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1. WO2020013215 - 単離ナノシート及びその製造方法

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明 細 書

発明の名称 単離ナノシート及びその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021  

発明の効果

0022  

図面の簡単な説明

0023  

発明を実施するための形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068  

実施例

0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21  

明 細 書

発明の名称 : 単離ナノシート及びその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを有して構成される単離ナノシートに関する。特に、本発明は、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを構成する直鎖状分子の一部が、水又は水溶液中で電離する電離基を有する第1の直鎖状分子を有する擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを有して構成される単離ナノシートに関する。
 また、本発明は、該単離ナノシートを備える材料に関する。
 さらに、本発明は、該単離ナノシートの製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 厚みが100nm以下であるナノシートは、近年、薬剤、触媒、光学材料、電極、生体材料などへの応用開発が進んでいる。材料としては酸化チタン、窒化ボロン、窒化炭素、グラフェンなどが従来用いられてきた(例えば、非特許文献1~5を参照のこと)が、これら無機材料は不純物が混入しやすい一方、精製が困難であるため、生体安全性や適合性に問題があり、薬剤や生体材料への応用は困難であった。
[0003]
 生体適合性を有する有機分子を用いてナノシートを合成する方法もいくつか提案されている。
 例えば、ポリ乳酸(PLA)やポリジメチルシロキサン(PDMS)などを用いて形成される高分子ナノシートを挙げることができる。
 これらは、高分子溶液を準備し、該溶液を基板上にスピンコートし、得られたシートを基板から剥離させ、さらに得られた剥離シートを粉砕することにより得られている(例えば非特許文献6を参照のこと)。 
 上記の有機分子を用いるナノシートは、薬剤や生体材料への応用が期待できるが、合成プロセスやフィルム成形プロセスが煩雑であり、莫大なコストがかかることが問題となっている。
[0004]
 ナノシートは、ナノ状態として安定に存在することが困難であり、シート同士が付着するか又は凝集するという問題や、それを防ぐための表面の改質・修飾が困難という問題もあり、これらの問題の解決も望まれている。

先行技術文献

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : Zhang, S.; Sunami et al., Nanomaterials-Basel 2017, 7 (9).
非特許文献2 : Tan, C. L. et al., Chem Rev 2017, 117 (9), 6225-6331.
非特許文献3 : Li, X. et al., Small 2017, 13 (5).
非特許文献4 : Kong, X. K. et al., Chem Soc Rev 2017, 46 (8), 2127-2157.
非特許文献5 : Yang, G. H. et al., Nanoscale 2015, 7 (34), 14217-14231.
非特許文献6 : Okamura, Y. et al., Adv Mater 2013, 25 (4), 545-551.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 そこで、本発明の目的は、生体安全性や適合性に優れ、薬剤や生体材料への応用も可能であり、合成プロセスやフィルム成形プロセスが比較的簡便であり、コストが低減されたナノシートを提供することにある。
 また、本発明の目的は、上記目的に加えて、シート同士が付着又は凝集しない単離ナノシートを提供することにある。
 さらに、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、上記ナノシート、特に単離ナノシートを有する材料を提供することにある。
 また、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、上記ナノシート、特に単離ナノシートの製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明者らは、次の発明を見出した。
 <1> 第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを複数有して成る単離ナノシートであって、
 前記直鎖状分子は、その一部が、水又は水溶液中で電離する電離基を有する第1の直鎖状分子を有する、上記単離ナノシート。
 <2> 上記<1>において、電離基は、第1の直鎖状分子の少なくとも一方の末端又はその近傍、好ましくは少なくとも一方の末端に有するのがよい。
 <3> 上記<2>において、電離基は、第1の直鎖状分子の両末端又はその近傍、好ましくは両末端に有するのがよい。
[0008]
 <4> 上記<1>~<3>のいずれかにおいて、第1の直鎖状分子は、少なくとも2つの部位を備えるのがよい。
 <5> 上記<4>において、第1の環状分子が少なくとも2つの部位のうちの1つの部位に包接されてなるのがよい。
[0009]
 <6> 上記<1>~<5>のいずれかにおいて、電離基が、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基、リン酸基、塩化トリメチルアミノ基、塩化トリエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ピロリジン基、ピロール基、エチレンイミン基、ピペリジン基、ピリジン基、ピリリウムイオン基、チオピリリウムイオン基、ヘキサメチレンイミン基、アザトロピリレン基、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾリン基、モルホリン基、チアジン基、トリアゾール基、テトラゾール基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、インドール基、ベンゾイミダゾール基、プリン基、ベンゾトリアゾール基、キノリン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プテリジン基、カルバゾール基、ポルフィリン基、クロリン基、コリン基、アデニン基、グアニン基、シトシン基、チミン基、ウラシル基、解離したチオール基、解離した水酸基、アジ基、ピリジン基、カルバミン酸類、グアニジン類、スルフェン酸類、尿素類、チオ尿素類、過酸類、およびこれらの類似体、誘導体からなる群から選ばれる、少なくとも1種であるのがよい。
 なお、第1の直鎖状分子が電離基を2以上備える場合、例えば一方の末端又はその近傍及び他方の末端又はその近傍に電離基を備える場合、一方の電離基は、他方の電離基と同じであっても異なってもよい。
 電離基は、好ましくはカルボキシル基、アミノ基、スルホ基、リン酸基、塩化トリメチルアミノ基、及びジメチルアミノ基からなる群から選ばれるのがよく、より好ましくはカルボキシル基、アミノ基、塩化トリメチルアミノ基、及びジメチルアミノ基からなる群から選ばれるのがよい。
[0010]
 <7> 上記<4>~<6>のいずれかにおいて、少なくとも2つの部位のうちの1つの部位は、その鎖長が前記第1の環状分子の中心軸方向の厚さの2倍以上、好ましくは7倍、より好ましくは14倍であるのがよい。
 <8> 上記<1>~<7>のいずれかにおいて、第1の直鎖状分子が、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子を有するのがよい。
 <9> 上記<1>~<8>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子から本質的になるのがよい。
[0011]
 <10> 上記<8>又は<9>において、第2の直鎖状分子は、少なくとも3つのブロックを備えるブロックコポリマーであるのがよい。
 <11> 上記<10>において、少なくとも3つのブロックが、ポリエチレングリコール(PEG)からなる部位、及びポリプロピレングリコール(PPG)からなる部位から形成されるのがよい。
[0012]
 <12> 上記<1>~<11>のいずれかにおいて、単離ナノシートは、直鎖状分子による包接を受けない第2の環状分子をさらに有するのがよい。
 <13> 上記<12>において、第2の環状分子は、その開口部に第1の物質を包接してなるのがよい。第1の物質として、ヒドロコルチゾン、フェニトイン、ナプロキセン、アデニンアラビノシド、アデノシン、イブプロフェン、ヒドロクロロチアジド、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、アダマンタン、アゾベンゼン、アントラセン、ピレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、ローダミン、ナイルレッドなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0013]
 <14> 上記<1>~<13>のいずれかにおいて、単離ナノシートは、第2の物質をさらに有するのがよい。第2の物質として、ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ポリピリジン、ポリフェニレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリシラン、ポリシロキサン類など環状分子と包接錯体を形成しない高分子;DNA、タンパク質、ポリペプチドなどの生体高分子および生体分子;シリカナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、シリコンナノ粒子などの無機ナノ材料;フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボン量子ドットなどのカーボン材料;金ナノ粒子、ペロブスカイト量子ドット、CdSeS/ZnS量子ドット、酸化鉄ナノ粒子などの金属ナノ材料;などを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0014]
 <15> 上記<1>~<14>のいずれかにおいて、第1及び第2の環状分子が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、クラウンエーテル、ピラーアレン、カリックスアレン、シクロファン、ククルビットウリル、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。なお、誘導体として、メチル化α-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、メチル化γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化α-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化γ-シクロデキストリンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0015]
 <16> 上記<1>~<15>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、PEGからなる部位-PPGからなる部位-PEGからなる部位:で表される構成を有するコポリマーであり、第1の環状分子がβ-シクロデキストリンであるのがよい。
 <17> 上記<1>~<16>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、PEGからなる部位-PPGからなる部位-PEGからなる部位:で表される構成のみからなるトリブロックコポリマーであり、第1の環状分子がβ-シクロデキストリンであるのがよい。
[0016]
 <18> 上記<1>~<17>のいずれかにおいて、単離ナノシートの厚さが0.5~100nm、好ましくは3~50nm、より好ましくは5~20nmであるのがよい。
 <19> 上記<1>~<18>のいずれかに記載の単離ナノシートを有する材料。
[0017]
 <20> 第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンを複数有して成る単離ナノシートの製造方法であって、
 a)直鎖状分子を準備する工程;
 b)水又は水溶液中で電離する電離基を、前記直鎖状分子に導入し、第1の直鎖状分子とする工程;
 c)第1の環状分子を準備する工程;及び
 d)前記第1の直鎖状分子と前記第1の環状分子とを水又は水溶液中で混合させる工程;
を有することにより、前記単離ナノシートを得る、上記方法。
[0018]
 <21> 上記<20>において、d)工程後に、e)得られた単離ナノシートの一部の擬ポリロタキサンを修飾する工程;をさらに有するのがよい。
 <22> 上記<21>において、前記修飾工程が、第1の直鎖状分子の末端に第1の置換基を導入する工程であるのがよい。なお、第1の置換基は、第1の環状分子が脱離しないように封鎖する作用を有する封鎖基であっても、電離基の作用を有する基であっても、その他の作用を有してもよい。
 <23> 上記<22>又は<23>において、前記修飾工程が、第1の環状分子に第2の置換基を導入する工程であるのがよい。
[0019]
 <24> 第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを複数有して成る単離ナノシートの製造方法であって、
 a)直鎖状分子を準備する工程;
 c)第1の環状分子を準備する工程;
 d’)前記直鎖状分子と前記第1の環状分子とを水又は水溶液中で混合させて、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを得る工程;
 b’)前記d’)工程で得られた擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの直鎖状分子に、水又は水溶液中で電離する電離基を導入し、第1の直鎖状分子とする工程;及び
 f)得られた擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを水又は水溶液中で混合させる工程;
有することにより、前記単離ナノシートを得る、上記方法。
[0020]
 <25> 上記<24>において、f)工程後に、e)得られた単離ナノシートの一部の擬ポリロタキサンを修飾する工程;をさらに有するのがよい。
 <26> 上記<25>において、前記修飾工程が、第1の直鎖状分子の末端に第1の置換基を導入する工程であるのがよい。なお、第1の置換基は、第1の環状分子が脱離しないように封鎖する作用を有する封鎖基であっても、電離基の作用を有する基であっても、その他の作用を有してもよい。
 <27> 上記<25>又は<26>において、前記修飾工程が、第1の環状分子に第2の置換基を導入する工程であるのがよい。
[0021]
 <28> 上記<1>~<18>のいずれかに記載の単離ナノシートを有する医薬用担体及び/又は医薬用ビヒクル。
 <29> 上記<1>~<18>のいずれかに記載の単離ナノシートを有する医薬用崩壊剤及び/又は医薬用結合剤。
 <30> 上記<28>又は<29>において、前記単離シートが標的箇所と接着するのがよい。
 <31> 医薬上許容可能な有効成分;及び上記<1>~<18>のいずれかに記載の単離ナノシート;を有する医薬。
 <32> 医薬上許容可能な有効成分;及び上記<1>~<18>のいずれかに記載の単離ナノシートを有する医薬用担体及び/又は医薬用ビヒクル;を有する医薬。
 <33> 医薬上許容可能な有効成分;及び上記<1>~<18>のいずれかに記載の単離ナノシートを有する医薬用崩壊剤及び/又は医薬用結合剤;を有する医薬。

