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1. WO2020079769 - 電気化学式酸素センサ

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明 細 書

発明の名称 電気化学式酸素センサ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058  

実施例

0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087  

産業上の利用可能性

0088  

符号の説明

0089  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : 電気化学式酸素センサ

技術分野

[0001]
 本発明は、長寿命の電気化学式酸素センサに関するものである。

背景技術

[0002]
 電気化学式酸素センサ(以下、酸素センサともいう)は、安価、手軽であり、かつ常温での作動が可能という利点を有することから、船倉内部やマンホール内の酸欠状態のチェック、麻酔器や人工呼吸器などの医療機器における酸素濃度の検出など、広い分野で使用されている。
[0003]
 このような電気化学式酸素センサとして、例えば特許文献1には、カソード、アノードおよび電解液を備え、前記電解液にキレート剤が含まれ、かつ、前記電解液のpHが12以上である電気化学式酸素センサが開示されている。
[0004]
 また、特許文献2においては、電気化学式酸素センサの電解液中のキレート剤のモル濃度を1.4mol/L以上とすることにより、酸素センサの寿命を向上させることが開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 国際公開第2009/069749号
特許文献2 : 特開2018-109549号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 特許文献1に記載の技術によれば、優れた応答速度の電気化学式酸素センサを提供可能であるものの、その寿命については、未だ改善の余地がある。また、特許文献2に記載の技術によれば、酸素センサの寿命向上に寄与するものの、その効果には限りがあり、更なる長寿命化が求められている。
[0007]
 本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、長寿命の電気化学式酸素センサを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明の電気化学式酸素センサは、正極、負極および電解液を有し、前記電解液は、キレート剤とアンモニアとを含有し、前記電解液中での前記アンモニアの濃度が、0.01mol/L以上であることを特徴とするものである。

発明の効果

[0009]
 本発明によれば、長寿命の電気化学式酸素センサを提供することができる。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] 本発明の電気化学式酸素センサの一例を模式的に表す断面図である。

