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1. WO2020009113 - サトウキビ属植物の黒穂病抵抗性関連マーカーとその利用

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明 細 書

発明の名称 サトウキビ属植物の黒穂病抵抗性関連マーカーとその利用

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

非特許文献

0010  

特許文献

0011  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090  

実施例

0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27  

明 細 書

発明の名称 : サトウキビ属植物の黒穂病抵抗性関連マーカーとその利用

技術分野

[0001]
 本発明は、黒穂病に対する抵抗性を示すサトウキビ属植物系統を選抜することができる黒穂病抵抗性関連マーカー及びその利用方法に関する。

背景技術

[0002]
 サトウキビは、砂糖の原料、酒類原料など、食用に栽培されている他、バイオ燃料原料としての利用を含む様々な産業分野で利用されている。このような状況下、所望の特性(例えば、糖含有量、生長力の増強、新芽形成能、耐病性及び虫害抵抗性、耐寒性、葉長の増大、葉面積の増大、茎長の増大など)を有するサトウキビ植物の新品種を開発するニーズがある。
[0003]
 一般に、植物品種・系統の識別として、特性データを比較する「特性比較」、同一条件で栽培し比較する「比較栽培」、DNAを解析する「DNA分析」の3つの方法がある。特性比較および比較栽培による系統識別は、栽培条件の違いによる精度低下や多大な工数が必要とされる長期間の圃場調査など多くの問題を抱える。特に、サトウキビは、イネやトウモロコシなど、他のイネ科作物と比べ植物体が極めて大きく、圃場調査による系統識別の実施が困難である。
[0004]
 また、特定の病害に対する抵抗性品種を識別するには、サトウキビを長期間栽培した後、病害原因微生物を接種する試験を行い、その後、病班等を観察することで抵抗性データを収集する。しかし、当該試験を行うには、外部環境に対する病害原因微生物の伝搬を確実に防止しなければならず、大規模専用温室や専用圃場、外部との隔離施設など設備が必要となる。さらに、サトウキビの新品種作出には、先ず、交配により数万種類の交配種子を作製し、そこから実生選抜、さらに優良な系統を段階的に選抜し、最終的に所望な特性を有する2~3系統の新品種候補を得ることができる。このように、サトウキビの新品種作出には、非常に多くの系統を栽培・評価する必要があり、上述したような温室や圃場を準備して多大な手間をかける必要がある。
[0005]
 したがって、病害抵抗性を示すサトウキビ系統を、ゲノムに存在するマーカーを用いて識別する方法の開発が求められている。特に、サトウキビにおける新品種作出に際して、種々の特性について優れたマーカーが使用できれば、上述したようなサトウキビに特有の諸問題を回避でき、非常に有効なツールとなりうる。しかしながら、サトウキビ植物は、高次倍数性で染色体数が多いため(約100~130)、マーカー技術開発が遅れている。サトウキビでは、USDAにおいてSSRマーカーを用いた遺伝子型決定に関する報告があるものの(非特許文献1)、マーカー数及び各マーカーからの多型数が少ないことに起因して精度が低く、適用範囲がアメリカ・オーストラリア品種に限られるため、日本国内および台湾・インドなどの主要品種および有用な遺伝資源の系統識別に利用できない。
[0006]
 また、非特許文献2は、マーカー数を増やし、各々のマーカーの特性関係を比較し、検証することでサトウキビにおける遺伝子地図を作成する可能性を示唆している。しかしながら、非特許文献2には、十分な数のマーカーが開示されておらず、目的とする特性に連鎖したマーカーも見つかっていない。
[0007]
 一方、病害抵抗性に関連するマーカーとしては、特許文献1に示すように、テンサイにおける黒根病抵抗性関連マーカーが知られている。また、特許文献2に示すように、トウモロコシにおいて、目的とする形質に連鎖したマーカーを利用して品種を選抜する技術が開示されている。
[0008]
 一方、サトウキビの黒穂病は、原因微生物の感染力が強く、一旦発病すると圃場全体に感染が拡大する。黒穂病に罹病したサトウキビは、製糖用原料として利用できないだけではなく枯死する。このため、黒穂病の発生は、次年度以降における大幅な減収を引き起こす。黒穂病の被害は、ブラジル、アメリカ、オーストラリア、中国、インドネシアなど28ヶ国以上で報告がある。黒穂病の防除方法には、植付時の殺菌処理があるが、初期生育時に効果が限定される。しがって、黒穂病の抵抗性を付与したサトウキビ品種の育成が求められている。
[0009]
 そして、特許文献3には、サトウキビにおける多数のマーカーを準備し、交雑後代系統における量的形質とマーカーとの連鎖解析によって見いだされた、黒穂病抵抗性に連鎖するマーカーが開示されている。

先行技術文献

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : Maydica 48(2003),319-329 “Molecular genotyping of sugarcane clones with microsatellite DNA markers”
非特許文献2 : Nathalie Piperidis et al., Molecular Breeding, 2008, Vol 21, 233-247

特許文献

[0011]
特許文献1 : WO 2007/125958
特許文献2 : 特表2010-516236号公報
特許文献3 : WO 2012/147635

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0012]
 しかしながら、特許文献3に黒穂病抵抗性に連鎖するマーカーが開示されるものの、黒穂病抵抗性に対する関連性がより高い更に優れた黒穂病抵抗性マーカーが求められていた。そこで、本発明は、このような実情に鑑み、黒穂病抵抗性に対する関連性がより高い更に優れた黒穂病抵抗性マーカーを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のサトウキビ品種を用いて多数のマーカーを準備し、交雑後代系統における量的形質とマーカーとの連鎖解析によって、黒穂病抵抗性といった量的形質に強く連鎖するマーカーを見いだし、本発明を完成するに至った。
[0014]
 本発明は以下を包含する。
 (1)サトウキビの染色体における配列番号1に示す塩基配列及び配列番号6に示す塩基配列により挟まれる領域;配列番号135に示す塩基配列及び配列番号143に示す塩基配列により挟まれる領域;又は配列番号144若しくは145に示す塩基配列及び配列番号151に示す塩基配列により挟まれる領域から選ばれる連続する核酸領域からなる、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
 (2)上記核酸領域は、配列番号1~6、135~143及び144~151からなる群から選ばれるいずれか1の塩基配列又は当該塩基配列の一部を含むことを特徴とする(1)記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
 (3)上記核酸領域は、サトウキビの染色体における配列番号1若しくは2に示す塩基配列又は当該塩基配列の一部であることを特徴とする(1)記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
 (4)上記核酸領域は、サトウキビの染色体における配列番号138~140からなる群から選ばれる1つの塩基配列又は当該塩基配列の一部であることを特徴とする(1)記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
 (5)上記核酸領域は、サトウキビの染色体における配列番号149若しくは151からなる群から選ばれる1つの塩基配列又は当該塩基配列の一部であることを特徴とする(1)記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
 (6)上記核酸領域は、サトウキビの染色体における配列番号298、303、307、311及び316からなる群から選ばれる1つの塩基配列又は当該塩基配列の一部であることを特徴とする(1)記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
 (7)少なくとも一方の親がサトウキビ植物である後代植物の染色体及び/又は当該親の染色体を抽出する工程と、上記で得られた染色体における上記(1)~(6)いずれかに記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの存在・非存在を測定する工程とを含む、黒穂病抵抗性が向上したサトウキビ系統の製造方法。
 (8)上記測定する工程では、上記サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーに対応するプローブを備えるDNAチップを使用することを特徴とする(7)記載のサトウキビ系統の製造方法。
 (9)上記後代植物は種子又は幼苗であり、当該種子又は幼苗から染色体を抽出することを特徴とする(7)記載のサトウキビ系統の製造方法。
[0015]
 本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-127142号、2018-197546号及び2019-122913号の開示内容を包含する。

