処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

1. WO2020012890 - マグネシウム系金属部材、その製造方法、および、それを用いた装飾物品

Document

明 細 書

発明の名称 マグネシウム系金属部材、その製造方法、および、それを用いた装飾物品

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

非特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009  

発明の効果

0010   0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049  

実施例

0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074  

産業上の利用可能性

0075  

符号の説明

0076  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : マグネシウム系金属部材、その製造方法、および、それを用いた装飾物品

技術分野

[0001]
 本発明は、耐食性を有し、意匠性に優れたマグネシウム(以下「Mg」と称する。)系金属部材、その製造方法、および、それを用いた装飾物品に関する。

背景技術

[0002]
 Mg合金は、実用合金の中で最も軽量であることから構造材料として注目を集めている。最近、高強度・高延性を有し、形状記憶効果を備えたMg合金が開発された(例えば、特許文献1および非特許文献1)。
[0003]
 特許文献1および非特許文献1によれば、例えば、Scを20at%添加し、Bcc(体心立方構造)(β)相を有するMg合金が、低温にて、超弾性および形状記憶効果を示すことが報告されており、Mg合金の実用化が期待されている。
[0004]
 このようなMg合金は、大気中で容易に酸化されるため、通常、耐食性を付与し、場合によっては、染色などによって意匠性/デザイン性を高めることが行われている(例えば、特許文献2、3を参照)。特許文献2によれば、Mg材の表面を粗面化処理し、これに化成処理又は陽極酸化処理によって被膜層を形成し、その上に電着塗装、スプレー塗装、浸漬塗装等により塗膜層を設けている。特許文献3によれば、陽極酸化の条件を精査することにより、Mg系金属部材に緻密な被膜が形成され、金属光沢を備えることを開示する。また、特許文献3によれば、電解液に染料を添加することにより、陽極酸化と同時に染色も可能とする。
[0005]
 しかしながら、Mg系金属の金属光沢のみならず意匠性を高めるためには、現状では塗料や染料を用いた塗装が必要である。塗料や染料を用いることなく、意匠性を高めたMg系金属部材が提供されれば望ましい。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 国際公開第2017/065208号
特許文献2 : 特開2001-192854号公報
特許文献3 : 特開2009-270190号公報

非特許文献

[0007]
非特許文献1 : Y.Ogawaら,Shape Memory and Superelasticity,Vol.4,Issue 1,pp.163-173,2018

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 以上から、本発明において、課題は、耐食性を有し、意匠性に優れたMg系金属部材、その製造方法、それを用いた装飾物品を提供することである。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明の実施例において、Mg系金属部材は、MgまたはMg合金の基体と、前記基体の表面を被覆する酸化物層とを備え、前記酸化物層は、少なくとも、マグネシウム(Mg)とスカンジウム(Sc)および/またはイットリウム(Y)と酸素(O)とを含有し、これにより上記課題を解決する。
 前記酸化物層は、Mg (ただし、x+y+z=1、Mは、Scおよび/またはYである)で表され、パラメータx、yおよびzは、
 0.003≦x≦0.8
 0.03≦y≦0.65
 0.005≦z≦0.95
を満たしてもよい。
 前記パラメータx、yおよびzは、
 0.2≦x≦0.75
 0.2≦y≦0.4
 0.005≦z≦0.45
を満たしてもよい。
 前記酸化物層は、多結晶であってもよい。
 前記酸化物層の前記基体に対する被覆率は、70%以上であってもよい。
 前記酸化物層は、50nm以上1μm以下の範囲の厚さを有してもよい。
 前記酸化物層は、100nm以上350nm以下の範囲の厚さを有してもよい。
 前記Mg合金は、マグネシウムを主成分として、スカンジウムおよび/またはイットリウムを0.1at%以上50at%未満の範囲で含有してもよい。
 前記Mg合金は、マグネシウムを主成分として、スカンジウムおよび/またはイットリウムを0.3at%以上40at%以下の範囲で含有してもよい。
 前記酸化物層の厚さは、均一であってもよい。
 前記酸化物層の厚さは、不均一であってもよい。
 前記酸化物層は、表面に5nm以上15nm以下の範囲の段差を有してもよい。
 本発明の実施例において、上述のMg系金属部材を製造する方法は、マグネシウムが主成分でスカンジウムおよび/またはイットリウムを0.1at%以上50at%未満の範囲において含有する表面研磨されたMg合金を、少なくとも酸素が含有される雰囲気中、50℃を超えて800℃未満の温度範囲において熱酸化する工程を包含する。そして、上記課題を解決する。
 前記熱酸化する工程は、300℃以上700℃以下の温度範囲で行われてもよい。
 前記熱酸化する工程は、5分以上100日以下の間行われてもよい。
 本発明の実施例 において、上述のMg系金属部材を製造する方法は、マグネシウムが主成分でスカンジウムおよび/またはイットリウムを0.1at%以上50at%未満の範囲において含有する表面研磨されたMg合金を、電解液中で陽極酸化する工程を包含する。そして、上記課題を解決する。
 前記陽極酸化する工程は、2V以上40V以下の電圧を印加してもよい。
 前記陽極酸化する工程は、5分以上20分以下の間行われてもよい。
 本発明の実施例において、Mg系金属を用いた装飾物品は、前記Mg系金属が上述のMg系金属部材であり、これにより上記課題を解決する。
 前記装飾物品は、時計、眼鏡、食器、および、携帯用電子機器の筐体からなる群から選択されてもよい。