発明を実施するための形態

[0011]
 まず、本発明の電気化学式酸素センサを、好適な実施形態の一例であるガルバニ電池式酸素センサを例にとり、図面を用いて説明する。
[0012]
 図1は、電気化学式酸素センサの一実施形態であるガルバニ電池式酸素センサを、模式的に表す断面図である。
[0013]
 図1に示す酸素センサ1は、有底筒状のホルダー20内に正極50、負極100および電解液110を有している。ホルダー20の上部開口部には、第1ホルダー蓋(中蓋)11と、第1ホルダー蓋11を固定するための第2ホルダー蓋(外蓋)12とで構成され、酸素センサ1内に酸素を取り込むための貫通孔150を有するホルダー蓋10が、O-リング30を介して取り付けられている。
[0014]
 ホルダー20内の電解液110を収容する槽中には、負極100が電解液中に浸漬された状態で配されている。負極100には、リード線120が取り付けられており、このリード線120には、ホルダー20の外部で補正抵抗130および温度補償用サーミスタ140が直列に連結されている。また、正極50は、触媒電極51と正極集電体52とが積層されて構成されており、正極集電体52にも、前記リード線120が取り付けられている。そして、正極50は、電解液収容槽の上部に、正極集電体保持部70を介して配されている。また、正極集電体保持部70には、電解液収容槽の電解液110を正極50に供給するための穿孔80と、正極集電体52に取り付けられたリード線120を通すための穿孔90とが設けられている。
[0015]
 正極50の上部には、酸素を選択的に透過させ、かつ透過量を電池反応に見合うように制限する隔膜60が配されており、ホルダー蓋10に設けられた貫通孔150からの酸素が、隔膜60を通じて正極50へ導入される。また、隔膜60の上部には、隔膜60へのゴミやチリ、水などの付着を防止するための保護膜40が配されており、第1ホルダー蓋11によって固定されている。
[0016]
 すなわち、第1ホルダー蓋11は、保護膜40、隔膜60および正極50の押圧端板として機能する。図1に示すセンサ1では、第2ホルダー蓋12に、ホルダー20の外周部に形成されたネジ部と螺合するように、内周部にネジ部が形成されている。そして、ホルダー蓋10をネジ締めすることにより、第1ホルダー蓋11がO-リング30を介してホルダー20に押し付けられることで、気密性および液密性を保持した状態で、保護膜40、隔膜60および正極50をホルダー20に固定できるようになっている。
[0017]
 特許文献1に示すようなキレート剤を含有する電解液を有するガルバニ電池式酸素センサの動作原理は、図1を参照しつつ説明すると、下記のようになると考えられる。
[0018]
 隔膜60を通って酸素センサ1の内部に入った酸素は、正極50が有する触媒電極51で還元され、電解液110を介して負極100との間で次のような電気化学反応を起こす。なお、負極100は、例えば、後に具体例として示す各種の金属や合金によって構成されるが、下記の電気化学反応式においては、一例として、SnまたはSn合金で構成されている場合を示す。
[0019]
 正極反応:O +4H +4e →2H
 負極反応:Sn+2H O→SnO +4H +4e
  Y X-+SnO +4H →YSn 4-x+2H
     :Yはキレート剤
[0020]
 この電気化学反応により、触媒電極51と負極100との間に酸素濃度に応じた電流が発生する。触媒電極51での正極反応によって生じた電流は、触媒電極51に圧接された正極集電体52で集電され、リード線120によって外部に導かれ、補正抵抗130および温度補償用サーミスタ140を通して負極100に流れる。これによって前記電流が電圧信号に変換され、酸素センサ出力として電圧が得られる。その後、得られた出力電圧が周知の方法で酸素濃度に変換され、酸素濃度として検知される。
[0021]
 なお、負極100の表面では、負極100の構成金属が酸化されて金属酸化物が生成する(前記電気化学反応式においては、負極100の構成金属はSnまたはSn合金であり、生成する金属酸化物はSnO である)。この金属酸化物が電解液中に溶解し、それによって負極100の表面に金属または合金が新たに露出し、これが更に前記の反応で酸化され、電解液中に溶解する一連の現象が繰り返される(すなわち、負極が消耗する)。本実施形態の酸素センサでは、このようなメカニズムによって前記電気化学反応が継続して、酸素濃度が検知される。
[0022]
 ここで、キレート剤(Y)は、負極の構成金属をキレート化して電解液に溶解させる作用(以下、「キレート化作用」という)があると考えられる。しかし、本発明者らは、電解液中に溶解している負極由来の金属が飽和濃度に達すると、前記金属の酸化物が生成して負極が不活性になることが酸素センサの寿命を低下させる要因の一つになると考えた。
[0023]
 そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、電解液に溶解できる負極由来の金属の量を高めること、すなわち電解液中のキレート剤(Y)のモル濃度を高めることが、電解液中に溶解している負極由来の金属が飽和に達するのを遅らせ、その結果、酸素センサの寿命を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0024]
