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1. WO2020003726 - コンクリート段差部用型枠ユニットおよびコンクリート構造物施工方法

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明 細 書

発明の名称 コンクリート段差部用型枠ユニットおよびコンクリート構造物施工方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005   0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031  

図面の簡単な説明

0032  

発明を実施するための形態

0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108  

符号の説明

0109  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

明 細 書

発明の名称 : コンクリート段差部用型枠ユニットおよびコンクリート構造物施工方法

技術分野

[0001]
 本発明は、段差部を伴うコンクリート構造物を形成するのに使用される型枠ユニットおよびコンクリート構造物施工方法に関する。

背景技術

[0002]
 コンクリート打設によるコンクリート構造物の施工過程では、コンクリート原料の充填範囲を区画するための型枠が、施工後にはコンクリート構造物から取り外される複数枚のパネルの組み付けによって形成されることが多い。このようなコンクリート打設用の型枠に関する技術については、例えば下記の特許文献1~3に記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開平7-279410号公報
特許文献2 : 特開2004-183466号公報
特許文献3 : 特開2012-224990号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 形成目的物であるコンクリート構造物が、一の上向面(第1上向面)とこれより上位にある別の上向面(第2上向面)との段差構造を伴う場合、そのコンクリート構造物の施工過程で組まれる型枠をなす必要数のパネルには、当該段差構造における二つの上向面の間の側壁面を規定するためのパネルが含まれる。この側壁面規定用パネルについてコンクリート構造物施工後の取外し作業を適切に行うためには、従来、段差部付きコンクリート構造物の第1上向面が形成される高さ位置よりも側壁面規定用パネルの下端が上位に位置する態様で、当該パネルの組み付けが行われている(即ち、形成予定の第1上向面の高さ位置と側壁面規定用パネル下端との間に所定の間隔を伴う態様で、当該パネルの組み付けが行われている)。
[0005]
 しかしながら、このような態様で側壁面規定用パネルが組み付けられた状態でコンクリート打設が行われると、段差部付きコンクリート構造物の第1上向面が本来的に形成されるべき高さ位置と側壁面規定用パネル下端との間からの硬化前コンクリートの部分的漏出、即ち はみ出しが、生じる。そして、第1上向面と側壁面との境界では、当該はみ出しコンクリートが硬化して、本来的な入隅形状との比較において余剰な傾斜部など余剰部分が形成されることとなる(第1上向面と側壁面との境界には適切な入隅形状が形成されない)。第1上向面と側壁面とのこのような境界において適切な入隅形状を形成するためには、当該余剰部分を削り取る作業(はつり作業)を行う必要があり、また、その削り取り箇所の補修作業が必要となる場合もある。そのような作業が必要であることは、段差部付きコンクリート構造物の施工に要する作業・時間・コストの増大を招いてしまい、好ましくない。
[0006]
 また、段差部付きコンクリート構造物施工後の側壁面規定用パネルの取外し作業の効率化の観点から、従来、当該パネルの組み付けとして、簡易な手段による仮止めがなされる場合がある。その場合、側壁面規定用パネルを含む型枠による区画内に供給されて流動するコンクリート原料の自重や衝撃荷重など荷重に起因して、当該パネルには歪みが生じやすい。組み付けられた側壁面規定用パネルが歪むと、形成予定位置から位置ずれした側壁面が形成されてしまう。位置ずれを伴う側壁面については補修する必要があり、そのような補修が必要であることは、段差部付きコンクリート構造物の施工に要する作業・時間・コストの増大を招いてしまい、好ましくない。
[0007]
 本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであり、その目的は、段差構造を伴うコンクリート構造物を効率よく形成するのに適した型枠ユニットおよび施工方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明の第1の側面によると、コンクリート段差部用型枠ユニットが提供される。このコンクリート段差部用型枠ユニットは、少なくとも一枚の埋設パネルと、少なくとも一つのボルトと、少なくとも一つの固定具とを備える。このような型枠ユニットは、いわゆる水返し部における立ち上がり段差を伴うコンクリート壁や、所定の段差構造を伴うコンクリート床など、段差部付きコンクリート構造物の施工のための型枠をなすために使用できるものである。
[0009]
 埋設パネルは、接着改良面を含む第1面およびこれとは反対の第2面を有し、且つ、当該第1および第2面間を貫通するボルト貫通孔を有する。或いは、埋設パネルは、接着改良面を含む第1面およびこれとは反対の第2面を有し、且つ、当該第1および第2面間を貫通するボルト貫通孔を形成可能であって当該ボルト貫通孔が未だ形成されていないものである。この場合、当該埋設パネルは、好ましくは、ボルト貫通孔形成予定箇所を示す印を第1面上および/または第2面上に有する。このような埋設パネルの接着改良面は、例えば硬化後コンクリートとの接合に適した面であって、モルタル硬化物層表面、凹凸成形面、または機械的粗化面である。
[0010]
 固定具は、埋設パネル当接用の端面、および、当該端面側からボルトが螺合可能なネジ孔部を有し、且つ、組付け箇所側連結部材に連結可能に構成されている。
[0011]
 以上の構成を有する本コンクリート段差部用型枠ユニットを例えば以下のように使用して、段差部付きコンクリート構造物を施工することができる。
[0012]
 まず、コンクリート構造物形成箇所において複数のパネルについて組み付けを行い、コンクリート原料が充填されることとなる区画を規定する型枠を形成する。形成目的物であるコンクリート構造物は、第1上面とこれより上位にある第2上面との段差構造を含む。組み付けられる複数のパネルには、そのような段差構造における第1上面および第2上面の間の側壁面をなすこととなる、上述のコンクリート段差部用型枠ユニットにおける少なくとも一枚の埋設パネルが、含まれる。この埋設パネルは、組付け作業までには必要数のボルト貫通孔が穿設された状態にある。
[0013]
 型枠の形成において、本コンクリート段差部用型枠ユニットの埋設パネルは、接着改良面を含む第1面がコンクリート原料充填区画内に臨む内面をなすように組み付けられる。本コンクリート段差部用型枠ユニットにおける固定具は、その埋設パネル当接用端面が埋設パネルの内面にあてがわれた状態において、当該固定具のネジ孔部と埋設パネルのボルト貫通孔とが連通可能な位置にある。本コンクリート段差部用型枠ユニットにおける上記ボルトは、埋設パネルにおける内面とは反対の外面からそのボルト貫通孔に挿通されたうえで、内面側にある固定具のネジ孔部に螺合している。この固定具は、組付け箇所側連結部材に連結されている。また、固定具の上述の埋設パネル当接用端面が広いほど、組付け状態にある埋設パネルにおいて意図しない傾きや歪みは抑えられる傾向にあり、好ましい。本コンクリート段差部用型枠ユニットが備える各要素の以上のような複合的な連携により、当該型枠ユニットの埋設パネルは組み付けられる。
[0014]
 段差部付きコンクリート構造物の施工においては、次に、型枠によって形成されたコンクリート原料充填区画において、上述の第1上面が形成されることとなる高さに対応する第1高さ位置までコンクリート原料を供給する。この後、供給されたコンクリート原料に対する締固めや、コテ等よる第1上面の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経て当該コンクリート原料を硬化させる。
[0015]
 次に、当該コンクリート原料充填区画において、上述の第2上面が形成される高さに対応する第2高さ位置まで更にコンクリート原料を供給する。この後、供給されたコンクリート原料に対する締固めや、コテ等よる第2上面の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経て当該コンクリート原料を硬化させる。これにより、本コンクリート段差部用型枠ユニットの埋設パネルは、コンクリート構造物と一体化し、その段差構造部分において第1上面と第2上面との間の側壁面をなすこととなる。
