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1. WO2020008558 - 骨補填材及び骨補填材の製造方法

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明 細 書

発明の名称 骨補填材及び骨補填材の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059  

産業上の利用可能性

0060  

符号の説明

0061  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 骨補填材及び骨補填材の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、骨補填材及び骨補填材の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 歯科、外科等において、骨欠損部等に骨補填材を装填し、骨補填材を経時的に新生骨に置換させて骨を再生する治療が行われている。骨を再生する治療の一例として、高位脛骨骨切り術(High Tibial Osteotomy:HTO)が挙げられる。高位脛骨骨切り術は、下肢の内反変形がある場合に脛骨の一部を切除し、あるいは脛骨に横方向から切り込みを入れ、切除部分あるいは切り込み部分に形成された骨切部に所定の矯正角度に対応する楔形状の骨補填材を埋植する。骨補填材の埋植から所定期間が経過すると、体内の骨形成細胞と接触した骨補填材の成分が置換されて再生骨が形成され、下肢の内反変形を矯正する治療法である。
[0003]
 骨補填材としてセラミックス多孔体が用いられている。リン酸カルシウム系化合物で構成されたセラミックス多孔体は、毒性がなく、生体組織との親和性が高く、生体組織と結合しやすい。このため、骨再生治療では、リン酸カルシウム系化合物で構成されたセラミックス多孔体が骨補填材として広く用いられている(例えば、特許文献1)。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 日本国特許第5793045号
特許文献2 : 日本国特開2001-259016号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 骨補填材には、骨形成を促進させる性能の他、埋植時の圧迫や、移植後に新生骨が形成されるまでの間、患者の動作に伴って生じる骨からの圧迫に耐え得る機械的強度が求められている。
 特許文献1のセラミックス多孔体は、骨補填材として骨芽細胞等を気孔内に均一に浸入させるため、均一な球状気孔構造を有するセラミックス多孔体を提案している。しかし、特許文献1のセラミックス多孔体を骨補填材として使用する場合、骨形成材料の吸収が先行して進行し、骨形成速度が相対的に遅い。その結果、骨形成が十分に進行する前に多孔体が消失し、骨補填材の埋植部の機械的強度が不足する場合がある。
[0006]
 これに対し、特許文献2には、リン酸カルシウム系化合物に金属イオンを固溶化させ、素材自体の吸収速度を制御する方法が提案されている。しかし、特許文献2の骨補填材は製造方法が煩雑である。また、特許文献2の骨補填材は金属イオンを固溶させているが、より生体適合性に優れた材料からなる骨補填材が望まれていた。
[0007]
 本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、骨欠損部に埋植後、骨伝導能、骨形成反応速度調整、及び機械的強度をバランスよく発揮可能な骨補填材及び多孔体の製造方法を提供する。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明の第一の態様に係る骨補填材は、多面体形状を有し、複数の空孔を備え、相対気孔率が50%以上であり、平均気孔径が100~200μmであり、圧縮強度が10MPa以上であるセラミックス多孔体からなるベース体と、リン酸水素カルシウム二水和物を含み、前記ベース体の表面を覆うリン酸水素カルシウム二水和物層と、を備える。
[0009]
 本発明の第二の態様は、第一の態様に係る骨補填材において、前記ベース体は、脛骨の骨切り術で脛骨に形成された骨切部の切断面間に埋植可能な楔形状を有する楔形状を有してもよい。
[0010]
 本発明の第三の態様は、第一または第二の態様に係る骨補填材において、前記リン酸水素カルシウム二水和物層の厚さが60~120μmであってもよい。
[0011]
 本発明の第四の態様は、第一から第三のいずれかの態様に係る骨補填材において、前記リン酸水素カルシウム二水和物層における前記リン酸水素カルシウム二水和物の含有率が90%以上であってもよい。
[0012]
 本発明の第五の態様は、第一から第四のいずれかの態様に係る骨補填材において、前記リン酸水素カルシウム二水和物層の表面は針状の結晶からなってもよい。
[0013]
 本発明の第六の態様に係る骨補填材の製造方法は、多面体形状を有し、複数の空孔を備え、相対気孔率が50%以上であり、平均気孔径が100~200μmであり、圧縮強度が10MPa以上であるセラミックス多孔体からなるベース体をリン酸二水素カルシウム一水和物溶液に浸漬し、前記ベース体の表面にリン酸水素カルシウム二水和物を析出させてリン酸水素カルシウム二水和物層を形成し、前記ベース体の表面をリン酸水素カルシウム二水和物層で被覆して骨補填材を得る。
[0014]
 本発明の第七の態様は、第六の態様に係る骨補填材の製造方法では、前記ベース体を前記リン酸二水素カルシウム一水和物溶液に浸漬する浸漬時間が20~60分の範囲であってもよい。
[0015]
 本発明の第八の態様は、第六の態様に係る骨補填材の製造方法において、前記リン酸二水素カルシウム一水和物溶液は、リン酸二水素カルシウム一水和物濃度が0.1mol/Lより高く、pH4未満であってもよい。