発明の効果

[0022]
 本発明により、生体安全性や適合性に優れ、薬剤や生体材料への応用も可能であり、合成プロセスやフィルム成形プロセスが比較的簡便であり、コストが低減されたナノシートを提供することができる。
 また、本発明により、上記効果に加えて、シート同士が付着又は凝集しない単離ナノシートを提供することができる。
 さらに、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、上記ナノシート、特に単離ナノシートを有する材料を提供することができる。
 また、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、上記ナノシート、特に単離ナノシートの製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0023]
[図1] 第1の環状分子を模式的に示す図であり、Dで示す距離が、「第1の環状分子の中心軸方向の厚さ」であることを示す図である。
[図2] (X)トリブロックコポリマー11と環状分子21とから、(Y)擬ポリロタキサン31が形成され、(Z)該擬ポリロタキサン31が複数凝集することにより本発明の単離ナノシート41が形成されることを説明する模式図である。
[図3] 実施例1で得られた単離ナノシートX1の原子間力顕微鏡像を示す図である。
[図4] 実施例1で得られた単離ナノシートX1の走査型電子顕微鏡像を示す図である(白線が1μmを示す)。
[図5] 比較例1の凝集ナノシートCX1の小角X線散乱測定結果を示す図である。
[図6] 比較例1の凝集ナノシートCX1の走査型電子顕微鏡像を示す図である(白線が1μmを示す)。
[図7] 実施例1及び実施例6の単離ナノシートX1の小角X線散乱測定結果を示す図であり、(A)は単離ナノシートX1調製直後の測定結果、(B)はpH11に調整後の測定結果、及び(C)はpH7に調整後の測定結果を示す。
[図8] 実施例10の単離ナノシートX10の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図9] (a)及び(b)は、実施例10の単離ナノシートX10を構成する各成分のNMRのピーク強度の変化を示すグラフである。
[図10] 実施例11の単離ナノシートX11の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図11] 実施例12の単離ナノシートX12の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図12] 実施例12の単離ナノシートX12を構成する各成分のNMRのピーク強度の変化を示すグラフである。
[図13] 実施例13の単離ナノシートX13の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図14] 実施例14の単離ナノシートX14の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図15] 実施例15の単離ナノシートX15の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図16] 実施例16の単離ナノシートX16の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図17] 実施例17の単離ナノシートX17の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図18] 実施例18の単離ナノシートX18の蛍光顕微鏡を示す図である。
[図19] 実施例18の単離ナノシートX18の洗浄前後((a)洗浄前;(b)洗浄後)の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図20] 単離ナノシートX21の24時間培養後の蛍光顕微鏡を示す図である。
[図21] 実施例23で得られた、細胞表面に付着する単離ナノシートX22の共焦点レーザー蛍光顕微鏡像を示す図である。

