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1. WO2020009009 - 造形方法及び造形装置

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明 細 書

発明の名称 造形方法及び造形装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061  

符号の説明

0062  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

明 細 書

発明の名称 : 造形方法及び造形装置

技術分野

[0001]
 本発明は、粒子状の材料を用いて立体物を造形する方法に関する。

背景技術

[0002]
 立体物を造形する方法として、造形対象物である立体物モデルのスライスデータに従って造形材料を積層する積層造形法が注目されている。従来は樹脂材料を用いた造形が主流であったが、最近では、金属やセラミックスなど、樹脂以外の造形材料を用いた造形を行う装置も増えてきている。
[0003]
 特許文献1では、基板上に粉末材料の薄層を形成した後にレーザで局所的に高温加熱を行い、粉末材料を焼結する、という工程を繰り返すことで造形物を得る方法が開示されている。特許文献1の手法では、オーバーハング構造や可動部のある構造など、粉末材料が焼結されていない領域(以下「非造形部」とよぶ)の上に構造体を形成する場合、非造形部の上部に存在する粉末材料を焼結しなければならない。その際の局所的な熱収縮により反りが発生することがあるため、構造体の形状によっては、反りを抑制するサポート体(サポート構造とも称す)を付加して造形する必要がある。サポート体は、本来不要な構造であるため、立体物モデルの形状次第では、造形後に除去が必要となる場合があるため、サポート体の除去が困難な形状ないし構造をもつ立体物モデルは造形が困難である。特に、金属の造形物からサポート体を除去する際には金属加工機を用いる必要があるため、金属加工機による除去が物理的に困難な微細構造は造形することができなかった。また、セラミックスは負荷により破損しやすいため、セラミックスの造形物から選択的にサポート体を除去することは困難であった。
[0004]
 また、金属又はセラミックスなどの粒子と樹脂バインダーとの混合材料を用いて造形物の形状を作製した後に、樹脂を除去(脱脂)し焼結することで、金属又はセラミックスの造形物を得る手法が知られている。特許文献2では、金属粒子含有層に液状結合剤を塗布して固化する工程を繰り返した後に、固化していない領域を取り除くことで、樹脂と金属粒子の複合造形物を作製する手法が開示されている。得られた複合造形物を、熱処理により脱脂、焼結することで金属造形物を得ている。
[0005]
 特許文献2の方法では、オーバーハング構造や可動部のある構造などを有する形状を作製する場合、結合剤を塗布していない粉末(固化していない粉末)をサポート体の代わりとして造形している。しかし、サポート体代わりの粉末は、脱脂及び焼結の前に除去しなければならないため、脱脂後に形状を維持できず、変形、破損することがある。また、造形物中に厚さが異なる造形形状が混在する場合には、厚い箇所での脱脂が不十分だと造形物中の不純物が増え、厚い箇所の脱脂を十分にすると薄い部分が変形、破損することがある。したがって、特許文献2の造形方法では、造形可能な形状、サイズに制限があった。とはいえ、形状維持のためにサポート体代わりの粉末を除去しないで熱処理を行うと、非造形部の金属粒子が造形部の金属粒子に合一してしまい、求める形状が得られない可能性がある。
[0006]
 また、樹脂と金属の複合造形物の形状は樹脂成分によって維持されるが、樹脂成分が多いと脱脂時の変形や破損、形成した造形物中の空隙の原因となる。一方で、樹脂成分が少ないと樹脂と金属の複合造形物の強度が弱くなるため、非造形部の粒子を取り除く際に造形物が破損することがある。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 特開2015-38237号公報
特許文献2 : 特開2015-205485号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 上述したように、従来の造形方法では造形可能な形状に制限がある。特に金属やセラミックスなどの造形材料を用いる方法では、所望の物性あるいは形状が造形できるとは言い難い状況である。
 本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、造形時の造形物の変形、破損を抑制することができ、より形状自由度の高い造形技術を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明の第一態様は、
 第一の粉末を用いて粉末層を形成する形成工程と、
 前記粉末層の一部の領域に、前記第一の粉末よりも平均粒子径が小さい第二の粉末を配置する配置工程と、
 前記第二の粉末に含まれる粒子どうしが焼結または溶融する温度で、前記第二の粉末が配置された前記粉末層を加熱する第一の加熱工程と、
 を含み、
 前記第一の加熱工程後における、前記一部の領域の前記粉末層の圧縮強度をP1、前記一部の領域外の前記第一の粉末の圧縮強度をP2としたとき、
  P1 ≧ 0.5MPa > P2
 の関係が成り立つ
ことを特徴とする造形方法を提供する。
[0010]
 本発明の第二態様は、
 第一の粉末を用いて粉末層を形成する形成手段と、
 前記粉末層の一部の領域に、前記第一の粉末よりも平均粒子径が小さい第二の粉末を配置する配置手段と、
 前記第二の粉末に含まれる粒子どうしが焼結または溶融する温度で、前記第二の粉末が配置された前記粉末層を加熱する加熱手段と、
 を有し、
 前記加熱手段は、
  加熱後における、前記一部の領域の前記粉末層の圧縮強度をP1、前記一部の領域外の前記第一の粉末の圧縮強度をP2としたとき、
  P1 ≧ 0.5MPa > P2
 の関係が成り立つように前記粉末層を加熱する
ことを特徴とする造形装置を提供する。

発明の効果

[0011]
 本発明によれば、造形時の造形物の変形、破損を抑制することができ、より形状自由度の高い造形技術を提供することが可能となる。
 本発明のさらなる特徴は、添付の図面を参照した後述される各実施形態の記載により明らかにされる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 実施形態の造形方法を模式的に示す図
[図2] 実施形態の造形方法を模式的に示す図
[図3] 実施形態の造形方法における粉末層の構造を模式的に示す図
[図4] 実施例に係る造形装置を模式的に示す図
[図5] 実施例の圧縮強度実験を行ったときの評価結果を表す図
[図6] 実施例の圧縮強度試験に用いる測定装置を模式的に示す図
[図7] 実施例の圧縮強度試験の試験結果の一例を表す図
[図8] 焼結温度と焼結時間と圧縮強度の関係を表す図
[図9] 造形物又は非造形部が容易には解砕できない温度と時間の閾値を表す図

