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1. WO2020012591 - 方向推定装置及び無線装置

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明 細 書

発明の名称 方向推定装置及び無線装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006  

課題を解決するための手段

0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116  

符号の説明

0117  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24  

明 細 書

発明の名称 : 方向推定装置及び無線装置

技術分野

[0001]
 この発明は、信号の方向推定を行う方向推定装置及び無線装置に関する。

背景技術

[0002]
 測定対象物の存在方向を推定する無線装置では、信号を受信する際に信号の方向を広い角度範囲の中から精度よく推定する方向推定が必要とされる。一般に、無線装置で行われる方向推定では、複数のアンテナで受信された信号の位相差を用いて、その信号の到来方向を推定する。方向推定を行うアルゴリズムはさまざまであるが、基本的には、定められた角度範囲の中から、複数のアンテナ間で測定された位相差を生じるような信号の到来方向を探索し、その位相差を生じる方向を信号の到来方向として推定する。
[0003]
 従来の方向推定装置では、通常、ある品質基準を満たす全ての信号の到来方向を推定できるように、方向推定を行う一定の角度範囲があらかじめ定められている。例えば、オムニアンテナを各アンテナに持つ場合には、-90°~90°の方向を角度範囲として方向推定を行う場合がある。また、方向推定を行う角度範囲を、受信アンテナの持つビーム幅や信号送信を行ったビーム幅などをもとに定める場合(例えば、特許文献1、2)や、遅延プロファイルにより定める例もある(例えば、特許文献3)。このように角度範囲の設定にはさまざまな方法があるが、この角度範囲は方向推定を行う前にあらかじめ定められる。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2017-67623号公報
特許文献2 : 特開2016-151424号公報
特許文献3 : 特開2001-251233号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 従来の方向推定装置では、ある品質基準を満たす全ての信号の到来方向を推定できるように、方向推定を行う一定の角度範囲があらかじめ定められている。すなわち、従来の方向推定装置では、全ての信号に対して一定の角度範囲で方向推定を行うため、ある品質基準を満たす中で低い信号品質をもつ信号に対して方向推定を行えるように角度範囲が設定される。その結果、高い信号品質をもつ信号に対して、より広い角度範囲で方向推定を行うことができず、信号の到来方向が設定された角度範囲の外に位置する場合には、その信号の方向を推定できない課題がある。
[0006]
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、方向推定の対象となる信号の中で信号品質の高い信号に対して、従来技術よりも広い角度範囲で信号の方向を推定できる方向推定装置を得ることを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 この発明に係る方向推定装置は、複数のアンテナを用いて受信される信号の品質を測定又は予測する信号品質算出部と、前記信号品質算出部で測定又は予測された信号の品質に応じて、前記信号の到来方向を推定する角度範囲を設定する角度範囲設定部と、前記角度範囲設定部で設定された角度範囲で前記信号の到来方向を推定する方向推定部と、を備えたことを特徴とする。

発明の効果

[0008]
この発明によれば、方向推定の対象となる信号の中で信号品質の高い信号に対して、従来技術よりも広い角度範囲で方向推定を行うことができる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 実施の形態1に係る無線装置100及び方向推定装置500の構成例。
[図2] 実施の形態1に係る無線装置100の処理手順を表すフローチャート。
[図3] 実施の形態1における信号30のフォーマットの一例。
[図4] 実施の形態1において整合フィルタ4,5,6から出力される信号の位相。
[図5] 実施の形態1において整合フィルタ4,5,6から出力される信号の振幅の一例。
[図6] 実施の形態1において方向推定部9で行われる角度範囲の設定の一例。
[図7] 実施の形態1において例示する方向推定の利用環境。
[図8] 実施の形態1における無線装置100におけるアレーアンテナの配置と信号の到来方向φの関係を示す図。
[図9] 実施の形態1において方向推定法で得られるL(Γ、r)を評価した評価結果。
[図10] 実施の形態1における処理を説明するためのビームパターン図。
[図11] 実施の形態1において無線装置100を構成する処理回路。
[図12] 実施の形態1において無線装置100を構成する処理回路とメモリ。
[図13] 実施の形態2における無線システムの構成図。
[図14] 実施の形態2に係る無線装置200の構成図。
[図15] 実施の形態2に係る端末装置210の構成図。
[図16] 実施の形態2における無線システムの動作を示すフローチャート。
[図17] 実施の形態3において全方向で方向推定を行うためのアンテナ配置、推定精度、角度誤差。
[図18] 実施の形態3の無線装置100におけるアンテナ構成。
[図19] 実施の形態3における無線装置300の構成図。
[図20] 実施の形態4における無線装置400の信号送受信を示す図。
[図21] 実施の形態4における無線装置400の構成図。
[図22] 実施の形態4における無線装置400の動作を示すフローチャート
[図23] 実施の形態5における各時刻での方向推定の様子を示す図。
[図24] 実施の形態6においてL(Γ、r)のsinφ1に対する推移を示す図。