発明を実施するための形態

[0024]
 以下、本願に記載する発明を詳細に説明する。
 本願は、単離ナノシートを提供する。
 本発明の単離ナノシートは、第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを複数有して成る。
 本願において、「単離ナノシート」の「単離」とは、溶液中で集合せずに単独に存在することが可能であることを意味する。
[0025]
 また、本願において、「単離ナノシート」の「ナノ」とは、厚みが100nm以下、具体的には0.5~100nm、好ましくは3~50nm、より好ましくは5~20nmであることをいう。
 本願の単離ナノシートにおいて、その厚さ方向は、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの長手方向、換言すると、直鎖状分子の長手方向であるのがよい。擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの長手方向、直鎖状分子の長手方向が、本願の単離ナノシートの厚さ方向であるのがよい。
[0026]
 また、本願において、「擬ポリロタキサン」とは、「ポリロタキサン」と比較して規定すると、「ポリロタキサン」が直鎖状分子の両末端に、包接される環状分子が包接状態から脱離しないような作用(封鎖作用)を有する基(封鎖基)を有する一方、「擬ポリロタキサン」はそのような「封鎖作用を有する基(封鎖基)」を有していない点で異なる、と規定される。要するに、本明細書において、「擬ポリロタキサン」とは、直鎖状分子の一方の末端だけに上記封鎖作用を有する基(封鎖基)を有するか、又は直鎖状分子の両末端に上記封鎖作用を有する基(封鎖基)を有さないものを意味する。
[0027]
 本願の単離ナノシートを形成する擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの直鎖状分子は、その一部が、水又は水溶液中で電離する電離基を有する第1の直鎖状分子を有する。
 電離基は、本明細書において後述するが、電離基の存在により、単離ナノシートが形成される。したがって、電離基は、単離ナノシートの形成に寄与する限り、直鎖状分子のどの位置であっても「有する」のがよい。
 好ましくは、電離基は、第1の直鎖状分子の少なくとも一方の末端又はその近傍、より好ましくは少なくとも一方の末端に有するのがよく、さらに好ましくは、第1の直鎖状分子の両末端又はその近傍、最も好ましくは両末端に有するのがよい。
 2以上の電離基を有する場合、例えば両末端又はその近傍に電離基を有する場合、該電離基は、各々、同じであっても異なってもよい。後述するが、電離基は、該基の嵩高さなどにより、封鎖作用を有する基(封鎖基)を有する場合であってもよい。
[0028]
 なお、第1の直鎖状分子を有して形成される擬ポリロタキサン又はポリロタキサンとして、大きく分けて次の三態様(ただし、説明の簡潔さのため、電離基が存在する場合、「末端又はその近傍」に「有する」ことを前提として説明する)がある:
 i)直鎖状分子の一方の末端には電離基も封鎖基も存在しない一方、他の末端又はその近傍に電離基を有する態様(なお、電離基は、後述するが、その嵩高さなどにより、封鎖作用を有する基(封鎖基)として作用する場合がある);
 ii)直鎖状分子の一方の末端又はその近傍に封鎖基が存在する(該封鎖基には電離基としての作用を有さない)一方、他の末端又はその近傍に電離基を有する態様(なお、電離基は、その嵩高さなどにより、封鎖作用を有する基(封鎖基)として作用する場合がある);及び
 iii)直鎖状分子の両方の末端又はその近傍に電離基を有する態様(なお、電離基は、その嵩高さなどにより、封鎖作用を有する基(封鎖基)として作用する場合がある)。
[0029]
 「ポリロタキサン」及び「擬ポリロタキサン」は、上述したように、定義されるので、上記態様i)~iii)のうち、直鎖状分子の両末端又はその近傍に封鎖作用を有する基(封鎖基)を有する場合が「ポリロタキサン」を用いることとなり、直鎖状分子の両末端又はその近傍に封鎖作用を有する基(封鎖基)を有しない場合(例えば、上記i)の場合、又は上記ii)において電離基が封鎖作用を有する基(封鎖基)ではない場合など)が「擬ポリロタキサン」を用いることとなる。
 本発明の単離ナノシートが、「擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサン」を「複数有して成る」とは、「擬ポリロタキサン」のみを「複数有して成る」場合、「ポリロタキサン」のみを「複数有して成る」場合、少なくとも1つの「擬ポリロタキサン」と少なくとも1つの「ポリロタキサン」を有してなり、「擬ポリロタキサン」と「ポリロタキサン」との合計が「複数」「有して成る」場合を意味する。
[0030]
 本願の単離ナノシートは、単離ナノシートを形成できる限り、後述の第2の物質を含めて、上記の「擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサン」以外の成分、即ち「直鎖状分子の一部が、水又は水溶液中で電離する電離基を有する第1の直鎖状分子を有する擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサン」、換言すると、「特定の擬ポリロタキサン及び/又は特定のポリロタキサン」以外の成分を有してもよい。このような「特定の擬ポリロタキサン及び/又は特定のポリロタキサン」以外の成分として、例えば「特定」ではない擬ポリロタキサン、「特定」ではないポリロタキサンを挙げることができるがこれらに限定されない。
 要するに、本願の単離ナノシートは、単離ナノシートを形成できる限り、第1の直鎖状分子以外の直鎖状分子、第1の直鎖状分子以外の直鎖状分子を構成要素とする擬ポリロタキサン、及び/又は第1の直鎖状分子以外の直鎖状分子を構成要素とするポリロタキサンを有してもよい。
[0031]
 電離基は、上述したように、第1の直鎖状分子に「有する」のがよく、例えば、後述の「少なくとも2つの部位」と直接結合されていてもスペーサを介して間接的に結合されていてもよい。
 本願の単離ナノシートは、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの直鎖状分子が電離基を有するため、単離ナノシート同士が付着又は凝集することなく、「単離」することができる。
[0032]
 第1の直鎖状分子は、少なくとも2つの部位を備えるのがよい。
 本願において、直鎖状分子及び第1の環状分子は、第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接する形態を採ることができる分子であれば、特に限定されない。
 少なくとも2つの部位を備える第1の直鎖状分子は、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子を有するのがよい。特に、直鎖状分子が、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子から本質的になるのが好ましく、より好ましくは、直鎖状分子は、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子のみからなるのがよい。
[0033]
 少なくとも2つの部位を有する第2の直鎖状分子は、少なくとも2つのブロックを備えるブロックコポリマーであるのがよい。
 また、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子は、少なくとも3つのブロックを備えるブロックコポリマーであるのがよい。
 なお、「ブロックコポリマー」の各ブロックは、1つの繰り返し単位のみからなるのが好ましいが、ある繰り返し単位と次の繰り返し単位との間に第1のスペーサ基を有してもよい。
 また、「ブロックコポリマー」の隣接するブロック間に、第1のスペーサ基と同じであっても異なってもよい第2のスペーサ基を有してもよい。
[0034]
 第1及び/又は第2のスペーサ基として、例えば、炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基(一部、フェニル基などの芳香族環で置換されてもよい); 炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のエーテル類; 炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖のエステル類;炭素数6~24の芳香族基、例えばフェニル基などを挙げることができるが、これらに限定されない。
[0035]
 第1の環状分子は、第1の直鎖状分子に包接されるのがよく、好ましくは少なくとも2つの部位を備える第1の直鎖状分子の、該少なくとも2つの部位のうちの1つの部位に包接されてなるのがよい。なお、少なくとも2つの部位を備える第1の直鎖状分子が、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子を有するか、該第2の直鎖状分子から本質的になるか、又は該第2の直鎖状分子のみからなる場合、第1の環状分子は、第2の直鎖状分子の、該少なくとも3つの部位のうちの1つの部位に包接されてなるのがよい。なお、直鎖状分子、及び/又は、第1及び/又は第2の直鎖状分子がブロックコポリマーである場合、第1の環状分子は、ある「ブロック」に包接されてなるのがよい。
[0036]
 第1の環状分子が直鎖状分子に包接される部位、即ち、第1の直鎖状分子の少なくとも2つの部位のうちの1つの部位、第2の直鎖状分子の少なくとも3つの部位のうちの1つの部位、ブロックコポリマーのある「ブロック」は、その鎖長が、第1の環状分子の厚さよりも長いのがよい。ここで、第1の環状分子の厚さとは、より正確には、第1の環状分子の中心軸方向の厚さである。ここで、「第1の環状分子の中心軸方向の厚さ」について、図を用いて説明する。図1は、第1の環状分子を模式的に示す図である。図1において、Dで示す距離が、「第1の環状分子の中心軸方向の厚さ」である。
 第1の環状分子が直鎖状分子に包接される部位、即ち、第1の直鎖状分子の少なくとも2つの部位のうちの1つの部位、第2の直鎖状分子の少なくとも3つの部位のうちの1つの部位、及び/又は、ブロックコポリマーのある「ブロック」は、その鎖長が、第1の環状分子の中心軸方向の厚さの2倍以上、好ましくは5倍、より好ましくは14倍であるのがよい。
[0037]
 本願において、直鎖状分子は、上述したとおり、第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接する形態を採ることができる、直鎖状の分子であれば、特に限定されない。
[0038]
 直鎖状分子として、好ましくは第1の直鎖状分子の少なくとも2つ又は少なくとも3つの部位を形成する骨格として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリンおよびその誘導体、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよい。例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれるのがよい。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールであるのがよい。
[0039]
 直鎖状分子は、好ましくは少なくとも2つ又は少なくとも3つの部位を有するが、直鎖状分子自体の重量平均分子量が500~500,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは6,000~16,000であるのがよい。なお、直鎖状分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)で測定することができる。GPCの測定条件は、直鎖状分子の種類にも依るが、溶離液やカラムの種類、温度、標準物質、流速を適切に選択するのがよい。
[0040]
 また、直鎖状分子は、水溶性直鎖状分子であるのが好ましい。水溶性直鎖状分子は、水溶性、例えば水1Lに1g溶解することが可能という特性を有するのであれば、特に限定されない。
 水溶性直鎖状分子の少なくとも2つ又は少なくとも3つの部位を形成する骨格として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリペプチド、及びポリエチレングリコールを含む共重合体を挙げることができるが、これに限定されない。
[0041]
 即ち、水溶性直鎖状分子は、上記に挙げたポリマー種からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、及びポリエチレングリコールを含む共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
 水溶性直鎖状分子の分子量(数平均分子量又は重量平均分子量)は、特に限定されないが、500~500,000、好ましくは1,000~50,000、より好ましくは2,000~20,000であるのがよい。
[0042]
 上述したように、本発明の直鎖状分子、第1の直鎖状分子、及び/又は第2の直鎖状分子は、その一部が、水又は水溶液中で電離する電離基を有する。好ましくは、電離基は、第1の直鎖状分子の少なくとも一方の末端又はその近傍、より好ましくは少なくとも一方の末端に有するのがよく、さらに好ましくは、第1の直鎖状分子の両末端又はその近傍、最も好ましくは両末端に有するのがよい。
 2以上の電離基を有する場合、例えば両末端又はその近傍に電離基を有する場合、該電離基は、各々、同じであっても異なってもよい。
[0043]