 本明細書でいう「キレート剤」とは、金属イオンと配位結合をする官能基を複数持つ分子(イオンも含む)を有し、金属イオンと錯体を形成(錯化)して金属イオンを不活性化させるものであり、電解液を構成する溶媒中で前記分子を生成する酸やその塩などの形で電解液に含有させることができる。従って、錯化力が弱いリン酸、酢酸、炭酸およびこれらの塩などの、前記官能基が単数であるものは、本明細書でいう「キレート剤」には含まれない。
[0025]
 なお、本明細書でいう電解液中のアンモニアの濃度は、アンモニアおよびアンモニウムイオンを合計した濃度である。
[0026]
 本発明の酸素センサにおいては、キレート剤とアンモニアとを含有し、アンモニアのモル濃度が、0.01mol/L以上、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは1mol/L以上の電解液を使用する。なお、電解液の溶媒は水である。このような電解液であれば、キレート剤のモル濃度を高めることができ、酸素センサの寿命を向上させることが可能となる。その理由は、以下の通りであると推測される。
[0027]
 キレート剤は、一般に、キレート化作用を有し、かつ、pH緩衝能(少量の酸や塩基が添加されても、溶液のpHをほぼ一定に保つ能力)を有しているが、水溶液中でキレート化作用を生じる酸やその塩を単体で水に溶かした場合は、主にキレート剤の種類や濃度によって水溶液のpHが決定される。このため、用いるキレート剤の種類によっては、水溶液のpHが負極材料のガルバニ腐食を進行させる領域となってしまい、センサの電解液として使用し難くなる場合も生じる。
[0028]
 よって、優れたpH緩衝能を維持しながら、電解液のpHを好適な範囲に調整するために、キレート剤となる酸とその塩とを含有する混合溶液を用いることも提案されているが、混合溶液の組成を調整してもキレート剤の高濃度化には限界がある。
[0029]
 一方、アンモニアは、錯形成作用は弱いがキレート剤の水への溶解度を増大させ、かつ電解液のpH緩衝能を維持しながらpHを好適な範囲に調整しやすくする作用を有する。そのため、電解液中にアンモニアを含有させることにより、電解液中のキレート剤の濃度を高めることができ、その結果、電解液中に溶解する負極由来の金属イオンの濃度が飽和に達するのを遅らせて、酸素センサの寿命を向上させることができる。
[0030]
 電解液中のアンモニアの濃度は、アンモニアの前記作用を生じやすくさせるために、0.01mol/L以上とし、前記作用をより高めるために、0.1mol/L以上とすることが好ましく、1mol/L以上とすることがより好ましい。
[0031]
 一方、電解液中のアンモニアの濃度の上限は、特に規定はされないが、日本の「毒物及び劇物取締法」別表第二に規定されている化合物であるので、安全性の観点からは、電解液中でのアンモニアの濃度は、10質量%未満とすることが好ましい。
[0032]
 酸素センサの電解液のpHは、炭酸ガスの影響を防ぐため7未満(酸性溶液側)であることが好ましく、前記キレート剤に複数存在するpKa(Kaは酸解離定数)の中で、値が低い方から順にpKa 、pKa 、・・・、pKa とした場合に、電解液のpHがpKa +1以下の範囲となるように設定することにより、正極および負極の反応が進行する際に、少なくともpKa 付近での電解液のpH緩衝能を利用することができるのでより好ましい。
[0033]
 また、電解液のpHがpKa f-1+1以下の範囲となるように設定すれば、正極および負極の反応の進行に伴い、pKa f-1付近およびpKa 付近での電解液のpH緩衝能を順に利用することができるので更に好ましい。更に、電解液のpHがpKa f-1-0.25以下の範囲となるように設定することにより、pKa f-1付近での電解液のpH緩衝能をより利用しやすくなるため、長寿命化にはより有効である。
[0034]
 また、pKa +1以下の範囲となるように電解液のpHを設定すれば、pKa 付近~pKa 付近での電解液のpH緩衝能を、全て順に利用することができるため、pHの緩衝性の点からは最も好ましい。
[0035]
 一方、酸素センサの利用開始時に電解液にpH緩衝能を持たせるために、それぞれのpKaにおいて、電解液のpHがpKa-1以上(かつpKa+1以下)の範囲となるように設定することが好ましく、従って、電解液のpHは、各pKaの値を中心として±1の範囲であることが好ましい。特に、電解液のpHが、各pKaの値よりもマイナス側の、pKa-1からpKa-0.25の範囲である場合には、電解液のpH緩衝能がより発揮されやすくなり、酸素センサの長寿命化により有効であると考えられる。
[0036]
