくくなる、電解液との反応が過剰に進む等の問題点も生じる。そのため、平均粒子径(D50)が、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下がさらに好ましい。
[0076]
 なお、本明細書等において平均粒子径(D50)とは、体積基準で累積50%となるときの粒子径を指す。平均粒子径(D50)をメディアン径ともいう場合がある。
[0077]
<分析方法>
 ある正極活物質が、高電圧で充電されたとき擬スピネル型結晶構造を示す本発明の一態様の正極活物質100であるか否かは、高電圧で充電された正極を、XRD、電子線回折、中性子線回折、電子スピン共鳴法(ESR:Electron Spin Resonance)、核磁気共鳴法(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)、磁化測定等を用いて解析することで判断できる。特にXRDは、正極活物質が有するコバルト等の遷移金属の対称性を高分解能で解析できる、結晶性の高さおよび結晶の配向性を比較できる、格子の周期性歪みおよび結晶子サイズの解析ができる、二次電池を解体して得た正極をそのまま測定しても十分な精度を得られる、等の点で好ましい。
[0078]
 本発明の一態様の正極活物質100は、これまで述べたように高電圧で充電した状態と放電状態とで結晶構造の変化が少ないことが特徴である。高電圧で充電した状態と放電状態との変化が大きい結晶構造が50wt%以上を占める材料は、高電圧の充放電に耐えられないため好ましくない。そして元素を添加するだけでは目的の結晶構造をとらない場合があることに注意が必要である。例えばマグネシウムおよびフッ素を有するコバルト酸リチウム、という点で共通していても、高電圧で充電した状態で擬スピネル型結晶構造が60wt%以上を占める場合と、H1−3型結晶構造が50wt%以上を占める場合と、がある。また、所定の電圧では、擬スピネル結晶構造がほぼ100wt%になり、さらに当該所定の電圧をあげるとH1−3型結晶構造が生じる場合もある。そのため、本発明の一態様の正極活物質100であるか否かを判断するには、XRDをはじめとする結晶構造についての解析が必要である。
[0079]
 ただし、高電圧で充電した状態または放電状態の正極活物質は、大気に触れると結晶構造の変化を起こす場合がある。例えば擬スピネル型結晶構造からH1−3型結晶構造に変化する場合がある。そのため、サンプルはすべてアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気でハンドリングすることが好ましい。
[0080]
<充電方法>
 ある複合酸化物が、本発明の一態様の正極活物質100であるか否かを判断するための高電圧充電は、例えば対極リチウムでコインセル(CR2032タイプ、直径20mm高さ3.2mm)を作製して充電することができる。
[0081]
 より具体的には、正極には、正極活物質、導電助剤およびバインダを混合したスラリーを、アルミニウム箔の正極集電体に塗工したものを用いることができる。
[0082]
 対極にはリチウム金属を用いることができる。なお対極にリチウム金属以外の材料を用いたときは、二次電池の電位と正極の電位が異なる。本明細書等における電圧および電位は、特に言及しない場合、正極の電位である。
[0083]
 電解液が有する電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF )を用い、溶媒には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)がEC:DEC=3:7(体積比)、ビニレンカーボネート(VC)が2wt%で混合されたものを用いることができる。
[0084]
 セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いることができる。
[0085]
 正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いることができる。
[0086]
 上記条件で作製したコインセルを、4.6V、0.5Cで定電流充電し、その後電流値が0.01Cとなるまで定電圧充電する。なおここでは1Cは137mA/gとする。温度は25℃とする。このようにして充電した後に、コインセルをアルゴン雰囲気のグローブボックス中で解体して正極を取り出せば、高電圧で充電された正極活物質を得られる。この後に各種分析を行う際、外界成分との反応を抑制するため、アルゴン雰囲気で密封することが好ましい。例えばXRDは、アルゴン雰囲気の密閉容器内に封入して行うことができる。
[0087]
<XRD>
 擬スピネル型結晶構造と、H1−3型結晶構造のモデルから計算される、CuKα1線による理想的な粉末XRDパターンを図5に示す。また、比較のため充電深度0のLiCoO (O3)と、充電深度1のCoO (O1)の結晶構造から計算される理想的なXRDパターンも合わせて示す。なお、LiCoO (O3)およびCoO (O1)のパターンはICSD(Inorganic Crystal Structure Database)(非特許文献5参照)より入手した結晶構造情報からMaterials Studio(BIOVIA)のモジュールの一つである、Reflex Powder Diffractionを用いて作成した。2θの範囲は15°から75°とし、Step size=0.01、波長λ1=1.540562×10 −10m、λ2は設定なし、Monochromatorはsingleとした。H1−3型結晶構造のパターンは非特許文献3に記載の結晶構造情報から同様に作成した。擬スピネルのパターンは本発明の一態様の正極活物質のXRDパターンから結晶構造を推定し、TOPAS ver.3(Bruker社製結晶構造解析ソフトウェア)を用いてフィッティングし、他と同様にXRDパターンを作成した。
[0088]
 図5に示すように、擬スピネル型結晶構造では、2θ=19.30±0.20°(19.10°以上19.50°以下)、および2θ=45.55±0.10°(45.45°以上45.65°以下)に回折ピークが出現する。より詳しく述べれば、2θ=19.30±0.10°(19.20°以上19.40°以下)、および2θ=45.55±0.05°(45.50°以上45.60以下)に鋭い回折ピークが出現する。しかしH1−3型結晶構造およびCoO (P−3m1、O1)ではこれらの位置にピークは出現しない。そのため、高電圧で充電された状態で2θ=19.28±0.60°、および2θ=45.55±0.20°のピークが出現することは、本発明の一態様の正極活物質100の特徴であるといえる。
[0089]
 これは、充電深度0の結晶構造と、高電圧充電したときの結晶構造で、XRDの回折ピークが出現する位置が近いということもできる。より具体的には、両者の主な回折ピークのうち2つ以上、より好ましくは3つ以上において、ピークが出現する位置の差が、2θ=0.7以下、より好ましくは2θ=0.5以下であるということができる。
[0090]
 なお、本発明の一態様の正極活物質100は高電圧で充電したとき擬スピネル型の結晶構造を有するが、粒子のすべてが擬スピネル型の結晶構造でなくてもよい。他の結晶構造を含んでいてもよいし、一部が非晶質であってもよい。ただし、XRDパターンについてリートベルト解析を行ったとき、擬スピネル型結晶構造が50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上であることがより好ましく、66wt%以上であることがさらに好ましい。擬スピネル型結晶構造が50wt%以上、より好ましくは60wt%以上、さらに好ましくは66wt%以上あれば、十分にサイクル特性に優れた正極活物質とすることができる。
[0091]
 測定開始から100サイクル以上の充放電を経ても、リートベルト解析を行ったとき擬スピネル型結晶構造が35wt%以上であることが好ましく、40wt%以上であることがより好ましく、43wt%以上であることがさらに好ましい。
[0092]
 正極活物質の粒子が有する擬スピネル構造の結晶子サイズは、放電状態のLiCoO (O3)の1/10程度までしか低下しない。そのため、充放電前の正極と同じXRDの測定条件であっても、高電圧充電後に明瞭な擬スピネル型結晶構造のピークが確認できる。一方単純なLiCoO では、一部が擬スピネル型結晶構造に似た構造を取りえたとしても、結晶子サイズが小さくなり、ピークはブロードで小さくなる。結晶子サイズは、XRDピークの半値幅から求めることができる。
[0093]
 XRDパターンから推定できる、放電状態の正極活物質の粒子が有する層状岩塩型の結晶構造において、c軸の格子定数が小さいことが好ましい。c軸の格子定数は、リチウム位置に異元素が置換する、コバルトが酸素4配位位置(Aサイト)に入るなどした場合に大きくなる。そのため、まず異元素置換およびスピネル型結晶構造のCo が少ない、つまり欠陥の少ない層状岩塩型の結晶構造をとる複合酸化物を作り、その後にマグネシウム源およびフッ素源を混合してマグネシウムをリチウム位置に挿入すると、良好なサイクル特性を示す正極活物質を作製できると考えられる。
[0094]
 放電状態の正極活物質の結晶構造におけるa軸の格子定数が、2.8155×10 −10m以上2.8175×10 −10mであり、c軸の格子定数が、14.045×10 −10m以上14.065×10 −10m以下であることが好ましい。
[0095]
 c軸の格子定数を上記の範囲にするために、不純物は少ない方が好ましく、特にコバルト、マンガン、ニッケル以外の遷移金属の添加は少ない方が好ましく、具体的には、3000ppm(wt)以下であることが好ましく、1500ppm(wt)以下であることがより好ましい。またリチウムとコバルト、マンガン、ニッケルとのカチオンミキシングは少ない方が好ましい。
[0096]
 なお、XRDパターンから明らかになる特徴は、正極活物質の内部の構造についての特徴である。平均粒子径(D50)が1μmから100μm程度の正極活物質では、内部と比較すれば粒子表層部の体積はごくわずかであるため、正極活物質100の粒子表層部が粒子内部と異なる結晶構造を有していても、XRDパターンには表れない可能性が高い。
[0097]
<ESR>
 ここで、図6および図7を用いて、擬スピネル型結晶構造と、他の結晶構造との違いを、ESRを用いて判断する場合について説明する。擬スピネル型結晶構造では、図3および図6Aに示すように、コバルトは酸素6配位のサイトに存在する。図6Bに示すように、酸素6配位のコバルトでは3d軌道がe 軌道とt 2g軌道に分裂する。酸素6配位のコバルトにおいて、酸素が存在する方向の軌道であるe 軌道と比較して、酸素が存在する方向を避けた軌道であるt 2g軌道はエネルギーが低く、t 2g軌道が基底状態である。酸素6配位サイトに存在するコバルトの一部はCo 3+であり、基底状態のCo 3+はt 2g軌道が全て埋まった反磁性(スピン量子数S=0)である。しかし、酸素6配位サイトに存在するコバルトの他の一部はCo 2+またはCo 4+であってもよく、基底状態のCo 2+またはCo 4+は常磁性(スピン量子数S=1/2)である。この常磁性のコバルトは、Co 2+とCo 4+のどちらの場合も不対電子が1つ(スピン量子数S=1/2)であるためESRでは区別がつかない。
[0098]
 一方、従来の正極活物質では、充電された状態で粒子表層部にリチウムを含まないスピネル型の結晶構造を有しうると述べられているものがある。この場合、図7Aに示すスピネル型結晶構造であるCo を有することになる。
[0099]
 スピネルを一般式A[B ]O で記述する場合、元素Aは酸素4配位、元素Bは酸素6配位となる。そこで本明細書等では、酸素4配位のサイトをAサイト、酸素6配位のサイトをBサイトと呼ぶ場合がある。
[0100]
 スピネル型結晶構造のCo では、酸素6配位のBサイトだけでなく、酸素4配位のAサイトにもコバルトが存在する。図7Bで示すように、酸素4配位のコバルトでは3d軌道が分裂したe 軌道とt 2g軌道のうち、e 軌道のエネルギーが低く、e 軌道が基底状態である。そのため、酸素4配位のCo 2+、Co 3+およびCo 4+は基底状態においていずれも不対電子を有し、常磁性である。したがって、スピネル型Co を十分に有する粒子をESR等で分析すれば、常磁性である酸素4配位のCo 2+(スピン量子数S=3/2)、Co 3+(スピン量子数S=1)またはCo 4+(スピン量子数S=1/2)に起因するシグナルが検出されるはずである。
[0101]
 しかしながら、本発明の一態様の正極活物質100では、酸素4配位の常磁性コバルトに起因するシグナルが確認できないほど少ない。そのため、本明細書等でいう擬スピネルには正スピネルとは異なり、ESRで検出できる量の酸素4配位のコバルトが含まれていない。そのため従来の正極活物質と比較して、本発明の一態様の正極活物質100は、ESR等で検出できるスピネル型Co に起因するシグナルが小さいか、確認できないほど少ない場合がある。スピネル型Co は充放電反応に寄与しないため、スピネル型Co は少ないほど好ましい。このようにESR分析からも、正極活物質100は、従来の正極活物質と異なるものであると判断することができる。
[0102]
 本発明の一態様である正極活物質は、Co 2+及びCo 4+のいずれか一または双方を有する。また、本発明の一態様である正極活物質は、Co 2+及びCo 4+に起因するスピン密度が2.0×10 17spins/g以上1.0×10 18spins/g以下が好ましく、2.5×10 17spins/g以上9.5×10 17spins/g以下がさらに好ましく、3.0×10 17spins/g以上9.0×10 17spins/g以下がさらに好ましく、3.5×10 17spins/g以上8.5×10 17spins/g以下がさらに好ましい。正極活物質のスピン密度は、例えば、ESR分析で評価できる。また、Co 2+及びCo 4+に起因するESRシグナルはg値が2.15付近に観察される。前述のスピン密度は室温のESR分析で得られる値を指し、正極活物質の重量当たりのスピン数である。前述のスピン密度は、ESR分析によって得られたスピン数を、ESR分析に用いた試料の重量で除することで算出できる。
[0103]
 本発明の一態様である正極活物質は、Co 2+及びCo 4+に起因するスピン密度が3.3×10 −5spins/Co原子以上1.6×10 −4spins/Co原子以下が好ましく、4.1×10 −5spins/Co原子以上1.5×10 −4spins/Co原子以下がさらに好ましく、4.9×10 −5spins/Co原子以上1.5×10 −4spins/Co原子以下がさらに好ましく、5.7×10 −5spins/Co原子以上1.4×10 −4spins/Co原子以下がさらに好ましい。前述のスピン密度は、室温のESR分析で得られる値を指し、正極活物質のコバルト原子当たりのスピン数である。前述のスピン密度は、ESR分析によって得られたスピン数を、ESR分析に用いた正極活物質中のコバルト原子数で除することで算出できる。正極活物質中のコバルト原子数は、例えば、コバルト酸リチウムの場合は組成をLiCoO とし、その分子量97.87及びESR分析に用いた正極活物質の重量から算出できる。
[0104]
 前述のスピン密度を有する正極活物質とすることで、結晶構造が安定となり、充放電を繰り返した際に結晶構造が崩れることを抑制できる。また、本発明の一態様である正極活物質を二次電池に用いることで、サイクル特性およびレート特性に優れた二次電池とすることができる。また、前述のスピン密度を有する正極活物質は、充電状態で擬スピネル結晶構造になることがある。
[0105]
<XPS>
 X線光電子分光(XPS)では、表面から2nm乃至8nm程度(通常5nm程度)の深さまでの領域の分析が可能であるため、粒子表層部の約半分の領域について、各元素の濃度を定量的に分析することができる。また、ナロースキャン分析をすれば元素の結合状態を分析することができる。なおXPSの定量精度は多くの場合±1atomic%程度、検出下限は元素にもよるが約1atomic%である。
[0106]
 正極活物質100についてXPS分析をしたとき、コバルトの濃度を1としたときの、マグネシウムの濃度の相対値は0.4以上1.5以下が好ましく、0.45以上1.00未満がより好ましい。またフッ素等のハロゲン濃度の相対値は0.05以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.00以下がより好ましい。
[0107]
 正極活物質100についてXPS分析したとき、フッ素と他の元素の結合エネルギーを示すピークは682eV以上685eV未満であることが好ましく、684.3eV程度であることがさらに好ましい。これは、フッ化リチウムの結合エネルギーである685eV、およびフッ化マグネシウムの結合エネルギーである686eVのいずれとも異なる値である。つまり、正極活物質100がフッ素を有する場合、フッ化リチウムおよびフッ化マグネシウム以外の結合であることが好ましい。
[0108]
 さらに、正極活物質100についてXPS分析したとき、マグネシウムと他の元素の結合エネルギーを示すピークは、1302eV以上1304eV未満であることが好ましく、1303eV程度であることがさらに好ましい。これは、フッ化マグネシウムの結合エネルギーである1305eVと異なる値であり、酸化マグネシウムの結合エネルギーに近い値である。つまり、正極活物質100がマグネシウムを有する場合、フッ化マグネシウム以外の結合であることが好ましい。
[0109]
<EDX>
 粒子内部、粒子表層部および結晶粒界近傍における各種元素の濃度は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)を用いて評価できる。EDX測定のうち、領域内を走査しながら測定し、領域内を2次元に評価することをEDX面分析と呼ぶ場合がある。また、EDXの面分析から、線状の領域のデータを抽出し、原子濃度について正極活物質粒子内の分布を評価することを線分析と呼ぶ場合がある。
[0110]
 EDX面分析(例えば元素マッピング)により、粒子内部、粒子表層部および結晶粒界近傍における、マグネシウムおよびフッ素の濃度を定量的に分析することができる。また、EDX線分析により、マグネシウムおよびフッ素の濃度のピークを分析することができる。
[0111]
 正極活物質100についてEDX線分析をしたとき、粒子表層部のマグネシウム濃度のピークは、正極活物質100の表面から中心に向かった深さ3nmまでに存在することが好ましく、深さ1nmまでに存在することがより好ましく、深さ0.5nmまでに存在することがさらに好ましい。
[0112]
 正極活物質100が有するフッ素の分布は、マグネシウムの分布と重畳することが好ましい。そのためEDX線分析をしたとき、粒子表層部のフッ素濃度のピークは、正極活物質100の表面から中心に向かった深さ3nmまでに存在することが好ましく、深さ1nmまでに存在することがより好ましく、深さ0.5nmまでに存在することがさらに好ましい。
[0113]
 正極活物質100について線分析または面分析をしたとき、結晶粒界近傍におけるマグネシウムとコバルトの原子数の比(Mg/Co)は、0.020以上0.50以下が好ましい。さらには0.025以上0.30以下が好ましい。さらには0.030以上0.20以下が好ましい。
[0114]
<dQ/dVvsV曲線>
 本発明の一態様の正極活物質は、高電圧で充電した後、例えば0.2C以下の低いレートで放電すると、放電終了間近に特徴的な電圧の変化が表れることがある。この変化は、放電曲線から求めたdQ/dVvsV曲線において、3.5Vから3.9Vの範囲に、少なくとも1つのピークが存在することで明瞭に確かめることができる。
[0115]
(実施の形態2)
[0116]
 本実施の形態では、本発明の一態様の正極活物質の作製方法の一例を示す。
[0117]
[正極活物質の作製方法1]
 図8及び図9を用いて、本発明の一態様である正極活物質100の作製方法の一例について説明する。
[0118]
<ステップS11>
 ステップS11として、第1の混合物の材料であるハロゲン源およびマグネシウム源を用意する(図8および図9のステップS11)。また、リチウム源も用意することが好ましい。また、次の混合および粉砕工程を湿式で行う場合は、溶媒を用意する。
[0119]
 マグネシウム源として、例えばフッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を用いることができる。リチウム源として、例えばフッ化リチウム、炭酸リチウムを用いることができる。
[0120]
 ハロゲン源として、フッ素や塩素等を有する材料を用いることができる。ハロゲン及びマグネシウムを有する材料を、ハロゲン源及びマグネシウム源として用いてもよい。また、ハロゲン及びリチウムを有する材料を、ハロゲン源及びリチウム源として用いてもよい。フッ素を有するハロゲン源、及びリチウム源として、例えば、フッ化リチウム等を用いることができる。フッ素を有するハロゲン源、及びマグネシウム源として、例えば、フッ化マグネシウム等を用いることができる。なかでも、フッ化リチウムは融点が848℃と比較的低く、後述するアニール工程で溶融しやすいためハロゲン源及びリチウム源として好適に用いることができる。塩素を有するハロゲン源、及びリチウム源として、例えば、塩化リチウム等を用いることができる。塩素を有するハロゲン源、及びマグネシウム源として、例えば、塩化マグネシウム等を用いることができる。
[0121]
 溶媒として、アセトン等のケトン、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール、エーテル、ジオキサン、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を用いることができる。リチウムと反応が起こりにくい、非プロトン性溶媒を用いることがより好ましく、例えば、アセトンを好適に用いることができる。
[0122]
 ハロゲン源およびリチウム源としてフッ化リチウム(LiF)、ハロゲン源およびマグネシウム源としてフッ化マグネシウム(MgF )を用いる例を挙げて、具体的に説明する。フッ化リチウムとフッ化マグネシウムは、LiF:MgF =65:35(モル比)程度で混合すると融点を下げる効果が最も高くなる(非特許文献4)。一方、フッ化リチウムが多くなるとリチウムが過剰となり、サイクル特性が悪化する懸念がある。そのため、フッ化リチウムLiFとフッ化マグネシウムMgF のモル比は、LiF:MgF =x:1(0≦x≦1.9)であることが好ましく、LiF:MgF =x:1(0.1≦x≦0.5)がより好ましく、LiF:MgF =x:1(x=0.33近傍)がさらに好ましい。なお本明細書等において近傍とは、その値の0.9倍より大きく1.1倍より小さい値とする。
[0123]
<ステップS12>
 次に、ステップS12として、ステップS11で用意した材料及び溶媒を混合し、粉砕を行う(図8および図9のステップS12)。混合は乾式または湿式で行うことができるが、湿式はより小さく粉砕することができるため好ましい。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えばメディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。この混合および粉砕工程を十分に行い、材料を微粉化することが好ましい。
[0124]
<ステップS13、ステップS14>
 ステップS12で混合、粉砕した材料を回収し(図8および図9のステップS13)、第1の混合物を得る(図8および図9のステップS14)。
[0125]
 第1の混合物の粒子径は、例えば、平均粒子径(D50)が600nm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。このように微粉化された第1の混合物ならば、後の工程でリチウム及び遷移金属を有する複合酸化物と混合したときに、複合酸化物の粒子の表面に第1の混合物を均一に付着させやすい。複合酸化物の粒子の表面に第1の混合物が均一に付着していると、加熱処理によって複合酸化物の粒子表層部にもれなくハロゲンおよびマグネシウムを分布させやすいため好ましい。粒子表層部にハロゲンおよびマグネシウムが含まれない領域があると、充電状態において後述する擬スピネル型結晶構造になりにくくなるおそれがある。
[0126]
<ステップS21>
 ステップS21として、リチウム及び遷移金属を有する複合酸化物の材料となるリチウム源および遷移金属源を用意する(図8のステップS21)。
[0127]
 リチウム源としては、例えば炭酸リチウム、フッ化リチウム等を用いることができる。
[0128]
 遷移金属として、コバルトを好適に用いることができる。また、さらにアルミニウムまたはニッケルのいずれか一又は双方を有してもよい。
[0129]
 遷移金属源としては、上記遷移金属の酸化物、水酸化物等を用いることができる。コバルト源としては、例えば酸化コバルト、水酸化コバルト等を用いることができる。マンガン源としては、酸化マンガン、水酸化マンガン等を用いることができる。ニッケル源としては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル等を用いることができる。アルミニウム源としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、等を用いることができる。
[0130]
<ステップS22>
 次に、ステップS22として、ステップS21で用意したリチウム源および遷移金属源を混合する(図8のステップS22)。混合は乾式または湿式で行うことができる。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えばメディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
[0131]
<ステップS23>
 次に、ステップS23として、ステップS22で混合した材料に加熱処理を行う(図8のステップS23)。本工程は、後の加熱処理と区別するために、焼成または第1の加熱処理という場合がある。加熱処理は800℃以上1100℃未満で行うことが好ましく、900℃以上1000℃以下で行うことがより好ましく、950℃程度がさらに好ましい。加熱処理の温度が低すぎると、出発材料の分解および溶融が不十分となるおそれがある。一方、加熱処理の温度が高すぎると遷移金属が過剰に還元される、リチウムが蒸散するなどの原因で欠陥が生じるおそれがある。
[0132]
 加熱処理の時間は、2時間以上20時間以下とすることが好ましい。加熱処理の雰囲気は、乾燥空気等の水が少ない(例えば露点−50℃以下、より好ましくは−100℃以下)ことが好ましい。例えば、1000℃で10時間加熱することとし、昇温速度は200℃/hとすることができる。また、乾燥空気の流量は、加熱処理により材料から脱離するガスの分圧が十分に低くなる流量とすることが好ましい。脱離するガスの分圧が十分に低くなる流量とすることで、材料で生じる反応を促進することができる。
[0133]
 加熱処理の後、材料を室温まで冷却することができる。例えば、規定温度から室温までの降温時間を10時間以上50時間以下とすることが好ましい。ただし、ステップS23における室温までの冷却は必須ではない。その後のステップS24、ステップS25およびステップS31乃至ステップS34の工程を行うのに問題がなければ、冷却は室温より高い温度までとしてもよい。
[0134]
<ステップS24、ステップS25>
 次に、ステップS23で焼成した材料を回収し(図8のステップS24)、リチウム及び遷移金属を有する複合酸化物を得る(図8のステップS25)。具体的には、コバルト酸リチウム、もしくはアルミニウム又はニッケルを有するコバルト酸リチウムを得る。
[0135]
 なお、ステップS25としてあらかじめ合成されたリチウム及び遷移金属を有する複合酸化物を用いてもよい(図9のステップS25)。この場合、ステップS21乃至ステップS24を省略することができる。
[0136]
 あらかじめ合成されたリチウム及び遷移金属を有する複合酸化物を用いる場合、不純物の少ないものを用いることが好ましい。本明細書等では、リチウム及び遷移金属を有する複合酸化物、および正極活物質について主成分をリチウム、コバルト、ニッケル、アルミニウムおよび酸素とし、上記主成分以外の元素を不純物とする。例えばグロー放電質量分析法で分析したとき、不純物濃度があわせて10,000ppm(wt)以下であることが好ましく、5000ppm(wt)以下がより好ましい。
[0137]