発明の効果

[0016]
 本発明の骨補填材及び多孔体の製造方法は、骨欠損部に埋設後、骨伝導能、骨形成反応速度調整及び機械的強度をバランスよく発揮可能である。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 本発明の一実施形態に係る骨補填材を模式的に示す斜視図である。
[図2] 本発明の一実施形態に係る骨補填材の断面を示すSEM画像である。
[図3] 本発明の一実施形態に係る骨補填材の表面を示すSEM画像である。
[図4] 本発明の一実施形態に係る骨補填材の製造方法を示すフローチャートである。
[図5] 実施例1の骨補填材のSEM画像である。
[図6] 実施例2の骨補填材のSEM画像である。
[図7] 実施例1の骨補填材の埋植後の経時変化を示す光学顕微鏡画像である。
[図8] 比較例の骨補填材の埋植後の経時変化を示す光学顕微鏡画像である。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下、本発明の一実施形態に係る骨補填材1について、図1から図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る骨補填材1を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る骨補填材1の断面を示す画像であり、電子顕微鏡(SEM)を用いた二次電子像である。図3は、本実施形態に係る骨補填材1の表面を示すSEM画像であり、電子顕微鏡(SEM)を用いた二次電子像である。
[0019]
 本実施形態に係る骨補填材1は、多面体形状を有するベース体10と、ベース体10の表面に形成されたDCPD層(リン酸水素カルシウム二水和物層)20とを備えている。
[0020]
 ベース体10は、β型リン酸三カルシウム(β-TCP)を主成分として形成され、複数の空孔を備えるセラミックス多孔体である。β-TCPを骨切部等の骨欠損部に接触させておくと、破骨細胞がβ-TCPを吸収し、骨芽細胞が新しい骨を形成し、経時的に新生骨に置換される。
[0021]
 ベース体10は、所望の多面体形状を有する。例えば、図1に示すように、一辺が6ミリメートル(mm)以上の三角柱形状である楔形状のベース体10は、骨補填材をHTOにおいて脛骨に形成された骨切部の切断面間に好適に埋植できる。
[0022]
 ベース体10は、相対気孔率が50%以上である。ベース体10の相対気孔率の上限は特に限定されないが、ベース体10の形状及び機械的強度が保持可能な範囲として相対気孔率は67%以下であればよい。
[0023]
 ベース体10は、平均気孔径が100~200μmである。ベース体10の平均気孔径が100μmより小さいと、ベース体10の気孔内に骨形成細胞が浸入し難く、骨形成速度が遅くなる。ベース体10の平均気孔径が200μmより大きいと、ベース体10の強度が低下する。
[0024]
 ベース体10は、平均気孔径の標準偏差が60μm以下である。平均気孔径が100~200μmであり、かつ、平均気孔径の標準偏差が60μm以下であるため、気孔径のばらつきが小さい多孔体であると言える。この結果、骨形成細胞がベース体10の気孔内に骨形成細胞が円滑に浸入可能となる。
[0025]
 ベース体10は、圧縮強度が10MPa以上である。ベース体10の圧縮強度が10MPaより小さいと、骨に埋植した状態における耐荷重性が不足する。
[0026]
 上述の通り、ベース体10は、相対気孔率が50%以上かつ圧縮強度が10MPa以上であり、骨形成材料の浸入性が高く、かつ骨切部に埋植された場合に十分な耐荷重性を備える。
[0027]
 DCPD層20は、DCPD(リン酸水素カルシウム二水和物。dicalcium phosphate dehydrate; CaHPO ・2H O)を含む層である。DCPDは、骨補填材1を骨に埋植した後に溶解し、骨補填材1の周囲にカルシウムイオンおよびリン酸イオンが放出される。その結果、骨芽細胞が活性化され、骨補填材1の周囲における骨伝導能が高められる。一方、ベース体10は、骨補填材1の埋植後DCPD層20が溶解するまでの一定期間、骨形成細胞との反応が抑制され、ベース体10の溶解が抑えられる。その結果、ベース体10の多面体形状が一定期間維持されるため、骨からの荷重に耐え得る。
[0028]