発明の効果

[0016]
 本発明によれば、サトウキビにおける量的形質の中でも黒穂病抵抗性に連鎖する新規なサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを提供することができる。本発明に係るサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを利用することによって、サトウキビの交配系統における黒穂病抵抗性を検定することができる。これにより、黒穂病抵抗性が向上した特性を有するサトウキビ系統を非常に低コストに識別することができる。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] (A):「KY08-6023」と「JW90」とを交配して得られた後代について黒穂病罹病率を計算した結果、(B):「KY08-6039」と「JW90」とを交配して得られた後代について黒穂病罹病率を計算した結果、(C):「KY08-6041」と「JW90」とを交配して得られた後代について黒穂病罹病率を計算した結果を示す特性図である。
[図2] 実施例1における黒穂病抵抗性に関するQTL解析の結果を示す特性図である。
[図3] 各系統におけるAMP0121265のリード数を示す特性図である。
[図4] 各系統におけるAMP0120752のリード数を示す特性図である。
[図5] 各系統におけるAMP0035185のリード数を示す特性図である。
[図6] 各系統におけるAMP0114852のリード数を示す特性図である。
[図7] 各系統におけるAMP0089904のリード数を示す特性図である。
[図8] 各系統におけるAMP0100370のリード数を示す特性図である。
[図9] 実施例2における黒穂病抵抗性に関するQTL解析の結果を示す特性図である。
[図10] 各系統におけるAMP0014532のリード数を示す特性図である。
[図11] 各系統におけるAMP0043152のリード数を示す特性図である。
[図12] 各系統におけるAMP0069135のリード数を示す特性図である。
[図13] 各系統におけるAMP0032477のリード数を示す特性図である。
[図14] 各系統におけるAMP0018405のリード数を示す特性図である。
[図15] 各系統におけるAMP0002312のリード数を示す特性図である。
[図16] 各系統におけるAMP0007121のリード数を示す特性図である。
[図17] 各系統におけるAMP0090108のリード数を示す特性図である。
[図18] 各系統におけるAMP0015886のリード数を示す特性図である。
[図19] 「KY09-6092」及び「KY08-129」を交配した後代系統について黒穂病罹病率を計算した結果を示す特性図である。
[図20] 実施例3における黒穂病抵抗性に関するQTL解析の結果を示す特性図である。
[図21] 各系統におけるAMP0063683のリード数を示す特性図である。
[図22] 各系統におけるAMP0082090のリード数を示す特性図である。
[図23] 各系統におけるAMP0013802のリード数を示す特性図である。
[図24] 各系統におけるAMP0083204のリード数を示す特性図である。
[図25] 各系統におけるAMP0043774のリード数を示す特性図である。
[図26] 各系統におけるAMP0094596のリード数を示す特性図である。
[図27] 各系統におけるAMP0091501のリード数を示す特性図である。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下、本発明に係るサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー及びその利用方法、特にサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを用いたサトウキビ系統の製造方法について説明する。
[0019]
<サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー>
 本発明に係るサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとは、サトウキビの染色体上に存在する特定の領域であり、サトウキビの黒穂病抵抗性といった形質の原因遺伝子(群)に連鎖して、サトウキビ黒穂病抵抗性という形質を判別できる機能を有する。すなわち、既知のサトウキビ系統を用いて得られた後代系統において、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの存在・非存在を確認することで黒穂病抵抗性の向上という形質を有する系統であると判断することができる。なお、本発明において、黒穂病とは、Ustilago属の微生物が感染することに起因して病班が形成される病気を意味している。Ustilago属の微生物としては、一例としてUstilago scitamineaを挙げることができる。
[0020]
 また、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとは、黒穂病抵抗性が向上する形質の原因遺伝子(群)に連鎖するマーカーの意味である。例えば、特定のサトウキビ品種において、当該マーカーが存在していれば黒穂病抵抗性が向上した品種と判断できる。
[0021]
 ここで、サトウキビとは、イネ科サトウキビ属に属する植物を意味する。また、サトウキビとは、所謂、高貴種(学名:Saccharum officinarum)と野生種(学名:Saccharum spontaneum)、バルベリ種(Saccharum barberi)、シネンセ種(Saccharum sinense)、オフィシナルム種の祖先種であるロバスタム種(Saccharum robustum)のいずれも含むことを意味する。既知のサトウキビ品種・系統としては、特に限定されず、日本国内にて使用可能なあらゆる品種・系統、日本国外において使用されている品種・系統等を含む意味である。例えば、サトウキビ日本国内育成品種としては、特に限定されないが、Ni1、NiN2、NiF3、NiF4、NiF5、Ni6、NiN7、NiF8、Ni9、NiTn10、Ni11、Ni12、Ni14、Ni15、Ni16、Ni17、NiTn19、NiTn20、Ni22及びNi23等を挙げることができる。また、サトウキビ日本国内主要品種としては、特に限定されないが、NiF8、Ni9、NiTn10及びNi15等を挙げることができる。さらに、サトウキビ日本国内導入主要品種としては、特に限定されないが、F177、Nco310及びF172等を挙げることができる。さらに、サトウキビ品種・系統としては、特に病害抵抗性に優れた野生種、中でも黒穂病抵抗性に優れた野生種を挙げることができる。黒穂病抵抗性に優れた野生種としては、特に限定されないが、例えば、JW90、西表15及び西表8等を挙げることができる。
[0022]
 また、後代系統は、母本及び父本の両方がサトウキビ品種・系統である同種交配による系統であっても良いし、いずれか一方がサトウキビ品種・系統であり他方が近縁のErianthus arundinaceusであるような交雑系統であっても良い。また、後代系統は、いわゆる戻し交配によって得られたものでも良い。特に、母本及び父本の両方又は一方が黒穂病抵抗性に優れた野生種、例えばJW90、西表15又は西表8であることが好ましい。
[0023]
<サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの例1>
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーは、サトウキビの染色体から独自に取得した31191個のマーカー(そのうち4503個がJW90由来)を基に作成した、JW90を由来とする86の連鎖群からなる遺伝子連鎖地図とサトウキビ黒穂病抵抗性データとを用いたQTL(Quantitative Trait Loci)解析によって新たに同定されたものである。なお、サトウキビ黒穂病抵抗性は、多数の遺伝子が関与していると考えられ、連続分布をとる量的形質である。すなわち、サトウキビ黒穂病抵抗性は、連続分布をとる黒穂病への罹患率に基づいて評価される。QTL解析には、遺伝解析ソフトQTL Cartographer(Wang S., C. J. Basten, and Z.-B. Zeng (2010). Windows QTL Cartographer 2.5. Department of Statistics, North Carolina State University, Raleigh, NC)を使用し、Composite interval mapping(CIM)法を適用している。
[0024]
 具体的に、上述したQTL解析により、ロッドスコア(LOD score)が所定の閾値(例えば2.5)以上となる上記遺伝子連鎖地図に含まれる領域、約8.4cM(センチモルガン)の領域を特定した。ここで、「モルガン(M)」は、染色体上の遺伝子間の距離を相対的に示した単位であり、交叉価をパーセントにした値である。サトウキビの染色体において、1cMは、約2000kbpに相当する。なお、このピーク位置又はその近傍には、黒穂病抵抗性を向上させる形質の原因遺伝子(群)が存在することが示唆される。
[0025]
 上記8.4cMの領域は、上記マーカーのうち表1に示す6種類のマーカーがこの順で含まれる領域であり、黒穂病抵抗性が向上する形質に連鎖する領域である。
[0026]
[表1]