発明の効果

[0010]
 本発明の実施例において、Mg系金属部材は、MgまたはMg合金の基体と、基体の表面を被覆する酸化物層とを備える。酸化物層は、少なくとも、スカンジウム(Sc)および/またはイットリウム(Y)とマグネシウム(Mg)と酸素(O)とを含有する。酸化物層がスカンジウムおよび/またはイットリウムを含有することにより、マグネシウムよりも酸化が促進され、緻密な酸化物層となる。これにより、金属光沢のみならず、酸化物層の干渉により呈色したMg系金属部材を提供できる。また、このような酸化物層は耐食性に優れる。本発明の実施例において、Mg系金属部材は、意匠性に優れるため、時計、眼鏡、食器、あるいは、ノートパソコン、スマートフォン、デジタルカメラ等携帯用の電子機器などの筐体に使用すれば、軽量化とともに、意匠性を高めることができる。
[0011]
 本発明の実施例において、Mg系金属部材は、表面研磨された、マグネシウムを主成分として、スカンジウムおよび/またはイットリウムを0.1at%以上50at%未満の範囲で含有するMg合金を、電解液中で陽極酸化するか、または、大気中、50℃を超えて800℃未満の温度範囲で熱酸化することによって、上述の酸化物層が形成される。単に熱酸化または陽極酸化するだけで、塗料や染料を用いることなく、着色を可能とするため、有利である。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 本発明の実施例のMg系金属部材を模式的に示す図
[図2] 本発明の実施例の別のMg系金属部材を模式的に示す図
[図3] 本発明の実施例のMg系金属部材の製造工程を示すフローチャート
[図4] 本発明の実施例のMg系金属部材の別の製造工程を示すフローチャート
[図5] 実施例40の試料の断面のTEM像を示す図
[図6] 実施例40の試料の断面の拡大したTEM像を示す図
[図7] 図6の丸印で示す領域の電子回折パターンを示す図
[図8] 実施例40の試料の断面の元素マッピングを示す図
[図9] 本発明の実施例のMg系金属部材を適用した時計
[図10] 本発明の実施例のMg系金属部材を適用した眼鏡
[図11] 本発明の実施例のMg系金属部材を適用した食器
[図12] 本発明の実施例のMg系金属部材を適用したスマートフォン

