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1. WO2020012945 - 熱転写シート、繊維構造物の製造方法、及び繊維構造物

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明 細 書

発明の名称 熱転写シート、繊維構造物の製造方法、及び繊維構造物

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032  

図面の簡単な説明

0033  

発明を実施するための形態

0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065  

実施例

0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088  

産業上の利用可能性

0089  

符号の説明

0090  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : 熱転写シート、繊維構造物の製造方法、及び繊維構造物

技術分野

[0001]
 本発明は、離型性を有するベースシートと、ベースシート上の少なくとも一部に形成された樹脂層と、樹脂層の上に形成された接着層とを備えた熱転写シートに関する。さらに、本発明は、当該熱転写シートを用いた繊維構造物の製造方法、及び繊維布帛の表面に接着層を介して樹脂層が形成された繊維構造物に関する。

背景技術

[0002]
 近年、衣料においても快適志向が高まり、特に冬場などの環境温度が比較的低い場合に、心地よい温感が得られるような繊維構造物の開発が進んでいる。このような繊維構造物を得る方法としては、例えば、繊維を吸湿性の高いアクリル繊維を用いて吸湿発熱させる保温品(特許文献1)、赤外線を吸収し熱エネルギーに変換する炭化ジルコニウム等を繊維基材の少なくとも片面に有するコーティング布帛(特許文献2)が挙げられる。
[0003]
 また、繊維構造物にアルミ箔を熱転写することにより体からの輻射熱を反射して保温する衣服(特許文献3)、アクリロニトリルを85%以上含むアクリル系樹脂にヒドラジン処理により架橋構造を導入した高吸放湿吸湿発性熱有機微粒子を、架橋剤としてブロックイソシアネートを含有するベース樹脂中に添加した樹脂組成物をコーティングした透湿防水布帛(特許文献4)、離型層を形成したベースシートの上に、遠赤外線放射性のセラミックス粉末およびシリカゲルを含有するポリウレタン系樹脂層を、繊維製品における所望の位置に熱転写する方法(特許文献5)等も挙げられる。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開平6-294006号公報
特許文献2 : 特開昭63-035887号公報
特許文献3 : 特表2012-526008号公報
特許文献4 : 特開2001-131875号公報
特許文献5 : 特開2017-193788号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 特許文献1に記載の保温品は、通気性が大きいため、発熱した熱が発散しやすく、持続的に温感を得ることは困難である。特許文献2に記載のコーティング布帛は、多品種・小ロットの生産には向いているが、後加工工程の複雑さによって商品コストがアップする上、布帛の柔軟性や風合い、さらには風通しや透湿感が低減していた。また、これらの後加工での製品では、長期間の使用により、摩擦や屈伸などの外力によって繊維布帛とバインダーの間に界面剥離が生じやすく、持続性・耐久性に劣っていた。特許文献3に記載の衣服は、さまざまな環境(気候)下において着用できる衣服として提供されるが、保温性や着用時の快適性を得ることを目的として構成されたものではなく、単に着用時の通気性を得ることを目的として熱管理要素の配置を提案しているに過ぎない。特許文献4に記載の透湿防水布帛は、高吸放湿発熱性有機微粒子をベース樹脂中に添加した樹脂組成物をコーティングしたものであるが、コーティング樹脂として非吸湿性の樹脂を使用しているため、非常に多量の吸湿微粒子を添加することで吸湿発熱性を得ており、非常に効率が悪いものであった。また、コーティング法により高吸放湿吸湿発熱性有機微粒子を含む樹脂層を布帛上に形成したものであるため、熱転写シートのように必要な箇所に部分的に吸湿発熱性を付与することが難しく、さらに発熱持続性についての記載もされていない。特許文献5に記載の方法では、吸湿発熱剤がすべて布帛および繊維状のものであり、捺染法で製造される熱転写シートの製造工程においては非常に使用困難な材料であるため、現実的には使用できるものではない。
[0006]
 本発明は、上記の従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、空気中の水蒸気または不感蒸泄として肌面より発散される水蒸気を効率よく吸収して発熱し、さらに持続的に温感が得られる繊維構造物を得るための熱転写シートを提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該熱転写シートを用いた繊維構造物の製造方法、及び繊維布帛の表面に温感が持続的に得られる樹脂層が形成された繊維構造物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 上記課題を解決するための本発明に係る熱転写シートの特徴構成は、
 離型性を有するベースシートと、
 前記ベースシート上の少なくとも一部に形成された樹脂層と、
 前記樹脂層の上に形成された接着層と、
を備えた熱転写シートであって、
 前記樹脂層は、水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子と、を含むことにある。
[0008]
 本構成の熱転写シートによれば、水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子と、を含む樹脂層を備えているため、この熱転写シートを用いて繊維布帛の表面に樹脂層を転写すると、当該樹脂層に含まれる発熱性微粒子により持続的な温感が付与された繊維構造物を得ることができる。
[0009]
 本発明に係る熱転写シートにおいて、
 前記樹脂層の吸水前における初期重量をw1とし、前記樹脂層を40℃の蒸留水に24時間浸漬した後の重量をw2としたとき、以下の式(1):
  W = (w2-w1)/w1 × 100・・・(1)
から求められる前記樹脂層の吸水率W(%)が、5 ≦ W ≦ 100を満たすように構成されていることが好ましい。
[0010]
 本構成の熱転写シートによれば、上記の式(1)から求められる樹脂層の吸水率W(%)が、5 ≦ W ≦ 100を満たすように構成されていることにより、樹脂層に含まれる発熱性微粒子を発熱させるための水分を当該樹脂層に十分に保持することができる。その結果、得られた繊維構造物は高い発熱効果を示すものとなり、長期に亘って温感を持続させることができる。
[0011]
 本発明に係る熱転写シートにおいて、
 前記樹脂層の吸水前における初期面積をs1とし、前記樹脂層を40℃の蒸留水に24時間浸漬した後の面積をs2としたとき、以下の式(2):
  S = (s2-s1)/s1 × 100 ・・・(2)
から求められる前記樹脂層の吸水膨潤性S(%)が、S ≦ 100を満たすように構成されていることが好ましい。