[0016]
 その後、本コンクリート段差部用型枠ユニットの埋設パネルをコンクリート構造物側に残しつつ、使用した型枠を必要に応じて解体する。
[0017]
 段差部付きコンクリート構造物の施工において本コンクリート段差部用型枠ユニットを使用する場合、上述のように、その埋設パネルは、形成される段差部付きコンクリート構造物と一体化してその段差部における第1上面と第2上面との間の側壁面をなす。本コンクリート段差部用型枠ユニットの埋設パネルは、施工後の取り外し作業を要しない。このような埋設パネルを備える本コンクリート段差部用型枠ユニットは、段差部付きコンクリート構造物の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0018]
 また、本コンクリート段差部用型枠ユニットの埋設パネルは、上述のように施工後の取り外し作業を要しないため、コンクリート原料充填区画を規定する型枠の形成時に充分強固に組み付けるのに適する。このような埋設パネルは、コンクリート打設時の歪みの発生を抑制するのに適し、従って、従来式のコンクリート構造物施工方法においてパネルが歪んだ場合に求められる上述の補修作業を回避するのに適する。このような埋設パネルを備える本コンクリート段差部用型枠ユニットは、段差部付きコンクリート構造物の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0019]
 加えて、本コンクリート段差部用型枠ユニットの埋設パネルは、上述のように施工後の取り外し作業を要しないため、鉛直方向においてコンクリート構造物の第1上面形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル下端が位置するように、当該埋設パネルを組み付けるのに適する。このような埋設パネルを備える本コンクリート段差部用型枠ユニットは、従来技術に関して上述したコンクリート余剰部分(第1上向面と側壁面との境界にてコンクリートが硬化して形成される余剰部分)が形成されるのを回避するのに適し、そのような余剰部分を削り取る作業やその後に必要に応じて行われる削り取り箇所補修作業を回避するのに適し、従って、段差部付きコンクリート構造物の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0020]
 更に加えて、本コンクリート段差部用型枠ユニットの埋設パネルは、上述のように、接着改良面を第1面に含む。このような構成は、本コンクリート段差部用型枠ユニットを使用して行うコンクリート構造物の施工において、打設コンクリートからの埋設パネル(接着改良面を含む第1面は内面)の剥離を抑制するのに適する。
[0021]
 以上のように、本発明の第1の側面に係るコンクリート段差部用型枠ユニットは、段差構造を伴うコンクリート構造物を効率よく形成するのに適する。
[0022]
 本コンクリート段差部用型枠ユニットにおける固定具のネジ孔部は、好ましくは、埋設パネル当接用の端面の側とは反対の側から組付け箇所側連結部材である例えばセパレータないしその端部が螺合可能に構成されている。このような構成は、埋設パネルについて強固な組み付けを実現するうえで好ましい。
[0023]
 本コンクリート段差部用型枠ユニットにおける固定具は、好ましくは、ネジ孔部を有するナット部と、埋設パネル当接用の端面を有し且つ当該端面とは反対の側にて開口してナット部が嵌合可能な穴部を有する台座部とを備える。このような構成は、構成材料が互いに異なるナット部および台座部を備える固定具を実現するのに適する。すなわち、埋設パネルの強固な組付けに寄与するネジ孔部に求められる特性を踏まえて構成材料が選択されたナット部と、埋設パネルの傾きや歪みの抑制機能を担う埋設パネル当接用端面に求められる特性を踏まえて構成材料が選択された台座部と、を備える複合的な構成の固定具を、実現するのに適するのである。一方、コンクリート段差部用型枠ユニットの部品点数の削減などの観点からは、本コンクリート段差部用型枠ユニットの固定具は、以上のようなナット部と台座部とが一体となった構成を有してもよい。
[0024]
 本コンクリート段差部用型枠ユニットの埋設パネルにおける第2面は、接着改良面を含んでもよい。このような構成、即ち、埋設パネルの両面が接着改良面を含むという構成は、本コンクリート段差部用型枠ユニットを使用して行うコンクリート構造物の施工において、打設コンクリートからの埋設パネルの剥離を抑制するのに適するとともに、当該施工後に埋設パネルの第2面に対してタイル貼り作業を実施するのにも適する。
[0025]
 本コンクリート段差部用型枠ユニットは、好ましくは、隣接する二枚の埋設パネルをそれらの第2面が面一となる態様で連ねて接続するための接続具を更に備える。このような構成は、本コンクリート段差部用型枠ユニットを使用して形成されるコンクリート構造物の上述の段差構造部分において、複数の埋設パネルにわたる広い平坦な側壁面を適切に形成するうえで好ましい。
[0026]
 本コンクリート段差部用型枠ユニットは、好ましくは、隣接する二枚の埋設パネルをそれらの第1面が交差する態様で連ねて接続するための接続具を更に備える。このような構成は、本コンクリート段差部用型枠ユニットを使用して形成されるコンクリート構造物の上述の段差構造部分において、横方向に連なって直角など所定角度をなす隣接平面を含む側壁面を適切に形成するうえで好ましい。
[0027]
 本コンクリート段差部用型枠ユニットは、埋設パネルの高さ位置を調整するための高さ調整具を更に備える。このような構成は、本コンクリート段差部用型枠ユニットを使用して行うコンクリート構造物の施工にあたり、埋設パネルの組付け高さについて正確に位置決めするうえで好ましい。
[0028]
 本発明の第2の側面によると、コンクリート構造物施工方法が提供される。この施工方法は、本発明の第1の側面に係る上述のコンクリート段差部用型枠ユニットを使用して、第1上面とこれより上位の第2上面との段差構造を含むコンクリート構造物を形成するための方法であって、次のような第1工程、第2工程、および第3工程を少なくとも含む。第1工程では、複数のパネルについて組み付けを行い、コンクリート原料が充填されることとなる区画を規定する型枠を形成する。組み付けられる複数のパネルには、上記段差構造における第1上面および第2上面の間の側壁面をなすこととなる、コンクリート段差部用型枠ユニットにおける少なくとも一枚の埋設パネルが、含まれる。第2工程では、コンクリート原料充填区画において、第1上面形成高さに対応する第1高さ位置までコンクリート原料を供給する。第3工程では、コンクリート原料充填区画において、第2上面形成高さに対応する第2高さ位置まで更にコンクリート原料を供給する。本施工方法では、組み付けられた状態にある埋設パネル(即ち、型枠における埋設パネル)の下端位置は、好ましくは、鉛直方向において上記第1高さ位置と同じか或いは当該第1高さ位置より下方である。
[0029]
 本コンクリート構造物施工方法では、上述のように、段差部付きコンクリート構造物のための型枠を形成するにあたり、本発明の第1の側面に係るコンクリート段差部用型枠ユニットが使用される。このような施工方法によると、本発明の第1の側面に係るコンクリート段差部用型枠ユニットに関して上述したのと同様の技術的効果が奏される。すなわち、本発明の第2の側面に係る本施工方法は、段差構造を伴うコンクリート構造物を効率よく形成するのに適する。
[0030]
 本コンクリート構造物施工方法では、コンクリート構造物は、第1上面とこれより上位の第2上面との間で互いに反対の側を向く一対の側壁面を有する凸条構造部を含んでもよい。この場合、上記第1工程で形成される型枠には、凸条構造部の一対の側壁面をなすための、離隔して組み付けられた少なくとも一対の埋設パネルが、含まれる。このような施工方法によっても、本発明の第1の側面に係るコンクリート段差部用型枠ユニットに関して上述したのと同様の技術的効果が奏される。すなわち、このような施工方法は、段差構造として凸条構造部を伴うコンクリート構造物を効率よく形成するのに適する。
[0031]
 本コンクリート構造物施工方法では、コンクリート構造物は、第1上面とこれより上位の第2上面との間において全周をなす複数の側壁面を有する凸構造部を含んでもよい。この場合、上記第1工程で形成される型枠には、凸構造部の複数の側壁面の一部または全部をなすための一枚または二枚以上の埋設パネルが含まれる。このような施工方法によっても、本発明の第1の側面に係るコンクリート段差部用型枠ユニットに関して上述したのと同様の技術的効果が奏される。すなわち、このような施工方法は、段差構造として凸構造部を伴うコンクリート構造物を効率よく形成するのに適する。