 電離基として、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基、リン酸基、塩化トリメチルアミノ基、塩化トリエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ピロリジン基、ピロール基、エチレンイミン基、ピペリジン基、ピリジン基、ピリリウムイオン基、チオピリリウムイオン基、ヘキサメチレンイミン基、アザトロピリレン基、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾリン基、モルホリン基、チアジン基、トリアゾール基、テトラゾール基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、インドール基、ベンゾイミダゾール基、プリン基、ベンゾトリアゾール基、キノリン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プテリジン基、カルバゾール基、ポルフィリン基、クロリン基、コリン基、アデニン基、グアニン基、シトシン基、チミン基、ウラシル基、解離したチオール基、解離した水酸基、アジ基、ピリジン基、カルバミン酸類、グアニジン類、スルフェン酸類、尿素類、チオ尿素類、過酸類、およびこれらの類似体、誘導体からなる群から選ばれる、少なくとも1種であるのがよい。なお、両末端に電離基を備える場合、一方の電離基は、他方の電離基と同じであっても異なってもよい。なお、上記の電離基は、上述したように、スペーサを介して、第1の直鎖状分子に「有する」ように配置されてもよい。
 電離基は、好ましくはカルボキシル基、アミノ基、スルホ基、リン酸基、塩化トリメチルアミノ基、及びジメチルアミノ基からなる群から選ばれるのがよく、より好ましくはカルボキシル基、アミノ基、塩化トリメチルアミノ基、及びジメチルアミノ基からなる群から選ばれるのがよい。
[0044]
 本願において、第1の環状分子は、第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接する形態を採ることができる分子であり、上述したように、第1の直鎖状分子に包接する形態、好ましくは第1の直鎖状分子の少なくとも2つの部位のうちの1つの部位、第2の直鎖状分子の少なくとも3つの部位のうちの1つの部位、ブロックコポリマーのある「ブロック」に包接する形態、を採ることができる分子であれば、特に限定されない。
 第1の環状分子として、例えば、α-シクロデキストリン(以降、本明細書において、「シクロデキストリン」を単に「CD」と表す場合がある)、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、クラウンエーテル、ピラーアレン、カリックスアレン、シクロファン、ククルビットウリル、およびこれらの誘導体などを挙げることができるがこれらに限定されない。なお、誘導体として、メチル化α-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、メチル化γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化α-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化γ-シクロデキストリンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0045]
<<包接率>>
 本願において、包接率とは、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンに含まれる環状分子の割合をいう。
 また、規定包接率とは、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンに用いた直鎖状分子及び第1の環状分子から算術的に規定される包接率をいい、具体的には上述の直鎖状分子の長さと上述の第1の環状分子の厚みから規定される。
[0046]
 具体的に規定包接率を説明する。
 水溶性直鎖状分子として、ポリエチレングリコールを用い、環状分子としてα-CDを用いる場合を考慮する。
 ポリエチレングリコールの繰り返し単位2つ分がα-CDの厚さと同じであることが分子モデル計算から知られている。したがって、α-CDのモルと繰り返し単位の数との比が1:2のときを規定包接率100%とする。
[0047]
 得られる擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンに含まれる環状分子の割合、即ち包接率は、得られたナノシート分散液の小角X線散乱(SAXS)測定により求めることができる。
 具体的には、得られる擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの分散液のSAXSの一次元プロファイルを、シート状構造を仮定した式を用いたフィッティングにより求めたシートの厚さ、および鎖状分子のトランス伸び切り鎖長の比により求めることができる。
[0048]
 このようにすることにより、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの包接率を求めることができる。
 本願において、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの包接率は、規定包接率を100%とするとき、1~100%、好ましくは5~100%、より好ましくは10~100%、最も好ましくは20~100%であるのがよい。
[0049]
 本願において、直鎖状分子が、PEGからなる部位-PPGからなる部位-PEGからなる部位:で表される構成を有するコポリマーであり、第1の環状分子がβ-シクロデキストリン又はγ-シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリンであるのがよい。
 また、本願において、直鎖状分子が、PEGからなる部位-PPGからなる部位-PEGからなる部位:で表される構成のみからなるトリブロックコポリマーであり、末端電離基がカルボン酸基又はアミノ基、第1の環状分子がβ-シクロデキストリン又はγ-シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリンであるのがよい。
 さらに、本願において、直鎖状分子が、PEGからなる部位:で表される構成のみからなるポリマーであり、末端電離基がカルボン酸基又はアミノ基、第1の環状分子がα-シクロデキストリンであるのがよい。
[0050]
 本発明の単離ナノシートは、単離ナノシートとしての構成を維持できる限りにおいて、上述の擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサン以外の成分を有してもよい。
 そのような成分として、第1の環状分子と同じであっても異なってもよい第2の環状分子、第2の環状分子の開口部に包接することができる第1の物質、第1の物質とは同じであっても異なってもよい第2の物質、本発明の「特定」の擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサン以外の擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0051]
 第2の環状分子として、例えば第1の環状分子として挙げたものを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0052]
 第1の物質及び第2の物質として、本発明の単離ナノシートの適用分野、応用分野に依存するが、例えば、第1の物質として、ヒドロコルチゾン、フェニトイン、ナプロキセン、アデニンアラビノシド、アデノシン、イブプロフェン、ヒドロクロロチアジド、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、アダマンタン、アゾベンゼン、アントラセン、ピレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、ローダミン、ナイルレッド、エテンザミド、酢酸プレドニゾロン、レバミピド、サルブタモール又はサルブタモール硫酸塩、フルルビプロフェン、ベクロメタゾン、ピロキシカム、ケトプロフェン、チモプトール、ドルゾラミド、ドルゾラミド塩酸塩、イソプロピルウノプロストン、ジフェニルヒドラミン、ジフェニルヒドラミン塩酸塩、ヒドロキシジン、ヒドロキシジン塩酸塩、セチリジン、セチリジン塩酸塩、クロロフェニラミンマレイン酸塩、エピナスチン塩酸塩、エピナスチン、レボカバスチン塩酸塩、レボカバスチン、レボフロキサシン、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、チモロールマレイン酸塩、bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子:basic fibroblast growth factor)、カルボプラチン、シスプラチン、テガフール、ドセタキシル、ネダプラチン、パクリタキセル、ピラルビシン、フルオロウラシル、ブレオマイシン、マイトマイシン、サリチル酸、フルビプロフェン、デキサメタゾン、アンフォテリシン、ピロキシカム、パンクラチスタチン、フェニトイン、アデニンアラビノシド、アデノシン、ジアゼパム、ハイドロクロロチアジド、ダウノルビシン、アステミゾール、ベクロメタゾン、ベクロメタゾン二塩酸塩、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ベンダザック、ブロマゼパム、セレコキシブ、クロロジアゼポキシド、クロバゼム、クロナゼパム、コエンザイムQ10、コルチゾン、クルクミン、シプロテロンアセテート、フルオシノロンアセテート、フルラゼパム、フルタミド、インドメタシン、ケトチフェン、ロラタジン、ロラゼパム、メダゼパム、メロキシパム、ナタマイシン、ニメスリド、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ナイスタチン、プレドニゾロン、プロゲストロン、リスペリドン、サルブタモール、シルデナフィル、テルミサルタン、テストステロン、トリアムシノロン、フェルビナク、副腎エキス・ヘパリン類似物質、ロキソプロフェンナトリウム水和物、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、プレドニゾロン酢酸エステル、フルオシノロン、ロテプレデノール、ジフルプレドナート、トリアムシノロン、リメキソロン、デキサメタゾン、フルオロメトロン、メタスルホ安息香酸エステルナトリウム、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、セフメノキシム塩酸塩、オフロキサシン、クロラムフェニコールを挙げることができるがこれらに限定されない。なお、本明細書において、「第1の物質」と「第2の物質」とは、「第1の物質」が第2の環状分子に少なくとも分子の一部が包接される物質をいい、「第2の物質」とは、「第1の物質」とは異なり、第2の環状分子とは包接状態とはなっていない物質をいうものとする。同じ物質であっても、第2の環状分子に包接された状態及び包接されず単離ナノシート中に存在する場合があり、その場合には、該物質は、「第1の物質」及び「第2の物質」として単離ナノシートに存在する。
[0053]
 また、例えば、第2の物質として、ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ポリピリジン、ポリフェニレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリシラン、ポリシロキサン類など環状分子と包接錯体を形成しない高分子材料;DNA、タンパク質、ポリペプチドなどの生体高分子および生体分子;シリカナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、シリコンナノ粒子などの無機ナノ材料;フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボン量子ドットなどのカーボン材料;金ナノ粒子、ペロブスカイト量子ドット、CdSeS/ZnS量子ドット、酸化鉄ナノ粒子などの金属ナノ材料;などを挙げることができるがこれらに限定されない。また、第2の物質として、チモプトール、ドルゾラミド、ドルゾラミド塩酸塩、イソプロピルウノプロストン、レバミピド、レボフロキサシン、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、チモロールマレイン酸塩、bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子:basic fibroblast growth factor)、セツキシマブ、ドセタキシル、ネダプラチン、パクリタキセル、ネダプラチン、パクリタキセル、フルオロウラシル、ブレオマイシン、マイトマイシンなども挙げることができるがこれらに限定されない。
[0054]
 また、本発明の単離ナノシートは、シクロデキストリンやポリエチレングリコールなど生体安全性や生体適合性の高い分子から構成できるため、生体内で利用するのに適している。
 本発明の単離ナノシートは、例えば、ドラッグデリバリ用材料(例えば、ドラッグデリバリのビヒクル)、生体イメージング、表面改質剤、接着剤、創傷部位癒着防止剤などに用いることができるが、これらに限定されない。
 また、本発明は、上述の単離ナノシートを有する材料も提供する。
 材料として、本発明の単離ナノシートの適用分野、応用分野に依存するが、例えば、構造材料、人工生体代替材料、パッケージ材料、ゴム材料、コーティング材料、塗料、接着剤などを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0055]
 本発明の単離ナノシートは、上述したように、ドラッグデリバリ用材料(例えば、ドラッグデリバリのビヒクル)を含む医薬用担体及び/又は医薬用ビヒクルとして用いることができる。