 DCPDは、人工骨の材料として公知であるが、一般にセメント状の状態で用いられることが殆どであった。したがって、例えばHTO後のような、骨切部への留置後に、骨補填材に大きな荷重がかかる用途には使用されていなかった。発明者らは、β-TCPを主成分とするベース体10で骨補填材としての基本強度を確保しつつ、ベース体10の表面をDCPD層20で被覆することにより、埋植後の骨伝導能及び耐荷重性を改善することに成功した。
[0029]
 DCPD層20は、ベース体10の表面の全体を覆って形成されている。DCPD層20の厚さは60μm~120μmである。DCPD層20の厚さが60μm未満の場合、DCPD層を設ける効果、すなわち、骨伝導能、骨形成反応速度調整効果が十分に得られない可能性がある。DCPD層20の厚さを120μmより厚く形成しても、DCPD層20を設ける効果は比例的に向上しない。また、骨補填材は、骨切部等、限られたスペースに埋植するため、DCPD層20の厚さを120μmより厚くすると相対的にベース体10の体積が小さくなる。そのため、骨補填材の機械的強度及び骨誘導能を考慮すると、DCPD層20の厚さは120μm以下が好ましい。
[0030]
 図3は、骨補填材1の表面のSEM写真である。図3に示すように、DCPD層20の表面は針状の結晶からなる。DCPD層20の表面が針状の結晶であるため、DCPD層20の表面積が大きい。この結果、骨補填材1が処置対象部位に埋植された後、骨補填材1の周囲に効率良くカルシウムイオンおよびリン酸イオンが放出でき、埋植後の初期段階における骨補填材1の周囲における骨伝導能が向上する。また、骨補填材1の表面に針状の凹凸を有するため、埋植時に、骨補填材1の表面と接触した状態が良好に保持される。
[0031]
 DCPD層20は、DCPDの含有率が90%以上であり、不純物が少なく、高濃度のDCPDで形成されている。したがって、DCPD層20の厚さが薄くても、効率的にDCPDによる効果を発揮できる。この結果、限られたスペースに埋植される骨補填材において、ベース体10の体積を確保して、骨伝導能及び機械的強度を確保しながら、確実に新生骨を生成できる。
[0032]
(骨補填材の製造方法)
 次に、本実施形態に係る骨補填材1の製造方法について説明する。図4に本実施形態に係る骨補填材1の製造方法のフローチャートを示す。図4に示すように、骨補填材1の製造方法では、ベース体10を準備する第一工程S1と、DCPD層20を形成する第二工程S2と、を有する。
[0033]
 まず、第一工程S1では、ベース体10として、複数の空孔を備え、相対気孔率が50%以上であり、平均気孔径が100~200μmであり、圧縮強度が10MPa以上である多面体形状のセラミックス多孔体を準備する。ベース体10は、公知のセラミックス多孔体の製造方法により作製してもよいし、既製品を用いてもよい。ベース体10は、例えば、β-TCPからなるセラミックス多孔体を使用できる。
[0034]
 ベース体10を作製する場合、リン酸カルシウム系化合物を溶媒に分散させたスラリーを撹拌して発泡させる。次に、発泡させたスラリーを骨補填材の外形状に沿った型容器内に入れて乾燥させ、乾燥体を得る。乾燥処理により、スラリー内の溶媒が蒸発し、凝集したβ-TCP粉からなる乾燥体を得る。次に、乾燥体を加熱炉に入れて高温加熱して焼結させてベース体10を得る。
[0035]
 次に、第二工程S2では、ベース体10をリン酸二水素カルシウム一水和物溶液に浸漬する。具体的には、ベース体10をリン酸二水素カルシウム一水和物溶液内に埋没させて浸漬し、ベース体10の表面にリン酸水素カルシウム二水和物を析出させる。リン酸二水素カルシウム一水和物溶液は、リン酸二水素カルシウム一水和物濃度が0.1mol/Lより高く、pH4未満であると、DCPD層20の表面に針状の結晶が析出可能である。
[0036]
 ベース体10のリン酸二水素カルシウム一水和物溶液への浸漬時間は20分~60分が好ましい。上記浸漬時間が20分未満であると、リン酸水素カルシウム二水和物の析出が不十分でありベース体10の表面全域にリン酸水素カルシウム二水和物が析出せず、DCPD層が形成されない。上記浸漬時間が60分を超えると、ベース体10の置換が過剰となりベース体10の機械的強度が低下する。
[0037]
 その後、リン酸水素カルシウム二水和物を析出させたベース体をリン酸二水素カルシウム一水和物溶液から取出し、乾燥させるとベース体10にDCPD層20が形成された骨補填材1が得られる。
[0038]
 本実施形態に係る骨補填材1は、セラミックス多孔体からなるベース体10の表面を覆うDCPD層20を備えるため、骨欠損部に埋設後、骨伝導能、骨形成反応速度調整及び機械的強度をバランスよく発揮可能な骨補填材を提供できる。