図面の簡単な説明

[0032]
[図1] 本発明の一の実施形態に係るコンクリート段差部用型枠ユニットの斜視図である。
[図2] 図1に示すコンクリート段差部用型枠ユニットの一変形例における埋設パネルの斜視図である。
[図3] 埋設パネル組付け状態にあるコンクリート段差部用型枠ユニットの拡大部分断面図である。
[図4] 組付け箇所側連結部材であるセパレータの構成例を表す。
[図5] 固定具の変形例を表す。
[図6] 図1に示すコンクリート段差部用型枠ユニットの変形例を表す。
[図7] 図1に示すコンクリート段差部用型枠ユニットの変形例を表す。
[図8] 本発明の一の実施形態に係るコンクリート構造物施工方法の一部の工程を表す。
[図9] 本発明の一の実施形態に係るコンクリート構造物施工方法の一部の工程を表す。
[図10] 図8および図9に示すコンクリート構造物施工方法における一の変形例を部分的に表す。
[図11] 図8および図9に示すコンクリート構造物施工方法における他の変形例を部分的に表す。

発明を実施するための形態

[0033]
 図1から図3は、本発明の一の実施形態に係るコンクリート段差部用型枠ユニットである型枠ユニットXを表す。型枠ユニットXは、少なくとも一枚の埋設パネル10を備え、且つ、埋設パネル10ごとに少なくとも一組のボルト20および固定具30を備える。このような型枠ユニットXは、いわゆる水返し部における立ち上がり段差を伴うコンクリート壁や、所定の段差構造を伴うコンクリート床など、段差部付きコンクリート構造物の施工のための型枠をなすために使用できるものである。
[0034]
 埋設パネル10は、面11およびこれとは反対の面12を有する矩形状の板材であって、本実施形態では、平板状の繊維強化セメント板である。埋設パネル10において、その長手方向の寸法は例えば30~242cmであり、短手方向の寸法は例えば2~242cmである。また、埋設パネル10は、図3に示すように、面11,12間を貫通するボルト貫通孔13を有する。或いは、埋設パネル10は、面11,12間を貫通するボルト貫通孔13を形成可能なものであってボルト貫通孔13が未だ形成されてないものであってもよい。この場合、埋設パネル10は、図2に示すように、ボルト貫通孔形成予定箇所を示す印21を面11上および/または面12上に有するのが、好ましい。
[0035]
 埋設パネル10をなすための平板状の繊維強化セメント板としては、例えば、スレートボード、珪酸カルシウム板、およびスラグ石膏板が挙げられる。スレートボードは、主原料として、例えば、セメント、繊維(但し石綿を除く)、および混和材を含む。珪酸カルシウム板は、主原料として、例えば、石灰質原料、珪酸質原料、繊維(但し石綿を除く)、および混和材を含む。スラグ石膏板は、主原料として、例えば、スラグ、石膏、繊維(但し石綿を除く)、および混和材を含む。これら繊維強化セメント板については、JIS A 5430に規格が定められている。耐水性の観点からは、埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板としては、スレートボードおよび珪酸カルシウム板が好ましい。また、スレートボードの市販品としては、例えば、株式会社エーアンドエーマテリアル製の「セルフレックス」が挙げられる。珪酸カルシウム板の市販品としては、例えば、株式会社エーアンドエーマテリアル製の「ハイラックM」が挙げられる。スラグ石膏板の市販品としては、例えば、吉野石膏株式会社製の「タイガーボード」が挙げられる。
[0036]
 埋設パネル10の厚さは、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、更に好ましくは7mm以上である。このような構成は、埋設パネル10の強度の確保の観点から好ましく、ひいては、埋設パネル10の運搬時および組付け作業時、並びにコンクリート打設の際の、埋設パネル10の破損や撓みを抑制するうえで好ましい。また、埋設パネル10の厚さは、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下である。このような構成は、埋設パネル10の軽量化の観点から好ましく、ひいては、埋設パネル10の製造コストおよび運搬コストの抑制、並びに、埋設パネル10の組付け作業のしやすさの観点から好ましい。
[0037]
 埋設パネル10の面11には、その一部または全体にわたって接着改良面が設けられている。埋設パネル10の面12には、その一部または全体にわたり、接着改良面が設けられてもよいし、化粧面が設けられてもよい。
[0038]
 埋設パネル10における接着改良面は、例えば、モルタル硬化物層表面、凹凸成形面、機械的粗化面、または、これらの組み合わせである。埋設パネル10の量産化や経済性の観点からは、埋設パネル10の接着改良面としてはモルタル硬化物層表面が好ましい。
[0039]
 埋設パネル10におけるモルタル硬化物層表面は、上述の繊維強化セメント板における接着改良面形成予定箇所にモルタルを塗布した後に硬化させることによって形成することができる。当該モルタルとしては、例えば、ポリマーセメントモルタル、エポキシ樹脂モルタル、およびカチオン系モルタルが挙げられる。
[0040]
 ポリマーセメントモルタルは、例えば、セメントと、細骨材と、水と、ポリマーディスパージョンまたは再乳化形粉末樹脂との混合物であるモルタルである。ポリマーディスパージョンとしては、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)およびアクリル樹脂があげられる。ポリマーディスパージョンとして用いることが可能なエチレン酢酸ビニル樹脂の市販品としては、例えば、ダイセルファインケム株式会社製の「セルマイティ10」が挙げられる。ポリマーディスパージョンとして用いることが可能なアクリル樹脂の市販品としては、例えば、旭化成株式会社製の「スーパーペトロック400」が挙げられる。
[0041]
 カチオン系モルタルは、例えば、セメントと、細骨材と、水と、カチオン系ポリマーディスパージョンまたはカチオン系再乳化形粉末樹脂との混合物であるモルタルである。カチオン系ポリマーディスパージョンとしては、カチオン系スチレンブタジエンゴムおよびカチオン系アクリル樹脂が挙げられる。カチオン系ポリマーディスパージョンとして用いることが可能なカチオン系スチレンブタジエンゴムの市販品としては、ダイセルファインケム株式会社製の「セルタル」が挙げられる。カチオン系ポリマーディスパージョンとして用いることが可能なカチオン系アクリル樹脂の市販品としては、ダイセルファインケム株式会社製の「セルカチオン」が挙げられる。
[0042]
 エポキシ樹脂モルタルは、例えば、エポキシ樹脂と細骨材との混合物であるモルタルある。エポキシ樹脂モルタルの市販品としては、例えばコニシ株式会社製の「Kモルタル」が挙げられる。
[0043]
 上述のモルタル中の細骨材としては、例えば、珪砂、川砂、黒曜石パーライト、真珠岩パーライト、炭酸カルシウム粉が挙げられる。モルタル中には、一種類の細骨材が含まれてもよいし、二種類以上の細骨材が含まれてもよい。
[0044]
 埋設パネル10における接着改良面がモルタル硬化物層表面である場合、そのモルタル硬化物層の厚さは、コンクリート原料に対する高い接着強度を確保するという観点からは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。また、埋設パネル10に関する軽量化および作業性の改善の観点や、埋設パネル10の製造コストおよび運搬コストの抑制の観点からは、当該モルタル硬化物層の厚さは、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。
[0045]
 繊維強化セメント板にポリマーセメントモルタルやカチオン系モルタルが塗布されると、塗布されたモルタル中の水分の多くが繊維強化セメント板に吸収され、当該モルタルがいわゆるドライアウトの状態に至りやすい。ドライアウト状態にあるモルタルでは、水和反応が阻害されて硬化不良や接着不良を生じることがある。このようなドライアウトを避けるためには、モルタル塗布前の繊維強化セメント板について、いわゆる吸水調整を行うのが好ましい。吸水調整手段としては、例えば、繊維強化セメント板に対する水の散布、および、繊維強化セメント板に対する吸水調整剤の塗布が、挙げられる。その吸水調整剤としては、例えば、合成樹脂のエマルジョンまたはポリマーディスパージョンを主成分とする、いわゆるセメントモルタル塗り用の吸水調整剤が挙げられる。そのような吸水調整剤中の合成樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、および合成ゴムが挙げられる。セメントモルタル塗り用の吸水調整剤の市販品としては、例えば、ダイセルファインケム株式会社製の「セルマイティ10」「セルタイト10」「セルロックJ」「セルプライマーJ」(いずれもエチレン酢酸ビニル系樹脂を含有する)、および、昭和電工建材株式会社製の「マルチプライマー」「ペルタスAC-300」(いずれもアクリル系樹脂を含有する)が、挙げられる。
[0046]
 埋設パネル10における接着改良面としての上述の凹凸成形面は、例えば、埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板の作製過程で、接着改良面形成予定箇所に接する表面に所定の凹凸形状を有する型板など型部材を使用して繊維強化セメント板をプレス成形または押出成形することにより、形成することができる。
[0047]
 埋設パネル10における接着改良面としての上述の機械的粗化面は、例えば、埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板の接着改良面形成予定箇所に対してサンディングまたはチッピングなど機械的な粗面化処理を行って当該箇所を目粗しすることにより、形成することができる。
[0048]
 埋設パネル10の面12の一部または全体にわたり化粧面が設けられている場合、型枠ユニットXを使用してのコンクリート構造体の施工の後、埋設パネル10の外面に新たにモルタル化粧や塗装を施さなくてもよく、作業効率の観点から好ましい。埋設パネル10の面12の一部または全体にわたり化粧面が設けられている場合のその化粧面は、例えば、平滑平面成形面、塗料硬化膜表面、または化粧シート貼付面である。
[0049]