[0027]
 なお、表1において、連鎖群とは、QTL解析において特定された複数の連鎖群についてそれぞれ付された番号である。表1において近傍マーカーの欄に記載したマーカー名は、本発明で独自に取得したマーカーに付された名称である。
[0028]
 また、8.4cMの領域に含まれるピークは、配列番号1に示す塩基配列からなるマーカー(AMP0121265)に近接して存在している。
[0029]
 表1に示したマーカーが含まれる8.4cM領域から選ばれる連続した核酸領域を、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。ここで、核酸領域とは、サトウキビの染色体に存在する他の領域との同一性が95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、最も好ましくは70%以下となるような塩基配列からなる領域を意味する。サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域と他の領域との同一性が上記範囲であれば、定法に従って、当該核酸領域を特異的に検出することができる。ここで、同一性の値は、例えばBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出することができる。
[0030]
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域の塩基長は、少なくとも8塩基長以上、好ましくは15塩基長以上、より好ましくは20塩基長以上、最も好ましくは30塩基長とすることができる。サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域の塩基長が上記範囲であれば、定法に従って、当該核酸領域を特異的に検出することができる。
[0031]
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとしては、上述した8.4cMの領域から選ばれる如何なる連続した核酸領域でもよい。なお、この8.4cMの領域の塩基配列については、配列番号1~6の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いたインバースPCR等の隣接配列取得法によって特定することができる。
[0032]
 特に、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとしては、上述した8.4cMの領域のうち、配列番号1に示す塩基配列又は配列番号2に示す塩基配列と近接した領域から選ばれることが好ましい。上記ピークが配列番号1に示す塩基配列と近接して存在するためである。
[0033]
 また、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーは、上記6種類のマーカーそのもの又はその一部とすることができる。すなわち、これら6種類のマーカーのうち1種類以上のマーカーをサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。また、これら6種類のマーカーの部分領域をサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。
[0034]
<サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの例2>
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーは、サトウキビの染色体から独自に取得した64757個のマーカー(そのうち1166個が西表15を祖先に有する後代由来)を基に作成した、58の連鎖群からなる西表15を祖先に有する後代を由来とする遺伝子連鎖地図とサトウキビ黒穂病抵抗性データとを用いたQTL(Quantitative Trait Loci)解析によって新たに同定されたものである。なお、サトウキビ黒穂病抵抗性は、多数の遺伝子が関与していると考えられ、連続分布をとる量的形質である。すなわち、サトウキビ黒穂病抵抗性は、連続分布をとる黒穂病への罹患率に基づいて評価される。QTL解析には、遺伝解析ソフトQTL Cartographer(Wang S., C. J. Basten, and Z.-B. Zeng (2010). Windows QTL Cartographer 2.5. Department of Statistics, North Carolina State University, Raleigh, NC)を使用し、Composite interval mapping(CIM)法を適用している。
[0035]
 具体的に、上述したQTL解析により、ロッドスコア(LOD score)が所定の閾値(例えば2.5)以上となる上記遺伝子連鎖地図に含まれる領域、約26.6cM(センチモルガン)の領域を特定した。ここで、「モルガン(M)」は、染色体上の遺伝子間の距離を相対的に示した単位であり、交叉価をパーセントにした値である。サトウキビの染色体において、1cMは、約2000kbpに相当する。なお、このピーク位置又はその近傍には、黒穂病抵抗性を向上させる形質の原因遺伝子(群)が存在することが示唆される。
[0036]
 上記26.6cMの領域は、上記マーカーのうち表2に示す9種類のマーカーがこの順で含まれる領域であり、黒穂病抵抗性が向上する形質に連鎖する領域である。
[0037]
[表2]


[0038]
 なお、表2において、連鎖群とは、QTL解析において特定された複数の連鎖群についてそれぞれ付された番号である。表2において近傍マーカーの欄に記載したマーカー名は、本発明で独自に取得したマーカーに付された名称である。
[0039]
 また、26.6cMの領域に含まれるピークは、配列番号138に示す塩基配列からなるマーカー(AMP0032477)及び配列番号140に示す塩基配列からなるマーカー(AMP002312)の間に位置し、特に配列番号139に示す塩基配列からなるマーカー(AMP0018405)に近接して存在している。
[0040]
 表2に示したマーカーが含まれる26.6cM領域から選ばれる連続した核酸領域を、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。ここで、核酸領域とは、サトウキビの染色体に存在する他の領域との同一性が95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、最も好ましくは70%以下となるような塩基配列からなる領域を意味する。サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域と他の領域との同一性が上記範囲であれば、定法に従って、当該核酸領域を特異的に検出することができる。ここで、同一性の値は、例えばBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出することができる。
[0041]
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域の塩基長は、少なくとも8塩基長以上、好ましくは15塩基長以上、より好ましくは20塩基長以上、最も好ましくは30塩基長とすることができる。サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域の塩基長が上記範囲であれば、定法に従って、当該核酸領域を特異的に検出することができる。
[0042]
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとしては、上述した26.6cMの領域から選ばれる如何なる連続した核酸領域でもよい。なお、この26.6cMの領域の塩基配列については、配列番号135~143の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いたインバースPCR等の隣接配列取得法によって特定することができる。
[0043]
 特に、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとしては、上述した26.6cMの領域のうち、配列番号138に示す塩基配列及び配列番号140に示す塩基配列に挟み込まれる領域から選ばれることが好ましい。さらに、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとしては、上述した26.6cMの領域のうち、配列番号139に示す塩基配列及び当該塩基配列に近接する塩基配列からなる領域から選ばれることが好ましい。上記ピークが配列番号138に示す塩基配列及び配列番号140に示す塩基配列に挟み込まれる領域であって、配列番号139に示す塩基配列と近接して存在するためである。
[0044]
 また、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーは、上記9種類のマーカーそのもの又はその一部とすることができる。すなわち、これら9種類のマーカーのうち1種類以上のマーカーをサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。また、これら9種類のマーカーの部分領域をサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。
[0045]
<サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの例3>
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーは、サトウキビの染色体から独自に取得した57444個のマーカー(そのうち2936個が西表8を祖先に有する後代「KY09-6092」由来)を基に作成した、117の連鎖群からなる西表8を祖先に有する後代「KY09-6092」を由来とする遺伝子連鎖地図とサトウキビ黒穂病抵抗性データとを用いたQTL(Quantitative Trait Loci)解析によって新たに同定されたものである。
[0046]
 なお、サトウキビ黒穂病抵抗性は、多数の遺伝子が関与していると考えられ、連続分布をとる量的形質である。すなわち、サトウキビ黒穂病抵抗性は、連続分布をとる黒穂病への罹患率に基づいて評価される。QTL解析には、遺伝解析ソフトQTL Cartographer(Wang S., C. J. Basten, and Z.-B. Zeng (2010). Windows QTL Cartographer 2.5. Department of Statistics, North Carolina State University, Raleigh, NC)を使用し、Composite interval mapping(CIM)法を適用している。
[0047]
 具体的に、上述したQTL解析により、ロッドスコア(LOD score)が所定の閾値(例えば2.5)以上となる上記遺伝子連鎖地図に含まれる領域、約12.27cM領域(センチモルガン)の領域を特定した。ここで、「モルガン(M)」は、染色体上の遺伝子間の距離を相対的に示した単位であり、交叉価をパーセントにした値である。サトウキビの染色体において、1cMは、約2000kbpに相当する。なお、このピーク位置又はその近傍には、黒穂病抵抗性を向上させる形質の原因遺伝子(群)が存在することが示唆される。
[0048]
 上記12.27cMの領域は、上記マーカーのうち表3に示す7種類のマーカーがこの順で含まれる領域であり、黒穂病抵抗性が向上する形質に連鎖する領域である。
[0049]
[表3]