発明を実施するための形態

[0010]
 実施の形態1.
 以下、この発明の実施の形態について説明する。
[0011]
 図1は実施の形態1に係る無線装置100及び方向推定装置500の構成例を示す図である。無線装置100は、アンテナ0、1、2と、整合フィルタ4、5、6と、信号の品質を測定する信号品質算出部7と、信号品質算出部7で測定された信号の品質に応じて、信号の角度を推定する角度範囲を設定する角度範囲設定部8と、角度範囲設定部8で設定された角度範囲で信号の方向を推定する方向推定部9と、を備える。方向推定装置500は信号品質算出部7と角度範囲設定部8と方向推定部9を備える。なお、以降の各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。
[0012]
 無線装置100で受信される信号は測定対象物から送信されたものであっても、無線装置100が送信したものであっても構わない。例えば、無線装置100が信号を送信する場合、無線装置100は送信信号の測定対象物からの反射波を受信し、受信信号の方向推定を行うことで測定対象物の存在方向を推定できる。また、測定対象物が信号を送信する場合、無線装置100は測定対象物が送信した信号を受信し、受信信号の方向推定を行うことで、測定対象物の存在方向を推定できる。
[0013]
 アンテナ0、1、2は、無線伝送された信号を受信する。図1では3つのアンテナを備えた構成を一例として示しているが、アンテナ数は3に限られるものではなく、3以上のいかなるアンテナ数であっても構わない。整合フィルタ4、5、6は既知信号に対応したフィルタであり、受信信号に含まれる既知信号が整合フィルタ4、5、6を通過すると、整合フィルタ4、5、6の出力値は大きくなる。信号品質算出部7は、整合フィルタ4、5、6からの出力値を用いて、受信信号の信号品質を測定する。なお、信号品質の測定に用いられる信号は、整合フィルタ4、5、6からの出力値のいずれか1つであってもよいし、複数の出力値を用いても構わない。信号品質は、例えば、信号対雑音電力比(SNR:Signal to Noise Power Ratio)によって測定される。なお、信号品質はSNRに限られるものではなく、信号電力の標準偏差と雑音電力の標準偏差の比を用いてもよく、それ以外の信号品質を表すいかなるパラメータを用いても構わない。
[0014]
 角度範囲設定部8では、信号品質算出部7で測定された信号品質に応じて、方向推定部9で受信信号の方向を推定する際の角度範囲を設定する。方向推定部9は角度範囲設定部8で設定された角度範囲の中で、整合フィルタ4、5、6の出力値を用いて受信信号の方向を推定する。
[0015]
 次に、無線装置100の動作を説明する。図2に無線装置100の処理手順を表すフローチャートを示す。
[0016]
まず、無線装置100はアンテナ0、1、2で信号30を受信する(S201)。図3に信号30のフォーマットの一例を示す。図3では、信号30は+1と-1の振幅をもつ拡散信号として表されている。信号30は既知信号であれば、いかなる信号であっても構わない。例えば、シングルキャリア信号であっても、マルチキャリア信号であっても、拡散信号であっても、チャープ信号であっても、それ以外の信号であっても構わない。
[0017]
 次に、無線装置100はアンテナ0、1、2で受信された信号をそれぞれ整合フィルタ4、5、6に入力する(S202)。図4に整合フィルタ4、5、6から出力される信号の位相を示す。整合フィルタ4、5、6は、それぞれアンテナ0、1、2での受信信号に対応した信号を出力する。整合フィルタ4、5、6に対応した出力はそれぞれ位相θ0、θ1、θ2を有している。また、図4に示すように、アンテナ0とアンテナ1の距離をd1、アンテナ0とアンテナ2の距離をd2とする。
[0018]
図5に整合フィルタ4から出力される信号の振幅の一例を示す。整合フィルタ4に既知信号が入力されると、整合フィルタ4は振幅51を出力する。既知信号でない信号が整合フィルタ4に入力されると、整合フィルタ4の出力のピークは振幅51のピークより小さくなる。従って、整合フィルタ4からの出力を閾値判定することで、整合フィルタ4に既知信号が入力されたタイミングを抽出できる。なお、既知信号のタイミングはあらかじめ把握しておくこともできる。既知信号のタイミングを把握する方法は、既存のいかなる方法を用いてもよい。また、整合フィルタ4からの出力には、定常的な雑音52が含まれる。ここでは、整合フィルタ4からの出力について説明を行ったが、整合フィルタ5、6からも同様の信号が出力される。
[0019]
信号品質算出部7で信号品質を測定する(S203)。信号品質算出部7では、整合フィルタ4に信号の入力がない状態で定常的な雑音52の電力を測定する。また、既知信号が検出されるタイミングで整合フィルタ4の出力の振幅51を測定することにより、既知信号のもつ電力を測定できる。ここでは、整合フィルタ4を用いる場合について説明を行ったが、整合フィルタ4の出力の代わりに整合フィルタ5、6の出力を用いても構わない。また、信号品質算出部7は整合フィルタ4、5、6それぞれの出力の信号品質の平均を測定しても構わない。例えば、信号品質をSNRとして測定する場合には、既知信号の持つ電力と雑音52の電力の比を求める。なお、SNRの測定方法には、さまざまな方法があるが、既存のいかなる方法を用いてもよい。
[0020]
 角度範囲設定部8で角度範囲を設定する(S204)。図6に方向推定部9で行われる角度範囲の設定の一例を示す。図6に示すように、角度範囲設定部8では、信号の信号品質に応じて、異なる角度範囲を設定する。図6では、SNR<=10dBの場合は角度幅D(Dは特定の角度幅)、10dB<SNR<=20dBの場合は角度幅2D、20dB<SNR<=30dBの場合は、角度幅5Dを角度範囲として設定している。この角度範囲は、所定の基準を満たして方向推定が行われるように設定される。この基準は例えば、方向推定の成功率が所定の成功率を満たす、方向推定の精度が所定の精度を満たす、などの基準となる。
[0021]
 なお、角度範囲を設定する例は図6に限られるものではなく、方向推定が基準を満たすように、信号品質に応じて角度範囲を設定するいかなる形態でも構わない。例えば、信号品質を入力し、角度範囲を出力する関数によって、角度範囲の設定を行うこともできる。
[0022]
 角度範囲設定部8で設定された角度範囲を用いて、方向推定部9で受信信号の方向を推定する(S205)。角度範囲設定部8は、方向推定が基準を満たすように角度範囲を設定するので、方向推定部9では基準を満たす方向推定を行える。
[0023]
このように、無線装置100では、信号品質に応じて角度範囲を設定し、受信信号の方向を推定することにより、信号品質に適合した角度範囲内で方向を推定できる。その結果、信号品質の高い信号に対しては広い角度範囲で方向推定を行うことができる。
[0024]
 以下では、本実施の形態における理解をより深めるために、3アンテナを用いた場合の無線装置100における具体的な方向推定の一例と方向推定の特性解析を示す。ただし、本実施の形態で示される発明は、3アンテナの場合に限定されるものではない。
[0025]
(A1)利用環境
 図7に例示する方向推定の利用環境を示す。図7では、測定対象物である端末装置110が既知信号を搬送する電波を送信し、無線装置100がその電波の方向を推定する場合を例として示している。ここでは、電波が無線装置100において単一の方向とみなせる程度に狭い角度広がりをもち、その他の電波の散乱波が方向推定に与える影響は小さい環境を一例として取り上げる。
[0026]
(A2)応答ベクトル
 図8に無線装置100におけるアレーアンテナの配置と信号の到来方向φの関係を示す。無線装置100は線形に配列された3アンテナ(アンテナ0、1、2)を用いて、方向φの電波を受信する。このとき、電波の応答ベクトルa(φ)は次式で表される。
a(φ)=
[1,e(j2π(d1/λ)sinφ),e(j2π(d2/λ)sinφ)]
ここで、dm(m=1、2)はアンテナ0とアンテナmの間隔、λは電波の波長を示す。
[0027]
応答ベクトルa(φ)は次式に書き換えられる。
a(φ)=[1,e(j2πFT1),e(j2πFT2)] (1)
F = sinφ、 T1=d1/λ、 T2=d2/λ    (2)
ここで、T1、T2は固定値である。
[0028]
方向推定では、次式のFの範囲を扱う。
 F<=(B/2) ⇔ |φ|<=sin -1 (B/2)  (3)
ここで、BはFの推定範囲を表す。
[0029]
(A3)方向推定法
 方向推定部9で行われる方向推定法について説明する。
[0030]
 アンテナi(=0、1、2)の整合フィルタ出力では、次式の複素振幅が測定される。
(P) 1/2exp(jθi)+zi=(η i1/2exp{j(θi+ξi)}
                =(η i1/2exp(jθ’i)    
                     i=0、1、2(4)
ここで、Pは整合フィルタ出力での受信信号の電力、θiは整合フィルタ出力での受信信号の位相、ziは整合フィルタ出力での雑音、η iは受信信号と雑音を含めた電力、ξiは位相測定誤差、θ’iは測定位相を表す。
[0031]
 測定位相θ’iを用いると、アンテナ0とアンテナiの間の測定位相差Δθ’iは次式で表わされる。
  Δθ’i=θ’i-θ’0    i=1、2
ところで、式(1)より、雑音の影響を受けない理想状態でのアンテナ0とアンテナi(=1、2)の間の位相差ΔθiはF=sinφと次式の関係をもつ。
  Δθ1=2πFT1-2nπ   (5)
  Δθ2=2πFT2-2mπ   (6)
ここで、n、mは整数である。
[0032]
 実環境では位相差Δθiを測定できないので、その代わりに測定位相差Δθ’iを用いると、式(5)(6)に対応するFの推定値Fi(n)(i=1、2)はそれぞれ次式で表される。
  F1(n)=(n+Δθ’1/2π)B1   (7)
  F2(m)=(m+Δθ’2/2π)B2   (8)
  Bi=1/Ti=λ/di    i=1、2 (9)
ここで、Bi(i=1、2)は不確定要素nB1、mB2を発生させることなくアンテナ0とアンテナiを用いて方向推定を行えるFの範囲、n(or m)は不確定要素nB1(or mB2)を特定する番号を表す。
[0033]
 推定値Fi(n)(i=1、2)がFと同様に式(3)を満たすとき、次式が成り立つ。
 -B/2 <=(n+Δθ’1/2π)B1<=B/2
 -B/2 <=(n+Δθ’2/2π)B2<=B/2
従って、Δθ’i(i=1、2)の範囲を0<=Δθ’i<2πと定義すると、n、mの範囲は次式で与えられる。
 U={[-B/2B1]<=n<=[B/2B1]、
     [-B/2B2]<=m<=[B/2B2]} (10)
ここで、[a]はa以下の最大の整数を表す。
[0034]
 推定値F1(n)とF2(m)は整数n、mによってさまざまな値となるが、F1(n)とF2(m)が一致する状態が求めるべきF=sinφとなる可能性が高い。そこで、方向推定部9では以下の方向推定を行う。
(Q1)|F1(n)-F2(m)|を最小とする次式の整数組(n’、m’)を求める。
 (n’、m’)=arg (n,m)∈U min|F1(n)-F2(m)|
なお、U(式(10))における範囲Bは(n’、m’)を一意に決定できるように事前に設定される。