発明を実施するための形態

[0013]
 以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
[0014]
 図1は、本発明の実施例において、Mg系金属部材(例えば、板材)を模式的に示す断面図である。
[0015]
 本発明の実施例のMg系金属部材100は、MgまたはMg合金の基体110と、その基体110の表面を被覆する酸化物層120とを備える。ここで酸化物層120は、少なくとも、マグネシウム(Mg)とスカンジウム(Sc)および/またはイットリウム(Y)と酸素(O)とを含有する。ScおよびYは、Mgよりも酸化されやすいため、緻密な酸化物層120となる。そのため、本発明の実施例において、Mg系金属部材100は、金属光沢を有し、酸化物層120の干渉により呈色する。また、酸化物層120は、緻密であるため、単なるMg酸化物の被覆層と比較しても、耐食性に優れている。また、本発明の実施例のMg系金属部材の酸化物層の成分は、マグネシウム(Mg)と、スカンジウム(Sc)および/またはイットリウム(Y)と、酸素(O)と、及び不可避成分のような不純物と、からなってもよい。また、実質的にこれらの成分のみからなる場合であってもよい。また、表面に所定の組成の酸化物層が後述する処理により得られる限りは、求められる機械的特性等に応じて、Mg合金の基体の組成は適宜選択されてよい。上述する緻密な酸化物層120とは、後述する被覆率によって規定されてよい。また、 Mg+O→MgO の酸化反応は、体積が減少する傾向にあり、MgOのみが生成する酸化物層形成では、基体の表面が酸化物で被覆されない部分が形成され易くなる、或いは、酸化物層中に空隙ができ易くなる虞がある。一方、YやScが酸化されると逆に体積が膨張し易くなると考えられ、酸化物層による基材表面の被覆率の向上及び酸化物層中の空隙を少なくする効果が得られるものと考えられる。そして、被覆率が低いと、酸化膜が存在する領域と存在しない領域の間で乱反射が生じることもあり、光沢が失われ易くなる。尚、金属光沢を示しているのは、酸化膜の直下に存在する金属相と考えられている。酸化物層は、金属相表面からの反射光に透過性を有するため、該酸化物層を表面に備えるMg合金は光沢を示してもよい。上述の干渉は、2nd=λ(nは屈折率、dは膜厚、λは波長)に基づく、酸化皮膜の表面で反射する光との干渉作用を意味してもよい。
[0016]
 酸化物層120は、Mg (ただし、x+y+z=1、Mは、Scおよび/またはYである)で表され、パラメータx、yおよびzは、
 0.003≦x≦0.8
 0.03≦y≦0.65
 0.005≦z≦0.95
を満たす。これにより、緻密な酸化物層となり、金属光沢を有し、呈色する。
[0017]
 パラメータx、yおよびzは、好ましくは、
 0.2≦x≦0.75
 0.2≦y≦0.4
 0.005≦z≦0.45
を満たす。これにより、より緻密な酸化物層となり、金属光沢を有し、呈色する。
[0018]
 特に、MがSc単独である場合、パラメータx、yおよびzは、より好ましくは、
 0.25≦x≦0.75
 0.25≦y≦0.35
 0.005≦z≦0.4
を満たす。これにより、より緻密な酸化物層となり、金属光沢を有し、呈色する。
[0019]
 特に、MがY単独である場合、パラメータx、yおよびzは、より好ましくは、
 0.25≦x≦0.4
 0.25≦y≦0.35
 0.3≦z≦0.4
を満たす。これにより、より緻密な酸化物層となり、金属光沢を有し、呈色する。
[0020]
 特に、MがScおよびYの組み合わせである場合、パラメータx、yおよびzは、より好ましくは、
 0.2≦x≦0.4
 0.25≦y≦0.4
 0.3≦z≦0.4
を満たす。これにより、より緻密な酸化物層となり、金属光沢を有し、呈色する。
[0021]
 酸化物層120の組成は元素分析(例えば、実施例で示すエネルギー分散型分光法)等で測定することができるが、酸化物層120は、Mgと、Scおよび/またはYとの複合酸化物であるため、その組成は特定の化学量論組成を持たず、合金組成や熱酸化、陽極酸化条件に依存して変動する。ここで、特定の化学量論組成を持たないとは、上述するようなパラメータの範囲内であるMg で表される複合酸化物は、同一の性質・性能を有するものであり、特定の化学量論組成に限定されないことを意味してよく、上述するような範囲内にある限りは、その特定の化学量論組成もまた、本発明の実施例に含まれてよい。さらに、同一の合金組成、条件で形成された酸化物層であっても、測定箇所に依って組成はある程度の幅を有する。そのため、本願明細書では、酸化物層120の組成は、得られた酸化物層の複数視野で10か所で測定した値の平均値とする。視野の選択は、例えば、組成を特定しようとする酸化物層の領域から無作為に10か所選択してもよく、又は、その領域全体を面積比で10等分し、各区画から1視野ずつ選択することもできる。それぞれの視野において、TEM-EDSから得られた組成を算術平均して求められた平均値で表すことができる。
[0022]
 酸化物層120は、多結晶であってもよい。酸化物層120は、単結晶から構成される必要はなく、微細な単結晶が互いに隣り合う状態であってもよい。上述するようなパラメータの範囲内であるMg で表される酸化物からなる酸化物層120は、緻密な酸化物層となり、金属光沢を有し、呈色する。
[0023]
 酸化物層120は、緻密であることが望ましいが、簡易的には、酸化物層120の基体110表面の所望の領域に対する被覆率が少なくとも70%以上であれば酸化物層120を緻密であると判定できる。これにより、酸化物層120は金属光沢を有し、呈色する。酸化物層120の基体110表面の所望の領域に対する被覆率は、より好ましくは、少なくとも80%、なお好ましくは90%以上である。これにより、酸化物層120は、耐食性を有し、呈色する。被覆率は、走査型電子顕微鏡等による表面観察、あるいは、エネルギー分散型分光法等の酸素の存在する領域によって容易に測定できる。