[0050]
 なお、表3において、連鎖群とは、QTL解析において特定された複数の連鎖群についてそれぞれ付された番号である。表3において近傍マーカーの欄に記載したマーカー名は、本発明で独自に取得したマーカーに付された名称である。表3に示したマーカーのうち AMP0063683は、配列番号144に示す塩基配列と配列番号145に示す塩基配列とを両端に含む核酸領域である。AMP0063683以外のマーカーは、それぞれ単一の塩基配列を含む核酸領域である。
[0051]
 また、12.27cMの領域に含まれるピークは、配列番号151に示す塩基配列からなるマーカー(AMP0091501)に近接して存在している。
[0052]
 表3に示したマーカーが含まれる12.27cM領域から選ばれる連続した核酸領域を、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。ここで、核酸領域とは、サトウキビの染色体に存在する他の領域との同一性が95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、最も好ましくは70%以下となるような塩基配列からなる領域を意味する。サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域と他の領域との同一性が上記範囲であれば、定法に従って、当該核酸領域を特異的に検出することができる。ここで、同一性の値は、例えばBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出することができる。
[0053]
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域の塩基長は、少なくとも8塩基長以上、好ましくは15塩基長以上、より好ましくは20塩基長以上、最も好ましくは30塩基長とすることができる。サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとなる核酸領域の塩基長が上記範囲であれば、定法に従って、当該核酸領域を特異的に検出することができる。
[0054]
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとしては、上述した12.27cMの領域から選ばれる如何なる連続した核酸領域でもよい。なお、この12.27cMの領域の塩基配列については、配列番号144~151の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いたインバースPCR等の隣接配列取得法によって特定することができる。
[0055]
 特に、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとしては、上述した12.27cMの領域のうち、配列番号150に示す塩基配列及び配列番号151に示す塩基配列に挟み込まれる領域から選ばれることが好ましい。上記ピークが配列番号151に示す塩基配列と近接して存在するためである。
[0056]
 また、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーは、上記7種類のマーカーそのもの又はその一部とすることができる。すなわち、これら7種類のマーカーのうち1種類以上のマーカーをサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。また、これら7種類のマーカーの部分領域をサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することができる。
[0057]
 ところで、表3に示したマーカーが含まれる12.27cM領域は、表1に示したマーカーが含まれる8.4cM領域と一部共通した部分領域を有している。詳細には、12.27cM領域に含まれるピーク近傍が、8.4cM領域に含まれるピーク近傍と塩基配列において共通している。具体的に、表1に示したJW90由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのうち0cMに位置するAMP0121265を含む近傍領域と、表3に示した西表8由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのうち83.76cMに位置するAMP0091501を含む近傍領域が共通した塩基配列を有している。したがって、この塩基配列が共通した領域は、サトウキビ黒穂病抵抗性を高める因子(例えば原因遺伝子)が存在する可能性が高い。よって、当該領域をサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして使用することがより好ましい。
[0058]
<サトウキビにおけるマーカーの同定>
 本発明では、上述したように、サトウキビの染色体から独自に取得した31191個のマーカー(そのうち4503個がJW90由来)、サトウキビの染色体から独自に取得した64757個のマーカー(そのうち1166個が西表15を祖先に有する後代「KY08-6023, KY08-6039, KY08-6041」由来)及びサトウキビの染色体から独自に取得した57444個のマーカー(そのうち2936個が西表8を祖先に有する後代「KY09-6092」由来)からサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを特定した。ここでは、これら31191個のマーカー(そのうち4503個がJW90由来)、64757個のマーカー(そのうち1166個が西表15を祖先に有する後代「KY08-6023, KY08-6039, KY08-6041」由来)及び57444個のマーカー(そのうち2936個が西表8を祖先に有する後代「KY09-6092」由来)について説明する。こられマーカーを同定する際には、国際公開WO 2018/003220に記載されたDNAライブラリーの作製方法に準じて作製した。
[0059]
 すなわち、任意の塩基配列を有するプライマー(以下、ランダムプライマー)を高濃度となるように調整した反応液で核酸増幅反応を行い、増幅した核酸断片をDNAライブラリーとするものである。ここで、高濃度とは、通常の核酸増幅反応におけるプライマー濃度と比較して高濃度であることを意味する。すなわち、本発明に係るDNAライブラリー作製方法は、通常の核酸増幅反応におけるプライマー濃度と比較して高濃度のランダムプライマーを使用することに特徴を有している。ここで、反応液に含まれる鋳型としては、DNAライブラリーを作製する対象の生物から調製したゲノムDNAを使用することができる。
[0060]
 ランダムプライマーとしては、その配列には何ら限定されず、例えば9~30塩基長のヌクレオチドを使用することができる。特に、ランダムプライマーとは、任意の配列を有する、9~30塩基長のヌクレオチドであって、ヌクレオチドの種類(配列の種類)は特に限定されず、1種類以上のヌクレオチド、好ましくは1~10000種類のヌクレオチド、より好ましくは1~1000種類のヌクレオチド、より好ましくは1~100種類のヌクレオチド、最も好ましくは1~96種類のヌクレオチドを意味する。ランダムプライマーとして上述の範囲のヌクレオチド(ヌクレオチド群)を使用することによって、より高い再現性で増幅核酸断片を得ることができる。なお、ランダムプライマーとして、複数のヌクレオチドを含む場合、全てのヌクレオチドが同じ塩基長(9~30塩基長)である必要はなく、異なる塩基長の複数のヌクレオチドを含んでいても良い。
[0061]
 通常、核酸増幅反応を用いて特定のアンプリコンを得るためには、当該アンプリコンに応じてプライマーの塩基配列を設計する。例えば、ゲノムDNA等の鋳型DNAにおけるアンプリコンに対応する位置を挟み込むように一対のプライマーを設計する。この場合、プライマーは、鋳型に含まれる特定の領域にハイブリダイズするように設計されるため「特異的プライマー」と呼称することができる。
[0062]
 これに対して、ランダムプライマーは、特定のアンプリコンを得る目的で設計されるプライマーとは異なり、鋳型DNAにおける特定の領域にハイブリダイズするように設計されるのではなく、ランダムなアンプリコンを得るために設計される。ランダムプライマーは、その塩基配列が如何なる配列であってもよく、鋳型DNAに含まれる相補的な領域に偶発的にハイブリダイズすることでランダムなアンプリコン増幅に関与できる。
[0063]
 すなわち、ランダムプライマーとは、上述のように、ランダムなアンプリコン増幅に関与する任意配列を有するヌクレオチドということができる。ここで任意配列とは、何ら限定されないが、例えば、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンの群から無作為に選択された塩基配列として設計しても良いし、特定の塩基配列として設計しても良い。特定の塩基配列としては、例えば、制限酵素認識配列を含む塩基配列や、次世代シーケンサーに使用するアダプタ配列を有する塩基配列を挙げることができる。
[0064]
 ランダムプライマーとして複数種類のヌクレオチドを設計する場合、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンの群から無作為に選択して所定の長さの塩基配列を複数設計する方法が適用できる。また、ランダムプライマーとして複数種類のヌクレオチドを設計する場合、特定の塩基配列からなる共通部分と、任意の塩基配列からなる非共通部分とからなる塩基配列を複数設計する方法も適用できる。ここで、非共通部分は、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンの群から無作為に選択された塩基配列としても良いし、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンからなる4種類の塩基の全ての組み合わせ、又はこれら全ての組み合わせから選ばれる一部の組み合わせとすることができる。共通部分は、特に限定されず如何なる塩基配列でもよいが、例えば、制限酵素認識配列を含む塩基配列や、次世代シーケンサーに使用するアダプタ配列を有する塩基配列、特定の遺伝子ファミリーに共通する塩基配列とすることができる。
[0065]
 複数のランダムプライマーとして、4種類の塩基から無作為に選択して所定の長さの塩基配列を複数設計する場合、全体の30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上が、70%以下の同一性、好ましくは60%以下の同一性、より好ましくは50%以下の同一性、最も好ましくは40%以下の同一性となるように設計することが好ましい。複数のランダムプライマーとして、4種類の塩基から無作為に選択して所定の長さの塩基配列を複数設計する場合であって、上述の範囲のヌクレオチドについて上記範囲の同一性となるように設計することで、対象生物種のゲノムDNA全体に亘って増幅断片を得ることができる。すなわち、増幅断片の均一性を高めることができる。