(Q2)次式の高精度な推定値F’を求め、方向推定値φを得る。
F’={(2T1 -T1T2)F1(n’)+(2T2 -T1T2)F2(m’)}
    /{2(T1 -T1T2+T2 )}      (11)
 φ=sin -1F’                  (12)
[0035]
 なお、式(11)は、以下で説明する導出過程によって導出される。まず、高精度な推定値F’をF1(n)とF2(m)との適切な重み付けを行う次式の形式で表現し、適切なウエイトw1、w2を求める。
  F’=w1・F1(n)+w2・F2(m)=w F  (13)
  w=[w1、w2]
  F=[F1(n)、F2(m)]
ここで、 は転置を表す。
[0036]
 式(5)(6)より、雑音の影響を受けない理想状態では、真の方向に対応するF0=sinφは次式の連立方程式を満たす。
   F0=n・B1+f1          (5’) 
   F0=m・B2+f2          (6’)
   fi=Δθi/(2πTi)  i=1、2
真の方向に対応するF0=sinφを与える(n、m)を(n0、m0)とする。
[0037]
 制御(Q1)において、(n’、m’)が真の方向に対応するF0=sinφのもつ(n0、m0)と一致する状態を「成功状態」と呼ぶ。成功状態(n’、m’)=(n0、m0)となる条件を以下で論じる。
[0038]
 まず、式(7)(8)は次式で書き直される。
   F1(n)=nB1+f1+e1     (7’)
   F2(m)=nB2+f2+e2     (8’)
   ei=(ξi-ξ0)/(2πTi)  i=1、2
制御(Q1)で成功状態(n’、m’)=(n0、m0)であることを想定すると、式(5’)(6’)(7’)(8’)より、Fは次式を満たす。
  F=1・F0+e             (14)
  1=[1、1]
  e=[e1、e2]
   =(1/2π)[ξ1/T1、ξ2/T2]
         -(ξ0/2π)[1/T1、1/T2]
式(13)(14)より、F’に含まれる真の方向に対応するF0=sinφの電力(w 1) と雑音電力(w e) の比を最大とするウエイトwは、次式のMVDR(Minimum Variance Distotionless Response)ウエイトとなる。
  w=Φ ―11/(1 Φ ―11)      (15)
   =1/(2(T1 -T1・T2+T2 ))
       [2T1 -T1・T2、-T1・T2+T2  
  Φ=E[ee ]                   
ここで、 は共役転置を表す。式(15)のウエイトwから式(13)(15)から、式(11)の関係が導かれる。
[0039]
(A4)方向推定可能な範囲B
 (A3)で示した方向推定部9での方向推定を想定し、角度範囲設定部8で設定する方向推定可能な範囲Bの特性について説明する。方向推定が適切に行われるのは、(Q1)で導出される整数組(n’、m’)が、(実環境では測定できないが、シミュレーション環境では算出可能な)式(5)(6)から導かれる雑音のない理想状態での整数組(n0、m0)と一致するときであり、この状態が不確定性(アンビギュイティ)による誤りを生じずに真の方向を推定できる成功状態となる。
[0040]
 そこで、成功状態となる成功率Psをまず導く。式(5’)(6’)(7’)(8’)を用いると、制御(Q1)におけるF1(n)-F2(m)は次式で表される。
  F1(n)-F2(m)=Δn・B1-Δm・B2+e1-e2
  Δn=n-n0
  Δm=m-m0
成功状態(n’、m’)=(n0、m0)となるのは、式(10)を満たし、かつ(n、m)≠(n0、m0)である(n、m)に対して次式が満たされる場合である。
  |X(n、m)+e1-e2|>|e1-e2| (16)
  X(n、m)=Δn・B1-Δm・B2
ここで、X(n、m)の中で、最も0に近い負の値X と最も0に近い正の値X をそれぞれ次式の形式で表す。
  X =Δn ・B1-Δm ・B2          
  X =Δn ・B1-Δm ・B2          
このとき、式(16)が満たされるのは、以下の場合となる。
 ・e1-e2>=0のとき
   X <-2(e1-e2) 従って、e1-e2<-X /2
 ・e1-e2<0のとき
   X <-2(e1-e2) 従って、e1-e2>-X /2
すなわち、
     -X /2<e1-e2<-X /2
が満たされる場合である。
[0041]
 従って、成功率Psは確率変数u
  u=2(e1-e2)/B1
   ={ξ1-ξ0-r(ξ2-ξ0)}/π
が次式を満たす確率に相当する。
   Y <u<Y            
   Y =Δn -Δm ・r      
   Y =Δn -Δm ・r      
   r=T1/T2=d1/d2     
、Y はそれぞれY=Δn-Δm・rの中で、最も0に近い負の値、最も0に近い正の値を表す。ここで、Δn、Δmは次式を満たす整数である。
  [-B/(2B1)]<=n<=[B/(2B1)]
  [-B/(2B2)]<=m<=[B/(2B2)]
であるので、Δn=n-n0、Δm=m-m0の範囲は
 [-B/(2B1)]-n0<=Δn<=[B/(2B1)]-n0(17)
 [-B/(2B2)]-m0<=Δm<=[B/(2B2)]-m0(18)
で与えられる。また、計算を行う際の確率変数ξiは
  ξi=arctan(yi/(Γ 1/2+xi))、 i=0,1,2
で与えられる。ここで、xi、yi(i=0、1、2)は分散1/2をもつ互いに独立なガウス変数、Γは整合フィルタ出力で位相θiを測定する際のSNRを表す。
[0042]
 式(17)(18)より、成功率Psはn0、 m0、つまり、n0、 m0によって定まる電波の方向φによって変化する。また、成功率Psは推定範囲Bによっても変化する。そこで、Ps>Preq(Preq:所要の成功率)を維持できる範囲Bを以下の処理で求める。
(R1)SNR Γ(=10、20、30dB)と比率r(0<r<1)を設定する。
(R2)SNR Γと比率rのもとで、全ての(n0、m0)∈Uに対して、Ps>Preqを維持できるB/B2の最大値L(Γ、r)を求める。
[0043]
 このとき、Ps>Preqを維持できる範囲Bは次式を満たす。
 B/B2 <=L(Γ、r)⇒B<=L(Γ、r)・B2 (19)
[0044]
 図9にPreq=0.99、SNR=10、20、30dB、比率r(0<r<1)に対してL(Γ、r)を評価した結果を示す。図では、SNR=10、20、30dBのいずれにおいても、r=0.37、0.63でL(Γ、r)は大きな値となる。なお、図9では、特定のアンテナ間隔d1、d2に依存せず、比r=d1/d2のみに基づき比率B/B2の評価を進めている。図9の評価結果はアンテナ間隔d1、d2の大きさに無関係に成り立つ関係である。
[0045]
 図9の結果から、所定の成功率Preqを維持しつつ方向推定を行える角度範囲は、アンテナ間隔の比r=d1/d2、と信号品質(例えば、SNR)に依存して定められることが分かる。この結果から、角度範囲設定部8で信号品質に基づいて方向推定を行う角度範囲を設定することにより、方向推定部9において基準を満たす方向推定を行うことができることが分かる。
[0046]
(A5)推定精度
 成功状態において、方向推定部9で行われる方向推定の方向の推定精度を導く。高精度な推定値F’(式(11))におけるF=sinφと雑音の電力比γは次式で表される。
 γ=1 Φ ―1
  =(8π (T1 +T2 -T1T2))/(3σ
  =(8π (d1 +d2 -d1d2))/(3λ σ ) (20)
ここで、σ =E[|ξ0| ]=E[|ξ1| ]=E[|ξ2| ]である。式(20)より、成功状態を維持しつつアンテナ間隔d1、d2を広げることで、方向の推定精度を向上できる。
[0047]
なお、電力比γは推定値F’と次式の関係をもつ。
     F’=sinφ+e    E[|e| 2]=1/γ
ここで、eは誤差成分を表す。
φ=0の場合、次式が成り立つ。
     φ’≒φ+e=e
このとき、推定値φ’に含まれる角度誤差の標準偏差(rad)は
     E[|e| 21/2=1/γ 1/2
角度誤差の標準偏差(°)は
     180/(π・γ 1/2
で与えられる。
   (3アンテナを想定した具体的な処理の一例と特性解析の説明終わり)
[0048]
 図9で示されるように、信号品質算出部7で測定される信号のSNRによって、所要の成功率Preqを満たしつつ方向推定を行うことのできる角度範囲Bの最大値=L(Γ、r)・B2は変化する。従って、本実施の形態では、S204において、角度範囲設定部8で信号の品質(例えば、SNR Γ)に応じてL(Γ、r)・B2より小さくなる角度範囲Bを設定し、S205において、方向推定部9で角度範囲Bの範囲内で受信信号の方向を推定する。この構成によって、信号の品質が変化する場合にも、成功率などの所要の基準を満たしつつ、方向推定を行うことが可能となる。
[0049]
 なお、図9で示されるように、方向推定を行うことのできる角度範囲Bの最大値は、アンテナ間隔の比率r=d1/d2によって異なる。従って、角度範囲Bの最大値を大きくするためには、アンテナ間隔の比率r=d1/d2を適切に設定する必要がある。
[0050]