 埋設パネル10における平滑平面成形面は、例えば、埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板の作製過程で、化粧面形成予定箇所に接する表面が平滑平面である型板など型部材を使用して繊維強化セメント板をプレス成形または押出成形することにより、形成することができる。このような平滑平面成形面を有するパネル(繊維強化セメント板)として、せんい強化セメント板協会のスレートボードの一種である「フレキシブル板(化粧板仕上げタイプ)」が知られている。
[0050]
 埋設パネル10における塗料硬化膜表面は、埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板の化粧面形成予定箇所に塗料を塗布した後に硬化させることによって形成することができる。使用可能な塗料としては、例えば、有機系塗料、無機系塗料、および有機・無機複合系塗料が挙げられる。形成される塗料硬化膜表面の耐久性の観点からは、無機系塗料や有機・無機複合形塗料が好ましい。有機系塗料としては、例えば、アクリル樹脂塗料、エポキシ系塗料、ウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、ポリエステル塗料、およびビニルオルガノゾル塗料が挙げられる。無機系塗料としては、例えば、アルキルシリケート系塗料、光触媒酸化チタン含有無機塗料、シリカゾル系塗料、アルカリ金属塩系塗料、金属アルコキシド系塗料、セメントリシン系塗料、およびセメントスタッコ系塗料が挙げられる。有機・無機複合系塗料としては、例えば、シロキサン結合を含有する有機・無機複合系塗料、金属アルコキシド系塗料、セラミックス系塗料、および光触媒酸化チタン含有有機・無機複合系塗料が挙げられる。これら塗料は、充填剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、安定剤などその他の添加剤を顔料に加えて含有していてもよい。
[0051]
 埋設パネル10における化粧シート貼付面を形成するための化粧シートとしては、例えば、塩化ビニル化粧シート、熱可塑性樹脂化粧シート、熱硬化性樹脂化粧シート、葉化粧シート、およびいわゆるPタイルが挙げられる。塩化ビニル化粧シートは、例えば、顔料を混練した不透明の塩化ビニルシートに模様の印刷を施し、その印刷面上に透明な塩化ビニルフィルムを加熱接着し、当該印刷面側を必要に応じてエンボス加工して作製することができる。そのエンボス加工は、例えば、凹凸表面を有するロールでの加圧によって行うことができる。熱可塑性樹脂化粧シートは、例えば、シート構成樹脂として塩化ビニル樹脂の代りに各種可塑性樹脂を用いること以外は塩化ビニル化粧シート作製方法と同様にして、作製することができる。熱硬化性樹脂化粧シートは、坪量55~200g/m 2の化粧紙にメラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸したものを、同様の熱硬化性樹脂を含浸したクラフト紙など基材シートに重ね、得られる積層体について多段式ホットプレス機または連続成形プレス機を使用して熱圧プレス成形することによって、作製ことができる。薄葉化粧シートは、例えば、坪量30g/m 2程度の薄葉紙に着色ベタ印刷を施し、そのベタ印刷面上に図柄を印刷し、当該印刷面に対してアミノアルキッド樹脂塗料またはポリウレタン樹脂塗料などによる塗装仕上げを施すことによって、作製することができる。埋設パネル10における化粧シート貼付面を形成するための化粧シートは、好ましくは、塩化ビニル化粧シートおよびPタイルである。埋設パネル10をなすための繊維強化セメント板に対する化粧シートの貼付方法としては、ウレタン樹脂や、ビニル樹脂、アクリル樹脂など接着性樹脂を介しての接着があげられる。
[0052]
 以上のような埋設パネル10としては、特開平8-312092号公報に記載のもの(但し、石綿は含有していないもの)、および、ダイセルファインケム株式会社製の「セル・ケコミパネル」が、特に好ましい。
[0053]
 型枠ユニットXのボルト20は、その延び方向において埋設パネル10の厚さより長い寸法を有し、且つ、所定のネジ山を有する。ボルト20は、公知のものから選択できる。例えば、六角ボルト、六角穴付ボルト、座金組み込み六角ボルト、アイボルト、蝶ボルト、ナベ子ねじ、皿子ねじ、トラス子ねじ、バインド子ねじ、および止めねじから選択されたものを、ボルト20として使用することができる。また、ボルト20として、型枠固定用として公知の各種フォームタイ(登録商標)(或いは、ホームタイ)のメスねじ部に棒ねじ(“寸切りねじ”や“全ねじ”と呼称されることもある)の一部をねじ込ませて残部を露出させたものを使用してもよい。そのフォームタイ(登録商標)(或いは、ホームタイ)としては、市販のものを使用することができる。市販のフォームタイ(登録商標)としては、例えば、ナット付タイプのフォームタイ(登録商標)(岡部株式会社から販売されている商品名「フォームタイ(登録商標)C型 C8-150」など)、くさびタイプのフォームタイ(登録商標)(コンドーテック株式会社から販売されている商品名「くさび式ホンタイ 2K-60 W5/16・60角パイプ用」など)、および、ねじタイプのフォームタイ(登録商標)(コンドーテック株式会社から販売されている商品名「RBねじホンタイ(3形リブ座ナット・SWセット)8-180」など)が挙げられる。
[0054]
 型枠ユニットXの固定具30は、図3に示すように、埋設パネル当接用の端面31と端面31側からボルト20が螺合可能なネジ孔部32とを有し、且つ、組付け箇所側連結部材に連結可能に構成されている。
[0055]
 本実施形態の固定具30においては、埋設パネル組付け箇所側連結部材であるいわゆるセパレータの端部のネジ構造部が固定具30の端面31側とは反対の側からネジ孔部32に螺合可能に構成されている。このような構成は、後述のコンクリート構造物施工過程において、埋設パネル10について強固な組み付けを実現するうえで好ましい。
[0056]
 本実施形態の固定具30は、具体的には、埋設パネル当接用の端面31および穴部33を有する台座部30Aと、ネジ孔部32を有するナット部30Bとを備える。台座部30Aの穴部33は、台座部30Aの端面31とは反対の側にて開口し、この穴部33にはナット部30Bが嵌合可能である。このような構成によると、構成材料が互いに異なる台座部30Aおよびナット部30Bを備える固定具30を実現することが可能である。すなわち、埋設パネル10の傾きや歪みの抑制機能を担う埋設パネル当接用の端面31に求められる特性を踏まえて構成材料が選択された台座部30Aと、埋設パネル10の強固な組付けに寄与するネジ孔部32に求められる特性を踏まえて構成材料が選択されたナット部30Bと、を備える複合的な構成の固定具30を、実現することが可能なのである。このような固定具30としては、例えば、コンドーテック株式会社から販売されている商品名「断熱パット」や、三協テック株式会社から販売されている商品名「断熱コン(KPコン)」など、市販品を使用することができる。一方、型枠ユニットXの部品点数の削減などの観点からは、固定具30は、上述のような台座部とナット部とが一体となった構成を有してもよい。
[0057]
 埋設パネル組付け箇所側連結部材であるセパレータは、両端にネジ構造部を有する一本のセパレータであってもよいし、図4(a)に示すような複合セパレータや図4(b)に示す複合セパレータであってもよい。図4(a)に示す複合セパレータは、両端に正ネジ構造部を有するセパレータ41と、両端に逆ネジ構造部を有するか或いは図中左端に正ネジ構造部を有し且つ図中右端に逆ネジ構造部を有するセパレータ42と、これらが螺合可能なネジ孔部を少なくとも両端に有する連結部材43とを備える。図4(b)に示す複合セパレータは、両端に正ネジ構造部を有するセパレータ44,45と、両端に逆ネジ構造部を有する屈曲型のセパレータ46と、セパレータ44,46が螺合可能なネジ孔部を少なくとも両端に有する連結部材47と、セパレータ45,46が螺合可能なネジ孔部を少なくとも両端に有する連結部材48とを備える。連結部材43,47,48は、それぞれ、例えば、いわゆるターンバックルまたはジョイントナットである。型枠ユニットXの埋設パネル10の組付け箇所ないし組付け高さに応じて、例えば以上の各種セパレータを使い分けることができる。
[0058]
 型枠ユニットXの固定具30は、図5(a)に示すようなナット連結体30Cや図5(b)に示すようなナット連結体30Dを、上述のナット部30Bの代わりに備えてもよい。ナット連結体30Cは、二つのナット部34,35が自在継ぎ手を介して連結された構成を有するものである。ナット部34は、上述のボルト20が螺合可能なネジ孔部32を有する。ナット部35は、埋設パネル組付け箇所側連結部材であるいわゆるセパレータの端部のネジ構造部が螺合可能なネジ孔部32'を有する。ナット連結体30Dは、二つのナット部36,37とボルト部38とを備える。ナット部37とボルト部38は、自在継ぎ手を介して連結されている。ナット部36は、上述のボルト20が螺合可能なネジ孔部32を有する。ナット部37は、埋設パネル組付け箇所側連結部材であるいわゆるセパレータの端部のネジ構造部が螺合可能なネジ孔部32'を有する。
[0059]
 型枠ユニットXは、図6(a)に示すような接続具50Aを更に備えてもよい。接続具50Aは、コンクリート構造物の施工にあたって組み付けられる隣接する二枚の埋設パネル10をそれらの面12が面一となる態様で連ねて接続するためのものであって、本実施形態では少なくとも平プレート51および所定数の締結材52を備える(図6(a)は、四つの締結材52を備える場合の接続具50Aを例示的に表すものである)。隣接する二枚の埋設パネル10が接続具50Aによって接続された状態において、平プレート51は、隣接する二枚の埋設パネル10にわたり、それらの例えば面12(外面)側にあてがわれている。締結材52は例えばドリルねじであり、締結材52がドリルねじである場合には、平プレート51および各埋設パネル10を貫通するように穿設された貫通孔に対して埋設パネル10の面12側から挿入された締結材52により、隣接する二枚の埋設パネル10にわたる平プレート51の固定が実現される。このような接続具50Aにおいて、平プレート51は、隣接する二枚の埋設パネル10にわたってそれらの面11(内面)側にあてがわれてもよいし、締結材52はボルトであってもよい。締結材52がボルトである場合には、平プレート51および各埋設パネル10を貫通するように穿設された貫通孔に対して埋設パネル10の面12側から挿入された当該ボルト(締結材52)と、そのネジ構造部に面11側にて締結されるナットとにより、隣接する二枚の埋設パネル10にわたる平プレート51の固定が実現される。