[0039]
 具体的には、骨補填材1を処置対象部位に埋植した初期段階では、ベース体10の表面を覆うDCPD層20により、ベース体10が骨形成細胞に直接接触することを抑制すると共に、DCPDが溶解してカルシウムイオン及びリン酸イオンを放出し、骨補填材1の周囲の骨伝導能が高められる。その結果、骨補填材1の周囲の骨形成を優先的に促進でき、かつ、ベース体10が多面体形状を維持して骨補填材1の機械的強度が保持される。続いて、骨補填材1を処置対象部位に埋植し、所定期間経過後、DCPDが溶解した結果、ベース体10が骨形成細胞に直接接触し始める。ベース体10は、相対気孔率が50%以上であり、かつ平均気孔径が100~200μmであるため、骨形成細胞がベース体10の気孔内に浸入しやすい。また、ベース体10は、相対気孔率が50%であるため、骨細胞とβ-TCPとの接触面積が十分に大きい。その結果、骨形成細胞とベース体10のβ-TCPとの反応が広い範囲で行われ、骨細胞によるβ-TCPの吸収性が向上させられる。
[0040]
 本実施形態に係る骨補填材1は、DCPD層20の厚みが60~120μmであるため、所定期間、β-TCPが直接体液に接触し難く、かつ骨補填材1で機械的強度を保持できる。また、骨補填材1の周囲の再生骨の形成効率が高く、ベース体10の消失後に再生骨が十分な強度を付与できる。
[0041]
 本実施形態に係る骨補填材1は、DCPD層20におけるリン酸水素カルシウム二水和物の含有率が90%以上であり、高濃度のリン酸水素カルシウム二水和物を含有する。骨補填材1は高濃度のDCPD層20を備えるため、ベース体10のβ-TCPが直接体液等に接触することを防ぐ効果が高い。
[0042]
 本実施形態に係る骨補填材1は、DCPD層20のDCPD濃度が90%以上と高濃度である。その結果、薄いDCPD層20であっても、ベース体10のβ-TCPと骨形成細胞との接触を抑制できる。また、高濃度のDCPDを備えるため、処置対象部位への埋植後の初期段階では、効率的にカルシウムイオン及びリン酸イオンを放出して骨伝導能を高めることができる。
[0043]
 本実施形態に係る骨補填材の製造方法は、ベース体10をリン酸二水素カルシウム一水和物溶液に浸漬させてリン酸水素カルシウム二水和物を析出させてDCPD層20を形成する。また、リン酸二水素カルシウム一水和物溶液のリン酸二水素カルシウム一水和物濃度が0.1mol/Lより高く、pH4未満であるため、針状の結晶を有するDCPD層20を形成できる。したがって、表面積が大きいDCPD層20がベース体10の全域に形成される。この結果、カルシウムイオン及びリン酸イオンが効率的に放出される。また、骨切部と骨補填材1との摩擦力が高く、骨補填材1を骨切部に安定配置できる。
[0044]
 本実施形態に係る骨補填材の製造方法によれば、ベース体10をリン酸二水素カルシウム一水和物溶液に浸漬させる時間が20分~60分であるため、ベース体10の表面を均一に被覆しつつ、ベース体10の強度低下を抑えて所定の圧縮強度を確保できる。
[0045]
 以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したり、各実施形態の構成要素を組み合わせたりすることが可能である。
[0046]
 以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
 β-TCPで構成される多孔体からなるベース体10を準備した(第一工程S1)。用意したベース体10の切断面のSEM画像上で複数の気孔の気孔径を計測し、実施例1のベース体10の相対気孔率を算出した。
[0047]
 相対気孔率は以下の方法で算出した。骨補填材の切断面のSEM画像上で複数の気孔の気孔径を計測し、骨補填材の相対気孔率を算出した。相対気孔率は、以下の方法で測定した。試験片の嵩密度Dを求め、相対気孔率=(1-嵩密度D/3.07)×100の式に基づき相対気孔率を算出した。
[0048]
 その結果、実施例1のベース体10の相対気孔率は58.1%であり、平均気孔径が119μmであり、標準偏差は60μmであった。圧縮試験機(島津製作所社製、AUTO GRAPH 2000GE)を用いてベース体10の圧縮強度を測定した結果、圧縮強度は20.7MPaであった。
[0049]