[0012]
 本構成の熱転写シートによれば、上記の式(2)から求められる樹脂層の吸水膨潤性S(%)が、S ≦ 100を満たすように構成されていることにより、樹脂層に十分な水分を吸収させながら、樹脂層の強度を実用上問題が無い程度に維持することができる。
[0013]
 本発明に係る熱転写シートにおいて、
 前記樹脂層は凹凸部を備え、吸水前の状態において、前記凹凸部のサイズは1~300μmに構成されていることが好ましい。
[0014]
 本構成の熱転写シートによれば、樹脂層が凹凸部を備え、吸水前の状態において、凹凸部のサイズが1~300μmに構成されていることにより、樹脂層の実質的な表面積が大きくなる。そのため、樹脂層はより多くの水分を効率よく吸収することができる。その結果、発熱性微粒子の発熱効果が向上し、得られた繊維構造物はより高い発熱効果を示すものとなり、持続性の優れた温感を付与することができる。
[0015]
 本発明に係る熱転写シートにおいて、
 前記樹脂層の乾燥重量をw3とし、前記樹脂層を気温40℃、相対湿度90%の環境下に60分放置した後の重量をw4としたとき、以下の式(3):
  M1 = (w4-w3)/w3 × 100 ・・・(3)
から求められる前記樹脂層の吸湿率M1(%)が、2 ≦ M1 ≦ 30を満たすように構成されていることが好ましい。
[0016]
 本構成の熱転写シートによれば、上記の式(3)から求められる樹脂層の吸湿率M1(%)が、2 ≦ M1 ≦ 30を満たすように構成されていることにより、樹脂層は雰囲気中の水蒸気等を十分に吸収し、その結果、樹脂層に含まれる発熱性微粒子を発熱させるための水分を当該樹脂層に十分に保持することができる。そして、得られた繊維構造物は高い発熱効果を示すものとなり、より長期に亘って温感を持続させることができる。
[0017]
 本発明に係る熱転写シートにおいて、
 前記発熱性微粒子の乾燥重量をw5とし、前記発熱性微粒子を気温40℃、相対湿度90%の環境下に60分放置した後の重量をw6としたとき、以下の式(4):
  M2 = (w6-w5)/w5 × 100 ・・・(4)
から求められる前記発熱性微粒子の吸湿率M2(%)が、10 ≦ M2 ≦ 40を満たすように構成されていることが好ましい。
[0018]
 本構成の熱転写シートによれば、上記の式(4)から求められる発熱性微粒子の吸湿率M2(%)が、10 ≦ M2 ≦ 40を満たすように構成されていることにより、発熱性微粒子は、自身が発熱するための水分を十分に吸収することができる。その結果、得られた繊維構造物は高い発熱効果を示すものとなり、より長期に亘って温感を持続させることができる。
[0019]
 本発明に係る熱転写シートにおいて、
 前記樹脂層は、加熱により膨潤及び発泡する膨潤発泡性微粒子をさらに含むことが好ましい。
[0020]
 本構成の熱転写シートによれば、樹脂層は、加熱により膨潤及び発泡する膨潤発泡性微粒子をさらに含むため、樹脂層を繊維布帛の表面に転写すると同時に膨潤発泡が発生し、発泡断熱層が形成される。その結果、得られた繊維構造物の温感持続性をより高めることができる。
[0021]
 本発明に係る熱転写シートにおいて、
 前記ベースシートと樹脂層との間に保護層が設けられていることが好ましい。
[0022]
 本構成の熱転写シートによれば、ベースシートと樹脂層との間に保護層が設けられていることにより、繊維布帛に樹脂層が熱転写された際に、樹脂層の表面に保護層が形成され、樹脂層を摩耗などの外力から保護することができる。
[0023]
 本発明に係る熱転写シートにおいて、
 前記樹脂層と前記接着層との間に中間層が設けられていることが好ましい。
[0024]
 本構成の熱転写シートによれば、樹脂層と接着層との間に中間層が設けられていることにより、転写後の繊維構造物において樹脂層は接着層と直接接触しない状態となり、その結果、繊維布帛に含まれる染料等が接着層を経由して樹脂層に移行するなどして転写物が汚染されることが防止される。また、繊維布帛の表面に樹脂層を転写する際、シワやヨレの発生を防ぐことができる。
[0025]
 上記課題を解決するための本発明に係る繊維構造物の製造方法の特徴構成は、
 上記の何れか一つに記載の前記熱転写シートを用いて、繊維布帛の表面に前記接着層を介して前記樹脂層を転写することにある。
[0026]
 本構成の繊維構造物の製造方法によれば、本発明の熱転写シートを用いて繊維布帛の表面に樹脂層を転写すると、当該樹脂層に含まれる発熱性微粒子による持続的な温感と優れた吸水性とを備えた繊維構造物を得ることができる。
[0027]
 上記課題を解決するための本発明に係る繊維構造物の特徴構成は、
 繊維布帛の表面に接着層を介して樹脂層が形成された繊維構造物であって、
 前記樹脂層は、水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子と、を含むことにある。
[0028]
 本構成の繊維構造物によれば、水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子と、を含む樹脂層が繊維布帛の表面に形成されているため、当該樹脂層に含まれる発熱性微粒子による持続的な温感と優れた吸水性とを備えた繊維構造物を提供することができる。
[0029]
 上記課題を解決するための本発明に係る繊維構造物の特徴構成は、
 ISO18782による吸湿発熱性試験において、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上であることにある。
[0030]
 本構成の繊維構造物によれば、ISO18782による吸湿発熱性試験において、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上であることにより、冬物衣料などの生地に適した優れた温感を備えた繊維構造物を提供することができる。
[0031]
 上記課題を解決するための本発明に係る繊維構造物の特徴構成は、
 ISO18782による吸湿発熱性試験において、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上の状態を10分以上持続することにある。
[0032]
 本構成の繊維構造物によれば、ISO18782による吸湿発熱性試験において、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上の状態を10分以上持続することにより、冬物衣料などの生地に適した温感持続性を備えた繊維構造物を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0033]
[図1] 本発明の熱転写シートの厚み方向における概略断面図である。(a)は樹脂層表面が平面、(b)は樹脂層表面が凹凸状である熱転写シートを示す。
[図2] 図1の熱転写シートを用いて作製した本発明の繊維構造物の厚み方向における概略断面図である。(a)は樹脂層表面が平面、(b)は樹脂層表面が凹凸状である繊維構造物を示す。
[図3] 保護層を有する熱転写シートの厚み方向における概略断面図である。
[図4] 中間層を有する熱転写シートの厚み方向における概略断面図である。
[図5] 他の実施形態の熱転写シートの厚み方向における概略断面図である。(a)は樹脂層表面が平面、(b)は樹脂層表面が凹凸状である熱転写シートを示す。