[0060]
 型枠ユニットXがこのような接続具50Aを備えることは、型枠ユニットXを使用して形成される段差部付きコンクリート構造部(例えば後記のコンクリート壁70やコンクリート構造物80)の段差構造部分において、複数の埋設パネル10にわたる平坦な側壁面を適切に形成するうえで好ましい。また、このような接続具50Aを使用しつつ側壁面を形成した後、締結材52と、面12側に平プレート51があてがわれる場合には当該平プレート51とを、当該側壁面から取り外し、締結材52が挿入されていた比較的に小さな埋設パネル貫通孔の少なくとも外側開口端部にモルタルを充填する補修を行うことにより、当該側壁面において良好な美観を確保することができる。
[0061]
 一組の接続具50Aが備える締結材52の数は、図6(a)では4であるが、2、3または5以上であってもよい。また、一組の隣接する二枚の埋設パネル10を接続するために使用される接続具50Aの数は、図6(a)では1であるが、2または3以上であってもよい。
[0062]
 型枠ユニットXは、図6(b)に示すような接続具50Bを更に備えてもよい。接続具50Bは、コンクリート構造物の施工にあたって組み付けられる隣接する二枚の埋設パネル10をそれらの面11が交差する態様で連ねて接続するためのものであって、本実施形態では少なくとも屈曲プレート53および所定数の締結材54を備える(図6(b)は、四つの締結材54を備える場合の接続具50Bを例示的に表すものである)。隣接する二枚の埋設パネル10が接続具50Bによって接続された状態において、屈曲プレート53は、隣接する二枚の埋設パネル10にわたり、それらの例えば面12(外面)側にあてがわれている。締結材54は例えばドリルねじであり、締結材54がドリルねじである場合には、屈曲プレート53および各埋設パネル10を貫通するように穿設された貫通孔に対して埋設パネル10の面12側から挿入された締結材54により、隣接する二枚の埋設パネル10にわたる屈曲プレート53の固定が実現される。このような接続具50Bにおいて、屈曲プレート53は、隣接する二枚の埋設パネル10にわたってそれらの面11(内面)側にあてがわれてもよいし、締結材54はボルトであってもよい。締結材54がボルトである場合には、屈曲プレート53および各埋設パネル10を貫通するように穿設された貫通孔に対して埋設パネル10の面12側から挿入された当該ボルト(締結材54)と、そのネジ構造部に面11側にて締結されるナットとにより、隣接する二枚の埋設パネル10にわたる屈曲プレート53の固定が実現される。
[0063]
 型枠ユニットXがこのような接続具50Bを備えることは、型枠ユニットXを使用して形成される段差部付きコンクリート構造部(例えば後記のコンクリート壁70やコンクリート構造物80)の段差構造部分において、横方向に連なって直角など所定角度をなす隣接平面を含む側壁面を適切に形成するうえで好ましい。また、このような接続具50Bを使用しつつ側壁面を形成した後、締結材54と、面12側に屈曲プレート53があてがわれる場合には当該屈曲プレート53とを、当該側壁面から取り外し、締結材54が挿入されていた比較的に小さな埋設パネル貫通孔の少なくとも外側開口端部にモルタルを充填する補修を行うことにより、当該側壁面において良好な美観を確保することができる。
[0064]
 一組の接続具50Bが備える締結材54の数は、図6(b)では4であるが、2、3または5以上であってもよい。また、一組の隣接する二枚の埋設パネル10を接続するために使用される接続具50Bの数は、図6(b)では1であるが、2または3以上であってもよい。
[0065]
 また、図6(b)に示される二枚の埋設パネル10は、出隅部位を含む段差部を有するコンクリート構造物の当該段差部を形成するための配置(接着改良面が設けられている上述の面11の側に、出隅部位を含む段差部が形成される配置)をとる。これに対し、図6(b)に示される各埋設パネル10につきその表裏面(面11,12)を入れ変えた場合に当該二枚の埋設パネル10がとる配置は、入隅部位を含む段差部を有するコンクリート構造物の当該入隅部を形成するための配置(接着改良面が設けられている面11の側に、入隅部位を含む段差部が形成される配置)である。
[0066]
 型枠ユニットXは、図7(a)および図7(b)に示すような高さ調整具60Aを更に備えてもよい。高さ調整具60Aは、コンクリート構造物の施工にあたって組み付けられる埋設パネル10の高さ位置を調整するためのものであって、下方に延びるネジ構造部を伴う受け部材61と、上方に延びるネジ構造部を伴う脚部材62と、これらのネジ構造部が螺合可能なネジ孔部を少なくとも両端に有する連結部材63とを備える。受け部材61は、本実施形態では、埋設パネル10の厚さより幅の広い埋設パネル受容用の溝を有する。そのような構成に代えて、受け部材61は、埋設パネル受容用の溝を有さないものでもよい。例えば、受け部材61は、各種形状の平面プレートを埋設パネル当接部として有するものでもよい。その平面プレートは、埋設パネル10の面11または面12に当接して埋設パネル10の位置規定にも役立てられうる上方折り返し構造を有するものであってもよい。或いは、受け部材61は、埋設パネル支持用棒状部材を埋設パネル当接部として有するものでもよい。その棒状部材は、埋設パネル10の面11または面12に当接して埋設パネル10の位置規定にも役立てられうる上方折り返し構造を有するものであってもよいし、V字形状やU字形状を有するものであってもよい。受け部材61が上記溝を有さないこれら構成は、埋設パネル10の組付けにあたってその組付け箇所・配向の自由度を確保する観点から好ましい。一方、連結部材63は、例えば、ターンバックルまたはジョイントナットである。図7(b)に示す高さ調整具60Aは、隣接する二枚の埋設パネル10を連ねた状態で受けてこれら埋設パネル10の高さ調整機能を同時に担う。型枠ユニットXがこのような高さ調整具60Aを備えることは、型枠ユニットXを使用して行うコンクリート構造物(例えば後記のコンクリート壁70やコンクリート構造物80)の施工にあたり、埋設パネル10の組付け高さについて正確に位置決めするうえで好ましい。
[0067]
 図7(a)および図7(b)は、脚部材62および連結部材63を二組備える場合の高さ調整具60Aを例示的に表すものであって、高さ調整具60Aは、一組の脚部材62および連結部材63を備えるものであってもよいし、三組以上の脚部材62および連結部材63を備えるものであってもよい。
[0068]
 高さ調整具60Aにおいて、脚部材62は、上方に延びるネジ構造部を有していればよく、当該ネジ構造部の下方側は、高さ調整具60Aが埋設パネル10の高さ位置を調整する機能を発揮可能であれば、どのような構成のものでもよい。
[0069]
 例えば、脚部材62は、上記ネジ構造部を少なくとも一方端側に有する棒状部材であって、その他方端が既存の床面などに当接して高さ調整具60Aの一部をなす棒状部材であってもよい。そのような棒状部材としては、例えばセパレータが挙げられる。当該棒状部材の前記他方端(ネジ構造部とは反対側の端)は、既存の床面などに当接するのに適した所定の形状や構造を有していてもよい。
[0070]
 或いは、脚部材62は、既存の平面状床面に当接するのに好適な支持端面と当該端面とは反対の側にて開口するネジ孔部とを有する部材の当該ネジ孔部に両切りボルトや棒ねじの一方端部がねじ込まれ且つその他方端部が上記ネジ構造部をなすものでもよい。支持端面とネジ孔部とを有する前記部材としては、例えば、図3を参照して上述した固定具30が挙げられる。固定具30におけるナット部30Bのネジ孔部32に対して台座部30Aとは反対の側から両切りボルトや棒ねじがねじ込まれたうえで、台座部30Aの端面31が平面状床面に当接するように設置されることにより、脚部材62が構成される。
[0071]
 或いは、脚部材62は、セパレータの下端が既存のコンクリートに埋め込まれた構成を有するもの(いわゆるアンカーボルト)であってもよいし、セパレータの下端が鉄骨または配筋などの鉄部材に溶接固定された構成を有するものであってもよいし、セパレータと配筋とを連結するための連結金具を介してセパレータの下端が配筋に連結された構成を有するものであってもよい(いずれにおいても、セパレータの上端側は「上方に延びるネジ構造部」をなす)。前記の連結金具としては、例えば、岡部株式会社から販売されている商品名「セパグリップ」、共栄製作所株式会社から販売されている商品名「エスケーユニバ」および商品名「ドマスター」、日本仮設株式会社から販売されている商品名「テツカブト(ナット付)」、株式会社国元商会から販売されている商品名「KSガッツ」、特開2008-214911号公報に記載されている「セパレータと鉄筋または丸棒とを接続するためのジョイント金具」、並びに、特開2003-013600号公報に記載されている「鉄筋とセパレータとの連結金具」が挙げられる。
[0072]
 型枠ユニットXは、図7(c)に示すような高さ調整具60Bを更に備えてもよい。高さ調整具60Bは、コンクリート構造物の施工にあたって組み付けられる隣接する二枚の埋設パネル10をそれらの面11が直角など所定角度で交差する態様で連ねつつ当該埋設パネル10の高さ位置を調整するためのものであって、下方に延びるネジ構造部を伴う受け部材64と、上方に延びるネジ構造部を伴う脚部材65と、これらのネジ構造部が螺合可能なネジ孔部を少なくとも両端に有する連結部材66とを備える。受け部材64は、本実施形態では、埋設パネル10の厚さより幅の広い埋設パネル受容用の溝を有する。そのような構成に代えて、受け部材64は、埋設パネル受容用の溝を有さないものでもよい。例えば、受け部材64は、各種形状の平面プレートを埋設パネル当接部として有するものでもよい。その平面プレートは、埋設パネル10の面11または面12に当接して埋設パネル10の位置規定にも役立てられうる上方折り返し構造を有するものであってもよい。或いは、受け部材64は、埋設パネル支持用棒状部材を埋設パネル当接部として有するものでもよい。受け部材61が上記溝を有さないこれら構成は、埋設パネル10の組付けにあたってその組付け箇所・配向の自由度を確保する観点から好ましい。一方、連結部材66は、例えば、ターンバックルまたはジョイントナットである。型枠ユニットXがこのような高さ調整具60Bを備えることは、型枠ユニットXを使用して行うコンクリート構造物(例えば後記のコンクリート壁70やコンクリート構造物80)の施工にあたり、交差態様で隣接する二枚の埋設パネル10の組付け高さについて正確に位置決めするうえで好ましい。