[0024]
 酸化物層120は、好ましくは、50nm以上1μm以下の厚さを有する。この範囲であれば、本発明の実施例において、Mg系合金100は呈色する。層の厚さが薄い方から厚くなるにしたがって、紫、青、緑青、青緑、緑、黄緑、黄、橙、赤と変化させることができる。ここで、酸化物層120の厚さは、TEM-EDS用いた酸化物層を含む断面の元素マッピング図を利用して求めることができる。即ち、O原子が検出される領域が酸化物層120に相当し、O原子が実質的に検出されない領域が基体110に相当する。これらの境界近傍において、O原子の濃度分布を直線近似し、濃度の中間値のところを酸化物層120及び基体110の境界として定め、表面からその境界までの厚みを酸化物層の厚みとすることができる。
[0025]
 酸化物層120は、さらに好ましくは、100nm以上350nm以下の厚さを有する。この範囲であれば、本発明の実施例において、Mg系合金100の酸化物層120が形成されやすく、呈色する。なお、酸化物層120の厚さは、均一であってもよいし、意図的に傾斜等変化させて不均一にしてもよい。厚さが一定であれば、本発明の実施例において、Mg系合金100は、厚さに応じた特定の色を呈することができる。厚さが傾斜していれば、或いは、厚さが連続的に変化していれば、本発明の実施例において、Mg系合金100は、グラデーションなどの複雑な色を呈することができる。このような観点から、本願明細書において「酸化物層の厚さが不均一である」とは、酸化物層の厚さを大小させることで、複雑な呈色を目的としたものをさし、それ以外の特定の色を均一に呈色させるものを「酸化物層の厚さが均一である」と解釈してよい。例えば、酸化物層120を備える部材において、位置に対し呈色する色が連続的に変化する、具体的には、部材の位置を連続的に変えていくと、呈色する色の波長が連続的に変化する場合は、複雑に呈色することが含まれる。色の変化は、例えば、上記呈色の種類の紫、青、緑青、青緑、緑、黄緑、黄、橙、赤、或いは、虹の7色(例えば、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤)において少なくとも2色に跨ってもよい。一方、均一な特定の色は、例えば、上記呈色の種類の紫、青、緑青、青緑、緑、黄緑、黄、橙、赤、或いは、虹の7色において何れか1色のみであってもよい。
[0026]
 基体110は、純Mgであってもよいし、Mg合金であってもよい。Mg合金である場合、好ましくは、Mgを主成分として、Scおよび/またはYを0.1at%以上50at%未満(例えば、Sc単独であれば、0.18重量%以上65.0重量%未満に相当、Y単独であれば、0.37重量%以上78.5重量%未満に相当)の範囲で含有する。これにより、このようなMg合金に後述する製造方法(熱酸化または陽極酸化)を採用するだけで、酸化物層120を形成できる。主成分とするマグネシウムの量は、50at%以上を含有することを意図する。なお、基体110が不可避不純物を含有することは言うまでもない。
[0027]
 Mg合金は、さらに好ましくは、Mgを主成分として、Scおよび/またはYを0.3at%以上40at%以下の範囲で含有する。この範囲であれば、Mg合金の基体110をより入手しやすい。
[0028]
 なおさらに好ましくは、Mg合金は、Mgを主成分として、Scを3at%以上40at%以下(5.4重量%以上55.2重量%以下に相当)の範囲で含有する。不可避不純物を除いて、Sc単独を上述の範囲で含有することにより、上述の酸化物層120を備えたMg系合金を提供できる。
[0029]
 なおさらに好ましくは、Mg合金は、Mgを主成分として、Yを0.5at%以上3.5at%以下(1.8重量%以上11.7重量%以下に相当)の範囲で含有する。不可避不純物を除いて、Y単独を上述の範囲で含有することにより、上述の酸化物層120を備えたMg系合金を提供できる。
[0030]
 なおさらに好ましくは、Mg合金は、Mgを主成分として、ScおよびYを1.5at%以上21.5at%以下の範囲で含有する。不可避不純物を除いて、ScおよびYの両方を上述の範囲で含有することにより、上述の酸化物層120を備えたMg系合金を提供できる。この場合、好ましくは、Mg合金は、上述の範囲において、ScをYよりも多く含有することがよい。
[0031]
 図2は、本発明の実施例において、別のMg系金属部材(例えば、板材)を模式的に示す断面図である。
[0032]
 本発明の実施例において、別のMg系金属部材200は、上述したMgまたはMg合金の基体110と、その基体110の表面を被覆する酸化物層220とを備える。ここで酸化物層220は、酸化物層120と同様に、少なくとも、Mgと、Scおよび/またはYと、Oとを含有するが、酸化物層220が表面に段差を有する点が異なる。段差の範囲Dは、好ましくは、5nm以上15nm以下の範囲である。このような段差は、基体110の結晶粒の向きによって、酸化物層220の成長速度が異なるために生じる。このような本発明の実施例において、別のMg系合金200は、酸化物層220の段差によって、キラキラと光り輝くステンドグラス調(例えば、隣り合う領域の色が異なる状態)を発揮し、意匠性をさらに高めることができる。ここで、例えば、段差は段の高低差であるが、一般に、段は、上方へ高くのぼるように重なっている台状のもの又はその一つ一つのことを言い、台状は、(周りから比べて)小高くて上部が平らになっている形のことを言う。つまり、上部及びそれより低い低部を含む高低の差のあるところにおいて、上部及び低部の表面が実質的に平行であるところ、その高低の差のことを言ってもよい。上部及び低部を連続的に繋ぐ表面が存在する場合、その表面及び上部及び低部の表面の成す角度が、段差と言えるような角度、例えば、30度以上である場合であってもよい。この繋ぐ表面が湾曲する場合は、平坦な面で近似して、表面同士の成す角度を規定することもできる。また、ここでは、段差は単なる高低の差という量を意味するだけでなく、そのような形状を指し示す用語として用いることができる。つまり、形状としての段差は、所定の幅若しくは長さを有することができ、この幅若しくは長さは、上述する高低の差が続く距離(又は長さ)を有していてもよい。本発明の実施例においては、この幅若しくは長さについて、特に限定されるものではないが、上述のように基体110の結晶粒の向きに段差が依存する場合もある。このような段差を含むMg系金属部材200は、多様な色を呈することができ、いわば、ステンドグラス調を備えると言える。