 一般論として、信号の品質に応じて角度範囲Bを設定する処理は、図10で示されるビームパターンを用いて以下のように捉えることもできる。まず、複数のアンテナによって形成されるビームパターンのメインローブ1001の方向を様々な方向に変更し、最も電力が高くなるメインローブ1001の方向を信号の方向として検出する方向推定を想定する。このとき、方向推定では、メインローブ1001のピークで受信された信号30の受信電力と、サイドローブ1002及びグレーティングローブ1003で受信された信号30の受信電力を区別する必要がある。この受信電力の区別を十分小さい誤り率で行うためには、メインローブ1001のピークと、サイドローブ1002及びグレーティングローブ1003のピークの利得差1004により生じる信号の受信電力差よりも、受信信号に含まれる雑音電力が小さくなる必要がある。これは、雑音電力が大きいと、サイドローブ1002又はグレーティングローブ1003で受信した信号を、メインローブ1001で受信した信号と誤って検出し、誤った方向推定が行われるためである。従って、方向推定を誤りなく行えるか否かは雑音電力の大きさに依存し、利得差1004により生じる信号の受信電力差よりも、受信信号に含まれる雑音電力が小さい場合には、広い角度範囲1005で方向推定を行える。これに対して、利得差1004により生じる信号の受信電力差よりも、受信信号に含まれる雑音電力が大きい場合には、グレーティングローブ1003で受信した信号をメインローブ1001で受信した信号と誤る可能性があるため、信号の方向を推定する際にグレーティングローブ1003が現れない程度の狭い角度範囲1006で方向推定を行う必要がある。このように、受信信号に含まれる雑音電力の大きさによって、適切な誤り率で方向推定を行える角度範囲は変化する。
[0051]
 その結果、本実施の形態で示されるように、信号の品質に応じて、方向推定を行う角度範囲を決定する処理を行うことで、さまざまな信号に対して、適切な誤り率を維持しつつ方向推定を行うことが可能となる。特に、品質の高い信号に対しては、広い角度範囲で方向推定を行うことが可能である。この原理は、アンテナ数及び方向推定法に関わらず基本的に成り立つものである。なお、下記の非特許文献1に記載されている通り、方向推定法には、ビーム走査型とヌル走査型がある。本実施の形態では、ビーム走査型の方向推定を基本的に想定して説明を行ったが、ヌル走査型の方向推定に対しても、同様の原理が成り立つ。ヌル走査型の方向推定では、信号品質(例えば、SNR)が低いと受信信号から算出されるアレーアンテナの相関行列における雑音の影響が大きくなり、算出されるヌル方向に対応したウエイトベクトルが理想のウエイトベクトルに対して誤差を持つ。その結果、そのウエイトベクトルを用いて到来方向を推定すると、グレーティングローブの方向を誤って検出する可能性が高くなる。このように、ヌル走査型の方向推定においても、信号品質(例えば、SNR)が低いとグレーティングローブの方向を誤って検出する可能性が高くなる。従って、ヌル走査型の方向推定においても、信号の品質に応じて、方向推定を行う角度範囲を決定する処理を行うことで、さまざまな信号に対して、適切な誤り率を維持しつつ方向推定を行うことが可能となる。
[非特許文献1]菊間 信良、”アレーアンテナによる適応信号処理”科学技術出版
[0052]
 これまでの説明で明らかなように、本実施の形態では、3アンテナの場合を例にとって説明したが、本実施の形態で示される発明は3アンテナに限定されるものではない。また、本実施の形態で示した到来方向推定法に限定されるものではない。3アンテナ以上であればいかなるアンテナ数に対しても、角度範囲設定部8で信号の品質に応じて角度範囲Bを設定し、方向推定部9で角度範囲Bの範囲内で一般的に知られている方向推定法を用いて受信信号の方向を推定することができる。
[0053]
 なお、これまでに述べた信号品質によって、適切な誤り率を維持しつつ方向推定を行える角度範囲が異なることは、筆者の知る限り、従来の文献では示されていない。すなわち、これまで信号品質の違いによって、方向推定を行える角度範囲に違いが生じることはこれまで知られておらず、本実施の形態で初めて明らかになるものである。また、本実施の形態で述べた無線装置100及び方向推定装置500は、その新たな知見に基づいて新たに構築されるものである。
[0054]
 無線装置100における整合フィルタ4、5、6、信号品質算出部7、角度範囲設定部8、方向推定部9の各機能は、処理回路(Processing Circuitry)により実現される。この処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサー、DSPともいう)であってもよい。
[0055]
 処理回路が専用のハードウェアである場合、図11に示すように、処理回路1101は、例えば、単一回路(a single circuit)、複合回路(multiple circuits)、プログラム化したプロセッサー(a programmed processor)、並列プログラム化したプロセッサー(multiple programmed processors)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。整合フィルタ4、5、6、信号品質算出部7、角度範囲設定部8、方向推定部9の各部の機能それぞれを処理回路で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路で実現してもよい。
[0056]
 処理回路がCPUの場合、無線装置100は、図12に示すように、処理回路1201と、メモリ1202とを備える。整合フィルタ4、5、6、信号品質算出部7、角度範囲設定部8、方向推定部9の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアやファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ1202に格納される。処理回路1201は、メモリ1202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、無線装置100は、処理回路1201により実行されるときに、受信信号のフィルタ出力を生成するステップ、信号品質を測定するステップ、角度範囲を設定するステップ、方向を推定するステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1202を備える。これらのプログラムの一例は図2に示されるステップS202~S205で表すことができる。また、これらのプログラムは、整合フィルタ4、5、6、信号品質算出部7、角度範囲設定部8、方向推定部9の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ1202とは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の不揮発性または揮発性の半導体メモリや、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等が該当する。
[0057]
 なお、整合フィルタ4、5、6、信号品質算出部7、角度範囲設定部8、方向推定部9の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、整合フィルタ4、5、6、信号品質算出部7については専用のハードウェアとしての処理回路でその機能を実現し、角度範囲設定部8、方向推定部9については処理回路がメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
[0058]
 このように、処理回路1201は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
[0059]
 以上で示したように、本実施の形態に係る無線装置100は、受信信号の信号品質に応じて、受信信号の方向推定を行う角度範囲を設定する。この構成により、高い信号品質の信号に対して従来技術よりも広い角度範囲で方向推定を行うことができ、広い角度範囲の中から測定対象物の存在方向を推定することができる。なお、本実施の形態では、(A3)で特定の方向推定法を具体例として、方向推定の特性を説明したが、本実施の形態は、(A3)で示した方向推定法に限られるものではなく、一般に知られている方向推定法に対して適用可能である。すなわち、推定可能な角度範囲が信号のSNRに応じて変化するという現象は、一般に知られている方向推定法に対して成り立つものであり、一般的な方向推定において信号のSNRに応じて角度範囲を設定することが可能である。
[0060]
 なお、実施の形態1では、無線装置100における方向推定について述べたが、信号の方向を推定する形態であれば、無線信号以外に対しても、本実施の形態の方向推定を適用することができる。すなわち、無線装置100内の方向推定装置500は無線信号のみでなく、任意の信号の方向推定に適用することができる。例えば、音声信号の方向推定、振動の方向推定、など、さまざまな形態の方向推定に本実施の形態の方向推定を適用できる。従って、方向推定装置500の適用先は無線信号に限定されるものではない。
[0061]
 また、本実施の形態では、既知信号31、33、35を整合フィルタ4、5、6に入力して、信号30の位相を測定する形態を示したが、信号30が無変調信号(CW:Continuous Wave)である場合には、整合フィルタ4、5、6を用いなくても、信号30の位相をそのまま測定することができる。例えば、信号30の位相を測定するタイミングが事前に分かっており、そのタイミングで無変調信号を測定する場合、信号30の位相をそのまま測定することができる。