 具体的には、キレート剤としてクエン酸を用いる場合は、クエン酸の25℃における各pKaは、pKa =3.13、pKa =4.75、pKa =6.40であるため、電解液のpHは、少なくともpKa のpH緩衝能を発揮させるという点で7.40以下であることが好ましく、6.15以下であることが特に好ましい。また、pKa およびpKa のpH緩衝能を発揮させるという点で、電解液のpHは、5.75以下であることが更に好ましく、4.5以下であることが特に好ましく、pKa からpKa のpH緩衝能を発揮させるという点で、4.13以下であることが最も好ましい。なお、クエン酸の場合には、pKa ±1の範囲とpKa ±1の範囲、および、pKa ±1の範囲とpKa ±1の範囲とは、それぞれ値が重複する部分を有している。このため、実際には、pHが2.13以上7.40以下の広い範囲でpH緩衝能を発揮させることが可能であり、電解液のpHが前記範囲内に設定されていれば、酸素センサの利用開始時に、電解液にpH緩衝能を発揮させることができる。
[0037]
 ただし、電解液のpHが低くなりすぎると、負極材料の腐食が進行し、酸素センサの寿命を低下させやすくなることから、実際には、キレート剤としてクエン酸を用いる場合には、電解液のpHは、例えば3.5以上であることが好ましく、炭酸ガスの影響を防ぐため7未満とすることが好ましい。
[0038]
 更に、クエン酸の場合には、電解液のpHがpKa 付近に調整されているときに、より錯形成しやすいと考えられることから、電解液のpHは、5.75以下であることがより好ましく、4.5以下であることが特に好ましい。
[0039]
 前記好適な範囲に電解液のpHを調整しながら、キレート剤の濃度を高濃度化することにより、酸素センサとしての寿命をより向上させることができると考えられる。
[0040]
 電解液中でのキレート剤の濃度は、例えば、2.3mol/L以上であることが好ましく、2.5mol/L以上であることがより好ましく、2.7mol/L以上であることが特に好ましい。
[0041]
 キレート剤としては、キレート化作用およびpH緩衝能を有していれば、特に制限はない。キレート剤の具体例としては、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、マロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
[0042]
 キレート剤には、キレート化作用を高める観点から水への溶解度が高いもの、具体的には、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸およびその塩などを用いることがより好ましい。これらの中でも、クエン酸やその塩は水への溶解度が高く〔クエン酸:73g/100ml(25℃)、クエン酸三ナトリウム:71g/100ml(25℃)、クエン酸三カリウム:167g/100ml(25℃)〕、また、クエン酸は解離可能な水素原子の数が多く、pH緩衝能が発揮されるpHが複数あることから(pKa =3.13、pKa =4.75、pKa =6.40)、クエン酸を使用することがより好ましい。よって、キレート剤としてクエン酸を用いた場合には、水への溶解度が高く、pH緩衝能も高くなるため、酸素センサの寿命がより向上する。
[0043]
 電解液に含有させるアンモニアは、例えば、アンモニア水として添加することができ、また、アンモニウム塩の形で添加することもできる。前記アンモニウム塩としては、アンモニアとキレート剤の塩(クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、酒石酸二アンモニウム、酒石酸アンモニウムカリウムなど)の他、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウムなど、弱酸または強酸とアンモニアとの塩などが例示される。
[0044]
 好適な電解液のpHは、用いるキレート剤のpKaにより異なるが、前述したように、各pKaに対し±1の範囲内とすることが好ましい。電解液のpHの調整は、アンモニアおよびその塩、キレート剤の塩(アルカリ金属塩など)の他、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどアンモニウム塩以外で塩基性を示す塩、酢酸、ホウ酸、リン酸などの酸やその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ塩などを添加することにより行うことができる。
[0045]
 酸素センサの正極には、例えば、図1に示すように、触媒電極と正極集電体とで構成されたものが使用される。触媒電極の構成材料としては、正極上の電気化学的な酸素の還元によって電流が生じ得るものであれば特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、チタン(Ti)などの、酸化還元に活性な触媒が好適に用いられる。
[0046]
 酸素センサの負極には、Cu、Fe、Ag、Ti、Al、Mg、Zn、Ni、Snおよびそれらの合金を用いることができる。負極を構成する前記金属や合金には、他の金属や不純物が含まれていてもよい。このような他の金属や不純物としては、In、Au、Bi、Na、S、Se、Caなどが挙げられる。
[0047]
 負極は、Sn合金で構成されていることが好ましい。Sn合金は、酸素センサにおける電気化学的な酸素の還元反応時において、水素の発生を抑制することができるからである。Sn合金としては、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Sb合金などが挙げられる。