[0033]
 このような本発明の実施例において、Mg系金属部材100、200は、軽量であり、なおかつ、耐食性および意匠性に優れるため、時計、眼鏡、食器、あるいは、スマートフォン、デジタルカメラ等携帯用の電子機器などの筐体などの装飾物品に適用できる。
[0034]
 次に、上述した本発明の実施例において、Mg系金属部材の製造方法を説明する。
 図3は、本発明の実施例において、Mg系金属部材の製造工程を示すフローチャートである。
[0035]
 ステップS310:表面研磨されたMg合金を、少なくとも酸素を含有する雰囲気中、50℃を超えて800℃未満の温度範囲で熱酸化する。ここで、Mg合金は、マグネシウム(Mg)を主成分として、スカンジウム(Sc)および/またはイットリウム(Y)を0.1at%以上50at%未満の範囲で含有する。このような条件で熱酸化をすることにより、上述した酸化物層が形成される。本願発明者は、単に熱酸化するだけで、従来必要であった塗料や染料を用いることなく、金属光沢を維持したまま、呈色するMg系合金となることを見出した。なお、ステップS310に先立って、表面研磨されたMg合金を準備するステップを設けてもよい。上述する酸素を含有する雰囲気は、例えば、大気を含んでよい。含有する酸素が少ないと、十分な酸素が供給できなくなる虞もあり、酸化層を形成するのに十分な量の酸素を含有してよい。例えば、酸素分圧が10Pa以上、100Pa以上、または1kPa以上であってもよい。また、酸素が多く含まれ過ぎると、Mgは比較的活性な金属であるので、過剰な反応等により酸化物層の質が低下する虞もあり、緻密な酸化物層の形成が阻害されない量の酸素を含有してよい。例えば、酸素分圧が100MPa以下、10MPa以下、または1MPa以下であってもよい。
[0036]
 ここで、Mg合金は、上述した基体110として機能し、上述した組成を有するMg合金が採用されるが、重複して説明するのを避ける。また、Mg合金は、上述の組成を有すれば、特に制限はなく、入手可能なMg合金を使用できるが、例えば、高周波溶解、必要に応じて、圧延して製造してもよい。このような合金の製造は、例えば、特許文献1、非特許文献1に記載の方法等によって行われる。
[0037]
 Mg合金の表面は表面研磨されているので、緻密な酸化物層が形成されるが、表面研磨は、手研磨、機械研磨、化学研磨、電解研磨などの周知の方法が採用される。ここで、表面粗さRaが、0.0001μm以上2.0μm以下となるように表面研磨することがよい。これにより、Mg合金の表面は、鏡面あるいは微鏡面となり、続く熱酸化により緻密な酸化物層が形成されるとともに、酸化物層と基体との密着性に優れる。手研磨は、例示的には、シリコンカーバイド(SiC)、ジルコニウムコランダム、ボロンカーバイド等の砥材が付与された研磨紙を用いる。機械研磨は、例示的には、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、シリコンカーバイド、アルミナ等の研磨微粉を用いた湿式研磨を採用できる。化学研磨は、例示的には、硝酸を用いたリン酸-硝酸法、Kaiser法、硫酸を用いたAlupol法等を採用できる。電解研磨は、例示的には、Erfwerk法、Aluflex法を採用できる。なお、表面粗さRaは、0.05μm以上2.0μm以下であれば、密着性という観点では好ましい。
[0038]
 さらに、表面粗さを制御することによって、得られる酸化物層に基づく意匠性も自在に変化させることができる。表面粗さRaが小さいほど、高い金属光沢を有するMg系金属部材となり、表面粗さRaが大きいほど、すりガラスのようなマットな表面を有するMg系金属部材となる。例えば、表面粗さRaを0.0001μm以上0.2μm以下に制御すれば、金属光沢を有するMg系金属部材となり、表面粗さRaを0.2μmを超えて1.6μm以下に制御すれば、マットな表面を有するMg系金属部材となる。
[0039]
 熱酸化は、表面研磨されたMg合金を電気炉、雰囲気炉等の任意の炉に設置し、酸素を含有する雰囲気中で、加熱することによって行われる。この雰囲気、その他の諸条件に合わせて、適宜処理温度を選択してもよい。例えば、加熱し保持する温度が50℃以下の場合には、酸化物層が十分に形成されない虞がある。保持温度が800℃を超えると、Mg合金が溶解する虞がある。熱酸化は、好ましくは、300℃以上700℃以下の範囲で行われてもよい。この範囲において、上述の酸化物層が形成され得る。
[0040]
 熱酸化は、好ましくは、5分以上100日以下の間行われる。熱酸化の温度と時間とによって、得られる酸化物層の厚さを制御できる。例えば、低温で短時間の熱酸化を行うと、薄い酸化物層となり、熱酸化の温度の上昇または時間の増大にともなって、酸化物層の厚さは厚くなる。所望の厚さを有する酸化物層を得るために、当業者であれば、適宜熱酸化の温度および時間を上記範囲から選択し得る。
[0041]
 図4は、本発明の実施例において、Mg系金属部材の別の製造工程を示すフローチャートである。
[0042]