発明を実施するための形態

[0034]
 以下、本発明の熱転写シート、及び当該熱転写シートを用いて製造される繊維構造物に関する実施形態について説明する。また、本発明の繊維構造物の製造方法についても併せて説明する。ただし、本発明は、以下に記載する実施形態、実施例、及び図面の内容に限定されることを意図するものではない。
[0035]
<熱転写シート・繊維構造物>
 図1は、本発明の熱転写シート1の厚み方向における概略断面図である。図2は、図1の熱転写シート1を用いて作製した本発明の繊維構造物6の厚み方向における概略断面図である。図1(a)に示す熱転写シート1、及び図2(a)に示す繊維構造物6は、夫々一つの実施形態を示すものであり、図1(b)及び図2(b)についても同様である。図3は、保護層7を有する熱転写シート1の厚み方向における概略断面図である。図4は、中間層8を有する熱転写シート1の厚み方向における概略断面図である。図5は、他の実施形態の熱転写シート1の厚み方向における概略断面図である。図5(a)は樹脂層2表面が平面、図5(b)は樹脂層2表面が凹凸状である熱転写シート1を示す。なお、熱転写シート1及び繊維構造物6は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変が可能である。また、図1~図5に示される各構成要素は、実際の形状、サイズ、位置関係、縮尺等を忠実に反映したものではない。
[0036]
 熱転写シート1は、離型性を有するベースシート4(以下、単に「ベースシート」と称する)と、ベースシート4上の少なくとも一部に水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂9及び吸湿することにより発熱する発熱性微粒子10を含む樹脂層2と、樹脂層2の上に形成された接着層3とを備える。図1の熱転写シート1は、ベースシート4上の主面に、所定の組成に調製した吸水性を有する樹脂9と発熱性微粒子10とを含む樹脂液を、所定の図柄状に塗布し、乾燥させて樹脂層2を形成し、次いで樹脂層2からなる図柄の上に、熱可塑性樹脂を同一の図柄状に塗布して接着層3を形成し、これを乾燥させることにより得られるものである。そして、熱転写シート1を、接着層3側が繊維布帛5の表面に接するように重ね合わせ、この状態で熱転写シート1のベースシート4側から加圧及び加熱処理を行うと、熱転写シート1の接着層3が繊維布帛5に接着し、それに伴って樹脂層2がベースシート4から剥離し、樹脂層2が繊維布帛5に転写された図2の繊維構造物6が完成する。繊維構造物6を衣服(例えば、肌着)の素材として使用する場合、樹脂層2側が肌面に接する側となるように衣服を縫製する。これにより、樹脂層2が汗等の水分を吸収し、発熱性微粒子10が発熱することにより温感を得ることができる。ここで、「温感」とは、肌が繊維構造物6に接触したときに感じる温かさである。樹脂層2が汗や雰囲気中の水蒸気等の水分を吸収すると、樹脂層2の表面に露出している発熱性微粒子10が水分を吸着して発熱する。更に、樹脂層2内部に水分が吸収拡散するにつれて、樹脂層2内部に分散している発熱性微粒子10も水分を吸着し発熱することにより、持続的に温感を得ることができる。樹脂層2は通気性が無いか非常に小さい為、発熱性微粒子10から発生した熱は外気に放散されにくく、樹脂層2を通して肌面に伝わることで温感を持続させることができる。
[0037]
 以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
[0038]
[ベースシート]
 ベースシート4は、熱転写シート1の基材となるものであり、離型性を有するフィルム状の素材で構成される。また、ベースシート4の離型性は、ベースシート4自体が離型性を有するものでも良いし、また、ベースシート4の表面、特に樹脂層2が形成される側の表面に離型層を設けたものでも良い。ベースシート4の素材として、熱転写温度より高温に耐え得る耐熱性が求められるが、熱転写条件を考慮して適切な素材を選定すればよい。ベースシート4の素材としては、例えば、耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンやポリアミドなどのプラスチックフィルム、セロハン、紙、合成紙、ラミネート紙、又はこれらの樹脂と紙とを積層したラミネートフィルムなどが挙げられる。熱転写温度は、接着層3に含まれる熱可塑性樹脂の融点より10℃以上高い温度に設定することが好ましい。ベースシート4の耐熱性は、前記の熱転写温度設定よりも20℃以上、好ましくは30℃以上高い温度に耐え得るものが好ましい。なお、ベースシート4が樹脂で構成される場合、当該樹脂の融点と、接着層3に含まれる熱可塑性樹脂の融点とが一定以上離れていることが好ましい。両融点が近い場合、熱転写時において、シートの収縮や融着などの不具合が生じる虞がある。
[0039]
 ベースシート4の厚みは20~400μmが好ましく、50~125μmがより好ましい。厚みが20μmより小さいと取り扱いが難しく、シワやヨレ等が発生し易い。また、厚みが400μmより大きいと取り扱いは容易となるが、熱転写時において熱が伝わり難くなるため、転写温度を高くしたり、転写時間を長くする必要があり、その場合、エネルギー使用量が多くなったり作業効率が落ちる等の問題が発生する虞がある。
[0040]
 樹脂層2が積層されるベースシート4の表面は、平滑でもよいが、凹凸であることが好ましい。ベースシート4の表面が凹凸であると、積層される樹脂層2のベースシート4側表面に凹凸部が形成される。樹脂層2に凹凸部が形成されることにより、単位面積当たりの樹脂層2の実質的な表面積が大きくなり、汗や雰囲気中の水蒸気等の水分を取り込みやすくなり、発熱性微粒子10が発熱するために十分な量の水分を吸着することができる。ベースシート4の凹凸のサイズは、後述する樹脂層2の凹凸部のサイズに対応し、1~300μmであることが好ましく、30~100μmであることがより好ましい。ここで、凹凸のサイズとは、熱転写シート1の厚み方向における凹凸部の長さを意味する。後述する樹脂層2の凹凸部のサイズについても同様である。凹凸のサイズが1μm未満であると、積層される樹脂層2の表面積拡大効果が十分得られず、繊維布帛5に転写した場合、汗や雰囲気中の水蒸気等の水分の吸着性が向上せず、発熱効率が向上しない虞がある。凹凸のサイズが300μmより大きくなると熱転写時にベースシート4と樹脂層2の剥離が困難となる虞がある。
[0041]
 ベースシート4には、離型層を設けてもよく、該離型層は、ベースシート4の樹脂層2を形成する側に設けることができる。離型層は、繊維布帛5に樹脂層2を転写する際、ベースシート4と樹脂層2を容易に剥離させる特性を有する物質で構成されていればよい。このような物質として、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ワックスなどが例示できる。離型層はグラビアコーター、スクリーンプリントやロールコーター等によりベースシート4上に形成され、その厚みは、離型性を発揮する範囲で、樹脂層2への水分の吸収性を阻害しないように出来るだけ小さい方が好ましく、0.5~10.0μmであることが好ましい。
[0042]
[樹脂層]
 樹脂層2は水不溶性且つ吸水性を有する樹脂9と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子10とを含む。他の実施形態では、樹脂層2は、図5に示すように、加熱により膨潤及び発泡する膨潤発泡性微粒子11をさらに含んでいてもよい。樹脂層2は不感蒸泄として放出される水蒸気や汗等の水分を吸収、拡散、放散する。樹脂層2に存在する発熱性微粒子10は、当該樹脂層2を通して水分を吸着することが可能となり、水分の吸着による発熱機能を発揮することができる。吸水性を有する樹脂としては、吸水性を有する軟性弾性樹脂であることが好ましい。具体的には、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等が例示でき、物性、コストの面からウレタン系樹脂が好ましく用いられる。ウレタン系樹脂の種類としてはエーテル系、エステル系、ポリカーボネート系などが挙げられ、耐光性の面から無黄変タイプが好ましい。
[0043]
 吸水性を有する樹脂の形態としては、無溶剤型、溶剤エマルジョン型、水性エマルジョン型、粉末型、油性型が挙げられ、単独もしくは併用して用いることができる。なかでも、添加剤の混合性、捺染の容易性から水性エマルジョン型が好ましく使用できる。水性エマルジョン型の場合は、必要な添加剤を混合した吸水・吸湿性を有する樹脂を増粘剤で10000~100000mPa・sの範囲内で捺染に良好な粘度に調整する。増粘剤は、アクリル系、エマルジョン系等のものを適宜選定できる。各原料の混合は、従来公知の方法で行えばよい。