[0048]
 Sn合金の場合、Snや、前記のAg、Cu、Sb以外の金属、例えば、Al、Bi、Fe、Mg、Na、Zn、S、Se、Ca、Ge、In、Ni、Coなどを含有していてもよい。
[0049]
 また、負極の構成するSn合金には、一般的な鉛フリーはんだ材料(Sn-3.0Ag-0.5Cu、Sn-3.5Ag、Sn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-3.8Ag-0.7Cu、Sn-3.9Ag-0.6Cu、Sn-4.0Ag-0.5Cu、Sn-1.0Ag-0.5Cu、Sn-1.0Ag-0.7Cu、Sn-0.3Ag-0.7Cu、Sn-0.75Cu、Sn-0.7Cu-Ni-P-Ge、Sn-0.6Cu-Ni-P-GeSn-1.0Ag-0.7Cu-Bi-In、Sn-0.3Ag-0.7Cu-0.5Bi-Ni、Sn-3.0Ag-3.0Bi-3.0In、Sn-3.9Ag-0.6Cu-3.0Sb、Sn-3.5Ag-0.5Bi-8.0In、Sn-5.0Sb、Sn-10Sb、Sn-0.5Ag-6.0Cu、Sn-5.0Cu-0.15Ni、Sn-0.5Ag-4.0Cu、Sn-2.3Ag-Ni-Co、Sn-2Ag-Cu-Ni、Sn-3Ag-3Bi-0.8Cu-Ni、Sn-3.0Ag-0.5Cu-Ni、Sn-0.3Ag-2.0Cu-Ni、Sn-0.3Ag-0.7Cu-Ni、Sn-58Bi、Sn-57Bi-1.0Agなど)を用いることができる。
[0050]
 Sn合金は、耐食性などの観点からSn-Sb合金であることがより好ましい。
[0051]
 Sn-Sb合金中のSbの含有量は、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、特に限定されない。
[0052]
 また、負極(好ましくはSn合金、より好ましくはSn-Sb合金)は、実質的に鉛を含まないことが好ましい。本明細書でいう「実質的に鉛を含まない」とは、負極中に含まれるPbの含有量が1000ppm未満であることをいう。このような負極を用いることで、EU(欧州連合)での特定有害物質の使用規制に関する指令〔いわゆるRoHS指令(Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment)〕にも対応可能な酸素センサを得ることができる。
[0053]
 酸素センサにおいては、図1に示すように、正極(触媒電極)に到達する酸素が多くなりすぎないように、酸素の侵入を制御するための隔膜を配置することが好ましい。隔膜としては、酸素を選択的に透過させると共に、酸素ガスの透過量を制限できるものが好ましい。隔膜の材質や厚みについては特に制限はないが、通常、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化プロピレンコポリマーなどのフッ素樹脂;ポリエチレンなどのポリオレフィン;などが使用される。隔膜には、多孔膜、無孔膜、更には、キャピラリー式と呼ばれる毛細管が形成された孔を有する膜を使用することができる。
[0054]
 また、酸素センサにおいては、図1に示すように、隔膜を保護するために、隔膜上に多孔性の樹脂膜からなる保護膜を配置することが好ましい。保護膜は、隔膜へのゴミやチリ、水などの付着を防止でき、空気(酸素を含む)を透過する機能を有していれば、その材質や厚みについては特に制限はないが、通常、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂が使用される。
[0055]
 図1に示す酸素センサ1の外装体であるホルダー20は、例えばABS樹脂で構成することができる。また、ホルダー20の開口部に配されるホルダー蓋10(第1ホルダー蓋11および第2ホルダー蓋12)は、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂などで構成することができる。更に、ホルダー20内において、正極50を保持するための正極集電体保持部70は、例えばABS樹脂で構成することができる。
[0056]
 更に、ホルダー20とホルダー蓋10(第1ホルダー蓋11)との間に介在させるO-リング30は、ホルダー20と第2ホルダー蓋12とのネジ締めによって押圧されて変形することで、酸素センサ1の気密性および液密性を保持できるようになっている。O-リングの材質については特に制限はないが、通常、ニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素樹脂などが使用される。
[0057]
 これまで、本発明の酸素センサの一実施形態であるガルバニ電池式酸素センサを例にとって本発明を説明してきたが、本発明の酸素センサは前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、図1に示す酸素センサについても、酸素センサとしての機能および前述した酸素供給経路を備えていれば、各種設計変更が可能である。
[0058]