[0066]
 複数のランダムプライマーとして、特定の塩基配列からなる共通部分と、任意の塩基配列からなる非共通部分とからなる塩基配列を複数設計する場合、例えば、3’末端側の数塩基を非共通部分とし、残りの5’末端側を共通部分とするように設計することができる。3’末端側のn個の塩基を非共通部分とすれば、4 種類のランダムプライマーを設計することができる。ここで、n個としては、1~5個とすることができ、好ましくは2~4個、より好ましくは2~3個である。
[0067]
 例えば、共通部分と非共通部分とからなるランダムプライマーとしては、5’末端側を次世代シーケンサーに使用するアダプタ配列(共通部分)とし、3’末端側を2塩基(非共通部分)とした、合計16種類のランダムプライマーを設計することができる。なお、3’末端側を3塩基(非共通部分)とすれば、合計64種類のランダムプライマーを設計することができる。ランダムプライマーの種類が多くなるほど、対象生物種のゲノムDNA全体に亘って増幅断片をより網羅的に得ることができる。したがって、共通部分と非共通部分とからなるランダムプライマーを設計する場合、3’末端側の塩基は3塩基とすることが好ましい。
[0068]
 ただし、例えば、共通部分と3塩基の非共通部分とからなる64種類の塩基配列を設計した後、これら64種類の塩基配列から選ばれる63種類以下のランダムプライマーを使用してもよい。言い換えると、64種類のランダムプライマーの全てを使用した場合と比較して、63種類以下のランダムプライマーを使用した場合のほうが核酸増幅反応や、次世代シーケンサーを用いた解析において優れた結果を示す場合がある。
[0069]
 ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーの塩基長に応じて適宜設定することが好ましい。ここで、ランダムプライマーの塩基長は、異なる塩基長の複数種類のヌクレオチドをランダムプライマーとして使用する場合には、その平均値(単純平均でもよいし、ヌクレオチド量を加味した加重平均でもよい)とすることができる。
[0070]
 具体的には、9~30塩基長のランダムプライマーを用い、当該ランダムプライマー濃度を4~200μMとする条件、好ましくは4~100μMとする条件で核酸増幅反応を行う。この条件であれば、核酸増幅反応により、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片、特に100~500塩基長の多数の増幅断片を得ることができる。
[0071]
 より具体的には、ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが9~10塩基長である場合、40~60μMとすることが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが10~14塩基長である場合、ランダムプライマーの塩基長をyとし、ランダムプライマーの濃度をxとしたときに、y>3E+08x -6.974且つ100μM以下を満たすことが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが14~18塩基長の場合、4~100μMとすることが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが18~28塩基長の場合、4μM以上であり、且つy<8E+08x -5.533を満たすことが好ましい。ランダムプライマーの濃度は、ランダムプライマーが28~29塩基長の場合、6~10μMとすることが好ましい。ランダムプライマーの濃度を、ランダムプライマーの塩基長に応じて上記のように設定することで、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片をより確実に得ることができる。
[0072]
 なお、上述したy>3E+08x -6.974及びy<8E+08x -5.533の不等式は、国際公開WO 2018/003220で説明するように、ランダムプライマーの長さと濃度との関係を詳細に調べた結果、100~500塩基長の多数のDNA断片を再現性良く増幅できる範囲として算出されたものである。
[0073]
 また、核酸増幅反応において鋳型となるゲノムDNAは、特に限定されないが、反応液の量を50μlとしたときに、0.1~1000ngとすることが好ましく、1~500ngとすることがより好ましく、5~200ngとすることが更に好ましく、10~100ngとすることが最も好ましい。鋳型となるゲノムDNAの量をこの範囲とすることで、ランダムプライマーからの増幅反応が阻害されることなく、高い再現性を達成しながら多数の増幅断片を得ることができる。
[0074]
 以上の方法に従って、黒穂病抵抗性に優れたサトウキビからDNAライブラリーを作製し、また黒穂病感受性を示すサトウキビからDNAライブラリーを作製することができる。これらDNAライブラリーの塩基配列を次世代シーケンサーにより解析し、ライブラリーを構成する断片のリード数を比較することで、黒穂病抵抗性に優れたサトウキビから作製したDNAライブラリーに特有の断片を選択することができる。
[0075]
 より具体的に、本発明者らは、既知のサトウキビ品種「NiF8」にサトウキビ野生種「西表15」を交配して得られた後代系統(3系統)に、サトウキビ野生種「JW90」を交配して得られた各後代系統(33系統、35系統及び35系統)について、上述したDNAライブラリーを作製する。そして、当該DNAライブラリーを次世代シーケンサーに供して得られたリード数データから遺伝子型データを取得し、この遺伝子型データを元にして、遺伝地図作成ソフトウェアAntMap(Iwata H, Ninomiya S (2006) AntMap: constructing genetic linkage maps using an ant colony optimization algorithm. Breed Sci 56: 371-377)を使用し、遺伝距離計算式Kosambiにより染色体におけるマーカーの位置情報を算出した。さらに、取得したマーカーの位置情報をもとに、Mapmaker/EXP ver.3.0(A Whitehead Institute for Biomedical Research Technical Report, Third Edition, January, 1993)により遺伝地図データシートを作成した。その結果、上述した配列番号1~6に示した6種類のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを含む31191個のマーカーを同定している。また、DNAライブラリーを次世代シーケンサーに供してリード数データを取得する工程を2回繰り返すことで、より多くのリード数データを取得し、得られたリード数データから遺伝子型データを取得した。そして、同様にして、上述した配列番号135~143に示した9種類のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを含む64757個のマーカーを同定している。
[0076]
 さらに、本発明者らは、既知のサトウキビ品種「NiF8」にサトウキビ野生種「西表8」を交配して得られた後代系統と、サトウキビ品種「NiTn18」と「NiTn24」を交配して得られた後代系統とから作製した154系統の後代系統について、上述したDNAライブラリーを作製している。そして、当該DNAライブラリーを次世代シーケンサーに供して得られたリード数データから遺伝子型データを取得し、この遺伝子型データを元にして、遺伝地図作成ソフトウェアAntMap(Iwata H, Ninomiya S (2006) AntMap: constructing genetic linkage maps using an ant colony optimization algorithm. Breed Sci 56: 371-377)を使用し、遺伝距離計算式Kosambiにより染色体におけるマーカーの位置情報を算出した。さらに、取得したマーカーの位置情報をもとに、Mapmaker/EXP ver.3.0(A Whitehead Institute for Biomedical Research Technical Report, Third Edition, January, 1993)により遺伝地図データシートを作成した。その結果、上述した配列番号144(及び145)~151に示した7種類のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを含む57444個のマーカーを同定している。
[0077]
 また、配列番号151に示した塩基配列を有するサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを含む近傍領域と、配列番号1に示した塩基配列を有するサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを含む近傍領域とは、それぞれ独立して同定されたにも拘わらず、同一の塩基配列を有する複数のマーカーを含んでいる。
[0078]
<サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの利用>
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを利用することで、後代系統等の黒穂病抵抗性の表現型が未知のサトウキビ系統について黒穂病抵抗性の向上という表現型を示す系統であるか判断することができる。サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして、上述した8.4cM領域に含まれる1つの核酸領域を利用しても良いし、上述した8.4cM領域に含まれる複数の核酸領域を利用しても良い。また、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして、上述した26.6cM領域に含まれる1つの核酸領域を利用しても良いし、上述した26.6cM領域に含まれる複数の核酸領域を利用しても良い。さらに、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして、上述した12.27cM領域に含まれる1つの核酸領域を利用しても良いし、上述した12.27cM領域に含まれる複数の核酸領域を利用しても良い。さらにまた、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして、上述した8.4cM領域に含まれる1つ又は複数の核酸領域、上述した26.6cM領域に含まれる1つ又は複数の核酸領域及び上述した12.27cM領域に含まれる1つ又は複数の核酸領域から選ばれる核酸領域を利用しても良い。ここで、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを利用するとは、当該マーカーを特異的に増幅するプライマー対を用いた核酸増幅反応を利用する形態、当該マーカーに対応するプローブを有するDNAマイクロアレイを利用する形態を含む意味である。