 例えば、あらかじめ合成されたコバルト酸リチウムとして、日本化学工業株式会社製のコバルト酸リチウム粒子(商品名:セルシードC−10N)を用いることができる。これは平均粒子径(D50)が約12μmであり、グロー放電質量分析法(GD−MS)による不純物分析において、マグネシウム濃度およびフッ素濃度が50ppm(wt)以下、カルシウム濃度、アルミニウム濃度およびシリコン濃度が100ppm(wt)以下、ニッケル濃度が150ppm(wt)以下、硫黄濃度が500ppm(wt)以下、ヒ素濃度が1100ppm(wt)以下、その他のリチウム、コバルトおよび酸素以外の元素濃度が150ppm(wt)以下である、コバルト酸リチウムである。
[0138]
 あらかじめ合成されたコバルト酸リチウムとして、日本化学工業株式会社製のコバルト酸リチウム粒子(商品名:セルシードC−5H)を用いることもできる。これは平均粒子径(D50)が約6.5μmであり、GD−MSによる不純物分析において、リチウム、コバルトおよび酸素以外の元素濃度がC−10Nと同程度かそれ以下である、コバルト酸リチウムである。
[0139]
 ステップS25のリチウム及び遷移金属を有する複合酸化物は欠陥およびひずみの少ない層状岩塩型の結晶構造を有することが好ましい。そのため、不純物の少ない複合酸化物であることが好ましい。リチウム及び遷移金属を有する複合酸化物に不純物が多く含まれると、欠陥またはひずみの多い結晶構造となる可能性が高い。
[0140]
<ステップS31>
 次に、ステップS31として、ステップS14で得られた第1の混合物と、ステップS25で得られたリチウム及び遷移金属を有する複合酸化物と、を混合する(図8および図9のステップS31)。リチウム及び遷移金属を有する複合酸化物中の遷移金属TMと、第1の混合物Mix1が有するマグネシウムMg Mix1の原子数比は、TM:Mg Mix1=1:y(0.0005≦y≦0.03)であることが好ましく、TM:Mg Mix1=1:y(0.001≦y≦0.01)であることがより好ましく、TM:Mg Mix1=1:0.005程度がさらに好ましい。
[0141]
 ステップS31の混合は、複合酸化物の粒子を破壊しないためにステップS12の混合よりも穏やかな条件とすることが好ましい。例えば、ステップS12の混合よりも回転数が少ない、または時間が短い条件とすることが好ましい。また湿式よりも乾式のほうが穏やかな条件であると言える。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えばメディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
[0142]
<ステップS32、ステップS33>
 次に、ステップS31で混合した材料を回収し(図8および図9のステップS32)、第2の混合物を得る(図8および図9のステップS33)。
[0143]
 なお、本実施の形態ではフッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムの混合物を、不純物の少ないコバルト酸リチウムに添加する方法について説明しているが、本発明の一態様はこれに限らない。ステップS33の第2の混合物の代わりに、コバルト酸リチウムの出発材料にマグネシウム源およびフッ素源を添加して焼成したものを用いてもよい。この場合は、ステップS11乃至ステップS14の工程と、ステップS21乃至ステップS25の工程を分ける必要がないため簡便で生産性が高い。
[0144]
 または、あらかじめマグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用いてもよい。マグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用いれば、ステップS32までの工程を省略することができより簡便である。
[0145]
 さらに、あらかじめマグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムに、さらにマグネシウム源およびフッ素源を添加してもよい。
[0146]
<ステップS34>
 次に、ステップS34として、ステップS33で得られた第2の混合物に加熱処理を行う(図8および図9のステップS34)。本工程は、先の加熱処理との区別のために、アニールまたは第2の加熱処理という場合がある。
[0147]
 アニールは、適切な温度および時間で行うことが好ましい。適切な温度および時間は、ステップS25のリチウム及び遷移金属を有する複合酸化物の粒子の大きさおよび組成等の条件により異なる。粒子が小さい場合は、大きい場合よりも低い温度または短い時間がより好ましい場合がある。
[0148]
 例えば、ステップS25の粒子の平均粒子径(D50)が12μm程度の場合、アニール温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。アニール時間は例えば3時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましく、60時間以上がさらに好ましい。
[0149]
 一方、ステップS25の粒子の平均粒子径(D50)が5μm程度の場合、アニール温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。アニール時間は例えば1時間以上10時間以下が好ましく、2時間程度がより好ましい。
[0150]
 アニール後の降温時間は、例えば10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
[0151]
 第2の混合物をアニールすると、まず第1の混合物のうち融点の低い材料(例えばフッ化リチウム、融点848℃)が溶融し、複合酸化物の粒子表層部に分布すると考えられる。次に、この溶融した材料の存在により他の材料の融点降下が起こり、他の材料が溶融すると推測される。例えば、フッ化マグネシウム(融点1263℃)が溶融し、複合酸化物の粒子表層部に分布すると考えられる。
[0152]
 そして、粒子表層部に分布した第1の混合物が有する元素は、リチウム及び遷移金属を有する複合酸化物中に固溶すると考えられる。
[0153]
 この第1の混合物が有する元素の拡散は、複合酸化物の粒子内部よりも、粒子表層部および結晶粒界近傍の方が速い。そのためマグネシウムおよびハロゲンは、粒子表層部および結晶粒界近傍において、粒子内部よりも高濃度となる。後述するが粒子表層部および結晶粒界近傍のマグネシウム濃度が高いと、結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。
[0154]
<ステップS35>
 次に、ステップS35として、ステップS34でアニールした材料を回収し、本発明の一態様である正極活物質100を得る。
[0155]
 図8および図9に示す方法で作製することにより、高電圧で充電したときに欠陥の少ない擬スピネル型結晶構造をとる正極活物質100を作製できる。また、本発明の一態様である正極活物質100を二次電池に用いることにより、サイクル特性およびレート特性に優れた二次電池とすることができる。例えば、正極活物質に占める擬スピネル型結晶構造の割合が50%以上とすることにより、サイクル特性およびレート特性に優れた二次電池とすることができる。正極活物質に占める擬スピネル型結晶構造の割合は、例えば、XRD測定においてリートベルト解析を行うことで確認できる。
[0156]
 高電圧充電後に擬スピネル型結晶構造を有する正極活物質を作製するには、正極活物質がマグネシウムおよびフッ素を有すること、および適切な温度および時間でアニールして作製することが有効である。マグネシウム源およびフッ素源は、複合酸化物の出発材料に添加してもよい。しかし、複合酸化物の出発材料に添加する場合、マグネシウム源およびフッ素源の融点が焼成温度より高いと、マグネシウム源およびフッ素源が溶融せず、拡散が不十分になるおそれがある。すると、層状岩塩型の結晶構造に多くの欠陥またはひずみが生じる可能性が高い。そのため、高電圧充電後の擬スピネル型結晶構造にも、欠陥またはひずみが生じるおそれがある。
[0157]
 そこで、まずは不純物が少なく、欠陥またはひずみの少ない層状岩塩型の結晶構造を有する複合酸化物を得ることが好ましい。そしてその後の工程で複合酸化物とマグネシウム源およびフッ素源を混合し、アニールして、複合酸化物の粒子表層部にマグネシウムとフッ素を固溶させることが好ましい。このようにして作製することで、高電圧充電後に、欠陥またはひずみの少ない擬スピネル構造をとる正極活物質を作製することができる。
[0158]
 上記工程で作製した正極活物質100について、さらに他の材料を用いて被覆してもよい。また、さらに加熱処理を行ってもよい。
[0159]
 例えば、正極活物質100と、リン酸を有する化合物と、を混合することができる。また、混合した後に加熱処理を行うことができる。リン酸を有する化合物を混合することで、高電圧で充電した状態を長時間保持した場合でもコバルト等の遷移金属の溶出が抑制された正極活物質100にすることができる。また混合した後に加熱処理を行うことで、リン酸をより均一に被覆することができる。
[0160]
 リン酸を有する化合物としては例えばリン酸リチウム、リン酸二水素アンモニウム等を用いることができる。混合は、例えば固相法で行うことができる。加熱は、例えば800℃以上で2時間行うことができる。
[0161]
[正極活物質の作製方法2]
 前述の[正極活物質の作製方法1]と異なる正極活物質100の作製方法について、図10を用いて説明する。
[0162]
<ステップS41>
 ステップS41として、混合物の材料であるリチウム源、遷移金属源、ハロゲン源およびマグネシウム源を用意する(図10のステップS41)。また、次の混合および粉砕工程を湿式で行う場合は、溶媒を用意する。
[0163]
 リチウム源、遷移金属源、ハロゲン源、マグネシウム源及び溶媒に関しては、前述の[正極活物質の作製方法1]の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
[0164]
<ステップS42>
 次に、ステップS42として、ステップS41で用意した材料及び溶媒を混合し、粉砕を行う(図10のステップS42)。混合し、粉砕に関しては、前述の[正極活物質の作製方法1]の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
[0165]
<ステップS43、ステップS44>
 ステップS42で混合、粉砕した材料を回収し(図10のステップS43)、混合物を得る(図10のステップS44)。
[0166]
<ステップS45>
 次に、ステップS45として、ステップS44で得た混合物に第1の加熱処理を行う(図10のステップS45)。第1の加熱処理は800℃以上1100℃未満で行うことが好ましく、900℃以上1000℃以下で行うことがより好ましく、950℃程度がさらに好ましい。第1の加熱処理の温度が低すぎると、出発材料の分解および溶融が不十分となるおそれがある。一方、第1の加熱処理の温度が高すぎると遷移金属が過剰に還元される、リチウムが蒸散するなどの原因で欠陥が生じるおそれがある。
[0167]
 第1の加熱処理の時間は、2時間以上20時間以下とすることが好ましい。第1の加熱処理の雰囲気は、乾燥空気等の水が少ない(例えば露点−50℃以下、より好ましくは−100℃以下)ことが好ましい。例えば、1000℃で10時間加熱することとし、昇温速度は200℃/h、乾燥空気の流量は10L/minとすることが好ましい。
[0168]
 第1の加熱処理の後、材料を室温まで冷却することができる。例えば、規定温度から室温までの降温時間を10時間以上50時間以下とすることが好ましい。ただし、ステップS45における室温までの冷却は必須ではない。その後のステップS46及びステップS47の工程を行うのに問題がなければ、冷却は室温より高い温度までとしてもよい。
[0169]
<ステップS46>
 次に、ステップS46で焼成した混合物を回収する(図10のステップS46)。
[0170]
<ステップS47>
 次に、ステップS47として、ステップS46で得られた第2の混合物に加熱処理を行う(図10のステップS47)。
[0171]
 第2の加熱処理は、適切な温度および時間で行うことが好ましい。適切な温度および時間は、混合物の粒子の大きさおよび組成等の条件により異なる。粒子が小さい場合は、大きい場合よりも低い温度または短い時間がより好ましい場合がある。
[0172]
 例えば、混合物の粒子の平均粒子径(D50)が12μm程度の場合、第2の加熱処理の温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。第2の加熱処理の時間は例えば3時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましく、60時間以上がさらに好ましい。
[0173]
 一方、混合物の粒子の平均粒子径(D50)が5μm程度の場合、第2の加熱処理の温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。第2の加熱処理の時間は例えば1時間以上10時間以下が好ましく、2時間程度がより好ましい。
[0174]
 第2の加熱処理の後の降温時間は、例えば10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
[0175]
<ステップS48>
 次に、ステップS48として、ステップS34でアニールした材料を回収し、本発明の一態様である正極活物質100を得る。
[0176]
 以上が、本発明の一態様である正極活物質100の作製方法である。
[0177]
(実施の形態3)
 本実施の形態では、先の実施の形態で説明した正極活物質100を有する二次電池に用いることのできる材料の例について説明する。本実施の形態では、正極、負極および電解液が、外装体に包まれている二次電池を例にとって説明する。
[0178]
[正極]
 正極は、正極活物質層および正極集電体を有する。
[0179]
<正極活物質層>
 正極活物質層は、少なくとも正極活物質を有する。また、正極活物質層は、正極活物質に加えて、活物質表面の被膜、導電助剤またはバインダなどの他の物質を含んでもよい。
[0180]
 正極活物質として、先の実施の形態で説明した正極活物質100を用いることができる。先の実施の形態で説明した正極活物質100を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた二次電池とすることができる。
[0181]
 導電助剤としては、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
[0182]
 導電助剤により、活物質層中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、正極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
[0183]
 導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
[0184]
 導電助剤としてグラフェン化合物を用いてもよい。
[0185]
 グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能とする。また、薄くても導電性が非常に高い場合があり、少ない量で効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。そのため、グラフェン化合物を導電助剤として用いることにより、活物質と導電助剤との接触面積を増大させることができるため好ましい。スプレードライ装置を用いることで、活物質の表面全体を覆って導電助剤であるグラフェン化合物を被膜として形成することが好ましい。また、電気的な抵抗を減少できる場合があるため好ましい。ここでグラフェン化合物として例えば、グラフェン、マルチグラフェン、又はRGOを用いることが特に好ましい。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェン(graphene oxide:GO)を還元して得られる化合物を指す。
[0186]
 粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面積が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。そのため導電助剤の量が多くなりがちであり、相対的に活物質の担持量が減少してしまう傾向がある。活物質の担持量が減少すると、二次電池の容量が減少してしまう。このような場合には、導電助剤としてグラフェン化合物を用いると、グラフェン化合物は少量でも効率よく導電パスを形成することができるため、活物質の担持量を減らさずに済み、特に好ましい。
[0187]
 以下では一例として、活物質層200に、導電助剤としてグラフェン化合物を用いる場合の断面構成例を説明する。
[0188]
 図11Aに、活物質層200の縦断面図を示す。活物質層200は、粒状の正極活物質100と、導電助剤としてのグラフェン化合物201と、バインダ(図示せず)と、を含む。ここで、グラフェン化合物201として例えばグラフェンまたはマルチグラフェンを用いればよい。ここで、グラフェン化合物201はシート状の形状を有することが好ましい。また、グラフェン化合物201は、複数のマルチグラフェン、または(および)複数のグラフェンが部分的に重なりシート状となっていてもよい。
[0189]
 活物質層200の縦断面においては、図11Bに示すように、活物質層200の粒子内部において概略均一にシート状のグラフェン化合物201が分散する。図11Bにおいてはグラフェン化合物201を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン化合物201は、複数の粒状の正極活物質100を一部覆うように、あるいは複数の粒状の正極活物質100の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。
[0190]
 ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合物シート(以下グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バインダの量を少なくすることができる、又は使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、二次電池の容量を増加させることができる。
[0191]
 ここで、グラフェン化合物201として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物質層200となる層を形成後、還元することが好ましい。グラフェン化合物201の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン化合物201を活物質層200の粒子内部において概略均一に分散させることができる。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元するため、活物質層200に残留するグラフェン化合物201は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
[0192]
 従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン化合物201は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電助剤よりも少量で粒状の正極活物質100とグラフェン化合物201との電気伝導性を向上させることができる。よって、正極活物質100の活物質層200における比率を増加させることができる。これにより、二次電池の放電容量を増加させることができる。
[0193]
 予め、スプレードライ装置を用いることで、活物質の表面全体を覆って導電助剤であるグラフェン化合物を被膜として形成し、さらに活物質同士間をグラフェン化合物で導電パスを形成することもできる。
[0194]
 バインダとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
[0195]
 バインダとして、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子として、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
[0196]
 バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
[0197]
 バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
[0198]
 例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料として、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を用いることができる。
[0199]
 なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書においては、電極のバインダとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
[0200]
 フッ素系樹脂は機械的強度に優れる、耐薬品性が高い、耐熱性が高い、等の利点がある。フッ素系樹脂の一であるPVDFは、フッ素系樹脂の中でも極めて優れた特性を有し、機械的強度を有し、加工性に優れ、耐熱性も高い。
[0201]
 一方、PVDFは、活物質層を塗工する際に作製されるスラリーがアルカリ性になると、ゲル化する場合がある。あるいは不溶化する場合がある。バインダのゲル化や不溶化により、集電体と活物質層との密着性が低下してしまう場合がある。本発明の一態様の正極活物質を用いることにより、スラリーのpHを低下させ、ゲル化や不溶化を抑制できる場合があり好ましい。
[0202]
 正極活物質層の厚さは例えば、10μm以上200μm以下である。あるいは、50μm以上150μm以下である。正極活物質層の担持量は例えば、正極活物質がコバルトを有する層状岩塩型結晶構造を有する材料を有する場合に、1mg/cm 以上50mg/cm 以下である。あるいは、5mg/cm 以上30mg/cm 以下である。正極活物質層の密度は例えば、正極活物質がコバルトを有する層状岩塩型結晶構造を有する材料を有する場合に、2.2g/cm 以上4.9g/cm 以下である。あるいは、3.8g/cm 以上4.5g/cm 以下である。
[0203]
<正極集電体>
 正極集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また正極集電体に用いる材料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
[0204]
[負極]
 負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
[0205]
<負極活物質>
 負極活物質としては、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
[0206]
 負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg Si、Mg Ge、SnO、SnO 、Mg Sn、SnS 、V Sn 、FeSn 、CoSn 、Ni Sn 、Cu Sn 、Ag Sn、Ag Sb、Ni MnSb、CeSb 、LaSn 、La Co Sn 、CoSb 、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
[0207]
 本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiO と表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下がより好ましい。
[0208]
 炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
[0209]
 黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
[0210]
 黒鉛は、リチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/Li )。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
[0211]
 負極活物質として、二酸化チタン(TiO )、リチウムチタン酸化物(Li Ti 12)、リチウム−黒鉛層間化合物(Li )、五酸化ニオブ(Nb )、酸化タングステン(WO )、酸化モリブデン(MoO )等の酸化物を用いることができる。
[0212]
 負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li N型構造をもつLi 3−xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li 2.6Co 0.4は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm )を示し好ましい。
[0213]
 リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV 、Cr 等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
[0214]
 コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe 、CuO、Cu O、RuO 、Cr 等の酸化物、CoS 0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn 、Cu N、Ge 等の窒化物、NiP 、FeP 、CoP 等のリン化物、FeF 、BiF 等のフッ化物でも起こる。
[0215]
 負極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダとして、正極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダと同様の材料を用いることができる。
[0216]
<負極集電体>
 負極集電体には、正極集電体と同様の材料を用いることができる。なお負極集電体は、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
[0217]
[電解液]
 電解液は、溶媒と電解質を有する。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
[0218]
 電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、二次電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、二次電池の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
[0219]
 上記の溶媒に溶解させる電解質としては、例えばLiPF 、LiClO 、LiAsF 、LiBF 、LiAlCl 、LiSCN、LiBr、LiI、Li SO 、Li 10Cl 10、Li 12Cl 12、LiCF SO 、LiC SO 、LiC(CF SO 、LiC(C SO 、LiN(CF SO 、LiN(C SO )(CF SO )、LiN(C SO 等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
[0220]
 二次電池に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
[0221]
 電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert−ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またスクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加する材料の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよい。
[0222]
 ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。
[0223]
 ポリマーゲル電解質を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化および軽量化が可能である。
[0224]
 ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等を用いることができる。
[0225]
 ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF−HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
[0226]
 電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
[0227]
[セパレータ]
 二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータはエンベロープ状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
[0228]
 セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
[0229]
 セラミック系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
[0230]
 例えばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
[0231]
 多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
[0232]
[外装体]
 二次電池が有する外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。また、フィルム状の外装体を用いることもできる。フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
[0233]
[充放電方法]
 二次電池の充放電は、例えば下記のように行うことができる。
[0234]
<CC充電>
 まず、充電方法の1つとして定電流(CC:Constant current)充電について説明する。CC充電は、充電期間のすべてで一定の電流を二次電池に流し、所定の電圧になったときに充電を停止する充電方法である。二次電池を、図12Aに示すように内部抵抗Rと二次電池容量Cの等価回路と仮定する。この場合、二次電池電圧V は、内部抵抗Rにかかる電圧V と二次電池容量Cにかかる電圧V の和である。
[0235]
 CC充電を行っている間は、図12Aに示すように、スイッチがオンになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、V =R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧V も一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V は、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧V は、時間の経過とともに上昇する。
[0236]
 そして二次電池電圧V が所定の電圧、例えば4.3Vになったときに、充電を停止する。CC充電を停止すると、図12Bに示すように、スイッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧V が0Vとなる。そのため、二次電池電圧V が下降する。
[0237]
 CC充電を行っている間と、CC充電を停止してからの、二次電池電圧V と充電電流の例を図12Cに示す。CC充電を行っている間は上昇していた二次電池電圧V が、CC充電を停止してから若干低下する様子が示されている。
[0238]
<CCCV充電>
 次に、上記と異なる充電方法である定電流定電圧(CCCV:Constant Current Constant Voltage)充電について説明する。CCCV充電は、まずCC充電にて所定の電圧まで充電を行い、その後CV(定電圧)充電にて流れる電流が少なくなるまで、具体的には終止電流値になるまで充電を行う充電方法である。
[0239]
 CC充電を行っている間は、図13Aに示すように、定電流電源のスイッチがオン、定電圧電源のスイッチがオフになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、V =R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧V も一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V は、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧V は、時間の経過とともに上昇する。
[0240]
 そして二次電池電圧V が所定の電圧、例えば4.3Vになったときに、CC充電からCV充電に切り替える。CV充電を行っている間は、図13Bに示すように、定電圧電源のスイッチがオン、定電流電源のスイッチがオフになり、二次電池電圧V が一定となる。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V は、時間の経過とともに上昇する。V =V +V であるため、内部抵抗Rにかかる電圧V は、時間の経過とともに小さくなる。内部抵抗Rにかかる電圧V が小さくなるに従い、V =R×Iのオームの法則により、二次電池に流れる電流Iも小さくなる。
[0241]
 そして二次電池に流れる電流Iが所定の電流、例えば0.01C相当の電流となったとき、充電を停止する。CCCV充電を停止すると、図13Cに示すように、全てのスイッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧V が0Vとなる。しかし、CV充電により内部抵抗Rにかかる電圧V が十分に小さくなっているため、内部抵抗Rでの電圧降下がなくなっても、二次電池電圧V はほとんど降下しない。
[0242]
 CCCV充電を行っている間と、CCCV充電を停止してからの、二次電池電圧V と充電電流の例を図13Dに示す。CCCV充電を停止しても、二次電池電圧V がほとんど降下しない様子が示されている。
[0243]
<CC放電>
 次に、放電方法の1つであるCC放電について説明する。CC放電は、放電期間のすべてで一定の電流を二次電池から流し、二次電池電圧V が所定の電圧、例えば2.5Vになったときに放電を停止する放電方法である。
[0244]
 CC放電を行っている間の二次電池電圧V と放電電流の例を図14に示す。放電が進むに従い、二次電池電圧V が降下していく様子が示されている。
[0245]
 次に、放電レート及び充電レートについて説明する。放電レートとは、電池容量に対する放電時の電流の相対的な比率であり、単位Cで表される。定格容量X[Ah]の電池において、1C相当の電流はX[A]である。2X[A]の電流で放電させた場合は2Cで放電させたといい、0.2X[A]の電流で放電させた場合は0.2Cで放電させたという。また、充電レートも同様であり、2X[A]の電流で充電させた場合は2Cで充電させたといい、0.2X[A]の電流で充電させた場合は0.2Cで充電させたという。
[0246]
(実施の形態4)
 本実施の形態では、先の実施の形態で説明した正極活物質100を有する二次電池の形状の例について説明する。本実施の形態で説明する二次電池に用いる材料は、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
[0247]
[コイン型二次電池]
 まずコイン型の二次電池の一例について説明する。図15Aはコイン型(単層偏平型)の二次電池の外観図であり、図15Bは、その断面図である。
[0248]
 コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。
[0249]
 なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
[0250]
 正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
[0251]
 これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図15Bに示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
[0252]
 正極304に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。
[0253]
 ここで図15Cを用いて二次電池の充電時の電流の流れを説明する。リチウムを用いた二次電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる。なお、リチウムを用いた二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「−極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
[0254]
 図15Cに示す2つの端子には充電器が接続され、二次電池300が充電される。二次電池300の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。
[0255]
[円筒型二次電池]
 次に円筒型の二次電池の例について図16を参照して説明する。円筒型の二次電池600の外観図を図16Aに示す。図16Bは、円筒型の二次電池600の断面を模式的に示した図である。図16Bに示すように、円筒型の二次電池600は、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
[0256]
 中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を電池缶602に被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
[0257]
 円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO )系半導体セラミックス等を用いることができる。
[0258]
 図16Cのように複数の二次電池600を、導電板613および導電板614の間に挟んでモジュール615を構成してもよい。複数の二次電池600は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池600を有するモジュール615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
[0259]
 図16Dはモジュール615の上面図である。図を明瞭にするために導電板613を点線で示した。図16Dに示すようにモジュール615は、複数の二次電池600を電気的に接続する導線616を有していてもよい。導線616上に導電板を重畳して設けることができる。また複数の二次電池600の間に温度制御装置617を有していてもよい。二次電池600が過熱されたときは、温度制御装置617により冷却し、二次電池600が冷えすぎているときは温度制御装置617により加熱することができる。そのためモジュール615の性能が外気温に影響されにくくなる。温度制御装置617が有する熱媒体は絶縁性と不燃性を有することが好ましい。
[0260]
 正極604に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた円筒型の二次電池600とすることができる。
[0261]
[二次電池の構造例]
 二次電池の別の構造例について、図17乃至図21を用いて説明する。
[0262]
 図17A及び図17Bは、電池パックの外観図を示す図である。二次電池913は、回路基板900を介して、アンテナ914に接続されている。また、二次電池913には、ラベル910が貼られている。回路基板900は、シール915によってラベル910に固定されている。さらに、図17Bに示すように、二次電池913は、端子951と、端子952と、に接続されている。
[0263]
 回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、及び回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
[0264]
 回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
[0265]
 電池パックは、アンテナ914と、二次電池913との間に層916を有する。層916は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916として、例えば磁性体を用いることができる。
[0266]
 なお、電池パックの構造は、図17に限定されない。
[0267]
 例えば、図18A1及び図18A2に示すように、図17A及び図17Bに示す二次電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図18A1は、上記一対の面の一方を示した外観図であり、図18A2は、上記一対の面の他方を示した外観図である。なお、図17A及び図17Bに示す二次電池と同じ部分については、図17A及び図17Bに示す二次電池の説明を適宜援用できる。
[0268]
 図18A1に示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図18A2に示すように、二次電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。層917は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917として、例えば磁性体を用いることができる。
[0269]
 上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ918の両方のサイズを大きくすることができる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した二次電池と他の機器との通信方式としては、NFC(近距離無線通信)など、二次電池と他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
[0270]
 又は、図18B1に示すように、図17A及び図17Bに示す二次電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図17A及び図17Bに示す二次電池と同じ部分については、図17A及び図17Bに示す二次電池の説明を適宜援用できる。
[0271]
 表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
[0272]
 又は、図18B2に示すように、図17A及び図17Bに示す二次電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図17A及び図17Bに示す二次電池と同じ部分については、図17A及び図17Bに示す二次電池の説明を適宜援用できる。
[0273]
 センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよい。センサ921を設けることにより、例えば、二次電池が置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
[0274]
 さらに、二次電池913の構造例について図19及び図20を用いて説明する。
[0275]
 図19Aに示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図19Aでは、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
[0276]
 なお、図19Bに示すように、図19Aに示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図19Bに示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
[0277]
 筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナ914などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとして、例えば金属材料を用いることができる。
[0278]
 さらに、捲回体950の構造について図20に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
[0279]
 負極931は、端子951及び端子952の一方を介して図17に示す端子911に接続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して図17に示す端子911に接続される。
[0280]
 正極932に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた二次電池913とすることができる。
[0281]
[ラミネート型二次電池]
 次に、ラミネート型の二次電池の例について、図21乃至図27を参照して説明する。ラミネート型の二次電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて二次電池も曲げることもできる。
[0282]
 図21を用いて、ラミネート型の二次電池980について説明する。ラミネート型の二次電池980は、図21Aに示す捲回体993を有する。捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。捲回体993は、図20で説明した捲回体950と同様に、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。
[0283]
 なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
[0284]
 図21Bに示すように、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納することで、図21Cに示すように二次電池980を作製することができる。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
[0285]
 フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
[0286]
 図21Bおよび図21Cでは2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
[0287]
 正極995に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた二次電池980とすることができる。
[0288]
 図21では外装体となるフィルムにより形成された空間に捲回体を有する二次電池980の例について説明したが、例えば図22のように、外装体となるフィルムにより形成された空間に、短冊状の複数の正極、セパレータおよび負極を有する二次電池としてもよい。
[0289]
 図22Aに示すラミネート型の二次電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。電解液508には、実施の形態2で示した電解液を用いることができる。
[0290]
 図22Aに示すラミネート型の二次電池500において、正極集電体501および負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体501および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置してもよい。また、正極集電体501および負極集電体504を、外装体509から外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体501、或いは負極集電体504と超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
[0291]
 ラミネート型の二次電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
[0292]
 ラミネート型の二次電池500の断面構造の一例を図22Bに示す。図22Aでは簡略のため、2つの集電体で構成する例を示しているが、実際は、図22Bに示すように、複数の電極層で構成する。
[0293]
 図22Bでは、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16としても二次電池500は、可撓性を有する。図22Bでは負極集電体504が8層と、正極集電体501が8層の合計16層の構造を示している。なお、図22Bは負極の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体504を超音波接合させている。勿論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する二次電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた二次電池とすることができる。
[0294]
 ここで、ラミネート型の二次電池500の外観図の一例を図23及び図24に示す。図23及び図24は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510及び負極リード電極511を有する。
[0295]
 図25Aは正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、図25Aに示す例に限られない。
[0296]
[ラミネート型二次電池の作製方法]
 ここで、図23に外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、図25B及び図25Cを用いて説明する。
[0297]
 まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図25Bに積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
[0298]
 次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
[0299]
 次に、図25Cに示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液508を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
[0300]
 次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液508(図示しない。)を外装体509の内側へ導入する。電解液508の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池500を作製することができる。
[0301]
 正極503に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。
[0302]
[曲げることのできる二次電池]
 次に、曲げることのできる二次電池の例について図26および図27を参照して説明する。
[0303]
 図26Aに、曲げることのできる二次電池250の上面概略図を示す。図26B1、図26B2及び図26Cにはそれぞれ、図26A中の切断線C1−C2、切断線C3−C4、切断線A1−A2における断面概略図である。二次電池250は、外装体251と、外装体251の内部に収容された電極積層体210と、を有する。電極積層体210は、少なくとも正極211aおよび負極211bが積層された構造を有する。正極211aと電気的に接続されたリード212a、および負極211bと電気的に接続されたリード212bは、外装体251の外側に延在している。また外装体251で囲まれた領域には、正極211aおよび負極211bに加えて電解液(図示しない)が封入されている。
[0304]
 二次電池250が有する正極211aおよび負極211bについて、図27を用いて説明する。図27Aは、正極211a、負極211bおよびセパレータ214の積層順を説明する斜視図である。図27Bは正極211aおよび負極211bに加えて、リード212aおよびリード212bを示す斜視図である。
[0305]
 図27Aに示すように、二次電池250は、複数の短冊状の正極211a、複数の短冊状の負極211bおよび複数のセパレータ214を有する。正極211aおよび負極211bはそれぞれ突出したタブ部分と、タブ以外の部分を有する。正極211aの一方の面のタブ以外の部分に正極活物質層が形成され、負極211bの一方の面のタブ以外の部分に負極活物質層が形成される。
[0306]
 正極211aの正極活物質層の形成されていない面同士、および負極211bの負極活物質の形成されていない面同士が接するように、正極211aおよび負極211bは積層される。
[0307]
 正極211aの正極活物質が形成された面と、負極211bの負極活物質が形成された面の間にはセパレータ214が設けられる。図27では見やすくするためセパレータ214を点線で示す。
[0308]
 図27Bに示すように、複数の正極211aとリード212aは、接合部215aにおいて電気的に接続される。また複数の負極211bとリード212bは、接合部215bにおいて電気的に接続される。
[0309]
 次に、外装体251について図26B1、図26B2、図26C及び図26Dを用いて説明する。
[0310]
 外装体251は、フィルム状の形状を有し、正極211aおよび負極211bを挟むように2つに折り曲げられている。外装体251は、折り曲げ部261と、一対のシール部262と、シール部263と、を有する。一対のシール部262は、正極211aおよび負極211bを挟んで設けられ、サイドシールとも呼ぶことができる。また、シール部263は、リード212a及びリード212bと重なる部分を有し、トップシールとも呼ぶことができる。
[0311]
 外装体251は、正極211aおよび負極211bと重なる部分に、稜線271と谷線272が交互に並んだ波形状を有することが好ましい。また、外装体251のシール部262及びシール部263は、平坦であることが好ましい。
[0312]
 図26B1は、稜線271と重なる部分で切断した断面であり、図26B2は、谷線272と重なる部分で切断した断面である。図26B1及び図26B2は共に、二次電池250及び正極211aおよび負極211bの幅方向の断面に対応する。
[0313]
 ここで、正極211aおよび負極211bの幅方向の端部、すなわち正極211aおよび負極211bの端部と、シール部262との間の距離を距離Laとする。二次電池250に曲げるなどの変形を加えたとき、後述するように正極211aおよび負極211bが長さ方向に互いにずれるように変形する。その際、距離Laが短すぎると、外装体251と正極211aおよび負極211bとが強く擦れ、外装体251が破損してしまう場合がある。特に外装体251の金属フィルムが露出すると、当該金属フィルムが電解液により腐食されてしまう恐れがある。したがって、距離Laを出来るだけ長く設定することが好ましい。一方で、距離Laを大きくしすぎると、二次電池250の体積が増大してしまう。
[0314]
 積層された正極211aおよび負極211bの合計の厚さが厚いほど、正極211aおよび負極211bと、シール部262との間の距離Laを大きくすることが好ましい。
[0315]
 より具体的には、積層された正極211aおよび負極211bおよび図示しないがセパレータ214の合計の厚さをtとしたとき、距離Laは、厚さtの0.8倍以上3.0倍以下、好ましくは0.9倍以上2.5倍以下、より好ましくは1.0倍以上2.0倍以下であることが好ましい。距離Laをこの範囲とすることで、コンパクトで、且つ曲げに対する信頼性の高い電池を実現できる。
[0316]
 一対のシール部262の間の距離を距離Lbとしたとき、距離Lbを正極211aおよび負極211bの幅(ここでは、負極211bの幅Wb)よりも十分大きくすることが好ましい。これにより、二次電池250に繰り返し曲げるなどの変形を加えたときに、正極211aおよび負極211bと外装体251とが接触しても、正極211aおよび負極211bの一部が幅方向にずれることができるため、正極211aおよび負極211bと外装体251とが擦れてしまうことを効果的に防ぐことができる。
[0317]
 例えば、一対のシール部262の間の距離Lbと、負極211bの幅Wbとの差が、正極211aおよび負極211bの厚さtの1.6倍以上6.0倍以下、好ましくは1.8倍以上5.0倍以下、より好ましくは、2.0倍以上4.0倍以下を満たすことが好ましい。
[0318]
 言い換えると、距離Lb、幅Wb、及び厚さtが、下記数式1の関係を満たすことが好ましい。
[0319]
[数1]