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明は、粒子状の材料を用いて立体的な造形物を作製するための造形方法に関する。本発明の方法は、アディティブマニファクチャリング(AM)システム、三次元プリンタ、ラピッドプロトタイピングシステムなどと呼ばれる造形装置における造形プロセスに好ましく利用可能である。
 以下、本発明の好ましい実施形態及び実施例を示して、本発明を詳細に説明する。各図面において、同一部材あるいは対応する部材を示す箇所には、同一の符号を付与している。特に図示あるいは記述をしない構成や工程には、当該技術分野の周知技術又は公知技術を適用することが可能である。また、重複する説明は省略する場合がある。
[0014]
 (造形方法)
 本発明の実施形態に係る造形方法は、概略、下記の(工程1)~(工程4)を有する。
 (工程1)第一の粒子を用いて粉末層を形成する工程
 (工程2)粉末層のうちの造形部に、第二の粒子を付与する工程
 (工程3)第二の粒子を焼結し、造形部内の第一の粒子どうしを固定する工程
 (工程4)造形部外の第一の粒子を取り除く工程

 上記の(工程1)~(工程4)を行うことにより、粉末層1層分の厚みを有するシート状(又は板状)の造形物を形成することができる。さらに、上記の(工程1)~(工程2)を繰り返して多数の粉末層を積層することで、3次元的な造形物を形成することができる。
[0015]
 (各工程の説明)
 以下、図1A~図1H、図2A~図2G、図3を用いて、造形方法の各工程について説明する。図1A~図1H、図2A~図2Gは、本実施形態の造形方法の流れを模式的に示している。図1A~図1Hは(工程1)~(工程3)を複数回繰り返したのち(工程4)を実行するシーケンスの例、図2A~図2Gは(工程1)と(工程2)を交互に複数回繰り返したのち(工程3)と(工程4)を実行するシーケンスの例である。図3は粉末層の構造を模式的に示す拡大図である。
[0016]
 なお、造形を開始する前に、造形装置又は外部装置(例えばパーソナルコンピュータなど)によって、造形対象物の3次元形状データから、各層を形成するためのスライスデータが生成されているものとする。3次元形状データとしては、3次元CAD、3次元モデラー、3次元スキャナなどで作成されたデータを用いることができ、例えば、STLファイルなどを好ましく利用できる。スライスデータは、造形対象物の3次元形状を所定の間隔(厚み)でスライスして得られるデータであり、断面の形状、層の厚み、材料の配置などの情報を含むデータである。層の厚みは造形精度に影響するため、要求される造形精度や造形に用いる粒子の粒子径に応じて層の厚みを決めると良い。
[0017]
 (工程1)第一の粉末を用いて粉末層を形成する工程
 本工程では、造形対象物のスライスデータに基づき、第一の粒子1を含む第一の粉末を用いて粉末層11が形成される(図1A、図2A)。本明細書では、複数の粒子の集合体を「粉末」と称し、粉末を所定の厚さに均したものを「粉末層」と称し、複数の粉末層を積層したものを「積層体」と称す。本工程の段階では、粉末層11を構成する個々の粒子は固定されていないが、粒子間に作用する摩擦力により粉末層11の形態は保持される。
[0018]
 粉末層11を形成する第一の粉末を構成する第一の粒子1としては、例えば、金属粒子、セラミックス粒子などを使用することができる。具体的には、第一の粒子1として使用可能な金属として、例えば、銅、錫、鉛、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、チタン、タンタル、鉄などが挙げられる。また、ステンレス合金、チタン合金、コバルト合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄合金、ニッケル合金、クロム合金、シリコン合金、ジルコニウム合金などの金属合金を、第一の粒子1として用いてもよい。また、炭素鋼など金属に炭素などの非金属元素を添加したものを、第一の粒子1として用いてもよい。
[0019]
 また、第一の粒子1としては、酸化物セラミックスを用いてもよいし、非酸化物セラミックスを用いてもよい。酸化物セラミックスとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ウラン、チタン酸バリウム、バリウムヘキサフェライト、ムライトなどの金属酸化物が挙げられる。非酸化物セラミックスとしては、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ホウ素、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ランタン、モリブデンシリサイド、鉄シリサイド、バリウムシリサイドなどが挙げられる。第一の粒子1は、複数種類の金属の複合粒子や、複数種類のセラミックスの複合粒子であってもよい。
[0020]
 第一の粉末の平均粒子径は、粉末層11を良好に形成するために、凝集が起こらない程度の寸法にすることが好ましい。具体的には、第一の粒子1の体積基準の平均粒子径が、1μm以上、500μm以下の範囲から選択されるとよく、好ましくは、1μm以上、100μm以下の範囲から選択されるとよい。平均粒子径が1μm以上であることで、粉末層形成時の粒子の凝集が抑えられ、欠陥の少ない層形成が容易になり、また平均粒子径が100μm以下であることで粉末層に含まれる空隙の大きさが小さくなり、焼結工程において強度を発現しやすくなる。第一の粉末の平均粒子径が500μmより大きいと、造形物の表面が粗くなってしまい、高精度な造形物を造形できないことが懸念される。
 平均粒子径の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置 LA-950(HORIBA社製)を用いて乾式で測定した。サンプリングは、透過率が95%~99%の範囲とし、データ取り込み回数は10000回とした。得られた測定結果から、体積基準の平均粒子径を算出することができる。
[0021]