[0079]
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを特異的に増幅するプライマー対は、上述した8.4cM領域の塩基配列、上述した26.6cM領域の塩基配列及び上述した12.27cM領域の塩基配列に基づいて適宜、設計することができる。例えば、プライマー対は、上述した8.4cM領域、上述した26.6cM領域の塩基配列及び上述した12.27cM領域の塩基配列に含まれる、例えば1kbp以下の長さ、又は800bp以下の長さ、又は500bp以下の長さ、又は350bp以下の長さの領域を増幅するように設計することができる。或いは、プライマー対としては、配列番号1~6、135~143及び144(145)~151のいずれかに示した塩基配列からなる核酸領域の全部又は一部を増幅するように設計することができる。当該核酸領域の一部としては、配列番号1~6、135~143及び144(145)~151のいずれかに示した塩基配列に含まれる連続する10塩基とすることができ、連続する20塩基とすることができ、連続する40塩基とすることができ、連続する80塩基とすることができ、連続する100塩基とすることができ、連続する140塩基とすることができる。
[0080]
 サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーに対応するプローブとは、上述のように定義されたサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーに対して、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドを意味する。このようなオリゴヌクレオチドは、例えば、上述のように定義されたサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの塩基配列又はその相補鎖の少なくとも連続する10塩基、15塩基、20塩基、25塩基、30塩基、35塩基、40塩基、45塩基、50塩基又はそれ以上の塩基長の部分領域若しくは全領域として設計することができる。なお、このプローブは、担体に固定して使用することもできる。すなわち、ガラスやシリコーン等の平面基板を担体とするマイクロアレイや、マイクロビーズを担体とするビーズアレイ、或いは中空繊維の内壁にプローブを固定する3次元マイクロアレイ等の如何なるタイプのマイクロアレイであってもよい。
[0081]
 以上のように作製されたDNAマイクロアレイを使用することで、後代系統等に代表される黒穂病抵抗性の表現型が未知のサトウキビ系統について、黒穂病抵抗性の向上という表現型を示す系統であるか判断することができる。なお、上述したDNAマイクロアレイを使用する方法以外であっても、従来公知の手法を用いて上述したサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを検出して、黒穂病抵抗性の表現型が未知のサトウキビ系統について黒穂病抵抗性の向上という形質を有する系統であるか判断してもよい。
[0082]
 詳細には、先ず、供試サトウキビからゲノムDNAを抽出する。この供試サトウキビとは、後代系統等の黒穂病抵抗性の表現型が未知のサトウキビ系統及び/又は後代系統を作製する際に使用した親のサトウキビ系統のことであり、黒穂病抵抗性が向上する形質を有するか判定する対象となるサトウキビ系統である。なお、サトウキビ以外の植物、例えば、ソルガムやエリアンサスといったイネ科植物を供試植物とし、これら供試植物における黒穂病抵抗性を評価しても良い。
[0083]
 次に、抽出したゲノムDNAを鋳型として上述したプライマー対を用いた核酸増幅反応によりサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを増幅する。このとき、プライマーの一方に蛍光色素等の標識を付加することで、増幅したゲノムDNA断片に標識を付加することができる。標識としては、従来公知の如何なる物質を使用しても良い。標識としては、例えば蛍光分子、色素分子、放射性分子等を使用することができる。
[0084]
 次に、標識を有するゲノムDNA断片を所定の条件下でDNAマイクロアレイに接触させ、DNAマイクロアレイに固定されたプローブと標識を有するゲノムDNA断片とをハイブリダイズさせる。このとき、ハイブリダイズさせる際には高いストリンジェンシー条件とすることが好ましい。このような高いストリンジェンシー条件とすることによって、供試サトウキビにサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーが存在しているか否かを、より高精度に判定することができる。なお、ストリンジェンシー条件は、反応温度及び塩濃度で調節することができる。すなわち、より高温とすることでより高いストリンジェンシー条件となり、またより低い塩濃度でより高いストリンジェンシー条件となる。例えば、50~75塩基長のプローブを使用する場合、ハイブリダイゼーション条件としては、40~44℃、0.21SDS、6×SSCの条件とすることでより高いストリンジェンシー条件とすることができる。
[0085]
 また、プローブと標識を有するゲノムDNA断片とのハイブリダイズは、標識に基づいて検出することができる。すなわち、上述した標識を有するゲノムDNA断片とプローブのハイブリダイズ反応の後、未反応のゲノムDNA断片等を洗浄し、その後、プローブに対して特異的にハイブリダイズしたゲノムDNA断片の標識を観察する。例えば、標識が蛍光物質である場合にはその蛍光波長を検出し、標識が色素分子であればその色素波長を検出する。より具体的には、通常のDNAマイクロアレイ解析に使用している、蛍光検出装置やイメージアナライザー等の装置を使用することができる。
[0086]
 なお、上述のようにDNAマイクロアレイを使用する方法以外にも、供試サトウキビから抽出したゲノムDNAにおけるサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを検出することができる。例えば、供試サトウキビから抽出したゲノムDNAを鋳型として、次世代シーケンサーを用いてサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのリード数を測定することでサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーが存在しているか否かを高精度に判定することができる。
[0087]
 以上のように、上述したDNAマイクロアレイや次世代シーケンサーを使用することにより、供試サトウキビが上述したサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを有するか否か判断することができる。ここで、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーは、黒穂病抵抗性が向上する形質に連鎖するマーカーである。したがって、供試サトウキビにおいて、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーが存在していれば、黒穂病抵抗性が向上した品種と判断できる。
[0088]
 特に、上述した方法では、供試サトウキビを実際の黒穂病抵抗性試験を実施可能な程度まで成長させる必要はなく、例えば後代系統の種子や当該種子を発芽させた幼苗を使用することができる。したがって、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを利用することによって、供試サトウキビを生育させるための圃場やその他、生育のためのコストを大幅に削減することができる。また、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを利用することによって、実際に黒穂病の原因微生物(Ustilago scitaminea)を感染させる必要がなく、大規模専用温室や専用圃場、外部との隔離施設など設備等にかかるコストを削減できる。
[0089]
 特に、サトウキビの新品種作出に際して、先ず、交配により数万種類の交配種を作製した後、実生選抜に先立って若しくは実生選抜に代えて、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを利用した判断を行うことが好ましい。これにより、実際の圃場において、優良な系統を栽培する数を大幅に削減することができ、サトウキビの新品種作出に係る手間やコストを大幅に抑制することができる。
[0090]
 或いは、サトウキビの新品種作出に際して、先ず、交配に使用する親品種におけるサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの存在の有無を判定し、黒穂病抵抗性に優れた親品種を選抜することもできる。黒穂病抵抗性に優れた親品種を優先的に使用して後代系統を作出することで、黒穂病抵抗性に優れた後代系統が高頻度に出現すると期待できる。これにより、優良な系統を栽培する数を大幅に削減することができ、サトウキビの新品種作出に係る手間やコストを大幅に抑制することができる。
実施例
[0091]
 以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
[0092]
〔実施例1〕
(1)材料
 サトウキビ品種「NiF8」、サトウキビ野生種「西表15」、「NiF8」に「西表15」を交配した後代3系統「KY08-6023」、「KY08-6039」、「KY08-6041」、これら後代3系統にサトウキビ野生種「JW90」をそれぞれ交配した後代各33、35、35系統についてDNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社)によりゲノムDNAを抽出、精製した。
[0093]
(2)DNAライブラリーの作製
 本実施例においてDNAライブラリーは、国際公開WO 2018/003220に記載されたDNAライブラリーの作製方法に準じて作製した。すなわち、上記(1)で取得したゲノムDNA15.0ngに最終濃度0.2mM dNTP mixture、0.625 unit Prime STAR DNA Polymerase(タカラバイオ社)に60μMランダムプライマーをそれぞれ加え、最終反応量25μlでPCRを行った。反応は98℃で2分後、98℃で10秒、50℃で15秒及び72℃で20秒を1サイクルとして30サイクル行い、最終的に4℃で保存した。
[0094]
 なお、本例で使用したランダムプライマーを表4にまとめた。
[表4]