 準備したベース体10を0.5mol/LのMCPM溶液(pH3)に60分浸漬することにより、表面がDCPD層20で覆われたβ-TCPで構成される骨補填材を得た(第二工程S2)。得られた骨補填材1の切断面の一部のSEM写真を図2に示す。図2に示すSEM写真では、ベース体10の表面にDCPD層20が形成されていることが確認できた。なお、図2において、DCPD層20の上方(図2の上端部)に黒く見える部分は、凹凸を有するDCPD層20の表面である。
[0050]
 また、電子顕微鏡(日立製作所社製、SU1510)を用いて実施例1の骨補填材の表面を撮像した画像を図3に示す。図3に示すように、実施例1の骨補填材の表面に針状の結晶が析出していることが確認できた。
[0051]
 実施例1のSEM画像(電気顕微鏡(SEM)を用いて反射電子像を撮像した画像)を図5に示す。図5に示すSEM画像を分析した結果、実施例1の骨補填材は、60μmのDCPD層20が形成されていることが確認できた。DCPD層20の表面は、針状の結晶が存在するため、表面に凹凸を有する。DCPD層20の厚さは、図5に示すように、ベース体10とDCPD層との境界から、DCPD層20の針状結晶長軸の先端位置までの距離で特定する。
[0052]
 実施例1の骨補填材1のDCPD層20のDCPD含有率を測定した。測定はX線回折分析を用いた。その結果、実施例1の骨補填材1のDCPD層20のDCPD含有率は96.9%であった。
[0053]
(実施例2)
 実施例2は、実施例1と同じベース体10を用い、第二工程S2におけるリン酸二水素カルシウム一水和物溶液にベース体10を浸漬する時間を、実施例1より長い60分間として骨補填材1を作製した例である。実施例2は、第二工程S2における浸漬時間以外の条件は実施例1と同じ条件で骨補填材を作製した。実施例2の骨補填材のSEM画像(電気顕微鏡(SEM)を用いて反射電子像を撮像した画像)を図6に示す。図6に示すSEM画像を解析した結果、実施例2の骨補填材は、厚さが120μmのDCPD層20が形成されていることが確認できた。
[0054]
(比較例)
 比較例として、DCPD層を備えないセラミックス多孔体を用意した。すなわち、実施例1の第二工程を行わず、実施例1で作製したベース体10を比較例とした。
[0055]
 次に、実施例1の骨補填材を複数用意し、それぞれウサギ大腿骨に埋植し、経時変化を観察した。具体的には、ウサギ大腿骨に実施例1の骨補填材を埋植したサンプルを複数用意し、2週間経過後(2w)、4週間経過後(4w)、12週間経過後(12w)、24週間経過後(24w)に、それぞれ大腿骨組織を採取し、ヘマトキシリン・エオジン染色標本を作製した。この標本では、骨形成細胞が染色され、骨は染色されない染色条件とした。作製したヘマトキシリン・エオジン染色標本を光学顕微鏡で撮像した画像を図7に示す。
[0056]
 図7に示す2週間経過後2w~12週間経過後12wの画像において、中央部に複数の斑点群が矩形に映っている部分が骨補填材である。実施例1の骨補填材では、2週間経過後2w~12週間経過後12wの画像において骨補填材の存在が確認できた。24週間経過後24wでは骨補填材は消失し、骨が再生されていることが確認できた。
[0057]
 また、実施例1の骨補填材は、2週間経過後2wでは、骨補填材の周囲に骨量の増加が認められた。また、ベース体の内部は非染色部分が目立ち、ベース体内への骨形成成分の浸入が抑制されていることが分かった。次に、4週間経過後4wでは、ベース体部分が多く染色されており、ベース体内に骨形成細胞が浸入していることが確認できた。12週間経過後12wでは、ベース体の部分が染色されているが、4週間経過後4wに比べて、ベース体の周囲の染色部分は減少して白い部分が多く、ベース体の周囲に骨が形成されていることが確認できた。
[0058]
 比較例についても実施例1と同じ方法でヘマトキシリン・エオジン染色標本を作製した。比較例のヘマトキシリン・エオジン染色標本を光学顕微鏡で撮像した画像を図8に示す。図8に示すように、比較例の骨補填材は、2週間経過後2w及び4週間経過後4wでは骨補填材の存在が確認できたが、12週間経過後12wでは骨補填材は消失したことが確認できた。図8と図9とを比較すると、図8では皮質骨の厚みと連続性に乏しく、骨形成が不十分である。なお、12週間経過後12w未満で骨補填材が消失すると、実用上、骨形成が不十分な場合がある。
[0059]
 以上より、実施例1の骨補填材は、比較例の骨補填材より長い期間、埋植された骨部分に残存することが確認できた。