[0320]
 ここで、aは、0.8以上3.0以下、好ましくは0.9以上2.5以下、より好ましくは1.0以上2.0以下を満たす。
[0321]
 図26Cはリード212aを含む断面であり、二次電池250、正極211aおよび負極211bの長さ方向の断面に対応する。図26Cに示すように、折り曲げ部261において、正極211aおよび負極211bの長さ方向の端部と、外装体251との間に空間273を有することが好ましい。
[0322]
 図26Dに、二次電池250を曲げたときの断面概略図を示している。図26Dは、図26A中の切断線B1−B2における断面に相当する。
[0323]
 二次電池250を曲げると、曲げの外側に位置する外装体251の一部は伸び、内側に位置する他の一部は縮むように変形する。より具体的には、外装体251の外側に位置する部分は、波の振幅が小さく、且つ波の周期が大きくなるように変形する。一方、外装体251の内側に位置する部分は、波の振幅が大きく、且つ波の周期が小さくなるように変形する。このように、外装体251が変形することにより、曲げに伴って外装体251にかかる応力が緩和されるため、外装体251を構成する材料自体が伸縮する必要がない。その結果、外装体251は破損することなく、小さな力で二次電池250を曲げることができる。
[0324]
 図26Dに示すように、二次電池250を曲げると、正極211aおよび負極211bとがそれぞれ相対的にずれる。このとき、複数の積層された正極211aおよび負極211bは、シール部263側の一端が固定部材217で固定されているため、折り曲げ部261に近いほどずれ量が大きくなるように、それぞれずれる。これにより、正極211aおよび負極211bにかかる応力が緩和され、正極211aおよび負極211b自体が伸縮する必要がない。その結果、正極211aおよび負極211bが破損することなく二次電池250を曲げることができる。
[0325]
 正極211aおよび負極211bと外装体251との間に空間273を有していることにより、曲げた時内側に位置する正極211aおよび負極211bが、外装体251に接触することなく、相対的にずれることができる。
[0326]
 図26および図27で例示した二次電池250は、繰り返し曲げ伸ばしを行っても、外装体の破損、正極211aおよび負極211bの破損などが生じにくく、電池特性も劣化しにくい電池である。二次電池250が有する正極211aに、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、さらにサイクル特性に優れた電池とすることができる。
[0327]
(実施の形態5)
 本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。
[0328]
 まず実施の形態4の一部で説明した、曲げることのできる二次電池を電子機器に実装する例を図28A乃至図28Gに示す。曲げることのできる二次電池を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
[0329]
 フレキシブルな形状を備える二次電池を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
[0330]
 図28Aは、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、二次電池7407を有している。上記の二次電池7407に本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯電話機を提供できる。
[0331]
 図28Bは、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている二次電池7407も湾曲される。また、その時、曲げられた二次電池7407の状態を図28Cに示す。二次電池7407は薄型の蓄電池である。二次電池7407は曲げられた状態で固定されている。なお、二次電池7407は集電体と電気的に接続されたリード電極を有している。例えば、集電体は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体と接する活物質層との密着性を向上し、二次電池7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
[0332]
 図28Dは、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び二次電池7104を備える。また、図28Eに曲げられた二次電池7104の状態を示す。二次電池7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して二次電池7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径と呼び、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または二次電池7104の主表面の一部または全部が変化する。二次電池7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。上記の二次電池7104に本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯表示装置を提供できる。
[0333]
 図28Fは、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
[0334]
 携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
[0335]
 表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
[0336]
 操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
[0337]
 携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
[0338]
 携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
[0339]
 携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の二次電池を有している。本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯情報端末を提供できる。例えば、図28Eに示した二次電池7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
[0340]
 携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
[0341]
 図28Gは、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の二次電池を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
[0342]
 表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
[0343]
 表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
[0344]
 表示装置7300が有する二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な表示装置を提供できる。
[0345]
 先の実施の形態で示したサイクル特性のよい二次電池を電子機器に実装する例を図28H、図29および図30を用いて説明する。
[0346]
 日用電子機器に二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な製品を提供できる。例えば、日用電子機器として、電動歯ブラシ、電気シェーバー、電動美容機器などが挙げられ、それらの製品の二次電池としては、使用者の持ちやすさを考え、形状をスティック状とし、小型、軽量、且つ、大容量の二次電池が望まれている。
[0347]
 図28Hはタバコ収容喫煙装置(電子タバコ)とも呼ばれる装置の斜視図である。図28Hにおいて電子タバコ7500は、加熱素子を含むアトマイザ7501と、アトマイザに電力を供給する二次電池7504と、液体供給ボトルやセンサなどを含むカートリッジ7502で構成されている。安全性を高めるため、二次電池7504の過充電や過放電を防ぐ保護回路を二次電池7504に電気的に接続してもよい。図28Hに示した二次電池7504は、充電機器と接続できるように外部端子を有している。二次電池7504は持った場合に先端部分となるため、トータルの長さが短く、且つ、重量が軽いことが望ましい。本発明の一態様の二次電池は高容量、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができる小型であり、且つ、軽量の電子タバコ7500を提供できる。
[0348]
 次に、図29Aおよび図29Bに、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図29Aおよび図29Bに示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、スイッチ9625乃至スイッチ9627、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。表示部9631には、可撓性を有するパネルを用いることで、より広い表示部を有するタブレット端末とすることができる。図29Aは、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図29Bは、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
[0349]
 タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
[0350]
 表示部9631は、全て又は一部の領域をタッチパネルの領域とすることができ、また当該領域に表示されたアイコンを含む画像、文字、入力フォームなどに触れることでデータ入力をすることができる。例えば、筐体9630a側の表示部9631aの全面にキーボードボタンを表示させて、筐体9630b側の表示部9631bに文字、画像などの情報を表示させて用いてもよい。
[0351]
 筐体9630b側の表示部9631bにキーボードを表示させて、筐体9630a側の表示部9631aに文字、画像などの情報を表示させて用いてもよい。また、表示部9631にタッチパネルのキーボード表示切り替えボタンを表示するようにして、当該ボタンに指やスタイラスなどで触れることで表示部9631にキーボードを表示するようにしてもよい。
[0352]
 筐体9630a側の表示部9631aのタッチパネルの領域と筐体9630b側の表示部9631bのタッチパネルの領域に対して同時にタッチ入力することもできる。
[0353]
 スイッチ9625乃至スイッチ9627には、タブレット型端末9600を操作するためのインターフェースだけでなく、様々な機能の切り替えを行うことができるインターフェースとしてもよい。例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、タブレット型端末9600の電源のオン・オフを切り替えるスイッチとして機能してもよい。また、例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替える機能、又は白黒表示やカラー表示の切り替える機能を有してもよい。また、例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、表示部9631の輝度を調整する機能を有してもよい。また、表示部9631の輝度は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて最適なものとすることができる。なお、タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
[0354]
 図29Aでは筐体9630a側の表示部9631aと筐体9630b側の表示部9631bの表示面積とがほぼ同じ例を示しているが、表示部9631a及び表示部9631bのそれぞれの表示面積は特に限定されず、一方のサイズと他方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
[0355]
 図29Bは、タブレット型端末9600を2つ折りに閉じた状態であり、タブレット型端末9600は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634を有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係る蓄電体を用いる。
[0356]
 なお、上述の通り、タブレット型端末9600は2つ折りが可能であるため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631を保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の二次電池を用いた蓄電体9635は高容量、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができるタブレット型端末9600を提供できる。
[0357]
 この他にも図29Aおよび図29Bに示したタブレット型端末9600は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
[0358]
 タブレット型端末9600の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。なお蓄電体9635として、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
[0359]
 図29Bに示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図29Cにブロック図を示し説明する。図29Cには、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図29Bに示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
[0360]
 まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
[0361]
 なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
[0362]
 図30に、他の電子機器の例を示す。図30において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る二次電池8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、二次電池8004等を有する。本発明の一態様に係る二次電池8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
[0363]
 表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
[0364]
 なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
[0365]
 図30において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る二次電池8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、二次電池8103等を有する。図30では、二次電池8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、二次電池8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
[0366]
 なお、図30では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る二次電池は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
[0367]
 光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
[0368]
 図30において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る二次電池8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、二次電池8203等を有する。図30では、二次電池8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、二次電池8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、二次電池8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に二次電池8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
[0369]
 なお、図30では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る二次電池を用いることもできる。
[0370]
 図30において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る二次電池8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、二次電池8304等を有する。図30では、二次電池8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
[0371]
 なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る二次電池を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
[0372]
 電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、二次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、二次電池8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、二次電池8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
[0373]
 本発明の一態様により、二次電池のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、高容量の二次電池とすることができ、よって、二次電池の特性を向上することができ、よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。そのため本発明の一態様である二次電池を、本実施の形態で説明した電子機器に搭載することで、より長寿命で、より軽量な電子機器とすることができる。本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
[0374]
(実施の形態6)
 本実施の形態では、車両に本発明の一態様である二次電池を搭載する例を示す。
[0375]
 二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
[0376]
 図31において、本発明の一態様である二次電池を用いた車両を例示する。図31Aに示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は二次電池を有する。二次電池は、車内の床部分に対して、図16Cおよび図16Dに示した二次電池のモジュールを並べて使用すればよい。また、図19に示す二次電池を複数組み合わせた電池パックを車内の床部分に対して設置してもよい。二次電池は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
[0377]
 二次電池は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、二次電池は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
[0378]
 図31Bに示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図31Bに、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
[0379]
 図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
[0380]
 図31Cは、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。図31Cに示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
[0381]
 図31Cに示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。二次電池8602は、取り外し可能となっており、充電時には二次電池8602を屋内に持って運び、充電し、走行する前に収納すればよい。
[0382]
 本発明の一態様によれば、二次電池のサイクル特性が良好となり、二次電池の容量を大きくすることができる。よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。二次電池自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した二次電池を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、例えば電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避できれば、省エネルギー、および二酸化炭素の排出の削減に寄与することができる。また、サイクル特性が良好であれば二次電池を長期に渡って使用できるため、コバルトをはじめとする希少金属の使用量を減らすことができる。
[0383]
 本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
実施例 1
[0384]
 本実施例では、本発明の一態様である正極活物質として、コバルト酸リチウム(sample A1乃至sample A3)を作製し、XRD分析及びESR分析を行った。比較例として、市販のコバルト酸リチウム(sample A4)を用いた。また、これらのコバルト酸リチウムを用いて二次電池を作製し、高電圧充電におけるサイクル特性、及び連続充電耐性を評価した。ここで、sample A1乃至sample A3はそれぞれ、マグネシウム及びハロゲンの添加量を異ならせた。
[0385]
[正極活物質の作製方法]
<sample A1>
 ハロゲン源、リチウム源、マグネシウム源、並びにリチウム及び遷移金属を有する複合酸化物を出発材料として、sample A1を作製した(図9参照)。
[0386]
 まず、出発材料を秤量した。ハロゲン源及びマグネシウム源として、フッ化マグネシウム(MgF )を用いた。ハロゲン源及びリチウム源として、フッ化リチウム(LiF)を用いた。
[0387]
 次に、リチウム及び遷移金属を有する複合酸化物を秤量した。リチウム及び遷移金属を有する複合酸化物として、リチウムコバルト酸(LiCoO )である日本化学工業社製のセルシードC−10Nを用いた。セルシードC−10Nは、D50が12μm程度で不純物の少ないコバルト酸リチウムである。
[0388]
 具体的には、MgF を0.47585g(7.6378mmol)、LiFを0.06602g(2.54526mmol)、セルシードC−10Nを149.45813g(1527.109mmol)を秤量した。これは、コバルト原子数に対し、マグネシウム原子数が0.5atomic%となる量である。また、MgF に対し、LiFがモル比で0.33となる量である。
[0389]
 なお、本明細書等において、マグネシウム添加量とは、出発材料におけるコバルト原子数に対する、マグネシウム原子数の比を指す。
[0390]
 次に、各出発材料を混合した。混合には湿式ボールミルを用いた。具体的には、混合は、乾式で混合した。混合はジルコニアボールを用いたボールミルで行い、150rpm、1時間行った。
[0391]
 次に、混合物に加熱処理を行った。混合物をアルミナ坩堝に入れ、酸素雰囲気のマッフル炉にて850℃、60時間処理した。加熱処理の際には、アルミナ坩堝にふたをした。酸素の流量は10L/minとした。昇温は200℃/hrとし、降温は10時間以上かけて行った。
[0392]
 次に、加熱処理した材料を室温まで冷却、回収してsample A1を得た。
[0393]
<sample A2>
 sample A2では、MgF を0.12553g(2.0149mmol)、LiFを0.01742g(0.67146mmol)、セルシードC−10Nを9.85705g(100.716mmol)秤量した。これは、コバルト原子数に対し、マグネシウム原子数が2.0atomic%となる量である。また、MgF に対し、LiFがモル比で0.33となる量である。他の工程については、sample A1の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
[0394]
<sample A3>
 sample A3では、MgF を0.36613g(5.8767mmol)、LiFを0.05080g(1.9583mmol)、セルシードC−10Nを9.58307g(97.9163mmol)秤量した。これは、コバルト原子数に対し、マグネシウム原子数が6.0atomic%となる量である。また、MgF に対し、LiFがモル比で0.33となる量である。他の工程については、sample A1の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
[0395]
<sample A4>
 特に処理を行わない市販のコバルト酸リチウム(セルシードC−10N)を、sample A4(比較例)とした。
[0396]
[ESR分析]
 続いて、sample A1乃至sample A4のESR分析を行った。ESR分析は、9.15GHzの高周波電力(マイクロ波のパワー)を1mWとし、磁場を0mTから800mTまで掃引し、測定温度を300K(約27℃)、200K(約−73℃)、113K(約−160℃)とした。ESR分析に用いた試料の重量は、sample A1乃至sample A4のいずれも0.005gであった。また、Mn 2+マーカーを用いて、磁場の補正および検出感度の補正を行った。スピン数の算出には、標準試料としてTEMPOL(4−Hydroxy−2,2,6,6−tetramethylpiperidine−1−oxyl)を用いた。
[0397]
 sample A1乃至sample A4のESR測定結果を図32に示す。図32において、横軸は磁場(Magnetic Field)を示し、縦軸はESRシグナルの強度(Intensity)を示す。なお、シグナル強度は、マイクロ波の吸収量の一次微分の値を示している。
[0398]
 図32に示すように、いずれの試料においても305mT(g=2.15)付近にシャープなシグナルが観測された。305mT(g=2.15)付近のシグナルは、Co 2+及びCo 4+に起因する。305mT(g=2.15)付近のシグナルの線幅ΔHppは約4mTであった。ここで、線幅ΔHppはシグナルの最大値と最小値の磁場の差を指す。また、Co に起因する130mT(g=5.1)付近にシグナルは観察されなかった。sample A1乃至sample A4においては、Co が存在しない又は極めて少ないことが確認できた。
[0399]
 次に、磁場を200mTから400mTまで掃引してESR分析を行った。ESR分析は、測定温度を300K(約27℃)、200K(約−73℃)、113K(約−160℃)とした。
[0400]
 sample A1乃至sample A4のESR測定結果を図33に示す。図33において、横軸は磁場(Magnetic Field)を示し、縦軸はESRシグナルの強度(Intensity)を示す。なお、シグナル強度は、マイクロ波の吸収量の一次微分の値を示している。
[0401]
 図33に示すように、いずれの試料においても305mT(g=2.15)付近にシャープなシグナルが観測された。305mT(g=2.15)付近のシグナル強度から算出したスピン数を、表1に示す。表1には、スピン数から算出したスピン密度1及びスピン密度2も示している。表1に示すスピン密度1は、スピン数をESR分析に用いた試料の重量(0.005g)で除した値である。また、表1に示すスピン密度2は、各試料の組成をLiCoO とし、その分子量97.87から各試料中のコバルト原子数を算出し、スピン数を該コバルト原子数で除した値である。sample A1乃至sample A4のスピン密度1を図34Aに、スピン密度2を図34Bに示す。図34A及び図34Bにおいて、横軸は試料名を示し、縦軸はそれぞれスピン密度1(Spin Density1)及びスピン密度2(Spin Density2)を示す。
[0402]
[表1]