[0095]
(3)次世代シーケンサー用のDNAライブラリーの作製
 上記(2)の反応後の溶液1.5μlに最終濃度0.2 mM dNTP mixture、1.25 unit PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社)にプライマーセットをそれぞれ加え、最終反応量50μlでPCRを行った。反応条件は95℃で2分後、98℃で配列番号15秒、55℃で15秒及び72℃で20秒を1サイクルとして25サイクル行い、最終的に4℃で保存した。なお、本例では、「KY08-6023」、「KY08-6039」、「KY08-6041」に「JW90」を交配させた103系統用(各33、35、35系統)と、これら親及び祖父母系統(「NiF8」、「西表15」、「KY08-6023」、「KY08-6039」、「KY08-6041」、「JW90」の6系統用(各2反復)について、合計115の組合せに関して表5に示したフォワードプライマー(配列番号19~133)と、リバースプライマー(5’-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACCGCGCAGATCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号134))のセットを利用した。
[0096]
[表5]


[0097]


[0098]


[0099]
(4)精製及び電気泳動
 上記(3)の反応後の溶液を1本のチューブに等量混合し、その内、50μlをMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社)により精製後、Agilent 2100 バイオアナライザー(Agilent Technology社)で電気泳動し、蛍光ユニット(Fluorescence Unit:FU)を得た。
[0100]
(5)次世代シーケンサー解析
 上記(3)で得られたDNAライブラリーをHiseq4000シーケンスシステム(イルミナ株式会社)により、リード長100塩基のペアエンド条件のもとで解析した。
[0101]
(6)リードデータの解析
 上記(5)で得られたリードデータから、解析ソフトウェアGRAS-Di(トヨタ自動車株式会社)を用いて解析し、31191個のマーカーの遺伝子型データを得た。
[0102]
(7)遺伝地図の作製
 上記(6)で得られたJW90由来の遺伝子型データをもとに、遺伝地図作成ソフトAntMap (Iwata H, Ninomiya S (2006) AntMap: constructing genetic linkage maps using an ant colony optimization algorithm. Breed Sci 56: 371-377)を用い、遺伝距離計算式Kosambiにより86の連鎖群からなる遺伝地図データを取得した。86の連鎖群にはJW90型に属する4503個のマーカーの遺伝子型データが含まれる。
[0103]
(8)黒穂病検定試験データの取得
 サトウキビ品種「NiF8」にサトウキビ野生種「西表15」を交配した後代3系統「KY08-6023」、「KY08-6039」、「KY08-6041」、これら後代3系統にサトウキビ野生種「JW90」をそれぞれ交配した後代各33、35、35系統の茎を収穫し、2~3日間、室温・高湿度条件下で催芽処理した後、黒穂病胞子の有傷接種を行った。有傷接種は、苗芽子両側に傷を付け(計6か所、深さ約4.0mm)、毛筆により胞子浮遊液(10 7~10 8個・胞子/ml)を塗布した。有傷接種した苗は、2~3日間、室温・高湿度条件下で培養し、育苗箱へ植付けた(40芽/箱、2箱/系統)。苗の植付け後、高湿度条件下、温室で栽培した。黒穂病罹病程度の調査は、罹病の兆候である鞭状物が頂部より露出した株数を計測し罹病株数とした。罹病株数の調査後、罹病株の植物体は、地際部より刈取り除去した。黒穂病の罹病率は、発芽株数(黒穂病以外の枯死株を除く)に対する罹病株数の割合(黒穂病罹病率)として算出した。「KY08-6023」と「JW90」とを交配して得られた後代について黒穂病罹病率を計算した結果を図1(A)に示し、「KY08-6039」と「JW90」とを交配して得られた後代について黒穂病罹病率を計算した結果を図1(B)に示し、「KY08-6041」と「JW90」とを交配して得られた後代について黒穂病罹病率を計算した結果を図1(C)に示した。
[0104]
(9)量的形質(Quantitative Trait Loci)の解析
 上記(7)で得られたJW90由来の遺伝地図データ及び(8)で得られた黒穂病検定試験データをもとに、遺伝解析ソフトQTL Cartographer (http://statgen.ncsu.edu/qtlcart/cartographer.html)を使い、Composite interval mapping (CIM)法により、QTL解析を行った。LODの閾値は2.5を用いた。その結果、サトウキビ野生種「JW90」の第42連鎖群のマーカーAMP0121265からAMP0100370を含む約8.4cM領域にサトウキビ黒穂病に関連するQTLの存在を確認した(表6及び図2)。なお、効果の数字が負である場合、当該QTLは黒穂病抵抗性が向上する形質に連鎖することを意味する。
[0105]
[表6]


[0106]
 表6及び図2に示すように、本実施例で見いだした第42連鎖群のマーカーAMP0121265からAMP0100370の範囲は、国際公開 WO2012/147635に記載されたQTLに比して、LOD値が著しく高く、また効果が著しく向上することを確認できた。
[0107]
(10)黒穂病抵抗性選抜マーカーの選定
 上記(9)で確認したサトウキビ黒穂病抵抗性QTL領域に含まれるマーカー(AMP0121265、AMP0120752、 AMP0035185、AMP0114852、AMP0089904、AMP0100370)を選抜マーカーとして選定した(表7)。
[0108]
[表7]


[0109]
 各マーカーの遺伝子型、すなわち供試系統が上述した選抜マーカーを有するか否かは、それぞれのリード数の閾値を10とし、リード数が10以上である場合に“有”とし、リード数が10未満である場合に“無”として判別した(図3~8、表8)。
[0110]
[表8]


[0111]
 表8及び図3~8に示したように、黒穂病罹病率の低い供試系統は、黒穂病罹病率の高い供試系統と比較してこれらマーカー数が有意に高いことがわかる。これらの結果より、AMP0121265、AMP0120752、AMP0035185、AMP0114852、AMP0089904及びAMP0100370を含む約8.4cM領域から選ばれる連続する核酸領域を、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして利用できることが明らかとなった。
[0112]
〔実施例2〕
 実施例1では、31191個のマーカーの遺伝子型データの内、JW90型に属する4503個の遺伝子型データに基づいてサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを同定した。本実施例では、西表15型に属する遺伝子型データを収集し、同様にしてサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを同定した。
[0113]
 本実施例では、西表15型に属する遺伝子型データ数を増やすため、実施例1で作製したDNAライブラリーに対して、(5)次世代シーケンサー解析を2回繰り返した。このようにして得られたリードデータから、解析ソフトウェアGRAS-Di(トヨタ自動車株式会社)を用いて解析し、64757個のマーカーの遺伝子型データを得た。
[0114]
 そして、西表15型を祖先に有する後代「KY08-6023, KY08-6039, KY08-6041」由来の遺伝子型データをもとに、実施例1と同様にして、遺伝地図作成ソフトAntMap (Iwata H, Ninomiya S (2006) AntMap: constructing genetic linkage maps using an ant colony optimization algorithm. Breed Sci 56: 371-377)を用い、遺伝距離計算式Kosambiにより58の連鎖群からなる遺伝地図データを取得した。58の連鎖群には西表15を祖先に有する後代「KY08-6023, KY08-6039, KY08-6041」型に属する4503個のマーカーの遺伝子型データが含まれる。
[0115]
 このようにして得られた遺伝地図データ及び実施例1で得られた黒穂病検定試験データをもとに、遺伝解析ソフトQTL Cartographer (http://statgen.ncsu.edu/qtlcart/cartographer.html)を使い、Composite interval mapping (CIM)法により、QTL解析を行った。LODの閾値は2.5を用いた。その結果、サトウキビ野生種「西表15」の第15連鎖群のマーカーAMP0014532からAMP0015886の区間内にサトウキビ黒穂病に関連するQTLの存在を確認した(表9、図9)。なお、効果の数字が負である場合、当該QTLは黒穂病抵抗性が向上する形質に連鎖することを意味する。
[0116]
[表9]


[0117]
 表9及び図9に示すように、本実施例2で見いだした第15連鎖群のマーカーAMP0014532からAMP0015886の区間の範囲は、国際公開 WO2012/147635に記載されたQTLに比して、LOD値が著しく高く、また効果が著しく向上することを確認できた。本実施例では、このようにして確認したサトウキビ黒穂病抵抗性QTL領域に含まれるマーカー(AMP0014532、AMP0043152、AMP0069135、AMP0032477、AMP0018405、AMP0002312、AMP0007121、AMP0090108、AMP0015886)を選抜マーカーとして選定した(表10)。
[0118]
[表10]


[0119]


[0120]
 各マーカーの遺伝子型、すなわち供試系統が上述した選抜マーカーを有するか否かは、それぞれのリード数の閾値を10とし、それ以上を“有”、それ未満を“無”として判別した(図10~18、表11)。
[0121]
[表11]


[0122]
 表11及び図10~18に示したように、黒穂病罹病率の低い供試系統は、黒穂病罹病率の高い供試系統と比較してこれらマーカー数が有意に高いことがわかる。これらの結果より、AMP0014532、AMP0043152、AMP0069135、AMP0032477、AMP0018405、AMP0002312、AMP0007121、AMP0090108、AMP0015886を含む約26.6cM領域から選ばれる連続する核酸領域を、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして利用できることが明らかとなった。
[0123]
〔実施例3〕
 本実施例では、サトウキビ品種「NiF8」とサトウキビ野生種「西表8」を交配した後代「KY09-6092」、サトウキビ品種「NiTn18」とサトウキビ品種「NiN24」を交配した後代「KY08-129」、「KY09-6092」及び「KY08-129」を交配した後代154系統を使用した以外は実施例1と同様にして、サトウキビ野生種「西表8」由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを同定した。
[0124]
 本実施例では、次世代シーケンサー用のDNAライブラリーを作製するに際して表5に示したフォワードプライマーに代えて、表12に示したフォワードプライマーを用いた以外は実施例1と同様な方法で得られたリードデータから、解析ソフトウェアGRAS-Di(トヨタ自動車株式会社)を用いて解析し、57444個のマーカーの遺伝子型データを得た。
[0125]
[表12]


[0126]


[0127]