 また、本発明の単離ナノシートは、ある面において、医薬用崩壊剤及び/又は医薬用結合剤として用いることができる。例えば、本発明の単離ナノシートは、医薬の有効成分と有効成分以外の成分を結合させる作用を有することができるため、医薬用結合剤として用いることができる。また、医薬の有効成分をその内部に有する本発明の単離ナノシートは、水溶液の濃度、温度、pH、湿度、時間経過などにより、その構成成分、即ち直鎖状分子、環状分子などに崩壊することができるため、医薬用崩壊剤として用いることができる。
 本発明の単離シートは、標的細胞、皮膚、髪、歯や骨などの生体の一部、コンタクトレンズなどの医療機器、布、部屋の内装材などを含む標的箇所と接着するのがよく、該接着後に単離ナノシートから有効成分を放出するのがよく、例えば単離ナノシートが崩壊し、単離ナノシート内部に有する有効成分を放出するのがよい。
 したがって、本発明の単離ナノシートを医薬として、具体的には、医薬上許容可能な有効成分;及び本発明の単離ナノシート;を有する医薬として用いることができる。
 ここで、医薬上許容可能な有効成分は、本発明の単離ナノシート内部に有することができれば、特に限定されない。医薬上許容可能な有効成分として、例えば、ナプロキセン、酢酸プレドニゾロン、レバミピド、サルブタモール又はサルブタモール硫酸塩、フルルビプロフェン、ベクロメタゾン、ピロキシカム、ケトプロフェンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
[0056]
 本発明は、上述の単離ナノシートの製造方法I及びIIを提供する。
<製造方法I>
 本願において、該製造方法Iは、
 a)直鎖状分子を準備する工程;
 b)水又は水溶液中で電離する電離基を、前記直鎖状分子に導入し、第1の直鎖状分子とする工程;
 c)第1の環状分子を準備する工程;及び
 d)前記第1の直鎖状分子と前記第1の環状分子とを水又は水溶液中で混合させる工程;
を有することにより、第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンを複数有して成る単離ナノシートを得ることができる。
 なお、「第1の直鎖状分子」、「電離基」、「第1の環状分子」は上述したとおりである。例えば、「第1の直鎖状分子」は「少なくとも2つの部位を備える」こととしてもよく、「少なくとも3つの部位を備える第2の直鎖状分子」などを用いてもよいことは、上述したとおりである。
[0057]
<工程a)>
 工程a)は、直鎖状分子を準備する工程である。直鎖状分子は、市販のものを購入しても、調製してもよい。なお、上述したとおり、「少なくとも2つの部位を備える」「直鎖状分子」を用いてもよい。「少なくとも2つの部位を備える」「直鎖状分子」を調製する場合、以下の文献1~4などに記載されている方法により得ることができる。
 文献1:Hillmyer, M. A. et al., Macromolecules 1996, 29 (22), 6994-7002.
 文献2:Ding, J. F. et al., Eur Polym J 1991, 27 (9), 901-905.
 文献3:Allgaier, J. et al., Macromolecules 2007, 40 (3), 518-525.
 文献4:Malik, M. I. et al., Eur Polym J 2009, 45 (3), 899-910.
[0058]
<工程b)>
 工程b)は、水又は水溶液中で電離する電離基を、前記直鎖状分子に導入し、第1の直鎖状分子とする工程である。
 本工程は、例えば、次亜塩素酸と、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルを用いた酸化反応により電離基としてカルボン酸を導入することができる。
 また、本工程は、例えば、1’-カルボニルジイミダゾールとエチレンジアミンを用いたカップリング反応により、アミノ基を導入することができる。
 さらに、本工程は、例えば、1,3-プロパンスルトンとの反応によりスルホ基を導入することができる。
 なお、電離基は、上述したとおり、単離ナノシートの形成に寄与する限り、直鎖状分子のどの位置であっても「有する」ように導入するのがよく、好ましくは、第1の直鎖状分子の少なくとも一方の末端又はその近傍、より好ましくは少なくとも一方の末端、さらに好ましくは、第1の直鎖状分子の両末端又はその近傍、最も好ましくは両末端に有するように導入するのがよい。
[0059]
<工程c)>
 工程c)は、第1の環状分子を準備する工程である。
 この工程は、市販の環状分子を購入しても、調製してもよい。誘導体を調製する場合、例えば、文献5:Khan, A. R. et al., Chem Rev 1998, 98 (5), 1977-1996などに記載されている方法により得ることができる。
 なお、工程c)は、工程d)よりも前に設ければよい。即ち、工程c)は、工程b)の後に設ける必要はなく、工程a)及びb)とは別途に行うことができる。
[0060]
<工程d)>
 工程d)は、第1の直鎖状分子と第1の環状分子とを水又は水溶液中で混合させる工程である。
 水又は水溶液として、環状分子、直鎖状分子の少なくともどちらか一方が溶解する溶媒であれば、特に限定されない。
 工程d)で用いる水又は水溶液として、具体的には、純水、アルコール水溶液、酸水溶液、アルカリ水溶液、緩衝液、培養液、血漿などを挙げることができるが、これらに限定されない。
 上記工程a)~d)を有することにより、上述の単離ナノシートを得ることができる。
[0061]
 なお、上述の製造方法において、上記工程a)~d)以外の工程を有してもよい。
例えば、上記工程a)~d)以外の工程として、工程a)前に設ける、上述した「少なくとも2つの部位を備える」「直鎖状分子」の調製工程、工程d)後の設ける単離ナノシートの精製工程、工程a)前に設けてもよい環状分子と第1の物質との包接や擬ポリロタキサンまたはポリロタキサンの合成を挙げることができるが、これらに限定されない。
 また、単離ナノシートが、上述の、第2の環状分子、第1の物質、第2の物質を有する場合、本発明の製造方法は、該第2の環状分子、第1の物質、第2の物質を単離ナノシートへ導入するための工程を有してもよい。
[0062]
 さらに、d)工程後に、e)得られた単離ナノシートの一部の擬ポリロタキサンを修飾する工程;をさらに有するのがよい。
 該修飾工程は、第1の直鎖状分子に、例えば第1の直鎖状分子の末端に、第1の置換基を導入する工程であってもよい。なお、第1の置換基は、単離ナノシートが得られる限り、第1の環状分子が脱離しないように封鎖する作用を有する封鎖基であっても、電離基の作用を有する基であっても、その他の作用を有してもよい。第1の置換基は、それらの作用のいかなる組合せを有していてもよく、全ての作用を奏するものであってもよい。例えば、封鎖する作用を有し、且つ電離基の作用を有する基として、葉酸、ビオチン、フルオレセイン、RGD、GRGDSなどのオリゴペプチド、リツキシマブ、ベバシズマブ、トシリズマブ、インフリキシマブなどのモノクローナル抗体由来の基を導入してもよい。例えば葉酸由来の基を導入する場合、得られた単離シート及び葉酸を、縮合剤、例えばDMT/MM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)、DCC(N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDC(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド)、BOP(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウム塩)、PyBOP((ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、HATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)の存在下で反応させることにより、行うことができる。
 該修飾工程は、単離ナノシートが得られる限り、第1の環状分子に第2の置換基を導入する工程であってもよい。
[0063]
<製造方法II> 
 本願の、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを複数有して成る単離ナノシートは、次の製造方法により得ることができる。
 即ち、
 a)直鎖状分子を準備する工程; 
 c)第1の環状分子を準備する工程; 
 d’)前記直鎖状分子と前記第1の環状分子とを水又は水溶液中で混合させて、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを得る工程; 
 b’)前記d’)工程で得られた擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの直鎖状分子に、水又は水溶液中で電離する電離基を導入し、第1の直鎖状分子とする工程;
 f)得られた擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを水又は水溶液中で混合させる工程;
を有することにより、上記単離ナノシートを得ることができる。
 なお、「a)工程」、「c)工程」は上述したのと同じ工程である。
 また、d’)工程は、上述のd)工程と類似する工程である。ただし、d’)工程は、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを得る点で異なる。
 b’)工程は、上述のb)工程と類似する工程である。ただし、b’)工程が擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンの形成後に行われる工程であるのに対して、b)工程は擬ポリロタキサン又は単離ナノシートの形成前に行われる点で異なる。
[0064]
 なお、上述の製造方法において、上記工程a)、c)、d’)、b’)及びf)以外の工程を有してもよい。
 例えば、上記工程以外の工程として、上述した工程を挙げることができるがこれらに限定されない。
[0065]
 本発明の単離ナノシートは、上述したように、製造方法Iの工程d)の混合工程又は製造方法IIの工程f)の混合工程により、自己組織的に形成することができる。このため、溶液の条件が変化すると分解するだけでなく、再び元の条件に戻ると再生するという特徴がある。
 なお、本発明の単離ナノシートは、完全なる理論に基づくものではないが、つぎのような作用により生じるものと考えられる。
[0066]
 図2を参照しつつ作用を説明する。図2は、(X)A、B及びCのブロックを備えるトリブロックコポリマー11と環状分子であるシクロデキストリン(CD)21とから、(Y)擬ポリロタキサン31が形成され、さらに(Z)擬ポリロタキサン31が複数凝集することにより本発明の単離ナノシート41が形成されることを説明する模式図である。
 上述したように、(X)A、B及びCのブロックを備え且つその末端に電離基12a及び12bを備えるトリブロックコポリマー11と環状分子であるCD21とから、(Y)擬ポリロタキサン31が形成される。この際、ブロックA~Cの性質によるが、図2(Y)では、中央のブロックBにCD21が凝集されることを示す。また、中央のブロックBにCD21が凝集されることは、文献6:Fujita, H. et al., Macromol Chem Physic 1999, 200 (4), 706-713にも開示されている。
[0067]
 図2(Y)で得られた擬ポリロタキサン31において、その中央部分に存在するCD21は棒状に凝集し、カラム化して疎水性となる。そのため、図2(Z)に示すように、複数の擬ポリロタキサン31は、疎水性のカラム化CD21を介して、互いに自己組織的に集合して平面構造(ナノシート)41を形成する。なお、図2の(X)及び(Y)では、トリブロックコポリマー11の長手方向、即ち電離基12aから電離基12bへと伸び方向、を、横方向に記載しているが、図2の(Z)では、トリブロックコポリマー11の長手方向を縦方向に記載している。
 図2の(Z)の平面構造(ナノシート)41において、本発明の擬ポリロタキサン分子の末端は電離基12a及び12bを有して電離しているので、ナノシート同士は水溶液中で付着又は凝集しなくなり、単離ナノシートが簡便に合成できる。単離ナノシート41の厚みdは、カラム化CD21の長さとほぼ等しくなるので、トリブロックコポリマー11の中央部分の長さを変えることで簡単に制御できる。
[0068]
 環状分子の棒状カラムがさらに凝集することは多数の報告例がある(たとえばWO2005/080470)。その際に、他の環状分子(上述の第1の物質に対応)または分子(上述の第2の物質に対応)を含みながら凝集することが報告されている(文献7:Liu, N.; Higashi et al., Int J Pharm 2017, 531 (2), 543-549.;及び文献8:Higashi, T. et al., Chem Pharm Bull (Tokyo) 2018, 66 (3), 207-216.)
 本発明の単離ナノシートの場合も同様に、第1の物質または第2の物質をナノシートの中に含むことが可能である。溶液の条件が変化してナノシートが分解した場合には、第1の物質または第2の物質は溶液中に放出されることになる。第1の物質及び/または第2の物質が薬剤の場合、薬剤の徐放や刺激応答性材料として利用することができる。
実施例
[0069]
 以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
[合成例1:α,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールの合成]