[0044]
(樹脂層の吸水率)
 樹脂層の吸水率は、樹脂層2の吸水前における初期重量をw1とし、樹脂層2を40℃の蒸留水に24時間浸漬した後の重量をw2としたとき、以下の式(1):
  W = (w2-w1)/w1 × 100 ・・・(1)
から求められる樹脂層2の吸水率W(%)が、5 ≦ W ≦ 100を満たすように構成されていることが好ましい。樹脂層2の吸水率Wが5%より小さいと、発熱性微粒子10が発熱するために必要な水分を十分に吸着することができず、発熱性能を発揮させることができない虞がある。また樹脂層2の吸水率Wが100%より大きいと、樹脂層2が水分を吸収した際にゲル化して強度が大きく低下し、樹脂層2を繊維布帛5に熱転写した後、繊維構造物6を洗濯すると樹脂層2が脱落する虞があり、衣料用途などには不適である。
[0045]
(樹脂層の吸水膨潤性)
 樹脂層の吸水膨潤性は、樹脂層2の吸水前における初期面積をs1とし、樹脂層2を40℃の蒸留水に24時間浸漬した後の面積をs2としたとき、以下の式(2):
  S = (s2-s1)/s1 × 100 ・・・(2)
から求められる樹脂層2の吸水膨潤性S(%)が、S ≦ 100を満たすように構成されていることが好ましい。ここで、樹脂層2の面積は、例えば、ベースシート4上に形成された樹脂層2をデジタルカメラを用いて平面視で撮影し、その撮像データを画像処理ソフトを用いて画像解析より求めることができる。吸水膨潤率Sが、100%より大きいと洗濯などの吸水するような状態において、十分な樹脂強度が維持できない虞がある。また、強度が維持できないことにより、経時による樹脂層2の脱落などの不具合が生じる虞がある。水不溶性且つ吸水性を有する樹脂9は、水分を吸収後、使用環境の変化により水分を放散することが可能な樹脂であることが好ましい。吸水、拡散、放散を繰り返す機能を有することにより、屋内、屋外を問わず、繊維構造物6により構成された衣料を着用するたびに水分の吸着発熱による温感を得ることができる。
[0046]
(樹脂層の吸湿率)
 樹脂層の吸湿率は、樹脂層2の乾燥重量をw3とし、樹脂層2を気温40℃、相対湿度90%の環境下に60分放置した後の重量をw4としたとき、以下の式(3):
  M1 = (w4-w3)/w3 × 100 ・・・(3)
から求められる樹脂層2の吸湿率M1(%)が、2 ≦ M1 ≦ 30を満たすように構成されていることが好ましく、5 ≦ M1 ≦ 15を満たすように構成されていることがより好ましく、5 ≦ M1 ≦ 10を満たすように構成されていることがさらに好ましい。樹脂層2の吸湿率M1が2%より小さいと、発熱性微粒子10が発熱するために必要な水分を十分に吸着することができず、温感が得られない虞がある。また、樹脂層2の吸湿率M1が30%より大きいと、吸湿時に樹脂層2の強度が得られない虞がある。
[0047]
(樹脂層の凹凸部のサイズ)
 図2に示すように、繊維布帛5に転写された樹脂層2は凹凸部を備え、吸水前の状態において凹凸部のサイズL1は1~300μmであることが好ましく、30~100μmであることがより好ましい。ここで、樹脂層2の凹凸部のサイズL1は、ベースシート4又は樹脂層2の表面近傍の形状に関するデータを取得し、輪郭曲線の基準線からの凸部の高さの最大値および凹部の深さの最大値を算出し、これらの数値の和により算出される。樹脂層2の表面は平滑でもよいが、樹脂層2に凹凸部を設けることにより、樹脂層2の実質的な表面積が大きくなり、より多くの水蒸気等の水分を効率よく樹脂層2へ吸収させることができる。そのため、発熱性微粒子10の吸湿発熱性能の向上が期待できる。樹脂層2の凹凸部のサイズL1が300μmより大きいと、樹脂層2の厚みL2が大きくなることから、ベースシート4との剥離が困難となるなど、技術的に形成させることも難しく、更には、摩耗などに対する耐久性も大きく低下する虞がある。
[0048]
 熱転写シート1に積層されている樹脂層2の厚みL2は特に限定されないが、温感が得やすく、繊維構造物6の風合いが損なわれ難い点で、10~2000μmであることが好ましく、50~800μmであることがより好ましい。樹脂層2の厚みL2が10μmより薄いと、発熱が短時間で進行し、熱の放散も早いため温感が持続しない虞がある。2000μmより厚いと発熱が連続して進行するため温感は長く持続するが、転写後の繊維構造物6の風合いが損なわれる虞があり、特に衣料用途では好ましくない。
[0049]
 樹脂層2は、水不溶性且つ吸水性を有する樹脂9の性能を損なわない範囲で、吸水性樹脂以外の添加剤を有することができる。例えば、意匠性や機能性を付与する目的で、顔料、無機材料、機能性有機材料等の各種添加剤を添加することができる。例えば、意匠性を付与するものとして一般的な有機又は無機顔料、光輝感を付与するものとして金、銀、アルミ等の金属微粒子が挙げられる。また、機能性を付与するものとしては、例えば、体から放射される輻射熱を反射するためのアルミ顔料、消臭性を付与するための触媒作用のある酸化亜鉛、吸着作用のあるシリカゲル、活性炭などが挙げられる。また、赤外線の吸収により発熱するカーボン、炭化ジルコニウム、アンチモンドープ酸化スズ、六ホウ化ランタン等を添加することもできる。その他、表面のブロッキングなど抑えるために、シリカ、アクリルビーズ、金属酸化物などの無機微粒子を添加することもできる。
[0050]
[発熱性微粒子]
 発熱性微粒子10の粒径は100μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。100μm以下であれば、発熱性微粒子10が樹脂層2で均一に分散され、摩擦などによる物理的作用で脱落する虞も少ない。また、発熱に必要な水分を効率よく吸収し、発熱させることができるとともに、本発明に係る熱転写シート1の製造工程においても、スクリーンプリント法やロータリープリント法等の捺染に使用するスクリーンの目詰まり等を起こすことなく安定的に製造することができる。発熱性微粒子10の樹脂層2への混合割合は、吸湿発熱性能と樹脂層2との強度のバランスや発熱性微粒子10の嵩比重を勘案し適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。特に、洗濯における樹脂層2および発熱性微粒子10の吸水膨潤時に、樹脂層2や発熱性微粒子10の脱落がないような混合割合の範囲において微粒子の割合を最大とすることで、最も発熱性能が発揮される。発熱性微粒子10は、有機物であれば、アクリル系微粒子(例えば商品名:タフチックHUシリーズ(日本エクスラン工業株式会社製))、アルギン酸カルシウム微粒子(例えば商品名:フラビカファイン(日清紡ケミカル株式会社製))等を挙げることができる。
[0051]
(発熱性微粒子の吸湿率)
 発熱性微粒子の吸湿率は、発熱性微粒子10の乾燥重量をw5とし、発熱性微粒子10を気温40℃、相対湿度90%の環境下に60分放置した後の重量をw6としたとき、以下の式(4):
  M2 = (w6-w5)/w5 × 100 ・・・(4)
から求められる発熱性微粒子10の吸湿率M2(%)が、10 ≦ M2 ≦ 40を満たすように構成されているものが好ましい。発熱性微粒子10の吸湿率M2が10%より小さいと、十分な発熱性能が得られない虞がある。発熱性微粒子10の吸湿率M2が40%を超えると、発熱性微粒子10が劣化しやすくなるため、温感が持続的に得られる衣料製品として使用することができなくなる虞がある。発熱性微粒子10は、水不溶性であっても、吸湿時に洗濯による揉み、屈曲、摩擦などの物理的応力により、形状が簡単に破壊されるものは洗濯時に樹脂の脱落などが生じ、耐久性の面では好ましくない。例えば、ポリアクリル酸塩系ポリマー等の自重の1000重量%以上を吸水する吸水高分子などの吸水後にゲル化して、形状が維持できないものは適さない。
[0052]
[膨潤発泡性微粒子]
 発泡断熱層を形成する目的で、加熱により膨潤及び発泡する膨潤発泡性微粒子11を添加することができる。発泡断熱層の形成により、発熱後の温感持続性を高めることができる。膨潤発泡性微粒子11は添加量を多くすると、温感の持続性は向上するが、樹脂層2の強度が低下するため、添加量は樹脂層2の強度を考慮しながら適宜調整すれば良い。膨潤発泡性微粒子11としては、発泡材を熱可塑性高分子殻(シェル)で包み込んだ、所謂、熱膨張性マイクロカプセルを使用することができ、例えば、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフェア―シリーズ等が挙げられる。膨潤発泡性微粒子11の粒径は100μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。100μm以下であれば、膨潤発泡性微粒子11が樹脂層2内で均一に分散され、摩擦などによる物理的作用で脱落する虞も少ない。さらに、膨潤発泡性微粒子11が膨潤発泡する温度は転写時の加熱温度付近であることが好ましい。膨潤発泡する温度が転写温度付近であれば、転写と同時に膨潤発泡が起きるため、効率よく膨潤発泡が完了することになる。但し、膨潤発泡性微粒子11を添加した場合は、樹脂層2を形成させる際の乾燥温度を、膨潤発泡性微粒子11が膨潤発泡する温度より低く設定し、転写前に膨潤発泡しないように注意する必要がある。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、添加剤の機能を損なわない範囲であれば2種以上を併用してもよい。添加剤の形状としては、粒子状、針状、板状等の定型物、非定型物を問わず用いることができるが、樹脂層2の表面粗さを小さくし易い点や、肌との接触性の観点から、粒子状であることが好ましい。