[0403]
 表1、図34A及び図34Bに示すように、本発明の一態様であるsample A1乃至sample A3は、キュリー・ワイス則に従い、ESR分析の測定温度が低くなるほどスピン密度が増加し、常磁性を示すことを確認できた。一方、比較試料であるsample A4は、スピン密度の測定温度依存性が小さく、常磁性とは異なる挙動を示すことを確認できた。
[0404]
 300K(約27℃)でESR分析したスピン密度1と、コバルトに対するマグネシウム添加量との相関を図35Aに示す。スピン密度2と、コバルトに対するマグネシウム添加量との相関を図35Bに示す。図35A及び図35Bにおいて、横軸はマグネシウム添加量を示し、縦軸はそれぞれスピン密度1及びスピン密度2を示す。
[0405]
 図35A及び図35Bに示すように、マグネシウム添加量の増加に従いCo 2+及びCo 4+に起因するスピン密度が高くなることを確認できた。また、マグネシウム添加量が多すぎると、Co 2+及びCo 4+に起因するスピン密度が低くなることを確認できた。また、マグネシウム添加を行ったsample A1、A2、A3では、g=2.1より低磁場側に小さなシグナルが観察され、これは、マグネシウムの置換によって生じた結晶場の異方性が存在することを示している。
[0406]
 図35Aに示すように、マグネシウムを添加していないsample A4において、正極活物質の重量当たりのCo 2+及びCo 4+に起因するスピン密度は1.4×10 17spins/gであった。これに対し、マグネシウム添加量が0.5atomic%であるsample A1のスピン密度は2.8×10 17spins/g、マグネシウム添加量が2.0atomic%であるsample A2のスピン密度は4.8×10 17spins/g、マグネシウム添加量が6.0atomic%であるsample A3のスピン密度は2.1×10 17spins/gであり、2.0×10 17spins/g以上1.0×10 18spins/g以下であった。
[0407]
 図35Bに示すように、マグネシウムを添加していないsample A4において、Co原子数当たりのCo 2+及びCo 4+に起因するスピン密度は2.3×10 −5spins/Co原子であった。これに対し、マグネシウム添加量が0.5atomic%であるsample A1のスピン密度は4.6×10 −5spins/Co原子、マグネシウム添加量が2.0atomic%であるsample A2のスピン密度は7.8×10 −5spins/Co原子、マグネシウム添加量が6.0atomic%であるsample A3のスピン密度は3.5×10 −5spins/Co原子であり、3.3×10 −5spins/Co原子以上1.6×10 −4spins/Co原子以下であった。
[0408]
[XRD分析]
 続いて、sample A1乃至sample A4のXRD分析を行った。XRD分析には、X線源として波長0.15418nmのCuKα線を用いた。
[0409]
 sample A1乃至sample A4のXRD測定結果を、図36に示す。sample A1乃至sample A4で観察されたXRDピークは、ほぼLiCoO に帰属されることを確認できた。
[0410]
 図36のグラフを拡大したものを、図37A、図37B及び図38に示す。図36、図37A、図37B及び図38において、横軸は回折角度2θを示し、縦軸は回折X線の強度(Intensity)を示す。
[0411]
 図37A、図37B及び図38に示すように、マグネシウム添加量によりXRDピーク位置に差が確認された。なお、sample A3においては、2θ=37deg付近にLiCoO に帰属されないピークが確認された(図38参照)。マグネシウム添加量が多くなり、例えば、2個のMg 2+がそれぞれLi 、Co 3+と置換すれば、LiCoO 全体として価数が変わらず、磁気スピンが誘起されない可能性が考えられる。そのため、Mg濃度が高すぎると、磁気スピンの誘起が行われにくい可能性がある。
[0412]
 図36に示すXRD測定結果についてリートベルト(Rietveld)解析を行い、結晶子サイズ及び結晶格子を求めた。リートベルト解析には、Bruker社のソフトウェア(TOPAS)を用い、空間群としてR−3mの構造を用いた。
[0413]
 リートベルト解析により求めたsample A1乃至sample A4それぞれの結晶子サイズ及び結晶格子を表2に示す。また、格子定数を、図39A及び図39Bに示す。図39A及び図39Bにおいて、横軸はマグネシウム添加量を示し、縦軸はそれぞれ格子定数a及び格子定数cを示す。
[0414]
[表2]