[0062]
 このように、本実施の形態の方向推定装置500は、複数のアンテナ0、1、2を用いて受信される信号30の品質を測定する信号品質算出部7と、信号品質算出部7で測定された信号の品質に応じて、前記信号の到来方向を推定する角度範囲を設定する角度範囲設定部8と、角度範囲設定部8で設定された角度範囲で前記信号の到来方向を推定する方向推定部9と、を備えたことを特徴とする。この構成によって、方向推定の対象となる信号の中で高い信号品質の信号に対して、従来技術よりも広い角度範囲で方向推定を行うことができる。
[0063]
 また、本実施の形態に係る方向推定装置500において、信号品質算出部7は、信号30の信号対雑音電力比を前記品質として測定することを特徴とする。この構成によって、信号品質を簡易に測定でき、信号対雑音電力比と角度範囲との関係(例えば、図9)を用いて、角度範囲設定部8で適切な角度範囲を設定することができる。例えば、図9の関係を用いれば、図6に示すSNRと角度範囲の関係を導くことも可能となる。
[0064]
 また、本実施の形態に係る無線装置100では、無線伝送された信号30を複数のアンテナ0、1、2を用いて受信し、方向推定装置500を用いて、受信された信号に対する方向推定を行うことを特徴とする。この構成によって、従来技術より広い角度範囲で方向推定を行うことができる。
[0065]
実施の形態2.
 本実施の形態では、信号の送信制御を行うことで、受信信号の方向推定を円滑に行える形態について開示する。
[0066]
 図9に示されるように、無線装置100では信号品質に応じて方向推定を行える角度範囲が定まる。そこで、本実施の形態では、適した角度範囲で方向推定を行えるように、無線装置200から端末装置210に制御情報を通知し、端末装置210が制御情報に基づき信号を送信する形態を示す。
[0067]
 図13に実施の形態2における無線システムの構成を示す。この無線システムは無線装置200と端末装置210を備える。端末装置210は図3に示される信号30を送信し、無線装置200は信号30を受信し、受信信号の方向推定を行う。
[0068]
 図14に実施の形態2における無線装置200の構成を示す。無線装置200は実施の形態1の構成に加えて、端末装置210に制御情報を通知する制御情報通知部10を備える。図15に実施の形態2における端末装置210の構成を示す。端末装置210はアンテナ11、信号を送信する信号送信部12、送信する信号の信号フォーマットまたは送信電力を設定する送信制御部13、端末装置210から制御情報を受信する制御情報受信部14を備える。
[0069]
 図16に本実施の形態における動作をフローチャートとして示す。本実施の形態では、無線装置200の制御情報通知部10はこれまでの信号受信結果に基づき、次の信号送信に際して必要となる制御情報を端末装置210に通知する(S1601)。通知する制御情報にはさまざまな形態がある。例えば、制御情報通知部10は信号品質算出部7からこれまでに受信した信号の品質情報を受け取り、その信号品質情報を端末装置210に通知してもよい。別の例では、制御情報通知部10は信号品質情報に加えて角度範囲設定部8からこれまでに設定された角度範囲の情報を受け取り、次の信号送信で必要とされる角度範囲を考慮したうえで、必要となる送信電力情報を通知することも可能である。この場合、必要となる角度範囲、アンテナ間隔の比率rが定まると、図9に示される特性曲線から、必要なSNRが定まる。その必要なSNRを実現するために必要な送信電力を送信電力制御情報によって通知する。また、別の例では、制御情報通知部10は、次の信号送信で必要とされる角度範囲を考慮したうえで、必要となる信号フォーマットを通知することも可能である。ここで、信号フォーマットには、送信信号を拡散信号とする場合の拡散率、送信信号をチャープ信号とする場合のチャープレート、送信信号を特定の既知信号とする場合のその既知信号の構成などが含まれる。この信号品質情報、送信電力情報、信号フォーマット情報を通知する方法は、これまで知られたいかなる方法でも構わない。
[0070]
 端末装置210は制御情報が通知されると、制御情報受信部14でその制御情報を受信する。端末装置210の送信制御部13では、受信した制御情報に基づき、次回の送信に適した送信電力または信号フォーマットを設定する(S1602)。ここで、信号フォーマットとして、送信信号を拡散信号とする場合の拡散率、送信信号をチャープ信号とする場合のチャープレートを通知することが可能であり、端末装置210はその通知に従い適切な信号フォーマットを設定する。
[0071]
 端末装置210は選定した信号フォーマットで信号を送信する(S1603)。無線装置200は受信信号に対して、方向推定を行う(S1604)。この際、無線装置200の方向推定部9では実施の形態1で示した方向推定法を用いてもよいし、その他の方向推定法を用いてもよい。また、無線装置200は信号30の受信タイミングを整合フィルタ4、5、6の出力から認識することができるし、端末装置210が送信するタイミングを無線装置200に事前に通知し、無線装置200がその通知情報から信号30の受信タイミングを構成とすることもできる。この整合フィルタ4、5、6からの出力タイミングに基づき、方向推定部9で受信信号の方向推定を行うことができる。
[0072]
 また、本実施の形態では、無線装置200が端末装置210に制御情報を通知する構成を示したが、制御情報の通知を行わない構成を用いることも可能である。例えば、無線装置200が端末装置210に既知信号を送信し、端末装置210が送信された既知信号を用いてSNRを測定することにより、端末装置210が信号を送信した時に得られるSNRを概ね把握することができる。その結果を用いることで、端末装置210が送信制御部13で送信制御を行い、信号を送信する構成も可能である。
[0073]
 また、本実施の形態では、端末装置210を例として説明したが、端末装置210の代わりにいかなる無線装置を用いても構わない。
[0074]
 このように、本実施の形態では、無線装置である端末装置210から送信され、受信局である無線装置100(無線装置200)で受信される信号、の方向の推定が、無線装置100で必要な角度範囲で行われるように、送信電力又は信号フォーマットを決定する送信制御部13と、前記送信制御部で決定された送信電力又は信号フォーマットに従い、信号を送信する信号送信部12と、を備えたことを特徴とする。この構成によって、必要な角度範囲に応じて、無線装置100(無線装置200)で方向推定を行う際の信号の品質(例えば、SNR)を調整できるため、不要な送信電力を低減できる。また、適した信号フォーマットを用いることで、必要な角度範囲での方向推定を行うことが可能となる。
[0075]
 また、本実施の形態では、無線装置100(無線装置200)で受信される信号は拡散信号であり、前記信号フォーマットは、前記拡散信号の拡散率を含むことを特徴とする。この構成により、端末装置210が所定の拡散率の拡散信号を送信し、無線装置100(無線装置200)で整合フィルタ4、5、6を用いてその拡散信号を逆拡散することにより、無線装置100(無線装置200)で方向推定を行う際に必要となる信号の品質(例えば、SNR)を簡易に調整することが可能となる。
[0076]
 また、本実施の形態では、無線装置100(無線装置200)で受信される信号はチャープ信号であり、前記信号フォーマットは、前記チャープ信号のチャープレートを含むことを特徴とする。この構成により、端末装置210が所定のチャープレートのチャープ信号を送信し、無線装置100(無線装置200)で整合フィルタ4、5、6を用いてそのチャープ信号のパルス圧縮を行うことにより、無線装置100(無線装置200)で方向推定を行う際に必要となる信号の品質(例えば、SNR)を簡易に調整することが可能となる。
[0077]
実施の形態3.
 本実施の形態では、実施の形態1で示した解析の具体例として、広範囲で高精度な方向推定を行えるアンテナ配置の例を示すとともに、複数のアンテナの中から方向推定に用いるアンテナを選択する実施の形態について説明する。なお、以下では、主に3アンテナを用いた場合について説明するが、本実施の形態は3アンテナに限られるものではなく、3アンテナ以上のいかなるアンテナに対しても適用できるものである。
[0078]
 全方向(|φ|<=π/2)が方向推定の範囲となる状態は、式(3)でB=2の状態に相当する。従って、全方向で成功率Preqを維持するには、式(19)がB=2を満たす必要があり、アンテナ間隔d2に次式の制約が課される。
   d2 <= L(Γ、r)・λ/2   (20)
ここで、λは信号を搬送する電波の波長を示す。実施の形態1における(A5)の議論より、式(20)を維持しつつ、アンテナ間隔d1、 d2を広げることで方向の推定精度を向上できる。従って、全方向で成功率Preqを維持し、最高の推定精度を得られるアンテナ間隔(d1、d2)は次式で与えられる。
(d1、d2)=(L(Γ、r)rλ/2、L(Γ、r)λ/2)(21)
[0079]
 式(21)の適用例を示す。図9においてL(Γ、r)が大きいr=0.37の場合を取り上げると、
 L(Γ、0.37)=2   Γ=10dB   (22)
          =8   Γ=20dB
          =27  Γ=30dB
であり、式(21)の(d1、d2)は次式で与えられる。