[0053]
[接着層]
 接着層3は、熱転写により樹脂層2を繊維布帛5へ固着させるように機能する。接着層3を構成する樹脂としては、熱可塑性を有する接着性樹脂が好ましく、得られる繊維構造物6の風合いが向上する点で弾性を有することが好ましい。弾性、熱可塑性を有する接着性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、これらを混合したものを用いても良い。なかでも、弾性が良好でその他の物性の面からポリウレタン系樹脂が好ましい。これら接着層3を形成させるための接着剤の形態としては、上記熱可塑性樹脂が溶剤に溶解したもの、または上記熱可塑性樹脂の微粒子と当該微粒子が脱落しないように固着させるための溶剤系樹脂バインダーとが分散混合された溶剤系タイプや、上記熱可塑性樹脂が水に分散、溶解したもの、上記熱可塑性を有する接着性樹脂の微粒子と当該微粒子が脱落しないように固着させるための水系樹脂バインダーとを含む混合水溶液などが挙げられる。
[0054]
 接着層3を構成する熱可塑性樹脂の融点は、転写する条件により種々設定できるが、融点が140℃温度より高いと、転写条件を150℃以上に設定する必要があり、その場合、分散染料で染色されたポリエステル繊維布帛などでは染料の昇華汚染が発生し易くなる。また、融点が80℃より低いとタンブラー等の比較的高い温度での乾燥時に剥離する虞があるため、熱可塑性樹脂の融点として100℃~130℃の範囲となるように設定することが好ましい。
[0055]
 接着層3の厚みは被転写材となる繊維布帛5の表面形状に応じて設定することができる。一般的な厚みとしては20~200μmが好ましい。特に繊維布帛5への安定的な固着においては厚みがより厚い方が接着効果を得られるが、風合いが硬くなるなどの不具合が発生する虞や、接着性樹脂がしみ出したり、樹脂層2の吸水・吸湿性が損なわれたりする虞があるため、好ましくは20~100μmである。20μm未満であると十分な接着性が得られない虞がある。
[0056]
 接着層3の形成方法としては、ベースシート4上の主面に所定の図柄に接着性樹脂を捺染法などの方法で塗布して乾燥させる。接着層3の厚みの調整は、同一図柄上に、この形成方法を繰り返すことにより、接着性樹脂を積層させ、調整することができる。また、樹脂層2と接着層3からなる転写層は、加圧加熱によって繊維布帛5に移動するため、肌に接触し易く、また、肌を傷つけないように、柔軟であることが好ましい。
[0057]
[保護層]
 図3に示すように、熱転写シート1において、ベースシート4と樹脂層2との間に保護層7を設けることができる。保護層7は繊維布帛5に樹脂層2が熱転写された際に樹脂層2の表面に配置され、樹脂層2を摩耗などの外力から保護する。保護層7を形成する樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等が例示できる。保護層7の厚みや樹脂層2に対する塗布面積割合は、樹脂層2の吸水湿性を大きく阻害しない範囲で設定すれば良く、特に限定されるものではない。
[0058]
[中間層]
 繊維布帛5が衣料用途で且つ分散染料で染色されたポリエステル素材である場合、形成した樹脂層2に分散染料が移行、汚染する不具合が生じる虞がある。このような不具合を防止するために、図4に示すように、分散染料を吸着させるための活性炭、シリカゲルなどの吸着機能を有する微粒子を含む中間層8を介して、樹脂層2と接着層3とを形成することが好ましい。中間層8は、上述のような昇華防止機能を有する他、熱転写シート1を繊維布帛5の表面へ転写する際にシワやヨレの発生を防ぐことができるとともに、繊維構造物6の強度を増大させる機能をも有する。
[0059]
[繊維布帛]
 繊維構造物6は、繊維布帛5の表面に接着層3を介して樹脂層2が形成されたものである。前記繊維布帛5を構成する繊維種は特に限定されないが、洗濯耐久性の点で、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維等の合成繊維が好ましい。特に、汎用性の観点から、ポリエステル繊維が好ましい。ポリエステル繊維を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。その他、上記ポリマーとして、例えば、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸、イソフタル酸等と、ポリエチレングリコール等との共重合体であってもよいし、上記ポリマーと、これらの共重合体またはポリエチレングリコールとの混合物であってもよい。なかでも、各種物性に優れるとともに、安価に入手可能なことから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。繊維布帛5は、上記の合成繊維を50重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましい。繊維布帛5は、合成繊維以外の半合成繊維、再生繊維、天然繊維等を50重量%未満の割合で含んでいてもよい。
[0060]
 繊維布帛5は、上記のような繊維を含む織物、編物または不織布である。繊維布帛5の目付は、30~200g/m であることが好ましく、50~150g/m であることがより好ましい。繊維布帛5の目付がこの範囲であれば、衣料とした場合、着用感を損なうことなく、十分な強度を確保できる。
[0061]
<熱転写シートの製造方法>
 熱転写シート1は、ベースシート4上の主面に、水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂9と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子10とを含む樹脂層形成用樹脂液を所定の図柄で捺染法によって塗布して乾燥させ、さらに同一図柄上に同様の捺染法により接着層3の原材料となる熱可塑性樹脂を塗布して乾燥させることにより得られる。ベースシート4の面積に対する樹脂層形成用樹脂液の塗布面積割合は、特に限定されない。塗布面積割合が大きい程、発熱温度および発熱持続性能が高くなるが、逆に着心地が悪くなるなどの虞がある為、発熱性能と着心地のバランスを考慮し、適宜設定すれば良い。
[0062]
 捺染法としては、スクリーンプリント法、ロータリープリント法、グラビアプリント法等が挙げられる。なかでも、塗布形状や塗布条件の自由度が高い点で、スクリーンプリント法が好ましい。乾燥条件は、ベースシート4の種類等に応じて適宜設定すればよい。乾燥温度は、ベースシート4が熱変形することなく、溶剤又は水分が蒸発する温度(例えば、80~130℃)に設定すればよい。
[0063]
 樹脂層2の形状や大きさは、繊維構造物6の風合いが損なわれなければ特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形、不定形等が挙げられ、ベースシート4の表面に規則的またはランダムに形成される。塗布された樹脂の乾燥条件は特に限定されず、ベースシート4の種類等に応じて適宜設定すればよい。ベースシート4に捺染する場合、乾燥温度はベースシート4が熱変形しない温度であれば特に限定されないが、溶剤あるいは水分が蒸発する80~130℃の範囲で設定することが好ましい。
[0064]
<繊維構造物の製造方法>
 繊維構造物6は、上述の熱転写シート1を、接着層3側が繊維布帛5の表面に接するように重ね合わせ、この状態で熱転写シート1のベースシート4側から加圧加熱処理を行うことにより、熱転写シート1の接着層3が繊維布帛5に接着し、それに伴って樹脂層2がベースシート4から剥離し、樹脂層2が繊維布帛5に転写された繊維構造物6が完成する。ここで、繊維構造物6とは、衣類等の繊維製品の材料となる布地を意味する。転写条件としては、圧力0.2~0.3kgf/cm 、温度70~180℃の条件で、10~60秒程度加圧加熱処理することが好ましい。加圧加熱処理には、平面プレス機やフェルトカレンダー機等を用いることが好ましい。