 ステップS410:表面研磨されたMg合金を、電解液中で陽極酸化する。ここで、Mg合金は、マグネシウム(Mg)を主成分として、スカンジウム(Sc)および/またはイットリウム(Y)を1at%以上50at%未満の範囲で含有する。このような条件で陽極酸化をすることにより、上述した酸化物層が形成される。本願発明者は、単に陽極酸化するだけで、従来必要であった塗料や染料を用いることなく、金属光沢を維持したまま、呈色するMg系合金となることを見出した。ここで、Mg合金は上述したとおりであるため、説明を省略する。ここでも、ステップS410に先立って、表面研磨されたMg合金を準備するステップを設けてもよい。
[0043]
 電解液は、周期表の第1族および第2族の元素の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩またはケイフッ化物を含有する電解水溶液が使用できる。例示的には、NaOH、KOH、Ba(OH) 等の水酸化物、Na CO 、K CO 、CaCO 、MgCO 等の炭酸塩、NaHCO 、KHCO 、Ca(HCO 等の重炭酸塩等を使用できる。電解液中の濃度は、好ましくは、0.1規定以上5規定以下の範囲である。
[0044]
 陽極酸化は、好ましくは、電圧2V以上40V以下の範囲であり、電流密度0.5A/dm 以上20A/dm 以下の範囲で行われる。この範囲であれば、上述の酸化物層を形成できる。陽極酸化は、より好ましくは、電圧5V以上15V以下の範囲であり、電流密度1A/dm 以上10A/dm 以下の範囲で行われる。また、好ましくは、陽極酸化は、5分以上20分以下の間行う。陽極酸化の電圧と時間とによって、得られる酸化物層の厚さを制御できる。例えば、低電圧で短時間の陽極酸化を行うと、薄い酸化物層となり、電圧の上昇または時間の増大にともなって、酸化物層の厚さは厚くなる。所望の厚さを有する酸化物層を得るために、当業者であれば、適宜陽極酸化の電圧および時間を上記範囲から選択し得る。
[0045]
 陽極酸化は、好ましくは、0℃以上35℃以下の温度範囲の電解液で行う。これにより、上述の酸化物層を形成できる。
[0046]
 図3を参照して説明した熱酸化においても、図4を参照して説明した陽極酸化においても、表面の結晶粒の向きがランダムなMg合金を使用することによって、図2で示したような、段差を有する酸化物層を有し、光輝性に優れたMg合金を製造できる。表面の結晶粒の向きがランダムなScを含有するMg合金は、例えば、Y.Ogawaら,Scripta Materialia,128(2017)27-31を参照して製造される。なお、結晶粒間で酸化物層に段差が存在することは簡易的には光学顕微鏡によって確認できるが、原子間力顕微鏡、レーザ顕微鏡あるいは透過型電子顕微鏡により詳細に確認できる。
[0047]
 本願発明者は、上述したように、Scおよび/またはYを含有するMg合金を用いて、単に熱酸化または陽極酸化するだけで、上述した酸化物層を形成でき、塗料や染料を有することなく、金属光沢を維持し、呈色する、意匠性に優れたMg系金属部材を提供できることを見出した。
[0048]
 図示しないが、純Mgまたは上述のMg合金の表面に、物理的気相成長法あるいは化学的気相成長法により、スカンジウム(Sc)および/またはイットリウム(Y)をソースに用いて酸化物層を形成してもよい。このようにしても、上述の酸化物層が得られる。
[0049]
 次に具体的な実施例を用いて本発明について詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
実施例
[0050]
[基体1~29]
 それぞれ市販のMg金属(純度99.9%)、Sc金属(純度99.9%)およびY金属(純度99.9%)を原料に用い、高周波溶解(日新技研株式会社製、NEV-M5T)した。なお、Mg金属、Sc金属およびY金属は、表1に示す組成比を満たすように混合された。
[0051]
 基体1、2および8~27を次のようにして製造した。原料を溶解後、鋳込まず坩堝止めとし、坩堝には高純度アルミナを用いた。得られたインゴットは圧化率10%とし冷間圧延で歪みを加え、600℃で16時間熱処理を施した。その後、必要に応じて500~700℃で熱処理し水冷した。これは、基体の特性を所望のものとするための処理であり、この熱処理中に生じた表面の酸化被膜等は、以降の処理で除去された。次いで、得られた板状のMg系合金をシリコンカーバイド(SiC)研磨紙、ダイヤモンドペーストおよび研磨懸濁液を用いて鏡面研磨した。このようにして得られたMg系合金を、それぞれ、基体1、2および9~27と称する。なお、基体8は、Scの含有量が多すぎたため、合金とならなかったため、以降の処理を行わなかった。
[0052]
 基体3~7を次のようにして製造した。原料を溶解後、鋳込まず坩堝止めとし、坩堝には高純度アルミナを用いた。得られたインゴットは600℃で熱間圧延した.熱間圧延後、厚さ約0.7mmの板状になるまで適宜600℃で10分間の焼鈍を施しながら冷間圧延を施した。その後、必要に応じて500~700°Cで熱処理し水冷した。次いで、得られた板状のMg系合金をシリコンカーバイド(SiC)研磨紙、ダイヤモンドペーストおよび研磨懸濁液を用いて鏡面研磨した。このようにして得られたMg系合金を、それぞれ、基体3~7と称する。
[0053]
 なお、基体1~27の組成が、表1の仕込み組成に一致することを、組成分析(エネルギー分散型X線分光法(EDX))により確認した。また、鏡面研磨後の基体1~7、9~27の表面粗さRaは、0.05μm以上0.2μm以下の範囲であった。粗さ測定には、原子間力顕微鏡を用いて、JIS R 1683:2014に準拠した条件で測定を行った。
[0054]
 基体28は、純Mgであった。基体29は、AZ31(Zn:3wt%、Al:1wt%)であった。
[0055]
 基体1~7および9~29を10mm×10mm×0.5~5mmの矩形の板状にし、続く、熱酸化あるいは陽極酸化を実施した。
[0056]
[表1]