 粉末層11の形成は、例えば、特開平8-281807号公報に開示されているように、上方開口したコンテナと、コンテナの内部に設定された昇降可能な支持体と、ワイパーを備えた材料供給装置とを用いて形成することができる。具体的には、支持体の上面がコンテナの上縁より一層の厚さ分だけ下方となる位置に調整し、材料供給装置により平板上に材料を供給した後、ワイパーによって平坦化することにより1層分の粉末層11を形成することができる。あるいは、平面(ステージ又は作製中の造形物の表面)上に第一の粉末を供給し、層厚規制手段(例えばブレードなど)で粉末の表面を均すことにより、所望の厚さの粉末層11を形成してもよい。さらに、加圧手段(例えば加圧ローラ、加圧板など)で粉末層11を加圧してもよい。加圧することによって粒子間の接触点数が増加することで、造形物の欠陥が形成されにくくなる傾向にある。また、粉末層中の第一の粒子1が緻密に存在することで、後段の(工程2)及び(工程3)の処理中に第一の粒子1が動くこと(粉末層11の形態が崩れること)が抑制され、形状精度の高い造形物を作製することができる。
[0022]
 (工程2)粉末層のうちの造形部に、第二の粉末を配置する工程
 本工程では、造形対象物のスライスデータに基づき、付与装置によって粉末層11のうちの造形部Sに、第二の粒子2を含み、平均粒子径が1nm以上、500nm以下の第二の粉末を付与する(図1B、図2B)。付与装置は気流によって第二の粉末を塗布する方法でも良いし、第二の粉末を分散した液体12を塗布する方法であっても良いが、後述するように液体の場合は第一の粒子1どうしの接触部に第二の粒子2を集積させられるメリットがある。ここで「造形部S」とは、造形対象物の断面に対応する領域(つまり、粉末層11のうち粉末を固めて造形物として取り出すべき部分、粉末層の一部の領域)をさす。なお、造形部S以外の領域(つまり、最終的には粉末が除去されるべき部分、粉末層の一部の領域外の領域)は「非造形部N」と呼ぶ。
[0023]
 第二の粉末は、少なくとも、第一の粉末よりも低い温度及び/又は短い時間で焼結および溶融が可能な粉末である。これは、次のように換言できる。第一の粉末と第二の粉末の混合粉末を加熱する場合、第一の粉末を構成する少なくとも一部の第一の粒子1どうしは焼結(当然ながら溶融も)せず、第二の粉末を構成する第二の粒子2どうしが焼結または溶融する、加熱条件(温度や時間など)が設定できる。また、第一の粉末と第二の粉末の混合粉末を加熱する場合、第一の粒子1どうしは容易に解砕可能であり、第二の粒子2どうしが焼結して容易には解砕しない、という加熱条件が設定できるように、第二の粒子2が選択されているということもできる。
 ここで「焼結」とは、粒子どうしが接触する状態で粉末を融点以下の温度で加熱し、粒子どうしを固定(結合)させる処理をいう。また、「焼結せず」とは、粒子どうしが、固定していない状態、および、弱い力で固定されており、弱い力で固定されている粒子間の境界が電子顕微鏡で確認できる状態を含む。
[0024]
 詳しくは後述するが、本実施形態の造形方法は、次のような特徴を有する。すなわち、第二の粉末に含まれる粒子どうしが焼結または溶融する温度で加熱することで、第二の粒子2によって造形部S内の第一の粒子1どうしを固定した後に、非造形部N内の第一の粉末を取り除くという点に特徴を有する。
[0025]
 平均粒子径が1nm以上、500nm以下の第二の粒子2を含む第二の粉末を用いることは、第二の粉末の焼結または溶融開始温度を第一の粉末の焼結開始温度に比べて十分に小さくする効果がある。これは粒子径が小さくなることで、粒子同士が接触している状態での自由エネルギーが高くなるためである(粒子サイズ効果)。
 第二の粉末に含まれる第二の粒子2の平均粒子径は、更に好ましくは1nm以上、200nm以下である。以下、第二の粒子2をナノ粒子2と呼ぶ場合がある。
 第二の粒子2の平均粒子径が200nm以下であることで、焼結温度が低下するだけでなく、液体12(以下、ナノ粒子分散液と呼ぶ場合がある)中でのナノ粒子2の分散性が良くなり、液体12を付与する際の均一性が向上するため好ましい。
 ナノ粒子2の平均粒子径は第一の粒子1の平均粒子径よりも小さい。これにより、ナノ粒子2が第一の粒子1の間隙に充填され、ナノ粒子2による第一の粒子1どうしの固定が図られやすくなる。
 ナノ粒子2の平均粒子径は、液体付与時にナノ粒子2が第一の粒子1の間隙に容易に入り込むことができる程度のサイズに設定するとよい。
[0026]
 ナノ粒子2としては、金属粒子、セラミックス粒子などを使用することができる。ナノ粒子2として使用可能な金属としては、例えば、銅、錫、鉛、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、チタン、タンタル、鉄などが挙げられる。また、ステンレス合金、チタン合金、コバルト合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄合金、ニッケル合金、クロム合金、シリコン合金、ジルコニウム合金などの金属合金を、ナノ粒子2として用いてもよい。
 また、炭素鋼など金属に炭素などの非金属元素を添加したものを、ナノ粒子2として用いてもよい。
 また、ナノ粒子2としては、酸化物セラミックスを用いてもよいし、非酸化物セラミックスを用いてもよい。酸化物セラミックスとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ウラン、チタン酸バリウム、バリウムヘキサフェライト、ムライトなどの金属酸化物が挙げられる。非酸化物セラミックスとしては、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ホウ素、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ランタン、モリブデンシリサイド、鉄シリサイド、バリウムシリサイドなどが挙げられる。ナノ粒子2は、複数種類の金属の複合粒子や、複数種類のセラミックスの複合粒子であってもよい。
[0027]
 ナノ粒子2は、第一の粒子1と少なくとも一種類の同じ成分を含有することが好ましい。同じ成分を含有することで、ナノ粒子2の焼結時にナノ粒子2表面と第一の粒子1表面とが結合しやすくなり、強固に第一の粒子1を固定することができる。さらには、ナノ粒子2が、第一の粒子1に含有されている成分を主成分として構成されているとより好ましい。最終的な造形物は第一の粒子1とナノ粒子2の混合物になるところ、ナノ粒子2が第一の粒子1と同じ成分(材料)で構成されていれば、造形物内の不純物の量が少なくなり、造形物の材質が均質化されるので、造形物の強度や品質を向上することができる。例えば、第一の粒子1が鉄を含有するステンレス合金である場合、ナノ粒子2としては鉄粒子や酸化鉄粒子などを好適に使用できる。
[0028]