 また、本発明の酸素センサは、定電位式酸素センサとしての形態を採ることもできる。定電位式酸素センサは、正極と負極との間に一定電圧を印加するセンサであり、印加電圧は各電極の電気化学特性や検知するガス種に応じて設定される。定電位式酸素センサでは正極と負極の間に適当な一定電圧を印加すると、その間に流れる電流と酸素ガス濃度とは比例関係を有するので、電流を電圧に変換すれば、ガルバニ電池式酸素センサと同様に、電圧を測定することによって未知の気体の酸素ガス濃度を検出することができる。
実施例
[0059]
 以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
[0060]
参考例1
<電解液の調製>
 クエン酸およびクエン酸三カリウムを水に溶解させて電解液を調製した。なお、電解液中のモル濃度は、クエン酸:1.0mol/L、クエン酸三カリウム:1.2mol/Lとした。この電解液の初期pH(調製直後のpH。以下の参考例および実施例においても同様である。)は、25℃で4.55であった。
[0061]
<酸素センサの組み立て>
 前記の電解液を用いて、図1に示す構成のガルバニ電池式酸素センサを組み立てた。ホルダー蓋10(第1ホルダー蓋11および第2ホルダー蓋12)、ホルダー20および正極集電体保持部70は、ABS樹脂で形成した。また、保護膜40には多孔性の四フッ化エチレン樹脂製シートを使用し、隔膜60には四フッ化エチレン-六フッ化プロピレンコポリマー膜を使用した。
[0062]
 正極50の触媒電極51は金で構成し、正極集電体52およびリード線120にはチタン製のものを使用して、正極集電体52とリード線120は溶接して一体化した。また、負極100は、Sn-Sb合金(Sb含有量が0.3質量%)によって構成した。
[0063]
 得られた酸素センサ1においては、第1ホルダー蓋11、O-リング30、四フッ化エチレン樹脂製シート製の保護膜40、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレンコポリマー膜製の隔膜60、触媒電極51、および正極集電体52は、ホルダー20と第2ホルダー蓋12とのネジ締めによって押圧され良好な接触状態が保持されていた。第1ホルダー蓋11は押圧端板として機能し、また、O-リング30によって気密性および液密性が確保されていた。
[0064]
参考例2
 クエン酸およびクエン酸三カリウムのモル濃度を、クエン酸:1.2mol/L、クエン酸三カリウム:1.0mol/Lに変更した以外は、参考例1と同様にして、25℃での初期pHが4.23の電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。
[0065]
参考例3
 クエン酸およびクエン酸三カリウムのモル濃度を、クエン酸:1.4mol/L、クエン酸三カリウム:0.8mol/Lに変更した以外は、参考例1と同様にして、25℃での初期pHが3.60の電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。
[0066]
参考例4
 クエン酸およびクエン酸三カリウムのモル濃度を、クエン酸:1.6mol/L、クエン酸三カリウム:0.6mol/Lに変更した以外は、参考例1と同様にして、25℃での初期pHが3.34の電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。
[0067]
参考例5
 クエン酸およびクエン酸三カリウムのモル濃度を、クエン酸:1.72mol/L、クエン酸三カリウム:0.5mol/Lに変更した以外は、参考例1と同様にして、25℃での初期pHが3.07の電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。
[0068]
参考例6
 クエン酸およびクエン酸三カリウムのモル濃度を、クエン酸:2.5mol/L、クエン酸三カリウム:0.5mol/Lに変更した以外は、参考例1と同様にして電解液を調製した。この電解液は、調整した当初は、クエン酸の溶解熱により水溶液の温度が高くなっており、クエン酸が完全に溶解した均一な溶液となっていた。しかし、この電解液を室温まで冷却するとクエン酸が析出したため、参考例6の電解液については、酸素センサの組み立てとその試験を行わなかった。
[0069]
 参考例1~5の各酸素センサについて、温度40℃中、100%酸素ガスを通気して加速的寿命試験を行った。40℃では、室温時の約2倍の電気化学反応が進行する。また、100%酸素ガス通気では、大気中での約5倍の電気化学反応が進行する。このため、温度40℃中で100%酸素ガス通気では、大気中で室温放置時の約10倍のスピードで寿命判断が可能である。本試験では、酸素センサの出力電圧を測定し、出力電圧が測定開始時の値の90%まで低下した時点を寿命とし、寿命に至るまでの時間(測定可能時間)により酸素センサの性能を評価した。
[0070]
 参考例1~6における電解液の構成と、参考例1~5の各酸素センサにおける前記の評価結果とを表1に示す。なお、表1において、各酸素センサの測定可能時間は、参考例1の酸素センサの測定可能時間を100としたときの相対値で示している。また、参考例6の電解液におけるクエン酸のモル濃度は、調製当初の高温の電解液における濃度を示している。
[0071]
[表1]