(d1、d2)=(0.37λ、λ)      Γ=10dB
        (1.48λ、4λ)     Γ=20dB
        (4.995λ、13.5λ) Γ=30dB (23)
また、式(23)のアンテナ配置を用いたときの推定精度に関して、次式が成り立つ。
   γ| SNR/γ| 10dB=G ・G       (24)
   G =L(Γ、0.37) /L(10dB、0.37)
   G =σ 10dB/σ SNR
ここで、・| SNRはSNRが与えられた状態でのパラメータ・の値、G はアンテナ間隔が広くなることによる精度改善、G は位相測定誤差の低下による精度改善を表す。
[0080]
 図17にSNR Γ=10、20、30dBにおいて全方向で成功率Preq=0.99を維持し、最高の推定精度を得られるアンテナ配置(d1、d2)、そのアンテナ配置を用いたときの推定精度γ及び角度誤差の特性をまとめる。図17からSNRが高ければアンテナ間隔が半波長より広くても、高い成功率を維持しつつ広範囲で高精度な方向推定を行えることが分かる。また、SNRが高くなるにつれ、アンテナ間隔が広くなることによる精度改善G と位相測定誤差の低下による精度改善G の両面から推定精度が改善されることが分かる。
[0081]
 図18に本実施の形態の無線装置300におけるアンテナ構成を示す。図18では、実施の形態1で示した無線装置100のもつアンテナ0、1、2に加えて、アンテナ0’、2’を備えている。ここでは、アンテナ0とアンテナ1のアンテナ間隔を0.37λ、アンテナ0とアンテナ2のアンテナ間隔を1λ、アンテナ0’とアンテナ1の間隔を1.48λ、アンテナ0’とアンテナ2’の間隔を4λとした一例を示している。
[0082]
 図19に本実施の形態の無線装置300の構成を示す。無線装置300では、実施の形態1で示した無線装置100の構成に加えて、アンテナ選択部301を備えている。アンテナ選択部301は、アンテナ0からの受信信号とアンテナ0’からの受信信号のいずれを用いるかを選択する。同様に、アンテナ2からの受信信号とアンテナ2’からの受信信号のいずれを用いるかを選択する。なお、信号品質算出部7では信号が連続的に伝送される状態では、アンテナ選択部301でスイッチ302、303を介して適宜アンテナを切り替えることで、アンテナ0、0’、1、2、2’の信号品質を全て測定することができる。
[0083]
 本実施の形態では、信号品質算出部7でアンテナ0、0’、1、2、2’の信号品質を測定し、測定された信号品質(例えば、SNR)に基づいて、アンテナ選択部301で方向推定に用いる複数のアンテナを選択する。例えば、SNR Γ=10dBの場合には、図17に基づけば、全方向で成功率Preq=0.99を維持し、最高の推定精度を得られるアンテナ配置は(d1、d2)=(0.37λ、λ)となる。従って、アンテナ選択部301は図18においてアンテナ0、1、2を選択し、アンテナ0、1、2での受信信号を用いて信号の到来方向を推定する。また、SNR Γ=20dBの場合には、図17に基づけば、全方向で成功率Preq=0.99を維持し、最高の推定精度を得られるアンテナ配置は(d1、d2)=(1.48λ、4λ)となる。従って、アンテナ選択部301は図18においてアンテナ0’、1、2’を選択し、アンテナ0’、1、2’での受信信号を用いて信号の到来方向を推定する。このように、アンテナ選択部301が測定された信号品質(例えば、SNR)に基づき、方向推定に用いる複数のアンテナを選択することにより、それぞれの信号品質のもとで、全方向で成功率Preq=0.99を維持し、高い推定精度で方向推定を行うことが可能となる。また、アンテナを選択して方向推定を行うことで、少ない数のアンテナでの受信信号を用いて少ない演算量で信号処理を行うことが可能となる。なお、ここでは、全方向で方向推定を行う場合について説明したが、方向推定は必ずしも全方向で行うものでなくても構わない。また、成功率Preq=0.99の場合を取り上げたが、成功率はそれ以外の値でも構わない。また、アンテナの選択は、いずれのアンテナであっても構わない。
[0084]
 このように、本実施の形態では、無線装置300が信号品質算出部7で算出された信号品質に応じて、無線装置300の備える複数のアンテナの中から、方向推定に用いるアンテナを選択するアンテナ選択部301を備える。この構成により、信号品質に応じて、方向推定を行う角度範囲の中で所定の成功率を維持しつつ、高い推定精度で信号の方向推定を行うことが可能となる。
[0085]
 また、ここまでは、アンテナを選択する構成について述べたが、アンテナを選択する代わりに、アンテナを移動する構成によって、同じ目的を達成することも可能である。すなわち、アンテナ0、0’からアンテナを選択する代わりに1アンテナをアンテナ0の位置とアンテナ0’の位置のいずれかに移動して配置する構成も可能である。この場合、無線装置300はアンテナ選択部301の代わりに、信号品質算出部7で算出された信号品質によって定められる位置に複数のアンテナ0、1、2を移動するアンテナ移動制御部を備える。この構成によって、アンテナを選択する場合と同様に、信号品質に応じて、方向推定を行う角度範囲の中で所定の成功率を維持しつつ、高い推定精度で信号の方向推定を行うことが可能となる。
[0086]
実施の形態4.
 本実施の形態では、実施の形態1~3では、異なる無線装置が送信と受信を行う場合を示したのに対し、本実施の形態では、1つの無線装置が信号送信と信号受信を行う形態を示す。
[0087]
 無線通信を行う場合、実施の形態2で示したように無線装置200と端末装置210は通常異なる無線装置となる。一方、測定対象物の移動速度を測定する場合、図20に示すように1つの無線装置400が信号30を送信し、測定対象物2001で反射された信号30を同じ無線装置400が受信する。無線装置400は測定対象物で反射された信号30の到来方向を推定することができる。
[0088]
 図21に本実施の形態における無線装置400の構成を示す。無線装置400は、実施の形態1で示した無線装置100の構成に加えて、送信制御部21と信号送信部22を備える。
[0089]
 図22に本実施の形態における無線装置400の動作を示すフローチャートを示す。本実施の形態では、無線装置400の送信制御部21はこれまでの信号受信結果に基づき、次の信号送信に際して必要となる制御情報を決定し、その制御情報に基づき信号を送信するように信号送信部22を制御する(S2201)。制御情報にはさまざまな形態がある。例えば、送信制御部21は信号品質算出部7からこれまでに受信した信号の信号品質を受け取り、さらに角度範囲設定部8からこれまでに設定された角度範囲の情報を受け取り、次の信号送信で必要とされる角度範囲を考慮したうえで、必要となる送信電力または信号フォーマットを決定する。より具体的には、必要となる角度範囲が定まると、図9に示される特性曲線から、必要なSNRが定まる。その必要なSNRを実現するために必要な送信電力、信号フォーマットを決定する。信号送信部22は送信制御部21で決定された制御情報に従い、信号30を送信する(S2202)。無線装置400から送信された信号30は測定対象物2001で反射され、その反射波は無線装置400で受信される(S2203)。無線装置400では、実施の形態1~3と同じく受信信号の方向推定を行い(S2204)、測定対象物2001の方向を検出する。
[0090]
 このように、本実施の形態では、1つの無線装置が信号の送受信を行い、受信信号の方向推定を行う。
[0091]
 すなわち、本実施の形態に係る無線装置400は、自装置から送信され、測定対象物2001で反射され、自装置で受信される信号、の方向の推定が、無線装置100で必要な角度範囲で行われるように、送信電力又は信号フォーマットを決定する送信制御部21と、送信制御部21で決定された送信電力又は信号フォーマットに従い、信号を送信する信号送信部22と、を備えたことを特徴とする。この構成によって、測定対象物2001の存在方向及び移動速度に応じて必要となる送信電力又は信号フォーマットを用いて、測定対象物2001の方向を推定することができ、不要な送信電力を低減することが可能となる。また、適した信号フォーマットをもつ信号30を用いることで、広い角度範囲での方向推定が可能となる。
[0092]
実施の形態5.
 実施の形態5では、実施の形態2~4における信号送信に際して、信号の送信電力または信号フォーマットを調整する一形態を示すものである。  
[0093]
 図23に本実施の形態における各時刻での方向推定の様子を示す。実施の形態2~4で示したように、無線装置200で受信される信号の受信電力や信号フォーマットによって、方向推定することのできる角度範囲は異なる。一方、信号の到来方向は通常、時間的に連続に変化する。
[0094]
 このような特性を考慮して、本実施の形態では、端末装置210が時刻p1、p4で信号フォーマット・送信電力が規格Jの信号を送信し、時刻p2、p3、p5、p6で信号フォーマット・送信電力が規格Kの信号を送信する。ここで、規格Jの信号では、規格Kの信号よりも広い角度範囲の方向を推定できる。実施の形態2における制御情報通知部10(図14)または送信制御13(図15)でこの信号フォーマット・送信電力を決定することにより、この信号送信を行うことができる。
[0095]
 図23に示すように、この信号送信を行うと、時刻p1、p4で広い角度範囲23012302の中から信号の方向を推定できる。また、時刻p2、p3、p5、p6では、時刻p1、p4で推定された方向を中心方向として、時刻p1、p4で得られる角度範囲より狭い角度範囲2303、2304、2305、2306で受信信号の方向推定を行う。