[0065]
 得られた繊維構造物6は、ISO18782 吸湿発熱性試験において、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上であることが好ましく、また、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上の状態を10分以上持続することが好ましい。10分以上持続することにより持続的な温感を得ることができる。さらに、これら繊維構造物6を使用した衣料においては、衣料の肌に接触する面に吸水性を有する樹脂9からなる樹脂層2を形成することが好ましい。更に、該樹脂層2は、温感を必要とする体の部分に配することが好ましい。具体的には、肩、背中、腰、太ももの前後等、暖かさを感じ易い部位に樹脂層2が配置されることが好ましい。衣料内において不感蒸泄により発散された水蒸気を吸着出来る部分であれば効果を発揮する。
実施例
[0066]
 本発明の熱転写シート、及び繊維構造物の有用性を確認するため、水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子とを含む樹脂層を備えた熱転写シートを用いて本発明の特徴を備えた繊維構造物(実施例1~6)を作製した。夫々の繊維構造物について、吸湿発熱性試験及び吸湿発熱持続性の評価を行った。また、比較のため、本発明の範囲外となる繊維構造物(比較例1~4)を作製し、実施例と同様に、吸湿発熱性試験及び吸湿発熱持続性の評価を行った。吸湿発熱性試験、吸湿発熱持続性の評価、樹脂層の吸水率、樹脂層の吸水膨潤率、樹脂層の吸湿率、発熱性微粒子の吸湿率、樹脂層の凹凸部のサイズ、及び樹脂液粘度の測定方法を、以下に説明する。
[0067]
[吸湿発熱性試験]
 測定はISO 18782(吸湿発熱性カケンB法)により測定し、試料の試験開始温度と最高到達温度との差から上昇温度ΔT(℃)を求めた。試料としては発熱性微粒子を含有する樹脂層をベタ柄でベースシート上に形成してなる熱転写シートを用いて、繊維布帛に熱転写した繊維構造物を用いた。得られた繊維構造物の樹脂層を下側にして、樹脂層の加湿面の温度変化について測定を行った。
[0068]
[吸湿発熱持続性の評価]
 上記吸湿発熱性試験で、経時での温度変化をモニターし、上記の上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上高い状態を10分以上持続するものを発熱持続性がある(○)と評価し、10分未満のものを(×)と評価した。
[0069]
[樹脂層の吸水率]
 大きさ5cm×5cm、厚み100μmの樹脂層を作製し、樹脂層の初期重量をw1とし、該樹脂層を40℃の蒸留水に24時間浸漬した後の重量をw2とし、以下の式(1):
  W = (w2-w1)/w1 × 100 ・・・(1)
から求められる値を樹脂層の吸水率W(%)とした。
[0070]
[樹脂層の吸水膨潤率]
 大きさ5cm×5cm、厚み500μmの樹脂層を作製し、樹脂層の吸水前における初期面積をs1とし、該樹脂層を40℃の蒸留水に24時間浸漬した後の面積をs2とし、以下の式(2):
  S = (s2-s1)/s1 × 100 ・・・(2)
から求められる値を樹脂層の吸水膨潤性S(%)とした。
[0071]
[樹脂層の吸湿率]
 大きさ5cm×10cm、厚み100μmに製膜した樹脂層を秤量瓶に入れ、気温40℃、相対湿度90%の環境下に60分放置した後の樹脂層と秤量瓶の合計重量aを測定し、その後105℃で2時間乾燥させて、水分を除去した状態での樹脂層と秤量瓶の合計重量bを測定し、さらに樹脂層を除いた秤量瓶の重量cを測定した。以下の式(3´):
  M1´=((a-c)-(b-c))/(b-c)×100 ・・・(3´)
から求められる値を、樹脂層の吸湿率M1´(%)とした。なお、本実施例及び比較例においては、誤差が生じるのを防ぐために上記方法により樹脂層の吸湿率を算出したが、式(3´)は、前述の式(3)と実質的に同じものである。
[0072]
[発熱性微粒子の吸湿率]
 発熱性微粒子1gを秤量瓶に入れ、気温40℃、相対湿度90%の環境下に60分放置した後の発熱性微粒子と秤量瓶の合計重量dを測定し、その後105℃で2時間乾燥させて、水分を除去した状態での発熱性微粒子と秤量瓶の合計重量eを測定し、さらに発熱性微粒子を除いた秤量瓶の重量fを測定した。以下の式(4´):
  M2´=((d-f)-(e-f))/(e-f)×100 ・・・(4´)
から求められる値を、発熱性微粒子の吸湿率M2´(%)とした。なお、本実施例及び比較例においては、誤差が生じるのを防ぐために上記方法により発熱性微粒子の吸湿率を算出したが、式(4´)は、前述の式(4)と実質的に同じものである。
[0073]
[樹脂層の凹凸部のサイズ]
 非接触式の三次元形状測定器(株式会社キーエンス製、ワンショット3D形状測定機VR-3100)を用いて、ベースシート或いは樹脂層の表面近傍の形状に関するデータを取得し、輪郭曲線の基準線からの凸部の高さの最大値および凹部の深さの最大値を算出して、これらの和を樹脂層の凹凸部のサイズ(L1)とした。
[0074]
[樹脂液粘度]
 BM2型粘度計(東機産業株式会社製 ローターNo.4)を用いて、25℃、6rpmの条件で測定した。
[0075]
〔実施例1〕
 50メッシュの紗のスクリーン版(厚み150μm)を使用し、スクリーンプリント法により、下記の樹脂層形成用の樹脂液AをベースシートA(株式会社きもと製、転写用ポリエステルシートMG01 厚み100μm シートの凹凸部のサイズ5μm)上に、一辺が30cmの正方形柄に塗布し、次いで90℃にて乾燥し、樹脂層を形成した。樹脂層の厚みは乾燥後50μmであり、樹脂層の凹凸部のサイズは乾燥後2μmであった。続いて、同様にして、下記の接着層形成用の樹脂液Bを樹脂層の実質的に同一の表面に塗布し、次いで90℃にて乾燥し、熱転写シートを得た。接着層の厚みは乾燥後50μmであった。
(1)樹脂層
<樹脂液A>(粘度:35000mPa・s)
1)水系エマルジョン型ポリウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックス470、固形分38重量%、吸水膨潤率5重量%)  100重量部
2)吸湿発熱性微粒子(東洋紡株式会社製、タフチックHU-720SF 平均粒子径4μm、吸湿率35%)  7重量部
3)ブロックイソシアネート(架橋剤、明成化学工業株式会社製、SU-268A)  3重量部
4)ポリアクリル酸(増粘剤、林化学工業株式会社製)  適量
(2)接着層
<樹脂液B>(粘度:35000mPa・s)
1)ポリウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックス500)  50重量部
2)ポリウレタン粒子(日本ポリウレタン株式会社製、パールセンU-100A)  50重量部
3)ポリアクリル酸(増粘剤、林化学工業株式会社製)  適量
(3)繊維布帛
 84dtex36fのポリエステルマルチフィラメント糸を用いて、スムース組織の丸編地を編成した。得られた編地の重量は140g/m であった。この丸編地を、常法により、精練及びプレセットし、繊維布帛を得た。
(4)熱転写
 樹脂層及び接着層が形成された熱転写シートを上記の繊維布帛に積層し、熱プレス機により130℃、300g/cm の圧力にて30秒間プレスした。冷却後、ベースシートを剥離して、繊維布帛の主面の一部に樹脂層が形成された実施例1の繊維構造物を得た。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
[0076]
〔実施例2〕
 樹脂層形成用樹脂液を樹脂液Aから下記の樹脂液Cに変更した以外は、実施例1と同様の製法により、熱転写シート、及び繊維構造物を作製した。樹脂層の厚みは乾燥後45μmであり、樹脂層の凹凸部のサイズは乾燥後2μmであった。接着層の厚みは、乾燥後50μmであった。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
<樹脂液C>(粘度:35000mPa・s)
1)水系ポリウレタン樹脂(DIC株式会社製、WLS-210、固形分35重量%、吸水膨潤率60重量%)  100重量部
2)吸湿発熱性微粒子(東洋紡株式会社製、タフチックHU-720SF 平均粒子径4μm 吸湿率35%)  7重量部
3)パラフィン樹脂(粘着防止剤、林化学工業株式会社製)  10重量部
4)ポリアクリル酸(増粘剤、林化学工業株式会社製)  適量
[0077]
〔実施例3〕