 液体12を粉末層11に付与する工程と後述する(工程3)のあいだに、液体12を乾燥させる工程を設けても良い。さらに液体12を乾燥させる工程は、1層ごとに行うのが好ましい。乾燥が進むにつれて徐々に濃縮される液体12が、その表面張力によって、第一の粒子1間の粒界に集まる。液体中のナノ粒子2は液体12の動きに伴い、選択的に第一の粒子1間の粒界に集まり、凝集する。乾燥工程の結果として、第一の粒子1の粒界にナノ粒子2が集積することによって後述するナノ粒子2の焼結時に第一の粒子1を効率的にかつ強固に固定することができる。液体を乾燥する際には、液体12の濃度や量などに応じて最適な温度、時間などの乾燥条件を選ぶとよい。
[0029]
 また、液体12の均一性を増すために、溶媒を添加してもよい。具体的な溶媒として水溶媒、有機溶媒若しくは水溶媒と有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。水溶媒としては、純水等を用いることができる。また、有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。液体12に溶媒を添加すると、乾燥時に適切な速度で溶媒の蒸発が行われるため、ナノ粒子2の分散ムラが発生しにくい傾向にある。
[0030]
 液体12中のナノ粒子2の分散性を制御するために添加剤を適宜添加することもできる。液体12は、必要に応じて顔料などの機能性物質を含んでいても良い。
 また、液体12は、粒子を固定するための結合剤を含んでもよい。結合剤としては既存の物質が使用可能であるが、後述する(工程3)の加熱処理により分解される物質、即ち、ナノ粒子が焼結する温度または溶融する温度よりも低い分解温度を有する物質が好ましい。加熱により分解されることで、(工程3)までは造形部S内の第一の粒子1及び/又は造形部S内のナノ粒子2を固定しながらも、(工程3)で除去できるため、造形物中の不純物となりにくい。具体的な結合剤としては、樹脂材料や水溶性炭水化物が挙げられる。結合剤は液体中に溶解することが好ましい。
[0031]
 また、結合剤の付与を液体12の付与工程とは分け、(工程2)の後かつ(工程3)の前に、粉末層11に対し結合剤を付与する工程を設けてもよい。この場合、結合剤は、造形部Sまたは/および非造形部Nに付与することができる。結合剤を付与することにより、第一の粒子1を仮固定することができ、次の粉末層形成が容易になる傾向にある。
 結合剤の付与方法としては、液体に結合剤を溶かした液体結合剤を、液体付与装置を用いて付与する方法が好ましい。液体結合剤には、樹脂材料を溶剤に溶かした樹脂溶液、水溶性物質を水に溶かした溶液などを用いることができる。
 ナノ粒子を分散させた液体12と結合剤を含有する液とを分けて付与すれば、それぞれの付与装置を付与する液体に応じて独立して最適化することができるため、付与装置の耐久性が優れる傾向にあり、好ましい。
[0032]
 結合剤は、(工程2)を行っている間は第一の粒子1及び/又は造形部S内のナノ粒子2の固定に寄与し、(工程3)での加熱により分解され除去される。従って、造形部S内に付与された結合剤は、(工程2)の間は造形物の形状を保ち、(工程3)において、熱によって分解され、分解物が第一の粒子間の隙間を通って除去される。その結果、結合剤が造形物中の不純物として残りにくく、非造形部N内の第一の粒子1の除去も容易である。結合剤の残留が生じないように結合剤の種類及び量を決定することが好ましい。
[0033]
 液体12あるいは液体結合剤の付与に用いる液体付与装置としては、所望の位置に所望の量で液体を付与できる装置であればどのようなものを用いてもよい。液量や配置位置が精度良く制御可能な点から、インクジェット装置を好ましく利用できる。
 ナノ粒子分散液である液体12と液体結合剤とを分けて付与する場合は、それぞれの液を吐出するノズルが設けられたヘッドを有するインクジェット装置により、造形部Sへのナノ粒子分散液12の付与と液体結合剤の付与を一度に行う構成も好ましい。
[0034]
 インクジェット装置にて吐出する場合には液体12の粘度は適切な値とすることが必要であり、50cP以下が好ましく、より好ましくは20cP以下である。一方で、第一の粒子1間に液体12を速やかに拡散させるため、また乾燥時に液体12を第一の粒子1間に凝集させるために、液体12の粘度を適切な値とする必要があるが、20cP以下であることで流体組成物吐出をより制御しやすくなる傾向にある。
[0035]
 造形物の体積密度を上げて強度をより高めるためには、液体12中のナノ粒子2の体積濃度は、上記粘度の範囲内で、高い方が好ましい。しかしながら、液体12を乾燥する過程において、第一の粒子1間の接触点近傍にナノ粒子2を集積させやすくする観点では、液体12の体積濃度は低い方が望ましい。これらの条件から、液体12の体積濃度が50vol%以下であることが好ましく、より好ましくは30vol%以下である。固形分濃度が50vol%以下であることで、液体12が乾燥する際に第一の粒子1間にナノ粒子2が集積する傾向があり、効率よく第一の粒子1の固定に寄与するため好ましい。
 また、液体12は複数回付与してもよく、付与するごとに乾燥させてもよい。複数回付与することで造形部Sにおける粉末層11中のナノ粒子2の濃度を制御することができる。
[0036]
 (工程3)第二の粉末を焼結または溶融し、造形部内の第一の粒子どうしを固定する工程
 本工程では、第二の粉末が焼結または溶融する条件にて粉末層11を加熱することで、焼結または溶融するナノ粒子2を介して、造形部S内の第一の粒子1どうしを固定する(図1C、図1F、図2F)。
[0037]
 図1C、図1Fの符号13は粒子どうしが固定された領域を示している。図1A~図1Hの造形プロセスでは、(工程1)から(工程3)、即ち、図1D~図1Fを繰り返し、造形部S内の粒子のみを固定しながら粉末層を積層することで、造形物を内部に含む積層体14が形成される。また、図2A~図2Gの造形プロセスでは、(工程1)と(工程2)、即ち、図2C~図2Dを繰り返し、造形部S内にナノ粒子2を付与した状態の粉末層を積層したのち、複数の粉末層からなる積層体16をまとめて加熱する。この造形プロセスでも、図1Gと同じように、造形物を内部に含む積層体14が形成される。なお、積層体16を加熱する前に、積層体16を加圧する工程を設けてもよい。積層体16を加圧することによって、第一の粒子1間の接点数が増加し、加熱時の粒子間結着が効率よく進む傾向にあるからである。
 このとき、ナノ粒子2の融点が第一の粒子1の融点よりも低く、加熱温度をナノ粒子2の融点以上かつ第一の粒子1の融点未満に設定すれば、ナノ粒子2を塗布した箇所のみ第一の粒子1同士を連結し固定することができる。
[0038]