[0057]
[実施例/比較例1~34]
 基体1~7および9~29を用い、表2に示す条件で熱酸化を行った。詳細には、各基体を電気炉に設置し、大気中で、表2に示す温度および時間にて熱酸化させた。なお、比較例32の試料は、熱処理により金属が溶解したため、これ以上の測定は行わなかった。
[0058]
[表2]


[0059]
[実施例/比較例35~53]
 基体3、5、12、22および26を用い、表3に示す条件で陽極酸化を行った。詳細には、各基体を1規定の水酸化ナトリウム浴に浸漬し、カーボン棒と一対の電極として電解を行った。なお、電解液温度は25℃であった。
[0060]
[表3]


[0061]
 実施例/比較例1~53で得られた試料について、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を付属した透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製、JEM-2100F)を用いて、表面および断面を観察し、回折パターンを得た。また、得られた試料について、EDXにより元素マッピングを調べ、点分析により組成を求めた。なお、組成は、試料の表面の10か所について行い、平均値とした。これらの結果を図5~図8および表4に示す。
[0062]
 さらに、得られた試料の表面の様子を観察し、金属光沢の有無、および、呈色状態について調べた。走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子社製、JSM-7000F)により酸化物層の被覆率を求めた。さらに、得られた試料に対してスコッチテープテスト(JIS H 8504:1999「めっきの密着性試験方法」)を実施し、密着性を調べた。また、得られた試料を、水(25℃)に3日間浸漬し、耐食性を調べた。これらの結果を表5に示す。
[0063]
 図5は、実施例40の試料の断面のTEM像を示す図である。
 図6は、実施例40の試料の断面の拡大したTEM像を示す図である。
[0064]
 図5によれば、基体上に層(膜)が位置している様子が分かる。この層の厚さは、180nmであった。さらに拡大した図6によれば、層中に微結晶が確認された。図示しないが、他の実施例も同様の様態を示した。
[0065]
 図7は、図6の丸印で示す領域の電子回折パターンを示す図である。
[0066]
 図7によれば、スポッティなリングパターンが示され、層は多結晶であることが分かった。図示しないが、他の実施例も同様の様態を示した。ここで、スポッティなとは、spotty状態であることを意味し、具体的には、斑点が多い状態を意味してもよい。従って、この酸化物層は、結晶方位が異なる微細な結晶相が混合した多結晶体を含有することが分かる。
[0067]
 図8は、実施例40の試料の断面の元素マッピングを示す図である。
[0068]
 図8(A)には、実施例40の試料の断面のTEM像を示し、基体上に層が位置することが分かる。図8(B)~(D)は、それぞれ、図8(A)に示す層の酸素(O)、マグネシウム(Mg)およびスカンジウム(Sc)の元素マッピングである。図面はグレースケールで示されるが、図8(A)に示される層と同じ位置において明るく示される領域が各元素に相当する。これによれば、層中、酸素、マグネシウムおよびスカンジウムが分散して位置していることが分かる。図示しないが、他の実施例も同様の元素マッピングを示した。
[0069]
[表4]


[0070]
 これらから、Mg合金を基体に用い、本発明の実施例において、図3に示す熱酸化、および、図4に示す陽極酸化によって、Mg合金上に、マグネシウムと、スカンジウムおよび/またはイットリウムと、酸素とを含有する酸化物層が形成されることが示された。表4によれば、酸化物層は、Mg (ただし、x+y+z=1、Mは、Scおよび/またはYである)で表され、パラメータx、yおよびzは、
 0.003≦x≦0.8
 0.03≦y≦0.65
 0.005≦z≦0.95
を満たす多結晶であることが分かった。
 この酸化物層は、上述するMg で表される限りは、同一の性質・性能を有すると考えられ同じ酸化物と解釈されてよい。この酸化物層が、このような同一の性質・性能を有する微細な結晶相を含むことは、実験的に確認された。従って、このような組成の範囲であれば、当該酸化物(若しくは複合酸化物)は、特定できる。ここで、Sc及びYは共に遷移金属に属する第3族元素であり、その原子半径は、162pm及び180pmと近く、酸化数も3、2、1であってもよく、互いに置換可能に上記結晶相に含まれることができる。また、熱酸化又は陽極酸化の何れの方法で形成されても、同一の性質・性能を有することが分かった。また、xがyに比較して大きくなると、上述するように酸化物層が粗になり易く、逆に、小さくなると、酸化物層は緻密になり易いと考えられる。酸化物層は、粗になりすぎても、或いは、緻密になりすぎてもその特性が劣化する虞がある。
 また、表4において、比較例34及び53の層の厚さにおいて、凹凸大のため測定不能とあるが、これは、酸化層が基体の表面に連続して形成されなかったので、高さ(粗さ)方向の異常値が生じたことによる。
[0071]
[表5]


[0072]
 表5によれば、本発明の実施例において、図3に示す熱酸化、および、図4に示す陽極酸化によって得られ、上述の組成を満たす酸化物層を備えた実施例1~31、35~52の試料(Mg系合金)は、金属光沢を有しており、酸化物層の干渉により種々の色を呈色し、意匠性に優れることが確認された。また、酸化物層の厚さを変化することによって呈色を制御できることが示された。いずれの実施例の試料も、テープテストによって剥離することなく、酸化物層の密着性が高いことが示された。さらに、いずれの実施例の試料も、一部腐食が見られたが耐食性を有していた。特に、酸化物層の被覆率が高いほど(例えば、90%以上)、耐食性が向上することが示された。
[0073]
 表5によれば、層の厚さが不均一な実施例46、47の試料は、グラデーションの呈色を示した。また、実施例39の試料は、ステンドグラス調を有していた。実施例39の試料を光学顕微鏡で観察したところ基体の結晶粒がランダムであり、酸化物層の表面に5nm以上15nm以下の範囲の段差を有することが分かった。
[0074]
 以上説明してきたように、本発明の実施例において、Scおよび/またはYを含有するMg合金を基体として用い、単に、熱酸化あるいは陽極酸化を行うだけで、金属光沢を備え、呈色し、意匠性に優れたMg系合金を提供できることが示された。また、このような意匠性に優れたMg系合金は、耐食性にも優れる。また、基体の形状は、特に問われないが、最終製品の形状に近いものが好ましい。例えば、図1にあるような板状部材であってもよい。