 ベースシートをベースシートB(株式会社リンテック製、離型紙 R-231 PXDH 厚み340μm、シートの凹凸部のサイズ80μm)に変更した以外は、実施例2と同様の製法により、熱転写シート、及び繊維構造物を作製した。樹脂層の厚みは乾燥後70μmであり、樹脂層の凹凸部のサイズは乾燥後150μmであった。接着層の厚みは、乾燥後50μmであった。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
[0078]
〔実施例4〕
 樹脂層形成用樹脂液として樹脂液Cに発泡微粒子(松本油脂製薬株式会社製、マツモトマイクロスフェア―FN-100SS)を2重量部加えた以外は実施例2と同様の製法により、熱転写シート、及び繊維構造物を作製した。樹脂層の厚みは乾燥後60μmであり、樹脂層の凹凸部のサイズは乾燥後2μmであった。接着層の厚みは、乾燥後50μmであった。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
[0079]
〔実施例5〕
 樹脂層形成用樹脂液を樹脂液Cからの下記の樹脂液Dに変更し、接着層形成用樹脂液を樹脂液Bから下記の樹脂液Eに変更した以外は、実施例3と同様の製法により、熱転写シート、及び繊維構造物を作製した。樹脂層の厚みは乾燥後35μmであり、樹脂層の凹凸部のサイズは乾燥後150μmであった。接着層の厚みは乾燥後30μmであった。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
(1)樹脂層
<樹脂液D>(粘度:5000mPa・s)
1)溶剤系ポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、ハイムレンY286、固形分20重量%、吸水膨潤率15重量%)  100重量部
2)吸湿発熱性微粒子(東洋紡株式会社製、タフチックHU-720SF 平均粒子径4μm 吸湿率35%)  7重量部
3)N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)  10重量部
4)メチルエチルケトン(MEK)  20重量部
5)架橋剤(DIC株式会社製、カルボジライトV-07、カルボジイミド架橋剤)  3重量部
(2)接着層
<樹脂液E>(粘度:6000mPa・s)
1)熱可塑性ポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、HS-610)  100重量部
2)N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)  15重量部
3)メチルエチルケトン(MEK)  15重量部
[0080]
〔実施例6〕
 樹脂層形成用樹脂液を樹脂液Dから下記の樹脂液Fに変更した以外は、実施例5と同様の製法により、熱転写シート、及び繊維構造物を作製した。樹脂層の厚みは乾燥後35μmであり、樹脂層の凹凸部のサイズは乾燥後150μmであった。接着層の厚みは、乾燥後30μmであった。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
(1)樹脂層
<樹脂液F>(粘度:5000mPa・s)
1)溶剤系ポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、ハイムレンY286、固形分20重量%、吸水膨潤率15重量%)  100重量部
2)吸湿発熱性微粒子(日清紡ケミカル株式会社製、フラビカファイン 平均粒子径28μm 吸湿率28%)  7重量部
3)N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)  10重量部
4)メチルエチルケトン(MEK)  20重量部
5)架橋剤(DIC株式会社製、カルボジライトV-07、カルボジイミド架橋剤)  3重量部
[0081]
〔比較例1〕
 樹脂層形成用樹脂液として樹脂液Aに発熱性微粒子(東洋紡株式会社製、タフチックHU-720SF 平均粒子径4μm)を添加しないこと以外は、実施例1と同様の製法により、熱転写シート(乾燥後の、樹脂層の厚み50μm、樹脂層の凹凸部のサイズ2μm、接着層の厚み50μm)、及び繊維構造物を作製した。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
[0082]
〔比較例2〕
 樹脂層用形成樹脂液を樹脂液Aから下記の樹脂液Gに変更したこと以外は、実施例1と同様の製法により、熱転写シート(乾燥後の、樹脂層の厚み50μm、樹脂層の凹凸部のサイズ2μm、接着層の厚み50μm)、及び繊維構造物を作製した。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
<樹脂液G>(粘度:35000mPa・s)
1)水系ポリウレタン樹脂(DIC株式会社製、WLS-210、固形分35重量%、吸水膨潤率60重量%)  100重量部
2)パラフィン樹脂(粘着防止剤、林化学工業株式会社製)  10重量部
3)ポリアクリル酸(増粘剤、林化学工業株式会社製)  適量
[0083]
〔比較例3〕
 樹脂層形成用樹脂液を樹脂液Aから下記の樹脂液Hに変更したこと以外は、実施例1と同様の製法により、熱転写シート(乾燥後の、樹脂層の厚み50μm、樹脂層の凹凸部のサイズ2μm、接着層厚み50μm)、及び繊維構造物を作製した。得られた繊維構造物の測定結果を表1に示す。
(1)樹脂層
<樹脂液H>(粘度:30000mPa・s)
1)溶剤系ポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、ハイムレンY286、固形分20重量%、吸水膨潤率15重量%)  100重量部
2)N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)  10重量部
3)メチルエチルケトン(MEK)  20重量部
4)架橋剤(DIC株式会社製、カルボジライトV-07 カルボジイミド架橋剤)  3重量部
[0084]
〔比較例4〕
 経糸に80dtex/24fの6ナイロンマルチフィラメント糸、緯糸に80dtex/34fの6ナイロンマルチフィラメント糸を用いて製織された、経糸密度120本/2.54cm、緯糸密度90本/2.54cmの平織物の生機を準備し、常法により精練、染色を行った。
 次いで、前記繊維布帛を下記の樹脂液Iの水分散混合液に浸漬し、マングルにて絞り(絞り率:40%)、100℃で3分間熱処理して乾燥した後、160℃で1分間熱処理してキュアし、撥水加工を施した。
 次いで、銀面ロールを備えたカレンダー加工機を用いて、温度170℃、圧力35kg/cm 、速度25m/分の条件にてカレンダー加工を施し、約0.12mmの厚みを有する繊維布帛を得た。
 前記繊維布帛のカレンダー面に、下記の樹脂層形成用の樹脂液Jを、ナイフオーバーロールコータを用いて、塗布量が湿潤状態で100g/m (固形分量として約32g/m )となるように塗布した後、繊維布帛を15℃の水中に1.5分間浸漬して完全凝固させた。次いで、50℃の温水中で5分間洗浄した後、150℃で2分間熱処理して乾燥し、透湿防水性布帛を得た。コーティング樹脂層の厚みは乾燥後45μm、樹脂層の凹凸部のサイズは乾燥後2μmであった。
<樹脂液I>
1)フッ素系撥水剤(日華化学株式会社製、NKガード S-07)  5.0重量%
2)メラミン架橋剤(DIC株式会社製、ベッカミン J-101)  0.3重量%
3)架橋触媒(塩化アンモニウム)  0.05重量%
4)浸透助剤(イソプロピルアルコール)  3.0重量%
<樹脂液J>
1)ポリエステル系ポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、レザミンCU-4555、固形分27重量%)  100重量部
2)炭酸カルシウム微粒子分散液(大日精化工業株式会社製、MY3657、N,N-ジメチルホルムアミド中に、脂肪酸にて疎水化処理した炭酸カルシウム微粒子(平均粒子径:約1μm)を約38重量%、および分散用ポリウレタン樹脂を約16重量%含む)  70重量部
3)イソシアネート系架橋剤(大日精化工業株式会社製、X-100架橋剤)  1重量部
4)N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)  35重量部
5)吸湿発熱性微粒子(東洋紡株式会社製、タフチックHU-720SF 平均粒子径4μm 吸湿率35%)  30重量部
[0085]
 樹脂液Iにおいて、ポリエステル系ポリウレタン樹脂と、炭酸カルシウム微粒子分散液に含まれる分散用ポリウレタン樹脂とをあわせた全ポリウレタン樹脂の全溶液に対する割合は約19重量%であり、ポリエステル系ポリウレタン樹脂の全ポリウレタン樹脂に対する割合は約71重量%であり、炭酸カルシウム微粒子の全固形分に対する割合は約40重量%(全ポリウレタン樹脂に対する割合は約70重量%)であった。
[0086]
[表1]