 α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F68; PEO 76PPO 29PEO 76,M =8400 g/mol;2.50g,0.30mmol)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル (TEMPO;203mg,1.30mmol)、臭化ナトリウムNaBr(202mg,1.96mmol) を水28mLに溶解させた。その後、撹拌しながら5wt%次亜塩素酸ナトリウム水溶液をpHの値が変化しなくなるまで徐々に滴下した。得られた水溶液を室温にてさらに10分撹拌した。その後、反応を止めるためにエタノール2.5mLを投入した。さらに6M塩酸水溶液をpHが2になるまで投入し、塩化メチレン40mLにて目的物を抽出した。さらに得られた塩化メチレン溶液を、0.01M塩酸水溶液を用いて2度洗浄した後、塩化メチレンを留去することにより目的物を得た(2.31g,0.275mmol,92.4%、Mn=5.7kg/mol(polyethylene glycol standard in CHCl ),PDI(polydispersity)=1.07)。
[0070]
[合成例2:α,ω-ビス-アミノポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールの合成]
 α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F68; PEO 76PPO 29PEO 76,M =8400 g/mol;1g,0.119mmol)の10mLテトラヒドロフラン溶液を調製し、別に準備した1,1’-カルボニルジイミダゾール0.212g(1.31mmol)の6.3mLテトラヒドロフラン溶液に滴下した。室温にてさらに一晩撹拌した後、この溶液をエチレンジアミン(794μL,11.9mmol)に滴下した。反応終了後、テトラヒドロフランを留去し、得られた白色固体を水に溶解させた後、透析により精製を行った。精製後水を凍結乾燥により取り除くことにより目的物を得た(0.92g,92%)。
[0071]
[合成例3:α,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコールの合成]
 α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール10gを水100mLに溶解させ、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル(TEMPO;100mg,0.64mmol)、臭化ナトリウム(100mg,0.97mmol)を投入した。その後、撹拌しながら5wt%次亜塩素酸ナトリウム水溶液をpHの値が10から11になるまで徐々に滴下し、室温にて15分間撹拌した。エタノール10mLを投入し、希塩酸液を用いて溶液のpHを2以下にすることにより反応を停止させ、塩化メチレンを用いて抽出を行った。塩化メチレンを減圧下留去した後、エタノール250mLから再結晶を行うことで、99%以上の収率で目的物を得た。
[0072]
[合成例4:直鎖状分子としてα,ω-ビス-アミノポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、環状分子としてβ-CD、両末端に葉酸を有するポリロタキサンP1の合成]
 α,ω-ビス-アミノポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール0.1g、β-CD 0.45gを水25mL中で混合し、1週間混合した。生じた沈殿物を遠心分離により回収し、凍結乾燥により粉末状固体である擬ポリロタキサンを0.4g得た。得られた擬ポリロタキサンをN,N-ジメチルホルムアミド5mLに溶解させたのち、この溶液にベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウム塩0.27g、N,N-ジイソプロピルエチルアミン112μL、及び葉酸0.14gを加え、一晩反応させて、葉酸が修飾されたポリロタキサンP1を得た。ゲル浸透クロマトグラフィー及びプロトン核磁気共鳴法により、ポリロタキサンの単離及び葉酸の存在を確認した。
[0073]
[実施例1:α,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールとβ-シクロデキストリンを用いた単離ナノシートX1の調製]
 まず、β-シクロデキストリン0.45gを水25mLに溶解させた。
 次に、合成例1で得たα,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール0.1gを先に調製したβ-シクロデキストリン水溶液に投入し、室温にて一週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX1を得た。
[0074]
 単離ナノシート形成の確認は、小角X線散乱測定、位相差光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡観察(図3)、走査型電子顕微鏡観察(図4)により行った。
 小角X線散乱測定より、単離ナノシートX1のβ-シクロデキストリンの結晶部の厚みは11nmであることがわかった。また、原子間力顕微鏡観察により、単離ナノシートX1のポリエチレングリコール部位も含めたナノシートの厚さは15nm、走査型顕微鏡(または位相差顕微鏡)より1辺0.3-2μmのひし形のナノシートが形成されていることを確認した。
 単離ナノシートX1の斜入角広角X線回折(GIWAXD)測定からは、単離ナノシート内でシクロデキストリン(CD)が配列していることが明らかになった(図4)。円環平均により1Dプロファイルへ変換したところ、5.9°、7.2°、11.9°、14.6°、15.7°、17.7°、19.1°の位置にピークが観測された。これはCDが、単斜晶系・a=1.910nm、b=2.426nm、c=1.568nm、α=γ=90°、β=111°の結晶構造を形成していることを示している。さらに、ひし形構造の角度は74°であったが、これは110面と「1」10面(ここで、「1」は1の上部にバーが存在する文字を意味する)が形成する角度と一致している。つまり単離ナノシートX1の形状はこの単結晶構造を反映したものであると結論できる。
 なお、単離ナノシートX1の包接率は16.5%、ナノシートの厚さは、11nmであった。
[0075]
[実施例2:α,ω-ビス-アミノポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールとβ-シクロデキストリンを用いた単離ナノシートX2の調製]
 まず、β-シクロデキストリン0.45gを水25mLに溶解させた。
 次に、合成例2で得たα,ω-ビス-アミノポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール0.1gを先に調製したβ-シクロデキストリン水溶液に投入し、室温にて一週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX2を得た。
 単離ナノシート形成の確認は、実施例1と同様に、小角X線散乱測定、位相差光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察により行った。
 単離ナノシートX2の包接率は16.5%であり、ナノシートの厚さは11nmであった。
[0076]
[実施例3:α,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコールとα-シクロデキストリンを用いた単離ナノシートX3の調製]
 まず、α-シクロデキストリン4.04gを水16.6mLに溶解させた。
 次に、合成例3で得たα,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール0.1gを水16.6mLに溶解させた。これらの水溶液を混合し、室温にて一週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX3を得た。
 単離ナノシート形成の確認は、実施例1と同様に、小角X線散乱測定、位相差光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察により行った。
 単離ナノシートX3の包接率は95%であり、ナノシートの厚さは15nmであった。
[0077]
[実施例4:α,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールとγ-シクロデキストリンを用いた単離ナノシートX4の調製]
 まず、γ-シクロデキストリン4.04gを水33mLに溶解させた。
 次に、合成例1で得たα,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール0.1gを、先に調製したγ-シクロデキストリン水溶液に投入し、室温にて一週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX4を得た。
 単離ナノシート形成の確認は、実施例1と同様に、小角X線散乱測定、位相差光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察により行った。
 単離ナノシートX4の包接率は22%であり、ナノシートの厚さは31nmであった。
[0078]
[実施例5:α,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールとβ-シクロデキストリン、およびローダミン(第1の物質)を用いた単離ナノシートX5の調製]
 まず、β-シクロデキストリン0.45gを水25mLに溶解させた。さらにローダミン0.01g、合成例1で得たα,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール0.1gを投入し、室温にて一週間撹拌することによりローダミン(第1の物質)を取り込んだ目的の単離ナノシートX5を得た。
 蛍光顕微鏡を用いて水中の単離ナノシートX5の蛍光を観察することにより、第1の物質がナノシート中に取り込まれていることを確認した。
[0079]
[実施例6:α,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールとβ-シクロデキストリン、および硫化鉛量子ナノドット(第2の物質)を用いた単離ナノシートX6の調製]
 まず、β-シクロデキストリン0.45gを水25mLに溶解させた。さらに硫化鉛量子ナノドット0.01g、合成例1で得たα,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール0.1gを投入し、室温にて一週間撹拌することにより硫化鉛量子ナノドット(第2の物質)を取り込んだ目的の単離ナノシートX6を得た。
 蛍光顕微鏡を用いて水中の単離ナノシートX6の蛍光を観察することにより、第2の物質がナノシート中に取り込まれている事を確認した。
[0080]
[実施例7:単離ナノシートX2の直鎖状分子の末端の葉酸修飾]
 まず、実施例2で得た単離ナノシートX2の2wt%水分散液10mLに、葉酸0.14g、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド92mg、N-メチルモルホリン34μLを投入したのち、室温で一晩混合し、葉酸修飾ナノシートX7を得た。ナノシートを遠心分離によって生成したのち、紫外吸収スペクトル測定から、葉酸がナノシートに修飾されたことを確認した。
[0081]
[実施例8:ポリロタキサンP1を用いた単離ナノシートX8の作製]
 まず、合成例4で得たポリロタキサンP1(0.5g)をN,Nジメチルホルムアミド5mLに溶解させた。この溶液を、β-CD飽和水溶液50mLに滴下したところ、単離ナノシートX8を得た。
 単離ナノシート形成の確認は、実施例1と同様に、小角X線散乱測定、位相差光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察により行った。
 単離ナノシートX8の包接率は16.5%であり、ナノシートの厚さは11nmであった。
[0082]
[比較例1:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールとβ-シクロデキストリンを用いたナノシートの調製]
 まず、β-シクロデキストリン0.45gを水25mLに溶解させた。
 次にα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール0.1gを先に調製したβ-シクロデキストリン水溶液に投入し、室温にて一週間撹拌することにより凝集ナノシートCX1を得た。
 α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールは、直鎖状分子の末端官能基が水酸基であり、中性条件下ではpKaの値は16程度であるため、殆どの水酸基は解離していない。従って、この直鎖状分子を用いてナノシートを作製すると分子間相互作用によりナノシート同士が付着・凝集してしまう。ナノシート同士が凝集していることは、小角X線散乱測定によりラメラ状の構造因子が観測されたこと(図5)、また走査型電子顕微鏡観察によりナノシート同士が付着・凝集している様子(図6)から確認した。
[0083]
[実施例9:α,ω-ビス-カルボン酸ポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールとβ-シクロデキストリンを用いた単離ナノシートX1の調製とpH調製によるナノシートの分解・再構成の検証]
 実施例1と同様に、目的の単離ナノシートX1を含む溶液A-1を得た。
 小角X線散乱測定でシート構造の形状因子が観測されたことから、単離ナノシートの形成を確認した(図7(A))。
 次に溶液A-1に水酸化ナトリウムをpHが11になるまで投入し、溶液A-2を得た後、小角X線散乱測定を行ったところ、シート構造の形状因子が消失していることがわかった(図7(B))。