[0128]
 その内、KY09-6092に属する2936個の遺伝子型とKY08-129に属する1877個の遺伝子型とを得た。そして、「KY09-6092」由来の117の連鎖群からなる遺伝地図データと、「KY08-129」由来の123の連鎖群からなる遺伝地図データを取得した。また、「KY09-6092」及び「KY08-129」を交配した後代154系統について、実施例1と同様な条件で黒穂病検定試験データを取得し、黒穂病罹病率を計算した結果を図19に示した。そして、これら遺伝地図データと黒穂病検定試験データをもとに、遺伝解析ソフトQTL Cartographer (http://statgen.ncsu.edu/qtlcart/cartographer.html)を使い、Composite interval mapping (CIM)法により、QTL解析を行った。LODの閾値は2.5を用いた。
[0129]
 その結果、「KY09-6092」の第8連鎖群のマーカーAMP0063683からAMP0091501を含む約12.27cM領域にサトウキビ黒穂病に関連するQTLの存在を確認した(表13及び図20)。なお、効果の数字が負である場合、当該QTLは黒穂病抵抗性が向上する形質に連鎖することを意味する。
[0130]
[表13]


[0131]
 表13及び図20に示すように、本実施例で見いだした第8連鎖群のマーカーAMP0063683からAMP0091501の範囲は、国際公開 WO2012/147635に記載されたQTLに比して、LOD値が著しく高く、また効果が著しく向上することを確認できた。本実施例で確認したサトウキビ黒穂病抵抗性QTL領域に含まれるマーカー(AMP0063683、AMP0082090、AMP0013802、AMP0083204、AMP0043774、AMP0094596及びAMP0091501)を選抜マーカーとして選定した(表14)。
[0132]
[表14]


[0133]
 なお、表14に示したマーカーのうちAMP0063683は、PCR産物の大きさが200bp以上のサイズのため、次世代シーケンサーで塩基配列が決定されたリード1(配列番号144)とリード2(配列番号145)を両端に含む核酸領域として定義される。
[0134]
 各マーカーの遺伝子型、すなわち供試系統が上述した選抜マーカーを有するか否かは、それぞれのリード数の閾値を10とし、リード数が10以上である場合に“有”とし、リード数が10未満である場合に“無”として判別した(図21~27、表15)。
[0135]
[表15]


[0136]
 表15及び図21~27に示したように、黒穂病罹病率の低い供試系統は、黒穂病罹病率の高い供試系統と比較してこれらマーカー数が有意に高いことがわかる。これらの結果より、AMP0063683、AMP0082090、AMP0013802、AMP0083204、AMP0043774、AMP0094596及びAMP0091501を含む約12.27cM領域から選ばれる連続する核酸領域を、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして利用できることが明らかとなった。
[0137]
〔実施例4〕
 本実施例では、実施例1で同定されたJW90由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを含む約8.4cM領域と、実施例3で同定された西表8由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーを含む約12.27cM領域について塩基配列を比較した。その結果、実施例1で同定されたJW90由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのうち0cMに位置するAMP0121265を含む近傍領域と、実施例3で同定された西表8由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのうち83.76cMに位置するAMP0091501を含む近傍領域に同一の塩基配列を有するマーカーが複数含まれることが明らかとなった。
[0138]
 実施例1で同定されたJW90由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのうち0cMに位置するAMP0121265を含む近傍領域に含まれるマーカーを表16にまとめた。実施例3で同定された西表8由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのうち83.76cMに位置するAMP0091501を含む近傍領域に含まれるマーカーを表17にまとめた。なお、表16及び17において、各マーカーに関する塩基配列情報の欄には、次世代シーケンサー解析により読み取れた一対のリードデータからコンティグ配列を導き出せる場合には、そのコンティグ配列の塩基配列を記載し、コンティグ配列を導き出せない場合には一対のリード配列(リード配列1及びリード配列2)を記載している。すなわち、表16及び17に示す各マーカーは、コンティグ配列の塩基配列で定義できるか、又はリード配列1の塩基配列及びリード配列2の塩基配列で定義できる。
[0139]
 表16に列挙したマーカーのうち、表17に列挙したAMP0179276を含む近傍領域に含まれるマーカーと同一の塩基配列を有するものについて、「西表8由来のDNAマーカーの有無():西表8マーカーID」の欄に○及び同一の塩基配列を有する西表8由来マーカーのIDを記載した。同様に、表17に列挙したマーカーのうち、表16に列挙したAMP0121265を含む近傍領域に含まれるマーカーと同一の塩基配列を有するものについて、「JW90由来のDNAマーカーの有無():JW90マーカーID」の欄に○及び同一の塩基配列を有するJW90由来マーカーのIDを記載した。
[0140]
[表16]


[0141]


[0142]


[0143]


[0144]


[0145]


[0146]


[0147]
[表17]


[0148]


[0149]


[0150]
 表16に示したように、JW90由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのうち0cMに位置するAMP0121265を含む近傍領域に36個のマーカーが含まれ、表17に示したように、西表8由来のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーのうち83.76cMに位置するAMP0091501を含む近傍領域に18個のマーカーが含まれていた。これらのうち、5個のマーカーが同一の塩基配列を有していることが判明した。この結果から、表16に示した36個のマーカーを含む領域と、表17に示した18個のマーカーを含む領域は、サトウキビ黒穂病に対する抵抗性に強く関連するQTLとして理解することができる。特に、本実施例で特定したサトウキビ黒穂病抵抗性のQTLは、JW90及び西表8の両者が有するため、特に限定されることなく広く様々なサトウキビ品種に存在するものと考えられる。
[0151]
 特に、本実施例から、表16に示した36個のマーカー及び表17に示した18個のマーカーは、特に優れたサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして利用できることが示された。
[0152]
 さらに、表16に示した36個のマーカー及び表17に示した18個のマーカーのうち、同一の塩基配列を有することが明らかとなった5個のマーカー(AMP0016471(配列番号298)=AMP0020554(配列番号248)、AMP0036426(配列番号303)=AMP0045000(配列番号270)、 AMP0046626(配列番号307)=AMP0057239(配列番号271)、AMP0052709(配列番号311)=AMP0062853(配列番号273)、AMP0091501(配列番号316)=AMP0111891(配列番号292))は、最も優れたサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーとして利用できることが示された。
[0153]
 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

請求の範囲

[請求項1]
 サトウキビの染色体における配列番号1に示す塩基配列及び配列番号6に示す塩基配列により挟まれる領域;配列番号135に示す塩基配列及び配列番号143に示す塩基配列により挟まれる領域;又は配列番号144若しくは145に示す塩基配列及び配列番号151に示す塩基配列により挟まれる領域から選ばれる連続する核酸領域からなる、サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
[請求項2]
 上記核酸領域は、配列番号1~6、135~143及び144~151からなる群から選ばれるいずれか1の塩基配列又は当該塩基配列の一部を含むことを特徴とする請求項1記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
[請求項3]
 上記核酸領域は、サトウキビの染色体における配列番号1若しくは2に示す塩基配列又は当該塩基配列の一部であることを特徴とする請求項1記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
[請求項4]
 上記核酸領域は、サトウキビの染色体における配列番号138~140からなる群から選ばれる1つの塩基配列又は当該塩基配列の一部であることを特徴とする請求項1記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
[請求項5]
 上記核酸領域は、サトウキビの染色体における配列番号149若しくは151からなる群から選ばれる1つの塩基配列又は当該塩基配列の一部であることを特徴とする請求項1記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
[請求項6]
 上記核酸領域は、サトウキビの染色体における配列番号298、303、307、311及び316からなる群から選ばれる1つの塩基配列又は当該塩基配列の一部であることを特徴とする請求項1記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカー。
[請求項7]
 少なくとも一方の親がサトウキビ植物である後代植物の染色体及び/又は当該親の染色体を抽出する工程と、上記で得られた染色体における上記請求項1~6いずれか1項に記載のサトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーの存在・非存在を測定する工程とを含む、黒穂病抵抗性が向上したサトウキビ系統の製造方法。
[請求項8]
 上記測定する工程では、上記サトウキビ黒穂病抵抗性関連マーカーに対応するプローブを備えるDNAチップを使用することを特徴とする請求項7記載のサトウキビ系統の製造方法。
[請求項9]
 上記後代植物は種子又は幼苗であり、当該種子又は幼苗から染色体を抽出することを特徴とする請求項7記載のサトウキビ系統の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]