[0096]
 時刻p1から時刻p2に至る時間での受信信号の方向の変化分が時刻p2で設定する角度範囲の1/2以内であれば、時刻p2でも誤りなく方向を推定できる。同様に、時刻p1から時刻p3に至る時間での受信信号の方向の変化分が時刻p3で設定する角度範囲の1/2以内であれば、時刻p3でも誤りなく方向を推定できる。
[0097]
 時刻p1からの時間経過が大きくなるにつれ、信号の到来方向が変化する可能性は高くなる。そこで、時刻p4で再び規格Jの信号を送信することにより、広い角度範囲2302での方向推定を行う。ここで、同じ規格Jを用いた場合、角度範囲2301と角度範囲2302は同じ範囲となる。
[0098]
 すなわち、本実施の形態では、信号の存在方向の角度範囲が広い場合には、規格Jの送信信号を送信し、信号の存在方向の角度範囲が限定された範囲と分かっている場合には、規格Kの信号を送信する。到来方向が変化する特性が分かっていれば、規格J又は規格Kの信号を送信する時間的なパターンはあらかじめ定めておくことが可能である。また、方向推定部9で推定された方向が設定された角度範囲のどの位置に属するかによって、次に送信される送信信号の送信電力と信号フォーマットの規格を決定することもできる。
[0099]
 規格Kでは方向推定を行える角度範囲は規格Jよりも狭く、通常、規格Kの信号の送信電力は規格Jの信号の送信電力よりも小さい。従って、常に規格Jの信号を用いて広い角度範囲で方向推定する場合と比較して、送信電力を抑えつつ、受信信号の方向推定を行うことができる。このように、複数の規格の信号を適応的に用いることにより、適切な方向推定の性能を維持しつつ、消費電力を低減できる。その結果、周辺無線局への干渉を抑えることが可能となる。
[0100]
 また、本実施の形態に係る方向推定装置500は、第1の時刻p1で第1の角度範囲2301を設定し、第1の時刻p1よりも遅い第2の時刻p2で前記第1の角度範囲2301よりも狭い第2の角度範囲2303を設定することを特徴とする。この構成によって、第1の時刻p1で信号の到来方向を広い範囲で推定し、第2の時刻p2では第1の時刻p1で推定された方向の情報を用いることで、第1の角度範囲2301よりも狭い第2の角度範囲2303を設定しても信号の方向推定を円滑に行うことができる。また、角度範囲を狭くすることで、方向推定に必要な信号の電力を抑えることができ、信号の送信に必要となる電力を抑えることができる。
[0101]
 また、同じ規格Jを用いた場合、角度範囲2301と角度範囲2302はともに同じ第1の角度範囲となり、本実施の形態に係る方向推定装置500は、角度範囲設定部8は、前記第1及び前記第2の時刻p1、p2よりも遅い第3の時刻p4で、前記第1の角度範囲を設定することを特徴とする。この構成により、広い角度範囲での方向推定が必要な時刻においてのみ広い範囲での方向推定を行うことができるため、信号の送信に必要となる電力を抑えつつ、広い範囲での方向推定能力を庁時間的に維持することができる。
[0102]
実施の形態6.
 本実施の形態では、実施の形態5で示した制御の具体例として、信号30に拡散信号を用い、信号フォーマットとして拡散信号の拡散率を決定する形態の一例を開示する。
[0103]
 まず、時刻p1、p4において、広い角度範囲で方向推定を行う場合の制御構成について示す。図17で示すように広範囲で高精度な方向推定を行うためには、高いSNRΓが必要となる。ここで、SNRΓは整合フィルタ出力でのSNRであり、整合フィルタ入力前のSNRが低くても整合フィルタ出力で高いSNRを得られれば、広範囲で高精度な方向推定を行える。そこで、整合フィルタ出力でのSNRを向上するために、信号30に拡散信号を用いる。具体例として、アンテナ間隔が(d1、d2)=(1.48λ、4λ)である場合に、以下の利用環境が想定される。
     利用環境)
       拡散信号の拡散率:SF1=100
       整合フィルタ入力前:SNR=0dB
       整合フィルタ出力後:SNR Γ=20dB
[0104]
 この利用環境では、整合フィルタ出力でSNR=20dBを確保でき、無線装置200は全方向で高精度な方向推定を行える。このように、高い拡散率をもつ拡散信号を信号30として用いることで、整合フィルタ入力前のSNRが低い環境であっても、広範囲で高精度な方向推定を行える。実施の形態5において、規格Jの信号フォーマットを拡散率SF1=100の拡散信号とすることで、この制御は実現できる。
[0105]
 時刻p1(p4)において、全方向に対する方向推定が行われると、無線装置200は端末装置210の方向φ1を把握できる。その後の時刻p2、p3(p5、p6)における方向推定では、方向φ1を中心として、移動後の端末装置210の存在方向を検出する必要がある。そこで、時刻p2、p3の方向推定におけるF=sinφの推定範囲を以下のように設定する。
-B’/2+sinφ1 <=F<= B’/2+sinφ1(25)
ここで、範囲B’は端末装置210の移動特性を考慮して、無線装置200であらかじめ設定される。
[0106]
この方向推定は、(A2)(A3)において推定範囲
-B/2 <=F <=B/2           (26)
を式(25)に置き換えた方向推定に相当する。その場合の動作は、式(10)(16)(17)
におけるB/2をB’/2+sinφ1に置き換えることで解析できる。
[0107]
 図24にPreq=0.99、SNR=10、20、30dB、比率r=0.37において、式(25)を用いた場合にB’/B2の取り得る最大値L(Γ、r)のsinφ1に対する推移を示す。図より、sinφ1が-1から1まで変化してもL(Γ、r)は変化しない。ここでは、r=0.37の場合を取り上げたが、r=0.1、0.2、...、0.9の場合においても同様にL(Γ、r)はsinφ1に依存せず一定となる。このように、方向推定可能な範囲B’は方向φ1に依存せず一定になる。そこで、φ1=0と設定すると、式(25)は式(26)と同じ形式となり、(A3)(A4)で行った解析を範囲B’にそのまま適用できる。
[0108]
 そこで、時刻p2、p3(p5、p6)での方向推定では、以下の処理を行う。
(S1)無線装置200は端末装置210の方向が式(25)の範囲となるように範囲B’を決定する。
(S2)無線装置200は範囲B’で成功率Preq=0.99を維持できるように次式を満たすSNR Γを決定する。
         B’/B2<=L(Γ、r)
(S3)無線装置200はSNRΓの達成に必要な拡散率SF2を決定し、端末装置210に通知する。
(S4)端末装置210は拡散率SF2の拡散信号を送信し、無線装置200では式(25)の範囲で方向推定を行う。
[0109]
 具体例として、アンテナ間隔が(d1、d2)=(1.48λ、4λ)である場合に、以下の利用環境が想定される。
[0110]
 利用環境)推定範囲:B’=1/2
    (-1/4+sinφ1<=sinφ<=1/4+sinφ1)
      整合フィルタ入力前:SNR=0dB
      整合フィルタ出力後:SNR Γ=10dB
      既知信号の拡散率:SF2=10
[0111]
ここでは、SNR Γ=10dBを
   B2=λ/d2=1/4 ⇒ B’/B2=2
               ⇒ 2<=L(Γ、0.37)
と図9から導いた。実施の形態5において、規格Kの信号フォーマットを拡散率SF2=10の拡散信号とすることで、この制御は実現できる。
[0112]
 このように、無線装置200で定められた拡散率に従い、端末装置110が拡散信号を送信することで、無線装置200では必要な角度範囲で方向推定を行える。 
[0113]
実施の形態7.
 これまでの実施の形態では、信号品質算出部7で信号品質の測定を行ったが、本実施の形態では信号品質算出部7で信号品質の予測を行う形態を開示する。
[0114]
 これまでの実施の形態では、信号品質算出部7で受信信号の信号品質を直接的に測定していた。しかし、受信信号の信号品質を直接測定しなくても、受信信号の信号品質を予測できる場合がある。例えば、初回の信号受信時に信号品質としてSNRΓ1を測定し、n(=2、3、...)回目の受信信号と初回の受信信号と信号の電力差cnを把握していれば、n回目の受信信号のSNRを
            Γ1×cn
として予測できる。電力差情報cnは、送信信号の電力の違いが分かれば把握することができる。
[0115]
 例えば、図20では、無線装置400は信号を送信するため、n(=2、3、...)回目の受信信号と初回の受信信号と信号の電力差cnを把握することができる。この情報を用いれば、初回の信号受信時に信号品質としてSNRΓ1を測定し、その後は受信信号の信号品質を直接測定しなくても、受信信号の信号品質を予測することができる。
[0116]
 このように、本実施の形態では、信号品質算出部7で信号品質の予測を行う。すなわち、これまでの実施の形態1~6において、信号品質算出部7で信号品質の測定を行っていた処理を信号品質の予測を行う処理に置き換える。この構成によって、信号受信時に毎回信号の品質測定を行わなくても、信号品質を算出することができる。また、信号を受信する前に、その受信信号の信号品質を予測できるため、事前に角度範囲設定部8で角度範囲を設定することができ、信号受信後の処理を円滑に行うことが可能となる。