[0073]
 図7(c)は、脚部材65および連結部材66を三組備える場合の高さ調整具60Bを例示的に表すものであって、高さ調整具60Bは、一組の脚部材65および連結部材66を備えるものであってもよいし、二組の脚部材65および連結部材66を備えるものであってもよいし、四組以上の脚部材65および連結部材66を備えるものであってもよい。また、高さ調整具60Bの脚部材65は、上方に延びるネジ構造部を有していればよく、当該ネジ構造部の下方側は、高さ調整具60Bが埋設パネル10の高さ位置を調整する機能を発揮可能であれば、どのような構成のものでもよい。高さ調整具60Bにおけるそのようなネジ構造部下方側の構成は、具体的には、高さ調整具60Aにおけるネジ構造部下方側の構成に関して上述したのと同様である。
[0074]
 図8は、本発明の一の実施形態に係るコンクリート構造物施工方法を表す。本方法は、いわゆる水返し部における立ち上がり段差を伴う図8(d)に示すようなコンクリート壁70の施工方法であり、本実施形態では、以下のような型枠組立て工程と、第1コンクリート打設工程と、第2コンクリート打設工程と、型枠取外し工程とを含む(図8では、各工程を断面図で表す)。形成目的物であるコンクリート壁70は、上面71とこれより上位にある上面72との段差構造(水返し部における立ち上がり段差)を伴うものである。
[0075]
 型枠組立て工程では、図8(a)に示すように型枠Yを形成する。具体的には、コンクリート壁70の形成箇所において、縦筋や横筋などの配筋の後、複数のパネルPについて組み付けを行い、コンクリート原料が充填されることとなる区画を規定する型枠Yを形成する。組み付けられる複数のパネルPには、形成目的物であるコンクリート壁70における上面71と上面72の間の側壁面をなすこととなる、上述の型枠ユニットXにおける少なくとも一枚の埋設パネル10が含まれる。使用される埋設パネル10には、組付け作業までには必要数の上述のボルト貫通孔13が穿設される。そして、ボルト貫通孔13を有する埋設パネル10について組付け作業が行われる。当該組付け作業においては、隣接する二枚の埋設パネル10が上述の接続具50Aや接続具50Bを伴って接続される態様で組み付けられてもよい。また、埋設パネル10は、上述の高さ調整具60Aや高さ調整具60Bを伴って高さ調整される態様で組み付けられてもよい。
[0076]
 組み付けられた状態にある埋設パネル10においては、図3に示すように、接着改良面を含む面11がコンクリート原料充填区画内に臨む内面をなす。型枠ユニットXにおける上述の固定具30は、その埋設パネル当接用の端面31が埋設パネル10の面11(内面)にあてがわれた状態において、固定具30のネジ孔部32と埋設パネル10のボルト貫通孔13とが連通可能な位置にある。型枠ユニットXにおける上述のボルト20は、埋設パネル10の面12側からそのボルト貫通孔13に挿通されたうえで、面11側にある固定具30のネジ孔部32に螺合している。この固定具30は、本実施形態では、組付け箇所側連結部材であるセパレータSの端部のネジ構造部に連結されている。固定具30における埋設パネル当接用の端面31が広いほど、組付け状態にある埋設パネル10において意図しない傾きや歪みは抑えられる傾向にある。また、本実施形態では、鉛直方向においてコンクリート壁70の上面71形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル10下端が位置するように、埋設パネル10が組み付けられる。型枠ユニットXが備える各要素の以上のような複合的な連携により、型枠ユニットXの埋設パネル10は組み付けられる。
[0077]
 埋設パネル10の面11における接着改良面が上述の凹凸成形面や上述の機械的粗化面である場合(即ち、埋設パネル10の面11に繊維強化セメント素地が露出している場合)、或いは、埋設パネル10の面11における接着改良面が上述のモルタル硬化物層表面であっても先行の吸水調整の効果が不十分な場合、埋設パネル10の組付け後、コンクリート原料の打設前に、当該埋設パネル10について吸水調整が必要となる場合がある。埋設パネル10について十分な吸水調整がなされていない状態でコンクリート打設が行われると、コンクリート原料中の水分の多くが埋設パネル10の繊維強化セメント素地に吸収され、当該コンクリート原料がいわゆるドライアウトの状態に至りやすい。ドライアウト状態にあるコンクリート原料では、水和反応が阻害されて硬化不良や接着不良を生じることがある。このようなドライアウトを避けるためには、吸水調整を行う必要がある。吸水調整手段としては、例えば、埋設パネル10の少なくとも面11に対する水の散布や、埋設パネル10の面11に対する吸水調整剤の塗布が挙げられる。具体的な吸水調整手段については、繊維強化セメント板に対するポリマーセメントモルタルやカチオン系モルタルを塗布する前の吸水調整に関して上記した吸水調整手段と同様である。埋設パネル10に対する水の散布による吸水調整は、コンクリート原料の打設時点までに蒸発する水分の量を考慮に入れたうえで、好ましくは、埋設パネル10の建築現場での組付け直前および/または組付け後に一回または数回行われる。一方、埋設パネル10に対する吸水調整剤の塗布による吸水調整は、埋設パネル10の製造後から建築現場でのコンクリート打設前までの任意の時期に、行うことができる。埋設パネル10の製造後から建築現場でのコンクリート打設前までの間において、一回の吸水調整を行ってもよいし、同一手段による吸水調整を複数回行ってもよいし、複数の異なる手段による吸水調整を各手段につき一回または複数回行ってもよい。
[0078]
 また、埋設パネル10を建築現場にて組み付けた後にコンクリート原料を打設する際、当該コンクリート打設箇所に既設のコンクリート部(床や壁等)などの吸水しやすい箇所がある場合には、これらの箇所にも、上記と同様の吸水調整を行ってもよい。
[0079]
 コンクリート壁70の施工においては、次に、図8(b)に示すように、第1コンクリート打設工程が行われる。具体的には、型枠Yによって形成されたコンクリート原料充填区画において、上述の上面71が形成されることとなる高さに対応する高さ位置L1(第1高さ位置)までコンクリート原料Mを打ち込んで供給する。この後、打ち込まれたコンクリート原料Mを密実に充填するための締固めや、コテ等よる上面71の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経て、コンクリートMを硬化させる。締固めは、突き棒、棒状バイブレータ、または型枠バイブレータを使用して行うことができる。
[0080]
 次に、図8(c)に示すように、第2コンクリート打設工程が行われる。具体的には、型枠Yによって形成されたコンクリート原料充填区画において、上述の上面72が形成される高さに対応する高さ位置L2(第2高さ位置)まで更にコンクリート原料Mを供給する。この後、打ち込まれたコンクリート原料Mを密実に充填するための締固めや、コテ等よる上面72の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経て、コンクリートMを硬化させる。これにより、型枠ユニットXの埋設パネル10は、コンクリート壁70と一体化し、その段差構造部分において上面71と上面72との間の側壁面をなすこととなる。
[0081]
 次に、図8(d)に示すように、型枠取外し工程が行われる。具体的には、型枠ユニットXの埋設パネル10をコンクリート壁70側に残しつつ、他のパネルPを取り外して型枠Yを解体する。
[0082]
 以上のようにして、水返し部における立ち上がり段差を伴うコンクリート壁70を施工することができる。
[0083]
 型枠ユニットXを使用して行うコンクリート壁70の施工においては、上述のように、その埋設パネル10は、形成されるコンクリート壁70と一体化してその段差部における上面71と上面72との間の側壁面をなす。型枠ユニットXの埋設パネル10は、施工後の取り外し作業を要しない。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート壁70の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0084]
 また、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように施工後の取り外し作業を要しないため、コンクリート原料充填区画を規定する型枠Yの形成時に充分強固に組み付けるのに適する。このような埋設パネル10は、コンクリート打設時の歪みの発生を抑制するのに適し、従って、コンクリート打設時にパネルが歪んだ場合に求められる補修作業を回避するのに適する。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート壁70の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0085]
 加えて、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように施工後の取り外し作業を要しないため、鉛直方向においてコンクリート壁70の上面71形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル10下端が位置するように、埋設パネル10を組み付けるのに適する。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、従来技術に関して上述したコンクリート余剰部分が形成されるのを回避するのに適し、そのような余剰部分を削り取る作業やその後に必要に応じて行われる削り取り箇所補修作業を回避するのに適し、従って、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート壁70の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0086]
 更に加えて、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように、硬化後コンクリートとの接合に適した接着改良面を面11に含む。このような構成は、打設コンクリートからの埋設パネル10の剥離を抑制するのに適する。
[0087]
 以上のように、上述の型枠ユニットXは、段差構造を伴うコンクリート構造物であるコンクリート壁70を効率よく形成するのに適するのである。
[0088]