 この結果からpHの上昇に伴い単離ナノシート中のβ-シクロデキストリン間に斥力相互作用が働き、単離ナノシートが崩壊することがわかった。
 さらに、溶液A-2に酢酸を投入し、pHを7にし、溶液A-3を得た後、小角X線散乱測定を行ったところ、シート構造の再構成が確認された(図7(C))。
 以上の結果より、単離ナノシートはpHの調製により構造形成・崩壊を繰り返すことが明らかになった。
[0084]
[実施例10:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、β-シクロデキストリン、ナプロキセンを用いた薬剤導入単離ナノシートX10の調製]
 まず、β-シクロデキストリン18mgを水1mLに溶解させた。次にナプロキセン0.3mgをβ-シクロデキストリン水溶液に投入し、完全に水に溶解するまで撹拌した。続いてα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F68; PEO 76PPO 29PEO 76,M =8400 g/mol)4mgを先に調製したβ-シクロデキストリン、ナプロキセン水溶液に投入し、室温にて二週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX10を得た。
 走査型電子顕微鏡により、得られた単離ナノシートX10を観察したところ、ナノシートが形成されていることがわかる(図8)。
 また、図9(a)及び図9(b)は、ナノシートを構成する各成分のNMRのピーク強度の変化を示すグラフである。該グラフからナプロキセンを有するナノシートが形成されていること(図9(a)、Pluronic(軸分子)が無いとナプロキセンを有するナノシートが形成されないこと(図9(b))がわかる。
[0085]
[実施例11:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、β-シクロデキストリン、酢酸プレドニゾロン(prednisolone acetate)を用いた薬剤導入単離ナノシートX11の調製]
 まず、β-シクロデキストリン18mgを水1mLに溶解させた。次に酢酸プレドニゾロン(prednisolone acetate)0.53mgをβ-シクロデキストリン水溶液に投入し、完全に水に溶解するまで撹拌した。続いてα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F68; PEO 76PPO 29PEO 76,M =8400 g/mol)4mgを先に調製したβ-シクロデキストリン、酢酸プレドニゾロン(prednisolone acetate)水溶液に投入し、室温にて二週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX11を得た。
 走査型電子顕微鏡により、得られた単離ナノシートX11を観察したところ、ナノシートが形成されていることがわかる(図10)。
[0086]
[実施例12:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、γ-シクロデキストリン、レバミピド(rebamipide)を用いた薬剤導入単離ナノシートX12の調製]
 まず、γ-シクロデキストリン50mgを水1mLに溶解させた。次にレバミピド(rebamipide)1.2mgをγ-シクロデキストリン水溶液に投入し、完全に水に溶解するまで撹拌した。続いてα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F108; PEO 126PPO 56PEO 126,M =14600 g/mol)30mgを先に調製したγ-シクロデキストリン、レバミピド(rebamipide)水溶液に投入し、室温にて二週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX12を得た。
 走査型電子顕微鏡により、得られた単離ナノシートX12を観察したところ、ナノシートが形成されていることがわかる(図11)。
 また、図12は、ナノシートを構成する各成分のNMRのピーク強度の変化を示すグラフである。該グラフからナプロキセンを有するナノシートが形成されていることがわかる。
[0087]
[実施例13:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、γ-シクロデキストリン、サルブタモール硫酸塩(salbutamol sulfate)を用いた薬剤導入単離ナノシートX13の調製]
 まず、γ-シクロデキストリン50mgを水1mLに溶解させた。次にサルブタモール硫酸塩(salbutamol sulfate)1.9mgをγ-シクロデキストリン水溶液に投入し、完全に水に溶解するまで撹拌した。続いてα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F108; PEO 126PPO 56PEO 126,M =14600 g/mol)30mgを先に調製したγ-シクロデキストリン、サルブタモール硫酸塩(salbutamol sulfate)水溶液に投入し、室温にて二週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX13を得た。
 走査型電子顕微鏡により、得られた単離ナノシートX13を観察したところ、ナノシートが形成されていることがわかる(図13)。
[0088]
[実施例14:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、γ-シクロデキストリン、フルルビプロフェン(flurbiprofen)を用いた薬剤導入単離ナノシートX14の調製]
 まず、γ-シクロデキストリン50mgを水1mLに溶解させた。次にフルルビプロフェン(flurbiprofen)0.78mgをγ-シクロデキストリン水溶液に投入し、完全に水に溶解するまで撹拌した。続いてα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F108; PEO 126PPO 56PEO 126,M =14600 g/mol)30mgを先に調製したγ-シクロデキストリン、フルルビプロフェン(flurbiprofen)水溶液に投入し、室温にて二週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX14を得た。
 走査型電子顕微鏡により、得られた単離ナノシートX14を観察したところ、ナノシートが形成されていることがわかる(図14)。
[0089]
[実施例15:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、γ-シクロデキストリン、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(beclometasone dipropionate)を用いた薬剤導入単離ナノシートX15の調製]
 まず、γ-シクロデキストリン50mgを水1mLに溶解させた。次にベクロメタゾンプロピオン酸エステル(beclometasone dipropionate)1.7mgをγ-シクロデキストリン水溶液に投入し、完全に水に溶解するまで撹拌した。続いてα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F108; PEO 126PPO 56PEO 126,M =14600 g/mol)30mgを先に調製したγ-シクロデキストリン、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(beclometasone dipropionate)水溶液に投入し、室温にて二週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX15を得た。
 走査型電子顕微鏡により、得られた単離ナノシートX15を観察したところ、ナノシートが形成されていることがわかる(図15)。
[0090]
[実施例16:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、γ-シクロデキストリン、ピロキシカム(piroxicam)を用いた薬剤導入単離ナノシートX16の調製]
 まず、γ-シクロデキストリン50mgを水1mLに溶解させた。次にピロキシカム(piroxicam)1.1mgをγ-シクロデキストリン水溶液に投入し、完全に水に溶解するまで撹拌した。続いてα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F108; PEO 126PPO 56PEO 126,M =14600 g/mol)30mgを先に調製したγ-シクロデキストリン、ピロキシカム(piroxicam)水溶液に投入し、室温にて二週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX16を得た。
 走査型電子顕微鏡により、得られた単離ナノシートX16を観察したところ、ナノシートが形成されていることがわかる(図16)。
[0091]
[実施例17:α,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール、γ-シクロデキストリン、ketoprofenを用いた薬剤導入単離ナノシートX17の調製]
 まず、γ-シクロデキストリン50mgを水1mLに溶解させた。次にketoprofen0.82mgをγ-シクロデキストリン水溶液に投入し、完全に水に溶解するまで撹拌した。続いてα,ω-ビス-ヒドロキシポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール(Pluronic(登録商標) F108; PEO 126PPO 56PEO 126,M =14600 g/mol)30mgを先に調製したγ-シクロデキストリン、ketoprofen水溶液に投入し、室温にて二週間撹拌することにより目的の単離ナノシートX17を得た。
 走査型電子顕微鏡により、得られた単離ナノシートX17を観察したところ、ナノシートが形成されていることがわかる(図17)。
[0092]
[実施例18:α,ω-ビス-アミノポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコールとβ-シクロデキストリン、およびローダミン(第1の物質)を用いた単離ナノシートX18の調製]
 まず、β-シクロデキストリン0.45gを水25mLに溶解させた。さらにローダミン0.01g、合成例2で得たα,ω-ビス-アミノポリエチレングリコール-block-ポリプロピレングリコール-block-ポリエチレングリコール0.1gを投入し、室温にて一週間撹拌することによりローダミン(第1の物質)を取り込んだ目的の単離ナノシートX18を得た。
[0093]
[実施例19:蛍光顕微鏡でのHeLa細胞とローダミン-NH -ナノシートの接着観察]
 D10培地2000μL中で、HeLa細胞が定着しているガラスボトムディッシュを準備した。培地の内、250μLを分取し容量を1750μLとした後、上記の方法により得たローダミン(第1の物質)を取り込んだ単離ナノシートX18を250μL添加して蛍光顕微鏡で観察したところ、ナノシートが細胞表面に付着している様子が観察された(図18)。
[0094]
[実施例20:細胞接着したナノシートの洗浄実験]
 実施例19と同様の用法で細胞表面にローダミン(第1の物質)を取り込んだ単離ナノシートX18を付着させた後、ナノシート濃度が1/512になるようにD10培地にて洗浄を行った。しかし、ローダミン(第1の物質)を取り込んだ単離ナノシートXは細胞表面に付着したままであった。図19(a)は、洗浄前の走査型電子顕微鏡像であり、図19(b)は、洗浄後の走査型電子顕微鏡像であり、両者を比較すると、著しい差異を有しておらず、洗浄によってローダミンが洗われて存在しない状態とはならないことがわかる。
[0095]
[実施例21:細胞接着したナノシートの洗浄、およびその後24時間かけたナノシートの分解]
 実施例19及び20と同様の用法で細胞表面にローダミン(第1の物質)を取り込んだ単離ナノシートX21を付着させた後、ナノシート濃度が1/512になるようにD10培地にて洗浄を行った。しかし、ローダミン(第1の物質)を取り込んだ単離ナノシートX21は細胞表面に付着したままであった。その後、その細胞を培養機にて24時間培養を行った後細胞を再度蛍光顕微鏡にて観察したところ、ナノシート構造が観察されなかったことから細胞表面に付着したナノシートが24時間かけて分解することがわかった。
[0096]
[実施例22:一部の軸分子末端に蛍光分子が結合した単離ナノシートX22の調製]
 Fluorescein isothiocyanate(FITC)1mgを純水1mLで溶解させてFITC溶液を調製した。その後FITC溶液1μLを分取して先に調製したNH -ナノシート水分散液1000μLと混合した後、一晩室温にて震とうすることにより、一部の軸分子末端に蛍光分子が結合した単離ナノシートX22を得た。
[0097]
[実施例23:蛍光顕微鏡でのHeLa細胞とFITC-NH -ナノシートの接着観察]
 D10培地2000μL中でHeLa細胞が定着しているガラスボトムディッシュを準備し、細胞膜をCell Brite Redにて染色した。ディッシュ内の培地200 μLを分取してD10培地の容量を1800μLとした後、実施例22の方法にて準備した単離ナノシートX22を有するFITC-NH -ナノシートの水分散液200μLを添加した。このガラスボトムディッシュ2000μL容量の内、1000μL容量の培地交換を4回繰り返した後、共焦点レーザー蛍光顕微鏡にて立体観察したところ、細胞表面に蛍光強度の高い部位が観察され、単離ナノシートX22が細胞表面に付着していることが明らかになった。