符号の説明

[0117]
0、0’、1、2、2’:アンテナ、4、5、6:整合フィルタ、7:信号品質算出部、8:角度範囲設定部、9:方向推定部、10:制御情報通知部、11:アンテナ、12:信号送信部、13:送信制御部、14:制御情報受信部、21:送信制御部、22:信号送信部、30:信号、51:振幅、52:雑音、100:無線装置、110:端末装置、200:無線装置、210:端末装置、300:無線装置、301:アンテナ選択部、302、303:スイッチ、400:無線装置、500:方向推定装置、1001:メインローブ、1002:サイドローブ、1003:グレーティングローブ、1004:利得差、1005、1006:角度範囲、1101:処理回路、1201:処理回路、1202:メモリ、2001:測定対象物、2301、2302、2303、2304、2305、2306:角度範囲

請求の範囲

[請求項1]
 複数のアンテナを用いて受信される信号の品質を測定又は予測する信号品質算出部と、
前記信号品質算出部で測定又は予測された信号の品質に応じて、前記信号の到来方向を推定する角度範囲を設定する角度範囲設定部と、
前記角度範囲設定部で設定された角度範囲で前記信号の到来方向を推定する方向推定部と、
を備えたことを特徴とする方向推定装置。
[請求項2]
 前記信号品質算出部は、前記信号の信号対雑音電力比を前記品質として測定又は予測することを特徴とする請求項1に記載の方向推定装置。
[請求項3]
 前記角度範囲設定部は、第1の時刻で第1の角度範囲を設定し、前記第1の時刻よりも遅い第2の時刻で前記第1の角度範囲よりも狭い第2の角度範囲を設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方向推定装置。
[請求項4]
 前記角度範囲設定部は、前記第2の時刻よりも遅い第3の時刻で、前記第1の角度範囲を設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の方向推定装置。
[請求項5]
 無線伝送された信号を前記複数のアンテナを用いて受信し、請求項1から4のいずれか1項に記載の方向推定装置を用いて、前記信号に対する方向推定を行うことを特徴とする無線装置。
[請求項6]
 前記信号品質算出部で測定又は予測された信号の品質に応じて、
前記複数のアンテナの中から、方向推定に用いるアンテナを選択するアンテナ選択部、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の無線装置。
[請求項7]
 前記信号品質算出部で測定又は予測された信号の品質によって定められる位置に
前記複数のアンテナを移動するアンテナ移動制御部、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の無線装置。
[請求項8]
 自装置から送信され受信局で受信される信号の方向の推定が、該受信局で必要な角度範囲で行われるように、送信電力又は信号フォーマットを決定する送信制御部と、
前記送信制御部で決定された送信電力又は信号フォーマットに従い、信号を送信する信号送信部と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
[請求項9]
 前記受信局で受信される信号は拡散信号であり、
 前記信号フォーマットは、前記拡散信号の拡散率を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の無線装置。
[請求項10]
 前記受信局で受信される信号はチャープ信号であり、
 前記信号フォーマットは、前記チャープ信号のチャープレートを含む
ことを特徴とする請求項8に記載の無線装置。
[請求項11]
 前記受信局を含み、
前記受信局は前記送信された信号が測定対象物で反射された信号を受信する
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の無線装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]