[0415]
 表2に示すように、sample A1乃至sample A4において、a軸の格子定数が2.8155×10 −10m以上2.8175×10 −10mであり、c軸の格子定数が、14.045×10 −10m以上14.065×10 −10m以下であった。また、マグネシウム添加量の増加に従い格子定数が大きくなる傾向となったが、試料間で格子定数の差は小さいことが分かった。
[0416]
 続いて、sample A1乃至sample A4を用いて二次電池を作製し、サイクル特性を評価した。
[0417]
[二次電池の作製方法]
 sample A1乃至sample A4を正極材料として用いて正極を作製した。
[0418]
[サイクル特性1]
 続いて、sample A1乃至sample A4のサイクル特性を評価した。正極の担持量を20mg/cm 、充電の上限電圧を4.5Vとした。
[0419]
 まず、充電をCCCV(レート0.05C、4.5V、終止電流0.005C)、放電をCC(0.05C、2.5V)として25℃において2サイクル測定した。その後、25℃において、充電をCCCV(レート0.2C、4.5V、終止電流0.02C)、放電をCC(0.2C、2.5V)で繰り返し充放電を行い、サイクル特性を評価した。
[0420]
 sample A1乃至sample A4のサイクル特性を図40A及び図40Bに示す。図40Aにおいて、横軸はサイクル数(Cycle Number)を示し、縦軸は放電時の容量(Capacity)を示す。図40Bにおいて、横軸はサイクル数(Cycle Number)を示し、縦軸は放電時の容量維持率(Capacity Retention Rate)を示す。放電時の容量維持率は、放電時の容量の最大値に対する各サイクルでの容量の割合である。
[0421]
 図40A及び図40Bに示すように、マグネシウムを添加しなかったsample A4と比較して、マグネシウムを添加したsample A1乃至sample A3はサイクル特性が良好であることを確認できた。特に、sample A1及びsample A2は、容量が高く、かつサイクル特性に優れていることを確認できた。
[0422]
[サイクル特性2]
 続いて、正極の担持量を20mg/cm 、充電の上限電圧を4.6Vとして、サイクル特性を評価した。
[0423]
 まず、充電をCCCV(レート0.05C、4.6V、終止電流0.005C)、放電をCC(レート0.05C、2.5V)として25℃において2サイクル測定した。その後、25℃において、充電をCCCV(レート0.2C、4.6V、終止電流0.02C)、放電をCC(レート0.2C、2.5V)で繰り返し充放電を行い、サイクル特性を評価した。
[0424]
 sample A1乃至sample A4のサイクル特性を図41A及び図41Bに示す。
[0425]
 図41A及び図41Bに示すように、マグネシウムを添加しなかったsample A4と比較して、マグネシウムを添加したsample A1乃至sample A3はサイクル特性が良好であることを確認できた。特に、sample A1及びsample A2は、容量が高く、かつサイクル特性に優れていることを確認できた。
[0426]
[連続充電耐性]
 次に、作製した各々の正極活物質を用いた各々の二次電池について、連続充電耐性の評価を行った。まず、充電をCCCV(レート0.05C、4.5Vまたは4.6V、終止電流0.005C)、放電をCC(レート0.05C、2.5V)として25℃において2サイクル測定した。
[0427]
 その後、60℃にて、充電をCCCV(レート0.05C)で行った。上限電圧は4.55Vまたは4.65Vとし、終止条件は、二次電池の電圧が上限電圧から0.01V引いた値(4.55Vであれば4.54V)未満に低下するまでの時間を測定した。二次電池の電圧が上限電圧から下回る場合には例えば、ショートなどの現象が生じている可能性がある。1Cは200mA/gとした。
[0428]
 連続充電耐性の評価結果を図42A及び図42Bに示す。図42Aは、充電電圧を4.55Vとした場合の連続充電耐性の評価結果を示している。図42Bは、充電電圧を4.65Vとした場合の連続充電耐性の評価結果を示している。図42A及び図42Bにおいて、横軸は時間(Time)を示し、縦軸は電流値(Current)を示す。
[0429]
 図42A及び図42Bに示すように、マグネシウム添加量の増加に従い連続充電耐性が高くなった。また、マグネシウム添加量が6.0atomic%のsample A3は連続充電耐性が低くなる傾向を確認できた。
実施例 2
[0430]
 本実施例では、前述の実施例1と異なる作製方法で、本発明の一態様であるコバルト酸リチウム(sample B1)を作製し、ESR分析を行った。比較例として、マグネシウムを添加しないコバルト酸リチウム(sample B2)も作製した。また、これらのコバルト酸リチウムを用いて二次電池を作製し、高電圧充電におけるサイクル特性を評価した。
[0431]
[正極活物質の作製方法]
<sample B1>
 ハロゲン源、リチウム源、マグネシウム源、及びコバルト源を出発材料として、sample B1を作製した(図10参照)。
[0432]
 まず、出発材料を秤量した。リチウム源として炭酸リチウム(Li CO )、コバルト源として四酸化三コバルト(Co )、マグネシウム源として酸化マグネシウム(MgO)、フッ素源としてフッ化リチウム(LiF)を用いた。
[0433]
 具体的には、Li CO を3.1489g(42.62mmol)、Co を6.7726g(28.13mmol)、MgOを0.0344g(0.85mmol)、LiFを0.0442g(1.70mmol)秤量した。これは、コバルト原子数に対し、マグネシウム原子数が1.0atomic%となる量である。なお、Li CO は高純度化学研究所社製(カタログ番号:LIH06XB)を用いた。MgOは高純度化学研究所社製(カタログ番号:MGO12PB)を用いた。LiFは高純度化学研究所社製(LIH10XB)を用いた。
[0434]
 次に、各出発材料を混合した。混合には湿式ボールミルを用いた。具体的には、3mmφのボール、溶媒としてアセトンを用い、回転数300rpmで2時間、粉砕、混合を行った。
[0435]
 次に、混合した材料に第1の加熱処理を行った。第1の加熱処理は、マッフル炉を用い、室温から200℃/hrの昇温レートで1000℃まで昇温し、1000℃で10時間加熱を行った。第1の加熱処理の雰囲気は乾燥空気とし、乾燥空気の流量を10L/minとした。
[0436]
 次に、第1の加熱処理を行った材料を室温まで冷却した。冷却後、材料の解砕処理を行い、材料の粒子径を小さくした。解砕処理には、53μmのメッシュを用いた。
[0437]
 次に、材料に第2の加熱処理を行った。第2の加熱処理は、マッフル炉を用い、室温から200℃/hrの昇温レートで800℃まで昇温し、800℃で2時間加熱を行った。第2の加熱処理の雰囲気は乾燥空気とし、乾燥空気の流量を10L/minとした。
[0438]
 次に、加熱処理した材料を室温まで冷却、回収してsample B1を得た。
[0439]
<sample B2>
 リチウム源及びコバルト源を出発材料として、sample B2を作製した。比較例であるsample B2は、マグネシウム源及びハロゲン源を用いなかった。
[0440]
 まず、出発材料を秤量した。リチウム源として炭酸リチウム(Li CO )、コバルト源として四酸化三コバルト(Co )、マグネシウム源として酸化マグネシウム(MgO)、フッ素源としてフッ化リチウム(LiF)を用いた。
[0441]
 具体的には、Li CO を3.1521g(42.66mmol)、Co を6.8479g(28.44mmol)秤量した。他の工程については、sample B1の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
[0442]
[ESR分析]
 続いて、sample B1及びsample B2のESR分析を行った。ESR分析は、9.15GHzの高周波電力(マイクロ波のパワー)を1mWとし、磁場を0mTから500mTまで掃引し、測定温度を300K(約27℃)、200K(約−73℃)、113K(約−160℃)とした。ESR分析に用いた試料の重量は、sample B1は0.0044g、sample B2は0.0045gであった。
[0443]
 sample B1及びsample B2のESR測定結果を図43Aに示す。また、図43Aを拡大したものを図43Bに示す。図43A及び図43Bにおいて、横軸は磁場(Magnetic Field)を示し、縦軸はESRシグナルの強度(Intensity)を示す。なお、シグナル強度は、マイクロ波の吸収量の一次微分の値を示している。
[0444]
 図43Aに示すように、マグネシウムを添加しなかった比較例のsample B2は、130mT(g=5.1)付近にブロードなピークが観察された。sample B2は、酸素4配位のCoの存在が示唆される結果となった。
[0445]
 図43A及び図43Bに示すように、いずれの試料においても305mT(g=2.15)付近にシャープなシグナルが観測された。305mT(g=2.15)付近のシグナルは、Co 2+及びCo 4+に起因する。305mT(g=2.15)付近のシグナル強度から算出したスピン数を、表3に示す。表3には、スピン数から算出したスピン密度1及びスピン密度2も示している。表1に示すスピン密度1は、スピン数をESR分析に用いた試料の重量(0.005g)で除した値である。また、表3に示すスピン密度2は、各試料の組成をLiCoO とし、その分子量97.87から各試料中のコバルト原子数を算出し、スピン数を該コバルト原子数で除した値である。sample B1及びsample B2のスピン密度1を図44Aに、スピン密度2を図44Bに示す。図44A及び図44Bにおいて、横軸は試料名を示し、縦軸はそれぞれスピン密度1(Spin Density1)及びスピン密度2(Spin Density2)を示す。
[0446]
[表3]