請求の範囲

[請求項1]
 第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを複数有して成る単離ナノシートであって、
 前記直鎖状分子は、その一部が、水又は水溶液中で電離する電離基を有する第1の直鎖状分子を有する、上記単離ナノシート。
[請求項2]
 前記電離基が、前記第1の直鎖状分子の少なくとも一方の末端又はその近傍に有する請求項1記載の単離ナノシート。
[請求項3]
 前記電離基が、前記第1の直鎖状分子の両末端又はその近傍に有する請求項1又は請求項2記載の単離ナノシート。
[請求項4]
 前記第1の直鎖状分子は、少なくとも2つの部位を備える請求項1~3のいずれか一項記載の単離ナノシート。
[請求項5]
 前記第1の環状分子が前記少なくとも2つの部位のうちの1つの部位に包接されてなる請求項4に記載の単離ナノシート。
[請求項6]
 前記電離基が、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基、リン酸基、塩化トリメチルアミノ基、塩化トリエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ピロリジン基、ピロール基、エチレンイミン基、ピペリジン基、ピリジン基、ピリリウムイオン基、チオピリリウムイオン基、ヘキサメチレンイミン基、アザトロピリレン基、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾリン基、モルホリン基、チアジン基、トリアゾール基、テトラゾール基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、インドール基、ベンゾイミダゾール基、プリン基、ベンゾトリアゾール基、キノリン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プテリジン基、カルバゾール基、ポルフィリン基、クロリン基、コリン基、アデニン基、グアニン基、シトシン基、チミン基、ウラシル基、解離したチオール基、解離した水酸基、アジ基、ピリジン基、カルバミン酸類、グアニジン類、スルフェン酸類、尿素類、チオ尿素類、過酸類、およびこれらの類似体、誘導体からなる群からなる群から選ばれる、少なくとも1種である請求項1~5のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項7]
 前記少なくとも2つの部位のうちの1つの部位は、その鎖長が前記第1の環状分子の中心軸方向の厚さの2倍以上である請求項4~6のいずれか一項に記載の単離シート。
[請求項8]
 前記第1の直鎖状分子が、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項9]
 前記直鎖状分子が、少なくとも3つの部位を有する第2の直鎖状分子から本質的になる、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項10]
 前記第2の直鎖状分子は、少なくとも3つのブロックを備えるブロックコポリマーである請求項8又は請求項9に記載の単離ナノシート。
[請求項11]
 前記少なくとも3つのブロックが、ポリエチレングリコール(PEG)からなる部位、及びポリプロピレングリコール(PPG)からなる部位から形成される請求項10に記載の単離ナノシート。
[請求項12]
 前記直鎖状分子による包接を受けない第2の環状分子をさらに有する請求項1~11のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項13]
 前記第2の環状分子は、その開口部に第1の物質を包接してなる請求項12に記載の単離ナノシート。
[請求項14]
 第2の物質をさらに有する請求項1~13のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項15]
 前記第1及び第2の環状分子が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、クラウンエーテル、ピラーアレン、カリックスアレン、シクロファン、ククルビットウリル、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる請求項1~14のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項16]
 前記直鎖状分子が、PEGからなる部位-PPGからなる部位-PEGからなる部位:で表される構成を有するコポリマーであり、
 前記第1の環状分子がβ-シクロデキストリンである請求項1~15のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項17]
 前記直鎖状分子が、PEGからなる部位-PPGからなる部位-PEGからなる部位:で表される構成のみからなるトリブロックコポリマーであり、
 前記第1の環状分子がβ-シクロデキストリンである請求項1~16のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項18]
 前記単離ナノシートの厚さが0.5~100nmである請求項1~17のいずれか一項に記載の単離ナノシート。
[請求項19]
 請求項1~18のいずれか一項に記載の単離ナノシートを有する材料。
[請求項20]
 第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンを複数有して成る単離ナノシートの製造方法であって、
 a)直鎖状分子を準備する工程;
 b)水又は水溶液中で電離する電離基を、前記直鎖状分子に導入し、第1の直鎖状分子とする工程;
 c)第1の環状分子を準備する工程;及び
 d)前記第1の直鎖状分子と前記第1の環状分子とを水又は水溶液中で混合させる工程;
を有することにより、前記単離ナノシートを得る、上記方法。
[請求項21]
 第1の環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを複数有して成る単離ナノシートの製造方法であって、
 a)直鎖状分子を準備する工程;
 c)第1の環状分子を準備する工程;
 d’)前記直鎖状分子と前記第1の環状分子とを水又は水溶液中で混合させて、擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを得る工程;
 b’)前記d’)工程で得られた擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンに、水又は水溶液中で電離する電離基を導入し、第1の直鎖状分子とする工程;及び
 f)得られた擬ポリロタキサン及び/又はポリロタキサンを水又は水溶液中で混合させる工程;
を有することにより、前記単離ナノシートを得る、上記方法。
[請求項22]
 請求項1~18のいずれか一項に記載の単離ナノシートを有する医薬用担体及び/又は医薬用ビヒクル。
[請求項23]
 請求項1~18のいずれか一項に記載の単離ナノシートを有する医薬用崩壊剤及び/又は医薬用結合剤。
[請求項24]
 前記単離シートが標的箇所と接着する請求項22又は23に記載の医薬用担体及び/又は医薬用ビヒクル、もしくは医薬用崩壊剤及び/又は医薬用結合剤。
[請求項25]
 医薬上許容可能な有効成分;及び請求項1~18のいずれか一項に記載の単離ナノシート;を有する医薬。
[請求項26]
 医薬上許容可能な有効成分;
 請求項1~18のいずれか一項に記載の単離ナノシートを有する医薬用担体及び/又は医薬用ビヒクル;及び/又は
 請求項1~18のいずれか一項に記載の単離ナノシートを有する医薬用崩壊剤及び/又は医薬用結合剤;を有する医薬。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]