 加熱時の雰囲気は材料の種類に応じて任意に定めることができる。例えば金属の場合、Ar、N などの不活性ガスや、水素ガス雰囲気、真空雰囲気などの酸素が少ない雰囲気で加熱することが、焼結時の金属の酸化を抑えることができるため好ましい。
 また、(工程3)の工程で、周囲に第一の粒子が存在する状況下で、有機成分、樹脂を熱により除去することができるため、造形物の形状を維持しながら、造形物中の残炭素成分を減らすことができる。特に造形物中に厚さが異なる造形形状が混在する場合でも、内部の有機成分、樹脂成分を除去することができるため、造形物の形状の自由度に優れる。
[0039]
 (工程4)造形部外の第一の粒子を取り除く工程
 本工程では、(工程3)で得られた積層体14から造形部S外の粉末を除去し、造形物15を得る(図1F、図2G)。積層体14から不要な粉末を除去する方法としては、公知の方法含め、いかなる方法を用いてもよい。例えば、洗浄、エアー吹付、吸引、加振、ブラシ等による物理的除去方法などが挙げられる。
 具体的には後述するが、適切な焼結温度、焼結時間を選択することで、本実施形態の造形方法で除去対象となる粉末に含まれる第一の粒子1は固定されていないか、固定されていたとしても造形部Sと比較して弱く固定されているため、除去が極めて容易となる。また、除去した粉末は回収して造形材料として再利用することもできる。
[0040]
 以上述べた本実施形態の造形方法は、次のような特徴を有する。
 ・主たる造形材料である第一の粒子1どうしを直接結合させるのではなく、ナノ粒子2を焼結または溶融させ、ナノ粒子2の結合作用によってその周囲に存在する第一の粒子1を間接的に結合させる。したがって、ナノ粒子2を付与する位置及び範囲を制御することで、造形物の形状を制御することができる。しかもナノ粒子分散液12の状態でナノ粒子2を付与するため、インクジェット装置などの付与装置を利用することでナノ粒子2を付与する位置、範囲、量などを簡単にかつ高精度に制御することができる。
 ・ナノ粒子2を焼結または溶融させるので、第一の粒子1どうしを強固に結合させることができる。また、ナノ粒子2が第一の粒子1の間隙を埋める作用があるので、造形物の空隙率を低減することができる。
[0041]
 ・(工程3)ではナノ粒子2が存在する箇所が選択的に固定されるので、非造形部Nの粒子の除去が容易である。また、非造形部Nの粒子を除去する際に、大きな力を加える必要がないので、造形物を破損したり傷つけたりするおそれも少ない。
 ・(工程4)の直前まで造形部S外の第一の粒子1が形態を保持したまま残っているため、オーバーハング構造がある場合には、オーバーハング構造の下の第一の粒子1をサポート体として利用することができる。
 これにより、造形物の変形、割れを抑制することができる。しかも、サポート体として利用される第一の粒子1は、除去が容易である。
 したがって、本実施形態の造形方法によれば、金属材料を用いて、従来手法では造形が困難だった複雑形状や微細形状の造形を容易にかつ高品質に行うことが可能である。
[0042]
 ・図2A~図2Gのように積層体16を形成し、まとめて加熱する場合には、造形物の全体が均一に加熱される。したがって、局所的な熱衝撃が少なくなり、造形物形成時のひずみや割れが低減する。
 ・樹脂を使用しなくても造形ができるため、脱脂による造形物の縮みや変形を回避できる。また、樹脂を使用しない、もしくは樹脂を使用しても(工程2)で除去することで、不純物の少ない造形物を作製できる。
[0043]
 上述した(工程1)~(工程4)は本実施形態の造形方法のうちの基本的な工程を例示するものにすぎず、本発明の範囲は上述した内容に限定されるものではない。上述した各工程の具体的な処理内容を適宜変更したり、上述した各工程以外の工程を追加しても構わない。
 例えば、(工程4)の後に、(工程3)での加熱温度よりも高い温度で造形物15を加熱する工程を設けてもよい。このような追加加熱処理を行うことで、造形物15の密度を高めることができる。この場合に、第一の粒子1が焼結する条件(加熱温度、加熱時間など)で造形物15を加熱してもよい。第一の粒子1どうしを焼結させることにより、造形物15の特性を向上させ、強度をより高めることができる。
 本実施形態の方法で得られる造形物15は基本的に造形材料のみ(第一の粒子1とナノ粒子2)で構成されており、従来方法の造形物のように樹脂バインダーのような結合剤を含まなくてよい。
 したがって、造形物15を追加で加熱(焼結)したとしても、加熱処理の前後で造形物15の組成変化が小さい。また、従来方法では加熱処理で樹脂を脱脂する際に造形物の形状が変化するおそれがあったが、本実施形態の造形物15の場合はそのような問題も生じにくい。
[0044]
 (粒子の製造方法)
 第一の粒子1及びナノ粒子2は、公知の方法を含む、いかなる方法で作製してもよい。例えば、金属粒子の製造方法としては、略球形の粒子を得ることができる点で、ガスアトマイズ法及び水アトマイズ法を好ましく用いることができる。また、セラミックス粒子の製造方法としては、略球形の粒子を得ることができる点で、ゾルゲル法などの湿式での製法や、高温の気中で液化させた金属酸化物を冷却し固化させる乾式での製法を、好ましく用いることができる。
[0045]
 (実施例)
 次に、上記実施形態に係る製造方法の具体的な実施例について説明する。
 <第一の粒子>
 本実施例における第一の粉末として、SUS316Lのガスアトマイズ粉末(LPW社、LPW-316-AAAV、平均粒子径30μm)を用いた。
 <第二の粒子>
 第二の粉末であるナノ粒子として、鉄ナノ粒子(シグマアルドリッチ社、平均粒子径25nm)を用いた。
 <ナノ粒子分散液>
 上述の鉄ナノ粒子5.0gをエタノール(特級 キシダ化学社製)45.0g中に分散させ、ナノ粒子分散液12を得た。得られたナノ粒子分散液中の鉄ナノ粒子の体積濃度は1.1vol%であった。溶液Aの粘度は1.2cPであった。
[0046]
 <造形物作成工程>
 本実施例に係る造形方法は、例えば図4Aに示すような造形装置を用いて実施できる。図4Aの造形装置は、搬送モータ103を備える軸上に、第一の粉体を供給する供給装置201、第一の粉体の層を均すローラ202、ナノ粒子を塗布する塗布装置203が移動可能に設置される。
 供給装置201から造形ステージ101に第一の粉体が供給され、その後、ローラ202によって均一な粉末層102が形成される。その後、塗布装置203によって造形部Sにナノ粒子2が塗布される。ナノ粒子塗布後、造形ステージ101は1層分下降し、再び粉末層102が形成され、以降、上記工程を繰り返す。