産業上の利用可能性

[0060]
 上記骨補填材及び骨補填材の製造方法によれば、骨欠損部に埋設後、骨伝導能、骨形成反応速度調整及び機械的強度をバランスよく発揮可能な骨補填材を提供できる。

符号の説明

[0061]
 1  骨補填材
 10  ベース体
 20  DCPD層(リン酸水素カルシウム二水和物層)

請求の範囲

[請求項1]
 多面体形状を有し、複数の空孔を備え、相対気孔率が50%以上であり、平均気孔径が100~200μmであり、圧縮強度が10MPa以上であるセラミックス多孔体からなるベース体と、
 リン酸水素カルシウム二水和物を含み、前記ベース体の表面を覆うリン酸水素カルシウム二水和物層と、
 を備える骨補填材。
[請求項2]
 前記ベース体は、脛骨の骨切り術で脛骨に形成された骨切部の切断面間に埋植可能な楔形状を有する請求項1に記載の骨補填材。
[請求項3]
 前記リン酸水素カルシウム二水和物層の厚さが60~120μmである請求項1または請求項2に記載の骨補填材。
[請求項4]
 前記リン酸水素カルシウム二水和物層における前記リン酸水素カルシウム二水和物の含有率が90%以上である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の骨補填材。
[請求項5]
 前記リン酸水素カルシウム二水和物層の表面は針状の結晶からなる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の骨補填材。
[請求項6]
 多面体形状を有し、複数の空孔を備え、相対気孔率が50%以上であり、平均気孔径が100~200μmであり、圧縮強度が10MPa以上であるセラミックス多孔体からなるベース体をリン酸二水素カルシウム一水和物溶液に浸漬し、前記ベース体の表面にリン酸水素カルシウム二水和物を析出させてリン酸水素カルシウム二水和物層を形成し、前記ベース体の表面をリン酸水素カルシウム二水和物層で被覆して骨補填材を得る骨補填材の製造方法。
[請求項7]
 前記ベース体を前記リン酸二水素カルシウム一水和物溶液に浸漬する浸漬時間が20~60分の範囲である
 請求項6に記載の骨補填材の製造方法。
[請求項8]
 前記リン酸二水素カルシウム一水和物溶液は、リン酸二水素カルシウム一水和物濃度が0.1mol/Lより高く、pH4未満である請求項6に記載の骨補填材の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]