[0447]
 表3、図44A及び図44Bに示すように、本発明の一態様であるsample B1は、キュリー・ワイス則に従い、ESR分析の測定温度が低くなるほどスピン密度が増加し、常磁性を示すことを確認できた。一方、比較試料であるsample B2は常磁性的ではあるものの、スピン密度が低かった。
[0448]
 300K(約27℃)でESR分析したスピン密度1と、コバルトに対するマグネシウム添加量との相関を図45Aに示す。スピン密度2と、コバルトに対するマグネシウム添加量との相関を図45Bに示す。図45A及び図45Bにおいて、横軸はマグネシウム添加量を示し、縦軸はそれぞれスピン密度1及びスピン密度2を示す。
[0449]
 図45Aに示すように、マグネシウムを添加していないsample B2おいて、正極活物質の重量当たりのCo 2+及びCo 4+に起因するスピン密度は1.1×10 17spins/gであった。これに対し、マグネシウム添加量が1.0atomic%であるsample B1のスピン密度は2.1×10 17spins/gであり、2.0×10 17spins/g以上1.0×10 18spins/g以下であった。
[0450]
 図45Bに示すように、マグネシウムを添加していないsample B2において、Co原子数当たりのCo 2+及びCo 4+に起因するスピン密度は1.7×10 −5spins/Co原子であった。これに対し、マグネシウム添加量が1.0atomic%であるsample B1のスピン密度は3.4×10 −5spins/Co原子であり、3.3×10 −5spins/Co原子以上1.6×10 −4spins/Co原子以下であった。
[0451]
[二次電池の作製方法]
 sample B1及びsample B2を正極材料として用いて正極を作製した。
[0452]
[サイクル特性]
 続いて、sample B1及びsample B2のサイクル特性を評価した。正極の担持量を約7mg/cm 、充電の上限電圧を4.6Vとした。
[0453]
 まず、充電をCCCV(0.05C、4.6V、終止電流0.005C)、放電をCC(0.05C、2.5V)として25℃において2サイクル測定した。その後、25℃において、充電をCCCV(0.2C、4.6V、終止電流0.02C)、放電をCC(0.2C、2.5V)で繰り返し充放電を行い、サイクル特性を評価した。
[0454]
 sample A1乃至sample A4のサイクル特性を図46A及び図46Bに示す。図46Aにおいて、横軸はサイクル数(Cycle Number)を示し、縦軸は放電時の容量(Capacity)を示す。図46Bにおいて、横軸はサイクル数(Cycle Number)を示し、縦軸は放電時の容量維持率(Capacity Retention Rate)を示す。放電時の容量維持率は、放電時の容量の最大値に対する各サイクルでの容量の割合である。
[0455]
 図46A及び図46Bに示すように、マグネシウムを添加しなかったsample B2と比較して、マグネシウムを添加したsample B1はサイクル特性が良好であることを確認できた。