 本実施例では、第一の粉体を用いて20mm×10mm、厚さ100μmの均一な層を形成した後、ナノ粒子分散液12を造形部Sに滴下した。このとき、一度滴下した後に乾燥させ、同じ場所に滴下することを4回繰り返して1層の粉末層102を完成させた。これを20層繰り返し、図4Aに示すような造形物A(φ5mm、厚さ2mm)を作成した。
[0047]
 また、本実施例に係る造形方法は、図4Bに示すような造形装置を用いても実施できる。
 この造形装置は、ステージ309を有する粉末収容部303と、ステージ307と、ブレード305と、液体供給部304と、液体付与部306と、ヒーター302と、駆動機構301と、を有する。粉末収容部303では、ステージ309上に第一の粉末308を収容する。ブレード305は、粉末収容部303に収容されている粉末をステージ307上に供給するとともに、ステージ307上に供給した粉末を均す機能を有する。この機能を有するもの(例えばローラ形状の部材)であれば、ブレード305に代えて用いることもできる。ステージ307は、上下方向に移動可能に構成されている。ステージ309においても、上下方向に移動可能に構成されている。ステージ307上には、ブレード305により供給され均された粉末層311が積層されて作製されていく造形物Aが配置される。液体供給部304は、ナノ粒子分散液12を収容する。液体付与部306は、液体供給部304に収容されたナノ粒子分散液12をステージ307上の粉末層311に付与する。ヒーター302は、ステージ307上の粉末層を加熱する。また、ブレード305、液体供給部304、液体付与部306、及びヒーター302は、移動可能なヘッドに設けられている。
[0048]
 造形が行われる場合、まず、スライスデータで定義される厚みに基づいて、1層分の量の第一の粉末を粉末収容部303からステージ307上に供給するために、ステージ309が上昇する。このとき、ステージ307においても、スライスデータで定義される厚みに基づいて、1層分の第一の粉末の粉末層311を形成するための距離だけ、下降する。その後、粉末収容部303上をブレード305が移動することにより、粉末収容部303の上面よりも上に位置する第一の粉末が、ステージ307上に供給される。このようにして供給された、ステージ307上の1層分の量の第一の粉末の表面を、ブレード305によって均すことで、第一の粉末の粉末層311を形成する。これにより、造形物の1スライス分の粉末層311が形成される。
 次いで、液体付与部306を用いて、スライスデータで定義される造形対象物の断面形状に基づいて、粉末層311内の造形部Sにナノ粒子分散液12を付与する。これにより、造形部S内の第一の粒子1の間隙にナノ粒子2が入り込んだ状態の粉末層が形成される。そして、ヒーター302を用いて、第一の粒子どうしは焼結せず、かつ、第二の粒子どうしは焼結または溶融する条件にて粉末層を加熱し、焼結または溶融する第二の粒子によって第一の粒子どうしを固定する。
 各層のスライスデータに基づいて、第一の粉末の粉末層の形成、分散液の付与、粉末層の加熱といった一連の処理を層ごとに繰り返すことで、複数の粉末層が重ねられた積層体310が作製される。その後、積層体310から非造形部Nの第一の粉末を取り除くことで、所望形状の造形物Aが得られる。
[0049]
 <第一焼結工程>
 上述の造形物作成工程で得られた、非造形部Nを含む積層体を、図5に示す加熱温度(焼結温度)、加熱時間(焼結時間)の条件で加熱した。なお、雰囲気は窒素雰囲気とし、焼結中の酸素分圧が10 -4atmO となるよう調整した。図5には、加熱温度(最高温度)、加熱時間(最高温度での加熱時間)の条件とともに、後述する圧縮強度、造形物Aの破損状態、非造形部Nの粉末の除去状態(除去性)について示している。
 <取出し工程>
 第一焼結工程の後、非造形部Nを除去し、造形物Aを得た。非造形部Nの除去方法はエアー吹付とし、エアーで除去できない場合はホビー筆(ハンディ・クラウン社製、馬毛)を用いて除去した。このとき、具体的には後述するが、造形物Aの粉体の固定状態が弱すぎると造形物Aが破損する場合があり、また粉体の固定状態が強すぎると非造形部Nの粉体を除去することができなかった。
 <第二焼結工程>
 上述の取出し工程で得られた造形物Aを上述の電気炉内にて窒素雰囲気下、酸素濃度10 -8atmO の条件で1300℃、1時間の焼結を行い、最終造形物を得た。
 この第二焼結工程により、第一の粒子1どうしを焼結させることができるので、第一焼結工程で得られた造形物Aの密度を高めることができる。ここでは第一の粒子1が焼結する条件で造形物Aを加熱しているが、第二焼結工程における加熱温度(T2)が、第一焼結工程における加熱温度(T1)よりも高い温度であれば、第一焼結工程で得られた造形物Aの密度を高めることができる。
[0050]
 <第一焼結工程の焼結温度、焼結時間について>
 以下に、第一焼結工程の焼結条件について詳細に説明する。
 第一焼結工程では、その後の取出し工程で非造形部Nの粒子を除去する必要があるため、造形部S(ナノ粒子塗布部)のみが固化し、非造形部Nは固化しないか又は容易に解砕して除去できることが必要である。しかし、造形部Sの固化が弱すぎると取出し工程中に造形物Aが破損してしまうおそれがあるため、造形部Sの粉末は容易には解砕しない強度で固定されている必要がある。
 そこで、図5に示した焼結条件(温度、時間)で第一焼結工程を行って得られた造形物Aに対して、造形物Aの破損状態と非造形部Nの粉末の除去状態と粉末の固定強度に関して評価を行った。粉末の固定強度は圧縮強度で評価し、圧縮強度試験はテンシロンRTC-1250A(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて行った。
 図6は、圧縮強度試験に用いる測定装置を模式的に示す図である。図6に示すように、測定ステージ401に造形物Aを設置し、上方から平板圧子402を一定速度で侵入させ、そのときの応力をロードセル403で測定した。
[0051]
 なお、造形物Aの粉末の固定状態が弱く、破損して取り出せない場合があった。このような場合には、まず、造形物作成工程でナノ粒子を塗布した部分の粒子をφ5mm深さ2mmのアルミナ容器に充填して第一焼結工程を行った。その後、測定ステージ401上において、アルミナ容器を逆さにすることで、粒子が円柱形状を維持したままとなるよう取り出して造形物Aとした。
 また、非造形部Nの粒子の固定強度を測定するため、第一の粒子1のみを充填したものを同様に作成して測定した。なお、本実施例において、平板圧子402の移動速度は1mm/分とした。
[0052]