 図9は、本発明の一の実施形態に係る他のコンクリート構造物施工方法を表す。本方法は、配線ケーブル設置箇所やバスルーム構築箇所でのいわゆる床段差を伴う図9(d)に示すようなコンクリート構造物80の施工方法であり、本実施形態では、以下のような型枠組立て工程と、第1コンクリート打設工程と、第2コンクリート打設工程と、型枠取外し工程とを含む(図9では、各工程を断面図で表す)。形成目的物であるコンクリート構造物80は、上面81とこれより上位にある上面82との段差構造(床段差)を伴うものである。
[0089]
 型枠組立て工程では、図9(a)に示すように型枠Zを形成する。具体的には、コンクリート構造物80の形成箇所において、縦筋や横筋などの配筋の後、複数のパネルPについて組み付けを行い、コンクリート原料が充填されることとなる区画を規定する型枠Zを形成する。組み付けられる複数のパネルPには、形成目的物であるコンクリート構造物80における上面81と上面82の間の側壁面をなすこととなる、上述の型枠ユニットXにおける少なくとも一枚の埋設パネル10が含まれる。使用される埋設パネル10には、組付け作業までには必要数のボルト貫通孔13が穿設される。そして、ボルト貫通孔13を有する埋設パネル10について組付け作業が行われる。当該組付け作業においては、隣接する二枚の埋設パネル10が上述の接続具50Aや接続具50Bを伴って接続される態様で組み付けられてもよい。また、埋設パネル10は、上述の高さ調整具60Aや高さ調整具60Bを伴って高さ調整される態様で組み付けられてもよい。
[0090]
 組み付けられた状態にある埋設パネル10においては、図3に示すように、接着改良面を含む面11がコンクリート原料充填区画内に臨む内面をなす。型枠ユニットXにおける上述の固定具30は、その埋設パネル当接用の端面31が埋設パネル10の面11(内面)にあてがわれた状態において、固定具30のネジ孔部32と埋設パネル10のボルト貫通孔13とが連通可能な位置にある。型枠ユニットXにおける上述のボルト20は、埋設パネル10の面12側からそのボルト貫通孔13に挿通されたうえで、面11側にある固定具30のネジ孔部32に螺合している。この固定具30は、本実施形態では、組付け箇所側連結部材であるセパレータSの端部のネジ構造部に連結されている。固定具30における埋設パネル当接用の端面31が広いほど、組付け状態にある埋設パネル10において意図しない傾きや歪みは抑えられる傾向にある。また、本実施形態では、鉛直方向においてコンクリート構造物80の上面81形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル10下端が位置するように、埋設パネル10が組み付けられる。型枠ユニットXが備える各要素の以上のような複合的な連携により、型枠ユニットXの埋設パネル10は組み付けられる。
[0091]
 埋設パネル10の面11における接着改良面が上述の凹凸成形面や上述の機械的粗化面である場合、或いは、埋設パネル10の面11における接着改良面が上述のモルタル硬化物層表面であっても先行の吸水調整の効果が不十分な場合、埋設パネル10の組付け後、コンクリート原料の打設前に、当該埋設パネル10について吸水調整が必要となる場合がある。その吸水調整の具体的手法に関しては、コンクリート壁70の施工過程での吸水調整の具体的手法に関して上述したのと同様である。
[0092]
 コンクリート構造物80の施工においては、次に、図9(b)に示すように、第1コンクリート打設工程が行われる。具体的には、型枠Zによって形成されたコンクリート原料充填区画において、上述の上面81が形成されることとなる高さに対応する高さ位置L1(第1高さ位置)までコンクリート原料Mを打ち込んで供給する。この後、打ち込まれたコンクリート原料Mを密実に充填するための締固めや、コテ等よる上面81の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経てコンクリートMを硬化させる。締固めは、突き棒、棒状バイブレータ、または型枠バイブレータを使用して行うことができる。
[0093]
 次に、図9(c)に示すように、第2コンクリート打設工程が行われる。具体的には、型枠Zによって形成されたコンクリート原料充填区画において、上述の上面82が形成される高さに対応する高さ位置L2(第2高さ位置)まで更にコンクリート原料Mを供給する。この後、打ち込まれたコンクリート原料Mを密実に充填するための締固めや、コテ等よる上面82の表面仕上げを必要に応じて行ったうえで、養生を経てコンクリートMを硬化させる。これにより、型枠ユニットXの埋設パネル10は、コンクリート構造物80と一体化し、その段差構造部分において上面81と上面82との間の側壁面をなすこととなる。
[0094]
 次に、図9(d)に示すように、型枠取外し工程が行われる。具体的には、型枠ユニットXの埋設パネル10をコンクリート構造物80側に残しつつ、他のパネルPを取り外して型枠Zを解体する。
[0095]
 以上のようにして、床段差を伴うコンクリート構造物80を施工することができる。
[0096]
 型枠ユニットXを使用して行うコンクリート構造物80の施工においては、上述のように、その埋設パネル10は、形成されるコンクリート構造物80と一体化してその段差部における上面81と上面82との間の側壁面をなす。型枠ユニットXの埋設パネル10は、施工後の取り外し作業を要しない。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート構造物80の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0097]
 また、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように施工後の取り外し作業を要しないため、コンクリート原料充填区画を規定する型枠Zの形成時に充分強固に組み付けるのに適する。このような埋設パネル10は、コンクリート打設時の歪みの発生を抑制するのに適し、従って、コンクリート打設時にパネルが歪んだ場合に求められる補修作業を回避するのに適する。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート構造物80の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0098]
 加えて、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように施工後の取り外し作業を要しないため、鉛直方向においてコンクリート構造物80の上面81形成予定位置と同じか或いはそれより下方に埋設パネル10下端が位置するように、埋設パネル10を組み付けるのに適する。このような埋設パネル10を備える型枠ユニットXは、従来技術に関して上述したコンクリート余剰部分が形成されるのを回避するのに適し、そのような余剰部分を削り取る作業やその後に必要に応じて行われる削り取り箇所補修作業を回避するのに適し、従って、段差部付きコンクリート構造物であるコンクリート構造物80の施工に要する作業・時間・コストを抑制するのに適する。
[0099]
 更に加えて、型枠ユニットXの埋設パネル10は、上述のように、硬化後コンクリートとの接合に適した接着改良面を面11に含む。このような構成は、打設コンクリートからの埋設パネル10の剥離を抑制するのに適する。
[0100]
 以上のように、上述の型枠ユニットXは、段差構造を伴うコンクリート構造物80を効率よく形成するのに適するのである。
[0101]
 図10は、図8および図9に示すコンクリート構造物施工方法における一変形例を部分的に表す。
[0102]
 形成目的物のコンクリート構造物がその段差構造として凸条構造部を含む場合、図8および図9に示すコンクリート構造物施工方法の上述の型枠組立て工程では、図10(a)に示すように離隔して配置される二枚一組の埋設パネル10を、必要組数、凸条構造部形成箇所に組み付ける(図10(a)には、当該型枠において一対の埋設パネル10のみを示す)。本変形例における形成目的物のコンクリート構造物は、例えば図10(b)に示すように、上面91とこれより上位にある上面92との間で互いに反対の側を向く一対の側壁面を有する凸条構造部93を含む。
[0103]
 例えば図10(a)に示すような配置で組み付けられた埋設パネル10を凸条構造部形成箇所に含む型枠を使用して、図8や図9を参照して上述した第1および第2コンクリート打設工程ならびに型枠取外し工程を経ることにより、凸条構造部93を含むコンクリート構造物を形成することができる。形成される凸条構造部93は、その側壁面をなす埋設パネル10を伴うものである。
[0104]
 このような施工方法においても、埋設パネル10を含む型枠ユニットXに関して上述したのと同様の技術的効果を受することがでる。したがって、このような施工方法は、段差構造をなす凸条構造部93を伴うコンクリート構造物を効率よく形成するのに適する。
[0105]
 図11は、図8および図9に示すコンクリート構造物施工方法における他の変形例を部分的に表す。
[0106]
 形成目的物のコンクリート構造物がその段差構造として凸構造部を含む場合、図8および図9に示すコンクリート構造物施工方法の型枠組立て工程では、凸構造部の複数の側壁面の一部または全部をなすための一枚または二枚以上の埋設パネル10を凸構造部形成箇所に組み付ける。図11(a)は、凸構造部の全周をなす側壁面すべてを形成するための四枚の埋設パネル10が凸構造部形成箇所に組み付けられた状態を例示的に表すものである(図11(a)には、当該型枠において一組の埋設パネル10のみを示す)。本変形例における形成目的物のコンクリート構造物は、例えば図11(b)に示すように、上面91とこれより上位にある上面92との間において全周をなす複数の側壁面を有する凸構造部94を含む。
[0107]
 図11(a)に示すような配置で組み付けられた埋設パネル10を凸構造部形成箇所に含む型枠を使用して、図8や図9を参照して上述した第1および第2コンクリート打設工程ならびに型枠取外し工程を経ることにより、凸構造部94を含むコンクリート構造物を形成することができる。形成される凸構造部94は、その側壁面をなす埋設パネル10を伴うものである。
[0108]
 このような施工方法においても、埋設パネル10を含む型枠ユニットXに関して上述したのと同様の技術的効果を受することがでる。したがって、このような施工方法は、段差構造をなす凸構造部94を伴うコンクリート構造物を効率よく形成するのに適する。