符号の説明

[0456]
100:正極活物質、200:活物質層、201:グラフェン化合物、210:電極積層体、211a:正極、211b:負極、212a:リード、212b:リード、214:セパレータ、215a:接合部、215b:接合部、217:固定部材、250:二次電池、251:外装体、261:折り曲げ部、262:シール部、263:シール部、271:稜線、272:谷線、273:空間、300:二次電池、301:正極缶、302:負極缶、303:ガスケット、304:正極、305:正極集電体、306:正極活物質層、307:負極、308:負極集電体、309:負極活物質層、310:セパレータ、500:二次電池、501:正極集電体、502:正極活物質層、503:正極、504:負極集電体、505:負極活物質層、506:負極、507:セパレータ、508:電解液、509:外装体、510:正極リード電極、511:負極リード電極、600:二次電池、601:正極キャップ、602:電池缶、603:正極端子、604:正極、605:セパレータ、606:負極、607:負極端子、608:絶縁板、609:絶縁板、611:PTC素子、612:安全弁機構、613:導電板、614:導電板、615:モジュール、616:導線、617:温度制御装置、900:回路基板、910:ラベル、911:端子、912:回路、913:二次電池、914:アンテナ、915:シール、916:層、917:層、918:アンテナ、920:表示装置、921:センサ、922:端子、930:筐体、930a:筐体、930b:筐体、931:負極、932:正極、933:セパレータ、950:捲回体、951:端子、952:端子、980:二次電池、981:フィルム、982:フィルム、993:捲回体、994:負極、995:正極、996:セパレータ、997:リード電極、998:リード電極、7100:携帯表示装置、7101:筐体、7102:表示部、7103:操作ボタン、7104:二次電池、7200:携帯情報端末、7201:筐体、7202:表示部、7203:バンド、7204:バックル、7205:操作ボタン、7206:入出力端子、7207:アイコン、7300:表示装置、7304:表示部、7400:携帯電話機、7401:筐体、7402:表示部、7403:操作ボタン、7404:外部接続ポート、7405:スピーカ、7406:マイク、7407:二次電池、7500:電子タバコ、7501:アトマイザ、7502:カートリッジ、7504:二次電池、8000:表示装置、8001:筐体、8002:表示部、8003:スピーカ部、8004:二次電池、8021:充電装置、8022:ケーブル、8024:二次電池、8100:照明装置、8101:筐体、8102:光源、8103:二次電池、8104:天井、8105:側壁、8106:床、8107:窓、8200:室内機、8201:筐体、8202:送風口、8203:二次電池、8204:室外機、8300:電気冷凍冷蔵庫、8301:筐体、8302:冷蔵室用扉、8303:冷凍室用扉、8304:二次電池、8400:自動車、8401:ヘッドライト、8406:電気モーター、8500:自動車、8600:スクータ、8601:サイドミラー、8602:二次電池、8603:方向指示灯、8604:座席下収納、9600:タブレット型端末、9625:スイッチ、9627:スイッチ、9628:操作スイッチ、9629:留め具、9630:筐体、9630a:筐体、9630b:筐体、9631:表示部、9631a:表示部、9631b:表示部、9633:太陽電池、9634:充放電制御回路、9635:蓄電体、9636:DCDCコンバータ、9637:コンバータ、9640:可動部

請求の範囲

[請求項1]
 リチウムと、コバルトと、酸素と、を有し、
 2価のコバルトイオン及び4価のコバルトイオンに起因するスピン密度が、2.0×10 17spins/g以上1.0×10 18spins/g以下である正極活物質。
[請求項2]
 請求項1において、
 さらにマグネシウムを有し、
 前記マグネシウムの濃度は、前記コバルトに対し0.1atomic%以上6.0atomic%以下である正極活物質。
[請求項3]
 請求項1又は請求項2において、
 さらにフッ素を有する正極活物質。
[請求項4]
 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
 a軸の格子定数が、2.8155×10 −10m以上2.8175×10 −10mであり、
 c軸の格子定数が、14.045×10 −10m以上14.065×10 −10m以下である正極活物質。
[請求項5]
 請求項1乃至請求項4のいずれか一の正極活物質を有する正極と、
 負極と、を有する二次電池。

図面

[ 図 1A]

[ 図 1B]

[ 図 2A]

[ 図 2B]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6A]

[ 図 6B]

[ 図 7A]

[ 図 7B]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11A]

[ 図 11B]

[ 図 12A]

[ 図 12B]

[ 図 12C]

[ 図 13A]

[ 図 13B]

[ 図 13C]

[ 図 13D]

[ 図 14]

[ 図 15A]

[ 図 15B]

[ 図 15C]

[ 図 16A]

[ 図 16B]

[ 図 16C]

[ 図 16D]

[ 図 17A]

[ 図 17B]

[ 図 18A1]

[ 図 18A2]

[ 図 18B1]

[ 図 18B2]

[ 図 19A]

[ 図 19B]

[ 図 20]

[ 図 21A]

[ 図 21B]

[ 図 21C]

[ 図 22A]

[ 図 22B]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25A]

[ 図 25B]

[ 図 25C]

[ 図 26A]

[ 図 26B1]

[ 図 26B2]

[ 図 26C]

[ 図 26D]

[ 図 27A]

[ 図 27B]

[ 図 28A]

[ 図 28B]

[ 図 28C]

[ 図 28D]

[ 図 28E]

[ 図 28F]

[ 図 28G]

[ 図 28H]

[ 図 29A]

[ 図 29B]

[ 図 29C]

[ 図 30]

[ 図 31A]

[ 図 31B]

[ 図 31C]

[ 図 32]

[ 図 33]

[ 図 34A]

[ 図 34B]

[ 図 35A]

[ 図 35B]

[ 図 36]

[ 図 37A]

[ 図 37B]

[ 図 38]

[ 図 39A]

[ 図 39B]

[ 図 40A]

[ 図 40B]

[ 図 41A]

[ 図 41B]

[ 図 42A]

[ 図 42B]

[ 図 43A]

[ 図 43B]

[ 図 44A]

[ 図 44B]

[ 図 45A]

[ 図 45B]

[ 図 46A]

[ 図 46B]