 図7A~図7Cは、圧縮強度試験の試験結果の一例を表す図である。図7A~図7Cにはそれぞれ、550℃で60分、600℃で60分、700℃で60分の加熱条件で得られた造形物Aに対して上述の圧縮強度試験を行ったときの結果を表している。
 図7A~図7Cから分かるように、焼結が進むにつれて応力の推移はピークを持つようになる。図7Aの状態は粒子同士が固定されていないか又は非常に弱く固定されている状態であり、粒子が動きやすいため、平板圧子402が侵入すると粒子は逃げやすい空間へと逃げ、逃げ場が無くなったところから応力が上昇を始める。
 一方、図7B~図7Cの状態では粒子同士がしっかりと固定されている。このため、平板圧子402の侵入に対して粒子が逃げられずに、結果、平板圧子402に反発力を与える。しかし、平板圧子402の侵入が進むにつれて粒子同士の固定箇所が破壊され、粒子が動けるようになって反発力が低下することで応力のピークが生じる。その後、粒子の逃げ場が無くなると、再び応力は上昇を始める。図7Cの状態では、図7Bの状態よりも焼結が進み、粒子間がよりしっかり固定されている。このため、図7Cの状態では、図7Bの状態よりもピークの値が大きくなる。
[0053]
 圧縮強度と取出し工程における造形物Aの破損状態と、非造形部Nの粉末の除去状態(除去性)の評価結果を、図5に更に示す。ただし、図5の*印は、サンプルが自重により崩壊し、強度試験が測定できなかったことを表す。
 造形物Aの破損状態に関しては、5回造形を行ったうち、
  ○:破損は生じなかった
  △:破損が時々生じた
  ×:破損した/取出し不可能であった
ということを表している。
 非造形部Nの粉末の除去状態に関しては、
  ◎:エアー吹付で容易に除去できた
  ○:ホビー筆で容易に除去できた
  ×:除去は困難であった/除去できなかった
ということを表している。
[0054]
 図5から分かるように、圧縮強度が0.5MPa以上であると、粒子同士は容易には解砕せず、0.5MPaより小さいと容易に解砕することができた。つまり、このことから、次のことがわかる。第一焼結工程後(加熱工程後、加熱後)の造形物Aの圧縮強度をP1、非造形部Nの圧縮強度をP2としたとき、下記式1に示す関係を満たしていれば、造形物Aの破損を抑制しながら、容易に非造形部Nの粒子を除去して造形物Aを取り出せることが分かる。
 P1 ≧ 0.5MPa > P2 ・・・(式1)
[0055]
 図8A、図8Bは、横軸に焼結温度(最高加熱温度)をとり、縦軸に焼結時間(最高加熱温度での加熱時間)をとったときの圧縮強度について示したグラフであり、図8Aは非造形部Nについて示し、図8Bは造形物Aについて示している。
 図8A~図8Bでは、
  ○:圧縮強度が0.5MPaより小さい
  ×:圧縮強度が0.5MPa以上
ということを示している。
[0056]
 図9は、図8A、図8Bに示す結果からそれぞれ非造形部N、造形物Aが容易には解砕できない温度・時間の閾値を結んで示したものである。図9において、実線は造形物Aの閾値、破線は非造形部Nの閾値をそれぞれ表している。つまり、図9に<A>で示す領域は、造形物Aも非造形部Nも固化してしまい、造形物Aを取り出すことができない領域を示している。図9に<B>で示す領域は、造形物Aは十分固化しているが非造形部Nは容易に解砕でき、よって造形物Aの破損を防ぎつつ容易に取り出せる領域を示している。図9に<C>で示す領域は、非造形部Nは容易に解砕できるが、造形物Aも容易に解砕してしまう領域を示している。
 よって、本実施例の条件においては、図9に<B>で示す領域に含まれる焼結温度、焼結時間で第一焼結工程を行えば、造形物Aの破損を抑制しつつ容易に非造形部Nの粒子を除去して造形物Aを取り出すことができる。
[0057]
 以上説明したように本実施形態では、P1≧0.5MPa>P2(式1)の関係が成り立つような焼結温度、焼結時間の条件を設定して、焼結工程(第一焼結工程)を行っている。このような焼結工程により得られる造形物Aはしっかり固化され、かつ非造形部Nは容易に解砕できるようになるので、焼結工程後の取出し工程において、造形物Aの変形、破損を抑制しながら、造形物Aを取り出すことができる。
 したがって、本実施形態によれば、造形時の造形物の変形、破損を抑制することができ、より形状自由度の高い造形技術を提供することが可能となる。
[0058]
 (その他)
 以上、本発明について具体的な形態を挙げて説明してきたが、本発明は上記形態に制限されるものではなく、本発明の技術思想から離脱しない範囲で、様々の変更を行ってもよい。例えば、粒子の種類や焼結工程の雰囲気等は、上記実施例に示した条件に限るものではない。粒子の種類や焼結雰囲気等が上記実施例と異なる場合には、その条件に対応する、式1の関係を満たす焼結条件(加熱温度、加熱時間)を設定すれば良い。
[0059]
 本発明の実施形態はまた、システムまたは装置のコンピュータが記憶媒体(例えば、非一時的コンピュータ読込み可能記憶媒体)に記録されたコンピュータ実行可能命令を読み出し、実行し、本発明の上記した実施形態の1つまたは複数の機能を行うことによって、および、例えば、システムまたは装置のコンピュータが記憶媒体からコンピュータ読み実行可能命令を読み出し、実行して、上記した実施形態の1つまたは複数の機能を行うことにより実行される方法によって、実現することができる。コンピュータは、1つまたはそれ以上の中央処理装置(CPU)、マイクロプロセシング装置(MPU)、または他の回路を備え、別々のコンピュータまたは別々のコンピュータプロセッサのネットワークを含んでも良い。コンピュータ実行可能命令は、例えば、ネットワークまたは記憶媒体からコンピュータに供給されても良い。記憶媒体は、例えば、1つまたはそれ以上の、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、分散演算システムの記憶部、光学ディスク(例えばコンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、またはBlu-ray(登録商標)ディスク(BD))、フラッシュメモリデバイス、およびメモリカードなどを含んでいても良い。
[0060]
 本発明は例示的な各実施形態を参照して記載されているが、本発明はこれら開示された例示的な各実施形態には限定されないと理解されるべきである。後述の各クレームの範囲は、すべての変形物や同等な構造および機能を包含するように最も広い解釈をなされるべきである。
[0061]
 本出願は、2018年7月4日に出願された日本国特許出願第2018-127410号の利益を主張するものであり、その開示の全体は参照により本出願に組み込まれる。