符号の説明

[0109]
X       型枠ユニット(コンクリート段差部用型枠ユニット)
Y,Z     型枠
S       セパレータ
10      埋設パネル
11,12   面
13      ボルト貫通孔
20      ボルト
30      固定具
31      端面
32      ネジ孔部
50A,50B 接続具
60A,60B 高さ調整具
70      コンクリート壁
71,72   上面
80      コンクリート構造物
81,82   上面
91,92   上面
93      凸条構造部
94      凸構造部

請求の範囲

[請求項1]
 接着改良面を含む第1面およびこれとは反対の第2面を有し、且つ当該第1および第2面間を貫通するボルト貫通孔を有する、少なくとも一枚の埋設パネルと、
 少なくとも一つのボルトと、
 埋設パネル当接用の端面、および、当該端面側から前記ボルトが螺合可能なネジ孔部を有し、且つ、組付け箇所側連結部材に連結可能である、少なくとも一つの固定具と、を備えるコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項2]
 接着改良面を含む第1面およびこれとは反対の第2面を有し、且つ当該第1および第2面間を貫通するボルト貫通孔を形成可能な、少なくとも一枚の埋設パネルと、
 少なくとも一つのボルトと、
 埋設パネル当接用の端面、および、当該端面側から前記ボルトが螺合可能なネジ孔部を有し、且つ、組付け箇所側連結部材に連結可能である、少なくとも一つの固定具と、を備えるコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項3]
 前記埋設パネルは、ボルト貫通孔形成予定箇所を示す印を前記第1面上および/または前記第2面上に有する、請求項2に記載のコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項4]
 前記固定具の前記ネジ孔部は、前記端面側とは反対の側から前記組付け箇所側連結部材が螺合可能である、請求項1から3のいずれか一つに記載のコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項5]
 前記固定具は、前記ネジ孔部を有するナット部と、前記端面を有し、且つ当該端面とは反対の側にて開口して前記ナット部が嵌合可能な穴部を有する、台座部と、を備える、請求項4に記載のコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項6]
 前記第2面は接着改良面を含む、請求項1から5のいずれか一つに記載のコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項7]
 隣接する二枚の前記埋設パネルをそれらの前記第2面が面一となる態様で連ねて接続するための接続具を更に備える、請求項1から6のいずれか一つに記載のコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項8]
 隣接する二枚の前記埋設パネルをそれらの前記第1面が交差する態様で連ねて接続するための接続具を更に備える、請求項1から7のいずれか一つに記載のコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項9]
 前記埋設パネルの高さ位置を調整するための高さ調整具を更に備える、請求項1から8のいずれか一つに記載のコンクリート段差部用型枠ユニット。
[請求項10]
 請求項1から9のいずれか一つに記載のコンクリート段差部用型枠ユニットを使用して、第1上面とこれより上位の第2上面との段差構造を含むコンクリート構造物を形成するための施工方法であって、
 前記段差構造における前記第1上面および前記第2上面の間の側壁面をなすこととなる、前記コンクリート段差部用型枠ユニットにおける前記少なくとも一枚の埋設パネル、を含む複数のパネルについて組み付けを行い、コンクリート原料が充填されることとなる区画を規定する型枠を形成する工程と、
 前記区画において第1上面形成高さに対応する第1高さ位置までコンクリート原料を供給する工程と、
 前記区画において第2上面形成高さに対応する第2高さ位置までコンクリート原料を供給する工程とを含む、コンクリート構造物施工方法。
[請求項11]
 前記型枠において、前記埋設パネルの下端位置は、鉛直方向において、前記第1高さ位置と同じか或いは当該第1高さ位置より下方である、請求項10に記載のコンクリート構造物施工方法。
[請求項12]
 前記コンクリート構造物は、前記第1上面とこれより上位の前記第2上面との間で互いに反対の側を向く一対の側壁面を有する凸条構造部を含み、
 前記型枠には、前記凸条構造部の前記一対の側壁面をなすための、離隔して組み付けられた少なくとも一対の前記埋設パネルが含まれる、請求項10または11に記載のコンクリート構造物施工方法。
[請求項13]
 前記コンクリート構造物は、前記第1上面とこれより上位の前記第2上面との間において全周をなす複数の側壁面を有する凸構造部を含み、
 前記型枠には、前記凸構造部の前記複数の側壁面の一部または全部をなすための一枚または二枚以上の前記埋設パネルが含まれる、請求項10から12のいずれか一つに記載のコンクリート構造物施工方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]