[0087]
 吸湿発熱性試験、吸湿発熱持続性の評価によって、実施例1~6の繊維構造物は、最大発熱温度が何れも2.0℃を超えており、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上の状態が15分以上持続されることが確認された。また、これらのうち、樹脂層に、膨潤発泡性微粒子をさらに含む実施例4については、最大発熱温度が何れも2.4℃であり、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上の状態が24分持続されており、温感の持続性が最も優れていた。
[0088]
 一方、比較例1~4の繊維構造物は、最大発熱温度が何れも1.0℃程度であり、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上の状態の持続時間も10分未満となり、実施例1~6よりも温感が持続し難いものであった。

産業上の利用可能性

[0089]
 本発明に係る熱転写シート及び繊維構造物は、吸湿時において優れた発熱性を有するとともに保温性が持続するものであるため、特に冬場に着用される衣料用途において好適に利用することができる。

符号の説明

[0090]
 1   熱転写シート
 2   樹脂層
 3   接着層
 4   ベースシート
 5   繊維布帛
 6   繊維構造物
 7   保護層
 8   中間層
 9   樹脂
 10  発熱性微粒子
 11  膨潤発泡性微粒子

請求の範囲

[請求項1]
 離型性を有するベースシートと、
 前記ベースシート上の少なくとも一部に形成された樹脂層と、
 前記樹脂層の上に形成された接着層と、
を備えた熱転写シートであって、
 前記樹脂層は、水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子と、を含む熱転写シート。
[請求項2]
 前記樹脂層の吸水前における初期重量をw1とし、前記樹脂層を40℃の蒸留水に24時間浸漬した後の重量をw2としたとき、以下の式(1):
  W = (w2-w1)/w1 × 100・・・(1)
から求められる前記樹脂層の吸水率W(%)が、5 ≦ W ≦ 100を満たすように構成されている請求項1に記載の熱転写シート。
[請求項3]
 前記樹脂層の吸水前における初期面積をs1とし、前記樹脂層を40℃の蒸留水に24時間浸漬した後の面積をs2としたとき、以下の式(2):
  S = (s2-s1)/s1 × 100 ・・・(2)
から求められる前記樹脂層の吸水膨潤性S(%)が、S ≦ 100を満たすように構成されている請求項1又は2に記載の熱転写シート。
[請求項4]
 前記樹脂層は凹凸部を備え、吸水前の状態において、前記凹凸部のサイズは1~300μmに構成されている請求項1~3の何れか一項に記載の熱転写シート。
[請求項5]
 前記樹脂層の乾燥重量をw3とし、前記樹脂層を気温40℃、相対湿度90%の環境下に60分放置した後の重量をw4としたとき、以下の式(3):
  M1 = (w4-w3)/w3 × 100 ・・・(3)
から求められる前記樹脂層の吸湿率M1(%)が、2 ≦ M1 ≦ 30を満たすように構成されている請求項1~4の何れか一項に記載の熱転写シート。
[請求項6]
 前記発熱性微粒子の乾燥重量をw5とし、前記発熱性微粒子を気温40℃、相対湿度90%の環境下に60分放置した後の重量をw6としたとき、以下の式(4):
  M2 = (w6-w5)/w5 × 100 ・・・(4)
から求められる前記発熱性微粒子の吸湿率M2(%)が、10 ≦ M2 ≦ 40を満たすように構成されている請求項1~5の何れか一項に記載の熱転写シート。
[請求項7]
 前記樹脂層は、加熱により膨潤及び発泡する膨潤発泡性微粒子をさらに含む請求項1~6の何れか一項に記載の熱転写シート。
[請求項8]
 前記ベースシートと樹脂層との間に保護層が設けられている請求項1~7の何れか一項に記載の熱転写シート。
[請求項9]
 前記樹脂層と前記接着層との間に中間層が設けられている請求項1~8の何れか一項に記載の熱転写シート。
[請求項10]
 請求項1~9の何れか一項に記載の前記熱転写シートを用いて、繊維布帛の表面に前記接着層を介して前記樹脂層を転写する繊維構造物の製造方法。
[請求項11]
 繊維布帛の表面に接着層を介して樹脂層が形成された繊維構造物であって、
 前記樹脂層は、水不溶性であり且つ吸水性を有する樹脂と、吸湿することにより発熱する発熱性微粒子と、を含む繊維構造物。
[請求項12]
 ISO18782による吸湿発熱性試験において、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上である請求項11に記載の繊維構造物。
[請求項13]
 ISO18782による吸湿発熱性試験において、上昇温度ΔT(℃)が1.0℃以上の状態を10分以上持続する請求項11又は12に記載の繊維構造物。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]