[0072]
 参考例1~3の酸素センサでは、電解液の初期pHを好適な範囲(3.5~5.75)としたことにより、長期間の動作が可能であった。特に、電解液のpH緩衝能がより発揮されやすい範囲(3.75~4.5)にある参考例2では、より長寿命の酸素センサを構成することができた。
[0073]
 一方、電解液の初期pHが3.5より低い参考例4および参考例5の酸素センサでは、負極のSnの腐食の影響によると推測される寿命の低下が認められた。
[0074]
 また、クエン酸三カリウムの濃度を0.5mol/Lとした場合には、室温では、クエン酸の濃度は、せいぜい1.8mol/L程度(参考例5)とするのが限界であった。
[0075]
実施例1
 クエン酸、クエン酸三カリウムおよびアンモニアを水に溶解させて電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。なお、電解液中のモル濃度は、クエン酸:2.5mol/L、クエン酸三カリウム:0.5mol/L、アンモニア:3.0mol/Lとした。この電解液の25℃での初期pHは、4.30であった。
[0076]
実施例2
 クエン酸、酢酸カリウムおよびアンモニアを水に溶解させて電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。なお、電解液中のモル濃度は、クエン酸:2.5mol/L、酢酸カリウム:1.0mol/L、アンモニア:3.0mol/Lとした。この電解液の25℃での初期pHは、4.32であった。
[0077]
実施例3
 クエン酸およびアンモニアのモル濃度を、クエン酸:2.6mol/L、アンモニア:3.3mol/Lに変更した以外は、実施例2と同様にして、25℃での初期pHが4.36の電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。
[0078]
実施例4
 酢酸カリウムおよびアンモニアのモル濃度を、酢酸カリウム:1.5mol/L、アンモニア:2.5mol/Lに変更した以外は、実施例2と同様にして、25℃℃での初期pHが4.39の電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。
[0079]
実施例5
 酢酸カリウムおよびアンモニアのモル濃度を、酢酸カリウム:1.5mol/L、アンモニア:2.8mol/Lに変更した以外は、実施例3と同様にして、25℃℃での初期pHが4.43の電解液を調製し、この電解液を用いた以外は参考例1と同様にして酸素センサを組み立てた。
[0080]
比較例1
 クエン酸三カリウムを0.5mol/Lの濃度で含有し、更にアンモニアを含有する電解液を用いた実施例1の酸素センサとの比較のため、参考例5の酸素センサを比較例として用いた。
[0081]
 実施例および比較例の各酸素センサについて、参考例と同じ条件で加速的寿命試験を行い、酸素センサの性能を評価した。
[0082]
 各酸素センサにおける電解液の構成と、前記の評価結果とを表2に示す。なお、表2において、各酸素センサの測定可能時間は、比較例1の酸素センサの測定可能時間を100としたときの相対値で示している。
[0083]
[表2]