産業上の利用可能性

[0075]
 本発明の実施例において、酸化物層を有するMg系金属部材は、金属光沢および呈色しているので、意匠性に優れる。また、酸化物層は、耐食性にも優れる。このようなMg系金属部材は、時計、眼鏡、食器、あるいは、スマートフォン、デジタルカメラ等携帯用の電子機器などの筐体等の装飾物品に適用される。例えば、図9において示される時計300の時計フレーム310に本発明の実施例のMg系金属部材を適用することができる。また、図10において示される眼鏡400の眼鏡フレーム410に本発明の実施例のMg系金属部材を適用することができる。図11において示される食器(プレート)500に本発明の実施例のMg系金属部材を適用することができる。図12において示されるスマートフォン600のフレーム610に本発明の実施例のMg系金属部材を適用することができる。ここで、酸化物層は、所定の形状に変形させる際に、表面ひずみが入り易いので、形状をほぼ仕上げた状態で、熱酸化又は陽極酸化処理を行い表面酸化物層を形成することが好ましい。

符号の説明

[0076]
 100、200 Mg系金属部材
 110 MgまたはMg合金の基体
 120、220 酸化物層
 300 時計    310 Mg系金属部材が適用された時計フレーム
 400 眼鏡    410 Mg系金属部材が適用された眼鏡フレーム
 500 Mg系金属部材が適用された食器(プレート)
 600 スマートフォン
 610 Mg系金属部材が適用されたフレーム

請求の範囲

[請求項1]
 マグネシウムまたはマグネシウム合金の基体と、
 前記基体の表面を被覆する酸化物層と
 を備え、
 前記酸化物層は、少なくとも、マグネシウム(Mg)とスカンジウム(Sc)および/またはイットリウム(Y)と酸素(O)とを含有する、マグネシウム系金属部材。
[請求項2]
 前記酸化物層は、Mg (ただし、x+y+z=1、Mは、Scおよび/またはYである)で表され、パラメータx、yおよびzは、
 0.003≦x≦0.8
 0.03≦y≦0.65
 0.005≦z≦0.95
 を満たす、請求項1に記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項3]
 前記パラメータx、yおよびzは、
 0.2≦x≦0.75
 0.2≦y≦0.4
 0.005≦z≦0.45
 を満たす、請求項2に記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項4]
 前記酸化物層は、多結晶である、請求項1~3のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項5]
 前記酸化物層の前記基体に対する被覆率は、70%以上である、請求項1~4のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項6]
 前記酸化物層は、50nm以上1μm以下の範囲の厚さを有する、請求項1~5のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項7]
 前記酸化物層は、100nm以上350nm以下の範囲の厚さを有する、請求項6に記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項8]
 前記マグネシウム合金は、マグネシウムを主成分として、スカンジウムおよび/またはイットリウムを0.1at%以上50at%未満の範囲で含有する、請求項1~7のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項9]
 前記マグネシウム合金は、マグネシウムを主成分として、スカンジウムおよび/またはイットリウムを0.3at%以上40at%以下の範囲で含有する、請求項8に記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項10]
 前記酸化物層の厚さは、均一である、請求項1~9のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項11]
 前記酸化物層の厚さは、不均一である、請求項1~9のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項12]
 前記酸化物層は、表面に5nm以上15nm以下の範囲の段差を有する、請求項1~11のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材。
[請求項13]
 マグネシウムが主成分でスカンジウムおよび/またはイットリウムを0.1at%以上50at%未満の範囲において含有する表面研磨されたマグネシウム合金を、少なくとも酸素が含有される雰囲気中、50℃を超えて800℃未満の温度範囲において熱酸化する工程を包含する、請求項1~12のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材を製造する方法。
[請求項14]
 前記熱酸化する工程は、300℃以上700℃以下の温度範囲で行われる、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
前記熱酸化する工程は、5分以上100日以下の間行う、請求項13または14に記載の方法。
[請求項16]
 マグネシウムが主成分でスカンジウムおよび/またはイットリウムを0.1at%以上50at%未満の範囲において含有するマグネシウム合金を、電解液中で陽極酸化する工程を包含する、請求項1~12のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材を製造する方法。
[請求項17]
 前記陽極酸化する工程は、2V以上40V以下の電圧を印加する、請求項16に記載の方法。
[請求項18]
 前記陽極酸化する工程は、5分以上20分以下の間行う、請求項16または17に記載の方法。
[請求項19]
 マグネシウム系金属を用いた装飾物品であって、
 前記マグネシウム系金属は、請求項1~12のいずれかに記載のマグネシウム系金属部材である、装飾物品。
[請求項20]
 前記装飾物品は、時計、眼鏡、食器、および、携帯用電子機器の筐体からなる群から選択される、請求項19に記載の装飾物品。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]