符号の説明

[0062]
 1:第一の粒子、2:第二の粒子(ナノ粒子)、11:粉末層、12:液体(ナノ粒子分散液)、15:造形物、S:造形部、N:非造形部

請求の範囲

[請求項1]
 第一の粉末を用いて粉末層を形成する形成工程と、
 前記粉末層の一部の領域に、前記第一の粉末よりも平均粒子径が小さい第二の粉末を配置する配置工程と、
 前記第二の粉末に含まれる粒子どうしが焼結または溶融する温度で、前記第二の粉末が配置された前記粉末層を加熱する第一の加熱工程と、
 を含み、
 前記第一の加熱工程後における、前記一部の領域の前記粉末層の圧縮強度をP1、前記一部の領域外の前記第一の粉末の圧縮強度をP2としたとき、
  P1 ≧ 0.5MPa > P2
 の関係が成り立つ
ことを特徴とする造形方法。
[請求項2]
 前記第一の粉末の平均粒子径は、1μm以上、500μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の造形方法。
[請求項3]
 前記第二の粉末の平均粒子径は、1nm以上、200nm以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の造形方法。
[請求項4]
 前記第二の粉末を構成する粒子は、前記第一の粉末を構成する粒子よりも融点が低い
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の造形方法。
[請求項5]
 前記第一の加熱工程の後に、前記一部の領域外の前記第一の粉末を取り除く除去工程と、
 前記除去工程により得られた前記一部の領域の前記粉末層を加熱する第二の加熱工程と、
 をさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の造形方法。
[請求項6]
 前記第一の加熱工程における加熱温度をT1、前記第二の加熱工程における加熱温度をT2としたとき、
  T2 > T1
であることを特徴とする請求項5に記載の造形方法。
[請求項7]
 前記形成工程と前記配置工程のあいだに、前記粉末層を加圧する工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の造形方法。
[請求項8]
 第一の粉末を用いて粉末層を形成する形成手段と、
 前記粉末層の一部の領域に、前記第一の粉末よりも平均粒子径が小さい第二の粉末を配置する配置手段と、
 前記第二の粉末に含まれる粒子どうしが焼結または溶融する温度で、前記第二の粉末が配置された前記粉末層を加熱する加熱手段と、
 を有し、
 前記加熱手段は、
  加熱後における、前記一部の領域の前記粉末層の圧縮強度をP1、前記一部の領域外の前記第一の粉末の圧縮強度をP2としたとき、
  P1 ≧ 0.5MPa > P2
 の関係が成り立つように前記粉末層を加熱する
ことを特徴とする造形装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]