[0084]
 実施例1の酸素センサに用いた電解液では、アンモニアを含有させたことにより、比較例1の酸素センサに用いた電解液よりもクエン酸の濃度を高めることが可能となり、クエン酸の濃度が2.5mol/Lであっても、室温で、安定した溶解状態が保たれていた。
[0085]
 実施例2~5の酸素センサに用いた電解液でも同様に、アンモニアの含有により、室温で、クエン酸の濃度を2.5~2.6mol/Lまで高めることができた。
[0086]
 更に、実施例1~5では、電解液の初期pHを好適な範囲に調整することができたことから、前記クエン酸の高濃度化と併せた作用により、比較例1の酸素センサに比べ、測定可能時間を大幅に伸長させることができ、より長寿命の酸素センサを得ることができた。
[0087]
 本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、前記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、本発明は、これらの実施形態には限定されない。本発明の範囲は、前記の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれる。

産業上の利用可能性

[0088]
 本発明の電気化学式酸素センサは、従来から知られている電気化学式酸素センサと同じ用途に適用することができる。

符号の説明

[0089]
  1  電気化学式酸素センサ
 10  ホルダー蓋
 11  第1ホルダー蓋(中蓋)
 12  第2ホルダー蓋(外蓋)
 20  ホルダー
 30  O-リング
 40  保護膜
 50  正極
 51  触媒電極
 52  正極集電体
 60  隔膜
 70  正極集電体保持部
 80  電解液供給用の穿孔
 90  リード線用の穿孔
100  負極
110  電解液
120  リード線
130  補正抵抗
140  温度補償用サーミスタ
150  貫通孔

請求の範囲

[請求項1]
 正極、負極および電解液を有する電気化学式酸素センサであって、
 前記電解液は、キレート剤とアンモニアとを含有し、
 前記電解液中での前記アンモニアの濃度が、0.01mol/L以上であることを特徴とする電気化学式酸素センサ。
[請求項2]
 前記電解液中での、前記キレート剤の濃度が、2.3mol/L以上である請求項1に記載の電気化学式酸素センサ。
[請求項3]
 前記電解液は、前記キレート剤のアルカリ金属塩を含有している請求項1または2に記載の電気化学式酸素センサ。
[請求項4]
 前記電解液は、前記キレート剤としてクエン酸を含有している請求項1~3のいずれかに記載の電気化学式酸素センサ。
[請求項5]
 前記電解液のpHが、3.5~5.75である請求項4に記載の電気化学式酸素センサ。
[請求項6]
 前記負極は、Sn合金を含有している請求項1~5のいずれかに記載の電気化学式酸素センサ。

図面

[ 図 1]